IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アドヴィックスの特許一覧 ▶ 株式会社J-QuAD DYNAMICSの特許一覧

<>
  • 特開-車両制御装置 図1
  • 特開-車両制御装置 図2
  • 特開-車両制御装置 図3
  • 特開-車両制御装置 図4
  • 特開-車両制御装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011548
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/095 20120101AFI20220107BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20220107BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20220107BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B60W30/095
B60W60/00
B60T8/00 Z
B60T8/1755 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112759
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】塩田 将喜
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241CC02
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD09
3D241CD10
3D241CE05
3D241DA52Z
3D241DB12Z
3D241DB32Z
3D241DC33Z
3D241DD02Z
3D246EA18
3D246GB05
3D246GB29
3D246GB30
3D246HA13A
3D246HA52A
3D246HA57A
3D246HA64A
3D246HA81A
3D246HA93A
3D246HC02
3D246HC07
3D246JB02
3D246JB39
3D246JB43
3D246JB56
3D246LA72Z
(57)【要約】
【課題】制動力の付与による荷重移動によって車両の旋回を補助する車両制御装置に関して、荷重移動の応答性を向上させる。
【解決手段】車両制御装置である制御装置10は、走行支援部14を備えている。走行支援部14は、車両の操舵および加減速を自動制御する運転支援制御と、操舵操作部材21の操作が運転者によって行われる場合に車輪91に制動力を付与することによって車両の旋回を補助する旋回補助制御と、を実施する。制御装置10は、危険度を定量的に評価するリスク評価部11を備えている。制御装置10は、運転者が操舵操作部材21を操作するか否かを予測する操作予測部12を備えている。走行支援部14は、運転支援制御の実施中に、危険度が規定のしきい値よりも高く、運転者が操舵操作部材21の操作を行うと予測されたとき、制動装置70を作動させて回転体と摩擦材との隙間を詰めさせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と一体回転する回転体に摩擦材を押し付けることで前記車輪に制動力を付与する制動装置を備える車両に適用される車両制御装置であって、
車両の操舵装置を操作する操舵操作部材が車両の運転者によって操作されていない場合に車両の操舵と車両の加減速とを自動制御する運転支援制御と、車両の運転者による前記操舵操作部材の操作が行われる場合に制動力を前記車輪に付与することによって車両の旋回を補助する旋回補助制御と、を実施する走行支援部と、
車両の周辺に位置する障害物と当該車両とが接近することに起因する危険度を定量的に評価するリスク評価部と、
車両の運転者が前記操舵操作部材の操作を行うか否かを予測する操作予測部と、を備え、
前記走行支援部は、前記運転支援制御の実施中に、前記リスク評価部によって評価される前記危険度が規定のしきい値以上であり、運転者が操作を行うと前記操作予測部によって予測されたとき、前記制動装置を作動させて前記回転体と前記摩擦材との隙間を詰めさせる事前制御を実施する
車両制御装置。
【請求項2】
前記操舵操作部材の操作が行われる前に操舵の方向を予測する操舵方向予測部を備え、
前記走行支援部は、前記事前制御では、
前記操舵方向予測部によって前記操舵の方向が予測されていない場合には、すべての車輪に対応する前記回転体と前記摩擦材との隙間を詰めさせる一方で、
前記操舵の方向が予測されている場合には、当該操舵によって内輪となる車輪に対応する前記回転体と前記摩擦材との隙間を詰めさせる
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記走行支援部は、前記事前制御では、
前記操舵の方向が予測されている場合には、前記操舵の方向が予測されていない場合よりも前記回転体に前記摩擦材を強く押し付けさせる
