(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115682
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
B60H1/00 102B
B60H1/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012390
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】若松 信吾
(72)【発明者】
【氏名】香月 陽児
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 寛和
(72)【発明者】
【氏名】柳田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】村岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】細谷 陽
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA34
3L211BA55
3L211DA05
3L211DA10
(57)【要約】
【課題】車両用空調装置において空調ケース内を流通する空気の通気抵抗を低減させることで送風効率の向上を図る。
【解決手段】車両用空調装置10の空調ケース14には、エバポレータ20の配置される冷風通路44と、ヒータコア22の配置される温風通路46と、前記冷風通路44と前記温風通路46との間に設けられ前記冷風通路44及び前記温風通路46の上流側で連通すると共に送風機18からの空気が導入される導入空間32とを有している。そして、導入空間32において、冷風通路44及び温風通路46へと空気が分流されると共に、この導入空間32には、前記冷風通路44及び前記温風通路46へ流通する前記空気の量を調整可能な切替ドア24が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気の流れる通路を有した空調ケースと、前記空調ケースに接続され前記空気を送風する送風機と、前記空調ケースの内部に収容される冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器と、前記空調ケースに設けられ前記冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器によって温度調整がなされた前記空気を送風する送風口とを備える車両用空調装置において、
前記空調ケースの通路は、前記冷却用熱交換器の配置される冷風通路と、前記加熱用熱交換器の配置される温風通路と、前記冷風通路と前記温風通路との間に設けられ前記冷風通路及び前記温風通路の上流側で連通すると共に前記送風機からの空気が導入される導入通路とを有し、
前記導入通路の空気が前記冷風通路及び前記温風通路へと分流されると共に、前記導入通路には、前記冷風通路及び前記温風通路へ流通する前記空気の量を調整する切替ドアが設けられる、車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記冷却用熱交換器は、前記空気が通過して第1熱交換媒体と熱交換する第1熱交換部を有し、前記加熱用熱交換器は、前記空気が通過して第2熱交換媒体と熱交換する第2熱交換部を有し、前記第1熱交換部と前記第2熱交換部とが、前記冷風通路と前記温風通路とを分離する仕切り板を挟んで対向するように配置される、車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用空調装置において、
前記切替ドアは、前記空調ケースに支持される回転軸と、該回転軸の軸方向と直交方向へ延在する遮蔽板とから構成される板ドアであり、
前記回転軸が、前記冷却用熱交換器と前記加熱用熱交換器との間に配置される、車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記空調ケースにおいて、前記冷却用熱交換器から前記送風口までの前記通路の通路長さが、前記加熱用熱交換器から前記送風口までの前記通路の通路長さよりも長く設定される、車両用空調装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両用空調装置において、
前記冷却用熱交換器は、前記空調ケースにおいて前記送風口よりも重力方向下側に配置される、車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、空調ケース内の熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用空調装置は、例えば、特許文献1に開示されるように、空気を取り込んで空調ケース内へと送風する送風機と、前記空調ケース内の上流側に設けられ前記空気を冷却するエバポレータと、前記空調ケース内で前記エバポレータの下流側に設けられ前記空気を加熱するヒータコアとを有している。
