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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115377
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/08 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
B43K24/08 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011949
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】相原 康宏
(72)【発明者】
【氏名】田口 貴之
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC04
2C353HG04
(57)【要約】
【課題】 筆記動作に伴う衝撃や振動を効果的に抑制する。
【解決手段】
軸筒10内に、前端に筆記部21を有する中芯20と、中芯20を後方へ付勢する付勢部材30と、中芯20とを後方側から受ける受け部材41と、受け部材41の後方側に設けられ軸筒10に対し進退可能かつ回転可能な回転子42と、回転子42に相対し受け部材41を付勢部材30の付勢力よりも大きい力で前方へ弾発する環状弾発部材43とを備え、回転子42を付勢部材30の付勢力に抗して前進させ軸筒10に係止することで筆記部21を突出させてその突出状態を保持するように構成され、受け部材41は、中芯20との後端を後方から受ける受部41aと、この受部41aから後方へ突出した軸部41bとを一体に備え、環状弾発部材43は、軸部41bに対し環状に装着され、回転子42は、軸部41bに対し進退可能に嵌り合っている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に、前端に筆記部を有する中芯と、前記中芯を後方へ付勢する付勢部材と、前記中芯を後方側から受ける受け部材と、前記受け部材の後方側に設けられ前記軸筒に対し進退可能かつ回転可能な回転子と、前記回転子に相対し前記受け部材を前記付勢部材の付勢力よりも大きい力で前方へ弾発する環状弾発部材とを備え、前記回転子を前記付勢部材の付勢力に抗して前進させ前記軸筒に係止することで前記筆記部を突出させてその突出状態を保持するように構成され、
前記受け部材は、前記中芯の後端を後方から受ける受部と、この受部から後方へ突出した軸部とを一体に備え、
前記環状弾発部材は、前記軸部に対し環状に装着され、
前記回転子は、前記軸部に対し進退可能に嵌り合っていることを特徴とする出没式筆記具。
【請求項2】
前記回転子は、大径部と該大径部の後端側で内周面を縮径した小径部とを有する略筒状に形成され、前記大径部により前記環状弾発部材の周囲を覆うとともに、前記小径部により前記環状弾発部材の後端を受けていることを特徴とする請求項1記載の出没式筆記具。
【請求項3】
前記軸部は、前記環状弾発部材を貫通するとともに、前記環状弾発部材よりも後側に、前記小径部に設けられた被係合部に対し所定量進退可能に係合する係合部を有することを特徴とする請求項2記載の出没式筆記具。
【請求項4】
前記被係合部が貫通状の円形孔であり、
前記係合部よりも後側の外周部には、前記円形孔の内周面に圧入されて前記円形孔を通り抜ける圧入部と、前記圧入部に対し周方向に隣接するとともに前記円形孔の内周面に接触せずに前記円形孔を通り抜ける遊挿部とが設けられることを特徴とする請求項3記載の出没式筆記具。
【請求項5】
前記軸部には、前記回転子に対し前後方向へ摺接する摺接部が設けられていることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の出没式筆記具。
【請求項6】
前記摺接部には、前記環状弾発部材よりも前側に位置する前側摺接部と、前記環状弾発部材よりも後側に位置する後側摺接部とがあることを特徴とする請求項5記載の出没式筆記具。
【請求項7】
前記受け部材が、前記回転子に対し回転自在に接続されていることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の出没式筆記具。
【請求項8】
前記回転子が、前記軸部に対し進退可能であって且つ分離しないように嵌り合い、前記受け部材と、前記回転子と、前記環状弾発部材とが、一体的な回転子ユニットを構成していることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック操作により軸筒の前端から筆記部を出没するようにした出没式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、軸筒内に、前記軸筒の前端から出没する筆記体と、前記筆記体を後方へ付勢する戻しバネと、前記筆記体を後方側から受けて収縮する第2のバネと、筆記体後退側の筒状部分及び第2のバネに対し凹状に嵌り合った回転子とを備え、前進した際の前記回転子を軸筒に係止して、前記筆記体の突出状態を保持するようにした繰出し式筆記具がある。