請求項2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を支援する機能を有する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステアリングホイールの操作による車両の横運動に連係して自動的に車両の加減速を行う車両の制御装置が開示されている。特許文献1に開示されている車両の制御装置では、車両と障害物との距離が近い場合のように危険度が高いときには、減速ゲインが大きくされて、車両の減速度指令値が大きくされる。こうした指令値に基づいた制御によって車両の減速度が大きくなることで荷重移動が大きくなる。このように、危険度が高い場合に舵の効きを向上させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-177223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両を減速または旋回させ始める時点において、車両の制動装置におけるパッドとロータとが接触しておらず両者の間にクリアランスがある場合は、特許文献1に開示されている車両の制御装置のように危険度に応じて減速ゲインを大きくしたり、旋回モーメント制御ゲインを大きくしたりしても、上記クリアランスがあるために油圧の上昇に伴う制動力が立ち上がるまでに時間がかかる。このため、狙いのタイミングで減速度または旋回モーメントを十分に大きくできないことがある。この結果、減速または旋回をさせ始める時点において、油圧の上昇に伴い制動力が付与されるまでに時間がかかり、狙いのタイミングでの荷重移動が大きくなりにくいという問題がある。すなわち、車両を減速または旋回させ始める時点での荷重移動の応答性に関して改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両制御装置は、車輪と一体回転する回転体に摩擦材を押し付けることで前記車輪に制動力を付与する制動装置を備える車両に適用される車両制御装置であって、車両の操舵装置を操作する操舵操作部材が車両の運転者によって操作されていない場合に車両の操舵と車両の加減速とを自動制御する運転支援制御と、車両の運転者による前記操舵操作部材の操作が行われる場合に制動力を前記車輪に付与することによって車両の旋回を補助する旋回補助制御と、を実施する走行支援部と、車両の周辺に位置する障害物と当該車両とが接近することに起因する危険度を定量的に評価するリスク評価部と、車両の運転者が前記操舵操作部材の操作を行うか否かを予測する操作予測部と、を備え、前記走行支援部は、前記運転支援制御の実施中に、前記リスク評価部によって評価される前記危険度が規定のしきい値以上であり、運転者が操作を行うと前記操作予測部によって予測されたとき、前記制動装置を作動させて前記回転体と前記摩擦材との隙間を詰めさせる事前制御を実施することをその要旨とする。
【0006】
上記構成によれば、危険度が高く運転者が操作を行うと予測されたときには、操舵操作部材の操作が行われるよりも前に、回転体と摩擦材との隙間が予め詰められる。これによって、操舵操作部材の操作が行われて旋回補助制御が開始されるときには、回転体と摩擦材との隙間が空いている場合と比較して、旋回補助制御が開始されてから制動力の付与が始まるまでの時間を短くすることができる。すなわち、旋回補助制御が開始されてから速やかに制動力を付与することができ、荷重移動の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】車両制御装置の一実施形態と、同制御装置の制御対象である車両と、を示す模式図。
図2】同制御装置が旋回補助制御を実施する際の処理の流れを示すフローチャート。
図3】同制御装置が事前制御を実施する際の処理の流れを示すフローチャート。
図4】運転支援制御の実施中に事前制御が開始される場合のホイールシリンダ内の液圧の推移を示すタイミングチャート。
図5】運転支援制御の実施中に事前制御が開始される場合のホイールシリンダ内の液圧の推移を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、車両制御装置の一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
図1は、車両90と、車両90を制御対象とする車両制御装置である制御装置10と、を示す。車両90は、車輪91として左右の前輪と左右の後輪とを備えている。
【0009】
車両90は、車両90の車輪91に制動力を付与する制動装置70を備えている。制動装置70は、各車輪91に対応した制動機構80を備えている。図1には、一つの車輪91と当該車輪91に対応する制動機構80とを示している。制動機構80は、車輪91と一体回転する回転体82と、回転体82を挟む位置に配置されている一対の摩擦材83と、ホイールシリンダ81と、を備えている。摩擦材83は、回転体82との間に間隔が空くように配置されている。すなわち、制動機構80はディスクブレーキである。回転体82がディスクロータであり摩擦材83がパッドである。摩擦材83は、ホイールシリンダ81にブレーキ液が供給されてホイールシリンダ81内の液圧が上昇すると、回転体82に近づくように移動する。制動機構80は、ホイールシリンダ81内の液圧が高いほど、回転体82に摩擦材83を押し付ける力が大きくなるように構成されている。回転体82に摩擦材83を押し付ける力が大きいほど、大きな制動力が車輪91に付与される。
【0010】
制動装置70は、各ホイールシリンダ81に接続されている制動アクチュエータ71を備えている。制動アクチュエータ71は、液圧発生装置から供給されるブレーキ液を各ホイールシリンダ81に供給する。液圧発生装置には、車両90の運転者による操作が可能な制動操作部材が取り付けられている。車両の運転者によって制動操作部材が操作されると、制動操作部材の操作量に応じた量のブレーキ液が制動アクチュエータ71を介して液圧発生装置から各ホイールシリンダ81内に供給される。
【0011】
制動装置70は、制御装置10によって作動されることで、制動操作部材の操作を伴うことなくホイールシリンダ81内の液圧を調整することができる。制動装置70は、各車輪91に対応したホイールシリンダ81内の液圧を各別に調整することができる。すなわち、制動装置70によれば、回転体82に摩擦材83が押し付けられる力を車輪毎に調整することができ、車輪毎に付与する制動力の大きさを調整することができる。
