(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115706
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220802BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012433
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀一
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770AA21
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA06X
5H770JA01X
5H770JA10X
5H770JA18X
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA04
5H770QA05
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA22
(57)【要約】
【課題】配線インダクタンスを低減する。
【解決手段】パワーモジュールは、少なくとも3つの上アームと3つの下アームを構成するスイッチング素子を1枚の回路基板上に搭載し、少なくともコンデンサと、GaN系スイッチング素子を含む6つのスイッチング素子と、を備える。コンデンサは回路基板の中央部に配置される。スイッチング素子は一側面側にゲートを有し、他側面側にドレインを有する矩形状である。6つのスイッチング素子のうちの3つのスイッチング素子で前記上アームを構成し、6つのスイッチング素子のうちの残りの3つのスイッチング素子で下アームを構成する。6つのスイッチング素子は、上アームを構成するスイッチング素子と下アームを構成するスイッチング素子とで、ゲートとドレインが逆向きになるように配置されると共に、上アームを構成するスイッチング素子と下アームを構成するスイッチング素子とでコンデンサを挟むように配置される。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの上アームと3つの下アームを構成するスイッチング素子を1枚の回路基板上に搭載したパワーモジュールであって、
少なくともコンデンサと、GaN系スイッチング素子を含む6つのスイッチング素子と、を備え、
前記コンデンサは前記回路基板の中央部に配置され、
前記スイッチング素子は一側面側にゲートを有し、他側面側にドレインを有する矩形状であって、
前記6つのスイッチング素子のうちの3つのスイッチング素子で前記上アームを構成し、
前記6つのスイッチング素子のうちの残りの3つのスイッチング素子で前記下アームを構成し、
前記6つのスイッチング素子は、前記上アームを構成するスイッチング素子と前記下アームを構成するスイッチング素子とで、ゲートとドレインが逆向きになるように配置されると共に、前記上アームを構成するスイッチング素子と前記下アームを構成するスイッチング素子とで前記コンデンサを挟むように配置される
パワーモジュール。
【請求項2】
前記回路基板と前記スイッチング素子は長辺と短辺を備えた長方形状であって、
前記スイッチング素子は長辺に沿ってドレイン電極とソース電極が設けられ、
前記スイッチング素子の短辺は前記回路基板の長辺と向かい合うように配置される
請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記スイッチング素子は、前記GaN系スイッチング素子のソース電極にSi系スイッチング素子のドレイン電極が接続されたカスケード型GaN-FETであって、
前記カスケード型GaN-FETは、ワイヤによって前記回路基板と接続され、
前記Si系スイッチング素子のソース電極から延びる第1のワイヤが前記回路基板と接続される箇所を第1接続部とし、
前記GaN系スイッチング素子のゲート電極から延びる第2のワイヤが前記回路基板と接続される箇所を第2接続部としたとき、
前記第1接続部は前記第2接続部よりも前記回路基板の短辺に近い
請求項2に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記上アームのGaN系スイッチング素子のドレイン電極と前記下アームのGaN系スイッチング素子のソース電極をつなぐ第3のワイヤを少なくとも2本有し、
前記コンデンサは、前記第3のワイヤに挟まれるように配置される
請求項3に記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記パワーモジュールは、3つのコンデンサを有し、
前記2本の第3のワイヤは、前記3つのコンデンサそれぞれが配置される領域を区切る
請求項4に記載のパワーモジュール。
【請求項6】
少なくとも6つのアームを構成するスイッチング素子を1枚の回路基板上に搭載したパワー基板と、
前記少なくとも6つのアームのそれぞれを駆動するドライバを備えたドライバ基板とを備え、
前記パワー基板と前記ドライバ基板とを、基板の厚み方向に離間して配置したパワーモジュールであって、
上アーム側と下アーム側に仮想的に分割し、さらに上アーム側を仮想的に分割して、それぞれの基板を4つのブロックに分けたとき、それぞれの基板の対応するブロックが基板の厚み方向に重なる
パワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、6個のダイオードをブリッジ接続した3相ブリッジインバータ回路がある(特許文献1参照)。また、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体素子を基板上に搭載し、基板上に形成された配線用の導体やボンディングワイヤなどで必要な回路が構成されたパワーモジュールが知られている。かかるパワーモジュールでは、ノイズ発生の原因となる配線インダクタンスを低減するため、パワー半導体素子の配置を最適化することが重要である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7-40790号公報
【特許文献2】特開2017-55610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコン(以下Siと呼称する)をベースとしたパワー半導体素子では、スイッチングスピードを速くしようとするとパワー半導体素子のON電圧が高くなり、定常ON状態での損失が大きくなる。このため、Siの変わりにスイッチングスピードが速くてもON電圧が高くなりづらい材料としてシリコンカーバイド(以下SiCと呼称する)やガリウムナイトライド(GaN:Gallium Nitride))を用いた新しいパワー半導体素子の開発が行われている。
【0005】
GaN-FET(GaN Field-Effect Transistor)は、従来のパワーモジュールで用いられるIGBTやパワーMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)FETなどとは異なり、3つの電極(ドレイン電極、ソース電極およびゲート電極)がすべて一方の面に設けられる。このGaN-FETの3つの電極が設けられた面をおもて面、反対側の面を裏面とすると、GaN-FETを基板に載置する際に、裏面が基板側(下側)に向けて設けられる。
【0006】
それゆえ、裏面にも電極が存在するIGBTやパワーMOSFETで最適化されたパワーモジュール内の配置をそのまま用いたとしても、パワーモジュール内の配線パターンに大電流が流れた時にノイズ発生の原因となる配線インダクタンスを十分に低減することは困難である。すなわち、GaN-FETを搭載したパワーモジュールでは、パワー基板上におけるチップ配置の最適化が十分に実施されているとはいえない。
【0007】
そこで、本開示では、パワー基板上における素子の配置を最適化して配線インダクタンスを低減することでノイズの発生を低減できる、GaNを用いたパワー半導体素子を搭載したパワーモジュールを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によるパワーモジュールは、少なくとも3つの上アームと3つの下アームを構成するスイッチング素子を1枚の回路基板上に搭載したパワーモジュールであって、少なくともコンデンサと、GaN系スイッチング素子を含む6つのスイッチング素子と、を備える。前記コンデンサは前記回路基板の中央部に配置される。前記スイッチング素子は一側面側にゲートを有し、他側面側にドレインを有する矩形状である。前記6つのスイッチング素子のうちの3つのスイッチング素子で前記上アームを構成し、前記6つのスイッチング素子のうちの残りの3つのスイッチング素子で前記下アームを構成する。前記6つのスイッチング素子は、前記上アームを構成するスイッチング素子と前記下アームを構成するスイッチング素子とで、ゲートとドレインが逆向きになるように配置されると共に、前記上アームを構成するスイッチング素子と前記下アームを構成するスイッチング素子とで前記コンデンサを挟むように配置される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、配線インダクタンスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、GaN-FETの回路例を示す図である。
【
図2】
図2は、カスケード型GaN-FETの回路例を示す図である。
【
図3】
図3は、GaN-FETのチップ例を示す図である。
【
図4】
図4は、Si-FETのチップ例を示す図である。
【
図5】
図5は、カスケード型GaN-FETの実装例を示す図である。
【
図6】
図6は、DCを入力し三相ACを出力する回路を示す図である。
【
図7】
図7は、DCを入力しその入力電流の力率を改善しつつ昇圧し、単相ACを出力する回路を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るパワーモジュールにおいて配線インダクタンスを低減するために注意すべきポイントについて説明するための図(1)である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るパワーモジュールにおいて配線インダクタンスを低減するために注意すべきポイントについて説明するための図(2)である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係るパワーモジュールにおける第1~第6スイッチング素子Q1~Q6およびコンデンサC1の最適な配置について説明するための図である。
【
図11】
