(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115849
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】中性子線検出装置及び中性子線検出方法と中性子線検出用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 3/08 20060101AFI20220802BHJP
G01T 3/00 20060101ALI20220802BHJP
G21C 17/108 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G01T3/08
G01T3/00 D
G21C17/108 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012182
(22)【出願日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2021012373
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果にかかる特許出願(平成30年度文部科学省・日本原子力研究開発機構「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業のうち、過酷炉心放射線環境における線量測定装置の開発に係るもの」(産業技術力強化法第17条の適用を受ける出願)
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】今泉 充
(72)【発明者】
【氏名】奥野 泰希
【テーマコード(参考)】
2G075
2G188
【Fターム(参考)】
2G075BA03
2G075CA08
2G075DA08
2G075FA06
2G075FB07
2G188AA19
2G188BB09
2G188CC28
2G188CC29
(57)【要約】
【課題】本発明は、小型の中性子線検出装置及び中性子線検出方法と中性子線検出用プログラムの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、表面に中性子を荷電粒子線ないし光子に変換する変換膜を付帯し、放射線の入射により電流を発生させる太陽電池型検出器と、放射線の入射により中性子に感度のない電流を出力信号とする放射線検出器と、放射線の入射により、太陽電池型検出器で発生した電流と、放射線検出器で発生した電流を信号として検出する電流測定器と、電流測定器によって検出された検出器からの電流信号を比較するフラックス算出部を備え、フラックス算出部は、太陽電池型検出器及び放射線検出器からの電流信号に対し、予め取得した所定の線種に係る入射放射線のフラックスと太陽電池型検出器及び放射線検出器からの検出電流の関係に対応させ、中性子線のフラックスを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子線を検出する中性子線検出装置であって、表面に中性子を所定の放射線に変換する変換膜を付帯し、前記変換膜を介する放射線の入射により電流を発生させる太陽電池型検出器と、前記放射線の入射により中性子に感度のない電流を出力信号とする放射線検出器と、
前記放射線の入射により、前記太陽電池型検出器で発生した電流と、前記放射線検出器で発生した電流を信号として検出する電流測定器と、
前記電流測定器によって検出された前記太陽電池型検出器で発生した電流信号と、前記放射線検出器で発生した電流信号を比較するフラックス算出部を備え、
前記フラックス算出部は、前記電流測定器において検出された前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの電流信号に対して、予め取得した所定の線種に係る入射放射線のフラックスと前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの検出電流との関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線のフラックスを算出する機能を有する中性子線検出装置。
【請求項2】
前記太陽電池型検出器が、第1の太陽電池型検出器であり、
前記放射線検出器が、中性子を所定の放射線に変換する変換膜を付帯しない第2の太陽電池型検出器であり、前記フラックス算出部は前記第1の太陽電池型検出器からの電流信号と前記第2の太陽電池型検出器からの電流信号の差分を算出するものであり、予め取得した所定の線種に係る入射中性子フラックスと前記第1の太陽電池型検出器からの検出電流の差分の関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線のフラックスを算出する機能を有する請求項1に記載の中性子線検出装置。
【請求項3】
前記フラックス算出部に予め記憶させておいた1次関数もしくはべき乗関数もしくは2次関数に基づく検量線に基づき中性子のフラックス算出を行う機能を有することを特徴とする請求項2に記載の中性子線検出装置。
【請求項4】
前記変換膜は、中性子をアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子に変換する機能を有する同位体を含有するリチウム、硼素、ないしはガドリニウムの単体元素、または中性子をアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子に変換する機能を有する同位体を含有するリチウム、硼素、ないしはガドリニウムの窒化物、フッ化物、酸化物、その他の化合物、あるいは前記単体元素と前記化合物の混合物のいずれかからなる請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の中性子線検出装置。
【請求項5】
前記太陽電池型検出器は、バンドギャップが0.8eVから2.2eVまでの、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、テルル化カドミウム、などの2元化合物半導体、ないしは、リン化インジウムガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、セレン化硫化銅インジウム、などの3元あるいは4元以上の多元混合物である化合物半導体、ないしは、ペロブスカイト半導体のいずれかからなる請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の中性子線検出装置。
【請求項6】
中性子線を検出する中性子線検出方法であって、
表面に中性子を所定の放射線に変換する変換膜を付帯し、前記変換膜を介する放射線の入射により電流を発生させる太陽電池型検出器と、前記放射線の入射により中性子に感度のない電流を出力信号とする放射線検出器を用い、
前記放射線の入射により、前記太陽電池型検出器で発生した電流と、前記放射線検出器で発生した電流を信号として電流測定器で検出し、
前記電流測定器によって検出された前記太陽電池型検出器で発生した電流信号と、前記放射線検出器で発生した電流信号をフラックス算出部で比較し、
前記フラックス算出部において、前記電流測定器において検出された前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの電流信号に対して、予め取得した所定の線種に係る入射放射線のフラックスと前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの検出電流との関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線のフラックスを算出することを特徴とする中性子線検出方法。
