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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115612
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】加飾品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/175 20060101AFI20220802BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B44C1/175 D
B32B33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012273
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】力石 智宏
(72)【発明者】
【氏名】成合 徹
【テーマコード(参考)】
3B005
4F100
【Fターム(参考)】
3B005EB01
3B005EB05
3B005EB07
3B005FA04
3B005FA18
3B005FB34
3B005FE04
3B005FG02X
3B005FG12X
3B005GA28
3B005GC03
3B005GD03
3B005GD05
4F100AK01A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DD05B
4F100HB31A
(57)【要約】
【課題】被転写体の表面に部分的に印刷層が転写されていない加飾品を製造するための製造工数及び設備コストを削減する。
【解決手段】バインダー樹脂を含有する印刷層7が水溶性フィルムに形成された転写フィルムと、溝6aが表面に形成された被転写体6とを用意し、転写フィルムを印刷層7が上を向くように水面w1に浮かべた状態で印刷層7に溶剤を塗布して印刷層7を粘着化させるとともに、水溶性フィルムを溶解させ、次いで、被転写体6の表面を水面w1に浮かんでいる印刷層7に押し当てることにより、溝6aの底部に印刷層7を密着させない状態で、被転写体6の表面における溝6a非形成領域に印刷層7を密着させ、その後、被転写体6の表面を洗浄することにより、被転写体6の表面に密着していない印刷層7を除去する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂を含有する印刷層(7)が水溶性フィルム(13)に形成された転写フィルム(11)と、凹部(6a)が表面に形成された被転写体(6)とを用意し、
上記転写フィルム(11)を上記印刷層(7)が上を向くように水面(w1)に浮かべた状態で該印刷層(7)に溶剤(S)を塗布して該印刷層(7)を粘着化させるとともに、上記水溶性フィルム(13)を溶解させ、
次いで、上記被転写体(6)の表面を上記水面(w1)に浮かんでいる印刷層(7)に押し当てることにより、上記凹部(6a)の底部に上記印刷層(7)を密着させない状態で、上記被転写体(6)の表面における凹部(6a)非形成領域に上記印刷層(7)を密着させ、
その後、上記被転写体(6)の表面を洗浄することにより、上記被転写体(6)の表面に密着していない印刷層(7)を除去し、上記被転写体(6)の表面における上記凹部(6a)非形成領域に印刷層(7)が転写され、かつ上記凹部(6a)の底部に印刷層(7)が転写されていない加飾品(1)を得ることを特徴とする加飾品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の加飾品の製造方法において、
上記被転写体(6)の凹部(6a)は、幅(WI)が0.5mmよりも長く、深さ(DE)が2.0mmよりも短く、かつ深さ(DE)に対する幅(WI)の割合が0.67よりも低い溝であることを特徴とする加飾品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被転写体の表面に印刷層が水圧転写された加飾品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷層が水溶性フィルムに形成された転写フィルムを上記印刷層が上を向くように水面に浮かべた状態で上記水溶性フィルムを溶解させ、次いで、被転写体の表面を上記水面に浮かんでいる印刷層に押し当てることにより、上記被転写体の表面に印刷層を転写し、その後、上記被転写体の洗浄及び乾燥を行い、被転写体の表面に転写された印刷層の一部をレーザ加工によって除去することにより、被転写体の表面に部分的に印刷層が転写されていないデザインラインを有する加飾品を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-78030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、被転写体に印刷層を転写する工程、及び被転写体を洗浄する工程とは別に、レーザ加工設備を用いてレーザ加工を行う工程が必要となるので、製造工数及び設備コストの増加を招く。