(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115425
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
B60W 20/40 20160101AFI20220802BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20220802BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20220802BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20220802BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20220802BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20220802BHJP
F16D 13/46 20060101ALI20220802BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20220802BHJP
F16H 61/688 20060101ALI20220802BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20220802BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20220802BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220802BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20220802BHJP
【FI】
B60W20/40
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60K6/36
B60W10/02 900
B60W10/10 900
F16D13/46 C
F16H61/02
F16H61/688
F16H63/50
B60L7/14
B60L15/20 K
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012009
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治雄
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔太
【テーマコード(参考)】
3D202
3J056
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB11
3D202BB32
3D202BB37
3D202BB65
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3J552MA04
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5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
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5H125BD17
5H125BE05
5H125CA02
5H125CB02
5H125EE42
5H125EE44
(57)【要約】
【課題】モータの接続を容易に制御する自動変速機を提供する。
【解決手段】駆動力源から出力された駆動力が入力される第1変速部と、第1変速部と出力軸との間に接続された副軸と、出力軸に向かって駆動力を伝達する動力伝達経路において第1変速部の下流側に配置された第2変速部と、動力伝達経路に駆動力を付加すると共に回生発電するモータと、動力伝達経路において副軸から第2変速部にわたる中間部分にモータを断接可能に接続する接続部と、第1変速部の変速中に中間部分とモータとの接続を維持するように接続部を制御する変速制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源から出力された駆動力が入力される第1変速部と、
前記第1変速部と出力軸との間に接続された副軸と、
前記出力軸に向かって前記駆動力を伝達する動力伝達経路において前記第1変速部の下流側に配置された第2変速部と、
前記動力伝達経路に駆動力を付加すると共に回生発電するモータと、
前記動力伝達経路において前記副軸から前記第2変速部にわたる中間部分に前記モータを断接可能に接続する接続部と、
前記第1変速部の変速中に前記中間部分と前記モータとの接続を維持するように前記接続部を制御する変速制御部とを備える自動変速機。
【請求項2】
前記変速制御部は、車両が減速する場合に、前記第1変速部の変速中に回生発電を維持するように前記モータを制御する請求項1に記載の自動変速機。
【請求項3】
