(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115650
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】アルミ管拡管装置、アルミ管拡管装置用のヘッドユニット、アルミ管拡管装置用のヘッド本体、アルミ管拡管方法、および冷媒用のアルミ管
(51)【国際特許分類】
B21D 39/20 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
B21D39/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012327
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】込山 治良
(72)【発明者】
【氏名】権田 勝美
(57)【要約】
【課題】冷媒用のアルミ管の所定サイズへの拡管を、容易且つ高精度に行うことができるようにすること。
【解決手段】アルミ管拡管装置は、冷媒用のアルミ管を拡管するためのアルミ管拡管装置であって、レバー操作がなされる可動レバーを有する本体部と、本体部に装着され、レバー操作に伴って、アルミ管の筒内で拡張することにより、アルミ管を拡管する拡管部を有するヘッドユニットとを備え、拡管部は、拡管前のアルミ管の内径よりも小さい、拡管前の外径寸法を有し、拡管前のアルミ管の外径よりも大きい、拡管後の外径寸法を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒用のアルミ管を拡管するためのアルミ管拡管装置であって、
レバー操作がなされる可動レバーを有する本体部と、
前記本体部に装着され、前記レバー操作に伴って、前記アルミ管の筒内で拡張することにより、前記アルミ管を拡管する拡管部を有するヘッドユニットと
を備え、
前記拡管部は、
拡管前の前記アルミ管の内径よりも小さい、拡管前の外径寸法を有し、
拡管前の前記アルミ管の外径よりも大きい、拡管後の外径寸法を有する
ことを特徴とするアルミ管拡管装置。
【請求項2】
3/8インチの前記アルミ管を拡管するための第1の前記ヘッドユニットを備え、
前記第1のヘッドユニットの前記拡管部は、
拡管前の外径寸法が6.2~6.6mmであり、
拡管後の外径寸法が、拡管前の前記3/8インチのアルミ管の外径よりも、0.08~0.2mm大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のアルミ管拡管装置。
【請求項3】
3/8インチの前記アルミ管を拡管するための第1の前記ヘッドユニットを備え、
前記第1のヘッドユニットの前記拡管部は、
拡管前の外径寸法が6.2~6.6mmであり、
拡管後の外径寸法が9.6~9.82mmである
ことを特徴とする請求項1に記載のアルミ管拡管装置。
【請求項4】
4/8インチの前記アルミ管を拡管するための第2の前記ヘッドユニットを備え、
前記第2のヘッドユニットの前記拡管部は、
拡管前の外径寸法が8.8~9.2mmであり、
拡管後の外径寸法が、拡管前の前記4/8インチのアルミ管の外径よりも、0.1~0.3mm大きい
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアルミ管拡管装置。
【請求項5】
4/8インチの前記アルミ管を拡管するための第2の前記ヘッドユニットを備え、
前記第2のヘッドユニットの前記拡管部は、
拡管前の外径寸法が8.8~9.2mmであり、
拡管後の外径寸法が12.8~13.1mmである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアルミ管拡管装置。
【請求項6】
5/8インチの前記アルミ管を拡管するための第3の前記ヘッドユニットを備え、
前記第3のヘッドユニットの前記拡管部は、
拡管前の外径寸法が11.6~12.0mmであり、
拡管後の外径寸法が、拡管前の前記5/8インチのアルミ管の外径よりも、0.1~0.4mm大きい
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のアルミ管拡管装置。
【請求項7】
5/8インチの前記アルミ管を拡管するための第3の前記ヘッドユニットを備え、
前記第3のヘッドユニットの前記拡管部は、
拡管前の外径寸法が11.6~12.0mmであり、
拡管後の外径寸法が15.98~16.28mmである
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のアルミ管拡管装置。
【請求項8】
前記拡管部は、
前記レバー操作の操作量が最大となったときに、前記拡管後の外径寸法を有するものとなる