【0003】
そして、送風機の駆動作用下に空調ケース内に取り込まれた空気は、エバポレータによって冷却又は除湿された後、エアミックスダンパによってヒータコアを通過する空気と、該ヒータコアを迂回する空気との割合を調整することで、車両における車室内へ送風される送風空気の温度が所望の温度となるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した車両用空調装置では、例えば、車室内の目標温度が温度調整される前の温度より高い場合や除湿が不要な場合であっても、送風機から空調ケース内へと取り込まれた全ての空気が、一度エバポレータを通過してからヒータコア側へと流れる構造となっている。そのため、エバポレータによる空気の冷却が必要とされない送風モードにおいて、全ての空気がエバポレータを通過することで通気抵抗の増加を招き、送風効率を低下させてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、空調ケース内を流通する空気の通気抵抗を低減させることで送風効率の向上を図ることが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明の態様は、内部に空気の流れる通路を有した空調ケースと、空調ケースに接続され空気を送風する送風機と、空調ケースの内部に収容される冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器と、空調ケースに設けられ冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器によって温度調整がなされた空気を送風する送風口とを備える車両用空調装置において、
空調ケースの通路は、冷却用熱交換器の配置される冷風通路と、加熱用熱交換器の配置される温風通路と、冷風通路と温風通路との間に設けられ冷風通路及び温風通路の上流側で連通すると共に送風機からの空気が導入される導入通路とを有し、
導入通路の空気が冷風通路及び温風通路へと分流されると共に、導入通路には、冷風通路及び温風通路へ流通する空気の量を調整する切替ドアが設けられる。
【0008】
本発明によれば、車両用空調装置を構成する空調ケースにおいて、冷風通路と温風通路との間に設けられ、冷風通路及び温風通路の上流側で連通すると共に送風機からの空気が取込口を通じて導入される導入通路を備え、導入通路へ導入された空気が、冷風通路及び温風通路へと分流されると共に、導入通路から冷風通路及び温風通路へ流通する空気の量を切替ドアによって調整可能としている。
【0009】
従って、空気を冷却させる必要がない場合でも冷却用熱交換器(エバポレータ)に空気を通過させていた従来の車両用空調装置と比較し、導入通路へ導入された空気を切替ドアの切替作用下に所望の冷却用熱交換器側又は加熱用熱交換器側のいずれか一方側のみへ送風することが可能となり、例えば、冷却用熱交換器による空気の熱交換が必要とされない場合には、空気が冷却用熱交換器を通過する際の通気抵抗が生じることがない。
【0010】
その結果、車両用空調装置において、空調ケース内を流通する空気の通気抵抗を低減させることで送風効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0012】
すなわち、冷風通路と温風通路との間に設けられ冷風通路及び温風通路の上流側で連通すると共に送風機からの空気が取込口を通じて導入される導入通路を空調ケースに備え、導入通路へ導入された空気が、冷風通路及び温風通路へと分流されると共に、導入通路から冷風通路及び温風通路へと流通する空気の量を調整可能な切替ドアを導入通路に設けることで、導入通路へ導入された空気を切替ドアの切替作用下に所望の冷却用熱交換器側又は加熱用熱交換器側のいずれか一方のみへ送風することが可能となり、例えば、冷却用熱交換器による空気の熱交換が必要とされない場合には、空気が冷却用熱交換器を通過する際の通気抵抗が生じることがない。
【0013】
その結果、車両用空調装置において、空調ケース内を流通する空気の通気抵抗を低減させることで送風効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用空調装置を上方から見た全体平面構成図である。
【
図2】
図1の車両用空調装置を側方から見た全体側面構成図である。
【
図3】
