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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115784
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】低甘味の炭酸飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20220802BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A23L2/00 T
A23L2/60
A23L2/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132143
(22)【出願日】2021-08-16
(62)【分割の表示】P 2021011908の分割
【原出願日】2021-01-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年4月14日 日本全国のファミリーマートにて販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月10日 キャンペーンの当選者200名へ配布
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月16日 日本全国の容器詰め飲料を販売する店舗にて販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年7月14日 ウェブサイトにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年7月14日 ウェブサイトにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年7月21日 日本全国のファミリーマートにて販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年8月21日 ウェブサイトにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年9月22日 日本全国の容器詰め飲料を販売する店舗にて販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年1月19日 ウェブサイトにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 美佳子
(72)【発明者】
【氏名】安井 洋平
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LC14
4B117LG01
4B117LG05
4B117LK04
4B117LK06
4B117LK07
4B117LL01
4B117LP09
(57)【要約】
【課題】低甘味で高ガス圧の炭酸飲料において、飲用後に残る炭酸の不快な刺激を改善する。
【解決手段】甘味度が0.6~2.0であり、炭酸ガス圧が3.0kgf/cm以上である飲料において、エタノールおよび/またはプロピレングリコールを0.005~1.0v/v%含有させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)甘味度が0.6~2.0であり、
(b)炭酸ガス圧が3.0kgf/cm以上であり、かつ
(c)0.005~1.0v/v%のエタノールおよび/またはプロピレングリコールを含有する、
炭酸飲料。
【請求項2】
果汁および/または果実エキスを含有する、請求項1記載の飲料。
【請求項3】
波長660nmにおける吸光度が0.03以上である、請求項1または2記載の飲料。
【請求項4】
乳化香料を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低甘味で高ガス圧の炭酸飲料に関する。より具体的には、本発明は、甘味度が0.6~2.0と低く、炭酸ガス圧が3.0kgf/cm以上と高いにもかかわらず、飲用後に残る炭酸の不快な刺激が改善された炭酸飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、飲料に含まれる炭酸の泡によって爽快感を感じることができるため、幅広い層の消費者に好んで飲用されている。特に、炭酸ガス圧の高い炭酸飲料(以下、強炭酸飲料ともいう)は、のど越しがよく、強い刺激的な爽快感が得られることから、暑い夏場を中心に需要が大きい。
【0003】
