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特開2022-115845ゴム組成物およびタイヤにおける脂肪酸改質植物油
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115845
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびタイヤにおける脂肪酸改質植物油
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20220802BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20220802BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L91/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022011756
(22)【出願日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】17/160,472
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ケルシー・エリザベス・キャントウェル
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ジョン・カリグ
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA02
3D131BA08
3D131BA18
3D131BC02
3D131BC13
3D131BC18
3D131BC19
3D131BC33
3D131BC51
4J002AC081
4J002AE052
4J002CD162
4J002DA046
4J002FD146
4J002GM01
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】ゴム組成物およびタイヤにおける脂肪酸改質植物油を提供すること。
【解決手段】本発明は、ゴム組成物およびタイヤにおける改質植物油の使用を対象とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造
【化1】
[式中、R、RおよびRは、独立して、C15~C20アルケニル、C15~C20アルキルであり、任意に芳香族基を含み;Rは、-O-C(=O)-Rであり、ここでRは、C15~C20アルケニルであり;各Rは、R、RまたはRのうちの1つの、第1の炭素原子に共有結合しており、第2の炭素原子は第1の炭素原子に隣接し、第2の炭素原子は-OH基で置換されており;mは、R基の数である]を特徴とする植物油誘導体を含む、加硫可能ゴム組成物。
【請求項2】
mが、1~5の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能ゴム組成物。
【請求項3】
Rが、オレエート、リノレエート、およびリノレネート基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能ゴム組成物。
【請求項4】
、R、およびRのそれぞれが、独立して、ステアリル、パルミチル、オレイル、リノレイル、およびリノレニル基からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能ゴム組成物。
【請求項5】
不飽和脂肪酸とエポキシ化植物油の反応生成物を特徴とする、加硫可能ゴム組成物。
【請求項6】
エポキシ化植物油が、エポキシ化大豆油、エポキシ化カノーラ油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化パーム油、エポキシ化ヒマワリ油、エポキシ化ヤシ油、およびエポキシ化コーン油からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の加硫可能ゴム組成物。
【請求項7】
不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項5に記載の加硫可能ゴム組成物。
【請求項8】
不飽和脂肪酸がオレイン酸であることを特徴とする、請求項5に記載の加硫可能ゴム組成物。
【請求項9】
請求項5に記載の加硫可能ゴム組成物を特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項10】
請求項1に記載の加硫可能ゴム組成物を特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項11】
請求項1に記載の加硫可能ゴム組成物を特徴とする製造物品であって、タイヤトレッド、靴、靴底、伝動ベルト、ホース、空気ばね、コンベヤベルト、トラックベルト、および防振装置からなる群から選択される、製造物品。
