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特開2022-115569スクリーニングシステム、スクリーニング方法、およびスクリーニングプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115569
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】スクリーニングシステム、スクリーニング方法、およびスクリーニングプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20220802BHJP
   G16Y 10/60 20200101ALI20220802BHJP
【FI】
G16H50/20
G16Y10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012214
(22)【出願日】2021-01-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術、介護支援技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100144440
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 一之
(72)【発明者】
【氏名】石川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 美亜
(72)【発明者】
【氏名】神谷 直輝
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】せん妄または認知症に関する対象者の状況を適切に把握すること。
【解決手段】一実施形態に係るスクリーニングシステムは、少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、対象者の症状を示す入力データを取得し、入力データに基づいて対象者の症状の経時変化を特定し、経時変化に基づいて、対象者の精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定し、精神状態に関するスクリーニングデータを出力する。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
対象者の症状を示す入力データを取得し、
前記入力データに基づいて前記対象者の症状の経時変化を特定し、
前記経時変化に基づいて、前記対象者の精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定し、
前記精神状態に関するスクリーニングデータを出力する、
スクリーニングシステム。
【請求項2】
前記入力データが、自由入力された自然文を含むテキストデータである、請求項1に記載のスクリーニングシステム。
【請求項3】
前記少なくとも一つのプロセッサが、前記入力データに基づいて、前記対象者の症状が認知症の症状に該当するかどうかを判定する、請求項1または2に記載のスクリーニングシステム。
【請求項4】
前記経時変化が、前記対象者の症状が継続している期間を示す継続期間、および、前記対象者の症状が出現するタイミングを示す変動性を含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、前記継続期間および前記変動性の組み合わせに基づいて、前記精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のスクリーニングシステム。
【請求項5】
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記経時変化を特定するための質問を生成し、
前記質問に対する回答を取得し、
前記回答に基づいて前記継続期間および前記変動性を確定する、
請求項4に記載のスクリーニングシステム。
【請求項6】
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記対象者の症状の原因候補を示す原因情報を取得し、
前記原因情報に基づいて、前記精神状態の原因を特定する、
請求項1~5のいずれか一項に記載のスクリーニングシステム。
【請求項7】
前記少なくとも一つのプロセッサが、各精神状態に予め関連付けられている各対応方法から、前記精神状態に対応する前記対応方法を取得する、請求項6に記載のスクリーニングシステム。
【請求項8】
少なくとも一つのプロセッサを備えるスクリーニングシステムによって実行されるスクリーニング方法であって、
対象者の症状を示す入力データを取得するステップと、
前記入力データに基づいて前記対象者の症状の経時変化を特定するステップと、
前記経時変化に基づいて、前記対象者の精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定するステップと、
前記精神状態に関するスクリーニングデータを出力するステップと
を含むスクリーニング方法。
【請求項9】
対象者の症状を示す入力データを取得するステップと、
前記入力データに基づいて前記対象者の症状の経時変化を特定するステップと、
前記経時変化に基づいて、前記対象者の精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定するステップと、
前記精神状態に関するスクリーニングデータを出力するステップと
をコンピュータに実行させるスクリーニングプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、精神状態の判定を支援するスクリーニングシステム、スクリーニング方法、およびスクリーニングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、認知症の状態を判断する技術が研究されている。例えば特許文献1には、認知症の重症度が既知である患者の会話を用いて予測モデルを構築し、予測対象とする患者の会話を予測モデルに入力することにより、認知症の重症度を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-042659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
