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特開2022-115625検査システム、通知方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115625
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】検査システム、通知方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20220802BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20220802BHJP
   G16H 50/80 20180101ALI20220802BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20220802BHJP
   G16Y 10/60 20200101ALI20220802BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20220802BHJP
   G16Y 20/40 20200101ALI20220802BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20220802BHJP
【FI】
G01N33/48 Z
G01N33/569 L
G16H50/80
G06Q50/10
G16Y10/60
G16Y20/10
G16Y20/40
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012288
(22)【出願日】2021-01-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】521043180
【氏名又は名称】株式会社ビオロドス
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊村 明浩
【テーマコード(参考)】
2G045
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045AA40
2G045CA25
2G045CB30
2G045JA01
2G045JA20
5L049CC11
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】施設における病原体の感染リスクを下げるために、病原体の検出技術を用いた施設における人物の入場可否判断を支援する。
【解決手段】病原体検出デバイスにより得られた、検体に関する病原体検出結果を取得する。通知装置に向けて、施設への人物の入場可否を示す情報を送信する。病原体検出結果に基づいて、検体に関連する人物の施設への入場可否を示す情報を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体検出デバイスにより得られた、検体に関する病原体検出結果を取得する取得手段と、
通知装置に向けて、施設への人物の入場可否を示す情報を送信する送信手段と、
前記病原体検出結果に基づいて、前記検体に関連する人物の前記施設への入場可否を示す情報を生成する判定手段と、
を備えることを特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記人物から異なる時刻に採取したそれぞれの検体に関する前記病原体検出結果に基づいて、入場可否を示す情報を生成することを特徴とする、請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
病原体検出デバイスにより得られた、人物から採取した検体に関する病原体検出結果を取得する取得手段と、
前記人物の属性情報を格納する格納手段と、
通知装置に向けて、前記病原体の検出に関する警告を含む情報を送信する送信手段と、
前記病原体検出結果と、前記属性情報とに基づいて、前記病原体の検出に関する警告を含む情報を生成する判定手段と、
を備えることを特徴とする検査システム。
【請求項4】
前記判定手段は、同一の前記病原体検出結果に対して、前記人物が基礎疾患を有することを前記属性情報が示す場合に、前記人物が前記基礎疾患を有さない場合と比較して、高いレベルの警告を含む前記情報を生成することを特徴とする、請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記病原体検出結果は、前記病原体検出デバイスにおいて測定された前記病原体の量に関する情報を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項6】
前記取得手段は、前記病原体検出デバイスによる測定時の測定条件情報をさらに取得し、
前記検査システムはさらに、前記測定条件情報に対応するキャリブレーション情報を参照して、前記病原体検出デバイスにおいて測定された前記病原体の量を補正する補正手段を備えることを特徴とする、請求項5に記載の検査システム。
