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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115271
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】歩行支援ロボット
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20220802BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20220802BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20220802BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20220802BHJP
   B62B 3/00 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
A61H3/04
B25J11/00 Z
B60T1/06 D
B60T7/12 A
B62B3/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011791
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐樹
【テーマコード(参考)】
3C707
3D050
3D246
4C046
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS27
3C707XK03
3C707XK12
3C707XK27
3C707XK36A
3C707XK45
3C707XK89
3D050AA03
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050JJ01
3D050JJ07
3D050KK14
3D246AA00
3D246BA08
3D246DA02
3D246GA22
3D246GB15
3D246GC11
3D246HA06A
3D246HA48A
3D246HA51A
3D246JA12
3D246JB12
3D246LA01A
3D246LA13Z
3D246LA15A
4C046AA24
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD02
4C046DD16
4C046DD26
4C046DD27
4C046DD33
4C046DD45
4C046EE02
4C046EE06
4C046FF25
4C046FF33
(57)【要約】
【課題】歩行支援ロボットを用いて擬似的な平行棒訓練を行うことができるようにする。
【解決手段】使用者の歩行を支援する歩行支援ロボットは、車輪を有する本体部と、使用者に把持される持手と、持手を本体部に接続する持手接続部と、持手に加えられる操作を検出する操作検出部と、車輪をロックするロック部と、ロック部を制御する制御部と、を備える。制御部は、ロック部によって車輪がロックされている期間に、歩行支援ロボットの前後方向における前方に持手を押す操作を操作検出部によって検出した場合には、ロック部による車輪のロックを解除して、本体部が移動した後にロック部によって車輪をロックし、前方に持手を押す操作を操作検出部によって検出しなかった場合には、ロック部による車輪のロックを維持する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の歩行を支援する歩行支援ロボットであって、
車輪を有する本体部と、
前記使用者に把持される持手と、
前記持手を前記本体部に接続する持手接続部と、
前記持手に加えられる操作を検出する操作検出部と、
前記車輪をロックするロック部と、
前記ロック部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ロック部によって前記車輪がロックされている期間に、
前記歩行支援ロボットの前後方向における前方に前記持手を押す操作を前記操作検出部によって検出した場合には、前記ロック部による前記車輪のロックを解除して、前記本体部が移動した後に前記ロック部によって前記車輪をロックし、
前記前方に前記持手を押す操作を前記操作検出部によって検出しなかった場合には、前記ロック部による前記車輪のロックを維持する、
歩行支援ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行支援ロボットであって、
前記制御部は、前記ロック部によって前記車輪をロックしてから予め定められた待機時間が経過するまでの期間、前記前方に前記持手を押す操作を前記操作検出部によって検出した場合であっても前記車輪のロックを解除しない、歩行支援ロボット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の歩行支援ロボットであって、
前記制御部は、前記車輪のロックが解除されている期間に、予め定められた大きさ以上の力で前記前方に前記持手を押す操作と、予め定められた大きさ以上の加速度で前記前方に前記持手を押す操作と、前記前後方向における後方に前記持手を引く操作とのうちの少なくともいずれか一つを前記操作検出部によって検出した場合には、前記本体部の移動中であっても前記ロック部によって前記車輪をロックする、歩行支援ロボット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の歩行支援ロボットであって、
前記車輪に駆動トルクを加える走行用モータを備え、
前記制御部は、前記車輪のロックが解除されている期間に、前記走行用モータによって前記車輪に駆動トルクを加える、歩行支援ロボット。
【請求項5】
請求項4に記載の歩行支援ロボットであって、
前記制御部は、予め定められた操作を前記操作検出部によって検出した場合には、前記走行用モータを制御することによって前記歩行支援ロボットの向きを変更する、歩行支援ロボット。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の歩行支援ロボットであって、
前記車輪に制動トルクを加える回生モードを有する走行用モータを備え、
前記制御部は、前記車輪のロックが解除されている期間に、前記走行用モータによって前記車輪に制動トルクを加える、歩行支援ロボット。
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載の歩行支援ロボットであって、
前記制御部は、
前記使用者の歩幅を記憶する記憶部を有し、
前記車輪のロックが解除されている期間に、前記走行用モータを制御することによって、前記記憶部に記憶された前記使用者の歩幅に応じた距離、前記本体部を移動させる、歩行支援ロボット。
【請求項8】
請求項7に記載の歩行支援ロボットであって、
前記制御部は、前記使用者の歩幅を取得し、前記記憶部に記憶させる歩幅取得部を有する、歩行支援ロボット。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の歩行支援ロボットであって、
前記持手および前記持手接続部は、左右一対で設けられ、
前記持手接続部は、前記持手を前記前後方向に移動可能に前記本体部に接続し、
前記持手接続部には、前記持手を前記前後方向に移動させる持手位置変更部が設けられ、
前記制御部は、前記ロック部によって前記車輪がロックされている期間に、左右一対の前記持手のうちの一方を前記前方に向かって押す操作を前記操作検出部によって検出した場合には、前記車輪が接触する路面と左右一対の前記持手のうちの他方との前記前後方向における相対位置が前記本体部の移動によって変化しないように前記持手位置変更部によって前記他方の前記持手の前記前後方向における位置を変更する、歩行支援ロボット。
【請求項10】
請求項9に記載の歩行支援ロボットであって、
前記制御部は、前記車輪のロックが解除されている期間における前記本体部の移動距離が予め定められた距離に達した場合には、前記ロック部によって前記車輪をロックする、歩行支援ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行支援ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用者の歩行を支援する歩行支援装置が開示されている。この歩行支援装置は、動作モードとして、アシストモードとトレーニングモードとを有している。アシストモードでは、歩行支援装置は、持手に加えられる力に応じて速度を調節しながら前進する。トレーニングモードでは、持手がフレームに対して移動可能な状態にされ、歩行支援装置は、使用者の腕振り動作によって移動する持手の位置に応じて速度を調節しながら前進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-116050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