【0012】
車両90は、駆動装置92を備えている。駆動装置92は、車両90の駆動輪に駆動力を出力する。駆動装置92は、たとえば内燃機関である。
車両90は、操舵装置93を備えている。操舵装置93は、車輪91のうち操舵輪の角度を変えることができる。車両90では、操舵装置93によって前輪の角度が変えられる。すなわち、車両90では、操舵輪は前輪である。操舵装置93には、操舵操作部材21が取り付けられている。操舵操作部材21は、車両90の運転者による操作が可能なステアリングホイールである。操舵操作部材21が操作されると、操舵操作部材21の操作角度に応じて操舵輪の角度が変えられ、車両90の進行方向が変更される。操舵装置93は、制御装置10によって作動されることで、操舵操作部材21の操作を伴うことなく操舵輪の角度を変えて車両90の進行方向を変更することができる。
【0013】
車両90は、外部情報取得装置40と、車両情報取得装置50と、運転者監視装置60と、を備えている。外部情報取得装置40、車両情報取得装置50および運転者監視装置60が取得した情報は、制御装置10に入力される。
【0014】
外部情報取得装置40は、車両90の周辺についての情報を取得する機能を有している。外部情報取得装置40は、車両90の周辺を撮像するカメラを備えている。外部情報取得装置40は、カメラによって撮像された画像を処理する情報処理部を備えている。たとえば、外部情報取得装置40は、撮像された画像を情報処理部で解析することによって、車両90の周辺に位置する障害物を認識する。外部情報取得装置40は、車両90の前方に位置する障害物に限らず、車両90の側方または車両90の後方に位置する障害物を認識することもできる。外部情報取得装置40は、取得した周辺情報を処理した結果として、当該障害物の大きさ、障害物と車両90との相対距離、および車両90を基点として障害物が位置する方向を制御装置10へ出力する。
【0015】
外部情報取得装置40は、車両90が走行している道路の形状を取得したり、車線を認識したりすることもできる。外部情報取得装置40は、車両90の進行方向に存在する交通信号機の表示を識別することもできる。外部情報取得装置40は、カメラ以外の装置として、ミリ波レーダー、LIDAR、またはソナー等を備えていてもよい。外部情報取得装置40は、複数の装置を組み合わせて車両90の周辺情報を取得してもよい。
【0016】
車両情報取得装置50は、車両90の走行状態を取得する機能を有している。車両情報取得装置50は、車両90の状態を検出する各種センサによって構成されている。車両情報取得装置50は、各種センサからの検出信号が入力される情報処理部を備えている。
【0017】
車両情報取得装置50を構成するセンサとして、車両90は、各車輪に対応した車輪速センサを備えている。車輪速センサからの検出信号に基づいて、車両90の各車輪の速度が導出される。各車輪の速度に基づいて、車両90の速度である車速が導出される。
【0018】
車両情報取得装置50を構成するセンサとして、車両90は、ヨーレートセンサを備えている。ヨーレートセンサからの検出信号に基づいて、車両90のヨーレートが導出される。車両情報取得装置50を構成するセンサとして、車両90は、加速度センサを備えている。加速度センサからの検出信号に基づいて、車両90の加速度が導出される。
【0019】
車両情報取得装置50を構成するセンサとして、車両90は、操舵操作部材21の操作を検出する操舵角検出センサを備えている。操舵角検出センサからの検出信号に基づいて、操舵操作部材21の操作角度が操舵角として導出される。車両90が直進する状態に対応した操舵操作部材21の位置を基準位置として、操舵操作部材21を基準位置よりも左に回転させたときの操舵角は、正の値として導出される。操舵操作部材21を基準位置よりも右に回転させたときの操舵角は、負の値として導出される。操舵操作部材21が基準位置にあるときの操舵角は、「0」として導出される。
【0020】
運転者監視装置60は、運転者の動作を検知することができる機能を有する。運転者監視装置60は、車両90の車室内に設置されているカメラを備えている。運転者監視装置60は、カメラによって撮像された画像を処理する情報処理部を備えている。運転者監視装置60は、カメラで撮像された運転者の画像を情報処理部で解析することによって、手および腕の動き、頭の動き、眼球の動き等を認識する。
【0021】
運転者監視装置60は、操舵操作部材21に取り付けられている接触センサを備えている。接触センサの一例は、静電容量センサである。静電容量の変化に基づいて運転者が操舵操作部材21に触れているか否かを検知することができる。接触センサとしては、圧力センサを用いることもできる。操舵操作部材21にかかる荷重によって、運転者が操舵操作部材21を握る強さを検出することができる。
【0022】
運転者監視装置60は、運転者の心拍を計測する心拍センサを備えている。運転者の心拍の変動に基づいて、自律神経の反応として運転者の緊張状態等を検出することができる。その他、運転者監視装置60は、マイクロホン等によって車室内の音を検出して運転者の監視に用いることもできる。
【0023】
制御装置10は、機能部としてリスク評価部11、操作予測部12、操舵方向予測部13および走行支援部14を備えている。