【請求項7】
前記病原体検出デバイスは、粘液検体、血液検体、又はスワブ検体に対して病原体の検出を行うことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項8】
前記病原体はSARS-CoV-2であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項9】
検査システムが行う通知方法であって、
病原体検出デバイスにより得られた、検体に関する病原体検出結果を取得する工程と、
前記病原体検出結果に基づいて、前記検体に関連する人物の施設への入場可否を示す情報を生成する工程と、
通知装置に向けて、前記施設への人物の入場可否を示す情報を送信する工程と、
を備えることを特徴とする通知方法。
【請求項10】
検査システムが行う通知方法であって、
病原体検出デバイスにより得られた、人物から採取した検体に関する病原体検出結果を取得する工程と、
前記病原体検出結果と、前記人物の属性情報とに基づいて、前記病原体の検出に関する警告を含む情報を生成する工程と、
通知装置に向けて、前記病原体の検出に関する警告を含む情報を送信する工程と、
を備えることを特徴とする通知方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1から8のいずれか1項に記載の検査システムの各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システム、通知方法、及びプログラムに関し、特に病原体の検出結果を通知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、疾患の発生地を容易に把握できるように、疾患の発生した地域を地図上に表示する技術の開発が行われている。例えば、特許文献1には、診療情報に基づいて、様々な疾患の分布を表示する技術が開示されている。また、特許文献2には、アレルゲン物質が検出された場所を通知することにより、その場所を避けて通ることによってそのアレルゲン物質との接触を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-277176号公報
【特許文献2】特開2010-093616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感染症などの疾患は経済活動を制限するという社会的問題がある。例えば、飲食店やイベント会場のような施設に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のような病原体を保有する人物が来れば、他の人物がこの病原体に感染する可能性がある。このリスクは、施設の開場を妨げる可能性があるし、施設への来場を妨げる可能性がある。
【0005】
本発明の一実施形態は、施設における病原体の感染リスクを下げるために、病原体の検出技術を用いた施設における人物の入場可否判断を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る検査システムは以下の構成を備える。すなわち、
病原体検出デバイスにより得られた、検体に関する病原体検出結果を取得する取得手段と、
通知装置に向けて、施設への人物の入場可否を示す情報を送信する送信手段と、
前記病原体検出結果に基づいて、前記検体に関連する人物の前記施設への入場可否を示す情報を生成する判定手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
施設における病原体の感染リスクを下げるために、病原体の検出技術を用いた施設における人物の入場可否判断を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る検査システムの構成例を示す図。
図2】一実施形態に係る地図上への病原体検出結果の表示例を示す図。
図3】一実施形態に係る情報処理装置100の機能構成例を示す図。
図4】一実施形態に係る情報処理装置が行う処理例を示すフローチャート。
図5】一実施形態に係る情報処理装置100の機能構成例を示す図。
図6】一実施形態に係る情報処理装置が行う処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
[検査システム]
まず、本発明の一実施形態に係る検査システム10の全体像を説明する。検査システム10は、情報処理装置100を有する。情報処理装置100は、CPU101、メモリ102、記憶媒体103、入力インタフェース104、及び出力インタフェース105を備える。CPU101はプロセッサであり、コンピュータ全体の動作を制御する。メモリ102は、例えばRAMであり、プログラム及びデータなどを一時的に記憶する。記憶媒体103は、例えばハードディスク又はCD-ROMなどのコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であり、プログラム及びデータなどを長期的に記憶する。本実施形態においては、記憶媒体103が格納している、後述する図3又は5に示されるような各機能部の機能、又は後述する各処理を実現するプログラムが、メモリ102へと読み出される。そしてCPU101が、読み出されたプログラムに従って動作することにより、各機能部の機能又は各処理が実現される。