【請求項12】
請求項5に記載の加硫可能ゴム組成物を特徴とする製造物品であって、タイヤトレッド、靴、靴底、伝動ベルト、ホース、空気ばね、コンベヤベルト、トラックベルト、および防振装置からなる群から選択される、製造物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]混合中の加工を補助し、タイヤの成分としてのゴムコンパウンドの性能を向上させるために、ゴムコンパウンドに油が添加される。例えば、様々な油が、トラクションおよび/またはハンドリング、ドライグリップおよびウェットグリップを改善し得る。
【背景技術】
【0002】
[002]高フィラー含有量、高分子量エラストマーおよび機能性エラストマーを含む、より高性能のゴム組成物は、加工を改善しかつタイヤ性能を改善するための、油などの改良された加工助剤を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,242,534号
【特許文献2】米国特許第6,207,757号
【特許文献3】米国特許第6,133,364号
【特許文献4】米国特許第6,372,857号
【特許文献5】米国特許第5,395,891号
【特許文献6】米国特許第6,127,488号
【特許文献7】米国特許第5,672,639号
【特許文献8】米国特許第6,608,125号
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0130535号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、第62版、Institute of Petroleum、United Kingdom
【非特許文献2】米国化学会誌、第60巻、304頁(1930)
【非特許文献3】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、344~346頁
【発明の概要】
【0005】
[003]本発明は、構造
【0006】
【化1】
【0007】
[式中、R、RおよびRは、独立して、C15~C20アルケニル、C15~C20アルキルであり、任意に芳香族基を含み;Rは、-O-C(=O)-Rであり、式中、Rは、C15~C20アルケニルであり;各Rは、R、RまたはRのうちの1つの、第1の炭素原子に共有結合しており、第2の炭素原子は第1の炭素原子に隣接し、第2の炭素原子は-OH基で置換されており;mは、R基の数である]を含む植物油誘導体を含むゴム組成物を対象とする。
【0008】
[004]本発明はさらに、このゴム組成物を含む空気入りタイヤを対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[005]構造
【0010】
【化2】
【0011】
[式中、R、RおよびRは、独立して、C15~C20アルケニル、C15~C20アルキルであり、任意に芳香族基を含み;Rは、-O-C(=O)-Rであり、式中、Rは、C15~C20アルケニルであり;各Rは、R、RまたはRのうちの1つの、第1の炭素原子に共有結合しており、第2の炭素原子は第1の炭素原子に隣接し、第2の炭素原子は-OH基で置換されており;mは、R基の数である]を含む植物油誘導体を含むゴム組成物が開示される。
【0012】
[006]植物油誘導体は、エポキシ化植物油の改質によって製造することができる。
[007]一実施形態では、R基の数mは、1~5の範囲である。
一実施形態では、Rは、オレエート、リノレエート、およびリノレネート基からなる群から選択される。
【0013】
[008]一実施形態では、R、R、およびRのそれぞれが、独立して、ステアリル、パルミチル(palymityl)、オレイル、リノレイル、およびリノレニル基からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0014】
[009]一実施形態では、植物油誘導体は、不飽和脂肪酸とエポキシ化植物油の反応生成物である。
この実施形態では、エポキシ化植物油は、エポキシ化大豆油、エポキシ化カノーラ油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化パーム油、エポキシ化ヒマワリ油、エポキシ化ヤシ油、およびエポキシ化コーン油からなる群から選択される。
【0015】
[010]この実施形態では、不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸からなる群から選択される少なくとも1つである。
[011]植物油誘導体は、加硫可能ゴム組成物に使用することができる。一実施形態では、植物油誘導体は、1~80phrの範囲の量で使用される。
【0016】