図11は、カスケード型GaN-FETの代わりにGaN-FETを用いた場合の最適配置を示す図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係るパワーモジュールの構成を示す断面図および上面図を示す図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に係るパワーモジュールが最適な配置を実現していることを説明するための図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態に係るパワーモジュール内の回路ループ1-1~1-6について説明するための図である。
【
図16】
図16は、第1実施形態に係るパワーモジュール内の回路ループ2-1について説明するための図である。
【
図17】
図17は、第1実施形態に係るパワーモジュール内の回路ループ3-1、3-2、3-3について説明するための図である。
【
図18】
図18は、第1実施形態に係るパワーモジュール内の共通インピーダンスについて説明するための図である。
【
図19】
図19は、参考例におけるパワーモジュールの構成を示す上面図である。
【
図20】
図20は、参考例におけるパワーモジュール内の回路ループ1-1~1-6について説明するための図である。
【
図21】
図21は、参考例におけるパワーモジュール内の回路ループ2-1について説明するための図である。
【
図22】
図22は、参考例におけるパワーモジュール内の回路ループ3-1について説明するための図である。
【
図23】
図23は、参考例におけるパワーモジュール内の共通インピーダンスについて説明するための図である。
【
図24】
図24は、3つのコンデンサを配置した変形例1を示す図である。
【
図27】
図27は、変形例2におけるパワーモジュール内の共通インピーダンスについて説明するための図である。
【
図28】
図28は、第2実施形態に係るパワーモジュールの回路構成を示す図である。
【
図29】
図29は、第2実施形態に係るパワーモジュールの構成を示す断面図および上面図である。
【
図30】
図30は、第2実施形態に係るパワーモジュールにおいて親和性が高い回路ごとに仮想的にブロック分けした図である。
【
図31】
図31は、第2実施形態に係るパワーモジュールのパワー基板を
図30に示した手法でブロック分けした図である。
【
図32】
図32は、第2実施形態に係るパワーモジュールのドライバ基板を
図30に示した手法でブロック分けした図である。
【
図33】
図33は、第2実施形態に係るパワーモジュールのパワー基板におけるブロックとドライバ基板におけるブロックとを重ね合わせた図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するパワーモジュールの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0012】
従来、IGBTなどのパワー半導体素子をパワー基板上に搭載し、ボンディングワイヤで配線を行うことで必要な回路が構成されたパワーモジュールが知られている。かかるパワーモジュールでは、ノイズ発生の原因となる配線インダクタンスを低減するため、パワー半導体素子の配置を最適化することが重要である。
【0013】
一方で、近年開発が進むパワー半導体素子のGaN-FETは、従来のパワーモジュールで用いられるIGBTやパワーMOSFETなどとは異なり、3つの電極(ドレイン電極、ソース電極およびゲート電極)がすべておもて面に設けられる。
【0014】
それゆえ、裏面にも電極が存在するIGBTやパワーMOSFETで最適化されたパワーモジュール内の配置をそのまま用いたとしても、配線インダクタンスを十分に低減することは困難である。すなわち、GaN-FETを搭載したパワーモジュールでは、回路基板上におけるチップ配置の最適化されているとはいえない。
【0015】
なぜなら、裏面にコレクタ電極やドレイン電極が設けられる従来のパワー半導体素子では、パワー基板の回路パターンで裏面の電極に配線が形成されるのに対し、おもて面にドレイン電極が設けられるGaN-FETでは、ボンディングワイヤでドレイン電極に配線が形成されるからである。
【0016】
そこで、GaN-FETが搭載されたパワーモジュールにおいて、配線インダクタンスを低減することができる技術が期待されている。
【0017】
<スイッチング素子の構成>
本開示は、GaN-FETまたはカスケード型GaN-FETであるスイッチング素子を用いたパワーモジュールに関するものである。そこで、本開示の各実施形態の理解を容易とするために、
図1~
図5を参照しながら、各実施形態に適用可能なGaN-FETおよびカスケード型GaN-FETについて説明する。
【0018】
図1は、GaN-FETの回路例を示す図である。GaN-FETでは、ゲートに印加される電圧を制御することによって、ドレインからソースに流れる電流が制御される。
【0019】
図2は、カスケード型GaN-FETの回路例を示す図である。
図2に示すように、カスケード型GaN-FETの内部では、GaN-FETのソース端子とSi-FETのドレイン端子とが電気的に接続され、Si-FETのソース端子とGaN-FETのゲート端子とが電気的に接続される。
【0020】
そして、GaN-FETのドレイン端子がカスケード型GaN-FETのドレイン電極となり、Si-FETのソース端子がカスケード型GaN-FETのソース電極となり、Si-FETのゲート端子がカスケード型GaN-FETのゲート電極となる。
【0021】
このような回路構成のカスケード型GaN-FETでは、ノーマリーオンのGaN-FETを、ノーマリーオフのスイッチング素子として駆動させることができる。すなわち、カスケード型GaN-FETでは、ゲート電極(すなわち、Si-FETのゲート端子)にローレベルの信号を入力することにより、素子をオフ状態にすることができる。また、カスケード型GaN-FETでは、ゲート電極にハイレベルの信号を入力することにより、素子をオン状態にすることができる。
【0022】
そして、カスケード型GaN-FETは、GaN-FETの耐圧特性を利用できることから、高い耐圧特性を有する。さらに、カスケード型GaN-FETは、ゲートの駆動に低耐圧Si-FETの特性を利用できることから、GaN-FETの高速性を損なうことなく、高電圧での駆動が可能となる。
【0023】
図3は、GaN-FETの例を示す図である。このGaN-FETはパッケージのないベアチップであり、
図3は、その上面図である。GaN-FETの外形は長方形であり、長辺と短辺とを有する。GaN-FETのおもて面には、一方の長辺の近傍にドレインパッドが設けられる。このドレインパッドは一方の長辺に沿って設けられる。他方の長辺の近傍にはソースパッドが設けられる。このソースパッドは他方の長辺に沿って設けられる。また、GaN-FETのおもて面には、他方の長辺に沿ってソースパッドを挟む位置に1対のゲートパッドが設けられる。
【0024】
図4は、Si-FETの例を示す図である。このSi-FETはパッケージのないベアチップであり、
図4は、その上面図である。
図4に示すように、Si-FETは、おもて面にソースパッドおよびゲートパッドを有し、裏面にドレインパッドを有する。
【0025】
図5は、カスケード型GaN-FETの実装例を示す図である。
図5の(a)は樹脂封止前を示し、
図5の(b)は樹脂封止後を示す。
図5の(a)に示すように、カスケード型GaN-FETは、長方形状のGaN-FETと、かかるGaN-FETより小さい長方形状のSi-FETとが積層されて構成される。GaN-FETのおもて面に設けられるソースパッドと、Si-FETの裏面に設けられるドレインパッドとが、ハンダや導電性接着剤などの導電性接合材で電気的および機械的に接続される。これにより、GaN-FETのドレインがカスケード型GaN-FETのドレインと対応し、Si-FETのソースがカスケード型GaN-FETのソースと対応し、Si-FETのゲートがカスケード型GaN-FETのゲートと対応する。
【0026】
また、カスケード型GaN-FETのドレインパッドが沿う長辺に沿ってGaN-FETの一方のドレインのリードフレームが設けられ、GaN-FETの他方の長辺に沿ってソースのリードフレームが設けられ、カスケード型GaN-FETのゲートパッドがある側のGaN-FETの短辺に沿ってゲートのリードフレームが設けられる。ドレインパッドとドレインのリードフレームとはAL(Aluminum)ワイヤなどのボンディングワイヤで接続され、ソースパッドとソースのリードフレームとはALワイヤなどのボンディングワイヤで接続され、ゲートパッドとゲートのリードフレームとはALワイヤなどで接続される。また、GaN-FETの2つのゲートパッドとソースのリードフレームとはALワイヤなどで接続される。
【0027】
また、
図5の(b)に示すように、樹脂封止後は、ドレインパッド、ソースパッド、ゲートパッドは樹脂で封止され、ドレイン、ソースおよびゲートのリードフレームの一部だけが外部と接続される。
【0028】
なお、カスケード型GaN-FETには、GaN-FETチップとSi-FETチップを重ねる(Chip on Chip)以外に、2つのチップを並列に並べてワイヤ、パターン、リードフレームなどで接続する例もある。
【0029】
<パワーモジュールの回路構成(第1実施形態)>
つづいて、第1実施形態に係るパワーモジュールの回路構成について、
図6~
図12を参照しながら説明する。
図6および
図7は、第1実施形態に係るパワーモジュールを用いて実現したい回路例を示す図である。
図6は、DCを入力し三相ACを出力する回路を示す図である。
図6では、出力先の用途の例として、三相モータが示されている。以下、
図6の回路をモータ制御回路ということがある。
図7は、DCを入力しその入力電流の力率を改善しつつ昇圧し、単相ACを出力する回路を示す。以下、
図7の回路を昇圧型単相インバータ出力回路ということがある。
【0030】
図6および
図7に示すように、回路ブロックAは、第1スイッチング素子Q1~第6スイッチング素子Q6の6つのスイッチング素子を備える。回路ブロックBは、回路ブロックAと、Q1-GaN-FETドライブ回路~Q6-GaN-FETドライブ回路の6つのドライブ回路とを備える。回路ブロックAおよび回路ブロックBは、さまざまな回路構成を有する電力変換装置に適用することができる。電力変換装置の一例としてインバータがある。第1実施形態に係るパワーモジュール1は、回路ブロックAにコンデンサC1を加えた回路ブロックに対応する。
【0031】
第1~第6スイッチング素子Q1~Q6は、すべてカスケード型GaN-FETであるスイッチング素子Qで構成され、略等しい耐圧特性およびスイッチング特性を有する。なお、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6は、すべてGaN-FETであってもよい。
