(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115523
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】エンジンハンガー
(51)【国際特許分類】
F02B 77/00 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
F02B77/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012152
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅弥
(57)【要約】
【課題】ボルト着脱作業時の安全性を向上する。
【解決手段】吊具を用いてエンジンを吊り上げるためにエンジンに取り付けられるエンジンハンガー10は、ハンガー本体12と、ハンガー本体に設けられ吊具が引っ掛けられる係止部13と、ハンガー本体に設けられ、エンジンハンガーを取り付けるためのボルト11が挿通されるボルト挿通穴と、ハンガー本体に設けられ、ボルトの着脱時にボルトを回転させる回転工具30に当接して回転工具に作用する回転反力に抵抗する抵抗部材26とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊具を用いてエンジンを吊り上げるために前記エンジンに取り付けられるエンジンハンガーであって、
ハンガー本体と、
前記ハンガー本体に設けられ、前記吊具が引っ掛けられる係止部と、
前記ハンガー本体に設けられ、前記エンジンハンガーを取り付けるためのボルトが挿通されるボルト挿通穴と、
前記ハンガー本体に設けられ、前記ボルトの着脱時に前記ボルトを回転させる回転工具に当接して前記回転工具に作用する回転反力に抵抗する抵抗部材と、
を備えることを特徴とするエンジンハンガー。
【請求項2】
前記抵抗部材は、前記ハンガー本体の表面部から突出する
請求項1に記載のエンジンハンガー。
【請求項3】
前記抵抗部材の前記表面部からの突出長さは、前記ボルトの前記エンジンへの取付長さより大きい
請求項2に記載のエンジンハンガー。
【請求項4】
前記ハンガー本体に固定される前記抵抗部材の基端部の外径は、その先端部の外径以上である
請求項1~3のいずれか一項に記載のエンジンハンガー。
【請求項5】
前記抵抗部材は、軸状に形成される
請求項1~4のいずれか一項に記載のエンジンハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はエンジンハンガーに係り、特に、吊具を用いてエンジンを吊り上げるためにエンジンに取り付けられるエンジンハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(内燃機関)には、エンジンハンガーがボルトにより取り付けられる。エンジンを搬送する際には、吊具がエンジンハンガーに引っ掛けられ、吊具でエンジンハンガーを引き上げることによりエンジンが吊り上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンハンガーをエンジンに着脱するとき、インパクトレンチ等の回転工具が用いられる。すなわち、回転工具でボルトを回転させて締め付けたり緩めたりすることで、エンジンハンガーをエンジンに対し取り付けたり取り外したりする。
【0005】
しかし、ボルトの締め付け終了時、または緩め開始時に、回転工具には強力な回転反力が付加される。この回転反力に耐えきれず作業者が回転工具を手放してしまい、回転工具が飛ばされる虞がある。
【0006】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、ボルト着脱作業時の安全性を向上できるエンジンハンガーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、
吊具を用いてエンジンを吊り上げるために前記エンジンに取り付けられるエンジンハンガーであって、
ハンガー本体と、
前記ハンガー本体に設けられ、前記吊具が引っ掛けられる係止部と、
前記ハンガー本体に設けられ、前記エンジンハンガーを取り付けるためのボルトが挿通されるボルト挿通穴と、
前記ハンガー本体に設けられ、前記ボルトの着脱時に前記ボルトを回転させる回転工具に当接して前記回転工具に作用する回転反力に抵抗する抵抗部材と、
を備えることを特徴とするエンジンハンガーが提供される。
【0008】
好ましくは、前記抵抗部材は、前記ハンガー本体の表面部から突出する。