【0011】
入力インタフェース104は検出デバイス110などの外部の装置から情報を取得するためのインタフェースである。また、出力インタフェース105は外部の装置へと情報を出力するためのインタフェースである。バス106は、情報処理装置100が有する各部を接続し、データのやり取りを可能とする。
【0012】
もっとも、検査システム10は、例えばネットワークを介して接続された複数の情報処理装置によって実現されてもよい。このように、検査システム10は、例えばアマゾンウェブサービス(AWS)(登録商標)のようなクラウド上で動作するサービスとして構成されていてもよい。
【0013】
検査システム10はさらに、インターネットのようなネットワーク120を介して通信可能に接続された検出デバイス110を有している。検出デバイス110は病原体検出デバイスであり、検体に対して病原体検出処理を行い、検体に関する病原体検出結果を生成することができる。検査システム10は、複数の検出デバイス110を有していてもよい。検出デバイス110の設置箇所は特に限定されない。例えば、検出デバイス110は、家庭に設置されていてもよいし、駅のような公共機関に設置されていてもよいし、飲食店又はイベント会場のような施設の入口、外部、若しくは内部に設置されていてもよい。家庭において繰り返し検査を行うことにより、人物が病原体を保持していないことをより確実に確認することができる。また、施設において検査を行うことにより、不特定多数の人物が来場する場合であっても、施設に病原体が存在しないことを確認することができる。さらに、様々な場所に検出デバイス110を設けることにより、同一の人物が様々な場面において病原体の検査を行うことが可能になる。
【0014】
検査システム10には、さらに、ネットワーク120を介して表示デバイス130が通信可能に接続されていてもよい。検査システム10には、複数の表示デバイス130を接続することができる。表示デバイス130の種類は特に限定されず、例えばスマートフォン、パーソナルコンピュータ、又はディスプレイであってもよい。表示デバイス130は、情報処理装置100が生成した情報を表示することができる。例えば、表示デバイス130は、インターネットを介して情報処理装置100にアクセスし、病原体検出結果に関するウェブページのデータを取得して、ディスプレイにこのウェブページを表示させることができる。
【0015】
[検出デバイス]
検出デバイス110は、検体に対する病原体検出処理を行うデバイスであるが、その構成は特に限定されない。すなわち、検出デバイス110による病原体の検出方法としては、検出対象となる病原体の種類に応じた方法を採用することができる。また、検出対象となる病原体の種類も特に限定はされない。病原体の例としては、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)、SARS-CoV(SARSコロナウイルス)、若しくは従来型コロナウイルスのようなコロナウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、又はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含む黄色ブドウ球菌等の、ウイルス又は細菌が挙げられる。
【0016】
また、検出方法の一例として、病原体に対する抗体を用いる方法が挙げられる。例えば、抗体を用いたSARS-CoV-2の検出キットとしては、富士レビオ社の「エスプラインSARS-CoV-2」などが利用可能である。また、検出デバイス110は、variable domain of heavy chain antibody(VHH)抗体を用いて抗原を検出してもよい。VHH抗体は、ラマ又はアルパカなどのラクダ科動物が有するH鎖のみで構成される重鎖抗体に含まれる可変領域を取り出した抗体である。特定の抗原を選択的に認識するVHH抗体は、例えば国際公開2019/230823号に記載の方法に従って得ることができる。
【0017】
検出デバイス110は、標識した抗体を用いることにより、抗原の検出を行ってもよい。一例として、担体に固定した非標識抗体と、病原体と、標識物質により標識された標識抗体との免疫複合体を形成させ、担体に病原体を介して結合した標識物質に由来するシグナルを検出することにより、病原体を検出する方法が挙げられる。標識物質としては、酵素、化学発光物質、又は蛍光発光物質を用いることができる。標識物質として酵素を用いる場合、例えば、酵素反応によって発色する物質を加え、発色物質に対応する波長の吸光度を測定することにより、病原体を検出することができる(ELISA法)。また、標識物質として発光物質を用いる場合、発光物質に対応する波長の光強度を測定することにより、病原体を検出することができる(CIA法又はFIA法)。これらの方法によれば、病原体の量を定量することも可能である。病原体の量により、病原体への感染症の重症度を評価することができる。
