(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115410
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220802BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20220802BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H01G4/30 311Z
H01G4/30 517
H01G4/30 201N
H01G13/00 391Z
H01F41/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011991
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】加納 真治
(72)【発明者】
【氏名】小林 譲二
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔太
【テーマコード(参考)】
5E001
5E062
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E001AJ02
5E001AJ04
5E062FF10
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC38
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082FG52
5E082GG10
5E082GG28
(57)【要約】
【課題】打ち抜き法によって積層体の側面に均一な厚みのサイドマージン部を形成可能な技術を提供する。
【解決手段】積層セラミック電子部品の製造方法では、複数の内部電極が露出する第1及び第2側面を有し、第2側面を保持する第1粘着シート上に配列された複数の積層体の第1側面に第1サイドマージン部が形成される。第1サイドマージン部が形成された複数の積層体が第1粘着シートから第2粘着シートに転写される。第2粘着シートに転写された複数の積層体の第2側面上に一連の第2サイドマージンシートが配置される。一対の高剛性面を第2粘着シート及び第2サイドマージンシートと接触させた状態で、一対の高剛性面に対して弾性部材を介して押圧力を加えることで、複数の積層体の第2側面に第2サイドマージンシートが圧着される。圧着された第2サイドマージンシートを複数の積層体の第2側面で打ち抜いて第2サイドマージン部が形成される。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、前記第1軸と直交する第2軸方向を向き、前記複数の内部電極が露出する第1及び第2側面と、を有し、前記第2側面を保持する第1粘着シート上に配列された複数の積層体の前記第1側面に第1サイドマージン部を形成し、
前記第1サイドマージン部が形成された前記複数の積層体を前記第1粘着シートから第2粘着シートに転写し、
前記第2粘着シートに転写された前記複数の積層体の前記第2側面上に一連の第2サイドマージンシートを配置し、
前記第2軸方向に対向する一対の高剛性面を前記第2粘着シート及び前記第2サイドマージンシートと接触させた状態で、前記一対の高剛性面に対して、前記第2軸に沿って弾性変形可能な弾性部材を介して押圧力を加えることで、前記複数の積層体の前記第2側面に前記第2サイドマージンシートを圧着し、
圧着された前記第2サイドマージンシートを前記複数の積層体の前記第2側面で打ち抜くことによって第2サイドマージン部を形成する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第2サイドマージンシートを圧着する際に、前記第2サイドマージンシートを加熱する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第2サイドマージンシートを圧着する際に、前記第2サイドマージンシートを圧縮変形させる
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
圧着前の前記第2サイドマージンシートが前記第1サイドマージン部よりも厚い
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドマージン部を後付けする積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの製造過程においてサイドマージン部を後付けする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、薄いサイドマージン部によっても内部電極が露出した積層体の側面を確実に保護することができるため、積層セラミックコンデンサの小型化及び大容量化に有利である。
【0003】
一例として、特許文献1に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法では、内部電極が印刷されたセラミックシートを積層した積層シートを切断し、内部電極が露出した切断面を側面とする複数の積層体を作製する。そして、積層体の側面でセラミックシートを打ち抜くことにより、積層体の側面にサイドマージン部を形成する。
【0004】
