(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115327
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20220802BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220802BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220802BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220802BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220802BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220802BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220802BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220802BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20220802BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220802BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/81
A61K8/37
A61Q11/00
A61K9/08
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/22
A61K31/4425
A61P1/02
A61P31/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011874
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】笹木 友美子
(72)【発明者】
【氏名】原 真佐夫
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 俊輔
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB22
4C076CC16
4C076CC31
4C076DD37
4C076DD43
4C076DD44
4C076DD61
4C076EE23
4C076FF68
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC861
4C083AC862
4C083AD091
4C083AD532
4C083DD27
4C083EE31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA57
4C086NA10
4C086ZA67
4C086ZB35
(57)【要約】
【課題】殺菌力に優れ、塩化セチルピリジニウムや界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に由来する苦味や不快味を抑制しかつ清涼感を有することによる優れた使用感を示す口腔用組成物を提供する。
【解決手段】塩化セチルピリジニウム、l-メントール、特定構造を有する共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよび/またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、サッカリンおよび/またはその塩を、それぞれ特定範囲の量で含む口腔用組成物が上記の課題を解決することの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化セチルピリジニウム0.0001~0.5 w/v%と、
l-メントール0.001~1.5 w/v%と、
重量平均分子量10,000~5,000,000であり、下記式(a)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(a)10~90 モル%と、下記式(b1)で表されるアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(b1)および下記式(b2)で表される(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位90~10モル%とを含有する共重合体(P)0.001~1.5 w/v%と、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよび/またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油0.01~15 w/v%と、
サッカリンおよび/またはその塩0.001~2.0 w/v%と、
を含む口腔用組成物。
【化1】
(式(a)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式(b1)中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【化3】
(式(b2)中、R
4は水素原子またはメチル基を示し、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌力に優れ、塩化セチルピリジニウムや界面活性剤に由来する苦味や不快味を抑制し、清涼感に優れたことによる使用感に優れた口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歯面、歯茎、舌や口腔内粘膜といった口腔内組織等における環境が、QOLや健康寿命に大きな影響を与えることが知られており、これまで以上に口腔内環境の維持や向上について注目されている。このような認識が広まるにつれて、幅広い年齢層の方が、口腔内環境を維持、向上させることを志向するようになり、ひいては、より使いやすく、より口腔内環境の維持や向上に有用な歯磨剤、洗口液剤、含嗽薬や口中清涼剤等の口腔用組成物のニーズが高まるものと予想されている。
