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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115401
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220802BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H05K3/46 Z
H05K3/46 B
H05K3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011981
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 涼哉
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬介
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA17
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC46
5E316DD02
5E316DD22
5E316DD33
5E316EE31
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG28
5E316HH32
5E316HH33
(57)【要約】
【課題】残渣の残留が抑制された配線基板の提供。
【解決手段】実施形態の配線基板の製造方法は、第1絶縁層10上に第1導体層11を形成し、その上に第2絶縁層20を形成し、第2絶縁層20上にビルドアップ部110を形成することと、領域RCaの周縁RCpに沿ってビルドアップ部110を貫通する溝Gを形成し、溝Gで画定される部分Rを除去して、第2絶縁層20を露出する凹部RCを形成することと、第2絶縁層20に第1導体層11を露出させる開口11aを形成することと、を含む。第2絶縁層20を形成することは、第1層20及び第2層20bを含む2層構造の樹脂フィルム20fを積層することと、領域RCaに対応する位置以外の第2層20bを除去することと、を含み、凹部RCを形成することは、所定の領域RCaに対応する位置の第2層20brを除去することを含んでいる。
【選択図】図3G
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層の表面に第1導体層を形成することと、
前記第1導体層上及び前記第1絶縁層上に第2絶縁層を形成することと、
前記第2絶縁層上に少なくとも1層の絶縁層を積層してビルドアップ部を形成することと、
所定の領域の周縁に沿って前記ビルドアップ部を貫通する溝を形成することと、
前記ビルドアップ部の前記溝で画定される部分を除去することで、前記第2絶縁層を露出する凹部を形成することと、
前記第2絶縁層を貫通し前記第1導体層を露出させる開口を形成することと、
を含む、配線基板の製造方法であって、
前記第1導体層上に前記第2絶縁層を形成することは、第1層及び第2層を含む2層構造の樹脂フィルムを前記第1層が前記第1導体層と接するように積層することと、前記所定の領域に対応する位置以外の前記第2層を除去することと、を含み、
前記凹部を形成することは、前記所定の領域に対応する位置の前記第2層を除去して前記第2絶縁層を露出させることを含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、前記開口を形成することは、前記凹部を形成することの後に実施される。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、前記第2層は前記第1層に予め貼着されているカバーフィルムである。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、前記凹部は、前記第2絶縁層が平面視において前記凹部の底部から前記凹部の外方に亘って連続するように形成される。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、前記溝及び前記開口は、レーザー光の照射によって形成される。
【請求項6】
請求項5記載の配線基板の製造方法であって、前記溝は、前記第2絶縁層を貫通しないように形成される。
【請求項7】
請求項5記載の配線基板の製造方法であって、前記溝を形成することは、前記レーザー光の照射前に、前記ビルドアップ部の表面を保護膜で被覆することを含んでいる。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、前記第1導体層を形成することは、導体パッドを形成することを含んでおり、前記第1導体層を露出させることは、前記導体パッドを露出させることを含んでいる。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、前記第2絶縁層は、20μm以上、且つ、35μm以下の厚さを有するように形成される。