更に、特許文献1に記載の技術では、積層体の側面で打ち抜いたサイドマージン部を、加熱しながら圧着用弾性体に押し込むことによって、積層体の側面に熱圧着する。これにより、セラミックシートを打ち抜くことで形成されたサイドマージン部において積層体の側面に対する高い接着性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように圧着用弾性体を用いてサイドマージン部を圧着する技術では、圧着用弾性体から加わる押圧力がサイドマージン部における輪郭に沿った稜部に集中しやすい。このため、圧着後のサイドマージン部では、稜部において大きく変形することで、厚みが不均一になりやすくなる。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、打ち抜き法によって積層体の側面に均一な厚みのサイドマージン部を形成可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法では、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、上記複数のセラミック層の間に位置する複数の内部電極と、上記第1軸と直交する第2軸方向を向き、上記複数の内部電極が露出する第1及び第2側面と、を有し、上記第2側面を保持する第1粘着シート上に配列された複数の積層体の上記第1側面に第1サイドマージン部が形成される。
上記第1サイドマージン部が形成された上記複数の積層体が上記第1粘着シートから第2粘着シートに転写される。
上記第2粘着シートに転写された上記複数の積層体の上記第2側面上に一連の第2サイドマージンシートが配置される。
上記第2軸方向に対向する一対の高剛性面を上記第2粘着シート及び上記第2サイドマージンシートと接触させた状態で、上記一対の高剛性面に対して、上記第2軸に沿って弾性変形可能な弾性部材を介して押圧力を加えることで、上記複数の積層体の上記第2側面に上記第2サイドマージンシートが圧着される。
圧着された上記第2サイドマージンシートを上記複数の積層体の上記第2側面で打ち抜くことによって第2サイドマージン部が形成される。
【0009】
この構成では、複数の積層体の第2側面に対する第2サイドマージンシートの圧着を一対の高剛性面で挟んだ状態で行うことで、第1及び第2サイドマージン部の厚みの均一性が損なうことなく、複数の積層体の第2側面に対する接着性が高い第2サイドマージン部を形成することができる。
【0010】
上記第2サイドマージンシートを圧着する際に、上記第2サイドマージンシートを加熱してもよい。
この構成では、複数の積層体の第2側面に対する接着性が更に高い第2サイドマージン部を形成することができる。
【0011】
上記第2サイドマージンシートを圧着する際に、上記第2サイドマージンシートを圧縮変形させてもよい。この場合、圧着前の上記第2サイドマージンシートが上記第1サイドマージン部よりも厚くてもよい。
これらの構成では、複数の積層体の第2側面の高さにばらつきがある場合にも、複数の積層体の第2側面に対する第2サイドマージンシートの圧着を良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、打ち抜き法によって積層体の側面に均一な厚みのサイドマージン部を形成可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【
図2】上記積層セラミックコンデンサの
図1のA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサの
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】上記製造方法のセラミックシート準備工程で準備されるセラミックシートの平面図である。
【
図6】上記製造方法の積層工程を示す斜視図である。
【
図7】上記製造方法の切断工程を示す平面図である。
【
図9】上記製造方法のサイドマージン部形成工程で得られる未焼成のセラミック素体の斜視図である。
【
図10】上記製造方法におけるサイドマージン部の形成方法を示すフローチャートである。
【
図11】上記形成方法の第1圧着工程を示す部分断面図である。
【
図12】上記形成方法の第1打ち抜き工程を示す部分断面図である。
【
図13】上記形成方法の第2圧着工程を示す部分断面図である。
【
図14】上記第2圧着工程の比較例を示す部分断面図である。
【
図15】上記第2圧着工程の他の構成を示す部分断面図である。
【
図16】上記第2圧着工程の他の構成を示す部分断面図である。
【
図17】上記第2圧着工程の他の構成を示す部分断面図である。
【
図18】上記形成方法の第2打ち抜き工程を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<積層セラミックコンデンサ10>
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10について説明する。なお、
図1~9には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は、積層セラミックコンデンサ10に対して固定された固定座標系を規定する。
【0015】
[積層セラミックコンデンサ10の構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0016】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、X軸と直交する第1及び第2端面と、Y軸と直交する第1及び第2側面と、Z軸と直交する第1及び第2主面と、を有する6面体として構成される。
【0017】
