(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115600
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
A41D 13/018 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
A41D13/018
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012258
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 瞳
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA05
3B011AB01
3B011AC04
(57)【要約】
【課題】装着者の腰部を安定して保護可能な着用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】 骨盤MP周囲において装着者Mに巻き付けられて装着される構成の着用エアバッグ装置S1。内部に膨張用ガスを流入させて装着者の左右の大腿骨転子部TPからなる保護対象部位の外側を覆うように膨張可能とされるエアバッグ10と、エアバッグの外周側を覆うアウタカバー部20と、を備える。アウタカバー部は、膨張完了状態でのエアバッグを保持するとともに、上縁側に、装着者に巻き付けられる巻付部位24を、配設させている。エアバッグが、膨張完了時に左右の保護対象部位の外側をそれぞれ覆うように配置される2つの保護本体部13と、保護本体部の上端相互を連通する連通路部と、を、備える。アウタカバー部が、膨張完了時の保護本体部の装着者からの浮き上がりを抑制可能とする浮き上がり抑制手段35を、備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の腰部を保護可能に構成される着用エアバッグ装置であって、
骨盤周囲において前記装着者に巻き付けられて装着される構成とされて、
内部に膨張用ガスを流入させて、前記装着者の左右の大腿骨転子部からなる保護対象部位の外側を覆うように、膨張可能とされるエアバッグと、
可撓性を有したシート体から構成されて、膨張完了状態での前記エアバッグを保持するとともに、前記エアバッグの外周側を覆って、上縁側に、前記装着者に巻き付けられる巻付部位を、配設させているアウタカバー部と、
を備える構成とされて、
前記エアバッグが、膨張完了時に左右の前記保護対象部位の外側をそれぞれ覆うように配置される2つの保護本体部と、該保護本体部の上端相互を連通する連通路部と、を、備える構成とされて、
前記アウタカバー部が、膨張完了時の前記保護本体部の前記装着者からの浮き上がりを抑制可能とする浮き上がり抑制手段を、備える構成とされていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記アウタカバー部が、装着時に前記エアバッグと前記装着者との間に配置される内側パネル部と、前記エアバッグの外側に配置される外側パネル部と、を備える構成とされて、
前記巻付部位における前記内側パネル部側に、前記骨盤の周囲に巻き付けて装着させるための帯状の装着ベルト部が、配設され、
該装着ベルト部が、前記浮き上がり抑制手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記装着ベルト部が、前記内側パネル部の装着者側の面に取り付けられる複数のベルト通し部により、前記内側パネル部に対して前記装着者の周方向に自在に移動可能として保持されて、前記アウタカバー部に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記アウタカバー部が、装着時に前記エアバッグと前記装着者との間に配置される内側パネル部と、前記エアバッグの外側に配置される外側パネル部と、を備える構成とされて、
前記外側パネル部が、少なくとも一部の領域を、前記内側パネル部よりも低伸長の素材から構成される低伸長素材配置領域として、膨張する前記保護膨張部を浮き上がり方向への突出を規制して下方に押出可能な構成とされ、
該低伸長素材配置領域が、前記浮き上がり抑制手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記アウタカバー部の下端側に、錘部が、配設され、
該錘部が、前記浮き上がり抑制手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記アウタカバー部の下端側に、前記装着者の大腿部に巻き付けられる巻付バンドが、配設され、
該巻付バンドが、前記浮き上がり抑制手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の腰部を保護可能に構成される着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転倒時等において、装着者(例えば高齢者)の腰部を保護可能に構成される着用エアバッグ装置としては、骨盤周囲に巻き付けるように装着して、作動時に、下方に向かって突出するように膨張したエアバッグにより腰部を覆って、保護する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の着用エアバッグ装置では、エアバッグを、腰部(大腿骨転子部周囲の部位)と比較してくびれている(小径とされている)骨盤周囲に巻き付けた状態から、骨盤付近よりも張り出している(大径とされている)腰部周囲となる下方に向かって突出させつつ膨張させる構成であることから、膨張するエアバッグが、下端側を腰部から離隔させるように浮き上がってしまって、転倒時等に、腰部を迅速かつ的確に覆うことができない虞れが生じていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、装着者の腰部を安定して保護可能な着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る着用エアバッグ装置は、装着者の腰部を保護可能に構成される着用エアバッグ装置であって、