図1の車両用空調装置が冷房運転している状態を示す全体平面構成図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る車両用空調装置の全体正面構成図である。
【
図5】
図4の車両用空調装置を側方から見た全体側面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0016】
この第1の実施の形態に係る車両用空調装置10は、
図1及び
図2に示されるように、内部に通路12を有した空調ケース14と、該空調ケース14の取込口16に接続される送風機18と、前記空調ケース14の内部に収容されるエバポレータ(冷却用熱交換器)20及びヒータコア(加熱用熱交換器)22と、前記エバポレータ20と前記ヒータコア22との間に設けられる切替ドア24とを含む。
【0017】
空調ケース14は、例えば、
図1に示される上方から見て略矩形状に形成され、その内部には、幅方向(矢印A1、A2方向)に沿った略中央に切替ドア24及び仕切り壁(仕切り板)26が設けられると共に、前記切替ドア24及び仕切り壁26を挟んで幅方向(矢印A1、A2方向)に離間するようにエバポレータ20及びヒータコア22が所定距離だけ離間して略平行に配置される。すなわち、この車両用空調装置10は、空調ケース14においてエバポレータ20及びヒータコア22が幅方向(横方向、矢印A1、A2方向)に並列に配置された横置き構造である。
【0018】
仕切り壁26は、空調ケース14の内部で、該空調ケース14の幅方向と直交する奥行方向一方側(
図1中、矢印B1方向)の側壁28aから奥行方向他方側に向けて略中央部まで直線状に延在すると共に、
図2に示されるように、エバポレータ20及びヒータコア22に臨むように空調ケース14の底壁30から上方(矢印C1方向)へ向けて所定高さで形成されている。
【0019】
また、空調ケース14には、
図1に示されるように、その奥行方向において、奥行方向他方側(矢印B2方向)となる側壁28bに取込口16が開口し、この取込口16は、空調ケース14の幅方向略中央で切替ドア24及び仕切り壁26に臨むように開口すると共に、空調ケース14の内部に設けられた導入空間(導入通路)32と連通している。そして、空調ケース14の側壁28bには、取込口16に対して後述する送風機18が接続される。
【0020】
さらに、空調ケース14には、
図2に示される側方から見て、下方(矢印C2方向)に形成される底壁30と、該底壁30と略平行で上方(矢印C1方向)に形成される天井壁34とを有し、前記底壁30と前記天井壁34との間には、エバポレータ20の上方を覆うように分離壁36が形成されている。この分離壁36は、底壁30及び天井壁34と略平行に形成され、幅方向略中央から幅方向一方側(矢印A1方向)の側壁38aまで延在すると共に、その下方にはエバポレータ20の収容される収容室40が形成されると共に、該収容室40と上方の通路部とを連通する連通孔42が開口している
【0021】
そして、
図2に示されるように、空調ケース14の内部において、エバポレータ20の収容された収容室40、連通孔42、天井壁34と分離壁36との通路部の間が、エバポレータ20によって冷却された空気(冷風)の流通する冷風通路44となり、一方、ヒータコア22の配置される温風通路46は、該ヒータコア22の配置された部位から幅方向他方側(矢印A2方向)へ延在している。この冷風通路44と温風通路46とが、空調ケース14の幅方向略中央に設けられた仕切り壁26によって幅方向(矢印A1、A2方向)に分離されている(
図1参照)。
【0022】
また、空調ケース14には、
図1及び
図2に示されるように、幅方向他方側(矢印A2方向)の側壁38bに開口するベント送風口48と、該ベント送風口48近傍となる天井壁34に開口するデフロスタ送風口50と、該ベント送風口48近傍となる底壁30に開口するヒート送風口52とを備える。ベント送風口48、デフロスタ送風口50及びヒート送風口52は、いずれも空調ケース14においてヒータコア22側となる幅方向他方側(矢印A2方向)に配置されている。
【0023】
そして、ベント送風口48には、車室内における乗員の顔近傍への送風状態を調整するベントドア54が開閉自在に設けられ、デフロスタ送風口50には、車両のフロントウィンドウへの送風状態を切り替えるデフロスタドア56が開閉自在に設けられると共に、ヒート送風口52には、車室内における乗員の足元近傍への送風状態を調整するヒートドア58が開閉自在に設けられている。
【0024】
ベントドア54、デフロスタドア56及びヒートドア58は、空調ケース14に対して回動自在に支持される支軸60と、該支軸60に対して径方向両側へと延在する板状の一対のドア部62とを有したバタフライ式のドアであり、前記支軸60を中心として回動することで各送風口を開閉自在に設けられている。