前記変速制御部は、前記車両の減速に応じて前記第2変速部の変速が要求される場合には、前記第2変速部の変速比を維持した状態で回生発電し、前記車両が再加速するタイミングで駆動力が上昇するように前記駆動力源を制御すると共に前記中間部分に駆動力を付加するように前記モータを制御する請求項2に記載の自動変速機。
【請求項4】
前記変速制御部は、前記車両の再加速に要求される駆動力に対して前記出力軸から出力される駆動力が小さい場合には、前記駆動力源と前記第1変速部の間に配置されたトルクコンバータを制御して前記第1変速部に入力される前記駆動力源の駆動力をさらに上昇させる請求項3に記載の自動変速機。
【請求項5】
複数のクラッチを介して前記駆動力源に接続され、前記駆動力源の駆動力が入力される複数の入力軸をさらに有し、
前記第1変速部は、前記複数の入力軸にそれぞれ配置された複数の第1変速部を有し、
前記第2変速部は、前記複数の第1変速部で変速された変速比をさらに高ギヤ段側または低ギヤ段側に変速するように形成される請求項1~4のいずれか一項に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の変速比を自動的に切り換える自動変速機が実用化されている。例えば、エンジンと奇数段ギヤ列を第1クラッチで接続すると共にエンジンと偶数段ギヤ列を第2クラッチで接続し、一方のギヤ列で走行している間に他方のギヤ列をプレシフトすることで速やかな変速を可能とするデュアルクラッチトランスミッション(DCT;Dual Clutch Transmission)が実用化されている。このような自動変速機は、例えばハイブリッド電気自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)に適用されており、車両の燃料消費率を低減することが求められている。
【0003】
そこで、車両の燃料消費率を低減する技術として、例えば、特許文献1には、変速段の切替時にクラッチの断接によってドライバに与える違和感を解消するハイブリッド電気自動車の制御装置が開示されている。この制御装置は、モータの回生電力をバッテリに充電するため車両の燃料消費率を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の制御装置は、動力伝達経路において変速ギヤ機構の上流側にモータが配置されるため、ギヤを切り換える度にモータと入力軸との接続を切断する必要があり、その制御が複雑化するおそれがあった。
【0006】
本開示は、モータの接続を容易に制御する自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る自動変速機は、駆動力源から出力された駆動力が入力される第1変速部と、第1変速部と出力軸との間に接続された副軸と、出力軸に向かって駆動力を伝達する動力伝達経路において第1変速部の下流側に配置された第2変速部と、動力伝達経路に駆動力を付加すると共に回生発電するモータと、動力伝達経路において副軸から第2変速部にわたる中間部分にモータを断接可能に接続する接続部と、第1変速部の変速中に中間部分とモータとの接続を維持するように接続部を制御する変速制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、モータの接続を容易に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る自動変速機を備えた車両の構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1の動作を示すフローチャートである。
【
図4】エンジンおよびモータの駆動力を動力伝達経路に付加したときの駆動力の変化を示すグラフである。
【
図5】実施の形態3に係る自動変速機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1に、本開示の実施の形態1に係る自動変速機を備えた車両の構成を示す。この車両は、ハイブリッド電気自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)であり、エンジン1と、トルクコンバータ2と、自動変速機3と、車輪4とを有する。なお、車両としては、例えば、トラックなどの商用車が挙げられる。
【0012】
エンジン1は、燃料を燃焼して車両を走行するための駆動力を生成するもので、エンジン出力軸1aを介して、生成された駆動力を自動変速機3に出力する。エンジン1は、例えば、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程の4つの行程を繰り返す、いわゆる4ストローク機関から構成されている。エンジン1としては、例えば、ディーゼルエンジンなどが挙げられる。なお、エンジン1は、本開示の駆動力源を構成するものである。
【0013】
トルクコンバータ2は、エンジン出力軸1aに配置され、自動変速機3に伝達されるエンジン1のトルクを増幅する。例えば、トルクコンバータ2には、ロックアップクラッチが組み込まれており、ロックアップクラッチの断接を切り換えることにより、自動変速機3に伝達されるエンジン1のトルクを変更することができる。