【請求項10】
第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に形成される第1導体層と、前記第1導体層上に積層される第2絶縁層と、前記第2絶縁層上に積層されるビルドアップ部と、前記ビルドアップ部の厚さ方向を貫通し前記第2絶縁層を底部に露出させる凹部と、を備える配線基板であって、
前記凹部の底部に露出する前記第2絶縁層には、前記第1導体層を露出させる開口が形成されており、
前記第2絶縁層は、平面視において前記凹部の底部から前記凹部の外方に亘って連続して形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャビティ(凹部)を有するプリント配線板の製造方法が開示されている。特許文献1に開示される製造方法では、キャビティの形成において、キャビティの底面を構成するソルダーレジスト層に剥離フィルムが貼付される。ソルダーレジスト層には開口が形成されており、開口からは電極パッドが露出している。剥離フィルムが溝に囲まれる除去部と共に除去されることで、底部にソルダーレジスト層及びその開口内の電極パッドを露出するキャビティが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-67821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のキャビティの形成方法では、剥離フィルムの残渣が、ソルダーレジスト層上、及び、電極パッド上に残留する虞があると考えられる。電極パッドに残渣が残留した場合には、キャビティ内に搭載され得る電子部品との接続不良が引き起こされる虞があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による配線基板の製造方法は、第1絶縁層の表面に第1導体層を形成することと、前記第1導体層上及び前記第1絶縁層上に第2絶縁層を形成することと、前記第2絶縁層上に少なくとも1層の絶縁層を積層してビルドアップ部を形成することと、所定の領域の周縁に沿って前記ビルドアップ部を貫通する溝を形成することと、前記ビルドアップ部の前記溝で画定される部分を除去することで、前記第2絶縁層を露出する凹部を形成することと、前記第2絶縁層を貫通し前記第1導体層を露出させる開口を形成することと、を含んでいる。前記第1導体層上に前記第2絶縁層を形成することは、第1層及び第2層を含む2層構造の樹脂フィルムを前記第1層が前記第1導体層と接するように積層することと、前記所定の領域に対応する位置以外の前記第2層を除去することと、を含み、前記凹部を形成することは、前記所定の領域に対応する位置の前記第2層を除去して前記第2絶縁層を露出させることを含んでいる。
【0006】
本発明の実施形態による配線基板は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に形成される第1導体層と、前記第1導体層上に積層される第2絶縁層と、前記第2絶縁層上に積層されるビルドアップ部と、前記ビルドアップ部の厚さ方向を貫通し前記第2絶縁層を底部に露出させる凹部と、を備えている。前記凹部の底部に露出する前記第2絶縁層には、前記第1導体層を露出させる開口が形成されており、前記第2絶縁層は、平面視において前記凹部の底部から前記凹部の外方に亘って連続して形成されている。
【0007】
本発明の実施形態によれば、凹部(キャビティ)の形成において、第2絶縁層からの第2層の除去後に、凹部の底部に導体を露出する開口が第2絶縁層に形成される。従って、第2絶縁層及び導体上への残渣の残留が発生しにくく、凹部内に搭載され得る電子部品の接続不良が抑制され得る配線基板が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の配線基板の一例を示す断面図。
図2図1に示される配線基板の上面図。
図3A】本発明の一実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を示す図。
図3B】本発明の一実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を示す図。
図3C】本発明の一実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を示す図。
図3D】本発明の一実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を示す図。