互いに平行に設置された2本の棒の間を、右手で右側の棒を掴み、左手で左側の棒を掴みながら歩行することによって歩行能力を向上させる平行棒訓練が知られている。平行棒訓練では、被訓練者は、足を移動させる際、静止した棒に掴まって体を支えることができる。上記文献の歩行支援装置では、持手を平行棒のように用いると、歩行支援装置が移動してしまい、十分に体を支えることができない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、使用者の歩行を支援する歩行支援ロボットが提供される。この歩行支援ロボットは、車輪を有する本体部と、前記使用者に把持される持手と、前記持手を前記本体部に接続する持手接続部と、前記持手に加えられる操作を検出する操作検出部と、前記車輪をロックするロック部と、前記ロック部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記ロック部によって前記車輪がロックされている期間に、前記歩行支援ロボットの前後方向における前方に前記持手を押す操作を前記操作検出部によって検出した場合には、前記ロック部による前記車輪のロックを解除して、前記本体部が移動した後に前記ロック部によって前記車輪をロックし、前記前方に前記持手を押す操作を前記操作検出部によって検出しなかった場合には、前記ロック部による前記車輪のロックを維持する。
この形態の歩行支援ロボットによれば、制御部は、ロック部によって車輪がロックされている期間に持手を前方に押す操作を検出した場合には、ロック部による車輪のロックを一時的に解除して本体部を移動可能にし、上記期間に持手を前方に押す操作を検出しなかった場合には、ロック部による車輪のロックを維持する。そのため、使用者は、ロック部によって車輪がロックされている期間に静止した持手で体を支えながら足を移動させることができ、持手に対して前方に押す操作を加えることによって車輪のロックを一時的に解除して本体部を移動させることができる。したがって、使用者は、静止した持手で体を支えながらの足の移動と、本体部を移動させる操作とを交互に繰り返すことによって、疑似的な平行棒訓練を実行することができる。
(2)上記形態の歩行支援ロボットにおいて、前記制御部は、前記ロック部によって前記車輪をロックしてから予め定められた待機時間が経過するまでの期間、前記前方に前記持手を押す操作を前記操作検出部によって検出した場合であっても前記車輪のロックを解除しなくてもよい。
この形態の歩行支援ロボットによれば、待機時間が経過するまでの期間、制御部は、車輪のロックを解除しないので、短期間に本体部の移動が繰り返されることに起因して使用者の体勢が不安定になることを抑制できる。
(3)上記形態の歩行支援ロボットにおいて、前記制御部は、前記車輪のロックが解除されている期間に、予め定められた大きさ以上の力で前記前方に前記持手を押す操作と、予め定められた大きさ以上の加速度で前記前方に前記持手を押す操作と、前記前後方向における後方に前記持手を引く操作とのうちの少なくともいずれか一つを前記操作検出部によって検出した場合には、前記本体部の移動中であっても前記ロック部によって前記車輪をロックしてもよい。
この形態の歩行支援ロボットによれば、使用者がバランスを崩した際に持手に加えられる操作によって車輪をロックすることができるので、使用者がバランスを崩したとしても、使用者が転倒することを抑制できる。
(4)上記形態の歩行支援ロボットは、前記車輪に駆動トルクを加える走行用モータを備え、前記制御部は、前記車輪のロックが解除されている期間に、前記走行用モータによって前記車輪に駆動トルクを加えてもよい。
この形態の歩行支援ロボットによれば、走行用モータの駆動トルクによって車輪を回転させて本体部を移動させることができるので、本体部を移動させるための使用者の負担を軽減できる。
(5)上記形態の歩行支援ロボットにおいて、前記制御部は、予め定められた操作を前記操作検出部によって検出した場合には、前記走行用モータを制御することによって前記歩行支援ロボットの向きを変更してもよい。
この形態の歩行支援ロボットによれば、制御部が走行用モータを制御して歩行支援ロボットを方向変換させるので、使用者は、簡単に歩行支援ロボットを方向変換させることができる。
(6)上記形態の歩行支援ロボットは、前記車輪に制動トルクを加える回生モードを有する走行用モータを備え、前記制御部は、前記車輪のロックが解除されている期間に、前記走行用モータによって前記車輪に制動トルクを加えてもよい。
この形態の歩行支援ロボットによれば、使用者が疑似的な平行棒訓練を実行する際に使用者に負荷をかけることによって使用者の足腰を鍛えることができる。
(7)上記形態の歩行支援ロボットにおいて、前記制御部は、前記使用者の歩幅を記憶する記憶部を有し、前記車輪のロックが解除されている期間に、前記走行用モータを制御することによって、前記記憶部に記憶された前記使用者の歩幅に応じた距離、前記本体部を移動させてもよい。
この形態の歩行支援ロボットによれば、使用者と本体部との間隔が近くなり過ぎることや使用者と本体部との間隔が遠くなり過ぎることに起因して使用者の体勢が不安定になることを抑制できる。
(8)上記形態の歩行支援ロボットにおいて、前記制御部は、前記使用者の歩幅を取得し、前記記憶部に記憶させる歩幅取得部を有してもよい。
この形態の歩行支援ロボットによれば、制御部は、歩幅取得部によって取得した歩幅を用いて走行用モータを制御することができるので、使用者と本体部との間隔が近くなり過ぎることや使用者と本体部との間隔が遠くなり過ぎることを効果的に抑制できる。
(9)上記形態の歩行支援ロボットにおいて、前記持手および前記持手接続部は、左右一対で設けられ、前記持手接続部は、前記持手を前記前後方向に移動可能に前記本体部に接続し、前記持手接続部には、前記持手を前記前後方向に移動させる持手位置変更部が設けられ、前記制御部は、前記ロック部によって前記車輪がロックされている期間に、左右一対の前記持手のうちの一方を前記前方に向かって押す操作を前記操作検出部によって検出した場合には、前記車輪が接触する路面と左右一対の前記持手のうちの他方との前記前後方向における相対位置が前記本体部の移動によって変化しないように前記持手位置変更部によって前記他方の前記持手の前記前後方向における位置を変更してもよい。
この形態の歩行支援ロボットによれば、使用者は、平行棒訓練の動作と同じ動作で疑似的な平行棒訓練を実行することができる。
(10)上記形態の歩行支援ロボットにおいて、前記制御部は、前記車輪のロックが解除されている期間における前記本体部の移動距離が予め定められた距離に達した場合には、前記ロック部によって前記車輪をロックしてもよい。
この形態の歩行支援ロボットによれば、使用者と本体部との間隔が遠くなり過ぎることに起因して使用者の体勢が不安定になることを抑制できる。
本開示は、歩行支援ロボット以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、歩行訓練ロボット等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の歩行支援ロボットの概略構成を示す側面図。
図2】第1実施形態の歩行支援ロボットの概略構成を示す正面図。
図3図2における持手接続部のIII-III線断面図。
図4】持手ユニットが後方に向かって移動する様子を示す説明図。
図5】アシストモードの様子を示す説明図。
図6】負荷トレーニングモードの様子を示す説明図。
図7】腕振り歩行トレーニングモードの様子を示す説明図。
図8】第1実施形態の平行棒トレーニング処理の内容を示すフローチャート。
図9】第1実施形態の平行棒トレーニングモードの様子を示すタイムチャート。
図10】第1実施形態の平行棒トレーニングモードの様子を示す第1の説明図。
図11】第1実施形態の平行棒トレーニングモードの様子を示す第2の説明図。
図12】第2実施形態の歩行支援装置の概略構成を示す側面図。
図13】第2実施形態の平行棒トレーニング処理の内容を示すフローチャート。
図14】第2実施形態の平行棒トレーニングモードの様子を示すタイムチャート。
図15】第2実施形態の平行棒トレーニングモードの様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における歩行支援ロボット11の概略構成を示す側面図である。図2は、第1実施形態における歩行支援ロボット11の概略構成を示す正面図である。図1および図2には、互いに直交する3つの座標軸であるX,Y,Z軸を表す矢印が示されている。X軸は歩行支援ロボット11の前後方向に沿った座標軸であり、X軸を表す矢印の指し示す方向は後方である。Y軸は歩行支援ロボット11の左右方向に沿った座標軸であり、Y表す矢印の指し示す方向は右方である。Z軸は歩行支援ロボット11の上下方向に沿った座標軸であり、Z軸を表す矢印の指し示す方向は上方である。X,Y,Z軸を表す矢印は、他の図においても、矢印の指し示す方向が図1図2と対応するように適宜、図示してある。
