(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115789
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】水素ガス発生装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/02 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
C01B3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157388
(22)【出願日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2021012160
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】519250327
【氏名又は名称】株式会社XMAT
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】加納 純也
(72)【発明者】
【氏名】面 政也
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140BA02
4G140BB03
(57)【要約】
【課題】廃棄物をもとにした水素製造で、水素ガスを量産する。
【解決手段】水素ガス発生装置は、パージ室101、パージ機構102、加熱炉103、ガス取出部104を備える。例えば、大地の側から見て、加熱炉103の上にパージ室101が配置されている。パージ室101は、廃材とガス化剤と触媒とを混合して粉砕して作製した混合粉末が投入される。パージ機構102は、混合粉末が投入されたパージ室101の内部から空気をパージする。加熱炉103は、パージ室101と連通部103aを介して連通し、内部の空気がパージされたパージ室101から、混合粉末が搬入(投入)される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックが含まれる廃材とガス化剤と触媒とを混合して粉砕して作製した混合粉末が投入されるパージ室と、
前記混合粉末が投入された前記パージ室の内部から空気をパージするパージ機構と、
前記パージ室と連通部を介して連通し、内部の空気がパージされた前記パージ室から、前記混合粉末が搬入され、搬入された前記混合粉末を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉の内部で、前記混合粉末を加熱することにより発生した水素ガスを取り出すガス取出部と
を備える水素ガス発生装置。
【請求項2】
廃材とガス化剤と触媒とを混合して粉砕して作製した混合粉末が投入されるパージ室と、
前記混合粉末が投入された前記パージ室の内部から空気をパージするパージ機構と、
前記パージ室と連通部を介して連通し、内部の空気がパージされた前記パージ室から、前記混合粉末が搬入され、搬入された前記混合粉末を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉の内部で、前記混合粉末を加熱することにより発生した水素ガスを取り出すガス取出部と
を備える水素ガス発生装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の水素ガス発生装置において、
前記ガス化剤は、貝殻であることを特徴とする水素ガス発生装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水素ガス発生装置において、
前記加熱炉は、前記混合粉末を500~600℃の範囲で加熱することを特徴とする水素ガス発生装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水素ガス発生装置において、
大地の側から見て、前記加熱炉の上に前記パージ室が配置されていることを特徴とする水素ガス発生装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水素ガス発生装置において、
前記パージ機構は、前記パージ室に不活性ガスまたは二酸化炭素ガスを供給するガス供給機構と、前記パージ室の内部のガスを排気する排気部とを備えることを特徴とする水素ガス発生装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水素ガス発生装置において、
前記加熱炉の内部で前記混合粉末を加熱することにより発生した固体残渣が取り出される排出部と、
前記排出部で取り出された灰より、前記触媒を回収する触媒回収部と
をさらに備えることを特徴とする水素ガス発生装置。
【請求項8】
請求項7記載の水素ガス発生装置において、