認知症と類似した症状が現われる、せん妄という状態がある。特に医学的知識を持たない人にとって、せん妄は認知症との区別が困難となっている。特許文献1に記載の技術は、患者の状態がせん妄であるか、または認知症であるかを判定する技術ではない。そこで、せん妄または認知症に関する状況を適切に把握することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るスクリーニングシステムは、少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、対象者の症状を示す入力データを取得し、入力データに基づいて対象者の症状の経時変化を特定し、経時変化に基づいて、対象者の精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定し、精神状態に関するスクリーニングデータを出力する。
【0006】
このような側面においては、対象者の症状を示す入力データに基づいて、その症状の経時変化が特定される。そして、その経時変化に基づいて、精神状態がせん妄に該当するか、認知症に該当するかが自動的に判定される。せん妄と認知症との間では症状の経時変化が異なる。この相違点に着目した判定処理によって、せん妄または認知症に関する対象者の状況を適切に把握することができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、せん妄または認知症に関する対象者の状況を適切に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るスクリーニングシステムの構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係るスクリーニングシステムに関連するハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】実施形態に係るスクリーニングシステムに関連する機能構成の一例を示す図である。
図4】第1の辞書に格納されるデータの一例を示す図である。
図5】第2の辞書に格納されるデータの一例を示す図である。
図6】第3の辞書に格納されるデータの一例を示す図である。
図7】第4の辞書に格納されるデータの一例を示す図である。
図8】実施形態に係るスクリーニングシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
図9】テキストデータの類似度を推定する処理の詳細な一例を示すフローチャートである。
図10】症状の経時変化を特定する処理の詳細な一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[システムの概要]
実施形態に係るスクリーニングシステムは、対象者の精神状態の判定を支援するコンピュータシステムである。対象者とは、精神状態の鑑別を受ける人をいう。対象者としては、例えば患者、被介護者、健康診断の受診者等が挙げられる。精神状態とは、体の精神的側面がどのような調子であるかを示し、例えば疾患(病気)を含む概念である。精神状態としては、例えばせん妄、認知症、またはいずれにも該当しない状態等が挙げられる。せん妄とは、急性の脳機能障害である。認知症とは、例えば認知機能の低下等を伴う症状または状態の総称である。せん妄の症状は、認知症の症状と類似する。せん妄は、認知症とは別に発症することがあるだけでなく、認知症と合併して発症することもあり得る。「支援する」とは、対象者の精神状態を判定した結果に関する情報を提供することをいう。
【0011】
スクリーニングシステムは、対象者の精神状態に関する情報を示す電子データであるスクリーニングデータを出力する。スクリーニングデータの表現形式は限定されず、例えばスクリーニングデータは文書、画像(例えば写真、映像など)、またはこれらの組合せによって表現されてもよい。スクリーニングシステムは、例えばスクリーニングデータをユーザ端末に送信することによって、スクリーニングデータをユーザに提供する。ユーザとは、スクリーニングシステムから情報を得ようとする人である。ユーザとしては、例えば対象者自身、対象者を観察可能な人(例えば介護者、同居者など)等が挙げられる。ユーザは医学的知識を持たない人であってもよいし、その知識を持つ人でもよい。スクリーニングデータは、ユーザからさらに第三者に提供されてもよい。第三者としては、例えば医療機関、保険会社等が挙げられる。スクリーニングデータは、例えば対象者が受診すべき医療機関の選択、診療の負荷軽減、保険金の支払審査、健康診断等の目的で利用され得る。
【0012】
本開示において、データまたは情報を第1コンピュータから第2コンピュータ“に送信する”との表現は、該第2コンピュータに最終的にデータまたは情報を届けるための送信を意味する。この表現は、その送信において別のコンピュータまたは通信装置がデータまたは情報を中継する場合も含む意味であることに留意されたい。
【0013】
[システムの構成]
図1は、実施形態に係るスクリーニングシステム1の構成の一例を示す図である。本実施形態に係るスクリーニングシステム1は、通信ネットワークNを介して、ユーザ端末20と接続される。通信ネットワークNの構成は限定されない。例えば、通信ネットワークNはインターネットを含んで構成されてもよいし、イントラネットを含んで構成されてもよい。スクリーニングシステム1は、サーバ10およびデータベース30を備える。サーバ10は、データベース30と通信可能なように接続される。
【0014】
