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  • 特開-チャッキング精度確認装置 図1
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  • 特開-チャッキング精度確認装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115611
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】チャッキング精度確認装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/00 20060101AFI20220802BHJP
   B23B 31/12 20060101ALI20220802BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B23B31/00 D
B23B31/12 E
B23Q17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012272
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000188881
【氏名又は名称】松本機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100210295
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 誠心
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】松澤 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 司
(72)【発明者】
【氏名】昔農 賢人
(72)【発明者】
【氏名】奥野 直起
【テーマコード(参考)】
3C029
3C032
【Fターム(参考)】
3C029EE06
3C032FF04
3C032HH11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被加工物のチャッキングの異常発生を引き起こす現象を検出するために、チャックのチャッキング精度確認装置を提供すること。
【解決手段】チャッキング精度確認装置1は、被加工物をチャッキングしたチャック爪12の位置に関する情報が検出できるチャック10において、チャック爪12の位置に関する情報であるドッグ14の位置を検出する近接センサ2と、チャック爪12の位置に関する情報を蓄積する記憶手段3と、記憶手段3のチャック爪12の位置に関する情報の統計処理を行う演算手段4とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物をチャッキングしたチャック爪の位置に関する情報が検出できるチャッキング精度確認装置において、
検出されたチャック爪の位置に関する情報の統計処理を行い統計処理データが作成され、
作成時期が異なる統計処理データを比較することによって、チャッキングの精度を監視できるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のチャッキング精度確認装置。
【請求項2】
チャック爪の位置に関する情報の統計処理データの結果に基づいて、正常なチャッキングと推定されるチャック爪の位置に関する情報の範囲を設定できることを特徴とする請求項1に記載のチャッキング精度確認装置。
【請求項3】
チャッキングの精度が低下した場合に、その原因を判別できるようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のチャッキング精度確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等のチャックのチャッキング精度確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、被加工物をチャッキングするチャックを有する。
【0003】
チャックは、複数のチャック爪を被加工物に押し当てることによって、被加工物をチャッキングできるようになっている。
【0004】
工作機械の加工精度の維持や、安全な加工をするために、チャックが正常に被加工物をチャッキングできることは重要である。
【0005】
特に、特許文献1に示すような工作機械では、長時間にわたり、連続して被加工物の供給と加工が自動で行われるようになっている。
【0006】
特許文献2に示すように、被加工物Wをチャッキングしたチャック爪の位置は、検出できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04-152051号
【特許文献2】特願2020-218483号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、工作機械において、被加工物のチャッキングを繰り返した結果、チャックの機構の機械的なガタの発生や、チャック爪の開きの発生、チャック爪の摩耗等が発生することがある。
【0009】
このような現象を放置しておくと、被加工物のチャッキングの異常を引き起こす可能性がある。
【0010】
そこで、被加工物のチャッキングの異常発生を引き起こす現象を検出するために、チャックのチャッキング精度確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のチャッキング精度確認装置は、被加工物をチャッキングしたチャック爪の位置に関する情報が検出できるチャックにおいて、検出されたチャック爪の位置に関する情報の統計処理を行い、作成時期が異なる統計処理データを比較することによって、チャッキングの精度を監視できるようになっている。
