(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115622
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】サーモスタット装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/68 20060101AFI20220802BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
F16K31/68 A
F01P7/16 502B
F01P7/16 502E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012285
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】沼田 雅之
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA02
3H057BB32
3H057BB35
3H057CC03
3H057DD01
3H057HH03
3H057HH17
(57)【要約】
【課題】ハウジングの脚の開きを抑制し、フレームの脱落を防止できるサーモスタット装置を提供する。
【解決手段】ハウジング1と、その内側に挿入されるサーモエレメント17の外周に設けられる弁体15と、この弁体15を付勢するコイルスプリング16の一端を支持するフレーム19とを備え、ハウジング1は、一端に開口を有する中空の本体部20と、本体部20の開口縁から起立する一対の脚21,21と、脚21の先端部に内向きに突出するよう形成されて、フレーム19が引っ掛かる引掛け部21aとを有し、引掛け部21aが、脚21の幅方向中央に位置する被係合部と、被係合部に連なり脚21の幅方向両端に位置する補助部とを有し、被係合部における脚21の根元側の端面cは、補助部における脚21の根元側の端面a,bと比較して脚21の先端から離れた位置にあり、フレーム19が被係合部の端面cに当接する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に弁座が形成されるハウジングと、
一端が前記ハウジングの内側に挿入されて温度に応じて伸縮作動するサーモエレメントと、
前記サーモエレメントの外周に設けられて前記サーモエレメントの伸縮作動により前記弁座に離着座する弁体と、
前記弁体を弁座側へ付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の一端を支持するフレームと、を備え、
前記ハウジングは、
一端に開口を有して内側に前記弁座が形成される中空の本体部と、
前記本体部の開口縁から起立する一対の脚と、
前記脚の先端部に内向きに突出するよう形成されて、前記フレームが引っ掛かる引掛け部とを有し、
前記引掛け部は、前記脚の幅方向中央に位置する被係合部と、前記被係合部に連なり前記脚の幅方向両端に位置する補助部とを有し、
前記被係合部における前記脚の根元側の端面は、前記補助部における前記脚の根元側の端面と比較して前記脚の先端から離れた位置にあり、
前記フレームは、前記被係合部の前記端面に当接することを特徴とするサーモスタット装置。
【請求項2】
前記引掛け部と前記脚との境界部分は、R形状であることを特徴とする請求項1に記載されたサーモスタット装置。
【請求項3】
前記被係合部の側面と、前記被係合部及び前記補助部の前記端面との境界部分は、それぞれR形状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたサーモスタット装置。
【請求項4】
前記被係合部の両側面は、前記脚の先端へ向かうに従って離間することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載されたサーモスタット装置。
【請求項5】
一対の前記脚の根元を繋ぐリブを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載されたサーモスタット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモスタット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモスタット装置の中には、例えば、特許文献1に開示されるように(
図8参照)、中空のハウジング60と、一端がハウジング60内に挿入されて温度に応じて伸縮するサーモエレメント51と、サーモエレメント51の伸縮により開閉する弁体52と、前記弁体52を閉じる方向へ付勢するコイルスプリング53と、コイルスプリング53の一端を支えるフレーム65とを備え、このフレーム65をハウジング60の一対の脚62,62の先端に引っ掛けるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサーモスタット装置では、