【0009】
歩行支援ロボット11は、使用者の歩行を支援する機能と、使用者に歩行トレーニングを提供する機能とを有している。歩行支援ロボット11は、例えば、医療施設や介護施設で用いられる。歩行支援ロボット11は、家庭等で用いられてもよい。
【0010】
図1に示すように、歩行支援ロボット11は、本体部20と、一対の持手接続部50と、一対の持手位置変更部60と、一対の持手ユニット70と、一対の走行用モータ80と、バッテリ82と、回生電力消費部83と、一対のロック部85と、制御部90とを備えている。本実施形態では、一対の持手接続部50、一対の持手位置変更部60、一対の持手ユニット70、一対の走行用モータ80、および、一対のロック部85は、左右対称に設けられている。
【0011】
本体部20は、フレーム30と、4つの走行用の車輪40とを有している。図2に示すように、フレーム30は、左右方向に沿って設けられた中央フレーム31と、中央フレーム31の左端部に固定された左フレーム32と、中央フレーム31の右端部に固定された右フレーム33とによって構成されている。図1に示すように、左フレーム32は、前後方向に沿って設けられた下側部分と、下側部分の前端部と後端部との間から上方に向かって突き出した上側部分とを有している。右フレーム33は、左フレーム32とは左右対称に設けられている。左フレーム32には、箱状の収納部35が固定されている。
【0012】
本体部20は、車輪40として、左右対称に設けられた一対の前輪41と、左右対称に設けられた一対の後輪42とを有している。左側の前輪41は、左フレーム32の下側部分の前端部に接続されており、右側の前輪41は、右フレーム33の下側部分の前端部に接続されている。左側の後輪42は、左フレーム32の下側部分の後端部に接続されており、右側の後輪42は、右フレーム33の下側部分の後端部に接続されている。各前輪41および各後輪42は、路面RSに接触する。本実施形態では、各前輪41は、トウの向きを前後左右に変更可能に構成されている。各後輪42は、トウの向きが前方に固定されるように構成されている。なお、各後輪42は、トウの向きを前後左右に変更可能に構成されてもよい。車輪40の数は、4つに限られず、例えば、3つでもよいし、5つ以上でもよい。
【0013】
持手接続部50は、本体部20と持手ユニット70とを接続している。持手接続部50は、前後方向に沿って設けられた箱状のケース51と、ケース51の前端部と後端部との間から下方に向かって突き出した固定部58と、ケース51の後端部から後方に向かって突き出したシャフト55と、後述するシャフト支持部57と、持手位置変更部60とを有している。
【0014】
図2に示すように、左側の持手接続部50に設けられた固定部58は、ネジ39によって、左フレーム32の上端部に固定されており、右側の持手接続部50に設けられた固定部58は、ネジ39によって、右フレーム33の上端部に固定されている。本実施形態では、左右の持手接続部50同士は、連結部材59によって連結されている。
【0015】
図1に示すように、シャフト55は、前後方向に沿って設けられた棒状部材である。シャフト55は、ケース51の後端部に設けられた貫通孔に挿入されている。シャフト55の前端部は、ケース51内に収容されており、シャフト55の後端部は、後方に向かってケース51から突き出している。シャフト55の後端部には、持手ユニット70が固定されている。本実施形態では、シャフト55および持手ユニット70は、ケース51および本体部20に対して前後方向に移動することができる。持手位置変更部60は、前後方向におけるシャフト55および持手ユニット70の位置を変更する。持手位置変更部60の構成については後述する。
【0016】
持手ユニット70は、第1持手71と、第2持手72と、ブレーキレバー73とを有している。使用者は、第1持手71または第2持手72を把持した状態で、歩行支援ロボット11を用いることができる。
【0017】
第1持手71は、シャフト55の後端部に固定されている。第1持手71は、前後方向に沿って設けられた棒状の外形形状を有しており、シャフト55の後端部から後方に向かって突き出すように設けられている。
【0018】
第2持手72は、第1持手71の前端部に固定されている。第2持手72は、上下方向に沿って設けられた棒状の外形形状を有しており、第1持手71の前端部から上方に向かって突き出すように設けられている。
【0019】
ブレーキレバー73は、第1持手71の前端部に固定されている。ブレーキレバー73は、第1持手71に沿って設けられている。ブレーキレバー73は、ブレーキワイヤ74によって、後輪42を制動する図示しない摩擦ブレーキに接続されている。
【0020】
走行用モータ80は、左フレーム32の後端部と右フレーム33の後端部とに1つずつ設けられている。走行用モータ80は、動作モードとして、駆動輪である後輪42を駆動する力行モードと、後輪42を制動する回生モードとを有している。本実施形態では、左側の走行用モータ80は、力行モードで左側の後輪42を駆動し、回生モードで左側の後輪42を制動する。右側の走行用モータ80は力行モードで右側の後輪42を駆動し、回生モードで右側の後輪42を制動する。なお、走行用モータ80が2つ設けられずに、1つの走行用モータ80によって左右の後輪42が駆動および制動されてもよい。
【0021】
本実施形態では、走行用モータ80は、ACサーボモータである。走行用モータ80には、走行用モータ80の出力軸の回転角度を検出する回転角度検出器が内蔵されている。回転角度検出器は、例えば、ロータリエンコーダやホールセンサによって構成されている。走行用モータ80に回転角度検出器が内蔵されずに、コイルに発生する誘起電圧を用いて出力軸の回転角度が算出されてもよい。
【0022】
バッテリ82は、収納部35に収納されている。バッテリ82として、例えば、リチウムイオン二次電池やニッケル水素蓄電池などの二次電池を用いることができる。バッテリ82は、インバータなどの電源回路を介して左右の走行用モータ80に電気的に接続されている。本実施形態では、バッテリ82から出力された直流電力は、パルス幅変調によって交流電力に変換された後、力行モードで動作している左右の走行用モータ80に供給される。
【0023】
回生電力消費部83は、収納部35に収納されている。回生電力消費部83は、左右の走行用モータ80に電気的に接続されており、回生モードで動作している左右の走行用モータ80によって発電された回生電力を消費する。回生電力消費部83として、例えば、セメント抵抗を用いることができる。なお、バッテリ82が満充電でない場合には、左右の走行用モータ80によって発電された回生電力は、回生電力消費部83によって消費されずにバッテリ82に充電されてもよい。
【0024】
ロック部85は、車輪40の回転をロックする。本実施形態では、ロック部85は、走行用モータ80である。走行用モータ80は、走行用モータ80の出力軸の回転角度の変化を抑制するサーボロック機能を有しており、サーボロック機能によって車輪40のうちの後輪42をロックする。また、ロック部85は、車輪40の回転が完全にロックされた状態と車輪40の回転のロックが解除された状態とを切り替えるだけではなく、車輪40の回転を規制することによって制動力を発生させてもよい。この場合、ロック部85による制動力の大きさは、制御部90の制御下で調整されてもよい。なお、ロック部85は、走行用モータ80ではなく、例えば、電動ブレーキによって構成されてもよい。ロック部85は、後輪42をロックせずに前輪41をロックするように構成されてもよいし、前輪41と後輪42との両方をロックするように構成されてもよい。
【0025】
制御部90は、収納部35内に収納されている。制御部90は、1つまたは複数のプロセッサと、主記憶装置を含んだ記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インタフェースとを備えるコンピュータによって構成されている。本実施形態では、制御部90は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサが実行することによって、左右の走行用モータ80、左右のロック部85、および、左右の持手位置変更部60を制御する。なお、制御部90は、コンピュータではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0026】