【0014】
車輪4は、自動変速機3の出力軸にプロペラシャフトおよびデファレンシャルギヤなどを介して駆動力が伝達されるように接続されている。
【0015】
自動変速機3は、変速機本体5と、連結部6と、モータ7と、インバータ8と、バッテリ9と、アクセル開度検出部10と、車速検出部11と、変速制御部12とを有する。
【0016】
変速機本体5は、エンジン出力軸1aの回転速度を変速してプロペラシャフトに出力する。
連結部6は、変速機本体5とモータ7とを動力伝達可能に連結するもので、例えばパワーテイクオフ(PTO;Power Take Off)装置から構成することができる。
【0017】
モータ7は、インバータ8を介してバッテリ9に電気的に接続されている。モータ7は、バッテリ9から供給される電力により回転して変速機本体5に駆動力を付加する。また、モータ7は、車両の減速に応じて回生発電して、その電力をバッテリ9に充電する。モータ7は、例えば、モータジェネレータから構成される。
【0018】
インバータ8は、バッテリ9の直流電力を交流電力に変換してモータ7に供給する。また、インバータ8は、モータ7で回生発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ9に供給する。
【0019】
バッテリ9は、モータ7に電力を供給する一方、モータ7で回生発電された電力を充電する。バッテリ9としては、例えば、リチウムイオンバッテリおよびニッケル水素バッテリなどが挙げられる。
【0020】
アクセル開度検出部10は、アクセルの開度を検出するもので、変速制御部12に電気的に接続されている。アクセル開度検出部10は、例えば、アクセルペダルの踏み込み量を検出するセンサから構成することができる。
車速検出部11は、車速を検出するもので、変速制御部12に電気的に接続されている。車速検出部11は、例えば、自動変速機3の出力軸の回転数などを検出するセンサから構成することができる。
【0021】
変速制御部12は、エンジン1、トルクコンバータ2、変速機本体5およびモータ7に電気的に接続されている。変速制御部12は、アクセル開度検出部10で検出されるアクセル開度と車速検出部11で検出される車速とに基づいて、エンジン1、トルクコンバータ2、変速機本体5およびモータ7を制御する。
【0022】
次に、変速機本体5の構成について詳細に説明する。
【0023】
図2に示すように、変速機本体5は、2つの入力用クラッチ13aおよび13bと、2つの入力軸14aおよび14bと、第1変速部15と、副軸16と、第2変速部17と、変速機出力軸18と、モータ用クラッチ19とを有する。
【0024】
入力用クラッチ13aおよび13bは、エンジン出力軸1aと入力軸14aおよび14bとの間に配置され、エンジン出力軸1aと入力軸14aおよび14bとの断接を切り換える。入力用クラッチ13aは、エンジン出力軸1aと一体回転する入力側クラッチ板と、入力軸14aと一体回転する出力側クラッチ板とを有し、この入力側クラッチ板と出力側クラッチ板を圧接することで接とされる。同様に、入力用クラッチ13bは、エンジン出力軸1aと一体回転する入力側クラッチ板と、入力軸14bと一体回転する出力側クラッチ板とを有し、この入力側クラッチ板と出力側クラッチ板を圧接することで接とされる。入力用クラッチ13aおよび13bは、例えば、油圧作動式の湿式多板クラッチから構成することができる。
【0025】
入力軸14aおよび14bは、入力用クラッチ13aおよび13bにそれぞれ対応して回転可能に配置され、入力用クラッチ13aおよび13bを介してエンジン1から駆動力が入力される。
【0026】
第1変速部15は、入力軸14aに配置された第1変速部15aと、入力軸14bに配置された第1変速部15bとを有し、入力軸14aおよび14bを介してエンジン1の駆動力が入力される。第1変速部15aおよび15bは、ギヤ列20a~20dと、シンクロ機構21aおよび21bとを有する。
【0027】
ギヤ列20aおよび20bは、入力軸14aに対して相対回転可能に設けられた入力ギヤと、入力ギヤと歯合すると共に副軸16と一体回転するように設けられた副ギヤとを有する。同様に、ギヤ列20cおよび20dは、入力軸14bに対して相対回転可能に設けられた入力ギヤと、入力ギヤと歯合すると共に副軸16と一体回転するように設けられた副ギヤとを有する。
【0028】
シンクロ機構21aおよび21bは、それぞれ、ハブと、スリーブと、ドグギヤとを有する。ハブは、入力軸14aまたは14bと一体回転するように設けられ、その外周部にスリーブと歯合する外周歯が形成されている。スリーブは、ハブの外周を囲むように配置され、ハブの外周歯と歯合する内周歯が形成されている。また、スリーブは、入力軸14aおよび14bが延びる方向に移動可能、すなわちギヤ列20aおよび20c側またはギヤ列20bおよび20d側に移動可能に配置されている。ドグギヤは、ギヤ列20a~20dと一体回転するように設けられ、外周部がスリーブの内周歯と歯合するように形成されている。スリーブが移動してドグギヤと歯合することにより、ギヤ列20a~20dが入力軸14aおよび14bに同期結合される。
