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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115540
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20220802BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220802BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220802BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B27/00 M
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012173
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 宣隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】風間 悠来
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AH08A
4F100AK01A
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100BA02
4F100CA30A
4F100CB05B
4F100EH20
4F100JB16A
4F100JC00A
4F100JD06
4F100JK06B
4F100JK07
4F100JL13B
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
4J004AA05
4J004AA06
4J004AA09
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004FA04
4J004FA09
(57)【要約】
【課題】高い抗菌性および透明性を有し、かつ、良好な貼着性および剥離性を有する積層体を提供する。
【解決手段】抗菌層と、該抗菌層の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備える積層体において、前記抗菌層に熱可塑性樹脂および抗菌剤を配合し、前記抗菌剤が銀系抗菌剤および銅系抗菌剤の少なくとも1つを含み、前記銀系抗菌剤の含有量が前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1~5質量部となるように調整し、前記積層体のヤング率が100~1000MPa、および前記粘着剤層の粘着力が0.7~3.0N/25mmとなるようにそれぞれ調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌層と、該抗菌層の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備える積層体であって、
前記抗菌層が熱可塑性樹脂および抗菌剤を含み、
前記抗菌剤が銀系抗菌剤および銅系抗菌剤の少なくとも1つを含み、
前記抗菌層における熱可塑性樹脂100質量部に対する前記抗菌剤の量が1~5質量部であり、
前記積層体のヤング率が100~1000MPaであり、
前記粘着剤層の粘着力が0.7~3.0N/25mmである、前記積層体。
【請求項2】
前記銀系抗菌剤が銀および銀イオンの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記銅系抗菌剤が一価の銅イオン化合物を含む、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
全光線透過率が88%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
ヘーズが25%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記抗菌層の一方の面に粘着剤層を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
マスキングテープである、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
(a)熱可塑性樹脂および抗菌剤を混合して抗菌層を得る工程、
(b)前記抗菌層の少なくとも一方の面に粘着剤層を積層する工程
を含む積層体の製造方法であって、
前記抗菌剤が銀系抗菌剤および銅系抗菌剤の少なくとも1つを含み、
前記抗菌層における熱可塑性樹脂100質量部に対する前記抗菌剤の量が1~5質量部であり、
前記積層体のヤング率が100~1000MPaであり、
前記粘着剤層の粘着力が0.7~3.0N/25mmである、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌や菌類等の微生物の増殖を防止する抗菌層を備えた積層体およびその製造方法、ならびに前記積層体を備えた積層物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生の観点から、細菌や菌類等の微生物、ウイルス等を除去および増殖防止のために様々な試みがなされている。近年では、様々な微生物による生活環境の汚染、特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のように致死的な感染症を引き起こす微生物による汚染が深刻な問題として取り上げられている。中でも、医療施設、福祉施設、保育施設等におけるこれらの微生物の感染の拡大は、施設利用者の生命に重篤な影響を及ぼし得るため、極めて大きな問題と言える。従来、これらの施設においては、清掃や除菌等の方法によってその清潔性が維持されているが、清潔性を十分に維持するためには清掃や除菌を定期的に行う必要があるという不便があった。また、施設に備えられる物品(例えば、建具、家具、電気器具等)は、多数の人が頻繁に触れるため、その清潔性が損なわれやすい。
