(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115698
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】グラスラン
(51)【国際特許分類】
B60J 10/76 20160101AFI20220802BHJP
【FI】
B60J10/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012416
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】大三 直人
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA31
3D201BA01
3D201CA23
3D201CB02
3D201DA08
3D201DA34
3D201DA38
3D201EA03B
3D201EA11
3D201FA04
(57)【要約】
【課題】自動車用ドアのグラスランにおいて、取付部の口開きを抑制しつつ、金型との接触に起因する取付部へのキズを低減することができて、外観の悪化を防止することができる。
【解決手段】グラスラン10は、上辺押出部20と後側縦辺押出部30と、両者を接続する型成形部40とを備えている。上辺押出部20は、フレーム上辺部7の上辺フランジ7cに取付けられるための取付部21を含み、略コ字状取付部は、押出成形上壁21aと、押出成形下壁21bと、押出成形上壁21aの車外側端部と押出成形下壁21bの車外側端部とを接続する押出成形接続壁21cとにより形成されている。押出成形上壁は、押出成形下壁に対向する面と反対側の上面21a1から上側に延びるリップ部22と、該上面における取付部の開口側又は押出成形接続壁側にのみ軟質部23とを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ドアのウインドフレームが有するフレーム上辺部及び該フレーム上辺部の端部から下方向に延びるフレーム縦辺部に沿って取付けられ、前記ドアのウインド開口を開閉するウインドガラスと前記ウインドフレームとの間をシールするグラスランであって、
前記フレーム上辺部に沿って延びる形状に押出成形され、該フレーム上辺部に組付けられる上辺押出部と、
前記フレーム縦辺部に沿って延びる形状に押出成形され、該フレーム縦辺部に組付けられる縦辺押出部と、
前記上辺押出部と前記縦辺押出部との間に配置され、前記上辺押出部と前記縦辺押出部とを接続する型成形部とを備え、
前記上辺押出部は、前記フレーム上辺部に形成された上辺フランジに取り付けられるための取付部を含み、
前記取付部は、前記上辺フランジを上下方向で挟持するための上壁及び下壁と、前記上壁及び前記下壁の一端部同士を接続する接続壁とを含み、
前記上壁には、前記下壁に対向する面と反対側の上面から上側に延びるとともに、前記ドア閉時には前記自動車の車体のドア開口上辺部に弾接するリップ部と、前記上面における前記取付部の開口部側又は前記接続壁側にのみ前記取付部の材料よりも軟質な材料からなる軟質部とが形成されていることを特徴とするグラスラン。
【請求項2】
前記軟質部は、厚さが0.3mm以下の膜形状であることを特徴とする請求項1に記載のグラスラン。
【請求項3】
前記軟質部は、突起状であることを特徴とする請求項1に記載のグラスラン。
【請求項4】
前記上壁は、前記取付部が前記フレーム上辺部に取り付けられた状態において、前記ウインドガラスのセンターラインの垂直方向に対して、前記接続壁に向かうに従って上側に傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のグラスラン。
【請求項5】
前記リップ部の基端と前記軟質部との間には間隙が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のグラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアにおいて昇降するウインドガラスを案内するグラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の側部に設けられるサイドドアは、ウインドフレームにより形成されたウインド開口を開閉するように昇降可能なウインドガラス、及びウインドフレームとウインドガラスとの間をシールするためのグラスランを備えている。通常、グラスランは、押出成形により形成される押出成形部と、金型成形により形成される型成形部とを含み、その押出成形部を金型内に配設した上で成形材料を注入することで型成形部の形状を形成すると同時に、金型内で押出成形部と型成形部とが接合されて完成される。