【0025】
送風機18は、例えば、空調ケース14の側壁28bに臨むように設けられ、渦巻状の通路部を有したファンケース64と、該ファンケース64の内部に回転自在に収納されるファン66と、該ファン66を回転させるモータ68とを備え、前記ファンケース64の下流端が空調ケース14の取込口16に接続されている。そして、送風機18は、通電作用下にモータ68が駆動してファン66が回転することでファンケース64の通路部へと導入された空気が取込口16から空調ケース14の内部へと導入される。
【0026】
エバポレータ20は、例えば、空調ケース14の内部において、幅方向略中央に配置される切替ドア24及び仕切り壁26に対して幅方向一方側(矢印A1方向)に所定距離だけ離間して配置され、奥行方向(矢印B1、B2方向)に沿うように配置され空調ケース14に固定される。このエバポレータ20は、その内部に冷媒(第1熱交換媒体)が循環可能に形成されると共に、空調ケース14内の通路12を流れる空気が通過可能な第1熱交換部70を有している。そして、エバポレータ20は、第1熱交換部70を通過する空気と内部を循環する冷媒との間で熱交換を行うことで前記空気を冷却して冷風として下流側へと供給する。
【0027】
ヒータコア22は、例えば、空調ケース14の内部において、幅方向略中央に配置される切替ドア24及び仕切り壁26に対して幅方向他方側(矢印A2方向)に所定距離だけ離間して配置され、奥行方向(矢印B1、B2方向)に沿うように配置され空調ケース14に固定される。
【0028】
また、ヒータコア22は、図示しない車両における内燃機関の冷却水回路と図示しない配管を介して接続され、加熱された冷却水(温水、第2熱交換媒体)が内部を循環するように形成されると共に、空調ケース14内の通路12を流れる空気が通過可能な第2熱交換部72を有している。そして、ヒータコア22は、第2熱交換部72を通過する空気と内部を循環する温水との間で熱交換を行うことで前記空気を加熱して温風として下流側へと供給する。
【0029】
すなわち、エバポレータ20及びヒータコア22は、切替ドア24及び仕切り壁26を挟んで所定距離だけ幅方向(矢印A1、A2方向)に離間して略平行に配置されている。詳細には、エバポレータ20の第1熱交換部70とヒータコア22の第2熱交換部72とが、冷風通路44と温風通路46とを分離する仕切り壁26を挟んで対向するように配置されている。
【0030】
切替ドア24は、回転軸74と、該回転軸74に対して径方向外側へ延在する板状の遮蔽部(遮蔽板)76とを有した片持ち構造であり、
図2に示されるように、前記回転軸74が空調ケース14の上下方向(矢印C1、C2方向)に延在して底壁30及び分離壁36に対してそれぞれ回転自在に保持され、且つ、エバポレータ20とヒータコア22との間で前記エバポレータ20及び前記ヒータコア22に対して平行となるように配置されると共に、仕切り壁26の奥行方向他端に隣接するように設けられている(
図1参照)。
【0031】
遮蔽部76は、空調ケース14内において回転軸74に対して奥行方向他方側(矢印B2方向)に配置され、回転軸74が回動することで、エバポレータ20とヒータコア22との間に設けられた導入空間32内で、エバポレータ20に臨む位置からヒータコア22に臨む位置まで所定角度だけ回動する。
【0032】
また、遮蔽部76は、例えば、導入空間32内において、回転軸74及び仕切り壁26を奥行方向(矢印B1、B2方向)に延在させた仮想線Lに対し、
図1に示されるエバポレータ20側となる幅方向一方側(矢印A1方向)への回動角度θ1(回動量)と、
図3に示されるヒータコア22側となる幅方向他方側(矢印A2方向)への回動角度θ2(回動量)とが同一となるように形成される(θ1=θ2)。
【0033】
そして、切替ドア24は、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて駆動する駆動手段の駆動作用下に回転軸74が回動し、それに伴って、遮蔽部76が導入空間32内で所定の方向へ回動することで、導入空間32内へ導入される空気の幅方向一方側(矢印A1方向)、幅方向他方側(矢印A2方向)への流通状態及び流通量を調整可能(切替可能)となる。
【0034】
本発明の第1の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0035】
先ず、
図1に示される乗員の足元近傍へ温風を送風する暖房運転を行う場合について説明する。この場合には、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて駆動手段を駆動させ、
