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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115527
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】車両用除菌消臭ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/00 20060101AFI20220802BHJP
   A61L 9/015 20060101ALI20220802BHJP
   A61L 9/22 20060101ALI20220802BHJP
   F24F 8/26 20210101ALI20220802BHJP
【FI】
B60H3/00 F
A61L9/015
A61L9/22
F24F8/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012159
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 啓一
【テーマコード(参考)】
3L211
4C180
【Fターム(参考)】
3L211BA10
3L211BA11
3L211DA78
3L211EA03
3L211EA12
3L211EA20
3L211EA26
3L211FA26
3L211FB05
3L211GA12
3L211GA78
4C180AA02
4C180AA07
4C180BB06
4C180BB08
4C180BB11
4C180BB13
4C180BB15
4C180CA04
4C180DD11
4C180EA16X
4C180EA17X
4C180HH01
4C180HH05
4C180HH14
4C180KK01
4C180KK02
4C180KK03
4C180LL01
4C180LL06
4C180LL11
4C180MM07
(57)【要約】
【課題】車両が存在する環境に拘わらず、必要な場合に効率的なオゾンの生成を可能とし、車室の除菌、消臭を効率的に行う車両用除菌消臭ユニットを提供する。
【解決手段】車両用除菌消臭ユニットの主流路は、車両に設けられた空気調和装置の空気の吹出し流路の一部に接続される空気取入れ部を一端に備える。排出流路は、主流路を流れる空気を車両の車室に排出する。オゾン検出部は、主流路に流入する空気のオゾン濃度を測定する。オゾン生成部は、オゾン検出部の下流に設けられ、オゾンを供給可能である。オゾン分解部は、オゾン生成部で生成したオゾンまたは主流路を流れる空気に含まれるオゾンを分解する。流路切替部は、オゾン分解部でオゾンを分解する場合と非分解の場合とで、主流路からの空気が排出流路を流れる際の流路を切り替える。温度検出部は、主流路の空気の流れ状態を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた空気調和装置の空気の吹出し流路の一部に接続される空気取入れ部を一端に備える主流路と、
前記主流路を流れる空気を前記車両の車室に排出する排出流路と、
前記主流路の前記空気取入れ部側に設けられ、前記主流路に流入する空気のオゾン濃度を測定するオゾン検出部と、
前記オゾン検出部の下流に設けられ、前記主流路の下流側に生成させたオゾンを供給可能なオゾン生成部と、
前記オゾン生成部で生成したオゾンまたは前記主流路を流れる空気に含まれるオゾンを分解するオゾン分解部と、
前記オゾン分解部でオゾンを分解する場合と非分解の場合とで、前記主流路からの空気が前記排出流路を流れる際の流路を切り替える流路切替部と、
前記主流路の空気の流れ状態を制御する制御部と、
を備える、車両用除菌消臭ユニット。
【請求項2】
前記主流路の他端に接続され、前記主流路を流れる空気と前記オゾン生成部で生成させたオゾンとの少なくとも一方が流入可能な混合室を備える、請求項1に記載の車両用除菌消臭ユニット。
【請求項3】
前記混合室は、前記主流路の接続部より下流側が、前記主流路に対して略直交方向に広がる拡張空間部を備える、請求項2に記載の車両用除菌消臭ユニット。
【請求項4】
前記排出流路は、前記オゾン分解部を通過させない空気を前記車両の車室に排出する第1排出流路と、前記オゾン分解部を通過させて当該オゾン分解部でオゾンの分解により発生した活性酸素が空気に添加された後に前記車室に排出する第2排出流路と、を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用除菌消臭ユニット。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両の除菌を実行する場合、空気が車室内を循環する車室内循環モードで前記空気調和装置を制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用除菌消臭ユニット。
【請求項6】
前記制御部は、少なくとも前記オゾン生成部の温度に基づいて、前記空気調和装置の温度制御を実行する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用除菌消臭ユニット。
【請求項7】
前記制御部は、前記オゾン検出部の検出結果に基づき、前記車両の搭乗可否を決定する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用除菌消臭ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用除菌消臭ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、より安全かつ快適な車室内空間を提供するために、除菌装置や消臭装置を搭載する車両がある。例えば、オゾンを用いた換気消臭装置や、オゾン燻蒸殺菌装置等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-151941号公報
