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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115450
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】シール剤組成物、及び液晶素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20220802BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20220802BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20220802BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20220802BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20220802BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C09K3/10 B
C08L101/02
C08K9/06
C08K7/18
C08K5/54
C09K3/10 L
G02F1/1339 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012051
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 一郎
【テーマコード(参考)】
2H189
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
2H189EA03Y
2H189EA04Y
2H189FA22
2H189FA53
2H189GA50
2H189HA11
4H017AA04
4H017AA39
4H017AB08
4H017AD06
4H017AE05
4J002CD201
4J002DJ016
4J002EJ029
4J002EN047
4J002EN128
4J002EV308
4J002EX069
4J002FA086
4J002FB096
4J002FD016
4J002FD147
4J002FD148
4J002FD209
4J002GJ02
4J002HA02
(57)【要約】
【課題】貼り合わせ後のシール剤界面の外観が良好なシール剤組成物、及び外観が良好な液晶素子を提供すること。
【解決手段】硬化性樹脂(A)と、フィラー(B)と、熱硬化剤(C1)及び/又は開始剤(C2)と、を含有し、前記フィラー(B)が平均粒径300nm以下の球状フィラーであるシール剤組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂(A)と、フィラー(B)と、熱硬化剤(C1)及び/又は開始剤(C2)と、を含有し、
前記フィラー(B)が、平均粒径300nm以下の球状フィラーである、シール剤組成物。
【請求項2】
前記フィラー(B)の含有量が、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し1~80質量部である、請求項1に記載のシール剤組成物。
【請求項3】
前記フィラー(B)が、シランカップリング剤により表面処理されている、請求項1又は2に記載のシール剤組成物。
【請求項4】
前記硬化性樹脂(A)が、熱硬化性化合物(A1)及び光硬化性化合物(A2)より選択される1種以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシール剤組成物。
【請求項5】
前記硬化性樹脂(A)が、1分子中に熱硬化性基と光硬化性基とを有する化合物(A3)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシール剤組成物。
【請求項6】
前記熱硬化剤(C1)を含有し、前記熱硬化剤(C1)はメジアン径が0.1~6μmの粒子状の硬化剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシール剤組成物。
【請求項7】
更に重合禁止剤(D)を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のシール剤組成物。
【請求項8】
更にシランカップリング剤(E)を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のシール剤組成物。
【請求項9】
前記フィラー(B)の表面処理に用いられるシランカップリング剤が、下記一般式(1)で表される、請求項3~8のいずれか一項に記載のシール剤組成物。
【化1】
一般式(1)中、
は水素原子又はアルキル基であり、Rが複数ある場合、当該複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、
は、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、-O-、-NH-、炭素-炭素二重結合を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、-NH-Si(Rであり、Rが複数ある場合、当該複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、
は置換基を有していてもよいアルキル基であり、複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、
nは1~3の整数である。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のシール剤組成物の硬化物を備える、液晶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール剤組成物、及び液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶の封止に用いられるシール剤は、求められる種々の特性の観点から、粉体であるフィラー等を配合する必要があった(例えば特許文献1~3)。
【0003】
近年、TV、PC、スマートフォン等のディスプレイにおいては、視覚的な没入感や、筐体の意匠性の観点などから、ディスプレイの枠(ベゼル)面を狭くすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-5251号公報
【特許文献2】特開2017-27043号公報
【特許文献3】特開2006-350249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シール剤を用いて対向する一組の基材を貼り合わせる際に、圧を受けたシール剤は基材面方向に広がる。粉体を含むシール剤を用いた場合には均一に広がらない場合があり、シール剤の界面に凹凸が形成される場合がった。ベゼル面を狭くすると当該凹凸が視認され得るため、貼り合わせ後のシール剤界面の凹凸を抑制し外観を改善することが求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、貼り合わせ後のシール剤界面の外観が良好なシール剤組成物、及び外観が良好な液晶素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシール剤組成物は、硬化性樹脂(A)と、フィラー(B)と、熱硬化剤(C1)及び/又は開始剤(C2)と、を含有し、
前記フィラー(B)が、平均粒径300nm以下の球状フィラーである。
【0008】
上記シール剤組成物の一実施形態は、前記フィラー(B)の含有量が、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し1~80質量部である。
【0009】
上記シール剤組成物の一実施形態は、前記フィラー(B)が、シランカップリング剤により表面処理されている。
【0010】
上記シール剤組成物の一実施形態は、熱硬化性化合物(A1)及び光硬化性化合物(A2)より選択される1種以上を含む。
【0011】
上記シール剤組成物の一実施形態は、前記硬化性樹脂(A)が、1分子中に熱硬化性基と光硬化性基とを有する化合物(A3)を含む。
【0012】
上記シール剤組成物の一実施形態は、前記熱硬化剤(C1)を含有し、前記熱硬化剤(C1)はメジアン径が0.1~6μmの粒子状の硬化剤を含む。
【0013】
上記シール剤組成物の一実施形態は、更に重合禁止剤(D)を含有する。
【0014】
上記シール剤組成物の一実施形態は、更にシランカップリング剤(E)を含有する。
【0015】
上記シール剤組成物の一実施形態は、前記フィラー(B1)の表面処理に用いられるシランカップリング剤が、下記一般式(1)で表される。
【0016】
【化1】
一般式(1)中、
は水素原子又はアルキル基であり、Rが複数ある場合、当該複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、
