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特開2022-115300発光素子、光検出モジュール、発光素子の製造方法、及び走査型電子顕微鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115300
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】発光素子、光検出モジュール、発光素子の製造方法、及び走査型電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/62 20060101AFI20220802BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20220802BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20220802BHJP
   G01N 23/2251 20180101ALI20220802BHJP
【FI】
C09K11/62
H01J37/28 B
H01J37/244
G01N23/2251
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011835
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】山内 邦義
(72)【発明者】
【氏名】近藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】前田 純也
(72)【発明者】
【氏名】大河原 悟
【テーマコード(参考)】
2G001
4H001
5C033
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA07
2G001CA03
2G001CA10
2G001HA12
4H001XA07
4H001XA31
4H001XA49
5C033NN01
5C033UU04
(57)【要約】
【課題】クロストークを低減でき、且つ用途を広げることが可能な発光素子、光検出モジュール、発光素子の製造方法、及びこれを用いた走査型電子顕微鏡を提供する。
【解決手段】発光素子1は、蛍光に対する透明性を有するファイバオプティクプレート基板2と、量子井戸構造を有する窒化物半導体層からなる発光層3と、を備えている。この発光素子1では、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3とが直接接合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光に対する透明性を有するファイバオプティクプレート基板と、
量子井戸構造を有する窒化物半導体層からなる発光層と、を備え、
前記ファイバオプティクプレート基板と前記発光層とが直接接合されている発光素子。
【請求項2】
前記ファイバオプティクプレート基板と前記発光層とは、熱圧着によって接合されている請求項1記載の発光素子。
【請求項3】
前記ファイバオプティクプレート基板と前記発光層とは、常温接合によって接合されている請求項1記載の発光素子。
【請求項4】
前記発光層の構成元素は、前記ファイバオプティクプレート基板内に拡散している請求項1又は2記載の発光素子。
【請求項5】
前記発光層は、GaN層とInGaN層とが交互に積層された積層構造を有している請求項1~4のいずれか一項記載の発光素子。
【請求項6】
前記発光層において、前記ファイバオプティクプレート基板と前記発光層との接合面と反対側の面には、金属層が設けられている請求項1~5のいずれか一項記載の発光素子。
【請求項7】
前記ファイバオプティクプレート基板と前記発光層との接合面において、前記ファイバオプティクプレート基板及び前記発光層の少なくとも一方には、前記蛍光に対する屈折率が前記ファイバオプティクプレート基板と前記発光層との間の屈折率となる中間層が設けられている請求項1~6のいずれか一項記載の発光素子。
【請求項8】
前記中間層は、SiN層、Ta層、HfO層、又はこれらの組み合わせによって構成されている請求項7記載の発光素子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載の発光素子と、
前記発光素子に対して前記ファイバオプティクプレート基板側に配置された光検出器と、を備える光検出モジュール。
【請求項10】
前記光検出器は、固体検出素子又は電子管デバイスによって構成されている請求項9記載の光検出モジュール。
【請求項11】
バッファ層と、量子井戸構造を有する窒化物半導体層からなる発光層とを補助基板上に結晶成長させる発光層形成工程と、
蛍光に対する透明性を有するファイバオプティクプレート基板と、前記補助基板上の前記発光層とを直接接合して接合体を形成する接合工程と、
前記接合体から前記補助基板及び前記バッファ層を除去する除去工程と、を備える発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記発光層は、GaN層とInGaN層とが交互に積層された積層構造を有し、