各外部電極14,15は、セラミック素体11の両端面を覆い、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向している。外部電極14,15は、セラミック素体11の各端面から主面及び側面に延出している。これにより、外部電極14,15では、X-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。
【0018】
なお、外部電極14,15の形状は、
図1に示すものに限定されない。例えば、外部電極14,15は、セラミック素体11の両端面から一方の主面のみに延び、X-Z平面に平行な断面がL字状となっていてもよい。また、外部電極14,15は、いずれの主面及び側面にも延出していなくてもよい。
【0019】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0020】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスで形成され、積層体16と、第1及び第2サイドマージン部17a,17bと、を有する。積層体16は、Y軸方向を向いた第1及び第2側面S1,S2を有する。また、積層体16は、X軸方向を向いた第1及び第2端面と、Z軸方向を向いた第1及び第2主面と、を有する。
【0021】
積層体16は、X-Y平面に沿って延びる平板状の複数のセラミック層がZ軸方向に積層された構成を有する。積層体16は、容量形成部18と、カバー部19と、を有する。カバー部19は、容量形成部18をZ軸方向上下から被覆し、積層体16の第1及び第2主面を構成している。
【0022】
容量形成部18は、複数のセラミック層の間に配置され、X-Y平面に沿って延びるシート状の複数の第1及び第2内部電極12,13を有する。内部電極12,13は、Z軸方向に沿って交互に配置されている。つまり、内部電極12,13は、セラミック層を挟んでZ軸方向に対向している。
【0023】
第1内部電極12は、第1外部電極14に覆われた端面に引き出されている。一方、第2内部電極13は第2外部電極15に覆われた端面に引き出されている。これにより、第1内部電極12は第1外部電極14のみに接続され、第2内部電極13は第2外部電極15のみに接続されている。
【0024】
内部電極12,13は、容量形成部18のY軸方向の全幅にわたって形成され、積層体16の側面S1,S2に露出している。第1サイドマージン部17aは積層体16の第1側面S1を覆い、第2サイドマージン部17bは積層体16の第2側面S2を覆っている。これにより、積層体16の両側面S1,S2における内部電極12,13間の絶縁性を確保することができる。
【0025】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0026】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0027】
なお、セラミック層は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)、酸化チタン(TiO2)などの組成系で構成してもよい。
【0028】
内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0029】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図4は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図5~9は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図4に沿って、
図5~9を適宜参照しながら説明する。
【0030】
(ステップS01:セラミックシート準備)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を準備する。セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。
【0031】
セラミックシート101,102,103は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックシート101,102の厚みは、焼成後の容量形成部18におけるセラミック層の厚みに応じて調整される。第3セラミックシート103の厚みは適宜調整可能である。
【0032】
図5は、セラミックシート101,102,103の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102,103が、個片化されていない大判のシートとして構成される。
図5には、各積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の切断線Lx,Lyが示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線LyはY軸に平行である。
【0033】
図5に示すように、第1セラミックシート101には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成され、第2セラミックシート102には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成されている。なお、カバー部19に対応する第3セラミックシート103には内部電極が形成されていない。
【0034】