図1に示されるように、切替ドア24を回転軸74を支点として時計回りに回動させ、導入空間32とヒータコア22とが連通した状態とすると共に、ヒートドア58を回動させてヒート送風口52を開放した状態とする。一方、ベント送風口48及びデフロスタ送風口50は、それぞれベントドア54及びデフロスタドア56によって閉塞した状態とする。
【0036】
そして、送風機18への通電作用下にモータ68が駆動してファン66が回転することで、ファンケース64の通路部へと取り込まれた空気が取込口16を通じて空調ケース14の導入空間32内へと導入され、切替ドア24の回動によって開放されているヒータコア22側(
図1中、幅方向他方側、矢印A2方向)へと流通する。なお、導入空間32において、エバポレータ20側(幅方向一方側、矢印A1方向)は切替ドア24によって塞がれているため、導入空間32から前記エバポレータ20側へと空気が流通することはない。
【0037】
この導入空間32内の空気がヒータコア22を通過することで、第2熱交換部72を循環する温水と熱交換され加熱された温風となり、この温風が温風通路46においてヒータコア22の下流側から幅方向他方側(矢印A2方向)へと流れて開放されたヒート送風口52から車室内における乗員の足元近傍へと送風される。
【0038】
次に、
図3に示される乗員の顔近傍へ冷風を送風する冷房運転を行う場合について説明する。この場合には、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて駆動手段を駆動させて切替ドア24を回転軸74を支点として反時計回りに回動させ、導入空間32とエバポレータ20とが連通した状態とすると共に、ベントドア54を回動させてベント送風口48を開放した状態とする。一方、デフロスタ送風口50及びヒート送風口52は、それぞれデフロスタドア56及びヒートドア58によって閉塞した状態とする。
【0039】
そして、送風機18の駆動作用下にファンケース64へと取り込まれた空気が、取込口16を通じて空調ケース14の導入空間32内へと導入され、切替ドア24の回動によって開放されているエバポレータ20側(幅方向一方側、矢印A1方向)へと流通する。なお、導入空間32において、ヒータコア22側(幅方向他方側、矢印A2方向)は切替ドア24によって塞がれているため、導入空間32から前記ヒータコア22側へと空気が流通することはない。
【0040】
この導入空間32内の空気がエバポレータ20を通過することで、第1熱交換部70を循環する冷媒と熱交換され冷却された冷風となり、この冷風がエバポレータ20の下流側となる空調ケース14の幅方向一方側(矢印A1方向)の収容室40内へと流通した後に、冷風通路44を構成する分離壁36の連通孔42を通じて天井壁34側へと流れて該天井壁34に沿って幅方向他方側(矢印A2方向)へと流れることで、開放されたベント送風口48から車室内における乗員の顔近傍へと送風される。
【0041】
すなわち、車両用空調装置10の冷房運転時において、
図2に示されるように、導入空間32からエバポレータ20へと流れる空気の流れは、一旦、幅方向一方側(矢印A1方向)へと流れて上昇した後に、反転して幅方向他方側(矢印A2方向)へと流れることとなる。換言すれば、車両用空調装置10では、冷風の流れる冷風通路44の通路長さが、温風の流れる温風通路46の通路長さに対して長くなるように形成されている。
【0042】
以上のように、第1の実施の形態では、車両用空調装置10を構成する空調ケース14において、エバポレータ20が収容される冷風通路44と、ヒータコア22が収容される温風通路46と、前記冷風通路44と前記温風通路46との間に設けられ前記冷風通路44及び前記温風通路46の上流側で連通すると共に送風機18からの空気が取込口16を通じて導入される導入空間32とを有しており、この導入空間32へ導入された空気が、前記冷風通路44及び前記温風通路46へと分流されると共に、前記導入空間32には、前記冷風通路44及び前記温風通路46へ流通する前記空気の流量を調整可能な切替ドア24が設けられている。
【0043】
従って、エバポレータの下流側にヒータコアが配置され、空気を冷却させる必要がない場合でも前記エバポレータに前記空気を通過させていた従来の車両用空調装置と比較し、例えば、車室内の目標温度が温度調整される前の温度より高い場合や除湿が不要な場合において、導入空間32に導入された空気を、切替ドア24の切替作用下にヒータコア22側のみへ流通させてエバポレータ20側への送風を遮断することで、前記エバポレータ20に前記空気が通過する際に生じていた通気抵抗を削減することが可能となる。
【0044】
その結果、車両用空調装置10において、エバポレータ20による空気の熱交換が必要とされない送風モード(送風状況)において、空調ケース14内を流通する空気の通気抵抗を削減させることで送風効率の向上を図ることができる。