[012]ゴム組成物は、植物油誘導体に加えて、オレフィン性不飽和を含有する1つまたは複数のゴムまたはエラストマーを含んでもよい。「オレフィン性不飽和を含有するゴムまたはエラストマー」または「ジエン系エラストマー」という語句は、天然ゴムおよびその様々な未処理および再生利用形態の両方、ならびに様々な合成ゴムを含むことを意図する。本発明の説明では、「ゴム」および「エラストマー」という用語は、別段定められていない限り、交換可能に使用されてもよい。「ゴム組成物」、「配合されたゴム」、および「ゴムコンパウンド」という用語は、様々な成分および材料と配合または混合されたゴムを指すように交換可能に使用され、そのような用語は、ゴム混合またはゴム配合の当業者に周知である。代表的な合成ポリマーはブタジエンおよびその同族体および誘導体、例えばメチルブタジエン、ジメチルブタジエン、およびペンタジエンの単独重合生成物、ならびに他の不飽和モノマー類を用いてブタジエンまたはその同族体または誘導体から形成されたコポリマーなどのコポリマー類である。後者の中には、アセチレン類、例えばビニルアセチレン;オレフィン類、例えばイソプレンと共重合してブチルゴムを形成するイソブチレン;ビニル化合物類、例えばアクリル酸、アクリロニトリル(ブタジエンと重合してNBRを形成する)、メタクリル酸、およびスチレンがあり、後者の化合物は、ブタジエンと重合してSBRを形成し、ならびにビニルエステル類、および様々な不飽和アルデヒド類、ケトン類、およびエーテル類、例えばアクロレイン、メチルイソプロペニルケトン、およびビニルエチルエーテルがある。合成ゴムの特定の例は、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン(cis-1,4-ポリブタジエンを含む)、ポリイソプレン(cis-1,4-ポリイソプレンを含む)、ブチルゴム、クロロブチルゴムまたはブロモブチルゴムなどのハロブチルゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン、アクリロニトリル、およびメチルメタクリレートなどのモノマーとの、1,3-ブタジエンまたはイソプレンのコポリマー類、ならびにエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)としても公知であるエチレン/プロピレンターポリマー、特にエチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーを含む。使用されてもよいゴムの追加の例は、アルコキシ-シリル末端官能性溶液重合ポリマー類(SBR、PBR、IBR、およびSIBR)、ケイ素カップリングおよびスズカップリング星状分枝ポリマー類を含む。好ましいゴムまたはエラストマーは、ポリイソプレン(天然または合成)、ポリブタジエン、およびSBRである。
【0017】
[013]一態様では、少なくとも1つの追加のゴムは、好ましくは、少なくとも2つのジエン系ゴムである。例えば、cis1,4-ポリイソプレンゴム(天然または合成であるが、天然が好ましい)3,4-ポリイソプレンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、乳化および溶液重合誘導スチレン/ブタジエンゴム、cis1,4-ポリブタジエンゴム、ならびに乳化重合調整ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーなどの、2つ以上のゴムの組み合わせが好ましい。
【0018】
[014]本発明の一態様では、約20~約28パーセントの結合スチレンの比較的慣例的なスチレン含有量を有する乳化重合誘導スチレン/ブタジエン(E-SBR)か、またはいくつかの用途に関しては、中程度~比較的高い結合スチレン含有量、すなわち約30~約45パーセントの結合スチレン含有量を有するE-SBRが使用されることがある。
【0019】
[015]乳化重合調製E-SBRとは、スチレンおよび1,3-ブタジエンが水性乳剤として共重合させられたものを意味する。そのようなことは、そのような当業者には周知である。結合スチレン含有量は、例えば、約5~約50パーセント変化することもある。一態様では、E-SBRはまた、E-SBARとしてターポリマーゴムを形成するために、例えば、ターポリマー中、約2~約30重量パーセントの結合アクリロニトリルの量で、アクリロニトリルを含有することもある。
【0020】
[016]コポリマー中、約2~約40重量パーセントの結合アクリロニトリルを含有する乳化重合調整スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムはまた、本発明において使用するためのジエン系ゴムとして企図される。
【0021】
[017]溶液重合調製SBR(S-SBR)は、典型的には、約5~約50、好ましくは約9~約36パーセントの範囲の結合スチレン含有量を有する。S-SBRは、好都合に、例えば有機炭化水素溶媒が存在する状態での有機リチウム触媒化により調製できる。