【0018】
病原体の検出対象となる検体は特に限定されない。検体の例としては、唾液、鼻腔拭い液、若しくは咽頭拭い液のような粘液、血液、又はスワブ検体であってもよい。スワブ検体とは、綿棒のようなスワブを用いて物体から採取した検体である。検体は、人体の口腔、鼻腔、若しくは咽頭から採取してもよいし、ドアノブ、ベッド、トイレ、電車のつり革、飲食店のテーブル、又は下水のような非生物から採取してもよい。スワブ検体は、スワブに付着した物体を液体と混合することにより調製されてもよい。さらには、検体の採取はリアルタイムに行われてもよく、例えば空気サンプルが継続的に採取され、空気サンプルに対して病原体の検出処理が行われてもよい。
【0019】
[検出結果の管理]
上記のように、検出デバイス110は、検体に対する病原体検出結果を得ることができ、この病原体検出結果は病原体の量に関する情報を含んでいてもよい。検出デバイス110は、得られた病原体検出結果を情報処理装置100に送信することができる。検出デバイス110は、情報を暗号化して情報処理装置100へと送信することができる。
【0020】
この際に、検出デバイス110は、病原体検出結果の属性情報をさらに送信してもよい。属性情報としては、検出対象となった病原体を特定する情報、検体が採取された人物を識別する情報、検体が採取された箇所を識別する情報、検体の採取時刻、検出デバイス110の位置、病原体の検出が行われた時刻、検出デバイス110による測定時の測定条件、等が挙げられる。これらの情報は、検出デバイス110の操作者が入力してもよい。また、検体が採取された人物が自ら検出デバイス110を操作する場合、検出デバイス110は、操作者の認証を行い、操作者を識別する情報を、検体が採取された人物を識別する情報として取得してもよい。さらに、検出デバイス110は、GPSのような位置測定装置を有していてもよく、この場合、位置測定装置を用いて検出デバイス110の位置を示す情報を取得することができる。
【0021】
なお、検出デバイス110が病原体検出結果及び属性情報を情報処理装置100に送信する代わりに、検出デバイス110はこれらの情報をスマートフォンのような情報処理装置に転送してもよい。情報の転送には、例えば、Bluetoothのような無線通信技術を用いることができる。その後、情報処理装置は、転送された情報を、さらに情報処理装置100に送信することができる。この場合、情報処理装置は、病原体検出結果に対して属性情報を追加してもよい。例えば、上記のような属性情報が、操作者によって情報処理装置へと入力されてもよいし、情報処理装置によって自動的に追加されてもよい。
【0022】
情報処理装置100は、検出デバイス110から送信された病原体検出結果を(例えば記憶媒体103に)格納することができ、また、検出デバイス110から送信された属性情報をさらに格納してもよい。こうして、情報処理装置100は、得られた病原体検出結果を管理することができる。
【0023】
情報処理装置100は、こうして管理している病原体検出結果を提供してもよい。例えば、情報処理装置100は、同じ人物から採取された検体についての、病原体検出結果の履歴を提供してもよい。このような方法により、検体が採取された人物、又はこの人物が通う企業、学校、若しくは病院が、病原体の検出結果を確認することができる。
【0024】
また、情報処理装置100は、病原体検出結果を、地図上の検出デバイス110の位置に関連付けて提示してもよい。図2は、地図上に表示された病原体検出結果の例を示す。画面200上には、それぞれの検査装置の位置を表すマークが表示されている。マーク201は、病原体が検出されなかった検査装置の位置を表している。一方で、マーク204は、病原体が検出された検査装置の位置を表している。図2にはさらに、検出デバイスの設置場所に関する情報203を示すウインドウ202が示されている。情報203は、設置場所の写真、施設名、所在地、陰性結果の取得回数、及び陰性率を含んでいる。このような情報を提供することにより、施設に設けられた検出デバイス110において病原体が検出されなかったこと、すなわちこの施設は病原体に汚染されていない可能性が高いことを知らせることができる。
【0025】
さらに、情報処理装置100は、病原体検出結果を、地図上の検体が採取された箇所に関連付けて提示してもよい。このような方法によれば、どこに病原体が多く存在するのかを把握することが容易となる。別の有用な方法として、情報処理装置100は、管理している病原体検出結果の分析を行ってもよい。例えば、情報処理装置100は、駅又は洗面所等の施設の利用者数を示す情報を取得し、この施設で病原体が検出された回数又は検出料と利用者数との相関関係を分析することができる。このような分析結果を提示することにより、混雑に応じた病原体への感染リスクを把握することが容易となる。