【0003】
生活環境の清潔性を維持することを目的として、生活環境を構成する物品に抗菌性を付与する種々の試みがなされている。その中で、銀イオン(Ag)や銅化合物が抗菌性を有し、かつ安全に使用できることが見出されている(例えば、特許文献1~5)。
【0004】
生活環境を構成する物品に抗菌性を付与する方法についても種々の試みがなされており、例えば、物品そのものに抗菌性を有する物質を配合する方法や、抗菌性を有するフィルムやシート状の部材を物品に貼着する方法等が採られている。しかしながら、物品そのものに抗菌性を有する物質を配合する方法では、物品の製造時に抗菌性を有する物質を配合する必要があるため、ユーザーが物品を購入して後発的に抗菌性を付与することができないという問題がある。一方、抗菌性を有する部材を物品に貼着する方法は、ユーザーが物品を購入した後に抗菌性を有する部材を貼着することにより、物品に抗菌性を付与することができるという利点を有する。しかしながら、この方法の場合、物品に貼着する部材の性質により、物品の状態が変化したり、損なわれたりするという問題がある。例えば、抗菌性部材の透明性が低いと、抗菌性部材を介した場合の反対側の視認性が低下するため、そのような透明性が低い抗菌性部材を物品の表面に貼着する場合、抗菌性部材が貼着された物品の部分の視認性が低下する。特に、銀イオンや銅化合物を含む抗菌剤は透明性が低いため、そのような問題が特に表れやすい。また、物品に抗菌性部材を貼着する方法では、物品に対して抗菌性部材が貼着された場合に浮きや剥がれが生じないこと(貼着性)、剥離する際に物品の表面に粘着剤層が残留しないこと(剥離性)が求められる。
【0005】
このような状況下、高い抗菌性および高い透明性、ならびに物品に対する良好な貼着性および剥離性を有する抗菌性部材が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/40048号公報
【特許文献2】特開2017-178942号公報
【特許文献3】特開2015-113340号公報
【特許文献4】特開2014-104376号公報
【特許文献5】特開平9-248883号公報
【0007】
本発明の目的は、高い抗菌性および高い透明性、ならびに物品に対する良好な貼着性および剥離性を有する積層体およびその製造方法、ならびに該積層体を備えた積層物品を提供することにある。
【0008】
今般、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、抗菌層と粘着剤層とを備える積層体において、抗菌層を構成する熱可塑性樹脂の単位量(質量部)に対して特定の量(質量部)の銀系抗菌剤や銅系抗菌剤を配合し、積層体のヤング率および粘着剤層の粘着力を特定の数値範囲とすることにより、積層体に高い抗菌性および高い透明性、ならびに良好な貼着性および剥離性を付与することができるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0009】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]抗菌層と、該抗菌層の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備える積層体であって、
前記抗菌層が熱可塑性樹脂および抗菌剤を含み、
前記抗菌剤が銀系抗菌剤および銅系抗菌剤の少なくとも1つを含み、
前記抗菌層における熱可塑性樹脂100質量部に対する前記抗菌剤の量が1~5質量部であり、
前記積層体のヤング率が100~1000MPaであり、
前記粘着剤層の粘着力が0.7~3.0N/25mmである、前記積層体。
[2]前記銀系抗菌剤が銀および銀イオンの少なくとも一つを含む、[1]に記載の積層体。
[3]前記銅系抗菌剤が一価の銅イオン化合物を含む、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]全光線透過率が88%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]ヘーズが25%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]前記抗菌層の一方の面に粘着剤層を備える、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]マスキングテープである、[6]に記載の積層体。
[8](a)熱可塑性樹脂および抗菌剤を混合して抗菌層を得る工程、
(b)前記抗菌層の少なくとも一方の面に粘着剤層を積層する工程
を含む積層体の製造方法であって、
前記抗菌剤が銀系抗菌剤および銅系抗菌剤の少なくとも1つを含み、
前記抗菌層における熱可塑性樹脂100質量部に対する前記抗菌剤の量が1~5質量部であり、
前記積層体のヤング率が100~1000MPaであり、
前記粘着剤層の粘着力が0.7~3.0N/25mmである、前記製造方法。
【0010】
本発明によれば、抗菌層と粘着剤層とを備える積層体において、抗菌層を構成する熱可塑性樹脂の単位量(質量部)に対して特定の量(質量部)の銀系抗菌剤および/または銅系抗菌剤を配合し、積層体のヤング率および粘着剤層の粘着力を特定の数値範囲とすることにより、積層体に高い抗菌性および高い透明性、ならびに良好な貼着性および剥離性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、抗菌層と該抗菌層の一方の面に設けられた粘着剤層とを有する本発明の積層体の一実施形態を示した断面模式図である。
図2図2は、抗菌層と該抗菌層の両方の面に設けられた粘着剤層とを有する本発明の積層体の一実施形態を示した断面模式図である。
図3図3は、抗菌層と該抗菌層の一方の面に設けられた粘着剤層とを有し、抗菌層と粘着剤層との間にプライマー層をさらに有する本発明の積層体の一実施形態を示した断面模式図である。
【発明の具体的説明】