内部電極112,113は、任意の導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することによって形成することができる。導電性ペーストの塗布方法は、公知の技術から任意に選択可能である。例えば、導電性ペーストの塗布には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0035】
内部電極112,113には、切断線Lyに沿ったX軸方向の隙間が、切断線Ly1本置きに形成されている。第1内部電極112の隙間と第2内部電極113の隙間とはX軸方向に互い違いに配置されている。つまり、第1内部電極112の隙間を通る切断線Lyと第2内部電極113の隙間を通る切断線Lyとが交互に並んでいる。
【0036】
(ステップS02:積層)
ステップS02では、ステップS01で準備したセラミックシート101,102,103を、
図6に示すように積層することにより積層シート104を作製する。積層シート104では、容量形成部18に対応する第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102がZ軸方向に交互に積層されている。
【0037】
また、積層シート104では、交互に積層されたセラミックシート101,102のZ軸方向上下面にカバー部19に対応する第3セラミックシート103が積層される。なお、
図6に示す例では、第3セラミックシート103がそれぞれ3枚ずつ積層されているが、第3セラミックシート103の枚数は適宜変更可能である。
【0038】
積層シート104は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102,103の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などを用いることが好ましい。これにより、積層シート104を高密度化することが可能である。
【0039】
(ステップS03:切断)
ステップS03では、ステップS02で得られた積層シート104を、切断線Lx,Lyに沿って切断することにより、未焼成の積層体116を作製する。積層体116は、焼成後の積層体16に対応する。積層シート104の切断には、例えば、押し切り刃や回転刃などを用いることができる。
【0040】
図7,8は、ステップS03の一例を説明するための模式図である。
図7は、積層シート104の平面図である。
図8は、積層シート104のY-Z平面に沿った断面図である。積層シート104は、例えば発泡剥離シートなどの粘着性のカットシートCによって保持された状態で、切断線Lx,Lyに沿って押し切り刃BLで切断される。
【0041】
まず、
図8(A)に示すように、押し切り刃BLを積層シート104のZ軸方向上方に、先端をZ軸方向下方の積層シート104に向けて配置する。次に、
図8(B)に示すように、押し切り刃BLをZ軸方向下方に、カットシートCに到達するまで移動させ、積層シート104を貫通させる。
【0042】
そして、
図8(C)に示すように、押し切り刃BLをZ軸方向上方に向けて移動させることにより、積層シート104から引き抜く。これにより、積層シート104がX軸及びY軸方向に切り分けられ、Y軸方向に内部電極112,113が露出する第1及び第2側面S1,S2を有する積層体116が形成される。
【0043】
(ステップS04:サイドマージン部形成)
ステップS04では、ステップS03で得られた積層体116に対し、第1側面S1に未焼成の第1サイドマージン部117aを設け、第2側面S2に未焼成の第2サイドマージン部117bを設ける。これにより、
図9に示すように、内部電極112,113が露出した側面S1,S2がサイドマージン部117a,117bによって覆われた未焼成のセラミック素体111が得られる。
【0044】
本実施形態に係る方法で形成されたサイドマージン部117a,117bでは、厚みの均一性を損なうことなく、積層体116の側面S1,S2に対する高い接着性が得られる。これにより、積層セラミックコンデンサ10の高い信頼性及び歩留まりを実現可能である。ステップS04におけるサイドマージン部117a,117bの形成方法の詳細については後述する。
【0045】
(ステップS05:焼成)
ステップS05では、ステップS04で得られた
図9に示すセラミック素体111を焼成することにより、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。つまり、ステップS05によって、積層体116が積層体16になり、サイドマージン部117a,117bがサイドマージン部17a,17bになる。
【0046】
ステップS05における焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系材料を用いる場合には、焼成温度は1000~1300℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0047】
(ステップS06:外部電極形成)
ステップS06では、ステップS05で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極14,15を形成することにより、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。ステップS06における外部電極14,15の形成方法は、公知の方法から任意に選択可能である。
【0048】