前記バッファ層は、GaN層によって構成されている請求項11記載の発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記発光層における前記ファイバオプティクプレート基板と前記発光層との接合面と反対側の面に金属層を形成する金属層形成工程を、前記除去工程の後に備える請求項11又は12記載の発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記ファイバオプティクプレート基板及び前記発光層の少なくとも一方に前記蛍光に対する屈折率が前記ファイバオプティクプレート基板と前記発光層との間の屈折率となる中間層を形成する中間層形成工程を、前記発光層形成工程と前記接合工程との間に備える請求項11~13のいずれか一項記載の発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記中間層は、SiN層、Ta層、HfO層、又はこれらの組み合わせによって構成されている請求項14記載の発光素子の製造方法。
【請求項16】
一次電子線を試料に向けて出射する電子線源と、
前記一次電子線の照射によって前記試料で発生する二次電子線の入射によって蛍光を発生させる請求項1~8のいずれか一項記載の発光素子と、
前記発光素子で発生した前記蛍光を検出する検出光学系と、を備える走査型電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光素子、光検出モジュール、発光素子の製造方法、及び走査型電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発光素子として、例えば特許文献1に記載の発光体がある。この従来の発光体は、入射する電子を蛍光に変換する発光体である。発光体は、蛍光に対して透明な基板と、基板の一方面に形成され、電子の入射によって蛍光を発生する量子井戸構造及びバッファ層を有する窒化物半導体層とを備えている。窒化物半導体層上には、当該窒化物半導体層の構成材料よりもバンドギャップエネルギーの大きい材料で構成されたキャップ層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4365255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の発光素子において、窒化物半導体層を結晶成長によって構成する場合、主にサファイア基板やGaN基板が用いられている(例えば上記特許文献1参照)。これらの基板は、単結晶である。そのため、発光層からの光の一部が基板及びバッファ層に入射した後に大気や真空中に取り出されるまでの間に、当該光の一部が基板及びバッファ層を導波路として拡散し、拡散した成分がクロストークの要因となり得るという課題があった。
【0005】
また、従来の発光素子では、多チャンネルの光検出器やイメージセンサとの組み合わせで多チャンネルの光検出モジュールやイメージングユニットを構築するにあたってレンズカップリングが必須となる。そのため、検出モジュールやイメージングユニットの小型化が難しく、用途の制限を受け易いという課題があった。また、レンズカップリングでは、発光層からの光を光検出モジュールやイメージングユニットに伝達する効率の改善が求められていた。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、クロストークを低減でき、且つ用途を広げることが可能な発光素子、光検出モジュール、発光素子の製造方法、及びこれを用いた走査型電子顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る発光素子は、蛍光に対する透明性を有するファイバオプティクプレート基板と、量子井戸構造を有する窒化物半導体層からなる発光層と、を備え、ファイバオプティクプレート基板と発光層とが直接接合されている。
【0008】
この発光素子では、ファイバオプティクプレート基板と発光層とが直接接合されている。この発光素子では、サファイア基板上にバッファ層を介して発光層を設ける従来の構成とは異なり、発光素子に入射した光の一部がサファイア基板及びバッファ層を導波路として拡散することを回避できるため、クロストークの低減が図られる。サファイア基板に代えてファイバオプティクプレート基板を用いることで、発光層で発生した蛍光の収集効率が高められる。また、光検出モジュールを構築するにあたってレンズカップリングが必須となることを回避でき、用途を広げることが可能となる。
【0009】
ファイバオプティクプレート基板と発光層とは、熱圧着によって接合されていてもよい。これにより、ファイバオプティクプレート基板と発光層とを接着剤を用いずに好適に直接接合することができる。
【0010】
ファイバオプティクプレート基板と発光層とは、常温接合によって接合されていてもよい。これにより、ファイバオプティクプレート基板と発光層とを接着剤を用いずに好適に直接接合することができる。また、常温接合では、熱による歪みがファイバオプティクプレート基板に生じることも抑制される。
【0011】