骨盤周囲において装着者に巻き付けられて装着される構成とされて、
内部に膨張用ガスを流入させて、装着者の左右の大腿骨転子部からなる保護対象部位の外側を覆うように、膨張可能とされるエアバッグと、
可撓性を有したシート体から構成されて、膨張完了状態でのエアバッグを保持するとともに、エアバッグの外周側を覆って、上縁側に、装着者に巻き付けられる巻付部位を、配設させているアウタカバー部と、
を備える構成とされて、
エアバッグが、膨張完了時に左右の保護対象部位の外側をそれぞれ覆うように配置される2つの保護本体部と、保護本体部の上端相互を連通する連通路部と、を、備える構成とされて、
アウタカバー部が、膨張完了時の保護本体部の装着者からの浮き上がりを抑制可能とする浮き上がり抑制手段を、備える構成とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明の着用エアバッグ装置では、エアバッグにおいて、膨張完了時に、大腿骨転子部からなる保護対象部位の外側を覆う保護本体部が、連通路部から下方に延びるように配置される構成であっても、この保護本体部は、エアバッグの外周側を覆うように配置されるアウタカバー部に配設される浮き上がり抑制手段によって、腰部からの浮き上がりを抑制された状態で、すなわち、保護対象部位(大腿骨転子部)に近接した状態で、配置されることとなる。そのため、保護本体部により、保護対象部位(大腿骨転子部)の外側を、迅速かつ的確に覆うことができる。また、本発明の着用エアバッグ装置では、エアバッグは、外周側をアウタカバー部によって覆われる構成であることから、着用時の意匠性も良好である。さらに、本発明の着用エアバッグ装置では、浮き上がり抑制手段は、エアバッグではなく、アウタカバー部に配設されていることから、エアバッグの保護性能に影響を与えることなく、膨張完了時のエアバッグの配置位置を制御することができる。
【0008】
したがって、本発明の着用エアバッグ装置では、装着者の腰部を安定して保護することができる。
【0009】
具体的には、アウタカバー部を、装着時にエアバッグと装着者との間に配置される内側パネル部と、エアバッグの外側に配置される外側パネル部と、を備える構成として、
巻付部位における内側パネル部側に、骨盤の周囲に巻き付けて装着させるための帯状の装着ベルト部を、配設させ、
装着ベルト部により、浮き上がり抑制手段を構成することが、好ましい。
【0010】
着用エアバッグ装置をこのような構成とすれば、装着時に、アウタカバー部が、装着者側となる内側パネル部側に配置される装着ベルト部によって骨盤の周囲に巻き付けられることとなり、アウタカバー部においてエアバッグの外側を覆っている外側パネル部は、装着者側に接近して巻き付けられている装着ベルト部による影響を受けることなく、膨張する保護本体部の上端側の領域(連通路部も含む)の外方への突出を許容することとなる。そのため、上記構成の着用エアバッグ装置では、腰部(保護対象部位である大腿骨転子部周囲)と比較してくびれている骨盤周囲に、装着ベルト部を巻き付けるようにして、装着させる構成であっても、保護本体部を、上端側の領域(連通路部を含む)を骨盤周囲から僅かに外方に突出させつつ、下方に向かうように膨張させることができて、保護本体部が、下端側を保護対象部位から離隔させるように浮き上がることを、抑制できる。その結果、保護本体部により、保護対象部位(大腿骨転子部)の外側を、的確に覆うことができる。
【0011】
さらに、上記構成の着用エアバッグ装置において、装着ベルト部を、内側パネル部の装着者側の面に取り付けられる複数のベルト通し部により、内側パネル部に対して装着者の周方向に自在に移動可能として保持されて、アウタカバー部に配設させる構成とすれば、骨盤の周囲に巻き付けられている装着ベルト部に対して、アウタカバー部の内側パネル部が、骨盤周囲で周方向に沿ってずれ移動可能となり、また、ベルト通し部の撓みにより装着ベルト部に対して外方に離隔させるような移動も可能となることから、エアバッグの膨張時に、保護本体部の上端側の領域及び連通路部を、一層円滑に、外方へ一旦突出させることが可能となって、好ましい。
【0012】
また、着用エアバッグ装置としては、アウタカバー部を、装着時にエアバッグと装着者との間に配置される内側パネル部と、エアバッグの外側に配置される外側パネル部と、を備える構成として、
外側パネル部における少なくとも一部の領域を、内側パネル部よりも低伸長の素材から構成される低伸長素材配置領域として、膨張する保護膨張部を浮き上がり方向への突出を規制して下方に押出可能な構成とし、
低伸長素材配置領域により、浮き上がり抑制手段を構成してもよい。
【0013】
このような構成の着用エアバッグ装置では、エアバッグの膨張時に、アウタカバー部における外側パネル部の少なくとも一部の領域(低伸長素材配置領域)が、伸び難く、逆に、内側パネル部が、相対的に伸びやすくなることから、エアバッグの保護本体部を、内側パネル部側、すなわち、装着者側に向かうように膨張させ、かつ、外側パネル部の少なくとも一部に形成される低伸長素材配置領域により、浮き上がる方向ではなく、下方に押し出すように膨張させることができる。そのため、膨張した保護本体部を、下端側を保護対象部位から離隔させるように浮き上がることを、抑制できて、保護本体部により、保護対象部位(大腿骨転子部)の外側を、的確に覆うことができる。