なお、制御装置10、外部情報取得装置40が有する情報処理部、車両情報取得装置50が有する情報処理部および運転者監視装置60が有する情報処理部は、以下(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備える。プロセッサは、CPU並びに、RAMおよびROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。(b)各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備える。専用のハードウェア回路は、たとえば、特定用途向け集積回路すなわちASIC(Application Specific Integrated Circuit)、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)等である。(c)各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行する専用のハードウェア回路と、を備える。
【0024】
リスク評価部11は、外部情報取得装置40から入力された情報および車両情報取得装置50から入力された情報に基づいて、車両90と車両90の周辺に位置する障害物とが接近することに起因する危険度を定量的に評価する。
【0025】
リスク評価部11は、周知の指標を導出して危険度の評価を行う。たとえば、リスク評価部11は、TTC(Time to Collision)、THW(Time Headway)またはKdb等を導出する。リスク評価部11は、導出した指標に応じて、たとえば、リスクR1~リスクR5の五段階で危険度を評価する。車両90と障害物とが接触する危険性の度合いが最も低い場合がリスクR1であり、危険性の度合いが最も高い場合がリスクR5である。各指標の値と危険度の段階との関係は、予め実験等によって導出されてリスク評価部11に記憶されている。たとえばTTCを指標にすると、TTCが「0」に近いほど段階評価が高くされて、危険度が高いと評価される。リスク評価部11は、一つの指標から危険度を評価してもよいし、複数の指標を組み合わせて危険度を評価することもできる。
【0026】
操作予測部12は、運転者監視装置60から入力された情報に基づいて、運転者が操舵操作部材21を操作するか否かを予測する。操作予測部12は、運転者が操舵操作部材21を操作する前兆に基づいて操作が行われることを予測する。たとえば、操舵操作部材21に手を触れていない状態から腕を動かして操舵操作部材21に手を触れる動作を運転者が行ったとすると、運転者は操舵操作部材21を操作する可能性がある。また、運転者が操舵操作部材21を握る力を大きくした場合にも、運転者は操舵操作部材21を操作する可能性がある。なお、運転者が操舵操作部材21に手を触れていても操舵操作部材21を握る力が所定値よりも小さい場合には、運転者には操舵操作部材21を操作する意思がないという予測をすることもできる。また、たとえば運転者の心拍数が上昇したとすると、車両90の進行方向を変更する必要性を運転者が感じ取る状況が発生した可能性がある。すなわち、運転者の心拍数が上昇したとすると、運転者は操舵操作部材21を操作する可能性がある。
【0027】
たとえば、操作予測部12は、運転者が操舵操作部材21を操作するか否かの予測を、教師データが与えられて機械学習された学習済みモデルを用いて行う。学習済みモデルは、操作予測部12に記憶されている。教師データでは、運転者が示す前兆に対する操作有無の結果が正解としてラベル付けされている。
【0028】
操作予測部12は、車両情報取得装置50から入力された情報として車速、操舵角等をさらに用いて、運転者が操舵操作部材21を操作するか否かの予測の精度を向上させることもできる。
【0029】
操舵方向予測部13は、外部情報取得装置40から入力された情報および運転者監視装置60から入力された情報に基づいて、操舵操作部材21を操作する可能性がある運転者による操舵の方向を予測する。たとえば、運転者の視線が車両90の進行方向よりも左側を向いている場合、運転者は左側への操舵を行う可能性がある。また、車両90と障害物との位置関係、および車両90が走行する道路の車幅等から、車両90と障害物との接触を避けることが可能な空間が車両90の進行する先に確保されていると判断できる場合、当該空間に向けて車両90を移動させるように運転者が操舵を行う可能性がある。なお、操舵方向予測部13では、入力される情報に基づいて操舵方向を予測できない場合には、操舵方向の予測が出力されない。
【0030】
たとえば、操舵方向予測部13は、運転者による操舵の方向の予測を、教師データが与えられて機械学習された学習済みモデルを用いて行う。学習済みモデルは、操舵方向予測部13に記憶されている。教師データでは、操舵方向が正解としてラベル付けされている。
【0031】
走行支援部14は、駆動装置92、操舵装置93、および制動装置70を制御する機能を備えている。走行支援部14は、車両90の操舵と車両90の加減速とを自動制御する運転支援制御を実施する。走行支援部14は、たとえば、運転支援制御の開始スイッチが運転者によってオンにされた場合に運転支援制御を開始することができる。
【0032】
走行支援部14は、運転支援制御の実施中に運転者によって操舵操作部材21が操作された場合に車両90の旋回を補助する旋回補助制御を実施する。旋回補助制御では、走行支援部14は、制動装置70を作動させて車輪91に制動力を付与することによって荷重を移動させる。走行支援部14は、荷重の移動によって車両90の旋回を補助する。
【0033】
