(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115601
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】プレスフィット端子
(51)【国際特許分類】
H01R 12/58 20110101AFI20220802BHJP
【FI】
H01R12/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012259
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】巽 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】深谷 清浩
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB20
5E223AB26
5E223AB41
5E223BA07
5E223BB12
5E223CB63
5E223CD01
5E223CD15
5E223DA05
5E223DB01
5E223DB08
5E223DB13
5E223DB25
(57)【要約】
【課題】複数の基板に対し圧入した際に基板保持性及び導通信頼性を確保することができるプレスフィット端子を提供する。
【解決手段】棒状の導電体11において長手方向に沿って複数の圧入部20を有するプレスフィット端子10であって、導電体11は、先端部12と基端部13とを有し、先端部12の側に設けられる先端側圧入部21と、先端側圧入部21よりも基端部13の側に設けられる基端側圧入部22と、先端側圧入部21と基端側圧入部22との間に設けられる中間導体部23と、を備え、中間導体部23は、長手方向Zにおいて離間した複数の切り欠き部31,32を有しており、隣接する2つの切り欠き部31,32は、長手方向視において一部が重なっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の導電体において長手方向に沿って複数の圧入部を有するプレスフィット端子であって、
前記導電体は、先端部と基端部とを有し、
前記先端部の側に設けられる先端側圧入部と、
前記先端側圧入部よりも前記基端部の側に設けられる基端側圧入部と、
前記先端側圧入部と前記基端側圧入部との間に設けられる中間導体部と、を備え、
前記中間導体部は、前記長手方向において離間した複数の切り欠き部を有しており、
隣接する2つの前記切り欠き部は、前記長手方向視において一部が重なっているプレスフィット端子。
【請求項2】
前記長手方向において隣接する2つの前記切り欠き部の底面は、前記長手方向視において直交している請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記長手方向視において、前記中間導体部は四角形以上の多角形状であり、前記切り欠き部の形状が四角形状である請求項1又は2に記載のプレスフィット端子。
【請求項4】
前記長手方向視において夫々の前記切り欠き部の面積は、前記中間導体部の面積の半分以下である請求項1から3のいずれか一項に記載のプレスフィット端子。
【請求項5】
棒状の導電体において長手方向に沿って複数の圧入部を有するプレスフィット端子であって、
前記導電体は、先端部と基端部とを有し、
前記先端部の側に設けられる先端側圧入部と、
前記先端側圧入部よりも前記基端部の側に設けられる基端側圧入部と、
前記先端側圧入部と前記基端側圧入部との間に設けられる中間導体部と、を備え、
前記基端側圧入部は、前記長手方向に沿って前記中間導体部に連続する直線状の導通部と、前記導通部から前記長手方向に垂直な方向に突出する付勢部と、を有し、
前記中間導体部及び前記導通部の剛性が前記付勢部の剛性よりも高いプレスフィット端子。
【請求項6】
前記圧入部は、前記基端側圧入部を少なくとも2つ以上有し、
2つ以上の前記基端側圧入部において、前記長手方向で隣接する2つの前記基端側圧入部のうち前記先端側圧入部に近い側を第1基端側圧入部とし、前記先端側圧入部から遠い側を第2基端側圧入部としたときに、前記第2基端側圧入部は前記第1基端側圧入部よりも前記導通部の幅が大きくなるように形成されている請求項5に記載のプレスフィット端子。
【請求項7】
前記圧入部は、前記基端側圧入部を少なくとも2つ以上有し、