以上により、積層セラミックコンデンサ10が完成する。この製造方法では、内部電極112,113が露出した積層体116の側面S1,S2にサイドマージン部117a,117bが形成されるため、セラミック素体11における複数の内部電極12,13のY軸方向の端部の位置が、0.5μm以内の範囲で揃う。
【0049】
<サイドマージン部117a,117bの形成方法>
図10は、上記のステップS04におけるサイドマージン部117a,117bの形成方法を示すフローチャートである。
図11~18はサイドマージン部117a,117bの形成方法を説明するための図である。以下、サイドマージン部117a,117bの形成方法について、
図10に沿って、
図11~18を適宜参照しながら説明する。
【0050】
なお、
図11~18には、相互に直交するx軸、y軸、及びz軸が示されている。x軸、y軸、及びz軸は、上記のX軸、Y軸、及びZ軸とは異なり、実空間に対して固定された実空間座標系を規定する。x軸及びy軸は水平方向に延び、つまりx-y平面が水平面となる。z軸は、鉛直方向上下に延びる。
【0051】
(ステップS41:積層体向き変更)
ステップS41では、ステップS03後の複数の積層体116の向きを変更する。つまり、
図8(C)に示すステップS03の直後の状態では、相互に隣接する積層体116の側面S1,S2がY軸方向に近接して対向しているため、各積層体116の側面S1,S1にサイドマージン部117を形成することが困難である。このため、ステップS41では、複数の積層体116の側面S1,S2の向きを水平方向(y軸方向)から鉛直方向(z軸方向)に変更する。
【0052】
複数の積層体116の側面S1,S2の向きを変更する方法としては、例えば、転動法などの公知の方法を用いることができる。転動法では、まず積層体116をカットシートCから伸長性を有する第1粘着シートF1に貼り変え、第1粘着シートF1を伸長させることにより、積層体116のy軸方向の間隔を広げる。
【0053】
そして、複数の積層体116を第1粘着シートF1上においてy軸方向に転動させる。このとき、例えば転動盤などを用いることによって、すべての積層体116を一括して転動させることができる。これにより、積層体116が90°回転し、側面S1,S2をそれぞれz軸方向上方及び下方を向けることができる。
【0054】
ステップS41後の複数の積層体116ではいずれも、下方を向いた第2側面S2が第1粘着シートF1に保持され、第1側面S1が上方を向いている(
図11(A)参照)。これにより、すべての積層体116における上方を向いた第1側面S1について一括して第1サイドマージン部117aを形成可能となる。
【0055】
(ステップS42:第1圧着)
ステップS42では、ステップS41において上方に向けられた複数の積層体116の第1側面S1に、第1サイドマージン部117aを構成する第1サイドマージンシート117s1を圧着する。
図11(A)~(C)は、ステップS42における第1サイドマージンシート117s1の圧着の過程を示す図である。
【0056】
ステップS42で用いる第1サイドマージンシート117s1は、未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第1サイドマージンシート117s1の構成は、積層体116の形成のためにステップS01で準備されるセラミックシート101,102,103の構成と同様であっても異なっていてもよい。
【0057】
ステップS42では、x-y平面に沿って延びる剛体板P及び弾性体板Qを用いる。剛体板Pの上下面は、押圧を受けても平面形状が保持される高剛性面pとして構成されている。弾性体板Qの上下面は、押圧を受けていない自由状態において平面形状であり、押圧を受けることで弾性変形する弾性面qとして構成されている。
【0058】
剛体板Pは、ステンレスやアルミニウムなどの一般的に剛体に分類される材料で形成されている。このため、剛体板Pの高剛性面pには、平面形状への影響を無視できる程度の微小な弾性変形が生じることも有り得る。また、弾性体板Qは、各種ゴムなどの一般的に弾性体に分類される材料で形成されている。
【0059】
ステップS42では、
図11(A)に示すように、複数の積層体116の第1側面S1上に、これらを一括して被覆可能なようにx-y平面に沿って延びる一連の第1サイドマージンシート117s1を配置する。そして、複数の積層体116及び第1サイドマージンシート117s1を挟んで弾性体板Qの弾性面qと剛体板Pの高剛性面pとをz軸方向に対向させる。
【0060】
具体的に、弾性体板Qは、複数の積層体116の下側に配置され、弾性面qによって複数の積層体116が配列された第1粘着シートF1の下面を保持する。剛体板Pは、複数の積層体116の上側に配置され、高剛性面pを複数の積層体116の第1側面S1上に配置された第1サイドマージンシート117s1に対向させる。
【0061】
次に、
図11(B)に示すように、剛体板Pを下方に移動させ、剛体板Pの高剛性面pによって第1サイドマージンシート117s1を下方に押し下げる。これにより、第1サイドマージンシート117s1とともに押し下げられる複数の積層体116は、第1粘着シートF1を介して弾性体板Qの弾性面qを押圧することで、弾性体板Qを圧縮変形させる。
【0062】