は、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、-O-、-NH-、炭素-炭素二重結合を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、-NH-Si(Rであり、Rが複数ある場合、当該複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、
は置換基を有していてもよいアルキル基であり、複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、
nは1~3の整数である。
【0017】
本発明に係る液晶素子は、シール剤組成物の硬化物を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貼り合わせ後のシール剤界面の外観が良好なシール剤組成物、及び外観が良好な液晶素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】液晶素子の一例を示す平面図である。
図2】液晶素子の製造方法の一例を示す模式的な工程図である。
図3】実施例における外観評価試験方法を説明するための模式図である。
図4】実施例における接着評価試験方法を説明するための模式図である。
図5】実施例1~8の外観評価試験結果を示す光学顕微鏡像である。
図6】比較例1~6の外観評価試験結果を示す光学顕微鏡像である。
図7】比較例7~10の外観評価試験結果を示す光学顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るシール剤組成物及びについて順に詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタアクリロイルの各々を表す。
また、数値範囲を示す「~」は特に断りがない限り、その下限値及び上限値を含むものとする。
【0021】
[シール剤組成物]
本発明に係るシール剤組成物は、硬化性樹脂(A)と、フィラー(B)と、熱硬化剤(C1)及び/又は開始剤(C2)と、を含有し、前記フィラー(B)が、平均粒径300nm以下の球状フィラー(B1)を含むものであり、本発明の効果を奏する範囲で更に他の成分を含有してもよいものである。
上記本シール剤組成物は、平均粒径300nm以下の球状フィラーを含むことで、流動性が向上して、貼り合わせ時にシール剤界面の凹凸が抑制される。
【0022】
<硬化性樹脂(A)>
本実施形態において硬化性樹脂(A)は、熱硬化性及び光硬化性のうち少なくともいずれかの硬化性を有する化合物をいい、熱硬化性を備える化合物(熱硬化性化合物(A1)ともいう)であってもよく、光硬化性を備える化合物(光硬化性化合物(A2)ともいう)であってもよく、1分子中に熱硬化性基と光硬化性基とを有する化合物(A3)であってもよい。硬化性樹脂(A)は1成分を単独で、又は2成分以上を組み合わせてもよい。例えば、上記熱硬化性化合物(A1)と上記光硬化性化合物(A2)とを組み合わせて、熱硬化性及び光硬化性を備える硬化性樹脂(A)としてもよい。本実施形態において硬化性樹脂(A)は、熱硬化性及び光硬化性を備えることが好ましい。硬化性樹脂(A)は貼り合わせ後のシール剤界面の凹凸を抑制しやすい点から、液状であることが好ましい。
【0023】
熱硬化性化合物(A1)は、1分子中に熱硬化性基を1個以上、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。当該熱硬化性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、エチレン性不飽和結合等が挙げられる。熱硬化性基としてはエポキシ基が好ましい。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
熱硬化性化合物(A1)は、中でも、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、エポキシ樹脂として、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等も使用することができる。更にエポキシ樹脂として、各種の多官能エポキシ樹脂も使用することができ、例えば、三官能及び四官能エポキシ樹脂等が挙げられる。また、特開2012-077202号公報記載のエポキシ樹脂も好適に用いることができる。
【0024】
光硬化性化合物(A2)は、1分子中に光硬化性基を1個以上、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。光硬化性樹としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
光硬化性化合物(A2)の具体例としては、スチレン、酢酸ビニル、無水マレイン酸、無水コハク酸や、1分子中にメタクリル基及びアクリル基より選択される基を1個以上有するアクリル樹脂などが挙げられ、中でもアクリル樹脂が好ましい。
前記アクリル樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、1分子中にメタクリル基及びアクリル基より選択される基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0025】
上記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等)、ポリオール(メタ)アクリレート(グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等)、アルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート(例えば、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
【0026】
上記脂環式(メタ)アクリレートを使用としては、例えば、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単環式(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等の2環式(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の3環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
また上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
上記熱硬化性基と光硬化性基とを有する化合物(A3)は、1分子中に1個以上の熱硬化性基と、1個以上の光硬化性基を有する化合物であればよく、中でも、1分子中に1個以上のエポキシ基と、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
熱硬化性基と光硬化性基とを有する化合物(A3)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートのほか、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられ、シーリング性などの点から、下記一般式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0029】
【化2】
一般式(2)中、
11はグリシジル基又はメチルグリシジル基であり、
12は(メタ)アクリロイル基を含む基であり、
は、m1+m2価の連結基であり、
m1は1~3の整数であり、
m2は1~3の整数であり、
m1+m2は2~4の整数であり、
11又はR12が複数ある場合、当該複数あるR11又はR12は同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
上記Qは、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを連結する2~4価の連結基である。シーリング性などの点から、Qはフェニル基を含むことが好ましい。更に、原料の入手の容易性などの点から、Qは下記化学式で表される構造が特に好ましい。
【0031】
【化3】
式中の*は、各々独立に一般式(2)中のOとの結合手である。
【0032】
12は合成の容易性などの点から、下記化学式で表される構造が好ましい。
【0033】
【化4】
式中の*は、各々独立に一般式(2)中のCとの結合手である。
【0034】
m1は1~3の整数であればよく、1~2が好ましく、1がより好ましい。
m2は1~3の整数であればよく、1~2が好ましく、1がより好ましい。
また、m1+m2は2~4の整数であり、2~3が好ましく、2がより好ましい。
【0035】
一般式(2)で表される化合物は、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂の一部のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸を反応させることで得ることができる。具体的な合成方法は、例えば国際公開第2012-77720号明細書などを参照することができる。
【0036】
<フィラー(B)>