【0022】
[018]一実施形態では、cis1,4-ポリブタジエンゴム(BR)を使用することができる。そのようなBRは、例えば、1,3-ブタジエンの有機溶液重合により調製できる。BRは、好都合に、例えば少なくとも90パーセントのcis1,4-含有量を有することを特徴とすることもある。
【0023】
[019]cis1,4-ポリイソプレンおよびcis1,4-ポリイソプレンの天然ゴムは、ゴム当業者には周知である。
[020]本明細書で使用される「phr」という用語は、慣行的実務に従って、「100重量部のゴムまたはエラストマー当たりの、それぞれの材料の重量部」を指す。
【0024】
[021]ゴム組成物はまた、最大70phrのプロセス油を含むこともある。プロセス油は、エラストマーを伸展させるために典型的に使用される伸展油として、ゴム組成物に含有されてもよい。プロセス油はまた、ゴム配合の間に油を直接添加することによりゴム組成物に含有されてもよい。使用されるプロセス油は、エラストマー中に存在する伸展油、および配合間に添加されるプロセス油の両方を含有してもよい。適切なプロセス油は、MES、TDAE、SRAE、および重ナフテン系油などの、芳香、パラフィン系、ナフテン系、植物油、および低PCA油を含む、当技術分野において公知であるような様々な油を含む。適切な低PCA油は、IP346の方法により測定されるような、3重量パーセント未満の多環式芳香族含有量を有するものを含む。IP346の方法に関する手順は、Institute of Petroleum、United Kingdomにより出版された、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、第62版に見られる。
【0025】
[022]ゴム組成物は、約10~約150phrのシリカを含有してもよい。別の実施形態では、20~80phrのシリカを使用してもよい。
[023]ゴムコンパウンドに使用されてもよい一般的に採用されるケイ質顔料は、慣例的な焼成および沈降ケイ質顔料(シリカ)を含む。一実施形態では、沈降シリカが使用される。本発明で採用される慣例的なケイ質顔料は、例えば、可溶性シリケート(例えば、ケイ酸ナトリウム)の酸性化により得られるものなどの沈降シリカである。
【0026】
[024]そのような慣例的なシリカは、例えば、窒素ガスを使用して測定されるようなBET表面積を有することを特徴とすることもある。一実施形態では、BET表面積は、1g当たり約40~約600平方メートルの範囲内でもよい。別の実施形態では、BET表面積は、1g当たり約80~約300平方メートルの範囲内でもよい。表面積を測定するBET法は、米国化学会誌、第60巻、304頁(1930)に記載されている。
【0027】
[025]慣例的なシリカはまた、約100~約400、代替的に約150~約300の範囲のフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有することを特徴とすることもある。
[026]慣例的なシリカは、例えば、電子顕微鏡により測定されるような0.01~0.05ミクロンの範囲内の平均素粒子サイズを有することが予期されるが、シリカ粒子は、サイズがさらに小さいか、または場合によってはより大きいこともある。
【0028】
[027]本明細書中における単なる例として、およびそれに限定されるものではないが、呼称210、243等でHi-Sil商標により、PPG Industriesから市販されているシリカ;例えばZ1165MPおよびZ165GRの呼称でRhodiaから入手可能なシリカ、ならびに例えば呼称VN2およびVN3等でDegussa AGから入手可能なシリカなどの、様々な市販のシリカが使用されてもよい。
【0029】
[028]一般的に採用されるカーボンブラックは、慣例的な充填剤として、10~150phrの範囲の量で使用できる。別の実施形態では、20~80phrのカーボンブラックを使用してもよい。そのようなカーボンブラックの代表的な例は、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990、およびN991を含む。これらのカーボンブラックは、9~145g/kgの範囲のヨウ素吸収、および34~150cm/100gの範囲のDBP数を有する。
【0030】
[029]それに限定されるものではないが、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む微粒子充填剤、それに限定されるものではないが、米国特許第6,242,534号;米国特許第6,207,757号;米国特許第6,133,364号;米国特許第6,372,857号;米国特許第5,395,891号;または米国特許第6,127,488号に開示されているものを含む架橋微粒子ポリマーゲル、およびそれに限定されるものではないが、米国特許第5,672,639号に開示されているものを含む可塑化でんぷん複合充填剤を含む他の充填剤が、ゴム組成物で使用されてもよい。そのような他の充填剤は、1~30phrの範囲の量で使用されてもよい。