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のアルミ管拡管装置。
【請求項9】
少なくとも前記ヘッドユニットに、
前記アルミ管の拡管用であることを識別可能な識別情報を有する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のアルミ管拡管装置。
【請求項10】
冷媒用のアルミ管を拡管するためのアルミ管拡管装置用のヘッドユニットであって、
レバー操作がなされる可動レバーを有する前記アルミ管拡管装置の本体部に装着されるヘッド本体と、
前記ヘッド本体から突出して設けられており、前記レバー操作に伴って、前記アルミ管の筒内で拡張することにより、前記アルミ管を拡管する拡管部と
を備え、
前記拡管部は、
拡管前の前記アルミ管の内径よりも小さい、拡管前の外径寸法を有し、
拡管前の前記アルミ管の外径よりも大きい、拡管後の外径寸法を有する
ことを特徴とするアルミ管拡管装置用のヘッドユニット。
【請求項11】
冷媒用のアルミ管を拡管するためのアルミ管拡管装置用のヘッド本体であって、
レバー操作がなされる可動レバーを有する前記アルミ管拡管装置の本体部に装着され、
前記アルミ管を拡管する拡管部を保持し、
前記レバー操作に伴って、前記拡管部を前記アルミ管の筒内で拡張させることにより、前記アルミ管を拡管し、
前記拡管部は、
拡管前の前記アルミ管の内径よりも小さい、拡管前の外径寸法を有し、
拡管前の前記アルミ管の外径よりも大きい、拡管後の外径寸法を有する
ことを特徴とするアルミ管拡管装置用のヘッド本体。
【請求項12】
冷媒用のアルミ管を拡管するためのアルミ管拡管方法であって、
アルミ管拡管装置が備える拡管部を、前記アルミ管の筒内に挿入する拡管部挿入工程と、
前記アルミ管拡管装置が備える可動レバーのレバー操作に伴って、前記拡管部を前記アルミ管の前記筒内で拡張させることにより、前記アルミ管を拡管する拡管工程と
を含み、
前記拡管部は、
拡管前の前記アルミ管の内径よりも小さい、拡管前の外径寸法を有し、
拡管前の前記アルミ管の外径よりも大きい、拡管後の外径寸法を有する
ことを特徴とするアルミ管拡管方法。
【請求項13】
請求項12に記載のアルミ管拡管方法によって拡管された冷媒用のアルミ管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ管拡管装置、アルミ管拡管装置用のヘッドユニット、アルミ管拡管装置用のヘッド本体、アルミ管拡管方法、および冷媒用のアルミ管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調装置等に使用される冷媒用の配管同士を接続可能にするために、拡管装置を用いて、一方の配管を拡管する技術が知られている。例えば、下記特許文献1には、管エキスパンダと、管エキスパンダに取り付けられるスリーブとを備え、管エキスパンダが有するプレスハンドルの操作によって、スリーブが備えるヘッドの外径が拡張されることにより、当該ヘッドによって管を拡管することが可能な装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、冷媒用の配管として、一般的には、銅管が用いられている。このため、拡管装置のヘッドは、銅管のサイズの規格に合わせて製造されている。
【0005】
一方で、近年、軽量化、低コスト化等の観点から、冷媒用の配管として、アルミ管を用いることが検討されている。アルミの強度は、銅の強度の1/3程度であり、アルミ管の耐力を銅管の耐力と同等にするためには、アルミ管の肉厚を銅管よりも厚くする必要があり、よって、アルミ管の外径寸法を銅管の外径寸法と同一とした場合には、アルミ管の内径寸法を銅管の内径寸法よりも小さくする必要がある。なお、日本の配管の規格は、外形寸法を統一することが一般的である。
【0006】
しかしながら、従来の拡管装置は、ヘッドの拡管部の外径寸法が、銅管の内径寸法に合わせて製造されているため、ヘッドの拡管部をアルミ管の開口部に挿入することができない。このため、従来の拡管装置を用いてアルミ管を拡管する場合、一回り小さいサイズのヘッドを用いる必要があり、この場合、ヘッドとアルミ管との間にガタつきが生じたり、アルミ管の拡管が不十分であったりするため、アルミ管の所定サイズへの拡管を、容易且つ高精度に行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るアルミ管拡管装置は、冷媒用のアルミ管を拡管するためのアルミ管拡管装置であって、レバー操作がなされる可動レバーを有する本体部と、本体部に装着され、レバー操作に伴って、アルミ管の筒内で拡張することにより、アルミ管を拡管する拡管部を有するヘッドユニットとを備え、拡管部は、拡管前のアルミ管の内径よりも小さい、拡管前の外径寸法を有し、拡管前のアルミ管の外径よりも大きい、拡管後の外径寸法を有する。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態によれば、冷媒用のアルミ管の所定サイズへの拡管を、容易且つ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るアルミ管拡管装置の外観斜視図