市場に流通している強炭酸飲料を見ると、コーラのように味が濃く甘味も強い嗜好性の高いタイプの製品と、いわゆる炭酸水と呼ばれる甘味が全くないタイプの製品とに分けることができ、甘味の強さにおいて二極化しており、その中間の弱い甘味を有する強炭酸飲料製品はこれまでにほとんどなかった。
【0004】
また、これまで、強炭酸飲料に関する技術として、炭酸の刺激を増強させる技術は多く知られている。例えば、特許文献1には、低甘味の炭酸飲料において、苦味成分の種類の特定ならびにその配合比と、苦味度に対する酸度の比率についての条件を特定範囲にすることで、飲用時の炭酸感を増強させる技術が開示されている。しかし、飲用後に残る炭酸の不快な刺激の改善技術については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-104046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、甘味度が0.6~2.0で炭酸ガス圧が3.0kgf/cm以上の強炭酸飲料において、飲用後に残る炭酸の不快な刺激を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下に関する。
[1](a)甘味度が0.6~2.0であり、
(b)炭酸ガス圧が3.0kgf/cm以上であり、かつ
(c)0.005~1.0v/v%のエタノールおよび/またはプロピレングリコールを含有する、
炭酸飲料。
[2]果汁および/または果実エキスを含有する、[1]記載の飲料。
[3]波長660nmにおける吸光度が0.03以上である、[1]または[2]記載の飲料。
[4]乳化香料を含む、[1]~[3]のいずれか一項記載の飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、甘味度が0.6~2.0で炭酸ガス圧が3.0kgf/cm以上の強炭酸飲料において、特定量のエタノールおよび/またはプロピレングリコールを含有させることにより、飲用後に残る炭酸の不快な刺激を改善することができる。すなわち、本
発明の技術を利用することによって、飲用後に残る炭酸の不快な刺激が改善された、低甘味度で高ガス圧の炭酸飲料を提供することができる。ここで、飲用後に残る不快な刺激とは、具体的には、飲用後数秒にわたって喉の奥に感じるピリピリとした刺激をいう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について、以下に説明する。なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppm」は、重量/容量(w/v)のppmを意味する。また、本明細書において下限値と上限値によって表されている数値範囲、すなわち「下限値~上限値」は、それら下限値及び上限値を包含するものとする。例えば、「1~2」により表される範囲は、1及び2を含む。
【0010】
(甘味度)
本発明の炭酸飲料の甘味度は0.6~2.0であり、好ましくは0.7~1.8、より好ましくは0.8~1.6である。甘味度が0.6より小さい場合は、本発明の効果が得られず、甘味度が2.0より大きい場合は、飲料の甘味によって飲用後に残る炭酸の不快な刺激が感じられにくくなるため、本発明の課題が生じない。
【0011】
本明細書における甘味度とは、飲料100g中にショ糖1gを含有する飲料の甘さを「1」とした、飲料の甘味を表す指標である。当該飲料の甘味度は、各甘味成分の含有量を、ショ糖の甘味1に対する当該甘味成分の甘味の相対比に基づいて、ショ糖の相当量に換算して、次いで当該飲料に含まれる全ての甘味成分のショ糖甘味換算量(果汁やエキス等由来の甘味成分も含む)を総計することによって求められる。ショ糖の甘味1に対する各種代表的な甘味成分の甘味の相対比を表1に示す。表1に記載のない甘味成分については、当該甘味成分を製造あるいは販売しているメーカーが提示する甘味度を用いたり、あるいは官能評価により甘味度を求めることができる。
【0012】
【表1】
【0013】
本発明の飲料では、甘味成分を用いて飲料の甘味度を調整することができる。甘味成分としては、例えば、表1に記載されている甘味成分を用いることができるが、それ以外の甘味成分を用いてもよい。本発明においては、飲料中に甘味成分を甘味料として直接配合してもよいし、甘味成分を含有する果汁やエキス等を配合してもよい。好ましい甘味成分は、果糖、異性化糖、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、オリゴ糖(マルトオリゴ糖など)、及び糖アルコール(エリスリトール、キシリトールなど)であり、特に好ましい甘味成分は、