【0031】
[030]一実施形態では、ゴム組成物は、慣例的な硫黄含有有機ケイ素化合物を含有してもよい。一実施形態では、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。一実施形態では、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、および/または3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。
【0032】
[031]別の実施形態では、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許第6,608,125号に開示されている化合物を含む。一実施形態では、硫黄含有有機ケイ素化合物は、Momentive Performance MaterialsからNXT(商標)として市販されている、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、CH(CHC(=O)-S-CHCHCHSi(OCHCHを含む。
【0033】
[032]別の実施形態では、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許出願公開第2003/0130535号に開示されているものを含む。一実施形態では、硫黄含有有機ケイ素化合物は、DegussaのSi-363である。
【0034】
[033]ゴム組成物中の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用される他の添加剤の濃度に応じて変化するであろう。一般的に、化合物の量は、0.5~20phrの範囲であろう。一実施形態では、その量は、1~10phrの範囲であろう。
【0035】
[034]ゴム組成物が、様々な硫黄加硫可能構成ゴムを、様々な一般に使用される添加剤材料、例えば、硫黄供与体および硬化助剤など、活性剤および遅延剤など、ならびに加工添加剤、例えば油、粘着性付与樹脂を含む樹脂、および可塑剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤およびオゾン劣化防止剤、ならびにペプタイザーなどと混合する工程などの、ゴム配合の技術分野において一般的に公知の方法により配合されるであろうことは、当業者により容易に理解される。当業者に公知であるように、硫黄加硫可能および硫黄硫化材料(ゴム)の意図した使用に応じて、上記の添加剤が選択され、慣例的な量が一般的に使用される。硫黄供与体の代表的な例は、元素の硫黄(遊離硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーポリスルフィド、および硫黄オレフィン付加物を含む。一実施形態では、硫黄硫化剤は、元素の硫黄である。硫黄硫化剤は、0.5~8phrの範囲、代替的に1.5~6phrの範囲の量で使用されてもよい。粘着性付与樹脂の典型的な量は、使用される場合、約0.5~約10phr、通常は約1~約5phrを含む。加工助剤の典型的な量は、約1~約50phrを含む。抗酸化剤の典型的な量は、約1~約5phrを含む。代表的な抗酸化剤は、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、344~346頁に開示されているものなどの、ジフェニル-p-フェニレンジアミン等であってもよい。オゾン劣化防止剤の典型的な量は、約1~5phrを含む。ステアリン酸を含む脂肪酸の典型的な量は、使用される場合、約0.5~約3phrを含む。酸化亜鉛の典型的な量は、約2~約5phrを含む。ワックスの典型的な量は、約1~約5phrを含む。マイクロクリスタリンワックスがしばしば使用される。ペプタイザーの典型的な量は、約0.1~約1phrを含む。典型的なペプタイザーは、例えば、ペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0036】