サーバ10は、対象者の精神状態の判定を支援するコンピュータである。サーバ10は、一つまたは複数のコンピュータから構成されてもよい。本実施形態において、サーバ10は、ユーザ端末20から対象者の症状を示す入力データを取得する。サーバ10は、入力データに基づいて対象者の精神状態を判定する。サーバ10は、対象者の精神状態に関するスクリーニングデータをユーザ端末20に送信する。
【0015】
ユーザ端末20は、ユーザによって使用されるコンピュータである。ユーザ端末20は、ユーザの操作により、対象者の症状を示す入力データの入力を受け付ける。ユーザ端末20は、入力データをスクリーニングシステム1に送信する。ユーザ端末20は、スクリーニングシステム1から受信したスクリーニングデータに基づいて各種情報を表示する。ユーザ端末20の種類および構成は限定されない。例えば、ユーザ端末20は高機能携帯電話機(スマートフォン)、タブレット端末、ウェアラブル端末(例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、スマートグラスなど)、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、携帯電話機などの携帯端末でもよい。あるいは、ユーザ端末20はデスクトップ型パーソナルコンピュータなどの据置型端末でもよい。図1では、単一のユーザ端末20を示すが、ユーザ端末20の個数は限定されない。
【0016】
データベース30は、スクリーニングシステム1に用いられるデータを記憶する非一時的な記憶媒体または記憶装置である。本実施形態では、データベース30は、対象者の精神状態を判定するための各種辞書、およびユーザ端末20から受信した入力データのログを記憶する。以下、データベース30は複数のデータベースの集合であるとして説明するが、単一のデータベースとして構築されてもよい。
【0017】
図2は、実施形態に係るスクリーニングシステム1に関連するハードウェア構成の一例を示す図である。図2は、サーバ10として機能するサーバコンピュータ100と、ユーザ端末20として機能する端末コンピュータ200とを示す。
【0018】
一例では、サーバコンピュータ100はハードウェア構成要素として、プロセッサ101、主記憶部102、補助記憶部103、および通信部104を備える。
【0019】
プロセッサ101は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する演算装置である。プロセッサの例としてCPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)が挙げられるが、プロセッサ101の種類はこれらに限定されない。
【0020】
主記憶部102は、サーバ10を実現するためのプログラム、プロセッサ101から出力された演算結果などを記憶する装置である。主記憶部102は例えばROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)のうちの少なくとも一つにより構成される。
【0021】
補助記憶部103は、一般に主記憶部102よりも大量のデータを記憶することが可能な装置である。補助記憶部103は例えばハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体によって構成される。補助記憶部103は、サーバコンピュータ100をサーバ10として機能させるためのサーバプログラムP1と各種のデータとを記憶する。本実施形態において、スクリーニングプログラムはサーバプログラムP1として実装される。
【0022】
通信部104は、通信ネットワークNを介して他のコンピュータとの間でデータ通信を実行する装置である。通信部104は例えばネットワークカードまたは無線通信モジュールにより構成される。
【0023】
サーバ10の各機能要素は、プロセッサ101または主記憶部102の上にサーバプログラムP1を読み込ませてプロセッサ101にそのプログラムを実行させることで実現される。サーバプログラムP1は、サーバ10の各機能要素を実現するためのコードを含む。プロセッサ101はサーバプログラムP1に従って通信部104を動作させ、主記憶部102または補助記憶部103におけるデータの読み出しおよび書き込みを実行する。このような処理によりサーバ10の各機能要素が実現される。
【0024】
サーバ10は、一つまたは複数のコンピュータにより構成され得る。複数のコンピュータが用いられる場合には、通信ネットワークNを介してこれらのコンピュータが互いに接続されることで、論理的に一つのサーバ10が構成される。
【0025】
一例では、端末コンピュータ200はハードウェア構成要素として、プロセッサ201、主記憶部202、補助記憶部203、通信部204、入力インタフェース205、および出力インタフェース206を備える。
【0026】
プロセッサ201は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する演算装置である。プロセッサ201は例えばCPUまたはGPUであり得るが、プロセッサ201の種類はこれらに限定されない。
【0027】
主記憶部202は、ユーザ端末20を実現させるためのプログラム、プロセッサ201から出力された演算結果などを記憶する装置である。主記憶部202は例えばROMおよびRAMのうちの少なくとも一つにより構成される。
【0028】
補助記憶部203は、一般に主記憶部202よりも大量のデータを記憶することが可能な装置である。補助記憶部203は例えばハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体によって構成される。補助記憶部203は、端末コンピュータ200をユーザ端末20として機能させるためのクライアントプログラムP2と各種のデータとを記憶する。
【0029】
通信部204は、通信ネットワークNを介して他のコンピュータとの間でデータ通信を実行する装置である。通信部204は例えばネットワークカードまたは無線通信モジュールにより構成される。