【0003】
口腔用組成物には、口腔内環境の維持や向上を目的とした殺菌剤、界面活性剤や香料等が配合されている。このうち、殺菌剤としては塩化セチルピリジニウムが頻用されるものの、強い苦味があることから、甘味料やl-メントールなどの香料を併用することで、その苦味をマスキングできるとする技術開発がなされている(特許文献1)。しかし、塩化セチルピリジニウムの苦味を抑制し、良好な使用感や清涼感を両立する口腔用組成物は得られていないのが現状である。
【0004】
また、良好な使用感と洗浄作用を得る目的でl-メントールと界面活性剤を配合する技術も開発されている(特許文献2)ものの、界面活性剤に由来する不快味が生じるために、目的としている口腔用組成物が得られていないのが現状である。
このように、口腔内環境の維持や向上のための殺菌力に優れ、塩化セチルピリジニウムや界面活性剤に由来する苦味や不快味を抑制し、使用感や清涼感に優れる口腔用組成物が求められている現状があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-104377号公報
【特許文献2】特開2012-153670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、殺菌力(特に、細菌増殖抑制効果および細菌付着抑制効果)に優れ、塩化セチルピリジニウムや界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に由来する苦味や不快味を抑制しかつ清涼感を有することによる優れた使用感を示す口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、塩化セチルピリジニウム、l-メントール、特定構造を有する共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよび/またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、サッカリンおよび/またはその塩を、それぞれ特定範囲の量で含む口腔用組成物であれば、殺菌力に優れ、塩化セチルピリジニウムや界面活性剤に由来する苦味や不快味を抑制しかつ清涼感を有する優れた使用感を示す口腔用組成物となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0008】
1.塩化セチルピリジニウム0.0001~0.5 w/v%と、
l-メントール0.001~1.5 w/v%と、
重量平均分子量10,000~5,000,000であり、下記式(a)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(a)10~90 モル%と、下記式(b1)で表されるアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(b1)および下記式(b2)で表される(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位90~10モル%とを含有する共重合体(P)0.001~1.5 w/v%と、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよび/またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油0.01~15 w/v%と、
サッカリンおよび/またはその塩0.001~2.0 w/v%と、
を含む口腔用組成物。
【化1】
(式(a)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式(b1)中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【化3】
(式(b2)中、R
4は水素原子またはメチル基を示し、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物は、殺菌力に優れ、塩化セチルピリジニウムや界面活性剤に由来する苦味や不快味を抑制しかつ清涼感を有する優れた使用感を示す口腔用組成物である。本発明の口腔用組成物は、含嗽薬、歯磨剤、洗口液剤、口中清涼剤などに好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の口腔用組成物は、成分(A):塩化セチルピリジニウム0.0001~0.5 w/v%、成分(B):l-メントール0.001~1.5 w/v%、成分(C):式(a)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位10~90 モル%と、式(b1)で表されるアルキル基含有(メタ)アクリレートに基づく構成単位および式(b2)で表される(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位からなる群から少なくとも1種の構成単位90~10モル%とを含有する共重合体(P)0.001~1.5 w/v%、成分(D):ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、および/または、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油0.01~15 w/v%、成分(E):サッカリン、および/またはその塩0.001~2.0 w/v%、を含む口腔用組成物である。
各成分(A)~(E)のそれぞれの含有量は、口腔用組成物全量基準の値である。
【0011】
【化4】
(R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0012】