【0014】
さらに、アウタカバー部の下端側に、錘部を配設させ、この錘部を浮き上がり抑制手段とする構成としてもよく、アウタカバー部の下端側に錘部を配設させることにより、保護本体部が、錘部により下方に引っ張られるような態様となって、下端側を保護対象部位から離隔させるように浮き上がることを、抑制できて、保護本体部により、保護対象部位(大腿骨転子部)の外側を、的確に覆うことができる。
【0015】
さらにまた、アウタカバー部の下端側に、装着者の大腿部に巻き付けられる巻付バンドを、配設させ、この巻付バンドを浮き上がり抑制手段とする構成としてもよく、このような構成とすれば、アウタカバー部の下端側が、大腿部に巻き付けられた巻付バンドにより、大腿部から離隔することを規制できることから、膨張する保護本体部が、下端側を保護対象部位から離隔させるように浮き上がることを、抑制できて、保護本体部により、保護対象部位(大腿骨転子部)の外側を、的確に覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態である着用エアバッグ装置を、装着者に装着させた状態の概略図である。
【
図2】実施形態の着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の底面図である。
【
図5】実施形態の着用エアバッグ装置において使用するエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
【
図6】実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグの端部とアウタカバー部とを連結させている連結部位を示す部分拡大平面図である。
【
図7】実施形態の着用エアバッグ装置において、装着者に装着させた状態で、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略図である。
【
図8】実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の前後方向に沿った概略部分横断面図(左側の概略横断面図)である。
【
図9】実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す装着状態での概略縦断面図である。
【
図10】実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張初期の装着ベルト部付近の部位を示す概略断面図である。
【
図11】本発明の他の実施形態である着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の平面図である。
【
図13】
図11の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す装着状態での概略縦断面図である。
【
図14】本発明のさらに他の実施形態である着用エアバッグ装置を示す平面図である。
【
図15】
図14の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す装着状態での概略縦断面図である。
【
図16】本発明のさらに他の実施形態である着用エアバッグ装置を示す平面図である。
【
図17】
図16の着用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す装着状態での概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の着用エアバッグ装置S1は、
図1に示すように、装着者Mの腰部MWの周囲(詳細には、骨盤MPの周囲)に巻き付けるようにして、装着される構成である。実施形態では、上下,前後,左右の方向は、特に断らない限り、装着者Mに装着させた状態での装着者Mの上下,前後,左右の方向と一致するものである。
【0018】
着用エアバッグ装置S1は、
図1~4に示すように、エアバッグ10と、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するガス発生器5と、装着者Mの転倒を検知するセンサ部2を備えてガス発生器5を作動させる作動制御装置1と、エアバッグ10の外周側を覆うアウタカバー部20と、を備える構成とされている。実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10は、
図2~4に示すように、平らに展開された状態で、アウタカバー部20内に配置されている。
【0019】
作動制御装置1は、上下前後左右の3軸回りの角速度を検知可能な角速度検知センサと、3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、を有するセンサ部2を、備えるとともに、センサ部2からの信号によって、装着者Mの通常動作とは異なる転倒動作を検知すると、ガス発生器5を作動させるように、構成されている。具体的には、装着者Mが通常動作と異なった転倒動作を開始していると、作動制御装置1は、種々の閾値から判定可能な判定手段を備えていることから、その判定手段の判定に基づいて装着者Mの転倒を検出し、ガス発生器5を作動させることとなる。この作動制御装置1には、センサ部2の作動用やガス発生器5の作動用信号の出力のために、図示しない電池等からなる電源が、内蔵されている。
【0020】
エアバッグ10は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されている。エアバッグ10は、アウタカバー部20に保持されるもので、アウタカバー部20における後述する巻付部位24を装着者Mに巻き付けられることにより、装着者Mに装着される構成である。エアバッグ10は、
