(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011582
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】鳥ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置
(51)【国際特許分類】
A22C 21/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112809
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】504225356
【氏名又は名称】プライフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】市来 清臣
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011FA03
4B011FA05
4B011FA06
(57)【要約】
【課題】 鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を確実に分離する装置を提供する。
【解決手段】 鶏ガラを係止すると共に胸骨を正面から見て胸骨稜と直交する方向へ鶏ガラを搬送する搬送装置と、鶏ガラ搬送経路の途上に配設され胸骨を正面から見て胸骨稜に直交して延在し胸骨稜軟骨部位を切断する第1刃と、鶏ガラ搬送経路の途上に且つ第1刃よりも下流側に配設され胸骨を正面から見て胸骨稜に直交して延在し胸骨稜軟骨部位と隣接する枝骨の間に延在する膜に切り込みを入れる第2刃と、第1刃によって切断された胸骨稜軟骨部位を第2刃に押圧して鶏ガラ搬送方向への移動を阻止する移動阻止装置と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏ガラを係止すると共に胸骨を正面から見て胸骨稜と直交する方向へ鶏ガラを搬送する搬送装置と、鶏ガラ搬送経路の途上に配設され胸骨を正面から見て胸骨稜に直交して延在し胸骨稜軟骨部位を切断する第1刃と、鶏ガラ搬送経路の途上に且つ第1刃よりも下流側に配設され胸骨を正面から見て胸骨稜に直交して延在し胸骨稜軟骨部位と隣接する枝骨の間に延在する膜に切り込みを入れる第2刃と、第1刃によって切断された胸骨稜軟骨部位を第2刃に押圧して胸骨稜軟骨部位の鶏ガラ搬送方向への移動を阻止する移動阻止装置と、を備えることを特徴とする鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置。
【請求項2】
第1刃は固定刃であることを特徴とする請求項1に記載の鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置。
【請求項3】
第1刃は回転刃であることを特徴とする請求項1に記載の鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置。
【請求項4】
第2刃は、切っ先部と胸骨稜軟骨部位の長さよりも狭幅の均一幅の刃部とを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置。
【請求項5】
移動阻止装置は、押圧部材と、胸骨を側面から見て押圧部材を第2刃に接近離隔させる駆動装置とを有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置。
【請求項6】
押圧部材は、胸骨稜軟骨部位の表面形状と相補形状の端面を有することを特徴とする請求項5に記載の鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鶏ガラを係止すると共に胸骨を正面から見て胸骨稜と直交する方向へ鶏ガラを搬送する搬送装置と、鶏ガラ搬送経路の途上に配設され胸骨を正面から見て胸骨稜に直交して延在し胸骨稜軟骨部位を切断する第1固定刃と、鶏ガラ搬送経路の途上に且つ第1固定刃よりも下流側に配設され胸骨を正面から見て胸骨稜に直交して延在し胸骨稜軟骨部位と隣接する枝骨の間に延在する膜(