このとき、複数の積層体116の第1側面S1と第1サイドマージンシート117s1との間には、圧縮変形させられた弾性体板Qの弾性力に応じた押圧力が加わる。これにより、第1サイドマージンシート117s1を複数の積層体116の第1側面S1に対して密着させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、剛体板Pの高剛性面pによって第1サイドマージンシート117s1に押圧力を加えるため、剛体板Pの高剛性面pと複数の積層体116の第1側面S1との間において第1サイドマージンシート117s1に均一な圧力が加わる。これにより、複数の積層体116の第1側面S1上において第1サイドマージンシート117s1の局所的な変形を防止することができる。
【0064】
更に、本実施形態では、
図11(A)に示す状態において複数の積層体116の第1側面S1の高さにばらつきがある場合にも、
図11(B)に示す状態では各積層体116の弾性体板Qの弾性面qへの沈み込みによって複数の積層体116の第1側面S1が同一平面上に揃う。これにより、第1サイドマージンシート117s1をすべての積層体116の第1側面S1に密着させることができる。
【0065】
そして、
図11(C)に示すように、剛体板Pを上方に移動させる。これにより、剛体板Pの高剛性面pが第1サイドマージンシート117s1から離間し、剛体板Pの高剛性面pから第1サイドマージンシート117s1に加わる押圧力が解除される。これに伴って、弾性体板Qの弾性面qが平面形状に戻る。
【0066】
なお、ステップS42では、第1サイドマージンシート117s1を加熱によって軟化させることで、複数の積層体116の第1側面S1に対する密着性を更に高めることができる。本実施形態では、このように軟化した第1サイドマージンシート117s1においても、複数の積層体116の第1側面S1上における局所的な変形を防止する効果が有効に得られる。
【0067】
(ステップS43:第1打ち抜き)
ステップS43では、ステップS42で圧着された第1サイドマージンシート117s1を複数の積層体116の第1側面S1で打ち抜く。
図12(A)~(C)は、ステップS43において複数の積層体116の第1側面S1で第1サイドマージンシート117s1を打ち抜く過程を示す図である。
【0068】
ステップS43では、まず、
図12(A)に示すように、第1粘着シートF1の下面を、剛体板Pの高剛性面pによって保持する。また、第1サイドマージンシート117s1の上方には、x-y平面に沿って延びる押圧部材Eが配置される。押圧部材Eは、弾性体板Qよりも柔軟性が高いことが好ましい。押圧部材Eは、例えば、各種ゴムや各種エラストマーなどで形成することができる。
【0069】
次に、
図12(B)に示すように、押圧部材Eを下方に第1サイドマージンシート117s1に接触するまで移動させ、更に押圧部材Eで第1サイドマージンシート117s1を下方に押し込む。このとき、剛体板Pの高剛性面pによって保持された第1粘着シートF1上の複数の積層体116の位置は変化しない。
【0070】
このため、押圧部材Eは、複数の積層体116の間の空間に食い込むことにより、第1サイドマージンシート117s1における積層体116の第1側面S1に保持されていない領域を下方に押し下げる。これにより、第1サイドマージンシート117s1は、z軸方向に加わるせん断力によって、各積層体116の第1側面S1の輪郭に沿って切断されて個片化される。
【0071】
そして、
図12(C)に示すように、押圧部材Eを上方に移動させることにより、押圧部材Eを第1サイドマージンシート117s1から離間させる。このとき、各積層体116の第1側面S1上に残った第1サイドマージンシート117s1が第1サイドマージン部117aとなる。複数の積層体116の間の空間に残った第1サイドマージンシート117s1は除去する。
【0072】
(ステップS44:転写)
ステップS44では、ステップS43で第1サイドマージン部117aが形成された複数の積層体116を第1粘着シートF1から第2粘着シートF2に転写する。具体的に、ステップS43後の状態から、まず、複数の積層体116の第1側面S1に形成された第1サイドマージン部117に第2粘着シートF2を貼り付ける。
【0073】
次に、第1及び第2粘着シートF1,F2に挟まれた状態の第1サイドマージン部117aが形成された複数の積層体116を上下に反転させる。そして、第1粘着シートF1を複数の積層体116の第2側面S2から剥離させる。これにより、複数の積層体116ではいずれも、第2側面S2が上方を向く(
図13(A)参照)。
【0074】
(ステップS45:第2圧着)
ステップS45では、ステップS44において上方に向けられた複数の積層体116の第2側面S2に、第2サイドマージン部117bを構成する第2サイドマージンシート117s2を圧着する。
図13(A)~(C)は、ステップS45における第2サイドマージンシート117s2を圧着する過程を示す図である。
【0075】
ステップS45で用いる第2サイドマージンシート117s2は、第1サイドマージンシート117s1と同様に、未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。第2サイドマージンシート117s2の構成は、第1サイドマージンシート117s1の構成と同様であっても異なっていてもよい。
【0076】
ステップS45では、x-y平面に沿って延びる2つの剛体板P及び弾性部材Dを用いる。ステップS45で用いる弾性部材Dは、z軸方向に弾性変形可能に構成されている。弾性部材Dとしては、例えば、高分子ゲルで形成されたゲルシートなどの、弾性体で形成されたシート材を用いることができる。
【0077】
ステップS45では、