【請求項7】
前記太陽電池型検出器が、第1の太陽電池型検出器であり、
前記放射線検出器が、中性子を所定の放射線に変換する変換膜を付帯しない第2の太陽電池型検出器であり、前記フラックス算出部は前記第1の太陽電池型検出器からの電流信号と前記第2の太陽電池型検出器からの電流信号の差分を算出するものであり、予め取得した所定の線種に係る入射中性子フラックスと前記第1の太陽電池型検出器からの検出電流の差分の関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線の線量を算出することを特徴とする請求項6に記載の中性子線検出方法。
【請求項8】
前記フラックス算出部に予め記憶させておいた1次関数もしくはべき乗関数もしくは2次関数に基づく検量線に基づき中性子のフラックス算出を行うことを特徴とする請求項7に記載の中性子線検出方法。
【請求項9】
前記変換膜は、中性子をアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子に変換する機能を有する同位体を含有するリチウム、硼素、ないしはガドリニウムの単体元素、または中性子をアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子に変換する機能を有する同位体を含有するリチウム、硼素、ないしはガドリニウムの窒化物、フッ化物、酸化物、その他の化合物、あるいは前記単体元素と前記化合物の混合物のいずれかからなる請求項6~請求項8のいずれか一項に記載の中性子線検出方法。
【請求項10】
前記太陽電池型検出器は、バンドギャップが0.8eVから2.2eVまでの、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、テルル化カドミウム、などの2元化合物半導体、ないしは、リン化インジウムガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、セレン化硫化銅インジウム、などの3元あるいは4元以上の多元混合物である化合物半導体、ないしは、ペロブスカイト半導体のいずれかからなる請求項6~請求項9のいずれか一項に記載の中性子線検出方法。
【請求項11】
中性子線を検出する中性子線検出方法に用いるプログラムであって、
中性子を所定の放射線に変換する変換膜を付帯し、前記変換膜を介する放射線の入射により電流を発生させる太陽電池型検出器と、
前記放射線の入射により中性子に感度のない電流を出力信号とする放射線検出器とを用い、
前記放射線の入射により、前記太陽電池型検出器で発生した電流と、前記放射線検出器で発生した電流を電流測定器で検出し、
前記電流測定器によって検出された前記太陽電池型検出器で発生した電流信号と、前記放射線検出器で発生した電流信号を比較するフラックス算出部を用い、
前記フラックス算出部において、前記電流測定器において検出された前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの電流信号に対して、予め取得した所定の線種に係る入射放射線のフラックスと前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの検出電流との関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線のフラックスを算出することを特徴とする、
中性子線検出用プログラム。
【請求項12】
前記太陽電池型検出器が、第1の太陽電池型検出器であり、
前記放射線検出器が、中性子を所定の放射線に変換する変換膜を付帯しない第2の太陽電池型検出器であり、前記フラックス算出部は前記第1の太陽電池型検出器からの電流信号と前記第2の太陽電池型検出器からの電流信号の差分を算出するものであり、予め取得した所定の線種に係る入射中性子フラックスと前記第1の太陽電池型検出器からの検出電流の差分の関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線のフラックスを算出させることを特徴とする請求項11に記載の中性子線検出用プログラム。
【請求項13】
前記線量算出部に予め記憶させておいた1次関数もしくはべき乗関数もしくは2次関数に基づく検量線に基づき中性子の線量算出を行う機能を有することを特徴とする請求項12に記載の中性子線検出用プログラム。
【請求項14】
前記変換膜は、中性子をアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子に変換する機能を有する同位体を含有するリチウム、硼素、ないしはガドリニウムの単体元素、または中性子をアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子に変換する機能を有する同位体を含有するリチウム、硼素、ないしはガドリニウムの窒化物、フッ化物、酸化物、その他の化合物、あるいは前記単体元素と前記化合物の混合物のいずれかからなる請求項11~請求項13のいずれか一項に記載の中性子線検出用プログラム。
【請求項15】
前記太陽電池型検出器は、バンドギャップが0.8eVから2.2eVまでの、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、テルル化カドミウム、などの2元化合物半導体、ないしは、リン化インジウムガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、セレン化硫化銅インジウム、などの3元あるいは4元以上の多元混合物である化合物半導体、ないしは、ペロブスカイト半導体のいずれかからなる請求項11~請求項14のいずれか一項に記載の中性子線検出用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子線検出装置及び中性子線検出方法と中性子線検出用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中性子線を検出する技術として、中性子ないしは中性子によってアルファ粒子を発生させる硼素などを含んだ気体や固体から発生したアルファ粒子により、封入した気体分子を電離し、発生した電荷について、高電圧を印加した電極に収集して検出する方法が知られている。
また、シンチレータと呼ばれる前記アルファ粒子のエネルギーにより発光する物質からの光信号を光電子増倍管などにより電気信号として増幅し、中性子線を検出する方法が知られている。現状ではこれら2種類の検出方法が中性子線検出方法の代表的かつ一般的な検出方法として広く知られている。
【0003】
また、半導体を用いた中性子検出器に関し、以下の特許文献1および特許文献2に記載の技術が知られている。
特許文献1に係る技術の検出器では、ダイオード構造のp/n接合の中間に中性子をアルファ線に変換する硼素を含んだ真性半導体層を挿入している。
特許文献2に係る技術の検出器では、半導体材料として有機物からなる有機変換層を用いており、中性子をアルファ線に変換する元素を用いておらず、また、検出器の動作には電圧を印加する必要がある。
特許文献3に係る異種放射線測定センサーでは、ダイオードのpin接合または、ショットキー接合の電極を作製しており、表面にX線やガンマ線、アルファ線やベータ線、中性子線などを検出するための膜を作成している。このセンサーは、X線やガンマ線により発生する閃光量の測定、アルファ線やベータ線の透過率測定、中性子反応物質により反応する化学反応量を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-141749号公報
【特許文献2】特開2019-145751号公報