【0032】
第1スイッチング素子Q1のドレイン端子は、正極端子Pに接続され、第1スイッチング素子Q1のソース端子は、第2スイッチング素子Q2のドレイン端子に接続される。また、第1スイッチング素子Q1のゲート端子は、ゲート端子Q1-Gに接続され、第1スイッチング素子Q1のソース端子は、ソース端子Q1-Sに接続される。
【0033】
第2スイッチング素子Q2のドレイン端子は、第1スイッチング素子Q1のソース端子に接続され、第2スイッチング素子Q2のソース端子は、負極端子Nに接続される。また、第2スイッチング素子Q2のゲート端子は、ゲート端子Q2-Gに接続され、第2スイッチング素子Q2のソース端子は、ソース端子Q2-Sに接続される。
【0034】
第3スイッチング素子Q3のドレイン端子は、正極端子Pに接続され、第3スイッチング素子Q3のソース端子は、第4スイッチング素子Q4のドレイン端子に接続される。また、第3スイッチング素子Q3のゲート端子は、ゲート端子Q3-Gに接続され、第3スイッチング素子Q3のソース端子は、ソース端子Q3-Sに接続される。なお、
図6および
図7では、ゲート端子Q3-Gおよびソース端子Q3-Sは省略されている。
【0035】
第4スイッチング素子Q4のドレイン端子は、第3スイッチング素子Q3のソース端子に接続され、第4スイッチング素子Q4のソース端子は、負極端子Nに接続される。また、第4スイッチング素子Q4のゲート端子は、ゲート端子Q4-Gに接続され、第4スイッチング素子Q4のソース端子は、ソース端子Q4-Sに接続される。なお、
図6および
図7では、ゲート端子Q4-Gおよびソース端子Q4-Sは省略されている。
【0036】
第5スイッチング素子Q5のドレイン端子は、正極端子Pに接続され、第5スイッチング素子Q5のソース端子は、第6スイッチング素子Q6のドレイン端子に接続される。また、第5スイッチング素子Q5のゲート端子は、ゲート端子Q5-Gに接続され、第5スイッチング素子Q5のソース端子は、ソース端子Q5-Sに接続される。なお、
図6および
図7では、ゲート端子Q5-Gおよびソース端子Q5-Sは省略されている。
【0037】
第6スイッチング素子Q6のドレイン端子は、第5スイッチング素子Q5のソース端子に接続され、第6スイッチング素子Q6のソース端子は、負極端子Nに接続される。また、第6スイッチング素子Q6のゲート端子は、ゲート端子Q6-Gに接続され、第6スイッチング素子Q6のソース端子は、ソース端子Q6-Sに接続される。なお、
図6および
図7では、ゲート端子Q6-Gおよびソース端子Q6-Sは省略されている。
【0038】
コンデンサC1は、正極端子Pと負極端子Nとの間に接続されるノイズ除去用のコンデンサである。また、回路ブロックAは、出力端子OUT1、OUT2、OUT3を有する。
【0039】
図6のパワーモジュール1の出力端子OUT1は、第1スイッチング素子Q1のソース端子と第2スイッチング素子Q2のドレイン端子との間に接続される。出力端子OUT2は、第3スイッチング素子Q3のソース端子と第4スイッチング素子Q4のドレイン端子との間に接続される。出力端子OUT3は、第5スイッチング素子Q5のソース端子と第6スイッチング素子Q6のドレイン端子との間に接続される。
【0040】
Q1-GaN-FETドライブ回路は、第1スイッチング素子Q1を駆動し、Q2-GaN-FETドライブ回路は、第2スイッチング素子Q2を駆動する。なお、
図6および
図7では省略されているが、Q3-GaN-FETドライブ回路は、第3スイッチング素子Q3を駆動し、Q4-GaN-FETドライブ回路は、第4スイッチング素子Q4を駆動し、Q5-GaN-FETドライブ回路は、第5スイッチング素子Q5を駆動し、Q6-GaN-FETドライブ回路は、第6スイッチング素子Q6を駆動する。全体制御ブロックは、Q1-GaN-FETドライブ回路~Q6-GaN-FETドライブ回路を制御する。
【0041】
そして、
図6や
図7に示したような電力変換装置において、スイッチング素子のオンオフにより断続する大電流により発生するノイズを低減させて、さらに効率の高い電力変換を実現するためには、回路ブロックA内の配線インダクタンスを低減することが重要である。そこで、回路ブロックA内の配線インダクタンスを低減するために注意すべきポイントについて、
図8および
図9を参照しながら説明する。
【0042】
図8は、第1実施形態に係るパワーモジュール1において配線インダクタンスを低減するために注意すべきポイントについて説明するための図(1)である。
図8に示すように、パワーモジュール1の内部には、矢印で示される電流の流れによる様々な経路の回路ループが形成される。
【0043】
たとえば、パワーモジュール1内には、第1スイッチング素子Q1を駆動するQ1-GaN-FETドライブ回路から出力された電流が、第1スイッチング素子Q1のゲート端子、第1スイッチング素子Q1のソース端子、Q1-GaN-FETドライブ回路の順で戻る回路ループ1-1が形成される。
【0044】
また、パワーモジュール1内には、第2スイッチング素子Q2を駆動するQ2-GaN-FETドライブ回路から出力された電流が、第2スイッチング素子Q2のゲート端子、第2スイッチング素子Q2のソース端子、Q2-GaN-FETドライブ回路の順で戻る回路ループ1-2が形成される。
【0045】
同様に、パワーモジュール1内には、第3スイッチング素子Q3に関して回路ループ1-3が形成され、第4スイッチング素子Q4に関して回路ループ1-4が形成され、第5スイッチング素子Q5に関して回路ループ1-5が形成され、第6スイッチング素子Q6に関して回路ループ1-6が形成される。
【0046】
また、パワーモジュール1内には、正極端子Pから、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、負極端子N、第4スイッチング素子Q4、第3スイッチング素子Q3、正極端子Pに順に流れる電流の回路ループ2-1が形成される。
【0047】
また、パワーモジュール1内には、正極端子Pから、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、負極端子N、第6スイッチング素子Q6、第5スイッチング素子Q5、正極端子Pに順に流れる電流の回路ループ2-2が形成される。
【0048】
また、パワーモジュール1内には、コンデンサC1から、正極端子P、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、負極端子N、コンデンサC1に順に流れる電流の回路ループ3-1が形成される。
【0049】
また、パワーモジュール1内には、コンデンサC1から、正極端子P、第3スイッチング素子Q3、第4スイッチング素子Q4、負極端子N、コンデンサC1に順に流れる電流の回路ループ3-2が形成される。
【0050】
また、パワーモジュール1内には、コンデンサC1から、正極端子P、第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、負極端子N、コンデンサC1に順に流れる電流の回路ループ3-3が形成される。
【0051】
そして、第1実施形態に係るパワーモジュール1は、上述の回路ループ1-1~1-6、回路ループ2-1および2-2、回路ループ3-1~3-3の長さをすべて極力短くすると共に、かかる回路ループに内包される面積(ループ面積)をすべて極力小さくすることにより、回路ループから発生されるノイズ(以下、発生ノイズともいう)を低減(配線インダクタンスを低減)することができる。
【0052】
図9は、第1実施形態に係るパワーモジュール1において配線インダクタンスを低減するために注意すべきポイントについて説明するための図(2)である。
図9に示すように、パワーモジュール1内の第1スイッチング素子Q1には、ドレイン端子からソース端子に大電流を流す大電流ラインILが形成される。
【0053】
また、パワーモジュール1内の第1スイッチング素子Q1には、ゲート端子からソース端子に制御信号を流す小電流ラインISが形成される。
【0054】
そして、第1実施形態に係るパワーモジュール1では、上述の大電流ラインILと小電流ラインISのそれぞれを流れる電流が共通して流れる部位の共通インピーダンスCIを極力小さくすることにより、配線インダクタンスを低減することができる。
【0055】
なお、
図9の例では第1スイッチング素子Q1について示したが、第2スイッチング素子Q2~第6スイッチング素子Q6においても同様に、この共通インピーダンスCIを極力小さくすることで配線インダクタンスを低減することができる。
【0056】
図8および
図9に示す回路は
図6および
図7の回路に共通して含まれる。すなわち、
図8および
図9を用いて説明したポイントは、
図6および
図7の回路に共通して有効であり、
図6および
図7に示す回路ブロックAおよび回路ブロックBを有する多種多様な回路にも有効である。なお、
図8および
図9では、スイッチング素子としてカスケード型GaN-FETを用いたが、すべてのスイッチング素子はGaN-FETであってもよい。
【0057】
次に、ここまで説明した注意すべきポイントに基づいて、パワーモジュール1内の配線インダクタンスを低減する具体的な手段について、
図10および
図11を参照しながら説明する。
【0058】
図10は、第1実施形態に係るパワーモジュール1における第1~第6スイッチング素子Q1~Q6およびコンデンサC1の最適な配置について説明するための図である。
図10の(a)は回路を示し、
図10の(b)は最適配置を示す。本開示では、
図10の(a)に示すように、パワーモジュール1の内部に形成される配線をいくつかのまとまり(以下、配線部ともいう)として仮想的に分割する。
【0059】
具体的には、コンデンサC1から正極端子Pを介して第1スイッチング素子Q1のドレイン端子、第3スイッチング素子Q3のドレイン端子または第5スイッチング素子Q5のドレイン端子に至る配線部を、ネットワークP-NETとする。また、ゲート端子Q1Gから第1スイッチング素子Q1のゲート端子、当該ゲート端子からSi-FETの内部を経由して第1スイッチング素子Q1のソース端子、当該ソース端子を介してソース端子Q1Sに至る配線部をネットワークQ1G-NETとする。
【0060】
また、出力端子OUT1から第1スイッチング素子Q1のソース端子および第2スイッチング素子Q2のドレイン端子に至る配線部をネットワークOUT1-NETとする。また、ゲート端子Q2Gから第2スイッチング素子Q2のゲート端子、当該ゲート端子からSi-FETの内部を経由して第2スイッチング素子Q2のソース端子、当該ソース端子を介してソース端子Q2Sに至る配線部をネットワークQ2G-NETとする。
【0061】
