(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115589
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/53 20140101AFI20220802BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20220802BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20220802BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/064 A
B23K26/00 P
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012241
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】荻原 孝文
(72)【発明者】
【氏名】奥間 惇治
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA02
4E168CA06
4E168EA11
4E168JA12
5F063AA21
5F063DD32
(57)【要約】
【課題】レーザ光のコリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断する。
【解決手段】レーザ加工装置1は、対象物11にレーザ光Lを照射することにより、対象物11の内部に改質領域12を形成する。レーザ加工装置1は、支持部2と、レーザ光源3と、空間光変調器5と、集光部6と、スポット観察用カメラ8と、制御部10と、を備える。制御部10は、空間光変調器5で変調したレーザ光Lのコリメート状態を監視する監視モードを実行する。監視モードでは、コリメート状態に応じてスポット観察用カメラ8の撮像結果を規則的に変化させる変調パターンである監視用パターンを、空間光変調器5の表示部51に表示させると共に、当該空間光変調器5で変調したレーザ光Lについてのスポット観察用カメラ8による撮像結果に関する情報を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にレーザ光を照射することにより、前記対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源で出射した前記レーザ光が入射する表示部を有し、前記表示部に表示させた変調パターンに応じて前記レーザ光を変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器で変調した前記レーザ光を、前記支持部に支持された前記対象物に集光する集光部と、
前記空間光変調器で変調した前記レーザ光をレンズを介して受光する撮像部と、
前記空間光変調器で変調した前記レーザ光のコリメート状態を監視する監視モードを実行する監視モード実行部と、を備え、
前記監視モードでは、
前記コリメート状態に応じて前記撮像部の撮像結果を規則的に変化させる変調パターンである監視用パターンを、前記空間光変調器の前記表示部に表示させると共に、当該空間光変調器で変調した前記レーザ光についての前記撮像部による撮像結果に関する情報を出力する、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記監視用パターンは、前記コリメート状態に応じて、前記撮像部で撮像された前記レーザ光のビーム形状の楕円率が変化する変調パターンである、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記監視用パターンは、前記コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた場合に、前記撮像部で撮像された前記レーザ光のビーム形状が楕円形状となり、且つ、前記コリメート状態が平行な状態の場合に、前記撮像部で撮像された前記レーザ光のビーム形状が真円形状又は当該楕円形状よりも真円に近い形状となる変調パターンである、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記監視用パターンは、前記レーザ光に非点収差を付与する変調パターンである非点収差パターンである、請求項2又は3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記監視用パターンは、シリンドリカルレンズの作用を実現するように生成された変調パターンであるシリンドリカルレンズパターンである、請求項2又は3に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記監視モードでは、前記撮像部の撮像結果に関する情報の出力として、前記撮像部で撮像された前記レーザ光のビーム形状の楕円率に関する情報を出力する、請求項2~5の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記楕円率に関する情報は、前記レーザ光の光軸に直交する第1方向における前記ビーム形状の幅と、前記レーザ光の光軸及び前記第1方向に直交する第2方向における前記ビーム形状の幅と、を含む、請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記監視用パターンは、前記コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれるほど前記楕円率が1から離れていくように変化する変調パターンであり、
前記監視モードでは、
前記撮像部で撮像された前記レーザ光のビーム形状の楕円率が規定範囲内か否かを判定し、
前記楕円率が前記規定範囲外と判定された場合、前記撮像部の撮像結果に関する情報の出力として、注意喚起の報知を出力する、請求項2~7の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記監視用パターンは、前記コリメート状態に応じて、前記撮像部で撮像された前記レーザ光の強度についての所定方向におけるラインプロファイルのピーク数が変化する変調パターンである、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記監視用パターンは、前記レーザ光を、集光点の位置が前記所定方向及び前記レーザ光の光軸方向に互いに離れた少なくとも2つの分岐レーザ光へ分岐させる変調パターンであるデフォーカスパターンである、請求項9に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記監視モード実行部は、
ユーザからの入力を受け付ける入力受付部を有しており、
前記入力受付部を介して前記監視モードを開始させる入力がユーザからなされた場合に、前記監視モードを開始する、請求項1~10の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記監視モード実行部は、前記撮像部の撮像結果に関する情報を表示する情報表示部を有し、
前記監視モードでは、前記撮像部の撮像結果に関する情報の出力として、前記撮像部で撮像した前記レーザ光のビーム形状に関する画像を前記情報表示部に表示する、請求項1~11の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記レーザ光の光路における前記レーザ光源と前記空間光変調器との間に配置され、前記コリメート状態を調整するコリメート状態調整部を備え、
前記監視モードでは、前記撮像部の撮像結果に応じて、前記コリメート状態が平行な状態となるように前記コリメート状態調整部を調整するためのガイドを報知する、請求項1~12の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記撮像部は、前記レーザ光の光路における前記空間光変調器と前記集光部との間から分岐した前記レーザ光の一部を、前記レンズを介して受光する、請求項1~13の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
前記撮像部は、前記対象物で反射された前記レーザ光を、前記集光部及び前記レンズを介して受光する、請求項1~13の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項16】