【
図3】一実施形態に係るアルミ管拡管装置が備えるヘッドユニットの拡大図
【
図4】一実施形態に係るアルミ管拡管装置が備えるヘッドユニットの寸法例を示す図
【
図5】一実施形態に係るアルミ管拡管装置が備える各構成部品の素材の一例を示す図
【
図6】一実施形態に係るアルミ管拡管方法の手順を示すフローチャート
【
図7】一実施形態に係るアルミ管拡管方法を模式的に示す図
【
図8】一実施形態に係るアルミ管拡管方法を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態では、便宜上、固定レバー120の延在する方向を、X軸方向とする。また、テーパピン135が往復移動する方向(中心軸AXの軸方向)を、Y軸方向とする。また、X軸方向およびY軸方向と直交する方向(可動レバー130の回動軸132の軸方向)を、Z軸方向とする。
【0011】
(アルミ管拡管装置100の概略構成)
図1は、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100の外観斜視図である。
図2は、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100の5面図である。
図3は、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100が備えるヘッドユニット140の拡大図である。
【0012】
図1および
図2に示すアルミ管拡管装置100は、空調装置等に使用される冷媒用のアルミ管同士を接合(ろう付け接続)可能にするために、アルミ管を拡管するためのものである。
【0013】
図1および
図2に示すように、アルミ管拡管装置100は、本体部100Aおよびヘッドユニット140を備える。本体部100Aは、基部110、固定レバー120、可動レバー130、およびテーパピン135を有する。
【0014】
基部110は、各構成部品(固定レバー120、可動レバー130、テーパピン135、およびヘッドユニット140)を支持する金属製且つブロック状の部材である。基部110は、概ね直方体形状を有する。基部110のX軸正側の側面には、固定レバー120を固定するための、一対の固定部111が突出して設けられている。一対の固定部111の各々は、Y軸方向に一定の幅を有し、且つ、X軸方向に直線状に延在する、平板状の部分である。一対の固定部111は、Y軸方向に一定の間隔を有して、互いに平行である。また、基部110は、Z軸正側の壁部と、Z軸負側の壁部との間に、空間部110Aを有する。空間部110Aの内部には、可動レバー130の一対の回動部材131と、可動レバー130の回動軸132とが設けられている。基部110のY軸正側の側面には、ヘッドユニット140を取り付けるための、円柱状の凸部110Bが突出して設けられている。
【0015】
固定レバー120は、基部110からX軸正方向に直線状に延在する、金属製且つ棒状の部材である。固定レバー120の一端部(X軸負側の端部)は、基部110が有する一対の固定部111の間に挟み込まれた状態で、一対の固定部111に固定されている。
【0016】
可動レバー130は、基部110からX軸正方向に直線状に延在する、金属製且つ棒状の部材である。可動レバー130は、その一端部(X軸負側の端部)に、一対の回動部材131を有する。一対の回動部材131は、可動レバー130の一端部を挟み込んだ状態で、可動レバー130の一端部に固定されている。また、一対の回動部材131は、基部110が有する空間部110Aの内部で、当該一対の回動部材131を貫通する丸棒状の回動軸132によって、空間部110Aの内部で回動可能に軸支されている。これにより、可動レバー130は、回動軸132を回転中心として、固定レバー120に近接する方向(
図2に示す方向A)と、固定レバー120から離間する方向(
図2に示す方向B)とに、回動可能(すなわち、レバー操作可能)である。
【0017】