また、ゲート端子Q3Gから第3スイッチング素子Q3のゲート端子、当該ゲート端子からSi-FETの内部を経由して第3スイッチング素子Q3のソース端子、当該ソース端子を介してソース端子Q3Sに至る配線部をネットワークQ3G-NETとする。また、出力端子OUT2から第3スイッチング素子Q3のソース端子および第4スイッチング素子Q4のドレイン端子に至る配線部をネットワークOUT2-NETとする。
【0062】
また、ゲート端子Q4Gから第4スイッチング素子Q4のゲート端子、当該ゲート端子からSi-FETの内部を経由して第4スイッチング素子Q4のソース端子、当該ソース端子を介してソース端子Q4Sに至る配線部をネットワークQ4G-NETとする。また、ゲート端子Q5Gから第5スイッチング素子Q5のゲート端子、当該ゲート端子からSi-FETの内部を経由して第5スイッチング素子Q5のソース端子、当該ソース端子を介してソース端子Q5Sに至る配線部をネットワークQ5G-NETとする。また、出力端子OUT3から第5スイッチング素子Q5のソース端子および第6スイッチング素子Q6のドレイン端子に至る配線部をネットワークOUT3-NETとする。
【0063】
また、ゲート端子Q6Gから第6スイッチング素子Q6のゲート端子、当該ゲート端子からSi-FETの内部を経由して第6スイッチング素子Q6のソース端子、当該ソース端子を介してソース端子Q6Sに至る配線部をネットワークQ6G-NETとする。また、コンデンサC1から負極端子Nを介して第2スイッチング素子Q2のソース端子、第4スイッチング素子Q4のソース端子または第6スイッチング素子Q6のソース端子に至る配線部を、ネットワークN-NETとする。
【0064】
図10の(b)に示すP-NET AREA、Q-NET AREA、OUT1-NET AREA、OUT2-NET AREA、OUT3-NET AREA、Q1G-NET AREA、Q2G-NET AREA、Q3G-NET AREA、Q4G-NET AREA、Q5G-NET AREA、Q6G-NET AREAのそれぞれは、
図10の(a)に示すP-NET、Q-NET、OUT1-NET、OUT2-NET、OUT3-NET、Q1G-NET、Q2G-NET、Q3G-NET、Q4G-NET、Q5G-NET、Q6G-NETのそれぞれに対応するパターニングエリアである。
【0065】
図10の(b)に示すように、第1実施形態に係るパワーモジュール1では、上アームのスイッチング素子(Q1、Q3、Q5)はSi-FETのゲートが、コンデンサC1が配置場所されるパワーモジュール1の中央部4よりも上部にくるように配置される。そして、それぞれのGaN-FETのドレイン側にP-NETが配置され、それぞれのGaN-FETのソース側にOUT1-NET~OUT3-NETが配置される。また、下アームのスイッチング素子(Q2、Q4、Q6)はSi-FETのゲートが中央部4よりも下部にくるように配置される。そして、それぞれのGaN-FETのソース側にN-NETが配置され、それぞれのGaN-FETのドレイン側にOUT1-NET~OUT3-NETが配置される。さらに、P-NETとN-NETは上アームと下アームのスイッチング素子の間を並走するように配置される。そして、コンデンサC1は、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4との間に、つまり、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6が配置されるパワー基板の中央部4に配置される。
【0066】
OUT2-NET~OUT3-NETとP-NET、N-NETとが交差する箇所は、多層基板であれば別層で配線され、単相基板であればジャンパー線などで接続される。
図10の(b)では、OUT2-NET AREAおよびOUT3-NET AREAが上下で切断され、切断された箇所がワイヤボンディングで接続される。
【0067】
このように第1~第6スイッチング素子Q1~Q6およびコンデンサC1を配置することで、6つのスイッチング素子間で発生ノイズがアンバランスにならず、配線の長さを短かくできるので発生ノイズを低くできる。従って、極端に長い配線パターンによる発生ノイズの増加を抑制すると共に、大電流を流すための良好な電流経路を確保することができる。なお、本発明に関わる各実施例ではこの中央部4を基準として各スイッチング素子とコンデンサC1を配置した例を説明している。
【0068】
また、かかる第1~第6スイッチング素子Q1~Q6の配置としては、第1スイッチング素子Q1と第3スイッチング素子Q3と第5スイッチング素子Q5とが一つの直線(仮想的な直線(不図示))の上に並ぶように配置される。第2スイッチング素子Q2と第4スイッチング素子Q4と第6スイッチング素子Q6とが一つの直線(仮想的な直線(不図示))の上に並ぶように配置される。それぞれの仮想的な直線は略平行である。また、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを結ぶ直線(不図示)と、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4とを結ぶ直線(不図示)と、第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6とを結ぶ直線(不図示)とは略平行である。
【0069】
図11は、カスケード型GaN-FETの代わりにGaN-FETを用いた場合の最適配置を示す図である。
図11では、
図10のカスケード型GaN-FETがGaN-FETに置き換えられている。
【0070】
<パワーモジュールの構成(第1実施形態)>
つづいて、
図10に示した最適な配置を適用したパワーモジュール1の構成について、
図12および
図13を参照しながら説明する。
図12は、回路ブロックAの回路例を示す図である。
図6および
図7に示した回路ブロックAと比較して、
図12では、回路ブロックAは、サーミスタが設けられる。かかるサーミスタには、2つの端子TH1、TH2が接続される。なお、サーミスタは基板の温度を検知するために設けられる。
【0071】
図13は、第1実施形態に係るパワーモジュール1の構成を示す断面図および上面図を示す図である。
図13の(a)が断面図を示し、
図13の(b)が上面図を示す。断面図が示す断面箇所を上面図に示す。なお、
図13の(b)に示す上面図の断面線から矢印方向に目視した概略図が
図13の(a)となる。13の(a)に示すように、第1実施形態に係るパワーモジュール1は、パワー基板10と、ケース11と、蓋12と、樹脂封止剤としてのシリコンゲル13とを備える。パワー基板10は、回路基板の一例である。
【0072】
パワー基板10は、たとえば、DCB(Direct Copper Bonding)基板やAMB(Active Metal Brazing)基板などの高い耐熱性および高い放熱性を有する回路基板で構成される。かかるパワー基板10のおもて面には、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6やコンデンサC1などが搭載される。
【0073】
ケース11は、枠形状を有し、パワー基板10のおもて面を囲むように設けられる。ケース11は、パワー基板10に搭載される各素子を収容する。また、ケース11には、電力変換装置の内部にパワーモジュール1を固定する際などに用いられる取り付け穴が形成される。
【0074】
ケース11は、たとえば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂などで形成される。
【0075】
蓋12は、ケース11に収容されるパワー基板10のおもて面を覆うと共に、枠形状のケース11の上部を塞ぐように設けられる。蓋12は、たとえば、ケース11と同様の樹脂で形成される。シリコンゲル13は、ケース11の内部に充填され、パワー基板10のおもて面に搭載される各素子などを封止する。パワー基板10には外部出力用PINが立設される。例えば、
図13(b)には、負極端子Nに立設した外部出力のPINを、上面から見た図(上面視図)と横から見た図(横面視図)を対応させた図が図示される。
【0076】
なお、パワー基板10とケース11との間や、ケース11と蓋12との間は、図示しない接着剤で接合される。
【0077】
図13の(b)に示すように、パワー基板10のおもて面には、コンデンサC1と、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6とが搭載される。コンデンサC1は、パワー基板10の中央部4に配置される。上アームのスイッチング素子(Q1、Q3、Q5)はSi-FETのゲートがパワー基板10の中央部4よりも上部にくるように配置される。また、下アームのスイッチング素子(Q2、Q4、Q6)はSi-FETのゲートがパワー基板10の中央部4よりも下部にくるように配置される。
【0078】
パワー基板10のおもて面には、配線部を構成する回路パターン21~43が設けられる。なお、かかる回路パターン21~43はパワー基板10に含まれる絶縁層上に互いに独立して設けられることから、回路パターン21~43同士は導通していない。
【0079】
かかる回路パターン21~43について、
図14を参照しながら説明する。
図14は、第1実施形態に係るパワーモジュール1が最適な配置を実現していることを説明するための図である。
図14の(a)は、
図13に示したパワー基板10のおもて面を示す図であり、
図14の(b)は、回路パターンと
図10に示した部位との対応を示す図である。
【0080】
図14の(a)に示すように、パワー基板10のサイズは、37.50mm×28.50mmである。
【0081】
第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2を基準にした場合に、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2を挟んでコンデンサC1が配置される領域とは反対側にある領域には、回路パターン21が形成される。かかる回路パターン21の大部分は、ネットワークOUT1-NETに対応する。
【0082】
第1スイッチング素子Q1のドレイン端子側の領域、第3スイッチング素子Q3のドレイン端子側の領域、第5スイッチング素子Q5のドレイン端子側の領域、および、これらの3つの領域を下アーム側で接続する領域には、回路パターン22が形成される。かかる回路パターン22は、ネットワークP-NETに対応する。
【0083】
第2スイッチング素子Q2のソース端子側の領域、第4スイッチング素子Q4のソース端子側の領域、第6スイッチング素子Q6のソース端子側の領域、および、これらの3つの領域を上アーム側で接続する領域には、回路パターン23が形成される。かかる回路パターン23の大部分は、ネットワークN-NETに対応する。
