IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェノビス エービーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115853
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】新しい連鎖球菌プロテアーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/37 20060101AFI20220802BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20220802BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20220802BHJP
   C12N 9/52 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
C12Q1/37 ZNA
G01N27/62 V
C07K16/00
C12N9/52
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022056522
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2018540841の分割
【原出願日】2017-02-03
(31)【優先権主張番号】1630021-2
(32)【優先日】2016-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(71)【出願人】
【識別番号】510069917
【氏名又は名称】ジェノビス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ヴォン パウエル-ラミンゲン,ウルリッチ
(72)【発明者】
【氏名】スポエリー,クリスチャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】連鎖球菌プロテアーゼを使用してIgGを切断するインビトロの方法を提供する。
【解決手段】IgGの切断のためのインビトロの方法であって、IgGを:(a)特定のアミノ酸配列;(b)特定のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGシステインプロテアーゼ活性を有するそれらの変異体;または(c)IgGシステインプロテアーゼ活性を有する、(a)もしくは(b)のいずれかのそれらのフラグメントを含むポリペプチドと接触させることを含む方法、この方法を使用してFcおよびFabフラグメントを生じさせること、ならびにこの方法を使用してIgGを検出することにさらに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgGの切断のためのインビトロの方法であって、IgGを:
(a)配列番号1、3、5、7、9もしくは11のアミノ酸配列;
(b)配列番号1、3、5、7、9もしくは11のアミノ酸配列との少なくとも70%
の同一性を有し、IgGシステインプロテアーゼ活性を有するそれらの変異体;または
(c)IgGシステインプロテアーゼ活性を有する、(a)もしくは(b)のいずれか
のそれらのフラグメント
を含むポリペプチドと接触させることを含む方法。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が配列番号3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドを、IgGを含有する試料と、特異的システインプロテアーゼ活性が
生ずることを可能にする条件下でインキュベートすることを含む、請求項1または2に記
載の方法。
【請求項4】
前記IgGがヒトIgG1である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記切断産物の同定および/または単離をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項6】
前記同定および/または単離が、ゲル電気泳動または質量分析法による分析を含む、請
求項5に記載の方法。
【請求項7】
FcおよびFabフラグメントを生じさせるために使用される、前記請求項のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項8】
IgGを検出するために使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(i)試料を、請求項1に記載のポリペプチドと、前記ポリペプチドのIgG特異的シ
ステインプロテアーゼ活性を可能にする条件下で接触させること;および
(ii)IgG特異的切断フラグメントの存在についてモニターすること
を含み、前記特異的切断フラグメントの存在が試料中のIgGを示す、請求項8に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を提示する新しい連鎖球菌プ
ロテアーゼに関する。本発明は、連鎖球菌感染の治療およびそれに対するワクチン接種、
病原性のIgG抗体により媒介される状態、例えば自己免疫性疾患などの治療、ならびに
バイオテクノロジーのための新しい手段の開発にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
病原性細菌は、それらの宿主にコロニーをつくって侵略する種々の戦略を発達させてお
り、広範囲のビルレンス因子が、成長を促進して、宿主の免疫応答からの回避を媒介する
ために使用される。病原性細菌は、絶滅の明白なリスクを避けるために、両方の自然免疫
応答に対処するだけでなく、最も重要なことであるが、特異的免疫グロブリンにも対処し
なければならない。特異的Igは、補体に基づく、および/または食作用に基づく免疫応
答を開始することによる適応免疫系の中心である。Igは、可撓性ヒンジ領域を通してF
cエフェクター部分と連結している抗原を認識する可変性のFab領域からなる。Fc領
域は、食作用細胞の特異的受容体との接触を媒介するか、またはC1qと結合することに
より補体の古典的経路を開始させる。したがって、ヒンジ領域は、数種の微生物のプロテ
アーゼのための標的であり、例には、S.ピオゲネス(S. pyogenes)からのIdeS(v
on Pawel-Rammingen et al. 2002. EMBO J. 21、1607-161)、ポルフィロモナス・ジンジ
バリス(Porphymonas ginivalis)からのギンギパインK(Gingipain K)(Vincents et
al. 2011. FASEB J. 10, 3741-3750)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
からのSspA(Prokesova et al. 1992. Immunol. Lett. 31. 259-265)が含まれる。
【0003】
連鎖球菌感染は、ヒトならびにブタ、ウマおよびウシのような家畜に共通する。連鎖球
菌感染は、比較的緩和な疾患から重症の生命を脅かす状態まで、重症度がさまざまである
。連鎖球菌感染の防御、予防および治療においてヒトおよび獣医学的ワクチンで使用する
ことができる連鎖球菌抗原の供給の必要性は大きい。
【0004】
厳密な配列特異性を有するプロテアーゼは、バイオテクノロジー的手段として有用であ
る。免疫グロブリンを分解するプロテアーゼは、医学的に使用することができて、例えば
、IgGを特異的に分解するプロテアーゼは、IgG抗体により媒介される疾患または状
態の治療または予防のために使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、連鎖球菌(streptoccoci)由来のIgGを分解する酵素の新規なファミ
リーを同定し、精製して特徴付けた。この酵素のファミリーは、免疫グロブリンGを分解
する酵素としてIgdEと命名され、以前に特徴付けられたIdeSファミリーの連鎖球
菌の免疫グロブリンを分解するプロテアーゼと区別されるシステインプロテアーゼであり
、IgGのヒンジ領域の効率的な切断を高度の特異性をもって媒介する。
【0006】
該酵素は、S.スイス(S. suis)の株で同定されて、IgdEsuisと命名され;
S.アガラクチアエ(S. agalactiae)の株で同定されて、IgdEagalactia
と命名され;S.ポルシナス(S. porcinus)の株で同定されてIgdEporcin
usと命名され;S.エクイ(S. equi)の株で同定されて、IgdEequiと命名さ
れ;S.シュードポルシナス(S. pseudoporcinus)の株で同定されて、IgdEpse
udoporcinusと命名された。
【0007】
S.スイス(S. suis)からのIgdEは、ブタIgGに対して高度に特異的であるこ
とが示されている。IgMを切断するプロテアーゼIdeSsuisと同様に、1121
アミノ酸の大きいタンパク質は、該タンパク質のN末端部分にタンパク質分解活性ドメイ
ンを保有する。N末端の470アミノ酸からなる短縮型S.スイス(S. suis)IgdE
タンパク質がIgG切断活性を保持するので、フルサイズのタンパク質は、インビトロで
はIgG切断のために必須ではない。
【0008】
S.スイス(S. suis)のIgdEによるブタIgGの切断は、2つのIgG重鎖間で
共有結合のジスルフィド結合を形成しているように思われるヒンジ領域システイン残基の
ちょうどN末端で起こった。したがって、IgG切断は、64kDaのFcフラグメント
および2つのFabフラグメントの形成をもたらす。この切断パターンは、IgGをより
低いヒンジ領域で加水分解して、それにより1つのF(ab’)フラグメントおよび2
つの同一の1/2Fcフラグメントを生じさせるS.ピオゲネス(S. pyogenes)のIg
GエンドペプチダーゼIdeS(von Pawel-Rammingen ibid)およびIgMのC末端を鎖
内ジスルフィド結合から切断して遊離の1/2Fcフラグメントを生じさせるIdeSs
uis(Seele et al. 2015. J. Vet. Res. 46, 45)と区別される。
【0009】
S.スイス(S. suis)は、例えば、ヒトおよびブタで髄膜炎を引き起こし得る。S.