テーパピン135は、金属製且つ円錐状の部材である。テーパピン135は、中心軸AX上において、基部110が備える凸部110Bの中央開口部(図示省略)から、Y軸正側に突出して設けられている。テーパピン135は、中心軸AX上(凸部110Bの中央開口部内)において、当該中心軸AXの軸方向(Y軸方向)に移動可能に設けられている。テーパピン135は、基部110の内部において、可動レバー130の回動部材131と連結されている。これにより、テーパピン135は、可動レバー130のレバー操作に応じて、中心軸AX上(凸部110Bの中央開口部内)を、Y軸方向に移動するようになっている。
【0018】
ヘッドユニット140は、ヘッド本体141および拡管部143を有する。ヘッド本体141は、拡管部143を動作可能に支持する、金属製且つ円柱状の部材である。ヘッド本体141の中心は、中心軸AX上に位置する。ヘッド本体141は、基部110側(Y軸負側)の面に、平面視において円形状の凹部141A(
図2参照)を有する。凹部141Aの内周面には、ネジ山(図示省略)が形成されている。
【0019】
拡管部143は、中心軸AXと同軸上において、ヘッド本体141からY軸正側に突出して設けられている。金属製且つ概ね円柱状の部材である。
図3に示すように、拡管部143は、中心軸AXを中心として、いずれも扇状の6つのブロック143Aに分割されている。6つのブロック143Aの各々は、中心軸AXを中心とする円の径方向に移動可能に設けられている。6つのブロック143Aの各々は、ヘッド本体141の内部において拡管部143を取り囲むように配置された環状のコイルばね144によって、径方向内側に向かって付勢されている。拡管部143の中心(中心軸AX上)には、当該拡管部143をY軸方向に貫通する、中心隙間143Bが形成されている。これにより、拡管部143は、中心隙間143B内に、テーパピン135が入り込むようになっている。拡管部143は、中心隙間143B内でテーパピン135が移動することによって、6つのブロック143Aの各々が径方向に移動することにより、当該拡管部143の外径寸法が変化するようになっている。
【0020】
ヘッドユニット140は、本体部100Aの基部110に着脱可能である。具体的には、ヘッドユニット140は、ヘッド本体141における基部110と対向する面(Y軸負側の面)に、凹部141A(
図2参照)が形成されており、当該凹部141Aの内周面に形成されているネジ山が、基部110のY軸正側の面から突出して設けられた円柱状の凸部110B(
図2参照)の外周面に形成されているネジ山に螺合することにより、基部110のY軸正側の面に固定される。ヘッドユニット140は、基部110のY軸正側の面に固定されることにより、ヘッド本体141の中心が、中心軸AX上に位置するようになっている。
【0021】
図1および
図2に示すように、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、本体部100Aおよびヘッドユニット140の各々に、アルミ管の拡管用であることを識別可能な識別情報101A,101Bを有する。これにより、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、本体部100Aおよびヘッドユニット140の各々を、誤って銅管の拡管に使用してしまうことを抑制することができ、すなわち、異種金属電位差腐食の原因となる、銅粉の付着を抑制することができる。
【0022】
図1および
図2に示す例では、本体部100Aにおいては、可動レバー130に、文字列「アルミ管用」からなる識別情報101Aが設けられている。また、
図1および
図2に示す例では、ヘッドユニット140においては、ヘッド本体141に、文字列「アルミ管用」からなる識別情報101Bが設けられている。一例として、識別情報101A,101Bは、刻印である。但し、これに限らず、識別情報101A,101Bは、テープ等であってもよい。また、識別情報101A,101Bは、文字列からなるものに限らず、アルミ管用であることを識別可能な記号・図形等からなるものであってもよい。
【0023】
(アルミ管拡管装置100の動作)
一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、可動レバー130の開く操作(固定レバー120から離れる方向への操作)がなされると、テーパピン135が、中心軸AX上を後方(Y軸負方向)に移動する。これにより、テーパピン135は、ヘッドユニット140の拡管部143の中心隙間143B内から、徐々に後方(Y軸負方向)に向かって抜け出す。その結果、ヘッドユニット140の拡管部143が有する6つのブロック143Aの各々が、コイルばね144の付勢力により、徐々に径方向内側に移動し、したがって、拡管部143の外径が徐々に小さくなる。
【0024】