【特許文献3】特表2016-539324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の気体の電離を用いた中性子検出器は、十分な検出感度を獲得するために一定量の気体の体積が必要であり、必然的に検出部のサイズが大きくなってしまう問題がある。
また、封入気体には三フッ化硼素や3Heなどの高価な気体を用いる必要があり、さらに電圧印加のための電源が必要であるため、高価な検出器となってしまう問題がある。
【0006】
特許文献1および特許文献2による検出デバイスでは、いずれも特殊な構造を有する専用の検出デバイスを設計し製造する必要があり、製品性能の安定性や信頼性の確立に係るコストも含めると検出器の価格が高くなる問題がある。
特許文献3による異種放射線測定センサーでは、各膜を通過した放射線が微細なアナログ信号であり、信号変換が容易ではなく、ノイズの混入などを考慮すると、実用性の低いセンサーであると考えられる。また、外部電源を利用したプリアンプにより増幅したパルス信号を計測する必要があるので、信号検出が容易ではない問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、中性子を小さな検出器で簡便に検出することができる中性子検出装置の提供を目的とする。
また、本発明は、前記中性子線検出装置を用いた中性子線検出方法と中性子線検出用プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
(1)本形態に係る中性子検出装置は、中性子線を検出する中性子線検出装置であって、表面に中性子を所定の放射線に変換する変換膜を付帯し、前記変換膜を介する放射線の入射により電流を発生させる太陽電池型検出器と、前記放射線の入射により中性子に感度のない電流を出力信号とする放射線検出器と、前記放射線の入射により、前記太陽電池型検出器で発生した電流と、前記放射線検出器で発生した電流を信号として検出する電流測定器と、前記電流測定器によって検出された前記太陽電池型検出器で発生した電流信号と、前記放射線検出器で発生した電流信号を比較するフラックス算出部を備え、前記フラックス算出部は、前記電流測定器において検出された前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの電流信号に対して、予め取得した所定の線種に係る入射放射線のフラックスと前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの検出電流との関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線のフラックスを算出する機能を有することを特徴とする。
【0009】
ここで言及する太陽電池型検出器とは、光照射による電流出力を高めることによって内部電位駆動による検出信号の出力を可能にし、かつ、放射線耐性が高くなるように予め設計されたPN接合素子であることが好ましい。この素子の場合、外部電圧印加やプリアンプによる信号増幅が必要なように設計されるフォトダイオード型検出器とは、機能発現に係る外部電源の要否及び放射線耐性の有無において明確的に区別される。
【0010】
本形態によれば、中性子検出装置は既存の技術による太陽電池を用いれば良く、特別な構造を有する専用の検出デバイスを設計・製造する必要はない。また、p/n接合ダイオード構造の内部電界を用いてアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子の吸収により発生した電荷を取り出すため電圧印加が必要ない。そのため電圧源や電圧印加のための回路や配線が必要なく、中性子検出システムとして簡素な構成で良く、低コスト化が可能な特徴を有する。
【0011】
また、太陽電池型検出器として、1cm角程度のサイズのものを用いれば本形態の構造を実現するために十分なため、中性子検出部を小さくできる。これにより、加速器型中性子発生装置の中性子発生部直近など、これまで設置が難しく、測定できなかった場所における中性子線の測定が可能となる。
【0012】
(2)本発明に係る中性子検出装置において、前記太陽電池型検出器が、第1の太陽電池型検出器であり、前記放射線検出器が、中性子を所定の放射線に変換する変換膜を付帯しない第2の太陽電池型検出器であり、前記フラックス算出部は前記第1の太陽電池型検出器からの電流信号と前記第2の太陽電池型検出器からの電流信号の差分を算出するものであり、予め取得した所定の線種に係る入射中性子フラックスと前記第1の太陽電池型検出器からの検出電流の差分の関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線のフラックスを算出する機能を有することが好ましい。
【0013】
(3)本発明に係る中性子検出装置において、前記フラックス算出部に予め記憶させておいた1次関数もしくはべき乗関数もしくは2次関数に基づく検量線に基づき中性子のフラックス算出を行う機能を有することが好ましい。
【0014】
(4)本発明に係る中性子検出装置において、前記変換膜は、中性子をアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子に変換する機能を有する同位体を含有するリチウム、硼素、ないしはガドリニウムの単体元素、または中性子をアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子に変換する機能を有する同位体を含有するリチウム、硼素、ないしはガドリニウムの窒化物、フッ化物、酸化物、その他の化合物、あるいは前記単体元素と前記化合物の混合物のいずれかからなることが好ましい。
【0015】
(5)本発明に係る中性子検出装置において、前記太陽電池型検出器は、バンドギャップが0.8eVから2.2eVまでの、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、テルル化カドミウム、などの2元化合物半導体、ないしは、リン化インジウムガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、セレン化硫化銅インジウム、などの3元あるいは4元以上の多元混合物である化合物半導体、ないしは、ペロブスカイト半導体のいずれかからなることが好ましい。
【0016】
(6)本発明に係る中性子検出方法は、中性子線を検出する中性子線検出方法であって、表面に中性子を所定の放射線に変換する変換膜を付帯し、前記変換膜を介する放射線の入射により電流を発生させる太陽電池型検出器と、前記放射線の入射により中性子に感度のない電流を出力信号とする放射線検出器を用い、前記放射線の入射により、前記太陽電池型検出器で発生した電流と、前記放射線検出器で発生した電流を信号として電流測定器で検出し、前記電流測定器によって検出された前記太陽電池型検出器で発生した電流信号と、前記放射線検出器で発生した電流信号をフラックス算出部で比較し、前記フラックス算出部において、前記電流測定器において検出された前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの電流信号に対して、予め取得した所定の線種に係る入射放射線のフラックスと前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの検出電流との関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線のフラックスを算出することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る中性子線検出用プログラムは、中性子線を検出する中性子線検出方法に用いるプログラムであって、中性子を所定の放射線に変換する変換膜を付帯し、前記変換膜を介する放射線の入