【0045】
また、空調ケース14の内部において、エバポレータ20の第1熱交換部70とヒータコア22の第2熱交換部72とが、冷風通路44と温風通路46とを分離する仕切り壁26を挟んで対向するように略平行に配置されているため、車両用空調装置10を幅方向に小型化することが可能となる。
【0046】
さらに、切替ドア24は、空調ケース14に支持される回転軸74と、該回転軸74の軸方向と直交方向へ延在する遮蔽部76とから構成された板ドアであり、前記回転軸74を含む切替ドア24を前記エバポレータ20とヒータコア22との間に配置することで、車両用空調装置10を幅方向(矢印A1、A2方向)に小型化することができる。
【0047】
さらにまた、回転軸74及び遮蔽部76からなる単純な構造の板ドアを切替ドア24として用いることにより、エバポレータ20及びヒータコア22の上流となる導入空間32内に送風機18から空気が導入される際の通気抵抗を好適に削減することが可能となる。
【0048】
また、空調ケース14において、冷風の流れる冷風通路44の通路長さが、温風の流れる温風通路46の通路長さに対して長く形成されているため、例えば、冷房運転時において、エバポレータ20を通過する空気中に含まれる水分が液化して凝縮水として付着し、第1熱交換部70を通過する空気によって前記凝縮水が飛散した場合であっても、前記エバポレータ20からベント送風口48までの冷風通路44の通路長さを十分に確保することで、飛散した凝縮水が前記ベント送風口48から車室内へと浸入してしまうことが防止される。
【0049】
次に、第2の実施の形態に係る車両用空調装置100を
図4及び
図5に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る車両用空調装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0050】
この第2の実施の形態に係る車両用空調装置100では、エバポレータ20及びヒータコア22を上下方向(矢印C1、C2方向)に並列に配置した縦置き構造としている点で、第1の実施の形態に係る車両用空調装置10と相違している。
【0051】
車両用空調装置100は、
図4及び
図5に示されるように、上下方向に長尺に形成された空調ケース102を有し、この空調ケース102の内部には、上下方向略中央に切替ドア104及び仕切り壁(仕切り板)106が設けられると共に、前記切替ドア104及び仕切り壁106を挟んで上下方向(矢印C1、C2方向)に離間するようにエバポレータ20及びヒータコア22が所定間隔で略平行に配置される。すなわち、エバポレータ20及びヒータコア22が上下方向(縦方向)に並列に配置された縦置き構造の車両用空調装置100である。
【0052】
仕切り壁106は、空調ケース102の内部において、該空調ケース102の幅方向他方(矢印A2方向)の側壁110bから幅方向略中央まで水平且つ直線状に延在すると共に、
図5に示されるように、エバポレータ20及びヒータコア22の間において、空調ケース102の奥行方向一方側(矢印B1方向)の側壁108aから奥行方向他方側へ向けて略中央部近傍まで立設している。
【0053】
また、空調ケース102の幅方向一方の側壁110aには、切替ドア104及び仕切り壁106に臨むように取込口16が開口し、この取込口16には、空調ケース102の側壁110aに装着される送風機18のファンケース64が接続される。
【0054】
さらに、空調ケース102には、下方(矢印C2方向)に形成される底壁112と、該底壁112の上方(矢印C1方向)に形成される天井壁114とを有し、車両用空調装置100は、車両に対して前記底壁112が重力方向下方(矢印C2方向)となるように搭載される。
【0055】
この底壁112は、
図4に示されるように、幅方向両端から幅方向中央に向けて重力方向下方(矢印C2方向)へと傾斜した一組の傾斜面116を有し、一方の傾斜面116と他方の傾斜面116とが接続され最も重力方向下方(矢印C2方向)となる下端には、外部と連通したドレンポート118が設けられている。ドレンポート118は、管状に形成され外部に向けて開口しており、空調ケース102の底壁112へと落下した水分(凝縮水)を外部へと排出可能に設けられる。
【0056】
また、空調ケース102の内部において、
図4に示されるように、エバポレータ20及びヒータコア22は、その幅方向両端が空調ケース102に対してそれぞれ固定されることで、幅方向(矢印A1、A2方向)に沿って略水平にそれぞれ配置されると共に、