図3~5に示すように、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部10aと、外側に配置される外側壁部10bと、を有し、内側壁部10aと外側壁部10bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、膨張完了形状を略板状とした袋状とされている。実施形態の場合、エアバッグ10は、
図5に示すように、膨張完了時に装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つの保護本体部13(13L,13R)と、保護本体部13の上端13d相互を連通する連通路部12と、を備えている。エアバッグ10は、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。
【0021】
連通路部12は、膨張完了形状を、左右方向に略沿った棒状として構成されるもので、アウタカバー部20における巻付部位24の領域内に、配置される構成である。この連通路部12は、実施形態の場合、装着時には、装着者Mの骨盤MPの後側となる位置に、配置される構成である。連通路部12は、平らに展開した状態での上下方向側の幅寸法を、アウタカバー部20における巻付部位24の中央側部位25の上下方向側の幅寸法よりも若干小さく設定されて、エアバッグ10の膨張完了時には、中央側部位25の内部において、中央側部位25内で充満するように、配置されることとなる。すなわち、連通路部12は、装着時に、内部に膨張用ガスを流入させて膨張している上縁側部位12bを、巻付部位24に設けられる後述する装着ベルト部35(ベルト本体36)の外側で重なる位置に配置させるように、構成されている(
図4参照)。
【0022】
また、実施形態では、この連通路部12の部位に、ガス発生器5が、エアバッグ10の内部に膨張用ガスを供給可能に連結されている(
図2参照)。ガス発生器5は、詳細な図示を省略するが、連通路部12の長手方向の略中央付近で、幅方向側での略中央付近となる位置に配置されるもので、内部に圧縮ガスを封入させて構成されて、作動時に、封入状態を解除されて、エアバッグ10内にコールドガスを噴出可能な構成とされている。このガス発生器5は、上述した作動制御装置1と電気的に接続されており、装着者Mの転倒を検知した作動制御装置1からの作動信号を入力させて、作動される構成である。
【0023】
保護本体部13(13L,13R)は、連通路部12から左右の外方に延びつつ下方に延びるように形成されている。実施形態の場合、保護本体部13(13L,13R)は、エアバッグ10を平らに展開した状態で、上縁13aを、連通路部12の上縁12aに対して下側に位置させるように、連通路部12に対して対して段差を設けられ、かつ、連通路部12から離隔した外端側(装着状態における前端側)を上側に位置させるように、連通路部12の上縁12aに対して傾斜させるように、構成されている(
図5参照)。この保護本体部13の上縁13a側の傾斜は、アウタカバー部20の巻付部位24における後述する端側部位26(26L,26R)の傾斜と略沿うように、構成されている。各保護本体部13は、エアバッグ10の膨張完了時に、装着者Mの保護対象部位としての大腿骨転子部TPの周囲を外側を含めて広く覆い可能に、平らに展開した状態の外形形状を、下端13b側にかけて狭幅とされる略台形状として構成されている。詳細には、各保護本体部13は、連通路部12に対して傾斜している上縁13aを底辺とした略左右対称形の略台形状とされて、エアバッグ10の膨張完了時に、装着者Mの骨盤MPの側方から大腿骨転子部TPの下方(転子下)にかけての領域を広く覆うように、構成されている。また、各保護本体部13は、上縁側部位13cを、巻付部位24における端側部位26(26L,26R)の領域内に、配置させるように、構成されている。詳細には、各保護本体部13における上縁側部位13cは、平らに展開した状態で、巻付部位24における端側部位26の上下の中央よりも下側となる位置に、配設される構成であり(
図2参照)、さらに詳細には、各保護本体部13は、装着状態におけるエアバッグ10の膨張完了時に、上縁13aを、装着ベルト部35(ベルト本体36)よりも僅かに下側に位置させるように、構成されている(
図9参照)。すなわち、実施形態のエアバッグ10では、各保護本体部13は、装着時に、内部に膨張用ガスを流入させて膨張している領域を、装着ベルト部35と重ならない位置に配置させるように、構成されている。
【0024】
実施形態のエアバッグ10では、平らに展開した状態の上縁側における両端側(装着時における各保護本体部13L,13Rの前上縁側)に、アウタカバー部20側に形成される連結部材を連結させるための連結用開口15,15が、形成されている(
図5参照)。連結用開口15は、略円形に開口して形成されており、アウタカバー部20における内側パネル部21,外側パネル部22の内表面21a,22a側に配設される連結部材としての一対の面状ファスナー30を、開口エリアで相互に結合可能な構成とされている(
図6参照)。すなわち、エアバッグ10における上縁10cの両端側(装着時における各保護本体部13L,13Rの前上縁側)は、連結部材としての面状ファスナー30と連結用開口15とを利用して、アウタカバー部20における巻付部位24の両端側(各端側部位26L,26Rにおける端部26a側)に連結される構成である。そして、エアバッグ10は、膨張完了状態においては、中央側に配置される連通路部12を、アウタカバー部20における巻付部位24の中央側部位25内で充満させるように膨張させ、上縁10cの両端側(装着時における各保護本体部13L,13Rの前上縁側)を、アウタカバー部20における巻付部位24(詳細には、巻付部位24における端側部位26L,26R)の端部26a側に連結させることにより、アウタカバー部20に保持される構成である。
