(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115290
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/80 20060101AFI20220802BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20220802BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
E04B1/80 100J
E04B1/80 100P
E04B9/00 C
E04B1/70 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011821
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】東 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】行成 貞一
(72)【発明者】
【氏名】嶽釜 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】梅野 徹也
(72)【発明者】
【氏名】軽部 元喜
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB01
2E001DB04
2E001DD01
2E001FA15
2E001GA24
2E001HA32
2E001HA33
2E001JC03
2E001ND28
(57)【要約】
【課題】冬季、夏季を問わず小屋裏に設けられた繊維系断熱材における結露の発生を抑制することができる建築物を提供する。
【解決手段】建築物は、屋根を構成するための屋根板材と、前記屋根板材の下に小屋裏が形成されるように前記屋根板材から下に離れて設けられ、天井を構成するための天井板材と、前記小屋裏に配置された繊維系断熱材と、前記小屋裏を上下両側から覆うとともに、前記小屋裏の周囲を囲むように前記屋根板材と前記天井板材との間に設けられた小屋裏防湿層と、前記小屋裏を上から覆うとともに、前記小屋裏の周囲を囲むように前記屋根板材と前記天井板材との間に設けられた断熱手段と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物であって、
屋根を構成するための屋根板材と、
前記屋根板材の下に小屋裏が形成されるように前記屋根板材から下に離れて設けられ、天井を構成するための天井板材と、
前記小屋裏に配置された繊維系断熱材と、
前記小屋裏を上下両側から覆うとともに、前記小屋裏の周囲を囲むように前記屋根板材と前記天井板材との間に設けられた小屋裏防湿層と、
前記小屋裏を上から覆うとともに、前記小屋裏の周囲を囲むように前記屋根板材と前記天井板材との間に設けられた断熱手段と、を有する建築物。
【請求項2】
前記建築物は、前記屋根板材と、前記小屋裏防湿層および前記断熱手段との間に形成された通気路をさらに備え、
前記小屋裏防湿層および前記断熱手段は、前記通気路側に向くとともに透湿性を有する部分を含む、請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記小屋裏防湿層の前記小屋裏を上から覆う部分は、発泡樹脂からなるとともに、前記断熱手段を兼ねる、請求項2に記載の建築物。
【請求項4】
前記小屋裏防湿層の前記小屋裏を上から覆う部分は、前記小屋裏防湿層の前記小屋裏を下から覆う部分よりも透湿性が高い、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項5】
前記建築物は、
複数の柱と、
前記複数の柱の間に配置された第1の断熱材と、
前記複数の柱の内面に、前記複数の柱および前記第1の断熱材を覆い、かつ前記複数の柱をつなぐように取り付けられた壁体防湿層と、
前記壁体防湿層の内側に設けられた複数のスタッドと、
前記複数のスタッドの間に配置された第2の断熱材と、
前記第2の断熱材を覆うように前記スタッドの内面に取り付けられた内壁パネルと、を有する壁体をさらに備えている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項6】