図3は、図2におけるIII-III線断面図である。図3には、ケース51内の構成が模式的に表されている。ケース51内には、上述したシャフト55と、シャフト支持部57と、持手位置変更部60と、操作検出部65とが設けられている。図3には、本体部20に対して前後方向に移動することができるシャフト55および持手ユニット70が最も前方に移動した状態が表されている。以下の説明では、最も前方に移動した際のシャフト55および持手ユニット70の位置を基準位置と呼ぶ。
【0027】
ケース51は、前壁52と、後壁53と、隔壁54とを有している。前壁52は、ケース51の前端部に設けられており、後壁53は、ケース51の後端部に設けられている。隔壁54は、前壁52と後壁53との間に設けられており、ケース51内の空間を前後に区画している。後壁53および隔壁54には、シャフト55が貫通する貫通孔が設けられている。
【0028】
シャフト55の前端部には、シャフト55の外周に向かって突き出したフランジ部56が設けられている。フランジ部56は、ケース51の前壁52と隔壁54との間に配置されている。フランジ部56の大きさは、隔壁54の貫通孔の大きさよりも大きい。フランジ部56が設けられることよって、ケース51からのシャフト55の脱落が抑制されている。シャフト55の下面には、前後方向に沿ってラックギア63が設けられている。
【0029】
シャフト支持部57は、隔壁54と後壁53との間に配置されており、ケース51に接続されている。シャフト支持部57は、前後方向に沿ってシャフト55が移動することができるように、シャフト55を支持している。本実施形態では、シャフト支持部57は、3つのローラーによって構成されている。各ローラーは、シャフト55の前端部と後端部との間の部分を支持している。3つのローラーのうちの1つは、シャフト55の下側の面に接触しており、3つのローラーのうちの2つは、シャフト55の上側の面に接触している。
【0030】
持手位置変更部60は、シャフト55を移動させる駆動力を発生させる持手駆動モータ61と、持手駆動モータ61からの駆動力をシャフト55に伝えるピニオンギア62とを有している。
【0031】
本実施形態では、持手駆動モータ61は、ACサーボモータである。持手駆動モータ61には、持手駆動モータ61の出力軸の回転角度を検出する回転角度検出器が内蔵されている。回転角度検出器は、例えば、ロータリエンコーダやホールセンサによって構成されている。持手駆動モータ61に回転角度検出器が内蔵されずに、コイルに発生する誘起電圧を用いて出力軸の回転角度が算出されてもよい。持手駆動モータ61は、インバータなどの電源回路を介してバッテリ82に電気的に接続されている。本実施形態では、バッテリ82から出力された直流電力は、パルス幅変調によって交流電力に変換された後、持手駆動モータ61に供給される。
【0032】
ピニオンギア62は、隔壁54と後壁53との間に配置されている。ピニオンギア62は、持手駆動モータ61の出力軸の先端部に固定されており、持手駆動モータ61の出力軸とともに回転する。ピニオンギア62は、シャフト55に設けられたラックギア63に噛み合わされている。ピニオンギア62が回転することによって、シャフト55は前後方向に移動する。
【0033】
操作検出部65は、持手ユニット70に加えられる操作を検出する。本実施形態では、操作検出部65は、持手ユニット70に加えられる前後方向の力を検出することによって、持手ユニット70を前方に向かって押す操作と、持手ユニット70を後方に向かって引く操作とを検出する。
【0034】
本実施形態では、操作検出部65は、持手駆動モータ61によって構成されている。持手駆動モータ61は、持手駆動モータ61の出力軸の回転速度の変化を抑制するゼロ速度制御機能、および、持手駆動モータ61の出力軸の回転角度の変化を抑制するサーボロック機能を有している。持手駆動モータ61のゼロ速度制御またはサーボロック機能がオンにされた状態でシャフト55および持手ユニット70が移動すると、バッテリ82から持手駆動モータ61に供給される電流値が変化する。操作検出部65は、持手駆動モータ61に供給される電流値の変化によって、持手ユニット70に加えられた前後方向の力を検出することができる。操作検出部65は、持手駆動モータ61に内蔵された回転角度検出器によって、本体部20に対する持手ユニット70の位置、および、本体部20に対する持手ユニット70の移動速度を検出することもできる。操作検出部65によって検出された操作に関する情報は制御部90に送信される。なお、操作検出部65は、持手駆動モータ61ではなく、例えば、持手ユニット70に加えられる前後方向の力を検出する力覚センサによって構成されてもよい。
【0035】
図4は、持手ユニット70が後方に向かって移動する様子を示す説明図である。シャフト55および持手ユニット70は、持手駆動モータ61の回転によって基準位置よりも後方に移動する。シャフト55および持手ユニット70は、使用者に引っ張られて基準位置よりも後方に移動することもできる。前後方向における持手ユニット70およびシャフト55の移動可能距離は、前後方向における第1持手71の長さよりも長い。持手ユニット70およびシャフト55の移動可能距離は、200ミリメートル以上であることが好ましく、300ミリメートル以上であることがより好ましく、400ミリメートル以上であることがさらに好ましい。
【0036】
図5は、アシストモードの様子を示す説明図である。図6は、負荷トレーニングモードの様子を示す説明図である。図7は、腕振り歩行トレーニングモードの様子を示す説明図である。本実施形態では、歩行支援ロボット11は、動作モードとして、アシストモード、負荷トレーニングモード、腕振り歩行トレーニングモード、および、後述する平行棒トレーニングモードを有している。
【0037】
図5に示すように、アシストモードでは、本体部20に対する持手ユニット70の位置が基準位置に固定されており、走行用モータ80は力行モードで運転される。本実施形態では、本体部20に対する持手ユニット70の位置は、持手駆動モータ61のサーボロック機能によって基準位置に固定される。アシストモードでは、歩行支援ロボット11は、第1持手71または第2持手72を把持している使用者Pに押されて、走行抵抗Frを受けながら走行する。この際、歩行支援ロボット11は、走行用モータ80によって所定の推進力Fpを発生させることで、歩行支援ロボット11を押す使用者Pの負担を軽減する。推進力Fpの大きさは、制御部90によって調整される。制御部90は、例えば、第1持手71または第2持手72を介して使用者Pから加えられる前向きの力Ffや本体部20の走行速度に応じて推進力Fpの大きさを調整する。使用者Pは、アシストモードの歩行支援ロボット11によって体を支えながら歩行することができる。
【0038】
図6に示すように、負荷トレーニングモードでは、本体部20に対する持手ユニット70の位置が基準位置に固定されており、走行用モータ80は回生モードで運転される。本実施形態では、本体部20に対する持手ユニット70の位置は、持手駆動モータ61のサーボロック機能によって基準位置に固定される。負荷トレーニングモードでは、歩行支援ロボット11は、第1持手71または第2持手72を把持している使用者Pに押されて、走行抵抗Frを受けながら走行する。この際、歩行支援ロボット11は、走行用モータ80によって所定の制動力Fbを発生させることで、歩行支援ロボット11を押す使用者Pに負荷を与える。制動力Fbの大きさは、制御部90によって調整される。制御部90は、例えば、第1持手71または第2持手72を介して使用者Pから加えられる前向きの力Ffや本体部20の走行速度に応じて制動力Fbの大きさを調整する。使用者Pは、負荷トレーニングモードの歩行支援ロボット11を押しながら歩行することによって、足腰を鍛えることができる。
【0039】
図7に示すように、腕振り歩行トレーニングモードでは、本体部20に対する持手ユニット70の位置の固定が解除されており、走行用モータ80は力行モードで運転される。腕振り歩行トレーニングモードでは、歩行支援ロボット11は、第2持手72を把持している使用者Pの歩行速度と同じ走行速度で走行する。制御部90は、持手ユニット70のストローク量や本体部20に対する持手ユニット70の移動速度に応じて走行速度を調整する。持手ユニット70のストローク量とは、基準位置からの持手ユニット70の移動量のことを意味する。使用者Pは、腕振り歩行トレーニングモードの歩行支援ロボット11を用いることによって、自然な歩行動作を訓練することができる。ここでいう自然な歩行動作とは、左右のうちの一方の腕を前方に振り、他方の腕を後方に振るという腕振り動作を左右交互に繰り返しながら歩く動作のことを意味する。
【0040】
本実施形態では、歩行支援ロボット11は、動作モードとして、アシストモード、負荷トレーニングモード、および、腕振り歩行トレーニングモードの他に、平行棒トレーニングモードを有している。
【0041】
図8は、本実施形態における平行棒トレーニング処理の内容を示すフローチャートである。この処理は、例えば、歩行支援ロボット11に設けられた平行棒トレーニングモード開始ボタンが押された場合に、制御部90によって実行される。