2つ以上の前記基端側圧入部において、前記長手方向で隣接する2つの前記基端側圧入部のうち前記先端側圧入部に近い側を第1基端側圧入部とし、前記先端側圧入部から遠い側を第2基端側圧入部としたときに、前記第2基端側圧入部は前記第1基端側圧入部よりも前記付勢部の幅が大きくなるように形成されている請求項5又は6に記載のプレスフィット端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスフィット端子に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスフィット端子として、長手方向において基端側から基端側圧入部及び先端側圧入部が順に連続する構成が存在する(例えば、特許文献1)。特許文献1に示されるプレスフィット端子では、先端側圧入部の幅が基端側圧入部の幅よりも小さく形成されている。これにより、プレスフィット端子は、例えば2枚の基板との接続において、基端側圧入部が圧入される基板のスルーホールが先端側圧入部によって損傷され難くしている。
【0003】
特許文献2には、先端側に圧入部を1つ有し当該圧入部よりも基端側に配置される端子脚部に屈曲許容部を設けるプレスフィット端子が開示されている。特許文献2に示されるプレスフィット端子では、基板のスルーホールとプレスフィット端子の先端との間で芯ずれがある状態で圧入荷重をかけた場合に、屈曲許容部が変形することで芯ずれが吸収されるため、先端側に設けられた圧入部が適正な姿勢を維持してスルーホールに圧入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-26052号公報
【特許文献2】特開2015-210938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、プレスフィット端子の基端側圧入部及び先端側圧入部を位置が固定された複数の基板のスルーホールに同時に圧入する場合には、複数の基板の配置やスルーホール位置のばらつきなどの要因により、当該圧入過程においてプレスフィット端子の先端側が圧入方向に対して蛇行するように曲がることがある。この場合には、プレスフィット端子の先端側圧入部がスルーホールに沿うよう適正に変形できないため、スルーホールに対して先端側圧入部が接圧不足となるおそれがある。接圧不足となった場合には、プレスフィット端子において基板保持性及び導通信頼性が低下する。
【0006】
特許文献2に記載の技術では、圧入部よりも基端側に配置される端子脚部に設けられた屈曲許容部の屈曲によって、先端側圧入部の圧入方向に垂直な平面における位置ずれを吸収することができる。屈曲許容部は、端子脚部の幅及び板厚を小さくしたり、端子脚部に切り欠き部を形成したりすることで構成されている。しかし、特許文献2に記載されたプレスフィット端子では、屈曲許容部は屈曲する際に応力が1箇所に集中することがある。その場合には、屈曲許容部が受ける応力が大きくなるため、屈曲許容部の耐久性が低下し、プレスフィット端子において基板保持性及び導通信頼性が低下する。
【0007】
上記実情に鑑み、複数の基板に対し圧入した際に基板保持性及び導通信頼性を確保することができるプレスフィット端子が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプレスフィット端子の特徴構成は、棒状の導電体において長手方向に沿って複数の圧入部を有するプレスフィット端子であって、前記導電体は、先端部と基端部とを有し、前記先端部の側に設けられる先端側圧入部と、前記先端側圧入部よりも前記基端部の側に設けられる基端側圧入部と、前記先端側圧入部と前記基端側圧入部との間に設けられる中間導体部と、を備え、前記中間導体部は、前記長手方向において離間した複数の切り欠き部を有しており、隣接する2つの前記切り欠き部は、前記長手方向視において一部が重なっている点にある。
【0009】
本構成によれば、中間導体部が長手方向において離間した複数の切り欠き部を有しており、隣接する2つの切り欠き部は、長手方向視において一部が重なっている。したがって、プレスフィット端子の基端側圧入部及び先端側圧入部を複数の基板のスルーホールに順に圧入する際に、中間導体部は複数の切り欠き部によって圧入方向の垂直な平面に沿って容易に屈曲させることができる。これにより、プレスフィット端子は、先端側圧入部を基板のスルーホールに対して容易に位置合わせすることができる。その結果、先端側圧入部を基板のスルーホールに適正な姿勢で圧入させることができるので、プレスフィット端子において基板保持性及び導通信頼性を確保することができる。また、長手方向に隣接する2つの切り欠き部は、中間導体部に直交する仮想面において先端側圧入部の異なる方向への芯ずれに対応することができ、複数の切り欠き部において応力が分散するため、プレスフィット端子は先端側圧入部が基板のスルーホールに圧入される際に座屈する可能性が低下する。