前記壁体防湿層、前記小屋裏防湿層の前記小屋裏を下から覆う部分、前記小屋裏防湿層の前記小屋裏を上から覆うとともに前記小屋裏防湿層の前記小屋裏の周囲を囲む部分は、互いに接続されている、請求項5に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小屋裏に設けられた断熱材と、断熱材と天井材との間に設けられた防湿シートと、を有し、これらの断熱材および防湿シートにより、外気に対する室内の断熱および気密が図られている建築物がある(例えば特許文献1)。このような建築物では、冬季には、湿度の高い室内の空気の小屋裏への侵入が防湿シートによって抑制されるため、小屋裏における結露を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の建築物では、断熱材と屋根との間には防湿シートが設けられていないため、夏季には湿度の高い空気が屋外から小屋裏に侵入する。この状態で、空調機で冷却された室内の空気によって小屋裏内が冷却される。
【0005】
そのため、夏季には小屋裏内において結露が生じるという問題があり、特に断熱材がグラスファイバー等の繊維系断熱材である場合には、繊維同士の隙間にまで湿度の高い空気が侵入して断熱材の内部で結露を生じるため、断熱材が劣化しやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、冬季、夏季を問わず小屋裏に設けられた繊維系断熱材における結露の発生を抑制することができる建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。
【0008】
本発明の一局面に係る建築物は、屋根を構成するための屋根板材と、前記屋根板材の下に小屋裏が形成されるように前記屋根板材から下に離れて設けられ、天井を構成するための天井板材と、前記小屋裏に配置された繊維系断熱材と、前記小屋裏を上下両側から覆うとともに、前記小屋裏の周囲を囲むように前記屋根板材と前記天井板材との間に設けられた小屋裏防湿層と、前記小屋裏を上から覆うとともに、前記小屋裏の周囲を囲むように前記屋根板材と前記天井板材との間に設けられた断熱手段と、を有する。
【0009】
上記の建築物では、夏季には、湿度の高い空気が屋外から小屋裏に侵入するのを小屋裏防湿層によって抑制することができるため、夏季における小屋裏に設けられた繊維系断熱材での結露の発生を抑制することができる。また、冬季には、繊維系断熱材に室内から湿度の高い空気が侵入するのを小屋裏防湿層によって抑制することができ、さらに、屋外の冷気によって繊維系断熱材が冷却されるのを断熱手段によって抑制することができるため、小屋裏の繊維系断熱材における結露を抑制することができる。これにより、夏季および冬季の両方において、結露による繊維系断熱材の劣化を抑制することができる。
【0010】
上記の建築物は、前記屋根板材と、前記小屋裏防湿層および前記断熱手段との間に形成された通気路をさらに備え、前記小屋裏防湿層および前記断熱手段は、前記通気路側に向くとともに透湿性を有する部分を含んでいてもよい。
【0011】
この態様では、小屋裏防湿層内に湿度の高い空気が侵入しても、侵入した湿気は断熱手段および小屋裏防湿層の透湿性を有する部分から通気路に排出され、小屋裏防湿層内の湿度の上昇を抑制することができる。なお、小屋裏防湿層の透湿性を有する部分とは、当該部分が存在することにより、存在していない場合よりも防湿性を向上させるものの透湿性を有している部分をいう。防湿層において透湿性を有する部分は、例えば、樹脂(発泡樹脂を含む)により実現することができる。これは、樹脂が多少の透湿性を有することによる。
【0012】
上記の建築物において、前記小屋裏防湿層の前記小屋裏を上から覆う部分は、発泡樹脂からなるとともに、前記断熱手段を兼ねていてもよい。
【0013】
この態様では、小屋裏防湿層の繊維系断熱材を上から覆う部分であって透湿性を有する部分の施工と、断熱手段の施工とを同時に行うことができるため、施工作業を簡略化することができる。
【0014】
上記の建築物において、前記小屋裏防湿層の前記小屋裏を上から覆う部分は、前記小屋裏防湿層の前記小屋裏を下から覆う部分よりも透湿性が高くてもよい。
【0015】
この態様では、小屋裏および繊維系断熱材に湿気が侵入したとしても、当該湿気は小屋裏防湿層の小屋裏を上から覆う部分を介して積極的に通気路に排出することができる。その結果、小屋裏での結露をより有効に抑制することができる。