図9に示すように、脚62の先端部の全体を内向きに突出させて引掛け部62aを形成し、この引掛け部62aにばね受けとして機能するフレーム65を引っ掛けている。このような場合であっても、ハウジング60がアルミ等の金属製の場合には、引掛け部62aでコイルスプリング53のばね荷重を受けても、脚62が変形してフレーム65が脱落することはない。
【0005】
しかしながら、コストの削減、軽量化等を目的として、一対の脚62,62を含むハウジング60を金属製からそのまま合成樹脂製に変更した場合、耐久性が低下して、ばね荷重によって一対の脚62の先端が互いに離れて一対の脚62が開くように変形し、フレーム65が脱落する虞がある。
【0006】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、ハウジングの脚の開きを抑制し、フレームの脱落を防止できるサーモスタット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明に係るサーモスタット装置は、内側に弁座が形成されるハウジングと、一端が前記ハウジングの内側に挿入されて温度に応じて伸縮作動するサーモエレメントと、前記サーモエレメントの外周に設けられて前記サーモエレメントの伸縮作動により前記弁座に離着座する弁体と、前記弁体を弁座側へ付勢する付勢部材と、前記付勢部材の一端を支持するフレームと、を備え、前記ハウジングは、一端に開口を有して内側に前記弁座が形成される中空の本体部と、前記本体部の開口縁から起立する一対の脚と、前記脚の先端部に内向きに突出するよう形成されて、前記フレームが引っ掛かる引掛け部とを有し、前記引掛け部は、前記脚の幅方向中央に位置する被係合部と、前記被係合部に連なり前記脚の幅方向両端に位置する補助部とを有し、前記被係合部における前記脚の根元側の端面は、前記補助部における前記脚の根元側の端面と比較して前記脚の先端から離れた位置にあり、前記フレームは、前記被係合部の前記端面に当接することを特徴とする。
当該構成によれば、フレームを支える脚の先端部の引掛け部が、フレームが係合する被係合部の他に、被係合部に連なって脚の幅方向へ延びる補助部を有している。このため、コイルスプリングのばね荷重が被係合部に作用すると、これに従って被係合部が補助部に対して移動しようとするが、これに抗する反力を得て、一対の脚の先端が離れる方向に変形するのが抑制される。
【0008】
また、前記サーモスタット装置では、前記引掛け部と前記脚との境界部分が、R形状であってもよく、前記被係合部の側面と、前記被係合部及び前記補助部の前記端面との境界部分が、それぞれR形状であってもよい。このようにすると、応力が集中するのを防止できるので、引掛け部の耐久性を向上できる。
【0009】
また、前記サーモスタット装置では、前記被係合部の両側面が、前記脚の先端へ向かうに従って離間してもよい。このようにすると、サーモスタット装置の組立の際に引掛け部の被係合部にフレームの係合部を嵌めやすく、組立作業を容易にできる。
【0010】
また、前記サーモスタット装置は、一対の前記脚の根元を繋ぐリブを備えていてもよい。このようにすると、脚の根元をリブで補強できるので、ハウジングの脚の開きを一層抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るサーモスタット装置によれば、ハウジングの脚の開きを抑制し、フレームの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置を脚の先端側から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置の底面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置の一部断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置の脚の先端部を拡大して示した部分拡大図であり、一対の脚の内側から見た状態を示す。
図4(b)は、
図4(a)に示す脚の先端部とフレームとの係合関係を示す部分拡大斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施の形態の第一の変形例に係るサーモスタット装置の脚の先端部とフレームとの係合関係を示す部分拡大斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施の形態の第二の変形例に係るサーモスタット装置を脚の先端側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施の形態の第三の変形例に係るサーモスタット装置を脚の先端側から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、従来のサーモスタット装置の一部断面図である。
【
図9】
図9は、従来のサーモスタット装置の一部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置を図面に基づき説明する。