図3E】本発明の一実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を示す図。
図3F】本発明の一実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を示す図。
図3G】本発明の一実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を示す図。
図3H】本発明の一実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を示す図。
図3I】本発明の一実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を示す図。
図3J】本発明の一実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の配線基板の一例が、図面を参照しながら説明される。図1には配線基板100の断面図が示され、図2には配線基板100の上面図が示されている。図1は、図2のI-I線に沿った断面を示している。
【0010】
図1に示される配線基板100は、第1絶縁層10を有している。第1絶縁層10の厚さ方向において対向する表面の一方の表面上には第1導体層11が形成されており、他方の表面上には第2導体層12が形成されている。第1導体層11の、第1絶縁層10と反対側(上側)には、第2絶縁層20が積層され、第2絶縁層20の第1導体層11と反対側には、第1ビルドアップ部110が形成されている。第2導体層12の、第1絶縁層10と反対側には、第2ビルドアップ部120が形成されている。
【0011】
図示の例では、第1絶縁層10、第1導体層11、及び、第2導体層12は、配線基板100におけるコア層の形態を有しており、コア層101とも称される。第1及び第2ビルドアップ部110、120はそれぞれ3層の絶縁層111、121、及び、3層の導体層112、122を有している。
【0012】
なお、配線基板100、及び、後述される配線基板100の製造方法の説明では、配線基板100の厚さ方向において、第1絶縁層10から遠い側は「上側」、「外側」、もしくは「上方」又は単に「上」、「外」とも称され、第1絶縁層10に近い側は「下側」、「内側」、もしくは「下方」又は単に「下」、「内」とも称される。さらに、各層において、第1絶縁層10と反対側を向く表面は「上面」とも称され、第1絶縁層10側を向く表面は「下面」とも称される。
【0013】
図示の例では、第1ビルドアップ部110は、最も外側の導体層112上にソルダーレジスト層113を有しており、第2ビルドアップ部120は、最も外側の導体層122上にソルダーレジスト層123を有している。ソルダーレジスト層113、123は、例えば、感光性のポリイミド樹脂やエポキシ樹脂を用いて形成されている。ソルダーレジスト層113、123には、第1及び第2ビルドアップ部110、120における最も上側の導体層112、122の一部を底部に有する開口113a、123aが設けられている。
【0014】
開口113a内に露出する導体層112は、例えば半導体素子などの外部の電子部品との接続用の導体パッド112pとして構成される。図示の例では、開口113a内の導体層112上には、導電性の接続部材BPが設けられている。接続部材BPは、例えば、Sn及びCuを含む合金で構成され、外部の電子部品の接続パッドと導体パッド112pとの電気的接続を中継するはんだバンプである。また、開口123aから露出する導体層122は、導体パッド122pとして、例えば、配線基板100が用いられる電子機器のマザーボードや、積層構造を有する半導体装置のパッケージ基板などとの接続に用いられ得る。
【0015】
図示される例では、第1絶縁層10は、第1絶縁層10の厚さ方向を貫通し、第1導体層11と第2導体層12とを接続するスルーホール導体10thを含んでいる。そして、第1ビルドアップ部110を構成する絶縁層111は、絶縁層111を貫通して導体層112同士、又は、導体層112と第1導体層11とを接続するビア導体114を含んでいる。また、第2ビルドアップ部120を構成する絶縁層121は、絶縁層121を貫通して導体層122同士、又は、導体層122と第2導体層12とを接続するビア導体124を含んでいる。なお、図示の例においては、第1導体層11と導体層112とを接続するビア導体114は、第2絶縁層20と絶縁層111とを連続して貫通している。
【0016】
