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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115440
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】電動機及び圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
H02K3/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012034
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 公興
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝史
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604CC16
5H604DB26
5H604PB02
(57)【要約】
【課題】ステータの径方向及び軸方向に対するコイル間絶縁体の移動を移動規制手段によって規制するともに、巻き線の巻回工程での巻回動作が移動規制手段によって妨げられることを防止する。
【解決手段】電動機は、ロータと、ロータを回転させる磁界を発生する環状のステータと、を備える。ステータは、ステータの周方向に間隔をあけて配置された複数のティースと、複数のティースの各々に導線が巻回されることで形成された複数の巻回部と、巻回部を形成する導線の一端側に接続された中性線と、ステータの周方向に隣り合う巻回部同士の間隙に配置されて巻回部同士を絶縁するコイル間絶縁体と、を有する。コイル間絶縁体は、ステータの径方向の外側へ延びてこの外側で折り返してステータの径方向の内側へ延びる折曲部を有し、折曲部の内側に通された中性線によってコイル間絶縁体の移動が規制されている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、前記ロータを回転させる磁界を発生する環状のステータと、を備え、
前記ステータは、
前記ステータの周方向に間隔をあけて配置された複数のティースと、
前記複数のティースの各々に導線が巻回されることで形成された複数の巻回部と、前記巻回部を形成する前記導線の一端側に接続された中性線と、
前記ステータの前記周方向に隣り合う巻回部同士の間隙に配置されて前記巻回部同士を絶縁するコイル間絶縁体と、を有し、
前記コイル間絶縁体は、前記ステータの径方向の外側へ延びて当該外側で折り返して前記径方向の内側へ延びる折曲部を有し、前記折曲部の内側に通された中性線によって前記コイル間絶縁体の移動が規制されている、電動機。
【請求項2】
前記ステータは、前記ステータの端部に設けられるインシュレータを有し、
前記中性線は、前記ステータの軸方向に沿って前記折曲部の内側に通されて、前記インシュレータに固定されている、
請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記ステータは、前記ティースと当該ティースに巻回される前記導線とを絶縁するスロット絶縁体を有し、当該スロット絶縁体は、前記ステータの前記周方向に隣り合うティース同士の間に配置され、
前記コイル間絶縁体は、前記スロット絶縁体に係合する係合部を有する、
請求項1または2に記載の電動機。
【請求項4】
前記コイル間絶縁体には、前記ステータの軸方向の両端に、前記折曲部の内側に通された前記中性線が引っ掛けられる溝が形成されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動機。
【請求項5】
前記コイル間絶縁体の前記溝は、前記折曲部に形成されている、
請求項4に記載の電動機。
【請求項6】
前記スロット絶縁体は、前記ステータの前記径方向の内側に位置する端部が、前記径方向の外側に向かって折り曲げられて前記径方向に沿って延ばされている、
請求項3に記載の電動機。
【請求項7】
前記コイル間絶縁体は、前記ステータの前記径方向の外側に配置される外周部の角部が面取りされた面取り部を有する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電動機。
【請求項8】
冷媒を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電動機と、を備える圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機及び圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
集中巻型の電動機としては、永久磁石が設けられたロータと、回転磁界を発生してロータを回転させるステータと、を備えており、ステータが有する複数のティースの各々に、導線(電線)が巻回されることで形成された複数の巻回部(コイル)を備えたものがある。この種の電動機には、ステータの周方向に隣り合う巻回部同士が対向する間隙に、巻回部同士の絶縁を適正に確保するためのコイル間絶縁体が設けられた構造が知られている(特許文献1)。コイル間絶縁体は、ステータに各巻回部が形成された後、上述の間隙に挿入されて取り付けられる。
【0003】
例えば、圧縮機に用いられる電動機では、圧縮部から吐出されたガスが電動機を通過する際に、ガスによってコイル間絶縁体がステータの径方向やステータの軸方向(ロータの回転軸方向)に移動し、コイル間絶縁体がロータに接触するおそれがある。このため、特許文献1では、コイル間絶縁体がステータの径方向に移動しないように、後述するスロット絶縁体に移動規制手段を設けている。具体的には、ステータの周方向に隣り合うティース同士の間に配置されるスロット絶縁体の両端部が、隣り合う巻回部同士の間隙の領域内に突出しており、スロット絶縁体の両端部によって、コイル間絶縁体がステータの径方向の内側へ移動することが規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-17972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ティースに導線を巻回する巻回工程では、巻線機のノズルから供給される導線をティースに巻き付けるときに、ノズルがティース部の間に進入してステータの軸方向に対する移動を繰り返しながら巻回部(コイル)を形成する。上述した特許文献1では、スロット絶縁体の両端部が隣り合う巻回部同士の間隙の領域内に突出することによって、スロット絶縁体の両端部の間隔が狭くなっているので、巻回工程でのノズルの巻回動作がスロット絶縁体の両端部によって妨げられる問題がある。このため、ノズルがスロット絶縁体の両端部に接触しやすく、ノズルの移動時にスロット絶縁体が摩耗したり、破損したりするおそれがある。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、ステータに対するコイル間絶縁体の移動を移動規制手段によって規制することができるとともに、導線の巻回工程での巻回動作が移動規制手段によって妨げられることを防止することができる電動機及び圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する電動機の一態様は、ロータと、ロータを回転させる磁界を発生する環状のステータと、を備え、ステータは、ステータの周方向に間隔をあけて配置された複数のティースと、複数のティースの各々に導線が巻回されることで形成された巻回部と、巻回部を形成する導線の一端側に接続された中性線と、ステータの周方向に隣り合う巻回部同士の間隙に配置されて巻回部同士を絶縁するコイル間絶縁体と、を有し、コイル間絶縁体は、ステータの径方向の外側へ延びてこの外側で折り返してステータの径方向の内側へ延びる折曲部を有し、折曲部の内側に通された中性線によってコイル間絶縁体の移動が規制されている。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する電動機の一態様によれば、ステータに対するコイル間絶縁体の移動を移動規制手段によって規制することができるとともに、巻き線の巻回工程での巻回動作が移動規制手段によって妨げられることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例の3相モータを備える圧縮機を示す縦断面図である。
図2図2は、実施例の3相モータを上インシュレータ側から示す平面図である。
図3図3は、実施例におけるステータコアを示す下面図である。
図4図4は、実施例における下インシュレータを示す斜視図である。
図5図5は、実施例におけるステータを示す下面図である。
図6図6は、実施例における複数の巻回部を示す展開図である。
図7図7は、実施例における複数の巻回部の結線状態を示す結線図である。
図8図8は、実施例において、ステータから各中性線が引き出された状態を示す平面図である。
図9図9は、実施例においてステータに設けられたスロット絶縁体を拡大して示す平面図である。
図10図10は、実施例においてステータに設けられたコイル間絶縁体を示す平面図である。