図13(A)に示すように、複数の積層体116の第2側面S1上に、これらを一括して被覆可能なようにx-y平面に沿って延びる一連の第2サイドマージンシート117s2を配置する。そして、第1サイドマージン部117aが形成された複数の積層体116及び第2サイドマージンシート117s2を挟んで一対の剛体板Pの高剛性面pをz軸方向に対向させる。
【0078】
具体的に、複数の積層体116の下側に配置された剛体板Pは、高剛性面pによって複数の積層体116が配列された第2粘着シートF2の下面を保持する。複数の積層体116の上側に配置された剛体板Pは、高剛性面pを複数の積層体116の第2側面S2上に配置された第2サイドマージンシート117s2に対向させる。
【0079】
更に、第2粘着シートF2を保持する剛体板Pの下側に弾性部材Dを配置する。弾性部材Dは、下側の剛体板Pの下面を保持し、第2粘着シートF2との間に下側の剛体板Pを挟んでいる。弾性部材Dには、下側の剛体板Pから下方への押圧力が加わることで、x-y平面に沿って均一にz軸方向の圧縮変形が生じる。
【0080】
次に、
図13(B)に示すように、上側の剛体板Pを下方に移動させ、上側の剛体板Pの高剛性面pによって第2サイドマージンシート117s2を下方に押し下げる。これにより、複数の積層体116は、第1サイドマージン部117a及び第2粘着シートF2を介して下側の剛体板Pを押圧する。これにより、弾性部材Dには、下側の剛体板Pから下方への押圧力が加わり、z軸方向の圧縮変形が生じる。
【0081】
このとき、一対の複数の積層体116の第2側面S2と第2サイドマージンシート117s2との間には、圧縮変形させられた弾性部材Dの弾性力に応じた押圧力が加わる。これにより、第2サイドマージンシート117s2を複数の積層体116の第2側面S2に対して密着させることができる。
【0082】
また、本実施形態では、上側の剛体板Pの高剛性面pを接触させた状態で第2サイドマージンシート117s2に押圧力を加えるため、剛体板Pの高剛性面pと複数の積層体116の第2側面S2との間において第2サイドマージンシート117s2に均一な圧力が加わる。これにより、複数の積層体116の第2側面S2上において第2サイドマージンシート117s2の局所的な変形を防止することができる。
【0083】
更に、本実施形態では、下側の剛体板Pによって高剛性面pを接触させた状態で第2粘着シートF2を保持しているため、第2粘着シートF2と複数の積層体116の第1側面S1との間において第1サイドマージン部117aに均一な圧力が加わる。これにより、第1サイドマージン部117aの局所的な変形を防止することができる。
【0084】
特に、第1サイドマージン部117aは、強い加圧により圧着された積層体116よりも低密度であることに加え、第1サイドマージンシート117s1から個片化されることで輪郭に沿った稜部に応力が集中しやすくなっている。したがって、第1サイドマージン部117aには輪郭に沿った稜部において局所的な変形が生じやすい。
【0085】
図14は、
図11に示すステップS42と同様の構成を用いたステップS45の比較例の構成を示す図である。具体的に、
図14に示す構成では、第2粘着シートF2を保持するために剛体板Pではなく弾性体板Qを用い、つまり弾性体板Qの弾性面qによって第2粘着シートF2を保持している。
【0086】
図14に示す構成では、弾性体板Qの弾性面qから第2粘着シートF2を介して第1サイドマージン部117aに加わる押圧力が稜部に集中することで、第1サイドマージン部117aの稜部が中央部に比べて大きく変形する。このため、第1サイドマージン部117aでは、稜部のみが薄くなることで、厚みが不均一になる。
【0087】
これに対し、本実施形態に係るステップS45では、
図13(B)に示すように、第2粘着シートF2を剛体板Pの高剛性面pによって保持しているため、第1サイドマージン部117aの稜部に応力が集中しない。このため、本実施形態では、第1サイドマージン部117aにおける厚みの均一性が損なわれにくい。
【0088】
そして、
図13(C)に示すように、押圧用の剛体板Pを上方に移動させる。これにより、剛体板Pの高剛性面pが第2サイドマージンシート117s2から離間し、剛体板Pの高剛性面pから第2サイドマージンシート117s2に加わる押圧力が解除される。これに伴って、弾性部材Dが元の形状に戻る。
【0089】
なお、ステップS45では、複数の積層体116の第2側面S上において第2サイドマージンシート117s2をz軸に沿って圧縮変形させることが好ましい。これにより、複数の積層体の第2側面S1の高さにばらつきがあり、複数の積層体116の第2側面S2が同一平面上に揃っていない場合にも、第2サイドマージンシート117s2をすべての積層体116の第2側面S2に密着させることができる。
【0090】
この場合、ステップS45では、複数の積層体116の第1側面S1に形成された第1サイドマージン部117aよりも厚い第2サイドマージンシート117s2を用いることが好ましい。これにより、第2サイドマージンシート117s2を圧縮変形させても、第1サイドマージン部117aと第2サイドマージン部117bとの厚みの差を小さく留めることができる。
【0091】
また、ステップS45では、第2サイドマージンシート117s2を加熱によって軟化させることで、複数の積層体116の第2側面S2に対する密着性を更に高めることができる。本実施形態では、このように軟化した第2サイドマージンシート117s2においても、複数の積層体116の第1側面S1上における局所的な変形を防止する効果が有効に得られる。
【0092】