【0026】
上述のように、表示デバイス130は、これらの病原体検出結果を示す情報を情報処理装置100から取得して表示することができる。
【0027】
[人物の入場可否の提示]
上記のような検査システム10は、施設への人物の入場可否を通知するために用いることができる。施設の種類は特に限定されないが、例えば、葬式、結婚式、若しくはコンサートのようなイベント会場、ホテル、飲食店、学校、又は交通機関等が挙げられる。以下、このような検査システム10について説明する。
【0028】
図3は、本実施形態に係る検査システム10が有する情報処理装置100の機能構成を示す。情報処理装置100は、取得部310と、判定部320と、送信部330と、を有している。
【0029】
取得部310は、検出デバイス110により得られた、検体に関する病原体検出結果を取得する。上記のとおり、取得部310は、ネットワーク120を介して検出デバイス110から病原体検出結果を取得することができる。本実施形態においては、検体として、特定の人物から採取した検体を用いることができる。
【0030】
判定部320は、病原体検出結果に基づいて、検体に関連する人物の施設への入場可否を示す情報を生成する。一例として、判定部320は、特定の人物から採取した検体に対する、最新の病原体検出結果が陰性である場合に、特定の人物が施設に入場できると判定することができる。一方で、判定部320は、人物から異なる時刻に採取したそれぞれの検体に関する病原体検出結果に基づいて、入場可否を示す情報を生成してもよい。
【0031】
入場可否の判定方法は特に限定されない。判定に使える要素としては、最新の病原体検出結果、病原体検出を行った回数、病原体検出結果が陰性だった回数、直近に連続して病原体検出結果が陰性だった回数、病原体検出を行った時刻、最新の病原体検出結果が得られた時刻、最後に病原体検出結果が陽性だった時刻、検出デバイスの位置、病原体の種類、などが挙げられる。例えば、判定部320は、特定の人物から採取した検体に対する、最近の所定回数の病原体検出結果が陰性である場合に、特定の人物が施設に入場できると判定してもよい。判定部320は、特定の病原体についての検出結果に基づいて、このような判定を行ってもよい。なお、検出デバイス110が病原体の量を定量している場合、病原体の量が閾値以下である場合に陰性と判定することができる。一方で、判定部320は、検出された病原体の量に基づいて、施設への入場可否を判定してもよい。
【0032】
また、判定部320は、施設に応じて異なる方法で入場可否を判定してもよい。例えば、情報処理装置100には、施設ごとに、又は施設の種類ごとに、入場可否の判定方法が登録されていてもよい。この場合、学校に関しては、特定の人物が自宅に設置した検出デバイス110を用いた前日及び当日の病原体検出結果が陰性である場合に、特定の人物が入場できると判定してもよい。一方で、イベント会場に関しては、イベント開場に設置された検出デバイス110を用いた病原体検出結果が陰性である場合に、特定の人物が入場できると判定してもよい。
【0033】
送信部330は、通知装置に向けて、判定部320によって生成された、施設への人物の入場可否を示す情報を送信する。本実施形態において、通知装置としては表示デバイス130を用いることができる。このような表示デバイス130は、例えば施設の入口に設けることができる。一実施形態において、施設の入口において人物の認証が行われると、判定部320はこの人物についての入場可否を示す情報を生成し、送信部330は施設の入口に設けられた表示デバイス130にこの情報を送信することができる。この場合、入口の係員は、表示デバイス130に表示された入場可否を示す情報に基づいて、この人物の入場を許可し、又は拒否することができる。
【0034】
別の実施形態として、表示デバイス130は、施設に入場しようとする人物が保持するスマートフォンのような携帯端末であってもよい。施設に入場しようとする人物が、表示デバイス130を介して情報処理装置100に要求を送信すると、送信部330はこの人物についての入場可否を示す情報を表示デバイス130に送信することができる。この場合、表示デバイス130に表示された入場可否を示す情報を入口の係員に提示することにより、この人物は施設に入場することができる。
【0035】
図4は、本実施形態に係る処理の一例を示すフローチャートである。ステップS410において表示デバイス130は情報処理装置100に対して入場可否を示す情報を要求する。ステップS420において取得部310は上記のように病原体検出結果を取得する。ここで、取得部310は、検出デバイス110から病原体検出結果を取得してもよいし、検出デバイス110から以前に取得され、検査システム10に(例えば記憶媒体103に)格納されている病原体検出結果を取得してもよい。ステップS430において判定部320は上記のように入場可否を示す情報を生成する。ステップS440において送信部330は上記のように入場可否を示す情報を表示デバイス130へと送信する。ステップS450において表示デバイス130は取得した入場可否を示す情報を表示する。