果糖とショ糖である。本発明の飲料においては、高甘味度甘味料を用いない場合の方が炭酸飲料にすっきりとした自然な甘味を付与できることから好ましい。なお、本明細書でいう高甘味度甘味料とは、ショ糖と比べて十倍以上の甘味度を有する人工又は天然の甘味料を意味し、例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びステビアが挙げられる。
【0014】
(炭酸ガス圧)
本発明の炭酸飲料の炭酸ガス圧は、3.0kgf/cm以上であり、好ましくは3.0~4.5kgf/cm、より好ましくは、3.0~4.0kgf/cmである。炭酸飲料の炭酸ガス圧が3.0kgf/cmより低いと、炭酸の刺激自体が少ないことから、本発明の課題である飲用後に残る不快な刺激がそもそも感じられにくい。本明細書において、炭酸ガス圧は、飲料中の炭酸ガスの含有量をいう。一態様として、本発明で用いる炭酸飲料の炭酸ガス圧の値は、飲用時の値である。特に、未開栓の飲料を最初に開栓した際の炭酸ガス圧の値である。炭酸ガス圧の測定は、液温を20℃に調整した炭酸飲料を用い、ガス圧測定装置(例えば、京都電子工業株式会社製GVA-500A)を用いて、測定することができる。
【0015】
(エタノール、プロピレングリコール)
本発明の飲料は、0.005~1.0v/v%のエタノールおよび/またはプロピレングリコールを含有する。「0.005~1.0v/v%のエタノールおよび/またはプロピレングリコール」とは、飲料中のエタノールとプロピレングリコールの含有量の合計が0.005~1.0v/v%であることをいう。エタノールとプロピレングリコールとは、いずれか一方のみが飲料中に含まれていてもよい。エタノールおよび/またはプロピレングリコールの飲料中の含有量が上記の範囲内であれば、飲用後に残る不快な刺激を効果的に改善することができる。本発明の飲料がエタノールを含有する場合、飲料中のエタノールの含有量は、好ましくは0.01~0.8v/v%、より好ましくは0.05~0.5v/v%である。本発明の飲料がプロピレングリコールを含有する場合、飲料中のプロピレングリコールの含有量は、好ましくは0.01~0.8v/v%、より好ましくは0.05~0.5v/v%以上である。上記の通り、本発明の飲料には、エタノールとプロピレングリコールの両方が含まれていてもよく、その場合、両者の合計量で0.005~1.0v/v%であり、より好ましくは0.01~0.8v/v%であり、さらに好ましくは0.05~0.5v/v%である。本発明の飲料におけるエタノールとプロピレングリコールの含有量は、当業者に公知の方法で測定することができる。例えば、HPLC法、LC-MS法、GC-MS法、LC法、GC法、または近赤外線法等の分光法などを用いてエタノールとプロピレングリコールの含有量を測定することができる。
【0016】
(果汁、果実エキス)
本発明の飲料は、果汁および/または果実エキスを含有するのが好ましい。果汁および/または果実エキスを含有する飲料においては、本発明の飲用後に残る炭酸の不快な刺激を改善する効果が顕著にあらわれる傾向がある。そのメカニズムは解明されていないが、果汁や果実エキス中に含まれるポリフェノールなどが影響するからと推測している。本発明に使用可能な果汁や果実エキスにおける果実の種類は、特に限定されないが、例えば、柑橘類果実(グレープフルーツ、レモン、オレンジ、ライム、和柑橘等)、リンゴ、ウメ、ブドウ、モモ、ベリー類、熱帯果実(パイナップル、マンゴー、アセロラ等)などが挙げられる。本発明において、より好適に用いられるのは、柑橘類果実、リンゴ、ウメであり、特に好適に用いられるのは柑橘類果実である。柑橘類果汁や柑橘類エキスは炭酸の爽快感を付与する効果も有する。柑橘類果実の中では特にグレープフルーツとレモンが好ましい。本発明において、果汁や果実エキスの種類は1種でもよいし2種以上を組み合わせてもよい。また、果汁を用いる場合は透明果汁、混濁果汁のどちらを用いてもよく、両方を併用してもよい。さらに、果汁と果実エキスとを併用することもできる。
【0017】
本発明において、飲料中の果汁および/または果実エキスの含有量は、好ましくは0.1~10w/w%、より好ましくは0.3~5w/w%、さらに好ましくは0.5~2w/w%である。ここで、果汁と果実エキスを併用している場合には、果汁および/または果実エキスの含有量とは、果汁の含有量と果実エキスの含有量を併せた値をいう。
【0018】
(吸光度)