図11図11は、実施例におけるコイル間絶縁体を拡大して示す平面図である。
図12図12は、実施例におけるコイル間絶縁体が折り畳まれる状態を説明するための斜視図である。
図13図13は、実施例におけるコイル間絶縁体の折り畳み状態を示す平面図である。
図14図14は、実施例におけるコイル間絶縁体を示す側面図である。
図15図15は、実施例におけるコイル間絶縁体の溝を拡大して示す斜視図である。
図16図16は、実施例におけるコイル間絶縁体がステータに取り付けられた状態を示す側面図である。
図17図17は、変形例1のコイル間絶縁体を示す平面図である。
図18図18は、変形例1のコイル間絶縁体が折り畳まれる状態を説明するための斜視図である。
図19図19は、変形例1のコイル間絶縁体の折り畳み状態を示す平面図である。
図20図20は、変形例2のコイル間絶縁体を示す側面図である。
図21図21は、変形例3のコイル間絶縁体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する電動機及び圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する電動機及び圧縮機が限定されるものではない。
【実施例0011】
図1は、実施例の3相モータを備える圧縮機を示す縦断面図である。図1に示すように、圧縮機1は、いわゆるロータリ圧縮機であり、容器2と、シャフト3と、圧縮部5と、電動機としての3相モータ6と、を備えている。容器2は、密閉された内部空間7を形成している。内部空間7は、概ね円柱状に形成されている。容器2は、水平面上に縦置きされたときに、内部空間7をなす円柱の中心軸が鉛直方向に平行になるように形成されている。容器2には、内部空間7の下部に油溜め8が形成されている。油溜め8には、圧縮部5を潤滑させる潤滑油である冷凍機油が貯留される。容器2には、冷媒を吸入するための吸入管11と、圧縮された冷媒を吐出する吐出管12と、が接続されている。回転軸としてのシャフト3は、棒状に形成されており、一端が油溜め8に配置されるように、容器2の内部空間7に配置されている。シャフト3は、内部空間7をなす円柱の中心軸を中心に回転可能に容器2に支持されている。シャフト3は、回転することにより、油溜め8に貯留された冷凍機油を圧縮部5に供給する。
【0012】
圧縮部5は、内部空間7の下部に配置され、油溜め8の上方に配置されている。圧縮機1は、さらに、上マフラーカバー14と、下マフラーカバー15と、を備えている。上マフラーカバー14は、内部空間7のうちの圧縮部5の上部に配置されている。上マフラーカバー14は、内部に上マフラー室16を形成している。下マフラーカバー15は、内部空間7における圧縮部5の下部に設けられており、油溜め8の上部に配置されている。下マフラーカバー15は、内部に下マフラー室17を形成している。下マフラー室17は、圧縮部5に形成されている連通路(図示せず)を介して上マフラー室16に連通している。上マフラーカバー14とシャフト3との間には、圧縮冷媒吐出孔18が形成され、上マフラー室16は、圧縮冷媒吐出孔18を介して内部空間7に連通している。
【0013】
圧縮部5は、シャフト3が回転することにより吸入管11から供給される冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を上マフラー室16と下マフラー室17とに供給する。その冷媒は、冷凍機油と相溶性を有している。3相モータ6は、内部空間7のうちの圧縮部5の上部に配置されている。
【0014】
図2は、実施例における3相モータ6を上インシュレータ側から示す平面図である。図1及び図2に示すように、3相モータ6は、ロータ21と、ステータ22と、を備えている。ロータ21は、珪素鋼の薄板(磁性体)を複数積層して円柱状に形成されており、複数のリベット9により一体化されている。ロータ21の中心には、シャフト3が挿通され固定されているロータ21には、6個のスリット状の磁石埋め込み孔10aが、シャフト3を中心として6角形の各辺をなすように形成されている。各磁石埋め込み孔10aは、ロータ21の周方向に所定間隔をあけて形成されている。磁石埋め込み孔10aには、板状の永久磁石10bが埋め込まれている。
【0015】
ステータ22は、概ね円筒形に形成されており、ロータ21を囲むように配置されて、容器2に固定されている。ステータ22は、ステータコア23と、上インシュレータ24及び下インシュレータ25と、複数の導線45と、を備えている。上インシュレータ24は、ステータコア23の上部に固定されている。下インシュレータ25は、ステータコア23の下部に固定されている。上インシュレータ24及び下インシュレータ25は、ステータコア23と導線45とを絶縁する絶縁部の一例である。
【0016】
図3は、実施例におけるステータコア23を示す下面図である。ステータコア23は、例えば、ケイ素鋼板に例示される軟磁性体で形成された複数の板が積層されて形成され、図3に示すように、ヨーク部31と複数のステータコアティース部32-1~32-9とを備えている。ヨーク部31は、概ね円筒形に形成されている。複数のステータコアティース部32-1~32-9のうちの第1ステータコアティース部32-1は、概ね柱体状に形成されている。第1ステータコアティース部32-1は、一端がヨーク部31の内周面に連続して形成され、すなわち、ヨーク部31の内周面から突出するように形成されている。複数のステータコアティース部32-1~32-9のうちの第1ステータコアティース部32-1と異なるステータコアティース部も、第1ステータコアティース部32-1と同様に、概ね柱体状に形成されており、ヨーク部31の内周面から突出している。複数のステータコアティース部32-1~32-9は、さらに、ヨーク部31の内周面に40度ごとの等間隔に配置されて形成されている。
【0017】
図4は、実施例における下インシュレータ25を示す斜視図である。下インシュレータ25は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)に例示される絶縁体によって形成されており、図4に示すように、外周壁部41と、複数のインシュレータティース部42-1~42-9(インシュレータティース部42とも呼ぶ。)と、複数の鍔部43-1~43-9と、を有している。外周壁部41は、概ね円筒形に形成されている。外周壁部41は、複数のスリット44が形成されている。複数のインシュレータティース部42-1~42-9のうちの第1インシュレータティース部42-1は、断面が概ね半円である直柱体状に形成されている。第1インシュレータティース部42-1は、一端が外周壁部41の内周面に連続して形成され、すなわち、外周壁部41の内周面から突出するように形成されている。複数のインシュレータティース部42-1~42-9のうちの第1インシュレータティース部42-1と異なるインシュレータティース部も、直柱体状に形成され、第1インシュレータティース部42-1と同様に、外周壁部41の内周面から突出するように形成されている。複数のインシュレータティース部42-1~42-9は、外周壁部41の内周面に40度ごとの等間隔に配置されて形成されている。
【0018】
複数の鍔部43-1~43-9は、複数のインシュレータティース部42-1~42-9に対応し、それぞれ、概ね半円形の板状に形成されている。複数の鍔部43-1~43-9のうちの第1インシュレータティース部42-1に対応する第1鍔部43-1は、第1インシュレータティース部42-1の他端に連続して形成されている。複数の鍔部43-1~43-9のうちの第1鍔部43-1と異なる鍔部も、第1鍔部43-1と同様に、複数のインシュレータティース部42-1~42-9の他端に連続して形成されている。
【0019】
上インシュレータ24も、下インシュレータ25と同様に形成されている。すなわち、上インシュレータ24は、絶縁体によって形成されており、外周壁部41と、複数のインシュレータティース部42-1~42-9と、複数の鍔部43-1~43-9と、を有している。
【0020】
図5は、実施例におけるステータ22を示す下面図である。ステータコア23の複数のステータコアティース部32-1~32-9(以下、ステータコアティース部32とも呼ぶ。)は、図5に示すように、複数の導線45がそれぞれ巻回されている。各ステータコアティース部32-1~32-9には、各導線45が巻回されることによって巻回部(コイル)46がそれぞれ形成されている。実施形態における3相モータ6は、6極9スロットの集中巻型のモータである(図2参照)。複数の巻回部(コイル)46は、複数のU相コイル46-U1~46-U3と、複数のV相コイル46-V1~46-V3と、複数のW相コイル46-W1~46-W3と、を備えている。
【0021】
U相コイルは複数の巻回部(コイル)を備えている。具体的には、U相コイルとして、第1U相コイル46-U1と、第2U相コイル46-U2と、第3U相コイル46-U3と、を備えている。第1U相コイル46-U1は、第4ステータコアティース部32-4に巻回されている。第2U相コイル46-U2は、第7ステータコアティース部32-7に巻回されている。第3U相コイル46-U3は、第1ステータコアティース部32-1に巻回されている。