前記触媒は、ニッケルまたはニッケル化合物であり、
前記触媒回収部は、磁力により前記触媒を回収する
ことを特徴とする水素ガス発生装置。
【請求項9】
請求項7または8記載の水素ガス発生装置において、
前記排出部に設けられた排出部ゲートバルブを備えることを特徴とする水素ガス発生装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の水素ガス発生装置において、
前記パージ室の、前記混合粉末が投入される投入口に設けられた投入口ゲートバルブと、
前記連通部に設けられた連通部ゲートバルブと
を備えることを特徴とする水素ガス発生装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の水素ガス発生装置において、
前記加熱炉に、水を供給する水供給機構をさらに備えることを特徴とする水素ガス発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃材より水素ガスを発生させる水素ガス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石化燃料の代わりに、水素を用いる技術の開発が盛んに行われている。例えば、実用的な燃料電池の開発がある。このような中で、水素の製造技術の確立が望まれている。例えば、バイオマスから水素ガスを製造する技術が提案されている。また、バイオマスの資源としてのセルロースや下水汚泥などの廃棄物から水素を製造する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術は、実験的な段階であり、量産の技術が確立していないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、廃棄物をもとにした水素製造で、水素ガスが量産できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水素ガス発生装置は、プラスチックが含まれる廃材とガス化剤と触媒とを混合して粉砕して作製した混合粉末が投入されるパージ室と、混合粉末が投入されたパージ室の内部から空気をパージするパージ機構と、パージ室と連通部を介して連通し、内部の空気がパージされたパージ室から、混合粉末が搬入され、搬入された混合粉末を加熱する加熱炉と、加熱炉の内部で、混合粉末を加熱することにより発生した水素ガスを取り出すガス取出部とを備える。
【0007】
本発明に係る水素ガス発生装置は、廃材とガス化剤と触媒とを混合して粉砕して作製した混合粉末が投入されるパージ室と、混合粉末が投入されたパージ室の内部から空気をパージするパージ機構と、パージ室と連通部を介して連通し、内部の空気がパージされたパージ室から、混合粉末が搬入され、搬入された混合粉末を加熱する加熱炉と、加熱炉の内部で、混合粉末を加熱することにより発生した水素ガスを取り出すガス取出部とを備える。
【0008】
上記水素ガス発生装置の一構成例において、ガス化剤は、貝殻である。
【0009】
上記水素ガス発生装置の一構成例において、加熱炉は、混合粉末を500~600℃の範囲で加熱する。
【0010】
上記水素ガス発生装置の一構成例において、大地の側から見て、加熱炉の上にパージ室が配置されている。
【0011】
上記水素ガス発生装置の一構成例において、パージ機構は、パージ室に不活性ガスまたは二酸化炭素ガスを供給するガス供給機構と、パージ室の内部のガスを排気する排気部とを備える。
【0012】
上記水素ガス発生装置の一構成例において、加熱炉の内部で混合粉末を加熱することにより発生した固体残渣が取り出される排出部と、排出部で取り出された灰より、触媒を回収する触媒回収部とをさらに備える。
【0013】
上記水素ガス発生装置の一構成例において、触媒は、ニッケルまたはニッケル化合物であり、触媒回収部は、磁力により触媒を回収する。
【0014】
上記水素ガス発生装置の一構成例において、排出部に設けられた排出部ゲートバルブを備える。
【0015】
上記水素ガス発生装置の一構成例において、パージ室の、混合粉末が投入される投入口に設けられた投入口ゲートバルブと、連通部に設けられた連通部ゲートバルブとを備える。
【0016】
上記水素ガス発生装置の一構成例において、加熱炉に、水を供給する水供給機構をさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、パージ室を設けたので、廃棄物をもとにした水素製造で、水素ガスが量産できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る水素ガス発生装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る水素ガス発生装置について