【0009】
好ましくは、前記抵抗部材の前記表面部からの突出長さは、前記ボルトの前記エンジンへの取付長さより大きい。
【0010】
好ましくは、前記ハンガー本体に固定される前記抵抗部材の基端部の外径は、その先端部の外径以上である。
【0011】
好ましくは、前記抵抗部材は、軸状に形成される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ボルト着脱作業時の安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】エンジンの端部付近の構造を示す概略側面図である。
【
図2】取付状態のエンジンハンガーを示す斜視図である。
【
図4】エンジンハンガーの取り外し時に左側のボルトを緩めるときの様子を示す斜視図である。
【
図5】エンジンハンガーの取り外し時に右側のボルトを緩めるときの様子を示す斜視図である。
【
図6】第1変形例のエンジンハンガーの取り付け時に左側のボルトを締め付けるときの様子を示す斜視図である。
【
図7】第1変形例のエンジンハンガーの取り付け時に右側のボルトを締め付けるときの様子を示す斜視図である。
【
図8】取付状態にある第2変形例のエンジンハンガーを示す
図2のIII-III断面相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0015】
図1は、本実施形態に係るエンジン(内燃機関)の端部付近の構造を示す。本実施形態のエンジン1は、車両に縦置き状態で搭載されたディーゼルエンジンであり、車両(図示せず)はトラックである。但しエンジンの種類、形式、用途等に特に限定はなく、例えばエンジンは天然ガスエンジンもしくはガソリンエンジンであってもよい。エンジンは、車両以外の移動体、例えば船舶、建設機械、または産業機械に搭載されたものであってもよい。またエンジンは、移動体に搭載されたものでなくてもよく、定置式のものであってもよい。
【0016】
便宜上、前後左右上下の各方向を図示の通り定める。これら各方向は車両の各方向と概ね一致する。また、クランクシャフト(図示せず)の中心(クランク中心という)を符号Cで示す。以下特に断らない限り、クランク中心Cを基準とした軸方向、半径方向および周方向を単に軸方向、半径方向および周方向というものとする。軸方向の一端側(図中右側)が前、他端側(図中左側)が後である。
【0017】
エンジン1の前方にエンジン冷却用ファン3が近接して設けられる。エンジン1とファン3の間にはファンクラッチ(もしくはファンカップリング)4が介設されている。エンジン1の回転駆動力はクランクシャフトからファンクラッチ4に伝達され、ファンクラッチ4からファン3に選択的に伝達される。
【0018】
本実施形態では、ファンクラッチ4の入力部である入力軸4Aが、クランクシャフトに直接的かつ同軸に取り付けられ、その入力軸4Aがクランクシャフトによって直接的に回転駆動される。しかしながら、ファンクラッチ4とクランクシャフトの間に別の回転体(プーリ、ギア等)を設け、この回転体を介してクランクシャフトからファンクラッチ4に駆動力を伝達してもよい。本実施形態では、ファン3とファンクラッチ4が、エンジン1の前方に、クランクシャフトと同軸に配置されている。ファン3は、ファンクラッチ4の出力部に周方向等間隔で複数設けられている。
【0019】
ファン3およびファンクラッチ4の前方にはラジエータ5が配置される。ファン3はその回転時に前方の空気を吸引する。これにより前方から後方に向かう空気流Fが生成され、この空気流Fがラジエータ5を通過してエンジン冷却水を冷却すると共に、ファン後方のエンジン1を冷却する。なお、車両が走行したときには同方向の走行風が空気流Fに含まれるようになる。
【0020】
ラジエータ5とファン3を全周取り囲むシュラウド6が、ラジエータ通過後の空気流Fをファン3に効率よく案内する。
【0021】
ホイスト等の吊具(図示せず)を用いてエンジン1を吊り上げるため、エンジン1にはエンジンハンガー10がボルト11により着脱可能に取り付けられる。本実施形態のエンジンハンガー10は、ファン3およびシュラウド6の直後にあるエンジン1との間の狭い隙間7において、エンジン1(特にシリンダヘッド)の前面部2に取り付けられる。
【0022】
図2および
図3にエンジンハンガー10の取付部の詳細を示す。エンジンハンガー10は、ハンガー本体12と、ハンガー本体12に設けられ吊具が引っ掛けられる係止部13と、ハンガー本体12に設けられボルト11が挿通されるボルト挿通穴25と、ハンガー本体12に設けられた抵抗部材26とを備える。抵抗部材26は、ボルト11の着脱時にボルト11を回転させる回転工具(後述)に当接して回転工具に作用する回転反力に抵抗するように構成されている。