反対に、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、可動レバー130の閉じる操作(固定レバー120に近接する方向への操作)がなされると、テーパピン135が、中心軸AX上を前方(Y軸正方向)に移動する。これにより、テーパピン135は、ヘッドユニット140の拡管部143の中心隙間143B内に、徐々に前方(Y軸正方向)に向かって入り込む。その結果、ヘッドユニット140の拡管部143が有する6つのブロック143Aの各々が、テーパピン135によって押し広げられることにより、コイルばね144の付勢力に抗しつつ、徐々に径方向外側に移動し、したがって、拡管部143の外径が徐々に大きくなる。
【0025】
(ヘッドユニット140の寸法例)
図4は、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100が備えるヘッドユニット140の寸法例を示す図である。
図4に示すように、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、一例として、3つのアルミ管のサイズ(3/8インチ、4/8インチ、および5/8インチ)に対応する、3つのヘッドユニット140を備える。すなわち、3つのヘッドユニット140は、拡管部143のサイズが互いに異なる。一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、拡管対象とされるアルミ管のサイズに応じて、ヘッドユニット140に装着されるヘッドユニット140を、これら3つのヘッドユニット140の間で、選択的に交換可能となっている。なお、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、4つ以上のアルミ管のサイズに対応する、4つ以上のヘッドユニット140を備えてもよい。
【0026】
<第1のヘッドユニット140>
第1のヘッドユニット140は、3/8インチのアルミ管に対応する。拡管前の3/8インチのアルミ管の内径は、7.22mmである。拡管前の3/8インチのアルミ管の外径は、9.52mmであり、規格上、拡管前の3/8インチの銅管の外径と同じである。すなわち、3/8インチのアルミ管の肉厚は、1.15mmである。これにより、3/8インチのアルミ管は、冷媒の圧力に十分に耐え得る管厚となっている。一方、第1のヘッドユニット140は、拡管前の拡管部143の外径が、拡管前の3/8インチのアルミ管の内径よりも僅かに小さい6.4mmである。このため、第1のヘッドユニット140は、拡管前の拡管部143を、3/8インチのアルミ管内に容易に挿入することができる。なお、第1のヘッドユニット140の拡管前の拡管部143の外径は、好ましくは6.2~6.6mm、より好ましくは6.3~6.5mm、さらに好ましくは6.35~6.45mmである。
【0027】
なお、3/8インチの銅管の内径は、7.92mmであり、従来の3/8インチの銅管用のヘッドユニットの拡管部の外径は、7.92mmよりも僅かに小さい。このため、従来の3/8インチの銅管用のヘッドユニットの拡管部は、拡管前の3/8インチのアルミ管(内径:7.22mm)内に挿入することができない。
【0028】
また、第1のヘッドユニット140は、拡管後の拡管部143の外径が9.6mmである。これにより、第1のヘッドユニット140は、拡管後の3/8インチのアルミ管の内径を、拡管前の3/8インチのアルミ管の外径(9.52mm)よりも大きい、内径9.6mmに拡管することができる。その結果、拡管後の一のアルミ管内に、拡管前の他のアルミ管を挿入することが可能になる。
【0029】
特に、第1のヘッドユニット140の拡管部143は、レバー操作の操作量が最大となったとき(すなわち、可動レバー130が、突き当たるまで、固定レバー120に近接する方向にレバー操作されたとき)に、拡管後の外径寸法(9.6mm)を有するものとなる。これにより、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、作業者の熟練度を問わず、一度のレバー操作で、3/8インチのアルミ管を、所定の内径寸法(9.6mm)を有するものへ拡管することができる。
【0030】
また、拡管前の他のアルミ管の外径(9.52mm)と、拡管後の一のアルミ管の内径(9.6mm)との間の隙間寸法は、0.08mmと僅かである。このため、第1のヘッドユニット140は、拡管前の他のアルミ管が、拡管後の一のアルミ管内でガタつくことを抑制することができる。なお、ガタつき抑制、挿し込み容易性、ろう付け接合の作業性および確実性等の観点から、拡管前の3/8インチのアルミ管の外径と、拡管後の3/8インチのアルミ管の内径との間の隙間寸法は、0.08~0.3mmとすることが好ましい。すなわち、拡管後のアルミ管の内径を9.6~9.82mmとすることが好ましく、拡管部143の拡管後の外径寸法を9.6~9.82mmとすることが好ましい。