走行支援部14は、旋回補助制御の開始よりも前に実施する制御として事前制御を実施する。走行支援部14は、事前加圧の要求に基づいて事前制御を実施する。詳しくは後述するが、走行支援部14は、事前制御では、制動装置70を作動させて回転体82と摩擦材83との間の隙間を詰めさせる。具体的には、走行支援部14は、ホイールシリンダ81内の液圧を高くすることによって、回転体82に近づくように摩擦材83を移動させることで、回転体82と摩擦材83との間の隙間を詰めさせる。
【0034】
図2を用いて、旋回補助制御が開始される際に制御装置10によって実行される処理の流れを説明する。本処理ルーチンは、所定の周期毎に繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まずステップS101では、制御装置10は、走行支援部14が運転支援制御を実施中であるか否かを判定する。運転支援制御を実施していない場合(S101:NO)、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、運転支援制御を実施中である場合(S101:YES)、制御装置10は、処理をステップS102に移行する。
【0035】
ステップS102では、制御装置10は、運転者による回避操作が行われているか否かを判定する。運転支援制御によって車両90が自動制御されている間に操舵操作部材21の操作が運転者によって行われることを回避操作という。操舵操作部材21の操作が行われたことは、操舵角の変化によって検知できる。回避操作が検知されない場合(S102:NO)、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、回避操作すなわち操舵操作部材21の操作を検知した場合(S102:YES)、制御装置10は、処理をステップS103に移行する。
【0036】
ステップS103では、制御装置10は、走行支援部14が行っている自動操舵を終了させる。その後、制御装置10は、処理をステップS104に移行する。
ステップS104では、制御装置10は、走行支援部14に旋回補助制御を開始させる。旋回補助制御を開始させると、制御装置10は、本処理ルーチンを終了する。
【0037】
続いて図3を用いて、事前制御が開始される際に制御装置10によって実行される処理の流れを説明する。本処理ルーチンは、所定の周期毎に繰り返し実行される。
本処理ルーチンが開始されると、まず、ステップS201において、制御装置10は、走行支援部14が運転支援制御を実施中であるか否かを判定する。運転支援制御を実施していない場合(S201:NO)、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、運転支援制御を実施中である場合(S201:YES)、制御装置10は、処理をステップS202に移行する。
【0038】
ステップS202では、制御装置10は、リスク評価部11によって高リスクが検知されているか否かを判定する。リスク評価部11は、危険度の評価がリスクR3以上であるときに高リスクであると判定する。すなわち、リスクR3が規定のしきい値である。高リスクが検知されていない場合(S202:NO)、すなわち危険度の評価がリスクR3未満である場合、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0039】
一方、高リスクが検知されている場合(S202:YES)、すなわち危険度の評価がリスクR3以上である場合、制御装置10は、処理をステップS203に移行する。
ステップS203では、制御装置10は、運転者による操作が行われるという予測が操作予測部12によってなされているか否かを判定する。操舵操作部材21の操作が行われないと予測されている場合(S203:NO)、制御装置10は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、操舵操作部材21の操作が行われることが予測される場合(S203:YES)、制御装置10は、処理をステップS204に移行する。
【0040】
ステップS204では、制御装置10は、操舵方向予測部13によって操舵方向が予測されているか否かを判定する。操舵方向の予測がされている場合(S204:YES)、制御装置10は、処理をステップS205に移行する。
【0041】
ステップS205では、制御装置10は、内輪となる車輪に対して事前加圧を実行するように走行支援部14に要求する。この結果、走行支援部14は、操舵方向予測部13によって予測されている操舵方向に操舵が行われる場合に内輪となる車輪を対象として、当該内輪となる車輪に対応するホイールシリンダ81内の液圧を高くするように、制動装置70を作動させる。たとえば、車両90を左に旋回させるような操舵が予測される場合には左前輪および左後輪に対して事前加圧が実行される。車両90を右に旋回させるような操舵が予測される場合には右前輪および右後輪に対して事前加圧が実行される。
【0042】
ステップS205の処理において事前加圧が要求されると、走行支援部14は、事前制御を開始して、内輪となる車輪に対応するホイールシリンダ81内の液圧を事前液圧PrePまで増加させる。事前液圧PrePは、摩擦材83が回転体82に接触して制動力が発生し始める値として、予め実験等によって導出された値である。制御装置10は、事前加圧を要求すると、本処理ルーチンを終了する。
【0043】
一方、ステップS204の処理において操舵方向の予測がされていない場合(S204:NO)、制御装置10は、処理をステップS206に移行する。
ステップS206では、制御装置10は、全車輪に対して事前加圧を実行するように走行支援部14に要求する。この結果、走行支援部14は、すべての車輪に対応するホイールシリンダ81内の液圧を高くするように、制動装置70を作動させる。このとき、走行支援部14は、事前制御を開始して、すべての車輪に対応するホイールシリンダ81内の液圧を事前液圧PrePよりも低い値まで増加させる。制御装置10は、事前加圧を要求すると、本処理ルーチンを終了する。