【0023】
ハンガー本体12は、比較的大きい厚さtを有する金属板により形成される。ハンガー本体12は、上下左右方向に延びる略三角形の板状とされ、前方を向く表面部すなわち前面部14と、後方を向く裏面部すなわち後面部15とを有する。
【0024】
ハンガー本体12の上端部には、縦長長円状の係止穴16が設けられる。この係止穴16の上方に位置するハンガー本体12の部分によって係止部13が形成される。なお、係止部13の構成はこれに限らず、例えばハンガー本体12の上端部にフック状の係止部13を形成してもよいし、係止穴16の形状を円形等に変更してもよい。
【0025】
本実施形態ではエンジンハンガー10が同一サイズの複数(具体的には二つ)のボルト11により取り付けられる。これに対応して、ボルト挿通穴25も、同一サイズのものが複数(具体的には二つ)設けられる。ボルト挿通穴25は、ハンガー本体12を前面部14から後面部15まで貫通する円形の貫通穴である。
図2から分かるように二つのボルト挿通穴25は、係止穴16よりも低く、かつ互いに同一の高さ位置に位置され、左右方向に横並びで配置される。C1,C2は、左右のボルト挿通穴25の中心軸すなわち穴軸を示す。これら穴軸C1,C2は互いに平行であり、図示するような取付状態にあるとき前後方向に延びている。
【0026】
ボルト11は、外周部に雄ネジ17が形成された軸部18と、軸部18の一端に形成され軸部18より大径の頭部19とを有する。頭部19は、六角形の外形と、一体のワッシャとを有し、その裏面部が、ハンガー本体12の前面部14に当接する着座面20となっている。
【0027】
エンジン1の前面部2に、ボルト11の雄ネジ17が螺合される同一サイズの雌ネジ穴21が複数(具体的には二つ)設けられる。図示するような取付状態にあるとき、ボルト11と雌ネジ穴21はボルト挿通穴25の穴軸C1,C2に同軸とされる。
【0028】
ボルト11は、ボルト挿通穴25に前方から挿入された後、雌ネジ穴21に螺合され、締め付けられる。締め付けが完了すると、ボルト11の着座面20がハンガー本体12の前面部14に密着し、ハンガー本体12を後方のエンジン前面部2に押し付ける。これによりハンガー本体12の後面部15がエンジン前面部2に密着した状態で、エンジンハンガー10がエンジン1に取り付けられる。このとき、エンジンハンガー10はエンジン前面部2より上方に突出し、この突出部分に係止穴16と係止部13が位置される。よって吊具を係止穴16に差し込んで係止部13に引っ掛けることが可能である。
【0029】
本実施形態の抵抗部材26は、細長い軸状に形成され、具体的には、取付状態において前後方向に延びる円柱状のボス、シャフトもしくはピンにより形成されている。これにより抵抗部材26を、汎用の軸材を用いて容易に形成できる。抵抗部材26の外径dは一定である。抵抗部材26は、ハンガー本体12の前面部14から前方に向かって穴軸C1方向に突出する。
【0030】
抵抗部材26の後側の基端部22は、ハンガー本体12に固定される。本実施形態の場合、ハンガー本体12の穴23に抵抗部材26の基端部22が圧入されることによって、抵抗部材26の基端部22が固定される。しかし、固定方法は任意であり、例えばネジ止め、ボルト止め、溶接等によって固定してもよい。
【0031】
抵抗部材26の前側の先端部24は、自由端であり、シュラウド6の後端部に向けられる。
【0032】
抵抗部材26は、二つのボルト挿通穴25より高く、係止穴16より僅かに低い高さ位置に位置される。また抵抗部材26は、ボルト挿通穴25よりも右側にオフセットされている。具体的には抵抗部材26は、右側のボルト挿通穴25よりも僅かに右側にオフセットされている。また抵抗部材26は、係止穴16よりも左側にオフセットされている。
【0033】
ハンガー本体12の前面部14からの抵抗部材26の突出長さL1は、ボルト11のエンジン1への取付長さL2より大きい。その理由は後述する。ここで取付長さL2とは、取付状態において雌ネジ穴21に螺合されている軸部18の長さをいう。本実施形態の場合、取付長さL2は、ボルト11の軸部18の長さL3からハンガー本体12の厚さtを減じた長さ(L3-t)に等しい。また本実施形態の場合、抵抗部材26の突出長さL1は、ボルト11の軸部18の長さL2より大きい。
【0034】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0035】