【化5】
(R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【0013】
【化6】
(R
4は水素原子またはメチル基を示し、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【0014】
本発明の口腔用組成物は、成分(A)~成分(E)の他、後述するその他の任意の成分を含有する組成物であってもよい。
【0015】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(A)は、塩化セチルピリジニウムである。塩化セチルピリジニウムは、含嗽薬、歯磨剤、洗口液剤、口中清涼剤などの口腔用製剤に、殺菌剤として広く用いられる成分であるため、使用にあたり制限はない。しかし、医薬用、医薬部外品用、化粧品用といった公定書に記載の原料を用いることが好ましい。
本発明の口腔用組成物に用いる成分(A)の含有量は、0.0001~0.5w/v%であり、好ましくは、0.015w/v%~0.45w/v%であり、さらに好ましくは0.15w/v%~0.35w/v%である。含有量が0.0001w/v%未満であると口腔内の細菌に対する殺菌力が低下する恐れがあり、含有量が0.5w/v%より多いと塩化セチルピリジニウムに由来する苦味により、使用感に優れる口腔用組成物を製することが困難となる恐れがある。
【0016】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(B)は、l-メントールである。l-メントールは、含嗽薬、歯磨剤、洗口液剤、口中清涼剤などの口腔用製剤に、清涼化剤として広く用いられる成分であり、使用に制限はない。しかし、医薬用、医薬部外品用、化粧品用といった公定書に記載の原料を用いることが好ましい。
本発明の口腔用組成物に用いる成分(B)の含有量は、0.001~1.5w/v%であり、好ましくは0.06~1.1w/v%であり、さらに好ましくは0.1~0.95w/v%である。含有量が0.001w/v%未満であると、清涼感が不足することにより、使用感に優れる口腔用組成物を製することが困難となる恐れがあり、含有量が1.5w/v%より多いと、口腔用組成物に均一溶解させることが困難となり、本発明の口腔用組成物を製することが困難となる恐れがある。
【0017】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)は、重量平均分子量10,000~5,000,000であり、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(a)10~90モル%と、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(b1)および(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位90~10モル%とを含有する共重合体(P)である。
【0018】
<2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(a)>
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(a)は、具体的には式(a)で表され、式(a’)で表される単量体の重合によって得られる。
【0019】
【化7】
(式(a)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0020】
【化8】
(式(a’)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0021】
式(a)および式(a’)において、R1は水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくはメチル基である。
【0022】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)は、分子鎖中に構成単位(a)を有することによって、細菌付着抑制効果に優れる口腔用組成物とすることができる。本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)中の2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位の含有量は、10~90モル%であり、好ましくは20~90モル%であり、さらに好ましくは30~90モル%である。含有量が10モル%未満であると、細菌付着抑制効果の発現が減弱する恐れがあり、含有量が90モル%より多いと共重合体(P)の親水性が高くなるため、口腔内組織や舌、歯面、歯科材料への吸着が低下し、細菌付着抑制効果を得られない恐れがあるため好ましくない。
【0023】
<アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(b1)>
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(b1)は、具体的には式(b1)で表され、式(b1’)で表される単量体の重合によって得られる。
【0024】
【化9】
(式(b1)中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【0025】
【化10】
(式(b1’)中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数4~18のアルキル基を示す。)
【0026】
式(b1)および式(b1’)において、R2は水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくはメチル基である。R3は炭素数4~18の直鎖状または分岐状のアルキルである。
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)は、分子鎖中に構成単位(b1)を有することによって、共重合体(P)へ疎水性を付与することができ、口腔内組織や舌、歯面、歯科材料への吸着性を高めることができる。