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被転写体の表面に部分的に印刷層が転写されていない加飾品を製造するための製造工数及び設備コストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、被転写体の表面の一部を、印刷層の水圧転写工程において印刷層が密着しないように凹ませたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、第1の発明は、被転写体の表面に部分的に印刷層が水圧転写されていない加飾品の製造方法を前提とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、バインダー樹脂を含有する印刷層が水溶性フィルムに形成された転写フィルムと、凹部が表面に形成された被転写体とを用意し、上記転写フィルムを上記印刷層が上を向くように水面に浮かべた状態で該印刷層に溶剤を塗布して該印刷層を粘着化させるとともに、上記水溶性フィルムを溶解させ、次いで、上記被転写体の表面を上記水面に浮かんでいる印刷層に押し当てることにより、上記凹部の底部に上記印刷層を密着させない状態で、上記被転写体の表面における凹部非形成領域に上記印刷層を密着させ、その後、上記被転写体の表面を洗浄することにより、上記被転写体の表面に密着していない印刷層を除去し、上記被転写体の表面における上記凹部非形成領域に印刷層が転写され、かつ上記凹部の底部に印刷層が転写されていない加飾品を得ることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係る加飾品の製造方法において、上記被転写体の凹部は、幅が0.5mmよりも長く、深さが2.0mmよりも短く、かつ深さに対する幅の割合が0.67よりも低い溝であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、被転写体の表面を水面に浮かんだ印刷層に押し当て、その後洗浄するだけで、被転写体の表面に部分的に印刷層が転写されていない加飾品を成形でき、レーザ加工設備を用いてレーザ加工を行う必要がないので、製造工数及び設備コストを削減できる。
【0011】
第2の発明によれば、凹部が溝であるので、被転写体の表面に、印刷層が転写されていない領域を線状に形成できる。
【0012】
また、凹部の幅が、0.5mmよりも長く設定されているので、0.5mmよりも短く設定した場合に比べ、印刷層が転写されていない領域を加飾品の表面側から視認しやすい。
【0013】
また、凹部の深さが、2.0mmよりも短く設定されているので、2.0mmよりも長く設定した場合に比べ、被転写体の凹部周りの剛性を維持できる。
【0014】
また、凹部の幅が、0.5mmよりも長く設定され、凹部の深さが、2.0mmよりも短く設定され、かつ深さに対する幅の割合が0.67よりも低く設定されているので、被転写体の表面を上記水面に浮かんだ印刷層に押し当てたときに、凹部の底部に印刷層が密着しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る製造方法により得られた加飾品としての加飾パネルを示す斜視図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3図2のIII部拡大図である。
図4】基材の図2相当図である。
図5】被転写体の図2相当図である。
図6】本発明の実施形態に係る加飾品としての加飾パネルの製造工程図であり、図6(a)は溶剤塗布工程図を、図6(b)は印刷層転写工程図を、図6(c)は洗浄工程図をそれぞれ示す。
図7】被転写体の表面を印刷層に押し当てる前における被転写体の溝周り及び印刷層周りを拡大した断面図である。
図8】被転写体の表面を印刷層に押し当てた状態における図7相当図である。
図9】被転写体の表面を洗浄する前における被転写体の溝周りを拡大した断面図である。