【特許文献2】特開平8-155013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オゾンは、周囲温度によって生成効率が左右されることが知られている。オゾンは、例えば-10℃以下では、生成自体ができないまたは著しく生成効率が低下する場合がある。車両の場合、エンジン等が駆動していない状態で駐停車されている場合、車両内温度は、比較的短時間のうちに環境温度と概ね同じ温度になる。車両が例えば低温環境に存在する場合、オゾンの生成効率が低下し、所定期間内で良好な殺菌や消臭ができない場合がある。また、車両が寒冷地等に存在する場合には、オゾンの生成自体ができない。つまり、除菌処理や消臭処理が実施できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、車両が存在する環境(場所)に拘わらず、必要な場合に効率的なオゾンの生成を可能とし、車両内部(車室)の除菌または消臭を効率的に実施することができる車両用除菌消臭ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットは、例えば、車両に設けられた空気調和装置の空気の吹出し流路の一部に接続される空気取入れ部を一端に備える主流路と、上記主流路を流れる空気を上記車両の車室に排出する排出流路と、上記主流路の上記空気取入れ部側に設けられ、上記主流路に流入する空気のオゾン濃度を測定するオゾン検出部と、上記オゾン検出部の下流に設けられ、上記主流路の下流側に生成させたオゾンを供給可能なオゾン生成部と、上記オゾン生成部で生成したオゾンまたは上記主流路を流れる空気に含まれるオゾンを分解するオゾン分解部と、上記オゾン分解部でオゾンを分解する場合と非分解の場合とで、上記主流路からの空気が上記排出流路を流れる際の流路を切り替える流路切替部と、上記主流路の空気の流れ状態を制御する制御部と、を備える。この構成によれば、例えば、オゾン生成部には、空気調和装置で温度調整が行われた、オゾン生成に適した温度の空気が供給される。その結果、オゾン生成部で効率的なオゾン生成が可能となり、車両の存在する環境に拘わらず、オゾンを用いた除菌処理や消臭処理を効率的に実現することができる。
【0007】
また、本発明の実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットは、例えば、上記主流路の他端に接続され、上記主流路を流れる空気と上記オゾン生成部で生成したオゾンとの少なくとも一方が流入可能な混合室を備えてもよい。この構成によれば、例えば、車両内、つまり、車室内から取り込んだ空気とオゾン生成部で生成したオゾンとの混合が容易になり、オゾンの分解により発生した活性酸素を用いた効率的な消臭処理を行うことができる。
【0008】
また、本発明の実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットの上記混合室は、例えば、上記主流路の接続部より下流側が、上記主流路に対して略直交方向に広がる拡張空間部を備えてもよい。この構成によれば、例えば、車室内から取り込んだ空気とオゾン生成部で生成したオゾンとが主流路の狭い空間から混合室の広い拡張空間部に出る際に、主流路に対して略直交方向に拡散する。その結果、車室内から取り込んだ空気とオゾンとの効率的な混合を容易に行い、空気に含まれる臭い成分の近傍でオゾンを分解し活性酸素を発生させることが可能になり、より効率的にムラのない消臭処理が可能になる。
【0009】
また、本発明の実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットの上記排出流路は、例えば、上記オゾン分解部を通過させない空気を上記車両の車室に排出する第1排出流路と、上記オゾン分解部を通過させて当該オゾン分解部でオゾンの分解により発生した活性酸素が空気に添加された後に上記車室に排出する第2排出流路と、を含んでもよい。この構成によれば、例えば、第1排出流路により、オゾンが添加された空気を車室に効率的に排出し、車室内の除菌を効果的に実行することができる。また、第2排出流路により、オゾン分解部におけるオゾンの分解により発生した活性酸素により消臭処理が実行された空気を車室に効率的に排出することができる。つまり、車室内の消臭を効果的に実行することができる。
【0010】
また、本発明の実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットの上記制御部は、例えば、上記車両の除菌を実行する場合、空気が車室内を循環する車室内循環モードで上記空気調和装置を制御するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、車両外部から空気の侵入を抑制し、車室内の除菌処理または消臭処理をより効率的に行うことができる。
【0011】
また、本発明の実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットの上記制御部は、例えば、少なくとも上記オゾン生成部の温度に基づいて、上記空気調和装置の温度制御を実行するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、空気調和装置の過剰な駆動を抑制しつつ、オゾンの生成に適した温度の空気をオゾン生成部に供給し、より効率的なオゾンの生成を実現することができる。
【0012】