対象物にレーザ光を照射することにより、前記対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源で出射した前記レーザ光が入射する表示部を有し、前記表示部に表示させた監視用パターンに応じて前記レーザ光を変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器で変調した前記レーザ光を、前記支持部に支持された前記対象物に集光する集光部と、
前記空間光変調器で変調した前記レーザ光をレンズを介して受光する撮像部と、
前記撮像部の撮像結果に関する情報を表示する情報表示部と、を備え、
前記監視用パターンは、前記レーザ光のコリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた場合に、前記撮像部で撮像された前記レーザ光のビーム形状が楕円形状となり、且つ、前記コリメート状態が平行な状態の場合に、前記撮像部で撮像された前記レーザ光のビーム形状が真円形状又は当該楕円形状よりも真円に近い形状となる変調パターンであり、
前記情報表示部は、前記撮像部で撮像された前記レーザ光のビーム形状の楕円率に関する情報を表示する、レーザ加工装置。
【請求項17】
対象物にレーザ光を照射することにより、前記対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工方法であって、
空間光変調器で変調した前記レーザ光のコリメート状態を監視する監視ステップを備え、
前記監視ステップは、
前記コリメート状態に応じて、前記空間光変調器で変調した前記レーザ光をレンズを介して受光する撮像部の撮像結果を規則的に変化させる変調パターンである監視用パターンを、前記空間光変調器の表示部に表示する第1ステップと、
レーザ光源から前記レーザ光を出射し、出射した前記レーザ光を前記空間光変調器の前記表示部に入射させ、前記表示部に表示させた前記監視用パターンに応じて前記レーザ光を変調すると共に、変調した前記レーザ光をレンズを介して前記撮像部で受光する第2ステップと、
変調した前記レーザ光についての前記撮像部による撮像結果に関する情報を出力する第3ステップと、を有する、レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物にレーザ光を照射することにより、対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなレーザ加工装置は、対象物を支持する支持部と、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源で出射したレーザ光を変調する空間光変調器と、空間光変調器で変調したレーザ光を支持部に支持された対象物に集光する集光部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレーザ加工装置では、例えば対象物の内部に改質領域を精度よく形成するために、空間光変調器で変調したレーザ光のコリメート状態を最適化することが重要である。この点、上述したようなレーザ加工装置では、例えばレーザ光の光路上に配置されたレンズ等の光学部材を光路に沿って動かしてみないと、当該コリメート状態が最適なものかどうか判断することは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、レーザ光のコリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断することが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレーザ加工装置は、対象物にレーザ光を照射することにより、対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、対象物を支持する支持部と、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源で出射したレーザ光が入射する表示部を有し、表示部に表示させた変調パターンに応じてレーザ光を変調する空間光変調器と、空間光変調器で変調したレーザ光を、支持部に支持された対象物に集光する集光部と、空間光変調器で変調したレーザ光をレンズを介して受光する撮像部と、空間光変調器で変調したレーザ光のコリメート状態を監視する監視モードを実行する監視モード実行部と、を備え、監視モードでは、コリメート状態に応じて撮像部の撮像結果を規則的に変化させる変調パターンである監視用パターンを、空間光変調器の表示部に表示させると共に、当該空間光変調器で変調したレーザ光についての撮像部の撮像結果に関する情報を出力する。
【0007】
このレーザ加工装置では、監視モードが実行されると、監視用パターンが空間光変調器の表示部に表示されてレーザ光が変調され、そのレーザ光がレンズを介して撮像部で受光され、撮像部の撮像結果に関する情報が出力される。撮像部の撮像結果は、監視用パターンによってレーザ光のコリメート状態(以下、単に「コリメート状態」ともいう)に応じて規則的に変化することから、出力された当該撮像結果に関する情報に基づくことで、レーザ光の光路上に配置されたレンズ等を動かすことなく、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。すなわち、レーザ光のコリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断することが可能となる。
【0008】
本発明に係るレーザ加工装置では、監視用パターンは、コリメート状態に応じて、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状の楕円率が変化する変調パターンであってもよい。この場合、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状の楕円率に基づくことで、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0009】
本発明に係るレーザ加工装置では、監視用パターンは、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた場合に、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状が楕円形状となり、且つ、コリメート状態が平行な状態の場合に、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状が真円形状又は当該楕円形状よりも真円に近い形状となる変調パターンであってもよい。この場合、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状が楕円形状であるか、真円形状又は当該楕円形状よりも真円に近い形状であるかに基づくことで、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0010】
本発明に係るレーザ加工装置では、監視用パターンは、レーザ光に非点収差を付与する変調パターンである非点収差パターンであってもよい。これにより、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた場合に、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状が楕円形状となり、且つ、コリメート状態が平行な状態の場合に、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状が真円形状又は当該楕円形状よりも真円に近い形状となることを、具体的に実現できる。
【0011】
本発明に係るレーザ加工装置では、監視用パターンは、シリンドリカルレンズの作用を実現するように生成された変調パターンであるシリンドリカルレンズパターンであってもよい。これにより、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた場合に、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状が楕円形状となり、且つ、コリメート状態が平行な状態の場合に、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状が真円形状又は当該楕円形状よりも真円に近い形状となることを、具体的に実現できる。
【0012】