【0044】
このように、走行支援部14は、事前制御では、内輪となる車輪を対象として事前加圧を実行するときには、ホイールシリンダ81内の液圧を事前液圧PrePまで増加させる。走行支援部14は、すべての車輪を対象として事前加圧を実行するときには、ホイールシリンダ81内の液圧を事前液圧PrePよりも低い値まで増加させる。言い換えれば、走行支援部14は、操舵の方向が予測されている場合には、操舵の方向が予測されていない場合よりも回転体82に摩擦材83を強く押し付けさせる。
【0045】
本実施形態の作用および効果について説明する。
図4および図5では、左前輪におけるホイールシリンダ81内の液圧をFL液圧として、右前輪におけるホイールシリンダ81内の液圧をFR液圧としている。さらに、左後輪におけるホイールシリンダ81内の液圧をRL液圧として、右後輪におけるホイールシリンダ81内の液圧をRR液圧としている。
【0046】
図4を用いて、運転者による操作が予測され、且つ操舵方向も予測される場合について説明する。
図4に示す例では、タイミングt11よりも以前から運転支援制御が実施されている。タイミングt13において運転者による操舵操作部材21の操作が開始されている。タイミングt13までは、運転支援制御によって車両90が直進されており、図4の(d)に示すように操舵角が「0」とされている。運転支援制御によって車両90が走行している過程で、図4の(a)に示すようにタイミングt11において高リスクがリスク評価部11によって検知され(S202:YES)、リスクありと判定されている。
【0047】
タイミングt12において、図4の(b)に示すように運転者による操作が行われることが操作予測部12によって予測されている。さらに図4に示す例では、図4の(c)に示すように、タイミングt12において、左側への操舵が操舵方向予測部13によって予測されている。運転者による操作が予測され(S203:YES)、操舵方向が予測されることで(S204:YES)、図4の(e)に示すように、タイミングt12において、走行支援部14に対して事前加圧が要求される(S205)。この結果、走行支援部14は、事前制御を開始する。このとき、図4の(c)に示すように左側への操舵が予測されているため、走行支援部14は、内輪となる車輪、すなわち左前輪および左後輪を事前加圧の対象とする。
【0048】
タイミングt12において事前制御が開始されることによって、図4の(f)~(i)に実線で示すように、FL液圧およびRL液圧の目標値が事前液圧PrePまで増加される。この結果、左前輪および左後輪では、ホイールシリンダ81内の液圧が増加して、回転体82と摩擦材83との間の隙間が詰められる。FL液圧およびRL液圧の目標値は、タイミングt13まで事前液圧PrePに保持されている。
【0049】
タイミングt13において、運転者による操舵操作部材21の操作が開始されている。図4の(d)に示すように、操舵角が正の値として検出されている。すなわち、左側への操舵が行われている。運転支援制御の実施中の操舵操作、すなわち回避操作が検知されることで(S102:YES)、旋回補助制御が開始される(S104)。この結果、図4の(f)~(i)に実線で示すように、タイミングt13以降では、左前輪および左後輪におけるホイールシリンダ81内の液圧が徐々に増加される。このように走行支援部14によって旋回補助制御が開始されると、制動装置70が作動されて、内輪に制動力が付与される。これによって、車両90の荷重移動が行われる。
【0050】
このように制御装置10によれば、危険度の評価が高く運転者が操作を行うと予測されたときには、操舵操作部材21の操作が行われるよりも前に、回転体82と摩擦材83との隙間が予め詰められる。これによって、操舵操作部材21の操作が行われて旋回補助制御が開始されるときには、回転体82と摩擦材83との隙間が空いている場合と比較して、旋回補助制御が開始されてから制動力の付与が始まるまでの時間を短くすることができる。すなわち、旋回補助制御が開始されてから速やかに制動力を付与することができ、荷重移動の応答性を向上させることができる。
【0051】
さらに、制御装置10によれば、操舵方向が予測できるときには内輪となる車輪に対して事前加圧が行われる。これによって、外輪となる車輪に制動力が付与されることを抑制でき、操舵操作部材21の操作に伴って旋回補助制御が開始されるときに、車両90の旋回方向に即した荷重移動を行いやすくなる。
【0052】
また、制御装置10によれば、制動力が発生し始める事前液圧PrePまでホイールシリンダ81内の液圧を増加させておくことで、旋回補助制御が開始されるときに荷重移動をより早く行うことができる。
【0053】
さらに、制御装置10では、機械学習された学習済みモデルを用いて操作の予測および操舵方向の予測を行っている。このため、モデルの再学習によって予測の精度を向上させることができる。たとえば、運転者の癖や状況に応じた心拍数の変動を学習することによって予測の精度を向上させることができる。
【0054】
次に、図5を用いて、運転者による操作が予測されたときに操舵方向が予測されない場合について説明する。
図5に示す例は、タイミングt21よりも以前から運転支援制御が実施されている。タイミングt23において運転者による操舵操作部材21の操作が開始されている。タイミングt23までは、運転支援制御によって車両90が直進されており、図5の(d)に示すように操舵角が「0」とされている。運転支援制御によって車両90が走行している過程で、図5の(a)に示すようにタイミングt21において高リスクが検知されている(S202:YES)。