特許文献1には、「第2のバネを組み込んだことによりクッション効果が得られ、長時間の筆記による疲労防止、又は落下等の衝撃の緩和による筆先部の保護及び構造の簡単化等の効果ももたらされる」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60-157284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、筆記体の芯ずれや撓み等に起因して、第2のバネによるクッション効果を十分に発揮しない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
軸筒内に、前端に筆記部を有する中芯と、前記中芯を後方へ付勢する付勢部材と、前記中芯を後方側から受ける受け部材と、前記受け部材の後方側に設けられ前記軸筒に対し進退可能かつ回転可能な回転子と、前記回転子に相対し前記受け部材を前記付勢部材の付勢力よりも大きい力で前方へ弾発する環状弾発部材とを備え、前記回転子を前記付勢部材の付勢力に抗して前進させ前記軸筒に係止することで前記筆記部を突出させてその突出状態を保持するように構成され、前記受け部材は、前記中芯の後端を後方から受ける受部と、この受部から後方へ突出した軸部とを一体に備え、前記環状弾発部材は、前記軸部に対し環状に装着され、前記回転子は、前記軸部に対し進退可能に嵌り合っていることを特徴とする出没式筆記具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、筆記動作に伴う衝撃や振動を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る筆記具の一例を示す全断面図であり、(a)は筆記部を没入した状態、(b)は筆記部を突出した状態を示す。
図2】同筆記具の回転子ユニットを示す半断面図である。
図3】同回転子ユニットにおいて、(a)は受け部材が初期位置にある状態を示し、(b)は受け部材が後退して回転子に当接した状態を示す。
図4】同回転子ユニットの分解斜視図である。
図5】軸筒に対し回転子ユニットを組付けている様子を示す。なお、軸筒は全断面図、回転子ユニットは側面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、軸筒内に、前端に筆記部を有する中芯と、前記中芯を後方へ付勢する付勢部材と、前記中芯を後方側から受ける受け部材と、前記受け部材の後方側に設けられ前記軸筒に対し進退可能かつ回転可能な回転子と、前記回転子に相対し前記受け部材を前記付勢部材の付勢力よりも大きい力で前方へ弾発する環状弾発部材とを備え、前記回転子を前記付勢部材の付勢力に抗して前進させ前記軸筒に係止することで前記筆記部を突出させてその突出状態を保持するように構成され、前記受け部材は、前記中芯の後端を後方から受ける受部と、この受部から後方へ突出した軸部とを一体に備え、前記環状弾発部材は、前記軸部に対し環状に装着され、前記回転子は、前記軸部に対し進退可能に嵌り合っている(図1図5参照)。
【0009】
第二の特徴として、前記回転子は、大径部と該大径部の後端側で内周面を縮径した小径部とを有する略筒状に形成され、前記大径部により前記環状弾発部材の周囲を覆うとともに、前記小径部により前記環状弾発部材の後端を受けている(図2参照)。
【0010】
第三の特徴として、前記軸部は、前記環状弾発部材を貫通するとともに、前記環状弾発部材よりも後側に、前記小径部に設けられた被係合部に対し所定量進退可能に係合する係合部を有する(図2参照)。
【0011】
第四の特徴として、前記被係合部が貫通状の円形孔であり、前記係合部よりも後側の外周部には、前記円形孔の内周面に圧入されて前記円形孔を通り抜ける圧入部と、前記圧入部に対し周方向に隣接するとともに前記円形孔の内周面に接触せずに前記円形孔を通り抜ける遊挿部とが設けられる(図2及び図4参照)。
【0012】
第五の特徴として、前記軸部には、前記回転子に対し前後方向へ摺接する摺接部が設けられている(図2参照)。
【0013】
第六の特徴として、前記摺接部には、前記環状弾発部材よりも前側に位置する前側摺接部と、前記環状弾発部材よりも後側に位置する後側摺接部とがある(図2参照)。
【0014】
第七の特徴として、前記受け部材が、前記回転子に対し回転自在に接続されている(図2及び図4参照)。
【0015】
第八の特徴として、前記回転子が、前記軸部に対し進退可能であって且つ分離しないように嵌り合い、前記受け部材と、前記回転子と、前記環状弾発部材とが、一体的な回転子ユニットを構成している(図2及び図5参照)。