射により電流を発生させる太陽電池型検出器と、前記放射線の入射により中性子に感度のない電流を出力信号とする放射線検出器とを用い、前記放射線の入射により、前記太陽電池型検出器で発生した電流と、前記放射線検出器で発生した電流を電流測定器で検出し、前記電流測定器によって検出された前記太陽電池型検出器で発生した電流信号と、前記放射線検出器で発生した電流信号を比較するフラックス算出部を用い、前記フラックス算出部において、前記電流測定器において検出された前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの電流信号に対して、予め取得した所定の線種に係る入射放射線のフラックスと前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの検出電流との関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線のフラックスを算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、中性子線のフラックスを、より広い検出範囲で、より低価格にて、より広い使用温度範囲で、より小さな検出装置設置容積において、計測し、算出することが可能な中性子線検出装置を提供できる。
また、本発明によれば、中性子線のフラックスを、より広い検出範囲で、より低価格にて、より広い使用温度範囲で、より小さな検出装置設置容積において、計測し、算出することが可能な中性子線検出方法と中性子線検出用プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る中性子線検出装置を示すシステムブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の中性子線検出装置に適用されるInGaP太陽電池型検出器の断面構造を示す図である。
【
図3】
図3は、計算により求めた、エネルギー50meVの中性子の入射量に対する硼素板の太陽電池側表面におけるアルファ粒子発生総量の関係を表すグラフである。
【
図4】
図4は、エネルギーが200keVのアルファ粒子を入射した際のフラックス(Heイオン照射フラックス)とInGaP太陽電池の出力電流(誘起電流)の関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、加速器を備えた中性子発生装置を用いて変換膜付太陽電池および変換膜なし太陽電池に中性子を照射した場合、各太陽電池からの発生電流(誘起電流)を示すグラフである。
【
図6】
図6は、アルファ粒子のエネルギーに対して、InGaP太陽電池が発生させる電流の大きさの比(200keVアルファ粒子の値を1として規格化)を表すグラフである。
【
図7】
図7は、モンテカルロシミュレーションにて計算された、0.05mm厚の硼素膜からなる変換膜において1つの中性子入射により発生し放出されるアルファ粒子のエネルギーと、前記硼素膜の太陽電池表面における発生数の関係を表すスペクトルを示すグラフであり、このスペクトルは入射する中性子のエネルギーに依らず、いかなるエネルギーの中性子でも同じであることを説明するためのグラフである。
【
図8】
図8は、実施例において用いた中性子発生装置が発生させる中性子の、エネルギーと中性子発生数の比(ピークエネルギーの値を1として規格化)の関係を表すスペクトルを示す図である。
【
図9】
図9は、中性子のエネルギーと、
10Bが入射した中性子を吸収してアルファ粒子を発生させる確率と等価な意味を有する、反応断面積と呼ばれる物理量の関係を表すスペクトルを示すグラフである。
【
図10】光強度(Light Intensity)を変更しながら650nmの単色光源を太陽電池型検出器へ照射した際に発生する電流量(Current density)を測定した結果を示すグラフである。
【
図11】炭化ホウ素(B
4C)を含む変換膜とフッ化リチウム(LiF)を含む変換膜に関し、中性子に関する感度の違いを示すグラフである。
【
図12】25meV中性子をホウ素を含む変換膜へ入射した際、中性子の入射側および透過側から放出されるアルファ粒子の放出量の膜厚依存性を示すグラフである。
【
図13】
図1に示す中性子線検出装置Aを備えた中性子線計測システムSの一形態を示す構成図である。
【
図14】第1実施形態に係る中性子検出装置に利用されるプログラムを格納するコンピュータ(演算装置)の一例を示す構成図である。
【
図15】
図10に示すデータにおいて、領域毎に1次関数もしくはべき乗関数あるいは2次関数でフィッティングした場合に得られた電流密度と中性子フラックスの関係を示す校正曲線を例示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「第1実施形態」
以下、本発明の第1実施形態を挙げて本発明の詳細について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
図1は、本発明の第1実施形態に係る中性子線検出装置を示すシステムブロック図である。本実施形態の中性子線検出装置Aは、後述する変換膜6を備えた第1の太陽電池型検出器1と、変換膜6を備えていない放射線検出器(第2の太陽電池型検出器)2と、電流測定器3、4と、中性子線の線量算出部5を備えている。
第1の太陽電池型検出器1は、太陽光などの放射線の照射を受けると電流を発生させる検出器である。この第1の太陽電池型検出器1の放射線入力部(受光面)には、中性子の照射を受けてアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子を発生させる機能を有する変換膜6が積層されている。この変換膜6は、中性子線を上述の所定の放射線に変換する変換膜と表記できる。
【0021】
変換膜6を付帯した第1の太陽電池型検出器1の構造の要部を
図2に示す。
第1の太陽電池型検出器1は、p型とn型の半導体層を接合したp/n接合型の太陽電池型ダイオード構造を有し、例えば、InGaP層からなるp型層7とInGaP層からなるn型層8を積層した積層体9の裏面側に電極層10を積層し、表面側に電極層11を積層した構造を有する。
第1の太陽電池型検出器1において電極層11側が表面となり、電極層10と電極層11を結線により接続して回路を構成し、表面側に太陽光などの放射線を照射すると発電し、前記回路に電流を流すことができる。
【0022】
本実施形態の第1の太陽電池型検出器1において電極層11の表面側に変換膜6が積層され、第1の太陽電池型検出器1に変換膜6が付帯されている。
本実施形態の放射線検出器(第2の太陽電池型検出器)2は、変換膜6を除き、第1の太陽電池型検出器1と同等構造である。即ち、放射線検出器2は、p型とn型の半導体層を接合したp/n接合型の太陽電池型ダイオード構造を有し、例えば、InGaP層からなるp層7とInGaP層からなるn層8を積層した積層体9の裏面側に電極層10を積層し、表面側に電極層11を積層した構造を有する。
【0023】
第1の太陽電池型検出器1と放射線検出器(第2の太陽電池型検出器)2において、p型層7あるいはn型層8を構成する半導体の構成用化合物としてより具体的に、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、テルル化カドミウム(CdTe)、などの2元化合物半導体、ないしは、リン化インジウムガリウム(InGaP)、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)、セレン化硫化銅インジウム、などの3元あるいは4元以上の多元混合物である化合物半導体、ないしはペロブスカイト半導体を適用できる。
【0024】