【0055】
タイミングt22において、図5の(b)に示すように運転者による操作が行われることが操作予測部12によって予測されている。このとき図5に示す例では、図5の(c)に示すように、操舵方向が予測されていない。運転者による操作が予測されることで(S203:YES)、図5の(e)に示すように、タイミングt12において、走行支援部14に対して事前加圧が要求される(S206)。この結果、走行支援部14は、事前制御を開始する。このとき、図5の(c)に示すように操舵方向が予測できていないため(S204:NO)、走行支援部14は、すべての車輪を事前加圧の対象とする。
【0056】
タイミングt22において事前制御が開始されることによって、図5の(f)~(i)に示すように、FL液圧、FR液圧、RL液圧およびRR液圧の目標値が増加される。このときFL液圧、FR液圧、RL液圧およびRR液圧の目標値は、事前液圧PrePよりも低い値とされる。また、各目標値は、すべて等しい値とされている。事前制御が実施される結果、すべての車輪において、ホイールシリンダ81内の液圧が増加して、回転体82と摩擦材83との間の隙間が詰められる。FL液圧、FR液圧、RL液圧およびRR液圧の目標値は、タイミングt23まで一定に保持されている。
【0057】
タイミングt23において、運転者による操舵操作部材21の操作が開始されている。図5の(d)に示すように、操舵角が正の値として検出されている。すなわち、左側への操舵が行われている。運転支援制御の実施中の操舵操作、すなわち回避操作が検知されることで(S102:YES)、旋回補助制御が開始される(S104)。この結果、図5の(f)~(i)に示すように、タイミングt23では、FL液圧およびRL液圧の目標値が事前液圧PrePと等しい値まで増大され、FR液圧およびRR液圧の目標値が「0」まで減圧されている。タイミングt23以降では、左前輪および左後輪におけるホイールシリンダ81内の液圧が徐々に増加される。このように走行支援部14によって旋回補助制御が開始されると、制動装置70が作動されて、内輪に制動力が付与される。これによって、車両90の荷重移動が行われる。
【0058】
このように、制御装置10によれば、運転者による操作が予測されつつも操舵方向が予測できていないときでも、操舵操作部材21の操作が行われるよりも前に、すべての車輪を対象として回転体82と摩擦材83との隙間を予め詰めることができる。これによって、左右のどちらに操舵が行われる場合でも、旋回補助制御が開始されてから速やかに制動力を付与することができ、荷重移動の応答性を向上させることができる。
【0059】
さらに、すべての車輪に対して事前加圧が行われる場合には、ホイールシリンダ81内の液圧の目標値が事前液圧PrePよりも低い値とされるため、外輪となる車輪に制動力が発生することを抑制でき、操舵操作部材21の操作に伴って旋回補助制御が開始されるときに、車両90の旋回方向に即した荷重移動を行いやすくなる。
【0060】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、操舵方向予測部13によって操舵方向が予測できないときには、全車輪に対して事前加圧を実行した。これに替えて、操舵方向を予測できない場合には、車輪91のうち車両90の進行方向において前方に位置する車輪に対して事前加圧を実行するようにしてもよい。たとえば、車両90が前進しているときには左右の前輪に事前加圧を実行することができる。こうした事前制御を実施したのちに旋回補助制御が開始された場合でも、旋回補助制御が開始されてから進行方向における前方側に荷重が移動するまでの時間を短くすることができる。すなわち、上記実施形態と同様に、荷重移動の応答性を向上させることができる。
【0061】
・上記実施形態では、操舵方向予測部13によって操舵方向が予測できるときには、内輪側の前輪および後輪を対象として事前加圧を実行した。内輪となる車輪のうち少なくとも一つの車輪において回転体82と摩擦材83との隙間を詰めておけば、旋回補助制御が開始されてからの荷重移動の応答性を向上させることができる。すなわち、事前制御によって回転体82と摩擦材83との隙間を詰める対象の車輪は、内輪となる車輪のうち少なくとも一つの車輪であればよい。
【0062】
・操舵方向予測部13によって操舵方向が予測できない場合にすべての車輪に事前加圧が実行されてから、運転者による操作が行われる前に操舵方向予測部13が操舵方向を予測した場合、内輪となる車輪におけるホイールシリンダ81内の液圧を増加させてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、操舵方向予測部13によって操舵方向が予測できる場合にはホイールシリンダ81内の液圧の目標値を事前液圧PrePとして、操舵方向が予測できない場合には事前液圧PrePよりも低い値を目標値とした。操舵方向を予測できるか否かにかかわらず同じ値をホイールシリンダ81内の液圧の目標値とすることもできる。また、操舵方向が予測できる場合でも事前液圧PrePよりも低い値を目標値としてもよい。
【0064】
・上記実施形態では、前輪および後輪に事前加圧を行う場合、ホイールシリンダ81内の液圧の目標値を前輪と後輪とで等しくしている。これに替えて、たとえば、車輪91のうち車両90の進行方向において前方に位置する車輪におけるホイールシリンダ81内の液圧の目標値を、後方に位置する車輪におけるホイールシリンダ81内の液圧の目標値よりも高くしてもよい。
【0065】
・操舵方向予測部13によって操舵方向を予測することは必須ではない。操舵方向の予測を行わない場合には、すべての車輪、または車両90の進行方向において前方に位置する車輪に対して事前加圧を実行すればよい。