図4は、取付状態にあるエンジンハンガー10を取り外すときの様子を示す。この際、仮想線で示す回転工具30が用いられる。回転工具30は、手動ではなく外部動力を使ってボルト11を回転させる工具である。本実施形態の回転工具30は、空圧でソケット(図示せず)を回転させ、このソケットに嵌め入れられたボルト11を回転させるインパクトレンチである。周知のように、回転工具30に一定以上の回転反力(逆トルク)が作用するとソケットの回転が停止され、回転工具30には打撃による振動が発生する。
【0036】
本実施形態の抵抗部材26は、エンジンハンガー10を取り外すときのボルト11の緩め開始時に、回転工具30に当接して回転工具30に作用する回転反力に抵抗するよう構成および配置されている。
【0037】
詳しくは、エンジンハンガー10を取り外すとき、
図4に示すように、回転工具30の先端部が、シュラウド6とエンジン1の間の狭い隙間7に、右斜め上から挿入される。そして一方のボルト11、図示例では左側のボルト11の頭部19に、回転工具30のソケットが前方から嵌合される。
【0038】
この後、回転工具30がオフのまま、前方から見て時計回りの回転方向(これを正回転方向という)Aに手動で僅かに回転され、回転工具30の正回転方向A側の面31が抵抗部材26に当接される。
【0039】
この後、回転工具30がオンされる。するとソケットは回転工具30に対し、前方から見て反時計回りの回転方向(これを逆回転方向という)B、すなわちボルト11を緩める方向に、回転しようとする。
【0040】
最初はボルト11の締まりが硬いので、ボルト11が回らず、回転工具30には、これを正回転方向Aに回転させようとする正回転方向Aの回転反力が作用する。しかも回転工具30がインパクトレンチなので、回転反力は間欠的かつ衝撃的に作用する。
【0041】
しかし、抵抗部材26がその回転反力に抵抗し、回転工具30の正回転方向Aの回転を阻止する。
【0042】
これにより、ボルト11の緩め開始時に回転工具30に作用する回転反力によって作業者が回転工具を手放してしまい、回転工具30が飛ばされることを抑制できる。そして、ボルト11の取り外し作業時の安全性を向上できる。
【0043】
この後、ソケットの回転を継続すると、やがてボルト11が緩んで逆回転方向Bに回転される。そしてボルト11の軸部18が雌ネジ穴21から抜けると、ボルト11の取り外しが実質的に終了する。
【0044】
ボルト11の取り外しの開始時から終了時までの間に、ボルト11の位置は、
図3に仮想線で示すように、後方から前方に向かって、取付長さL2だけ移動される。これに伴って回転工具30の位置も、後方から前方に向かって、取付長さL2だけ移動される。しかし、抵抗部材26の突出長さL1は、取付長さL2より大きくされている。そのため、取り外しの開始時から終了時まで、回転工具30を常に抵抗部材26に当接させ続けることができ、回転工具30の向きを一定に保つと共に安定化させ、作業を容易にできる。
【0045】
また本実施形態の場合、抵抗部材26の突出長さL1がボルト11の軸部18の長さL3より大きくされるので、軸部18の長さL2を突出長さL1と比較することでボルト11が正しいか否かを正確に判断でき、組立時等におけるボルト11の管理を容易に行うことができる。
【0046】
図5には、他方の右側のボルト11を取り外すときの様子を示す。このときにも、回転工具30の先端部が隙間7に右斜め上から挿入され、右側のボルト11の頭部19に回転工具30のソケットが嵌合される。
【0047】
この後、回転工具30が抵抗部材26に当接され、回転工具30が右側のボルト11のときより立った斜めの状態とされて、回転工具30がオンされる。すると前記同様、抵抗部材26が、回転工具30に作用する正回転方向Aの回転反力に抵抗し、回転工具30の回転を阻止する。
【0048】
よって、ボルト11の緩め開始時に作業者が回転工具を手放し、回転工具30が飛ばされることを抑制できる。そして、ボルト11の取り外し作業時の安全性を向上できる。
【0049】
次に、変形例を説明する。なお前記基本実施形態と同様の部分については図中同一符号を付して説明を割愛し、以下、基本実施形態との相違点を主に説明する。
【0050】
(第1変形例)
図6および
図7は、ボルト11の取付時に回転反力に抵抗するよう構成された第1変形例の抵抗部材26を示す。
図6は左側ボルト11の取付時、
図7は右側ボルト11の取付時の様子を示す。
【0051】