発光層の構成元素は、ファイバオプティクプレート基板内に拡散していてもよい。この場合、ファイバオプティクプレート基板内への発光層の構成元素の拡散によって、ファイバオプティクプレート基板と発光層との接合強度を十分に高めることができる。
【0012】
発光層は、GaN層とInGaN層とが交互に積層された積層構造を有していてもよい。この場合、発光層において、発光層において効率良く蛍光を発生させることができる。また、積層構造がファイバオプティクプレート基板に直接接合されているため、発生した蛍光をファイバオプティクプレート基板側に効率良く取り出すことができる。
【0013】
発光層において、ファイバオプティクプレート基板と発光層との接合面と反対側の面には、金属層が設けられていてもよい。これにより、発光層に電子等が入射する際の帯電を防止できる。また、金属層での光の反射により、発生した蛍光をファイバオプティクプレート基板側に効率良く取り出すことができる。
【0014】
ファイバオプティクプレート基板と発光層との接合面において、ファイバオプティクプレート基板及び発光層の少なくとも一方には、蛍光に対する屈折率がファイバオプティクプレート基板と発光層との間の屈折率となる中間層が設けられていてもよい。この場合、中間層での屈折率の調整により、ファイバオプティクプレート基板と発光層との接合面において、中間層を反射防止膜等の機能的な層として機能させることができる。
【0015】
中間層は、SiN層、Ta層、HfO層、又はこれらの組み合わせによって構成されていてもよい。これにより、中間層を反射防止膜として機能させることができる。また、他の高屈折率材料を含む多層膜設計も容易となる。
【0016】
本開示の一側面に係る光検出モジュールは、上記発光素子と、発光素子に対してファイバオプティクプレート基板側に配置された光検出器と、を備える。
【0017】
この光検出モジュールを構成する発光素子では、ファイバオプティクプレート基板と発光層とが直接接合されている。このため、サファイア基板上にバッファ層を介して発光層を設ける従来の構成とは異なり、発光素子に入射した光の一部がサファイア基板及びバッファ層を導波路として拡散することを回避できるため、クロストークの低減が図られる。サファイア基板に代えてファイバオプティクプレート基板を用いることで、発光層で発生した蛍光の収集効率が高められる。また、光検出モジュールを構築するにあたってレンズカップリングが必須となることを回避でき、用途を広げることが可能となる。
【0018】
光検出器は、固体検出素子又は電子管デバイスによって構成されていてもよい。これにより、光検出モジュールを多様な用途に対応させることができる。
【0019】
本開示の一側面に係る発光素子の製造方法は、バッファ層と、量子井戸構造を有する窒化物半導体層からなる発光層とを補助基板上に結晶成長させる発光層形成工程と、蛍光に対する透明性を有するファイバオプティクプレート基板と、補助基板上の発光層とを直接接合して接合体を形成する接合工程と、接合体から補助基板及びバッファ層を除去する除去工程と、を備える。
【0020】
この発光素子の製造方法によれば、ファイバオプティクプレート基板と発光層とが直接接合された発光素子を簡便に得ることができる。得られた発光素子では、サファイア基板上にバッファ層を介して発光層を設ける従来の構成とは異なり、発光素子に入射した光の一部がサファイア基板及びバッファ層を導波路として拡散することを回避できるため、クロストークの低減が図られる。サファイア基板に代えてファイバオプティクプレート基板を用いることで、発光層で発生した蛍光の収集効率が高められる。また、光検出モジュールを構築するにあたってレンズカップリングが必須となることを回避でき、用途を広げることが可能となる。
【0021】
発光層は、GaN層とInGaN層とが交互に積層された積層構造を有し、バッファ層は、GaN層によって構成されていてもよい。これにより、補助基板上に発光層を好適に結晶成長させることができる。得られた発光素子では、発光層において、効率良く蛍光を発生させることができる。また、積層構造がファイバオプティクプレート基板に直接接合されているため、発生した蛍光をファイバオプティクプレート基板側に効率良く取り出すことができる。
【0022】
発光層におけるファイバオプティクプレート基板と発光層との接合面と反対側の面に金属層を形成する金属層形成工程を、除去工程の後に備えていてもよい。これにより、得られた発光素子において、発光層に電子等が入射する際の帯電を防止できる。また、金属層での光の反射により、発生した蛍光をファイバオプティクプレート基板側に効率良く取り出すことができる。
【0023】
ファイバオプティクプレート基板及び発光層の少なくとも一方に蛍光に対する屈折率がファイバオプティクプレート基板と発光層との間の屈折率となる中間層を形成する中間層形成工程を、発光層形成工程と接合工程との間に備えていてもよい。この場合、中間層での屈折率の調整により、ファイバオプティクプレート基板と発光層との接合面において、中間層を反射防止膜等の機能的な層として機能させることができる。
【0024】
中間層は、SiN層、Ta層、HfO層、又はこれらの組み合わせによって構成されていてもよい。これにより、中間層を反射防止膜として機能させることができる。また、他の高屈折率材料を含む多層膜設計も容易となる。