本実施形態のシール剤組成物は、平均粒径300nm以下の球状フィラーを含有する。当該フィラー(B)は、粘度制御、接着信頼性、線膨張性の観点から用いられるものであり、更に平均粒径300nm以下の球状フィラーを用いることにより、貼り合わせ後のシール剤界面の凹凸が抑制される。
【0037】
フィラー(B)は、無機フィラー、有機フィラーのいずれも好適に用いることができ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
前記無機フィラーの具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0039】
前記有機フィラーとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ゴム微粒子、及び高いガラス転移温度を有する共重合体を含むシェルと低いガラス転移温度を有する共重合体のコアとから構成されるコアシェルタイプ粒子等が挙げられる。
【0040】
本実施形態においてフィラー(B)は、真球に近い形状の粒子が得やすい点から、二酸化ケイ素が好ましい。真球に近い形状のシリカ粒子を製造する方法としては、ゾルゲル法、VMC(Vaporized Metal Combustion)法などが挙げられ、粒径を小さくしやすい点からゾルゲル法が好ましい。
【0041】
フィラー(B)は、シール剤界面の凹凸を抑制する点からシランカップリング剤により表面処理されていることが好ましい。表面処理されたフィラー(B)は、シール剤組成物中の硬化性樹脂(A)などとの相溶性が向上し、貼り合わせ時にシール剤界面の凹凸が抑制されると推定される。
【0042】
前記フィラー(B)の表面処理に用いられるシランカップリング剤としては、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0043】
【化5】
一般式(1)中、
は水素原子又はアルキル基であり、Rが複数ある場合、当該複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、
は、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、-O-、-NH-、炭素-炭素二重結合を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、-NH-Si(Rであり、Rが複数ある場合、当該複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、
は置換基を有していてもよいアルキル基であり、複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、
nは1~3の整数である。
【0044】
O-Siはそのまま又は加水分解反応によりシラノール基(HO-Si)となり、フィラー(B)表面の水酸基と脱水縮合して化学結合(フィラー表面-O-Si)を形成する部位である。
【0045】
はシール剤組成物に含まれる他の成分との相溶性などの観点から適宜選択することができる。Rが有していてもよい置換基としては、グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基、スチリル基(-C-CH=CH)、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、ウレイド基(-NHC(=O)NH)、イソシアネート基、メルカプト基、ハロゲン原子などが挙げられる。また、Rはメチル基、エチル基などが挙げられる。
【0046】
フィラー(B)の表面処理に用いられるシランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
フィラー(B)の平均粒径は、300nm以下であればよく、界面の外観をより良好とする点から、200nm以下が好ましく、100nm以下が更に好ましい。一方、フィラー(B)の平均粒径の下限値は、粘度制御、接着信頼性、線膨張性の点から、1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、50nm以上が更に好ましい。
なお、本実施形態において粒子の平均粒径は、HORIBA社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、HORIBA社製Partica LA-950V2)により測定される。
【0048】
本実施形態のシール剤組成物において、前記フィラー(B)の含有量は、シール剤界面の凹凸を抑制する点から、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し1~80質量部が好ましく、5~70質量部がより好ましい。
【0049】
<熱硬化剤(C1)及び/又は開始剤(C2)>
本実施形態のシール剤組成物は、熱硬化剤(C1)及び/又は開始剤(C2)を含有する。前記硬化性樹脂(A)が化合物(A1)又は化合物(A3)を含む場合には、熱硬化剤(C1)を含有し、前記硬化性樹脂(A)が化合物(A2)又は化合物(A3)を含む場合には、開始剤(C2)を含有することが好ましい。
【0050】
(熱硬化剤(C1))
熱硬化剤は、前記硬化性樹脂(A)が有する熱硬化性基に応じて適宜選択することができる。例えば、硬化性樹脂(A)がエポキシ基を有する場合、硬化剤としては、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、酸無水物系化合物、有機ホスフィン酸系化合物、フェノール系化合物、ヒドラジド化合物、カルバジド化合物;イミダゾールをエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物;多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物;2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶;1種以上の多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶並びに1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶、カルボン酸化合物とアミン化合物との混合生成物などが挙げられる。
【0051】
アミン系化合物としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類などが挙げられる。
脂肪族アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等が挙げられる。
ポリエーテルアミン類としては、例えば、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン類等が挙げられる。
脂環式アミン類としては、例えば、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。芳香族アミン類としては、フェニレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m-アミノフェノールなどが挙げられる。
【0052】
また、アミン類は、アミンアダクトであってもよい。アミンアダクトとしては、例えば、エポキシ樹脂にイミダゾール類、又はアミン類をアダクトさせたもの、イソシアネートにアミン類、又はヒドラジンをアダクトさせたもの、尿素にアミン類をアダクトさせたもの等が挙げられる。
【0053】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンなどが挙げられる。
酸無水物系化合物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物等が挙げられる。
有機ホスフィン酸系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
また、フェノール系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック等が挙げられる。
【0054】
ヒドラジド化合物としては、例えば、VDH、VDH-J〔1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン〕、MDH(マロン酸ジヒドラジド)、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)、UDH、UDH-J(7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド)、LDH(オクタデカン-1,18-ジカルボン酸ジヒドラジド)等が挙げられる。
【0055】
上記カルボン酸化合物とアミン化合物との混合生成物としては、下記式(I)で表されるカルボン酸化合物と、下記式(II)、式(III)及び式(IV)で表されるアミン化合物及びアゾール環構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の混合生成物が挙げられる。
41-[COOH]x (I)
