(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115434
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/52 20060101AFI20220802BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B29C43/52
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012024
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】518455354
【氏名又は名称】株式会社micro-AMS
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】香川 慎吾
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AJ08
4F204AK10
4F204AK11
4F204AM29
4F204FA01
4F204FB01
4F204FH06
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】適用可能な原料の種類の範囲が広い成形体の製造方法の提供。
【解決手段】原料を成形型のキャビティ10内に入れた後、前記成形型の少なくとも一部に電磁波を照射し、または前記成形型の少なくとも一部を交番電界内に配置して、前記キャビティ内で成形体を成形する、成形体の製造方法であって、前記成形型は、前記電磁波を吸収して発熱する、または交番電界内に配置されることで発熱する発熱体20cを前記キャビティの外側に有し、前記発熱体と前記キャビティとの間の少なくとも一部に、前記電磁波または前記交番電界の前記キャビティの内部への透過量を抑制する透過量抑制体を有するか、または前記キャビティの少なくとも一部が前記透過量抑制体からなり、前記発熱体が発熱し、その熱が前記原料に伝導して成形が行われる、成形体の製造方法。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を成形型のキャビティ内に入れた後、前記成形型の少なくとも一部に電磁波を照射し、または前記成形型の少なくとも一部を交番電界内に配置して、前記キャビティ内で成形体を成形する、成形体の製造方法であって、
前記成形型は、
前記電磁波を吸収して発熱する、または交番電界内に配置されることで発熱する発熱体を前記キャビティの外側に有し、
前記発熱体と前記キャビティとの間の少なくとも一部に、前記電磁波または前記交番電界の前記キャビティの内部への透過量を抑制する透過量抑制体を有するか、または前記キャビティの少なくとも一部が前記透過量抑制体からなり、
前記発熱体が発熱し、その熱が前記原料に伝導して成形が行われる、
成形体の製造方法。
【請求項2】
前記発熱体が前記キャビティの全体を覆っている、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
前記透過量抑制体が、前記電磁波または前記交番電界の前記キャビティの内部への透過を遮断するものである、請求項1または2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記キャビティは前記透過量抑制体からなり、
前記発熱体は前記キャビティがその内部に嵌る型であり、
前記キャビティの外表面の少なくとも一部が、前記発熱体の内表面と接している、
請求項1~3のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
前記原料が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、低融点金属および低融点非金属からなる群から選ばれる少なくとも1つを主成分とする、請求項1~4のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
前記原料が繊維材および/またはフィラーを含む、請求項1~5のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
前記発熱体が、シリコーンゴムおよび/またはフッ素ゴムを含有し、さらに、誘電性付与物質としての炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラックおよび黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1つを5~90体積%含有している、
請求項1~6のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
前記透過量抑制体が金属および/または非金属を含む、請求項1~7のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
前記金属および/または前記非金属がアルミニウム、鉄、銅、これらを含む合金および遮蔽ガラスからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項8に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
前記電磁波の波長領域が0.78μm~100mの範囲に含まれる、請求項1~9のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形体の製造方法として、従来、例えば特許文献1に記載の方法が提案されている。