【0022】
V相コイルは複数の巻回部(コイル)を備えている。具体的には、V相コイルとして、第1V相コイル46-V1と、第2V相コイル46-V2と、第3V相コイル46-V3と、を備えている。第1V相コイル46-V1は、第8ステータコアティース部32-8に巻回されている。第2V相コイル46-V2は、第2ステータコアティース部32-2に巻回されている。第3V相コイル46-V3は、第5ステータコアティース部32-5に巻回されている。
【0023】
W相コイルは複数の巻回部(コイル)を備えている。具体的には、W相コイルとして、第1W相コイル46-W1と、第2W相コイル46-W2と、第3W相コイル46-W3と、を備えている。第1W相コイル46-W1は、第6ステータコアティース部32-6に巻回されている。第2W相コイル46-W2は、第9ステータコアティース部32-9に巻回されている。第3W相コイル46-W3は、第3ステータコアティース部32-3に巻回されている。
【0024】
第1ステータコアティース部32-1は、下インシュレータ25の第1インシュレータティース部42-1と、上インシュレータ24の第1インシュレータティース部と、上インシュレータ24と下インシュレータ25の間に配置されるスロット絶縁体26(図3参照)と共に第3U相コイル46-U3が巻回されている。スロット絶縁体26は、ステータ22の周方向に隣り合うステータコアティース部32同士の間にわたって配置されることで、ステータコアティース部32とコイル46とを電気的に絶縁する。スロット絶縁体26は、樹脂フィルム等の絶縁材料によって形成されている。このため、第3U相コイル46-U3は、上インシュレータ24と下インシュレータ25とにより、第1ステータコアティース部32-1から適切に絶縁され、ステータコア23から適切に絶縁されている。さらに、第3U相コイル46-U3は、下インシュレータ25の第1鍔部43-1と外周壁部41との間に挟まれるように巻回されており、上インシュレータ24の第1鍔部と外周壁部との間に挟まれるように巻回されている。このため、第3U相コイル46-U3は、上インシュレータ24及び下インシュレータ25により、第1ステータコアティース部32-1からロータ21の側に外れる、いわゆる巻きこぼれが防止されている。
【0025】
複数のコイル46のうちの第3U相コイル46-U3と異なる他のコイルに関しても、上インシュレータ24及び下インシュレータ25により、ステータコア23から適切に絶縁され、巻きこぼれが防止されている。
【0026】
図6は、実施例における複数の巻回部(コイル)46を示す展開図である。第1U相コイル46-U1は、図6に示すように、第4ステータコアティース部32-4に反時計回り(CCW:Counter ClockWise)に巻回されている。第2U相コイル46-U2は、第7ステータコアティース部32-7に時計回り(CW:ClockWise)に巻回されている。第3U相コイル46-U3は、第1ステータコアティース部32-1に反時計回りに巻回されている。第1V相コイル46-V1は、第8ステータコアティース部32-8に反時計回りに巻回されている。第2V相コイル46-V2は、第2ステータコアティース部32-2に時計回りに巻回されている。第3V相コイル46-V3は、第5ステータコアティース部32-5に反時計回りに巻回されている。第1W相コイル46-W1は、第6ステータコアティース部32-6に反時計回りに巻回されている。第2W相コイル46-W2は、第9ステータコアティース部32-9に時計回りに巻回されている。第3W相コイル46-W3は、第3ステータコアティース部32-3に反時計回りに巻回されている。
【0027】
ステータ22は、複数のU相中性線47-U1~47-U3と、複数のV相中性線47-V1~47-V3と、複数のW相中性線47-W1~47-W3と、をさらに備えている。複数のU相中性線47-U1~47-U3、複数のV相中性線47-V1~47-V3及び複数のW相中性線47-W1~47-W3(以下、中性線47とも呼ぶ。)は、複数のステータコアティース部32-1~32-9よりも下インシュレータ25から遠い上インシュレータ24側に配置されている。なお、上インシュレータ24側には、電源線であるリード側も配置されるので、以下、本明細書では上インシュレータ24側をリード側とも呼ぶ。
【0028】
第1U相中性線47-U1は、一端が第1U相コイル46-U1に電気的に接続されている。第1U相中性線47-U1は、その一端が第4ステータコアティース部32-4の第1方向側(図6中の左側)に配置されており、他端が第4ステータコアティース部32-4よりも下インシュレータ25から遠いリード側に配置されている。第2U相中性線47-U2は、一端が第2U相コイル46-U2に電気的に接続されている。第2U相中性線47-U2は、その一端が第7ステータコアティース部32-7の第1方向側に配置されており、他端が第7ステータコアティース部32-7よりもリード側に配置されている。第3U相中性線47-U3は、一端が第3U相コイル46-U3に電気的に接続されている。第3U相中性線47-U3は、その一端が第1ステータコアティース部32-1の第1方向側に配置されており、他端が第1ステータコアティース部32-1よりもリード側に配置されている。
【0029】
複数のV相中性線47-V1~47-V3は、第1V相中性線47-V1と、第2V相中性線47-V2と、第3V相中性線47-V3と、を備えている。第1V相中性線47-V1は、一端が第1V相コイル46-V1に電気的に接続されている。第1V相中性線47-V1は、その一端が第5ステータコアティース部32-5の第1方向側に配置されており、他端が第5ステータコアティース部32-5よりもリード側に配置されている。第2V相中性線47-V2は、一端が第2V相コイル46-V2に電気的に接続されている。第2V相中性線47-V2は、その一端が第2ステータコアティース部32-2の第1方向側に配置されており、他端が第2ステータコアティース部32-2よりもリード側に配置されている。第3V相中性線47-V3は、一端が第3V相コイル46-V3に電気的に接続されている。第3V相中性線47-V3は、その一端が第5ステータコアティース部32-5の第1方向側に配置されており、他端が第5ステータコアティース部32-5よりもリード側に配置されている。
【0030】
複数のW相中性線47-W1~47-W3は、第1W相中性線47-W1と、第2W相中性線47-W2と、第3W相中性線47-W3と、を備えている。第1W相中性線47-W1は、一端が第1W相コイル46-W1に電気的に接続されている。第1W相中性線47-W1は、その一端が第6ステータコアティース部32-6の第1方向側に配置されており、他端が第6ステータコアティース部32-6よりもリード側に配置されている。第2W相中性線47-W2は、一端が第2W相コイル46-W2に電気的に接続されている。第2W相中性線47-W2は、その一端が第9ステータコアティース部32-9の第1方向側に配置されており、他端が第9ステータコアティース部32-9よりもリード側に配置されている。第3W相中性線47-W3は、一端が第3W相コイル46-W3に電気的に接続されている。第3W相中性線47-W3は、その一端が第3ステータコアティース部32-3の第1方向側に配置されており、他端が第3ステータコアティース部32-3よりもリード側に配置されている。
【0031】
ステータ22は、複数のU相電源線48-U1~48-U3と、複数のV相電源線48-V1~48-V3と、複数のW相電源線48-W1~48-W3と、をさらに備えている。複数のU相電源線48-U1~48-U3、複数のV相電源線48-V1~48-V3及び複数のW相電源線48-W1~48-W3を、電源線48とも呼ぶ。
【0032】
複数のU相電源線48-U1~48-U3は、一端が第1ステータコアティース部32-1のリード側に配置され、かつ、その一端が第1ステータコアティース部32-1の第2方向側(図6中の右側)に配置されている。第1U相電源線48-U1の他端は、第1U相コイル46-U1に電気的に接続されている。第2U相電源線48-U2の他端は、第2U相コイル46-U2に電気的に接続されている。第3U相電源線48-U3の他端は、第3U相コイル46-U3に電気的に接続されている。
【0033】
第1U相電源線48-U1は、さらに、一部が下インシュレータ25の外周壁部41の複数のスリット44を通り、第1U相渡り線部分49-U1を含んでいる。第1U相電源線48-U1の一部である第1U相渡り線部分49-U1は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿うように配置されている。第2U相電源線48-U2は、さらに、一部が下インシュレータ25の外周壁部41の複数のスリット44を通り、第2U相渡り線部分49-U2を含んでいる。第2U相電源線48-U2の一部である第2U相渡り線部分49-U2は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿って配置されている。
【0034】