【0012】
積層体
本発明の積層体を、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、それぞれ本発明の積層体の一実施形態を示した断面模式図である。本発明の積層体1は、抗菌層10と、抗菌層10の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層11とを備えている。すなわち、本発明の積層体は、図1に示すように、抗菌層10の一方の面に粘着剤層11を備えていてもよく、また、図2に示すように、抗菌層10の両方の面に粘着剤層11を備えていてもよい。また、図3に示すように、本発明の積層体1は、抗菌層10と粘着剤層11との間にプライマー層12を備えていてもよい。なお、本発明の積層体は、薄い膜状のもの全般を指し、一般にシート、フィルム、膜、箔等(以下、「シート等」ともいう)と呼ばれるものが包含される。
【0013】
抗菌層10と粘着剤層11とを積層する方法としては、積層体を成形する際に通常用いられる方法を用いることができる。かかる成形方法としては、例えば、積層体を構成する抗菌層10および粘着剤層11を予め別々のフィルム、シート等として成形した後に各層をなすフィルム、シート等を接着させて積層する方法、押出法によって各層の形成および積層を同一工程で行う方法等が挙げられる。前者の例としては、空冷インフレーション成形法、空冷二段冷却インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、水冷インフレーション成形法等が挙げられる。また、後者の例としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出法等が挙げられる。また、抗菌層10と粘着剤層11とを積層する別の方法としては、積層体を構成する抗菌層10を予めシート等として成形した後に、該抗菌層10のフィルム、シート等の表面に粘着剤を塗工することにより粘着剤層11を成形する方法が挙げられる。このような粘着剤の塗工には、例えば、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等が用いられる。
【0014】
積層体1のヤング率は100~1000MPaであり、好ましくは100~900MPa、より好ましくは100~800MPaである。積層体1がこのような範囲のヤング率を有することにより、該積層体1が良好な貼着性を有し、曲面に対して貼着した場合であっても積層体の浮きやトンネリング現象を抑制して安定的に貼着することができる。
【0015】
積層体1のヤング率は、例えば、以下のようにして測定される。すなわち、幅10mm×長さ150mmに裁断した積層体1をチャック間距離50mmの装置にセットして、温度23℃、相対湿度65%、引張速度300mm/分の条件下で引張試験を行い、得られた荷重-伸び曲線の立ち上がり部の接線からヤング率を算出する。
【0016】
積層体1は、好ましくは88%以上の全光線透過率および/または25%以下のヘーズ、より好ましくは90%以上の全光線透過率および22%以下のヘーズを有する。積層体1がこのような全光線透過率および/またはヘーズを有することにより、積層体1を介した場合であっても反対側を良好に視認することができる。積層体1の全光線透過率およびヘーズは、積層体を構成する各層の成分および厚さ等を適宜選択することによって調整することができる。
【0017】
積層体1の全光線透過率およびヘーズは、例えば、以下のようにして測定される。すなわち、積層体1を縦50mm×横50mmに切断して試験片を作製し、該試験片についてヘーズメーターNDH7000II(日本電色工業株式会社製)を用いて、全光線透過率についてはJIS K7361、ヘーズについてはJIS K7136にそれぞれ準拠した方法により測定される。
【0018】
本発明の積層体1の厚さは、積層体の用途および要求される品質レベルにより適宜設定することができるが、一般的には成形性、使いやすさ等の観点から、好ましくは30~300μm、より好ましくは40~200μm、より一層好ましくは50~100μmである。
【0019】
以下、本発明の積層体を構成する各層について具体的に説明する。
[抗菌層]
抗菌層10は、積層体の形態の維持、物理的な強度の確保等の基材の役割、および抗菌作用を担うものである。抗菌層10は、熱可塑性樹脂および銀系抗菌剤を含んでなる。抗菌層10の形態としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、シート、フィルム等の形態とすることができる。積層体1は、例えば、マスキングテープ、間仕切りフィルム等として用いることができる。
【0020】
抗菌層10は、樹脂成分として熱可塑性樹脂を含み、好ましくは樹脂成分として熱可塑性樹脂のみを含む。抗菌層10を構成する熱可塑性樹脂としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、抗菌層10は単層で構成されていてもよく、複数層で構成されていてもよいが、好ましくは単層で構成される。
【0021】
好ましい実施形態によれば、抗菌層10を構成する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含んでなる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、エチレン・シクロオレフィン・コポリマー樹脂(環状オレフィンコポリマー)が用いられる。これらのうち、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を用いることが特に好ましい。
【0022】
好ましい実施形態によれば、抗菌層10は、熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂を単独で含む。ポリエチレン樹脂を構成するポリエチレンとしては、その密度によらず、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンのいずれのポリエチレンも用いることができる。
【0023】
別の好ましい実施形態によれば、抗菌層10は、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂を単独で含む。
【0024】
別の好ましい実施形態によれば、抗菌層10を構成する熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂を含んでなる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。
【0025】
抗菌層10は抗菌成分である銀系抗菌剤および/または銅系抗菌剤を含む。積層体1は、銀系抗菌剤および/または銅系抗菌剤を含む抗菌層10を備えることにより抗菌作用を奏する。抗菌剤は、抗菌層10の全部に分散して存在していてもよく、抗菌層10の一部に集中して存在していてもよい。抗菌剤が全部に分散して存在する抗菌層10は、例えば、抗菌層10を構成する熱可塑性樹脂と抗菌剤とを混合して押出成形することにより形成される。一方、抗菌剤が一部に集中して存在する抗菌層10は、抗菌層10を構成する熱可塑性樹脂と抗菌剤とを別個の層として、抗菌剤の層が熱可塑性樹脂の層の一部(抗菌剤を存在させようとする部分)に形成されるように熱可塑性樹脂の層と抗菌剤の層とを共押出成形することにより形成される。好ましい実施形態によれば、抗菌剤は、抗菌層10において、後述する粘着剤層11が存在する表面の反対側の表面の全部または一部に存在する。
【0026】
銀系抗菌剤としては、銀(銀原子)が含まれていれば特に限定されることなく用いることができる。また、銀の形態も特に限定されず、例えば、金属銀、銀イオン、銀塩(銀錯体を含む)等の形態が挙げられる。なお、本明細書において、銀錯体は銀塩の範囲に包含される。銀系抗菌剤は1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
銀塩としては、例えば、酢酸銀、アセチルアセトン酸銀、アジ化銀、銀アセチリド、ヒ素銀、安息香酸銀、フッ化水素銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、塩素酸銀、クロム酸銀、クエン酸銀、シアン酸銀、シアン化銀、(cis,cis-1,5-シクロオクタジエン)-1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、7,7-ジメチル-1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-4,6-オクタンジオン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロヒ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、イソチオシアン酸銀、シアン化銀カリウム、乳酸銀、モリブデン酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀(I)、酸化銀(II)、シュウ酸銀、過塩素酸銀、ペルフルオロ酪酸銀、ペルフルオロプロピオン酸銀、過マンガン酸銀、過レニウム酸銀、リン酸銀、ピクリン酸銀一水和物、プロピオン酸銀、セレン酸銀、セレン化銀、亜セレン酸銀、スルファジアジン酸銀、硫酸銀、硫化銀、亜硫酸銀、テルル化銀、テトラフルオロホウ酸銀、テトラヨードムキュリウム酸銀テトラタングステン酸銀、チオシアン酸銀、p-トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロ酢酸銀、バナジン酸銀が挙げられる。
【0028】
銀錯体としては、例えば、ヒスチジン銀錯体、メチオニン銀錯体、システイン銀錯体、アスパラギン酸銀錯体、ピロリドンカルボン酸銀錯体、オキソテトラヒドロフランカルボン酸銀錯体、イミダゾール銀錯体が挙げられる。
【0029】
銀系抗菌剤としては、例えば、上記銀塩(銀錯体)等の有機系の抗菌剤、後述する担体を含む無機系の抗菌剤が挙げられる。これらのうち、より優れた抗菌作用を奏するという点で、銀系抗菌剤は無機系の抗菌剤が好ましく、担体と担体上に担持された銀とを含む銀担持担体がより好ましい。
【0030】
銀を担持する担体としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えば、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウムおよびリン酸チタン等のリン酸塩、ケイ酸カルシウム、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイトおよびガラス(水溶性ガラスを含む)等が挙げられる。これらのうち、特に優れた抗菌作用を奏するという点で、リン酸塩カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、ゼオライトおよびガラスが好ましい。これらの担体は1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
銅系抗菌剤としては、銅(銅原子)が含まれていれば特に限定されることなく用いることができる。また、銅の形態も特に限定されず、例えば、金属銅、銅イオン、銅塩(銅錯体を含む)等の形態が挙げられる。なお、本明細書において、銅錯体は銅塩の範囲に包含される。銅系抗菌剤は1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
好ましい実施形態によれば、銅系抗菌剤は一価の銅化合物を含む。一価の銅化合物の形態としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、ナノ粒子等の微粒子等の形態とすることができる。好ましい実施形態によれば、一価の銅化合物はナノ粒子の形態で用いられる。
【0033】