特許文献1には、絶縁性材料からなる成形型と、0.01~100mの波長領域を含む特定電磁波を照射する電磁波照射手段とを備え、上記成形型は、複数の成形型部に分割されており、該成形型部の間には、熱可塑性樹脂を充填して成形品を成形するためのキャビティが形成されており、該キャビティの内壁面の少なくとも一部には、上記特定電磁波を吸収する性能を有する表面層が形成されていることを特徴とする電磁波照射成形装置を用いて成形を行う方法であって、上記キャビティ内に熱可塑性樹脂を配置する配置工程と、上記キャビティ内に配置した熱可塑性樹脂に、上記電磁波照射手段から上記成形型を介して0.01~100mの波長領域を含む特定電磁波を照射する加熱工程と、上記熱可塑性樹脂を冷却して成形品を得る冷却工程とを含むことを特徴とする電磁波照射成形方法が記載されている(請求項1、請求項5参照)。そして、このような方法では熱可塑性樹脂が自ら発熱し、熱可塑性樹脂の全体がより効果的に加熱され、熱可塑性樹脂の全体を短時間で溶融させることができるため、各部の肉厚の変化が大きい成形品、複雑な形状の成形品等を、優れた外観および寸法精度で安定して成形することができることが記載されている(0007、0008段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の成形体の製造方法は、適用可能な原料の種類が狭い範囲に限定される傾向があった。しかし、成形体の製造方法は、様々な種類の原料に適用可能であることが好ましい。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、適用可能な原料の種類の範囲が広い成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の(1)~(10)である。
(1)原料を成形型のキャビティ内に入れた後、前記成形型の少なくとも一部に電磁波を照射し、または前記成形型の少なくとも一部を交番電界内に配置して、前記キャビティ内で成形体を成形する、成形体の製造方法であって、
前記成形型は、
前記電磁波を吸収して発熱する、または交番電界内に配置されることで発熱する発熱体を前記キャビティの外側に有し、
前記発熱体と前記キャビティとの間の少なくとも一部に、前記電磁波または前記交番電界の前記キャビティの内部への透過量を抑制する透過量抑制体を有するか、または前記キャビティの少なくとも一部が前記透過量抑制体からなり、
前記発熱体が発熱し、その熱が前記原料に伝導して成形が行われる、
成形体の製造方法。
(2)前記発熱体が前記キャビティの全体を覆っている、上記(1)に記載の成形体の製造方法。
(3)前記透過量抑制体が、前記電磁波または前記交番電界の前記キャビティの内部への透過を遮断するものである、上記(1)または(2)に記載の成形体の製造方法。
(4)前記キャビティは前記透過量抑制体からなり、
前記発熱体は前記キャビティがその内部に嵌る型であり、
前記キャビティの外表面の少なくとも一部が、前記発熱体の内表面と接している、
上記(1)~(3)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
(5)前記原料が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、低融点金属および低融点非金属からなる群から選ばれる少なくとも1つを主成分とする、上記(1)~(4)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
(6)前記原料が繊維材および/またはフィラーを含む、上記(1)~(5)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
(7)前記発熱体が、シリコーンゴムおよび/またはフッ素ゴムを含有し、さらに、誘電性付与物質としての炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラックおよび黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1つを5~90体積%含有している、上記(1)~(6)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
(8)前記透過量抑制体が金属および/または非金属を含む、上記(1)~(7)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
(9)前記金属および/または前記非金属がアルミニウム、鉄、銅、これらを含む合金および遮蔽ガラスからなる群から選ばれる少なくとも1つである、上記(8)に記載の成形体の製造方法。
(10)前記電磁波の波長領域が0.78μm~100mの範囲に含まれる、上記(1)~(9)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、適用可能な原料の種類の範囲が広い成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】キャビティの好適態様を例示する概略断面図である。
【
図2】発熱体とキャビティとの間に透過量抑制体が存在する場合の成形型を示す概略断面図である。
【
図3】発熱体とキャビティとの間にキャビティ全体を覆うように透過量抑制体が存在する場合の成形型を示す概略断面図である。
【
図4】発熱体が透過量抑制体からなるキャビティを覆っている場合の成形型を示す概略断面図である。
【
図5】
図4を用いて説明した成形型に電磁波を照射した場合を示す概略断面図である。
【
図6】
図4を用いて説明した成形型を交番電界内に配置した場合を示す概略断面図である。
【
図7】実施例で用いたキャビティの概略斜視図である。
【
図8】実施例で用いたキャビティの概略断面図である。
【
図9】実施例で用いたキャビティの外観写真である。
【
図10】実施例で用いたキャビティに原料を入れた状態についての概略断面図である。
【
図12】キャビティがゴム型に嵌った状態を示す概略断面図である。
【
図13】キャビティをゴム型の中央部に嵌めた状態を示す外観写真である。
【
図14】実施例で用いた別の成形型の概略斜視図である。
【
図15】実施例で用いた別の成形型の概略断面図である。
【
図17】発熱体の中央部に透過量抑制体が嵌り、その透過量抑制体の内部にキャビティが形成されていることを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について説明する。
本発明は、原料を成形型のキャビティ内に入れた後、前記成形型の少なくとも一部に電磁波を照射し、または前記成形型の少なくとも一部を交番電界内に配置して、前記キャビティ内で成形体を成形する、成形体の製造方法であって、前記成形型は、前記電磁波を吸収して発熱する、または交番電界内に配置されることで発熱する発熱体を前記キャビティの外側に有し、前記発熱体と前記キャビティとの間の少なくとも一部に、前記電磁波または前記交番電界の前記キャビティの内部への透過量を抑制する透過量抑制体を有するか、または前記キャビティの少なくとも一部が前記透過量抑制体からなり、前記発熱体が発熱し、その熱が前記原料に伝導して成形が行われる、成形体の製造方法である。
このような成形体の製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0010】
<成形型>