【0025】
エアバッグ10の外周側を覆うアウタカバー部20は、エアバッグ10を構成する基布よりも触感の良好な可撓性を有した織布から形成されるもので、実施形態の場合、ポリエステル製の織布から形成されている。アウタカバー部20は、外形形状を略同一として、装着時に内側(装着者M側)に配置される内側パネル部21と、装着時に外側に配置される外側パネル部22と、を有し、内側パネル部21と外側パネル部22との外周縁相互を結合(縫着)させることにより、袋状とされている。アウタカバー部20は、
図2~4に示すように、上縁側に配置されて装着者Mの骨盤MPの上側の領域の周囲に巻き付けられる略帯状の巻付部位24と、巻付部位24から下方に延びるように形成されてそれぞれ各保護本体部13(13L,13R)の外周側を覆う2つのメインカバー部28(28L,28R)と、を備える構成とされている。
【0026】
巻付部位24は、中央側部位25と、中央側部位25の両端から延びる端側部位26(26L,26R)と、を備えている。中央側部位25は、内部に、エアバッグ10の連通路部12を収納させる部位であり、平らに展開した状態で、左右方向に略沿った帯状として構成されている。この中央側部位25は、平らに展開した状態の幅寸法を、内部に連通路部12を収納可能に、連通路部12の幅寸法より僅かに大きく設定されている。端側部位26(26L,26R)は、中央側部位25よりも狭幅として構成されるとともに、中央側部位25から離隔した側の端部26aを、上側に位置させるように、平らに展開した状態で、中央側部位25に対して傾斜して、形成されている。この端側部位26L,26Rは、各保護本体部13L,13Rの上縁13aに略沿うようにして、中央側部位25に対して傾斜している。各端側部位26L,26Rは、それぞれ、中央側部位25から離隔した側の端部26aを、メインカバー部28(28L,28R)よりもわずかに外方に突出させるように構成されるとともに、中央側部位25よりも狭幅(実施形態の場合、幅寸法を1/2程度)に、構成されている。巻付部位24において、端側部位26L,26Rにおける端部26aの内部には、上述したごとく、エアバッグ10の上縁10cの両端側を連結させるための連結部材としての面状ファスナー30が、配設されている。詳細には、面状ファスナー30は、内側パネル部21及び外側パネル部22の内表面21a,22a側にそれぞれ配設される一対の鉤状側部30aとループ側部30bとから構成されるもので、実施形態の場合、外形形状を、エアバッグ10に形成される連結用開口15よりもわずかに大きな四角形状とされている(
図6参照)。この面状ファスナー30は、
図6に示すように、連結用開口15の開口エリアにおいて、鉤状側部30aとループ側部30bとを相互に結合させることにより、エアバッグ10の上縁10cの両端側を、アウタカバー部20における巻付部位24(詳細には、巻付部位24における端側部位26L,26R)の端部26a側に連結させることとなる。
【0027】
巻付部位24には、装着者Mの骨盤MPの周囲に巻き付けて装着させるための帯状の装着ベルト部35が、配設されている。装着ベルト部35は、巻付部位24における内側パネル部21側において、装着時に内側パネル部21と装着者Mとの間となる位置に配置されるもので(
図9参照)、実施形態の場合、巻付部位24の上縁24aに略沿うようにして、端側部位26L,26Rの上下の略中央(すなわち、中央側部位25においては、上下の中央より上側)となる位置に、配設されている。実施形態では、装着ベルト部35は、内側パネル部21における装着者M側の面(内側パネル部21の外表面21b)に取り付けられている複数のベルト通し部32により、内側パネル部21に対して相対移動可能(内側パネル部21に対して装着者Mの周方向に自在に移動可能)として保持されて、取り付けられている。各ベルト通し部32は、帯状として、装着ベルト部35における後述するベルト本体36の長手方向と略直交するように配置されて上下両端側を、内側パネル部21側に結合されて、内側パネル部21との間において、ベルト本体36を挿通可能に、構成されている。実施形態の場合、ベルト通し部32は、14個配設されている。装着ベルト部35は、可撓性を有した帯状体からなるベルト本体36と、ベルト本体36の端部36a,36b側に配置される雄側部材38aと雌側部材38bとから構成されるバックル部38と、を備えている。バックル部38における雄側部材38a側には、ベルト本体36の長さを調整可能な長さ調整部38cが、形成されている(
図1,2参照)。実施形態の着用エアバッグ装置S1では、この装着ベルト部35が、膨張完了時の保護本体部13(13L,13R)の装着者Mからの浮き上がりを抑制可能とする浮き上がり抑制手段を構成している。
【0028】
メインカバー部28(28L,28R)は、巻付部位24における各端側部位26L,26Rから下方に延びるように形成されるもので、それぞれ、内部で保護本体部13(13L,13R)を円滑に膨張可能なように、平らに展開した状態の外形形状を、保護本体部13よりも大きくして、保護本体部13と略相似形の略台形状とするように、構成されている。
【0029】
実施形態の着用エアバッグ装置S1は、装着ベルト部35におけるバックル部38を利用して、ベルト本体36の端部36a,36b側相互を連結させることにより、アウタカバー部20における巻付部位24を装着者Mの腰部MW(骨盤MP)の周囲に巻き付けられるようにして、装着者Mに装着されることとなる(