アガラクチアエ(S. agalactiae)は、例えば、ヒトおよびウシで髄膜炎および敗血症を
引き起こし得る。S.ポルシナス(S. porcinus)は、例えば、ブタで気道感染、ブタ腺
疫を起こし得る。S.エクイ(S. equi)は、例えば、ウマで気道感染、腺疫を起こし得
る。
【0010】
IgdEファミリーのプロテアーゼは、連鎖球菌感染の予防および治療に、例えば、連
鎖球菌感染に対する免疫化のためのワクチンなどで使用される。IgdE抗体は、連鎖球
菌感染と関連する状態の受動免疫化および治療でさらに使用される。IgdEプロテアー
ゼは、新しいバイオテクノロジー的手段を開発するためにも有用であり、さらにIgG抗
体により媒介される疾患または状態、例えば、自己免疫性疾患、移植拒絶、手術後の治療
および後天性血友病などを治療または予防するために使用される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、第1の態様において、本発明は、対象において免疫応答を生じさせること
に使用するための単離されたIgdEポリペプチドを提供する。
【0012】
単離されたIgdEポリペプチドは、好ましくは、IgdEsuis、IgdEaga
lactiae、IgdEporcinus、IgdEequi、またはIgdEpse
udoporcinusポリペプチド、またはシステインプロテアーゼ活性を保持し、か
つ/もしくは対象において連鎖球菌に対する免疫応答を生じさせることができる、それら
のいずれかの変異体もしくはフラグメントである。変異体は、別の細菌からのIgdEポ
リペプチドであってもよい。細菌は、好ましくは、連鎖球菌である。
【0013】
第1の態様の一実施形態において、本発明は、対象において免疫応答を生じさせること
に使用するための:
(a)配列番号1のアミノ酸配列;
(b)配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号1の変異体;
(c)対象において、連鎖球菌、好ましくはS.スイス(S. suis)に対する免疫応答
を生じさせることができる配列番号1のフラグメント、配列番号1の変異体、もしくは配
列番号1の変異体のフラグメント;
(d)配列番号3のアミノ酸配列;
(e)配列番号3のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3の変異体;
(f)対象において、連鎖球菌、好ましくは、S.アガラクチアエ(S. agalactiae)
に対する免疫応答を生じさせることができる配列番号3のフラグメント、配列番号3の変
異体、もしくは配列番号3の変異体のフラグメント;
(g)配列番号5のアミノ酸配列;
(h)配列番号5のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号5の変異体;
(i)対象において、S.ポルシナス(S. porcinus)に対する免疫応答を生じさせる
ことができる配列番号5のフラグメント、配列番号5の変異体、もしくは配列番号5の変
異体のフラグメント;
(j)配列番号7のアミノ酸配列;
(k)配列番号7のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号7の変異体;
(l)対象において、連鎖球菌、好ましくはS.エクイ(S. equi)に対する免疫応答
を生じさせることができる配列番号7のフラグメント、配列番号7の変異体、もしくは配
列番号7の変異体のフラグメント;または
(m)配列番号9のアミノ酸配列;
(n)配列番号9のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号9の変異体;
(o)対象において、連鎖球菌、好ましくはS.シュードポルシナス(S. pseudoporci
nus)に対する免疫応答を生じさせることができる配列番号9のフラグメント、配列番号
9の変異体、もしくは配列番号9の変異体のフラグメント
を含み;好ましくは、免疫応答は保護免疫応答である、IgdEポリペプチドを提供する
【0014】
好ましくは、免疫応答は、免疫化された対象において、感染性連鎖球菌のIgdEの、
IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を中和することができる抗体を生じさせる
【0015】
第1の態様の別の実施形態において、本発明は、IgdEポリペプチドを対象に投与す
ることを含む、前記対象において免疫応答を生じさせる方法を提供する。
【0016】
第2の態様において、本発明は、対象において免疫応答を生じさせることに使用するた
めのIgdEポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0017】
IgdEポリペプチドは、好ましくは、IgdEsuis、IgdEagalacti
ae、IgdEporcinus、IgdEequiまたはIgdEpseudopor
cinusポリペプチド、またはシステインプロテアーゼ活性を保持し、かつ/もしくは
対象において、連鎖球菌に対する免疫応答を生じさせることができる、それらの任意の変
異体もしくはフラグメントである。変異体は、別の細菌からのIgdEポリペプチドであ
ってもよい。細菌は好ましくは連鎖球菌である。
【0018】
第2の態様の一実施形態において、本発明は、対象において、ポリヌクレオチド免疫応
答を生じさせることに使用するための:
(a)ポリペプチド配列番号1もしくは上で定義されたそれらの変異体もしくはフラグ
メントをコードする配列;
(b)ポリペプチド配列番号3もしくは上で定義されたそれらの変異体もしくはフラグ
メントをコードする配列;
(c)ポリペプチド配列番号5もしくは上で定義されたそれらの変異体もしくはフラグ
メントをコードする配列;
(d)ポリペプチド配列番号7もしくは上で定義されたそれらの変異体もしくはフラグ
メントをコードする配列;または
(e)ポリペプチド配列番号9もしくは上で定義されたそれらの変異体もしくはフラグ
メントをコードする配列
を含む、IgdEポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0019】
第2の態様の別の実施形態において、本発明は、対象において、免疫応答を生じさせる
ことに使用するための:
(a)配列番号2もしくはそれに相補的な配列;
(b)(a)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列;
(c)(a)もしくは(b)で定義された配列に、ストリンジェントな条件下でハイブ
リダイズする配列;
(d)(a)もしくは(b)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有する
配列;
(e)IgdEシステインプロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、かつ/
もしくは対象において、連鎖球菌、好ましくはS.スイス(S. suis)に対する免疫応答
を生じさせることができる配列(a)、(b)、(c)もしくは(d)のいずれかのフラ
グメント;
(f)配列番号4もしくはそれに相補的な配列;
(g)(f)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列;
(h)(f)もしくは(g)で定義された配列に、ストリンジェントな条件下でハイブ
リダイズする配列;
(i)(f)もしくは(g)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有する
配列;
(j)配列(f)、(g)、(h)もしくは(i)のいずれかの、IgGを分解するシ
ステインプロテアーゼ活性を有し、かつ/もしくは対象において、連鎖球菌、好ましくは
S.アガラクチアエ(S. agalactiae)に対する免疫応答を生じさせることができるポリ
ペプチドをコードするフラグメント;
(k)配列番号6もしくはそれに相補的な配列;
(l)(k)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列;
(m)(k)もしくは(l)で定義された配列に、ストリンジェントな条件下でハイブ
リダイズする配列;
(n)(k)もしくは(l)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有する
配列;
(o)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有し、かつ/もしくは対象にお
いて、連鎖球菌、好ましくはS.ポルシナス(S. porcinus)に対する免疫応答を生じさ
せることができるポリペプチドをコードする、配列(k)、(l)、(m)もしくは(n
)のいずれかのフラグメント;
(p)配列番号8もしくはそれに相補的な配列;
(q)(p)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列;
(r)(p)もしくは(q)で定義された配列に、ストリンジェントな条件下でハイブ
リダイズする配列;
(s)(p)もしくは(q)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有する
配列;または
(t)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有し、かつ/もしくは対象にお
いて、連鎖球菌、好ましくはS.エクイ(S. equi)に対する免疫応答を生じさせること
ができるポリペプチドをコードする配列(p)、(q)、(r)もしくは(s)のいずれ
かのフラグメント;
(u)配列番号10もしくはそれに相補的な配列;
(v)(u)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列;
(w)(u)もしくは(v)で定義された配列に、ストリンジェントな条件下でハイブ
リダイズする配列;
(x)(u)もしくは(v)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有する
配列;または
(y)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有し、かつ/もしくは対象にお
いて、連鎖球菌、好ましくはS.シュードポルシナス(S. pseudoporcinus)に対する免
疫応答を生じさせることができるポリペプチドをコードする、配列(u)、(v)、(w
)もしくは(x)のいずれかのフラグメント
を含むIgdEポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0020】
好ましくは、免疫応答は保護免疫応答である。
【0021】
好ましくは、免疫応答は、免疫化された対象において、感染性連鎖球菌のIgdEの、
IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を中和することができる抗体を生じさせる
【0022】
第2の態様の別の実施形態において、本発明は、IgdEポリペプチドをコードするポ
リヌクレオチドを対象に投与することを含む、前記対象において免疫応答を生じさせる方
法を提供する。
【0023】
第3の態様において、本発明は、IgG抗体により媒介される疾患または状態の治療ま
たは予防に使用するための単離されたIgdEポリペプチドを提供する。
【0024】
IgdEポリペプチドは、好ましくは、IgdEsuis、IgdEagalacti
ae、IgdEporcinus、IgdEequiまたはIgdEpseudopor
cinusポリペプチド、またはシステインプロテアーゼ活性を保持するそれらのいずれ
かの変異体もしくはフラグメントである。変異体は、別の細菌からのIgdEポリペプチ
ドであってもよい。細菌は好ましくは連鎖球菌である。
【0025】
第3の態様の一実施形態において、本発明は、IgG抗体により媒介される疾患または
状態の治療または予防に使用するための:
(a)配列番号1のアミノ酸配列;
(b)配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号1の変異体;
(c)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号1のフラグメン
トもしくは配列番号1の変異体のフラグメント;
(d)配列番号3のアミノ酸配列;
(e)配列番号3のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3の変異体;
(f)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3のフラグメン
トもしくは配列番号3の変異体のフラグメント;
(g)配列番号5のアミノ酸配列;
(h)配列番号5のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号5の変異体;
(i)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号5のフラグメン
トもしくは配列番号5の変異体のフラグメント;
(j)配列番号7のアミノ酸配列;
(k)配列番号7のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号7の変異体;
(l)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号7のフラグメン