【0029】
このように、第1変速部15は、デュアルクラッチトランスミッション(DCT;Dual Clutch Transmission)から構成されている。ここで、第1変速部15aは、偶数段に対応するギヤ列20aおよび20bからなり、第1変速部15bは、奇数段に対応するギヤ列20cおよび20dからなるものとする。例えば、ギヤ列20aは、1速および5速に対応するように形成され、ギヤ列20bは、3速および7速に対応するように形成される。また、ギヤ列20cは、2速および6速に対応するように形成され、ギヤ列20dは、4速および8速に対応するように形成される。
【0030】
副軸16は、入力軸14aおよび14bと平行に延びるように配置され、一端部側が第1変速部15に接続されると共に他端部側が第2変速部17に接続されている。すなわち、副軸16は、第1変速部15と変速機出力軸18との間に接続されている。副軸16は、回転可能に配置され、第1変速部15から入力される駆動力を、第2変速部17を介して変速機出力軸18に伝達する。これにより、入力軸14aおよび14bから変速機出力軸18に向かって駆動力を伝達する動力伝達経路が形成されることになる。
【0031】
第2変速部17は、動力伝達経路において第1変速部15の下流側に配置、具体的には変速機出力軸18に配置されている。第2変速部17は、ギヤ列22aおよび22bと、シンクロ機構23とを有する。
【0032】
ギヤ列22aおよび22bは、変速機出力軸18に対して相対回転可能に設けられた出力ギヤと、出力ギヤと歯合すると共に副軸16と一体回転するように設けられた副ギヤとを有する。
【0033】
シンクロ機構23は、ハブと、スリーブと、ドグギヤとを有する。ハブは、変速機出力軸18と一体回転するように設けられ、その外周部にスリーブと歯合する外周歯が形成されている。スリーブは、ハブの外周を囲むように配置され、ハブの外周歯と歯合する内周歯が形成されている。また、スリーブは、変速機出力軸18が延びる方向に移動可能、すなわちギヤ列22a側またはギヤ列22b側に移動可能に配置されている。ドグギヤは、ギヤ列22aおよび22bと一体回転するように設けられ、外周部がスリーブの内周歯と歯合するように形成されている。スリーブが移動してドグギヤと歯合することにより、ギヤ列22aおよび22bが変速機出力軸18に同期結合される。
【0034】
ここで、第2変速部17は、第1変速部15で変速された変速比をさらに高ギヤ段側または低ギヤ段側に変速するように形成された、いわゆるハイローギヤから構成されている。例えば、第1変速部15aのギヤ列20aが入力軸14aに接続されている場合に、ギヤ列22aを変速機出力軸18に接続することで1速に対応する回転速度に変速され、ギヤ列22bを変速機出力軸18に接続することで5速に対応する回転速度に変速される。また、第1変速部15aのギヤ列20bが入力軸14aに接続されている場合に、ギヤ列22aを変速機出力軸18に接続することで3速に対応する回転速度に変速され、ギヤ列22bを変速機出力軸18に接続することで7速に対応する回転速度に変速される。
【0035】
同様に、第1変速部15bのギヤ列20cが入力軸14bに接続されている場合に、ギヤ列22aを変速機出力軸18に接続することで2速に対応する回転速度に変速され、ギヤ列22bを変速機出力軸18に接続することで6速に対応する回転速度に変速される。また、第1変速部15bのギヤ列20dが入力軸14bに接続されている場合に、ギヤ列22aを変速機出力軸18に接続することで4速に対応する回転速度に変速され、ギヤ列22bを変速機出力軸18に接続することで8速に対応する回転速度に変速される。
【0036】
変速機出力軸18は、第2変速部17を介して副軸16に接続され、副軸16から伝達される駆動力をプロペラシャフトに出力する。なお、変速機出力軸18は、本開示の出力軸を構成するものである。
【0037】
モータ用クラッチ19は、副軸16とモータ7との断接を切り換えるもので、一方のクラッチ板が副軸16と一体回転するギヤを介して副軸16に接続され、他方のクラッチ板がモータ7の回転軸に接続されている。このとき、モータ用クラッチ19は、副軸16において第1変速部15と第2変速部17との間に接続されており、動力伝達経路において副軸16から第2変速部17にわたる中間部分16aに接続されることになる。
【0038】
これにより、モータ用クラッチ19は、動力伝達経路の中間部分16aにモータ7を断接可能に接続する。モータ7は、バッテリ9から供給される電力により回転して副軸16に駆動力を付加することができる。また、モータ7は、車両の減速に応じて回生発電し、その電力をバッテリ9に充電することができる。なお、モータ用クラッチ19は、本開示の接続部を構成するものである。
【0039】