また、本発明の実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットの上記制御部は、例えば、上記オゾン検出部の検出結果に基づき、上記車両の搭乗可否を決定するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、効率的にオゾンを生成する一方、搭乗者等生物に影響を与えないオゾン濃度になったか否かを確認して搭乗可否を決定することができる。その結果、搭乗の安全性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットの構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
図2図2は、実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットの制御部の構成および制御部に対する入出力の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
図3図3は、実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットによる消臭処理の流れを説明する例示的なフローチャートである。
図4図4は、実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニットによる除菌処理の流れを説明する例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0015】
図1は、実施形態にかかる車両用除菌消臭ユニット10の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。車両用除菌消臭ユニット10は、車両用の空気調和装置12に接続され、温度調整された空気(主として暖房時の空気)を用いて、オゾンOを生成させて、車室内に排出(燻蒸)することで車室内除菌を行う。また、車両用除菌消臭ユニット10は、除菌後に残留したオゾンOまたは、消臭用に生成したオゾンOを分解する際に発生する活性酸素で車室内を循環する空気Eの消臭(車室内消臭)を行う。なお、図1において、空気調和装置12のファンによって流動する空気Eは、主として矢印+X方向に流れる。
【0016】
車両用の空気調和装置12は、周知の冷暖房機能を備え、車室内の空気Eを取込み口12aから取り入れる。そして、取り入れた空気Eの温度を要求される設定温度に変化させた後に吹出し口12bから車室内に排出する。例えば、内燃機関(エンジン)を搭載する車両で、空気調和装置12によって暖房運転を実行する場合には、内燃機関で発生した熱を利用して空気温度を上昇させる。一方、電気自動車の場合は、例えば車載電池を用いて駆動するヒータによる加熱やヒートポンプによる加熱により循環する空気Eの温度を上昇させる。
【0017】
車両用除菌消臭ユニット10は、空気調和装置12の空気Eの吹出し流路12Rの少なくとも一部に接続される空気取入れ部10aを一端に備える主流路14を備える。図1の場合、車両用除菌消臭ユニット10は、吹出し流路12Rと吹出し口12bとの間に介在する例を示しているが、車両用除菌消臭ユニット10が温度調整済みの空気Eの供給を受けられればよい。例えば、吹出し流路12Rを分岐させ、一方を吹出し口12bに接続し、他方を車両用除菌消臭ユニット10に接続する構成でもよい。また、車室には、複数の個別空気吹出し口が設けられている。吹出し口12bの下流が複数に分岐し各個別空気吹出し口に接続される構成でもよいし、各個別空気吹出し口の上流に車両用除菌消臭ユニット10が設けられる構成でもよい。
【0018】
車両用除菌消臭ユニット10の主流路14には、オゾン検出部16と空気質検出部18が設けられている。オゾン検出部16は、主流路14の空気取入れ部10a側に設けられて、主流路14に流入する空気Eのオゾン濃度を測定する、例えば周知のオゾン濃度センサである。また、空気質検出部18は、主流路14に流入する空気Eの空気質、例えば空気Eに含まれる臭い成分を検出する、例えば周知の臭いセンサである。なお、空気質検出部18は、車両用除菌消臭ユニット10によって消臭したい臭い成分、例えば、アセトアルデヒドやアンモニア等の他、タバコ臭や体臭、食物の臭い等を検知可能なセンサである。なお、オゾン検出部16および空気質検出部18は、図1に示される位置に代えて、または加えて車室のいずれかの位置、例えば、運転席や助手席の近傍や、後部座席や荷室等に設けられてもよい。
【0019】
また、主流路14において、オゾン検出部16および空気質検出部18の下流にはオゾン生成部20が設けられている。オゾン生成部20は、生成したオゾンOを主流路14のさらに下流側(+X方向)に供給可能である。オゾン生成部20は、周知の構成が採用可能で、例えば、誘電体20a(例えばガラス)を介した電極20b間に交流電圧を印加して無声放電を発生させる。この放電空間に取込み口12aから取り入れた車室内の空気E(酸素)を通し、エネルギーを与え活性化させる。その結果、解離または励起された酸素の一部がオゾンOに変化して、主流路14の下流側に排出される。周知のように、オゾンOは、酸化力の強い気体で、車室に放出して燻蒸することにより、車室内の除菌(処理対象の弱体化、不活性化)を効率的に行うことができる。
【0020】
なお、上述したように、無声放電によりオゾンOを生成させる場合、オゾン生成部20に供給する空気Eの温度は、例えば、常温(好ましくは、20℃以上)が望ましい。空気Eの温度が低下すると、オゾンOの生成効率が低下し、例えば、-10℃付近では、オゾンOは生成できなくなる場合がある。そこで、オゾン生成部20は、温度検出部20cを備え、電極20b間を通過する空気Eの温度を測定し、オゾン生成部20に供給される空気Eの温度がオゾンOの生成に適した温度か否かを検出している。つまり、空気調和装置12は、オゾンOを生成する場合は、温度調整機能を用いて車両用除菌消臭ユニット10に供給する空気Eの温度を制御することができる。特に、車両が寒冷地等の低温環境に存在する場合、車内温度は、直ぐに外気温と同等まで低下してしまうことがあるが、空気調和装置12を動作させ、暖房運転を行うことにより、オゾンOの生成を効率的に行うことができる。なお、温度検出部20cは、電極20b間に供給される空気Eの温度が検出できればよく、例えば、主流路14におけるオゾン検出部16や空気質検出部18の近傍や空気取入れ部10aの周辺に配置されてもよい。また、誘電体20aや電極20bの近傍に配置されてもよい。また、空気調和装置12における温度制御情報を用いてオゾン生成部20に供給される空気Eを推定してもよい。この場合、温度検出部20cを省略してもよい。