トもしくは配列番号7の変異体のフラグメント;
(m)配列番号9のアミノ酸配列;
(n)配列番号9のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号9の変異体;
(o)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号9のフラグメン
トもしくは配列番号9の変異体のフラグメント;
(p)配列番号11のアミノ酸配列;
(q)配列番号11のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分
解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号11の変異体;または
(r)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号11のフラグメ
ントもしくは配列番号11の変異体のフラグメント
を含むIgdEポリペプチドを提供する。
【0026】
好ましくは、IgdEポリペプチドは:
(d)配列番号3のアミノ酸配列;
(e)配列番号3のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3の変異体;
(f)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3のフラグメン
トまたは配列番号3の変異体のフラグメント;
を含む、IgdEagalactiaeポリペプチドであり得る。
【0027】
第3の態様の別の実施形態において、本発明は、治療的有効量のIgdEポリペプチド
を対象に投与することを含む、IgG抗体により媒介される疾患または状態の治療、防御
または予防のための方法を提供する。
【0028】
IgG抗体により媒介される疾患または状態は、自己免疫性疾患、移植拒絶、手術後の
治療および後天性血友病であり得る。
【0029】
第4の態様において、本発明は、IgGを、システインプロテアーゼ活性を有するIg
dEポリペプチドと接触させることを含む、IgGの切断のためのインビトロの方法を提
供する。
【0030】
IgdEポリペプチドは、好ましくは、IgdEsuis、IgdEagalacti
ae、IgdEporcinus、IgdEequi、またはIgdEpseudopo
rcinusポリペプチド、またはIgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を保持
する、それらのいずれかの変異体もしくはフラグメントである。変異体は、別の細菌から
のIgdEポリペプチドであってもよい。細菌は好ましくは連鎖球菌である。
【0031】
第4の態様の一実施形態において、本発明は、IgGを、IgdEポリペプチドと接触
させることを含むIgGの切断のためのインビトロの方法であって:
(a)配列番号1のアミノ酸配列;
(b)配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号1の変異体;
(c)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号1のフラグメン
トもしくは配列番号1の変異体のフラグメント。
(d)配列番号3のアミノ酸配列;
(e)配列番号3のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3の変異体;
(f)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3のフラグメン
トもしくは配列番号3の変異体のフラグメント;
(g)配列番号5のアミノ酸配列;
(h)配列番号5のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号5の変異体;
(i)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号5のフラグメン
トもしくは配列番号5の変異体のフラグメント;
(j)配列番号7のアミノ酸配列;
(k)配列番号7のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号7の変異体;
(l)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号7のフラグメン
トもしくは配列番号7の変異体のフラグメント;
(m)配列番号9のアミノ酸配列;
(n)配列番号9のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号9の変異体;
(o)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号9のフラグメン
トもしくは配列番号9の変異体のフラグメント;
(p)配列番号11のアミノ酸配列;
(q)配列番号11のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分
解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号11
の変異体;または
(r)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号11のフラグメ
ントもしくは配列番号11の変異体のフラグメント
を含む方法を提供する。
【0032】
好ましくは、IgdEポリペプチドは:
(d)配列番号3のアミノ酸配列;
(e)配列番号3のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3の変異体;または
(f)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3のフラグメン
トもしくは配列番号3の変異体のフラグメント
を含むIgdEagalacポリペプチドであり得る。
【0033】
第4の態様の別の実施形態において、本発明は、IgGを、IgGを分解するシステイ
ンプロテアーゼ活性を有するIgdEポリペプチドと接触させることを含む、IgGのF
cまたはFabフラグメントを生じさせるためのインビトロの方法を提供する。
【0034】
第5の態様において、本発明は、IgdEポリペプチドのIgGシステイン活性を活性
化するかまたは阻害する物質を同定する方法を提供する。該方法は;
a)IgdEポリペプチドおよびIgGを、候補物質と、該物質の不在下におけるIg
Gのシステイン活性を可能にする条件下で接触させること、
b)候補物質の存在下で消化されたIgGの量を、前記物質の不在下における場合と比
較して決定すること、
c)それにより、該物質が、IgdEポリペプチドのIgGシステイン活性を活性化す
るかまたは阻害するかを決定すること
を含むことができる。
【0035】
IgG分解の定量分析は、実施例1で説明されるように実施することができる。
【0036】
本発明による方法で試験され得る候補化合物は、「低分子」として一般的に知られる簡
単な有機分子、例えば、分子量が2000ダルトン未満のものを含む。該方法は、化合物
ライブラリー、例えば、合成ペプチドライブラリーおよびペプチドファージライブラリー
を含むペプチドライブラリーなどをスクリーニングするために使用することもできる。他
の適当な分子は、ポリヌクレオチド配列、およびIgdEのIgGを分解する活性を調整
する任意の他の分子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1-1】S.スイス(S. suis)の培養上清におけるIgG分解活性。 (A)S.スイス(S. suis)株10および10ΔideSsuisの濃縮された(20×)培養上清を2%ブタ血漿と、37℃で16時間インキュベートして、還元条件下でSDS-PAGEにより分析した。約32kDaの分解産物()が観察された。(B)硫酸アンモニウムにより分別沈殿されたS.スイス(S. suis)株10の培養上清の抗IgGウェスタンブロット分析。20~40%および40~60%硫酸アンモニウム飽和分画と、37℃で16時間、1%ブタ血漿のインキュベーション後、IgG分解産物()が得られた。レーン1は、タンパク質のサイズ標準を示す化学発光シグナルの検出前の膜の写真の画像である。(C)全ての試験血清型のS.スイス(S. suis)株の培養上清がIgGを切断させた。濃縮された(10×)培養上清を1%ブタ血漿と37℃で16時間インキュベートして、抗IgGウェスタンブロットにより分析した。変化する強度の約32kDaにおけるIgG切断産物()が全てのレーンで観察された。異なるウェスタンブロットの画像を1つの図に集めた。
図1-2】S.スイス(S. suis)の培養上清におけるIgG分解活性(図1-1の続き)。
図2】S.スイス(S. suis)IgdEの活性部位の同定。 (A)IgdEおよび潜在的な活性部位の残基を置換した異なるrIgdE構築物およびC末端短縮変異体の模式的例示。分泌シグナルペプチド(残基1~37)は薄い灰色でマークし、トランスグルタミナーゼドメインはボックスで囲み、潜在的な活性部位の残基および置換を示した。(B)3.3μMのブタIgGを、37℃で16時間、大腸菌(E. coli)細胞が発現した異なるrIgdE構築物の可溶性分画とインキュベートした。反応を還元条件下でSDS-PAGEにより分析した。IgG切断()は、rIgdE、rIgdED348AおよびrIgdEΔCとのインキュベーションで起こったが、rIgdEC302SまたはrIgdEH333Aとでは起こらなかった。37kDaの弱いタンパク質のバンドは、溶解物調製において存在する汚染物質であり、IgdE活性とは関係がない。
図3】組換えS.スイス(S. suis)のIgdEの時間経過および阻害剤プロファイル。 切断(A)の時間経過を連続サンプリングによりモニターした後、還元条件下でクーマシーフルオルオレンジ染色SDS-PAGEを行い、続いて切断産物をデンシトメトリーで定量した。1.67μMのブタIgGを0.2μMの精製rIgdEΔCとインキュベートした。終夜の切断(16時間)を100%相対切断と定めた。阻害剤のプロファイル(B)のために、250μMおよび2.5μMの各阻害剤の存在下で初期切断をモニターした。阻害されない対照の初期切断活性を100%相対活性と定めた。DMSO対照は、250μMのZ-LVG-CHN2と相関する。データは3回の実験の平均±SEMとして表す。阻害されない対照()またはDMSO対照(○)との差を、Dunnettの複数の比較試験により、有意性を<0.05()、<0.01(**)および<0.001(***または○○○)のP値に設定して分析した。
図4】S.スイス(S. suis)IgdEは、ブタIgGの重鎖をヒンジ領域で切断する。 反応を、非還元(A)および還元(B)クーマシーブルー染色SDS-PAGEにより分析した。3.3μMのIgGを、10nMの精製rIgdEと(+)またはそれなしで(-)37℃で16時間インキュベートした。(C)観察された切断パターンおよび切断部位により、1つのIgG重鎖が最初にIgdEにより加水分解されて1つの遊離のFabフラグメント(Fab)および単一の切断されたIgG(scIgG)を生じ、第2ステップで他の重鎖が加水分解されて、1つのFcフラグメント(Fc)および2つのFabフラグメントが生ずるモデルが提案される。
図5-1】IgdEは、ブタIgGに高度に特異的である。 (A)2%ブタ血漿を10nMの精製rIgdEと(+)またはそれなしで(-)インキュベートした。反応を、抗ブタIgG、IgMおよびIgAウェスタンブロットにより還元条件下で分析した。IgGの切断のみが観察された()。(B)0.5mg/mlの異なる種のIgGを、10nM精製のrIgdEと(+)またはそれなしで(-)インキュベートして、還元条件下でSDS-PAGEにより分析した。ブタ()以外のどの他の種から誘導されたIgGの切断も観察されなかった。37kDaの弱いタンパク質バンドは、溶解物調製において存在する汚染物質であり(レーン2を参照されたい)、IgdE活性と関係がない。異なるゲルの画像を1つの図にまとめた。
図5-2】IgdEは、ブタIgGに高度に特異的である(図5-1の続き)。
図6-1】内因性IgGのS.スイス(S. suis)IgdEによる分解。 S.スイス(S. suis)のIgdEは、健常ブタおよびそれぞれの病変を有するブタの全ての試験体液で、内因性IgGを分解する。(サイズを矢印で示した)。他の分解産物は観察できなかった。体液を10nMの精製rIgdEと(+)またはそれなしで(-)、37℃で16時間インキュベートした。反応を、SDS-PAGE(A)および抗IgGウェスタンブロット(B)により還元条件下で分析した。タンパク質サイズ標準を示すレーンは、化学発光シグナルの検出前の膜の写真画像である。異なるゲルの画像を1つの図にまとめた。
図6-2】内因性IgGのS.スイス(S. suis)IgdEによる分解(図6-1の続き)。
図7】IgdEは、S.スイス(S. suis)によるIgG切断のために必要であり、IgG切断はIdeSsuisと独立である。 S.スイス(S. suis)株10、10ΔigdE、10ΔideSsuisおよび10ΔideSsuisΔigdEの濃縮された(10×)上清を、1%ブタ血漿と37℃で16時間インキュベートした。反応を抗IgGウェスタンブロット(A)または抗IgMウェスタンブロット(B)により還元条件下で分析した。IgG分解()は、株10および10ΔideSsuisの上清とインキュベートしたときにのみ観察され、それに対してIgM分解()は、株10および10ΔigdEの上清とのインキュベーションでのみ観察された。