【0016】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
本明細書中、軸筒軸方向とは軸筒の中心線が延設される方向を意味し、軸筒周方向とは軸筒中心線の周囲を回る方向を意味する。また、「前」とは、軸筒軸方向の一方側であって筆記部が突出する方向を意味し、「後」とは、前記一方側に対する逆方向側を意味する。
また、本明細書中、軸筒径方向とは軸筒の中心線に直交する軸筒の直径方向を意味し、軸筒径方向外側とは軸筒径方向に沿って軸筒中心から離れる方向を意味し、軸筒径方向内側とは軸筒径方向に沿って軸筒中心に向かう方向を意味する。
また、本明細書中、中芯径方向とは中芯の中心線に直交する中芯の直径方向を意味し、中芯径方向外側とは中芯径方向に沿って中芯中心から離れる方向を意味し、中芯径方向内側とは中芯径方向に沿って中芯中心に向かう方向を意味する。
【0018】
この出没式筆記具Aは、軸筒10と、軸筒10内に収容されるとともに前端に筆記部21を有する中芯20と、軸筒10内で中芯20を後方へ付勢する付勢部材30と、軸筒10内で中芯20を後方側から受ける回転子ユニット40と、回転子ユニット40に対し後方から係脱可能であって後端側を軸筒10内から軸筒10外へ突出しているノック体50とを備え、回転子ユニット40の回転子42を付勢部材30の付勢力に抗して前進させ軸筒10の内周面に係止することで筆記部21を軸筒10の前端から突出させその突出状態を保持する。
【0019】
軸筒10は、単数又は複数の筒状部材から前後方向へわたる長尺筒状に構成される。図示例の軸筒10は、先細筒状の先口部11と、この先口部を11を前端側に螺合接続した筒状の前軸12と、この前軸12を前端側に螺合接続した筒状の後軸13とから一体の長尺略筒状に構成される。
なお、図中符号14は、前軸12の外周部に嵌め合わせられた筒状の弾性グリップ、符号15は、後軸13の後端側で開閉するクリップである。
【0020】
先口部11の内周面には、付勢部材30の前端部を係止するために、前方へ向かって縮径された環状の段部11aが設けられる。
【0021】
後軸13の内周面の後端側には、回転子42を回転不能に進退させるスライド溝13aや、前進した際の回転子42を回転させて係止するカム斜面及び係止面(図示せず)等が設けられる。これらの構成は、例えば特開2018-149787号公報に記載された構造を適用することが可能である。
【0022】
また、後軸13の内周面において、スライド溝13a及び前記カム斜面等よりも前側には、組立作業時に回転子ユニット40を後方へ乗越え嵌合させるための乗越え嵌合突起13bが設けられる(図5参照)。
この乗越え嵌合突起13bは、軸筒周方向に間隔を置いて複数設けられる。
各乗越え嵌合突起13bは、縦断面略山形状の突起である。
【0023】
中芯20は、図示例によれば、ボールペン用リフィールであり、長尺円筒状のインクタンク22の前端に、ボールペンチップである筆記部21を接続している。
この中芯20の他例としては、シャープペンシル用リフィールや、電子機器用の入力ペン(スタイラスペン)を構成するリフィール等とすることも可能である。
この中芯20の外周面の前端側には、前方へ向かって縮径する段部23が設けられる。この段部23は、付勢部材30の後端に当接し、付勢部材30の後方への付勢力(弾発力)を受けている。
【0024】
付勢部材30は、図示例によれば、環状弾発部材であり、その前端部を軸筒10内の段部11aに当接するとともに、後端部を中芯20との段部23に当接して、中芯20及び回転子ユニット40を後方へ付勢している。
なお、付勢部材30の他例としては、中芯20を後方へ引っ張るようにした引張コイルバネとすることも可能である。
【0025】
回転子ユニット40は、中芯20を後方側から受ける受け部材41と、受け部材41の後方側に設けられ軸筒10に対し進退可能かつ回転可能な回転子42と、回転子42に相対し受け部材41を付勢部材30の付勢力よりも大きい力で前方へ弾発する環状弾発部材43とを具備して一体的に構成される。
この回転子ユニット40は、付勢部材30の付勢力に抗して前進した際に、軸筒10内面に係止することで筆記部21を突出状態に保持する。
【0026】
受け部材41は、回転子42に対し、所定量進退自在であって、且つ回転自在に接続されている。
この受け部材41は、中芯20の後端を後方から受ける薄肉円柱状の受部41aと、この受部41aの後端面中央側から後方へ突出した軸部41bと、軸部41bの周囲において受部41a後端面から後方へ突出する複数の突起部41cとを一体に有する。
【0027】
軸部41bは、環状弾発部材43を貫通する長尺軸状に形成され、その外周面に、回転子42に対し前後方向へ摺接する前側摺接部41b1及び後側摺接部41b31(係合部)を有する。
【0028】
前側摺接部41b1は、環状弾発部材43よりも前側(図2によれば左側)に位置する円筒状の面であり、回転子42を所定量進退させるように、その前後方向の長さが適宜に設定されている。