複数のV相電源線48-V1~48-V3は、一端が第5ステータコアティース部32-5のリード側に配置され、かつ、その一端が第5ステータコアティース部32-5の第2方向側に配置されている。第1V相電源線48-V1の他端は、第1V相コイル46-V1に電気的に接続されている。第2V相電源線48-V2の他端は、第2V相コイル46-V2に電気的に接続されている。第3V相電源線48-V3の他端は、第3V相コイル46-V3に電気的に接続されている。
【0035】
第1V相電源線48-V1は、さらに、一部が下インシュレータ25の外周壁部41の複数のスリット44を通り、第1V相渡り線部分49-V1を含んでいる。第1V相電源線48-V1の一部である第1V相渡り線部分49-V1は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿って配置されている。第2V相電源線48-V2は、さらに、一部が下インシュレータ25の外周壁部41の複数のスリット44を通り、第2V相渡り線部分49-V2を含んでいる。第2V相電源線48-V2の一部である第2V相渡り線部分49-V2は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿って配置されている。
【0036】
複数のW相電源線48-W1~48-W3は、一端が第3ステータコアティース部32-3のリード側に配置され、かつ、その一端が第3ステータコアティース部32-3の第2方向側に配置されている。第1W相電源線48-W1の他端は、第1W相コイル46-W1に電気的に接続されている。第2W相電源線48-W2の他端は、第2W相コイル46-W2に電気的に接続されている。第3W相電源線48-W3の他端は、第3W相コイル46-W3に電気的に接続されている。
【0037】
第1W相電源線48-W1は、さらに、一部が下インシュレータ25の外周壁部41の複数のスリット44を通り、第1W相渡り線部分49-W1を含んでいる。第1W相電源線48-W1の一部である第1W相渡り線部分49-W1は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿って配置されている。第2W相電源線48-W2は、さらに、一部が下インシュレータ25の外周壁部41の複数のスリット44を通り、第2W相渡り線部分49-W2を含んでいる。第2W相電源線48-W2の一部である第2W相渡り線部分49-W2は、下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿って配置されている。
【0038】
図7は、実施例における複数のコイル46の結線状態を示す結線図である。実施形態における3相モータ6は、コイル46が並列接続されたスター結線を有するモータである。ステータ22は、図7に示すように、複数の中性点51をさらに備えている。複数の中性点51は、複数のステータコアティース部32-1~32-9のリード側に配置されており、第1中性点51-1、第2中性点51-2及び第3中性点51-3を有している。第1中性点51-1と第2中性点51-2と第3中性点51-3とは、互いに電気的に絶縁されている。
【0039】
第1U相コイル46-U1は、一端が第1U相中性線47-U1を介して第1中性点51-1に電気的に接続されており、他端が第1U相電源線48-U1を介してU相電源に電気的に接続されている。第2U相コイル46-U2は、一端が第2U相中性線47-U2を介して第2中性点51-2に電気的に接続されており、他端が第2U相電源線48-U2を介してU相電源に電気的に接続されている。第3U相コイル46-U3は、一端が第3U相中性線47-U3を介して第3中性点51-3に電気的に接続されており、他端が第3U相電源線48-U3を介してU相電源に電気的に接続されている。
【0040】
第1V相コイル46-V1は、一端が第1V相中性線47-V1を介して第3中性点51-3に電気的に接続されており、他端が第1V相電源線48-V1を介してV相電源に電気的に接続されている。第2V相コイル46-V2は、一端が第2V相中性線47-V2を介して第1中性点51-1に電気的に接続されており、他端が第2V相電源線48-V2を介してV相電源に電気的に接続されている。第3V相コイル46-V3は、一端が第3V相中性線47-V3を介して第2中性点51-2に電気的に接続されており、他端が第3V相電源線48-V3を介してV相電源に電気的に接続されている。
【0041】
第1W相コイル46-W1は、一端が第1W相中性線47-W1を介して第2中性点51-2に電気的に接続されており、他端が第1W相電源線48-W1を介してW相電源に電気的に接続されている。第2W相コイル46-W2は、一端が第2W相中性線47-W2を介して第3中性点51-3に電気的に接続されており、他端が第2W相電源線48-W2を介してW相電源に電気的に接続されている。第3W相コイル46-W3は、一端が第3W相中性線47-W3を介して第1中性点51-1に電気的に接続されており、他端が第3W相電源線48-W3を介してW相電源に電気的に接続されている。
【0042】
(ステータの製造方法)
ステータ22は、巻線機を用いて、上インシュレータ24及び下インシュレータ25が適切に取り付けられたステータコア23に、複数の導線(電線)45であるU相電線、V相電線及びW相電線が適切に巻かれることにより、製作される。導線(電線)45は、例えば、エナメル線(銅線がエナメルの被膜で被覆された電線)である。巻線機は、例えば、U相電線用ノズルと、V相電線用ノズルと、W相電線用ノズルと、を備えている。U相電線用ノズル、V相電線用ノズル及びW相電線用ノズルは、互いに固定されている。U相電線用ノズルは、適切に移動することにより、U相電線をステータコア23に対して所定の巻き方で巻くことができる。V相電線用ノズルは、適切に移動することにより、V相電線をステータコア23に対して所定の巻き方で巻くことができる。W相電線用ノズルは、適切に移動することにより、W相電線をステータコア23に対して所定の巻き方で巻くことができる。なお、巻線機は、本実施例の構成に限られず、1本のノズルのみを備えるものが用いられてもよい。
【0043】
巻線機には、まず、上インシュレータ24及び下インシュレータ25と、図示しない絶縁フィルムが適切に取り付けられたステータコア23がセットされる。巻線機は、U相電線用ノズルを適切に移動させることで、U相電線の一端を第1ステータコアティース部32-1のリード側に配置させ、U相電線を第1ステータコアティース部32-1の第2方向側に沿わせ、複数のスリット44の1つに通す。次いで、巻線機は、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を下インシュレータ25の外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相電線から第1U相渡り線部分49-U1を形成する。巻線機は、さらに、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を複数のスリット44の1つから第4ステータコアティース部32-4までの間に配置することにより、U相電線から第1U相電源線48-U1を形成する。このとき、巻線機は、V相電線用ノズルとW相電線用ノズルとをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、V相電線から第1V相電源線48-V1を形成し、W相電線から第1W相電源線48-W1を形成する。
【0044】
次いで、巻線機は、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を第4ステータコアティース部32-4に反時計回りに巻回することにより、U相電線から第1U相コイル46-U1を形成する。このとき、巻線機は、V相電線用ノズルをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、V相電線を第8ステータコアティース部32-8に反時計回りに巻回し、V相電線から第1V相コイル46-V1を形成する。巻線機は、W相電線用ノズルをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、W相電線を第6ステータコアティース部32-6に反時計回りに巻回し、W相電線から第1W相コイル46-W1を形成する。
【0045】
次いで、巻線機は、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を第4ステータコアティース部32-4の第1方向側から第4ステータコアティース部32-4のリード側までの間に配置することにより、U相電線から第1U相中性線47-U1を形成する。このとき、巻線機は、V相電線用ノズルとW相電線用ノズルとをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、V相電線から第1V相中性線47-V1を形成し、W相電線から第1W相中性線47-W1を形成する。
【0046】