図8】S.スイス(S. suis)の培養上清におけるIgG分解活性検出の阻害剤プロファイル。 S.スイス(S. suis)の株10の濃縮された(10×)培養上清を、クラス特異的プロテアーゼ阻害剤の存在下でブタ血漿とインキュベートした。反応を抗IgGウェスタンブロットにより還元条件下で分析した。IgGの切断産物は、0.1~1mMのAEBSF、0.1~5mMのEDTA、50μMのE-64、いかなる阻害剤もなし、および1/200希釈完全阻害剤カクテル(星印でマークした)とインキュベートしたときに観察され、それに対して、5mMのAEBSF、250μMのE-64、濃縮された上清なし(-C)、0.1~5mMのZ-LVG-CHN2、0.1~5mMのヨードアセトアミドおよび1/50希釈完全阻害剤カクテルとインキュベートしたときに、分解産物は観察されなかった。
図9】rIgdEΔC精製の代表的なクーマシーブルー染色SDS-PAGEゲルによるモニタリング。 発現プラスミドを保有する大腸菌(E. coli)をIPTGで誘発して、その溶解物から、rIgdEΔCを精製した。His-ZZタグ付きrIgdEΔCを含有するNi2+-親和性クロマトグラフィー精製の溶出物を、Tev-プロテアーゼとインキュベートして、His-ZZ-タグを除去した後、第2回のNi2+-親和性クロマトグラフィー精製を行なった。タグのないrIgdEΔCを含有するこの精製ステップの流通分画2および3を溜めて、緩衝液をPBSと交換してさらなる実験に使用した。rIgdEΔCの部分分解に基づいて、50kDaの周囲の2つの主要なバンドをこれらの分画で観察することができる。
図10-1】rIgdEagalactiaeは、ヒトIgG1を特異的に切断する。 (A)rIgdEagalactiaeを、6種の異なる種のポリクローナルIgGと37℃で18時間インキュベートして、還元条件下でSDS-PAGEにより分析した。分解産物を星印()により示す。異なるゲルの画像を、図を作成するために使用した。(B)rIgdEagalactiaeを、ヒトまたはウシ血清と37℃で18時間インキュベートして、還元条件下でSDS-PAGEにより分析した。分解産物を星印()により示す。(C)ヒトおよびブタ血清と37℃で18時間インキュベートしたrIgdEagalactiaeの粗抽出物を用いたウェスタンブロット。ヒトおよびブタのポリクローナルIgGに対するそれぞれの抗体で膜を処理した。分解産物を星印()により示す。(D)rIgdEagalactiaeを、ヒトIgGのサブクラスならびにヒトIgAおよびIgMと37℃で18時間インキュベートして、還元条件下でSDS-PAGEにより分析した。分解産物を星印()により示す。異なるゲルの画像を、図を作成するために使用した。
図10-2】rIgdEagalactiaeは、ヒトIgG1を特異的に切断する(図10-1の続き)。
図10-3】rIgdEagalactiaeは、ヒトIgG1を特異的に切断する(図10-2の続き)。
図11】rIgdEagalactiaeは、ヒト血清IgG1を、単一の切断されたIgG1にまで完全に分解する。 ヒト血清およびモノクローナルヒトIgG1を、rIgdEagalactiaeの存在(+)または不在(-)下で37℃で18時間インキュベートして、ヒトIgG1特異的抗体を用いて非還元条件下でウェスタンブロットにより分析した。
図12-1】rIgdEequiは、ウマIgG7のみを切断する。 0.6μMの組換えウマIgGサブタイプまたは血清IgGを、37℃で16時間、rIgdEeq uiを発現する大腸菌(E. coli)細胞の可溶分画の存在(+)または不在(-)下でインキュベートした。反応を還元条件下でSDS-PAGEにより分析した。IgG切断()は、IgG7および血清IgGとのインキュベーションで起こった。SDS-PAGEを、クーマシーフルオルオレンジタンパク質ゲル染色(A)で染色するかまたはウサギ抗ウマIgGH&L(HRP)ab6921を用いてウェスタンブロット(B)分析にかけるかのいずれかを行なった。
図12-2】rIgdEequiは、ウマIgG7のみを切断する(図12-1の続き)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
配列の簡単な説明
配列番号1は、S.スイス(S. suis)の株10から単離されたIgdEのアミノ酸配
列である。S.スイス(S. suis)からのIgdEの追加のアミノ酸配列は、例えばGe
nBankで、アクセッション番号WP_012027720.1、WP_044687
717.1、WP_045002893.1、WP_044981166.1、WP_0
44770432.1、WP_043041527.1、WP_014917307.1
、WP_044981141.1、WP_044766031.1、WP_044780
628.1、WP_044980481.1、WP_044768304.1、WP_0
43033176.1、WP_044772573.1、ABQ42883.1、ABQ
42882.1、ABQ42884.1、ABQ42885.1、WP_0244026
04.1、WP_044671803.1、WP_014639000.1、WP_01
4636499.1、WP_044475270.1、WP_044683049.1、
WP_044682603.1、WP_044982674.1、WP_0244062
12.1、WP_024402376.1、WP_024382860.1、WP_04
4684005.1、WP_044688055.1、WP_044754153.1、
WP_024412941.1、WP_029172805.1、AER15932.1
、WP_024414493.1、WP_044762560.1、WP_024417
771.1、WP_044675281.1、WP_044666819.1、WP_0
43032980.1、WP_044671755.1、WP_024416363.1
、ABL84354.1、ABL84413.1、WP_044758899.1、WP
_024393919.1、WP_014736321.1、WP_024383620
.1、WP_044475488.1、WP_024386700.1、WP_0243
81951.1、WP_024390579.1、WP_023371419.1、WP
_044772576.1、WP_044766774.1、WP_044672596
.1、WP_043028752.1、WP_044771508.1、WP_0243
83851.1、WP_024388957.1、WP_024394959.1、WP
_029174632.1、WP_044752120.1、WP_044678077
.1、WP_002938262.1、WP_044769991.1、WP_0447
70681.1、WP_044749736.1、およびWP_044771392.1
として見出すことができる。
【0039】
配列番号2は、S.スイス(S. suis)の株10から単離されたIgdEをコードする
核酸配列である。
【0040】
配列番号3は、S.アガラクチアエ(S. agalactiae)の株CCUG4208から単離
されたIgdEのアミノ酸配列である。S.アガラクチアエ(S. agalactiae)からのI
gdEの追加のアミノ酸配列は、例えばGenBankで、アクセッション番号EPU2
1342.1、EFV98161.1、CAD47554.1、EPU23939.1、
EPW71972.1、EPT99261.1、EPV90329.1、EGS2682
5.1、EPV84888.1、CFQ52811.1、EPT84780.1、EPT
99074.1、CCW42936.1、CCW40848.1、EAO70450.1
、EPU74838.1、EPT51236.1、EPU77761.1、EPT362
80.1、WP_011058381.1、EPT59860.1、EPT39170.
1、EPT38734.1、CFQ25568.1、EPU40877.1、WP_02
5193619.1、WP_000440329.1、WP_000440333.1、
WP_000440330.1、WP_000440331.1、WP_0471991
54.1、WP_001901206.1、WP_025193273.1、WP_02
5194923.1、WP_000440334.1、WP_025195559.1、
WP_047200043.1、WP_041165773.1、EPU33307.1
、CFW66620.1、WP_041981191.1、WP_000440332.
1、WP_047200261.1、WP_029692083.1、WP_01777
0870.1、WP_025197885.1、EAO75153.1、WP_0018
84472.1、EAO62452.1、WP_025195776.1、WP_047
200280.1、CFW66618.1、およびEAO75155.1として見出すこ
とができる。
【0041】
配列番号4は、S.アガラクチアエ(S. agalactiae)の株CCUG4208から単離
されたIgdEをコードする核酸配列である。
【0042】
配列番号5は、S.ポルシナス(S. porcinus)の株DSM20725から単離された
IgdEのアミノ酸配列である。S.ポルシナス(S. porcinus)からのIgdEのアミ
ノ酸配列は、例えばGenBankで、アクセッション番号WP_003085269.
1として見出すことができる。
【0043】
配列番号6は、S.ポルシナス(S. porcinus)の株DSM20725から単離された
IgdEをコードする核酸配列である。
【0044】
配列番号7は、S.エクイ(S. equi)の株sspズーエピデルミクス(zooepidemicus
)#1から単離されたIgdEのアミノ酸配列である。S.エクイ(S. equi)からのI
gdEの追加のアミノ酸配列は、例えば、GenBankで、アクセッション番号KDE
01980.1、KIS07668.1、KIS08707.1、KIS19971.1
、WP_043038795.1、WP_043036602.1、WP_037584
076.1、KIS20896.1、AIA68804.1、WP_043029522
.1、WP_012678259.1、WP_042670323.1、WP_0430
40324.1、およびWP_014622546.1として見出すことができる。
【0045】
配列番号8は、S.エクイ(S. equi)株sspズーエピデルミクス(zooepidemicus)
#1から単離されたIgdEをコードする核酸配列である。
【0046】
配列番号9は、S.シュードポルシナス(S. pseudoporcinus)の株ATCC(登録商
標)BAA-1381から単離されたIgdEのアミノ酸配列である。S.シュードポル
シナス(S. pseudoporcinus)からのIgdEのアミノ酸配列は、例えばGenBank
で、アクセッション番号WP_007895676.1として見出すことができる。
【0047】
配列番号10は、S.シュードポルシナス(S. pseudoporcinus)の株ATCCBAA
-1381から単離されたIgdEをコードする核酸配列である。
【0048】
配列番号11は、S.スイス(S. suis)から単離されたIgdEのC末端短縮型変異
体のアミノ酸配列である。
【0049】
IgdEポリペプチド
本発明によるIgdEポリペプチドは、好ましくは、IgdEsuis、IgdEag
alactiae、IgdEporcinus、IgdEequi、またはIgdEps
eudoporcinusポリペプチド、またはシステインプロテアーゼ活性を保持する
それらの任意の変異体もしくはフラグメントであり、かつ/または対象において連鎖球菌
に対する免疫応答を向上させることができる。変異体は、別の細菌からのIgdEポリペ
プチドであってもよい。細菌は、好ましくは連鎖球菌である。
【0050】
IgdEポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11のアミノ酸配列;または
配列番号1、3、5、7、9、もしくは11の任意のアミノ酸配列との少なくとも70%
の同一性を有し、IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有するそれらのいずれ
か1つの変異体;または配列番号1、3、5、7、9、11のフラグメント;またはIg
Gを分解するシステインプロテアーゼ活性を有するそれらのいずれか1つの変異体を含む
ことができる。
【0051】
IgdEポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11のアミノ酸配列;または
配列番号1、3、5、7、9、または11の任意のアミノ酸配列との少なくとも70%の
同一性を有し、対象において連鎖球菌に対する免疫応答を向上させることができるそれら
のいずれか1つの変異体;または配列番号1、3、5、7、9、11のフラグメント;ま
たは対象において連鎖球菌に対する免疫応答を向上させることができるそれらのいずれか
1つの変異体を含むことができる。
【0052】
連鎖球菌は、S.スイス(S. suis)、S.アガラクチアエ(S. agalactiae)、S.ポ
ルシナス(S. porcinus)、S.エクイ(S. equi)、またはS.シュードポルシナス(S.