【0003】
従来のグラスランにおいて、押出成形部は、フレーム上辺部に略沿うように押出成形された上辺押出部を備え、上辺押出部にはフレーム上辺部の車外側に向けて突出したフランジ部に取付けられるための断面略コ字状の取付部が設けられている。従来のグラスランとして、例えば、特許文献1にはフレーム上辺部へのグラスラン取付後の保持性を確保するために、硬質樹脂材からなる取付部を備えた上辺押出部を含むグラスランが開示されており、該取付部がフレーム上辺部のフランジ部を上下方向に挟持することで、グラスランがウインドフレームから脱落しないようになっている。具体的に、特許文献1のグラスランにおいて、上辺押出部は取付部としての硬質樹脂材からなる断面略コ字状のトリム部を含み、トリム部は、フレーム上辺部の先端のフランジ部を上下方向に挟持するボディー側側壁及びガラスラン側側壁と、ボディー側側壁の車外側端部とガラスラン側側壁の車外側端部とを接続するトリム部底壁とで構成されている(特許文献1の
図1を参照)。このように構成することによって、グラスランをドアフレームに強固に保持することができる。
【0004】
また、特許文献2には、硬質樹脂材からなる取付部が該取付部よりも軟らかい軟質材によって被覆されて一体化されたグラスランの上辺押出部が開示されている(特許文献2の
図2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-172478号公報
【特許文献2】特開2018-89991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の上辺押出部を採用した場合、型成形部の金型成形時において、上述の通り上辺押出部は押出成形により形成された上で金型内に配設されるが、その際に位置ずれを防止するために上辺押出部の取付部を金型で挟み込み固定する必要がある。このため、取付部を構成する硬質樹脂材と金型とが直接に接触することとなり、上辺押出部の取付部には金型で固定したことによるキズが付いてしまう場合がある。また、金型成形後に上辺押出部から金型を取り外す際にも、上辺押出部の取付部に金型によるキズが付いてしまう場合もある。従って、特許文献1に記載されているような取付部を構成する硬質樹脂材が露出した上辺押出部の場合、取付部には金型との接触によるキズが付いて外観が悪化するという問題がある。
【0007】
この問題を解決するために、例えば特許文献2に記載されているように、型成形部の金型成形時に取付部を構成する硬質樹脂材と金型とが直接に接触しないようにするために、取付部の上面全体を軟質材で覆われてなる上辺押出部を採用することが考えられる。このような上辺押出部によると、型成形部の金型成形時に、軟質材が取付部を構成する硬質樹脂材と金型との間の緩衝材として機能することができ、取付部の上面には上述のような金型との接触によるキズが付きにくくなると考えられる。しかしながら、上辺押出部は、通常、成形材料を押出成形した後に冷却固化させて成形する必要があり、特許文献2の上辺押出部を採用した場合、冷却固化時に軟質材が硬質樹脂材よりも先に固化してしまう場合がある。その結果、軟質材の固化による収縮によって、硬質樹脂材によって構成された略コ字状の取付部の開口が広がる方向に力が掛かることで、口開きが発生し、設計形状通りに製品形状が製造できない事から、フランジ部に対する十分な保持性が確保できない恐れがある。
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上辺押出部の押出成形時においての取付部の口開きを抑制し且つ型成形時においての金型との接触によるキズを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明では、自動車用ドアのグラスランにおいて、フレーム上辺部に取付けられる上辺押出部の取付部に軟質部を設けた。
【0010】