【0042】
まず、ステップS110にて、制御部90は、左右のロック部85によって左右の後輪42をロックする。上述したとおり、本実施形態では、左右のロック部85は、サーボロック機能を有する走行用モータ80である。制御部90は、左右の走行用モータ80のサーボロックをオンにすることによって、左右の後輪42をロックする。
【0043】
次に、ステップS120にて、制御部90は、予め定められた前進操作を持手ユニット70に加えられたか否かを判定する。前進操作とは、歩行支援ロボット11を前進させるための操作である。本実施形態では、前進操作は、左右の持手ユニット70のうちの一方が基準位置に配置された状態で上記一方の持手ユニット70を前方に向かって押し続ける操作である。上記一方の持手ユニット70が基準位置に配置された状態で、上記一方の持手ユニット70に加えられる操作を検出するための操作検出部65によって前方に向かう所定値以上の力が検出された場合に、制御部90は、持手ユニット70に前進操作を加えられたと判断する。
【0044】
ステップS120にて持手ユニット70に前進操作を加えられたと判断された場合、ステップS122にて、制御部90は、左右の後輪42のロックを解除する。本実施形態では、制御部90は、左右の走行用モータ80のサーボロックをオフにすることによって、左右の後輪42のロックを解除する。
【0045】
左右の後輪42のロックが解除された後、ステップS125にて、制御部90は、左右の走行用モータ80を制御することによって本体部20を前進させる。制御部90は、上記一方の持手ユニット70に前進操作を加えられ続けている期間、本体部20を前進させ続ける。この際、制御部90は、左右の持手ユニット70のうち、上記一方とは反対側の他方の持手ユニット70の路面RSに対する相対位置が変化しないように他方の持手ユニット70の位置を変更する持手駆動モータ61を制御することによって、他方の持手ユニット70を本体部20に対して後方に移動させる。
【0046】
本実施形態では、ステップS125にて、制御部90は、本体部20の前進距離が第1上限距離を超えないように左右の走行用モータ80を制御する。第1上限距離は、持手ユニット70が基準位置から後方に移動可能な最大距離である。第1上限距離は、制御部90の記憶装置に予め記憶されている。制御部90は、走行用モータ80に内蔵された回転角度検出器によって計測される後輪42の回転角度と、記憶装置に予め記憶された後輪42の直径とを用いて、本体部20の前進距離を算出する。上記一方の持手ユニット70に前進操作を加えられ続けていたとしても、本体部20の前進距離が第1上限距離に達した場合には、制御部90は、本体部20の前進を停止させる。
【0047】
さらに、本実施形態では、第1上限距離よりも短い第2上限距離を設けることができる。第2上限距離が設けられている場合には、制御部90は、本体部20の前進距離が第2上限距離を超えないように左右の走行用モータ80を制御する。第2上限距離は、制御部90の記憶装置に予め記憶させることができる。本実施形態では、第2上限距離として、使用者Pの歩幅に相当する距離が記憶されている。第2上限距離は、例えば、0.4メートルである。一般に、使用者Pの年齢が増加するほど、使用者Pの歩幅は狭くなるので、第2上限距離は、使用者Pの年齢等に応じて変更できるように制御部90の記憶装置に記憶されている。
【0048】
また、本実施形態では、左右の後輪42のロックが解除されている期間に、予め定められた異常操作が持手ユニット70に加えられたことを検出した場合には、制御部90は、本体部20の前進を停止させる。制御部90の記憶装置には、使用者Pがバランスを崩して不安定な体勢になった際に持手ユニット70に加えられる所定の操作が異常操作として予め記憶されている。本実施形態では、上記一方の持手ユニット70が所定値以上の大きさの力で前方に向かって押される操作、上記一方の持手ユニット70が所定値以上の大きさの加速度で前方に向かって押される操作、および、左右の持手ユニット70の両方が後方に向かって引かれる操作が異常操作として記憶されている。
【0049】
本体部20の前進が停止された後、ステップS128にて、制御部90は、左右のロック部85によって左右の後輪42を再びロックする。その後、制御部90は、後述するステップS140に処理を進める。
【0050】
ステップS120にて持手ユニット70に前進操作を加えられたと判断されなかった場合、ステップS130にて、制御部90は、予め定められた方向変換操作を持手ユニット70に加えられたか否かを判定する。方向変換操作とは、歩行支援ロボット11を方向変換させるための操作である。本実施形態では、方向変換操作は、左右の持手ユニット70のうちの一方を所定時間内に前方に向かって3回押す操作である。前方に向かう所定値以上の力が操作検出部65によって所定時間内に3回検出された場合に、制御部90は、持手ユニット70に方向変換操作を加えられたと判断する。
【0051】
ステップS130にて持手ユニット70に方向変換操作を加えられたと判断されなかった場合、制御部90は、左右の後輪42のロックを維持したまま、ステップS140に処理を進める。ステップS130にて持手ユニット70に方向変換操作を加えられたと判断された場合、ステップS132にて、制御部90は、左右の後輪42のロックを解除する。
【0052】
左右の後輪42のロックが解除された後、ステップS135にて、制御部90は、左右の走行用モータ80を制御することによって歩行支援ロボット11を方向変換させる。左側の持手ユニット70を3回押す方向変換操作が加えられた場合には、制御部90は、右側の後輪42をロックした状態で左側の後輪42を回転させることによって、上方から視て時計回りに、歩行支援ロボット11を180度旋回させる。右側の持手ユニット70を3回押す方向変換操作が加えられた場合には、制御部90は、左側の後輪42をロックした状態で右側の後輪42を回転させることによって、上方から視て反時計回りに、歩行支援ロボット11を180度旋回させる。
【0053】
歩行支援ロボット11の方向変換が終了した後、ステップS138にて、制御部90は、左右のロック部85によって左右の後輪42を再びロックする。その後、制御部90は、ステップS140に処理を進める。
【0054】
ステップS140にて、制御部90は、平行棒トレーニング処理を終了するか否かを判定する。本実施形態では、歩行支援ロボット11に設けられたモード切替ボタンが押された場合に、制御部90は、平行棒トレーニング処理を終了すると判断する。ステップS140にて平行棒トレーニング処理を終了すると判断されなかった場合、制御部90は、ステップS120に処理を戻して、ステップS140にて平行棒トレーニング処理を終了すると判断されるまでステップS120からステップS140までの処理を繰り返す。ステップS140にて平行棒トレーニング処理を終了すると判断された場合、制御部90は、この処理を終了する。その後、制御部90は、左右の後輪42のロックを解除してもよいし、アシストモード等での動作が開始されるまでの間、左右の後輪42のロックを維持してもよい。
【0055】
図9は、図8に示した平行棒トレーニング処理に従って実行される平行棒トレーニングモードの様子を模式的に示すタイムチャートである。図10は、平行棒トレーニングモードの様子を模式的に示す第1の説明図である。図11は、平行棒トレーニングモードの様子を模式的に示す第2の説明図である。図9には、上から順に、本体部20の走行速度と、左右の後輪42のロックのオンオフ状態と、左右の持手ユニット70のストローク量と、使用者Pの体勢とが表されている。本体部20の走行速度、および、左右の持手ユニット70のストローク量については、図9の上側を正の向きとして表されている。左右の持手ユニット70のストローク量については、持手ユニット70の基準位置をゼロとして、本体部20に対して後方に移動した持手ユニット70の移動量を正の値として表されている。図10および図11には、本体部20が前進する際に、左右の持手ユニット70が本体部20に対して移動する様子が表されている。図10および図11では、左右の持手接続部50を区別するために、左側の持手接続部50の符号の末尾には「L」の文字が付され、右側の持手接続部50の符号の末尾には「R」の文字が付されており、左右の持手ユニット70を区別するために、左側の持手ユニット70の符号の末尾には「L」の文字が付され、右側の持手ユニット70の符号の末尾には「R」の文字が付されている。
【0056】
図9に示すように、時刻t11よりも前の期間では、本体部20の走行速度はゼロであり、左右の後輪42は左右のロック部85によってロックされており、左右の持手ユニット70のストローク量はゼロであり、使用者Pの体勢は両足立ちである。
【0057】
