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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115520
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】除去装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20220802BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B08B3/02 D
B26F3/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012146
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】笹原 学
(72)【発明者】
【氏名】小川 賢
(72)【発明者】
【氏名】舟川 幸弘
【テーマコード(参考)】
3B201
3C060
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB44
3B201BB45
3B201BB62
3B201BB90
3C060CA10
3C060CD03
3C060CE03
(57)【要約】
【課題】除去室内で作業者の安全性を確保した状態で、除去作業の自由度を高める除去装置を提供する。
【解決手段】高圧水を噴射する高圧ガン2と、内部にワークWが配置される除去室3と、高圧ガン2を除去室3に固定する旋回部4であって、除去室3に固定される第1のケーシング4bと、第1のケーシング4b内に配置され、高圧ガン2を挿通する球状部4aと、を有する旋回部4と、を有する、除去装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水を噴射する高圧ガンと、
内部にワークが配置される除去室と、
前記高圧ガンを前記除去室に固定する旋回部であって、
前記除去室に固定される第1のケーシングと、
前記第1のケーシング内に配置され、前記高圧ガンを挿通する球状部と、
を有する旋回部と、
を有する、除去装置。
【請求項2】
前記旋回部を第1方向に移動するX軸移動部と、
前記旋回部を前記第1方向と直交する第2方向に移動するY軸移動部と、
を更に有する、請求項1に記載の除去装置。
【請求項3】
前記第1のケーシングは、外側溝を有し、
前記旋回部は、前記外側溝と嵌合可能な内側溝を有する第2のケーシングを有する、
請求項1又は2に記載の除去装置。
【請求項4】
前記旋回部は、前記高圧ガンの位置決めおよび角度決めを行なう、請求項1~3のいずれかに記載の除去装置。
【請求項5】
前記除去室内に、前記ワークを回転させる回転テーブルを更に有する、
請求項1~4のいずれかに記載の除去装置。
【請求項6】
前記除去室は、前記ワークを洗浄した後の排水を外部に排出するための排水口を有し、
前記排水口までの前記排水の流れを誘導する排水角度調整台を更に有する、
請求項1~5のいずれかに記載の除去装置。
【請求項7】
前記排水口に接続され、前記排水を外部に排出する排出部であって、
前記排水内の粒子を分離するフィルタと、
前記排水を貯留するタンクと、
を有する排出部を更に有する、
請求項6に記載の除去装置。
【請求項8】
前記除去室は、
前方除去室と、
前記前方除去室の後方に位置する後方除去室と、
前記前方除去室と前記後方除去室の開閉を行なう除去室開閉部と、を有する、
請求項1~7のいずれかに記載の除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去室内で高圧ガンを用いてワークの洗浄や除去を行なうための除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧ガンを用いて、ワークを洗浄、剥離、切断、除去等(総称として、除去)する場合、屋外等の周囲が安全な環境下で、30~200MPaの高圧水をワークに噴射する方法が一般的であった。
また、大規模な建設現場等の室内で大型部品の除去を行なう場合や、有害物質を含んだ部品を切断する場合等、ワークを囲った状態で除去が行われていた。
【0003】
例えば、特開平9―206706号公報(以下、「特許文献1」)に記載の超高圧ガンは、超高圧洗浄機用の囲い式ブースを用いる。囲い式ブースは、天井から吸気ファンで外気を送り、床下から排気ファンで空気と洗浄および剥離作業で発生する蒸気を吸引するとともに、洗浄および剥離作業時に発生する噴射排水、油分、塗料片等の汚染物を床下の分離槽に封じ込む。
【0004】
また、2011-5666号公報(以下、「特許文献2」)に記載の除去装置は、3Dプリンタで造形された造形物からサポート材を除去する。この除去装置では、処理室の中に3Dプリンタにより造形された造形物を入れ、造形物に付着したサポート材を、ウォータージェットノズルとしてのスプレーノズルとジェットノズルの使い分けにより除去する。
【0005】