図1参照)を胸骨稜軟骨部位先端側縁部まで切断する側面視三角形の第2固定刃と、第2固定刃に沿って延在し第2固定刃と協働して胸骨稜軟骨部位を挟持する案内棒とを備えることを特徴とする鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置においては、移動する鶏ガラに第1固定刃が係合して胸骨稜軟骨部位を切断し、切断した胸骨稜軟骨部位を案内棒と第2固定刃で挟持して胸骨稜軟骨部位の移動を抑制しつつ、第2固定刃が、胸骨稜軟骨部位と隣接する枝骨との間に延在する膜を、胸骨稜軟骨部位の切断部から胸骨稜軟骨部位先端側縁部まで切断することによって、胸骨稜軟骨部位を鳥ガラから分離する。
鶏ガラから分離された胸骨稜軟骨部位は、第2固定刃と案内棒の間の隙間から押し出されて回収されるが、前記隙間から押し出されずに当該隙間に多数の胸骨稜軟骨部位が滞留する場合がある。この場合、滞留した胸骨稜軟骨部位によって妨げられて後続の胸骨稜軟骨部位の移動が停止し、第2固定刃による切断途中の膜が鶏ガラの移動に伴って引き伸ばされ、当該膜が引きちぎられる前に、滞留していた胸骨稜軟骨部位が後続の胸骨稜軟骨部位に押されて第2固定刃と案内棒の間の隙間から押し出されて滞留状態が解除され、移動が停止していた後続の胸骨稜軟骨部位が移動を再開し、引き伸ばされた膜が弛んだ状態で切断されずに第2固定刃を通過し、切断されずに残存した膜を介して鶏ガラに接続した後続の胸骨稜軟骨部位が第2固定刃を通過して、胸骨稜軟骨部位の分離に失敗する事態が発生ずる。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を確実に分離する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、鶏ガラを係止すると共に胸骨を正面から見て胸骨稜と直交する方向へ鶏ガラを搬送する搬送装置と、鶏ガラ搬送経路の途上に配設され胸骨を正面から見て胸骨稜に直交して延在し胸骨稜軟骨部位を切断する第1刃と、鶏ガラ搬送経路の途上に且つ第1刃よりも下流側に配設され胸骨を正面から見て胸骨稜に直交して延在し胸骨稜軟骨部位と隣接する枝骨の間に延在する膜に切り込みを入れる第2刃と、第1刃によって切断された胸骨稜軟骨部位を第2刃に押圧して胸骨稜軟骨部位の鶏ガラ搬送方向への移動を阻止する移動阻止装置と、を備えることを特徴とする鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置を提供する。
第1刃を用いて胸骨稜軟骨部位を切断し、第2刃を用いて胸骨稜軟骨部位と隣接する枝骨の間に延在する膜に切り込みを入れ、移動阻止装置を用いて胸骨稜軟骨部位の鶏ガラ搬送方向への移動を阻止して、切り込みを入れた前記膜を引きちぎることにより、胸骨稜軟骨部位を鶏ガラから確実に分離することができる。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、第1刃は固定刃である。
本発明の好ましい態様においては、第1刃は回転刃である。
第1刃は固定刃でも回転でも良い。固定刃には分離装置の構成を簡素化できる利点がある一方スムーズに切断するには形状の適正化を必用とするという欠点がある。回転刃には、スムーズに切断できる利点がある一方分離装置の構成を複雑化する欠点がある。
本発明の好ましい態様においては、第2刃は、切っ先部と胸骨稜軟骨部位の長さよりも狭幅の均一幅の刃部とを有する。
第2刃は、胸骨稜軟骨部位と隣接する枝骨の間に延在する膜を胸骨稜軟骨部位先端側縁部まで切断するものではなく、前記膜に切り込みを入れるものなので、切っ先部と胸骨稜軟骨部位の長さよりも狭幅の均一幅の刃部とを有すれば良い。刃部の幅が広いと、刃部から胸骨稜軟骨部位に印加される摩擦抵抗力が増大し、摩擦抵抗力と移動する鶏ガラから前記膜を介して胸骨稜軟骨部位の先端部に印加される牽引力とが惹起する回転モーメントが増大し、胸骨稜軟骨部位が傾いて、移動阻止装置が適正に胸骨稜軟骨部位に係合できなくなる。
本発明の好ましい態様においては、移動阻止装置は、押圧部材と、胸骨を側面から見て押圧部材を第2刃に接近離隔させる駆動装置とを有する。
押圧部材を第2刃に接近させ胸骨稜軟骨部位に当接させることにより、第1刃によって切断された胸骨稜軟骨部位の鶏ガラ搬送方向への移動を確実に阻止することができる。他方、第2刃によって切り込みが入れられた胸骨稜軟骨部位と隣接する枝骨の間に延在する膜が鶏ガラの移動に伴って引きちぎられた後、押圧部材を第2刃から離隔させることにより、鶏ガラから分離された胸骨稜軟骨部位を第2刃から分離して自動回収することができる。
本発明の好ましい態様においては、押圧部材は、胸骨稜軟骨部位の表面形状と相補形状の端面を有する。