具体的に、本発明に係るグラスランは、自動車用ドアのウインドフレームが有するフレーム上辺部及び該フレーム上辺部の端部から下方向に延びるフレーム縦辺部に沿って取付けられ、前記ドアのウインド開口を開閉するウインドガラスと前記ウインドフレームとの間をシールするグラスランであって、前記フレーム上辺部に沿って延びる形状に押出成形され、該フレーム上辺部に組付けられる上辺押出部と、前記フレーム縦辺部に沿って延びる形状に押出成形され、該フレーム縦辺部に組付けられる縦辺押出部と、前記上辺押出部と前記縦辺押出部との間に配置され、前記上辺押出部と前記縦辺押出部とを接続する型成形部とを備え、前記上辺押出部は、前記フレーム上辺部に形成された上辺フランジに取り付けられるための取付部を含み、前記取付部は、前記上辺フランジを上下方向で挟持するための上壁及び下壁と、前記上壁及び前記下壁の一端部同士を接続する接続壁とを含み、前記上壁には、前記下壁に対向する面と反対側の上面から上側に延びるとともに、前記ドア閉時には前記自動車の車体のドア開口上辺部に弾接するリップ部と、前記上面における前記取付部の開口側又は前記接続壁側にのみ前記取付部の材料よりも軟質な材料からなる軟質部とが形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るグラスランによると、取付部の上壁に、該上壁の上面に取付部の材料よりも軟質な材料からなる軟質部が設けられているため、型成形部の金型成形時に、軟質部が取付部の上壁における上面と金型との間の緩衝材として機能することができる。その結果、取付部の上面には、金型との接触によるキズが従来よりも付きにくくなり、外観の悪化を防止することができる。さらに、軟質部が取付部の開口側又は接続壁側の上面にのみ形成されていることで、従来の上辺押出部よりも取付部における軟質材の設定領域を最小限にすることができて、押出成形後の冷却固化時に取付部の口開きを抑制することもできる。
【0012】
本発明に係るグラスランにおいて、前記軟質部は、厚さが0.3mm以下の膜形状であることが好ましい。
【0013】
このようにすると、型成形部の金型成形時に、軟質部が取付部の上壁における上面と金型との間の緩衝材として機能することによって金型との接触によるキズを低減することができるとともに、取付部における軟質部の設定領域を最小限にすることができるので、冷却固化時に取付部の口開きを効果的に抑制することもできる。軟質部の膜厚が0.3mmを超えると、取付部における軟質部の設定領域が過剰に増えるため、冷却固化時に取付部の口開きを抑制する効果が小さくなるので、軟質部の膜厚は0.3mm以下が好ましい。
【0014】
本発明に係るグラスランにおいて、前記軟質部は、突起状であることが好ましい。
【0015】
このようにすると、型成形部の金型成形時に、軟質部が取付部の上壁における上面と金型との間の緩衝材として機能することによって金型との接触によるキズを低減することができるとともに、取付部における軟質部の設定領域を最小限にすることができて、冷却固化時に取付部の口開きを効果的に抑制することもできる。
【0016】
本発明に係るグラスランにおいて、前記上壁は、前記取付部が前記フレーム上辺部に取付けられた状態において、前記ウインドガラスのセンターラインの垂直方向に対して、前記接続壁に向かうに従って上側に傾斜するように形成されていることが好ましい。
【0017】
このようにすると、グラスランと車体との面間が接続壁側(車内側)に向かうに従って広くなるため、軟質部が車体とグラスランとの隙間を狭めることなく、取付部の上壁における上面と金型との間の緩衝材として機能することができるので、取付部への金型との接触によるキズを低減することができる。
【0018】
本発明に係るグラスランにおいて、前記リップ部の基端と前記軟質部との間には間隙が設けられていることが好ましい。
【0019】
このようにすると、取付部における軟質部の設定領域を最小限にすることができるので、冷却固化時に取付部の口開きを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るグラスランによると、上辺押出部の押出成形時においての取付部の口開きを抑制することができるとともに、型成形時においての金型との接触に起因する取付部へのキズを低減して外観の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るグラスランを備えた自動車の左側を示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る左側のグラスランを示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る左側のグラスランのコーナー部の拡大図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るグラスランを示す断面図であり、
図3のIV-IV線における断面を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るグラスランを示す断面図であり、