R3の炭素数4~18の直鎖状アルキル基としては、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基が挙げられる。
炭素数4~18の分岐状アルキル基としては、t-ブチル基、イソブチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソへプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基などが挙げられる。
R3は、より好ましくは、n-ブチル基、n-ドデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基等である。
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体の好適な例として、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートがより好ましく挙げられる。
【0027】
<(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(b2)>
(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(b2)は、具体的には式(b2)で表され、式(b2’)で表される単量体の重合によって得られる。
【0028】
【化11】
(式(b2)中、R
4は水素原子またはメチル基を示し、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【0029】
【化8】
(式(b2’)中、R
4は水素原子またはメチル基を示し、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【0030】
式(b2)および式(b2’)において、R4は水素原子もしくはメチル基のいずれでも良いが、好ましくは水素原子である。R5およびR6は炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキルである。
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)は、分子鎖中に構成単位(b2)を有することによって、共重合体(P)を高分子量化することができ、口腔内組織や舌、歯面、歯科材料などへの吸着性を高めることができる。
【0031】
R5およびR6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示し、アルキル基は直鎖状、分岐状および環状のいずれであっても良い。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。R5およびR6は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基もしくはイソプロピル基であり、より好ましくはメチル基である。
(メタ)アクリルアミド系単量体の好適な例としては、N,N-ジメチルアクリルアミド等を挙げることができる。
【0032】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)は、分子鎖中に(b1)および(b2)からなる群から選択される少なくとも1つの構成単位を有する。本発明に用いる共重合体(P)は、分子鎖中に(b1)および(b2)からなる群から選択されるいずれか1つの構成単位のみを有していてもよく、(b1)および(b2)の両方の構成単位を有していてもよい。
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)は、分子鎖中に構成単位(b1)、(b2)を有することによって、共重合体(P)の口腔内組織、舌、歯面、歯科材料への吸着性を高めることができる。
【0033】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)中の構成単位(b1)および/または(b2)の含有量{(b1)、(b2)のうちいずれか1つの構成単位のみ含有する場合は当該構成単位の含有量、(b1)および(b2)両方の構成単位を含有する場合はそれらの構成単位の含有量の合計}は、10~90モル%であり、好ましくは10~80モル%であり、より好ましくは10~70モル%である。含有量が10モル%未満であると共重合体(P)の疎水性が低下し、口腔内組織や舌、歯面、歯科材料への吸着性が低下する恐れがあり、90モル%より多いと共重合体(P)が疎水性化合物となることで水へ不溶となり、口腔用組成物を製することが困難となる恐れがある。
【0034】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)の分子鎖中に含まれる、構成単位(a)と構成単位(b1)および(b2)の組み合わせの好適な例は、以下の通りである。便宜上、単量体の名称で組み合わせを記載する。
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびブチルメタクリレート
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびステアリルメタクリレート
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N,N-ジメチルアクリルアミドおよびステアリルメタクリレート
【0035】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)は、構成単位(a)、構成単位(b1)および(b2)以外の構成単位を含んでいてもよいが、好ましくは、構成単位(a)と、構成単位(b1)および(b2)からなる群から選択される1または2の構成単位からのみなる。