[035]促進剤は、加硫に必要な時間および/または温度を制御するため、および加硫物の特性を改善するために使用される。一実施形態では、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてもよい。一次促進剤は、約0.5~約4、代替的に約0.8~約1.5phrの範囲の合計量で使用されてもよい。別の実施形態では、一次および二次促進剤の組み合わせが使用されてもよく、二次促進剤は、加硫物の特性を活性化および改善するために、より少ない量、例えば約0.05~約3phrで使用される。これらの促進剤の組み合わせは、最終特性に対して相乗効果をもたらすことが予想され、いずれかの促進剤を単独で使用することにより産生されたものよりも多少良好である。さらに、標準的な加工温度によっては影響を受けないが、通常の加硫温度で満足な硬化をもたらす遅延作用促進剤を使用してもよい。加硫遅延剤も使用できる。本発明で使用されてもよい適切なタイプの促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、キサンテートである。一実施形態では、一次促進剤は、スルフェンアミドである。第2の促進剤が使用される場合、二次促進剤は、グアニジン、ジチオカルバメート、またはチウラム化合物であってもよい。
【0037】
[036]ゴム組成物を混合する工程は、ゴム混合の技術分野の当業者に公知の方法により成し遂げることができる。例えば、成分は、典型的には、少なくとも2つの段階、すなわち少なくとも1つの非生産的(ノンプロダクティブ)段階、その後の生産的(プロダクティブ)混合段階で混合される。硫黄硫化剤を含む最終的な硬化剤は、典型的には、混合が、先の非生産的混合段階の混合温度よりも低いある温度または極限温度で典型的に生じる、「生産的」混合段階と従来呼ばれる最終段階で混合される。「非生産的」および「生産的」な混合段階という用語は、ゴム混合の技術分野の当業者に周知である。ゴム組成物は、熱力学的混合工程に供してもよい。熱力学的混合工程は、一般に、140℃~190℃の間のゴム温度を生じさせるために、適切な時間、混合機または押出機で機械加工する工程を含む。熱的機械加工の適切な期間は、作業条件、および成分の容積および性質に応じて変化する。例えば、熱的機械加工は、1~20分であってもよい。
【0038】
[037]ゴム組成物は、様々なタイヤのゴム部品に組み込まれてもよい。例えば、ゴム部品は、トレッド(トレッドキャップおよびトレッドベースを含む)、サイドウォール、アペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤコート、またはインナーライナーであってもよい。一実施形態では、部品はトレッドである。
【0039】
[038]代替的に、ゴム組成物は、それらに限定されるものではないが、タイヤトレッド、靴、靴底、伝動ベルト、ホース、空気ばね、コンベヤベルト、トラックベルト、および防振装置を含む様々な製造物品に使用することができる。
【0040】
[039]本発明の空気入りタイヤは、レース用タイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用、土工機械用、オフロード用、トラック用タイヤ等であってもよい。一実施形態では、タイヤは、乗用車用またはトラック用タイヤである。タイヤはまた、ラジアルまたはバイアスであってもよい。
【0041】
[040]本発明の空気入りタイヤの加硫は、一般に、約100℃~200℃の範囲の、慣例的な温度で実行される。一実施形態では、加硫は、約110℃~180℃の範囲の温度で実行される。過熱蒸気または熱風で加熱して、プレスまたは成形において加熱する工程などの、通常の加硫プロセスのいずれかが使用されてもよい。そのようなタイヤは、公知で、そのような技術分野の当業者に容易に明らかであろう様々な方法によって、構築、形成、成形、および硬化できる。
【0042】
[041]本発明は、単に例示のためであり、本発明の範囲またはそれを実行できる様式を限定するとはみなされない下記の実施例により例示される。特に具体的に指示のない限り、部およびパーセンテージは重量により示される。
実施例
[042]一般的な実験
[043]エポキシ化大豆油(ESBO)の試料をVikoflex 7170としてArkemaから入手し、1H NMRで分析して1分子当たりの正確なエポキシド数を測定したため、意図した反応の試薬を計算することができた。各トリグリセリド分子は、それぞれ平均4.2個のエポキシドを含み、オレフィン含有量は検出されなかった。オレイン酸は、Sigma Aldrichから入手し、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO、トリエチレンジアミンとしても公知である)は、Beantown Chemicalから入手した。すべての試薬は、さらに精製することなく使用した。
【実施例0043】
[044]エポキシ化大豆油の開環の一般的な手順。
[045]400~800g(1当量)のエポキシ化大豆油(ESBO)を樹脂ケトルに量り取り、その後1~4.2当量の所望のカルボン酸を量り取った。DABCO(ESBOに対して1~3.5重量%)を添加する前に、混合物を撹拌した。混合物を120~150℃で3~4時間加熱した。反応が終了した後、昇華によってDABCOを除去するために加熱したまま、反応容器を注意深く高真空に開放した。得られた生成物を1Hおよび13C NMRに供して、同一性および純度を確認した。生成物は、さらに精製することなく使用した。