【0030】
入力インタフェース205は、ユーザの操作または動作に基づいてデータを受け付ける装置である。例えば、入力インタフェース205は、キーボード、操作ボタン、ポインティングデバイス、タッチパネル、マイクロフォン、センサ、およびカメラのうちの少なくとも一つによって構成される。
【0031】
出力インタフェース206は、端末コンピュータ200で処理されたデータを出力する装置である。例えば、出力インタフェース206はモニタ、タッチパネル、HMDおよびスピーカのうちの少なくとも一つによって構成される。
【0032】
ユーザ端末20の各機能要素は、対応するクライアントプログラムP2をプロセッサ201または主記憶部202に読み込ませてプロセッサ201にそのプログラムを実行させることで実現される。クライアントプログラムP2は、ユーザ端末20の各機能要素を実現するためのコードを含む。プロセッサ201はクライアントプログラムP2に従って通信部204、入力インタフェース205、または出力インタフェース206を動作させ、主記憶部202または補助記憶部203におけるデータの読み出しおよび書き込みを行う。この処理によりユーザ端末20の各機能要素が実現される。
【0033】
サーバプログラムP1およびクライアントプログラムP2の少なくとも一つは、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に非一時的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、これらのプログラムの少なくとも一つは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークNを介して提供されてもよい。これらのプログラムは別々に提供されてもよいし、一緒に提供されてもよい。
【0034】
図3は、実施形態に係るスクリーニングシステム1に関連する機能構成の一例を示す図である。サーバ10は、機能要素として取得部11、症状判定部12、時間判定部13、状態判定部14、原因判定部15、対応方法取得部16、および出力部17を備える。
【0035】
取得部11は、対象者の症状を示す入力データを取得する機能要素である。症状判定部12は、入力データに基づいて、対象者の症状が認知症の症状に該当するかどうかを判定する機能要素である。時間判定部13は、入力データに基づいて対象者の症状の経時変化を特定する機能要素である。状態判定部14は、経時変化に基づいて、対象者の精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定する機能要素である。原因判定部15は、対象者の症状の原因候補を示す原因情報を取得し、原因情報に基づいて、精神状態の原因を特定する機能要素である。対応方法取得部16は、各精神状態に予め関連付けられている各対応方法から、精神状態に対応する対応方法を取得する機能要素である。出力部17は、精神状態に関するスクリーニングデータを出力する機能要素である。
【0036】
ユーザ端末20は、機能要素として入力部21および表示部22を備える。入力部21は、対象者の症状を示す入力データの入力を受け付ける機能要素である。入力部21は、例えばテキスト入力、入力項目の選択、音声入力、またはこれらの組み合わせ等により、入力データの入力を受け付けてもよい。表示部22は、スクリーニングデータに基づいて、精神状態に関する情報を表示する機能要素である。
【0037】
データベース30は、複数のデータベースの集合であり、第1の辞書31、第2の辞書32、第3の辞書33、第4の辞書34、および入力ログデータベース35を含む。第1の辞書31は、症状名とその表現例とを関連付けて記憶する概念辞書である。概念辞書とは、自然言語における単語の意味、および複数の単語の間の意味の関係を記憶するデータベースをいう。第2の辞書32は、時間に関するキーワードとその期間とを関連付けて記憶する概念辞書である。第3の辞書33は、精神状態とその原因とを関連付けて記憶する概念辞書である。第4の辞書34は、各精神状態とその対応方法とを関連付けて記憶する概念辞書である。入力ログデータベース35は、入力データに含まれる各種情報を記憶するデータベースである。
【0038】
図4は、第1の辞書31に格納されるデータの一例を示す図である。第1の辞書31は、認知症の症状名(symptom)とその表現例(entityおよびexample)とを関連付けて記憶する概念辞書である。一例では、第1の辞書31は、認知機能障害に関する症状名として、「物忘れ」、「理解または判断力の低下」、および「見当識障害」を記憶している。第1の辞書31は、症状名「物忘れ」に関連付けて、例えば「忘れる」、「何度も」、「予定を忘れる」、「何度も同じ話をする」等の表現例を記憶している。
【0039】
図5は、第2の辞書32に格納されるデータの一例を示す図である。第2の辞書32は、時間に関するキーワードを記憶している。例えば、第2の辞書32は、時刻(at)を示すキーワードとして、「時」、「頃」「日中」、および「夕方」を記憶している。同様に、第2の辞書は、例えば期間(duration)、期間の接尾辞(du-suffix)、相対的な時間(relative)、相対的な時間の接尾辞(re-suffix)、絶対的な時間(absolute)、絶対的な時間の接尾辞(ab-suffix)等を示すそれぞれのキーワードを記憶している。また、第2の辞書32は、キーワードごとに、対象者の症状が継続している期間を示す継続期間を関連付けて記憶している。継続期間は、例えば「短い」または「長い」の2通りの意味を含む。一例では、第2の辞書32は、相対的な時間を示すキーワード「最近」に関連付けて、継続期間「短い」を記憶している。
【0040】