【0036】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)は、公開公報特開平11-035605の方法に準じて重合を行って得たポリマー、公開公報特開2004-196868の方法に準じて重合を行って得たポリマー、公開公報特開2012-088524の方法に準じて重合を行って得たポリマー等を用いることができる。
【0037】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の共重合体(P)の重量平均分子量は、10,000~5,000,000であり、好ましくは50,000~3,000,000である。重量平均分子量が10,000未満であると口腔内組織や舌、歯面、歯科材料への吸着性が低下し、5,000,000より大きいと粘度が急激に上昇し、口腔用組成物を製することが困難となる恐れがある。
なお、本発明の共重合体の重量平均分子量は、例えば、EcoSECシステム(東ソー株式会社製)を用いたGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)測定により、ポリエチレングリコール換算で求められる。
【0038】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(C)の含有量は、0.001~1.5 w/v%であり、好ましくは0.005~1.5 w/v%である。
含有量が0.001 w/v%未満であると、共重合体(P)による口腔内組織や舌、歯面、歯科材料への細菌付着抑制効果が得られない恐れがあり、含有量が1.5 w/v%を超えると、添加量に見合った効果が得られず、経済的に不利である。
【0039】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(D)は、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、および/または、界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、および/または、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、含嗽薬、歯磨剤、洗口液剤、口中清涼剤などの口腔用製剤に、広く用いられる成分であるため、使用にあたり制限はない。しかし、医薬用、医薬部外品用、化粧品用といった公定書に記載の原料を用いることが好ましい。
本発明の口腔用組成物に用いる成分(D)のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトールまたはソルビタンと脂肪酸とのエステルであるソルビタン脂肪酸エステルに、エチレンオキシドを付加させることによって得られる。エチレンオキシドの付加モル数は、好ましくは15~30モル、より好ましくは20~30モルである。
エステルを形成する脂肪酸としては、炭素数が8~24の飽和あるいは不飽和脂肪酸が適し、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの単一脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の動植物油由来の混合脂肪酸などを用いることができる。脂肪酸の炭素数は、好ましくは8~22、さらに好ましくは12~18である。脂肪酸エステルの数は、好ましくは1~3、さらに好ましくは1(すなわちモノエステル)である。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン(ポリソルベート80)、などが挙げられる。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100である。ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を用いることが好ましい。なお、化合物名の後に続く数字は、ポリオキシエチレンの付加モル数である。
本発明の口腔用組成物に用いる成分(D)の含有量は、0.01~15w/v%であり、好ましくは、0.1~14w/v%であり、さらに好ましくは1.0~13.0w/v%である。含有量が0.01w/v%未満や、含有量が15w/v%より多いと清涼感がないことによる使用感が優れた口腔用組成物を製することが困難となる恐れがある。
【0040】
本発明の口腔用組成物に用いる成分(E)は、サッカリンおよび/またはその塩である。サッカリンの塩は、具体的には、サッカリンナトリウム、サッカリンカリウム、サッカリンカルシウム等を例示することができ、好ましくはサッカリンナトリウムである。
サッカリンおよび/またはその塩は、含嗽薬、歯磨剤、洗口液剤、口中清涼剤などの口腔用製剤に広く用いられる成分であるため、使用にあたり制限はないが、医薬用、医薬部外品用、化粧品用といった公定書に記載の原料を用いることが好ましい。
本発明の口腔用組成物に用いる成分(E)の含有量は、0.001~2.0w/v%であり、好ましくは、0.1~1.8w/v%であり、さらに好ましくは0.5~1.5w/v%である。含有量が0.001w/v%未満や、含有量が2.0w/v%より多いと清涼感がないことによる使用感が優れた口腔用組成物を製することが困難となる恐れがある。
【0041】
本発明の口腔用組成物は、本発明の口腔用組成物に用いる成分(A)~成分(E)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に用いられる公知の成分を含んでもよい。このような成分としては、例えば、薬効成分、基剤、湿潤剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、香味剤等が挙げられる。
【0042】
薬効成分としては、例えば、抗炎症剤としてグリチルリチン酸二カリウム、アズレンスルホン酸ナトリウム、アラントイン、イプシロンアミノカプロン酸など;血行促進剤として酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素;出血改善剤としてアスコルビン酸など;その他、水溶性溶媒で抽出された植物抽出物、クロロフィル、塩化ナトリウム等を挙げることができる。これらの薬効成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