pseudoporcinus)であり得る。
【0053】
好ましくは、該ポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、または11の配列のい
ずれかを含むかまたはそれらからなる。
【0054】
該ポリペプチドは、それに加えて、シグナル配列またはN末端メチオニンを含むことが
できる。
【0055】
変異体ポリペプチドは、そのアミノ酸配列が、配列番号1、3、5、7、9、または1
1中のものからそれぞれ変化したものであるが、IgdEと同じ必須の特性または基本的
機能性を保持する。それゆえ、変異体ポリペプチドは、IgGを分解するシステインプロ
テアーゼ活性を提示することができ、かつ/または対象において連鎖球菌に対する免疫応
答を向上させることができる。好ましくは、免疫応答は保護免疫応答である。好ましくは
、免疫応答は、免疫化された対象において、感染性連鎖球菌のIgdEの、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を中和することができる抗体を生じさせる。注目に値す
ることとして、IgGシステインプロテアーゼ活性を欠くIgdE変異体は、それでも、
免疫化された対象において、免疫応答を向上させることができ、感染性連鎖球菌のIgd
EのIgGシステインプロテアーゼ活性を中和することができる抗体を生じさせる。その
ようなIgdE変異体は、本発明によるIgdE変異体に含まれる。
【0056】
典型的には、約70%を超える同一性、好ましくは少なくとも80%、少なくとも90
%および特に好ましくは少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%の
同一性を有し、配列番号1、3、5、7、9、または11のアミノ酸配列を有するポリペ
プチドは、タンパク質の変異体と考えられる。そのような変異体は、該ペプチドが基本的
なIgdEの機能性を維持する限り、対立遺伝子の変異体およびタンパク質配列内におけ
る単一のアミノ酸またはアミノ酸群の欠失、改変または付加を含んでいてもよい。配列番
号1、3、5、7、9、または11の変異体の同一性は、配列番号1、3、5、7、9、
または11で示される配列、またはより好ましくは、配列番号1、3、5、7、9、また
は11の全長にわたる少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも
150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300ま
たはそれを超える隣接アミノ酸の領域にわたって測定することができる。上で列挙した下
限の任意のものが、上で列挙した上限の任意のものと組み合わされて本発明のポリペプチ
ドの長さについての範囲を提供することができることは認識されるであろう。例えば、ポ
リペプチドは、50から250アミノ酸の長さ、または100から300アミノ酸の長さ
であることもできる。ポリペプチドは、100から586アミノ酸の長さ、150から5
00アミノ酸の長さまたは100から400アミノ酸の長さであることもできる。
【0057】
アミノ酸の同一性は、任意の適当なアルゴリズムを使用して計算することもできる。例
えばUWGCGパッケージは、相同性を計算するために使用することができるBESTF
ITプログラムを提供する(例えば、その初期設定で使用される)(Devereux et al. (1
984) Nucleic Acids Research 12, 387-395)。PILEUPおよびBLASTアルゴリ
ズムは、相同性を計算するため、または配列を並べるために使用することができる(例え
ば、等価のまたは対応する配列を同定するなど(典型的には、それらの初期設定で)、例
えばAltschul S. F. (1993) J MoI Evol 36: 290-300; Altschul, S, F et al. (1990) J
MoI Biol 215: 403-10に記載されているように)。
【0058】
BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、the National Center for Biotechn
ology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公に入手することができ
る。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードで整列されたときに、
若干正の値の閾値スコアTと一致するかまたはそれを満たすかのいずれかの問題の配列中
の長さWの短いワードを同定することにより、高スコアの配列のペア(HSP)を最初に
同定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値と称される(Altschul et al.、前出)
。これらの最初の隣接ワードのヒットはそれらを含有するHSPを見出すための調査を開
始するための手がかりとして役立つ。ワードのヒットは、累積アラインメントスコアが増
加され得る限り、各配列に沿って両方向に拡大される。各方向におけるワードヒットの拡
大は、累積アラインメントスコアがその最大の獲得値から量Xだけ低下したとき;1つも
しくは複数の負のスコアの残留アラインメントの蓄積に基づいて、累積スコアが、ゼロも
しくはそれ未満になるとき;またはいずれかの配列の端部に達したときに停止する。BL
ASTアルゴリズムのパラメーターW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度
を決定する。BLASTプログラムは、初期値として、ワードの長さ(W)11、BLO
SUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Aca
d. ScL USA 89: 10915-10919を参照されたい)、アラインメント(B)50、期待値(E
)10、M=5、N=4、および両方の鎖の比較を使用する。
【0059】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析を実行する;例えば、Ka
rlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787を参照されたい
。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの測定は最小合計確率(P(N
))であり、それは、2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然起こる
確率を示す。例えば、第1の配列の第2の配列に対する比率の最小合計確率が、約1未満
、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0
.001未満であるならば、ある配列は、別の配列と同様であると考えられる。
【0060】
変異体の配列は、典型的には、少なくとも1、2、5、10、20、30、50または
それを超えて、アミノ酸の位置が異なる(それは、おそらく、アミノ酸の置換、欠失また
は挿入による)。例えば、1から50、2から30、3から20または5から10個のア
ミノ酸の置換、欠失または挿入がなされ得る。置換は、好ましくは、例えば、以下の表1
による保存的置換である。アミノ酸は、第2の欄中の同じブロック中で、好ましくは、第
3の欄の同じ行中で、互いに置換されてもよい。
【0061】
【表1】
特に断りのない限り、改変は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的置換は、
アミノ酸を、同様の化学構造、同様の化学的性質または同様な側鎖体積の他のアミノ酸で
置き換える。導入されたアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と同様の極性、親水性
、疎水性、塩基性、酸性、中性または電荷を有することができる。あるいは、保存的置換
は、予め存在する芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに芳香族または脂肪族である別の
アミノ酸を導入することもできる。保存的アミノ酸変化は当技術分野において周知であり
、下の表A1で定義された20種の主要なアミノ酸の性質に従って選択することができる
。アミノ酸が同様な極性を有する場合、これは、表A2におけるアミノ酸側鎖についての
ヒドロパシースケールを参照して決定することができる。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
好ましくは、ポリペプチドは、システイン残基およびヒスチジン残基を、典型的にはシ
ステインプロテアーゼで見出される間隔で含む。例えば、配列番号1では、これらの残基
は、位置302および位置333に見出される。触媒的三連構造を完成するアスパラギン
酸残基は、位置348に見出される。
【0064】
本発明で使用されるIgdEポリペプチドのフラグメントは、それがIgGを分解する
IgdEのシステインプロテアーゼ活性を保持し、かつ/または対象において連鎖球菌に
対する免疫応答を向上させることができる限り、典型的には少なくとも10、例えば、少
なくとも15、20、25、30、40、50またはそれを超えるアミノ酸の長さ、10
0、150、200、250または300アミノ酸までの長さである
【0065】
本発明で使用されるポリペプチドは、化学的に改変されていても、例えば、翻訳後に改
変されていてもよい。例えば、それらは、グリコシル化されていても、リン酸化されてい
ても、または改変されたアミノ酸残基を含んでいてもよい。それらは、ヒスチジン残基の
付加により改変されて、それらの精製を容易にすることも、またはシグナル配列の添加に
より細胞膜中への挿入を促進することもできる。そのような改変されたポリペプチドは、
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」の範囲内に入る。
【0066】
典型的には、本発明により使用するためのポリペプチドは、免疫グロブリンシステイン
プロテアーゼ活性、特にIgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を提示する。好ま
しくは、該ポリペプチドは、IgGを、ヒンジ領域で、より特定して重鎖のヒンジ領域で
切断する。好ましくは、切断は、IgGのFcおよびFabフラグメントの産生をもたら
す。好ましくは該活性は、IgGに特異的である。IgGを分解するシステインプロテア
ーゼ活性は、適当なアッセイ手段により決定することができる。例えば、試験ポリペプチ
ドを、37℃などの適当な温度でIgGとインキュベートしてもよい。そのとき、出発原
料および反応産物を、所望のIgG切断産物が存在するかどうかを決定するために、SD
S PAGEにより分析することもできる。典型的には、この切断産物は32kDaのフ
ラグメントである。典型的には、この最初の切断の後、IgGのさらなる分解はない。切
断がIgGのヒンジ領域で起こったことを検証するために、切断産物をN末端の配列決定
にかけることができる。
【0067】
ポリペプチドのシステインプロテアーゼ活性は、阻害の研究により、さらに特徴付ける
ことができる。好ましくは、活性は、プロテアーゼ阻害剤であるペプチド誘導体Z-LV
G-CHN2により、および/またはヨード酢酸により阻害される。
【0068】
ポリペプチドのIgGを分解するシステインプロテアーゼ活性は、該ポリペプチドは、
他のクラスのIg、すなわちIgM、およびIgAを、IgGの切断を可能にする条件下
で、これらの免疫グロブリンとインキュベートしたときに、分解することができないこと
において、一般的にIgG特異的である。S.スイス(S. suis)、S.ポルシナス(S.