図10】被転写体の表面を洗浄した後の図2相当図である。
図11】被転写体の表面を洗浄した後の図9相当図である。
図12】溝の幅及び深さの好ましい数値範囲を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、自動車のインストルメントパネルに装着される加飾品としての加飾パネル1を示す。
【0018】
加飾パネル1は、その主体をなす略板状の樹脂性基材3を備えている。基材3は、平面視で横長の長円形板状の主面部3aと、当該主面部3aの外周縁部に外側に向かって徐々に裏側に傾斜するように全周に亘って延設された板状の傾斜面部3bとで構成されている。基材3の表面の幅方向中央には、図2及び図3に示すように、長手方向に延びる断面コ字状の凹条部3cが全長に亘って形成されている。基材3は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の熱可塑性樹脂からなる。
【0019】
上記基材3の表面には、無地の塗膜層5と、木目模様の非水溶性の印刷層7と、透明な樹脂からなる表面層9とが、基材3側から順に形成されている。
【0020】
塗膜層5は、基材3の表面全体に亘って形成されている。塗膜層5は、茶色の顔料で着色された塗料で構成されている。
【0021】
上記基材3と上記塗膜層5とで、板状の被転写体6が構成されている。被転写体6の表面における凹条部3c対応箇所には、凹部としての溝6aが形成されている。被転写体6の主面部3a対応領域の厚さTは、2.5mm以上4mm以下に設定されている。また、被転写体6の溝6aの幅WIは0.5mmよりも長く設定され、溝6aの深さDEは2.0mmよりも短く設定され、かつ溝6aの深さDEに対する幅WIの割合は0.67よりも低く設定されている。
【0022】
印刷層7は、被転写体6の表面における溝6a非形成領域に全体に亘って形成されている。印刷層7は、アクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等のバインダー樹脂と、顔料とを含有している。
【0023】
表面層9は、被転写体6の表面全体に亘って形成されている。表面層9は、非塩素系変性ポリオレフィン樹脂組成物等を含有するクリア塗料で構成されている。
【0024】
上記加飾パネル1は、次の要領にて製造される。
【0025】
まず、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の熱可塑性樹脂の射出成形により、図4に示す基材3を得る。
【0026】
次いで、基材3の表面に付着している油分及びゴミを拭き取り、基材3の表面全体に、印刷層7の木目模様に対応した下地色となる茶色の顔料で着色された塗料をスプレーガンにより吹き付けて焼き付ける。これにより、図5に示すように、基材3の表面全体に塗膜層5が形成された被転写体6が得られる。
【0027】
その後、図6(a)に示すように、ロール状に巻回された転写フィルム11と図5に示す被転写体6とを用意する。上記転写フィルム11は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ポリアクリルアミド、アセチルブチルセルロース等の水溶性材料からなる水溶性フィルム13(図6(a)及び図6(b)において二点鎖線で示す)に印刷層7(図6(a)及び図6(b)において一点鎖線で示す)がグラビア印刷等により木目模様で形成されたものである。そして、転写フィルム11を水槽101に送り出し、印刷層7が上を向くように水槽101に貯留された約30℃の水Wの水面w1に浮かべ、この状態で、印刷層7にスプレーノズル103から溶剤Sを吹付け塗布する。この溶剤Sは、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル等、印刷層7を溶解させる性質を有する有機溶剤である。これにより、印刷層7が粘着化するとともに、図7に示すように、水溶性フィルム13が水に溶解する。
【0028】
一方で、図6(a)に示すように、水槽101上方の取付治具105に被転写体6をその表面が下向きになるように取り付ける。取付治具105は、水平方向に移動可能なスライド装置(図示せず)に回動可能に取り付けられている。その後、被転写体6の長手方向の一方が他方よりも下側に位置するように被転写体6を水面w1に対して傾けた状態で水面w1上に配置する。このとき、被転写体6の主面部3a対応領域と水面w1とのなす角度αは、10°以上15°以下に設定されている。
【0029】