本発明に係るレーザ加工装置において、監視モードでは、撮像部の撮像結果に関する情報の出力として、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状の楕円率に関する情報を出力してもよい。この場合、出力された楕円率に関する情報から、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0013】
本発明に係るレーザ加工装置では、楕円率に関する情報は、レーザ光の光軸に直交する第1方向におけるビーム形状の幅と、レーザ光の光軸及び第1方向に直交する第2方向におけるビーム形状の幅と、を含んでいてもよい。この場合、第1方向及び第2方向におけるビーム形状の幅から、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0014】
本発明に係るレーザ加工装置では、監視用パターンは、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれるほど楕円率が1から離れていくように変化する変調パターンであり、監視モードでは、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状の楕円率が規定範囲内か否かを判定し、楕円率が規定範囲外と判定された場合、撮像部の撮像結果に関する情報の出力として、注意喚起の報知を出力してもよい。これにより、例えばコリメート状態が発散側又は収束側に一定以上ずれるような装置異常が発生した場合に、ユーザへ注意喚起することができる。
【0015】
本発明に係るレーザ加工装置では、監視用パターンは、コリメート状態に応じて、撮像部で撮像されたレーザ光の強度についての所定方向におけるラインプロファイルのピーク数が変化する変調パターンであってもよい。この場合、撮像部で撮像されたレーザ光の強度についての所定方向におけるラインプロファイルのピーク数(以下、「ラインプロファイルピーク数」ともいう)に基づくことで、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0016】
本発明に係るレーザ加工装置では、監視用パターンは、レーザ光を、集光点の位置が所定方向及びレーザ光の光軸方向に互いに離れた少なくとも2つの分岐レーザ光へ分岐させる変調パターンであるデフォーカスパターンであってもよい。これにより、コリメート状態に応じてラインプロファイルピーク数が変化することを、具体的に実現できる。
【0017】
本発明に係るレーザ加工装置では、監視モード実行部は、ユーザからの入力を受け付ける入力受付部を有しており、入力受付部を介して監視モードを開始させる入力がユーザからなされた場合に、監視モードを開始してもよい。これにより、ユーザの望むタイミングで監視モードを実行することができる。
【0018】
本発明に係るレーザ加工装置では、監視モード実行部は、撮像部の撮像結果に関する情報を表示する情報表示部を有し、監視モードでは、撮像部の撮像結果に関する情報の出力として、撮像部で撮像したレーザ光のビーム形状に関する画像を情報表示部に表示してもよい。これにより、情報表示部に表示したビーム形状に関する画像から、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0019】
本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ光の光路におけるレーザ光源と空間光変調器との間に配置され、コリメート状態を調整するコリメート状態調整部を備え、監視モードでは、撮像部の撮像結果に応じて、コリメート状態が平行な状態となるようにコリメート状態調整部を調整するためのガイドを報知してもよい。これにより、容易にコリメート状態を平行な状態へ調整することができる。
【0020】
本発明に係るレーザ加工装置では、撮像部は、レーザ光の光路における空間光変調器と集光部との間から分岐したレーザ光の一部を、レンズを介して受光してもよい。この場合、空間光変調器と集光部との間から分岐したレーザ光の一部を、監視モードに利用することができる。
【0021】
本発明に係るレーザ加工装置では、撮像部は、対象物で反射されたレーザ光を、集光部及びレンズを介して受光してもよい。この場合、対象物で反射されたレーザ光を、監視モードに利用することができる。
【0022】
本発明に係るレーザ加工装置は、対象物にレーザ光を照射することにより、対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、対象物を支持する支持部と、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源で出射したレーザ光が入射する表示部を有し、表示部に表示させた監視用パターンに応じてレーザ光を変調する空間光変調器と、空間光変調器で変調したレーザ光を、支持部に支持された対象物に集光する集光部と、空間光変調器で変調したレーザ光をレンズを介して受光する撮像部と、撮像部の撮像結果に関する情報を表示する情報表示部と、を備え、監視用パターンは、レーザ光のコリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた場合に、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状が楕円形状となり、且つ、コリメート状態が平行な状態の場合に、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状が真円形状又は当該楕円形状よりも真円に近い形状となる変調パターンであり、情報表示部は、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状の楕円率に関する情報を表示する。
【0023】
このレーザ加工装置では、監視モードが実行されると、監視用パターンが空間光変調器の表示部に表示されてレーザ光が変調され、そのレーザ光がレンズを介して撮像部で受光され、撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状の楕円率に関する情報が情報表示部に表示される。撮像部で撮像されたレーザ光のビーム形状の楕円率は、監視用パターンによってコリメート状態に応じて規則的に変化することから、表示された当該楕円率に関する情報に基づくことで、レーザ光の光路上に配置されたレンズ等を動かすことなく、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。すなわち、レーザ光のコリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断することが可能となる。
【0024】
本発明に係るレーザ加工方法は、対象物にレーザ光を照射することにより、対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工方法であって、空間光変調器で変調したレーザ光のコリメート状態を監視する監視ステップを備え、監視ステップは、コリメート状態に応じて、空間光変調器で変調したレーザ光をレンズを介して受光する撮像部の撮像結果を規則的に変化させる変調パターンである監視用パターンを、空間光変調器の表示部に表示する第1ステップと、レーザ光源からレーザ光を出射し、出射したレーザ光を空間光変調器の表示部に入射させ、表示部に表示させた監視用パターンに応じてレーザ光を変調すると共に、変調したレーザ光をレンズを介して撮像部で受光する第2ステップと、変調したレーザ光についての撮像部による撮像結果に関する情報を出力する第3ステップと、を有する。
【0025】
このレーザ加工方法では、監視ステップにおいて、監視用パターンが空間光変調器の表示部に表示されてレーザ光が変調され、そのレーザ光がレンズを介して撮像部で受光され、撮像部の撮像結果に関する情報が出力される。撮像部の撮像結果は、監視用パターンによってコリメート状態に応じて規則的に変化することから、出力された当該撮像結果に関する情報に基づくことで、レーザ光の光路上に配置されたレンズ等を動かすことなく、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。すなわち、レーザ光のコリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、レーザ光のコリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断することが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
【
図2】
図2は、
図1のビームエキスパンダを示す構成図である。