図1を参照して説明する。この水素ガス発生装置は、パージ室101、パージ機構102、加熱炉103、ガス取出部104を備える。例えば、大地の側から見て、加熱炉103の上にパージ室101が配置されている。
【0020】
パージ室101は、例えばプラスチックが含まれる廃材とガス化剤と触媒とを混合して粉砕して作製した混合粉末が投入される。ガス化剤は、貝殻である。パージ室101の、例えば上部には、混合粉末が投入される投入口111を備え、投入口111には、投入口ゲートバルブ121が設けられている。
【0021】
パージ機構102は、混合粉末が投入されたパージ室101の内部から空気をパージする。パージ機構102は、パージ室101にパージガスを供給するガス供給機構105と、パージ室101の内部のガスを排気する排気部106とを備える。パージガスは、不活性ガスまたは二酸化炭素ガスである。
【0022】
加熱炉103は、パージ室101と連通部103aを介して連通している。加熱炉103には、内部の空気がパージされたパージ室101から、混合粉末が搬入(投入)される。加熱炉103は、搬入された混合粉末を加熱する。加熱炉103は、混合粉末を500~600℃の範囲で加熱する。後述する混合粉末からの水素ガス生成は、500℃以上の加熱が重要となる。一方、混合粉末を用いることにより、加熱の温度は、600℃を超えて高くする必要がない。このため、加熱炉103は、電気炉などの、より高い温度とする設備は必要とせず、焼却炉などの廃熱を利用することも可能となる。なお、連通部103aには、連通部ゲートバルブ122が設けられている。
【0023】
ガス取出部104は、加熱炉103の内部で、混合粉末を加熱することにより発生した水素ガスを取り出す。ガス取出部104は、熱交換器109および集塵装置110を備える。集塵装置110は、例えば、バグフィルタから構成することができる。
【0024】
また、この水素ガス発生装置は、加熱炉103の内部で混合粉末を加熱することにより発生した固体残渣が取り出される排出部107を備える。排出部107と加熱炉103との間には、排出部ゲートバルブ123が設けられている。また、この水素ガス発生装置は、排出部107で取り出された固体残渣より、触媒を回収する触媒回収部108を備える。例えば、触媒は、ニッケルとすることができ、触媒回収部108は、磁力により触媒を回収する。また、触媒は、ニッケル化合物とすることができる。また、この水素ガス発生装置は、加熱炉103に、水を供給する水槽(水供給機構)112を備える。
【0025】
例えば、第1工程として、連通部ゲートバルブ122を閉状態として、投入口ゲートバルブ121を開状態とし、投入口111より混合粉末を、パージ室101に投入する。次いで、第2工程として、投入口ゲートバルブ121を閉状態とし、バルブ131を開状態として、パージ機構102によりパージ室101にパージガスを供給し、混合粉末が投入されたパージ室101の内部から空気をパージする。
【0026】
次に、第3工程として、投入口ゲートバルブ121を閉状態とし、連通部ゲートバルブ122を開状態として、パージ室101の内部の混合粉末を、連通部103aを介して加熱炉103に投入する。このとき、パージ室101において、空気がパージされているので、加熱炉103に空気(特に水素生成に障害となる窒素ガスおよび酸素ガスなど)が入り込むことがない。なお、排出部ゲートバルブ123が閉状態とされている。大地の側から見て、加熱炉103の上にパージ室101が配置されていれば、連通部ゲートバルブ122を開状態とすることで、加熱炉103の側に混合粉末が落下する。
【0027】
次に、第4工程として、連通部ゲートバルブ122を閉状態として、加熱炉103を動作させ、パージガスでパージされている内部を加熱状態とする。例えば、加熱炉103の内部の温度を600℃とする。この状態で、バルブ133を開状態として水槽112内にパージガスを供給して加圧し、バルブ134を開状態として水槽112に収容されている水を加熱炉103に導入することで、加熱炉103の内部の加熱されている混合粉末に、水蒸気を供給する。ここで、パージガスとして二酸化炭素ガスを用いている場合、バルブ132を開状態として加熱炉103内に二酸化炭素ガスを導入し、加熱されている混合粉末に二酸化炭素ガスを供給することができる。このように、二酸化炭素ガスを供給することで、水素ガスの生成反応が、より促進されることが期待される。なお、二酸化炭素ガスの一部または全部を一酸化炭素ガスに置き換えても同様の効果を得ることができる。
【0028】
上述したように加熱される混合粉末は、水蒸気が供給されている雰囲気で加熱されることで、含まれているプラスチック、木材,皮革などの熱分解や、ガス化剤として含まれている貝殻の炭酸カルシウムの、二酸化炭素と酸化カルシウムとへの分解などの反応により、水素が生成される。なお、貝殻はガス化剤の一例にすぎず、カルシウムが含まれていれば建設廃材(石膏ボード、コンクリート廃材など)を用いることができ、貝殻に限定されない。生成された水素は、バルブ135を開状態としてガス取出部104より取り出す。ガス取出部104で取り出す過程で、熱交換器109により熱を回収する。また、集塵装置110により、ガス中の煤塵をろ過捕集する。