porcinus)、およびS.シュードポルシナス(S. pseudoporcinus)からのIgdEは、
ブタIgGに特異的であることが見出された。S.アガラクチアエ(S. agalactiae)か
らのIgdEは、ヒトIgGに、特にヒトIgG1に特異的であることが見出された。S
.エクイ(S. equi)からのIgdEは、ウマIgGに、特にウマIgG7に特異的であ
ることが見出された。
【0069】
本発明で使用するためのポリペプチドは、実質的に単離された形態であってもよい。該
ポリペプチドは、ポリペプチドの意図される目的に干渉しないと思われる担体または希釈
剤と混合されて、それでもなお実質的に単離されていると考えられ得ることが理解される
であろう。本発明で使用するためのポリペプチドは、実質的に精製された形態であっても
よく、その場合、実質的に精製された形態は、調製物中のポリペプチドの重量の50%超
、例えば80%、90%、95%または99%超が、本発明のポリペプチドである調製物
中のポリペプチドを一般的に含むであろう。
【0070】
本発明で使用するためのポリペプチドは、IgdEポリペプチドを発現する任意の適当
な生物体から単離することができる。典型的には、IgdEポリペプチドは、適当なIg
dEを発現する連鎖球菌株から単離される。適当な生物体および株は、多くの技法により
同定され得る。例えば、連鎖球菌の株は、igdE遺伝子の存在について、最初に試験す
ることができる。ポリヌクレオチドのプライマーまたはプローブは、例えば、配列番号2
、4、6、8、または10に基づいて設計することができる。適当なプライマーの例は、
配列番号12~22で設計される。次に、igdE遺伝子の存在を、プライマーを使用し
てPCRにより、またはプローブの株のゲノムのDNAとのハイブリダイゼーションによ
り検証することができる。
【0071】
ポリヌクレオチド
本発明によるポリヌクレオチドは:(a)配列番号4、5、6、8、もしくは10のコ
ード配列;(b)(a)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列
;(c)(a)もしくは(b)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有し、
IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、かつ/
もしくは対象において連鎖球菌に対する免疫応答を向上させることができる配列;または
(d)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有し、かつ/もしくは対象におい
て連鎖球菌に対する免疫応答を向上させることができるポリペプチドをコードする、(a
)、(b)もしくは(c)で定義された配列のいずれか1つのフラグメントを含むかまた
はそれらからなることができる。
【0072】
典型的には、ポリヌクレオチドはDNAである。しかしながら、ポリヌクレオチドはR
NAポリヌクレオチドであることもある。ポリヌクレオチドは、単鎖であることも二本鎖
であることもあり、そのうちに、合成されたまたは改変されたヌクレオチドを含むことも
ある。本発明のポリヌクレオチドは、典型的には、配列番号2、4、6、8、または10
のコード配列またはコード配列の相補体と、バックグラウンドを超えるレベルで有意にハ
イブリダイズすることができる。バックグラウンドのハイブリダイゼーションが起こるこ
ともあり、それは、例えば、DNAライブラリーに存在する他のDNAのためである。本
発明のポリヌクレオチドと配列番号2、4、6、8、または10のコード配列またはコー
ド配列の相補体との間の相互作用により生ずるシグナルレベルは、他のポリヌクレオチド
と配列番号2、4、6、8、または10のコード配列の間の相互作用の、典型的には少な
くとも10倍、好ましくは少なくとも100倍強力である。相互作用の強度は、例えば、
プローブを例えば32Pで放射性標識することにより測定することもできる。選択的ハイ
ブリダイゼーションは、培地の使用条件を高いストリンジェンシーにして典型的には達成
することができる。しかしながら、そのようなハイブリダイゼーションは、当技術分野に
おいて知られた任意の適当な条件下で実施することができる(Sambrook et al., Molecul
ar Cloning: A Laboratory Manual, 1989を参照されたい)。例えば、高いストリンジェ
ンシーが必要とされるならば、適当な条件は、60℃から65℃までにおいて0.1から
0.2×SSCを含む。より低いストリンジェンシーが必要とされるならば、適当な条件
は、60℃で2×SSCを含む。
【0073】
配列番号2、4、6、8、または10のコード配列は、ヌクレオチド置換、例えば1、
2または3から10、25、50または100箇所の置換により改変することもできる。
あるいはまたはそれに加えて、配列番号2、4、6、8、10のポリヌクレオチドは、1
箇所もしくは複数の挿入および/もしくは欠失により、ならびに/またはいずれかもしく
は両方の端部における延長により改変することもできる。シグナル配列などの追加の配列
が含まれてもよい。改変されたポリヌクレオチドは、一般的に、IgdEに特異的なシス
テインプロテアーゼ活性を有し、かつ/または対象において連鎖球菌に対する免疫応答を
向上させることができるポリペプチドをコードする。改変される配列が、例えば上の表1
で示されるように翻訳されるときに、変性した置換が行われることもあり、かつ/または
保存的アミノ酸置換を生ずる置換が行われることもある。
【0074】
配列番号2、4、6、8、または10のDNAコード配列の相補体に選択的にハイブリ
ダイズすることができるヌクレオチド配列は、一般的に、配列番号2、4、6、8、また
は10のコード配列のそれぞれに、少なくとも20、好ましくは少なくとも30、例えば
少なくとも40、少なくとも60、より好ましくは少なくとも100個の隣接ヌクレオチ
ドの領域にわたって、または最も好ましくは配列番号2、4、6、8、または10の全長
にわたって、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95
%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するであろう。配列同一
性は、例えば上で記載された任意の適当な方法によって決定することができる。
【0075】
配列同一性の上記の程度と最小サイズとの任意の組合せが、本発明のポリヌクレオチド
を定義するために使用され得るが、より厳密な組合せ(すなわち、より長い長さにわたる
より高い配列同一性)が好ましい。したがって、例えば、20、好ましくは30ヌクレオ
チドにわたる少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドが本発明の一態様
を形成し、40ヌクレオチドにわたる少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレ
オチドも同様である。ポリヌクレオチドのフラグメントは、好ましくは、少なくとも10
、好ましくは少なくとも15または少なくとも20、例えば少なくとも25、少なくとも
30または少なくとも40ヌクレオチドの長さであろう。それらは、典型的には、40、
50、60、70、100または150までのヌクレオチド長さであろう。フラグメント
は、150ヌクレオチドより長い長さ、例えば200、300、400、500、600
、700、800、900もしくは1000ヌクレオチドまでの長さ、またはさらに配列
番号2、4、6、8、または10のコード配列のそれぞれ短い5、10もしくは15ヌク
レオチドなどの少数のヌクレオチドまでであり得る。
【0076】
本発明で使用するためのポリヌクレオチドは、組換えで、合成で、または当業者にとっ
て利用可能な任意の手段によって産生することができる。それらは、標準的技法によりク
ローニングすることもできる。ポリヌクレオチドは、典型的には単離および/または精製
された形態で提供される。
【0077】
一般的に、短いポリヌクレオチドは、所望の核酸配列の、一度に1つのヌクレオチドの
段階的製造を含む合成手段により産生されるであろう。自動化された技法を使用してこの
ことを達成するための技法は、当技術分野で容易に利用することができる。
【0078】
より長いポリヌクレオチドは、一般的に、組換え手段を使用して、例えばPCR(ポリ
メラーゼ連鎖反応)クローニング技法を使用して産生されるであろう。このことは、クロ
ーニングすることが望まれるigdE遺伝子の領域に対する一対のプライマー(例えば、
約15~30ヌクレオチドの)を作製して、該プライマーを細菌細胞から得られたDNA
と接触させて、ポリメラーゼ連鎖反応を、所望の領域の増幅を生じさせる条件下で実施し
、増幅されたフラグメントを単離して(例えば、反応混合物をアガロースゲルで精製する
ことにより)増幅されたDNAを回収することを含むであろう。プライマーは、適当な制
限酵素認識部位を含有するように設計することができ、その結果、増幅されたDNAは、
適当なクローニングベクター中にクローニングされ得る。適当なプライマーは、例えば、
配列番号12~22におけるものである。
【0079】
そのような技法は、本明細書に記載されたigdE遺伝子配列の全てまたは一部を得る
ために使用することができる。一般的に本明細書で言及された技法は当技術分野において
周知であるが、特にSambrook et al. (1989)を引用することができる。本明細書に記載さ
れたIgdEポリヌクレオチドは、インビトロ、インビボまたはエックスビボで行われ得
る、本発明で使用するためのポリペプチドの産生において利用価値を有する。ポリヌクレ
オチドは、それら自体の価値で治療薬として使用されてもよく、または組換えタンパク質
合成に関与することもある。
【0080】
本発明で使用するためのポリヌクレオチドは、典型的には、組換え複製可能なベクター
中に組み込まれる。該ベクターは、該核酸を適合性の宿主細胞中で複製するために使用す
ることができる。それゆえ、本発明で使用するためのポリヌクレオチドは、IgdEポリ
ヌクレオチドを、複製可能はベクター中に導入して、該ベクターを適合性宿主細胞に導入
し、該宿主細胞を、ベクターの複製を生じさせる条件下で成長させることにより作製する
ことができる。
【0081】
好ましくは、ベクターは、IgdEポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベク
ターである。そのような発現ベクターは、分子生物学の分野で日常的に構築されて、例え
ば、プラスミドDNAおよび適当な開始剤、プロモーター、エンハンサーおよび他のエレ
メント、例えば、タンパク質発現を可能にするために必要であり得て正しい配向で位置す