【0029】
軸部41bにおける前側摺接部41b1よりも後側は、段部41b2を介して小径に形成される。段部41b2は、環状弾発部材43の前端部を受ける。
【0030】
そして、軸部41bにおいて、段部41b2よりも後側の小径部分41b3は、環状弾発部材43に挿通される。そして、この小径部分41b3において、環状弾発部材43よりも後側には、回転子42の被係合部42b1に対し前後方向へ摺接する後側摺接部41b31が設けられる。
【0031】
後側摺接部41b31は、小径部分41b3の外周面を、全周にわたって環状に凹ませた凹部である。この環状の凹部の底面は、円筒状に形成される。
この後側摺接部41b31は、回転子42を所定量進退させるようにその前後方向の長さが設定され、回転子42の被係合部42b1に対し所定量進退可能に係合する係合部として機能する。
【0032】
そして、軸部41bにおいて、後側摺接部41b31(係合部)よりも後側の外周部には、被係合部42b1(円形孔)の内周面に圧入されてこの被係合部42b1を通り抜けるように径方向外側へ円弧状に突出する圧入部41b32が設けられる。さらに、軸部41bおいて、圧入部41b32に対し周方向に隣接する部分には、被係合部42b1(円形孔)の内周面に接触せずにこの被係合部42b1を貫通する平面状の遊挿部41b33が設けられる。
【0033】
圧入部41b32は、中心軸を間に置いて対称に二つ設けられる。これら圧入部41b32,41b32の外径は、被係合部42b1の内径よりも若干大きい。
遊挿部41b33は、中心軸を間に置いて略平行に二つ設けられる。
なお、圧入部41b32及び遊挿部41b33は、単数や、三以上等、図示例以外の数にしたり、同様の機能を有する異なる形状のものにしたりすることが可能である。
【0034】
また、突起部41cは、受部41aの後端面から後方へ突出するとともに、周方向に間隔を置いて複数設けられる。
これら複数の突起部41cは、受け部材41が回転子42に相対し後退した際に、回転子42の前端面に当接する(図3参照)。
【0035】
回転子42は、軸部41bに対し進退可能であって且つ分離しないように嵌り合っている。この回転子42は、略円筒状に形成され、大径部42aと、大径部42aの後端側で内周面及び外周面を縮径した小径部42bとを有する。
【0036】
大径部42aは、前側摺接部41b1から環状弾発部材43にわたってその周囲を覆う円筒状に形成される。
この大径部42a内周面の前端側は、受け部材41が回転子42に相対し進退する際に、前側摺接部41b1の外周面に摺接する。
【0037】
小径部42bは、その内径が、環状弾発部材43の外径よりも小さい略円筒状に形成される。この小径部42bの後端側には、径方向内側へ環状に突出する被係合部42b1が設けられる。この被係合部42b1の内周面は、円形状の貫通孔である。
この被係合部42b1は、後側摺接部41b31(係合部)に摺接して所定量進退するように、後側摺接部41b31を構成する凹状部分よりも前後方向の長さが短く設定される。
【0038】
また回転子42の外周側には、軸筒10のスライド溝13aに嵌って前後に案内されるように前後方向へわたる突条42cや、この突条42cの後端部に設けられて、ノック体50のカム斜面51や軸筒10の上記カム斜面(図示せず)に摺接するカム斜面42d等が設けられる。
【0039】
環状弾発部材43は、軸部41bと回転子42の間の筒状空間に収納され、前端部を段部41b2に当接するとともに後端部を小径部42b前端面に当接して、回転子42に相対し受け部材41を前方へ弾発している。
図示例の環状弾発部材43は、圧縮コイルバネである。この環状弾発部材43の付勢力(弾発力)は、付勢部材30の付勢力よりも大きい。
なお、環状弾発部材43の他例としては、例えば円筒形状のゴム等、バネ以外の弾性材料から構成することも可能である。
【0040】
ノック体50は、後方からノック操作される棒状の部材である。
このノック体50は、前端面を開口し且つ後端面を閉鎖した略有底筒状に形成され、その前端面に、回転子42のカム斜面42dに摺接させるためのカム斜面51を形成している。更に、同ノック体50の外周面には、軸筒10内のスライド溝13aに係合して進退する係合突起52が設けられる。
【0041】
なお、図示例では、このノック体50を、円筒状部材と、この円筒状部材の後端を閉鎖する部材との2部材から構成しているが、このノック体50の他例としては、一体の部材からなる態様や、3以上の部材からなる態様等とすることも可能である。
また、図1(b)に示す一例によれば、筆記部21の突出状態において、ノック体50は、回転子ユニット40よりも後側の空間を前後に移動自在であるが、他例とては、ノック体50を図示しない付勢部材等により前後何れかに寄せる構成とすることも可能である。
【0042】
次に上記構成の出没式筆記具Aについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