変速制御部12は、入力用クラッチ13aおよび13b、第1変速部15、第2変速部17、モータ用クラッチ19およびモータ7にそれぞれ接続されている。変速制御部12は、アクセル開度および車速に基づいて適切な変速段を算出し、その変速段を確立するように第1変速部15および第2変速部17を制御する。このとき、変速制御部12は、第1変速部15aをエンジン1に接続している場合には第1変速部15bをプレシフトし、第1変速部15bをエンジン1に接続している場合には第1変速部15aをプレシフトするように制御する。
【0040】
また、変速制御部12は、第1変速部15および第2変速部17の変速に応じてエンジン1およびモータ7を断接するように入力用クラッチ13aおよび13b、モータ用クラッチ19を制御する。
また、変速制御部12は、車両が減速せずに走行する場合には、モータ7のトルクを正方向に制御して、モータ7の駆動力を副軸16に付加する。一方、変速制御部12は、車両が減速する場合には、モータ7のトルクを負方向に制御して、副軸16の回転によりモータ7に回生発電させる。このとき、変速制御部12は、第1変速部15の変速中に副軸16とモータ7との接続を維持するようにモータ用クラッチ19を制御する。そして、変速制御部12は、第1変速部15の変速中も回生発電を維持するようにモータ7を制御する。
【0041】
なお、変速制御部12の機能は、コンピュータプログラムにより実現させることもできる。例えば、コンピュータの読取装置が、変速制御部12の機能を実現するためのプログラムを記録した記録媒体からそのプログラムを読み取り、記憶装置に記憶させる。そして、CPU(Central Processing Unit)が、記憶装置に記憶されたプログラムをRAM(Random Access Memory)にコピーし、そのプログラムに含まれる命令をRAMから順次読み出して実行することにより、変速制御部12の機能を実現することができる。
【0042】
次に、本実施の形態の動作について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
まず、
図1に示すように、エンジン1およびモータ7が駆動されて、車両が走行される。そして、変速制御部12が、アクセル開度検出部10および車速検出部11で検出されるアクセル開度および車速に基づいて適切な変速段を算出し、その変速段を確立するように自動変速機3を制御する。例えば、変速制御部12には、アクセル開度および車速に対応する変速段のマップが予め設定されており、アクセル開度検出部10および車速検出部11で検出される検出値に基づいてマップを参照することにより、適切な変速段を算出することができる。
【0044】
このとき、変速制御部12は、ステップS1で、車両が減速するか否かを判定する。例えば、変速制御部12は、アクセル開度検出部10および車速検出部11で検出される検出値に基づいて車両の減速を判定することができる。
【0045】
変速制御部12は、車両が減速しないと判定した場合には、ステップS2に進んで、モータ7のトルクを正方向に制御して、モータ7の駆動力を副軸16に付加する。これにより、エンジン1およびモータ7の駆動力で車両を走行させることができる。
【0046】
図2に示すように、変速制御部12は、例えば、1速から2速にシフトアップする場合には、第1変速部15aをエンジン1に接続しつつ第1変速部15bをプレシフトするように制御する。すなわち、車両が1速で走行する場合には、第1変速部15aのギヤ列20aが入力軸14aを介してエンジン1に接続されると共に第2変速部17のギヤ列22aが変速機出力軸18に接続されている。このとき、第1変速部15bでは、2速に対応する第1変速部15bのギヤ列20cを入力軸14bに接続するプレシフトが行われる。そして、変速制御部12は、2速にシフトアップするタイミングで、エンジン1と入力軸14aを断状態にすると共にエンジン1と入力軸14bを接状態にするように入力用クラッチ13aおよび13bを制御する。これにより、1速から2速に速やかにシフトアップすることができる。
【0047】
同様に、2速から3速にシフトアップする場合には、第1変速部15bをエンジン1に接続しつつ第1変速部15aをプレシフトし、3速から4速にシフトアップする場合には、第1変速部15aをエンジン1に接続しつつ第1変速部15bをプレシフトする。
【0048】
また、変速制御部12は、4速から5速にシフトアップする場合には、5速に対応する第1変速部15aのギヤ列20aを入力軸14aに接続するプレシフトが行われる。そして、変速制御部12は、5速にシフトアップするタイミングで、エンジン1と入力軸14bを断状態にすると共にエンジン1と入力軸14aを接状態にするように入力用クラッチ13aおよび13bを制御する。また、変速制御部12は、モータ用クラッチ19を断状態にして第2変速部17のギヤ列22bを変速機出力軸18に接続した後、モータ用クラッチ19を接状態にする。そして、変速制御部12は、1速から4速のシフトアップと同様に、5速から8速に順次シフトアップすることができる。
【0049】