【0066】
・走行支援部14によって事前制御が開始されてから規定の時間が経過しても運転者による操作が行われず、さらに危険度が低下した場合には、ホイールシリンダ81内の液圧を減少させてもよい。
【0067】
・走行支援部14は、事前制御において、制動装置70を作動させることに伴って発生しうる制動力によって増加する減速度を小さくするように、駆動装置92を作動させて駆動力を増大させてもよい。こうした構成によれば、事前制御の実施中に車両90が減速することを抑制できる。
【0068】
・上記実施形態では、旋回補助制御において、図4の(f)および図4の(h)に実線で示すようにホイールシリンダ81内の液圧を徐々に上昇させる例を示した。これに替えて、図4の(f)および図4の(h)に二点鎖線で示すように、液圧を一定に維持することもできる。旋回補助制御における液圧の増加のさせ方は、たとえば、危険度の高さに応じて変更することができる。また、旋回補助制御では、危険度が低下した場合に液圧を減少させてもよいし、危険度が低下した後だけでなく、ある閾値以上のヨーレートが発生した後に液圧を減少させてもよい。あるいは、液圧を所定時間保持した後に液圧を減少させることもできる。
【0069】
・上記実施形態では、リスク評価部11は、高リスクを検知するための危険度の段階としてリスクR1~リスクR5を用いた。これに替えて、リスク評価部11は、導出した指標の値を規定の判定値と比較することによって高リスクを検知することもできる。たとえば、TTCの逆数である1/TTCが規定の判定値以上であれば高リスクであると判定できる。規定の判定値は、実験等によって予め導出した値を設定する。このように判定を行い高リスクが検知された場合でも、運転者による操作が予測されたときに事前制御を実施すれば、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0070】
・上記実施形態では、リスク評価部11は、リスクR1~リスクR5の五段階で危険度を評価し、規定のしきい値をリスクR3とした。五段階に限らず段階分けを行ってもよいし、規定のしきい値がリスクR3に限定されるものでもない。
【0071】
・外部情報取得装置40が取得する情報は、上記実施形態に例示したものに限らない。たとえば、外部情報取得装置40は、ナビゲーション装置から得られる地図情報、およびGPS衛星から送信される情報の受信装置によって得られる自車位置を取得することもできる。また、外部情報取得装置40は、天候および気温等の気象情報を取得することもできる。
【0072】
・危険度の評価、操作の予測および操舵方向の予測を行うために入力される情報は、上記実施形態において例示したものに限らない。たとえば、地図情報、自車位置および気象情報等を用いてもよい。また、車両90が走行する道路の路面摩擦を導出して、路面摩擦を用いることもできる。
【0073】
・上記実施形態では、機械学習された学習済みモデルを用いて操作の予測を行った。これに限らず、たとえば、運転者の前兆動作と操作を行うか否かとの関係が記憶されたマップを用いた判定結果を予測としてもよい。また、操舵方向の予測についても、マップを用いた判定結果を予測としてもよい。
【0074】
・上記実施形態では、外部情報取得装置40、車両情報取得装置50および運転者監視装置60は、取得した情報を処理する情報処理部を備えている。各情報処理部に相当する機能の一部または全部を有する機能部を制御装置10が備えていてもよい。また、当該機能部は、制御装置10とは異なる制御装置であり制御装置10と情報の送受信が可能な制御装置に設けられていてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、制御装置10が適用される車両90は、四つの車輪を備えている。制御装置10が適用される車両の車輪の数は、四つに限られるものではない。
・上記実施形態では前輪操舵の車両90を例示しているが、制御装置10が適用される車両は、操舵輪が前輪であることは必須の構成ではない。
【0076】
・上記実施形態では、操舵操作部材21としてステアリングホイールを例示している。操舵操作部材21は、ステアリングホイールに限らない。たとえば、レバーによって操舵を行う車両にも制御装置10を適用することができる。
【0077】
・上記実施形態では、制動機構80としてディスクブレーキを例示した。制動機構としては、ディスクブレーキに限られるものではない。たとえば、回転体としてのドラムと摩擦材としてのシューとを備えるドラムブレーキを採用することもできる。
【0078】
・上記実施形態では、制御装置10が制御対象とする車両90の制動装置70として、ブレーキ液を用いて摩擦材83を回転体82に押し付けることで車輪91に制動力を付与する制動装置を例示している。制動装置としてはこれに限定されるものではない。たとえば、電動モータの駆動によって摩擦材を回転体に押し付けることで車輪に制動力を付与することのできる制動装置を採用してもよい。上記制動装置を採用する場合でも、旋回補助制御を開始するよりも前に回転体と摩擦材との隙間を予め詰めるように制動装置を作動させることで、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0079】
10…制御装置
11…リスク評価部
12…操作予測部
13…操舵方向予測部
14…走行支援部
21…操舵操作部材
70…制動装置
71…制動アクチュエータ
80…制動機構
81…ホイールシリンダ
82…回転体
83…摩擦材
90…車両
91…車輪
93…操舵装置
図1
図2
図3
図4
図5