胸骨稜軟骨部位の表面形状と相補形状の端面を胸骨稜軟骨部位に押し当てることにより、押圧部材と胸骨稜軟骨部位の接触面積を増加させて、胸骨稜軟骨部位を第2刃に強く押し当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本発明の実施例に係る鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置の一部を構成する鶏ガラ搬送装置の構造図である。
【
図3】本発明の実施例に係る鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置の一部を構成する第1刃と第2刃の構造図である。
【
図7】本発明の実施例に係る鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置の一部を構成する移動阻止装置の構造と作動を示す図である。
【
図8】本発明の実施例に係る鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置によって鶏ガラから分離された胸骨稜軟骨部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例に係る鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置を説明する。以下の説明において、鶏骨格の部位の参照番号は特許文献1の
図11に示された参照番号を極力使用する。
図2に示すように、鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置は、食鳥屠体上半部から胸肉とササミ肉とを取り外した後の残余物である鶏ガラ100を係止すると共に、
図2に白抜矢印で示す、胸骨101を正面から見て胸骨稜130の長手延在方向と直交する方向へ、固定レール1に沿って鶏ガラ100を搬送する搬送装置2を備えている。
図3に示すように、鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置は、鶏ガラ100の搬送経路の途上に配設され、胸骨101を正面から見て胸骨稜130の長手延在方向に直交して延在し、胸骨稜軟骨部位132を切断する第1刃3を備えている。第1刃3は回転駆動される丸刃として構成されている。
図3に示すように、鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置は、鶏ガラ100の搬送経路の途上に、且つ鶏ガラ100の搬送方向に関して第1刃3よりも下流側に配設され、胸骨101を正面から見て胸骨稜130の長手延在方向に直交して延在し、胸骨稜軟骨部位132と隣接する枝骨144の間に延在する膜146に切り込みを入れる第2刃4を備えている。第2刃4は、切っ先部4aと胸骨稜軟骨部位132の長さよりも狭幅の均一幅の刃部4bとを有する刃本体と、刃本体と一体であり且つ刃本体に直交する案内板4cと有する固定刃として構成されている。
図7に示すように、鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置は、第1刃3によって切断された胸骨稜軟骨部位132を第2刃4の刃部4bに押圧して、胸骨稜軟骨部位132の鶏ガラ100搬送方向への移動を阻止する移動阻止装置5を備えている。移動阻止装置5は、胸骨稜軟骨部位132に当接する押圧部材5aと、
図7で一点鎖線と実線で示すように、胸骨101を側面から見て押圧部5aを第2刃4の刃部4bに接近離隔させる駆動装置であるエアシリンダー5bとを有している。押圧部材5aの端面は胸骨稜軟骨部位132の表面形状と相補形状に形成されている。
【0009】
本発明の実施例に係る鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置の作動を説明する。
図4に示すように、白抜矢印方向へ移動する鶏ガラ100が、第1刃3を通過する。回転丸刃の第1刃3が、胸骨稜軟骨部位132の長手延在方向の基部に係合し、当該基部で胸骨稜軟骨部位132を切断する。
図5に示すように、白抜矢印方向へ移動する鶏ガラ100に、第2刃4の案内板4cが係合し、胸骨稜軟骨部位132の切断部の裂け目に進入する。