【0031】
<第2のヘッドユニット140>
第2のヘッドユニット140は、4/8インチのアルミ管に対応する。拡管前の4/8インチのアルミ管の内径は、9.7mmである。拡管前の4/8インチのアルミ管の外径は、12.7mmであり、規格上、拡管前の4/8インチの銅管の外径と同じである。すなわち、4/8インチのアルミ管の肉厚は、1.5mmである。これにより、4/8インチのアルミ管は、冷媒の圧力に十分に耐え得るものとなっている。一方、第2のヘッドユニット140は、拡管前の拡管部143の外径が、拡管前の4/8インチのアルミ管の内径よりも僅かに小さい9.0mmである。このため、第2のヘッドユニット140は、拡管前の拡管部143を、4/8インチのアルミ管内に容易に挿入することができる。なお、第2のヘッドユニット140の拡管前の拡管部143の外径は、好ましくは8.8~9.2mm、より好ましくは8.9~9.1mm、さらに好ましくは8.95~9.05mmである。
【0032】
なお、4/8インチの銅管の内径は、11.1mmであり、従来の4/8インチの銅管用のヘッドユニットの拡管部の外径は、11.1mmよりも僅かに小さい。このため、従来の4/8インチの銅管用のヘッドユニットの拡管部は、拡管前の4/8インチのアルミ管(内径:9.7mm)内に挿入することができない。
【0033】
また、第2のヘッドユニット140は、拡管後の拡管部143の外径が12.8mmである。これにより、第2のヘッドユニット140は、拡管後の4/8インチのアルミ管の内径を、拡管前の4/8インチのアルミ管の外径(12.7mm)よりも大きい、内径12.8mmに拡管することができる。その結果、拡管後の一のアルミ管内に、拡管前の他のアルミ管を挿入することが可能になる。
【0034】
特に、第2のヘッドユニット140の拡管部143は、レバー操作の操作量が最大となったとき(すなわち、可動レバー130が、突き当たるまで、固定レバー120に近接する方向にレバー操作されたとき)に、拡管後の外径寸法(12.8mm)を有するものとなる。これにより、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、作業者の熟練度を問わず、一度のレバー操作で、4/8インチのアルミ管を、所定の内径寸法(12.8mm)を有するものへ拡管することができる。
【0035】
また、拡管前の他のアルミ管の外径(12.7mm)と、拡管後の一のアルミ管の内径(12.8mm)との間の隙間寸法は、0.1mmと僅かである。このため、第2のヘッドユニット140は、拡管前の他のアルミ管が、拡管後の一のアルミ管内でガタつくことを抑制することができる。なお、ガタつき抑制、挿し込み容易性、ろう付け接合の作業性および確実性等の観点から、拡管前の4/8インチのアルミ管の外径と、拡管後の4/8インチのアルミ管の内径との間の隙間寸法は、0.1~0.4mmとすることが好ましい。すなわち、拡管後のアルミ管の内径を12.8~13.1mmとすることが好ましく、拡管部143の拡管後の外径寸法を12.8~13.1mmとすることが好ましい。
【0036】
<第3のヘッドユニット140>
第3のヘッドユニット140は、5/8インチのアルミ管に対応する。拡管前の5/8インチのアルミ管の内径は、12.28mmである。拡管前の5/8インチのアルミ管の外径は、15.88mmであり、規格上、拡管前の5/8インチの銅管の外径と同じである。すなわち、5/8インチのアルミ管の肉厚は、1.8mmである。これにより、5/8インチのアルミ管は、冷媒の圧力に十分に耐え得るものとなっている。一方、第3のヘッドユニット140は、拡管前の拡管部143の外径が、拡管前の5/8インチのアルミ管の内径よりも僅かに小さい11.8mmである。このため、第3のヘッドユニット140は、拡管前の拡管部143を、5/8インチのアルミ管内に容易に挿入することができる。なお、第3のヘッドユニット140の拡管前の拡管部143の外径は、好ましくは11.6~12.0mm、より好ましくは11.7~11.9mm、さらに好ましくは11.75~11.85mmである。
【0037】
なお、5/8インチの銅管の内径は、13.88mmであり、従来の5/8インチの銅管用のヘッドユニットの拡管部の外径は、13.88mmよりも僅かに小さい。このため、従来の5/8インチの銅管用のヘッドユニットの拡管部は、拡管前の5/8インチのアルミ管(内径:12.28mm)内に挿入することができない。