図6は、第3の辞書33に格納されるデータの一例を示す図である。第3の辞書33は、精神状態とその原因(cause)とを関連付けて記憶している。一例では、第3の辞書33は、精神状態「せん妄」と、せん妄の原因「薬剤」、「依存」、「痛み」、「便秘」、および「脱水」とを関連付けて記憶している。また、第3の辞書33は、原因とその表現例とを関連付けて記憶している。原因「脱水」の表現例としては、例えば「嘔吐」、「下痢」、「水分」、「喉がかわく」、「トイレの回数が減っている」等が挙げられる。
【0041】
図7は、第4の辞書34に格納されるデータの一例を示す図である。第4の辞書34は、各精神状態とその対応方法(cure)とを関連付けて記憶している。例えば、第4の辞書34は、精神状態「せん妄」の原因別に対応方法を記憶している。対応方法としては、例えば対象者が受診すべき医療機関を示すメッセージ等が挙げられる。一例では、第4の辞書34は、精神状態「薬剤によるせん妄」と、対応方法「かかりつけ医やかかりつけ薬局に相談しましょう」とを関連付けて記憶している。
【0042】
[システムの動作]
図8は、実施形態に係るスクリーニングシステム1の動作の一例を処理フローS1として示すフローチャートである。本実施形態において、入力データは、対象者の基本情報(例えば、年齢、性別、既往歴、服薬等)、およびユーザ端末20に対して自由入力された自然文を含むテキストデータである。テキストデータとは、文または文章を示す電子データをいう。自然文は、対象者の症状を表す会話文であってもよい。入力データは、例えば自然文として「最近、同じものを何度も買ってくる。」を含む。
【0043】
取得部11は、対象者の症状を示す入力データを取得する(ステップS10)。例えば、取得部11は、ユーザ端末20から入力データを受信する。あるいは、取得部11は、データベース30または外部の記憶装置等に予め記憶された入力データを取得してもよい。取得部11は、対象者の症状の入力を直接受け付けることにより、入力データを取得してもよい。取得部11は、ステップS11以降の処理において、必要に応じて入力データをさらに取得してもよい。取得部11は、自然文の入力を促すような対話形式により、ユーザ端末20から入力データを受信してもよい。
【0044】
取得部11は、取得した入力データに含まれる各種情報を入力ログとして、入力ログデータベース35に格納する。取得部11は、例えば入力データを一意に識別する識別子に関連付けて、入力データの各種情報を入力ログデータベース35に格納してもよい。サーバ10の各機能要素は、それぞれの処理に用いるために、入力ログデータベース35から入力ログを取得してもよい。
【0045】
症状判定部12は、入力データに基づいて、対象者の症状が認知症の症状に該当するかどうかを判定する(ステップS11)。例えば、症状判定部12は、第1の辞書31に記憶されている認知症の症状の表現例と、入力データの自然文との類似度を推定する。
【0046】
図9を参照して、ステップS11の処理について説明する。図9は、第1のデータと、第2のデータとの類似度を推定する処理の詳細な一例を示すフローチャートである。第1のデータは、比較の基準となるテキストデータの集合である。第2のデータは、比較の対象となるテキストデータである。
【0047】
症状判定部12は、辞書から第1のデータを取得する(ステップS110)。例えば、症状判定部12は、第1の辞書31から認知症の症状の表現例を第1のデータとして取得する。一例では、症状判定部12は、物忘れの表現例として、「忘れる」、「何度も」、「予定を忘れる」、および「何度も同じ話をする」を第1のデータとして取得する。
【0048】
症状判定部12は、第1のデータに対し、テキストのベクトル化を実行する(ステップS111)。テキストのベクトル化とは、テキストデータを数値化すること(テキストデータを、ベクトル空間の表現である分散表現に変換すること)をいう。例えば、症状判定部12は、第1のデータに対し形態素解析を行った上で、各単語をベクトル化する。テキストのベクトル化を行うツールおよびアルゴリズムは限定されない。一例では、症状判定部12は、Word2Vecを用いてテキストのベクトル化を実行してもよい。Word2Vecは、ニューラルネットワークを用いた機械学習モデルにより、テキストをベクトル化する手法の一つである。機械学習モデルは、せん妄または認知症に関する医師の診断データを基にして予め学習済みであることを前提とする。以下、第1のデータを基にして生成されたベクトルを第1のベクトルという。第1のベクトルは、ベクトルの集合である。一例では、第1のベクトルは、物忘れの表現例として、「忘れる」、「何度も」、「予定を忘れる」、および「何度も同じ話をする」をそれぞれ示すベクトルの集合である。
【0049】
症状判定部12は、入力データから第2のデータを取得する(ステップS112)。例えば、症状判定部12は、入力データの自然文を第2のデータとして取得する。一例では、症状判定部12は、自然文「最近、同じものを何度も買ってくる。」を第2のデータとして取得する。
【0050】
症状判定部12は、第2のデータのベクトル化を実行する(ステップS113)。症状判定部12は、ステップS111の処理と同様の手法を用いて第2データのベクトル化を実行してもよい。以下、第2のデータを基にして生成されたベクトルを第2のベクトルという。第2のベクトルは、第2のデータの単語数等に対応して次元数が変動し得る。
【0051】
ステップS110~S111の処理、および、ステップS112~S113の処理は、同時に実行されてもよく、別々に実行されてもよい。例えば、ステップS110の処理およびステップS111の処理は、予め実行されてもよい。第1のベクトルは、データベース30または外部の記憶装置に記憶されてもよい。
【0052】
症状判定部12は、第2のベクトルの次元を削除する(ステップS114)。「次元を削除する」とは、ベクトルをより低次元のベクトルに変換することをいう。例えば、症状判定部12は、第2のベクトルをより低次元のベクトルに変換する。症状判定部12は、第1のベクトルの次元数と第2のベクトルの次元数とを一致させるように、次元を削除してもよい。例えば、症状判定部12は、第1のベクトルの次元数および第2のベクトルの次元数のうち、いずれか少ない次元数に合わせるように、いずれかのベクトルの次元を削除してもよい。あるいは、症状判定部12は、予め定められた次元数となるように、第1のベクトルの次元および第2のベクトルの次元を削除してもよい。