【0021】
また、オゾン生成部20の下流側には、主流路14を流れる空気Eと、オゾン生成部20で生成させたオゾンOとの少なくとも一方が流入可能な混合室22が設けられている。本実施形態の車両用除菌消臭ユニット10において、消臭処理はオゾン生成部20で生成したオゾンOを分解した際に発生する活性酸素を空気Eに添加することにより行う。活性酸素は、強力な酸化作用を有し、アセトアルデヒドやアンモニア等の臭い成分を効果的に分解し消臭することが可能である。その一方で、活性酸素の寿命は短く、例えば周囲の窒素や二酸化炭素とも反応し易い。そこで、車両用除菌消臭ユニット10は、臭い成分のできるだけ近い位置でオゾンOを分解して活性酸素が発生するようにしている。そのため、オゾンOを分解するのに先立ち、臭い成分を含む空気EとオゾンOを混合室22で混合する。混合室22は、主流路14の接続部22aより下流側が、主流路14に対して略直交方向(+Y方向、-Y方向)に広がる拡張空間部22Sを備える。図1に示されるように、拡張空間部22Sの+Y方向および-Y方向の幅は、主流路14の+Y方向および-Y方向の幅より広い。したがって、主流路14に取り込まれた空気Eやオゾン生成部20で生成したオゾンOは、主流路14から拡張空間部22Sに出た場合に、矢印Pで示されるように、+Y方向や-Y方向等に放射状に広がり易い。また、混合室22の内部で乱流が生じ易く効率的に空気EとオゾンOの混合ができる。
【0022】
また、混合室22の下流側(+X方向)には、混合室22を通過した空気EやオゾンOを車室に排出する排出流路が接続されている。車両用除菌消臭ユニット10の場合、2種類の排出流路が接続されている。一方は、オゾンOの分解処理を行わない状態の空気EやオゾンOを車室に排出する第1排出流路24である。他方は、流路の途中にオゾンOを分解するオゾン分解部26を備える第2排出流路28である。第2排出流路28は、通過するオゾンOの分解を実行するとともに、オゾンOの分解によって発生した活性酸素が空気Eに含まれる臭い成分を分解して消臭する。前述したように、臭い成分を含む空気EとオゾンOとは混合室22で混合されているので、オゾンOの分解により発生した活性酸素は、近くに存在する臭い成分を効果的に分解することができる。なお、前述したように活性酸素の寿命は非常に短いため、活性酸素が第2排出流路28から排出されることはほぼない。オゾン分解部26は、例えば、セラミック基材にマンガン系の触媒を担持させて構成することができる。
【0023】
なお、第1排出流路24および第2排出流路28の上流側には、オゾン分解部26でオゾンOを分解しない非分解の場合と分解する場合とで、主流路14からの空気Eが排出流路を流れる際の流路を切り替える流路切替部30が設けられている。第1排出流路24には、流路切替部30として第1切替弁30aが設けられ、第2排出流路28には、流路切替部30として第2切替弁30bが設けられている。第1切替弁30aおよび第2切替弁30bは、例えば、電磁開閉弁であり、主流路14の空気E(およびオゾンO)の流れ状態を制御する制御部32によって開閉制御される。
【0024】
例えば、車室内の除菌処理を行う場合、制御部32は、第1切替弁30aを開動作させ、第2切替弁30bを閉動作させた状態で、オゾン生成部20を動作させオゾンOを生成させる。その結果、取込み口12aから取り込まれた車室内の空気Eとともに、オゾン生成部20で生成されたオゾンOが第1排出流路24から排出され、車室内を燻蒸し車室内のオゾン濃度を除菌(処理対象の弱体化、不活性化)に適した濃度(例えば、1.0ppm)まで上昇させる除菌を実行する。除菌処理は、所定濃度のオゾンOで所定の曝露時間(例えば60分)が経過するまで実行される。なお、オゾン濃度や曝露時間は、除菌対象となる菌やウイルス等の種類や除菌処理を完了させたい時間によって適宜変更してもよいし、複数の種類の菌やウイルス等を包括的に除菌できる一定値に設定してもよい。
【0025】
なお、高濃度のオゾンOは、人体等に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、制御部32は、除菌処理の実行中には、車両内への搭乗を禁止(拒否)する警報処理を実行するとともに、除菌処理の完了後には、第1切替弁30aを閉動作させ、第2切替弁30bを開動作させる。つまり、制御部32は、取込み口12aから取り込むオゾンOを含む空気Eがオゾン分解部26を通過するように、空気調和装置12を運転してオゾンOの分解を行い、車室内の空気Eのオゾン濃度が人体等に影響しないレベルまで低下させる。なお、この場合、オゾン生成部20によるオゾンOの生成は行わないため、空気Eの温度を維持する必要はない。したがって、空気調和装置12は、送風運転に切り替えてもよい。つまり、内燃機関を停止したり、ヒータやヒートポンプを停止したりして、省エネルギー運転に移行してもよい。
【0026】