時刻t11にて、図10の(A)に示すように、使用者Pによって左側の持手ユニット70が前方に押されると、左側の操作検出部65によって前進操作が検出される。前進操作が検出されると、制御部90は、左右の後輪42のロックを解除して、本体部20の前進を開始させる。制御部90は、本体部20の前進を開始させるのと同時に、右側の持手ユニット70の路面RSに対する相対位置が変化しないように右側の持手接続部50の伸長を開始させる。なお、図9における三角形印は、前進操作が検出され始めたタイミングを表している。
【0058】
時刻t11よりも後、かつ、時刻t12よりも前の期間では、図10の(B)に示すように、使用者Pによって左側の持手ユニット70が前方に押され続けているので、左側の操作検出部65によって前進操作が検出され続ける。前進操作が検出され続ける期間、制御部90は、本体部20を前進させ続け、右側の持手ユニット70の路面RSに対する相対位置が変化しないように右側の持手接続部50を伸長させ続ける。
【0059】
時刻t12にて、図10の(C)に示すように、使用者Pによる左側の持手ユニット70の前方への押し込みが停止されて、左側の操作検出部65によって前進操作が検出されなくなる。前進操作が検出されなくなると、制御部90は、本体部20の前進を停止させて、左右の後輪42をロックする。本体部20の前進を停止させるのと同時に、制御部90は、右側の持手接続部50の伸長を停止させる。
【0060】
時刻t12よりも後、かつ、時刻t13よりも前の期間に、使用者Pは、片足を路面RSから離して、一歩前進する。本実施形態では、時刻t13から時刻t14までの期間、左右の後輪42がロックされているので、使用者Pは、片足立ちの際、路面RSに対して静止した左右の第1持手71に体重をかけて体を支えることができる。時刻t13までに、使用者Pの体勢は、再び両足立ちになる。
【0061】
時刻t13にて、図11の(D)に示すように、右側の持手ユニット70は、使用者Pによって前方に押され始める。なお、図11の(D)に示す左右の持手接続部50の前端部の位置は、図10の(C)に示す左右の持手接続部50の前端部の位置と同じである。図11の(D)に示す左側の持手ユニット70の後端部の位置は、図10の(C)に示す左側の持手ユニット70の後端部の位置と同じであり、図11の(D)に示す右側の持手ユニット70の後端部の位置は、図10の(C)に示す右側の持手ユニット70の後端部の位置よりも前方に移動している。
【0062】
時刻t13よりも後、かつ、時刻t14よりも前の期間では、右側の持手ユニット70は、使用者Pによって前方に押され続ける。制御部90は、右側の持手接続部50を縮小させる。左右の後輪42がロックされているので、本体部20は静止している。
【0063】
時刻t14にて、図11の(E)に示すように、右側の持手接続部50のストローク量がゼロになる。右側の持手接続部50のストローク量がゼロになってからも右側の持手ユニット70が押されることによって、右側の操作検出部65によって前進操作が検出される。前進操作が検出されると、制御部90は、左右の後輪42のロックを解除して、本体部20の前進を開始させる。制御部90は、本体部20の前進を開始させるのと同時に、左側の持手ユニット70の路面RSに対する相対位置が変化しないように、左側の持手接続部50の伸長を開始させる。
【0064】
時刻t14よりも後、かつ、時刻t15よりも前の期間では、図11の(F)に示すように、右側の持手ユニット70が使用者Pによって押され続けているので、右側の操作検出部65によって前進操作が検出され続ける。前進操作が検出され続ける期間、制御部90は、本体部20を前進させ続け、左側の持手接続部50を伸長させ続ける。
【0065】
時刻t15にて、使用者Pによる右側の持手ユニット70の前方への押し込みが停止されて、右側の操作検出部65によって前進操作が検出されなくなる。前進操作が検出されなくなると、制御部90は、本体部20の前進を停止させて、左右の後輪42をロックする。本体部20の前進を停止するのと同時に、制御部90は、左側の持手接続部50の伸長を停止させる。
【0066】
時刻t15よりも後、かつ、時刻t16よりも前の期間に、使用者Pは、片足を路面RSから離して、一歩前進する。本実施形態では、時刻t15から時刻t16までの期間、左右の後輪42がロックされているので、使用者Pは、片足立ちの際、静止した左右の第1持手71によって体を支えることができる。その後、使用者Pの体勢は、再び両足立ちになる。
【0067】
時刻t16にて、左側の持手ユニット70は、使用者Pによって前方に押され始める。時刻t16よりも後の期間に、左側の持手ユニット70が使用者Pによって前方に押され続けることによって、左側の持手接続部50が縮小されて、左側の持手接続部50のストローク量はゼロになる。その後、時刻t11からの動作が繰り返される。
【0068】
以上で説明した本実施形態の歩行支援ロボット11によれば、制御部90は、左右のロック部85によって左右の後輪42がロックされているロック期間に前進操作が操作検出部65によって検出された場合には、各ロック部85による各後輪42のロックを一時的に解除して本体部20を前進させた後、各ロック部85によって各後輪42を再びロックし、ロック期間に前進操作が操作検出部65によって検出されなかった場合には、各ロック部85による各後輪42のロックを維持する。そのため、使用者Pは、ロック期間に、静止した左右の第1持手71に体重をかけて十分に体を支えながら片足を前に動かすことができ、第1持手71に前進操作を加えることによって各後輪42のロックを一時的に解除して本体部20を前進させることができる。したがって、使用者Pは、静止した左右の第1持手71で体を支えながらの歩行と、前進操作とを交互に繰り返すことによって、疑似的な平行棒訓練を実行することができる。特に、本実施形態では、制御部90は、ロック期間に、左右一対の第1持手71のうちの一方に前進操作を加えられたことが操作検出部65によって検出された場合には、左右の走行用モータ80によって本体部20を前進させるとともに、路面RSと他方の第1持手71との相対位置が変化しないように持手駆動モータ61を制御して他方の第1持手71を後方に移動させる。そのため、使用者Pは、一方の手を前方に移動させている間、第1持手71を把持した他方の手を静止させておくことができるので、平行棒訓練の動作と同じ動作で疑似的な平行棒訓練を実行することができる。したがって、使用者Pは、一方の手を前方に移動させる際に体が前方に傾くことを抑制しつつ安定した体勢で疑似的な平行棒訓練を実行することができる。
【0069】
また、本実施形態では、走行用モータ80の駆動トルクによって後輪42を回転させて本体部20を移動させることができるので、本体部20を移動させるための使用者Pの負担を軽減できる。
【0070】
また、本実施形態では、ロック部85は、走行用モータ80によって構成されており、走行用モータ80は、のサーボロック機能によって後輪42をロックする。そのため、少ない部品点数で後輪42をロックすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、使用者Pがブレーキレバー73を操作しなくても、制御部90は、各ロック部85を制御して自動で各後輪42をロックする。そのため、使用者Pは、第1持手71をしっかりと把持して体を支えることができる。
【0072】
また、本実施形態では、制御部90は、各ロック部85による各後輪42のロックが解除されているロック解除期間における本体部20の前進距離が第1上限距離および第2上限距離を超えないように走行用モータ80を制御する。そのため、使用者Pと本体部20との間隔が遠くなり過ぎることに起因して使用者Pの体勢が不安定になることを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態では、一方の第1持手71が所定値以上の大きさの力で前方に向かって押される操作、一方の第1持手71が所定値以上の大きさの加速度で前方に向かって押される操作、および、左右の第1持手71の両方が後方に向かって引かれる操作が異常操作として制御部90に記憶されており、ロック解除期間に上述した異常操作のうちの少なくともいずれか1つが操作検出部65によって検出された場合には、制御部90は、各ロック部85によって各後輪42をロックする。そのため、ロック解除期間に使用者Pがバランスを崩したとしても、使用者Pがバランスを崩した際に第1持手71に加えられる操作によって各後輪42をロックすることができるので、使用者Pが転倒することを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態では、左側の第1持手71を3回連続で押す操作、または、右側の第1持手71を3回連続で押す操作が操作検出部65によって検出された場合には、制御部90は、左右の走行用モータ80を制御することによって歩行支援ロボット11を方向変換させる。そのため、使用者Pは、左右の第1持手71から手を離さずに歩行支援ロボット11とともに方向変換することができる。特に、本実施形態では、左側の第1持手71または右側の第1持手71を3回連続で押す操作が検出された場合に、制御部90は、歩行支援ロボット11を方向変換させるので、左側の第1持手71または右側の第1持手71を1回あるいは2回押す操作が検出された場合に歩行支援ロボット11を方向変換させる形態に比べて、誤操作により意図せず方向変換が開始されることを抑制でき、左側の第1持手71または右側の第1持手71を4回以上押す操作が検出された場合に歩行支援ロボット11を方向変換させる形態に比べて、操作が煩雑になることを抑制できる。