【0053】
症状判定部12は、第1のベクトルと第2のベクトルとの類似度を推定する(ステップS115)。類似度の推定手法は限られない。症状判定部12は、類似度の推定手法として、例えばコサイン類似度、LightGBM(Light Gradient Boosting Machine)等を用いてもよい。症状判定部12は、第1のベクトル(ベクトルの集合)のうちのそれぞれのベクトルと第2のベクトルとのコサイン類似度を算出してもよい。一例では、症状判定部12は、表現例「何度も」を示す第1のベクトルと、自然文「最近、同じものを何度も買ってくる。」を示す第2のベクトルとの類似度が最も高いと特定してもよい。
【0054】
図8に戻って、症状判定部12は、対象者に認知症の症状があるかどうかを判定する(ステップS12)。症状判定部12は、ステップS11の処理によって算出された類似度に基づいて、対象者に認知症の症状があるかどうかを判定する。例えば、類似度が予め定められた閾値以上であれば、症状判定部12は、対象者が認知症の症状に該当すると判定してもよい。類似度が予め定められた閾値未満であれば、症状判定部12は、対象者が認知症の症状に該当しないと判定してもよい。対象者が認知症の症状に該当する場合(ステップS12においてYES)、処理はステップS13に進む。対象者が認知症の症状に該当しない場合(ステップS12においてNO)、処理はステップS19に進む。
【0055】
時間判定部13は、入力データに基づいて対象者の症状の経時変化を特定する処理を実行する(ステップS13)。一例では、時間判定部13は、対象者の症状が継続している期間を示す継続期間、および、対象者の症状が出現するタイミングを示す変動性を特定する。
【0056】
図10を参照して、ステップS13の詳細を説明する。図10は、対象者の症状の経時変化を特定する処理の詳細な一例を示すフローチャートである。
【0057】
時間判定部13は、入力テキストを取得する(ステップS130)。例えば、時間判定部13は、入力データの自然文を入力テキストとして取得する。取得部11は、入力データをさらに取得してもよい。一例では、時間判定部13は、自然文「最近、夕方になると、自分の家なのに家に帰ると言い出す。」を入力テキストとして取得する。
【0058】
時間判定部13は、入力テキストを解析し、時間に関するキーワードを特定する(ステップS131)。例えば、時間判定部13は、入力テキストに対し構文解析を実行して、第2の辞書32に記憶されている時間に関するキーワードを特定する。一例では、時間判定部13は、入力テキストから時間に関するキーワード「最近」および「夕方になる」を特定する。
【0059】
時間判定部13は、時間に関するキーワードに基づいて、継続期間を特定する(ステップS132)。ここで、第2の辞書32は、キーワードごとに継続期間を関連付けて記憶している。一例では、時間判定部13は、キーワード「最近」の継続期間が「短い」ことを特定する。
【0060】
時間判定部13は、時間に関するキーワードと構文の係り受けとに基づいて、変動性を特定する(ステップS133)。時間判定部13は、例えば「症状の変動が大きい」、または「症状の変動が小さい」ことを変動性として特定してもよい。例えば、時間判定部13は、一日のうちのどの時間帯(時間窓)に症状が出現しているかを変動性として特定する。一例では、時間判定部13は、変動性として「夕方になる」を特定する。
【0061】
時間判定部13は、経時変化を特定するための質問を生成する(ステップS134)。例えば、時間判定部13は、例えば「はい」または「いいえ」によって回答可能な質問を質問ルールに基づいて生成する。質問ルールは、継続期間および変動性について、未確定な情報を確認するルールである。より具体的には、質問ルールは、「特定の時間xに症状が現れる」場合に、「x以外の時間yに症状が現れるか」を確認する内容であってもよい。一例では、変動性として「夕方になる」が特定されている場合、時間判定部13は、「日中にその症状はありますか?」という質問を生成する。時間判定部13は、継続期間および変動性のそれぞれについて、一度に回答可能な質問を生成してもよいし、個別に回答可能な質問を生成してもよい。
【0062】
取得部11は、経時変化を特定するための質問に対する回答を取得する(ステップS135)。例えば、取得部11は、当該質問に対する回答を示すデータをユーザ端末20から受信してもよい。取得部11は、当該質問に対する回答を入力データとして取得してもよい。一例では、取得部11は、「日中にその症状はありますか?」という質問に対し、「いいえ」を示すデータを取得する。時間判定部13は、回答に基づいて継続期間および変動性を確定する。一例では、時間判定部13は、変動性として「夕方」のみに症状が現れることを確定する。このような回答により、時間判定部13は、経時変化をより精緻に特定できる。
【0063】
ステップS131に関連して、時間に関するキーワードが特定不能な場合、取得部11は、入力データの自然文をさらに取得してもよい。時間に関するキーワードが特定不能な場合としては、例えば時間に関するキーワードが入力テキストに含まれていない場合等が挙げられる。ステップS134およびステップS135に関連して、継続期間および変動性について未確定な情報が無い場合、ステップS134の処理およびステップS135の処理は省略されてもよい。
【0064】
図8に戻って、状態判定部14は、経時変化に基づいて、対象者の精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定する(ステップS14)。ここで、せん妄と認知症との間では症状の経時変化が異なる。一例では、せん妄は特定の時間帯に症状が現れる等、症状の変動が大きい。認知症は、せん妄に比べて症状の変動が小さい。