一方、車室内の消臭処理を行う場合、制御部32は、第1切替弁30aを閉動作させ、第2切替弁30bを開動作させた状態で、オゾン生成部20を動作させてオゾンOを生成させる。その結果、空気EとオゾンOとがオゾン分解部26を通過する。その際にオゾンOの分解により発生した活性酸素により、空気Eの臭い成分が分解され、消臭が行われる。なお、消臭処理を行う場合、制御部32は、例えば、一定間隔で所定期間、第1切替弁30aおよび第2切替弁30bを閉動作させてもよい。第1切替弁30aおよび第2切替弁30bを閉動作させた状態で、取込み口12aから車室の空気Eを混合室22に送り込むととともに、オゾン生成部20でオゾンOを生成し、空気Eとともに混合室22に送り込むことで、実質的な密閉空間となる混合室22内で、ムラのない空気EとオゾンOの混合がより効果的かつ効率的に行うことができる。その後、第1切替弁30aを閉動作させ、第2切替弁30bを開動作させて、空気EとオゾンOとがオゾン分解部26を通過するようにすることで、より臭い成分の近くで活性酸素を発生させることが可能になり効果的な消臭処理を実行することができる。
【0027】
図2は、上述した車両用除菌消臭ユニット10の制御部32の構成および制御部32に対する入出力の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。制御部32は、車両用除菌消臭ユニット10の全体制御を司る。
【0028】
制御部32は、車両用除菌消臭ユニット10を動作させるためのモジュールとして、取得部32a、空調制御部32b、オゾン生成制御部32c、切替制御部32d、報知制御部32e等を含む。なお、制御部32には、オゾン検出部16、温度検出部20c、空気質検出部18、オゾン生成部20(電極20b)、流路切替部30(第1切替弁30a、第2切替弁30b)、モードスイッチ34、空気調和装置ECU36、車両ECU38等が接続されている。
【0029】
取得部32aは、車両用除菌消臭ユニット10を制御するための各種情報の取得を行う。例えば、オゾン検出部16が検出した取込み口12aから取り込まれた車室内の空気Eに含まれるオゾンOのオゾン濃度を逐次取得し、オゾン生成制御部32c、報知制御部32eにオゾン濃度値を提供する。また、取得部32aは、オゾン生成部20に供給される空気Eの温度情報を温度検出部20cから取得し、空調制御部32bに提供する。つまり、オゾン生成部20に供給される空気Eの温度情報に基づき、空気調和装置12を制御し、オゾンOの生成に適した温度に空気温度を調整する。なお、取得部32aは、逐次、温度検出部20cからの温度情報を取得してもよいし、オゾン生成部20がオゾンOを生成するときのみ温度情報を取得するようにしてもよい。
【0030】
また、取得部32aは、取込み口12aから取り込まれる空気Eの空気質(臭い成分)を示す空気質値を、空気質検出部18を介して逐次取得し、空調制御部32b、オゾン生成制御部32c、報知制御部32eに提供する。また、取得部32aは、モードスイッチ34から空気調和装置12の制御状態を示す情報や、車両用除菌消臭ユニット10の動作モードを示す情報を取得する。制御部32は、例えば、空気調和装置12が動作状態であるか非動作状態であるか、暖房モードであるか冷房モードであるか送風モードであるか、車室内循環モードであるか、外気取入れモードであるか等の他、除菌モードであるか、消臭モードであるか等のモード情報を取得する。なお、モードスイッチ34は、例えば、空気調和装置12の操作パネル上やステアリングホイール上やその周辺等に配置されてもよい。
【0031】
空調制御部32bは、空気調和装置ECU36を介して、空気調和装置12の制御を実行する。空気調和装置ECU36は、空気調和装置12の温度調整や風量調整の他、風向き調整等を行ってもよい。空調制御部32bは、例えば、オゾン生成部20においてオゾンOを生成する場合、空気調和装置ECU36を制御し、オゾン生成部20に供給する空気Eの温度を、例えば、常温(20℃等)に制御する。また、空調制御部32bは、除菌処理や消臭処理を実行する場合、空気調和装置12を車室内循環モードに切り替える。また、空調制御部32bは、風量や風向きを適宜変更し、除菌処理や消臭処理を行う際に、車室内を循環する空気Eがより効率的に車室内の隅々まで行き渡るように制御してもよい。
【0032】
オゾン生成制御部32cは、モードスイッチ34により除菌モードまたは消臭モードが選択(ON操作)された場合で、取得部32aから提供される温度情報がオゾンOの生成に適した温度(例えば、20℃)に到達している場合に、電極20b間に所定の交流電圧を印加して無声放電を発生させて、オゾンOを生成させる。なお、オゾン生成制御部32cは、除菌モードまたは消臭モードが選択された状態で、オゾン生成部20に供給される空気Eの温度が所定温度値以下の場合、空調制御部32bに対して温度を上昇させるように指令を出す。なお、オゾンOは、適温(例えば、20℃)に達しない場合でも、効率は悪いが生成は可能である。したがって、別の実施形態では、オゾンOを生成が可能な温度になった時点で、オゾン生成制御部32cは、電極20b間に所定の交流電圧を印加したオゾンOの生成を開始するようにしてもよい。
【0033】
切替制御部32dは、流路切替部30としての第1切替弁30aおよび第2切替弁30bの開閉制御を行う。上述したように、モードスイッチ34によって除菌モードが選択されている場合、切替制御部32dは、第1切替弁30aを開動作させ、第2切替弁30bを閉動作させて、オゾン生成部20で生成したオゾンOをそのまま、第1排出流路24を介して車室に放出し車室内を燻蒸する。また、モードスイッチ34によって消臭モードが選択されている場合、切替制御部32dは、第1切替弁30aを閉動作させ、第2切替弁30bを開動作させて、オゾン生成部20で生成したオゾンOをオゾン分解部26に供給して活性酸素を発生させ、第2排出流路28から排出される空気Eに含まれる臭い成分を分解し消臭する。なお、上述したように、消臭処理を行う場合、混合室22内で空気EとオゾンOとの混合をより効率的に行うように、切替制御部32dは、一定間隔で一定期間だけ、第1切替弁30aと第2切替弁30bを閉動作するようにしてもよい。
【0034】