図5に示されるように、その奥行方向一端が前記空調ケース102の奥行方向一方側(矢印B1方向)の側壁108aに固定されている。そして、ヒータコア22が重力方向上方(矢印C1方向)、エバポレータ20が前記ヒータコア22に対して重力方向下方(矢印C2方向)となるように互いに所定距離離間して配置される。
【0057】
さらに、空調ケース102の内部には、
図5に示されるように、エバポレータ20の奥行方向他方側(矢印B2方向)に分離壁120が設けられる。この分離壁120は、底壁112に対して立設して上方(矢印C1方向)へ向けて直線状に延在すると共に、前記エバポレータ20が収容される収容室122に臨む連通孔124が形成される。連通孔124は、分離壁120を奥行方向に貫通し、奥行方向他方側(矢印B2方向)の側壁108bと前記分離壁120との間の通路部と収容室122とを連通している。
【0058】
さらにまた、空調ケース102の上部には、その天井壁114にベント送風口48及びデフロスタ送風口50が形成され、奥行方向他方側(矢印B2方向)となる側壁108bにはヒート送風口52が形成される。そして、ベント送風口48、デフロスタ送風口50及びヒート送風口52には、それぞれベントドア54、デフロスタドア56及びヒートドア58が開閉自在に設けられている。
【0059】
切替ドア104は、回転軸74と、該回転軸74に対して径方向外側へ延在する板状の遮蔽部(遮蔽板)76とを有した片持ち構造であり、その回転軸74が空調ケース102の奥行方向(
図5中、矢印B1、B2方向)に延在して奥行方向一方側(矢印B1方向)の側壁108a及び分離壁120に対してそれぞれ回動自在に保持され、且つ、エバポレータ20及びヒータコア22と平行となるように配置されると共に、仕切り壁106の幅方向一端に隣接するように設けられている(
図4参照)。
【0060】
遮蔽部76は、空調ケース102内において回転軸74に対して幅方向一方側(
図4中、矢印A1方向)に配置され、回転軸74が回動することで、エバポレータ20とヒータコア22との間に設けられた導入空間32内で、エバポレータ20に臨む位置からヒータコア22に臨む位置まで所定角度だけ回動する。
【0061】
また、遮蔽部76は、例えば、導入空間32内において、回転軸74及び仕切り壁106を幅方向(矢印A1、A2方向)に延在させた仮想線Lに対し、エバポレータ20側となる重力方向下方側(矢印C2方向)への回動角度と、ヒータコア22側となる重力方向上方側(矢印C1方向)への回動角度とが同一となるように形成されている。
【0062】
そして、切替ドア104は、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて駆動する駆動手段の駆動作用下に回転軸74が回動し、それに伴って、遮蔽部76が導入空間32内で所定の方向へ回動することで、導入空間32内へ導入される空気の重力方向下方側(矢印C2方向)、重力方向上方側(矢印C1方向)への流通状態及び流通量を調整可能(切替可能)となる。
【0063】
本発明の第2実施の形態に係る車両用空調装置100は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0064】
先ず、乗員の足元近傍へ温風を送風する暖房運転を行う場合には、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて駆動手段を駆動させて切替ドア104を回転軸74を支点として時計回り(重力方向下方側、矢印C2方向)に回動させ(
図4中、二点鎖線形状参照)、導入空間32とヒータコア22とが連通した状態とすると共に、ヒートドア58を回動させてヒート送風口52を開放した状態とする。
【0065】
そして、送風機18の駆動作用下に取込口16を通じて空調ケース102の導入空間32内へと導入された空気が、開放されているヒータコア22側(
図4中、重力方向上方側)へと流通する。なお、導入空間32において、エバポレータ20側(
図4中、重力方向下方側)は切替ドア104によって塞がれているため、導入空間32から前記エバポレータ20側へと空気が流通することはない。
【0066】
この導入空間32内の空気がヒータコア22を通過することで、第2熱交換部72で温水と熱交換され加熱された温風となり、この温風が温風通路46においてヒータコア22の下流側から重力方向上方(矢印C1方向)へと流れて開放されたヒート送風口52から車室内における乗員の足元近傍へと送風される。
【0067】
次に、乗員の顔近傍へ冷風を送風する冷房運転を行う場合には、図示しない駆動手段によって回転軸74を支点として切替ドア104を反時計回り(重力方向上側、矢印C1方向)に回動させ、導入空間32とエバポレータ20とが連通した状態とすると共に、ベントドア54を回動させてベント送風口48を開放した状態とする。