【0065】
状態判定部14は、継続期間および変動性の組み合わせに基づいて、精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定してもよい。例えば、状態判定部14は、継続期間が「短い」ことを示す場合、変動性に関わらず、対象者の精神状態がせん妄であると判定してもよい。状態判定部14は、変動性が「症状の変動が大きい」ことを示す場合、継続期間に関わらず、対象者の精神状態がせん妄であると判定してもよい。状態判定部14は、継続期間が「長い」ことを示し、かつ変動性が「症状の変動が小さい」ことを示す場合、対象者の精神状態が認知症であると判定してもよい。
【0066】
対象者の精神状態がせん妄である場合、処理はステップS15に進む。対象者の精神状態が認知症である場合、処理はステップS16に進む。
【0067】
原因判定部15は、対象者の症状の原因候補を示す原因情報を取得し、原因情報に基づいて、せん妄の原因を特定する(ステップS15)。原因判定部15は、入力データにおける対象者の基本情報(例えば服薬など)を原因情報として取得してもよい。取得部11は、原因情報をユーザ端末20からさらに受信してもよい。ユーザ端末20の入力部21は、例えばテキスト入力、入力項目の選択、音声入力、またはこれらの組み合わせ等により、原因情報の入力を受け付けてもよい。取得部11は、原因情報を入力データとして取得してもよい。原因判定部15は、ステップS11の処理と同様に、類似度を推定する処理を実行する。原因判定部15は、ステップS11の処理における第1のデータとして、第3の辞書33に記憶されている原因の表現例を用いる。また、原因判定部15は、ステップS11の処理における第2のデータとして、原因情報を用いる。
【0068】
原因判定部15は、対象者の症状の原因候補を示す原因情報を取得し、原因情報に基づいて、改善可能な認知症の原因を特定する(ステップS16)。改善可能な認知症とは、治療が可能な認知症をいう。改善可能な認知症の原因としては、例えば正常圧水頭症、うつ病等が挙げられる。原因判定部15は、ステップS15の処理と同様の処理を実行して、改善可能な認知症の原因を特定してもよい。
【0069】
原因判定部15は、認知症の詳細を判定する(ステップS17)。例えば、原因判定部15は、ステップS16の処理によって特定された原因の有無に基づいて、認知症の詳細を判定する。改善可能な認知症の原因が「有り」の場合、原因判定部15は、対象者の精神状態を「改善可能な認知症」と判定する。改善可能な認知症の原因が「無し」の場合、原因判定部15は、対象者の精神状態を「対症療法を要する認知症」と判定する。対症療法とは、主要な症状を軽減するための治療を行う療法をいう。
【0070】
対応方法取得部16は、各精神状態に予め関連付けられている各対応方法から、精神状態に対応する対応方法を取得する(ステップS18)。例えば、対応方法取得部16は、第4の辞書34から対応方法を取得する。一例では、対象者の精神状態が「薬剤によるせん妄」の場合、対応方法取得部16は、対応方法「かかりつけ医やかかりつけ薬局に相談しましょう」を取得する。
【0071】
出力部17は、精神状態に関するスクリーニングデータを出力する(ステップS19)。例えば、出力部17は、スクリーニングデータをユーザ端末20に送信する。スクリーニングデータは、例えば対象者の精神状態、精神状態の原因、および精神状態に関連付けられている対応方法等の情報を含む。
【0072】
ユーザ端末20は、出力部17から出力されたスクリーニングデータを受信する。表示部22は、スクリーニングデータに基づいて、精神状態に関する情報を表示する。このようにして、スクリーニングシステム1は、対象者の精神状態の判定を支援する。
【0073】
ステップS12の処理およびステップS13の処理に関連して、症状判定部12は、第1のベクトルのうちの少なくとも一つが第2のベクトルに類似している場合に、対象者が認知症の症状に該当すると判定してもよい。
【0074】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係るスクリーニングシステムは、少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、対象者の症状を示す入力データを取得し、入力データに基づいて対象者の症状の経時変化を特定し、経時変化に基づいて、対象者の精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定し、精神状態に関するスクリーニングデータを出力する。
【0075】
本開示の一側面に係るスクリーニング方法は、少なくとも一つのプロセッサを備えるスクリーニングシステムによって実行される。スクリーニング方法は、対象者の症状を示す入力データを取得するステップと、入力データに基づいて対象者の症状の経時変化を特定するステップと、経時変化に基づいて、対象者の精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定するステップと、精神状態に関するスクリーニングデータを出力するステップとを含む。
【0076】
本開示の一側面に係るスクリーニングプログラムは、対象者の症状を示す入力データを取得するステップと、入力データに基づいて対象者の症状の経時変化を特定するステップと、経時変化に基づいて、対象者の精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定するステップと、精神状態に関するスクリーニングデータを出力するステップとをコンピュータに実行させる。
【0077】
このような側面においては、対象者の症状を示す入力データに基づいて、その症状の経時変化が特定される。そして、その経時変化に基づいて、精神状態がせん妄に該当するか、認知症に該当するかが自動的に判定される。せん妄と認知症との間では症状の経時変化が異なる。この相違点に着目した判定処理によって、せん妄または認知症に関する対象者の状況を適切に把握することができる。