そして、図6(a)の位置から、水面w1に浮かんでいる印刷層7に、被転写体6の長手方向一端縁を押し当て、被転写体6を水面w1に対して傾けた状態のまま被転写体6全体をスライドさせて水中へ完全に没入させる。これにより、図8に示すように、没入時に受ける水圧で被転写体6の表面が水面w1に浮かんでいる印刷層7に押し当てられ、溝6aの底部に印刷層7が密着しない状態で、被転写体6の表面における溝6a非形成領域に印刷層7が密着して水圧転写される。このとき、印刷層7における溝6aに対向する領域には、溝6a内部に膨出する断面略C字状の膨出部7aが没入時の水圧によって形成されるが、当該膨出部7aは、溝6aの底部及び両側面に密着していない。また、このように、被転写体6を水中へ没入させる際に、被転写体6の板面を水面w1に対して傾けるので、被転写体6の表面と印刷層7との間にエアが滞留するのを抑制できる。その後、図6(b)に示すように、水圧が被転写体6の表面全体に均等に掛かるように被転写体6を沈めて水平姿勢にする。このとき、図9に示すように、溝6aの底部及び側面部には印刷層7が密着しない状態で、被転写体6の表面における溝6a非形成領域に印刷層7が水圧転写されている。
【0030】
次いで、印刷層7が転写された被転写体6を水中より引き上げ、図6(c)に示すように、被転写体6に転写された印刷層7の表面に洗浄ノズル107から洗浄水Rを吹き付けて被転写体6の表面をシャワー洗浄することにより、被転写体6の表面に密着していない印刷層7、すなわち、印刷層7の膨出部7aと、被転写体6の表面全体における完全に溶解しきれずに付着残存している水溶性フィルム13やゴミ等とを除去した後、乾燥させる。これにより、図10及び図11に示すように、被転写体6の表面における溝6a非形成領域だけに印刷層7が転写された状態となる。
【0031】
その後、印刷層7が転写された被転写体6の表面全体に、クリア塗料をスプレーガンにより吹き付けて焼き付ける。これにより、図2及び図3に示すように、被転写体6の表面における溝6a非形成領域に印刷層7が転写され、かつ溝6aの底部及び側面部に印刷層7が転写されておらず、かつ被転写体6の溝6aの底部及び側面部の表面と印刷層7の表面とに表面層9が形成された加飾パネル1が得られる。
【0032】
したがって、本実施形態によれば、被転写体6の表面を水面w1に浮かんだ印刷層7に押し当て、その後洗浄するだけで、被転写体6の表面に部分的に印刷層7が転写されていない加飾パネル1を成形でき、レーザ加工設備を用いてレーザ加工を行う必要がないので、製造工数及び設備コストを削減できる。
【0033】
また、溝6aの幅WIが、0.5mmよりも長く設定されているので、0.5mmよりも短く設定した場合に比べ、印刷層7が転写されていない領域を加飾パネル1の表面側から視認しやすい。
【0034】
また、溝6aの深さDEが、2.0mmよりも短く設定されているので、2.0mmよりも長く設定した場合に比べ、被転写体6の溝6a周りの剛性を維持できるとともに、溝6aが際立ち過ぎるのを抑制できる。
【0035】
また、図12中、直線Aは、溝6aの幅WIが0.5mmである場合に対応し、直線Bは、溝6aの深さDEが2.0mmである場合に対応し、直線Cは、深さDEに対する幅WIの割合が0.67である場合に対応する。溝6aの幅WI及び深さDEは、図12中斜線で示す適用範囲に設定されている。つまり、溝6aの幅WIは、0.5mmよりも長く設定され、溝6aの深さDEは、2.0mmよりも短く設定され、かつ深さDEに対する幅WIの割合は0.67よりも低く設定されている。したがって、被転写体6の表面を水面w1に浮かんでいる印刷層7に押し当てたときに、溝6aの底部に印刷層7が密着しにくい。このことを実証するために、以下に実験例(実施例1,2、比較例1~4)を挙げる。
【0036】
実施例1,2及び比較例1~4では、上記実施形態と同じ手順で被転写体6の表面に印刷層7を形成する。なお、実施例1,2及び比較例1~4では、被転写体6を水中へ没入する際、被転写体6の溝6aに沿う方向の一端を他端よりも下側に傾け、かつ被転写体6を溝6aに沿う方向にスライドさせた。つまり、被転写体6を水中へ没入する際に被転写体6を傾ける方向とスライドさせる方向とを、水圧転写時に溝6aと印刷層7との間に滞留するエアが最も排出され易い方向、言い換えれば水圧転写時に溝6aの底部に印刷層7が最も密着しやすい方向に設定して実験を行った。図12のグラフでは、実施例1,2及び比較例1~4における溝6aの幅WI及び深さDEが、座標PE1,2、CE1~4で示されている。
【0037】