本発明の製造方法において用いる成形型について説明する。
【0011】
<発熱体>
本発明の製造方法における成形型は発熱体を有する。
発熱体は、後述するような電磁波を吸収して発熱するものか、または、後述するような交番電界内に配置されることで発熱するものであればよい。
【0012】
発熱体は、ゴム、樹脂、セラミックスに誘電性付与物質を添加したものであることが好ましい。例えば、セラミックスに誘電性付与物質を添加した焼成体であってもよい。
【0013】
発熱体は、シリコーンゴムおよび/またはフッ素ゴムに誘電性付与物質を含有させたものであることが好ましい。
【0014】
誘電性付与物質は誘電性を付与することが可能な物質であり、誘電力率(誘電正接、tanδ)が0.01以上の物質であることが好ましい。
【0015】
誘電性付与物質は炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラックおよび黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0016】
発熱体における誘電性付与物質の含有率は5~90体積%であることが好ましい。
また、発熱体が、シリコーンゴムおよび/またはフッ素ゴムを含有し、さらに、誘電性付与物質としての炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラックおよび黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1つを5~90体積%含有していることが好ましい。
発熱体における誘電性付与物質の含有率は10~70体積%であることがより好ましく、13~50体積%であることがより好ましく、15~35体積%であることがさらに好ましい。発熱体における誘電性付与物質の含有率がこのような範囲であると、後述するような電磁波を吸収して発熱しやすくなり、または後述するような交番電界内に配置されることで発熱しやすくなるからである。また、発熱体が局所的に発熱するようなことが生じ難くなるからである。また、原料が加熱された際にスパーク(例えば放電する現象)が発生し難くなる傾向がある。さらに、発熱体が必要な強度を発現しやすくなるからである。
【0017】
誘電性付与物質が粉体である場合、その平均粒子径(D50)は3~800μmであることが好ましく、4~500μmであることがより好ましく、5~300μmであることがより好ましく、6~100μmであることがより好ましく、7~50μmであることがさらに好ましい。粉体の誘電性付与物質の平均粒子径がこのような範囲であると、後述するような電磁波を吸収して発熱しやすくなり、または後述するような交番電界内に配置されることで発熱しやすくなるからである。また、発熱体が必要な強度を発現しやすくなるからである。
なお、この平均粒子径は、ふるいわけで求めた重量基準の粒度分布から求められるD50を意味するものとする。
【0018】
成形型は、このような発熱体を、キャビティの外側に有する。
【0019】
<キャビティ>
本発明の製造方法における成形型はキャビティを有する。
キャビティは成形型において原料を入れる型であり、原則、キャビティの内部空間と同一形状の成形体が得られる。
【0020】
キャビティの構造等について図を用いて説明する。
図1は好適態様のキャビティの概略断面図である。本発明の製造方法におけるキャビティは、
図1に示す態様に限定されない。
【0021】
図1に示すようにキャビティ10は、複数(
図1においては2つ)に分割され、第1型部11および第2型部12の組み合わせによって構成されていてよい。
図1に示す態様の場合、一対の第1型部11および第2型部12の間に、原料を充填するための内部空間15が形成されている。キャビティにおける内部空間15は、例えば、成形する成形体のマスターモデルを転写させて形成することができる。
【0022】
なお、第1型部11または第2型部12に、内部空間15内を大気圧よりも圧力が低い状態(例えば真空状態)にするための真空ポンプが接続される真空孔が形成されていてもよい。
【0023】
図1に示す態様の場合、第1型部11および第2型部12は互いにスライド可能に構成されている。互いに接近するようにスライドすると、内部空間15の容積が減少する。
ここで、第2型部12が、第1型部11と第2型部12とが相対的にスライドするためのガイド部121を有することが好ましい。第1型部11と第2型部12とが互いに接近すると、内部空間15の容積が減少し、内部空間15内の原料が内部空間15の内壁に押し当てられる。
【0024】
なお、
図1に示す態様において内部空間15は、キャビティを構成する第1型部11および第2型部の内面によって囲まれる空間であるが、本発明の製造方法において内部空間15は、その少なくとも一部がキャビティを構成する部材の内面によって囲まれる空間であればよく、例えば、キャビティを構成する部位の内面と透過量抑制体の内面とによって囲まれる空間であってもよい。
【0025】
<透過量抑制体>
本発明の製造方法における成形型は、上記のような発熱体とキャビティとの間の少なくとも一部に透過量抑制体を有するか、または、キャビティの少なくとも一部が透過量抑制体からなる。
【0026】
透過量抑制体は、電磁波または交番電界のキャビティの内部への透過量を抑制することができる物質からなるものであればよい。具体的には、キャビティ内の原料がスパークしたり、熱暴走したりしない程度にまで、電磁波または交番電界のキャビティの内部への透過量を抑制することができる物質であればよい。なお、熱暴走とは、短時間で温度が上昇し、温度制御が困難になる現象を意味する。
透過量抑制体は、電磁波または交番電界のキャビティの内部への透過量を遮断することができる物質からなることが好ましい。
【0027】
透過量抑制体は金属および/または非金属を含むことが好ましい。
透過量抑制体における金属および/または非金属の含有率は50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、実質的に100%であることがさらに好ましい。なお、「実質的に」とは原料や製造過程から混入し得る不可避的不純物が含まれることのみを許容することを意味する。
具体的には金属の中でもアルミニウム、鉄、銅およびこれらを含む合金からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。アルミニウム、鉄、銅を含む合金は、アルミニウム、鉄、銅のいずれか1つ以上を含んでいる合金であればよく、例えば真鍮(銅亜鉛合金)が挙げられる。