式(I)中、xは1又は2であり、R41は、C1~C24の直鎖状若しくは分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基(分岐鎖はヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0056】
42-[NH (II)
式(II)中、R42は、C1~C24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、1つ以上のNH基で非連続的に中断された直鎖若しくは分岐鎖のC2~C12のアルキレン基(N原子に結合するH原子は、アミノ基又はC1~C12のアルキルアミノ基で置換されていてもよい)、C6~C14のアリーレン基、C1~C4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基-C6~C14のアリーレン基、又はC1~C4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基-C6~C14のアリーレン基-C1~C4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基である。
【0057】
【化6】
式(III)中、R43は、それぞれ独立して、単結合であるか、又は前記R42と同様である。
【0058】
【化7】
式(IV)中、R42及びR43は、前記式(II)及び式(III)におけるものと同様である。
【0059】
本実施形態において熱硬化剤(C1)は、上記アミンアダクトが好ましく、中でも下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0060】
【化8】
一般式(3)中、R31は、単結合、もしくは、置換基を有していてもよく、炭素鎖中にイミノ基(-NH-)または酸素原子を有していてもよい、直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はこれらの組み合わせの基である。Aはn11価の有機基であり、n11は1~4の整数である。n11が2以上のとき、複数あるR31は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0061】
31における直鎖アルキレン基は、炭素数が1~12のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。シクロアルキレン基としては、炭素数が3~12のシクロアルキレン基が好ましく、例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、などが挙げられる。また、アリーレン基としては、炭素数が6~14のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
これらの組み合わせとは、例えば、-直鎖アルキレン基-シクロアルキレン基-直鎖アルキレン基-や、-直鎖アルキレン基-アリーレン基-直鎖アルキレン基-などと連結した構造などを表す。
31が有していてもよい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられ、当該アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基は、炭素鎖中に酸素原子を有してもよい。上記アルキル基は、炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、t-ブチル基などが挙げられる。上記シクロアルキル基は、炭素数3~12のシクロアルキル基が好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、上記アリール基は、炭素数6~20の単環又は多環のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基などが挙げられる。アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基はさらに置換基として、ハロゲン原子、水酸基を有してもよい。
【0062】
n11が1の場合、Aは1価の有機基であり、当該1価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニルアルキレン基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基であることが好ましい。当該アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、前記R31で例示したものと同様のものとすることができる。またこれらが有してもよい置換基としては、前記R31で例示した置換基と同様のものとすることができる。
アルキルオキシカルボニルアルキレン基、及び(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が有するアルキル基は、炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、t-ブチル基などが挙げられる。アルキル基は置換基として、ハロゲン原子、水酸基を有してもよい。また、アルキルオキシカルボニルアルキレン基が有するアルキレン基は、炭素数が1~12のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0063】
n11が2の場合、Aは2価の有機基であり、当該2価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基であることが好ましい。アルキレン基は上記。当該アルキレン基、シクロアルキレン基、及びアリーレン基、並びにこれらが有してもよい置換基は、前記R31において例示したものと同様のものとすることができる。
【0064】
n11が3の場合、Aは3価の有機基であり、下記一般式(4)~(6)のいずれかで表される構造を有することが好ましい。
【0065】
【化9】
一般式(4)中、R32は各々独立に、置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基である。
【0066】
【化10】
一般式(5)中、R33は各々独立に、置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基である。
【0067】
【化11】
一般式(6)中、R34は各々独立に、置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基であり、R35は、CH≡基(メチン基)である。
【0068】
上記R32~R34における直鎖アルキレン基は、前記R31において例示したものと同様のものとすることができる。また、R32~R34における分岐のアルキレン基は、前記直鎖アルキレン基に、炭素数1~5のアルキル基が置換した構造などがあげられ、炭素鎖中に酸素原子を有してもよい。その他の有してもよい置換基としては、前記R31において例示したものと同様のものとすることができる。
【0069】
また、nが4の場合、Aは4価の有機基であり、下記一般式(7)で表される構造を有することが好ましい。
【0070】
【化12】
一般式(7)中、X11は、シクロアルキル-アルキレン-シクロアルキル基、アリール-アルキレン-アリール基から誘導される4価の残基であるか、Si(ケイ素)原子である。
【0071】
11における、シクロアルキル-アルキレン-シクロアルキル基は、2個のシクロアルキル基がアルキレン基により接続された複合的な基であり、更に置換基を有してもよく、炭素鎖中に酸素原子を有していてもよい。2個のシクロアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。各々のシクロアルキル基、及びアルキレン基、及び有していてもよい置換基の具体例は、前記R11で例示したものと同様のものとすることができる。
また、X11における、アリール-アルキレン-アリール基は、2個のアリール基がアルキレン基により接続された複合的な基であり、更に置換基を有してもよく、炭素鎖中に酸素原子を有していてもよい。2個のアリール基は同一であっても異なっていてもよい。各々のシクロアルキル基、及びアルキレン基、及び有していてもよい置換基の具体例は、前記R11で例示したものと同様のものとすることができる。
【0072】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、1,1’-[メチレンビス(シクロヘキサン-1,4-ジイル)]ビス[3-(12-アミノドデシル)ウレア]、1,1’-[メチレンビス(シクロヘキサン-1,4-ジイル)]ビス[3-(2-アミノエチル)ウレア]、1,1’-[メチレンビス(シクロヘキサン-1,4-ジイル)]ビス[3-(6-アミノヘキシル)ウレア]、1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(12-アミノドデシル)ウレア]、1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(2-アミノエチル)ウレア]、1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(6-アミノヘキシル)ウレア]、N,N’-ヘキサメチレン[カルボニルビス(アザンジイル)-2-アミノエチル]-[カルボニルビス(アザンジイル)-6-アミノヘキシル]などが挙げられる。