次いで、巻線機は、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を第7ステータコアティース部32-7のリード側から第7ステータコアティース部32-7の第1方向側までの間に配置することにより、U相電線から第2U相中性線47-U2を形成する。このとき、巻線機は、V相電線用ノズルとW相電線用ノズルとをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、V相電線から第2V相中性線47-V2を形成し、W相電線から第2W相中性線47-W2を形成する。
【0047】
次いで、巻線機は、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を第7ステータコアティース部32-7に時計回りに巻回することにより、U相電線から第2U相コイル46-U2を形成する。このとき、巻線機は、V相電線用ノズルをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、V相電線を第2ステータコアティース部32-2に時計回りに巻回し、V相電線から第2V相コイル46-V2を形成する。巻線機は、W相電線用ノズルをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、W相電線を第9ステータコアティース部32-9に時計回りに巻回し、W相電線から第2W相コイル46-W2を形成する。
【0048】
次いで、巻線機は、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を複数のスリット44の1つに通して外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相電線から第2U相渡り線部分49-U2を形成する。巻線機は、さらに、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を複数のスリット44の1つを通して第1ステータコアティース部32-1のリード側に配置することにより、U相電線から第2U相電源線48-U2を形成する。このとき、巻線機は、V相電線用ノズルとW相電線用ノズルとをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、V相電線から第2V相電源線48-V2を形成し、W相電線から第2W相電源線48-W2を形成する。
【0049】
次いで、巻線機は、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を第1ステータコアティース部32-1のリード側から第1ステータコアティース部32-1の第2方向側までの間に配置することにより、U相電線から第3U相電源線48-U3を形成する。このとき、巻線機は、V相電線用ノズルとW相電線用ノズルとをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、V相電線から第3V相電源線48-V3を形成し、W相電線から第3W相電源線48-W3を形成する。また、複数のU相電源線48-U1~48-U3が一束にまとめられた一端に第1接続端子50-1が接続され、複数のV相電源線48-V1~48-V3が一束にまとめられた一端に第2接続端子50-2が接続され、複数のW相電源線48-W1~48-W3が一束にまとめられた一端に第3接続端子50-3が接続される(図2参照)。
【0050】
次いで、巻線機は、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を第1ステータコアティース部32-1に反時計回りに巻回することにより、U相電線から第3U相コイル46-U3を形成する。このとき、巻線機は、V相電線用ノズルをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、V相電線を第5ステータコアティース部32-5に反時計回りに巻回し、V相電線から第3V相コイル46-V3を形成する。巻線機は、W相電線用ノズルをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、W相電線を第3ステータコアティース部32-3に反時計回りに巻回し、W相電線から第3W相コイル46-W3を形成する。
【0051】
次いで、巻線機は、U相電線用ノズルを適切に移動させてU相電線を第1ステータコアティース部32-1の第1方向側から第1ステータコアティース部32-1のリード側までの間に配置することにより、U相電線から第3U相中性線47-U3を形成する。このとき、巻線機は、V相電線用ノズルとW相電線用ノズルとをU相電線用ノズルと同期して移動させることにより、V相電線から第3V相中性線47-V3を形成し、W相電線から第3W相中性線47-W3を形成する。
【0052】
上述のように巻回することにより、第3U相コイル46-U3は、図6及び図7に示すように、巻き始め部分と巻き終わり部分が共にリード側に配置される。一方、第1U相コイル46-U1と第2U相コイル46-U2は、反リード側から巻き始められてリード側で巻き終わるようになる。したがって、第3U相コイル46-U3が巻回される巻き数は、第1U相コイル46-U1が巻回される巻き数と異なり、第2U相コイル46-U2が巻回される巻き数と異なっている。また、第1U相コイル46-U1と第2U相コイル46-U2は、U相電源と接続されるU相電源線が引き回される長さが異なる。言い換えれば、第1U相コイル46-U1~第3U相コイル46-U3は、コイル46の巻き数や電源線の長さを含めた巻き方が異なる。このため、中性点51-1からU相電源線までの電線の長さは、第1U相コイル46-U1、第2U相コイル46-U2、第3U相コイル46-U3のそれぞれにおいて異なり、インピーダンスも異なっている。
【0053】
第1U相中性線47-U1と第2U相中性線47-U2とが切り離され、第1V相中性線47-V1と第2V相中性線47-V2とが切り離され、第1W相中性線47-W1と第2W相中性線47-W2とが切り離される。第1U相中性線47-U1の端と第2V相中性線47-V2の端と第3W相中性線47-W3の端とが、中性線47である電線の被膜を剥離せずに複数の導線45を電気的に接続できる接続具によって電気的に接続される。接続具としては、スプライス端子52が用いられている。
【0054】
本実施例では、第1U相中性線47-U1の端と第2V相中性線47-V2の端と第3W相中性線47-W3の端とが第1スプライス端子52-1を介して互いに圧着により接合されて互いに電気的に接続されることで、第1中性点51-1が形成される。3つの中性線47は互いに接する状態で安定して束ねられる。第1スプライス端子52-1は、束ねられた中性線47を包むようにして3つの中性線47を互いに圧着により接合して互いに電気的に接続することができる。第1スプライス端子52-1によって中性線47群が圧着されることで、第1スプライス端子52-1の凹凸部によって各中性線47である電線の被覆膜が剥離されて、3つの中性線47が接合されている。
【0055】
同様に、第2U相中性線47-U2の端と第3V相中性線47-V3の端と第1W相中性線47-W1の端とが第2スプライス端子52-2を介して互いに圧着により接合されて互いに電気的に接続されることで、第2中性点51-2が形成される。第3U相中性線47-U3の端と第1V相中性線47-V1の端と第2W相中性線47-W2の端とが第3スプライス端子52-3により互いに圧着により接合されて互いに電気的に接続されることで、第3中性点51-3が形成される。これにより、第1中性点51-1、第2中性点51-2及び第3中性点51-3を容易に形成することができる。
【0056】
また、中性点51を形成する第1スプライス端子52-1は、絶縁チューブ58で覆われた後、図2に示すように、絶縁チューブ58が、隣り合う巻回部46同士の間隙G内に差し込まれて保持されている。同様に、中性点51を形成する各第2スプライス端子52-2及び第3スプライス端子52-3も、絶縁チューブ58でそれぞれ覆われた後、各絶縁チューブ58が、隣り合う巻回部46同士の間隙G内にそれぞれ差し込まれて保持されている。
【0057】
(圧縮機の動作)
圧縮機1は、図示しない冷凍サイクル装置の構成要素として設けられており、冷媒を圧縮して、冷凍サイクル装置の冷媒回路に冷媒を循環させるために使用される。3相モータ6は、複数のU相電源線48-U1~48-U3、複数のV相電源線48-V1~48-V3及び複数のW相電源線48-W1~48-W3に三相電圧がそれぞれ印加されることにより、回転磁界を発生させる。ロータ21は、ステータ22により生成された回転磁界によって回転する。3相モータ6は、ロータ21が回転することにより、シャフト3を回転させる。
【0058】
圧縮部5は、シャフト3が回転することで、吸入管11を介して低圧冷媒ガスを吸入し、その吸入された低圧冷媒ガスを圧縮することにより高圧冷媒ガスを生成し、高圧冷媒ガスを上マフラー室16と下マフラー室17とに供給する。下マフラーカバー15は、下マフラー室17に供給された高圧冷媒ガスの圧力の脈動を低減し、圧力脈動が低減された高圧冷媒ガスを上マフラー室16に供給する。上マフラーカバー14は、上マフラー室16に供給された高圧冷媒ガスの圧力の脈動を低減し、圧力脈動が低減された高圧冷媒ガスを内部空間7のうちの圧縮部5と3相モータ6との間の空間に圧縮冷媒吐出孔18を介して供給する。