【
図3】
図3は、非点収差パターンの例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、コリメート状態と撮像結果情報との関係を説明する図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、コリメート状態と撮像結果情報との関係を説明する図である。
【
図10】
図10は、デフォーカスパターンにより分岐された分岐レーザ光の集光点を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、支持部2と、レーザ光源3と、ビームエキスパンダ4と、空間光変調器5と、集光部6と、プロファイル取得用カメラ7と、スポット観察用カメラ8と、観察カメラ9と、制御部10と、を備える。レーザ加工装置1は、対象物11にレーザ光Lを照射することで対象物11に改質領域12を形成する装置である。以下の説明では、互いに直交する3方向を、それぞれ、X方向、Y方向及びZ方向という。本実施形態では、X方向は第1水平方向であり、Y方向は第1水平方向に垂直な第2水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0030】
対象物11は、円板状に形成されたウェハである。対象物11は、半導体基板上に機能素子層が積層されることで構成されている。半導体基板は、例えば、シリコン基板である。機能素子層は、半導体基板上にマトリックス状に配列された複数の機能素子を含む。各機能素子は、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。対象物11には、ライン15が設定されている。ライン15は、改質領域12の形成を予定するラインである。例えばライン15は、対象物11の厚さ方向から見た場合に複数の機能素子のそれぞれの間を通るように格子状に延在する格子ラインを含んでいてもよい。各ライン15は、レーザ加工装置1によって対象物11に設定された仮想的なラインである。なお、各ライン15は、対象物11に実際に引かれたラインであってもよい。
【0031】
支持部2は、例えば対象物11に貼り付けられたフィルム(図示省略)を吸着することで、対象物11のレーザ光入射面としての表面11aがZ方向と直交するように対象物11を支持する。支持部2は、X方向及びY方向のそれぞれの方向に沿って移動可能である。支持部2は、Z方向に沿った回転軸を中心に回転可能である。レーザ光源3は、例えばパルス発振方式によって、レーザ光Lを出射する。レーザ光Lは、対象物11に対して透過性を有している。レーザ光源3で出射されたレーザ光Lは、ビームエキスパンダ4に入射する。
【0032】
ビームエキスパンダ4は、レーザ光Lの径を調整しつつ、レーザ光Lをコリメート(平行化)する。
図2に示されるように、ビームエキスパンダ4は、レーザ光Lの光軸に沿って配置された複数のレンズ41~43を有する。ビームエキスパンダ4は、複数のレンズ41~43の少なくとも何れかがレーザ光Lの光軸に沿って移動可能に構成されている。図示する例では、レンズ41がレーザ光Lの光軸に沿って移動可能である。ビームエキスパンダ4は、レンズ41を光軸方向に沿って移動させることで、レーザ光Lのコリメート状態を調整する。ビームエキスパンダ4は、コリメート状態調整部を構成する。ビームエキスパンダ4を通過したレーザ光Lは、ミラーM1,M2を介して空間光変調器5に入射する。レーザ光Lのコリメート状態は、レーザ光Lが拡散する状態、レーザ光が収束する状態、及び、レーザ光Lが拡散及び収束していない平行な状態を含む。コリメート状態が平行な状態のレーザ光Lは、コリメート光とも称される。
【0033】
図1に戻り、空間光変調器5は、レーザ加工ヘッドH内に配置されている。空間光変調器5は、レーザ光源3から出射されたレーザ光Lを変調する。空間光変調器5は、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。空間光変調器5は、レーザ光Lが入射する液晶層としての表示部51を有し、表示部51に表示させた変調パターンに応じてレーザ光Lを変調する。空間光変調器5は、レーザ光Lを反射しつつ変調する。
【0034】
空間光変調器5は、表示部51の画素ごとにレーザ光Lの位相を変化させることができる。つまり、表示部51に表示させた変調パターンに応じた位相変調を、レーザ光Lに付与することができる。換言すると、変調を付与するホログラムパターンとしての変調パターンを、空間光変調器5の表示部51に表示させる。変調パターンに入射し透過するレーザ光Lは、その波面が調整され、レーザ光Lを構成する各光線において進行方向に直交する方向の成分の位相にずれが生じる。したがって、空間光変調器5に表示させる変調パターンを適宜設定することにより、レーザ光Lが変調(例えば、レーザ光Lの強度、振幅、位相、偏光等が変調)可能となる。
【0035】
空間光変調器5は、制御部10により表示部51の表示が制御される。空間光変調器5は、後述するように、監視モード(監視ステップ)において監視用パターンを変調パターンとして表示部51に表示させることで、レーザ光Lのコリメート状態に応じてスポット観察用カメラ8の撮像結果を規則的に変化させる。
【0036】
集光部6は、空間光変調器5によって変調されたレーザ光Lを、支持部2に支持された対象物11に集光する。本実施形態では、空間光変調器5によって反射されたレーザ光LがダイクロイックミラーM3によってZ方向に沿って下方へ反射され、集光部6に入射する。集光部6は、そのように入射したレーザ光Lを対象物11に集光する。集光部6は、複数の対物レンズを含むレンズユニットがレーザ加工ヘッドHの底壁に取り付けられることで構成されている。
【0037】
プロファイル取得用カメラ7は、ダイクロイックミラーM3を透過し且つダイクロイックミラーM4で反射したレーザ光Lを受光する。換言すると、プロファイル取得用カメラ7は、レーザ光Lの光路における空間光変調器5と集光部6との間から分岐したレーザ光の一部を受光する。プロファイル取得用カメラ7では、その撮像面に集光部6の入射瞳面でのレーザ光Lの像が転像(結像)される。集光部6の入射瞳面でのレーザ光Lの像は、空間光変調器5で変調されたレーザ光Lの像である。したがって、プロファイル取得用カメラ7による撮像結果を監視することで、空間光変調器5の動作状態を把握することができる。
【0038】
プロファイル取得用カメラ7は、レーザ加工ヘッドH内に配置されている。プロファイル取得用カメラ7は、制御部10に接続されている。プロファイル取得用カメラ7は、撮像した画像を制御部10に出力する。プロファイル取得用カメラ7としては、特に限定されず、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
【0039】
スポット観察用カメラ8は、ダイクロイックミラーM4を透過し且つミラーM5で反射したレーザ光Lを、レンズ81を介して受光する。換言すると、スポット観察用カメラ8は、レーザ光Lの光路における空間光変調器5と集光部6との間から分岐したレーザ光Lの一部を、レンズ81により集光させて受光する。つまり、スポット観察用カメラ8は、空間光変調器5で変調されたレーザ光Lの集光像を撮像可能である。集光像は、レンズ81で集光したレーザ光Lの像(スポット像)である。スポット観察用カメラ8は、空間光変調器5で変調されたレーザ光Lの集光点を撮像可能である。
【0040】
レンズ81は、入射したレーザ光Lをスポット観察用カメラ8の撮像面上に集光する。レーザ光Lの光軸方向においてレンズ81とスポット観察用カメラ8の撮像面との間の距離は、レンズ81の焦点距離fに予め調整されている。スポット観察用カメラ8は、例えばレンズ81の設計値(f値)に基づいて、コリメート光としてのレーザ光Lがレンズ81に入射したときに当該レーザ光Lの集光点が最も絞れる位置に固定されている。
【0041】
スポット観察用カメラ8は、レーザ加工ヘッドH内に配置されている。スポット観察用カメラ8は、制御部10に接続されている。スポット観察用カメラ8は、撮像した画像を制御部10に出力する。スポット観察用カメラ8としては、特に限定されず、例えばCMOSイメージセンサが用いられる。
【0042】
観察カメラ9は、可視光源91から出射した可視光Vによる対象物11の像を撮像する。具体的には、可視光源91から出射した可視光Vは、ダイクロイックミラーM6で反射され、ダイクロイックミラーM3を透過した後、集光部6を介して対象物11に照射される。当該可視光Vは、対象物11のレーザ光入射面である表面11aで反射され、集光部6及びダイクロイックミラーM3,M6を透過し、レンズ92を介して観察カメラ9で受光される。可視光Vの光路上には、可視光Vに目盛り線を付与するレチクル(不図示)が設けられている。