【0038】
また、第3のヘッドユニット140は、拡管後の拡管部143の外径が16.0mmである。これにより、第3のヘッドユニット140は、拡管後の5/8インチのアルミ管の内径を、拡管前の5/8インチのアルミ管の外径(15.88mm)よりも大きい、内径16.0mmに拡管することができる。その結果、拡管後の一のアルミ管内に、拡管前の他のアルミ管を挿入することが可能になる。
【0039】
特に、第3のヘッドユニット140の拡管部143は、レバー操作の操作量が最大となったとき(すなわち、可動レバー130が、突き当たるまで、固定レバー120に近接する方向にレバー操作されたとき)に、拡管後の外径寸法(12.8mm)を有するものとなる。これにより、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、作業者の熟練度を問わず、一度のレバー操作で、5/8インチのアルミ管を、所定の内径寸法(12.8mm)を有するものへ拡管することができる。
【0040】
また、拡管前の他のアルミ管の外径(15.88mm)と、拡管後の一のアルミ管の内径(16.0mm)との間の隙間寸法は、0.12mmと僅かである。このため、第3のヘッドユニット140は、拡管前の他のアルミ管が、拡管後の一のアルミ管内でガタつくことを抑制することができる。なお、ガタつき抑制、挿し込み容易性、ろう付け接合の作業性および確実性等の観点から、拡管前の5/8インチのアルミ管の外径と、拡管後の5/8インチのアルミ管の内径との間の隙間寸法は、0.1~0.4mmとすることが好ましい。すなわち、拡管後のアルミ管の内径を15.98~16.28mmとすることが好ましく、拡管部143の拡管後の外径寸法を15.98~16.28mmとすることが好ましい。
【0041】
(各構成部品の素材の好適な一例)
図5は、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100が備える各構成部品の素材の好適な一例を示す図である。但し、
図5に示す各構成部品の素材は一例であり、各構成部品にその他の素材を用いてもよい。
【0042】
図5に示すように、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100では、本体部100Aの基部110の素材として、比較的高強度且つ防錆効果の高い、SUS303を用いることが好ましい。
【0043】
また、
図5に示すように、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100では、本体部100Aの固定レバー120および可動レバー130の素材として、比較的高強度なアルミ合金である、A2017(いわゆるジュラルミン)を用いることが好ましい。これにより、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、固定レバー120および可動レバー130について、十分な強度を確保しつつ、十分な軽量化を行うことができる。
【0044】
また、
図5に示すように、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100では、本体部100Aのテーパピン135の素材として、ヘッドユニット140の拡管部143よりも高硬度な素材を用いることが好ましく、例えば、耐摩耗性が優れている合金工具鋼である、SKD11(硬度:HRC58)を用いることが好ましい。これにより、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、ヘッドユニット140の拡管部143に対するテーパピン135の摺動による、テーパピン135の摩耗を抑制することができる。
【0045】
図5に示すように、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100では、ヘッドユニット140のヘッド本体141の素材として、比較的高強度且つ防錆効果の高い、SUS303を用いることが好ましい。
【0046】
また、
図5に示すように、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100では、ヘッドユニット140の拡管部143の素材として、耐摩耗性が優れている合金工具鋼である、NAK55(硬度:HRC40)を用いることが好ましい。これにより、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、ヘッドユニット140の拡管部143に対するテーパピン135の摺動による、拡管部143の摩耗を抑制することができる。
【0047】