基剤としては、例えば、水、ブドウ水、ヘチマ水、ボダイジュ水、ヤグルマギク水、ユーカリ水、ヨモギ水、リンゴ水、ローズマリー水などの植物関連の水、エタノール、ブタノール、プロピレングリコールなどのアルコール類、シリコン等を挙げることができる。アルコール類としては、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、エタノールが好ましい。なお、これらの基剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合できる。
【0044】
湿潤剤としては、例えば、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、トルナーレ、トレハロース、トレハロース硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸等を挙げることができる。
【0045】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を挙げることができる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
着色剤としては、例えば、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を挙げることができる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸(クエン酸ナトリウム)、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を挙げることができる。これらは、口腔用組成物のpHが、好ましくは4~8、より好ましくは5~7の範囲になるように、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。なかでもpH緩衝能が強く生じる組合せがより好ましい。例えば、酸化合物またはアルカリ化合物とそれらの塩を組み合わせることが好ましい。pH調整剤の配合量は、好ましくは0.01~2w/v%である。
【0048】
香味剤としては、例えば、カルボン、サリチル酸メチル、バニリン、ベンジルサクシネート、アネトール、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、メチルアセタート、シトロネニルアセテート、エチルリナロール、ナツメグ、シンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、シソ油、冬緑油、ティーツリー油、タバナ油、スターアニス油、フェンネル油、珪藻油、バジル油等を挙げることができる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
本発明の口腔用組成物の形態は特に限定されず、例えば、液状、ゲル状、ペースト状などの形態を挙げることができる。本発明の口腔用組成物の具体的な形態は、液状、ゲル状、ペースト状の歯磨剤や、液状、ゲル状の口中清涼剤、洗口剤、含嗽薬などである。
【0050】
本発明の口腔用組成物は、常法により製造することができる。具体的には、例えば、各成分を適宜混合して製造することができる。
【0051】
本発明の口腔用組成物は、例えば、医薬品や医薬部外品、化粧品として用いることができ、医薬品や医薬部外品に用いることが好ましい。
【0052】
本発明の組成物は、レジンやチタン含有金属への適合性のみならず歯および口腔粘膜への適合性があることから、歯科補綴物使用者向け口腔用組成物として用いることができる。好適に用いられる歯科補綴物とは具体的に、インレー、アンレー、クラウン、ブリッジ、全部床義歯、部分床義歯、インプラントが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0053】
本発明の組成物は、金属性(チタン、金、銀、パラジウム、プラチナ、コバルトクロム、ステンレス)の歯科補綴物用口腔用組成物だけでなく、プラスチック、セラミックス、樹脂(例えば、硬質レジン)の歯科補綴物用口腔用組成物にも適用可能である。
【実施例0054】
以下、本発明について実施例および比較例により、本発明の口腔用組成物を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に用いたポリマーは、次の通りである。
【0055】
MPCポリマー(1):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・N,N-ジメチルアクリルアミド・ステアリルメタクリレート共重合体〔共重合組成(モル比)50/45/5、重量平均分子量:1,000,000〕であり、特開2012-088524の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
MPCポリマー(2):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ステアリルメタクリレート共重合体〔共重合組成(モル比)33/67、重量平均分子量:164,000〕であり、特開2004-196868の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
MPCポリマー(3):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比)30/70、重量平均分子量:142,000〕であり、特開2004-196868の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