変換膜6は、中性子の照射を受けると、中性子を荷電粒子線ないし光子に変換する機能を有する同位体を含有するリチウム(Li)、硼素(B)、ないしはガドリニウム(Gd)のいずれかの単体元素からなる膜を例示することができる。また、変換膜6は、リチウムと硼素とガドリニウムの窒化物膜、フッ化物膜、酸化物膜、その他の化合物薄膜であっても良い。あるいは、変換膜6は、リチウムと硼素とガドリニウムの内、いずれかの単体元素と前記リチウム化合物、硼素化合物、あるいは、ガドリニウム化合物との混合物を含むものであっても良い。
変換膜6に中性子が入射すると変換膜6に含まれているリチウム、硼素、ガドリニウムの何れかの元素と反応し、反応位置を起点として種々の方向に向いて陽子、アルファ粒子(α粒子)、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子が発生される。
【0025】
例えば、工業的に得られている通常のリチウムは、6Li(リチウム6)と7Li(リチウム7)の2つの同位体を有し、7Liの存在比は約93%、6Liの存在比は約7%である。
また、工業的に得られている通常の硼素は、10B(硼素10)と11B(硼素11)の2つの同位体を有し、10Bの存在比は約20%、11Bの存在比は約80%である。
また、工業的に得られている通常のガドリニウムは、154Gd(2.18%)、155Gd(14%)、156Gd(20.5%)、157Gd(15.6%)、158Gd(24.8%)、160Gd(21.8%)の6種類の天然同位体と152Gd(0.2%)の放射性同位体からなる。
これらの元素において同位体の存在(放射性同位体の存在)に起因し、これらに中性子を照射すると同位体元素から、即発荷電粒子、例えばアルファ粒子(Heの原子核)が放出されるので、中性子をアルファ粒子に変換したこととなる。
【0026】
変換膜6は、中性子の照射を受けると、中性子をアルファ粒子、リチウム核、ガンマ線に変換するが、変換膜6の膜厚を大きくし過ぎると変換膜6の内部でアルファ粒子、リチウム核、ガンマ線の一部が減衰する。このため、変換膜6を必要以上に厚くしてもアルファ粒子、リチウム核、ガンマ線の一部が変換膜6中で減衰してしまうため、変換膜6の膜厚は1~10μm程度、例えば数μmなどのように非常に薄い膜とすることが好ましい。
逆に、変換膜6を膜厚1μmよりさらに薄くすることで検出感度、出力電流量を下げることができる。これにより、変換膜6を高フラックス中性子環境においても適用することが可能となる。例えば、原子炉やその周辺設備などの高フラックス中性子環境において本実施形態の変換膜6を備えた中性子線検出器1を適用することが可能となる。高フラックス中性子環境の場合、例えば、0.001~1μm程度に形成することができる。
また、変換膜6を上述のように薄膜化することにより、ガンマ線ノイズの削減も可能となる。
【0027】
前記第1の太陽電池型検出器1には電流測定器3が電気的に接続され、放射線検出器(第2の太陽電池型検出器)2には電流測定器4が電気的に接続されている。また、電流測定器3と電流測定器4には、フラックス算出装置5が電気的に接続されている。電流測定器3は第1の太陽電池型検出器1が発生させた誘起電流を電流信号として測定することができ、電流測定器4は放射線検出器2が発生させた誘起電流を電流信号として測定することができる。
フラックス算出装置5には、電流測定器3と電流測定器4が各々測定した上述の電流信号を比較し、それら電流信号の差分を計算する差分計算部15と、この差分計算部15の計算結果に基づき、差分電流値から中性子フラックスを計算により後述のように求めるフラックス算出部16が設けられている。
【0028】
フラックス算出部16において中性子フラックスを算出するには以下に説明する関係を予め把握し、フラックス算出部16に設けられているメモリなどの記憶部に記憶させておく。
フラックス算出部16に記憶させておく情報のうち、第1の情報は、第1の太陽電池型検出器1に適用する変換膜6が、入射する中性子フラックスに対し、どの程度のアルファ粒子を発生させるかの関係データである。この関係データは、加速器型中性子発生装置などを用い、加速器型中性子発生装置の調整により発生する中性子量を制御し、変換膜6に入射する中性子線のフラックスと変換膜6に発生するアルファ粒子の発生レートの関係を例えば、後述する実施例において求められる
図3に示すように取得する。
図3では、特定エネルギー(例えば50meV)の中性子入射フラックス数[パーティクル/cm
2/秒](単位面積当たり単位時間あたりのパーティクル数)とアルファ粒子発生レート[パーティクル/cm
2/秒]との相関関係を示している。
図3の関係を把握すると、変換膜6に対し入射した中性子フラックスに応じて変換膜6がどの程度のアルファ粒子を発生させるのかというアルファ粒子の発生レートを把握することができるので、
図3に示す関係をフラックス算出部16に記憶させておく。
【0029】
フラックス算出装置5に記憶させておく情報のうち、第2の情報は、変換膜6を有しない第1の太陽電池型検出器1にアルファ粒子を照射した場合、アルファ粒子の照射フラックスと第1の太陽電池型検出器1の電流出力の関係である。この関係データは、例えば、後述する実施例において求められる
図4のグラフに示すように、横軸をアルファ粒子の照射フラックス(Heイオン照射フラックス:×10
9 He
+/cm
2/s)とし、縦軸を誘起電流(×10
-5A)としてそれらの関係を予め求めておき、
図4に示す関係をフラックス算出装置5に記憶させておく。
【0030】
次に、加速器型中性子発生装置を用いて入射陽子ビーム電流を変化させることで加速器型中性子発生装置から発生できる中性子フラックスを制御できるので、変換膜6を備えた第1の太陽電池型検出器1と変換膜6を有しない放射線検出器2を隣接配置し、これらに上述の中性子発生装置から発生させた中性子を照射する。
この照射試験を行うと、後述する実施例において求められる
図5のグラフに例示するように、第1の太陽電池型検出器1からの電流出力(変換膜あり)と、放射線検出器2からの電流出力(変換膜なし)を得ることができる。
図5のグラフに示す第1の太陽電池型検出器1の電流出力から、放射線検出器2の電流出力(変換膜なし)を引いた電流値が該当する線量の中性子による発生電流であると把握できる。即ち、差分計算部15により電流測定器3、4の両方の電流信号の差分の計算により、該当する中性子による発生電流を計算できる。
【0031】
本実施形態において、検出した差分電流から中性子量への計算は、
図1に示す最終段のブロックに設けられているフラックス算出部16にて実施できる。
算出方法としては、変換膜6を有した太陽電池型検出器1がアルファ粒子およびリチウム核の数に対してどれだけの電流を誘起するかの関係のデータ(
図3参照)を予め求めておき、変換膜6が吸収した中性子に対してどれだけのアルファ粒子を発生させるかの関係のデータ(
図4参照)を基に、中性子量を計算する方法がある。
あるいは、作製した太陽電池型検出器1に対し、予め中性子量が定量化されている校正場にて誘起電流を測定し、その値を基に比例計算によって中性子量を求める方法も採用できる。中性子フラックスに対して電流量が1次関数もしくはべき乗関数による比例関係にあることは、
図4に示す結果から、明らかになっている。
【0032】
なお、先に記載した比例関係は、数10nAの範囲での観測による関係である。上述の線形性が保証される範囲を取得するため、太陽電池の特性を活用し、光を用いた線形性の校正試験を実施できる。
例えば、
図10に示すように光強度(Light Intensity)を変更しながら650nmの単色光源を太陽電池型検出器2へ照射した際に発生する電流量(Current density)を測定することで、半導体中に発生する微少な発生キャリアが外部回路に電流として取り出される際の挙動がわかる。