【0029】
一方、上述したように、パージガスでパージされた雰囲気で、水蒸気が供給されている混合粉末を加熱することで水素を生成した後の固体残渣は、第5工程として、排出部ゲートバルブ123を開状態とすることで、排出部107に排出する。固体残渣を排出部107に排出した後、直ちに、排出部ゲートバルブ123を閉状態とする。排出部107に排出した固体残渣は、触媒回収部108に搬出される。固体残渣を搬入した触媒回収部108では、固体残渣より触媒を回収する。回収した触媒は、混合粉末の作製に再利用する。
【0030】
実施の形態によれば、混合粉末は、まず、パージ室101に投入され、パージ室101で、空気がパージされて加熱炉103に移送される。加熱炉103においては、パージをすることがない。このため、第3工程を実施している間に、次の処理対象の混合粉末をパージ室101に投入し、第1工程および第2工程を実施しておくことができる。このように、実施の形態によれば、第1工程、第2工程と、第3工程とを並列して実施できるので、加熱処理の第3工程を、パージのために停止することなく連続して実施できるようになる。この結果、実施の形態によれば、廃棄物をもとにした水素製造で、水素が量産できるようになる。
【0031】
また、水素の生成とともに生成される固体残渣から、触媒を回収して再利用するので、コストの低減が可能である。固体残渣においては、触媒が凝集しているが、混合粉末は、粉砕して作製するので、問題は発生しない。また、ガス取出部104において、二酸化炭素ガスを回収することもできる。例えば、圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption;PSA)法により、二酸化炭素が回収できる。二酸化炭素に対して吸着力の高い吸着剤を用いて、加圧したガス中の二酸化炭素を優先的に吸着させ、次いで圧力を低下させることにより、ガス中の二酸化炭素を回収することができる(参考文献1)。二酸化炭素ガスを回収することで、ガス供給機構105において、パージガスとして再利用することができる。また、二酸化炭素ガスを回収することで、例えば、二酸化炭素ガスの排出量の削減につながる。
【0032】
なお、パージ室に投入された混合粉末を加熱炉に投入する際、混合粉末がパージ室に残留しないよう、水流により押し流すことができる。この場合、押し流した水は、水素生成に必要な水蒸気発生に兼用することができる。また、水流に寄らず、パージガスなどの気流を用いて、混合粉末がパージ室に残留しないよう押し流すこともできる。また、原料となる廃材を粉砕・混合する機構を、投入口に連結することができる。また、原料となる廃材は、投入口から投入することが可能な形状であれば、必ずしも粉砕しなくてもよく、一部または全部が元の形状を保っている状態とすることもできる。
【0033】
なお、上述では、廃材としてプラスチックが含まれるものを例に説明したが、廃材は、プラスチックが含まれるものに限られない。例えば、木材、樹皮、木質チップなどを含むもの、木質バイオマスなどを処理対象の廃材とすることができる。例えば、木質バイオマスを処理対象の廃材としても、触媒を用いる本発明によれば、実質的にタールを発生させることがない。また、廃プラスチック、下水汚泥、食品廃棄物など有機物を処理対象の廃材とすることができる。また、本発明では、廃材とガス化剤と触媒とを混合して粉砕して作製した混合粉末が投入されるので、処理により発生する固体残渣は、粉末状となり、後処理が容易である。
【0034】
以上に説明したように、本発明によれば、パージ室を設けたので、廃棄物をもとにした水素製造で、水素ガスが量産できるようになる。本発明によれば、廃棄物より水素ガスを生成するので、廃棄物の減容化と、エネルギー回収とが、同時に達成できる。
【0035】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【0036】
[参考文献]斉間 等 他、「PSA法による高炉ガスからの炭酸ガス分離技術の開発」、JFE技報、No.32、44-49頁、2013年。
【符号の説明】
【0037】
101…パージ室、102…パージ機構、103…加熱炉、103a…連通部、104…ガス取出部、105…ガス供給機構、106…排気部、107…排出部、108…触媒回収部、109…熱交換器、110…集塵装置、111…投入口、112…水槽(水供給機構)、121…投入口ゲートバルブ、122…連通部ゲートバルブ、123…排出部ゲートバルブ、131,132,133,134,135…バルブ。