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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115680
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/60 20060101AFI20220802BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20220802BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20220802BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20220802BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
F04D29/60 J
F04D29/62 D
F04D29/42 H
H02K5/24 A
H02K7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012385
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】マーレベーアサーマルシステムズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】高木 文哉
(72)【発明者】
【氏名】半澤 和弘
【テーマコード(参考)】
3H130
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB42
3H130AC11
3H130AC13
3H130BA13A
3H130BA16F
3H130CA21
3H130DA02Z
3H130DC01Z
3H130DD01X
3H130EB01A
3H130EC08Z
3H130EC09G
5H605AA04
5H605BB05
5H605CC01
5H605CC09
5H605CC10
5H605DD03
5H605DD09
5H605EA19
5H607AA04
5H607BB01
5H607BB25
5H607CC01
5H607CC05
5H607DD01
5H607DD08
5H607DD14
5H607FF04
(57)【要約】
【課題】送風装置において、駆動時におけるモータからホルダへの振動の伝播をより確実に抑制する。
【解決手段】送風装置10を構成するケーシング16には、モータ12を保持する有底円筒状のホルダ36を有し、このホルダ36は、前記モータ12の外周側に設けられる円筒状の外周壁42と、該外周壁42の下端に形成され前記モータ12の保持面22に臨む底壁44とを備えている。そして、ホルダ36における底壁44の第1底部52には、モータ12側に向けて突出した複数の凸部56を備え、前記凸部56が前記モータ12の保持面22と当接している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシングの内部に収容され軸方向に吸入した空気を径方向へ送風するファンと、軸方向一端側で回転軸に連結された前記ファンを通電作用下に回転駆動させるモータとを備え、前記ケーシングが、前記モータを保持する有底円筒状のホルダを有した送風装置において、
前記ホルダは、前記モータの外周側に設けられる円筒状の周壁と、該周壁の軸方向端部に形成され前記モータの軸方向他端に臨む底壁とを有し、
前記底壁には、前記モータ側に向けて突出して前記モータの前記軸方向他端と当接する凸部を備える、送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される空調装置に用いられ取り込んだ空気を送風する送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の羽根を有したファンと、該ファンを回転させるモータと、前記ファンを囲繞するケーシングとを有した送風装置が知られており、この送風装置では、前記モータの駆動作用下に前記ファンを回転させてケーシングに開口した空気取入口を通じて空気を内部へと取り込み、渦巻状の通路に沿って空気を流通させ端部から送出させる。
【0003】
上述したような送風装置では、モータを駆動させてファンを回転させる際、前記モータの内部で可動子と共に回転軸が回転することでヨークが撓んで磁気音が発生することがあり、この磁気音が、モータから該モータを保持するケーシングへと伝播され、前記送風装置の接続される車両用空調装置に振動として伝達されてしまうという課題がある。
【0004】