配線基板100を構成する絶縁層10、20、111、121は、例えばエポキシ樹脂、BT樹脂、フェノール樹脂などの任意の絶縁性樹脂を用いて形成される。絶縁層10、20、111、121は、例えば、ガラス繊維やアラミド繊維などである芯材を含んでいる場合がある。絶縁層10、20、111、121は無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーとしては、シリカ(SiO2)、アルミナ、又はムライトなどからなる微粒子が例示される。
【0017】
配線基板100を構成する導体層11、12、112、122、ビア導体114、124、スルーホール導体10thは、銅やニッケルなどの、適切な導電性を備えている任意の材料を用いて形成され得る。導体層11、12、112、122、ビア導体114、124、スルーホール導体10thは、図1では、見易さのために簡略化して単層構造で示されているが、2層以上の多層構造を有し得る。例えば、導体層11、12、112、122は、銅箔などの金属箔、及び/又は、めっき若しくはスパッタリングなどで形成される金属膜によって構成される。導体層11、12、112、122は、好ましくは、銅箔、電解銅めっき膜、もしくは無電解銅めっき膜、又はこれらの組み合わせによって形成されて得る。スルーホール導体10th、及び、ビア導体114、124は、例えば、無電解めっき膜及び電解めっき膜の2層構造とされ、直上の導体層11、12、112、122を構成する無電解めっき膜及び電解めっき膜と一体的に形成され得る。
【0018】
図示の例において、スルーホール導体10thは、第1絶縁層10の厚さ方向において略同径に形成されている。そして、ビア導体114、124は、第1絶縁層10に向かって縮径するテーパー形状を有している。しかしながら、スルーホール導体10th、ビア導体114、124の形状は図示されるものに限定されない。スルーホール導体10thは、絶縁層10の一方の面から他方の面に向かって縮径する形状に形成されてもよく、両側の面から絶縁層10の厚さ方向の中心に向かって縮径する形状であってもよい。
【0019】
配線基板100は、第1ビルドアップ部110を貫通し、第2絶縁層20を底部に露出させる凹部RCを有している。凹部RCは、例えば半導体素子などの電子部品を配線基板100に搭載するために形成される。凹部RCの底部に露出する第2絶縁層20には、第1導体層11を露出させる開口20aが形成されている。開口20aから露出する第1導体層11は、凹部RC内に搭載され得る、例えば、メモリ、マイコン、CPU、等の半導体集積回路装置である電子部品の接続パッドと、導電性又は絶縁性の接続部材を介して接続され得る部品実装用の導体パッド(部品実装パッド)11pとして構成されている。
【0020】
第2絶縁層20の開口20aから凹部RCの底面に露出する部品実装パッド11pの表面には、保護膜が形成されていてもよい。保護膜は、例えば、Ni/Au、Ni/Pd/Au、又はSnなどの複数又は単一の金属めっき膜であり得る。図示の例では、複数の開口20aのそれぞれに露出する部品実装パッド11pは、複数の開口20a間に延在する第2絶縁層20によって隔てられ、部品搭載時における部品実装パッド11p同士の電気的接触の防止が図られている。
【0021】
凹部RCは、詳しくは後述するように、第1ビルドアップ部110における、所定の領域(凹部RCの形成予定領域)の周縁RCpに沿って形成される溝で画定される部分を、第1ビルドアップ部110から除去することによって形成され得る。図2に示されるように、凹部RCは、その平面視における形状において矩形状に形成されている。しかしながら、凹部RCの平面視における形状は矩形状に限定されない。凹部RC内に実装される電子部品の外形に合せて、任意の形状(例えば、多角形状又は楕円形状)に形成され得る。なお、図示の例では、周縁RCpは、絶縁層111で構成される凹部RCの側壁と、第2絶縁層20で構成される凹部RCの底部との境界と一致している。周縁RCpで囲われる領域は凹部RCが形成される領域に対応し、領域RCaと称される。
【0022】
平面視において、第2絶縁層20は、凹部RCの底面の領域RCaの全域に亘って延在すると共に、領域RCaから外方の、コア層101と第1ビルドアップ部110との間の全域に亘って連続して延在している。このような構成を有していることにより、凹部RCの底部におけるクラックの発生が抑制されることがある。例えば、凹部RCの底部に露出する絶縁層が、領域RCの外方の絶縁層から独立している構造と比較すると、凹部の底部に係り得る外力は、凹部周縁から外方へと効果的に分散され得る。従って、凹部RC内への電子部品の搭載時などにおける、凹部RCの底部での局所的な応力集中が回避され、クラックや層間剥離の発生が抑制され得る。
【0023】
なお、第2絶縁層20は、凹部の底部に係り得る外力の凹部外方への分散を効果的に実現する観点、及び、電子部品が実装時される際の部品実装パッド11pと電子部品との接続を信頼性高く実現する観点から、20μm以上、且つ、35μm以下の厚さを有していることが好ましい。