図1参照)。そして、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、装着者Mに装着させた状態で、センサ部2が装着者Mの転倒を検知すれば、作動制御装置1からガス発生器5に作動信号が出力されて、エアバッグ10の内部に膨張用ガスが流入することとなり、エアバッグ10が、
図7~9に示すように膨張を完了させることとなる。
【0030】
そして、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10において、膨張完了時に、大腿骨転子部TPからなる保護対象部位の外側を覆う保護本体部13が、連通路部12から下方に延びるように配置される構成であっても、この保護本体部13は、エアバッグ10の外周側を覆うように配置されるアウタカバー部20に配設される浮き上がり抑制手段としての装着ベルト部35によって、腰部MWからの浮き上がりを抑制された状態で、すなわち、保護対象部位(大腿骨転子部TP)に近接した状態で、配置されることとなる。そのため、保護本体部13により、保護対象部位(大腿骨転子部TP)の外側を、迅速かつ的確に覆うことができる。また、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10は、外周側をアウタカバー部20によって覆われる構成であることから、着用時の意匠性も良好である。さらに、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、浮き上がり抑制手段は、エアバッグ10ではなく、アウタカバー部20に配設されていることから、エアバッグ10の保護性能に影響を与えることなく、膨張完了時のエアバッグ10の配置位置を制御することができる。
【0031】
したがって、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、装着者Mの腰部MWを安定して保護することができる。
【0032】
具体的には、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、アウタカバー部20の巻付部位24における内側パネル部21側に、骨盤MPの周囲に巻き付けて装着させるための帯状の装着ベルト部35が、配設される構成であり、この装着ベルト部35が、浮き上がり抑制手段を構成している。実施形態の着用エアバッグ装置S1では、装着時に、アウタカバー部20が、装着者M側となる内側パネル部21側に配置される装着ベルト部35によって骨盤MPの周囲に巻き付けられることとなり、アウタカバー部20においてエアバッグ10の外側を覆っている外側パネル部22は、装着ベルト部35による影響を受けることなく、膨張する保護本体部13の上端13d側の領域(連通路部12も含む)の外方への突出を許容することとなる。そのため、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、腰部MW(保護対象部位である大腿骨転子部TP周囲)と比較してくびれている骨盤MP周囲に、装着ベルト部35を巻き付けるようにして、装着させる構成であっても、保護本体部13を、上端13d側の領域(連通路部12を含む)を骨盤MP周囲から僅かに外方に突出させつつ、下方に向かうように膨張させることができて、保護本体部13が、
図9に示すように、下端13b側を保護対象部位から離隔させるように浮き上がることを、抑制できる。その結果、保護本体部13により、保護対象部位(大腿骨転子部TP)の外側を、的確に覆うことができる。
【0033】
また、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、装着ベルト部35(ベルト本体36)が、内側パネル部21の装着者M側の面(外表面21b)に取り付けられる複数のベルト通し部32により、内側パネル部21に対して装着者Mの周方向に自在に移動可能として、アウタカバー部20に配設される構成であることから、骨盤MPの周囲に巻き付けられている装着ベルト部35(ベルト本体36)に対して、アウタカバー部20の内側パネル部21が、骨盤MP周囲で周方向に沿ってずれ移動可能となり、また、ベルト通し部32の撓みにより装着ベルト部35(ベルト本体36)に対して外方に離隔させるような移動も可能となる。詳細に説明すれば、エアバッグ10の膨張初期に、内側パネル部21は、
図10に示すように、エアバッグ10の膨張に伴って、ベルト本体36から一旦離隔するように(ベルト本体36との間に隙間を生じさせるように)、外方に引っ張られるような態様を許容されることとなる。そのため、エアバッグ10の膨張時に、保護本体部13の上端13d側の領域及び連通路部12を、一層円滑に、外方へ一旦突出させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、装着ベルト部を、ベルト通し部を介さず、内側パネル部に直接連結(結合)させるように、構成してもよい。また、装着ベルト部は、巻付部位の全長にわたって配設させなくともよく、巻付部位の両端側のみに、端部から延ばすように配設させる構成としてもよい。
【0034】
また、着用エアバッグ装置S2として、
図11,12に示す構成のものを使用してもよい。着用エアバッグ装置S2は、エアバッグ40と、エアバッグ40に膨張用ガスを供給するガス発生器5と、装着者Mの転倒を検知するセンサ部2を備えてガス発生器5を作動させる作動制御装置1と、エアバッグ40の外周側を覆うアウタカバー部45と、を備える構成とされている。この着用エアバッグ装置S2においても、エアバッグ40は、
図11,12に示すように、平らに展開された状態で、アウタカバー部45内に配置されている。作動制御装置1とガス発生器5とは、前述の着用エアバッグ装置S1における作動制御装置1及びガス発生器5と同一であることから、詳細な説明を省略する。