本発明の飲料は、視覚的に透明の飲料であってもよいし、濁りのある飲料であってもよいが、濁りのある飲料であることが好ましい。そのメカニズムは明らかではないが、飲料に濁りがあると、本発明の飲用後に残る炭酸の不快な刺激の改善効果がより顕著に知覚できる傾向がある。飲料の濁りは、液体の濁度を測定する公知の手法を用いることにより、数値化することができる。例えば紫外可視分光光度計(UV-1600(株式会社島津製作所製)など)を用いて測定した波長660nmにおける吸光度をもって飲料の濁り度合を規定することができる。具体的には、本発明の飲料において、波長660nmの吸光度が0.03以上であることが好ましい。より好ましくは吸光度が0.03~0.3であり、さらに好ましくは0.04~0.1であり、最も好ましくは0.04~0.06である。波長660nmの吸光度が0.03以上であると、目視で濁りを明確に知覚できる。一方、波長660nmの吸光度が大きすぎる場合(例えば、0.3より大きい場合)、視覚的に濁りがかなり強いように見え、濁りの強い飲料は視覚的に炭酸飲料の爽快さが感じられにくいため、消費者に視覚の面から爽快さの少ない飲料と認識されるおそれがある。飲料に適度な濁りを付与する方法としては、特に限定されないが、乳化香料を添加する方法や混濁果汁あるいは混濁エキスを添加する方法などがある。飲料に均一な濁りを付与することができる点から、乳化香料を添加する方法が好ましい。
【0019】
(乳化香料)
本発明の明細書において、乳化香料とは、オイル香料を乳化剤で乳化した、水中油(O/W)型の香料をいう。なお、乳化香料には、オイルと剤以外の成分が含まれていてもよい。乳化香料を構成する乳化剤は、特に限定されるものではないが、例えば、親水基と親油基(疎水基)の両方を備えている物質を用いることでき、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム及びガティガムからなる群より選択される1種以上の乳化剤であることが好ましい。ここで、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、植物油由来のグリセリンを脱水縮合したポリグリセリンと植物油由来の脂肪酸とをエステル結合させた乳化剤である。アラビアガムは、ネムノキ科アカシア属アラビアゴムノキの樹液(分泌液)から得ることができ、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸などの糖から構成される多糖類を主成分とする乳化剤である。ガティガムは、ガティノキの樹液(分泌液)から得ることができ、アラビノース、ガラクトース、マンノース、キシロース、グルクロン酸などの糖から構成される多糖類を主成分とする乳化剤である。なお、上述した乳化剤は、重合度などの条件について特に限定されるものではない。また、オイルは、飲料に適した精油であればよく、例えば柑橘精油や植物油脂(パーム油、ヤシ油など)が挙げられるが、炭酸飲料の爽快感を強めるという観点から、柑橘精油を用いることが好ましい。柑橘精油としては、例えば、レモン精油、グレープフルーツ精油、オレンジ精油、ライム精油、和柑橘精油等を挙げることができる。なお、これら柑橘精油に含まれる具体的な香気成分としては、例えば、シトラール、リモネン、ヌートカトン、ゲラニオール、リナロール、デカナールを挙げることができる。乳化香料における乳化剤とオイルの配合比率は、オイルを乳化剤によって水中油(O/W)型に乳化できるものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、質量比(乳化剤:オイル)で1:2~10:1とすることができる。
【0020】
乳化香料の含有量は、飲料に付与する風味等に応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、例えば、10ppm~10000ppmとすることができる。
また、乳化香料を構成する各成分(乳化剤、オイル)の含有量についても、飲料に付与する風味等に応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではない。乳化香料を構成する各成分のうち、乳化剤は、飲料中5ppm~1250ppmとなる量で添加されていることが好ましく、25ppm~500ppmとなる量で添加されていることがより好ましい。なお、乳化剤の含有量は、例えば、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)により測定することができる。
【0021】
(その他成分)