図3のV-V線における断面を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るグラスランを示す断面図であり、
図3のVI-VI線における断面を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るグラスランを示す断面図であり、
図6に示すグラスランの変形例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るグラスランを示す断面図であり、
図5に示すグラスランの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法又はその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
本発明の一実施形態に係るグラスランについて、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示す自動車において、1は自動車、2はフロントドアであり、80はリヤドアである。また、Bは車体を示す。本発明の実施形態の説明では、車両上側を単に「上側」といい、車両下側を単に「下側」というものとする。また、車両前側を単に「前側」といい、車両後側を単に「後側」というものとする。さらに、車両外側を単に「車外側」といい、車両内側を単に「車内側」というものとする。
【0025】
フロントドア2は、略下半部を構成するフロントドア本体3と、略上半部を構成するウインドフレーム6とを有している。図示は省略するが、フロントドア本体3の前端部は、ヒンジを介して車体Bに取付けられている。フロントドア本体3は、例えば鉄板などからなる車室内外の2枚のパネルで構成されており、内部には昇降動作するウインドガラス5や、ウインドガラス5を昇降動作させるための装置(図示省略)などが収容可能になっている。
【0026】
ウインドフレーム6は、ウインドガラス5の端部であるウインドガラス前端部H1、ウインドガラス上端部H2及びウインドガラス後端部H3を保持するサッシュとして機能するものであり、ウインド開口4を形成するように延びている。またここで、
図1に破線丸印で示すウインドガラス5の略中程の部位をウインドガラス中央Cと定義する。
【0027】
ウインドフレーム6によって形成されているウインド開口4がウインドガラス5によって開閉されるようになっている。ウインドフレーム6とウインドガラス5との間には、詳細は後述するグラスラン10が取付けられ、ウインドガラス5の三つの端部である三辺を、グラスラン10の三辺で保持するとともに、シールするようになっている。本発明の実施形態では、ウインドフレーム6は、
図4~
図8に示すように鋼板などをプレス成形してなるインナーパネル7a、8a及びアウターパネル7b、8bを重ね合わせて構成されたものである。
【0028】
図1に示すように、ウインドフレーム6は、上下方向に延びるフレーム前側縦辺部9及びフレーム後側縦辺部8と、フレーム前側縦辺部9の上端とフレーム後側縦辺部8の上端とを接続するフレーム上辺部7とで構成されている。また、フレーム後側縦辺部8にはガーニッシュ70が取付けられている。なお、本実施形態の自動車1は、ヒドンタイプのグラスラン10を採用しているため、
図5~
図8に示すように、フレーム上辺部7の車外側はグラスラン10によって隠れている。フレーム上辺部7にはグラスラン10の上辺押出部20が組付けられており、また、
図1及び
図2に示すように、フレーム上辺部7の後端部から下方に延びるフレーム後側縦辺部8にはグラスラン10の上辺押出部20の後端部から下方に延びる後側縦辺押出部30が組付けられている。また、上辺押出部20と後側縦辺押出部30との間のコーナー部には後側型成形部40が形成されており、同様にウインドフレーム6に組付けられている。
【0029】
フレーム上辺部7の前端部付近から下方に延びるフレーム前側縦辺部9にはグラスラン10の上辺押出部20の前端部付近から下方に延びる前側縦辺押出部50が組付けられている。また、上辺押出部20と前側縦辺押出部50との間のコーナー部には前側型成形部60が形成されており、同様にウインドフレーム6に組付けられている。
【0030】
以下に、本実施形態に係るグラスランの構成について
図3~
図8を参照しながら詳細に説明する。
図3はグラスランのコーナー部の拡大図であり、
図4~
図8は、それぞれ
図3のIV-IV、V-V及びVI-VI線の断面を示す断面図である。
【0031】