【0078】
他の側面に係るスクリーニングシステムでは、入力データが、自由入力された自然文を含むテキストデータであってもよい。入力データが自由入力されたテキストデータであるため、入力データに関する入力の煩雑さを減少させると共に、入力の柔軟性を向上させることができる。
【0079】
他の側面に係るスクリーニングシステムでは、少なくとも一つのプロセッサが、入力データに基づいて、対象者の症状が認知症の症状に該当するかどうかを判定してもよい。せん妄では、認知症の症状と類似した症状が現れる。ここで、認知症の症状に該当するかどうかを判定することによって、対象者の精神状態がせん妄もしくは認知症に該当するか、またはいずれにも該当しないかが振り分けられる。これにより、精神状態の判定精度をさらに向上させることができる。
【0080】
他の側面に係るスクリーニングシステムでは、経時変化が、対象者の症状が継続している期間を示す継続期間、および、対象者の症状が出現するタイミングを示す変動性を含み、少なくとも一つのプロセッサが、継続期間および変動性の組み合わせに基づいて、精神状態がせん妄であるか認知症であるかを判定してもよい。この場合には、詳細な経時変化に基づいて判定処理が行われる。これにより、精神状態の判定精度を向上させることができる。
【0081】
他の側面に係るスクリーニングシステムでは、少なくとも一つのプロセッサが、経時変化を特定するための質問を生成し、質問に対する回答を取得し、回答に基づいて継続期間および変動性を確定してもよい。この場合には、より正確な経時変化を特定できるため、精神状態の判定精度を向上させることができる。
【0082】
他の側面に係るスクリーニングシステムでは、少なくとも一つのプロセッサが、対象者の症状の原因候補を示す原因情報を取得し、原因情報に基づいて、精神状態の原因を特定してもよい。精神状態の原因が特定されることにより、精神状態の判定精度を向上させることができる。また、対象者の精神状態がより詳細に把握可能になるため、対象者の症状に対し適切な医学的介入を図ることができる。
【0083】
他の側面に係るスクリーニングシステムでは、少なくとも一つのプロセッサが、各精神状態に予め関連付けられている各対応方法から、精神状態に対応する対応方法を取得してもよい。対応方法がスクリーニングデータとして出力されることにより、対象者の症状に対し適切な医学的介入を図ることができる。
【0084】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0085】
第1の辞書31、第2の辞書32、第3の辞書33および第4の辞書34は、既にデータを記憶しているものとして説明したが、機械学習によりデータが追加されてもよい。サーバ10は、各概念辞書にデータを追加する機能要素として追加部をさらに備えてもよい。例えば、追加部は、入力データの自然文から症状名を推定してもよい。一例では、追加部は、SVM(Support Vector Machine)等の分類器を用いて症状名を推定してもよい。また、追加部は、入力データから症状の表現例候補を抽出してもよい。一例では、追加部は、症状の表現例を学習データとして用いて構築した機械学習モデルを用いて、入力データから症状の表現例候補を抽出してもよい。追加部は、表現例候補が第1の辞書31に記憶されているか否かを判定してもよい。記憶されていない場合、追加部は、表現例候補を新規の表現例として、推定した症状名と新規の表現例とを関連付けて第1の辞書31に追加してもよい。
【0086】
スクリーニングシステムの内部の構成は上記実施形態に限定されず、任意の方針で設計されてよい。例えば、スクリーニングシステムは、サーバ10、ユーザ端末20、およびデータベース30の機能を有する一つのコンピュータを用いて実現されてもよい。あるいは、スクリーニングシステムはより多くの種類のサーバを含んで構成されてもよい。個々のデータベースの設置場所は限定されない。例えば、データベース30は、スクリーニングシステム1とは別のコンピュータシステム内に設けられてもよい。
【0087】
プロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0088】
コンピュータシステム内で二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」および「未満」の二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
【0089】
本開示において、「プロセッサが、第1の処理を実行し、第2の処理を実行し、…第nの処理を実行する。」との表現、またはこれに対応する表現は、第1の処理から第nの処理までのn個の処理の実行主体(すなわちプロセッサ)が途中で変わる場合を含む概念を示す。すなわち、この表現は、n個の処理のすべてが同じプロセッサで実行される場合と、n個の処理においてプロセッサが任意の方針で変わる場合との双方を含む概念を示す。
【符号の説明】
【0090】
1…スクリーニングシステム、10…サーバ、11…取得部、12…症状判定部、13…時間判定部、14…状態判定部、15…原因判定部、16…対応方法取得部、17…出力部、20…ユーザ端末、21…入力部、22…表示部、30…データベース、31…第1の辞書、32…第2の辞書、33…第3の辞書、34…第4の辞書、35…入力ログデータベース、100…サーバコンピュータ、101…プロセッサ、102…主記憶部、103…補助記憶部、104…通信部、200…端末コンピュータ、201…プロセッサ、202…主記憶部、203…補助記憶部、204…通信部、205…入力インタフェース、206…出力インタフェース、N…通信ネットワーク、P1…サーバプログラム、P2…クライアントプログラム。
図1
図2
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