本発明の飲料には、上記に示した各種成分に加えて、通常の飲料に用いられる香料、栄養強化剤(ビタミン類など)、酸化防止剤、保存料、食物繊維、及び品質安定剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0022】
(pH)
本発明の飲料のpHは、特に限定されないが、例えば6以下が好ましく、より好ましくは2.5~5、さらに好ましくは3~4である。飲料のpHが6以下である場合、炭酸飲料の刺激がシャープに感じられる。
【0023】
飲料のpHは、酸味料やpH調整剤を用いて適宜調整することができる。本発明の飲料で使用できる酸味料又はpH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸、アスコルビン酸、酒石酸、乳酸、フマル酸等の有機酸、リン酸等の無機酸及びそれらの塩類、または果汁類が挙げられる。具体的な酸味料としては、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、コハク酸を挙げることができる。
【0024】
本発明において、飲料のpHは公知の方法を用いて測定することができる。例えば、「JIS Z 8802:2011 pH測定方法」に従って、pHメーター(JIS Z
8805:2011 pH測定用ガラス電極)を用いて20℃にて飲料のpHを測定することができる。
【0025】
(飲料)
本発明の炭酸飲料は、アルコール分が1v/v%未満の清涼飲料であり、その種類としては、例えば、エナジー飲料、炭酸水、スパークリング飲料、サイダー、コーラ風味飲料、ジンジャー風味炭酸飲料、果汁風味炭酸飲料などが挙げられる。好ましくはスパークリング飲料あるいは果汁風味炭酸飲料である。一方、ビールテイスト飲料は、ビール特有のコクにより、本発明の効果が損なわれるおそれがあるので、ビールテイスト飲料でないことが好ましい。
【0026】
本発明の飲料は、容器に詰められた状態の容器詰飲料であることが好ましい。容器としては、特に限定されず、例えば、プラスチックボトル(PETボトルなど)、アルミ缶、スチール缶、瓶などを挙げることができる。なかでも、高ガス圧を実現させるため、プラスチックボトルであることが好ましい。
【0027】
また、本発明の飲料は、加熱殺菌された容器詰飲料とすることもできる。加熱殺菌を行う場合、その方法は特に限定されず、例えばUHT殺菌及びレトルト殺菌等の通常の手法を用いて行うことができる。加熱殺菌処理の温度は特に限定されないが、例えば65~130℃、好ましくは85~120℃である。加熱殺菌処理の時間は特に限定されないが、例えば10~40分である。ただし、上記の条件と同等の殺菌価が得られれば適当な温度で数秒、例えば5~30秒での加熱殺菌処理でもよい。
【0028】
(製造方法)
本発明の飲料は、上述した成分を適宜配合することにより製造することができる。本発明の飲料の製造において、各種成分の配合順序は特に限定されるものではない。また、本発明の飲料の製造においては、上記に示した成分及び材料を配合する工程やそれらの含有量を調整する工程も含むことができる。
【0029】
また、本発明の飲料の製造においては、飲料を加熱殺菌する工程が含まれ、また、飲料の容器詰めを行う工程も含まれる。これらの工程を経て、容器詰め飲料とすることができる。加熱殺菌を行う条件は上記に説明した通りであるが、特に限定されるわけではない。
【実施例0030】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<参考例>
甘味度と炭酸ガス圧の異なる4種類の炭酸飲料サンプルを調製した。具体的には、水に高果糖液糖を添加し、表2に示した甘味度になるよう各飲料サンプルを調製した。さらに、クエン酸を用いて各飲料サンプルのpHを3.5に調整した後、表2に示した炭酸ガス圧となるように炭酸ガスを含有させ、PETボトルに充填して各種飲料を得た。得られた飲料サンプルについて、5名の専門パネルにて官能評価を行った。官能評価としては、飲用後に残る炭酸の不快な刺激について、以下の評価基準に従って3段階で評価を行った。評価結果については、専門パネル各自が評価を行った後、パネル全員で協議して最終的な評価結果を決定した。
(評価基準)
3:飲用後に残る炭酸の不快な刺激を感じない
2:飲用後に残る炭酸の不快な刺激を少し感じる
1:飲用後に残る炭酸の不快な刺激をとても感じる
【0031】
【表2】
【0032】
結果は上記の通りであり、炭酸ガス圧が3.0kgf/cmで甘味度が2.0以下の飲料(サンプルA及びB)については、飲用後に残る炭酸の不快な刺激が感じられるが、炭酸ガス圧が3.0kgf/cmで甘味度が5.0の飲料(サンプルC)については、飲用後に残る炭酸の不快な刺激は感じられなかった。また、炭酸ガス圧が2.0kgf/cmの飲料(サンプルD)は、甘味度が2.0以下であっても、飲用後に残る炭酸の不快な刺激は感じられなかった。