また、2002-172596号公報(以下、「特許文献3」)に記載の切断処理方法は、PCB等の有害物質を内蔵した変圧器やドラム缶や装置や設備を大きなピットに入れ、有害物質が外部に流出しないようにして、高圧水切断装置から噴射される高圧水で切断する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の超高圧ガンでは、超高圧洗浄機用の囲い式ブース内で洗浄や剥離作業を行う。作業者の方向に超高圧ガンが向かないように、旋回角度や首振り角度を規制できる治具を有するものの、作業者が超高圧ガンを保持した状態で洗浄や剥離作業を行なうため、作業者に対する更なる安全性が求められる。
【0007】
特許文献2に記載の除去装置では、処理室内において、高圧水をノズルから噴射するものの、造形物のサポート材を除去するために、どのようにリアルタイムでノズルの位置を調整するか等、詳細な動きについては、改善の余地がある。
【0008】
特許文献3に記載の切断処理方法では、ピット内で高圧水を用いて切断を行なうが、どのようにリアルタイムでノズルの位置を調整するか等、詳細な動きについては、改善の余地がある。
つまり、特許文献2および特許文献3においては、より一層除去の自由度を高めるための方法の開発が期待されていた。また、完全自動化を目的とした装置であれば、洗浄室内にノズルを配置して、ノズルの位置を制御することで、洗浄効率の向上を実現する。しかし、完全自動化を検討するとなると装置が複雑になり、費用も要する。そのため、高圧ガンを手動で利用するものの、半装置化することによって、機能性を高めることが求められていた。
【0009】
本発明は、除去室内で作業者の安全性を確保した状態で、除去作業の自由度を高める除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の除去装置は、
高圧水を噴射する高圧ガンと、
内部にワークが配置される除去室と、
前記高圧ガンを前記除去室に固定する旋回部であって、
前記除去室に固定される第1のケーシングと、
前記第1のケーシング内に配置され、前記高圧ガンを挿通する球状部と、
を有する旋回部と、
を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の除去装置によれば、除去室内で作業者の安全性を確保した状態で、除去作業の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の除去装置を示す斜視図
図2】実施形態の除去装置を示す側方断面図
図3】実施形態の除去装置の旋回部の詳細を示す側方断面図
図4】別の実施形態の除去装置を示す斜視図
図5】実施形態の除去装置の排水部の詳細を示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0014】
(除去装置の構成)
本実施形態の除去装置1は、除去室3内にワークWを配置した状態で、高圧ガン2を位置決めし、ワークWを洗浄、剥離、切断、除去等する。除去装置1は、高圧ガン2と、除去室3と、旋回部4とを有する。
【0015】
高圧ガン2は、高圧水供給源(ポンプ)Pから供給される高圧水をノズル2aから噴射する。高圧ガン2は、単一または複数のノズル2aを有する。ノズル2aは、単一または複数の噴射孔を有するものでもよい。ノズル2aは、単一または複数のスリット状の噴射孔を有してもよい。また、ノズル2aは、直線形状または湾曲形状でもよい。
【0016】
除去室3には、ワークWが配置される。除去室3は、高圧ガン2でワークWを洗浄するための除去空間である。除去室3は、箱型であり、ワークWを四方から囲む。除去室3は、図1に示すように、扉3aを有する。扉3aを開放した状態で、除去室3へワークWを出し入れできる。
【0017】
また、図4に示すように、別の実施形態の除去室3は、前方除去室3dと後方除去室3eに分割可能である。これにより、比較的に大きなワークWの出し入れが可能となる。前方除去室3dは、除去室3の前方部位である。後方除去室3eは、除去室3の後方部位である。また、前方除去室3dと後方除去室3eは、除去室開閉部3cを介して開閉する。
【0018】
旋回部4は、図3に示すように、球状部4aと、第1のケーシング4bと、第2のケーシング4cと、を有する。球状部4aは、球状の部位であり、一部または全部がケーシング(第1のケーシング4b、第2のケーシング4c)内に配置される。旋回部4には、高圧ガン2を挿通可能である。旋回部4は、例えば、市販のロータリージョイントである。
球状部4aに高圧ガン2を挿通した状態で、高圧ガン2を上下左右前後方向に移動させることで、高圧ガン2と球状部4aが一緒に旋回し、高圧水の噴射方向、噴射角度、噴射距離等を調整する。
【0019】
第1のケーシング4bは、外側溝4b1を有する。第2のケーシング4cは、内側溝4c1を有する。ハンドル4eの旋回によって、外側溝4b1と内側溝4c1が篏合し、球状部4aの位置が固定される。外側溝4b1および内側溝4c1は、それぞれ第1のケーシング4bおよび第2のケーシング4cの一部に形成することや、全周に亘って形成することができるが、球状部4aの位置を固定するための篏合量に応じて選択する。
また、ハンドル4eを逆に旋回することによって、球状部4aが旋回可能に開放する。