【0024】
なお、実施形態の配線基板は、上述したような、コア層101の両側にビルドアップ層110、120を有する態様に限定されない。少なくとも、第1絶縁層10、第1導体層11、第2絶縁層20、及び凹部RCを有する第1ビルドアップ部110を有していればよい。すなわち、実施形態の配線基板は第2ビルドアップ部120を有さない構成を有し得る。また、第1ビルドアップ部110も複数の絶縁層及び導体層で構成される必要はなく、少なくとも1層の絶縁層を有していればよい。
【0025】
次いで、本発明の一実施形態の配線基板の製造方法が、図1に示される配線基板100の製造を例にして図面を参照しながら説明される。先ず、図3Aに示されるように、コア層101が形成される。具体的には、第1絶縁層10の一方の面に第1導体層11が形成され、他方の面に第2導体層12が形成されると共に、第1及び第2導体層11、12がスルーホール導体10thにより接続される。コア層101は、例えば、第1絶縁層10となる樹脂絶縁層と、その樹脂絶縁層の両面の金属箔層とを含む基板(例えば、両面銅張積層板)を出発基板として形成され得る。
【0026】
コア層101の形成においては、絶縁層10となる樹脂絶縁層の、スルーホール導体10thの形成位置に対応した貫通孔10tが、例えばドリル加工又は炭酸ガスレーザーなどのレーザー光の照射によって穿孔される。次いで、貫通孔10t内及び、第1絶縁層10上に、無電解めっき、スパッタリング、及び/又は、電解めっきなどによって導体が形成される。その後、サブトラクティブ法によってパターニングすることによって所望の導体パターンを備える導体層11、12が形成される。
【0027】
例えば、金属箔層、金属膜層、及び電解めっき膜層の3層構造の導体層11、12及び、金属膜層及び電解めっき膜層の2層構造のスルーホール導体10thが形成され得る。なお、実施形態の製造方法の説明において参照される図3A図3Jにおいても、配線基板の説明において参照した図1と同様に、各導体層は見易さのために簡略化して単層構造で示される。導体層11は、所定の領域RCa内に部品実装パッド11pを含むパターンに形成される。
【0028】
次いで、図3Bに示されるように、第1導体層11上に第2絶縁層20が形成される。第2絶縁層20の形成においては、硬化後に第2絶縁層となる第1層20及び第2層20bを含む、2層構造の樹脂フィルム20fが第1導体層11上に積層される。2層構造の樹脂フィルム20fは第1層20が第1導体層11と接するように積層される。
【0029】
第1層20は、例えばエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂を主成分とする樹脂絶縁層であり、第2層20bは、第1層20に予め貼着されている、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)を主成分とするカバーフィルムである。具体的には、樹脂フィルム20fは、例えば、一方にカバーフィルムが貼着され、他方にベースフィルムが貼着された樹脂絶縁層で構成される、3層構造の樹脂フィルムのベースフィルムを剥離したものである。例えばカバーフィルムである第2層20bは、樹脂絶縁層である第1層20から、双方にその成分が残留することなく分離され得る。第2層20bは、詳しくは後述するように、所定の領域RCaにおける、第2絶縁層20と、第2絶縁層20の上側(第2層20bの上側)の構成要素との分離を容易にする目的で、第1層20に貼着された状態で第2絶縁層20の形成に使用される。従って、続く工程において、領域RCaに対応する部分以外の第2層20bは、第1層(第2絶縁層)20から剥離され、除去される。なお、第1層20は、その硬化後に、第2絶縁層20として20μm以上、且つ、35μm以下の厚さを有するように形成され得る。
【0030】
次いで、図3Cに示されるように、第2層20bの領域RCaに対応する部分20brが、第2層20bの周囲の部分から分離される。具体的には、凹部RCの形成予定領域RCaの周縁に沿ってレーザー光が第2層20bの外側から照射されることにより、部分20brを画定する溝gが形成される。図示のように、溝gは、第2層20bを貫通し、その先端に第2絶縁層(第1層)20が露出する深さに形成される。溝gの形成により、第2層20bの領域RCaに対応する部分20brは、周囲の第2層20bから独立する。
【0031】
続いて、図3Dに示されるように、第2層20bの部分20br以外の部分が、第2絶縁層(第1層)20から剥離され、除去される。次いで、図3Eに示されるように、第2層20bの部分20br以外の部分の剥離後、部分20brが貼着された状態の第2絶縁層20上に、絶縁層111が形成される。コア層101の第2導体層12側では、第2導体層12上に絶縁層121が形成される。例えば、絶縁層20と同様の、エポキシ樹脂を主成分とするフィルム状の絶縁性樹脂の積層及び硬化によって絶縁層111、121が形成され得る。領域RCaにおける第2絶縁層20と絶縁層111との界面に第2層の部分20brが介在する状態となる。