一方、変速制御部12は、ステップS1で、車両が減速すると判定した場合には、ステップS3に進んで、現在の変速段と次の変速段(算出された変速段)とに基づいて、第2変速部17の変速が必要か否かを判定する。すなわち、変速制御部12は、5速から8速の間で走行中に1速から4速のいずれかにシフトダウンすると算出した場合には、第2変速部17の変速が必要と判定する。一方、変速制御部12は、シフトダウンが4速から1速の間または8速から5速の間で行われると算出した場合には、ギヤ列22aまたは22bを変速機出力軸18に接続した状態が維持されるため、第2変速部17を変速しないと判定する。
【0050】
変速制御部12は、第2変速部17を変速しないと判定した場合には、ステップS4に進んで、第1変速部15を変速中もモータ7を接状態に維持したまま回生発電するようにモータ7およびモータ用クラッチ19を制御する。
【0051】
従来、モータは、動力伝達経路において第1変速部15の上流側に接続、例えばエンジン出力軸1a、入力軸14aおよび14bに接続されていた。このため、シフトダウンする場合には、動力伝達経路の回転に対して第1変速部15を同期させるために、エンジン1の接続を断状態にするだけでなく、モータの接続も断状態にする必要があり、第1変速部15の変速の度に回生発電が停止されていた。さらに、第1変速部15の変速においてエンジン1とモータの接続を断状態にするため、車両の減速中にトルク抜けが生じて、車両が前方に飛び出すような感覚を運転者に与え、ドライバビリティが低下するおそれがあった。
【0052】
そこで、本開示では、モータ7が、動力伝達経路において副軸16から第2変速部17にわたる中間部分16aに接続されている。このため、シフトダウンする場合に、入力軸14aおよび14bに対するエンジン1の接続を断状態にするだけで、モータ7を副軸16に接続したまま第1変速部15を変速することができる。
【0053】
これにより、変速制御部12は、入力軸14aまたは14bに対するエンジン1の接続を断状態にするように入力用クラッチ13aおよび13bを制御して、第1変速部15を車速に応じた適切な変速段に変速する。また、変速制御部12は、モータ用クラッチ19による副軸16とモータ7との接続を維持したままモータ7が回生発電するようにモータ7を制御する。
【0054】
このように、第1変速部15の変速中に回生発電を維持するようにモータ7を制御するため、モータ7から得られる回生発電の電力量を上昇させることができ、車両の燃料消費率を低減することができる。また、副軸16とモータ7との接続が維持されるため、回生発電に応じた制動によりトルク抜けを防止し、ドライバビリティの低下を抑制することもできる。
【0055】
このとき、第2変速部17は、第1変速部15で変速された変速比をさらに高ギヤ段側または低ギヤ段側に変速するように形成されている。
このため、ギヤ列20a~20d、ギヤ列22aおよび22bの数を低減することができる。また、第2変速部17を高ギヤ段側または低ギヤ段側に維持した状態で第1変速部15のみを変速することができるため、第2変速部17を変速する機会を低減することができ、モータ7から得られる回生発電の電力量をさらに上昇させることができる。
【0056】
また、第1変速部15は、入力用クラッチ13aおよび13bを介してエンジン1に接続されたDCTから構成されている。従来、モータが、動力伝達経路において第1変速部15の上流側に接続されていたため、第1変速部15をプレシフトする場合にもモータの接続を断状態にする必要があり、回生発電で得られる電力量がさらに低下するおそれがあった。
【0057】
本開示では、モータ7が、動力伝達経路において副軸16から第2変速部17にわたる中間部分16aに接続されているため、第1変速部15のプレシフト中もモータ7を副軸16に接続して回生発電を維持することができる。これにより、モータ7から得られる回生発電の電力量を確実に上昇させることができる。
【0058】
一方、変速制御部12は、ステップS3で、第2変速部17を変速すると判定した場合には、ステップS5に進んで、モータ7を断状態に切り換えつつ回生発電するようにモータ7およびモータ用クラッチ19を制御する。
【0059】
例えば、変速制御部12は、5速から4速にシフトダウンする場合には、変速機出力軸18との接続をギヤ列22bからギヤ列22aに切り換えるため、第2変速部17を変速すると判定する。これにより、変速制御部12は、入力軸14aに対するエンジン1の接続を断状態にすると共に予めプレシフトでギヤ列20dに接続された入力軸14bをエンジン1に接続するように入力用クラッチ13aおよび13bを制御する。また、変速制御部12は、副軸16に対するモータ7の接続を断状態にするようにモータ用クラッチ19を制御した後、変速機出力軸18との接続をギヤ列22bからギヤ列22aに切り換えるように第2変速部17を制御する。そして、変速制御部12は、再度、副軸16に対してモータ7を接続するようにモータ用クラッチ19を制御することにより、モータ7における回生発電を再び実施することができる。
【0060】