【0016】
上記の建築物は、複数の柱と、前記複数の柱の間に配置された第1の断熱材と、前記複数の柱の内面に、前記複数の柱および前記第1の断熱材を覆い、かつ前記複数の柱をつなぐように取り付けられた壁体防湿層と、前記壁体防湿層の内側に設けられた複数のスタッドと、前記複数のスタッドの間に配置された第2の断熱材と、前記第2の断熱材を覆うように前記スタッドの内面に取り付けられた内壁パネルと、を有する壁体をさらに備えていてもよい。
【0017】
この態様では、柱、第1の断熱材、壁体防湿層により構成される壁構造物において気密性を確保しながら、当該壁構造物の内側部分にダクトや電線等の配線の配置が可能となる。具体的には、小屋裏からスタッドの間の空間または当該空間に設けた第2の断熱材を通じて配線を配置することにより、壁体防湿層に孔を開ける必要がなく、建築物の気密性を確保することができる。
【0018】
上記の建築物において、前記壁体防湿層、前記小屋裏防湿層の前記小屋裏を下から覆う部分、前記小屋裏防湿層の前記小屋裏を上から覆うとともに前記小屋裏防湿層の前記小屋裏の周囲を囲む部分は、互いに接続されていてもよい。
【0019】
この態様では、外気と室内と小屋裏との間の気密性を向上させ、建築物全体の気密性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、冬季、夏季を問わず断熱材の設けられた小屋裏における結露の発生を抑制することが可能である建築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る建築物の壁体および屋根の周辺の部分縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る建築物の壁体の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る建築物について図面に基づいて説明する。
【0023】
(建築物の構成)
図1は、本実施形態に係る建築物の壁体および屋根の周辺の部分縦断面図であり、
図2は、本実施形態に係る建築物の壁体の横断面図である。建築物1は、屋根10と、天井20と、壁体30と、梁50と、繊維系断熱材61と、小屋裏防湿層70と、断熱手段と、を有する。
【0024】
次に、建築物1を構成する各要素について説明する。
【0025】
図1に示すように、屋根10は、勾配屋根である。具体的に、屋根10は、梁50上に傾斜した姿勢で支持された複数の垂木13と、垂木13上に設けられ、屋根を構成するための野地板11(屋根板材)と、野地板11上に設けられた防水シート12と、防水シート12上に配置されているとともに野地板11に固定された瓦桟14と、防水シート12を覆うように瓦桟14に係止された瓦15と、を有する。
【0026】
天井20は、梁50により支持された野縁23と、野地板11の下に小屋裏60が形成されるように野地板11から下に離れた位置で野縁23に取り付けられた天井板材21と、を有する。天井板材21と、防湿シート22を介して天井板材21が固定された野縁23と、を有する。天井板材21は、石膏ボード等の板材からなる。天井20の下の空間は、建築物1の室内である。
【0027】
梁50は、建築物1の躯体を構成し、壁体30の上部に配置されるとともに屋根10を支持する。梁50は、野地板11と天井板材21とに挟まれた小屋裏60の周囲を囲むように配置されており、後述の小屋裏防湿層70の上部防湿層73の一部を構成する。
【0028】
繊維系断熱材61は、小屋裏60に配置されている。具体的に、繊維系断熱材61は、セルロースファイバー、ロックウール、グラスウール等の繊維系断熱材からなる。繊維系断熱材61は、天井20の上面全体を覆うように配置されている。繊維系断熱材61は、所望の断熱性能が得られる量であればよく、小屋裏60全体に配置されていなくてもよい。
【0029】
小屋裏防湿層70は、小屋裏60を上下両側から覆うとともに、小屋裏60の周囲を囲むように野地板11と天井板材21との間に設けられている。小屋裏防湿層70は、小屋裏60を上から覆うとともに、小屋裏60の周囲を囲む上部防湿層73と、小屋裏60を下から覆う下部防湿層74と、を有する。上部防湿層73は、小屋裏60を上から覆うとともに、小屋裏60の周囲を囲むように野地板11と天井板材21との間に設けられた断熱手段を兼ねている。