また、非金属の中でも遮蔽ガラスであることが好ましい。
これらは電磁波または交番電界のキャビティの内部への透過量を抑制または遮断することができる。
【0028】
<成形型の構造>
成形型が上記のような発熱体とキャビティとの間の少なくとも一部に透過量抑制体を有する場合について、
図2および
図3を用いて説明する。
図2は発熱体20aとキャビティ10との間に透過量抑制体30aが存在する場合の成形型1aを示す概略断面図である。また、
図3は発熱体20bとキャビティ10との間に、キャビティ10全体を覆うように透過量抑制体30bが存在する場合の成形型1bを示す概略断面図である。
図2および
図3に示す態様は好適例であり、本発明の製造方法における成形型はこれに限定されない。
【0029】
図2に示す成形型1aは、キャビティ10の外側に発熱体20aが存在し、それらの間に透過量抑制体30aが存在する。このような成形型1aの少なくとも一部(発熱体20aの少なくとも一部を含む部分)に電磁波を照射した場合、または、成形型1aの少なくとも一部(発熱体20aの少なくとも一部を含む部分)を交番電界内に配置した場合、発熱体20aは発熱する。成形型1aにおける発熱体20aの少なくとも一部のみに電磁波を照射した場合、または、成形型1aにおける発熱体20aの少なくとも一部のみを交番電界内に配置した場合であっても、発熱体20aは発熱する。
そして、その熱が透過量抑制体30a等を介して、キャビティ10の内部空間15に存する原料に伝導し、その熱によって原料が溶融または硬化することで成形がなされる。ここで発熱体20aとキャビティ10との間に透過量抑制体30aが存在するため、発熱体20aからキャビティ10へ向かう方向の電磁波または交番電界のキャビティ10への透過量は抑制または遮断される。
【0030】
図3に示す成形型1bは、キャビティ10の外側に発熱体20bが存在し、それらの間に透過量抑制体30bが存在する。
図3に示す態様の場合、透過量抑制体30bがキャビティ10の全体を覆っており、さらに透過量抑制体30bの全体を発熱体20bが覆っている(
図3中の手前側および奥側においても、同様である)。すなわち、発熱体20bがキャビティ10の全体を覆っている。ここで透過量抑制体30bは、その内部にキャビティ10が嵌る型であってよい。また、透過量抑制体30bは板(例えば網状の板)等からなるものであってもよい。また、発熱体20bは、その内部に透過量抑制体30bが嵌る型であってよい。
このような成形型1bの少なくとも一部に電磁波を照射した場合、または、成形型1bの少なくとも一部を交番電界内に配置した場合、発熱体20bは発熱する。そして、その熱が透過量抑制体30b等を介して、キャビティ10の内部空間15に存する原料に伝導し、その熱によって原料が溶融または硬化することで成形がなされる。ここで発熱体20bとキャビティ10との間に透過量抑制体30bが存在するため、電磁波または交番電界のキャビティ10の内部空間15への透過量は抑制または遮断される。
【0031】
図2および
図3に示す態様において、成形型(1a、1b)は、キャビティ10と透過量抑制体(30a、30b)との間、または透過量抑制体(30a、30b)と発熱体(20a、20b)との間に、さらに別の部位を有していてもよい。
【0032】
成形型が
図2または
図3に示すような態様の場合、キャビティ10の材質は、内部空間15内の原料が溶融または硬化する条件において軟化しないものであればよい。例えば、硬化性樹脂材料(熱硬化性樹脂材料、光硬化性樹脂材料等)、セメント材料、石膏材料、耐熱性のある種々の非金属材料等であってもよく、ゴム材料からなることが好ましい。
ゴム材料として、シリコーンゴム、フッ素ゴムの他、種々のゴムを用いることができる。
【0033】
成形型として、上記のような
図2または
図3に示す態様のものを用いると、本発明の製造方法における以下の態様を実施することができる。
すなわち、
原料を成形型のキャビティ内に入れた後、前記成形型の少なくとも一部に電磁波を照射し、または前記成形型の少なくとも一部を交番電界内に配置して、前記キャビティ内で成形体を成形する、成形体の製造方法であって、
前記成形型は、
前記電磁波を吸収して発熱する、または交番電界内に配置されることで発熱する発熱体を前記キャビティの外側に有し、
前記発熱体と前記キャビティとの間の少なくとも一部に、前記電磁波または前記交番電界の前記キャビティの内部への透過量を抑制(好ましくは遮断)する透過量抑制体を有し、
前記発熱体が発熱し、その熱が前記原料に伝導して成形が行われる、成形体の製造方法、
を実施することができる。
【0034】
次に、成形型におけるキャビティの少なくとも一部が透過量抑制体からなる場合について、
図4を用いて説明する。
図4は発熱体20cが透過量抑制体からなるキャビティ10を覆っている場合の成形型1cを示す概略断面図である。
図4に示す態様は好適例であり、本発明の製造方法における成形型はこれに限定されない。例えば、キャビティの一部のみが透過量抑制体からなっていてもよい。
【0035】
図4に示す成形型1cにおいてキャビティ10は透過量抑制体からなる。そして、
図4に示す態様の場合、発熱体20cがキャビティ10の全体を覆っている。
図4に示す好適態様において発熱体20cは、その内部にキャビティ10が嵌る型である。具体的には
図4に示す発熱体20cは一方型部201cおよび他方型部202cを有しており、これらは互いにスライド可能に構成されている。スライドして一方型部201cと他方型部202cとが互いに接近すると、その内部のキャビティ10における第1型部11と第2型部12とが互いに接近する。ここで、キャビティ10の外表面の少なくとも一部(原則、外表面の全て)が、発熱体20cの内表面と接している。
【0036】
また、
図4に示す態様の場合、他方型部202cに、発熱体20c内を大気圧よりも圧力が低い状態(例えば真空状態)にするための真空ポンプが接続される真空孔25を有している。発熱体20c内を大気圧よりも圧力が低い状態(例えば真空状態)にすると、一方型部201cと他方型部202cとが互いに接近し、その内部のキャビティ10における第1型部11と第2型部12とが互いに接近する。
【0037】
図4に示すような成形型1cの少なくとも一部に電磁波を照射した場合、または、成形型1cの少なくとも一部を交番電界内に配置した場合、発熱体20cは発熱する。成形型1cにおける発熱体の一部のみに電磁波を照射した場合、または、成形型1cにおける発熱体の一部のみを交番電界内に配置した場合であっても、発熱体20cは発熱する。