MPCポリマー(4):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比)80/20、重量平均分子量:100,000〕であり、特開平11-035605の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
MPCポリマー(5):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・ブチルメタクリレート共重合体〔共重合組成比(モル比)80/20、重量平均分子量:600,000〕であり、特開平11-035605の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
比較例で使用するMPCポリマー(6):2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの重合体〔重量平均分子量:200,000〕であり、特開平8-333421の実施例記載の方法によって重合を行って得られた。
[GPC測定]
上記の各MPCポリマーのGPC測定は以下の条件で実施した。
GPCシステム:EcoSECシステム(東ソー株式会社製)
カラム:Shodex OHpak SB-802.5HQ(昭和電工株式会社製)、およびSB-806HQ(昭和電工株式会社製)を直列に接続
展開溶媒:20 mMりん酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)
検出器:示差屈折率検出器
分子量標準:EasiVial PEG/PEO(Agilent Technologies社製)
流速:0.5 mL/分
カラム温度:40℃
サンプル:得られた各MPCポリマーを終濃度0.1 重量%になるように展開溶媒で希釈
注入量:100 μL
【0056】
本発明における殺菌力は、従来から知られる殺菌効果(最小発育阻止濃度評価:細菌増殖抑制効果)に加えて、細菌付着抑制効果による口腔内環境維持の2つの側面から構成されると定義して、以下の2種類の試験を行った。
【0057】
<細菌付着抑制試験>
以下の手順に従い、細菌付着抑制試験を行った。
(1)ストレプトコッカス ミュータンス(S.mutans,NBRC13955)をBrain Heart Infusion培地 20 mLに分散し、37℃、嫌気性条件下において一晩培養した。この時、ストレプトコッカス ミュータンスは、600 nmにおける濁度(OD600)が1.0となるように培養した。
(2)24ウェルプレートに歯科材料(9mm×9mm、材質:アクリルレジン)を入れ、DPBS(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、シグマアルドリッチ製)1 mLを用いて洗浄処理を行った。ヒト唾液を遠心分離してろ過滅菌処理を行った溶液(ペリクル溶液)を100 μL加えて、室温にて10分間静置した。
(3)24ウェルプレートからペリクル溶液をDPBS1mLで1回洗浄することで除去し、各実施例もしくは各比較例の口腔用組成物1mLを加えて、一晩静置した。
(4)一晩静置後、各実施例もしくは各比較例の口腔用組成物を24ウェルプレートからDPBS1mLで1回洗浄することで除去し、(1)にて培養したストレプトコッカス ミュータンス溶液1 mLを加えて細菌接触させ、37℃、嫌気性条件下にて4時間培養を行った。
(5)DPBS 1mLで3回洗浄、メタノール 1mLを用いてのストレプトコッカス ミュータンスの歯科材料への固定化、グラム染色液(フェイバーG「ニッスイ」染色液A ビクトリアブルー、日水製薬株式会社製)0.1 mLでのグラム染色を行った。70%イソプロパノール溶液0.5 mLにて染色液を抽出し、595nmにおける吸光度測定を行った。
なお、各実施例もしくは各比較例における試験の際、対照として生理食塩液(日本薬局方、0.9%塩化ナトリウム)を用いた評価を行った。
【0058】
以下の式を用いて、細菌付着抑制率を算出し、細菌付着抑制率が60%以上であるとき、細菌付着抑制効果を有すると判断した。
【0059】
(細菌付着抑制率,%)=100-[(各実施例もしくは各比較例を用いた際の吸光度,Abs)/(生理食塩液を用いた際の吸光度,Abs)×100]
【0060】
<最小発育阻止濃度試験>
以下の手順に従い、最小発育阻止濃度試験を行った。
(1)ストレプトコッカス ミュータンス(S.mutans,NBRC13955)をBrain Heart Infusion培地 20 mLに分散し、37℃、嫌気性条件下において一晩培養した。この時、ストレプトコッカス ミュータンスが、107 CFU/mLとなるように培養、調整した。
(2)各実施例もしくは各比較例の口腔用組成物100 μLをそれぞれ96ウェルプレートに加え、Brain Heart Infusion培地を用いて、公比2で段階希釈し、2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、128倍、256倍、512倍、1024倍の希釈系列を調製した。
(3)(1)で培養、調整した菌液を96ウェルプレートに50μLずつ加え、37℃、嫌気性条件下にて48時間培養した。
(4)培養後、96ウェルプレート中の溶液の混濁の有無を確認し、混濁を認めなかった最も高希釈倍率のものを最小発育阻止濃度とした。
なお、最小発育阻止濃度を以下の判定基準に従って、殺菌力の評価を行い、「-」の評価以上のものを合格と判断した。
【0061】
〔殺菌力の評価基準〕
---:MIC(Minimal Inhibitory Concentration:最小発育阻止濃度)が50倍以上
--:MICが30倍以上50倍未満
-:MICが2倍以上30倍未満
+:菌の増殖を認めた
段階希釈前の口腔用組成物濃度を1倍に設定した。
【0062】
<苦味・清涼感・不快味に関する評価>
27から55歳の男女パネラー25人に対して、各実施例もしくは各比較例の口腔用組成物5mLを口に含み、10秒間うがいをした後、うがい後の苦味・清涼感・不快味の有無を4段階で判定した。評価は〇以上を合格と判断した。