【0025】
本開示の一側面に係る走査型電子顕微鏡は、一次電子線を試料に向けて出射する電子線源と、一次電子線の照射によって試料で発生する二次電子線の入射によって蛍光を発生させる上記発光素子と、発光素子で発生した蛍光を検出する検出光学系と、を備える。
【0026】
この走査型電子顕微鏡を構成する発光素子では、ファイバオプティクプレート基板と発光層とが直接接合されている。このため、サファイア基板上にバッファ層を介して発光層を設ける従来の構成とは異なり、発光素子に入射した光の一部がサファイア基板及びバッファ層を導波路として拡散することを回避できるため、クロストークの低減が図られる。サファイア基板に代えてファイバオプティクプレート基板を用いることで、発光層で発生した蛍光の収集効率が高められる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、クロストークを低減でき、且つ用途を広げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】発光素子の一実施形態を示す模式的な断面図である。
図2】発光層の構成を示す模式的な断面図である。
図3】(a)は、ファイバオプティクプレート基板のコアガラスと発光層との接合面近傍の拡大写真であり、(b)は、ファイバオプティクプレート基板のクラッドガラスと発光層との接合面近傍の拡大写真である。
図4】(a)は、ファイバオプティクプレート基板のコアガラスと発光層との接合面近傍の成分分析結果であり、(b)は、ファイバオプティクプレート基板のクラッドガラスと発光層との接合面近傍の成分分析結果である。
図5】発光素子の製造工程の一例を示すフローチャートである。
図6】(a)は、発光層形成工程を示す模式的な断面図であり、(b)は、接合工程を示す模式的な断面図である。
図7】(a)及び(b)は、除去工程を示す模式的な断面図である。
図8】金属層形成工程を示す模式的な断面図である。
図9】(a)は、比較例における蛍光のスポット形状を示す図であり、(b)は、実施例における蛍光のスポット形状を示す図である。
図10】実施例及び比較例における蛍光の輝度分布を示す図である。
図11】(a)~(c)は、発光素子を用いた光検出モジュールの構成例を示す模式的な図である。
図12】走査型電子顕微鏡の構成例を示す模式的な図である。
図13】発光素子の変形例を示す模式的な断面図である。
図14】変形例に係る発光素子の製造工程の一例を示すフローチャートである。
図15】中間層形成工程を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る発光素子、光検出モジュール、発光素子の製造方法、及び走査型電子顕微鏡の好適な実施形態について詳細に説明する。
[発光素子の構成例]
【0030】
図1は、発光素子の一実施形態を示す模式的な断面図である。発光素子1は、電子等の入射によって蛍光を発生させる素子である。図1に示すように、発光素子1は、ファイバオプティクプレート基板2と、発光層3と、金属層4とを備えて構成されている。
【0031】
ファイバオプティクプレート基板2は、入射面2aから入射した光を出射面2bに伝達する機能を有する基板である。ファイバオプティクプレート基板2は、発光層3で発生する光(蛍光)に対する透明性を有している。ファイバオプティクプレート基板2は、例えば複数のコアガラスと、当該コアガラスを被覆するクラッドガラスと、複数のコアガラス間に配置された吸光体ガラスとを含んで構成されている。コアガラスは、クラッドガラスと一体化している。コアガラスは、繊維状をなし、ファイバオプティクプレート基板2の入射面2aから出射面2bにわたって延在している。コアガラスの直径は、例えば0.001~0.05mm程度となっている。コアガラスの断面形状は、例えば円形状となっている。
【0032】
コアガラスは、ガラスの網目を形成する網目形成酸化物、網目形成酸化物と溶融してガラスの性質に影響を与える網目修飾酸化物、網目形成酸化物及び網目修飾酸化物の中間的な性質を有する中間酸化物を含有し得る。網目形成酸化物としては、B、SiO、ZrOなどが挙げられる。網目修飾酸化物としては、WO、Gd、La、Nbなどが挙げられる。中間酸化物としては、TiO、ZrO、ZnOなどが挙げられる。
【0033】
クラッドガラスは、コアガラスを埋没させるように配置され、コアガラスのそれぞれの外周部を被覆している。クラッドガラスは、ファイバオプティクプレート基板2の入射面2aから出射面2bにわたって延在している。クラッドガラスは、コアガラスと同様に、ガラスの網目を形成する網目形成酸化物、網目形成酸化物と溶融してガラスの性質に影響を与える網目修飾酸化物、網目形成酸化物及び網目修飾酸化物の中間的な性質を有する中間酸化物を含有し得る。クラッドガラスの屈折率は、コアガラスの屈折率よりも小さくなっている。
【0034】
吸光体ガラスは、コアガラスよりも細い繊維状をなし、ファイバオプティクプレート基板2の入射面2aから出射面2bにわたって延在している。吸光体ガラスは、コアガラス及びクラッドガラスから漏れる光(迷光)を吸収する性質を有している。吸光体ガラスは、ガラス組成物から構成されていてもよい。ガラス組成物は、SiOを主成分とし、Fe等を含有していてもよい。