【0073】
一般式(3)で表されるアミン化合物の合成方法は特に限定されないが、例えば、アミノ基を2個以上有する化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得ることができる。
例えば、上記モノイソシアネート化合物、上記ジイソシアネート化合物、上記トリイソシアネート化合物及び上記テトライソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物と、ヒドラジン又は多価アミン化合物とを反応させて得られたものであることが好ましい。ウレア構造を有するアミン化合物は、上記イソシアネート化合物と、上記ヒドラジン又は多価アミン化合物とを、上記イソシアネート化合物1モルに対して、上記ヒドラジン又は多価アミン化合物を好ましくは0.01モル~50モル、より好ましくは0.1モル~50モル、更に好ましくは0.1モル~30モル、特に好ましくは0.1モル~20モルとなるように、有機溶媒中又はニート(無溶媒)で、好ましくは-10℃~120℃、より好ましくは-5℃~100℃、更に好ましくは0℃~50℃、特に好ましくは5~30℃で制御して反応させて得られたものであることが好ましい。
【0074】
イソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、分子内に1個のイソシアネート基を有するモノイソシアネート、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを用いることができる。
【0075】
任意の組み合わせとしては、1種のモノイソシアネートを単独で用いても良く、2種以上のモノイソシアネートを組み合わせて使用しても良く、1種のポリイソシアネートを単独で用いても良く、2種以上のポリイソシアネートを組み合わせて使用してもよい。また、モノイソシアネートとポリイソシアネートを組み合わせて使用してもよい。
【0076】
モノイソシアネートは、イソシアン酸エチル、イソシアン酸ブチル、イソシアン酸プロピル、イソシアン酸イソプロピル、イソシアン酸tert-ブチル、イソシアン酸ドデシル、イソシアン酸シクロヘキシル、イソシアン酸オクタデシル、イソシアン酸(R)-(+)-α-メチルベンジル、イソシアン酸(S)-(-)-α-メチルベンジル、イソシアン酸(R)-(-)-1-(1-ナフチル)エチル、イソシアナト酢酸エチル、イソシアナト酢酸ブチル、イソシアン酸ベンジル、イソシアン酸3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジル、(S)-(-)-2-イソシアナトプロピオン酸メチル、(S)-2-イソシアナト-3-フェニルプロピオン酸メチル、メタクリル酸2-イソシアナトエチル、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、6,7-メチレンジオキシ-(4-イソシアナトメチルクマリン)の中から選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0077】
ジイソシアネートとしては、具体的には、プロパン-1,2-ジイソシアネート、2,3-ジメチルブタン-2,3-ジイソシアネート、2-メチルペンタン-2,4-ジイソシアネート、オクタン-3,6-ジイソシアネート、3,3-ジニトロペンタン-1,5-ジイソシアネート、オクタン-1,6-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタテトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-又は1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの中から選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物であることが好ましい。熱硬化剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
アミンアダクトは合成してもよく、市販品を用いてもよい。アミンアダクトの具体例としては、例えば、(株)ADEKA製、アデカハードナーEHシリーズ(例えば、EH-5015S、EH-5030S、EH-4357S、EH-5057P等)、富士化成工業(株)製、フジキュアーシリーズ(例えば、FXR-1020、FXR-1030等)等が挙げられる。
【0079】
熱硬化剤(C1)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱硬化剤(C1)は粒子状であってもよく、液状であってもよい。粒子状の場合、当該熱硬化剤(C1)のメジアン径が0.1~6μmが好ましく、0.5~4μmがより好ましい。当該範囲であれば、後述する球状フィラー(B1)との組み合わせにより、貼り合わせ後のシール剤界面の凹凸が抑制される。
【0080】
本実施形態のシール剤組成物において、前記熱硬化剤(C1)の含有量は、シール性などの点から、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し1~40質量部が好ましく、2~35質量部がより好ましい。
【0081】
(開始剤(C2))
開始剤は、光の照射により、硬化性樹脂(A)が有する光硬化性樹の反応を促進するものの中から適宜選択することができ、光開始性化合物、及び、光増感化合物を含むものとする。ここで、光開始性化合物とは、紫外線、可視光線等の光を吸収して、又は、光増感化合物が吸収したエネルギーを受容して、ラジカルを発生する化合物をいい、光増感化合物は、光を吸収して得たエネルギーを光開始性化合物などに供与する化合物をいう。光増感化合物は、例えば波長が380nm以上の光を吸収する可視光増感化合物であってもよい。
【0082】
上記光開始性化合物は、自己開裂型であってもよく、水素引き抜き型(電子供与型)であってもよい。アウトガスの発生を抑制する点からは、水素引き抜き型の光開始性化合物を用いることが好ましい。
水素引き抜き型の光開始性化合物としては、反応性などの点から、ベンゾイル基[C-C(=O)-]を有する化合物が好ましい。当該ベンゾイル基は、芳香環に更に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、特に限定されず、アルキル基、アリール基、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、カルボキシアルキル基、オキシアルキル基、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
このような光開始性化合物としては、例えば、光開始剤として公知のベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類、等が挙げられる。
光開始性化合物としては、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、アセトフェノン、アルコキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン等のほか、後述する一般式(3)で表されジアルキルアミノベンゾイル基を有する化合物が好ましい。
【0083】
上記光増感化合物としては、置換基として、キサントン、チオキサントン、アントラキノン、クマリン等の光増感部を有する化合物であることが好ましく、反応性などの点から、チオキサントンを有するチオキサントン類が好ましい。
チオキサントン類の具体例としては、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のほか、後述する一般式(3)で表される9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基を有する化合物が好ましい。
【0084】
本実施形態において開始剤(C2)として、アルキレンオキサイドを有する化合物を用いることが好ましく、下記一般式(3)で表される化合物を用いることがより好ましい。
なお、一般式(3)において、置換基が9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基を有する場合、光開始剤は前記光増感化合物として作用する。また、一般式(3)において、置換基がジアルキルアミノベンゾイル基を有する場合、光開始剤は前記光開始性化合物として作用する。
【0085】
【化13】