るポリアデニル化シグナルなどの使用を含むこともできる。他の適当なベクターは、当業
者には明らかであろう。これに関連するさらなる例として、本発明者らはSambrook et al
. (1989)を引用する。
【0082】
好ましくは、ベクター中の本発明で使用するためのポリヌクレオチドは、宿主細胞によ
りコード配列の発現を提供することができる制御配列に作動的に連結しており、すなわち
該ベクターは、発現ベクターである。用語「作動的に連結している」とは、記載された成
分がそれらの意図される様式で機能することを可能にする関係にある並列を指す。プロモ
ーターなどの調節配列は、コード配列に「作動的に連結して」、コード配列の発現が、調
節配列と適合性の条件下で達成されるように位置する。
【0083】
ベクターは、例えば、複製の起源、任意選択で前記ポリヌクレオチドの発現のためのプ
ロモーターおよび任意選択でプロモーターの調節因子を提供されたプラスミド、ウイルス
またはファージベクターであり得る。ベクターは、典型的にはインビボで使用されるよう
に適合されている。
【0084】
プロモーターおよび他の発現調節シグナルは、発現が設計されている宿主細胞と適合性
となるように選択することができる。哺乳動物のプロモーター、例えば、βアクチンプロ
モーターなどが使用され得る。組織特異的プロモーターは、特に好ましい。ウイルスのプ
ロモーター、例えばマウスのモロニー白血病ウイルスの長い末端反復(MMLV LTR)、ラウ
ス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、SV40プロモーター、ヒトサイトメガロ
ウイルス(CMV)IEプロモーター、アデノウイルス、HSVプロモーター(HSV I
Eプロモーターなど)、またはHPVプロモーター、特にHPV上流調節領域(URR)
も使用することができる。ウイルスのプロモーターは、当技術分野で容易に入手すること
ができる。ベクターは、真核生物ゲノムの配列、好ましくは哺乳動物ゲノムの配列に相同
性の配列を含むポリヌクレオチドを生じさせるポリヌクレオチドの側にある配列をさらに
含むこともできる。このことは、相同性組換えにより、本発明のポリヌクレオチドの真核
生物細胞のゲノム中への導入を可能にするであろう。特に、ウイルスの配列が側面に位置
する発現カセットを含むプラスミドベクターは、本発明のポリヌクレオチドを、哺乳動物
細胞に送達するために適当なウイルスのベクターを調製するために使用することができる
。適当なウイルスのベクターの他の例には、単純ヘルペスウイルスベクターおよび、レン
チウイルスを含むレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスおよびHPVウ
イルスが含まれる。これらのウイルスを使用する遺伝子移転技法は、当業者に知られてい
る。レトロウイルスベクターは、例えば、ポリヌクレオチドを生じさせるポリヌクレオチ
ドを宿主ゲノム中に安定に統合するために使用することができる。複製に欠陥のあるアデ
ノウイルスベクターは、対照的に、エピソームにとどまり、それゆえ一過性発現を可能に
する。
【0085】
疾患および状態
IgdEポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、病原性IgG抗体により媒介される
疾患または状態を治療または予防するために使用することもできる。病原性のIgG抗体
が、多くの異なる疾患および状態の病原性に関与していることは、当技術分野において周
知である。その結果として、そのような疾患における病原性のIgG抗体の効果は、Ig
dEポリペプチドまたはポリヌクレオチドを使用して阻害することができる。
【0086】
疾患または状態は、自己免疫疾患であり得る。そのような疾患には、アジソン病、円形
脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、再生不良性貧血、自己免疫性胃炎、自己免疫
性聴覚喪失、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性副甲状腺機能低下症、
自己免疫性脳下垂体炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ球増殖症候群、自己免疫
性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性睾丸炎、自己免疫性多腺性内分泌障害、ベーチ
ェット病、水胞性類天疱瘡、心筋症、慢性炎症性脱髄多発神経障害、チャーグ-ストラウ
ス症候群、腹腔の疾患、クローン病、CREST症候群、Degos疾患、後天性表皮水
疱症、原発性混合クリオグロブリン血症、巨細胞動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー
症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、突発性血小板減少性紫斑
病、炎症性腸疾患、川崎病、メニエル症候群、混合結合組織病、モーレン潰瘍、多発性硬
化症、重症筋無力症、葉状天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、1型多
腺性自己免疫性症候群(PAS-1)、2型多腺性自己免疫性症候群(PAS-2)、3
型多腺性自己免疫性症候群(PAS-3)、多発性筋炎/皮膚筋炎、原発胆汁性肝硬変、
乾癬、乾癬性関節炎、レイノー症候群、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシ
ス、強皮症、シェーグレン症候群、亜急性甲状腺炎、交感神経眼炎、全身性エリテマトー
デス、高安動脈炎、真性1型糖尿病、白斑、ホヒト・小柳・原田病またはウェゲネル肉芽
腫症が含まれる。好ましくは自己免疫性疾患は関節リウマチ(RA)である。
【0087】
疾患または状態は喘息であり得る。喘息は急性または慢性喘息であり得る。
【0088】
IgGは、補体系の古典的経路を活性化する。それゆえ、IgdEポリペプチドおよび
ポリヌクレオチドは、補体活性化が患者にとって有害な疾患および状態を治療するために
使用することができる。例えば、IgdEポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、移植
に誘導された障害、例えば移植拒絶(同種移植および異種移植拒絶など)および移植片対
宿主病を治療するために使用することができる。移植誘導障害は患者における組織または
器官の移植に基づいて起こり得る。
【0089】
IgdEポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、手術後の治療に、例えば、心臓バイ
パス手術を受けた患者の治療にも使用される。
【0090】
さらに、IgdEポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、後天性血友病の治療のため
に、すなわち、凝血因子に対する自己抗体を発生させた血友病患者でIgGを除去するた
めに使用することができる。
【0091】
本明細書において使用する用語「対象」は、任意の哺乳動物の対象、例えば、ヒト、ブ
タ、ウマ、および任意のウシなどを含む。
【0092】
インビトロの方法
本発明は、IgGを:
(a)配列番号1、3、5、7、9もしくは11のアミノ酸配列;
(b)配列番号1、3、5、7、9もしくは11のアミノ酸配列との少なくとも70%
の同一性を有し、IgGシステインプロテアーゼ活性を有するそれらの変異体;または
(c)IgGシステインプロテアーゼ活性を有する(a)もしくは(b)のいずれかの
それらのフラグメント
を含むポリペプチドと接触させることを含む、IgGの切断のためのインビトロの方法を
包含する。
【0093】
好ましい実施形態において、アミノ酸配列は配列番号3である。IgGの切断のための
インビトロの方法は、IgGを:
(a)配列番号3のアミノ酸配列;
(b)配列番号3のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGシステ
インプロテアーゼ活性を有する配列番号3の変異体;
(c)IgGシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3のフラグメントまたは配
列番号3の変異体のフラグメント
を含むポリペプチドと接触させることを含む。
【0094】
好ましい実施形態において、ポリペプチドは、ヒトIgGに、特にヒトIgG1に特異
的である。さらに、ポリペプチドは、軽鎖がカッパ型であるかまたはラムダ型であるかに
拘わらず、図4に示されるようにIgG1を切断する。
【0095】
該ポリペプチドはIgGシステインプロテアーゼであり、それは、典型的には、配列番
号1の位置265、296および311に対応する位置に、システイン残基、ヒスチジン
残基およびアスパラギン酸残基を含む触媒部位を備えることができる。例えば、配列番号
3には、システイン残基、ヒスチジン残基およびアスパラギン酸残基が、位置262、2
93および308に見出される。ポリペプチドの変異体およびフラグメントは、典型的に
はこれらの残基を保持している。
【0096】
本発明の方法は、該ポリペプチドを、IgGを含有する試料と、特異的システインプロ
テアーゼ活性が起こることを可能にする条件下でインキュベートすることを含む。該方法
は、切断産物の同定および/または単離をさらに含む。分析は、当技術分野において知ら
れた任意の適当な方法によることができる。幾つかの場合に、分析は、ゲル電気泳動(例
えばSDS-PAGE)または質量分析法による。
【0097】
本発明の別の実施形態において、インビトロの方法は、IgGのFcまたはFabフラ
グメントを生じさせるために使用される。該方法は、IgGを本発明のポリペプチドと接
触させることを含む。
【0098】
本発明のさらなる実施形態において、本発明の方法は、IgGを検出するために使用さ
れる。これは、(i)試料を、ポリペプチドと、ポリペプチドのIgG特異的システイン
プロテアーゼ活性を可能にする条件下で接触させること;および(ii)IgG特異的切
断フラグメントの存在についてモニターすることを含むこともでき;ここで、特異的切断
フラグメントの存在は試料中のIgGを示す。
【実施例0099】
[実施例1]
S.スイス(S. suis)からのIgdEの同定
細菌株および成長条件
S.スイス(S. suis)の株10は、突然変異生成およびブタの実験的感染のために幾
つかの研究で使用されたことのある毒性の血清型2の株である(Smith et al. 1999. Inf
ect. Immun. 67, 1750-1756)。株10M7はHilde Smith(AWG、Lel
ystad、オランダ)の好意により提供された(Smith et al. 1996. Infect. Immun.