抗菌層10における抗菌剤の含有量は、抗菌層10を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して抗菌剤が1~5質量部、好ましくは1~3質量部、より好ましくは1.5~2.5質量部となるように設定される。抗菌層10における抗菌剤の含有量を上記の範囲にすることにより、積層体1が十分な抗菌作用を奏し、かつ十分な透明性を有することとなる。
【0034】
抗菌層10が奏する「抗菌作用」には、抗菌層10に微生物が付着した場合に、その微生物自体を不活性化する作用、およびその微生物が増殖することを阻害する作用が包含される。本明細書において抗菌作用の対象となる微生物は、銀系抗菌剤および/または銅系抗菌剤により不活性化および/または増殖阻害されるものであれば特に限定されず、例えば、細菌、菌類、微細藻類、原生動物、ウイルス等が挙げられる。
【0035】
細菌としては、例えば、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、赤痢菌(Shigella dysenteriae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、チフス菌(Salmonella typhimurium)、サルモネラ菌(Salmonella enteritidis)、ペスト菌(Yersinia. pestis)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、セラチア菌(Serratia marcescens)、プロテウス菌(Proteus, Providencia, Morganella)、シトロバクター菌(Citrobacter freundii)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、セパシア菌(Burkholderia(Pseudomonas) cepacia)、レジオネラ菌(Legionella pneumophila)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、淋菌(Niserria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Niserria meningitides)カタル球菌(Moraxella(Branhamella) catarrhalis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、バクテロイド属菌等の細菌(Bacteroides fragilis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)、古草菌(Bacillus subtilis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphthriae)、ノルカジア菌(Nocardia属菌)、腸内細菌エンテロバクテリア(Enterobacter cloacae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、アシネトバクテリア菌(Acinetobacter calcoaceticus)、腸球菌(Enterococcus属菌)、バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant Enterococcus、VRE)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、B群レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、アクネ菌(Propionibacterium acnes)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、カンピロバクター(Campylobacter jejuni, Campylobacter coli)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumonia)、性行為感染症クラミジア(Chlamydia trachomatis)、歯周病菌(Porphyromonas gingivalis, Treponema denticola, Tannerella forsythensis)等が挙げられる。
【0036】
菌類としては、例えば、白癬菌(Trichophyton rubrum, Trichophyton mentagrophytes)、アスペルギルス菌(Aspergillus fumigatus)、カンジダ菌(Candida albicans)、クリプトコッカス菌(Cryptococcus neoformans)が挙げられる。
【0037】
ウイルスとしては、ウイルスが有するゲノムの種類(DNAであるかRNAであるか、また、一本鎖であるか二本鎖であるか)、エンベロープの有無等によらず、様々なウイルスが抗菌作用の対象となり得る。ウイルスとしては、例えば、ライノウイルス、ポリオウイルス、口蹄疫ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、エンテロウイルス、ヘパトウイルス、アストロウイルス、サポウイルス、E型肝炎ウイルス、A型、B型、C型インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス(おたふくかぜ)、麻疹ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、RSウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型、C型肝炎ウイルス、東部および西部馬脳炎ウイルス、オニョンニョンウイルス、風疹ウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルウス、グアナリトウイルス、サビアウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、スナバエ熱、ハンタウイルス、シンノンブレウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マーブルグウイルス、コウモリリッサウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトコロナウイルス、SARSコロナウイルス、ヒトポルボウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、水痘、帯状発疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス、天然痘ウイルス、サル痘ウイルス、牛痘ウイルス、モラシポックスウイルス、パラポックスウイルスが挙げられる。