【0032】
なお、図3B図3Eを参照した説明において、第1導体層11上にのみ第2絶縁層20が形成される例が説明されたが、第2導体層12上にも第2絶縁層20の形成と同時に絶縁層が形成されてもよい。この場合、図3Eに示される段階において、第1絶縁層10を中心として、第1導体層11側と第2導体層12側とで対称な層構造が形成され得る。
【0033】
続いて、図3Fに示されるように、第1ビルドアップ部110の最も内側の絶縁層111から上側の構成要素が形成されると共に、第2ビルドアップ部120の最も内側の絶縁層121から上側の構成要素が形成される。第2絶縁層20上に接している絶縁層111にはビア導体114が形成され、絶縁層111上に導体層112が形成される。第2導体層12上に接している絶縁層121にはビア導体124が形成され、絶縁層121上に導体層122が形成される。
【0034】
導体層112、122は、絶縁層111、121に例えばレーザー光によって形成され得る開口114a、124aを充填するビア導体114、124と同時に、例えばセミアディティブ法などの任意の導体パターンの形成方法を用いて形成され得る。ビア導体114の形成においては、開口114aは絶縁層111及び第2絶縁層20を連続して貫通する。すなわち、絶縁層111及び第2絶縁層20を連続して貫通する開口114aを充填するビア導体114は、導体層112と第1導体層11を接続するように形成される。ビア導体124の形成においては、開口124aは絶縁層121を貫通し、開口124aを充填するビア導体124は、導体層122と第2導体層12とを接続するように形成される。
【0035】
続けて、導体層112の上側では、上述の絶縁層111及び導体層112の積層と同様の工程が繰り返され、3層の絶縁層111及び導体層112が形成される。また、導体層122の上側では、上述の絶縁層121及び導体層122の積層と同様の工程が繰り返され、3層の絶縁層121及び導体層122が形成される。図示の例では、3層の導体層112の内の最も外側の導体層112は、導体パッド112pを含むパターンに形成され、3層の導体層122の最も外側の導体層122は、導体パッド122pを含むパターンに形成される。
【0036】
続けて、最も外側の導体層112、122の上側にソルダーレジスト層113、123が形成される。例えば、スプレーコーティング、カーテンコーティング、又はフィルム貼り付けなどによって、感光性を有するエポキシ樹脂膜が形成され、露光及び現像により開口113a、123aが形成される。ソルダーレジスト層113、123の開口113a、123aからは導体層112、122(導体パッド112p、122p)が露出する。開口113aから露出する導体パッド112p上には、図示のように、例えば、導電性の金属ボールの載置及びリフローによってバンプBPが形成される。以上の工程により第1ビルドアップ部110、及び、第2ビルドアップ部120が形成される。
【0037】
次いで、図3Gに示されるように、第1ビルドアップ部110を厚さ方向に貫通する溝Gが形成される。溝Gは、第1ビルドアップ部110の上面側から、例えば炭酸ガスレーザー、YAGレーザーなどのレーザー光を、所定の領域RCaの周縁RCpの全周に沿った軌跡で照射することで形成され得る。
【0038】
溝Gは、第1ビルドアップ部110を貫通し、その先端(底部)に第2絶縁層20を露出させる。すなわち、溝Gは第2絶縁層20を貫通しないように形成され得る。溝Gは第2絶縁層20上の第2層の部分20brの周縁における一部をも貫通する。よって、溝Gの内面には、第2層20brの周縁が露出する。溝Gの深さ、すなわち、第1ビルドアップ部110の厚さ方向における溝Gの先端の到達レベルは、レーザー光の強度を予め調整しておくことによって調整され得る。
【0039】
なお、図示される例では、溝Gを形成するレーザー光の照射に先立って、第1ビルドアップ部110の上面を被覆する保護膜PFが形成される。保護膜PFは、溝Gの形成後に第1ビルドアップ部110からの剥離が可能な、例えば感光性樹脂で形成される。保護膜PFは、溝G形成時において、第1ビルドアップ部110上面のバンプBPなどの構成要素をレーザー光から保護し得る。
【0040】
溝Gによって画定される、第1ビルドアップ部110の領域RCaの内側の部分R(すなわち、第1ビルドアップ部110の第2層20brより上側の構成要素)は、ビルドアップ部110の周囲の構成要素から独立する。絶縁層111は、第2層20brとは強固に密着せず、容易に剥離が可能な程度の密着力で積層されている。従って、溝Gにより確定される部分Rは第2層の部分20brから分離可能になる。なお、以後の説明において、第2層の部分brは単に第2層brとも称される。