【0030】
上部防湿層73は、紙や樹脂からなり繊維系断熱材61を吹き付けるためのバックアップ材として設けられた通気部材71と、通気部材71の下面および梁50の内面(小屋裏60側の面)に吹き付けられた発泡ウレタン等の発泡樹脂からなる発泡断熱材72と、木材からなる梁50と、を有する。発泡断熱材72は、小屋裏60を上から覆うとともに小屋裏60の周囲を囲むように野地板11と天井板材21との間に設けられている。上部防湿層73は、発泡断熱材72による防湿性に加えて発泡断熱材72および通気部材71による断熱性も有しているため、小屋裏60に対して上方および側方に対する断熱性能を発揮する。すなわち、発泡断熱材72は、上部防湿層73の一部および断熱手段の一部を構成する。
【0031】
通気部材71を構成する紙や樹脂、および発泡断熱材72を構成する樹脂は透湿性を有するため、これらの部材を有する上部防湿層73も透湿性を有し、上部防湿層73は小屋裏防湿層70の透湿性を有する部分を構成する。また、上部防湿層73と下部防湿層74の材質および寸法は、上部防湿層73の透湿性が下部防湿層74よりも高くなるように設定されている。なお、小屋裏防湿層70の透湿性を有する部分とは、当該部分が存在することにより、存在していない場合よりも防湿性を向上させるものの透湿性を有している部分をいう。
【0032】
通気部材71は、梁50の内面の上部から上に延びる部分と、この部分の上端部から野地板11に沿って延びる部分とを有する。通気部材71の野地板11に沿って延びる部分は表面に凹凸を有し、通気部材71の凹部分が野地板11から離間した状態で通気部材71の凸部分が野地板11に接触している。そのため、上部防湿層73を構成する通気部材71と野地板11との間には屋根通気路10a(通気路)が形成されるとともに、上部防湿層73は屋根通気路10a側に向く部分を有する。
【0033】
屋根通気路10aは、屋根10の棟部分(不図示)に開口を有するため、建築物1では、小屋裏60から上部防湿層73を介して屋根通気路10aに排出された空気や水分を、屋根通気路10aを介して屋根10の棟部分から排出することができる。
【0034】
発泡断熱材72は、梁50の内面と、通気部材71の梁50の内面の上部から上に延びる部分の内面と、通気部材71の野地板11に沿って延びる部分の内面とに亘って吹き付けられている。
【0035】
下部防湿層74は、天井板材21の上面を覆うように設けられた防湿シート22と、防湿シート22に接続され、後述の壁体30に設けられたスタッド連結部材と、を有する。スタッド連結部材は、後述するスタッド接続部材37と、上部パネル38と、を有する。防湿シート22は、樹脂製のシートである。
【0036】
壁体30は、
図2に示すように、水平方向に間隔を空けて配置された複数の柱31と、隣接する柱31の間に配置された第1の断熱材32と、柱31および第1の断熱材32の内面(室内側の面)を覆い、かつ複数の柱31をつなぐように設けられた壁体防湿層33と、壁体防湿層33の内側に水平方向に間隔を空けて設けられているとともに鉛直方向に延びる複数の第1のスタッド35(スタッド)と、隣接する第1のスタッド35の間に配置された第2の断熱材34と、第2の断熱材34を覆うように第1のスタッド35の内面に取り付けられた石膏ボード等の板材からなる内壁パネル36と、を有する。内壁パネル36の第1のスタッド35と反対側の空間は、建築物1の室内である。
【0037】
壁体30は、さらにスタッド連結部材を有する。スタッド連結部材は、
図1に示すように、水平方向に延びるスタッド接続部材37と、スタッド接続部材37の内面を覆うとともに側面視でスタッド接続部材37と天井板材21との間に挟まれた上部パネル38と、を有する。上部パネル38は、天井板材21を挟んで内壁パネル36の上方に設けられている。
【0038】
図示は省略するが、複数の柱31の上端は、梁50に接続されており、複数の第1のスタッド35の上端は、スタッド接続部材37に接続されている。また、第1の断熱材32は、隣接する柱31と梁50とに囲まれた空間に嵌め込まれており、第2の断熱材34は、隣接する第1のスタッド35とスタッド接続部材37とに囲まれた空間に嵌め込まれている。
【0039】