【0084】
第1スイッチング素子Q1を基準にした場合に、第1スイッチング素子Q1を挟んで第2スイッチング素子Q2が配置される領域とは反対側にある領域には、回路パターン24、25が配置される。かかる回路パターン24、25は、ネットワークQ1G-NETの一部に対応する。
【0085】
第2スイッチング素子Q2を基準にした場合に、第2スイッチング素子Q2を挟んで第2スイッチング素子Q1が配置される領域とは反対側にある領域には、回路パターン26、27が配置される。かかる回路パターン26、27は、ネットワークQ2G-NETの一部に対応する。
【0086】
第3スイッチング素子Q3を基準にした場合に、第3スイッチング素子Q3を挟んで第4スイッチング素子Q4が配置される領域とは反対側にある領域には、回路パターン28、29、30が配置される。回路パターン28は、第3スイッチング素子Q3のソース側の領域まで延びる。回路パターン28は、ネットワークOUT2-NETの一部に対応する。また、回路パターン29、30は、ネットワークQ3G-NETの一部に対応する。
【0087】
第4スイッチング素子Q4のドレイン側の領域には、回路パターン31が配置される。また、第4スイッチング素子Q4を基準にした場合に、第4スイッチング素子Q4を挟んで第3スイッチング素子Q3が配置される領域とは反対側にある領域には、回路パターン32、33が配置される。回路パターン31は、ネットワークOUT2-NETの一部に対応する。また、回路パターン32、33は、ネットワークQ4G-NETの一部に対応する。
【0088】
第5スイッチング素子Q5を基準にした場合に、第5スイッチング素子Q5を挟んで第6スイッチング素子Q6が配置される領域とは反対側にある領域には、回路パターン34、35、36が配置される。回路パターン34は、第5スイッチング素子Q5のソース側の領域を含む。回路パターン34は、ネットワークOUT3-NETの一部に対応する。また、回路パターン35、36は、ネットワークQ5G-NETの一部に対応する。
【0089】
第6スイッチング素子Q6のドレイン側の領域には、回路パターン37が配置される。また、第6スイッチング素子Q6を基準にした場合に、第6スイッチング素子Q6を挟んで第5スイッチング素子Q5が配置される領域とは反対側にある領域には、回路パターン38、39が配置される。回路パターン37は、ネットワークOUT3-NETの一部に対応する。また、回路パターン38、39は、ネットワークQ6G-NETの一部に対応する。
【0090】
回路パターン21の第2スイッチング素子Q2に隣接する部位を基準にした場合に、第2スイッチング素子Q2を挟んで第2スイッチング素子Q2に隣接する部位とは反対側にある領域には、回路パターン40、41が配置される。第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とに挟まれる領域には、回路パターン42、43が配置される。
【0091】
ここまで説明したように、第1実施形態に係るパワーモジュール1では、コンデンサC1、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6および各配線部について、
図11の(b)に示した最適な配置が実現されている。
【0092】
かかる回路パターン21~43に関する具体的な配線の構成は以下の通りである。回路パターン21には、第1スイッチング素子Q1のソース電極(ソースパッド)と、第1スイッチング素子Q1のGaN-FETのゲート電極(ゲートパッド)と、第2スイッチング素子Q2のドレイン電極(ドレインパッド)とがボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。また、回路パターン21における回路パターン24に隣接する部位には、ソース端子Q1-Sが設けられ、かかるソース端子Q1-Sを基準にした場合に、ソース端子Q1-Sを挟んで回路パターン24が配置される領域とは反対側にある回路パターン21には出力端子OUT1が設けられる。
【0093】
回路パターン22には、第1スイッチング素子Q1のドレイン電極と、第3スイッチング素子Q3のドレイン電極と、第5スイッチング素子Q5のドレイン電極とが、ボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。また、回路パターン22において第5スイッチング素子Q5の近傍には、正極端子Pが設けられる。
【0094】
回路パターン22と回路パターン23との間にはコンデンサC1が設けられ、かかるコンデンサC1を介して回路パターン22と回路パターン23とが電気的に接続される。
【0095】
回路パターン23には、第2スイッチング素子Q2のソース電極と、第2スイッチング素子Q2のGaN-FETのゲート電極と、第4スイッチング素子Q4のソース電極と、第4スイッチング素子Q4のGaN-FETのゲート電極と、第6スイッチング素子Q6のソース電極と、第6スイッチング素子Q6のGaN-FETのゲート電極とがボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。
【0096】
また、回路パターン23において第6スイッチング素子Q6の近傍には、負極端子Nが設けられる。また、回路パターン23の回路パターン26に近接する部位にはソース端子Q2-Sが設けられ、回路パターン23の回路パターン32に近接する部位にはソース端子Q4-Sが設けられ、回路パターン23の回路パターン38に近接する部位にはソース端子Q6-Sが設けられる。
【0097】
回路パターン24には、ゲート端子Q1-Gが設けられる。なお、回路パターン24と回路パターン25との間には抵抗R1-1が設けられ、かかる抵抗R1-1を介して回路パターン24と回路パターン25が電気的に接続される。
【0098】
回路パターン25には、第1スイッチング素子Q1のゲート電極が、ボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。なお、回路パターン25と回路パターン21との間には抵抗R1-2が設けられ、かかる抵抗R1-2を介して回路パターン25と回路パターン21が電気的に接続される。
【0099】
回路パターン26には、ゲート端子Q2-Gが設けられる。なお、回路パターン26と回路パターン27との間には抵抗R2-1が設けられ、かかる抵抗R2-1を介して回路パターン26と回路パターン27が電気的に接続される。
【0100】
回路パターン27には、第2スイッチング素子Q2のゲート電極が、ボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。なお、回路パターン27と回路パターン23との間には抵抗R2-2が設けられ、かかる抵抗R2-2を介して回路パターン27と回路パターン23が電気的に接続される。
【0101】
回路パターン28には、第3スイッチング素子Q3のソース電極と、第3スイッチング素子Q3のGaN-FETのゲート電極とがボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。また、回路パターン28には、回路パターン31がボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。また、回路パターン28における回路パターン29に隣接する部位には、ソース端子Q3-Sが設けられ、かかるソース端子Q3-Sを基準にした場合に、回路パターン29の反対側における回路パターン28には出力端子OUT2が設けられる。
【0102】
回路パターン29には、ゲート端子Q3-Gが設けられる。なお、回路パターン29と回路パターン30との間には抵抗R3-1が設けられ、かかる抵抗R3-1を介して回路パターン29と回路パターン30が電気的に接続される。
【0103】
回路パターン30には、第3スイッチング素子Q3のゲート電極が、ボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。なお、回路パターン30と回路パターン28との間には抵抗R3-2が設けられ、かかる抵抗R3-2を介して回路パターン30と回路パターン28が電気的に接続される。
【0104】
回路パターン31には、第4スイッチング素子Q4のドレイン電極がボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。
【0105】
回路パターン32には、ゲート端子Q4-Gが設けられる。なお、回路パターン32と回路パターン33との間には抵抗R4-1が設けられ、かかる抵抗R4-1を介して回路パターン32と回路パターン33が電気的に接続される。
【0106】
回路パターン33には、第4スイッチング素子Q4のソース電極が、ボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。なお、回路パターン33と回路パターン23との間には抵抗R4-2が設けられ、かかる抵抗R4-2を介して回路パターン33と回路パターン23が電気的に接続される。
【0107】
回路パターン34には、第5スイッチング素子Q5のソース電極と、第5スイッチング素子Q5のGaN-FETのゲート電極とがボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。また、回路パターン34には、回路パターン37がボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。なお、コンデンサC1は、上アームのGaN系スイッチング素子のドレイン電極と下アームのGaN系スイッチング素子のソース電極をつなぐワイヤで挟まれる領域に配置される。具体的には、コンデンサC1は、回路パターン28と回路パターン31を接続するボンディングワイヤWと回路パターン34と回路パターン37を接続するボンディングワイヤWに挟まれる領域に配置される。また、回路パターン34における回路パターン35に隣接する部位には、ソース端子Q5-Sが設けられ、かかるソース端子Q5-Sを基準にした場合に、ソース端子Q5-Sを挟んで回路パターン35が配置される領域とは反対側にある回路パターン34には出力端子OUT3が設けられる。
【0108】
回路パターン35には、ゲート端子Q5-Gが設けられる。なお、回路パターン35と回路パターン36との間には抵抗R5-1が設けられ、かかる抵抗R5-1を介して回路パターン35と回路パターン36が電気的に接続される。
【0109】
回路パターン36には、第5スイッチング素子Q5のゲート電極が、ボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。なお、回路パターン36と回路パターン34との間には抵抗R5-2が設けられ、かかる抵抗R5-2を介して回路パターン36と回路パターン34が電気的に接続される。