図10に示すグラフは、波長635nmのレーザー光(可視光)を可変アッテネーター(0~-60dB)と2分岐路を介しフォトダイオードと
図2に示す太陽電池型検出器2の構成であり、後述する実施例に用いた太陽電池型検出器にそれぞれ入力して求めた結果である。
【0033】
図10に示すデータでは、電流密度100pA/cm
2以上(約1×10
-10A/cm
2以上)の領域では、1次関数もしくはべき乗関数に準ずる高い直線性が数μA/cm
2まで続いているのがわかる。このため、放射線誘起電流においても、上述の可視光と同様な直線性を示すと考えられる。
また、数100pA/cm
2以下(約1×10
-10A/cm
2以下)の領域では、線形性が崩れており2次関数に準じた曲線となっている。そのため、上述の可視光による誘起電流挙動を、太陽電池型検出器1の校正曲線として利用することにより、非線形の領域における中性子フラックスも解析することが可能となる。
【0034】
例えば、
図15に、校正曲線のために使用するデータを示す。
図10に示す光強度の値を4000倍にすることで、
図5から見積もった中性子照射による誘起電流挙動と一致する。中性子フラックスの換算は、測定された電流量を校正曲線から求められた関数式に代入することで計算できる。
1次関数もしくはべき乗関数の領域は、100pA/cm
2以上の領域であり、1次関数、y=dx+eでフィッティングするとy=7E-14x+2E-09の関係式で表示でき、べき乗関数、y=x
d+eでフィッティングすると、y=6×10
16x
1.002+0の関係式で表示できる。
また、2次関数の領域は、1pA/cm
2から100pA/cm
2までの領域であり、2次関数、y=ax
2+bx+cでフィッティングすると、y=-1E+27x
2+1E+17x-170469の関係式で表示できる。
即ち、上述のフィッティングした関数の関係式で校正曲線を表示できる。これら領域毎の校正曲線から光強度と放射線誘起電流の関係を中性子フラックスとして求め、把握することができる。
【0035】
本実施形態の太陽電池型検出器1、2は、既存の太陽電池製造技術にて作製する太陽電池デバイスを用いればよく、中性子測定用として特殊な設計や製造方法を必要としない。これは、太陽電池型検出器1、2から直接電流を得ることができるためである。
中性子に感度を持たせるためには、中性子を照射すると荷電粒子線ないし光子を発生させる変換膜6を塗布法、真空蒸着法やスパッタ法などの成膜法で太陽電池デバイスの表面に直接形成し、付帯させると良い。ないしは、別途作製した板状の変換膜を太陽電池デバイスの表面に密着させるなどにより付帯させるだけでよく、検出器の製作を簡単かつ低コストで実現可能となる。
【0036】
例えば、炭化ホウ素(B
4C)または、フッ化リチウム(LiF)を含む板状の変換膜を太陽電池デバイス表面に載せ替えることにより、
図11に示すように中性子に対する感度を変更することができる。
この場合の変換膜は、炭化ホウ素または、フッ化リチウムに限定するものではなく、先に記載したように中性子を荷電粒子ないし光子に変換可能な元素を含む板材あるいは膜材も有効である。元素によって中性子吸収断面積にエネルギー依存性があるため、測定される中性子の環境によって変換膜を簡易に交換できる構造が可能となる。
例えば、
図11に示す例に従うと、測定するべき中性子フラックスの大きな環境では、フッ化リチウムを含む変換膜を用い、測定するべき中性子フラックスの少ない環境では炭化ホウ素を含む変換膜を用いることができる。
【0037】
太陽電池型検出器1、2の感度/出力電流の大きさは、太陽電池デバイスの面積に比例するため、太陽電池デバイスのサイズによって感度を調整することが可能である。この関係を用いれば、用途に合わせた検出領域に調整することが簡単に可能である。
例えば、特許文献3に記載のセンサーでは、光における感度がないため、感度補正をすることができない。また、外部電源を用いたプリアンプにより微小アナログ信号から増幅したパルス信号を計測するため、太陽電池型検出器1、2の内部電位駆動の電流信号計測による測定ではないという差異がある。
【0038】
無機結晶系材料による通常の太陽電池デバイスは、-150℃~+300℃程度の温度範囲で動作するため、既存の中性子検出器よりも適用温度範囲が広い。この高温耐性を用いれば、原子力発電所の原子炉の内部や直近など、高温環境における中性子フラックスの測定が可能となる。
また、太陽電池デバイスは、放射線の被曝により結晶に損傷が発生し、出力電流の劣化、低下が懸念される。そのため、本形態の中性子線検出装置Aは、連続使用する際は劣化分の補正が必要となる。採用する太陽電池デバイスのアルファ粒子、ベータ粒子、ガンマ線などの放射線被曝量に対する出力電流の低下のデータを予め取得し、フラックス算出部にデータベースとして備えておくことで、自己補正が可能となる。この補正を行うならば、放射線に被爆する環境において、連続的に長時間使用する場合であっても、正確な中性子線の測定が可能となる。
【0039】
本形態によれば、中性子検出部は既存の技術による太陽電池を用いればよく、特別な構造を有する専用の検出デバイスを設計・製造する必要はない。また、p/n接合ダイオード構造の内部電界を用いてアルファ粒子吸収により発生した電荷を取り出すため電圧印加が必要ない。そのため、電圧源や電圧印加の回路や配線が必要なく、中性子検出システムとして簡素な構成で実現でき、低コスト化が可能な特徴を有する。
【0040】
また、太陽電池型検出器1、2として、1cm角程度のサイズのものを用いれば本形態の構造を実現するために十分なため、中性子検出部を小さくできる。これにより、加速器型中性子発生装置の中性子発生部直近など、これまで設置が難しく、測定できなかった場所における中性子線の測定が可能となる効果がある。
【0041】
太陽電池型検出器1、2は、中性子以外の放射線を吸収しても電流を発生するため、中性子/荷電粒子線ないし光子の変換膜6を有する太陽電池型検出器1の出力には中性子以外の放射線による電流を含む。そのため、中性子に感度のない放射線検出器により中性子以外の放射線を検出し差を求めなければならない。これは、既存の中性子検出器でも同じである。
しかし、本実施形態の構造では、中性子に感度のない放射線検出器として、中性子/荷電粒子線ないし光子の変換膜6を付帯しない太陽電池型検出器2を用いているので、変換膜6を付帯した太陽電池型検出器1と並べて設置することで、同時同位置測定が可能となり、算出した中性子線量の正確性を向上できる効果を得ることができる。
【0042】
本形態の中性子線検出装置Aによれば中性子線のフラックスを、より広い検出範囲で、より低価格にて、より広い使用温度範囲で、より小さな検出器設置容積にて、計測・算出することが可能な中性子線検出装置を提供できる。
【実施例0043】
InGaPからなるp型層とn型層の積層体を用い、積層体の両面に金と錫ないし亜鉛などの合金による低接触抵抗用の薄い(0.1μm以下)金属膜と、電極抵抗を低下させるために比較的に厚く(0.1μm以上)かつ中性子により放射化をして雑音の原因とならないモリブデン、ルテニウム、鉄、鉛、ジルコニウムなどによる金属膜からなる電極を形成した太陽電池デバイス(以後InGaP太陽電池)を用意した。このInGaP太陽電池の表面に対し、硼素粉末を焼結して形成した厚さ0.5mmの硼素板を密着させて、
図2に示す積層構造の太陽電池型中性子検出器を作製した。同時に、硼素板を有していない、同等構造と同等サイズのInGaP太陽電池を中性子以外の放射線検出器として用いた。
【0044】
InGaP太陽電池に対し、可視光ないし、基準放射線源、例えば、アルファ粒子、ベータ粒子、およびガンマ線の照射を行い、輝度ないし、それぞれのフラックス率と出力電流の関係のデータを予め取得した。同時に、照射フラックスと電流出力の低下の関係のデータも予め取得した。アルファ線のフラックス(総アルファ粒子発生レート)と中性子線のフラックスの強さ(50meV中性子入射フラックス)の関係を