グラスラン10の上辺押出部20は、弾性材と硬質樹脂材からなっている。弾性材としては、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)などの熱可塑性エラストマー(TPE)からなり、硬質樹脂材としては、タルク入りPP(ポリプロピレン)や、ガラス繊維入りPP(ポリプロピレン)等が使用され、押出成形などによって成形される。また、後側縦辺押出部30は、全体が上記弾性材と同様の材料で形成され、また、コーナー部分である後側型成形部40は、例えば上記と同様の材料で射出成形などの金型成形で成形され(図示省略)、非発泡材で構成されることが好ましいが、発泡材で構成してもよい。グラスラン10は、予め上辺押出部20の端部及び後側縦辺押出部30の端部を図示省略する金型にセットし、樹脂やゴムなどの弾性材を注入又は射出することで、後側型成形部40の形状を形成すると同時に、金型内で上辺押出部20及び後側縦辺押出部30と後側型成形部40とが接合されることで完成される。
【0032】
(グラスランの後側型成形部40の構成)
グラスランの後側型成形部40は、フレーム上辺部7の後端部手前の部位からフレーム後側縦辺部8の上端部手前の部位にまたがって取付けられている。また、後側型成形部40は、上辺押出部20の後端部と後側縦辺押出部30の上端部とを接続して一体化している。
【0033】
図3に示すように、後に説明する押出成形インナーリップ27及び押出成形車内側壁25と後側型成形部40との境界を境界線K1と定義する。リップ部22、後に説明する押出成形接続壁21c及び押出成形車外側壁24と後側型成形部40との境界を境界線K2と定義する。境界線K1及びK2と後側型成形部40との境界を境界線K3と定義する。後側縦辺押出部30と後側型成形部40との境界を境界線K4と定義する。
【0034】
(グラスランの後側縦辺押出部30の構成)
図4に示すように、グラスランの後側縦辺押出部30は、フレーム後側縦辺部8に取付けられている。また、より詳細には、後側縦辺押出部30はフレーム後側縦辺部8に取付けられたガーニッシュ70とフレーム後側縦辺部8との両方の部材に対して取付けられている。フレーム後側縦辺部8は、縦辺インナーパネル8aと縦辺アウターパネル8bの二枚の鋼板を重ね合わせたものになっている。二枚の鋼板を重ね合わせた部分の後側の部分は、後側に向けて突出する縦辺フランジ8cとなっている。二枚の鋼板を重ね合わせた部分の前側の部分は、前側に向けて突出する縦辺ヘミング8dとなっている。また、縦辺アウターパネル8bは中間の部分が最も車外側に位置する縦辺平板8eになっており、縦辺フランジ8cは縦辺平板8eよりわずかに車内側に配置してある。一方、縦辺ヘミング8dは縦辺平板8eより大きく車内側に配置してあり、縦辺平板8eの前端部と縦辺フランジ8cの後端部は、車内側に向かうに従って前側に傾斜する縦辺傾斜板8fとなっている。
【0035】
ガーニッシュ70は、縦辺アウターパネル8bの縦辺平板8eに対して略平行に配置される平板71を有している。平板71後端部の車内側面には、車内側に突出し、その突出端部から前側に屈曲してL字形状をなすL字突部72を有しており、L字突部72は縦辺フランジ8cに係止される。平板71前端部手前の車内側面には、車内側に突出する突出板73と、突出板73の車内側端部から屈曲して縦辺傾斜板8fと略平行に延びる傾斜板74とが設けられている。傾斜板74には、上下方向に間隔をあけて締結孔75が設けられており、ビスVにより、ガーニッシュ70が縦辺アウターパネル8bの縦辺傾斜板8fに締結固定されるようになっている。上述の通り、ガーニッシュ70がフレーム後側縦辺部8に締結固定されることにより、ガーニッシュ70の平板71の突出板73よりも前側の部分である前側部71aと、突出板73と、傾斜板74と、フレーム後側縦辺部8の縦辺ヘミング8dとの四つの辺により、グラスラン10の後側縦辺押出部30を取付けるための取付溝が構成されている。
【0036】
グラスラン10の後側縦辺押出部30は、ガーニッシュ70の前側部71aの車内側に配置されて前側に延びる縦辺押出成形車外側壁31と、ガーニッシュ70の傾斜板74の車外側に配置され、前側に延びる縦辺押出成形車内側壁32と、ガーニッシュ70の突出板73の前側に配置されて縦辺押出成形車外側壁31の後端部と縦辺押出成形車内側壁32の後端部とを接続する縦辺押出成形接続壁33とを有している。縦辺押出成形車外側壁31、縦辺押出成形車内側壁32及び縦辺押出成形接続壁33により構成される略コ字部が、ウインドガラス後端部H3を収容可能な構造になっている。
【0037】