成形型1cにおける発熱体の外表面全体に電磁波を照射することが好ましい。
そして、その熱が透過量抑制体からなるキャビティ10の内部空間15に存する原料に伝導し、その熱によって原料が溶融または硬化することで成形がなされる。ここでキャビティ10が透過量抑制体からなるため、電磁波または交番電界のキャビティ10の内部空間15への透過量は抑制または遮断される。
【0038】
図4に示す態様において、成形型1cは、キャビティ10と発熱体20cとの間に、さらに別の部位を有していてもよい。
【0039】
なお、成形型におけるキャビティの少なくとも一部が透過量抑制体からなる場合、発熱体はキャビティの外側に存在していればよく、
図4に示したように、発熱体がキャビティ全体を覆っていなくてもよい。また、発熱体はその内部にキャビティが嵌る型でなくてもよい。
【0040】
図4に示したようにキャビティが透過量抑制体からなり、かつ、透過量抑制体が金属および/または非金属のような融点が高い物質を含む(好ましくは50質量%以上含む、より好ましくは65質量%以上含む、より好ましくは80質量%以上含む、より好ましくは95質量%以上含む、さらに好ましくは実質的に100%である)場合、より高温で処理する必要がある原料を用いて、本発明の製造方法を実施することができる。
従来、例えばシリコーンゴムまたはフッ素ゴムからなるキャビティや、シリコーンゴムまたはフッ素ゴムに誘電性付与物質(炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラック、黒鉛など)を添加した混合物からなるキャビティを用いた場合、キャビティが高温(例えば約250℃以上)になるとキャビティが軟化する場合がある。このような場合、融点が高い原料(例えば融点が約250℃以上の原料)を用いて成形体を製造することは困難であった。原料が溶融または硬化する温度においてキャビティが軟化してしまうからである。成形温度が高い原料としてはPA66、PET、PBTが挙げられる。
これに対して、本発明の製造方法においてキャビティを構成する透過量抑制体がアルミニウム、鉄、銅、これらを含む合金および遮蔽ガラスからなる群から選ばれる少なくとも1つのような金属および/または非金属のような融点が高い物質を含む(好ましくは50質量%以上含む、より好ましくは65質量%以上含む、より好ましくは80質量%以上含む、より好ましくは95質量%以上含む、さらに好ましくは実質的に100%である)場合、成形温度が高い原料を用いて、成形体を製造することができる。
【0041】
成形型が
図4に示すような態様であり、キャビティ10の一部が透過量抑制体からなる場合、キャビティ10における残部の材質は、内部空間15内の原料が溶融または硬化する条件において軟化しないものであればよい。例えば、硬化性樹脂材料(熱硬化性樹脂材料、光硬化性樹脂材料等)、セメント材料、石膏材料、耐熱性のある種々の非金属材料等であってもよく、ゴム材料からなることが好ましい。
ゴム材料として、シリコーンゴム、フッ素ゴムの他、種々のゴムを用いることができる。
【0042】
成形型として、上記のような
図4に示す態様のものを用いると、本発明の製造方法における以下の態様を実施することができる。
すなわち、
原料を成形型のキャビティ内に入れた後、前記成形型の少なくとも一部に電磁波を照射し、または前記成形型の少なくとも一部を交番電界内に配置して、前記キャビティ内で成形体を成形する、成形体の製造方法であって、
前記成形型は、
前記電磁波を吸収して発熱する、または交番電界内に配置されることで発熱する発熱体を前記キャビティの外側に有し、
前記キャビティの少なくとも一部が、前記電磁波または前記交番電界の前記キャビティの内部への透過量を抑制(好ましくは遮断)する透過量抑制体からなり、
前記発熱体が発熱し、その熱が前記原料に伝導して成形が行われる、成形体の製造方法、
を実施することができる。
また、このような態様において、前記発熱体が前記キャビティの全体を覆っていることが好ましい。
【0043】
<製造方法>
本発明の製造方法では、初めに、上記のような成形型のキャビティ内に原料を入れる。
【0044】
原料は、発熱体が発熱し透過量抑制体等を介してキャビティ内へ伝わった熱によって溶融または硬化する物質が主成分であれば、特に限定されない。
【0045】
原料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、低融点金属および低融点非金属からなる群から選ばれる少なくとも1つを主成分とするものであることが好ましい。
【0046】
ここで「主成分」とは含有率が50質量%以上であることを意味するものとする。この含有率は65質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、実質的に100%であることがさらに好ましい。なお、「実質的に」とは原料や製造過程から混入し得る不可避的不純物が含まれることのみを許容することを意味する。
特に断りがない限り、本発明の製造方法において「主成分」は、上記を意味するものとする。
【0047】
原料として用いることができる熱可塑性樹脂として、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン樹脂)等のゴム強化スチレン系樹脂、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート樹脂)等のポリエステル系樹脂、メタキシリレンジアミンポリアミド樹脂等のポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、フッ素樹脂、イミド系樹脂、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)等のケトン系樹脂、スルホン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、感光性樹脂、液晶ポリマー、生分解性プラスチック、軟質樹脂(エラストマー樹脂)等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂は熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ウレタン系、ポリエステル系等)であってもよい。
【0048】