【0010】
他の特徴構成は、前記長手方向において隣接する2つの前記切り欠き部の底面は、前記長手方向視において直交している点にある。
【0011】
本構成によれば、長手方向において隣接する2つの切り欠き部の底面が長手方向視において直交するので、中間導体部は長手方向に垂直な平面において一方向への屈曲のみならず、当該一方向に直交する方向への屈曲も容易に行うことができる。これにより、プレスフィット端子は、先端側圧入部の芯ずれを長手方向に垂直な面において広範囲の向きに是正することができる。
【0012】
他の特徴構成は、前記長手方向視において、前記中間導体部は四角形以上の多角形状であり、前記切り欠き部の形状が四角形状である点にある。
【0013】
本構成によれば、中間導体部は長手方向視において四角形以上の多角形状であり、切り欠き部の形状も四角形状であるので、中間導体部の長手方向の直交する断面において切り欠き部の領域を適正に確保し易くなるため、中間導体部の屈曲を容易にすることができる。
【0014】
他の特徴構成は、前記長手方向視において夫々の前記切り欠き部の面積は、前記中間導体部の面積の半分以下である点にある。
【0015】
プレスフィット端子において、中間導体部は、長手方向視における切り欠き部の面積が大きいほど屈曲し易くなる。しかし、長手方向視における切り欠き部の面積を大きく確保し過ぎると、中間導体部の残部が小さくなり過ぎて中間導体部の強度が低下するおそれがある。そこで、本構成では、長手方向視において夫々の切り欠き部の面積は、中間導体部の面積の半分以下にしている。これにより、中間導体部において切り欠き部を除く残部が中間導体部の面積の半分以上存在するため、プレスフィット端子において中間導体部の強度を適正に確保することができる。
【0016】
本発明に係るプレスフィット端子の特徴構成は、棒状の導電体において長手方向に沿って複数の圧入部を有するプレスフィット端子であって、前記導電体は、先端部と基端部とを有し、前記先端部の側に設けられる先端側圧入部と、前記先端側圧入部よりも前記基端部の側に設けられる基端側圧入部と、前記先端側圧入部と前記基端側圧入部との間に設けられる中間導体部と、を備え、前記基端側圧入部は、前記長手方向に沿って前記中間導体部に連続する直線状の導通部と、前記導通部から前記長手方向に垂直な方向に突出する付勢部と、を有し、前記中間導体部及び前記導通部の剛性が前記付勢部の剛性よりも高い点にある。
【0017】
本構成によれば、基端側圧入部は、長手方向に沿って中間導体部に連続する直線状の導通部と、導通部から長手方向に垂直な方向に突出する付勢部と、を有し、中間導体部及び導通部の剛性が付勢部の剛性よりも高い。したがって、プレスフィット端子の基端側圧入部及び先端側圧入部を複数の基板のスルーホールに順に圧入する際に、基端側圧入部において剛性の低い付勢部のみが変形し中間導体部及び導通部はほとんど変形しない。これにより、プレスフィット端子は、基端側の姿勢を安定させることができるため、全体として芯ずれを抑制することができる。その結果、先端側圧入部を基板のスルーホールに適正な姿勢で圧入することができるので、プレスフィット端子において基板保持性及び導通信頼性を確保することができる。
【0018】
他の特徴構成は、前記圧入部は、前記基端側圧入部を少なくとも2つ以上有し、2つ以上の前記基端側圧入部において、前記長手方向で隣接する2つの前記基端側圧入部のうち前記先端側圧入部に近い側を第1基端側圧入部とし、前記先端側圧入部から遠い側を第2基端側圧入部としたときに、前記第2基端側圧入部は前記第1基端側圧入部よりも前記導通部の幅が大きくなるように形成されている点にある。
【0019】
本構成によれば、長手方向で隣接する2つの基端側圧入部のうち先端側圧入部から遠い第2基端側圧入部は、先端側圧入部に近い第1基端側圧入部よりも導通部の幅が大きいので、複数の基端側圧入部は基端側ほど剛性が高くなる。これにより、プレスフィット端子は、基端側の姿勢をより安定させることができるため、全体として芯ずれを抑制することができる。
【0020】