実施例1では、被転写体6の溝6aの幅WIを1.0mm、溝6aの深さDEを1.5mmに設定し、溝6aの底部に印刷層7が転写されるか否かの確認を行った。
【0038】
実施例2では、被転写体6の溝6aの幅WIを1.0mm、溝6aの深さDEを2.0mmに設定し、実施例1と同様の確認を行った。
【0039】
比較例1では、被転写体6の溝6aの幅WIを1.0mm、溝6aの深さDEを1.0mmに設定し、実施例1と同様の確認を行った。
【0040】
比較例2では、被転写体6の溝6aの幅WIを1.5mm、溝6aの深さDEを1.0mmに設定し、実施例1と同様の確認を行った。
【0041】
比較例3では、被転写体6の溝6aの幅WIを1.5mm、溝6aの深さDEを2.0mmに設定し、実施例1と同様の確認を行った。
【0042】
比較例4では、被転写体6の溝6aの幅WIを1.5mm、溝6aの深さDEを2.5mmに設定し、実施例1と同様の確認を行った。
【0043】
<実施例1>
実施例1では、溝6aの底部に印刷層7が転写されていないことが確認された。
【0044】
<実施例2>
実施例2では、溝6aの底部に印刷層7が転写されていないことが確認された。
【0045】
実施例1,2では、被転写体6を水中へ没入させる際に被転写体6を溝6aに沿う方向に傾けてスライドさせるので、被転写体6を水中へ没入させる際に被転写体6を溝6aと交差する方向に傾けてスライドさせる場合に比べ、溝6aにエアが滞留しにくく、溝6aの底部に印刷層7が形成されやすい。したがって、被転写体6を水中へ没入させる際に被転写体6を溝6aと交差する方向に傾けてスライドさせる場合でも、被転写体6の溝6aの幅WI及び深さDEを実施例1,2と同じ寸法に設定すれば、溝6aの底部に印刷層7は転写されないと推測できる。すなわち、実施例1,2によれば、被転写体6の溝6aの幅WI及び深さDEを実施例1,2と同じ寸法に設定すれば、溝6aが被転写体6のどの方向に延びていても、また、溝6aが曲線状であっても、溝6aの底部に印刷層7は転写されないと推測できる。
【0046】
<比較例1>
比較例1では、溝6aの底部に印刷層7が全体的に転写されていることが確認された。
【0047】
<比較例2>
比較例2では、溝6aの底部に印刷層7が全体的に転写されていることが確認された。
【0048】
<比較例3>
比較例3では、溝6aの底部に印刷層7が部分的に転写されていることが確認された。
【0049】
<比較例4>
比較例4では、溝6aの底部に印刷層7が部分的に転写されていることが確認された。
【0050】
なお、上記実施形態では、加飾パネル1に本発明を適用したが、本発明は、パネル形状以外の立体的な形状の加飾品にも適用できる。
【0051】
また、上記実施形態では、被転写体6の表面に凹部として溝6aを設け、加飾パネル1の表面に、印刷層7が転写されていない領域を線状に形成したが、被転写体6の表面に、例えば点状、矩形状等、線状以外の形状の凹部を設け、加飾パネル1の表面に、印刷層7が転写されていない領域を、点状、矩形状等、線状以外の形状に形成してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、基材3の表面に塗膜層5を形成したが、形成しなくてもよい。つまり、基材3だけで被転写体6を構成してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、印刷層7を木目模様とし、塗膜層5の色、すなわち下地色を木目模様に対応する茶色としたが、これに限定されるものではなく、印刷層7を幾何学模様にする等、印刷層7の模様を他の模様にしてもよいし、塗膜層5の色を茶色以外の色にしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、被転写体6の表面を水面w1に浮かんでいる印刷層7に押し当てたときに、印刷層7の膨出部7aを溝6aの両側面に密着させなかったが、密着させ、溝6aの両側面に印刷層7が水圧転写されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、被転写体の表面に印刷層が水圧転写された加飾品の製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 加飾パネル(加飾品)
6 被転写体
6a 溝(凹部)
7 印刷層
11 転写フィルム
13 水溶性フィルム
WI 幅
DE 深さ
w1 水面
S 溶剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12