【0059】
内部空間7のうちの圧縮部5と3相モータ6との間の空間に供給された高圧冷媒ガスは、3相モータ6に形成されている隙間を通過することにより、内部空間7のうちの3相モータ6より上の空間に供給される。内部空間7のうちの3相モータ6よりも上の空間に供給された冷媒は、吐出管12を介して、冷凍サイクル装置のうちの圧縮機1の下流側に配置された装置に吐出される。
【0060】
(実施例の特徴的な構成)
次に、実施例における3相モータ6の特徴的な構成について説明する。実施例における3相モータ6の特徴には、図2に示すように、ステータ22の巻回部(コイル)46同士の間に設けられた後述するコイル間絶縁体27が含まれる。巻回部46から引き出された中性線47がコイル間絶縁体27の内側に通されることで、コイル間絶縁体27は、ステータ22の径方向及びステータ22の周方向に対する移動が中性線47によって規制される。
【0061】
(中性線の引き出し状態)
まず、ステータ22の巻回部46から引き出される各中性線47について、図5図6及び図8を参照して説明する。図8は、実施例において、ステータ22から各中性線47が引き出された状態を示す平面図である。図6に示す1番~9番の各巻回部46は、図5において時計回りに並ぶ1番~9番の各巻回部46に対応している。また、図6において、巻回部(コイル)46へ延ばされる導線45の巻き始めの端部(〇印)、巻回部46に巻き付けられる導線45の中途部(〇印)は、上述した電源線48と接続される。
【0062】
図6に示すように、1、3、4、5、6、8番の各巻回部46を形成する導線45は、図6中の矢印方向に沿ってステータコアティース部32に巻回されて、巻き終わりの端部(△印)がリード側(上インシュレータ24側)に延ばされることにより、図8に示すように、各巻回部46の外周側から上インシュレータ24の外側へ引き出されている。言い換えると、1番の巻回部46から引き出される第3U相中性線47-U3は、隣り合う巻回部46同士の間隙Gの近傍において、ステータ22の径方向における間隙G内の外側から引き出されて、上インシュレータ24の外周側まで延ばされる。
【0063】
この第3U相中性線47-U3と同様に、図6及び図8に示すように、3番の巻回部46から引き出される第3W相中性線47-W3、4番の巻回部46から引き出される第1U相中性線47-U1、5番の巻回部46から引き出される第3V相中性線47-V3、6番の巻回部46から引き出される第1W相中性線47-W1、及び8番の巻回部46から引き出される第1V相中性線47-V1は共に、隣り合う巻回部46同士の間隙Gの近傍において、ステータ22の径方向における間隙G内の外側から引き出されて、上インシュレータ24の外周側まで延ばされる。
【0064】
一方で、図6に示すように、2、7、9番の各巻回部46を形成する導線45は、リード側に延ばされた巻き始めの端部(△印)から、図6中の矢印方向に沿ってステータコアティース部32に巻回されているので、図8に示すように、各巻回部46の中心側から上インシュレータ24の外側へ引き出されている。言い換えると、2番の巻回部46から引き出される第2V相中性線47-V2は、隣り合う巻回部46同士の間隙Gから離れた位置から、上インシュレータ24の外周側まで延ばされる。
【0065】
この第2V相中性線47-V2と同様に、図6及び図8に示すように、7番の巻回部46から引き出される第2U相中性線47-U2及び9番の巻回部46から引き出される第2W相中性線47-W2は、隣り合う巻回部46同士の間隙Gから離れた位置から、上インシュレータ24の外周側まで延ばされる。
【0066】
上述のように、9つの各巻回部46から上インシュレータ24側にそれぞれ引き出される9つの中性線47のうち、1、3、4、5、6、8番の各巻回部46から、巻回部46の巻き終わり側の端部が引き出される6つの中性線47は、隣り合う巻回部46同士の間隙G内を通される。このため、本実施例では、この6つの中性線47を利用することで、コイル間絶縁体27の移動が規制される。
【0067】
言い換えると、2、7、9番の各巻回部46から上インシュレータ24側に引き出される中性線47は、巻回部46の中心側の、間隙Gから離れた位置から引き出されるので、間隙Gに配置されるコイル間絶縁体27を通るように引き回すことが難しく、コイル間絶縁体27の規制の用途に適さない。したがって、隣り合う巻回部46同士における9カ所の間隙Gのうち、6カ所の間隙Gにコイル間絶縁体27が配置されており、残りの3箇所の間隙Gに、各中性点51を覆う絶縁チューブ58がそれぞれ差し込まれて保持されている。
【0068】
(スロット絶縁体の取り付け状態)
ここで、ステータ22の周方向に隣り合う巻回部46同士の間に配置されたスロット絶縁体26について説明する。図9は、実施例においてステータ22に設けられたスロット絶縁体26を拡大して示す平面図である。
【0069】
図9に示すように、スロット絶縁体26は、ステータ22の周方向に隣り合うステータコアティース部32同士にわたって配置されている。ステータ22に設けられたスロット絶縁体26は、ステータ22の径方向の内側に位置する各端部26aが、ステータ22の径方向の外側に向かって折り曲げられており、隣り合う巻回部46同士の間隙G内におけるステータ22の周方向に突出しないように、ステータ22の径方向に沿って延ばされている。したがって、ステータ22の周方向において、スロット絶縁体26の各端部26aの間隔は、ほぼ一定に保たれており、各端部26a同士の間隔が狭まるように折り曲げられていない。
【0070】
また、スロット絶縁体26の各端部26aは、インシュレータティース部42の内周側に形成されたガイド溝(図示せず)に係合されており、各端部26aの移動が規制されている。なお、スロット絶縁体26の各端部26aは、ステータ22の径方向に沿って延びる構造に限定されず、ステータ22の周方向における間隙Gの内側に突出しない構造であればよく、ステータ22の周方向において巻回部46の中央側に向かって鋭角をなすように折り曲げられてもよい。
【0071】
上述のようにスロット絶縁体26の各端部26aは、ステータ22の周方向において間隙Gの内側に突出しないので、巻線機を用いて導線45を巻回する巻回工程にて、導線45を供給するノズルと各端部26aが接触することが避けられる。このため、ノズルの接触によるスロット絶縁体26の破損を防ぐことができる。また、スロット絶縁体26の各端部26aがノズルの巻回動作を妨げることなく、巻回部46をスムーズに形成できる。
【0072】
また、スロット絶縁体26は、ステータコアティース部32に導線45が巻回されて巻回部46が形成されたときに、ステータ22の周方向に隣り合うステータコアティース部32の各々に導線45によって押し付けられることで、ステータ22の周方向に対してスロット絶縁体26に張力が生じる。この張力によって、スロット絶縁体26における、隣り合う巻回部46同士の間隙Gに対向する中央部分26bは、ステータ22の周方向に対して緩みなく突っ張った状態になる。
【0073】
このようにスロット絶縁体26の中央部分26bが突っ張った状態になることで、隣り合う巻回部46同士の間隙Gにコイル間絶縁体27が挿入されたときに、コイル間絶縁体27の後述する引っ掛け部29(図14参照)が中央部分26bにスムーズに引っ掛かる。これにより、間隙Gに挿入されたコイル間絶縁体27の移動が規制されて、スロット絶縁体26によってステータ22の軸方向(ロータ21の軸方向)に対してコイル間絶縁体27が位置決めされる。
【0074】
(コイル間絶縁体の構造)
図10は、実施例においてステータ22に設けられたコイル間絶縁体27を示す平面図である。図11は、実施例におけるコイル間絶縁体27を拡大して示す平面図である。
【0075】
図10及び図11に示すように、ステータ22は、ステータ22の周方向に隣り合う異相の巻回部(コイル)46同士を電気的に絶縁するコイル間絶縁体27を有する。コイル間絶縁体27は、ステータ22の周方向に隣り合う巻回部46同士の間、つまり巻回部46同士が対向する間隙Gに配置されている。
【0076】
コイル間絶縁体27は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に例示される樹脂等の絶縁材料を薄板(フィルム)状に成型することで形成されている。コイル間絶縁体27は、ステータ22の周方向に隣り合う巻回部(コイル)46同士の間に保持された状態では、ステータ22の軸方向に沿って薄板が折り曲げられており、三つ折りによってZ字状に折り畳まれている。コイル間絶縁体27は、ステータ22の径方向の外側へ延びてこの外側で折り返してステータ22の径方向の内側へ延びる折曲部27aと、この折曲部27aからステータ22の径方向の内側へ延びてこの内側で折り返してステータ22の径方向の外側へ延びる折曲部27bと、を有する。図11に示すように、各折曲部27a、27bは、例えば、断面U字状に形成されているが、断面V字状に形成されてもよい。コイル間絶縁体27は、詳しくは後述するが、少なくとも2つの折曲部27a、27bを有する構造が好ましい。