他の特徴構成は、前記圧入部は、前記基端側圧入部を少なくとも2つ以上有し、2つ以上の前記基端側圧入部において、前記長手方向で隣接する2つの前記基端側圧入部のうち前記先端側圧入部に近い側を第1基端側圧入部とし、前記先端側圧入部から遠い側を第2基端側圧入部としたときに、前記第2基端側圧入部は前記第1基端側圧入部よりも前記付勢部の幅が大きくなるように形成されている点にある。
【0021】
本構成によれば、長手方向で隣接する2つの基端側圧入部のうち先端側圧入部から遠い第2基端側圧入部は、先端側圧入部に近い第1基端側圧入部よりも付勢部の幅が大きいので、複数の基端側圧入部は基端側ほど付勢部が変形し易くなる。これにより、プレスフィット端子は、第2基端側圧入部において導通部が受ける応力を抑制することができ、基端側の姿勢を安定させることができる。その結果、プレスフィット端子は全体として芯ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図5】中間導体部に形成される2つの切り欠き部と中間導体部の残部との位置関係を説明するための図である。
【
図6】プレスフィット端子が基板に圧入された状態を示す図である。
【
図7】第1実施形態の変形例1のプレスフィット端子の部分斜視図である。
【
図8】第1実施形態の変形例1のプレスフィット端子の中間導体部の上部断面図である。
【
図9】第1実施形態の変形例1プレスフィット端子の中間導体部の下部断面図である。
【
図10】第1実施形態の変形例2のプレスフィット端子の部分斜視図である。
【
図11】第1実施形態の変形例2のプレスフィット端子の中間導体部の上部断面図である。
【
図12】第1実施形態の変形例2のプレスフィット端子の中間導体部の下部断面図である。
【
図13】第2実施形態のプレスフィット端子の斜視図である。
【
図14】第3実施形態のプレスフィット端子の正面図である。
【
図15】第3実施形態のプレスフィット端子の基端側圧入部の斜視図である。
【
図16】第4実施形態のプレスフィット端子の部分正面図である。
【
図17】第4実施形態の変形例1のプレスフィット端子の部分正面図である。
【
図18】第4実施形態の変形例2のプレスフィット端子の部分正面図である。
【
図19】第4実施形態の変形例3のプレスフィット端子の部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係るプレスフィット端子の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1~
図6に示されるプレスフィット端子10は、例えば、
図6のように、基板1,3に形成されたスルーホール2,4において銅メッキ等が施された内面2s、4sに圧入されて基板1,3に電気接続されるものである。以下では、図面に記したXを幅方向、Yを厚み方向、Zを長手方向として説明する。なお、以下では、幅方向をX方向、厚み方向をY方向、長手方向をZ方向と称する。Z方向において、Z1側は基端側に相当しZ2側が先端側に相当する。
【0025】
プレスフィット端子10は、銅、銅合金(例えばリン青銅)等の導電性及びばね性の優れた一定の厚みを有する金属条をプレスして形成された板状体である。プレスフィット端子10は、表面処理をせずに使用することもできるが、表面に錫メッキ等の導体膜を表面に形成する方が望ましい。
図1に示されるように、プレスフィット端子10は、全体として棒状の導電体11によって構成され複数の圧入部20を有する。導電体11は、Z方向において先端部12と基端部13とを有する。基端部13がZ方向の基端側(Z1側)に位置し、先端部12がZ方向の先端側(Z2側)に位置する。
【0026】
本実施形態のプレスフィット端子10は、2つの圧入部20を備えている。2つの圧入部20は、先端部12の側に設けられる先端側圧入部21、及び、先端側圧入部21よりも基端部13の側に設けられる基端側圧入部22である。プレスフィット端子10は、先端側圧入部21と基端側圧入部22との間に中間導体部23が設けられている。
【0027】
先端側圧入部21は、表裏を貫通するスリット24と、当該スリット24を挟んで対向する一対の導電部25,25とを有する。基端側圧入部22は、表裏を貫通するスリット26と、当該スリット26を挟んで対向する一対の導電部27,27とを有する。一対の導電部25,25及び一対の導電部27,27は、いずれもZ方向に延びる導電体11の中心線(不図示)に対称になるように形成されている。
【0028】