【0035】
発光層3は、量子井戸構造を有する窒化物半導体層からなる層である。発光層3は、ファイバオプティクプレート基板2側を向く一方面3aと、当該一方面3aの反対側に位置する他方面3bとを有している。ここでの量子井戸構造とは、一般的な量子井戸構造のほか、量子細線構造、量子ドット構造を含む。また、窒化物半導体とは、III族元素としてGa、In、Alの少なくとも一つを含み、主たるV族元素としてNを含む化合物である。
【0036】
本実施形態では、発光層3は、図2に示すように、GaN層6とInGaN層7とが交互に積層された積層構造を有している。発光層3は、バッファ層としてのInGa1-xN(0≦x≦1)層或いはGaN層を有しておらず、量子井戸構造の最外層を構成するGaN層6が一方面3a及び他方面3bを構成している。発光層3に電子等が入射すると、量子井戸構造において電子及び正孔の対が形成され、当該電子及び正孔の対が量子井戸構造内で再結合する過程で蛍光が発生する。発光層3で発生した蛍光の少なくとも一部は、ファイバオプティクプレート基板2の入射面2aに入射し、コアガラスに導光されて出射面2bから出射する。
【0037】
金属層4は、発光層3に電子等が入射する際の帯電を防止する機能を有する層である。また、金属層4は、発光層3で発生した蛍光を反射し、当該蛍光をファイバオプティクプレート基板2側に効率良く伝達する機能を有している。金属層4は、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3との接合面Rと反対側の面、すなわち、発光層3の他方面3bに設けられている。金属層4は、例えばAl等の金属の蒸着によって、発光層3の厚さよりも十分に小さい厚さで発光層3の他方面3bの全体にわたって設けられている。
【0038】
発光素子1では、上述したファイバオプティクプレート基板2と発光層3とが直接接合され、接合面Rが形成されている。本実施形態では、ファイバオプティクプレート基板2の入射面2aと、発光層3の一方面3aとが、熱圧着や常温接合によって接着剤などを介在することなく接合されている。図3(a)及び図3(b)は、熱圧着によって接合されたファイバオプティクプレート基板と発光層との接合面近傍の拡大写真である。図3(a)は、ファイバオプティクプレート基板のコアガラスと発光層との接合面近傍を走査型透過電子顕微鏡で解析したものであり、図3(b)は、ファイバオプティクプレート基板のクラッドガラスと発光層との接合面近傍を走査型透過電子顕微鏡で解析したものである。図3(a)及び図3(b)に示す結果から、ファイバオプティクプレート基板のコアガラス及びクラッドガラスのいずれも熱圧着によって発光層と一体化しており、接着剤などを介在することなく強固に接合されていることが確認できる。
【0039】
発光素子1では、ファイバオプティクプレート基板2の入射面2aと、発光層3の一方面3aとを熱圧着することにより、発光層3の構成元素がファイバオプティクプレート基板2内に拡散した状態となっている。ファイバオプティクプレート基板2の構成元素が発光層3内に拡散した状態となっていてもよい。図4(a)は、ファイバオプティクプレート基板のコアガラスと発光層との接合面近傍の成分分析結果である。また、図4(b)は、ファイバオプティクプレート基板のクラッドガラスと発光層との接合面近傍の成分分析結果である。これらの図では、横軸に距離を示し、縦軸に強度を示している。距離50nm付近がファイバオプティクプレート基板のコアガラスと発光層との接合面に相当しており、これより左側が発光層、右側がファイバオプティクプレート基板である。試料の加工には、集束イオンビーム法を用いた。成分分析装置としては、日本電子株式会社製の原子分解能分析電子顕微鏡(製品名:JEM-ARM200F DUAL-X)を用い、加速電圧を200kVとした。
【0040】
図4(a)に示す結果から、発光層3に含まれるGaがファイバオプティクプレート基板2のコアガラス内に拡散していることが分かる。また、ファイバオプティクプレート基板2のコアガラスに含まれるLaが発光層3内に拡散していることも分かる。図4(b)に示す結果から、発光層3に含まれるInやGaがファイバオプティクプレート基板2のクラッドガラス内に拡散していることが分かる。また、ファイバオプティクプレート基板2のクラッドガラスに含まれるSiが発光層3内に拡散していることも分かる。ファイバオプティクプレート基板2内への発光層3の構成元素の拡散、或いは、発光層3内へのファイバオプティクプレート基板2の構成元素の拡散により、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3との接合強度が十分に高められることとなる。
[発光素子の製造例]
【0041】
図5は、発光素子の製造工程の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、発光素子1の製造工程は、発光層形成工程(ステップS01)と、接合工程(ステップS02)と、除去工程(ステップS03)と、金属層形成工程(ステップS04)とを含んで構成されている。