【0041】
続いて、図3Hに示されるように、溝Gで囲まれた第2層20bより上の部分Rが除去される。例えば、除去される部分Rの表面が治工具などに吸着され、第2絶縁層20と反対側に引き上げられることにより除去され得る。第2層20brは、その上に接して積層されている絶縁層111と容易に分離され得る。従って、凹部RCの領域に対応する構成要素(部分R)の除去は容易に実現され得る。なお、部分Rの除去の後、保護膜PFは第1ビルドアップ部110から除去され得る。
【0042】
次いで、図3Iに示されるように、第2層20brも第2絶縁層20から剥離される。部分Rの除去により露出する第2層20brは、任意の剥離用具を用いて第2絶縁層20から剥離され、除去される。その結果、第2絶縁層20を底部に露出させる凹部RCが形成される。形成される凹部RCの底部を構成する第2絶縁層20は、平面視において凹部RCの底部から凹部RCの外方に亘って連続する。第2層20brは、第2絶縁層20と比較的弱い力で密着し容易に剥離することが可能であり、先述したように、その成分が第2絶縁層20に残留する虞も小さい。従って、先述のような、凹部RCの底部を構成する絶縁層上に剥離フィルムを形成する場合と比較すると、凹部RCの底部へ剥離フィルムなどの残渣が残留する虞が低減されると考えられる。
【0043】
続いて、図3Jに示されるように、凹部RCの底部に露出する第2絶縁層20に、部品実装パッド11pを露出させる開口20aが、例えば、レーザー光の照射によって形成される。以上の工程により、凹部RCを有する配線基板100の形成が完了する。本実施形態の配線基板の製造方法では、凹部RCの底部に露出する部品実装パッド11pは、第2層20brの除去後に凹部RCに露出する。従って、先述の、剥離フィルムが露出する導体上を覆う方法と比較すると、凹部RC底部に露出する導体への剥離フィルムの残渣の残留や異物の付着の虞が低減され得ると考えられる。
【0044】
必要に応じて、凹部RCの内面には、デスミア処理が施され得る。開口20aの形成後、凹部RC内に残存する樹脂残渣(スミア)が、例えば、過マンガン酸塩などを含む薬液を用いた処理によって除去される。その後、必要に応じて、スパッタリングなどにより、部品実装パッド11pの露出面に、例えばNi/Au膜からなる耐食層が形成されてもよい。また、OSP処理を行うことにより、有機保護膜からなる耐食層が形成されてもよい。
【0045】
本実施形態の配線基板の製造方法では、先述の、凹部(キャビティ)底となる絶縁層に別途剥離フィルムを形成する場合と比較すると、剥離フィルムの形成工程が、第2層20bの部分20brを切り抜いて部分20br以外の部分を除去する工程で代替され得る。従って、剥離フィルムを別途用意する必要がなく、配線基板の製造に必要な材料が節約され得る。製造コストの削減が実現され得る。
【0046】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。実施形態の説明では、コア層101の両側にそれぞれ3層の絶縁層及び導体層を有するビルドアップ部110、120を備える形態の配線基板100が説明されたが、各ビルドアップ部110、120が有する絶縁層及び導体層の層数は任意の層数であってよい。第2ビルドアップ部120は無くてもよい。凹部RCの底部に露出する第1導体層11は、複数の導体パッド11p以外にも任意のパターンを有し得る。
【0047】
本実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されず、その条件や順序等は適宜変更されてよい。現に製造される配線基板の構造に応じて、一部の工程が省略されてもよく、別の工程が追加されてもよい。溝g、Gの形成はレーザー光による加工に限定されない。工具による切削加工によって形成されてもよい。第2導体層12、第2ビルドアップ部120の形成は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
100 配線基板
110 第1ビルドアップ部
111、121 絶縁層
112、122 導体層
120 第2ビルドアップ部
113、123 ソルダーレジスト層
114、124 ビア導体
10 第1絶縁層
10th スルーホール導体
11 第1導体層
12 第2導体層
101 コア層
20 第2絶縁層(第1層)
20b 第2層
20f 樹脂フィルム
RC 凹部
RCp 周縁
RCa 領域
R 部分
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J