【0077】
図11に示すように、コイル間絶縁体27は、ステータ22の径方向の外側へ延びてこの外側で折り返してステータ22の径方向の内側へ延びる折曲部27aを有し、折曲部27aの内側に中性線47が通されている。コイル間絶縁体27の折曲部27aの内側に通された中性線47が、折曲部27aの内面に接してコイル間絶縁体27の移動を制限することで、ステータ22の径方向及び軸方向に対するコイル間絶縁体27の移動が規制される。特に、コイル間絶縁体27の内側に通された中性線47は、上インシュレータ24の外周側に引き出されて、上インシュレータ24の外周面に沿って掛け渡されて、上インシュレータ24の外周壁部41の外周面に巻き付けられて固定されている。このため、ステータ22の径方向の外側に引っ張られる中性線47によって、コイル間絶縁体27は、ステータ22の径方向の外側に向かってヨーク部31の内側に押し付けられることで、間隙G内でのコイル間絶縁体27の移動が更に規制される。
【0078】
加えて、Z字状に折り畳まれたコイル間絶縁体27には、ステータ22の周方向に広がろうとする弾性力が生じるので、この弾性力によって間隙G内でコイル間絶縁体27が各巻回部46の外周面に押し当てられて、コイル間絶縁体27が各巻回部46の間に挟み込まれて保持される。このような弾性力によっても、間隙G内でのコイル間絶縁体27の移動が規制される。
【0079】
また、コイル間絶縁体27は、例えば、厚みが0.25[mm]程度の薄板が折り曲げられることで断面U字状の折曲部27aの内側の間隔が1[mm]程度に形成されており、線径が0.55[mm]~0.85[mm]程度の中性線47が折曲部27aの内側に通されている。
【0080】
なお、本実施例におけるコイル間絶縁体27では、中性線47が一方の折曲部27aの内側に通されたが、この構造に限定されない。折曲部27bがステータ22の径方向の外側に位置(ヨーク部31の内周面に近接)するようにコイル間絶縁体27が配置される場合には、中性線47が他方の折曲部27bの内側に通されてもよく、隣り合う巻回部46同士の間隙G内に配置されるコイル間絶縁体27の向きを変えることで、上述と同様の作用が得られる。
【0081】
図12は、実施例におけるコイル間絶縁体27が折り畳まれる状態を説明するための斜視図である。図13は、実施例におけるコイル間絶縁体27の折り畳み状態を示す平面図である。図14は、実施例におけるコイル間絶縁体27を示す側面図である。図15は、実施例におけるコイル間絶縁体27の溝を拡大して示す斜視図である。
【0082】
図12に示すように、コイル間絶縁体27の折曲部27aには、ステータ22の軸方向における両端に、コイル間絶縁体27の内側に通された中性線47が進入する溝28がそれぞれ形成されている。コイル間絶縁体27の溝28に中性線47を通すことで、コイル間絶縁体27の折曲部27aの内側に通される中性線47を、折曲部27aに対して容易に位置決めすることが可能になる。このため、折曲部27aの内側に通された中性線47を上インシュレータ24の外周壁部41の外周面に沿って引き回す際の作業性が高められる。
【0083】
また、コイル間絶縁体27の内側に通された中性線47は、ステータ22の軸方向における中性線47の両側が各溝28内に入り込むことで、中性線47によってコイル間絶縁体27が巻回部46の外周面に引き寄せられて、中性線47と巻回部46の外周面との密着性が高められる。これにより、例えば、コイル間絶縁体27が間隙G内から上インシュレータ24側に浮き上がることが抑えられるので、中性線47によるコイル間絶縁体27の規制状態の安定性が高められる。
【0084】
さらに、溝28は、折曲部27aに形成されることで、溝28内に入り込む中性線47が、ステータ22の径方向において外側に位置(ヨーク部31の内周面に近接)する折曲部27aに配置されるので、中性線47によって折曲部27aが、ステータ22の軸方向にわたってヨーク部31の内側に向かって押し付けられる。これにより、中性線47によるコイル間絶縁体27の規制状態の安定性が更に高められる。
【0085】
また、コイル間絶縁体27には、図12図14及び図15に示すように、ステータ22の軸方向における上インシュレータ24側に、スロット絶縁体26の中央部分26bに係合する係合部としてのフック状の引っ掛け部29が形成されている。引っ掛け部29は、ステータ22の周方向に対して三つ折りされる薄板の端部27cに形成されている。すなわち、コイル間絶縁体27は、ステータ22の径方向で外側に向かって凸となるよう折り曲げられることで内側に中性線47が通される折曲部27aと、ステータ22の径方向で内側に向かって凸となるよう折り曲げられることで引っ掛け部29が形成された端部27cを外径側に向かせる折曲部27bと、を備えている。
【0086】
コイル間絶縁体27は、引っ掛け部29がスロット絶縁体26に引っ掛かることで、ステータ22の軸方向に対して容易に位置決めされる。このようにコイル間絶縁体27は、スロット絶縁体26を用いて位置決めされることで、例えば、コイル間絶縁体27を引っ掛けるための凹部等が上インシュレータ24に形成される場合と比較して、上インシュレータ24を成形するための成形金型の構造が複雑化するのを抑制でき、製造コストの増加を抑えられる。
【0087】
なお、コイル間絶縁体27の引っ掛け部29は、スロット絶縁体26に引っ掛けられる場合に限定されるものではなく、インシュレータ(上インシュレータ24)に引っ掛けられるようになっていてもよい。この場合、例えば、コイル間絶縁体27の引っ掛け部29をインシュレータの凹部(スリット44)に引っ掛けることで、コイル間絶縁体27をステータ22の軸方向に対して容易に位置決めできる。
【0088】
また、引っ掛け部29は、端部27cよりも折曲部27b側に向かって窪んだ凹部を含む形状に形成されることにより、プレス加工時に引っ掛け部29の外形形状が変形することを抑えて、引っ掛け部29を安定して形成できる。
【0089】
また、コイル間絶縁体27は、ステータ22の径方向の端部に配置される外周部の角部が面取りされた面取り部30を有する。面取り部30は、ステータ22の周方向に対して三つ折りされる薄板の各端部27c、27dにおける下インシュレータ25側の角部にそれぞれ形成されている。これにより、コイル間絶縁体27が隣り合う巻回部46同士の間隙Gに挿入されるときに、コイル間絶縁体27が巻回部46に引っ掛かることが抑えられるので、コイル間絶縁体27を間隙Gにスムーズに挿入して取り付けることができる。なお、本実施例では、面取り部30として角部が直線的に面取りされた場合を例示したが、角部はR面取りによって丸められていてもよい。
【0090】
(コイル間絶縁体の取り付け状態)
図16は、実施例におけるコイル間絶縁体27がステータ22に取り付けられた状態を示す側面図である。コイル間絶縁体27をステータ22に取り付ける際には、図11に示すように、コイル間絶縁体27の内側に中性線47が通されて、中性線47が通された状態でコイル間絶縁体27がステータ22に取り付けられる。図11および16に示すように、コイル間絶縁体27は、隣り合う巻回部46同士の間隙Gに、上インシュレータ24側からステータ22に向かって挿入される。コイル間絶縁体27が間隙Gに挿入されたときに、コイル間絶縁体27の引っ掛け部29が、間隙G内に位置するスロット絶縁体26の中央部分26bに引っ掛かることで、ステータ22の軸方向に対して容易に位置決めされる。このように隣り合う巻回部46同士の間隙Gに挿入されたコイル間絶縁体27が、ステータ22の軸方向に対して位置決めされることで、ステータ22の軸方向に対するコイル間絶縁体27の取り付け位置にばらつきが生じることが抑えられる。
【0091】
コイル間絶縁体27では、端部27d側の開口から折曲部27aまで真っすぐに延びているので、中性線47を折曲部27aの内側まで通すときに、端部27d側の開口から中性線47を進入させて折曲部27aの内側まで容易に挿入することができる。
【0092】
なお、上述の説明では、コイル間絶縁体27において、中性線47が折曲部27aの内側に通されるように配置されたが、このような取り扱いに限定されない。中性線47が折曲部27bの内側を通るように配置されると共に、この折曲部27bを、ステータ22の径方向の外側に位置(ヨーク部31の内周面に近接)させるように、図11に示す向きとは逆向き(断面S字状)に間隙G内に配置することで、上述の場合と同様に使用することができる。この場合、コイル間絶縁体27は、ステータ22の径方向の外側へ延びてこの外側で折り返してステータ22の径方向の内側へ延びる折曲部27bを有し、折曲部27bの内側に通された中性線47によってコイル間絶縁体27の位置が規制される。したがって、コイル間絶縁体27は、コイル間絶縁体27の内側に中性線47を通す作業時の取り扱いの自由度が高い。
【0093】
なお、コイル間絶縁体27の形状や折り畳まれる状態は、上述した断面Z字状(断面S字状)のコイル間絶縁体27に限定されず、内側に中性線47を通せる形状であれば他の形状でもよい。コイル間絶縁体27の変形例について説明する。変形例のコイル間絶縁体において、上述したコイル間絶縁体27と同一部分についてはコイル間絶縁体27と同一符号を付けて説明を省略する。