【0012】
請求項1のチャッキング精度確認装置によれば、検出されたチャック爪の位置情報の統計処理を行い、作成時期が異なる統計処理データを比較することで、被加工物のチャッキングの異常発生の原因となる現象を高精度で検出することができる。このような現象を検出できれば、一旦加工を停止しチャッキング精度確認装置に対して適切な処置を行うことができる。
【0013】
請求項2のチャッキング精度確認装置は、請求項1のチャッキング精度確認装置において、チャック爪の位置に関する情報の統計処理データの結果に基づいて、正常なチャッキングと推定されるチャック爪の位置に関する情報の範囲を設定できる。
【0014】
請求項2のチャッキング精度確認装置によれば、請求項1のチャッキング精度確認装置と同様の作用に加えて、容易に正常なチャッキングかどうか判別することができる。
【0015】
請求項3のチャッキング精度確認装置は、請求項1又は2のチャッキング精度確認装置において、チャッキング精度に異常が発生した場合に、その原因を判別できるようになっている。
【0016】
請求項3のチャッキング精度確認装置によれば、請求項1又は2のチャッキング精度確認装置と同様の作用に加えて、被加工物のチャッキングの異常発生を引き起こす前に、適切な原因の把握と対処を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から3のいずれかに記載のチャッキング精度確認装置は、被加工物のチャッキングの異常発生を抑制できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態のチャッキング精度確認装置を設けたチャックの概略図である。
図2】本発明の一実施形態のチャッキング精度確認装置によるチャッキングの精度を監視するフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態のチャッキング精度確認装置による正常なチャッキングと推定されるチャック爪の位置の範囲を設定するフローチャートである。
図4】おおむね正常なチャッキングが行われている場合において、チャック爪の位置情報を統計処理したグラフである。
図5】被加工物のチャッキングの異常発生を引き起こす現象の一例を検出した場合において、チャック爪の位置情報を統計処理したグラフである。
図6】被加工物のチャッキングの異常発生を引き起こす現象の別の例を検出した場合において、チャック爪の位置情報を統計処理したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第一実施形態のチャッキング精度確認装置1は、図1に示すように、被加工物Wを把持するチャック10に設けられる。
【0020】
チャック10は、チャック本体11と、チャック本体11の円形の前面において径方向に移動して開閉可能となっている複数のチャック爪12と、チャック爪12と連結されるドロー部材13と、ドロー部材13に設けられているドッグ14とを有する。
【0021】
図1及び図2に示す矢印Aとチャック軸線方向に沿って、ドロー部材13及びドッグ14と一体となった移動体が前後に移動することにより、チャック爪12が開閉するようになっている。
【0022】
チャック爪12の開閉と連動するドッグ14の位置は、チャック爪12の位置に関する情報である。
【0023】
図1に示す本発明の第一実施形態のチャッキング精度確認装置1は、チャック爪12の位置に関する情報であるドッグ14の位置を検出する近接センサ2と、チャック爪12の位置に関する情報を蓄積する記憶手段3と、記憶手段3のチャック爪12の位置に関する情報の統計処理を行う演算手段4とを有する。
【0024】
チャッキングの精度の監視について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0025】
S11において、被加工物Wの寸法などの情報を取得する。
【0026】
次いで、S12において、被加工物Wをチャック爪12でチャッキングした場合にドッグ14の位置を近接センサ2で検出する。
【0027】
次いで、S13において、S12で検出したドッグ14の位置をチャック爪12の位置に関する情報として記憶装置3に格納する。
【0028】
次いで、S14において、同一の被加工物でチャッキング回数が所定回数に到達していだ場合、S15に進み、所定回数に到達していない場合は、S11に戻る。
【0029】
次いで、S15において、記憶手段3の所定回数数分のチャック爪の位置に関する情報について、演算手段4で統計処理を行い、統計処理データが作成される。
【0030】
次いで、S16において、S15で作成された統計処理データを記憶装置3に格納する。
【0031】
次いで、S17において、作成時期が異なる統計処理データを比較する。
【0032】
次いで、S18においてチャッキングの精度が低下している場合は、S19において、その原因を判別して終了する。一方、S18においてチャッキングの精度が低下していない場合は、そのまま終了する。
【0033】
チャッキングの精度が低下している場合は、その旨を使用者に通知することによって、被加工物のチャッキングの異常発生を引き起こす現象を未然に防ぐことができる。また、チャッキング原因を判別することによって、点検、部品交換等の原因に応じた適切な対処を行うことができる。
【0034】
次に、正常なチャッキングと推定されるチャック爪の位置の範囲を設定について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
S21において、被加工物Wの寸法などの情報を取得する。
【0036】