【0043】
観察カメラ9は、レーザ加工ヘッドH内に配置されている。観察カメラ9は、制御部10に接続されている。観察カメラ9は、撮像した可視画像を制御部10に出力する。観察カメラ9としては、特に限定されず、例えばCMOSイメージセンサが用いられる。
【0044】
制御部10は、レーザ加工装置1の各部の動作を制御する。制御部10は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部10では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。制御部10には、各種データを記憶される。制御部10は、GUI(Graphical User Interface)20を有する。
【0045】
GUI20は、インターフェース部である。GUI20は、例えばタッチパネル、キーボード、マウス、マイク、スピーカ、タブレット型端末及びモニタ等の少なくとも何れかを含む。GUI20は、例えばタッチ入力、キーボード入力、マウス操作及び音声入力等の少なくとも何れかにより、ユーザからの各種データの入力を受付け可能である。GUI20は、その表示画面上に各種の情報を表示可能である。GUI20は、スポット観察用カメラ8の撮像結果に関する情報を、表示画面に表示する。GUI20は、入力受付部及び情報表示部を構成する。
【0046】
本実施形態において、制御部10は、空間光変調器5で変調したレーザ光Lのコリメート状態(以下、単に「コリメート状態」ともいう)を監視する監視モードを実行する。制御部10は、GUI20を介して監視モードを開始させる入力がユーザからなされた場合に、監視モードを開始する。制御部10は、監視モード実行部を構成する。
【0047】
監視モードでは、空間光変調器5の表示部51に監視用パターンを表示させる。監視用パターンは、コリメート状態に応じてスポット観察用カメラ8の撮像結果を規則的に変化させる変調パターンである。監視用パターンは、コリメート状態によってスポット観察用カメラ8で撮像された画像上の強度分布が変化して、コリメート状態を反映した数値化が可能な位相分布を有する。
【0048】
監視用パターンは、コリメート状態に応じて、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状(集光像の形状)の楕円率が変化する変調パターンである。監視用パターンは、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた場合に、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状が楕円形状となり、且つ、コリメート状態が平行な状態の場合に、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状が真円形状となる変調パターンである。楕円形状は、完全な楕円の形状だけでなく、扁平円形状、トラック形状、長円形状を含み、要は、長手方向(長軸方向)を有する長尺な形状を含む。真円形状は、完全な真円の形状だけでなく、ほぼ真円の形状を含む。
【0049】
ここでは、監視用パターンとして、
図3に示される非点収差パターンHSを表示部51に表示させている。非点収差パターンHSは、レーザ光Lに非点収差を付与する変調パターンである。非点収差パターンHSは、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれるほど、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状の楕円率が1から離れていくように変化する変調パターンである。なお、監視用パターンは、例えばレーザ光Lの波長等に基づいて予め導出され、制御部10に記憶されていてもよい。監視用パターンは、レーザ加工装置1に生じる個体差を補正するための個体差補正パターン等の補正パターンを含んでいてもよい。
【0050】
監視モードでは、空間光変調器5で変調したレーザ光Lについてのスポット観察用カメラ8の撮像結果に関する撮像結果情報を出力する。監視モードでは、撮像結果情報の出力として、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lの集光点におけるビーム形状の楕円率に関する情報を、GUI20に表示する。楕円率に関する情報は、楕円率と、第一軸方向のスポット幅と、第二軸方向のスポット幅と、を含む。
【0051】
第一軸方向のスポット幅は、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lの集光点におけるビーム形状についての、レーザ光Lの光軸に直交する第一軸方向(第1方向)の幅である。第二軸方向のスポット幅は、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lの集光点におけるビーム形状についての、レーザ光Lの光軸及び第一軸方向に直交する第二軸方向(第2方向)の幅である。スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lの集光点におけるビーム形状の楕円率(以下、単に「楕円率」ともいう)は、第一軸方向のスポット幅を第二軸方向のスポット幅で除算した値である。楕円率に関する情報は、特に限定されず、楕円率に関すれば他の情報を含んでいてもよい。
【0052】
監視モードでは、撮像結果情報の出力として、スポット観察用カメラ8で撮像したレーザ光Lの集光点におけるビーム形状に関する画像(以下、「集光像画像」ともいう)を、GUI20に表示する。集光像画像は、レーザ光Lの集光像の形状を含む。集光像画像は、レーザ光Lの集光像における強度分布を含んでいてもよい。
【0053】
監視モードでは、楕円率が規定範囲内か否かを判定する。規定範囲は、予め定められて制御部10に記憶されている。例えば規定範囲は、1.0±0.3の範囲である。監視モードでは、撮像結果情報の出力として、楕円率が規定範囲内か否かの判定結果をGUI20に表示する。監視モードでは、楕円率が規定範囲外と判定された場合、GUI20からアラームを出力すると共に、警告をGUI20に表示して注意喚起を報知する。
報知は限定されない。
【0054】
監視モードでは、スポット観察用カメラ8の撮像結果に応じて、コリメート状態が平行な状態(最適な状態)となるようにビームエキスパンダ4を調整するための調整ガイドを、GUI20に表示して報知する。報知する調整ガイドは、例えば、ビームエキスパンダ4のレンズ41の移動方向(レーザ光Lの光路における上流側方向か下流側方向か)、及び、その移動量を含む。レンズ41の移動方向及び移動量に関する情報は、レーザ光Lの集光点におけるビーム形状の楕円率と関連付けられて制御部10に予め記憶されていてもよい。
【0055】
図4は、GUI20の表示画面の例を示す図である。
図4に示されるように、GUI20の表示画面には、監視モードを開始させる実行ボタンR1が表示されている。実行ボタンR1をタッチすることで監視モードの実行が開始される。GUI20の表示画面には、撮像結果情報として、集光像16を含む集光像画像R2、第一軸方向のスポット幅R3、第二軸方向のスポット幅R4、楕円率R5、及び、楕円率が規定範囲内か否かの判定結果R6が表示されている。また、GUI20の表示画面には、コリメート状態を平行な状態にする調整ガイドR7が表示されている。なお、集光像画像R2の左右方向が第一軸方向に対応し、集光像画像R2の上下方向が第二軸方向に対応する。楕円率が規定範囲外の場合には、判定結果R6に警告が表示される。
【0056】
上述したようなレーザ加工装置1は、対象物11にレーザ光Lを照射することにより、対象物11の内部に改質領域12を形成するレーザ加工方法を実施する。一例として、対象物11を切断するためのライン15に沿って、対象物11の内部に改質領域12を形成する場合におけるレーザ加工装置1の動作を説明する。
【0057】
まず、レーザ加工装置1は、対象物11に設定されたライン15がX方向に平行となるように支持部2を回転させる。レーザ加工装置1は、観察カメラ9によって撮像された可視画像(例えば、対象物11のレーザ光入射面の像)に基づいて、レーザ光Lの集光点がレーザ光入射面上に位置するように、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッドH(すなわち、集光部6)を移動させる(ハイトセット)。レーザ加工装置1は、その位置を基準として、レーザ光Lの集光点がレーザ光入射面から所定深さに位置するように、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッドHを移動させる。