図6に示すように、白抜矢印方向へ移動する鶏ガラ100に、案内板4cによって案内された第2刃4の切っ先4aが接近し、胸骨稜軟骨部位132と隣接する枝骨144との間に延在する膜146に突き刺さり切り込みを入れる。切り込みの幅は鶏ガラ100の移動と共に拡大し、刃部4bの幅まで拡大する。刃部4bは比較的狭幅なので、刃部4bから胸骨稜軟骨部位132に印加される摩擦抵抗力は小さい。従って当該摩擦抵抗力と移動する鶏ガラ100から膜146を介して胸骨稜軟骨部位132の先端部に印加される牽引力とが惹起する回転モーメントは小さい。この結果、胸骨稜軟骨部位132は傾かず、第2刃の刃部4bと直交する状態を維持する。
図7に示すように、移動阻止装置5のエアシリンダー5bが作動し、押圧部材5aが、
図7に実線で示す第2刃4から離隔した退避位置から、
図7に一点鎖線で示す第2刃4に接近した稼働位置へ移動する。第2刃の刃部4bと直交する状態を維持した胸骨稜軟骨部位132に押圧部材5aが当接し、胸骨稜軟骨部位132を第2刃4の刃部4bに押圧して、
図6に白抜矢印で示す鶏ガラ100の移動方向への胸骨稜軟骨部位132の移動を阻止する。
鶏ガラ100は白抜矢印で示す方向へ移動するので、移動を阻止された胸骨稜軟骨部位132と鶏ガラ100一部を形成し鶏ガラ100と一体となって白抜き矢印方向へ移動する枝骨144の間で延在し、且つ第2刃4によって切り込みが入れられた膜146が、引きちぎられる。この結果、
図8に示すように、胸骨稜軟骨部位132が鶏ガラ100から分離される。
胸骨稜軟骨部位132が鶏ガラ100から分離された後、移動阻止装置5のエアシリンダー5bが作動し、押圧部材5aが、
図7に一点鎖線で示す第2刃4に接近した稼働位置から
図7に実線で示す第2刃4から離隔した退避位置へ移動する。第2刃4と押圧部材5aとによる挟持が解除された胸骨稜軟骨部位132が第2刃4から離脱して自動回収される。
【0010】
上記説明から分かるように、第1刃3を用いて胸骨稜軟骨部位132を切断し、第2刃4を用いて胸骨稜軟骨部位132と隣接する枝骨144の間に延在する膜146に切り込みを入れ、移動阻止装置5を用いて胸骨稜軟骨部位132の鶏ガラ100搬送方向への移動を阻止して切り込みを入れた膜146を引きちぎることにより、胸骨稜軟骨部位132を鶏ガラ100から確実に分離することができる。
第1刃3を回転丸刃とすることにより、胸骨稜軟骨部位132をスムーズに切断できる利点が得られる。一方回転駆動装置を必用とするので分離装置の構成を複雑化する欠点もある。
第2刃4は、胸骨稜軟骨部位132と隣接する枝骨144の間に延在する膜146を胸骨稜軟骨部位132位先端側縁部まで切断するものではなく、膜146に切り込みを入れるものなので、切っ先部4aと胸骨稜軟骨部位132の長さよりも狭幅の均一幅の刃部4bとを有すれば良い。
押圧部材5aを第2刃4に接近させ胸骨稜軟骨部位132に当接させることにより、第1刃3によって切断された胸骨稜軟骨部位132の鶏ガラ100搬送方向への移動を確実に阻止することができる。一方、第2刃4によって切り込みが入れられた胸骨稜軟骨部位132と隣接する枝骨144の間に延在する膜146が引きちぎられた後、押圧部材5aを第2刃4から離隔させることにより、鶏ガラ100から分離された胸骨稜軟骨部位132を第2刃4から分離して自動回収することができる。
第2刃4の刃部4bが比較的狭幅で、胸骨稜軟骨部位132が第2刃の刃部4bと直交する状態を維持しているので、押圧部材5aは適正に胸骨稜軟骨部位132に当接することができる。
胸骨稜軟骨部位132の表面形状と相補形状の端面を胸骨稜軟骨部位132に押し当てることにより、押圧部材5aと胸骨稜軟骨部位132の接触面積を増加させて、胸骨稜軟骨部位132を第2刃4に強く押し当て、胸骨稜軟骨部位132の移動を確実に阻止することができる。
第1刃3を固定刃としても良い。固定刃には分離装置の構成を簡素化できる利点がある一方、胸骨稜軟骨部位をスムーズに切断するには形状の適正化を必用とするという欠点がある。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は、鶏ガラから胸骨稜軟骨部位を分離する装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0012】
1 レール
2 搬送装置
3 第1刃
4 第2刃
4a 切っ先
4b 刃部
4c 案内板
5 移動阻止装置
5a 押圧部材
5b エアシリンダー
100 鶏ガラ
101 胸骨
130 胸骨稜
132 胸骨稜軟骨部位
144 枝骨
146 膜