図2に示されるように、中間導体部23は、Z方向に直交する断面が四角形状に形成されている。
図3に示されるように、Z方向視において正方形状の中間導体部23は外面23A~23Dを有する。外面23A~23Dは、中間導体部23の正方形状の断面の四辺に相当する。中間導体部23は、Z方向において離間した複数の切り欠き部30を有している。本実施形態では、中間導体部23に2つの切り欠き部30が形成されている。2つの切り欠き部30は、Z方向において先端部12の側(Z2側)に位置する第1切り欠き部31と、Z方向において基端部13の側(Z1側)に位置する第2切り欠き部32である。
【0029】
図2及び
図3に示されるように、第1切り欠き部31は、中間導体部23の外面23A~23Dのうち、外面23Bの全てと、外面23Bに連続する外面23A及び外面23Cの一部とが切り欠かれている。第1切り欠き部31は、Z方向に直交する面であってZ方向において対向する一対の側面31A,31Bと、一対の側面31A,31Bの間に設けられZ方向に形成される底面31Cと、を有する。
【0030】
図2及び
図4に示されるように、第2切り欠き部32は、中間導体部23の外面23A~23Dのうち、外面23Cの全てと、外面23Cに連続する外面23B及び外面23Dの一部が切り欠かれている。第2切り欠き部32は、Z方向に直交する面であってZ方向において対向する一対の側面32A,32Bと、一対の側面32A,32Bの間に設けられZ方向に形成される底面32Cと、を有する。
図2~
図4に示されるように、切り欠き部31、32は、Z方向視において側面31A,31B,32A,32Bが同形状あって四角形状に形成され、夫々が全体として直方体状に形成されている。
【0031】
第1切り欠き部31及び第2切り欠き部32は、Z方向視において一部が重なっている。具体的には、
図5に示されるように、切り欠き部31におけるY方向のY1側の領域と切り欠き部32におけるX方向のX2側の領域とが重なる領域S1である。反対に、中間導体部23の断面において、残部28におけるY方向のY2側の領域と残部29におけるX方向のX1側の領域とが重なる領域S2には、切り欠き部31,32は形成されておらず、Z方向において導体部分が連続する。
【0032】
図3~
図5に示されるように、切り欠き部31,32の底面31C,32Cは、Z方向視において直交するように形成されている。これにより、中間導体部23はZ方向に垂直な平面において一方向への屈曲のみならず、当該一方向に直交する方向への屈曲も容易に行うことができる。その結果、プレスフィット端子10は、先端側圧入部21の芯ずれをZ方向に垂直な面において広範囲の向きに是正することができる。
【0033】
中間導体部23は、Z方向視において四角形以上の多角形状であってよい。本実施形態では、中間導体部23はZ方向視において四角形状である。また、切り欠き部31,32はZ方向視において四角形状である。これにより、中間導体部23のZ方向の直交する断面において切り欠き部31,32の領域を適正に確保し易くなるため、中間導体部23の屈曲を容易にすることができる。
【0034】
Z方向視において夫々の切り欠き部31,32の面積は、中間導体部23の面積の半分以下に設定されている。
図3に示されるように、Z方向視において、第1切り欠き部31の面積は中間導体部23の残部28の面積以下である。また、
図4に示されるように、Z方向視において、第2切り欠き部32の面積も中間導体部23の残部29の面積以下である。
【0035】
中間導体部23は、Z方向視における切り欠き部31,32の面積が大きいほど屈曲し易くなる。しかし、Z方向視における切り欠き部31,32の面積を大きく確保し過ぎると、中間導体部23の残部28,29が小さくなり過ぎて中間導体部23の強度が大きく低下するおそれがある。そこで、本実施形態のプレスフィット端子10では、Z方向視において夫々の切り欠き部31,32の面積は、中間導体部23の面積の半分以下にしている。これにより、中間導体部23において切り欠き部31,32を除く残部28,29が中間導体部23の面積の半分以上存在するため、プレスフィット端子10において中間導体部23の強度を適正に確保することができる。
【0036】
本実施形態によれば、中間導体部23がZ方向において離間した複数の切り欠き部31,32を有しており、隣接する2つの切り欠き部31,32は、Z方向視において一部が重なっている。したがって、例えば、