一般式(3)中、Qは、置換基を有してもよく炭素鎖中に酸素原子を有してもよいアルキレン基、R21、R22、R23、及びR24は、それぞれ独立して、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基、ジアルキルアミノベンゾイル基、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アシル基、シリル基、アセタール基又は-CO-NH-Zであり、Zは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、R21、R22、R23、及びR24、並びにQが有する置換基のうち少なくとも1つは、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基、またはジアルキルアミノベンゾイル基である。]
【0086】
におけるアルキレン基は、炭素数が1~20、好ましくは2~20、より好ましくは2~10の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖アルキレン基;メチルエチレン基、メチルプロピレン基、メチルへキシレン基、エチルブチレン基などの分岐のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基は、水素原子が置換されていてもよい。水素原子を置換する置換基としては、ハロゲン原子、水酸基などのほか、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基、ジアルキルアミノベンゾイル基であってもよい。
また、Qにおけるアルキレン基は、炭素鎖中に酸素原子を有していてもよく、オキシアルキレン基、又は、アルキレンオキシド基となっていてもよい。この場合、Qは、[-Q-(O-Q-]で表される置換基であることが好ましい。当該置換基においてpは1~50の整数であり、2~42が好ましく、4~24がより好ましい。当該置換基においてQは、炭素数1~8のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。また、Qは更に置換基を有していてもよい。Qにおける置換基としては、炭素数1~4のアルキル基、下記一般式(3a)又は(3b)で表される基などが挙げられる。
【0087】
【化14】
一般式(3a)及び(3b)中、R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立して、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基、ジアルキルアミノベンゾイル基、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アシル基、シリル基、アセタール基又は-CO-NH-Zであり、Zは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である。
【0088】
21~R28のアルキル基は、炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、t-ブチル基などが挙げられる。アルキル基は置換基として、ハロゲン原子、水酸基を有してもよい。
【0089】
21~R28のアリール基は、炭素数6~20の単環又は多環のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基などが挙げられる。アリール基は、置換基として、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキル基、アシル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、又はシリル基などを有してもよい。当該置換基としてのアルキル基、及びアルコキシ基、アシル基、及びアルコキシカルボニル基のアルキル鎖は、前記R21~R28のアルキル基と同様のものとすることができる。
【0090】
21~R28のヘテロアリール基は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子より選択される1以上のヘテロ原子を含む、原子数が5~20の単環又は多環の複素環であり、例えばイミダゾリル基、キサンテニル基、チオキサンテニル基、チエニル基、ジベンゾフリル基、クロメニル基、イソチオクロメニル基、フェノキサチイニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、β-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基等が挙げられる。ヘテロアリール基は、前記アリール基と同様の置換基を有してもよい。
【0091】
21~R28のアラルキル基は、アルキル基にアリール基が置換した構造であり、当該アルキル基及びアリール基は、前記R~Rのアルキル基、及びアリール基と同様のものとすることができる。アルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
【0092】
21~R28のアシル基は、Z-C(=O)-(式中、Zは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である。)で表される置換基である。Zにおけるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基はR21~R28と同様のものとすることができる。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基及びベンゾイル基等が挙げられる。
【0093】
21~R28のシリル基は、-Si(Z(式中、Zは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基である。)Zにおけるアルキル基、アルコキシ基、アリール基及びヘテロアリール基はR21~R28と同様のものとすることができる。シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、モノメチルジメトキシシリル基、ジエチルモノエトキシシリル基、モノメチルジエトキシシリル基等が挙げられる。
【0094】
21~R28のアセタール基は、-C(Z)(Z)(OZ)(式中、Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、Zは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である)で示される基である。Z~Zのアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基はR21~R28と同様のものとすることができる。アセタール基の具体例としては、-CHOCH、-CH(CH)OCH、-CH(CH)OC等が挙げられる。
【0095】
21~R28の置換基-CO-NH-Z(式中、Zは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である)において、Zのアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基は、R21~R28と同様のものとすることができる。当該置換基の具体例としては、フェニルアミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基等が挙げられる。
【0096】
21~R28のジアルキルアミノベンゾイル基は、ジアルキルアミノ基で置換されたベンゾイル基である。ジアルキルアミノ基中の2つのアルキル基は、それぞれ独立に、R~Rのアルキル基と同様のアルキル基とすることができる。ジアルキルアミノベンゾイル基の具体例としては、ジアルキルアミノベンゾイル基として、2-ジアルキルアミノベンゾイル基、3-ジアルキルアミノベンゾイル基、4-ジアルキルアミノベンゾイル基が挙げられる。ジアルキルアミノベンゾイル基として、ジメチルアミノベンゾイル基、ジエチルアミノベンゾイル基、ジプロピルアミノベンゾイル基、ジブチルアミノベンゾイル基、ジヘキシルアミノベンゾイル基、ジオクチルアミノベンゾイル基、メチルエチルアミノベンゾイル基、メチルプロピルアミノベンゾイル基、メチルブチルアミノベンゾイル基、メチルヘキシルアミノベンゾイル基、エチルプロピルアミノベンゾイル基、エチルブチルアミノベンゾイル基、エチルヘキシルアミノベンゾイル基、ブチルオクチルアミノベンゾイル基、ヘキシルオクチルアミノベンゾイル基等が挙げられ、光硬化性の点からジメチルアミノベンゾイル基が好ましく、4-ジメチルアミノベンゾイル基がより好ましい。
【0097】
また、R21~R28の9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基の具体例としては、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基として、9-オキソ-9H-チオキサンテン-1-イル基、9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル基、9-オキソ-9H-チオキサンテン-3-イル基、9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル基が挙げられる。
【0098】