【0094】
(コイル間絶縁体の変形例1)
図17は、変形例1のコイル間絶縁体を示す平面図である。図18は、変形例1のコイル間絶縁体が折り畳まれる状態を説明するための斜視図である。図19は、変形例1のコイル間絶縁体の折り畳み状態を示す平面図である。
【0095】
図17図18及び図19に示すように、変形例1のコイル間絶縁体27-1は、ステータ22の周方向において薄板が折り曲げられて形成されており、いわゆる巻き三つ折りによって折り畳まれている点で、断面Z字状に折り畳まれたコイル間絶縁体27と異なる。図19に示すように、変形例1のコイル間絶縁体27-1は、折曲部27bの内側に端部27dが位置するように断面e字状に折り畳まれている。
【0096】
変形例1のコイル間絶縁体27-1においても、図17に示すように、折曲部27aがステータ22の径方向の外側に配置されるように、コイル間絶縁体27-1が間隙Gに差し込まれることで、上述したコイル間絶縁体27と同様に、中性線47によってコイル間絶縁体27-1の移動をステータ22の径方向及び軸方向に対して規制することができる。すなわち、コイル間絶縁体27-1は、ステータ22の径方向の外側へ延びてこの外側で折り返してステータ22の径方向の内側へ延びる折曲部27aを有し、折曲部27aの内側に通された中性線47によって、コイル間絶縁体27-1の位置をステータ22の径方向に対して規制することができる。また、コイル間絶縁体27-1は、引っ掛け部29が形成された端部27cを外径側に向かせる折曲部27bを備えることで、引っ掛け部29を容易にスロット絶縁体26または上インシュレータ24に引っ掛けて、コイル間絶縁体27-1の位置をステータ22の軸方向に対して規制することができる。その上、中性線47が上インシュレータ24の外周面に巻き付けられて固定されていることにより、コイル間絶縁体27-1が中性線47によってステータ22の径方向の外側に向かってステータ22に押し付けられるので、間隙G内でのコイル間絶縁体27-1の移動を更に規制できる。
【0097】
(コイル間絶縁体の変形例2、3)
図20は、変形例2のコイル間絶縁体を示す側面図である。図21は、変形例3のコイル間絶縁体を示す側面図である。変形例2、3のコイル間絶縁体は、スロット絶縁体26に引っ掛けられる引っ掛け部の形状が、上述のコイル間絶縁体27と異なる。図20に示すように、変形例2のコイル間絶縁体27-2の引っ掛け部29-1は、端部27cからステータ22の軸方向に対して傾斜した方向に切り込まれて折曲部27b側に窪んだフック状に形成されている。同様に、変形例3のコイル間絶縁体27-3の引っ掛け部29-2は、図21に示すように、端部27cよりも折曲部27b側に窪んだ凹部を含まないフック状に形成されている。このような引っ掛け部29-1、29-2であっても、スロット絶縁体26に引っ掛けることが可能であり、図14に示す引っ掛け部29の形状に限定されない。
【0098】
(実施例の効果)
上述したように実施例の3相モータ6は、ステータ22の周方向に隣り合う巻回部46同士の間隙Gに配置されて巻回部46同士を絶縁するコイル間絶縁体27を有する。コイル間絶縁体27は、ステータ22の径方向の外側へ延びてこの外側で折り返してステータ22の径方向の内側へ延びる折曲部27aを有し、折曲部27aの内側に通された中性線47によってコイル間絶縁体27の移動が規制されている。このように、上インシュレータ24側に引き出される中性線47が、コイル間絶縁体27の移動を規制する移動規制手段として利用されている。したがって、ステータ22の径方向及び軸方向に対するコイル間絶縁体27の移動を中性線47によって規制することができる。このため、隣り合う巻回部46同士の間隙G内に配置されたコイル間絶縁体27が間隙Gから抜け出ることや、コイル間絶縁体27の位置がずれることが抑えられるので、隣り合う巻回部46同士の絶縁状態の安定性、ロータ21の回転動作の安定性を高められる。一方、巻回工程後に形成された中性線47をコイル間絶縁体27の移動規制手段として利用しているので、各巻回部46を形成する巻回工程でのノズルの巻回動作が移動規制手段によって妨げられることがない。
【0099】
また、実施例の3相モータ6における中性線47は、ステータ22の軸方向に沿って折曲部27aの内側に通されて、上インシュレータ24の外周面に巻き付けられて固定されている。これにより、ステータ22の径方向の外側に引っ張られる中性線47によって、コイル間絶縁体27は、ステータ22の径方向の外側に向かってステータ22に押し付けられるので、間隙G内でのコイル間絶縁体27の移動を規制できる。
【0100】
また、実施例の3相モータ6のステータ22は、ステータ22の周方向に隣り合うステータコアティース部32同士の間にわたって配置されたスロット絶縁体26を有しており、コイル間絶縁体27が、スロット絶縁体26の中央部分26bまたはインシュレータ(上インシュレータ24)のスリット44に引っ掛けられる引っ掛け部29を有する。これにより、隣り合う巻回部46同士の間隙Gにコイル間絶縁体27が挿入されたときに、引っ掛け部29がスロット絶縁体26の中央部分26bまたはインシュレータのスリット44に引っ掛かることで、ステータ22の軸方向に対して位置決めできる。このように間隙Gに挿入されたコイル間絶縁体27が、ステータ22の軸方向に対して位置決めされることで、ステータ22の軸方向に対するコイル間絶縁体27の取り付け位置にばらつきが生じることを抑えられる。特に、コイル間絶縁体27の引っ掛け部29がスロット絶縁体26に引っ掛けられる場合は、コイル間絶縁体27がスロット絶縁体26によって位置決めされるので、例えば、コイル間絶縁体27を位置決めするための凹部(スリット44)等を上インシュレータ24に形成する場合と比べて、製造コストの増加を抑えられる。
【0101】
また、実施例の3相モータ6が有するコイル間絶縁体27には、ステータ22の軸方向の両端に、折曲部27aの内側に通された中性線47が引っ掛けられる溝28が形成されている。これにより、コイル間絶縁体27の溝28に中性線47を通すことで、コイル間絶縁体27の折曲部27aの内側に通される中性線47を、折曲部27aに対して容易に位置決めすることが可能になり、中性線47を上インシュレータ24の外周面に沿って引き回す際の作業性が高められる。また、コイル間絶縁体27の内側に通された中性線47は、ステータ22の軸方向における中性線47の両側が各溝28内に入り込むことで、中性線47によってコイル間絶縁体27が巻回部46の外周面に引き寄せられて、中性線47と巻回部46の外周面との密着性を高められる。このため、例えば、コイル間絶縁体27が上インシュレータ24側に浮き上がることが抑えられ、中性線47がコイル間絶縁体27を規制する状態の安定性を高められる。
【0102】
また、実施例の3相モータ6において、コイル間絶縁体27の溝28は、折曲部47aに形成されている。これにより、溝28内に入り込む中性線47が、ステータ22の径方向において外側に位置(ヨーク部31の内周面に近接)する折曲部27aの内側に配置されるので、中性線47によって折曲部27aが、ステータ22の軸方向にわたってヨーク部31の内側に向かって押し付けられる。このため、中性線47によるコイル間絶縁体27の規制状態の安定性を更に高められる。
【0103】
また、実施例の3相モータ6が有するスロット絶縁体26は、ステータ22の径方向の内側に位置する端部26aが、ステータ22の径方向の外側に向かって折り曲げられてステータ22の径方向に沿って延ばされている。これにより、導線45の巻回工程でノズルがスロット絶縁体26の端部26aに接触することが避けられるので、ノズルの移動時にスロット絶縁体26の端部26aが摩耗したり、破損したりすることを防げる。
【0104】
また、実施例の3相モータ6が有するコイル間絶縁体27は、ステータ22の径方向の端部に配置される外周部の角部が切り欠かれた面取り部30を有する。これにより、コイル間絶縁体27が隣り合う巻回部46同士の間隙Gに挿入されるときに、コイル間絶縁体27が巻回部46に引っ掛かることが抑えられるので、コイル間絶縁体27を間隙Gにスムーズに挿入して取り付けることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 圧縮機
5 圧縮部
6 3相モータ(電動機)
21 ロータ
22 ステータ
24 上インシュレータ(インシュレータ)
25 下インシュレータ(インシュレータ)
26 スロット絶縁体
26a 端部
27 コイル間絶縁体
27a 折曲部
28 溝
29 引っ掛け部(係合部)
30 面取り部
32(32-1~32-9) ステータコアティース部(ティース)
45 導線(電線)
46 巻回部(コイル)
46-U1~46-U3 U相コイル
46-V1~46-V3 V相コイル
46-W1~46-W3 W相コイル
47 中性線(移動規制手段)
47-U1~47-U3 U相中性線
47-V1~47-V3 V相中性線
47-W1~47-W3 W相中性線
G 間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21