【0035】
エアバッグ40は、アウタカバー部45に保持されるもので、アウタカバー部45における後述する巻付部位49を装着者Mに巻き付けられることにより、装着者Mに装着される構成である(
図13参照)。このエアバッグ40も、前述のエアバッグ10と同様に、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部40aと、外側に配置される外側壁部40bと、を有し、内側壁部10aと外側壁部10bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、膨張完了形状を略板状とした袋状とされるもので、膨張完了時に装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つの保護本体部43(43L,43R)と、保護本体部43の上端43a相互を連通する連通路部42と、を備えている。保護本体部43は、連通路部42に対して傾斜せず、上縁を連通路部42の上縁から連ならせるようにして、構成されている。なお、このエアバッグ40は、外形形状を若干異ならせている以外は、前述の着用エアバッグ装置S1におけるエアバッグ10と同様の構成である。
【0036】
アウタカバー部45は、前述の着用エアバッグ装置S1におけるアウタカバー部20と同様に、エアバッグ40を構成する基布よりも触感の良好な可撓性を有した織布から形成されるもので、外形形状を略同一として、装着時に内側(装着者M側)に配置される内側パネル部46と、装着時に外側に配置される外側パネル部47と、を有し、内側パネル部46と外側パネル部47との外周縁相互を結合(縫着)させることにより、袋状とされている。アウタカバー部45は、
図11に示すように、上縁側に配置されて装着者Mの骨盤MPの上側の領域の周囲に巻き付けられる略帯状の巻付部位49と、巻付部位49から下方に延びるように形成されてそれぞれ各保護本体部43(43L,43R)の外周側を覆う2つのメインカバー部52(52L,52R)と、を備える構成とされている。巻付部位49の端部49a,49b側には、装着手段としての一対の面状ファスナー50が、配設されている。面状ファスナー50は、それぞれ、巻付部位49の端部49a,49b側に配置される鉤状側部50aとループ側部50bとを有して、巻付部位49の端部49a,49b相互を連結可能に構成されている。メインカバー部52L,52Rは、巻付部位49から下方に延びるように形成されるもので、それぞれ、内部で保護本体部43(43L,43R)を円滑に膨張可能なように、平らに展開した状態の外形形状を、保護本体部43よりも大きくして、保護本体部43と略相似形とするように、構成されている。
【0037】
実施形態のアウタカバー部45では、外側パネル部47の一部に、内側パネル部46や外側パネル部47における他の領域よりも低伸長の素材から構成される低伸長素材配置領域55が、形成されている。実施形態の場合、低伸長素材配置領域55は、外側パネル部47の表面に、外側パネル部47及び内側パネル部46を構成する織布よりも低伸長で、かつ、ある程度の可撓性を有した合成樹脂層(例えば、ウレタンコート層やナイロンコート層等)を形成することにより、構成されている。この低伸長素材配置領域55は、膨張する保護膨張部43を浮き上がり方向への突出を規制して下方に押出可能に、構成されている。例えば、この低伸長素材配置領域55は、外側パネル部47における他の部位と色調を異ならせたり、表面にマークや文字等の装飾部を施して、意匠性を付与する構成としてもよい。実施形態の場合、低伸長素材配置領域55は、
図11,12に示すように、外側パネル部47における上端47a側の領域、詳細には、巻付部位49からメインカバー部52の上端52a側にかけての領域に、形成されている。着用エアバッグ装置S2では、この外側パネル部に設けられる低伸長素材配置領域が、膨張完了時の保護本体部43の装着者Mからの浮き上がりを抑制可能とする浮き上がり抑制手段を構成している。
【0038】
このような構成の着用エアバッグ装置S2では、エアバッグ40の膨張時に、アウタカバー部45における外側パネル部47の少なくとも一部の領域(低伸長素材配置領域55)が、伸び難く、逆に、内側パネル部46が、相対的に伸びやすくなることから、エアバッグ40の保護本体部43を、内側パネル部46側、すなわち、装着者M側に向かうように膨張させ、かつ、外側パネル部47の少なくとも一部に形成される低伸長素材配置領域55により、浮き上がる方向ではなく、下方に押し出すように膨張させることができる。そのため、膨張した保護本体部43を、下端43b側を保護対象部位(大腿骨転子部TP)から離隔させるように浮き上がることを、抑制できて、保護本体部43により、保護対象部位(大腿骨転子部TP)の外側を、的確に覆うことができる(
図13参照)。具体的には、実施形態の着用エアバッグ装置S2では、低伸長素材配置領域55は、巻付部位49からメインカバー部52の上端側にかけての領域に形成されており、換言すれば、保護本体部43の上端43a側の外方を覆う領域に配設される構成である。そのため、エアバッグ40の膨張時に、保護本体部43の上端43a側の領域の外方への突出を抑制し、かつ、保護本体部43を、円滑に下方に向かって押し出すように膨張させることができる。その結果、保護本体部43が、下端43b側を保護対象部位から離隔させるように浮き上がることを、抑制できて(