第2変速部17が低ギヤ段側に切り換えられると、変速制御部12は、4速から1速の間でシフトダウンする場合には、8速から5速の間でシフトダウンする場合と同様に、モータ7を副軸16に接続した状態を維持したまま回生発電するようにモータ7を制御することができる。
【0061】
このようにして、モータ7から得られる回生発電の電力量を上昇させるため、車両の燃料消費率を低減することができる。
【0062】
本実施の形態によれば、モータ7が、動力伝達経路において副軸16から第2変速部17にわたる中間部分16aにモータ用クラッチ19を介して接続されている。これにより、第1変速部15の変速中にモータ7の接続を維持することができ、モータ7の接続を容易に制御することができる。
【0063】
(実施の形態2)
以下、本開示の実施の形態2について説明する。ここでは、上記の実施の形態1との相違点を中心に説明し、上記の実施の形態1との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0064】
上記の実施の形態1において、変速制御部12は、車両の減速に応じて第2変速部17の変速が要求される場合には、第2変速部17の変速比を維持した状態で回生発電し、車両が再加速するタイミングで駆動力が上昇するようにエンジン1を制御すると共に副軸16に駆動力を付加するようにモータ7を制御することができる。
【0065】
例えば、変速制御部12は、ステップS3で、第2変速部17を変速すると判定、すなわち車両の減速に応じて第2変速部17の変速が要求される場合には、第2変速部17の変速比を維持した状態で回生発電するようにモータ7を制御する。変速制御部12は、例えば5速から4速へのシフトダウンが要求される場合には、第1変速部15および第2変速部17の変速比を5速に維持、すなわち第2変速部17の変速比を高ギヤ段側に維持した状態で回生発電するようにモータ7を制御する。そして、変速制御部12は、アクセルが操作されることなく車両がそのまま減速される場合には、第2変速部17の変速比を高ギヤ段側で維持したまま回生発電を持続する。
【0066】
このように、変速制御部12は、第2変速部17の変速比を維持した状態で回生発電を持続させるため、モータ7から得られる回生発電の電力量を上昇させることができる。
【0067】
続いて、変速制御部12は、車両が再加速された場合には、その再加速のタイミングで駆動力が上昇するようにエンジン1を制御する。例えば、変速制御部12は、エンジン1の吸気量および燃料の供給量などを上昇させるようにエンジン1を制御することで、エンジン1の駆動力を上昇させることができる。さらに、変速制御部12は、再加速のタイミングでモータ7のトルクを正方向に制御して、モータ7の駆動力を副軸16に付加する。このとき、変速制御部12は、モータ7のトルクが上昇するように制御することで、副軸16に付加する駆動力を上昇させることができる。
これにより、第2変速部17の変速比を維持した状態で回生発電を持続した場合でも、車両をスムーズに再加速させることができる。
【0068】
実際に、第1変速部15および第2変速部17を5速に対応する変速比に維持したままエンジン1およびモータ7の駆動力を動力伝達経路に付加した結果を
図4に示す。
【0069】
ここで、破線は、1速から8速にそれぞれ切り換えた場合のエンジン1の駆動力の変化を示す。また、一点鎖線は、第2変速部17を低ギヤ段側に切り換えた場合のモータ7の駆動力の変化を示し、二点鎖線は、第2変速部17を高ギヤ段側に切り換えた場合のモータ7の駆動力の変化を示す。
【0070】
図4に示すように、エンジン1およびモータ7の駆動力を動力伝達経路に付加(エンジン+モータ)することにより、変速機出力軸18から出力される駆動力をエンジン1の駆動力において3速に相当する値まで上昇させることができた。このことから、第1変速部15および第2変速部17を5速に対応する状態で3速相当まで減速した場合でも、車両をスムーズに再加速できることがわかる。
【0071】
このとき、変速制御部12は、車両の再加速に要求される駆動力に対して変速機出力軸18から出力される駆動力がさらに小さい場合には、トルクコンバータ2を制御して入力軸14aおよび14bに入力されるエンジン1の駆動力をさらに上昇させることができる。
これにより、車両をよりスムーズに再加速することができる。
【0072】
このようにして、車両が再加速されて、車両の速度が5速相当まで達すると、変速制御部12は、5速相当の駆動力に戻すようにエンジン1およびモータ7を制御する。これにより、第2変速部17を変速することなく、車両を高ギヤ段側で再び走行させることができる。
【0073】
本実施の形態によれば、変速制御部12は、車両が減速に応じて第2変速部17の変速が要求される場合には、第2変速部17の変速比を維持した状態で回生発電し、車両が再加速するタイミングで駆動力が上昇するようにエンジン1を制御すると共に副軸16に駆動力を付加するようにモータ7を制御する。このため、第2変速部17の変速比を維持した状態で回生発電を持続した場合でも、車両をスムーズに再加速させることができる。
【0074】
(実施の形態3)