以下に各評価項目の評価基準(数値)および判定基準を次に示す。なお、各判定基準には、25人のパネラー評価結果の平均値を用いた。
【0063】
〔苦味の評価基準〕
0:苦味を感じない
1:殆ど苦味を感じない程度
2:わずかに苦味を感じる程度
3:明らかに苦味を感じる程度
4:強い苦味を感じる
【0064】
〔苦味の判定基準〕
◎:1点未満
○:1点以上2点未満
△:2点以上3点未満
×:3点以上
【0065】
〔清涼感の評価基準〕
0:清涼感を感じない
1:ほとんど清涼感がない
2:やや清涼感がある
3:明らかに清涼感がある
4:非常に清涼感がある
【0066】
〔清涼感の判定基準〕
◎:3点以上
○:2点以上3点未満
△:1点以上2点未満
×:1点以下
【0067】
〔不快味の評価基準〕
0:不快味を感じない
1:ほとんど不快味を感じない
2:わずかに不快味を感じる
3:明らかに不快味を感じる
4:強い不快味を感じる
【0068】
〔不快味の判定基準〕
◎:1点未満
○:1点以上2点未満
△:2点以上3点未満
×:3点以上
【0069】
<実施例1>
精製水40gに、MPCポリマー(1)0.005 g、塩化セチルピリジニウム0.25 g、サッカリンナトリウム水和物0.8 g、グリチルリチン酸二カリウム0.75 gを加えて混合し、水層とした。プロピレングリコール40gにl-メントール0.75 g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 3.0 g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40 1.0 g、ポリソルベート80 3.0 gを加えて混合し、油相とした。水相および油相を混合して均一に溶解させた。溶解させた後、クエン酸ナトリウム水和物0.10 gを加えてpHを6.6に調整し、精製水を加えて100mLとして実施例1の口腔用組成物とした。実施例1の口腔用組成物の性状、pHを表1に示す。また、細菌付着抑制試験結果、最小発育阻止濃度試験結果、苦味・清涼感・不快味に関する判定結果を表3に示す。
【0070】
<実施例2~実施例15、比較例1~比較例13>
配合成分の組成を表1および表2に示すものに変更した以外は、実施例1に記載の方法と同様に、実施例2~実施例15、比較例1~比較例13の口腔用組成物を調製した。各実施例もしくは各比較例の性状およびpHを表1および表2に示し、細菌付着抑制試験結果、最小発育阻止濃度試験結果、苦味・清涼感・不快味に関する判定結果を表3および表4に示す。
【0071】
なお、各実施例および各比較例の調製では、以下の原料を用いた。
塩化セチルピリジニウム:局外規セチルピリジニウム塩化物水和物、富士フイルム和光純薬株式会社製
l-メントール:日本薬局方l-メントール「コザカイ・M」、小堺製薬株式会社製
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60:薬添規 ユニオックスHC-60、日油株式会社製
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40:薬添規 ユニオックスHC-40、日油株式会社製
ポリソルベート80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン):日本薬局方、日油株式会社製
サッカリンナトリウム水和物:日本薬局方 サッカリンナトリウム水和物、純正化学株式会社製
グリチルリチン酸二カリウム:局外規 グリチルリチン酸二カリウム、丸善製薬株式会社製
プロピレングリコール:日本薬局方 プロピレングリコール、丸石製薬株式会社製
エタノール:日本薬局方 無水エタノール「製造専用」、富士フイルム和光純薬株式会社製
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
実施例1~実施例15の口腔用組成物は、細菌付着抑制効果および最小発育阻止濃度効果を有することを確認した。加えて、実施例1~実施例15の苦味、清涼感および不快味の判定に関し、◎または〇であることを確認した。実施例1~実施例15の口腔用組成分は、すべての評価基準を満たしてので、総合的な評価である良好な使用感であることを確認した。
一方で、比較例1~比較例13の口腔用組成物は、細菌付着抑制試験はすべて不合格であった。さらに、比較例2および比較例11では、最小発育阻止濃度試験でも不合格となった。また、苦味、清涼感、不快味の多くで△または×であった。よって、すべての評価基準を満たしている良好な使用感を示す口腔用組成物は得られなかった。詳しくは、比較例1は成分(C)を含有せず、比較例2は成分(A)を含有せず、比較例3は成分(B)を含有せず、比較例4は成分(D)を含有せず、比較例5および6は成分(E)を含有せず、比較例7は成分(C)の代わりにアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(b1)および(メタ)アクリルアミド系単量体に基づく構成単位(b2)を含有しない重合体を使用しており、比較例8は成分(C)の含有量が0.001w/v%未満であり、比較例9は成分(A)の含有量が0.5w/v%より多く、比較例10は成分(B)の含有量が1.5w/v%より多く、比較例11は成分(D)の含有量が15w/v%より多く、比較例12は成分(D)の含有量が0.01w/v%未満であり、成分(E)の含有量が2.0w/v%より多く、比較例13は成分(E)を含有しないためである。
以上の結果より、本発明の口腔用組成物は、近年の食生活の変化により、口腔内に菌が付着しやすくなった状況でも、消費者による実使用を想定した細菌付着抑制試験及び最小発育阻止濃度試験においても、殺菌力(特に、細菌増殖抑制効果および細菌付着抑制効果)に優れ、塩化セチルピリジニウムや界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に由来する苦味や不快味を抑制しかつ清涼感を有することによる優れた使用感を示すことを確認した。