図6に示されるように、プレスフィット端子10の基端側圧入部22及び先端側圧入部21を複数の基板1,3のスルーホール2,4に順に圧入する際に、中間導体部23は複数の切り欠き部31,32によって圧入方向の垂直な平面に沿って容易に屈曲させることができる。これにより、プレスフィット端子10は、先端側圧入部21を基板3のスルーホール4に対して容易に位置合わせすることができる。
【0037】
すなわち、
図6に示されるように、基板1のスルーホール2に対し基板3のスルーホール4が例えばX方向において左側のX1側にずれ、且つ、Y方向(
図2~
図5参照)においてY1側またはY2側にずれたとしても、中間導体部23が2つの切り欠き部31,32の部位において夫々変形することで、プレスフィット端子10は先端側圧入部21を基板3のスルーホール4に適正な姿勢で圧入することができる。その結果、プレスフィット端子10においてスルーホール2の内面2s及びスルーホール4の内面4sとの間で基板保持性及び導通信頼性を確保することができる。また、Z方向に隣接する2つの切り欠き部31,32は、Z方向に直交する仮想面において先端側圧入部21の異なる方向への芯ずれに対応することができ、複数の切り欠き部31,32において応力が分散するため、プレスフィット端子10は先端側圧入部21が基板3のスルーホール4に圧入される際に座屈する可能性が低下する。
【0038】
〔第1実施形態の変形例1〕
変形例1では、第1実施形態と比較して、切り欠き部31、32の形状と、Z方向視における切り欠き部31、32の位置とが異なる。
図7及び
図8に示されるように、第1切り欠き部31は、角部23Gから角部23Gに連続する外面23B,23Cの途中まで切り欠かれている。
図7及び
図9に示されるように、第2切り欠き部32は、角部23Hから角部23Hに連続する外面23C,23Dの途中まで切り欠かれている。
図7~
図9に示されるように、切り欠き部31、32は、Z方向視において側面31A,31B,32A,32Bが同形状であって三角状に形成され、夫々が全体として柱体状に形成されている。
【0039】
変形例1においても、第1切り欠き部31及び第2切り欠き部32は、Z方向視において一部が重なっており、Z方向視において夫々の切り欠き部31,32の面積は、中間導体部23の面積の半分以下である。また、
図8及び
図9に示されるように、切り欠き部31,32の底面31C,32Cは、Z方向視において直交するように形成されている。
【0040】
〔第1実施形態の変形例2〕
変形例2では、第1実施形態と比較して、中間導体部23の形状及び切り欠き部31,32の形状が異なる。
図10に示されるように、プレスフィット端子10の中間導体部23は円柱状に形成されている。
図10~
図12に示されるように、切り欠き部31,32は、Z方向視において側面31A,31B,32A,32Bが同形状であって弓形に形成され、夫々が全体として柱体状に形成されている。
【0041】
変形例2においても、第1切り欠き部31及び第2切り欠き部32は、Z方向視において一部が重なっており、Z方向視において夫々の切り欠き部31,32の面積は、中間導体部23の面積の半分以下である。
図11及び
図12に示されるように、切り欠き部31,32の底面31C,32Cは、Z方向視において直交するように形成されている。
【0042】
〔第2実施形態〕
図13に示されるように、第2実施形態のプレスフィット端子10では、中間導体部23にはZ方向において離間した4つの切り欠き部31~34が形成されている、すなわち、第1実施形態のプレスフィット端子10に設けられた切り欠き部31,32に加え、Z方向の基端側(Z1側)に切り欠き部33、34がさらに追加されている。Z方向視において、第3切り欠き部33は第1切り欠き部31と同じ位置に形成され、第4切り欠き部34は第2切り欠き部32と同じ位置に形成されている。このように、中間導体部23にZ方向に4つの切り欠き部31~34を設けることにより、中間導体部23は屈曲され易くなるととともに屈曲した際の受ける応力をより広範囲に分散することができる。
【0043】
〔第3実施形態〕
図14及び
図15に示されるように、本実施形態のプレスフィット端子10では、基端側圧入部22が、銅合金等によって形成される直線状の導通部41と、導通部41から外方に張り出す付勢部42とが一体形成されて構成されている。直線状の導通部41はZ方向に沿って中間導体部23に連続する。付勢部42は導通部41からX方向に沿う方向に突出している。先端側圧入部21は、第1実施形態と同じく、表裏を貫通するスリット24と、当該スリット24を挟んで対向する一対の導電部25,25とを有する。