壁体防湿層33は樹脂製のシートからなる。スタッド接続部材37は木材等からなり、上部パネル38は石膏ボード等の板材からなり、スタッド接続部材37および上部パネル38はいずれも防湿性を有する。スタッド接続部材37は、上部パネル38の内面に接続されており、スタッド接続部材37および上部パネル38、すなわちスタッド連結部材は、防湿シート22とともに、下部防湿層74を構成する。
【0040】
また、スタッド接続部材37は、
図1に示すように、壁体防湿層33の上端部を挟んだ状態で梁50の内面に対して図外の釘または木ねじ等の固定具によって固定されている。さらに、梁50のスタッド接続部材37が固定された部分において、上部防湿層73を構成する発泡断熱材72は、梁50およびスタッド接続部材37に跨がるように吹き付けられた部分を有する。これにより、発泡断熱材72は梁50とスタッド接続部材37との間(壁体防湿層33の上端が位置する領域)に充填される。したがって、壁体防湿層33と、下部防湿層74と、上部防湿層73とは、互いに接続されている。
【0041】
壁体30は、さらに、
図1および
図2に示すように、柱31、第1の断熱材32および梁50の外面(室外側の面)を覆うように設けられた合板等からなる内部パネル41と、内部パネル41の室外側に水平方向に間隔を空けて設けられた複数の第2のスタッド40と、隣接する第2のスタッド40の間に配置された第3の断熱材42と、第2のスタッド40および第3の断熱材42の外面を覆うように設けられた防水シート43と、防水シート43の外面を覆うように設けられた陶板等の板材からなる外壁パネル44と、を有する。防水シート43と、外壁パネル44との間には、下方から上方に延びる壁体通気路30aが設けられている。壁体通気路30aは、屋根通気路10aと接続されており、壁体通気路30aは壁体30の下端に開口を有する。そのため、建築物1では、壁体通気路30aの開口と棟に形成された開口との間で、屋根通気路10aおよび壁体通気路30aを通じて換気を行うことができる。
【0042】
第1の断熱材32、第2の断熱材34および第3の断熱材42は、いずれも押出発泡ポリスチレン等からなる硬質の断熱材である。本実施形態に係る壁体30では、第1の断熱材32として2枚の板状の断熱材を内外に重ねたものを用いており、第3の断熱材42として1枚の板状の断熱材を用いている。なお、第1の断熱材32は、1枚の板状の断熱材を用いてもよい。また、第2の断熱材34として、1枚の板状の断熱材と、第1の断熱材片34aおよび第2の断熱材片34bの2枚の板状の断熱材を内外に重ねたものとを用いている。2枚の断熱材を重ねた第2の断熱材34では、内壁パネル36の外側にダクトや電線等の配線39を配索するための空間を形成するために、一方の断熱材片(
図2では第2の断熱材片34b)には、切り欠き部が形成されている。配線39は、スタッド接続部材37を貫通させることにより、小屋裏60から壁体30内の空間に延長して設けることができる。なお、第1の断熱材32、第2の断熱材34および第3の断熱材42は、セルロースファイバー、ロックウール、グラスウール等の繊維系断熱材からなる軟質の断熱材であってもよい。
【0043】
(作用、効果)
本実施形態に係る建築物1では、夏季には、湿度の高い空気が屋外から小屋裏60に侵入するのを上部防湿層73によって抑制することができるため、夏季における小屋裏60に設けられた繊維系断熱材61での結露の発生を抑制することができる。また、冬季には、繊維系断熱材61に室内から湿度の高い空気が侵入するのを小屋裏防湿層70の下部防湿層74によって抑制することができ、さらに、屋外の冷気によって繊維系断熱材61が冷却されるのを、断熱手段を兼ねる上部防湿層73によって抑制することができるため、小屋裏60の繊維系断熱材61における結露を抑制することができる。これにより、夏季および冬季の両方において、結露による繊維系断熱材61の劣化を抑制することができる。
【0044】
また、小屋裏60にダクトや電線等の配線を設けた場合に、当該配線を室内または壁体30内に導入するための孔を下部防湿層74に設けたとしても、上部防湿層73によって建築物1の気密性を確保することができる。
【0045】
建築物1では、小屋裏防湿層70内に湿度の高い空気が侵入しても、侵入した湿気は断熱手段および小屋裏防湿層70の透湿性を有する部分である上部防湿層73から屋根通気路10aに排出され、さらに屋根通気路10aを介して屋根10の棟部分の開口から排出され、小屋裏防湿層70内の湿度の上昇を抑制することができる。また、屋根通気路10aにより、上部防湿層73から排出された湿気が野地板11に滞留するのを抑制することができるため、当該湿気による野地板11の劣化を抑制することができる。