また、後側縦辺押出部30は、縦辺押出成形車外側壁31の前端部からウインドガラス中央側に向かって延びる縦辺押出成形アウターリップ34と、縦辺押出成形車内側壁32の前端部手前の車外側面からウインドガラス後端部H3に向かって延びる縦辺押出成形インナーリップ35とを有している。また、ウインドガラス5閉時には、縦辺押出成形アウターリップ34はウインドガラス5の車外側面に弾接し、縦辺押出成形インナーリップ35はウインドガラス5の車内側面に弾接し、それぞれ、ウインドガラス5をシールするようになっている。
【0038】
後側縦辺押出部30は、縦辺押出成形車内側壁32から車内側へ屈曲してウインドガラス後端部H3側に向かって延びる縦辺押出成形モールリップ36を有している。縦辺押出成形モールリップ36と、縦辺押出成形車内側壁32とにより構成される車内側の略コ字状取付部が、フレーム後側縦辺部8の縦辺ヘミング8dに対して前側から係止して取付けられるとともに、縦辺ヘミング8dを覆い隠している。
【0039】
(グラスランの上辺押出部20の構成)
図5において、B1は車体Bを構成するアウターパネル外面、B2はドア開口上辺部(上辺部段部)を示す。
図5に示すように、グラスランの上辺押出部20は、フレーム上辺部7に取付けられている。フレーム上辺部7は、上辺インナーパネル7aと上辺アウターパネル7bの二枚の鋼板を重ね合わせたものになっている。二枚の鋼板を重ね合わせた部分の車両上側の部分は、車外側に向けて突出する上辺フランジ7cとなっている。二枚の鋼板を重ね合わせた部分の車両下側の部分は、下側に向けて突出する上辺ヘミング7dとなっている。
【0040】
上辺押出部20は、フレーム上辺部7の上辺フランジ7cに取り付けられるための略コ字状の取付部21を有している。取付部21は、押出成形上壁21aと、押出成形下壁21bと、押出成形上壁21aの車外側端部と押出成形下壁21bの車外側端部とを接続する押出成形接続壁21cとにより形成されている。取付部21が、フレーム上辺部7の上辺フランジ7cに対して車外側から取付けられるとともに、上辺フランジ7cを覆い隠している。ここで、取付部21を構成する材料としては、硬質樹脂材料であれば特に限定はされないが、補強材を配合した樹脂材料、例えば、タルク入りPP(ポリプロピレン)、ガラス繊維入りPP(ポリプロピレン)などを用いることができる。
【0041】
押出成形上壁21aは、
図5及び
図6に示すように、押出成形下壁21bに対向する面と反対側の上面21a1から上側に延びるリップ部22が形成されており、フロントドア2閉時には、リップ部22は、ドア開口上辺部B2に弾接してフロントドア2と車体Bとの間をシールするようになっている。また、押出成形上壁21aの上面21a1には、押出成形接続壁21c側(車外側)にのみ軟質部23が設けられている。なお、
図5に対して、
図8に示すように、リップ部22は押出成形上壁21aの上面21a2の車外側に設けられてもよく、その場合は、軟質部23は取付部21の開口側(車内側)にのみ設けられてもよい。また、軟質部23は、キズによる外観悪化防止の観点からフロントドア2閉時に外観上目視され易い箇所に配置されることが好ましく、リップ部22よりも押出成形接続壁21c側(車外側)にのみ形成されていることが好ましい。なお、軟質部23は取付部21の開口側(車内側)又は押出成形接続壁21c側(車外側)のいずれかの上面21a1、21a2上に少なくとも一部形成されていればよく、例えば
図5及び
図8に示すように押出成形上壁21aの端部から形成されていなくてもよい。ここで、軟質部23を構成する材料としては、取付部21よりも軟質な材料であれば特に限定はされないが、例えば、TPOなどの熱可塑性エラストマー(TPE)などを用いることができる。
【0042】
また、上辺押出部20は、押出成形接続壁21cの車外側端部からウインドガラス中央C側に延びる押出成形車外側壁24と、押出成形下壁21bの車内側端部からウインドガラス中央C側に延びる押出成形車内側壁25とを有している。押出成形車外側壁24、押出成形下壁21b及び押出成形車内側壁25で構成される中間位置の略コ字部が、ウインドガラス上端部H2を収容可能な構造になっている。
【0043】
さらに、上辺押出部20は、押出成形車外側壁24の下端部からウインドガラス上端部H2側に向かって延びる押出成形アウターリップ26と、押出成形車内側壁25からウインドガラス上端部H2側に向かって延びる押出成形インナーリップ27と、壁21bの車内側端部付近から車外側に向かって延びる押出成形下壁リップ28とを有している。また、ウインドガラス5閉時には、押出成形アウターリップ26はウインドガラス5の車外側面に弾接し、押出成形インナーリップ27はウインドガラス5の車内側面に弾接し、押出成形下壁リップ28はウインドガラス上端部H2に弾接し、それぞれ、ウインドガラス5をシールするようになっている。