【0042】
発光層形成工程は、図6(a)に示すように、バッファ層12と、量子井戸構造を有する窒化物半導体層からなる発光層3とを補助基板11上に結晶成長させる工程である。バッファ層12及び発光層3の形成には、例えば有機金属化学気相成長(MOCVD)法を用いることができる。ここでは、補助基板11は、サファイア基板13である。サファイア基板13をMOCVD装置の成長室に導入し、水素雰囲気下で熱処理を行い、表面の清浄化を行う。次に、基板温度を1075℃程度に昇温してサファイア基板13上にGaNによるバッファ層12を形成する。バッファ層12の形成後、基板温度を800℃程度に降温し、GaN層6とInGaN層7とを交互に成長させて発光層3を得る。
【0043】
接合工程は、ファイバオプティクプレート基板2と、補助基板11上の発光層3とを直接接合して接合体Kを形成する工程である。ここでは、図6(b)に示すように、補助基板11上の発光層3の一方面3aをファイバオプティクプレート基板2の入射面2aとを対向させ、発光層3の一方面3aとファイバオプティクプレート基板2の入射面2aとを熱圧着する。熱圧着の条件は、例えば温度100℃~800℃、圧力2kg/cm~40kg/cmである。得られた接合体Kでは、発光層3の構成元素がファイバオプティクプレート基板2内に拡散し、ファイバオプティクプレート基板2の構成元素が発光層3内に拡散することで、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3の強固な接合が実現される。
【0044】
除去工程は、接合体Kから補助基板11及びバッファ層12を除去する工程である。補助基板11であるサファイア基板13の除去には、例えばレーザリフトオフを適用することができる。この場合、図7(a)に示すように、例えばパルス発振の高密度UVレーザ光をサファイア基板13に向けて照射し、GaNによるバッファ層12まで到達させる。これにより、バッファ層12の界面付近でGaNがGaとNとに分解され、バッファ層12からサファイア基板13を剥離できる。
【0045】
サファイア基板13の剥離の後、図7(b)に示すように、エッチングによってバッファ層12を除去する。GaNによるバッファ層12は、化学的に安定なため、エッチング速度を確保する観点からは、ドライエッチングを用いることが好適である。ドライエッチングの手法としては、例えば反応性イオンエッチング(RIE)、反応性イオンビームエッチング(RIBE)、化学アシストイオンビームエッチング(CAIBE)、電子サイクロトロン共鳴エッチング(ECRE)などが挙げられる。なお、バッファ層12の除去と同様に、サファイア基板13の除去をエッチングによって実施してもよい。サファイア及びGaNは、化学的に安定であり、非常に硬度が硬い物質であるが、研削及び研磨による加工も可能である。したがって、サファイア基板13及びGaNによるバッファ層12を除去する手法としては、研削及び研磨による加工を採用してもよい。
【0046】
金属層形成工程は、発光層3の他方面3bに金属層4を形成する工程である。ここでは、図8に示すように、発光層3の他方面3bにAlを蒸着して金属層4を形成する。これにより、図1に示した発光素子1が得られる。
[作用効果]
【0047】
以上説明したように、発光素子1では、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3とが直接接合されている。この発光素子1では、サファイア基板13上にバッファ層を介して発光層3を設ける従来の構成とは異なり、発光素子1に入射した光の一部がサファイア基板及びバッファ層を導波路として拡散することを回避でき、クロストークの低減が図られる。サファイア基板に代えてファイバオプティクプレート基板2を用いることで、発光層3で発生した蛍光の収集効率が高められる。また、光検出モジュールを構築するにあたってレンズカップリングが必須となることを回避でき、用途を広げることが可能となる。
【0048】
発光素子1では、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3とが熱圧着によって接合されている。これにより、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3とを接着剤を用いずに好適に直接接合することができる。また、発光素子1では、発光層3の構成元素がファイバオプティクプレート基板2内に拡散しており、ファイバオプティクプレート基板2の構成元素が発光層3内に拡散している。このような構成元素の拡散によって、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3との接合強度を十分に高めることができる。
【0049】
発光素子1では、発光層3がGaN層6とInGaN層7とが交互に積層された積層構造を有している。このような積層構造を有することで、発光層3において効率良く蛍光を発生させることができる。また、積層構造がファイバオプティクプレート基板2に直接接合されているため、発生した蛍光をファイバオプティクプレート基板2側に効率良く取り出すことができる。発光素子1では、発光層3の他方面3bに金属層4が設けられている。この金属層4により、発光層3に電子等が入射する際の帯電を防止できる。また、金属層4での光の反射により、発生した蛍光をファイバオプティクプレート基板2側に効率良く取り出すことができる。