【0058】
続いて、レーザ加工装置1は、レーザ光源3からレーザ光Lを出射させると共に、レーザ光Lの集光点がライン15に沿って相対的に移動するように、X方向に沿って支持部2を移動させる。これにより、ライン15に沿って且つ対象物11のレーザ光入射面から一定深さに、改質領域12が形成される。パルス発振方式によってレーザ光源3からレーザ光Lが出射されると、複数の改質スポット12sがX方向に沿って並ぶように形成される。1つの改質スポット12sは、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。改質領域12は、複数の改質スポット12sの集合である。隣り合う改質スポット12sは、レーザ光Lのパルスピッチ(対象物11に対する集光点の相対的な移動速度をレーザ光Lの繰り返し周波数で除した値)によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
【0059】
次に、実施形態に係るレーザ加工方法に関して、
図4のGUI20の表示画面及び
図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0060】
例えばレーザ加工装置1において、空間光変調器5で変調したレーザ光Lのコリメート状態が最適化されているか否かを監視する場合、GUI20の表示画面上の実行ボタンR1をタッチし、次の監視モード(監視ステップ)を実行する。
【0061】
すなわち、監視用パターンとして、非点収差パターンHS(
図3参照)を空間光変調器5の表示部51に表示させる(ステップS1)。続いて、レーザ光Lを照射する(ステップS2)。上記ステップS2では、レーザ光源3からレーザ光Lを出射し、レーザ光Lを空間光変調器5の表示部51に入射させ、表示部51に表示させた非点収差パターンHSに応じてレーザ光Lを変調する。変調したレーザ光Lを集光部6により対象物11に集光する。
【0062】
続いて、変調したレーザ光Lをレンズ81を介してスポット観察用カメラ8で受光し、レーザ光Lの集光点を撮像する(ステップS3)。続いて、制御部10により、スポット観察用カメラ8で撮像した撮像結果に基づいて、レーザ光Lの集光点におけるビーム形状の第一軸方向のスポット幅と第二軸方向のスポット幅とを取得し、当該ビーム形状の楕円率を取得する(ステップS4)。上記ステップS4における楕円率の取得は、例えばスポット観察用カメラ8で撮像した集光像画像R2から公知の画像解析手法を用いて実施することができる。
【0063】
続いて、制御部10により、取得した楕円率が規定範囲内か否かを判定する(ステップS5)。上記ステップS5でYesの場合、コリメート状態が平行な状態であって最適化されているとして、制御部10により、コリメート状態を合格と判定すると共に、GUI20の表示画面にスポット観察用カメラ8の撮像結果を表示する(ステップS6)。上記ステップS6では、集光像画像R2、第一軸方向のスポット幅R3、第二軸方向のスポット幅R4、楕円率R5、及び、合格の判定結果R6をGUI20に表示する。なお、上記ステップS6では、GUI20には調整ガイドR7は表示されない。上記ステップS6の後、監視モードを終了する。
【0064】
一方、ステップS5でNoの場合、楕円率が規定範囲外であり、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた状態であって最適化されていないとして、制御部10により、コリメート状態を不合格と判定すると共に、GUI20の表示画面にスポット観察用カメラ8の撮像結果及び警告を表示する(ステップS7)。上記ステップS7では、集光像画像R2、第一軸方向のスポット幅R3、第二軸方向のスポット幅R4、楕円率R5、及び、警告を含む不合格の判定結果R6をGUI20に表示する。また、上記ステップS7では、GUI20に、コリメート状態を平行な状態にするための調整ガイドR7を表示する。上記ステップS7の後、監視モードを終了する。
【0065】
上記ステップS7の後、ユーザは、例えばGUI20の調整ガイドR7に従ってビームエキスパンダ4のレンズ41を移動させて、コリメート状態の再調整を実施する(ステップS8)。そして、GUI20の表示画面上の実行ボタンR1を再びタッチし、上述した監視モードを再び実行する。なお、上記ステップS1は、第1ステップを構成する。上記ステップS2,S3は、第2ステップを構成する。上記ステップS4~S7は、第3ステップを構成する。
【0066】
以上、レーザ加工装置1では、監視モードが実行されると、監視用パターンが空間光変調器5の表示部51に表示されてレーザ光Lが変調され、そのレーザ光Lがレンズ81を介してスポット観察用カメラ8で受光され、スポット観察用カメラ8の撮像結果情報が出力される。スポット観察用カメラ8の撮像結果は、監視用パターンによってコリメート状態に応じて規則的に変化することから、当該撮像結果情報に基づくことで、レーザ光Lの光路上に配置されたレンズ41等を動かすことなく、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。すなわち、レーザ光Lのコリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断することが可能となる。また、絶対数値管理による監視が可能となる。コリメート状態の判断にあたり、原理的に、集光像画像R2の輝度値に依存しなくなる。
【0067】
レーザ加工装置1では、監視用パターンは、コリメート状態に応じて、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状の楕円率が変化する変調パターンである。この場合、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状の楕円率に基づくことで、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0068】
レーザ加工装置1では、監視用パターンは、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた場合に、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状が楕円形状となり、且つ、コリメート状態が平行な状態の場合に、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状が真円形状となる変調パターンである。この場合、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状が楕円形状であるか真円形状であるかに基づくことで、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0069】
レーザ加工装置1では、監視用パターンは、レーザ光Lに非点収差を付与する変調パターンである非点収差パターンである。これにより、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた場合にスポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状が楕円形状となり、且つ、コリメート状態が平行な状態の場合にスポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状が真円形状となることを、具体的に実現できる。
【0070】
レーザ加工装置1において、監視モードでは、スポット観察用カメラ8の撮像結果に関する情報の出力として、楕円率に関する情報を出力する。この場合、出力された楕円率に関する情報から、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0071】
レーザ加工装置1では、楕円率に関する情報は、第一軸方向のスポット幅と第二軸方向のスポット幅とを含む。この場合、第一軸方向及び第二軸方向におけるスポット幅から、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0072】