【0044】
また、上辺押出部20は、押出成形車内側壁25の下端部から車内側へ屈曲してウインドガラス上端部H2側に向かって延びる押出成形モールリップ29を有している。押出成形モールリップ29と、押出成形車内側壁25とで構成される略コ字状係止部が、フレーム上辺部7の上辺ヘミング7dに対して下側から係止して取付けられるとともに、上辺ヘミング7dを覆い隠している。
【0045】
最後に、グラスラン10の上辺押出部20における取付部21及び略コ字状係止部が、それぞれ上辺フランジ7c及び上辺へミング7dに取付られることにより、これらの間に存在する押出成形車外側壁25によって、フレーム上辺部7の上辺フランジ7cと上辺ヘミング7dとの間の車外側部分が覆い隠される。上述のようにすることで、フレーム上辺部7の車外側部分はグラスラン10によって隠される。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る上辺押出部20によると、上述の通り、取付部21の上面21a1、21a2には、取付部21の開口側又は押出成形接続壁21c側にのみ軟質部23が設けられていることで、後側型成形部40の金型成形時に、軟質部23が取付部21と金型との間の緩衝材として機能することができる。これによって、取付部21の上面21a1、21a2には金型に起因するキズが付き難くなり、外観の悪化を防止することができる。また、このような軟質部23を設けることにより、取付部21への軟質部23の設定領域を最小限にすることができるので、冷却固化時に、取付部21の口開きを抑制することもできる。
【0047】
本実施形態において、軟質部23は、
図5及び6に示すように膜形状とする以外に、
図7に示すように突起状であることが好ましい。このようにすると、後側型成形部40の金型成形時に、軟質部23が取付部21の上面21a1と金型との間の緩衝材として機能しつつ、取付部21における軟質部23の設定領域を最小限にすることができるので、冷却固化時に取付部21の口開きを効果的に抑制することもできる。本実施形態において、軟質部23が膜形状の場合、膜厚は0.1mm以上0.3mm以下であることが好ましい。膜厚が0.1mm未満であると、型成形時に金型と接触した際にキスがつきやすく、膜厚が0.3mmを超えると、押出断面を押出後の冷却固化時に、取付部が口開きしやすくなる。突起状の場合、高さは0.5mm以下であることが好ましい。なお、
図7では、取付部21の上面21a1に2つの突起状の軟質部23が設けられているが、その数に特に制限はない。
【0048】
本実施形態では、
図5~8に示すように取付部21の上面21a1、21a2において、リップ部22の基端と軟質部23との間には間隙Sが設けられていることが好ましい。このようにすると、取付部21における軟質部23の設定領域を最小限にすることができるので、冷却固化時に取付部21の口開きを効果的に抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態において、押出成形上壁21aは、
図6に示すように取付部21がフレーム上辺部7の上辺フランジ7cに取付けられた状態において、ウインドガラス5の厚み方向におけるセンターラインCLの垂直方向に対して、押出成形接続壁21cに向かうに従って上側に傾斜するように形成されていることが好ましい。このようにすると、取付部21とドア開口上辺部B2との面間が車内側に向かうに従って広くなるため、軟質部23が車体Bとグラスラン10との隙間を狭めることなく、取付部21への金型との接触によるキズを低減することができる。
【0050】
本実施形態では、フロントドア2におけるグラスラン10を例として説明したが、当然にリヤドア80などの他のグラスラン10においても本発明を採用することは可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 自動車
2 フロントドア
3 フロントドア本体
4 ウインド開口
5 ウインドガラス
6 ウインドフレーム
7 フレーム上辺部
8 フレーム後側縦辺部
9 フレーム前側縦辺部
10 グラスラン
20 上辺押出部
21 取付部
21a 押出成形上壁
21b 押出成形下壁
21c 押出成形接続壁
22 リップ部
23 軟質部
30 後側縦辺押出部
40 後側型成形部
50 前側縦辺押出部
60 前側型成形部
70 ガーニッシュ
80 リヤドア
H1 ウインドガラス前端部
H2 ウインドガラス上端部
H3 ウインドガラス後端部
C ウインドガラス中央
CL センターライン
S 間隙