報知制御部32eは、車室内のオゾン濃度に基づき、乗員(人間、生物)の車内への搭乗可否を決定し、車両ECU38に対して通知信号を提供する。上述したように、高濃度のオゾンOは、人体等に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、報知制御部32eは、取得部32aが取得したオゾン検出部16のオゾン濃度値が所定値(例えば0.2ppm以上)の場合、車室内への乗員等の搭乗を拒否する通知信号を車両ECU38に提供し、報知部40により乗員(車両の乗り込もうとする人間等を含む)に注意を促す。報知制御部32e(車両ECU38)は、例えば、報知部40として設けられた車室内の表示装置やスピーカ等にオゾン濃度が高いため降車を促すメッセージを提示させる。また、報知制御部32eは、車外からも確認可能な表示部や表示灯を用いて乗車不可の表示や、車外でも認識できる音声等により乗車不可のメッセージを提供する。また、報知制御部32eは、オゾン濃度が所定値以上の場合に、車両ECU38を介してドアロック部42を制御して、物理的に乗車ができないようにドアを施錠するようにしてもよい。なお、この場合、ドアの施錠の前に、車内で降車を促す表示や音声メッセージの出力を行うとともに、車内監視システム等からの情報に基づき、降車が確認された後に施錠することが望ましい。また、ドアの施錠が実行された後には、少なくともスピーカを用いた音声による搭乗不可の通知は解除してもよい。また、報知制御部32eは、登録済みの利用者(例えば、車両の所有者等)の携帯端末等に、車両で除菌処理や消臭処理のため車室内のオゾン濃度が高く乗車を禁止する旨の報知を行うようにしてもよい。このように、制御部32が車両ECU38および空気調和装置ECU36を制御することにより、オゾンOの生成の効率性と、オゾンOの生成時の搭乗拒否による安全性の確保の両立を図ることができる。
【0035】
なお、図1図2においては、制御部32を独立して構成する例を示しているが、例えば、空気調和装置ECU36や車両ECU38等と一体化してもよい。
【0036】
このように構成される車両用除菌消臭ユニット10による消臭処理および除菌処理の流れを示す例示的なフローチャートを用いて説明する。まず、図3を用いて消臭処理の流れについて説明する。
【0037】
制御部32は、取得部32aを介して、モードスイッチ34から消臭処理の実行を要求する消臭要求スイッチ(SW)がONされていることが確認できた場合(S100のYes)、空調制御部32bは、空気調和装置ECU36を介して空気調和装置12の制御を開始する。具体的には、空調制御部32bは、空気調和装置12を所定設定温度T℃(例えば、20℃)以上の設定で、車室内循環モードで運転を開始させる(S102)。そして、制御部32は、取得部32aを介して、オゾン生成部20に供給される空気Eの温度が所定設定温度T℃である例えば20℃以上になったか否かを確認する(S104のNo)。そして、オゾン生成部20に供給される空気Eの温度が所定設定温度T℃以上になった場合(S104のYes)、オゾン生成制御部32cは、電極20b間に交流電圧を印加してオゾン生成部20を動作させ(S106)、無声放電によりオゾンOを生成する。前述したように、オゾン生成部20で生成したオゾンOと取込み口12aから取り込まれた空気Eは、混合室22で混合される。そして、切替制御部32dは、オゾンOが混合された空気Eをオゾン分解部26に送り込むために、第1切替弁30aを閉動作させ、第2切替弁30bを開動作させる(S108)。その結果、空気Eに含まれていた臭い成分は、オゾンOがオゾン分解部26を通過することにより発生させた活性酸素により効率的に分解され、消臭された空気Eが第2排出流路28および吹出し口12bを介して車室に排出される。
【0038】
前述したように、オゾンOは、高濃度になると人体に悪影響を及ぼす場合がある。車両用除菌消臭ユニット10が消臭モードで操作する場合、オゾン生成部20で生成したオゾンOは、オゾン分解部26を通過するため、実質的には分解され車室に排出されることはない。しかし、オゾン分解部26の劣化や生成したオゾンOの量が分解能力を上回った場合、車室に漏れ出す場合がある。そこで、制御部32は、取得部32aを介してオゾン検出部16の検出結果を取得する。つまり、制御部32は、車室を循環してくる空気Eのオゾン濃度を逐次取得し、空気Eに含まれるオゾン濃度値が所定のA値(例えば、0.2ppm)を超えていないか否かを確認する(S110)。オゾン濃度値がA値=0.2ppm以下の場合、一般的には、人は臭気を感じることがなく、人体にも影響しないものされている。
【0039】
車室を循環する空気Eのオゾン濃度値がA値以下の場合(S110のYes)、制御部32は、取得部32aを介して空気質検出部18の検出結果を取得し、車室を循環する空気Eの臭い(アセトアルデヒドやアンモニア等の臭い)を示す空気質値が、例えば、無臭と見なせるB値以上になったか否かを監視する(S112)。車室を循環する空気Eの空気質値がB値以上になった場合(S112のYes)、制御部32は、取得部32aが取得したモードスイッチ34の状態に基づき、消臭要求SWがOFFになったか否か確認する(S114)。消臭要求SWがOFFの場合(S114のYes)、つまり、乗員によって消臭要求が取り下げられた場合、オゾン生成制御部32cは、オゾン生成部20によるオゾンOの生成を停止する(S116)。
【0040】
また、このとき、制御部32は、取得部32aが取得したモードスイッチ34の状態に基づき、空気調和装置12のSWがOFFになったか否か確認する(S118)。空気調和装置12のSWがOFFの場合(S118のYes)。つまり、乗員によって空気調和装置12のSWがOFFされた場合、空調制御部32bは、空気調和装置12を停止させ(S120)、一旦このフローを終了する。空気調和装置12のSWがOFFになっていない場合(S118のNo)、S100の処理に戻る。