一般式(3)で表される化合物は、分子内に1個以上のジアルキルアミノベンゾイル基又は9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基を有する。分子内に2個以上有する場合は、ジアルキルアミノベンゾイル基と9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基の両方を有していてもよいが、どちらか一方のみを有することが好ましい。
【0099】
一般式(3)で表される化合物は、中でもR21及びR23が、同一であって、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基又はジアルキルアミノベンゾイル基であり、R22及びR24が、それぞれ独立して、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基、ジアルキルアミノベンゾイル基、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アシル基、シリル基、アセタール基又は-CO-NH-Zであり、Qが、-Q-(O-Q-であることが特に好ましい。
【0100】
一般式(3)で表される化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば特開2014-227344号公報などを参考に製造することができる。
【0101】
開始剤(C2)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に本実施形態においては、硬化性等の点から上記光開始性化合物と上記光増感化合物とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0102】
開始剤(C2)において、光開始性化合物と可視光増感性化合物とを組み合わせて用いる場合、そのモル比(光開始性化合物/可視光増感性化合物)は、安定で十分なラジカルを供給する観点から、好ましくは1/5~5/1、より好ましくは1/3~3/1、さらに好ましくは1/2~2/1である。
【0103】
本実施形態のシール剤組成物において、開始剤(C2)の含有割合は、十分な硬度の封止部材が得られる点から、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
【0104】
<重合禁止剤(D)>
本シール剤組成物は、重合禁止剤(D)を含有してもよい。重合禁止剤(D)は、硬化性樹脂(A)の硬化反応を抑制するための化合物である。重合禁止剤は、シール剤の保存安定性等を目的として用いる。重合禁止剤(D)は、公知のものの中から適宜選択して用いることができ、例えば、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、キノン系、フェノチアジン系、ニトロソアミン系の重合禁止剤などが挙げられる。本実施形態においては中でもヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物は、フェノールの2位と6位にかさ高い構造を有する化合物であり、例えば、2,6-t-ブチルフェノール、2,6-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-t-ブチルフェノールなどが挙げられる。
重合禁止剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
本実施形態のシール剤組成物において重合禁止剤(D)の含有割合は、保存安定性の点から、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し、0.0001~0.5質量部が好ましく、0.0005~0.3質量部がより好ましい。
【0106】
<シランカップリング剤(E)>
本シール剤組成物は、シランカップリング剤(E)を含有してもよい。シランカップリング剤(E)により、基材との接着性が向上する。シランカップリング剤(E)としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤(E)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態のシール剤組成物においてシランカップリング剤(E)の含有割合は、保存安定性の点から、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.5~2質量部がより好ましい。
【0107】
<その他の成分>
本シール剤組成物は、本発明の効果を奏する範囲で更に他の成分を含有してもよい。このような他の成分としては、例えば、遮光性材料、チキソ付与剤、エラストマー、反応性希釈剤、連鎖移動剤、硬化促進剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤等が挙げられる。
【0108】
(遮光性材料)
本シール剤組成物は、液晶素子のシール近傍における光漏れやコントラスト向上のため、遮光性材料を含有してもよい。ここで遮光性とは、遮光性材料を含有する本シール剤組成物の硬化物が3~5のOD(光学濃度)値を有するものをいう。遮光性材料は、液晶に対する汚染性が小さいものを使用することが好ましい。例えば、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。
遮光性材料は、硬化性樹脂(A)100質量部に対し、50質量部以下で使用することができ、5~40質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。
【0109】
(チキソ付与剤)
本シール剤組成物は、塗工性改善等を目的として、チキソ付与剤を含有してもよい。チキソ付与剤は、例えば、ヒュームドシリカ等の微粒子シリカ、微粒子アルミナ、脂肪族アマイド等の非球状の粒子が挙げられる。チキソ付与剤は、貼り合わせ後のシール剤界面の凹凸を抑制する点から、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、塗工性改善の点から、0.1~5質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0110】
<シール剤組成物の用途>
本シール剤組成物は、貼り合わせ後のシール剤界面の凹凸を抑制し外観が良好であることから、ベゼル面を狭くし表示領域を広くとった液晶素子、OLED、マイクロLEDなどの表示素子に好適に用いることができる。また、未硬化の状態で液晶と接触する液晶滴下工法用シール剤として好適に用いることができる。
【0111】
[液晶素子]
本実施形態に係る液晶素子は、上記本シール剤組成物の硬化物を備えることを特徴とする。このような構成の本液晶素子は、シール材界面の凹凸が抑制されるため外観が良好なものとなる。
【0112】
本液晶素子の一例について、図1を参照して説明する。図1は本液晶素子100の一例を示す平面図である。
図1に示すように、本液晶素子100は、対向して配置された2つの基材(第1の基材10及び第2の基材40)と、2つの基材の間に枠状に配置された封止部材22と、2つの基材と前記封止部材22により形成された空間内に充填された液晶30とを備える。
本液晶素子は前記封止部材22が、前記本シール剤組成物の硬化物であるためシール材界面の凹凸が抑制される。
【0113】
第1の基材10及び第2の基材40は、通常、可視光に対して透明な基材であればよく、一般的な液晶素子に用いられる透明基板の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板などの可撓性のないリジット材;透明樹脂フィルム、フレキシブルガラスなどの可撓性やフレキシブル性を有するフレキシブル材などが挙げられる。
基材の厚みは特に限定されないが、例えば、50μm以上1mm以下程度のものを用いることができる。
基材の液晶と接する面には、液晶素子の駆動方式に応じて、液晶を配向させるための配向膜を有していてもよい。配向膜を有する場合、当該配向膜は、ラビング処理された配向膜、光配向膜、賦形された配向膜のいずれであってもよい。
基材はさらに、透明電極層やカラーフィルタ等、液晶素子に用いられる公知の構成を適宜備えていてもよい。
また液晶30は、特に限定されず、液晶素子に用いられる公知の液晶の中から、液晶の駆動方式などに応じて適宜選択すればよい。
【0114】
<液晶素子の製造方法>
液晶素子の製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、液晶素子100の製造方法の一例を示す模式的な工程図であり、図2の(a)~(e)は、後述する各工程(a)~(e)における液晶素子100の断面図である。図2の(e)は、図1の切断線IIE-IIEにおける断面図に相当する。
図2の例に示すように、第1の基材10上に、前記シール剤組成物20を枠状のパターンに塗布する工程(a)と、当該枠内に液晶30を滴下する工程(b)と、前記第1の基材10の前記シール剤組成物20の枠が形成された面側に、第2の基材40を貼り合わせる工程(c)と、前記シール剤組成物20に光照射する工程(d)と、前記シール剤組成物20を加熱する工程(e)を有する。
【0115】