レーザ加工装置1では、監視用パターンは、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれるほど、楕円率が1から離れていくように変化する変調パターンである。監視モードでは、楕円率が規定範囲内か否かを判定し、楕円率が規定範囲外と判定された場合、スポット観察用カメラ8の撮像結果に関する情報の出力として、注意喚起の報知を出力する。これにより、例えばコリメート状態が発散側又は収束側に一定以上ずれるような装置異常が発生した場合に、ユーザへ注意喚起することができる。なお、楕円率1が狙い値となる場合には、スペック化しやすい利点がある。
【0073】
レーザ加工装置1では、GUI20によりユーザからの入力を受付け可能であり、GUI20を介して監視モードを開始させる入力がユーザからなされた場合に、監視モードを開始する。これにより、ユーザの望むタイミングで監視モードを実行することができる。
【0074】
レーザ加工装置1では、スポット観察用カメラ8の撮像結果に関する情報をGUI20に表示可能である。監視モードでは、スポット観察用カメラ8の撮像結果に関する情報の出力として、スポット観察用カメラ8で撮像したレーザ光Lのビーム形状に関する画像である集光像画像R2をGUI20に表示する。これにより、GUI20に表示した集光像画像R2から、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。
【0075】
レーザ加工装置1は、レーザ光Lの光路におけるレーザ光源3と空間光変調器5との間に配置されたビームエキスパンダ4を備える。監視モードでは、スポット観察用カメラ8の撮像結果に応じて、コリメート状態が平行な状態となるようにビームエキスパンダ4を調整するためのガイドである調整ガイドR7を、GUI20に表示して報知する。これにより、容易にコリメート状態を平行な状態へ調整することができる。
【0076】
レーザ加工装置1では、スポット観察用カメラ8は、レーザ光Lの光路における空間光変調器5と集光部6との間から分岐したレーザ光Lの一部を、レンズ81を介して受光する。この場合、空間光変調器5と集光部6との間から分岐したレーザ光Lの一部を、監視モードに利用することができる。
【0077】
レーザ加工方法では、監視ステップにおいて、監視用パターンが空間光変調器5の表示部51に表示されてレーザ光Lが変調され、そのレーザ光Lがレンズ81を介してスポット観察用カメラ8で受光され、スポット観察用カメラ8の撮像結果情報が出力される。スポット観察用カメラ8の撮像結果は、監視用パターンによってコリメート状態に応じて規則的に変化することから、当該撮像結果情報に基づくことで、レーザ光Lの光路上に配置されたレンズ41等を動かすことなく、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。すなわち、レーザ光Lのコリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断することが可能となる。
【0078】
図6は、コリメート状態と撮像結果情報との関係を説明する図である。
図6の撮像結果情報は、監視用パターンとして非点収差パターンHSを用いた場合の情報である。図中のケース1は、コリメート状態が発散及び収束の何れか一方の状態であって、レンズ81により集光したレーザ光Lの集光点の位置が、スポット観察用カメラ8の撮像面よりも-側(レーザ光Lの光路の上流側)にずれている場合の事例である。図中のケース2は、コリメート状態が平行な状態であって、レンズ81により集光したレーザ光Lの集光点の位置がスポット観察用カメラ8の撮像面に合っている場合の事例である。図中のケース3は、コリメート状態が発散及び収束の何れか他方の状態であって、レンズ81により集光したレーザ光Lの集光点の位置が、スポット観察用カメラ8の撮像面よりも+側(レーザ光Lの光路の下流側)にずれている場合の事例である。
【0079】
図6に示されるように、ケース1では、第一軸方向のスポット幅が第二軸方向のスポット幅よりも小さく、楕円率が1.0よりも一定以上小さくなり、集光像画像R2におけるビーム形状は、第二軸方向に長尺の楕円形状である。ケース3では、第一軸方向のスポット幅が第二軸方向のスポット幅よりも大きく、楕円率が1.0よりも一定以上大きくなり、集光像画像R2におけるビーム形状は、第一軸方向に長尺の楕円形状である。これに対して、ケース2では、第一軸方向のスポット幅と第二軸方向のスポット幅とが同程度であり、楕円率が1.0に近くなり、集光像画像R2におけるビーム形状は、ケース1及びケース2に比べて真円形状に近い。したがって、非点収差パターンHSを用いて変調したレーザ光Lの集光像をスポット観察用カメラ8で撮像し、その撮像結果情報に基づくことで、コリメート状態がどのような状態であるか、ひいては、コリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断可能であることがわかる。
【0080】
[変形例]
以上、本発明の一態様は、上述した実施形態に限定されない。
【0081】
上記実施形態では、レーザ光Lをレンズを介して受光する撮像部として、観察カメラ9を用いてもよい。この場合、例えば
図7に示されるように、観察カメラ9は、対象物11のレーザ光入射面である表面11aで反射し且つ集光部6、ダイクロイックミラーM3,M6を透過したレーザ光Lを、レンズ92を介して受光する。つまり、観察カメラ9は、空間光変調器5で変調されたレーザ光Lの集光像を撮像可能である。レンズ92は、入射したレーザ光Lを観察カメラ9の撮像面上に集光する。レーザ光Lの光軸方向においてレンズ92と観察カメラ9の撮像面との間の距離は、レンズ92の焦点距離fに予め調整されている。
【0082】
このような変形例において、空間光変調器5で変調したレーザ光Lのコリメート状態が最適化されているか否かを監視する場合、
図8に示されるように、まず、対象物11を支持部2に載置する(ステップS11)。ここでの対象物11は、サンプルとしての対象物11T(テスト用の対象物11T)を用いることができる。続いて、GUI20の表示画面上の実行ボタンR1をタッチし、次の監視モード(監視ステップ)を実行する。
【0083】
すなわち、制御部10により、可視光源91から可視光Vを出射させ、それに応じて観察カメラ9によって撮像された可視画像上のレチクルのピントが合う位置へ、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッドH(すなわち、集光部6)を移動させる(ステップS12)。監視用パターンとして、非点収差パターンHS(
図3参照)を空間光変調器5の表示部51に表示させる(ステップS13)。
【0084】
続いて、対象物11にレーザ光Lを照射する(ステップS14)。上記ステップS14では、レーザ光源3からレーザ光Lを出射し、レーザ光Lを空間光変調器5の表示部51に入射させ、表示部51に表示させた非点収差パターンHSに応じてレーザ光Lを変調する。変調したレーザ光Lを集光部6により対象物11に集光する。上記ステップS14では、対象物11が加工されない出力(つまり、改質領域12が形成されない(加工閾値よりも小さい)出力)でレーザ光Lを対象物11に照射する。続いて、対象物11で反射したレーザ光Lの反射光を集光部6及びレンズ92を介して観察カメラ9で受光し、レーザ光Lの集光点を撮像する(ステップS15)。
【0085】
続いて、制御部10により、観察カメラ9で撮像した撮像結果に基づいて、レーザ光Lの集光点におけるビーム形状の第一軸方向のスポット幅と第二軸方向のスポット幅とを取得し、当該ビーム形状の楕円率を取得する(ステップS16)。制御部10により、取得した楕円率が規定範囲内か否かを判定する(ステップS17)。上記ステップS17でYesの場合、コリメート状態が平行な状態であって最適化されているとして、制御部10により、コリメート状態を合格と判定すると共に、GUI20の表示画面に観察カメラ9の撮像結果を表示する(ステップS18)。上記ステップS18の後、監視モードを終了する。一方、ステップS17でNoの場合、楕円率が規定範囲外であり、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた状態であって最適化されていないとして、制御部10により、コリメート状態を不合格と判定すると共に、GUI20の表示画面に観察カメラ9の撮像結果及び警告を表示する(ステップS19)。上記ステップS19の後、監視モードを終了する。
【0086】