【0041】
また、S112の処理において、車室を循環する空気Eの空気質値がB値未満の場合(S112のNo)、S110の処理に戻り、オゾン濃度値の管理を継続する。つまり、オゾンOの分解による車内を循環する空気Eの消臭処理を継続する。また、S114の処理において、消臭要求SWがOFFになっていない場合(S114のNo)、つまり、車室を循環する空気Eの空気質値がB値以上で、空気Eの消臭が完了しているにも拘わらす、乗員が消臭処理の継続を望んでいる場合、S110の処理に戻り、消臭処理を継続する。
【0042】
S110の処理において、車室を循環する空気Eのオゾン濃度値がA値を超えた場合(S110のNo)、つまり、オゾンOの臭い等が乗員に感じ取られる場合やオゾンOが乗員に悪影響を与える虞がある場合、報知制御部32eは、乗員に対して注意喚起をする報知処理を実行(ON)する(S122)。報知制御部32eは、車両ECU38を介して報知部40を動作させ、例えば「オゾンの臭いがします。降車や換気を行ってください」等のメッセージを表示装置やスピーカを用いて乗員に報知する。この時点で、オゾン生成制御部32cによってオゾン生成部20が停止していない場合(S124のNo)、オゾン生成制御部32cは、オゾン生成部20を停止(電極20bへの交流電圧の印加を停止)させ(S126)、S110の処理に戻り、S110以降の処理を継続する。つまり、車室を循環する空気Eがオゾン分解部26を通過する処理を継続し、オゾン濃度値を低下させる。なお、S124の処理において、既にオゾン生成部20が停止済みの場合(S124のYes)、S126の処理をスキップしてS110の処理に移行する。
【0043】
S100の処理において、消臭要求SWがONでない場合(S100のNo)、つまり、乗員によって消臭処理が要求されていない場合、制御部32は、取得部32aが取得したモードスイッチ34の状態に基づき、空気調和装置12のSWがONになったか否か確認する(S128)。空気調和装置12のSWがONの場合(S128のYes)。つまり、乗員によって消臭要求が行われていないが、空気調和装置12のSWがONされている場合である。切替制御部32dは、車室を循環する空気Eをそのまま車室に戻すために、第1切替弁30aを開動作させ、第2切替弁30bを閉動作させる(S130)。そして、空調制御部32bは、空気調和装置12を乗員が設定した設定温度になるように、通常運転を実行し(S132)、S118の処理に移行し、空気調和装置12の運転を継続する。また、S130の処理において、空気調和装置12のSWがONになっていない場合(S128のNo)、このフローを一旦終了する。
【0044】
続いて、図4を用いて除菌処理の流れについて説明する。
【0045】
制御部32は、取得部32aを介して、モードスイッチ34から除菌処理の実行を要求する除菌要求スイッチ(SW)がONされていることが確認できた場合(S200のYes)、空調制御部32bは空気調和装置ECU36を介して空気調和装置12の制御を開始する。具体的には、空調制御部32bは、空気調和装置12を所定設定温度T℃(例えば、20℃)以上の設定で、車室内循環モードで運転を開始させる(S202)。そして、制御部32は、取得部32aを介して、オゾン生成部20に供給される空気Eの温度が所定設定温度T℃である例えば20℃以上になったか否かを確認する(S204のNo)。そして、オゾン生成部20に供給される空気Eの温度が所定設定温度T℃以上になった場合(S204のYes)、オゾン生成制御部32cは、電極20b間に交流電圧を印加してオゾン生成部20を動作させ(S206)、無声放電によりオゾンOを生成する。除菌処理は、オゾンOを車室に燻蒸し、さらにオゾンOを含む空気Eを車室で循環させているためオゾン濃度値が上昇する。したがって、オゾン生成部20が動作を開始した場合、報知制御部32eは、乗員に対して消臭処理のときの報知に比べて、より強く乗車を禁止する警報処理を実行(ON)する(S208)。報知制御部32eは、車両ECU38を介して報知部40を動作させ、例えば、「除菌処理中です。乗車を禁止します。乗車している場合は直ちに降車してください。」等のメッセージを表示装置やスピーカを用いて乗員に報知(警告)する。また、報知制御部32eは、車両ECU38を介して車外からも確認できる警告灯(報知部40)の点灯等の警報処理を実行する。さらに、報知制御部32eは、車両ECU38を介してドアロック部42を制御し、乗員が乗車できないようにするためドアの施錠を行う。前述したように、ドアの施錠は、乗員が車内にいないことを確認した後に行う。このように、制御部32が車両ECU38を制御しオゾンOの生成時の乗員に対する安全性の確保を確実に行う。
【0046】
また、切替制御部32dは、オゾン生成部20で生成したオゾンOを分解することなく車内に送り込むために、第1切替弁30aを開動作させ、第2切替弁30bを閉動作させる(S210)。制御部32は、取得部32aを介してオゾン検出部16の検出結果を取得する。つまり、制御部32は、取得部32aが取得したオゾン検出部16の検出結果に基づき、車室を循環してくる空気Eのオゾン濃度値を逐次取得し、空気Eに含まれるオゾン濃度値が除菌に適した所定のC値(例えば、1.0ppm)以上になったか否かを確認する(S212)。オゾン濃度値がC値未満の場合(S212のNo)、S206の処理に移行し、オゾン生成部20によるオゾンOの生成を継続し、オゾン濃度値を上昇させる。
【0047】