高圧ガン2からの高圧水の噴射位置を変更する場合、高圧ガン2の向きを変えることによって、球状部4aが連動して旋回する。これにより、多様な位置決めが可能となり、除去の自由度が高まる。
第1のケーシング4bと第2のケーシング4cは、球状部4aを囲い込む構造であればよく、多角形状、球形状でもよい。
【0020】
また、別の実施例としては、ケーシングを第1のケーシング4bと第2のケーシング4cの2分割ではなく、3分割、4分割のケーシングとして、より細かな位置決めに応用してもよい。
【0021】
また、ハンドル4eは、図3のように第2のケーシング4cの側面に配置することに限られず、第2のケーシング4cの前面に配置することや第2のケーシング4cに斜めに配置してもよい。
【0022】
球状部4aの挿通孔内面とノズル2aの筒状導管の間に、ブッシュ4fを配置し、固定部4dで連結する。これにより、球状部4aが固定される際に、ノズル2aの筒状導管が傷つくことが抑制される。なお、ブッシュ4fをより安定的に固定するために、別途シール部材を1か所または複数個所に配置してもよい。
【0023】
旋回部4は、除去室3の外部の前面に配置される。これによって、除去室3内のスペースを確保できるとともに、作業者が旋回部4を自由に調整できる。
また、除去室3は、前面に、X軸移動部5とY軸移動部6を有する。これによって、旋回部4は、XY方向(上下左右方向)に移動可能となる。
X軸移動部5は、除去室3の前面の左右のレール3bに固定される。X軸移動部5は、旋回部4をX軸方向(左右方向)に移動する。X軸移動部5は、例えば、スライド機構、ジャバラ機構、シリンダ機構等である。Y軸移動部6は、除去室3の前面の上下のレール3bの上下に固定される。Y軸移動部6は、旋回部4をY軸方向(上下方向)に移動する。
【0024】
除去室3内には、ワークWを回転させる回転テーブル7が配置される。これにより、ワークWを回転させた状態で除去を行なうことや、除去対象箇所に対して、順に除去を行なうことができる。回転テーブル7は、中心に回転軸を有する。回転テーブル7の回転軸をモータM等の駆動装置で回転させることで、ワークWが回転する。
【0025】
ワークWの洗浄、剥離、切断、除去等を行なった後の排水を除去するために、除去室3は、排水口3fを有する。図4図5に示すように、除去室3の外部には、排水部9が配置される。排水口3fから排出される排水は、排水部9のフィルタ9aで大きな粒子を分離され、一次的にタンク9bで貯留される。その後、排水は、配管9cを介して外部に排出される。これにより、クリーンな排水処理を行なわれる。
【0026】
除去室3には、排水角度調整台8が配置される。排水角度調整台8により、除去室3内の排水がより効率的に排出される。排水角度調整台8と連結する排水角度調整部8aを調整することによって、排水角度調整台8の角度を変更する。排水口3f側に下降するように排水角度調整台8の角度を調整することで、排水が排水口3fに流れやすくなる。
【0027】
回転テーブル7と排水角度調整台8は、テーブル支持部7aを有する。テーブル支持部7aは、回転テーブル7を水平に保つ。これにより、排水角度調整台8の傾斜によりワークWやワークWを固定する回転テーブル7も連動して傾斜することを防止する。
【0028】
次に、本実施形態の洗浄工程について説明する。
ワークWの洗浄、剥離、切断、除去等を行う場合、まず、作業者が、除去室3内にワークWを固定する。除去室3の扉3aが閉じた状態であることを確認する。
高圧水供給源(ポンプ)Pを起動し、高圧ガン2から高圧水を噴射できる状態にする。
旋回部4による旋回とX軸移動部5とY軸移動部6の上下左右方向の調整を行ない、ワークWの除去対象箇所に高圧ガン2のノズル2aの先端を配置する。
高圧ガン2から高圧水をワークWに噴射し、ワークWの除去を行なう。高圧水の圧力は、例えば、30~300MPa程度である。
【0029】
また、ワークWの初期の固定位置から、回転テーブル7を回転または排水角度調整台8を傾斜させることによって、ワークWの固定位置を変更することで、異なる部位に対して除去を行なう。ワークWの部位によって、衝撃力に強い箇所や弱い箇所があることも想定できるため、適宜、作業者が高圧水の圧力を調整しながら除去を完了させる。
【0030】
ワークWの除去の最中や作業完了後に、除去室3内の下部に排水が溜まらないように、排水口3fからフィルタ9aを介して清浄度を確保したうえで、外部に排水を排出する。
【0031】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 除去装置
2 高圧ガン
3 除去室
3a 扉
3b レール
3c 除去室開閉部
3d 前方除去室
3e 後方除去室
3f 排水口
4 旋回部
4a 球状部
4b 第1のケーシング
4b1 外側溝
4c 第2のケーシング
4c1 内側溝
4d 固定部
4e ハンドル
4f ブッシュ
5 X軸移動部
6 Y軸移動部
7 回転テーブル
7a テーブル支持部
8 排水角度調整台
8a 排水角度調整部
9 排水部
9a フィルタ
9b タンク
9c 配管
W ワーク
P 高圧水供給源(ポンプ)
図1
図2
図3
図4
図5