以下、本開示の実施の形態3について説明する。ここでは、上記の実施の形態1および2との相違点を中心に説明し、上記の実施の形態1および2との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0075】
上記の実施の形態1および2では、第1変速部15は、DCTから構成されたが、変速機能を有していればよく、DCTに限られるものではない。
【0076】
例えば、
図5に示すように、実施の形態1の入力用クラッチ13aおよび13bに換えて入力用クラッチ31を配置すると共に入力軸14aおよび14bに換えて入力軸32を配置し、さらに第1変速部15に換えて第1変速部33を配置することができる。
【0077】
入力用クラッチ31は、エンジン出力軸1aと入力軸32との間に配置され、エンジン出力軸1aと入力軸32との断接を切り換える。
入力軸32は、回転可能に配置され、入力用クラッチ31を介してエンジン1からの駆動力が入力される。
【0078】
第1変速部33は、入力軸32に配置され、ギヤ列34a~34dを有する。ここで、ギヤ列34a~34dは、それぞれ、1速および5速、2速および6速、3速および7速、4速および8速に対応するように形成されている。このように、第1変速部33は、オートマチックマニュアルトランスミッション(AMT;Automatic Manual Transmission)から構成されている。
【0079】
このとき、モータ7が、伝達経路において副軸16から第2変速部17にわたる中間部分16aに接続されているため、実施の形態1および2と同様に、車両が減速する場合に、第1変速部33を変速しつつモータ7で回生発電することができる。
【0080】
本実施の形態によれば、モータ7が動力伝達経路において副軸16から第2変速部17にわたる中間部分16aに接続されているため、車両が減速する場合に、変速制御部12が、第1変速部33の変速中に回生発電を維持するようにモータ7を制御することができる。これにより、モータ7から得られる回生発電の電力量を上昇させることができる。
【0081】
なお、上記の実施の形態1~3では、変速制御部12は、車両が減速する場合にモータ7の接続を維持するように制御したが、第1変速部15の変速中にモータ7の接続を維持するように制御すればよく、これに限られるものではない。例えば、変速制御部12は、車両が加速する場合に、第1変速部15の変速中にモータ7の接続を維持するように制御することができる。
【0082】
また、上記の実施の形態1~3では、モータ7は、副軸16に接続されたが、動力伝達経路において副軸16から第2変速部17にわたる中間部分16aに配置されていればよく、副軸16に限られるものではない。
【0083】
また、上記の実施の形態1~3では、副軸16は、第1変速部と変速機出力軸18に直接的に接続されたが、第1変速部と変速機出力軸18との間に接続されていればよく、これに限られるものではない。
【0084】
また、上記の実施の形態1~3では、副軸16は、1本から構成されたが、第1変速部と変速機出力軸18との間に接続されていればよく、複数本から構成されてもよい。
【0085】
また、上記の実施の形態1~3では、第1変速部は、入力軸に配置されたが、エンジン1の駆動力が入力されるように配置されていればよく、これに限られるものではない。
【0086】
また、上記の実施の形態1~3では、第2変速部17は、変速機出力軸18に配置されたが、動力伝達経路において第1変速部の下流側に配置されていればよく、これに限られるものではない。
また、上記の実施の形態1~3では、第2変速部17は、2つのギヤ列22aおよび22bを切り換えるように構成されたが、変速比を高ギヤ段側または低ギヤ段側に変速できればよく、2つに限られるものではない。
【0087】
また、上記の実施の形態1~3では、第1変速部は、エンジン1の駆動力が入力されたが、駆動力源から出力された駆動力が入力されればよく、エンジン1に限られるものではない。
【0088】
その他、上記の実施の形態は、何れも本発明の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記の実施の形態で説明した各部の形状や個数などについての開示はあくまで例示であり、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示に係る自動変速機は、モータを接続した自動変速機に利用できる。
【符号の説明】
【0090】
1 エンジン
1a エンジン出力軸
2 トルクコンバータ
3 自動変速機
4 車輪
5 変速機本体
6 連結部
7 モータ
8 インバータ
9 バッテリ
10 アクセル開度検出部
11 車速検出部
12 変速制御部
13a,13b,31 入力用クラッチ
14a,14b,32 入力軸
15,15a,15b,33 第1変速部
16 副軸
16a 中間部分
17 第2変速部
18 変速機出力軸
19 モータ用クラッチ
20a~20d,22a,22b,34a~34d ギヤ列
21a,21b,23 シンクロ機構