(アルミ管拡管装置100によるアルミ管の拡管方法)
図6は、一実施形態に係るアルミ管拡管方法の手順を示すフローチャートである。
図7および
図8は、一実施形態に係るアルミ管拡管方法を模式的に示す図である。
【0048】
まず、
図7(a)に示すように、拡管対象のアルミ管10のサイズに対応するヘッドユニット140を、アルミ管拡管装置100の本体部100Aの基部110に取り付ける(ステップS601:取付工程)。
【0049】
次に、
図7(b)に示すように、アルミ管拡管装置100の可動レバー130が開いた状態(すなわち、拡管部143の外径が最も小さい状態)で、アルミ管拡管装置100のヘッドユニット140の拡管部143を、アルミ管10の開口部に挿入する(ステップS602:拡管部挿入工程)。ここで、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、拡管前の拡管部143の外径が、拡管前のアルミ管10の内径よりも小さい。このため、一実施形態に係るアルミ管拡管装置100は、ヘッドユニット140の拡管部143を、アルミ管10の開口内に容易に挿入することができる。
【0050】
次に、
図7(c)に示すように、アルミ管拡管装置100の可動レバー130を、操作量が最大となるまで(すなわち、可動レバー130が突き当たるまで)、固定レバー120に近接する方向にレバー操作する(ステップS603:拡管工程)。これにより、テーパピン135が、拡管部143の中心隙間143B内で前方(Y軸正方向)に移動することによって、拡管部143の外径が拡張される。その結果、
図7(c)に示すように、アルミ管10の開口部は、拡管部143によって、所定の外径を有するものに拡管される。なお、拡管工程では、拡管部143をアルミ管10の開口部内で回転させながら、複数回拡管動作させるようにしてもよい。これにより、アルミ管10の開口部内に段付きが生じたり、アルミ管10の開口部が歪な円形状に拡管されてしまったりすることを抑制することができる。
【0051】
次に、拡管されたアルミ管10の開口部から、ヘッドユニット140の拡管部143を引き抜く(ステップS604:引抜工程)。そして、
図8(a)に示すように、拡管されたアルミ管10の開口部に、他のアルミ管12を挿入する(ステップS605:アルミ管挿入工程)。なお、この際、後続のろう付け接合のために、アルミ管10,12のバリや切リ粉等を取り除き、アルミ管10,12の接合部を清掃することが好ましい。また、この際、不織布等を用いて、アルミ管10,12の接合部の酸化皮膜を除去することが好ましい。
【0052】
最後に、
図8(b)に示すように、アルミろう材14およびバーナー16を用いて、拡管されたアルミ管10の内周面と、他のアルミ管12の外周面との間の隙間内に、アルミろう材14を溶かし込むことにより、拡管されたアルミ管10に、他のアルミ管12をろう付け接合する(ステップS606:接合工程)。
【0053】
なお、ステップS606の接合工程は、例えば、以下の手順によって行われる。
【0054】
(手順1)予熱工程
バーナー16を用いて、アルミ管10とアルミ管12との接合部を予熱する。この際、冷媒用のアルミ管の融点は、約640℃と比較的低温度であるため、接合部を加熱しすぎないように、予熱時間、加熱温度等に留意する。
【0055】
(手順2)投入工程
接合部の予熱を利用して、接合部(アルミ管10とアルミ管12との間の隙間内)に、アルミろう材14を溶かし込む。この際、アルミろう材14の使用量を、予め定められた好適な使用量とすることが好ましい。
【0056】
(手順3)冷却工程
外気を利用して、接合部を冷却することにより、接合部に溶かし込まれたアルミろう材を凝固させる。
【0057】
なお、ステップS606の接合工程は、例えば、特開2019-141905号公報に開示されているようなアプリケーションを利用することにより、ろう付け接合(作業手順、予熱時間、加熱温度、アルミろう材14の使用量等)を、音声案内に従って行うようにしてもよい。これにより、作業者は、アルミ管12を溶かしてしまったりすることなく、アルミ管12のろう付け接合を適確に行うことができる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
100 アルミ管拡管装置
100A 本体部
101A,101B 識別情報
110 基部
110A 空間部
110B 凸部
111 固定部
120 固定レバー
130 可動レバー
131 回動部材
132 回動軸
135 テーパピン
140 ヘッドユニット
141 ヘッド本体
141A 凹部
143 拡管部
143A ブロック
143B 中心隙間
144 コイルばね
AX 中心軸