図1から
図7に示す一実施の形態に係るサーモスタット装置10は、例えばエンジンの冷却液系に設けられる。具体的には、サーモスタット装置10は、ラジエータとエンジンとを繋ぐ冷却路におけるエンジンの入口側又は出口側に設けられ、冷却液の温度に応じて冷却路を開閉し、エンジンを循環する冷却液温度を制御する。
【0014】
本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置10は、
図3に示すように、中空のハウジング1と、このハウジング1内に一端が挿入されるサーモエレメント17と、このサーモエレメント17の外周に設けられ、冷却路を開閉する弁体15と、この弁体15を閉じ方向へ付勢する付勢部材としてのコイルスプリング16と、このコイルスプリング16の一端を支持するフレーム19とを備える。以下、説明の便宜上、
図3に示すサーモスタット装置10の上下を単に「上」「下」という。
【0015】
本実施の形態において、ハウジング1は、合成樹脂により形成されている。ハウジング1は、下端に開口20cが形成される略有頂筒状の本体部20と、この本体部20の下端開口縁から下方へ相対向して延びる一対の脚21,21と、本体部20の頂部に設けられるラジエータ側の接続口23と、本体部20の下端外周から外側へ張り出す一対のフランジ2,2とを有する。冷却液は、接続口23、本体部20の内側、及び開口20cを通過するようになっており、これらは冷却路の一部を構成する。
一対のフランジ2,2には、それぞれボルト孔2aが形成される。ボルト孔2aには、金属製のスリーブ(符示せず)が圧入され、このスリーブにサーモスタット装置10を相手側部材へ固定するためのボルト(図示せず)が挿通される。ここでいう相手側部材とは、例えば、サーモスタット装置が自動車におけるエンジンの入口側に配置される場合、サーモスタット装置は、エンジンに冷却液を供給するウォーターポンプに取り付けられる。この場合、ウォーターポンプ側のサーモスタット装置を取り付けるための部材が相手側部材である。
【0016】
また、ボルト孔2aよりも内側に位置する本体部20の下端開口縁には、開口20cを取り囲むように環状の溝20dが形成され、この溝20dにガスケット25が装着される。このガスケット25は、サーモスタット装置10と相手側部材との間をシールし、サーモスタット装置10を相手側部材に取り付けた状態で、ハウジング1内を流れる冷却液が外に漏れるのを防止する。本体部20におけるガスケット25よりも内側(内部側)が、ハウジング1の内側である。
このハウジング1の内側に位置する本体部20の下端開口縁の直上部内周に、環状の弁座20bが形成されており、この弁座20bに弁体15が離着座することで、冷却路が開閉される。
【0017】
ハウジング1の内側に、サーモエレメント17が挿入される。サーモエレメント17は、本体部20の軸芯部に、その軸芯線に沿うように配置される。サーモエレメント17は、内部にワックス等の熱膨張体が封入されるエレメントケース30と、このエレメントケース30に進退可能に挿入されるピストン3とを備える。
そして、エレメントケース30周囲の冷却液の温度が上昇し、内部の熱膨張体が膨張すると、ピストン3がエレメントケース30から退出し、サーモエレメント17が伸長する。反対に、エレメントケース30周囲の冷却液の温度が低下し、内部の熱膨張体が収縮すると、ピストン3がエレメントケース30に進入し、サーモエレメント17が収縮する。このように、サーモエレメント17は、温度に応じて伸縮作動する。
サーモエレメント17の上端に位置するピストン3の先端は、本体部20の内側、頂部に形成された筒状のボス部20aに篏合する。このため、ハウジング1に対するピストン3の上方への移動が阻止される。よって、サーモエレメント17が伸縮作動すると、ハウジング1に対するピストン3の位置は変わらず、エレメントケース30が上下に移動する。
【0018】
エレメントケース30の外周に、弁体15が固定されている。これにより、弁体15は、サーモエレメント17の伸縮に伴ってエレメントケース30とともに上下に移動する。そして、サーモエレメント17が伸長して弁体15が下方へ移動すると、弁体15が弁座20bから離座してこれらの間を冷却液が通過できるようになるので、冷却路の連通が許容される。反対に、サーモエレメント17が収縮し、弁体15が上方へ移動して弁座20bに着座すると、冷却路の連通が遮断される。このように、弁体15は、弁座20bに離着座して冷却路を開閉する。
【0019】
弁体15の背面には、コイルスプリング16の上端が当接する。このコイルスプリング16は、サーモエレメント17の周りを囲うように配置されている。また、コイルスプリング16の下端(一端)は、フレーム19で支えられている。
【0020】