【0044】
図14に示されるように、導通部41は、スルーホール2の深さ方向の孔長D(深さ方向でのホールの長さ)を超える直線状に形成された棒状であり、先端部12の側は中間導体部23に連続している。導通部41には、スルーホール2の内面2sに当接するように断面が円弧状の第1当接面41sが形成されている。
【0045】
なお、スルーホール2は、内面2sを構成する銅等のメッキが開口縁から少し突出する領域まで形成されており、孔長Dは、スルーホール2に形成されるメッキの深さ方向の距離と一致する値であり、基板1の厚みより僅かに大きい値となる。
【0046】
付勢部42は、導通部41のZ方向において異なる2箇所の基端部分42Bをブリッジ状に結ぶ当接部分42Aを備えている。当接部分42Aは梁状部材によって構成されている。つまり、基端部分42Bは、
図14に示す挿入状態において、スルーホール2より外部に露出する2箇所の支持点Pで導通部41に連結しており、梁状の部材がブリッジ状に形成されている。これにより、付勢部42は導通部41から外方に突出している。導通部41の直線部分は、付勢部42は基端部分42BよりもZ方向の両側に延設されている。
【0047】
基端部分42Bは導通部41に対して連結される部分であるので、基端部分42Bの連結面の中心位置である支持点Pを基端部分42Bの位置の基準とする。上述のように、付勢部42を構成する梁状部材がブリッジ状に形成されることにより、付勢部42と導通部41との間には半月状の開口43が形成されている。また、当接部分42Aには、スルーホール2の内面2sに当接するように断面が円弧状の第2当接面42sが形成されている。
【0048】
付勢部42は、当接部分42Aにおいて最も外方に張り出す部位の厚さが最も薄く、両端に近い部位ほど厚く形成されている。つまり、付勢部42は中央領域の当接部分42Aの幅Mが導通部41の幅Wよりも小さい値に設定されている。また、付勢部42の幅は基端部分42Bに近い部位ほど大きくなるが、導通部41の幅Wよりも小さく設定されている。これにより、導通部41の剛性が付勢部42の剛性より高くなる。
【0049】
導通部41の直線部分は、付勢部42よりもZ方向に長く形成されるため、2箇所の支持点Pの間隔Sはスルーホール2の孔長Dを超える値となり、間隔Sは導通部41の全長よりも短い値になる。
【0050】
〔挿入操作〕
プレスフィット端子10では、導通部41よりも先端部12の側に、基端側圧入部22よりも幅の狭い先端側圧入部21が設けられ、中間導体部23に続く位置に付勢部42の基端部分42Bが導通部41に対して傾斜する姿勢で形成される。
【0051】
したがって、プレスフィット端子10をスルーホール2に挿入する場合には、導通部41の先端側(Z2側)をスルーホール2に挿入して押し込むことが可能となる。この挿入操作を継続することにより、付勢部42の基端部分42Bがスルーホール2の内面2sに当接し、円滑な移動により付勢部42の当接部分42Aがスルーホール2の内面2sに当接して弾性変形する。
【0052】
また、当接部分42Aがスルーホール2の内面2sに当接する状態では、内面2sのうち当接部分42Aが当接する領域とは反対側の領域において、導通部41の第1当接面41sが当接する。このとき、導通部41の剛性が付勢部42の剛性より高いことから、導通部41は殆ど変形することなく付勢部42が弾性変形する。これにより、プレスフィット端子10は、基端側(Z1側)の姿勢を安定させることができるため、全体として芯ずれを抑制することができる。
【0053】
〔第4実施形態〕
本実施形態では、プレスフィット端子10は、
図16に示されるように、基端側圧入部22を少なくとも2つ以上有し、2つ以上の基端側圧入部22がZ方向に配置されている。
図16に示されるプレスフィット端子10では、2つの基端側圧入部22(50,60)がZ方向に隣接した状態で配置されている。Z方向で隣接する2つの基端側圧入部22(50,60)のうち、先端側圧入部21に近い側(Z2側)を第1基端側圧入部50とし、先端側圧入部21から遠い側(Z1側)を第2基端側圧入部60として以下に説明する。
【0054】