【0075】
B.第2実施形態:
図12は、第2実施形態における歩行支援ロボット12の概略構成を示す側面図である。第2実施形態の歩行支援ロボット12では、左右の持手ユニット70が、前後方向に伸縮しない持手接続部150によって本体部20に接続されていることが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、図1に示した第1実施形態の歩行支援ロボット11と同じである。
【0076】
左右の持手接続部150は、左右対称に構成されている。各持手接続部150は、ケース151と、ケース151の前端部と後端部との間から下方に向かって突き出した固定部158と、ケース151の後端部から後方に向かって突き出したシャフト155とによって構成されている。各持手接続部150は、上述したとおり、前後方向に伸縮しない。そのため、本実施形態では、各持手ユニット70は、本体部20に対して相対移動しない。各持手接続部150には、図1に示した持手位置変更部60が設けられていない。左側の持手接続部150に設けられた固定部158は、ネジ39によって、左フレーム32の上端部に固定されており、右側の持手接続部150に設けられた固定部158は、ネジ39によって、右フレーム33の上端部に固定されている。
【0077】
各持手接続部150には、持手ユニット70を前後方向に押す操作を検出する操作検出部165が設けられている。本実施形態では、各操作検出部165は、持手ユニット70に加えられる前後方向の力を検出する力覚センサによって構成されている。
【0078】
制御部90の記憶装置には、後述する待機時間と使用者の歩幅とが記憶されている。待機時間は、制御部90に予め記憶されている。本実施形態では、制御部90は、使用者の歩幅を取得する歩幅取得部95を有している。歩幅取得部95は、走行用モータ80に内蔵された回転角度検出器によって後輪42の回転速度を取得し、後輪42の回転速度と後輪42の直径とを用いて、本体部20の移動速度を取得する。使用者が歩行支援ロボット12を押しながら一歩前進した場合、本体部20の移動速度は、ゼロから増加した後、減少して再びゼロになる。歩幅取得部95は、本体部20の移動速度がゼロから増加に転じてから再びゼロになるまでの期間に本体部20が移動した距離を使用者の歩幅として取得する。歩幅取得部95は、取得した歩幅を制御部90の記憶装置に記憶させる。使用者は、歩行支援ロボット12を用いて所定距離歩行することによって、制御部90に歩幅を記憶させることができる。なお、制御部90の記憶装置のことを記憶部と呼ぶことがある。
【0079】
本実施形態では、歩行支援ロボット12は、動作モードとして、アシストモードと、負荷トレーニングモードと、平行棒トレーニングモードとを有している。なお、本実施形態では、歩行支援ロボット12は、腕振り歩行トレーニングモードを有していない。
【0080】
図13は、第2実施形態における平行棒トレーニング処理の内容を示すフローチャートである。まず、ステップS210にて、制御部90は、左右のロック部85によって左右の後輪42をロックする。
【0081】
次に、ステップS215にて、制御部90は、待機時間が経過するまで処理を待機する。つまり、本実施形態では、制御部90は、各ロック部85によって各後輪42をロックしてから待機時間が経過するまでの期間、各後輪42のロックを維持する。待機時間は、例えば、0.5秒である。なお、待機時間を変更するための操作ボタンが歩行支援ロボット12に設けられて、使用者等によって待機時間が変更されてもよい。
【0082】
待機時間が経過した後、ステップS220にて、制御部90は、前進操作を持手ユニット70に加えられたか否かを判定する。本実施形態では、前方に向かう所定値以上の力が操作検出部165によって検出された場合に、制御部90は、持手ユニット70に前進操作を加えられたと判断する。
【0083】
ステップS220にて持手ユニット70に前進操作を加えられたと判断された場合、制御部90は、ステップS222にて、各後輪42のロックを解除した後、ステップS225にて、各走行用モータ80を力行モードで運転することによって後輪42に駆動トルクを加えて、本体部20を前進させる。本実施形態では、制御部90は、所定速度で、使用者の歩幅に応じた距離、本体部20を前進させる。持手ユニット70に前進操作が加え続けられなくても、制御部90は、予め記憶された使用者の歩幅と同じ距離、本体部20を前進させる。使用者の歩幅は、例えば、0.4メートルである。なお、持手ユニット70に前進操作を加えられ続けた場合には、制御部90は、走行用モータ80を回生モードで運転することによって、本体部20の移動速度が所定速度を超えないように後輪42に制動トルクを加えながら、使用者の歩幅に応じた距離、本体部20を前進させてもよい。
【0084】
本実施形態では、各後輪42のロックが解除されている期間に、予め定められた異常操作が持手ユニット70に加えられたことを検出した場合には、制御部90は、本体部20の前進を停止させる。本実施形態では、左右の持手ユニット70の両方が後方に向かって引かれる操作が異常操作として制御部90に記憶されている。
【0085】
本体部20の前進が停止された後、ステップS228にて、制御部90は、各ロック部85によって各後輪42を再びロックする。その後、制御部90は、後述するステップS240に処理を進める。
【0086】
ステップS220にて持手ユニット70に前進操作を加えられたと判断されなかった場合、ステップS230にて、制御部90は、予め定められた方向変換操作を持手ユニット70に加えられたか否かを判定する。本実施形態では、方向変換操作は、左右の持手ユニット70の一方が前方に押されるとともに他方が後方に引かれる操作である。
【0087】
ステップS230にて持手ユニット70に方向変換操作を加えられたと判断されなかった場合、制御部90は、各後輪42のロックを維持したまま、ステップS240に処理を進める。ステップS230にて持手ユニット70に方向変換操作を加えられたと判断された場合、ステップS232にて、制御部90は、各後輪42のロックを解除する。
【0088】
各後輪42のロックが解除された後、ステップS235にて、制御部90は、各走行用モータ80を制御することによって歩行支援ロボット12を方向変換させる。左側の持手ユニット70が押されて、右側の持手ユニット70が引かれた場合、制御部90は、上側から視て、時計回りに180度旋回させる。一方、右側の持手ユニット70が押されて、左側の持手ユニット70が引かれた場合、制御部90は、上側から視て、反時計回りに180度旋回させる。
【0089】
歩行支援ロボット12の方向変換が終了した後、ステップS238にて、制御部90は、各ロック部85によって各後輪42を再びロックする。その後、制御部90は、ステップS240に処理を進める。
【0090】
ステップS240にて、制御部90は、平行棒トレーニング処理を終了するか否かを判定する。ステップS240にて平行棒トレーニング処理を終了すると判断されなかった場合、制御部90は、ステップS215に処理を戻して、ステップS240にて平行棒トレーニング処理を終了すると判断されるまでステップS215からステップS240までの処理を繰り返す。ステップS240にて平行棒トレーニング処理を終了すると判断された場合、制御部90は、この処理を終了する。
【0091】
図14は、第2実施形態における平行棒トレーニングモードの様子を模式的に示すタイムチャートである。図15は、第2実施形態における平行棒トレーニングモードの様子を模式的に示す説明図である。図14には、上から順に、本体部20の走行速度と、左右の後輪42のロックのオンオフ状態と、使用者Pの体勢とが表されている。
【0092】
図14に示すように、時刻t21よりも前の期間では、本体部20の走行速度はゼロであり、左右の後輪42は左右のロック部85によってロックされており、使用者の体勢は両足立ちである。この際、図15の上段に示すように、使用者Pは、左右の肘を曲げて左右の第1持手71を把持した状態である。
【0093】