次いで、S22において、被加工物Wをチャック爪12でチャッキングした場合にドッグ14の位置を近接センサ2で検出する。
【0037】
次いで、S23において、S22で検出したドッグ14の位置をチャック爪12の位置に関する情報として記憶装置3に格納する。
【0038】
次いで、S24において、同一の被加工物でチャッキング回数が所定回数に到達していだ場合、S25に進み、所定回数に到達していない場合は、S21に戻る。
【0039】
次いで、S25において、記憶手段3の所定回数数分のチャック爪の位置に関する情報について、演算手段4で統計処理を行い、統計処理データが作成される。
【0040】
次いで、S26において、S25の統計処理データに基づいて正常なチャッキングと推定されるチャック爪の位置に関する情報の範囲を設定する。
【0041】
次いで、S27において、S26で設定された範囲に、新たなチャッキングで得られたチャック爪の位置に関する情報が該当していれば、S28において、正常なチャッキングと判断する。
【0042】
一方、S27において、S26で設定された範囲に、新たなチャッキングで得られたチャック爪の位置に関する情報が該当していなければ、S29において、異常なチャッキングと判断する。
【0043】
上記のS15~S19及びS26~S29のフロー部分について、具体的な統計処理した例を参照して、図4から6を用いて説明する。
【0044】
図4のグラフは、被加工物Wをチャック爪12で正常なチャッキングがされた所定回数分のドッグ14の位置の分布を示す。図4には、統計処理による平均値及び平均値から±3σの上限と下限を追記したものである。
【0045】
S26~S29のフロー部分で示したように、ドッグ14の位置を検出結果が、下限と上限との間にない範囲外の矢印αとなった場合、異常なチャッキングと判断される。
【0046】
図5のグラフは、破線が被加工物Wをチャック爪12で正常なチャッキングがされた過去の所定回数分のドッグ14の位置の分布を示し、実線が被加工物Wをチャック爪12でチャッキングがされた現在の所定回数分のドッグ14の位置の分布を示す。図5には、統計処理によって得られた過去の所定回数分のドッグ14の位置の平均値及び平均値から±3σの上限と下限を追記したものである。
【0047】
これらの作成時期が異なる統計処理データを比較すると、平均値は、ほぼ変わらないものの、図5中の矢印βに示すように、過去の統計処理データの上限と下限の範囲外にドッグ14の位置が検出されている。このような場合は、S15~S19のフロー部分で示したように、チャッキングの精度の低下が発生している可能性がある。
【0048】
チャッキングの精度の低下の原因としては、例えば、チャッキング精度確認装置を構成する部品等に機械的なガタが生じている可能性がある。そのため、部品の摩耗や破損部分が無いか確認する必要がある。また、機械的なガタが生じておらず、被加工物が鋳物のような場合は、型の寿命である可能性がある。そのため、被加工物の型に問題がないか確認する必要がある。
【0049】
図6のグラフは、破線が被加工物Wをチャック爪12で正常なチャッキングがされた過去の所定回数分のドッグ14の位置の分布を示し、実線が被加工物Wをチャック爪12でチャッキングがされた現在の所定回数分のドッグ14の位置の分布を示す。図6には、統計処理によって得られた過去の所定回数分のドッグ14の位置の平均値と、現在の所定回数分のドッグ14の位置の平均値をそれぞれ追記したものである。
【0050】
これらの作成時期が異なる統計処理データを比較すると、平均値が異なる。このような場合も、S15~S19のフロー部分で示したように、チャッキングの精度の低下が発生している可能性がある。チャッキングの精度の低下の原因としては、例えば、爪が寿命に達して、爪の浮き上がりが大きくなっている可能性や、チャッキング時のチャッキング精度確認装置圧が以前より高くなっている可能性がある。そのため、部品やチャッキング条件の設定を確認する必要がある。
【0051】
上記実施形態では、チャック爪12の位置に関する情報としてドッグ14の位置を検出する場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、直接チャック爪の位置を検出する等の他の方法によって、チャック爪の位置に関する情報を検出してもよい。
【0052】
上記実施形態では、同一の被加工物について所定回数のチャッキング回数に到達した場合に、統計処理を行う場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、チャック爪に関する位置の情報を検出する度に、すぐに統計処理を行ってもよい。
【0053】
上記実施形態では、同一の被加工物のドッグ14の位置について統計処理を行ったが、これに限定されることはない。例えば、検出されたドッグの位置の値を、被加工物Wの寸法での直径の値で除算した無次元のパラメータをチャック爪の位置に関する情報として統計処理を行い、異なる被加工物のチャッキングであってもチャッキングの精度を監視できてもよい。
【0054】
上記実施形態では、統計処理において3σを用いたが、これに限定されることはない。チャック爪の位置に関する情報を他の統計処理を行ってもよい。
【0055】
上記実施形態では、チャッキングの精度の低下の原因の例について説明したが、これに限定されることはない。上記以外にも様々なチャッキングの精度の低下の原因が存在する可能性がある。
【符号の説明】
【0056】
1 チャッキング精度確認装置
2 近接センサ
3 記憶手段
4 演算手段
10 チャック
11 チャック本体
12 チャック爪
13 ドロー部材
14 ドッグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6