【0110】
回路パターン37には、第6スイッチング素子Q6のドレイン電極がボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。
【0111】
回路パターン38には、ゲート端子Q6-Gが設けられる。なお、回路パターン38と回路パターン39との間には抵抗R6-1が設けられ、かかる抵抗R6-1を介して回路パターン38と回路パターン39が電気的に接続される。
【0112】
回路パターン39には、第6スイッチング素子Q6のソース電極が、ボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。なお、回路パターン39と回路パターン23との間には抵抗R6-2が設けられ、かかる抵抗R6-2を介して回路パターン39と回路パターン23が電気的に接続される。
【0113】
回路パターン40には、サーミスタの一方の電極に接続される端子TH1が設けられる。回路パターン40には、回路パターン42がボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。回路パターン41には、サーミスタの他方の電極に接続される端子TH2が設けられる。回路パターン41には、回路パターン43がボンディングワイヤWを介して電気的に接続される。
【0114】
また、正極端子P、負極端子N、出力端子OUT1~OUT3、ゲート端子Q1-G~Q6-G、ソース端子Q1-S~Q6-Sおよび端子TH1、TH2は、いずれも金属などの導電性材料で構成され、ハンダや導電性接着剤などの導電性接合材で各回路パターンと電気的および機械的に接続される。
【0115】
図15は、第1実施形態に係るパワーモジュール1内の回路ループ1-1~1-6について説明するための図である。
図15に示すように、第1実施形態に係るパワーモジュール1では、回路ループ1-1~1-6の長さが極力短くなっていると共に、かかる回路ループ1-1~1-6のループ面積が極力小さくなっている。
【0116】
図16は、第1実施形態に係るパワーモジュール1内の回路ループ2-1について説明するための図である。
図16の(a)に示すように、第1実施形態に係るパワーモジュール1では、回路ループ2-1の長さが極力短くなっていると共に、かかる回路ループ2-1のループ面積が極力小さくなっている。また、
図16の(b)に示すように、回路ループ2-2の長さが極力短くなっていると共に、かかる回路ループ2-2のループ面積が極力小さくなっている。
【0117】
以上説明したように、パワーモジュール1内の回路ループ1-1~1-6および回路ループ2-1および2-2に関して、それぞれの回路ループの長さが極力短くなっていると共に、それぞれのループ面積が極力小さくなっている。従って、それぞれの回路ループにおける発生ノイズを低減させる効果が得られる。なお、回路ループ1-1~1-6および回路ループ2-1、2-2はコンデンサC1を経由するループでないため、コンデンサC1が装着されていなくても、それぞれの回路ループにおける配線インダクタンスを低減させる効果が得られる。
【0118】
図17は、第1実施形態に係るパワーモジュール1内の回路ループ3-1、3-2、3-3について説明するための図である。
図17に示すように、第1実施形態に係るパワーモジュール1では、コンデンサC1を経由する回路ループ3-1、3-2、3-3の長さが極力短くなっていると共に、かかる回路ループ3-1、3-2、3-3のループ面積が極力小さくなっている。したがって、コンデンサC1を装着したパワーモジュール1は、上記効果に加えてさらに回路ループにおける配線インダクタンスを低減させる効果が得られる。
【0119】
図18は、第1実施形態に係るパワーモジュール1内の共通インピーダンスCIについて説明するための図である。
図18の(a)は第1スイッチング素子Q1周りを説明するための図であり、
図18の(b)は第2スイッチング素子Q2周りを説明するための図である。
【0120】
図18の(a)に示すように、第1スイッチング素子Q1において、Si-FETのソース電極(すなわち、第1スイッチング素子Q1のソース電極)から延びるボンディングワイヤWが回路パターン21に接続される箇所を第1接続部51とする。
【0121】
また、第1スイッチング素子Q1において、GaN-FETのゲート電極から延びるボンディングワイヤWが回路パターン21に接続される箇所を第2接続部52とする。
【0122】
そして、第1実施形態では、かかる第1接続部51が第2接続部52よりもパワー基板10の短辺(
図18における左側)に近い。言い換えれば、第1接続部51は第2接続部52よりも両者が接続される第1スイッチング素子Q1から離れて配置される。これにより、第1スイッチング素子Q1のドレイン端子からソース端子に流れる大電流ラインILと、第1スイッチング素子Q1のゲート電極からソース端子に流れる小電流ラインISとの重なる部分(すなわち、共通インピーダンスCI)を極力小さくすることができる。
【0123】
したがって、第1実施形態によれば、共通インピーダンスCIを低減して大電流ラインILで発生するノイズの小電流ラインISへの影響を低減することができる。
【0124】
なお、
図18の(a)では第1スイッチング素子Q1について示したが、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5でも同様に回路パターン28、34に第1接続部51、第2接続部52を設けることにより、共通インピーダンスCIを極力小さくすることができる。
【0125】
また、
図18の(b)に示すように、第2スイッチング素子Q2において、Si-FETのソース電極(すなわち、第2スイッチング素子Q2のソース電極)から延びるボンディングワイヤWが回路パターン23に接続される箇所を第3接続部53とする。
【0126】
また、第2スイッチング素子Q2において、GaN-FETのゲート電極から延びるボンディングワイヤWが回路パターン23に接続される箇所を第4接続部54とする。
【0127】
そして、第1実施形態では、かかる第3接続部53が第4接続部54よりもパワー基板10の中央に近い。言い換えれば、第3接続部53は第4接続部54よりも両者が接続される第2スイッチング素子Q2から離れて配置される。これにより、第2スイッチング素子Q2のドレイン端子からソース端子に流れる大電流ラインILと、第2スイッチング素子Q2のゲート電極からソース端子に流れる小電流ラインISとの重なる部分(すなわち、共通インピーダンスCI)を極力小さくすることができる。
【0128】
したがって、第1実施形態によれば、共通インピーダンスCIを低減して大電流ラインILで発生するノイズの小電流ラインISへの影響を低減することができる。
【0129】
なお、
図18の(b)では第2スイッチング素子Q2について示したが、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6でも同様に回路パターン23に第3接続部53、第4接続部54を設けることにより、共通インピーダンスCIを極力小さくすることができる。
【0130】
つづいて、ここまで説明した第1実施形態に係るパワーモジュール1と、第1実施形態とは別のコンセプトで配置された参考例のパワーモジュール100との配線インダクタンスについて比較する。
図19は、参考例におけるパワーモジュール100の構成を示す上面図である。かかる参考例は、Si-FET、Si-IGBTを用いたパワーモジュールで一般的に採用されている部品配置とパターンニング方法である。
【0131】
図19に示すように、パワーモジュール100のパワー基板のサイズは、58.00mm×29.00mmである。
図14の(a)と比較して、同一素子を用いて同一回路を形成しながら、パワーモジュール100のパワー基板のサイズは大きい。
【0132】
図20は、参考例におけるパワーモジュール100内の回路ループ1-1~1-6について説明するための図である。
図15と
図20を比較すると、第1実施形態に係るパワーモジュール1と参考例のパワーモジュール100では、優劣差はない。
【0133】
図21は、参考例におけるパワーモジュール100内の回路ループ2-1について説明するための図である。
図16と
図21を比較すると、参考例のパワーモジュール100では、第1実施形態に比べて、回路ループ2-1の長さが長くなっていると共に、かかる回路ループ2-1のループ面積が大きくなっている。
【0134】
図22は、参考例におけるパワーモジュール100内の回路ループ3-1について説明するための図である。
図17と
図22を比較すると、参考例のパワーモジュール100では、第1実施形態に比べて、回路ループ3-1の長さが長くなっていると共に、かかる回路ループ3-1のループ面積が大きくなっている。
【0135】
すなわち、第1実施形態に係るパワーモジュール1は、参考例のパワーモジュール100に比べて、回路ループ2-1、3-1の長さが短くなっていると共に、かかる回路ループのループ面積が小さくなっている。これにより、第1実施形態では、パワーモジュール1の配線インダクタンスを低減することができる。
【0136】
図23は、参考例におけるパワーモジュール100内の共通インピーダンスCIについて説明するための図である。
図18の(a)と
図23を比較すると、第1実施形態に係るパワーモジュール1と参考例のパワーモジュール100では、優劣差はない。
【0137】
<第1実施形態の変形例>
ここまでは、コンデンサC1を1つだけ配置した場合について説明したが、パワーモジュール1により多くのコンデンサを配置してもよい。
図24は、3つのコンデンサを配置した変形例1を示す図である。
図24の(a)は、コンデンサの配置を示し、
図24の(b)は、回路ループ3-1~3-3を示す。
【0138】
図24の(a)に示すように、コンデンサC1は、第3スイッチング素子Q3のドレイン電極に接続するボンディングワイヤWと第4スイッチング素子Q4のソース電極に接続するボンディングワイヤWに挟まれる領域に配置される。コンデンサC2は、第1スイッチング素子Q1のドレイン電極に接続するボンディングワイヤWと第2スイッチング素子Q2のソース電極に接続するボンディングワイヤWに挟まれる領域に配置される。コンデンサC3は、第5スイッチング素子Q5のソース電極と第6スイッチング素子Q6のソース電極に挟まれる領域に配置される。
【0139】
コンデンサC1が配置される領域とコンデンサC2が配置される領域は、回路パターン28と回路パターン31とを接続するボンディングワイヤWで区切られる。コンデンサC1が配置される領域とコンデンサC3が配置される領域は、回路パターン34と回路パターン37とを接続するボンディングワイヤWで区切られる。