この課題を解決するために、例えば、特許文献1の送風装置は、モータを保持するモータホルダの外周部に対して空調ケースの端部が接続可能であり、この外周部には、上方に向けて開口した溝部が設けられると共に、前記空調ケースの端部には、下方へ向けて突出し前記溝部へと挿入される凸部が設けられている。
【0005】
そして、モータホルダの溝部に対して空調ケースの凸部が嵌合されることで、前記モータホルダと前記空調ケースとの接続部位における風漏れ及び水漏れを低減させると共に、前記モータから前記モータホルダへと伝播された磁気音の前記空調ケース側への伝達を低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-6766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1の送風装置では、互いに嵌合される溝部及び凸部を設けることで、モータホルダと空調ケースとの間での磁気音の伝播を低減可能な構成としているが、モータの下端がモータホルダの底部に対して全面的に面接触した状態で保持されているため、前記モータで生じた磁気音がモータホルダへと伝播されてしまい、該モータホルダが前記磁気音によって振動している状態となる。そのため、溝部と凸部との嵌合部位以外となるモータホルダと空調ケースとの接触部位から前記空調ケース側へと磁気音に伴う振動が伝播されてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、駆動時におけるモータからホルダへの振動の伝播をより確実に抑制することが可能な送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の態様は、ケーシングと、ケーシングの内部に収容され軸方向に吸入した空気を径方向へ送風するファンと、軸方向一端側で回転軸に連結されたファンを通電作用下に回転駆動させるモータとを備え、ケーシングが、モータを保持する有底円筒状のホルダを有した送風装置において、
ホルダは、モータの外周側に設けられる円筒状の周壁と、周壁の軸方向端部に形成されモータの軸方向他端に臨む底壁とを有し、
底壁には、モータ側に向けて突出してモータの軸方向他端と当接する凸部を備える。
【0010】
本発明によれば、送風装置を構成するケーシングは、ファンを回転駆動させるモータを保持するための有底円筒状のホルダを備え、このホルダは、モータの外周側に設けられる円筒状の周壁と、周壁の軸方向端部に形成されモータの軸方向他端に臨む底壁とを有している。そして、底壁には、モータ側に向けて突出した凸部を備え、凸部がモータの軸方向他端と当接するように設けられている。
【0011】
従って、ホルダの内部にモータが収容される際、その軸方向他端がホルダの底壁に対して全面的に接触することがなく、モータ側へ突出した凸部のみに当接して保持される。
【0012】
その結果、送風装置においてモータを駆動させファンを回転駆動させる際、モータ内で発生した磁気音に起因した振動が生じた場合であっても、モータの下端(軸方向他端)がモータホルダに対して全面的に面接触して保持された従来の送風装置と比較し、モータとホルダとの接触面積を削減することで、モータからホルダへの振動の伝播をより確実に抑制することが可能となり、それに伴って、ホルダを含むケーシングから車両用空調装置への振動の伝播も好適に抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0014】
すなわち、送風装置を構成するケーシングにおいて、モータを保持するための有底円筒状のホルダには、モータの外周側に設けられる周壁の軸方向端部に底壁を備え、この底壁がモータの軸方向他端に臨むように形成されると共に、モータ側に向けて突出してモータの軸方向他端と当接する凸部を有している。
【0015】
そのため、ホルダの内部にモータが収容される際、その軸方向他端がホルダの底壁に対して全面的に接触することがなく、モータ側へ突出した凸部のみに当接して保持されるため、モータを駆動させファンを回転駆動させる際、モータで発生した磁気音に起因して振動が生じた場合であっても、モータとモータホルダとを全面的に面接触させて保持していた従来の送風装置と比較し、モータとホルダとの接触面積を削減することでモータからホルダ側への振動の伝播をより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る送風装置の一部省略断面図である。
図2図1の送風装置を構成するホルダの平面図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る送風装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0018】