【0050】
図9(a)は、比較例における蛍光のスポット形状を示す図であり、図9(b)は、実施例における蛍光のスポット形状を示す図である。また、図10は、実施例及び比較例における蛍光の輝度分布を示す図である。実施例では、図1に示した発光素子1と同様に、ファイバオプティクプレート基板と発光層とを直接接合したサンプルを用い、比較例では、サファイア基板上にInGanバッファ層及びGaN層を介して発光層を設けたサンプルを用いた。
【0051】
比較例に係るサンプルでは、図9(a)及び図10に示すように、サファイア基板を透過して外部に取り出された蛍光の半値全幅は、約50μmであった。これに対し、実施例に係るサンプルでは、図9(b)及び図10に示すように、ファイバオプティクプレート基板から外部に取り出された蛍光の半値全幅は、約42μmであった。したがって、実施例では、発光層で発生した蛍光の拡散が小さくなり、クロストークの抑制効果を奏することが確認できた。
[発光素子の応用例]
【0052】
上述した発光素子1は、例えばファイバオプティクプレート基板2側に光検出器22を配置することで、各種の光検出モジュール21を構築できる。光検出器22は、固体検出素子又は電子管デバイスによって構成されている。固体検出素子としては、CCDやCMOS等のイメージセンサ、フォトダイオードアレイ、アバランシェフォトダイオードアレイ、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードアレイ、イメージインテンシファイアなどが挙げられる。電子管デバイスとしては、光電子増倍管、ストリーク管などが挙げられる。
【0053】
発光素子1の性能を十分に活かす観点から、光検出器22は、多数の光を同時に位置検出可能なマルチチャンネル型の検出器であってもよく、さらに、時間分解性能を有する検出器であってもよい。位置検出及び時間分解の双方が可能な検出器としては、例えばマルチアノード光電子増倍管、ストリークカメラ、ゲートICCDカメラ、ゲートICMOSカメラなどが挙げられる。
【0054】
図11(a)に示す光検出モジュール21Aでは、発光素子1の後段側に光検出器22が配置されている。光検出器22は、ファイバオプティクプレート23を入力窓として備えている。光検出モジュール21Aは、真空チャンバや真空管といった真空容器M内に配置されている。光検出モジュール21Aは、例えば走査型電子顕微鏡の検出光学系に適用され得る。真空容器M内において、発光素子1の前段側にマイクロチャンネルプレート(不図示)を配置してもよい。この場合、マイクロチャンネルプレートによって荷電粒子を電子に変換し且つ増倍できるため、微小な荷電粒子のイメージ及び時間特性の取得が可能となる。
【0055】
図11(b)に示す光検出モジュール21Bでは、発光素子1の後段側に光検出器22が配置されている。光検出器22は、ファイバオプティクプレート23を入力窓として備えている。光検出モジュール21Bでは、真空チャンバや真空管といった真空容器M内に発光素子1が配置され、真空容器Mの外部に光検出器22が配置されている。発光素子1と光検出器22との間には、ファイバオプティクプレート24が更に配置されている。ファイバオプティクプレート24は、発光素子1及び光検出器22のファイバオプティクプレート23と光学的に結合すると共に、真空容器Mの窓材として真空容器Mの真空気密を保つように構成されている。光検出モジュール21Bは、例えば飛行時間型質量分析(TOF-MS)装置において、従来の撮像装置に代えて適用され得る。図11(a)の場合と同様に、真空容器M内において、発光素子1の前段側にマイクロチャンネルプレート(不図示)を配置してもよい。
【0056】
図11(c)に示す光検出モジュール21Cでは、発光素子1の後段側に光検出器22が配置されている。光検出器22は、ファイバオプティクプレート23を入力窓として備えている。光検出モジュール21Cは、例えば大気中に配置されている。光検出モジュール21Cは、例えば光検出器22をストリーク管とし、発光素子1の前段側にX線源やピンホールレンズなどを組み合わせることにより、X線ストリークカメラに適用することができる。発光素子1は、他の放射線についても発光可能であり、放射線の時間分解観察を実施できる。
【0057】
図12は、走査型電子顕微鏡の構成例を示す模式的な図である。同図に示す走査型電子顕微鏡31は、マルチビーム型の走査型電子顕微鏡であり、複数の一次電子線e1を出射可能な電子線源32と、上述した発光素子1と、検出光学系33とを含んで構成されている。電子線源32、試料S、発光素子1は、真空チャンバ34内に配置されている。検出光学系33は、真空チャンバ34の窓材として真空チャンバ34の真空気密を保つファイバオプティクプレート35と、光検出器36とによって構成されている。光検出器36は、ファイバオプティクプレート37を入力窓として備えるマルチチャンネル型の検出器であり、大気中に配置されている。