原料として熱可塑性樹脂を用いる場合、発熱体が発する熱によって原料はキャビティ内にて溶融する。また、電磁波または交番電界のキャビティの内部空間への透過量が抑制または遮断されているので、原則、自己発熱しない。従来、ナイロン系樹脂等のような自己発熱挙動の強い原料を用いた場合、自己発熱すると熱暴走する場合があった。本発明の製造方法では原料は原則、自己発熱しないため、ナイロン系樹脂等を原料として用いて成形体を製造することができる。
【0049】
原料として熱可塑性樹脂を用いる場合、粒状またはフレーク状の熱可塑性樹脂を用いてよい。この場合、その平均粒子径は0.2~5mmであることが好ましく、0.5~3mmであることがより好ましい。なお、この平均粒子径は、ふるいわけで求めた重量基準の粒度分布から求められるD50を意味するものとする。
【0050】
原料として、熱可塑性樹脂からなる予備成形体を用いることができる。予備成形体は熱可塑性樹脂を用いて何らかの方法によって三次元形状に形成されたものであり、例えば積層造形法によって三次元形状に積層されたものが挙げられる。ここで積層造形法は、ノズルから糸状(線状)または粒状に吐出する熱可塑性樹脂を三次元形状に積層する種々の3Dプリンタ(AM:アディティブ・マニュファクチャリング)を用いる方法や、熱溶解積層法(材料押出堆積法):FDM(Fused Deposition Modeling)、押出成形法、インクジェット法、粒状物結合法等が挙げられる。
【0051】
原料として用いることができる熱硬化性樹脂として、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドが挙げられる。
原料として熱硬化性樹脂を用いる場合、本発明の製造方法において原料は発熱体が発する熱によって硬化し、成形体となる。
【0052】
原料として用いることができる低融点金属として、例えば亜鉛、インジウム、ガリウム、スズ、ビスマス、鉛などを主成分とした合金が挙げられる。
原料として低融点金属を用いる場合、本発明の製造方法において原料は発熱体が発する熱によって溶融する。
【0053】
原料として用いることができる低融点非金属として、例えば、ガラスが挙げられる。
原料として低融点非金属を用いる場合、本発明の製造方法において原料は発熱体が発する熱によって溶融する。
【0054】
原料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、低融点金属および低融点非金属からなる群から選ばれる少なくとも1つのような、発熱体が発し透過量抑制体等を介してキャビティ内へ伝わった熱によって溶融または硬化する物質を主成分とし、その他の成分として、高融点金属、高融点非金属(セラミックス等)、UV硬化性樹脂、繊維材(CF(カーボンファイバー)、GF(グラスファイバー)、金属繊維(SUS繊維等)、ガラス繊維等)、軟化剤(可塑剤、オイル等)、着色剤(顔料等)、耐衝撃性改質剤(ゴム成分等)、帯電防止剤、導電性材料、フィラー(熱伝導性フィラー、メタリックフィラー等)、難燃剤、耐熱性樹脂、低蓄熱性樹脂、摺動性改良剤などを含んでもよい。
【0055】
従来、原料がCFやSUS繊維のような繊維材やフィラーを含む場合、成形型の少なくとも一部に電磁波を照射し、または成形型の少なくとも一部を交番電界内に配置すると、繊維材を起点にしてスパークする場合があった。これに対して本発明の製造方法では、原料が繊維材やフィラーを含む場合であってもスパークし難い。
【0056】
本発明の製造方法では、上記のような原料を成形型のキャビティ内に入れた後、成形型の少なくとも一部に電磁波を照射し、または、前記成形型の少なくとも一部を交番電界内に配置する。
【0057】
<電磁波の照射>
上記のような原料を成形型のキャビティ内に入れた後、成形型の少なくとも一部に電磁波を照射する場合、その方法は特に限定されない。照射することで、成形型が有する発熱体を発熱させることができる電磁波を照射することができればよい。電磁波は少なくとも発熱体の表面の全部または一部に照射すればよい。
【0058】
成形型に電磁波を照射する場合について、
図5を用いて説明する。
図5は
図4を用いて説明した成形型1cに電磁波を照射した場合を例示する概略断面図である。
図5において、キャビティ10における一対の第1型部11および第2型部12の間に存在する内部空間15には、原料が入れられている。
また、他方型部202cに形成されている真空孔25は真空ポンプ40に接続されており、真空ポンプ40を駆動することで、発熱体20c内を大気圧よりも圧力が低い状態(例えば真空状態)とすることができる。
そして、電磁波発生器42から電磁波を発生させ、電磁波を成形型1cに照射することができる。
【0059】
電磁波発生器42は、0.78μm~100mの波長領域を含む電磁波を発生することができることが好ましい。つまり、発生する電磁波の波長領域が0.78μm~100mの範囲に含まれることが好ましい。
また、電磁波発生器42は、0.78~2μmの波長領域を含む電磁波(近赤外線)、0.01~1mの波長領域を含む電磁波(マイクロ波)、または1~100mの波長領域を含む電磁波(高周波)を発生することができることが好ましい。
近赤外線を発生させる場合、電磁波発生器42はハロゲンランプであってよい。
マイクロ波を発生させる場合、電磁波発生器42はマイクロ波発振器であってよい。
高周波を発生させる場合、電磁波発生器42は高周波発振器であってよい。
【0060】
<交番電界内に配置>
上記のような原料を成形型のキャビティ内に入れた後、成形型の少なくとも一部を交番電界内に配置する場合、その方法は特に限定されない。交番電界内に成形型を配置することで、成形型が有する発熱体を発熱させることができればよい。少なくとも発熱体の全部または一部を交番電界内に配置すればよい。
【0061】
成形型を交番電界内に配置する場合について、
図6を用いて説明する。
図6は
図4を用いて説明した成形型1cを交番電界内に配置した場合を例示する概略断面図である。
図6において、成形型1cにおける一対の第1型部11および第2型部12の間に存在する内部空間15には、原料が充填されている。
また、他方型部202cに形成されている真空孔25は真空ポンプ40に接続されており、真空ポンプ40を駆動することで、発熱体20c内を大気圧よりも圧力が低い状態(例えば真空状態)とすることができる。
そして、誘電加熱器44を用い、一対の電極441、442に印加される高周波の交流電圧によって成形型1cに交番電界を印加することできる。誘電加熱器44による交流電圧の周波数は、1m~100mの波長領域を含む電磁波としての高周波とすることが好ましい。
【0062】
このような本発明の製造方法は、適用可能な原料の種類の範囲が広い。