この送風装置10は、図1図3に示されるように、回転駆動源であるモータ12と、該モータ12の駆動作用下に回転するファン14と、該ファン14を内部に収容すると共に渦巻状の通路部34を有したケーシング16とを備え、前記ケーシング16が図示しない車両用空調装置に接続され取り込まれた空気が供給される。
【0019】
モータ12は、例えば、ケーシング16の略中央下部に設けられ、円筒状に形成され内部に図示しないコイル及び可動子の収容されるモータ本体18と、該可動子に連結され前記モータ本体18の上端(軸方向一端)から上方(矢印A方向)へと突出する回転軸20とを有し、この回転軸20は、ファン14の中心部に対して連結されモータ12への通電作用下に一体的に回転する。
【0020】
モータ本体18の軸方向に沿った下端(軸方向他端)には、軸線と直交した平坦状に形成される保持面22と、該保持面22の略中央に形成され下方(矢印B方向)へと所定高さだけ突出した突出部24とを備えている。すなわち、モータ本体18の下端は、軸方向(矢印A、B方向)に段付状となるように形成され、突出部24の径方向外側に保持面22が形成されている。
【0021】
ファン14は、ケーシング16の略中央に収容され、周方向に沿って等間隔離間した複数のブレード26と、該ブレード26の上端部に設けられた環状のシュラウド28と、前記ブレード26の下端部に設けられたボス部30とを備え、前記ブレード26は、断面湾曲状に形成され軸方向(矢印A、B方向)に所定長さで延在すると共に、周方向に沿って互いに等間隔離間するように複数設けられている。そして、ブレード26の上端部にはシュラウド28が結合され、下端部にはボス部30が結合されることで、略円筒状のファン14が構成される。
【0022】
また、ファン14は、中心から外周側に向かい且つ下方(矢印B方向)へ向かって傾斜したボス部30の中心がモータ12の回転軸20と連結されることで一体的に回転する。
【0023】
ケーシング16は、例えば、略中央部に形成されファン14の収容されるケース本体32と、該ケース本体32の外周側を旋回するように渦巻状に形成された通路部34と、前記ケース本体32の略中央下部に設けられモータ12が収容されるホルダ36とを含む。
【0024】
ケース本体32は、その内部にファン14が収容され、軸方向(矢印A、B方向)に沿った上端部中央には空気取入口38が開口している。この空気取入口38は、例えば、略円形状に開口し、ケーシング16の内部と外部とを連通させると共に、外周部には内側に向かって折り返されたベルマウス40が形成される。
【0025】
通路部34は、例えば、断面矩形状で巻き始めから巻き終わりに向かって徐々にケース本体32から離間するように半径外方向へと対数螺旋状に形成される。そして、通路部34の巻き終わりには、該巻き終わりから接線方向に向かって直線状に延在し端部の開口した吐出部(図示せず)が形成され、前記吐出部が、図示しない車両用空調装置の空調ケースに接続されている。
【0026】
ホルダ36は、例えば、上方(矢印A方向)に配置される軸方向一端が開口した有底円筒状に形成され、モータ12の外周面を覆う外周壁(周壁)42と、該外周壁42の下方(矢印B方向)となる軸方向他端(下端)に設けられる底壁44と、前記外周壁42の上端近傍から径方向外側へ延在する複数のフランジ46とを備える。
【0027】
この外周壁42は、モータ12におけるモータ本体18の外周面と略同一径で円筒状に形成され、前記外周面を覆うように外側に設けられると共に、その内周面から径方向外側へ窪んだ複数の装着溝48を備える。
【0028】
装着溝48は、弾性材料からなるパッキン50を装着可能に形成され、外周壁42の周方向に沿って互いに離間するように配置されると共に(図2参照)、前記外周壁42の上端から軸方向中央まで下方(矢印B方向)に向かって同一断面形状で延在している。この装着溝48の断面形状は、装着されるパッキン50の断面形状に対応したものとなる。なお、ここでは、3つのパッキン50及び装着溝48を備える場合について説明する。
【0029】
そして、各装着溝48に対して外周壁42の上端側からパッキン50が下方(矢印B方向)へ向けて挿入され装着されることで、前記パッキン50の内周面がモータ12のモータ本体18に臨むように設けられると共に、前記外周壁42の内周面に対して若干だけ径方向内側へ突出して前記モータ本体18に当接している。このように、ホルダ36において、内部に収容されたモータ12が径方向外側且つ周方向に離間するように設けられた各パッキン50へと当接することで、径方向への移動が規制された状態となる。
【0030】
一方、ホルダ36の底壁44は、外周壁42に接続され略直交するように径方向内側へ延在した第1底部52と、該第1底部52の径方向内側に形成されファン14から離間する方向、すなわち、下方(矢印B方向)に向かって突出した円筒状の第2底部54とを有する。
【0031】