【0033】
<実験例1>
高果糖液糖、エタノール、プロピレングリコールの各種成分を水に添加し、各種飲料サンプルの甘味度及び最終濃度を表3に示した値となるように調製し、pHをクエン酸を用いて3.5に調整した。なお、飲料サンプル12については、甘味度の調整は、高果糖液糖の代わりに、アセスルファムカリウム(Celanese Production Germany GMbH & Co.KG製、商品名:サネット(登録商標))を用いた。調整したサンプルに炭酸ガス圧が3.0kgf/cmとなるように炭酸ガスを含有させ、PETボトルに充填して各種飲料を得た
【0034】
得られた飲料サンプルについて、5名の専門パネルにて官能評価を行った。官能評価は、飲用後に残る炭酸の不快な刺激について、下に示す評価基準に従って評価した。評価結果の点数は、5名の専門パネルによる評価点の平均値とした。
【0035】
(評価基準)
5:飲用後に残る炭酸の不快な刺激を感じない(参考例Dと同程度)
4:参考例Dに比べると飲用後に残る炭酸の不快な刺激がわずかに感じられるが気にならないレベルである
3:参考例Dに比べると飲用後に残る炭酸の不快な刺激を明確に感じるが許容できるレベルである
2:参考例Dに比べると飲用後に残る炭酸の不快な刺激を明確に感じ、許容できないレベルであるが、参考例Aに比べると不快な刺激は少ない
1:飲用後に残る炭酸の不快な刺激を強く感じる(参考例Aと同程度)
【0036】
【表3】
【0037】
官能評価の結果は上記の通りである。甘味度が0.6~2.0で、炭酸ガス圧が3.0kgf/cmの飲料において、エタノールおよび/またはプロピレングリコールを0.005v/v%以上含有させることで、飲用後に残る炭酸の不快な刺激が改善されることがわかった(サンプル3~8、10~12)。また、甘味料は、糖類であっても高甘味度甘味料であっても、同様の効果が得られることがわかった。一方、甘味度が0である無糖飲料(サンプル9)については、0.1v/v%のエタノールを含有させても飲用後に残る炭酸の不快な刺激の改善効果はほとんど得られなかった。また、炭酸ガス圧が4.0kgf/cmの飲料においても、0.1v/v%のエタノールを含有させることで、飲用後に残る炭酸の不快な刺激が改善されることがわかった(サンプル13)。
【0038】
<実験例2>
高果糖液糖、エタノール、グレープフルーツ透明果汁、りんご透明果汁、レモンエキスの各種成分を水に添加した。各種成分の最終濃度を表4に示した値となるようにし、各種飲料サンプルの甘味度を1.0となるように高果糖液糖を用いて調整し、pHをクエン酸を用いて3.5に調整した。調整したサンプルに炭酸ガス圧が3.0kgf/cmとなるように炭酸ガスを含有させ、PETボトルに充填して各種飲料を得た。
【0039】
得られた飲料サンプルについて、5名の専門パネルにて官能評価を行った。官能評価は、実験例1と同様にして行った。
【0040】
【表4】
【0041】
官能評価の結果は上記の通りである。甘味度が1.0で、炭酸ガス圧が3.0kgf/cmの飲料において、エタノールを0.1v/v%含有させることで、飲用後に残る炭酸の不快な刺激が改善されるが、さらに果汁や果実エキスを含有させることで、その効果が顕著に得られることがわかった。
【0042】
<実験例3>
高果糖液糖、乳化香料(乳化剤:アラビアガム20%含有、柑橘類精油)、乳化香料(乳化剤:グリセリン脂肪酸エステル9%含有、柑橘類精油)、エタノールの各種成分を水に添加し、各種飲料サンプルの甘味度を1.0に調整した。また、各種飲料サンプルの波長660nmの吸光度を、表5に示した乳化香料を用いて表5に示した値となるように調整した。pHはクエン酸を用いて3.5に調整した。炭酸ガス圧が3.0kgf/cmとなるように炭酸ガスを含有させ、PETボトルに充填して各種飲料を得た。得られた飲料サンプルについて、5名の専門パネルにて官能評価を行った。官能評価は、実験例1と同様にして行った。なお、飲料サンプル17~20は目視にて濁りが確認できた。
【0043】
【表5】
【0044】
官能評価の結果は上記の通りである。甘味度が1.0で、炭酸ガス圧が3.0kgf/cmの飲料において、エタノールを0.1v/v%含有させることで、飲用後に残る炭酸の不快な刺激が改善されるが、さらに波長660nmにおける吸光度を0.03以上となるよう濁らせることで、その効果が顕著に得られることがわかった。