また、原料として従来公知のペレットを用いることができる。また、従来と比べて成形体の寸法精度が高い。また、従来と比べて冷却時間を短くすることができる。
【実施例0063】
本発明の実施例について説明する。本発明は以下に説明する実施例に限定されない。
【0064】
<実施例1>
初めに成形型を用意した。成形型はキャビティが透過量抑制体からなり、発熱体であるゴム型の内部にキャビティが嵌る、
図4に示したものと同様の態様である。
【0065】
成形型におけるキャビティは、アルミ押し出し材(5052材)を加工して形成した。
図7にキャビティの概略斜視図、
図8にキャビティの概略断面図、
図9にキャビティの外観写真を示す。
図7に示すように、キャビティ50は上部51、中央部52および下部53の3つの部位を組み合わせてなる構造を備える。また、
図7に示した上部51および下部53の一部を中央部52に嵌合させてなるキャビティ50の断面は、
図8のようになる。
キャビティ50における各部の寸法は
図8に示す通りである。すなわち、上部51、中央部52および下部53の各々は、上から見た場合に、おおむね一辺が30mmの正方形をなしている。また、上部51および下部53の厚さ(最大厚さ)は10mmであり、そのうち、上部51および下部53を中央部52に嵌合したときに中央部52内に嵌合(進入)する部分の厚さは5mmである。また、中央部52の厚さ(上部51および下部53における厚さ方向と平行方向の長さ)は12mmである。したがって、上部51および下部53を中央部52に嵌合すると、中央部52内に、厚さが2mm、一辺が26mmの略正方形を底面とする略直方体の内部空間55が現れる。
ここで
図10に示すように、内部空間55に原料57を入れたときに、原料57が上部51、中央部52および下部53によって完全に覆われるようにする。そうすることで、電磁波や交番電界のキャビティの内部への透過は遮断される。
なお、
図10は内部空間55に原料57を入れた直後の状態を示す概略断面図であり、原料57が加熱されると原料57内の空隙が減少し、それに合わせて上部51と下部52との間隔が小さくなり(つまり上部51と下部52とが近づいていき)、内部空間55が縮小する。
【0066】
ゴム型は
図11に示す外観写真のように、内部にキャビティが嵌る態様のものである。なお、
図11には、ゴム型と共に
図9に示したものと同一のキャビティも示した。また、
図12は、
図8に示したキャビティ50がゴム型59に嵌った状態を示す概略断面図である。さらに
図13は
図11に示したキャビティをゴム型の中央部に嵌めた状態を示す外観写真である。
【0067】
ゴム型はシリコーンに誘電付与物質として炭化珪素を含有させ、混錬し、硬化させた後、キャビティが嵌るように中心付近をくり貫いたものである。
【0068】
このように実施例1で用いた成形型は、発熱体としてのゴム型がキャビティの全体を覆い、また、キャビティはゴム型の内部に嵌り、原則、キャビティの外表面の全てがゴム型の内表面と接する態様のものである。
【0069】
ここでは、ゴム型に、ゴム型の外部とその内部に配置されたキャビティとを繋ぐ穴を2つ形成した。
そして、一方の孔にアルミナ製のさや管を装入した。さや管は内部のキャビティの外表面に接するように配置されていて、さや管に光ファイバー温度計を挿入することでキャビティの外表面の温度を継続的に測定することができるように構成されている。
また、他方の孔は、真空ポンプに繋がるチューブと接続し、真空ポンプを駆動することで、キャビティ内を減圧状態とすることができるように構成されている。この孔は、
図4に示した真空孔25に相当する。
【0070】
上記のような成形型を用い、そのキャビティ内の内部空間を満たすように原料を充填した。
ここで原料として、ナイロン樹脂であるアミランCM1011G-30(東レ社製)のマイクロペレットを用いた。マイクロペレットの粒径は0.8~1mm程度である。
【0071】
原料をキャビティ内に充填し、キャビティを閉じた後、ゴム型の内部にキャビティを嵌め込み、ゴム型を閉じ、耐熱テープを貼り付けることでゴム型が開かないように強固に密閉した。
【0072】
その後、さや管に光ファイバー温度計を挿入し、キャビティの外表面の温度を継続的に測定できるようにした。また、ゴム型に形成した他方の孔に真空ポンプに繋がるチューブを接続した。
【0073】
そして、成形型をマイクロ波成形装置内に配置し、ゴム型内の圧力が-95kPaとなるように真空ポンプで真空引きしながら、成形型へ電磁波を照射し、成形を行った。
【0074】
成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間を表1に示す。なお、成形温度、昇温速度は、さや管に挿入された光ファイバー温度計によって測定しながら調整した。
【0075】
<実施例2>
原料として、PC/ABS樹脂であるNS0031(SABICジャパン合同会社製)を用いた。なお、この原料はSUS製のフィラーを15質量%含有している。
そして、それ以外は、実施例1と同様として成形を行った。
ただし、原料の特性に合わせ、成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間は変更した。成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間を表1に示す。
【0076】
<実施例3>
原料として、ナイロン樹脂であるPA6CF30(東レ社製)を用いた。なお、これは炭素繊維を30質量%含有する。
そして、それ以外は、実施例1と同様として成形を行った。
ただし、原料の特性に合わせ、成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間は変更した。成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間を表1に示す。
【0077】
<実施例4>
原料として、ポリエステル樹脂(PBT樹脂)である1101G-30(東レ社製)のペレットを用いた。ペレットの粒径は0.8~1mm程度である。
そして、それ以外は、実施例1と同様として成形を行った。
ただし、原料の特性に合わせ、成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間は変更した。成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間を表1に示す。
【0078】
<実施例5>