工程(a)におけるシール剤組成物20の塗布方法は特に限定されず、公知の印刷法や、塗布方法の中から適宜選択すればよい。なお、図1の例では、第1の基材10の淵にシール剤組成物20を塗布しているが、用途等に応じて、第1の基材10の内側に形成してもよく、複数の枠状パターンを形成した後、第1の基材を切断してもよい。
【0116】
工程(b)における液晶30の滴下方法は特に限定されず、公知の方法の中から適宜選択すればよい。未硬化のシール剤組成物20と液晶30が接触するが、本シール剤組成物を用いた場合には、当該シール剤組成物の液晶等への溶出が抑制され、液晶の配向乱れが抑制される。
【0117】
次いで、工程(c)において第1の基材10と第2の基材40を、シール剤組成物を介して貼り合わせ、液晶30を封入する。
その後、工程(d)において光照射を行い、未硬化のシール剤組成物20を硬化し、光硬化物21を得る。
その後、工程(e)において加熱を行い、光硬化物21となったシール剤組成物をさらに硬化し、封止部材22を得る。
工程(d)及び(e)における硬化条件は、シール剤組成物の組成に応じて適宜調整すればよい。例えば、紫外光を1,000mJ/cm照射し、次いで100~120℃程度で1時間ほど加熱することにより、シール剤組成物20の硬化物である封止部材22が形成される。
【実施例0118】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0119】
[原料]
<硬化性樹脂(A)>
【化15】
【0120】
<フィラー(B)>
フィラー(B-1):アドマテックス社製、YA-050C-SP3(トリメトキシフェニルシランで表面処理された平均粒径50nmの真球シリカ粒子)
フィラー(B-2):アドマテックス社製、YA-010C-SV1(ビニルトリメトキシシランで表面処理された平均粒径10nmの真球シリカ粒子)
フィラー(B-3):アドマテックス社製、YA-010C-SP3(トリメトキシフェニルシランで表面処理された平均粒径10nmの真球シリカ粒子)
フィラー(B-4):信越化学工業社製、OSG-80(トリメチルシランで表面処理された平均粒径80nmの真球シリカ粒子)
フィラー(B-5):信越化学工業社製、OSG-100(トリメチルシランで表面処理された平均粒径110nmの真球シリカ粒子)
フィラー(B-6):アドマテックス社製、0.3μmSM-E(トリメチルシランで表面処理された平均粒径300nmの真球シリカ粒子)
<他のフィラー>
フィラー(B-7):日本触媒社製、KE-C50(ビニルトリエトキシシランで表面処理された平均粒径500nmの真球シリカ粒子)
フィラー(B-8):日本アエロジル社製、OX50(平均粒径40nmの非真球シリカ粒子)
フィラー(B-9):日本アエロジル社製、RX50(ヘキサメチルジシラザンで表面処理された平均粒径40nmの非真球シリカ粒子)
フィラー(B-10):キャボットコーポレーション社製、TG-308F(ジメチルポリシロキサンで表面処理された平均粒径12nmの非真球シリカ粒子)
【0121】
<熱硬化剤(C1)>
熱硬化剤(C1-1):ADEKA社製、EH-5030S(ポリアミン型熱硬化剤)
【0122】
<開始剤(C2)>
【化16】
【0123】
<重合禁止剤(D)>
重合禁止剤(D-1):関東化学社製、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール
【0124】
<シランカップリング剤(E)>
シランカップリング剤(E-1):信越化学工業社製、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
【0125】
(実施例1:シール剤組成物の調製)
硬化性樹脂(A3-1)100質量部と、フィラー(B-1)60質量部と、熱硬化剤(C1-1)20質量部と、開始剤(C2-1)2質量部と、開始剤(C2-2)2質量と、重合禁止剤(D-1)0.15質量部と、シランカップリング剤(E-1)1質量部とを十分に混練して、実施例1のシール剤組成物を得た。
【0126】
(実施例2~8:シール剤組成物の調製)
実施例1において、各成分を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~8のシール剤組成物を得た。
【0127】
(比較例1~10:シール剤組成物の調製)
実施例1において、各成分を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1~10のシール剤組成物を得た。
【0128】
[評価]
<粘度>
各実施例及び比較例で得られたシール剤組成物が25℃となるように恒温処理し、RE-105U型粘度計(東機産業社製)に3°×R7.7コーンロータを取り付け、対象となるシール剤組成物0.15mlをコーンロータ内にセットし、2.5rpmで25℃のシール剤組成物の粘度を測定した。結果を表1に示す。
なお、測定レンジオーバーの基準は、1,200,000mPa・sである。
(粘度評価基準)
〇(優):粘度が300,000mPa・s以下であった。
△(可):粘度が300,000mPa・sを超え、600,000mPa・s以下であった。
×(不可):粘度が600,000mPa・sを超過した。
【0129】
<チキソ比>
各実施例及び比較例で得られたシール剤組成物が25℃となるように恒温処理し、RE-105U型粘度計(東機産業社製)に3°×R7.7コーンロータを取り付け、対象となるシール剤組成物0.15mlをコーンロータ内にセットし、0.5rpmと5rpmで25℃のシール剤組成物の粘度を測定した。
チキソ比は、(0.5rpmの粘度)÷(5.0rpmの粘度)で算出される。結果を表1に示す。
(チキソ比評価基準)
〇(優):チキソ比が2以下であった。
△(可):チキソ比が2を超え、4以下であった。
×(不可):チキソ比が4を超過した。
【0130】
<外観(凹凸)>
図3を参照して説明する。図3は外観評価試験方法を説明するための模式図である。2.6cm×2.6cmの白板ガラス(松波工業社製スライドグラスS1127)の表面に、6μmのスペーサを1質量%分散させたエタノール分散液をスプレーで散布した(図3(A))。当該表面を乾燥させた後、中央部付近に実施例1のシール剤組成物を塗布した(図3(B))。塗布面に別の白板ガラスを貼り合わせ固定した(図3(C))。固定後2分以内に、紫外線を3000mJ照射しシール剤組成物を硬化させた(図3(D))。シールの外周部を光学顕微鏡により観察し、凹凸差の最も大きいところを測定した(図3(E))。なお図3(E)は比較例1の顕微鏡像である。他の実施例及び比較例のシール剤組成物についても同様の測定を行った。結果を表1に示す。また、顕微鏡像を図5図7に示す。
(外観(凹凸)評価基準)
〇(優):凹凸差が40μm以下であった。
△(可):凹凸差が40μmを超え、60μm以下であった。
×(不可):凹凸差が60μmを超過した。
【0131】
<透湿度>
以下の方法で、透湿度の測定を行った。各実施例及び比較例で得られたシール剤組成物を直径36mm~38mm、厚さ0.28mm~0.32mmになるように100mm×100mm厚さ0.1mmのPETフィルムにより挟み、紫外線照射照度で両面をUV1500mJ/cm(商品名:UVX-01224S1、ウシオ電機社製で100mW/cm2/365nmで15秒)の光エネルギーで照射を行い、120℃の熱風オーブンで1時間熱硬化を行い透湿度測定用のサンプルとした。透湿度測定はJISK0208:1976に準じ、65℃/95%の恒温恒湿槽を用い、透湿カップ法での重量変化より算出した。透湿度の単位はg/(m-2・24h)である。結果を表1に示す。
【0132】
<接着強度>
図4を参照して説明する。図4は接着強度試験方法を説明するための模式図である。厚さ0.5mm、3.0cm角のITOガラス8(ガラス表面にITO電極膜を有すると、厚さ0.5mm、2.3cm角のガラス9を用意した。ITOガラスの中央線上で両端から9mmのところに接着面として直径1.5~2.0mm、且つ、厚さ6.0~10.0μmになるように各実施例及び比較例で得られたシール剤組成物を塗布し、3.0cm角のITOガラス8と2.3cm角のガラス9の1辺を合わせて、両者を貼り合わせて試験片10を作製した。貼り合わせた試験片10にUV3000mJ/cm(商品名:UVX-01224S1、ウシオ電機社製で100mW/cm/365nmで30秒))照射した後、120℃で60分間加熱し、シール剤組成物を硬化させた。硬化後の試験片10のITOガラス8の中央線の端から5mmのポイントをオートグラフ(ミネベア社製;Techno-Graph TG-2kM)にて押しぬき、接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
表1及び図5に示される通り、平均粒径300nm以下の球状フィラー(B)を含有する実施例1~8のシール剤組成物は、貼り合わせ時にシール剤界面に生じる凹凸が抑制され外観が良好となることが示された。
【符号の説明】
【0135】
10 第1の基材
20 シール剤組成物
21 光硬化物
22 封止部材
30 液晶
40 第2の基材
100 液晶素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7