【0140】
図24の(b)に示すように、変形例1では、コンデンサC2を含む回路ループ3-1が形成され、コンデンサC1を含む回路ループ3-2が形成され、コンデンサC3を含む回路ループ3-3が形成される。
図17に示した回路ループ3-1~3-3と比較すると、
図24の(b)に示す回路ループ3-1~3-3の長さは、短く、かかる回路ループ3-1~3-3のループ面積が小さくなっている。
【0141】
図25は、
図6に示したモータ制御回路の変形例を示す図である。
図6と比較すると、
図25に示す回路では、負極端子Nの代わりに負極端子N1~N3が設けられている。また、負極端子N1とDCマイナス入力端子との間、負極端子N2とDCマイナス入力端子との間、負極端子N3とDCマイナス入力端子との間には、それぞれ電流検出回路が設けられる。
【0142】
図26は、
図25に示した回路のパワー基板10を変形例2として示す図である。
図14と比較して、回路パターン23のソース端子Q2-Sに近接する部位には負極端子N1が設けられ、回路パターン23のソース端子Q4-Sに近接する部位には負極端子N2が設けられ、回路パターン23のソース端子Q6-Sに近接する部位には負極端子N3が設けられる。
【0143】
図26に示すパワー基板10においても、
図14に示したパワー基板10と同様に、パワーモジュール1内の回路ループ1-1~1-6、2-1、2-2、3-1~3-3に関して、それぞれの回路ループの長さが極力短くなっていると共に、それぞれのループ面積が極力小さくなっている。
【0144】
図27は、変形例2におけるパワーモジュール1内の共通インピーダンスCIについて説明するための図である。
図27は、Q2周りを示す。
図18の(b)における説明と同様に、変形例2においてもパワーモジュール1内の共通インピーダンスCIを極力小さくすることができる。
【0145】
<第2実施形態>
つづいて、第2実施形態に係るパワーモジュール1について、
図28~
図33を参照しながら説明する。
図28は、第2実施形態に係るパワーモジュール1の回路構成を示す図である。
【0146】
図28に示すように、第2実施形態のパワーモジュール1は、パワー基板10と、ドライバ基板3とを備える。なお、パワー基板10の回路構成は第1実施形態と同様であることから、詳細な説明は省略する。
【0147】
ドライバ基板3は、GaN-FETドライブ回路DR1~DR6と、インターフェイス回路IFとを有する。
【0148】
GaN-FETドライブ回路DR1は、ソース端子A(Q1-S)およびゲート端子B(Q1-G)に接続され、かかるソース端子Q1-Sおよびゲート端子Q1-Gを介して第1スイッチング素子Q1を駆動する。かかるGaN-FETドライブ回路DR1には、インターフェイス回路IFから所定の制御信号が入力され、上アーム用電源入力端子VU1から所定の制御用電圧が入力される。
【0149】
GaN-FETドライブ回路DR2は、ゲート端子G(Q2-G)およびソース端子H(Q2-S)に接続され、かかるゲート端子Q2-Gおよびソース端子Q2-Sを介して第2スイッチング素子Q2を駆動する。かかるGaN-FETドライブ回路DR2には、インターフェイス回路IFから所定の制御信号および所定の制御用電圧が入力される。
【0150】
GaN-FETドライブ回路DR3は、ソース端子C(Q3-S)およびゲート端子D(Q3-G)に接続され、かかるソース端子Q3-Sおよびゲート端子Q3-Gを介して第3スイッチング素子Q3を駆動する。かかるGaN-FETドライブ回路DR3には、インターフェイス回路IFから所定の制御信号が入力され、上アーム用電源入力端子VU2から所定の制御用電圧が入力される。
【0151】
GaN-FETドライブ回路DR4は、ゲート端子I(Q4-G)およびソース端子J(Q4-S)に接続され、かかるゲート端子Q4-Gおよびソース端子Q4-Sを介して第4スイッチング素子Q4を駆動する。かかるGaN-FETドライブ回路DR4には、インターフェイス回路IFから所定の制御信号および所定の制御用電圧が入力される。
【0152】
GaN-FETドライブ回路DR5は、ソース端子C(Q5-S)およびゲート端子D(Q5-G)に接続され、かかるソース端子Q5-Sおよびゲート端子Q5-Gを介して第5スイッチング素子Q5を駆動する。かかるGaN-FETドライブ回路DR5には、インターフェイス回路IFから所定の制御信号が入力され、上アーム用電源入力端子VU3から所定の制御用電圧が入力される。
【0153】
GaN-FETドライブ回路DR6は、ゲート端子K(Q6-G)およびソース端子L(Q6-S)に接続され、かかるゲート端子Q6-Gおよびソース端子Q6-Sを介して第6スイッチング素子Q6を駆動する。かかるGaN-FETドライブ回路DR6には、インターフェイス回路IFから所定の制御信号および所定の制御用電圧が入力される。
【0154】
インターフェイス回路IFには、外部からインターフェイス端子IF1~nを介して所定の制御信号が入力される。また、インターフェイス回路IFには、下アーム用電源入力端子VL1~VL3から所定の制御用電圧が入力される。なお、かかる下アーム用電源入力端子VL1~VL3から入力される所定の制御用電圧は、GaN-FETドライブ回路DR2、DR4、DR6をそれぞれ駆動するための電圧である。
【0155】
図29は、第2実施形態に係るパワーモジュール1の構成を示す断面図および上面図である。
図29の(a)が断面図を示し、
図29の(b)が上面図を示す。なお、パワー基板10の構成は上述の第1実施形態と同様であることから、図示および詳細な説明は省略する。
【0156】
図29の(a)に示すように、第2実施形態に係るパワーモジュール1では、パワー基板10と蓋12との間に、かかるパワー基板10および蓋12と略並行にドライバ基板3が配置される。ドライバ基板3は、ケース11のドライバ基板受け11aで受けられる。そして、ケース11の内部は、かかるドライバ基板3も含めてシリコンゲル13が充填されている。
【0157】
図29の(b)に示すように、ドライバ基板3には、GaN-FETドライブ回路DR1~DR6と、インターフェイス端子IF1~nと、上アーム用電源入力端子VU1~、VU3と、下アーム用電源入力端子VL1~VL3とが設けられる。なお、
図29には図示していないが、ドライバ基板3には、インターフェイス回路IFも設けられる。
【0158】
そして、第2実施形態では、平面視において、第1スイッチング素子Q1の近傍にGaN-FETドライブ回路DR1が設けられ、第2スイッチング素子Q2の近傍にGaN-FETドライブ回路DR2が設けられる。また、第3スイッチング素子Q3の近傍にGaN-FETドライブ回路DR3が設けられ、第4スイッチング素子Q4の近傍にGaN-FETドライブ回路DR4が設けられる。また、第5スイッチング素子Q5の近傍にGaN-FETドライブ回路DR5が設けられ、第6スイッチング素子Q6の近傍にGaN-FETドライブ回路DR6が設けられる。
【0159】
また、第2実施形態では、平面視において、GaN-FETドライブ回路DR1の近傍に上アーム用電源入力端子VU1が設けられ、GaN-FETドライブ回路DR3の近傍に上アーム用電源入力端子VU2が設けられ、GaN-FETドライブ回路DR5の近傍に上アーム用電源入力端子VU3が設けられる。
【0160】
図30は、第2実施形態に係るパワーモジュール1において親和性が高い回路ごとに仮想的にブロック分けした図である。
図30に示すように、第2実施形態に係るパワーモジュール1に形成される回路は、親和性が高い回路ごとに4つのブロックA、ブロックB、ブロックCおよびブロックDに分けられる。
【0161】
ここで、「親和性が高い回路」とは、近い電位でくくられる回路のことであり、この親和性の高い回路内では、各部を近接させたとしてもノイズなどによる誤動作が起きづらい。一方で、属するブロックが異なる回路を互いに近接させた場合、異なる電位の影響を受けてノイズなどによる誤動作が生じやすい。
【0162】
図30に示すように、ブロックAには、第1スイッチング素子Q1と、GaN-FETドライブ回路DR1と、ゲート端子Bと、ソース端子Aと、出力端子OUT1と、上アーム用電源入力端子VU1とが含まれる。
【0163】
かかるブロックAは、パワーモジュール1における上アームの1つに対応する。したがって、かかるブロックAでは、第1スイッチング素子Q1がオンオフする毎に、高電圧(たとえば、400V)と低電圧(たとえば、0V)との間で電位が大きくスイングする。
【0164】
ブロックBには、第3スイッチング素子Q3と、GaN-FETドライブ回路DR3と、ゲート端子Dと、ソース端子Cと、出力端子OUT2と、上アーム用電源入力端子VU2とが含まれる。
【0165】
かかるブロックBは、パワーモジュール1における上アームの1つに対応する。したがって、かかるブロックBでは、第3スイッチング素子Q3がオンオフする毎に、高電圧(たとえば、400V)と低電圧(たとえば、0V)との間で電位が大きくスイングする。
【0166】
ブロックCには、第5スイッチング素子Q5と、GaN-FETドライブ回路DR5と、ゲート端子Fと、ソース端子Eと、出力端子OUT3と、上アーム用電源入力端子VU3とが含まれる。
【0167】
かかるブロックCは、パワーモジュール1における上アームの1つに対応する。したがって、かかるブロックCでは、第5スイッチング素子Q5がオンオフする毎に、高電圧(たとえば、400V)と低電圧(たとえば、0V)との間で電位が大きくスイングする。
【0168】
ブロックDには、第2スイッチング素子Q2と、第4スイッチング素子Q4と、第6スイッチング素子Q6と、GaN-FETドライブ回路DR2、DR4、DR6と、インターフェイス回路IFと、ゲート端子G、I、Kと、ソース端子H、J、Lと、インターフェイス端子IF1~nと、下アーム用電源入力端子VL1~VL3とが含まれる。
【0169】
かかるブロックDは、パワーモジュール1における3つの下アームに対応する。したがって、かかるブロックDでは、第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4または第6スイッチング素子Q6がオンオフする場合でも、高電圧と低電圧との間で電位が大きくスイングすることなく、低電圧(たとえば、0V)の近傍で電位が維持される。
【0170】
図31は、第2実施形態に係るパワーモジュール1のパワー基板10を
図30に示した手法でブロック分けした図である。
図31に示すように、パワー基板10において、ブロックAの大部分は、左側の短辺の上部分および上側の長辺の左部分に沿って配置される。また、パワー基板10において、ブロックCの大部分は、右側の短辺の上部分および上側の長辺の右部分に沿って配置される。また、パワー基板10において、ブロックBの大部分は、ブロックAとブロックCに挟まれるように配置される。さらに、パワー基板10において、ブロックDは、概ね下半分に配置される。