【0038】
抗菌層10は、微生物の他に、微生物の代謝、増殖に資する物質(炭水化物、タンパク質、脂質、核酸等)が付着した場合であっても、抗菌作用を奏し得る。すなわち、抗菌層10は、微生物を含む体液(血液、唾液、汗等)が付着した場合であっても、該体液に含まれる微生物を不活性化し、その増殖を阻害する作用を奏し得る。
【0039】
抗菌層10は、本発明の効果が奏されるのを妨げない範囲において、必要に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、滑沢剤、分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、熱可塑性樹脂をシート状またはフィルム状に成形する際に、抗菌層10の他の構成成分と混合して押出成形するか、または予めこれらの添加剤を抗菌層10の他の構成成分と混合したマスターバッチを、押出成形の際にさらに抗菌層10の他の構成成分と混合して成形することで抗菌層10に配合することができる。
【0040】
抗菌層10の単層10μmの全光線透過率は、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではないが、積層体1の透明性(積層体1を介した場合における反対側の良好な視認性)の確保の観点から、好ましくは88%以上であり、より好ましくは90%以上であり、より一層好ましくは92%以上である。なお、抗菌層10の全光線透過率は、抗菌層10の縦50mm×横50mm×厚さ10μmの試験片を用いて、上記の積層体1の全光線透過率の測定方法と同様の方法により測定される。
【0041】
抗菌層10の単層10μmのヘーズは、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではないが、積層体1の透明性の確保の観点から、好ましくは25%以下であり、より好ましくは22%以下であり、より一層好ましくは20%以下である。なお、抗菌層10の全光線透過率は、抗菌層10の縦50mm×横50mm×厚さ10μmの試験片を用いて、上記の積層体1のヘーズの測定方法と同様の方法により測定される。
【0042】
抗菌層10の厚さは、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、積層体1の用途に応じて適宜設定することができるが、積層体1の透明性の確保の観点から、抗菌層10を厚さ10μmの単層とした場合の全光線透過率が88%以上、かつヘーズが22%以下となるように調整することが好ましい。積層体1の形態の維持、物理的な強度の確保等の観点も考慮すると、例えば、20~100μm程度とすることができる。
【0043】
[粘着剤層]
粘着剤層11は、上記した抗菌層10の少なくとも一方の面に設けられて、積層体1の粘着剤層11が設けられた側の面において、積層体1を貼着対象の物品に接着させることが可能となる。
【0044】
粘着剤層11を構成する成分は、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体系粘着剤、ニトリル―ブタジエン共重合体系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤、ポリブタジエン系粘着剤、ウレタン樹脂、スチレン系熱可塑性樹脂、アクリル系熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらのうち、好ましくはアクリル系粘着剤が用いられる。
【0045】
アクリル系粘着剤を構成する主モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の各種(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルは1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
アクリル系粘着剤を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン等が挙げられる。コモノマーの種類、含有量を適宜選択することにより、アクリル系粘着剤の凝集力を調整することができる。
【0047】
アクリル系粘着剤には、必要に応じて官能基含有モノマーを添加することができる。官能基含有モノマーの種類、含有量を適宜選択することにより、樹脂中に架橋点を設けてアクリル系粘着剤の硬さを調整し、所望の粘着力を得ることができる。官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。アクリル系粘着剤における官能基含有モノマーの含有量は、通常、官能基含有モノマーが有する官能基の数が、アクリル系粘着剤を構成する主モノマーおよびコモノマーが有する官能基の数よりも多くならないように設定される。ただし、架橋反応により新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が速やかに進行しない場合には、必要に応じて官能基含有モノマーを過剰量含有してもよい。アクリル系粘着剤における官能基含有モノマーの含有量は、主モノマーおよびコモノマーの合計の100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは1~10質量部、より一層好ましくは1~5質量部である。