図3に示し、
図4にアルファ粒子のフラックス(Heイオン照射フラックス)と励起電流(出力電流)の関係を示す。
【0045】
硼素板を付帯させたInGaP太陽電池型検出器と付帯しないInGaP太陽電池型検出器を並置させ、陽子を7MeVに加速してベリリウム板に衝突させることで中性子を発生させる方式の加速器型中性子発生装置の中性子発生部、すなわち、ベリリウム板から14cm離してモデレータとして設置した40mmのポリエチレン板直近に両方の太陽電池を設置した。
【0046】
加速器型中性子発生装置において入射陽子ビームの電流を変化させることで発生中性子フラックスを変化させ、硼素板を付帯させたInGaP太陽電池型検出器と付帯しないInGaP太陽電池型検出器からの出力電流を測定した。陽子ビーム電流から算出される中性子フラックスと2種のInGaP太陽電池の電流出力の関係を
図5に示す。この中性子発生装置の場合、硼素板なしのInGaP太陽電池の電流出力は、中性子と同時に発生するガンマ線とInGaP太陽電池自身が放射化したことによる放射線を吸収して発生したものであることがわかっている。
【0047】
図5に示す変換膜ありのInGaP太陽電池型検出器の励起電流値から、
図5に示す変換膜なしのInGaP太陽電池型検出器の励起電流値を引いた電流値が、中性子による発生電流値であると言える。従って、簡略的には、上述の中性子による発生電流値を知ることにより、
図4に示す関係と
図3に示す関係から勘案してInGaP太陽電池に照射された中性子フラックスを把握することができる。
なお、硼素板内で中性子吸収により発生したアルファ粒子のエネルギーと、
図4に示した実験で用いたアルファ粒子(Heイオン)のエネルギーが異なるため、より厳密に中性子フラックスを把握するには、以下の関係となる。
【0048】
フラックス算出部16に記憶されている
図3に示す中性子とアルファ粒子の発生レートの関係と、
図4に示す励起電流とHeイオン照射フラックスの値と、例えば
図6に示すような、InGaP太陽電池型検出器のモンテカルロシミュレーションにて、計算ないし実測された電流発生の比(この場合200keVアルファ線の値を1として規格化している)を表す係数を把握する。
加えて、例えば、
図7に示すような、変換膜(厚さ0.05mmの硼素膜)から放出される、モンテカルロシミュレーションにて計算ないし実測された、硼素膜下面とInGaP太陽電池型検出器上面の界面におけるアルファ粒子のエネルギーと、発生レート(単位時間当たりの発生数)の関係を表すスペクトルを把握する。
これら
図3、
図4、
図6からの係数と
図7からの発生レートの関係の把握と、前記差分計算により算出された電流値に基づき、中性子フラックスを計算できることが理解できる。
【0049】
以下に検知電流より中性子数を求める方法を記載する。
まず、変換膜を付帯したInGaP太陽電池型検出器における発生電流から変換膜付帯なしの素子の発生電流を引き、中性子のみによる検知電流値を求める。この電流は、
図8に示したエネルギースペクトルを有する中性子によって誘起されたものである。
中性子のエネルギーによって硼素膜がアルファ粒子を発生させる確率は、
図9に示したように異なる。そこで、
図8の縦軸の値と
図9の縦軸の値を乗じることにより、この中性子発生装置における中性子のエネルギーに対し発生するアルファ粒子の数の相対値が求められる。
【0050】
この相対値を中性子のエネルギー50meVでの値を1として規格化し、全エネルギー範囲にわたって積分して値を得ると、これはすべてのエネルギーの中性子によるアルファ粒子の発生数を50meVの中性子での発生数にすべて換算した場合の発生数比率を求めることができる。
この値を
図3の縦軸の値に乗ずれば、この中性子線検出装置における中性子の入射量に対する硼素膜の太陽電池側表面におけるアルファ粒子発生総量の関係が得られる。この関係をFとする。
一方で、中性子の入射により発生したアルファ粒子数とそのエネルギーの関係は
図7で示される。この
図7の縦軸の値と
図6の縦軸の値を乗じることにより、この硼素膜からのアルファ粒子のエネルギーに対しInGaP太陽電池にて発生する電流の、相対値が求められる。
【0051】
図7は、モンテカルロシミュレーションにて計算された、0.05mm厚の硼素膜からなる変換膜において1つの中性子入射により発生し放出されるアルファ粒子のエネルギーと、前記硼素膜の太陽電池表面における発生数の関係を表すスペクトルを示すグラフである。
図7に示すスペクトルは、入射する中性子のエネルギーによらず、いかなるエネルギーの中性子でも同じである。
【0052】
前述の相対値をアルファ粒子のエネルギー200keVでの値を1として規格化し、全エネルギー範囲にわたって積分して値を得ると、これはすべてのエネルギーのアルファ粒子による発生電流を200keVでの発生電流に換算した場合の電流値比率となる。
次に、先に求めた中性子のみによる検知電流値にこの電流値比率を乗じて得た電流値を
図4の縦軸に当てはめて、グラフから該当する横軸のアルファ粒子フラックス値を得ることができる。このフラックス値を前述の関係Fに当てはめることで、中性子の発生量(フラックス)を得ることができる。
なお、本特許の応用においては、
図8に示したような発生中性子のエネルギースペクトルが必要であるが、応用先の例である原子炉などでは、発生中性子のエネルギースペクトルが予めわかっている場合があり、また未知の場合でも計測や核反応シミュレーションなどにより発生中性子のエネルギースペクトルを求めることが可能である。これらの場合は、予めわかっている発生中性子のエネルギースペクトルを
図8の代用として用いれば良い。
【0053】
上述した如く、変換膜は、膜厚によって感度を変化させることが可能である。
図12は、25meV中性子がホウ素を含む変換膜へ入射した際、中性子の入射側および透過側から放出されるアルファ粒子の放出量の膜厚依存性を示すグラフである。
図12から、変換膜の膜厚が数μm以下(例えば、4μm以下)では、入射側および透過側における中性子放出量はほとんど同じである。一方、数μm以上(例えば、4μm超)では、入射側からのアルファ粒子の放出量は飽和するのに対して、透過側のアルファ粒子放出量は、膜厚の増加とともに減少する。
【0054】
入射側におけるアルファ粒子放出量が飽和する要因は、アルファ粒子の変換膜中の飛程が数μmのため、ホウ素を含む変換膜において数μmより厚いところで発生したアルファ粒子は、ホウ素を含む変換膜により遮蔽されてしまい放出されないからである。
透過側のアルファ粒子放出量が減少する要因は、ホウ素を含む変換膜の内部で、中性子が吸収されることで、透過側へ到達する中性子量が減少するためである。そのため、変換膜の膜厚を制御することにより、検出器の感度特性や方向依存性を制御することが可能である。
【0055】
また、表面からの荷電粒子や光子の放出量の膜厚依存性は、ホウ素とアルファ粒子に限定されるものではなく、ホウ素とリチウム、ホウ素とガンマ線、リチウムと陽子線、リチウムとアルファ粒子、ガドリニウムとガンマ線などの中性子を荷電粒子および光子へ変換できる板に適応される。
【0056】
本実施例における測定の前後にて、用いた2枚のInGaP太陽電池デバイスの太陽電池としての出力、すなわち光を照射したときの電流出力を測定したところ、放射線被曝による劣化は見られず、劣化補正が必要ないことが確認された。このように、InGaPなどの太陽電池による検出器の劣化を調べるには、太陽電池としての出力を測定するという簡単な方法で調査可能である。
【0057】
図13は、