フレーム19は、ハウジング1に形成される一対の脚21,21の先端部に引っ掛かり、ハウジング1に対する下方への移動が阻止される。具体的に、フレーム19は、中心部に貫通孔19aが形成される環状のスプリングシート部19dと、このスプリングシート部19d外周から直径方向両側へ突出して脚21,21の先端部に引っ掛かる係合部19bとを有する。貫通孔19aには、エレメントケース30が上下動自在に挿通される。つまり、エレメントケース30は、フレーム19に対して上下動可能となっている。
【0021】
コイルスプリング16は、圧縮ばねであり、弁体15とフレーム19との間に圧縮された状態で配置される。このため、弁体15は、コイルスプリング16で上方(弁座20b側)へ付勢される。この構成において、サーモエレメント17の周囲の冷却液が高温になり、サーモエレメント17が伸長すると、弁体15がコイルスプリング16の付勢力に抗して下方へ移動して、弁座20bから離れる。その一方、サーモエレメント17の周囲の冷却液が低温になり、サーモエレメント17が収縮すると、弁体15がコイルスプリング16の付勢力に従って上方へ移動して、弁座20bに近づく。
【0022】
図1に示すように、ハウジング1は、一対の脚21と、各脚21の先端部に設けられる引掛け部21aと、開口20cの縁に沿うように起立して一対の脚21の根元を繋ぐ円弧状のリブ22とを有する。引掛け部21aには、フレーム19の係合部19bが係合する。
【0023】
ここで、
図4(a)に、脚21の先端部に設けられた引掛け部21aを一対の脚21,21の内側から見た拡大図を示し、
図4(b)に、引掛け部21aとフレーム19の係合部19bとの係合関係を示す斜視の拡大図を示す。
引掛け部21aは、脚21の先端部から内向きに(向かい合う脚21に向けて)突出する。引掛け部21aは、脚21の幅方向中央に位置する部分が、その両側よりも上下長が大きく形成されており、逆T字状の形状となる。この引掛け部21aにおいて、脚21の幅方向中央に位置する上下長の大きい部分が被係合部21a3、脚21の幅方向両端に位置する上下長の小さい部分が補助部21a1,21a2であり、被係合部21a3における上側(脚21の根元側)の端面cは、補助部21a1,21a2における上側(脚21の根元側)の端面a,bよりも高い(脚21の先端から離れた)位置にある。このように、被係合部21a3の端面cと補助部21a1,21a2の端面a,bは段違いに形成されており、被係合部21a3にフレーム19の係合部19bが載る。
【0024】
図4(b)に示すように、フレーム19の係合部19bは、被係合部21a3の端面cに当接する積載板部19b3と、この積載板部19b3の両端から相対向して起立して、被係合部21a3を幅方向両側から挟む一対のサイド板部19b1,19b2とを有する。このサイド板部19b1,19b2は、スプリングシート部19dの外周縁に沿うように起立するリブ19cに連なっている。
【0025】
図4(a)に示すように、引掛け部21aにおける被係合部21a3の横幅は、補助部21a1,21a2の横幅を足し合わせた長さよりも幅広に形成される。また、被係合部21a3の横幅方向の一端から他端までの直線距離L2は、係合部19bの一対のサイド板部19b1,19b2の間隔W1と同じか、若干小さく形成される(L2≦W1)。これにより、一対のサイド板部19b1,19b2の間に被係合部21a3がガタツキなく嵌まる。
また、サイド板部19b1,19b2の高さは、リブ19cの高さと等しく、積載板部19b3が被係合部21a3の端面cに当接した状態で、サイド板部19b1,19b2が補助部21a1,21a2の端面a,bに干渉しない長さとされる。換言すると、サイド板部19b1,19b2の根元から先端までの距離W2は、被係合部21a3の端面cと補助部21a1,21a2の端面a,bとの高さ方向の差L3よりも短い(W2<L3)。これにより、フレーム19の係合部19bを引掛け部21aに係合した状態で、サイド板部19b1,19b2は補助部21a1,21a2に干渉しない。
また、脚21の先端部から内向きに突出する引掛け部21aの内側への突出高さL5は、組み立ての容易さとフレーム19との係合性を考慮して適宜値に設定されている。
【0026】
また、引掛け部21aと脚21との境界部分21a5、引掛け部21aにおける被係合部21a3の側面21a31と端面cとの境界部分21a6、被係合部21a3の側面21a31と補助部21a2の端面a,bとの境界部分21a4は、それぞれR形状である。
【0027】
以上のように、本発明の一実施の形態に係るサーモスタット装置10は、内側に弁座20bが形成されるハウジング1と、一端がハウジング1の内側に挿入されて温度に応じて伸縮作動するサーモエレメント17と、このサーモエレメント17の外周に設けられてサーモエレメント17の伸縮作動により弁座20bに離着座する弁体15と、弁体15を弁座20b側へ付勢するコイルスプリング(付勢部材)16と、このコイルスプリング19の下端(一端)を支持するフレーム19と、を備えている。