時刻t21にて、使用者Pによって左右の持手ユニット70が前方に押されると、操作検出部165によって前進操作が検出される。前進操作が検出されると、制御部90は、各後輪42のロックを解除して、本体部20の前進を開始させる。時刻t21よりも後、かつ、時刻t22よりも前の期間では、本体部20は前進し続ける。
【0094】
時刻t22にて、制御部90は、各ロック部85によって各後輪42をロックする。時刻t22では、図15の中段に示すように、使用者Pは、左右の肘を伸ばして左右の第1持手71を把持した状態になる。
【0095】
時刻t22よりも後、かつ、時刻t23よりも前の期間に、図15の下段に示すように、使用者Pは、片足を前に出して一歩前進する。この際、使用者Pは、左右の第1持手71を把持して体を支えながら片足立ちの状態になる。時刻t23までに使用者Pは、両足立ちに戻る。時刻t23にて、使用者Pによって再び左右の持手ユニット70が前方に押されると、操作検出部165によって前進操作が検出される。
【0096】
以上で説明した本実施形態の歩行支援ロボット12によれば、制御部90は、ロック期間に前進操作が操作検出部165によって検出された場合には、各ロック部85による各後輪42のロックを一時的に解除して本体部20を前進させた後、各ロック部85によって各後輪42を再びロックし、ロック期間に前進操作が操作検出部165によって検出されなかった場合には、各ロック部85による各後輪42のロックを維持する。そのため、使用者Pは、ロック期間に、静止した左右の第1持手71に体重をかけて十分に体を支えながら片足を前に動かすことができ、第1持手71に前進操作を加えることによって各後輪42のロックを一時的に解除して本体部20を前進させることができる。したがって、使用者Pは、静止した左右の第1持手71で体を支えながらの歩行と、前進操作とを交互に繰り返すことによって、疑似的な平行棒訓練を実行することができる。
【0097】
また、本実施形態では、制御部90は、各ロック部85によって各後輪42をロックしてから待機時間が経過するまでの期間、各後輪42のロックを維持する。そのため、短期間に本体部20の移動が繰り返されることに起因して使用者Pの体勢が不安定になることを抑制できる。
【0098】
また、本実施形態では、制御部90には使用者Pの歩幅が記憶されており、制御部90は、ロック解除期間に、使用者Pの歩幅に応じた距離、走行用モータ80によって本体部20を前進させる。そのため、使用者Pと本体部20との間隔が近くなり過ぎることや遠くなり過ぎたりすることに起因して使用者Pの体勢が不安定になることを抑制できる。特に、本実施形態では、制御部90は、歩幅取得部95によって取得した使用者Pの歩幅に応じた距離、本体部20を前進させることができるので、使用者Pと本体部20との間隔が近くなり過ぎることや遠くなり過ぎたりすることを効果的に抑制できる。
【0099】
C.他の実施形態:
(C1)上述した第1実施形態の歩行支援ロボット11は、動作モードとして、アシストモード、腕振り歩行トレーニングモード、負荷トレーニングモード、および、平行棒トレーニングモードを有している。これに対して、歩行支援ロボット11は、アシストモードと腕振り歩行トレーニングモードと負荷トレーニングモードとのうちの少なくともいずれか1つを有しなくてもよい。負荷トレーニングモードを有しない場合には、走行用モータ80は、回生モードを有しなくてもよいし、歩行支援ロボット11は、回生電力消費部83を備えていなくてもよい。腕振り歩行トレーニングモードを有しない場合には、持手ユニット70が本体部20に対して相対移動しなくてもよいし、持手ユニット70に第2持手72が設けられていなくてもよい。
【0100】
(C2)上述した第2実施形態の歩行支援ロボット12は、動作モードとして、アシストモード、負荷トレーニングモード、および、平行棒トレーニングモードを有している。これに対して、歩行支援ロボット11は、アシストモードと負荷トレーニングモードとのうちの少なくともいずれか1つを有しなくてもよい。負荷トレーニングモードを有しない場合には、走行用モータ80は、回生モードを有しなくてもよいし、歩行支援ロボット12は、回生電力消費部83を備えていなくてもよい。
【0101】
(C3)上述した各実施形態の歩行支援ロボット11,12は、走行用モータ80を備えていなくてもよい。この場合、ロック部85は、例えば、制御部90の制御下で駆動されるブレーキバイワイヤによって構成されてもよい。平行棒トレーニングモードにおいて、歩行支援ロボット11,12は、自走せずに、使用者に押されて前進してもよい。
【0102】
(C4)上述した各実施形態の歩行支援ロボット11,12において、制御部90は、平行棒トレーニングモードにおいて本体部20を前進させる際、アシストモードのように、持手ユニット70を押す使用者を補助する程度に走行用モータ80によって後輪42に駆動トルクを加えてもよい。
【0103】
(C5)上述した各実施形態の歩行支援ロボット11,12において、制御部90は、ロック部85を制御することによって車輪40が完全にロックされた状態と車輪40のロックが解除された状態とを切り替えるだけではなく、歩行支援ロボット11,12が前進する際にロック部85によって制動力を発生させてもよい。例えば、制御部90は、ロック部85による制動力の大きさを、車輪40が完全にロックされる大きさから徐々に低下させて、車輪40が回転可能な大きさであり、かつ、ゼロよりも大きな所定の大きさにしてもよい。この場合、平行棒訓練モードにおいて、歩行支援ロボット11,12は、ロック部85によって制動力を発生させながら前進するので、使用者は、歩行支援ロボット11,12にもたれ掛かって体を支えながら歩行することができる。
【0104】
(C6)上述した各実施形態の歩行支援ロボット11,12において、制御部90は、平行棒トレーニングモードにおいて本体部20を前進させる際、負荷トレーニングモードのように、回生モードの走行用モータ80によって後輪42に制動トルクを加えてもよい。つまり、平行棒トレーニングモードにおいて、本体部20は、走行用モータ80による回生制動力に逆らって持手ユニット70を押す使用者からの力によって前進してもよい。この場合、使用者は、擬似的な平行棒訓練を実行しつつ、足腰を鍛えることができる。
【0105】
(C7)上述した第2実施形態の歩行支援ロボット12において、制御部90は、ロック部85によって各後輪42をロックしてから待機時間が経過するまでの期間、各後輪42のロックを維持しなくてもよい。つまり、制御部90は、ロック部85によって各後輪42をロックした直後に、操作検出部65によって前進操作を検出した場合に、各後輪42のロックを解除してもよい。
【0106】
(C8)上述した第2実施形態の歩行支援ロボット12において、制御部90は、歩幅取得部95を有しなくてもよい。この場合、制御部90の記憶装置には、使用者の歩幅が予め記憶されてもよい。
【0107】
(C9)上述した第1実施形態の歩行支援ロボット11において、制御部90は、持手ユニット70の移動距離を第1上限距離や第2上限距離で制限しなくてもよい。
【0108】
(C10)上述した各実施形態の歩行支援ロボット11,12において、制御部90は、各後輪42のロックが解除されている期間に異常操作が検出された場合に各後輪42をロックする機能を有しなくてもよい。
【0109】
(C11)上述した各実施形態の歩行支援ロボット11,12において、制御部90は、走行用モータ80を制御して歩行支援ロボット11,12を方向変換させる機能を有しなくてもよい。
【0110】
(C12)上述した第1実施形態の歩行支援ロボット11において、制御部90は、第2実施形態と同様に、ロック部85によって車輪40をロックしてから待機時間が経過するまでの期間、持手ユニット70を押す操作を操作検出部65によって検出した場合であってもロック部85による後輪42のロックを維持してもよい。
【0111】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
11,12…歩行支援ロボット、20…本体部、30…フレーム、31…中央フレーム、32…左フレーム、33…右フレーム、35…収納部、39…ネジ、40…車輪、41…前輪、42…後輪、50,150…持手接続部、51,151…ケース、52…前壁、53…後壁、54…隔壁、55,155…シャフト、56…フランジ部、57…シャフト支持部、58,158…固定部、59…連結部材、60…持手位置変更部、61…持手駆動モータ、62…ピニオンギア、63…ラックギア、65,165…操作検出部、70…持手ユニット、71…第1持手、72…第2持手、73…ブレーキレバー、74…ブレーキワイヤ、80…走行用モータ、82…バッテリ、83…回生電力消費部、85…ロック部、90…制御部、95…歩幅取得部
図1
図2
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図11
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