図1に示す中性子線検出装置Aを備えた中性子線計測システムSの一形態を示す構成図である。
第1の太陽電池型検出器1と第2の太陽電池型検出器2がセンサー収容部20に収容されている。第1の太陽電池型検出器1の出力線と第2の太陽電池型検出器2の出力線がそれぞれSMA(Sub Miniature Type A)コネクタ21と接続ケーブル22とSMAコネクタ23を介しノイズフィルター25に接続されている。接続ケーブル23は、シールド線であることが好ましい。
【0058】
ノイズフィルター25の配線ボックス25の内部配線の一部がアース線26により接地されている。第1の太陽電池型検出器1の出力線と第2の太陽電池型検出器2の出力線をノイズフィルター25に接続することにより、放射線環境中で第1の太陽電池型検出器1と第2の太陽電池型検出器2に発生する電流のノイズ成分を除去できる。
ノイズ成分としては、測定システムから発生する微小なリップル電圧からのノイズ、あるいは、放射線により系が帯電することにより発生するノイズが考えられる。リップル電圧起因のノイズは、主にコンデンサーやローパスフィルターを用いて除去することができる。また、放射線耐電ノイズは、測定系を接地することで除去することができる。
【0059】
ノイズフィルター25の出力側は、BNCコネクタ27と同軸ケーブル28を介し微小電流計29に接続され、微小電流計29はデジタル信号ケーブル30を介しパーソナルコンピュータなどの演算装置31に接続されている。演算装置31に
図1に示した差分計算部15とフラックス算出部16が組み込まれている。
微小電流計29は、第1の太陽電池型検出器1の出力線と第2の太陽電池型検出器2の出力線から送られる電流のA/D変換を行う。演算装置31に組み込まれている差分計算部15とフラックス算出部16は、先に説明したように、電流信号をフラックス率に変換し、この変換の際に、先に説明した可視光や基準放射線源により作製した校正曲線を利用し、中性子フラックスを算出できる。
【0060】
以上説明の中性子線計測システムSは、第1ステップとして電流値の読出ステップを実施し、第2ステップとして校正曲線の読出ステップを実施し、第3ステップとして校正曲線と電流量から中性子フラックスの計算を実施し、第4ステップとして中性子線フラックスの出力を実施するシステムと表記できる。
【0061】
図13に示すパーソナルコンピュータなどの演算装置31は、一例として、
図14に示すように入力手段32と、制御部33と、記憶手段34と、出力手段35を備えている。
入力手段32は、例えば、文字や数字を入力するキーボードなどであり、入力手段32によって各種の情報を制御部33または記憶手段34に入力することができる。
制御部33は、所謂CPU(中央演算処理装置)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成されており、各種プログラムによって様々な数値計算や情報処理、機器制御などを行うことができる。
【0062】
記憶手段34は、例えば、SSD(ソリッドステートドライブ)やHDD(ハードディスクドライブ)などの情報記録媒体であり、各種のプログラムや、算出手段36の実行に必要な、例えば、先のフラックス算出部16の記憶部に前述のように記憶させておく各種情報、これらによって得られた結果などを必要に応じて記憶させ、または該記憶内容を読み出すことができる。
出力手段35は、例えば、モニターやプリンターなどであり、記憶手段34似記憶されている各種プログラムから得られる各種の情報に加え、後述する種々の関係などの情報を画面上又は紙面上に必要に応じて表示または印刷することができる。
【0063】
なお、記憶手段34には、必要なプログラムや、後記する算出手段36の実行に必要な各種の情報を当該プログラム実行前に予め記憶させておくことでこれらを任意に読み出し、操作することができる。また、当該プログラムを実行することによって得られた算出結果などを必要に応じて記憶させたり読み出したりすることが可能である。なお、記憶手段34にインターネットやネットワークへの通信機能を備え、インターネットやネットワークに接続された他のパーソナルコンピュータに備えられた記憶手段や算出手段、予測手段を利用して演算装置31と同様に計算し結果を算出できるように構成しても良いのは勿論である。
【0064】
記憶手段34に記憶させる情報は、例えば、先に説明した中性子フラックス算出部16に記憶させておく情報と同じ、第1の情報と第2の情報などである。また、先に説明したように、第1の情報に基づき、
図3に示す関係を取得して記憶し、第2の情報に基づき、
図4に示す関係を取得して記憶することができる。
また、これらの情報を基に算出手段36は、先に説明した差分計算部15と同様の計算を行い、先に説明したように電流測定器3、4の電流信号の差分計算を行い、
図3に示す関係のデータと
図4に示す関係のデータから中性子フラックスの算出ができる。その他、先に説明した、
図15に示すグラフに基づき、中性子フラックスに対して電流量がべき関数による比例関係に従うようになることを利用し、フィッティングの関数による中性子フラックスを算出する機能を算出手段36が有しても良い。
【0065】
また、
図15に示すグラフに基づき、先に説明した太陽電池型検出器1の校正曲線を利用し、非線形の領域における中性子フラックスも2次関数による関係式に基づき解析できる機能を記憶手段34と算出手段36に備えていても良い。
【0066】
上述のプログラムは、表面に中性子をアルファ粒子、陽子、リチウム核、ガンマ線、ベータ線の何れかの荷電粒子線ないし光子に変換する変換膜を付帯し、放射線の入射により電流を発生させる第1の太陽電池型検出器1と、前記放射線の入射により中性子に感度のない電流を出力信号とする放射線検出器2を用い、前記放射線の入射により、前記第1の太陽電池型検出器1で発生した電流と、前記放射線検出器2で発生した電流を信号として電流測定器3で検出する。
そして、このプログラムは、演算装置(コンピューター)31を、前記電流測定器3、4によって検出された第1の太陽電池型検出器1で発生した電流信号と、放射線検出器2で発生した電流信号を算出手段(フラックス算出部)36で比較する比較手段と、算出手段(フラックス算出部)36において、電流測定器3、4において検出された太陽電池型検出器1及び放射線検出器2からの電流信号に対して、予め取得した所定の線種に係る入射放射線のフラックスと前記太陽電池型検出器及び前記放射線検出器からの検出電流との関係に対応させ、対応させた結果に基づいて中性子線のフラックスを算出する手段として機能させるプログラムであると説明できる。
【0067】
その他、先に説明した差分計算部15とフラックス算出部16が
図11を基に測定するべき中性子フラックスの大きな環境と中性子フラックスの少ない環境で測定する場合も同様に、演算装置31に組み込んだプログラムにより差分計算部15とフラックス算出部16と同様に実施することができる。
更に、実施例に記載した
図3~
図12に示す関係に基づいて中性子フラックスを計算する機能を有する差分計算部15とフラックス算出部16の機能を記憶手段34と算出手段36に各プログラムとして備え、記憶手段34に備えたこれらプログラムの実行により、実施例の記載と同様に先に説明した中性子フラックスの算出ができる構成を採用することができる。
A…中性子線検出装置、S…中性子線検出システム、1…第1の太陽電池型検出器、2…放射線検出器(第2の太陽電池型検出器)、3、4…電流測定器、5…フラックス算出装置、6…変換膜、7…P層、8…N層、9…積層体、10、11…電極層、12…変換膜、15…差分計算部、16…フラックス算出部、25…ノイズフィルター、26…アース線、29…微小電流計、31…演算装置(パーソナルコンピュータ)、32…入力手段、33…制御部、34…記憶手段、35…出力手段、36…算出手段。