【0036】
以上のような実施形態によれば、病原体の検出結果に基づいて、施設における人物の入場可否を判断することが容易となり、施設における病原体の感染リスクを下げられることが期待できる。
【0037】
[病原体の検出警告]
上記のような検査システム10からは、人物に対して、病原体に関する警告を通知することができる。例えば、人物から採取した検体から病原体が検知された場合に、病原体が検知されたこと、病院で検査することを勧めること、などを含む警告を通知することができる。本実施形態では、年齢及び基礎疾患のような人物の属性情報に応じて、異なるレベルの警告を通知することができる。以下、このような検査システム10について説明する。
【0038】
図5は、本実施形態に係る検査システム10が有する情報処理装置100の機能構成を示す。情報処理装置100は、取得部510と、格納部520と、判定部530と、送信部540と、を有している。
【0039】
取得部510は、検出デバイス110により得られた、検体に関する病原体検出結果を取得する。上記のとおり、取得部310は、ネットワーク120を介して検出デバイス110から病原体検出結果を取得することができる。本実施形態においては、検体として、特定の人物から採取した検体を用いることができる。
【0040】
格納部520は、人物の属性情報を格納する。検査システム10は、人物の属性情報を、例えばこの人物が有する携帯デバイス又は病院に設けられたコンピュータ等から取得し、予め格納部520に格納することができる。人物の属性情報とは、人物に関する情報であり、その種類は特に限定されない。人物の属性情報としては、例えば、人物が有する基礎疾患若しくは罹患中の急性疾患を示す疾患情報、又は人物の年齢、性別、体重、若しくは職業等が挙げられる。疾患情報としては、例えば、心臓疾患の有無、高血圧の有無、糖尿病の有無、等が挙げられる。
【0041】
判定部530は、病原体検出結果と、人物の属性情報とに基づいて、病原体の検出に関する警告を含む情報を生成する。疾患を有する人物が病原体を有すると、深刻な身体状態を招く可能性がある。例えば、心臓疾患、高血圧、又は糖尿病のような基礎疾患を有する人物は、SARS-CoV-2に感染した際の死亡リスクが高いことが知られている。また、高齢者又は肥満の人物のような、特定の属性を有する人物も、病原体への感染により重篤な身体状態に陥りやすいかもしれない。そこで、判定部530は、病原体検出結果と、属性情報とに基づいて、病原体の検出に関する警告を含む情報を生成する。
【0042】
また、判定部530は、病原体検出結果が病原体の量を示す情報を含む場合に、病原体の量に応じた警告を含む情報を生成してもよい。例えば、病原体の量と閾値とを比較することにより、判定部530は、病原体の量に応じた高いレベルの警告、低いレベルの警告、又は病原体が検出されなかったことを示す情報を生成することができる。判定部530は、既に説明した、病原体検出結果の属性情報にさらに基づいて、病原体の検出に関する警告を含む情報を生成してもよい。例えば、判定部530は、特定の病原体に関して、病原体の検出に関する警告を含む情報を生成してもよい。
【0043】
一実施形態において、判定部530は、同一の病原体検出結果に対して、人物が疾患を有することを属性情報が示す場合に、人物が疾患を有さない場合と比較して、高いレベルの警告を含む情報を生成する。例えば、判定部530は、所定の量の病原体が検出された場合に、基礎疾患を有さない人物に関しては、経過観察を行うこと、又は検査機関における精密検査(例えばPCR検査)を行うことを推奨する低レベルの警告を含む情報を生成することができる。一方で、判定部530は、同じ量の病原体が検出された場合に、基礎疾患を有する人物に関しては、直ちに病院を受診することを促す高レベルの警告を含む情報を生成することができる。このように、判定部530は、人物が疾患を有する場合に、より高いレベルの警告を含む情報が生成されやすくなる判断基準を用いることができる。例えば、病原体の量と閾値とを比較することにより警告を含む情報を生成する場合、判定部530は、疾患情報に応じた閾値を用いることができる。
【0044】
また、判定部530は、年齢に応じて、例えばより年齢の高い人物に関して、より高いレベルの警告を含む情報が生成されやすくなる判断基準を用いてもよい。さらに、判定部530は、職業に応じて、例えば医師、看護師、介護士、又は運転手等の公共サービスに従事している人物に対して、より高いレベルの警告を含む情報が生成されやすくなる判断基準を用いてもよい。このように、病原体検出結果と、人物の属性情報とに基づく、病原体の検出に関する警告を含む情報の生成方法は、特に制限されない。
【0045】