【0046】
建築物1では、上部防湿層73が透湿性を有するとともに、断熱手段を兼ねていることから、小屋裏防湿層70の繊維系断熱材61を上から覆う部分であって透湿性を有する部分の施工と、断熱手段の施工とを同時に行うことができるため、施工作業を簡略化することができる。
【0047】
建築物1では、上部防湿層73は、下部防湿層74よりも透湿性が高いため、小屋裏60および繊維系断熱材61に湿気が侵入したとしても、侵入した湿気は上部防湿層73を介して積極的に屋根通気路10aに排出することができる。その結果、小屋裏60での結露をより有効に抑制することができる。
【0048】
建築物1では、柱31、第1の断熱材32、壁体防湿層33により構成される壁構造物において気密性を確保しながら、当該壁構造物の内側部分にダクトや電線等の配線39の配置が可能となる。具体的には、小屋裏60から第1のスタッド35の間の空間または当該空間に設けた第2の断熱材34を通じて配線39を配置することにより、壁体防湿層33に孔を開ける必要がなく、建築物1の気密性を確保することができる。
【0049】
建築物1では、壁体防湿層33、下部防湿層74および上部防湿層73が互いに接続されているため、外気と室内と小屋裏60との間の気密性を向上させ、建築物1全体の気密性をより向上させることができる。
【0050】
(変型例)
本実施形態に係る建築物1は、壁体防湿層33の上端部をスタッド接続部材37と梁50との間に挟んだ構成としたが、壁体防湿層33の上部を第2の断熱材34とスタッド接続部材37との間に挟んでもよい。また、壁体防湿層33の上端をスタッド接続部材37の下端に接続してもよい。いずれの場合も、下部防湿層74を構成するスタッド接続部材37と、壁体防湿層33とが接続され、建築物1の気密性を向上させることができる。
【0051】
さらに、防湿シート22を外側に向けて延ばし、防湿シート22の端部をスタッド接続部材37と第2の断熱材34との間に挟んでもよい。この場合、スタッド接続部材37と第2の断熱材34の接する部分の高さを天井板材21の上面の高さと揃えてもよい。
【0052】
壁体防湿層33は、例えば柱31が3本以上ある場合には、隣接する2本の柱31をつなぐように設けたシートを複数使用してもよいが、気密性をより向上させるため、全ての柱31をつなぐように1枚のシートを使用することが好ましい。
【0053】
本実施形態に係る建築物1では、上部防湿層73を、発泡樹脂からなるとともに、断熱手段を兼ねるものとしたが、上部防湿層と断熱手段とを別部材としてもよく、例えば上部防湿層を防湿シートからなるものとし、当該防湿シートの内側または外側に断熱手段として発泡樹脂を設けてもよい。
【0054】
また、本実施形態に係る建築物1では、上部防湿層73を構成する発泡断熱材72を梁50の内側の面全体を覆うように設けたが、発泡断熱材72を梁50の内面が小屋裏60側に露出するように設けてもよい。この場合、梁50も防湿性を有するため、小屋裏防湿層70の小屋裏60の周囲を囲む部分を構成する。また、発泡断熱材72は、梁50は、通気部材71とともに小屋裏防湿層70の小屋裏60を上から覆う部分を構成する。
【0055】
本実施形態に係る建築物1では、第2のスタッド40および第3の断熱材42を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 建築物
10 屋根
10a 屋根通気路(通気路)
11 野地板(屋根板材)
20 天井
21 天井板材
22 防湿シート
30 壁体
31 柱
32 第1の断熱材
33 壁体防湿層
34 第2の断熱材
35 第1のスタッド(スタッド)
36 内壁パネル
50 梁(小屋裏防湿層の小屋裏の周囲を囲む部分)
60 小屋裏
61 繊維系断熱材
70 小屋裏防湿層
72 発泡断熱材(小屋裏防湿層の小屋裏を上から覆うとともに小屋裏の周囲を囲む部分、透湿性を有する部分、断熱手段)
73 上部防湿層(小屋裏防湿層の小屋裏を上から覆うとともに小屋裏の周囲を囲む部分、透湿性を有する部分、断熱手段)
74 下部防湿層(小屋裏防湿層の小屋裏を下から覆う部分)