原料として、メタキシリレンジアミンポリアミド樹脂(MXD6 C-408 カーボン長繊維グレード)を用いた。なお、この原料はカーボン製のフィラーを40質量%含有したペレット状のものである。
そして、それ以外は、実施例1と同様として成形を行った。
ただし、原料の特性に合わせ、成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間は変更した。成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間を表1に示す。
【0079】
<実施例6>
原料として、炭素繊維強化PPS樹脂であるA630T-30V(東レ社製)を用いた。なお、これは炭素繊維を30質量%含有する。
そして、それ以外は、実施例1と同様として成形を行った。
ただし、原料の特性に合わせ、成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間は変更した。成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間を表1に示す。
【0080】
<実施例7>
原料として、PEEK樹脂(熱可塑性スーパーエンプラ)であるベスタキープ2000P(EVONIK社)のマイクロペレットを用いた。マイクロペレットの粒径は0.8~1.0mm程度である。
そして、それ以外は、実施例1と同様として成形を行った。
ただし、原料の特性に合わせ、成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間は変更した。成形時の成形温度、昇温速度、成形温度での保持時間を表1に示す。
【0081】
【0082】
実施例1~7の各々において、成形完了後は、成形型をマイクロ波成形装置内から取り出し、真空引きを継続しながら、1時間、ファンを用いて風を当てて冷却した。
その結果、実施例1~7の全てにおいて成形体を得ることができた。なお、製造過程において原料の自己発熱による熱暴走やスパークは発生しなかった。
【0083】
また、これとは別に、実施例1~7の各々において、成形完了後に成形型をマイクロ波成形装置内から取り出し、真空引きを停止し、ゴム型内からキャビティのみを取り出して、これにファンを用いて風を当てて冷却した。その場合、5分後には冷却され、キャビティ内から成形体を取り出すことができた。このとき成形体に変形等の問題は生じていなかった。
【0084】
<実施例8>
実施例1~7とは異なる成形型を用意した。
実施例8において用いた成形型は、ゴム製のキャビティの外側にゴム製の発熱体が存在し、それらの間に透過量抑制体が存在する態様のものである。また、透過量抑制体は、その内部にキャビティが密着して存在し得る型をなしていて、キャビティの全体を覆うことができる。さらに、発熱体は、その内部に透過量抑制体が嵌る型をなしていて、透過量抑制体の全体を覆うことができる。
この成形型は、
図3に示した態様と類似するが、これとはキャビティおよび透過量抑制体の構造等が異なる。
【0085】
実施例8において用いた成形型について、
図14~
図17を用いて説明する。
図14は実施例8において用いた成形型の概略斜視図であり、
図15はその概略断面図であり、
図16は透過量抑制体の概略断面図であり、
図17は、発熱体の中央部に透過量抑制体が嵌り、その透過量抑制体の内部にキャビティが形成されていることを示す写真である。
【0086】
図14および
図15に示すように、実施例8において用いた成形型60では、発熱体64は2つの部位からなり、その内部に透過量抑制体66が嵌る。
ここで発熱体64は、シリコーンに誘電付与物質として炭化珪素を含有させ、混錬し、硬化させた後、その内部に透過量抑制体66が嵌るように中心付近をくり貫いたゴム型である。原則、透過量抑制体66の外表面の全てが発熱体64としてのゴム型の内表面と接している。
【0087】
透過量抑制体66は
図14~
図16に示すように2つの部位からなり、各々は矩形の主面を備え、それらが嵌合すると、その内部に空間が生じる態様のものである。また、実施例8において用いた透過量抑制体66は、アルミ押し出し材(5052材)を加工して形成したものである。
【0088】
成形体60においてキャビティ62は、透過量抑制体66の内部に密着して存在している。
このような成形型60のキャビティ62において、原料を入れる内部空間68は、その一部が透過量抑制体66の内面に接している。
【0089】
ここでキャビティ62はシリコーンゴムからなる耐熱性の液状ゴムを用いて、透過量抑制体66の内部に形成した。
【0090】
なお、実施例8では、発熱体64としてのゴム型に、ゴム型の外部とその内部に配置された透過量抑制体66の外表面とを繋ぐ穴を2つ形成し、一方の孔にはアルミナ製のさや管を装入して、さや管に光ファイバー温度計を挿入することで透過量抑制体66の外表面の温度を継続的に測定することができるようにし、他方の孔は、真空ポンプに繋がるチューブと接続し、真空ポンプを駆動することで、キャビティ62内を減圧状態とすることができるようにした。この孔は、
図4に示した真空孔25に相当する。
【0091】
上記のような成形型を用い、そのキャビティ内の内部空間に原料を入れた。
ここで原料として、融点が150℃であり、錫およびビスマスを主として含む低融点合金であるクラフトアロイ(日新レジン株式会社製)を用いた。
【0092】
この原料を20.5gキャビティ62内に充填し、透過量抑制体66を閉じた後、発熱体64としてのゴム型の内部に透過量抑制体66を嵌め込み、ゴム型を閉じ、耐熱テープを貼り付けることでゴム型が開かないように強固に密閉した。
【0093】
その後、さや管に光ファイバー温度計を挿入し、透過量抑制体66の外表面の温度を継続的に測定できるようにした。また、ゴム型に形成した他方の孔に真空ポンプに繋がるチューブを接した。
【0094】
そして、成形型をマイクロ波成形装置内に配置し、ゴム型内の圧力が-95kPaとなるように真空ポンプで真空引きしながら、成形型へ電磁波を照射し、成形を行った。
ここで成形時の成形温度を150℃、昇温速度を10℃/min、成形温度での保持時間を60秒とした。なお、成形温度、昇温速度は、さや管に挿入された光ファイバー温度計によって測定しながら調整した。
【0095】
成形完了後は、成形型をマイクロ波成形装置内から取り出し、真空引きを継続しながら、1時間、ファンを用いて風を当てて冷却した。
その結果、
図18に示すように成形体を得ることができた。なお、製造過程において原料のスパークは発生しなかった。