抵抗部材26の位置は、基本実施形態のときよりも、穴軸C1またはC2周りの逆回転方向B側の位置に移動される。抵抗部材26は、依然として、二つのボルト挿通穴25より高く、係止穴16より低い高さ位置に位置される。しかし、抵抗部材26の高さ位置は、基本実施形態のときよりも下げられる。また抵抗部材26は、基本実施形態のときよりも大きく、右側のボルト挿通穴25に対し右側にオフセットされる。また抵抗部材26は、係止穴16よりも右側にオフセットされている。
【0052】
本変形例の抵抗部材26は、エンジンハンガー10を取り付けるときのボルト11の締め付け終了時に、回転工具30に当接して回転工具30に作用する回転反力に抵抗するよう構成および配置されている。
【0053】
エンジンハンガー10を取り付けるとき、まず左側と右側のボルト11が手で仮締めされる。そしてその後、一方のボルト11、例えば
図6に示すように左側のボルト11が、回転工具30を用いて本締めされる。
【0054】
回転工具30の先端部が隙間7に右斜め上から挿入され、ボルト11の頭部19に回転工具30のソケットが嵌合される。
【0055】
この後、回転工具30がオフのまま手動で逆回転方向Bに僅かに回転され、回転工具30の逆回転方向B側の面32(
図7参照)が抵抗部材26に当接される。
【0056】
この後、回転工具30がオンされる。するとソケットは回転工具30に対し正回転方向Aに回転し、ボルト11を締め付ける。
【0057】
ボルト11の締め付けが終わると、ボルト11が回らなくなり、回転工具30には、これを逆回転方向Bに回転させようとする逆回転方向Bの回転反力が作用する。
【0058】
すると、抵抗部材26がその回転反力に抵抗し、回転工具30の逆回転方向Bの回転を阻止する。
【0059】
これにより、ボルト11の締め付け終了時に作業者が回転工具30を手放してしまい、回転工具30が飛ばされることを抑制できる。そして、ボルト11の取り付け作業時の安全性を向上できる。
【0060】
本変形例の場合、ボルト11の取り付け開始時から終了時までの間の回転工具30の移動量は、基本実施形態のときより少ない場合がある。よって抵抗部材26の突出長さL1を、基本実施形態のときより短くしてもよい。
【0061】
図7に示す右側ボルト11の取付時も、左側ボルト11の取付時と同様なので、説明を割愛する。
【0062】
(第2変形例)
図8には、第2変形例の抵抗部材26を示す。この抵抗部材26では、基端部22の外径d1が先端部24の外径d2より大きくされる。すなわち、抵抗部材26の基端部22は、外径d2の残余部分よりも拡径され、ハンガー本体12に固定される。抵抗部材26の基端部22は、ハンガー本体12の穴23に圧入固定される。先端部24の外径d2は、基本実施形態のときの外径dと同じであり、ハンガー本体12の穴23は、基本実施形態のときより大径とされる。
【0063】
こうすると、抵抗部材26の取付強度を基本実施形態のときより増すことができ、より大きい回転反力に抵抗できるようになる。
【0064】
このように、抵抗部材26における基端部22の外径d1は、先端部24の外径d2以上であるのが好ましい。
【0065】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。
【0066】
(1)例えば回転工具30は、他の種類の回転工具であってもよく、例えば電動式のインパクトレンチであってもよい。またボルト11が+または-等の溝または穴付きボルトである場合には、回転工具30は電動式または空圧式ドライバーであってもよい。
【0067】
(2)エンジンハンガー10は他の位置に取り付けられてもよく、例えばエンジン1の後端部または側面部に取り付けられてもよい。
【0068】
(3)ボルト11、ボルト挿通穴25および雌ネジ穴21の数は変更可能であり、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。
【0069】
(4)可能であれば、
図4および
図5に示したような基本実施形態の抵抗部材26と、
図6および
図7に示したような第1変形例の抵抗部材26とを同一のハンガー本体1に設けてもよい。
【0070】
(5)抵抗部材26は円柱状のものに限らず、その形状は任意である。例えば円筒状、角柱状またはブロック状のものであってもよい。
【0071】
本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン
10 エンジンハンガー
11 ボルト
12 ハンガー本体
13 係止部
14 前面部
22 基端部
24 先端部
25 ボルト挿通穴
26 抵抗部材
30 回転工具