S212の処理において、オゾン濃度値がC値以上になった場合(S212のYes)、制御部32は、オゾン濃度値がC値以上になってからの時間の計測を例えば内部タイマ等を用いて開始して、オゾン濃度値=C値以上での車内へのオゾンOの曝露時間が、車内の除菌を行うのに充分な曝露時間=Ds以上になったか否かを監視する(S214)。曝露時間Dsは、除菌対象の菌やウイルス等、また達成するオゾン濃度値の設定値等により適宜決定することができる。例えば、あるウイルスを除菌するのに有効とされるCT値(オゾン濃度値×曝露時間)=60の場合、オゾン濃度値Cが1.0ppmに設定されている場合、暴露時間は60分となる。また、オゾン濃度C値が2.0ppmに設定されている場合、暴露時間は30分となる。S214の処理において、オゾン濃度値がC値以上になった後の暴露時間がDs以上になった場合(S214のYes)、オゾン生成制御部32cは、充分な除菌処理が完了したと見なしてオゾン生成部20への交流電圧の印加を停止し、オゾンOの生成を停止する(S216)。
【0048】
続いて、空調制御部32bは、空気調和装置ECU36を介して空気調和装置12を送風モードで運転するとともに(S218)、切替制御部32dは、第1切替弁30a閉動作し、第2切替弁30bを開動作して(S220)、車室を循環する空気Eをオゾン分解部26へ送り、オゾンOの分解を開始する。
【0049】
オゾンOの分解が開始されると、制御部32は、取得部32aが取得したオゾン検出部16の検出結果に基づき、車室を循環する空気Eのオゾン濃度値が、例えばオゾン臭(刺激臭等)を感じさせないオゾン濃度値=A値(例えば、0.2ppm)以下になったかを確認する(S222)。オゾン濃度値がA値以下になった場合(S222のYes)、報知制御部32eは、車両ECU38を介して報知部40による通知の解除やドアを解錠する。すなわち、警告処理をOFFする(S224)。オゾン濃度値=A値以下の空気Eでもオゾン分解部26を通過することにより活性酸素が発生する。すなわち、消臭効果がある。したがって、制御部32は、取得部32aが取得した空気質検出部18の検出結果に基づき、車室を循環する空気Eの空気質値が、例えばオゾン臭以外のアセトアルデヒドやアンモニア等の臭いを感じさせない空気質値=B値以上になったかを確認する(S226)。空気質値がB値以上になった場合(S224のYes)、空調制御部32bは空気調和装置ECU36を介して空気調和装置12の運転をOFFし(S228)、除菌処理を終了し、このフローを一旦終了する。
【0050】
S226の処理において、空気質値=B値未完の場合(S226のNo)、S218の処理に移行し、消臭処理を継続する。また、S222の処理において、オゾン濃度値=A値をまだ超えている場合(S222のNo)、S218に移行し、オゾンOの分解処理を継続する。
【0051】
S214の処理において、オゾン濃度値がC値以上になった後の暴露時間がDs未満の場合(S214のNo)、S206の処理に移行し、オゾンOの生成を継続し以降の処理を継続する。
【0052】
このように、本実施形態の車両用除菌消臭ユニット10によれば、オゾン生成部20に送り込まれる空気Eは、空気調和装置12で温度調整された、オゾンOの生成に適した状態となる。その結果、オゾンOを用いた除菌処理や消臭処理を効率的に行うことができる。例えば、寒冷地等、極端に車両周囲の温度が低い環境でも効率的な除菌処理や消臭処理を実行することができる。また、車両が使用されていないとき、例えば、夜間や目的地に到着後等に駐車している場合で、オゾン生成部20周辺の温度が外気温に近い状態まで低下している場合でも、空気調和装置12を制御して車室を循環する空気Eの温度を上昇させることにより、駐車している間でも除菌処理や消臭処理を実行することができる。なお、前述したように、内燃機関を搭載する車両の場合、内燃機関の始動により空気調和装置12を駆動して循環する空気Eの温度をオゾンOの生成に適した温度にする。この場合、夜間や駐車場等で無人車両の内燃機関が始動しているのは不自然となる場合がある。この場合、内燃機関を搭載する車両でも除菌処理や消臭処理を実行する場合、車載バッテリを用いて空気調和装置12を駆動するようにしてもよい。また、電気自動車やハイブリット車の場合、通常走行時に利用する車載バッテリを用いて空気調和装置12を駆動するが、除菌処理、消臭処理用のバッテリを別途搭載してもよい。
【0053】
また、本実施形態の車両用除菌消臭ユニット10の場合、オゾン生成部20、オゾン分解部26、およびオゾン検出部16、空気質検出部18等を一体化しているため、装置の小型化に寄与できるとともに、除菌処理と消臭処理を効率的に行うことができる。また、主流路14の下流側で、オゾン分解部26を備えない第1排出流路24とオゾン分解部26を備える第2排出流路28を分岐させている。その結果、流路を別々に設ける場合に比べて、車両用除菌消臭ユニット10の構成の小型化、コストの軽減に寄与することができる。また、主流路14中に混合室22を設けることにより、臭い成分とオゾンOとの混合が容易かつ効率的に行えるので、臭い成分の近傍でオゾンOから活性酸素を発生させ車室を循環する空気Eの消臭を効率よく行うことができる。なお、流路構成は、図1の構成に限らず、オゾンOを含む空気Eをそのまま車内に排出する流路と、オゾン分解部26を介してオゾン分解済みおよび消臭処理済みの空気Eを車内に排出する流路と、が使い分けられれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0054】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10…車両用除菌消臭ユニット、10a…空気取入れ部、12…空気調和装置、12a…取込み口、12b…吹出し口、14…主流路、16…オゾン検出部、18…空気質検出部、20…オゾン生成部、20c…温度検出部、22…混合室、24…第1排出流路、26…オゾン分解部、28…第2排出流路、30…流路切替部、30a…第1切替弁、30b…第2切替弁、32…制御部、32a…取得部、32b…空調制御部、32c…オゾン生成制御部、32d…切替制御部、32e…報知制御部、34…モードスイッチ、40…報知部、42…ドアロック部。
図1
図2
図3
図4