【0068】
そして、送風機18の駆動作用下に取込口16を通じて空調ケース102の導入空間32内へと導入された空気は、開放されているエバポレータ20側(
図4中、重力方向下方側)へと流通する。なお、導入空間32において、ヒータコア22側(
図4中、重力方向上方側)は切替ドア104によって塞がれているため、導入空間32から前記ヒータコア22側へと空気が流通することはない。
【0069】
この導入空間32内の空気がエバポレータ20を通過することで、冷媒と熱交換され冷却された冷風となり、この冷風がエバポレータ20の下流側となる空調ケース102の重力方向下方(矢印C2方向)の収容室122内へと流通した後に、冷風通路44を構成する分離壁120の連通孔124を通じて該分離壁120と側壁108bとの間に沿って重力方向上方(矢印C1方向)へと流れ、開放されたベント送風口48から車室内における乗員の顔近傍へと送風される。
【0070】
すなわち、車両用空調装置100の冷房運転時において、
図5に示されるように、導入空間32からエバポレータ20へと流れる空気の流れは、重力方向下方(矢印C2方向)へと流れた後に、反転して分離壁120に沿って重力方向上方(矢印C1方向)へと流れることとなる。換言すれば、冷風の流れる冷風通路44の通路長さが、温風の流れる温風通路46の通路長さに対して長くなるように形成されている。
【0071】
また、エバポレータ20において冷媒と空気との熱交換が行われる際、空気中に含まれる水分が冷却されて凝縮水となって付着することがあり、この凝縮水が第1熱交換部70を通過する空気の流れによって飛散して重力方向下方(矢印C2方向)へと落下することがあるが、前記凝縮水が重力作用下に空調ケース102の底壁112へと落下して傾斜面116によって好適にドレンポート118へと導かれることで外部へと排出される。
【0072】
以上のように、第2の実施の形態では、車両用空調装置100を構成する空調ケース102において、エバポレータ20が収容される冷風通路44と、ヒータコア22が収容される温風通路46と、前記冷風通路44と前記温風通路46との間に設けられ前記冷風通路44及び前記温風通路46の上流側で連通すると共に送風機18からの空気が取込口16を通じて導入される導入空間32とを有しており、この導入空間32へ導入された空気が、前記冷風通路44及び前記温風通路46へと分流されると共に、前記導入空間32には、前記冷風通路44及び前記温風通路46へ流通する前記空気の量を調整可能な切替ドア104が設けられている。
【0073】
従って、エバポレータの下流側にヒータコアが配置され、空気を冷却させる必要がない場合でも前記エバポレータに前記空気を通過させていた従来の車両用空調装置と比較し、例えば、車室内の目標温度が温度調整される前の温度より高い場合や除湿が不要な場合において、導入空間32に導入された空気を、切替ドア104の切替作用下にヒータコア22側のみへ流通させてエバポレータ20側への送風を遮断することで、前記エバポレータ20に前記空気が通過する際に生じていた通気抵抗を削減することが可能となる。
【0074】
その結果、車両用空調装置100において、エバポレータ20による空気の熱交換が必要とされない送風モード(送風状況)において、空調ケース14内を流通する空気の通気抵抗を削減させることで送風効率の向上を図ることができる。
【0075】
また、空調ケース102において、冷風の流れる冷風通路44の通路長さが、温風の流れる温風通路46の通路長さに対して長く形成されているため、例えば、冷房運転時において、エバポレータ20を通過する空気中に含まれる水分が液化して付着し第1熱交換部70を通過する空気によって飛散した場合であっても、前記エバポレータ20からベント送風口48までの冷風通路44の通路長さを十分に確保することで、飛散した凝縮水が前記ベント送風口48から車室内へと浸入してしまうことが防止される。
【0076】
さらに、空調ケース102において、ベント送風口48、デフロスタ送風口50及びヒート送風口52をエバポレータ20よりも重力方向上方(矢印C1方向)に配置することで、前記エバポレータ20に付着した凝縮水が第1熱交換部70を通過する空気によって飛散した場合でも、重力方向に逆らって各送風口まで到達することが防止され、車室内への浸入がより一層確実に防止される。
【0077】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0078】
10、100…車両用空調装置 14、102…空調ケース
18…送風機 20…エバポレータ
22…ヒータコア 24、104…切替ドア
26、106…仕切り壁 44…冷風通路
46…温風通路 74…回転軸
76…遮蔽部 118…ドレンポート