上記ステップS19の後、ユーザは、例えばGUI20の調整ガイドR7に従ってビームエキスパンダ4のレンズ41を移動させて、コリメート状態の再調整を実施する(ステップS20)。そして、GUI20の表示画面上の実行ボタンR1を再びタッチし、上述した監視モードを再び実行する。なお、上記ステップS13は、第1ステップを構成する。上記ステップS14,S15は、第2ステップを構成する。上記ステップS16~S19は、第3ステップを構成する。
【0087】
このような変形例においても、レーザ光Lのコリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断できる等の上記作用効果を奏する。また、このような変形例では、対象物11で反射されたレーザ光Lを、監視モードに利用することができる。なお、撮像部は、スポット観察用カメラ8及び観察カメラ9に限定されず、その他の撮像部を用いてもよい。
【0088】
上記実施形態では、監視用パターンは、コリメート状態が平行な状態の場合に、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状が真円形状となる変調パターンとしたが、これに限定されない。監視用パターンは、コリメート状態が平行な状態の場合に、スポット観察用カメラ8で撮像されたレーザ光Lのビーム形状が、コリメート状態が発散側又は収束側にずれた場合の楕円形状よりも真円に近い形状となる変調パターンであればよい。
【0089】
上記実施形態では、監視用パターンとして
図3の非点収差パターンHSを用いたが、監視用パターンは限定されない。例えば監視用パターンは、
図3の非点収差パターンHS以外の非点収差パターンであってもよい。また例えば監視用パターンは、シリンドリカルレンズの作用を実現するように生成された変調パターンであるシリンドリカルレンズパターンであってもよい。この場合でも、コリメート状態が平行な状態から発散側又は収束側にずれた場合にレーザ光Lのビーム形状が楕円形状となり、且つ、コリメート状態が平行な状態の場合にレーザ光Lのビーム形状が真円形状又は当該楕円形状よりも真円に近い形状となることを、具体的に実現できる。
【0090】
また例えば監視用パターンは、コリメート状態に応じて、撮像部で撮像されたレーザ光Lの強度についての所定方向におけるラインプロファイルのピーク数が変化する変調パターンであってもよい。この場合、撮像部で撮像されたレーザ光Lの強度についての所定方向におけるラインプロファイルのピーク数(以下、「ラインプロファイルピーク数」ともいう)に基づくことで、コリメート状態がどのような状態であるかを把握することができる。このような監視用パターンの例として、デフォーカスパターンが挙げられる。デフォーカスパターンは、レーザ光Lを、集光点の位置が所定方向及びレーザ光Lの光軸方向に互いに離れた少なくとも2つの分岐レーザ光へ分岐させる変調パターンである。デフォーカスパターンにより、コリメート状態に応じてラインプロファイルピーク数が変化することを、具体的に実現することができる。
【0091】
図9は、コリメート状態と撮像結果情報との関係を説明する図である。
図10は、デフォーカスパターンにより分岐された分岐レーザ光L1,L2の集光点を説明する模式図である。
図9の撮像結果情報は、監視用パターンとして、上述したデフォーカスパターンを用いた場合の情報である。
図9中のケース1~3は、
図6中のケース1~3と同様な事例である。各ケース1~3において、ラインプロファイルは、集光像画像R2の左右方向のライン17上におけるレーザ光Lの強度を示している。ラインプロファイルにおいて、縦軸がレーザ光Lの強度であり、横軸はライン17上の位置である。
【0092】
図9に示されるように、ケース1のラインプロファイルでは、大きなピークが1つ存在する。これは、ケース1では、
図10の位置C1においての画像が集光像画像R2として撮像されることから、分岐レーザ光L1の集光により強度が高まる一方で、分岐レーザ光L2の強度への影響は少なく、結果として、分岐レーザ光L1によるピークが主に現れるためである。また
図9に示されるように、ケース3のラインプロファイルでは、大きなピークが1つ存在する。これは、ケース3では、
図10の位置C2においての画像が集光像画像R2として撮像されることから、分岐レーザ光L2の集光により強度が高まる一方で、分岐レーザ光L1の強度への影響は少なく、結果として、分岐レーザ光L2によるピークが主に現れるためである。
【0093】
これに対して、
図9に示されるように、ケース2のラインプロファイルでは、ピークが2つ(レーザ光Lの分岐数)存在し、各ピークの大きさも近い。これは、ケース3では、
図10の位置C3においての画像が集光像画像R2として撮像されることから、分岐レーザ光L1,L2のそれぞれの集光により強度が高まり、結果として、分岐レーザ光L1,L2のそれぞれによるピークが現れるためである。したがって、上述したデフォーカスパターンを用いて変調したレーザ光Lの集光像を撮像し、その撮像結果情報(特にラインプロファイルピーク数)に基づくことで、コリメート状態がどのような状態であるか、ひいては、コリメート状態が最適化されているかどうかを容易に判断可能であることがわかる。
【0094】
上記実施形態では、GUI20を介して監視モードを開始させる入力がユーザからなされた場合に監視モードを開始したが、監視モードの開始のタイミングはこれに限定されない。監視モードは、例えば、定期的、一定経過時間毎、一定稼働時間毎、予め定められた時刻、装置起動時、及び、装置終了時の少なくとも何れかのタイミングで開始してもよい。
【0095】
上記実施形態では、コリメート状態調整部としてビームエキスパンダ4が設けられているが、コリメート状態調整部はビームエキスパンダ4に限定されず、その他の調整機構であってもよい。ビームエキスパンダ4が有するレンズの枚数は、2枚であってもよいし、4枚以上であってもよい。
【0096】
上記実施形態では、入力受付部及び情報表示部としてGUI20が設けられているが、これに限定されない。入力受付部と表示部とは、別構成であってもよい。入力受付部及び表示部としては、種々の公知装置を用いることができる。上記実施形態は、複数のレーザ加工ヘッドHを備えていてもよい。上記実施形態では、空間光変調器5は反射型の空間光変調器に限定されず、透過型の空間光変調器を採用してもよい。
【0097】
上記実施形態では、対象物11の種類、対象物11の形状、対象物11のサイズ、対象物11が有する結晶方位の数及び方向、並びに、対象物11の主面の面方位は特に限定されない。上記実施形態では、対象物11は、結晶構造を有する結晶材料を含んで形成されていてもよいし、これに代えてもしくは加えて、非結晶構造(非晶質構造)を有する非結晶材料を含んで形成されていてもよい。結晶材料は、異方性結晶及び等方性結晶の何れであってもよい。例えば対象物11は、窒化ガリウム(GaN)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、LiTaO3、ダイアモンド、GaOx、サファイア(Al2O3)、ガリウム砒素、リン化インジウム、ガラス、及び無アルカリガラスの少なくとも何れかで形成された基板を含んでいてもよい。
【0098】
上記実施形態では、改質領域12は、例えば対象物11の内部に形成された結晶領域、再結晶領域、又は、ゲッタリング領域であってもよい。結晶領域は、対象物11の加工前の構造を維持している領域である。再結晶領域は、一旦は蒸発、プラズマ化あるいは溶融した後、再凝固する際に単結晶あるいは多結晶として凝固した領域である。ゲッタリング領域は、重金属等の不純物を集めて捕獲するゲッタリング効果を発揮する領域であり、連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。上記実施形態は、トリミング、スライシング、及び、アブレーション等の加工へ適用されてもよい。
【0099】
上述した実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。また、上述した実施形態又は変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1…レーザ加工装置、2…支持部、3…レーザ光源、4…ビームエキスパンダ(コリメート状態調整部)、5…空間光変調器、6…集光部、8…スポット観察用カメラ(撮像部)、9…観察カメラ(撮像部)、10…制御部(監視モード実行部)、11…対象物、12…改質領域、20…GUI(入力受付部,情報表示部)、51…表示部、81…レンズ、92…レンズ、HS…非点収差パターン(監視用パターン)、L…レーザ光。