図16に示されるように、第1基端側圧入部50は導通部51及び付勢部52を有し、第2基端側圧入部60は導通部61及び付勢部62を有する。第1基端側圧入部50は基板5に形成されたスルーホール6に圧入され、第2基端側圧入部60は基板7に形成されたスルーホール8に圧入される。ここで、第2基端側圧入部60の導通部61の幅W2は第1基端側圧入部50の導通部51の幅W1よりも大きくなるように形成されている。具体的には、第2基端側圧入部60の導通部61の幅W2は第1基端側圧入部50の導通部51の幅W1に比べてX2側に幅広になるように形成されている。なお、第2基端側圧入部60の付勢部62の幅L2と第1基端側圧入部50の付勢部52の幅L1とは同じである。
【0055】
上記のように、第2基端側圧入部60は、先端側圧入部21に近い第1基端側圧入部50よりも導通部51の幅が大きいので、複数の基端側圧入部22は基端側(Z1側)ほど剛性が高くなる。これにより、プレスフィット端子10は、基端側(Z1側)の姿勢を安定させることができるため、全体として芯ずれを抑制することができる。
【0056】
〔第4実施形態の変形例1〕
図17に示されるように、プレスフィット端子10は、第2基端側圧入部60の導通部61が第1基端側圧入部50の導通部51に比べてX方向のX1側及びX2側の両方において幅広になるように形成されていてもよい。
【0057】
〔第4実施形態の変形例2〕
図18に示されるように、変形例2のプレスフィット端子10では、第2基端側圧入部60の導通部61の幅W2と第1基端側圧入部50の導通部51の幅W1とを同じにし、第2基端側圧入部60の付勢部62の幅L2が第1基端側圧入部50の付勢部52の幅L1よりも大きくなるように形成されている。具体的には、第2基端側圧入部60の付勢部62の幅L2は第1基端側圧入部50の付勢部52の幅L1に比べてX2方向に幅広になるように形成されている。したがって、第1基端側圧入部50の付勢部52よりも第2基端側圧入部60の付勢部62が変形し易くなる。これにより、プレスフィット端子10は、第2基端側圧入部60において導通部61が受ける応力を抑制することができ、基端側(Z1側)の姿勢を安定させることができる。その結果、プレスフィット端子10は全体として芯ずれを抑制することができる。
【0058】
〔第4実施形態の変形例3〕
図19に示されるように、変形例3のプレスフィット端子10では、第2基端側圧入部60の導通部61の幅W2が第1基端側圧入部50の導通部51の幅W1よりも大きくなるように形成され、第2基端側圧入部60の付勢部62の幅L2についても第1基端側圧入部50の付勢部52の幅L1よりも大きくなるように形成されている。これにより、第2基端側圧入部60は、導通部61の幅W2を大きくすることで全体の剛性を高めることができるとともに、付勢部62の幅L2を大きくすることでX方向の変形許容量を大きく確保することができる。
【0059】
〔別実施形態〕
(1)上記の第1実施形態及び第2実施形態のプレスフィット端子10では、Z方向において隣接する2つの切り欠き部(例えば31,32)の底面(例えば31C,32C)がZ方向視において直交する例を示したが、2つの切り欠き部(例えば31,32)の底面(例えば31C,32C)が直交しない形態であってもよい。
【0060】
(2)上記の第1実施形態及び第2実施形態のプレスフィット端子10では、切り欠き部(例えば31)の底面(例えば31C)が平面状に形成されている例を示したが、切り欠き部(例えば31)の底面(例えば31C)が曲面状に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、プレスフィット端子に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1,3,5,7:基板
2,4,6,8:スルーホール
10 :プレスフィット端子
11 :導電体
12 :先端部
13 :基端部
20 :圧入部
21 :先端側圧入部
22 :基端側圧入部
23 :中間導体部
23A,23B,23C,23D :外縁
28、29:残部
30 :切り欠き部
31 :第1切り欠き部
31A,31B:側面
31C :底面
32 :第2切り欠き部
32A,32B:側面
32C :底面
41 :導通部
42 :付勢部
50 :第1基端側圧入部
51 :導通部
52 :付勢部
60 :第2基端側圧入部
61 :導通部
62 :付勢部
L1 :第1基端側圧入部の付勢部の幅
L2 :第2基端側圧入部の付勢部の幅
W1 :第1基端側圧入部の導通部の幅
W2 :第2基端側圧入部の導通部の幅
X :幅方向
Y :厚み方向
Z :長手方向