送信部540は、通知装置に向けて、判定部530によって生成された、病原体の検出に関する警告を含む情報を送信する。本実施形態においても、通知装置としては表示デバイス130を用いることができる。このような表示デバイス130は、検体が採取された人物が保持するスマートフォンのような携帯端末であってもよい。また、このような表示デバイス130は、検体が採取された人物が通院している病院に設けられたコンピュータであってもよい。このような構成によれば、医師又は看護師等の病院勤務者が、この人物の病原体保有状況を容易に確認することができる。
【0046】
図6は、本実施形態に係る処理の一例を示すフローチャートである。ステップS610において表示デバイス130は情報処理装置100に対して病原体の検出結果に関する情報を要求する。ステップS620において取得部510は上記のように病原体検出結果を取得する。ここで、取得部510は、検出デバイス110から病原体検出結果を取得してもよいし、検出デバイス110から以前に取得され、検査システム10に(例えば記憶媒体103に)格納されている病原体検出結果を取得してもよい。ステップS630において判定部530は、病原体の検出結果に関する情報を生成する。上記のように、病原体の検出結果に関する情報は、病原体の検出に関する警告を含む情報を含むことができる。ステップS640において送信部540は病原体の検出結果に関する情報を表示デバイス130へと送信する。ステップS650において表示デバイス130は取得した病原体の検出結果に関する情報を表示する。
【0047】
[測定された病原体の量の補正]
上記のように、検出デバイス110は、検体に対する検査において、病原体の量を測定してもよい。しかしながら、測定条件に応じて、病原体の量の測定値が変化することがある。例えば、抗体を用いて病原体の検出を行う場合、一般にロット間で抗体からの応答は異なるため、用いる抗体のロット毎に異なる測定結果が得られる可能性がある。このため、測定条件に応じて、測定値の補正を行ってもよい。
【0048】
例えば、情報処理装置100は、検出デバイス110による測定時の測定条件情報を取得することができる。測定条件情報は、例えば、測定に用いた検査キットに関する情報であってもよい。検査キットに関する情報としては、検査試薬(例えば抗体)の種類、製造会社、又は製造番号のような検査試薬の識別情報が挙げられ、これらの違いは測定結果に影響を与える可能性がある。測定条件情報の他の例としては、測定時の温度のような測定環境の情報、検体のpHのような検体に関する情報、及び検出デバイス110の製造者、機種、又は製造番号のような検出デバイス110に関する情報が挙げられ、これらの測定条件も測定結果に影響を与える可能性がある。
【0049】
このような測定条件情報は、検出デバイス110に対して操作者によって入力されてもよいし、検出デバイス110によって自動的に取得されてもよい。また、検査キットに付与されたバーコードのようなコードを読み取ることにより、検出デバイス110が検出キットに関する情報を取得してもよい。情報処理装置100は、上述のように検出デバイス110から病原体検出結果を取得することに加えて、検出デバイス110からこのような測定条件情報を取得することができる。
【0050】
そして、情報処理装置100は、測定条件情報に対応するキャリブレーション情報を参照して、検出デバイス110において測定された病原体の量を補正することができる。キャリブレーション情報は、病原体の量の測定値に対する補正方法を示すことができ、例えば補正係数又は補正テーブルであってもよい。検出デバイス110において測定された病原体の量に対して補正係数を乗じることで、又は、測定された病原体の量に対応する値を補正テーブルから取得することで、情報処理装置100は補正後の病原体の量を示す情報を得ることができる。キャリブレーション情報は、情報処理装置100が取得して、記憶媒体103に予め記憶しておくことができる。このようなキャリブレーション情報は、例えば検査試薬又は検出デバイス110の製造者によって提供されてもよく、検査試薬のロットのような測定条件情報に応じた病原体の量の補正方法を示すことができる。
【0051】
上記の構成によれば、検査試薬のロット又は検出デバイス110の製造番号のような測定条件情報に応じて、測定された病原体の量を補正することが可能になる。検査試薬又は検出デバイスの品質を均一に管理することは容易ではないが、上記のような補正を行うことにより、安定した測定値を得ることが可能になる。このような構成は、検出デバイス110が様々な場所に配置され、それぞれの検出デバイス110から得られた測定値を比較する際に、特に有効である。
【0052】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10:検査システム、100:情報処理装置、110:検出デバイス、120:ネットワーク、130:表示デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6