【0048】
粘着剤層11の厚さは、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、積層体1の用途に応じて適宜設定することができる。粘着剤層11の厚さが小さすぎることにより、貼着対象の物品への積層体1の密着が不足するのを回避するために、粘着剤層11の厚さの下限値は、例えば5μm程度とすることができる。一方、粘着剤層11の厚さが大きすぎることにより、物品への積層体1の密着が過度になり、剥離性および作業性が低下することを避けるために、粘着剤層11の厚さの上限値は、例えば50μm程度とすることができる。
【0049】
粘着剤層11の粘着力は0.7~3.0N/25mmであり、好ましくは1.0~2.5N/25mm、より好ましくは1.5~2.0N/25mmである。粘着剤層11がこのような範囲の粘着力を有することにより、積層体1が貼着対象の物品に対して良好な貼着性を有し、また、物品から剥離する際に該物品に粘着剤が残ることなく良好な剥離性を有する。
【0050】
粘着剤層11の粘着力は、例えば、以下のようにして測定される。すなわち、積層体1を幅25mm×長さ150mmに切断して試験片を得、該試験片を2kgのローラーを用いてステンレス製板(#280の耐水ペーパーで研磨したSUS304板)に貼着し、23℃、相対湿度65%の条件下で一昼夜静置した後、引張り試験機を用いて剥離速度300mm/分、剥離角度180度の条件で剥離し、測定される剥離強度を粘着力とする。
【0051】
抗菌層10と粘着剤層11との接着性を向上させるために、抗菌層10および/または粘着剤層11には、予めコロナ放電処理または化学処理等が施すことにより、そのぬれ性(ぬれ張力)を向上させてもよい。
【0052】
抗菌層10と粘着剤層11との間には、プライマー層を塗工して形成することもできる。プライマー層を塗工して形成することにより、抗菌層10と粘着剤層11との良好な接着性を実現することができ、抗菌層10と粘着剤層11とを接着させるに当たり、コロナ放電処理によりぬれ性(ぬれ張力)を向上させる必要がなくなる。その結果、設備等の要因によりコロナ放電処理を行うのが困難な場合であっても本発明の積層体を製造することが可能となる。プライマー層を構成する成分としては、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、接着樹脂、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0053】
プライマー層を構成する接着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン-アクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等)、ポリビニルアセタール樹脂(例えば、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等)、セルロース樹脂が挙げられる。これらの接着樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、後述するゴム系粘着剤と組み合わせて用いてもよい。
【0054】
プライマー層を構成するゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタン樹脂が挙げられる。これらのゴム系粘着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、上述した接着樹脂と組み合わせて用いてもよい。
【0055】
積層体の製造方法
本発明の一つの態様によれば、高い抗菌性および高い透明性、ならびに良好な貼着性および剥離性を備える積層体の製造方法が提供される。本発明の製造方法は、抗菌層を構成する熱可塑性樹脂の単位量(質量部)に対して特定の量(質量部)の銀系抗菌剤を配合し、積層体のヤング率および粘着剤層の粘着力を特定の数値範囲となるように調整することを含む。
【0056】
好ましい実施形態によれば、製造される積層体が88%以上の全光線透過率および/または25%以下のヘーズを有するように調整される。特に好ましい実施形態によれば、製造される積層体が90%以上の全光線透過率および22%以下のヘーズを有するように調整される。
【0057】
本発明の製造方法によれば、積層体は、従来公知の多層フィルム成形方法に従って製造することができる。かかる成形方法としては、例えば、積層体を構成する抗菌層および粘着剤層を予め別々のフィルム、シート等として成形した後に各層をなすフィルム、シート等を接着させて積層する方法、押出法によって各層の形成および積層を同一工程で行う方法等が挙げられる。前者の例としては、空冷インフレーション成形法、空冷二段冷却インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、水冷インフレーション成形法等が挙げられる。また、後者の例としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出法等が挙げられる。また、別の成形方法としては、積層体を構成する抗菌層を予めフィルム、シート等として成形した後に、該抗菌層のフィルム、シート等の表面に粘着剤を塗工することにより粘着剤層を成形する方法が挙げられる。このような粘着剤の塗工には、例えば、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等が用いられる。
【実施例0058】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本実施例は、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図するものではない。また、本明細書において、特段の記載がない限り、測定値の単位および測定方法はJIS(日本工業規格)による規定に従うものとする。