【0058】
電子線源32は、複数の一次電子線e1を試料Sに向けて出射する。複数の一次電子線e1は、ビームスプリッタ38を介して出射軸から軌道を変えた状態で試料Sに照射される。試料Sは、複数の一次電子線e1の入射軸に対して直交する面方向に移動可能なステージ39上に配置されている。電子線源32から出射した複数の一次電子線e1が試料Sに照射されると、試料Sの表面から複数の二次電子線e2が放出される。試料Sの表面から放出された複数の二次電子線e2は、ビームスプリッタ38を介して複数の一次電子線e1の出射軸と反対側に軌道を変え、発光素子1に入射する。発光素子1では、入射した二次電子線e2に応じた蛍光が発生する。発光素子1で発生した蛍光は、ファイバオプティクプレート37に導光されて大気中に導光され、光検出器36に入射する。光検出器36では、受光した蛍光に応じた検出信号が出力される。試料Sの表面における一次電子線e1の位置と、光検出器36からの検出信号とを同期付けることで、試料Sの像を得ることができる。
[変形例]
【0059】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3との直接接合を実現手段として熱圧着を例示したが、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3とは、常温接合によって直接接合されていてもよい。常温接合では、ファイバオプティクプレート基板2の入射面2a及び発光層3の一方面3aを研磨し、研磨面同士を当接させる。このような常温接合においても、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3とを接着剤を用いずに好適に直接接合することができる。また、常温接合では、熱による歪みがファイバオプティクプレート基板2に生じることも抑制される。なお、常温接合を行う場合は、補助基板11としてGaN基板を用いることが好ましい。補助基板11としてGaN基板を用いることで、基板の反りを比較的抑えることが可能となり、常温接合の歩留まりの向上が図られる。
【0060】
図13に示すように、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3との接合面Rにおいて、ファイバオプティクプレート基板2及び発光層3の少なくとも一方には、蛍光に対する屈折率がファイバオプティクプレート基板2と発光層3との間の屈折率となる中間層41が設けられていてもよい。中間層41は、例えばSiN層、Ta層、HfO層、又はこれらの組み合わせによって構成された層である。この場合、中間層41での屈折率の調整により、ファイバオプティクプレート基板2と発光層3との接合面Rにおいて、中間層41を反射防止膜等の機能的な層として機能させることができる。また、他の高屈折率材料を含む多層膜設計も容易となる。
【0061】
中間層41は、ファイバオプティクプレート基板2の構成要素であってもよく、発光層3の構成要素であってもよく、ファイバオプティクプレート基板2及び発光層3の双方の構成要素であってもよい。中間層41がファイバオプティクプレート基板2の構成要素である場合、ファイバオプティクプレート基板2の入射面2aが中間層41によって構成される。中間層41が発光層3の構成要素である場合、ファイバオプティクプレート基板2の一方面3aが中間層41によって構成される。図13の例では、中間層41は、発光層3の構成要素として示している。
【0062】
図14は、中間層を形成する場合の発光素子の製造工程の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、この場合の発光素子1の製造工程は、発光層形成工程と接合工程との間に中間層形成工程(ステップS05)を備える。中間層形成工程は、ファイバオプティクプレート基板2及び発光層3の少なくとも一方に中間層41を形成する工程である。図15の例では、中間層形成工程において発光層3側に中間層41を形成し、その後に、中間層41からなる発光層3の一方面3aとファイバオプティクプレート基板2の入射面2aとを熱圧着している。中間層形成工程において、中間層41をファイバオプティクプレート基板2側に形成してもよい。中間層41が複数層からなる場合、一部の層を発光層3側に形成し、残りの層をファイバオプティクプレート基板2側に形成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…発光素子、2…ファイバオプティクプレート基板、3…発光層、4…金属層、6…GaN層(窒化物半導体層)、7…InGaN層(窒化物半導体層)、11…補助基板、12…バッファ層、13…サファイア基板(補助基板)、21(21A~21C)…光検出モジュール、22…光検出器、31…走査型電子顕微鏡、32…電子線源、e1…一次電子線、e2…二次電子線、33…検出光学系、41…中間層、R…接合面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
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