【0171】
図32は、第2実施形態に係るパワーモジュール1のドライバ基板3を
図30に示した手法でブロック分けした図である。
図32に示すように、ドライバ基板3において、ブロックAは、左側の短辺の上部分および上側の長辺の左部分に沿って矩形状に配置される。また、ドライバ基板3において、ブロックCは、右側の短辺の上部分および上側の長辺の右部分に沿って矩形状に配置される。また、ドライバ基板3において、ブロックBは、ブロックAとブロックCに挟まれるように配置される。さらに、ドライバ基板3において、ブロックDは、下半分に矩形状に配置される。
【0172】
図33は、第2実施形態に係るパワーモジュール1のパワー基板10におけるブロックとドライバ基板3におけるブロックとを重ね合わせた図である。
図33において、斜線部分は、異なるブロックが重なる箇所である。
図33に示すように、第2実施形態のパワーモジュール1では、上アームの1つに対応するブロックAと、上アームの1つに対応するブロックBと、上アームの1つに対応するブロックCと、3つの下アームに対応するブロックDとがそれぞれ厚み方向に極力重なるようにしている。ブロックAとブロックDが一部重なる箇所、ブロックAとブロックDが一部重なる箇所、ブロックCとブロックDが一部重なる箇所がある。
【0173】
これにより、属するブロックが異なる回路を互いに近接させることを抑制することができる。したがって、第2実施形態によれば、ノイズなどによる誤動作を抑制することができる。
【0174】
また、第2実施形態では、
図29の(b)などに示すように、ブロックAに属するゲート端子Bおよびソース端子A、ブロックBに属するゲート端子Dおよびソース端子C、ブロックCに属するゲート端子Fおよびソース端子Eが、ブロックDから離れた領域に配置される。また、ブロックDに属するゲート端子G、I、Kおよびソース端子H、J、Lが、ブロックA、B、Cから離れた領域に配置される。
【0175】
これにより、異なるブロックからのノイズがかかるゲート端子B、D、F、G、I、Kおよびソース端子A、C、E、H、J、Lに入力されることを抑制することができる。したがって、第2実施形態によれば、第1スイッチング素子Q1~第6スイッチング素子Q6がノイズなどによって誤動作することを抑制できる。
【0176】
以上、本開示の各実施形態について説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0177】
たとえば、上述の各実施形態では、コンデンサC1が1つのコンデンサで構成された例について示したが、コンデンサC1は1つのコンデンサで構成されなくともよい。複数のコンデンサが直列に接続されてコンデンサC1が構成されてもよいし、複数のコンデンサが並列に接続されてコンデンサC1が構成されてもよい。また、コンデンサと抵抗とが直列に接続されてコンデンサC1が構成されてもよい。
【0178】
また、上述の各実施形態では、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6の各電極がボンディングワイヤWで対応する回路パターンに接続された例について示したが、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6の各電極と回路パターンとを接続する部材はボンディングワイヤWに限られない。たとえば、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6の各電極と回路パターンとをリードフレームなどで電気的に接続してもよい。
【0179】
また、上述の各実施形態では、GaN-FETについて説明したが、GaN-FETは、他のGaN系スイッチング素子でもよい。また、上述の各実施形態では、Si-FETについて説明したが、Si-FETは、他のSi系スイッチング素子でもよい。
【0180】
また、上述の第2実施形態では、コンデンサC1がパワー基板10に搭載された例について示したが、コンデンサC1がドライバ基板3に搭載されていてもよく、別途設けられるプリント基板2にコンデンサC1が搭載されていてもよい。この場合、コンデンサC1は、平面視においてパワー基板10の中央部4に設けられていればよい。
【0181】
上述してきたように、各実施形態に係るパワーモジュール1は、パワー基板10に、3つの上アームとして第1スイッチング素子Q1と、第3スイッチング素子Q3と、第5スイッチング素子Q5とを備え、3つの下アームとして第2スイッチング素子Q2と、第4スイッチング素子Q4と、第6スイッチング素子Q6とを備える。また、各実施形態に係るパワーモジュール1は、パワー基板10の中央にコンデンサC1を備える。3つの上アームのスイッチング素子と3つの下アームのスイッチング素子は、コンデンサC1を挟むように配置される。各スイッチング素子は長辺と短辺とを有する長方形状であり、一方の長辺側にドレイン電極が設けられ、他方の長辺側にゲート電極が設けられる。上アームの3つのスイッチング素子と下アームの3つのスイッチング素子は、ドレイン電極とゲート電極が逆向きになるように配置される。これにより、回路ループ1-1~1-6、回路ループ2-1~2-2、回路ループ3-1~3-3を全て極力短くし、さらにこれらの回路ループのループ面積を極力小さくできる。このため、パワーモジュール1の配線インダクタンスを低減できる。
【0182】
また、各実施形態に係るパワーモジュール1において、スイッチング素子の一方の長辺に沿ってドレイン電極が設けられ、他方の長辺に沿ってソース電極が設けられる。また、各スイッチング素子は、短辺がパワー基板10の長辺と向かい合うように配置される。これにより、パワーモジュール1の配線インダクタンスを低減できる。
【0183】
また、各実施形態に係るパワーモジュール1では、Si-FETのソース電極から延びるボンディングワイヤWが回路パターン21に接続される箇所を第1接続部51とし、GaN-FETのゲート電極から延びるボンディングワイヤWが回路パターン21に接続される箇所を第2接続部52とする。そして、第1接続部51を第2接続部52よりもパワー基板10の短辺に近いようにする。これにより、第1接続部51を含む大電流ラインと第2接続部52を含む小電流ラインとの重なりを小さくできる。このため、パワーモジュール1の共通インピーダンスCIを極力小さくできる。
【0184】
また、各実施形態に係るパワーモジュール1では、第2スイッチング素子Q2において、Si-FETのソース電極から延びるボンディングワイヤWが回路パターン23に接続される箇所を第3接続部53とし、GaN-FETのゲート電極から延びるボンディングワイヤWが回路パターン23に接続される箇所を第4接続部54とする。そして、第3接続部53が第4接続部54よりもパワー基板10の中央に近いようにする。これにより、第2スイッチング素子Q2のドレイン端子からソース端子に流れる大電流ラインILと、第2スイッチング素子Q2に含まれるGaN-FETのゲート電極からソース端子に流れる小電流ラインISとの重なりを小さくできる。このため、パワーモジュール1の共通インピーダンスCIを極力小さくできる。
【0185】
また、各実施形態に係るパワーモジュール1では、コンデンサC1は、回路パターン28と回路パターン31を接続するボンディングワイヤWと回路パターン34と回路パターン37を接続するボンディングワイヤWに挟まれる領域に配置される。これにより、パワーモジュール1を小型化できる。
【0186】
第1実施形態の変形例1に係るパワーモジュール1では、コンデンサC1は、第3スイッチング素子Q3のドレイン電極に接続するボンディングワイヤWと第4スイッチング素子Q4のソース電極に接続するボンディングワイヤWに挟まれる領域に配置される。コンデンサC2は、第1スイッチング素子Q1のドレイン電極に接続するボンディングワイヤWと第2スイッチング素子Q2のソース電極に接続するボンディングワイヤWに挟まれる領域に配置される。コンデンサC3は、第5スイッチング素子Q5のソース電極と第6スイッチング素子Q6のソース電極に挟まれる領域に配置される。これにより、回路ループ3-1~3-3をより短くし、さらにこれらの回路ループのループ面積をより小さくできる。このため、パワーモジュール1の配線インダクタンスをより低減できる。
【0187】
また、実施形態2に係るパワーモジュール1は、6つのアームとして第1スイッチング素子Q1~第6スイッチング素子Q6を搭載したパワー基板10と、第1スイッチング素子Q1~第6スイッチング素子Q6のそれぞれを駆動するGaN-FETドライブ回路DR1~DR6を搭載したドライバ基板3を備える。また、ドライバ基板3は、パワー基板10と蓋12との間に、パワー基板10および蓋12と略並行に配置される。また、パワー基板10およびドライバ基板3は、親和性が高い回路ごとに4つのブロックA、ブロックB、ブロックCおよびブロックDに分けられる。そして、パワー基板10のブロックA~ブロックDはそれぞれドライバ基板3のブロックA~ブロックDと重なるように配置される。これにより、第1スイッチング素子Q1~第6スイッチング素子Q6がノイズなどによって誤動作することを抑制できる。
【0188】
また、各実施形態に係るパワーモジュール1において、コンデンサC1は、パワー基板10上の中央部4に搭載される。これにより、コンデンサC1を搭載するために、別途プリント基板2を設ける必要がなくなることから、パワーモジュール1の製造コストを低減できる。
【0189】
また、各実施形態に係るパワーモジュール1において、第1~第6スイッチング素子Q1~Q6は、GaN-FETのおもて面に配置されるソース電極と、Si-FETの裏面に配置されるドレイン電極とが電気的および機械的に接続されるカスケード型GaN-FETである。これにより、ノーマリーオンのGaN-FETを、ノーマリーオフのスイッチング素子として駆動することができる。
【0190】
なお、今回開示された各実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の各実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0191】
1 パワーモジュール
2 プリント基板
3 ドライバ基板
4 中央部
10 パワー基板
21~43 回路パターン
51 第1接続部
52 第2接続部
P 正極端子
N 負極端子
C1~C3 コンデンサ
Q1 第1スイッチング素子
Q2 第2スイッチング素子
Q3 第3スイッチング素子
Q4 第4スイッチング素子
Q5 第5スイッチング素子
Q6 第6スイッチング素子
W ボンディングワイヤ