第2サイドマージンシート117s2を加熱する構成では、第2サイドマージンシート117s2に加わる熱が第1サイドマージン部117aに伝達されることで、第1サイドマージン部117aも軟化しやすい。本実施形態では、このように軟化した第1サイドマージン部117aにおいても、輪郭に沿った稜部における局所的な変形を効果的に防止することができる。
【0093】
更に、ステップS45で用いる弾性部材Dは、x-y平面に沿って延び、z軸に沿って弾性変形可能な部材であればよく、上記のような弾性体で形成されたシート材に限定されない。例えば、弾性部材Dは、
図15に示すように、z軸方向に弾性変形可能なバネなどの弾性体がx-y平面に沿って配列された構成であってもよい。
【0094】
加えて、弾性部材Dは、第2粘着シートF2を保持する剛体板Pの下側ではなく、
図16に示すように、第2サイドマージンシート117s2を押圧する剛体板Pの上側に設けられていてもよい。更に、弾性部材Dは、
図17に示すように、第2粘着シートF2を保持する剛体板Pの下側と、第2サイドマージンシート117s2を押圧する剛体板Pの上側と、の両方に設けられていてもよい。
【0095】
(ステップS46:第2打ち抜き)
ステップS46では、ステップS45で圧着された第2サイドマージンシート117s2を複数の積層体116の第2側面S2で打ち抜く。
図18(A)~(C)は、ステップS46において複数の積層体116の第2側面S2で第2サイドマージンシート117s2を打ち抜く過程を示す図である。
【0096】
ステップS46では、まず、
図18(A)に示すように、第2粘着シートF2の下面を、剛体板Pの高剛性面pによって保持する。また、第2サイドマージンシート117s2の上方には、押圧部材Eが配置される。ステップS46における剛体板P及び押圧部材Eの構成は、ステップS43と同様である。
【0097】
次に、
図18(B)に示すように、押圧部材Eを下方に第2サイドマージンシート117s2に接触するまで移動させ、更に押圧部材Eで第2サイドマージンシート117s2を下方に押し込む。このとき、剛体板Pの高剛性面pによって保持された第2粘着シートF2上の複数の積層体116の位置は変化しない。
【0098】
このため、押圧部材Eは、複数の積層体116の間の空間に食い込むことにより、第2サイドマージンシート117s2における積層体116の第2側面S2に保持されていない領域を下方に押し下げる。これにより、第2サイドマージンシート117s2は、z軸方向に加わるせん断力によって、各積層体116の第2側面S2の輪郭に沿って切断される。
【0099】
そして、
図18(C)に示すように、押圧部材Eを上方に移動させることにより、押圧部材Eを第2サイドマージンシート117s2から離間させる。このとき、各積層体116の第2側面S2上に残った第2サイドマージンシート117s2が第2サイドマージン部117bとなる。複数の積層体116の間の空間に残った第2サイドマージンシート117s2は除去する。
【0100】
そして、上記のように第1及び第2サイドマージン部117a,117bが形成された複数の積層体116を第2粘着シートF2から剥離させる。これにより、
図9に示す未焼成のセラミック素体111が得られ、上記のステップS04に係るサイドマージン部形成工程が完了する。
【0101】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0102】
例えば、本発明に係る高剛性面pは、変形が生じにくい平面であればよく、上記実施形態のような剛体板Pの表面に限定されない。例えば、高剛性面pは、剛体板Pの表面に設けられた離型シートなどの他の部材の表面であってもよく、剛体部と非剛体部とが一体に構成された複合部材における剛体部の表面であってもよい。
【0103】
同様に、本発明に係る弾性面qは、押圧を受けることで弾性変形する面であればよく、上記実施形態のような弾性体板Qの表面に限定されない。例えば、弾性面qは、弾性体板Qの表面に設けられた離型シートなどの他の部材の表面であってもよく、弾性部と非弾性部とが一体に構成された複合部材における弾性部の表面であってもよい。
【0104】
また、ステップS42では、第1粘着シートF1を保持するために弾性体板Qではなく剛体板Pを用いてもよい。この場合、ステップS42でも、ステップS45と同様に、z軸方向に弾性変形可能な弾性部材Dを用いることができる。更に、第1サイドマージン部117aは、第1サイドマージンシート117s1の打ち抜きによって形成しなくてもよく、例えば、セラミックスラリーの塗布によって形成してもよい。
【0105】
更に、上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明したが、本発明の製造方法は積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0106】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
12,13…内部電極
14,15…外部電極
16…積層体
17a,17b…サイドマージン部
18…容量形成部
19…カバー部
101,102,103…セラミックシート
104…積層シート
111…セラミック素体
112,113…内部電極
116…積層体
117a,117b…サイドマージン部
117s1,117s2…サイドマージンシート
S1,S2…側面
F1,F2…粘着シート
P…剛体板
p…高剛性面
Q…弾性体板
q…弾性面
D…弾性部材
E…押圧部材