【0059】
積層体の作製
抗菌層および基材層を構成する熱可塑性樹脂として、ポリエチレン樹脂(1)(LC600A、日本ポリエチレン株式会社製)、ポリエチレン樹脂(2)(LC602A、日本ポリエチレン株式会社製)、ポリエチレン樹脂(3)(HF560、日本ポリエチレン株式会社製)およびポリエチレンテレフタラート樹脂(1)(E5100、東洋紡株式会社製)を準備した。さらに、抗菌層を構成する銀系抗菌剤を準備した。また、粘着剤層を構成する粘着剤として、粘着剤(1)(1435、綜研化学株式会社製)を準備した。下記表1に示す組成となるように、各熱可塑性樹脂を含む基材層と、各熱可塑性樹脂および銀系抗菌剤を含む抗菌層とを有する成形体を共押出成形により得た。なお、各成形体における抗菌層の厚さを80μmとした。得られた各成形体の基材層の表面に、粘着剤(1)を塗布して10μmの粘着剤層を形成し、厚さ90μmの実施例1~5および比較例1~5の各積層体を得た。得られた各実施例および比較例の積層体について、ヤング率、粘着剤層の粘着力をそれぞれ上述した方法により測定した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
抗菌性の評価
各積層体の抗菌性を、以下のようにして測定および評価した。すなわち、各積層体を縦1cm×横1cmとなるように切断して試験片を得、エンテロバクター属細菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌および緑膿菌の4種類の細菌が混合された細菌液50mlに各試験片を浸し、試験片同士が接着しないようにしながら、35℃の条件下で24時間撹拌および培養をした。24時間後、試験片を浸した各細菌液中の生菌数を計測した。下記式に基づいて各試験片の活菌活性値を算出し、算出された活菌活性値が2.0以上である場合に、積層体は微生物に対して十分な抗菌性を有すると判定した。結果を表1に示す。
【数1】
【0062】
表1の結果から、実施例1~5の試験片では、十分な抗菌性が奏されることが示された。一方、抗菌剤を過剰に含有する比較例1の試験片では十分な抗菌性が奏されるものの、十分な透明性が奏されないことが示された。また、抗菌剤を含有しない比較例2および3の試験片では、十分な透明性は奏されるものの、十分な抗菌性が奏されないことが示された。これらの結果から、十分な抗菌性とその他の特性とを両立するために、抗菌剤の含有量を特定の範囲とする必要があることが示された。
【0063】
透明性の評価
各積層体の透明性を、以下のようにして評価した。すなわち、アクリル板に黒マジックで幅1mm×長さ100mmの線を引き、線を引いた部分を覆うように各積層体を貼着した。蛍光灯下の環境で、アクリル板上の線が各試験片を挟んで見えるか(すなわち、透けて見えるか)を、5名の評価者の目視で確認した。4名以上がアクリル板上の線を確認できた場合に、積層体は十分な透明性を有すると判定した。結果を表1に示す。
【0064】
表1の結果から、実施例1~5の試験片は、十分な透明性を有することが示された。一方、抗菌剤を過剰に含有する比較例1の試験片は、十分な透明性を有さないことが示された。また、抗菌剤を含有しない比較例1の試験片も十分な透明性を有するものの、十分な抗菌性が奏されないことが示された。これらの結果から、十分な透明性とその他の特性とを両立するために、抗菌剤の含有量を特定の範囲とする必要があることが示された。
【0065】
貼着性の評価
各積層体の貼着性(対曲面貼着性)を、以下のようにして評価した。すなわち、各積層体を幅25mm×長さ100mmとなるように切断して試験片を得、各試験片を90度の角度に屈曲したステンレス製板(SUS304板)の屈曲部に貼着した。ステンレス製板を23℃、相対湿度65%の条件下で一昼夜静置した後、ステンレス製板と各試験片との間の気泡やトンネリングの発生の有無を確認した。気泡やトンネリングが発生していない場合に、積層体は良好な貼着性を有すると評価した。結果を表1に示す。
【0066】
表1の結果から、実施例1~5の試験片は、曲面に対してでも良好な貼着性を奏することが示された。一方、積層体のヤング率が大きすぎる比較例3および粘着剤層の粘着力が小さすぎる比較例4の試験片はいずれも良好な貼着性を有さないことが示された。また、粘着力が大きすぎる比較例5の試験片も良好な貼着性を有するものの、良好な剥離性を有さないことが示された。これらの結果から、良好な貼着性とその他の特性とを両立するために、積層体のヤング率および粘着剤層の粘着力を特定の範囲とする必要があることが示された。
【0067】
剥離性の評価
各積層体の剥離性を、以下のようにして評価した。すなわち、各積層体を幅25mm×長さ150mmとなるように切断して試験片を得、各試験片を2kgのローラーを用いてステンレス製板(#280の耐水ペーパーで研磨したSUS304板)に貼着し、23℃、相対湿度65%の条件下で一昼夜静置した後、引張り試験機を用いて剥離速度300mm/分、剥離角度180度の条件で剥離した。その後、ステンレス製板上に積層体の粘着剤層の粘着剤が残存していないかを目視により確認した。ステンレス製板上に粘着剤の残存が確認されなかった場合に、積層体は良好な剥離性を有すると判定した。結果を表1に示す。
【0068】
表1の結果から、実施例1~5の試験片では、良好な剥離性を有することが示された。一方、粘着剤層の粘着力が大きすぎる比較例5の試験片では、粘着剤の残存(糊残り)が確認され、良好な剥離性を有さないことが示された。また、ヤング率が大きすぎる比較例3および粘着力が小さすぎる比較例4の試験片も良好な剥離性を有するが、良好な貼着性を有さないことが示された。これらの結果から、良好な剥離性とその他の特性とを両立するために、積層体のヤング率および粘着剤層の粘着力を特定の範囲とする必要があることが示された。
【符号の説明】
【0069】
1 積層体
10 抗菌層
11 粘着剤層
12 プライマー層
図1
図2
図3