図13参照)、保護本体部43により、保護対象部位(大腿骨転子部TP)の外側を、的確に覆うことができる。なお、低伸長素材配置領域の配置位置は、実施形態に限定されるものではなく、外側パネル部において、保護本体部の外側を覆う領域であれば、任意の位置に設定することができる。また、低伸長素材配置領域は、外側パネル部に、ウレタン樹脂やナイロン樹脂を含浸させて構成してもよく、さらには、外側パネル部自体を、内側パネル部よりも低伸長の素材(例えば、綿や麻等の異素材や、内側パネル部を構成する基材と比較して織りを異ならせた基材(一例として、高密度平織素材)、あるいは、外側パネル部を構成する基材を二枚重ねとする等)から構成して、外側パネル部を、全域にわたって、低伸長素材配置領域としてもよい。
【0039】
また、アウタカバー部45Aとして、
図14,15に示す構成のものを使用してもよい。アウタカバー部45Aでは、外側パネル部に低伸長素材配置領域を設けず、下端側となるメインカバー部52Aの下端52b側に、錘部57が配設される構成である。錘部57は、実施形態の場合、
図14,15に示すように、メインカバー部52Aにおける下端52b近傍における外側パネル部47A側において、幅方向の略全域にわたって配設される板状として、図示しない所定箇所を、外側パネル部47A側に連結されている。そして、このアウタカバー部45Aでは、錘部57が、膨張完了時の保護本体部43の装着者Mからの浮き上がりを抑制可能とする浮き上がり抑制手段を構成している。
【0040】
このような構成のアウタカバー部45Aを使用した場合においても、アウタカバー部45Aの下端側(メインカバー部52Aの下端52b側)に錘部57を配設させることにより、保護本体部43が、錘部57により下方に引っ張られるような態様となって、下端43b側を保護対象部位(大腿骨転子部TP)から離隔させるように浮き上がることを、抑制できて、保護本体部43により、保護対象部位(大腿骨転子部TP)の外側を、的確に覆うことができる(
図15参照)。なお、実施形態では、錘部57は、外側パネル部47A側に設けられているが、内側パネル部側に設ける構成としてもよい。
【0041】
さらに、アウタカバー部45Bとして、
図16,17に示す構成のものを使用してもよい。アウタカバー部45Bでは、下端側となるメインカバー部52Bの下端52b側に、装着者Mの大腿部MTに巻き付けられる巻付バンド59が配設される構成である。巻付バンド59は、巻付部位を骨盤の周囲に巻き付けるようにして装着者に装着させる際に、大腿部MTに巻き付けられるもので、実施形態の場合、板ばねを内蔵させて、大腿部MTの周囲に巻き掛けるだけで、巻付状態を維持可能に、構成されている。詳細には、巻付バンド59は、メインカバー部52Bの下端52b側において、アウタカバー部45Bを平らに展開した状態の左右方向の外側の縁部側から延びるように配設されるとともに、詳細な図示は省略しているが、長さ寸法を、巻き掛ける大腿部MTの周長より長く設定されている。このアウタカバー部45Bでは、巻付バンド59が、膨張完了時の保護本体部43の装着者Mからの浮き上がりを抑制可能とする浮き上がり抑制手段を構成している。
【0042】
このような構成のアウタカバー部45Bを使用した場合においても、アウタカバー部45Bの下端45a側(メインカバー部52Aの下端52b側)が、大腿部MTに巻き付けられた巻付バンド59により、大腿部MTから離隔することを規制できることから、膨張する保護本体部43が、下端43b側を保護対象部位(大腿骨転子部TP)から離隔させるように浮き上がることを、抑制できて、保護本体部43により、保護対象部位(大腿骨転子部TP)の外側を、的確に覆うことができる(
図17参照)。なお、実施形態では、巻付バンド59として、板ばねを内蔵させて、大腿部の周囲に巻き掛けるだけで巻付状態を維持可能な構成のものを使用しているが、巻付バンドとしては、板ばねを内蔵させず、両端側に面状ファスナーやスナップ等の連結手段を別途配設させる構成のものを使用してもよい。
【0043】
実施形態の着用エアバッグ装置S1,S2では、エアバッグ10,40の2つの保護本体部13,43によって、装着者Mの大腿骨TBの付け根付近(大腿骨転子部TP)を安定して保護できることから、装着者Mが、転倒によって、治療の長引く大腿骨TBを骨折することを、抑制することができ、高齢者に好適に使用することができる。
【0044】
なお、実施形態の着用エアバッグ装置S1,S2では、エアバッグ10,40は、平らに展開した状態でアウタカバー部20,45,45A,45B内に収納されているが、装着ベルト部を浮き上がり抑制手段とするタイプのものは、膨張完了状態でのエアバッグをアウタカバー部によって保持可能で、かつ、膨張したエアバッグの外周側をアウタカバー部によって覆い可能な構成であれば、例えば、アウタカバー部とエアバッグとをともに折り畳んだ状態で、骨盤周囲に巻き付けるように装着する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…エアバッグ、12…連通路部、13(13L,13R)…保護本体部、13b…下端、13c…上縁側部位、13d…上端、20…アウタカバー部、21…内側パネル部、21b…外表面、22…外側パネル部、24…巻付部位、28(28L,28R)…メインカバー部、32…ベルト通し部、35…装着ベルト部(浮き上がり抑制手段)、36…ベルト本体、38…バックル部、40…エアバッグ、42…連通路部、43(43L,43R)…保護本体部、43a…上端、43b…下端、45,45A,45B…アウタカバー部、46…内側パネル部、47…外側パネル部、49…巻付部位、52(52L,52R),52A,52B…メインカバー部、52a…下端、55…低伸長素材配置領域(浮き上がり抑制手段)、57…錘部(浮き上がり抑制手段)、59…巻付バンド(浮き上がり抑制手段)、M…装着者、MW…腰部、MP…骨盤、TB…大腿骨、TP…大腿骨転子部(保護対象部位)、S1,S2…着用エアバッグ装置。