また、ハウジング1は、下端(一端)に開口20cを有して内側に弁座20bが形成される中空の本体部20と、この本体部20の開口縁から起立する一対の脚21,21と、脚21の先端部に内向きに突出するよう形成されて、フレーム19が引っ掛かる引掛け部21aとを有する。この引掛け部21aは、脚21の幅方向中央に位置する被係合部21a3と、被係合部21a3に連なり脚21の幅方向両端に位置する補助部21a1,21a2とを有する。そして、被係合部21a3における脚21の根元側の端面cは、補助部21a1,21a2における脚21の根元側の端面a,bと比較して脚21の先端から離れた位置にあり、フレーム19が被係合部21a3の端面cに当接する。
【0028】
このように、本実施の形態によれば、フレーム19を支える脚21の先端部の引掛け部21aが、フレーム19が係合する被係合部21a3の他に、被係合部21a3の上端部に連なって脚21の横幅方向へ延びる補助部21a1,21a2を有している。このため、コイルスプリング16のばね荷重が被係合部21a3に下向きに作用すると、補助部21a1,21a2に対して被係合部21a3が下方へ移動しようとするが、これに抗する反力を得て、一対の脚21,21の先端が離れる方向に変形するのを抑制できる。即ち、上記構成によれば、ハウジング1の脚21の開きを抑制し、フレーム19の脱落を防止できる。
【0029】
また、本実施の形態では、引掛け部21aと脚21との境界部分21a5、引掛け部21aにおける被係合部21a3の側面21a31と端面cとの境界部分21a6、引掛け部21aの側面21a31と補助部21a1,21a2の端面a,bとの境界部分21a4が、それぞれR形状である。これにより、応力が集中するのを防止できるので、引掛け部21aの耐久性を向上できる。なお、引掛け部21aの耐久性が確保できれば、上記境界部分の一部または全部がエッジ形状であってもよい。
【0030】
また、本実施の形態においては、
図4(a)に示したように、被係合部2a3の両側面21a31,21a31が平行であるが、この限りではない。
例えば、
図5に示すように、被係合部2a3の両側面21a31,21a31が、脚21の先端へ向かうにしたがって離間するとしてもよい。このようにすると、サーモスタット装置10の組立の際に引掛け部21aの被係合部21a3にフレーム19の係合部19bを嵌めやすく、組立作業を容易にできる。
【0031】
また、本実施の形態のサーモスタット装置10は、一対の脚21,21の根元を繋ぐリブ22を備えている。当該構成によれば、脚21の根元をリブ22で補強できるので、ハウジング1の脚21の開きを一層抑制できる。
しかし、例えば、
図6,7に示すように、リブ22が断続的に設けられ、隣り合うリブ22,22の間に開口部Sが形成されていてもよい。このように、開口部Sを設けると、弁体15が開いたときに、開口部Sを積極的に冷却液が通過する。即ち、開口部Sの位置、数、大きさを調整することにより、冷却液の流れを制御できる。
例えば、サーモスタット装置10がエンジンの入口側に配置される場合、開口部Sをサーモスタット装置10のエンジン出口側に偏らせて配置すれば、圧損を低減できる。また、サーモスタット装置10がエンジンの入口側に配置され、ラジエータを経由した低温の冷却液の導入口となる接続口23の他、ラジエータを経由しない高温の冷却液の導入口となる接続口(図示せず)を備える場合、開口部Sをサーモスタット装置10のエンジン出口と反対側に偏らせて配置すれば、低温の冷却液と高温の冷却液とのミキシングを良好にできる。なお、リブ22は、省略してもよい。
【0032】
また、前述のように、サーモスタット装置10が、エンジンの入口側に配置され、接続口23からラジエータを経由した冷却液が流入する場合には、この接続口側の冷却液の圧力で弁体15が開弁しないよう、コイルスプリング16のばね定数を大きくする必要があり、脚21を開く方向へ作用する力が大きくなる。よって、このようなエンジン入口側に配置されるサーモスタット装置10に、本発明が適用されるのが特に有効である。しかし、本発明は、エンジン出口側に配置されるサーモスタット装置に適用されてもよい。
【0033】
また、本実施の形態のように、サーモスタット装置10のハウジング1が合成樹脂製の場合、金属製の場合と比較して、フレーム19の脱落の問題が生じやすい。よって、ハウジングが合成樹脂製のサーモスタット装置に、本発明が適用されるのが特に有効である。しかし、本発明は、ハウジングが金属製のサーモスタット装置に適用されてもよい。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 ハウジング
2 フランジ
2a ボルト孔
3 ピストン
10 サーモスタット装置
15 弁体
16 コイルスプリング(付勢部材)
17 サーモエレメント
19 フレーム
19b 係合部
20 本体部
20a ボス部
20b 弁座
21 脚
21a 引掛け部
21a1 補助部
21a2 補助部
21a3 被係合部
21a4 被係合部の側面と補助部の端面との境界部分
21a5 引掛け部と脚との境界部分
21a6 被係合部の側面と端面との境界部分
22 リブ
a,b 補助部における脚の根元側の端面
c 被係合部における脚の根元側の端面