第1底部52は、ホルダ36の軸線と直交するように平坦且つ環状に形成され、モータ12側となる上方(矢印A方向)へ向けて突出した複数の凸部56が形成される。凸部56は、例えば、ホルダ36の周方向に離間するように2つ設けられ、第1底部52と略平行に形成される。そして、凸部56の上面には、モータ12の保持面22が当接することで保持される。なお、凸部56の数量は2つに限定されるものではなく、少なくとも2つ以上であればよい。
【0032】
第2底部54は、モータ12の突出部24を内部に収容可能な高さで下方へと突出し、前記突出部24を収容可能な収容部58と、該収容部58の外周側に形成される環状壁60を有している。環状壁60は、例えば、第2底部54の底面からモータ12側(矢印A方向)に向けて所定高さで突出し、突出部24の外周側を覆うように形成されると共に、その上端がモータ12の保持面22に当接可能に形成される。
【0033】
すなわち、モータ12の保持面22は、ホルダ36の第1底部52に設けられた2つの凸部56と、第2底部54に設けられた環状壁60とによって軸方向に保持されている。換言すれば、モータ12の保持面22は、その外側が凸部56によって保持され、内側が環状壁60によって保持される。
【0034】
フランジ46は、ホルダ36の周方向に沿って互いに離間して複数設けられ、該フランジ46に開口した孔部62に下方から挿通された締結ボルト64をケース本体32に対して締結することで、モータ12の収容されたホルダ36が前記ケース本体32に対して下方から連結される(図1参照)。
【0035】
本発明の実施の形態に係る送風装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0036】
先ず、図示しないコントローラからの制御信号に基づき、モータ12が通電されて駆動し、該モータ12の回転軸20が回転することでファン14が一体的に回転し、ケーシング16の上方に開口した空気取入口38から前記ファン14の内側へと空気が吸い込まれる。
【0037】
そして、ファン14の内側へと取り込まれた空気がボス部30に沿って下方且つ外周側へと導かれた後、複数のブレード26の間を通過して外周側の通路部34へと送出される。通路部34内へと送出された空気は、通路部34に沿って巻き終わり側まで到達した後、図示しない吐出部を通じて車両用空調装置(図示せず)の空調ケース内へと導出される。
【0038】
このモータ12の駆動時において、モータ本体18の内部に収容された可動子と共に回転軸20が回転することでヨーク(図示せず)が撓んで磁気音が発生し、この磁気音に起因した振動が生じることがある。このような場合でも、モータ12におけるモータ本体18の外周面が弾性材料からなる複数のパッキン50で保持され、且つ、前記モータ本体18の下端(保持面22)が、複数の凸部56及び環状壁60にのみ当接して保持された状態にある。
【0039】
そのため、モータの下端がモータホルダに対して全面的に面接触して保持されていた従来の送風装置と比較し、モータ12のモータ本体18とホルダ36との接触面積を削減することができるため、前記モータ12から前記ホルダ36への振動の伝播を好適に低減させることが可能となる。
【0040】
以上のように、本実施の形態では、送風装置10を構成するケーシング16は、モータ12の下部を覆うと共に軸方向に保持する有底円筒状のホルダ36を備え、該ホルダ36の底壁44には、前記モータ12におけるモータ本体18の保持面22を保持するための複数の凸部56が設けられている。
【0041】
従って、ホルダ36の内部に収容されるモータ12は、そのモータ本体18の保持面22が前記ホルダ36の底壁44に対して全面的に接触することがなく、複数の凸部56及び環状壁60のみに当接して軸方向に保持されることとなる。
【0042】
その結果、送風装置10において、モータ12の駆動によってモータ本体18の内部から磁気音が発生した場合であっても、モータの下端がモータホルダに対して全面的に面接触させて保持されていた従来の送風装置と比較し、モータ12に対するホルダ36の接触面積を削減しているため、前記モータ本体18からホルダ36への磁気音に伴って生じる振動の伝播をより確実に抑制することが可能となる。また、モータ12からホルダ36への振動の伝播を抑制することで、前記ホルダ36を含むケーシング16に接続された車両用空調装置(図示せず)の空調ケースへの振動の伝播も抑制することが可能となる。
【0043】
なお、本発明に係る送風装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0044】
10…送風装置 12…モータ
14…ファン 16…ケーシング
18…モータ本体 22…保持面
24…突出部 36…ホルダ
42…外周壁 44…底壁
52…第1底部 54…第2底部
56…凸部 60…環状壁
図1
図2
図3