初期状態(図1(a)参照)においてノック体50が前方へ押し動かされると、ノック体50の係合突起52、軸筒10におけるスライド溝13aと図示しないカム斜面及び係止面、回転子42の突条42c及びカム斜面42d等の作用により、中芯20が所定量前進し筆記部21を軸筒10前端から突出した状態(図1(b)参照)に保持される。これらの作用は、例えば特開2018-149787号公等に記載される構造のものと略同様である。
なお、外部操作により回転子ユニット40を所定量前進させて係止する機構は、上述した構成以外のものに置換することが可能である。
【0043】
図1(b)に示す筆記部21の突出状態において、軸筒10が筆記者等に把持されて筆記が行われると、その筆記動作中の振動や衝撃は、環状弾発部材43に吸収される。
詳細に説明すれば、中芯20の後端は受け部材41の前端面により受けられているため、筆記部21が被筆記面(例えば紙面等)に押し付けられる等して、筆記部21に付勢部材30の付勢力よりも大きい後方への押圧力が加わると、中芯20及び受け部材41が、環状弾発部材43の弾発力に抗して後退する。すなわち、受け部材41の突起部41c後端と回転子42前端との間の寸法W(図2及び図3参照)が小さくなる。
【0044】
この後、前記押圧力が解除すると、中芯20及び受け部材41が、環状弾発部材43の弾発力により前進する。すなわち、この前進により、受け部材41の突起部41c後端と回転子42前端との間の寸法Wが大きくなる。
【0045】
したがって、例えば、筆記中、筆記部21を被筆記面に対し押し付けたり離したりする動作の繰り返し等により、軸筒軸方向の振動が発生した場合でも、その振動を、軸部41b周囲の筒状空間内で伸縮する環状弾発部材43の弾性によって吸収することができる。
しかも、受け部材41は、前記振動の際、前側摺接部41b1と後側摺接部41b31の前後二か所を回転子42に摺接させて、がたつくことなく滑らかに前後微動する。その上、受け部材41は回転子42に対し回転自在である。
よって、出没式筆記具Aによれば、筆記動作に伴って中芯20の振動や衝撃が軸筒10に伝達するのを、中芯の芯ずれや撓み等に影響されることなく、効果的に抑制することができ、ひいては、筆記者に対しソフトな筆記感触を与えることができる。
【0046】
次に、出没式筆記具Aの製造上の作用効果について説明する。
図4に示すように、回転子ユニット40を組み立てる際、受け部材41の軸部41bに環状弾発部材43が環状に装着され、これら軸部41b及び環状弾発部材43を覆うようにして回転子42が装着される。
詳細に説明すれば、軸部41bは、前端側の圧入部41b32及び遊挿部41b33を、環状弾発部材43よりも後方へ突出させ、円形孔状の被係合部42b1に圧入し貫通させる。
この際、円弧状の圧入部41b32が被係合部42b1内周面に摺接するが、平面状の遊挿部41b33は被係合部42b1内周面に接しないため、圧入力を比較的小さくすることができ、組立性が良好である。
そして、圧入部41b32が被係合部42b1を後方へ通り抜けた後は、圧入部41b32の後端部が、円形孔状の被係合部42b1の前端部に係止されて、軸部41bが被係合部42b1から抜けなくなる。すなわち、回転子42が、受け部材41に対し進退可能且つ分離不能になる。
よって、受け部材41、回転子42及び環状弾発部材43を、一体的な回転子ユニット40として扱うことができる。
【0047】
そして、上記構成の回転子ユニット40は、図5に示すように、前軸12に対し前方側から挿入され、乗越え嵌合突起13bを乗越えて、乗越え嵌合突起13bの後方へ移動する。
詳細に説明すれば、回転子42前端側の環状の鍔部42eが、乗越え嵌合突起13bよりも後方側に位置することで、回転子42を含む回転子ユニット40全体が、乗越え嵌合突起13bよりも前方へ移動しなくなる。
よって、中芯20の交換等のために、前軸12から後軸13を外し、中芯20を引き抜いた場合でも、後軸13から回転子ユニット40が脱落してしまうのを防ぐことができる。
【0048】
なお、上記実施態様によれば、特に好ましい態様として、回転子42に対し受け部材41を引抜けないように係合したが、他例としては、径方向外側へ突出する圧入部41b32を省いて、回転子42と受け部材41が軸方向に分離する構造とすることも可能である。
【0049】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
10:軸筒
13b:乗越え嵌合突起
20:中芯
21:筆記部
30:付勢部材
40:回転子ユニット
41:受け部材
41a:受部
41b:軸部
41b1:前側摺接部
41b31:後側摺接部(係合部)
41b32:圧入部
41b33:遊挿部
42:回転子
42a:大径部
42b:小径部
42b1:被係合部(円形孔)
43:環状弾発部材
A:筆記具
図1
図2
図3
図4
図5