【実施例0044】
[046]大豆-4-オレイン酸の合成
[047]2Lの樹脂ケトルに、ESBO(440g、463.2mmol、1当量)、オレイン酸(722mL、2047.6mmol、4.2当量)、およびDABCO(15.4g、3.5重量%)を添加した。樹脂ケトルをNでフラッシュし、120~150℃に3~4時間加熱して、反応を終了させた。樹脂ケトルを熱いうちに数時間真空に開放して、生成物からDABCOを昇華/除去した。生成物は、熱いうちに保管のために適切な容器に移した。生成物のH NMRは、トリグリセリド当たり4.2個のオレエート基が存在することを示した。
【実施例0045】
[048]すべての量の単位がphrである表1の配合に従って、3つのゴムコンパウンドを多段階混合手順で調製した。ゴムコンパウンドを、標準的な硬化サイクルに従って硬化し、表2に与えられた様々な特性について試験した。
【0046】
【表1】
【0047】
[049]結果および考察
【0048】
【表2】
【0049】
[050]大豆-4-オレイン酸は、多くの改善を示し、引裂き抵抗および摩耗抵抗の2つのトレードオフを持つのみである。ナフテン系油および大豆油の対照と比較して、冬季性能を改善しつつ、ウェット性能を維持しており、これは何十年にもわたってタイヤ業界で追求されてきた重要なトレードオフである。大豆油は、ナフテン系油よりも良好な可塑剤であることが公知である。この実施例では、大豆-4-オレイン酸の引張特性は、ナフテン系油の引張特性とほぼ同一であるが、加工のための未硬化G’指標は、大豆-4-オレイン酸が大豆油よりも良好な可塑剤であることを示す。大豆-4-オレイン酸の摩耗抵抗および引裂き指標は低下するが、これらの特性は、当業者に公知の配合方法によって調整することができる。大豆-4-オレイン酸のハンドリング指標はまた、対照と比べて劇的な改善を示す。
【0050】
[051]本明細書で提供される本発明の説明に照らして、本発明の変形形態が可能である。ある特定の代表的な実施形態および詳細が、主題発明を例示する目的で示されており、当業者には、主題発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および改変を行うことができることが明らかである。したがって、記載された特定の実施形態において、以下の添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の意図された全範囲内にある変更を行うことができることを理解されたい。
[発明の実施形態]
1. 構造
【0051】
【化3】
【0052】
[式中、R、RおよびRは、独立して、C15~C20アルケニル、C15~C20アルキルであり、任意に芳香族基を含み;Rは、-O-C(=O)-Rであり、式中、Rは、C15~C20アルケニルであり;各Rは、R、RまたはRのうちの1つの、第1の炭素原子に共有結合しており、第2の炭素原子は第1の炭素原子に隣接し、第2の炭素原子は-OH基で置換されており;mは、R基の数である]を含む植物油誘導体を含む、加硫可能ゴム組成物。
2. mが、1~5の範囲である、[1]の加硫可能ゴム組成物。
3. Rが、オレエート、リノレエート、およびリノレネート基からなる群から選択される、[1]の加硫可能ゴム組成物。
4. R、R、およびRのそれぞれが、独立して、ステアリル、パルミチル、オレイル、リノレイル、およびリノレニル基からなる群から選択される少なくとも1つである、[1]の加硫可能ゴム組成物。
5. 不飽和脂肪酸とエポキシ化植物油の反応生成物を含む、加硫可能ゴム組成物。
6. エポキシ化植物油が、エポキシ化大豆油、エポキシ化カノーラ油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化パーム油、エポキシ化ヒマワリ油、エポキシ化ヤシ油、およびエポキシ化コーン油からなる群から選択される、[5]の加硫可能ゴム組成物。
7. 不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸からなる群から選択される少なくとも1つである、[5]の加硫可能ゴム組成物。
8. 不飽和脂肪酸がオレイン酸である、[5]の加硫可能ゴム組成物。
9. [5]の加硫可能ゴム組成物を含む、空気入りタイヤ。
10. [1]の加硫可能ゴム組成物を含む、空気入りタイヤ。
11. [1]の加硫可能ゴム組成物を含む製造物品であって、タイヤトレッド、靴、靴底、伝動ベルト、ホース、空気ばね、コンベヤベルト、トラックベルト、および防振装置からなる群から選択される、製造物品。
12. [5]の加硫可能ゴム組成物を含む製造物品であって、タイヤトレッド、靴、靴底、伝動ベルト、ホース、空気ばね、コンベヤベルト、トラックベルト、および防振装置からなる群から選択される、製造物品。
【外国語明細書】