64, 4409-4412)。連鎖球菌は、コロンビア寒天プレート上で6%のヒツジ血液を添加し
て、またはBactoTodd-Hewittブロス(THB)中、嫌気性条件下にて3
7℃で成長させた。大腸菌(Eschrichia coli)株は、Luriaブロス(LB)中で培
養した。適当な場合に、抗生物質を、カナマイシンについては50μg/mlおよびゲン
タマイシンについては20μg/ml添加した。
【0100】
動物由来の材料
実験的に感染させたコブタからの試料を先行する研究中に取り出した。この動物実験の
ためのプロトコルは、ドイツのニーダーザクセン州動物実験委員会消費者保護および食物
安全局(Committee on Animal Experiments of t
he Lower Saxonian State Office for Consu
mer Protection and Food Safety)により承認された(
承認番号33.9-42502-04-07/1243)。殺菌アッセイのために従来の
コブタからの血液のコレクションを、ドイツのザクセン州地方事務所(regional
office in Saxonia)でN19/14として登録した。動物試験は、
実験および他の科学的目的のために使用される脊椎動物保護のためのヨーロッパ協定(t
he European Convention for the Protectio
n of Vertebrate Animals Used for Experim
ental and Other Scientific Purposes)(ヨーロ
ッパ条約シリーズno.123(European Treaty Series, n
o.123):http://www.conventions.coe.int/Tr
eaty/en/Treaties/Html/123.htm)およびドイツの動物保
護法(German Animal Protection Law)で概説された原則
および勧告に厳密に従って実施した。
【0101】
IgGを分解する活性の同定
S.スイス(S. suis)の株10M7の培養物を、OD600約0.6で収穫して、培
養上清を0.22μMのExpress PLUS膜フィルター(ミリポア)を通して滅
菌濾過した後、培養上清を硫酸アンモニウムを用いて30%飽和まで分画した。生じた沈
殿を廃棄して、硫酸アンモニウムを残存上清に添加し、最終の濃度を50%飽和にした。
第2の沈殿を、20mMのBis-Tris(pH6.8)を添加して出発時の体積の1
/100に再懸濁して、同じ緩衝液に対する緩衝液交換を、HiPrep26/10脱塩
カラム(GE Healthcare)により実施した。この材料を、FPLCによりH
iTrap Q HPカラム(GE Healthcare)でさらに分画した。タンパ
ク質を直線的NaClグラジエントにより溶出させて、約0.2M NaClで溶出した
分画が、IgGを分解する活性を含有することが見出された。活性分画をサイズ排除クロ
マトグラフィー(HiPrep 16/60 Sephacryl S-100HR、G
E Healthcare)にかけて、そこでIgGを分解する活性は、約37mlの溶
出体積で溶出した。活性分画をSDS-PAGEにより分析して、タンパク質バンドを質
量分析法の分析にかけた。
【0102】
質量分析法
MALDI-TOF質量分析法は、Umeaタンパク質分析施設(Umea Univ
ersity)によって実施された。MS分析のためのペプチドは、トリプシンを使用し
てゲル内消化により調製して(改変された配列決定規格、Promega)、Easy
nano LCシステム(Proxeon)に連結された、HCT ultra ETD
II イオン捕捉装置(Bruker)ESIを使用するLC-MS/MSにより分析
した。LC-MS/MSのデータセットについての処理、デコンヴォルーションおよび化
合物検出は、DataAnalysisソフトウェア(4.0 SP4、Bruker)
を使用して実施した。処理されたデータセットのピークリストファイルを使用するデータ
ベース検索は、Mascot検索エンジン(Matrixscience)を使用して、
NCBInrデータベースの細菌配列で実施した。検索パラメーターは、MSおよびMS
/MS両方の様式について、ならびに酸化によるメチオニンの、プロピオンアミド誘導お
よびN末端アセチル化によるシステインの可変改変について、0.3Daの質量誤差を許
容した。
【0103】
IgGを分解する能力についてのS.スイス(S. suis)株のスクリーニング
15種の異なるS.スイス(S. suis)株(表2)の培養上清を、OD600約0.6
で単離して、飽和した硫酸アンモニウム溶液の添加により50%の最終の飽和に濃縮した
。Zeba Spin脱塩カラム7K MWCO(Thermo Scientific
)によるPBSに対する緩衝液交換に続いて、沈殿をPBS中で出発時の1/20の体積
に再懸濁した。S.スイス(S. suis)の培養上清の50%硫酸アンモニウム沈殿分画を
、IgG分解を分析するために使用した。
【0104】
【表4】
ΔigdE欠失株の発生
igdEのインフレーム欠失は、原理的にSeele et al., 2013(J. Bacteriol. 195, 9
30-940)におけるように、S.スイス(S. suis)の株10を用いて実行した。感熱性の
ベクターpSET5_ΔigdEを構築するために、618bpの5’-igdEアンプ
リコンを、プライマーpreProIgdEPstI(TCACTGCAGTTTTGG
GGAGTAGG、配列番号12)およびpostSSIgdEBamHI(ATGGA
TCCCAGTTCAGAACCTC、配列番号13)を用いて生じさせ、612bpの
3’-igdEアンプリコンをプライマーpreEndIgdEBamHI(CGGGA
TCCAGAGAAAAAAGAGATCC、配列番号14)およびpostEndIg
dEEcoRI(AGGAATTCACCGTTATTGTAGCG、配列番号15)を
用いて生じさせた。これらのアンプリコンを、プライマーの名で指示された制限酵素を用
いてpSET5(18)中にクローニングしてpSET5_ΔigdEを生じさせた。欠
失クローンを、選択的PCR分析ならびにプライマーIgdE-seq_frw(ATT
GTATTTGGTGGAGGAG、配列番号16)およびIgdE-seq_rev(
TTTAGCAGCTAAGTTGATACC、配列番号17)を使用して、ゲノムのア
ンプリコンの配列決定により確認した。
【0105】
配列の分析
配列の分析を、SIB Bioinformatics Resource Port
al Expasy(www.expasy.ch)を使用して実施した。SignalP 4.0を
走らせて、推定上のシグナルペプチドおよびそれぞれの切断部位を同定した(www.cbs.dt
u.dk/services/SignalP/)。潜在的な活性部位の残基を同定するために、S.スイス(S.
suis)IgdEのインシリコモデル化を、SWISS-モデル(http://swissmodel.exp
asy.org/)を使用して実施した。推定上の膜貫通領域を、コンセンサス予測ウェブサーバ
ーTOPCONS(http://topcons.cbr.su.se/)の最終アクセッション2015-11
-06を使用して同定した。
【0106】
DNA技法およびプライマー配列
プライマーをゲノムS.スイス(S. suis)P1/7中の遺伝子SSU_RS0815
0に基づいて設計した。全てのPCRを、Phusion Master Mix HF
(Thermo Scientific)を用いて実行した。全ての得られたプラスミド
を制限分析、PCRおよび配列決定により確認した。
【0107】
S.スイス(S. suis)igdEのクローニングおよびIgdE突然変異体の発生
シグナルペプチドのコード配列(アミノ酸38~1121をコードする)を欠くS.ス
イス(S. suis)igdE遺伝子を、S.スイス(S. suis)の株10の染色体DNAから
、プライマーIgdE-frw_NcoI(GTTTCCATGGATGAAAACTC
ACATTTACAATCG、配列番号18)およびIgdE-rev_NotI(AC
GTGCGGCCGCATAAGCTTCGTAC、配列番号19)を使用するテンプレ
ートとして増幅して、NcoIおよびNotI(Thermo Scientific)
で消化した後、pET_ZZ_1a中にクローニングした。挿入された全体を配列決定し
て、S.スイス(S. suis)igdEのクローニングおよび配列を検証した。得られたS
.スイス(S. suis)の株10igdEの配列は、S.スイス(S. suis)の05ZYH3
3の配列のうちの1つと同じであり、32個のアミノ酸の挿入を含有しており、S.スイ
ス(S. suis)P1/7のSSU_RS08150と比較した。
【0108】
推定上の活性部位の残基C302からSへ、H333からAへ、およびD348からA
へという特異的突然変異生成を、QuickChange Lightning Mul
ti Site-Directed Mutagenesisキット(Agilent
Technologies)およびプライマーIgdE-C302S(AACGTCAG
AAAGCGATGAGTGTAGGTTTCAGCACT、配列番号20)、IgdE
-H333A(CAGAAGGTGTCCCGGCTGCTACAGCGCGTG、配列
番号21)およびIgdE-D348A(TAAAAAGTGGCACACCATTGC
CGGTACAGGTTTTATTACAG、配列番号22)を用いて、メーカーの使用
説明に従って実施した。
【0109】
S.スイス(S. suis)IgdEのN末端470アミノ酸からなるIgdEΔCは、制
限エンドヌクレアーゼXhoI(Thermo Scientific)を用いて、pZ
Z1a中の全長igdEを消化することにより創出した。消化されたプラスミドを精製し
て再連結し、大腸菌(E. coli)中に形質転換した。
【0110】
組換えS.スイス(S. suis)IgdEの発現および精製
pET_ZZ_1a igdE、igdEC302S、igdEH302A、igdE
D302AまたはigdEΔCを保有する大腸菌(E. coli)ArcticExpres
s(DE3)_RIL(Agilent Technologies)単離物を、OD
000.6まで30℃で成長させた。タンパク質の発現は、1mM IPTGを用いて1
2℃で誘発し、インキュベーションをさらに22時間継続した。
【0111】
細胞をBugBuster HTタンパク質抽出試薬(Novagen)により溶解し
て粗抽出物を得、またはStansted高圧細胞粉砕機(Stansted Flui
d Power)により50mM Bis-Tris(pH7)、0.5M NaCl、
5%グリセリン、40μMイミダゾール中で精製した。His-ZZのタグが付いたタン
パク質を、HisTrap FF(GE Healthcare)で標準プロトコルを使
用して精製した。タグをTev-プロテアーゼによる酵素的切断により5℃で20時間除
去し、続いて第2回の精製をHisTrapFTで行なった。タグの付いていないrIg
dEを含有するフロースルーを収集した。組換えIgdEΔCを、上で記載されたように
高収率で精製して、純度を全長rIgdEと比較した。
【0112】
IgG分解の定性分析
濃縮されて分画された培養上清中におけるIgG切断活性をモニターするために、試料
を1%ブタ血漿とPBS中で37℃で16時間インキュベートした後、ウェスタンブロッ
ト分析した。
【0113】
IgGプロテアーゼの触媒型を同定するために、IgG分解反応を、0.1~5mMの
AEBSF(Sigma)、0.1~5mMのEDTA、50~250μMのE64(S
igma)、0.1~5mMのZ-LVG-CHN(Bachem)、0.1~5mM
のヨードアセトアミド(Sigma)または1/200から1/50希釈の完全プロテア
ーゼ阻害剤カクテル(Roche)の存在下で実施した。
【0114】
PBS中0.5mg/mlのブタIgG(Sigma)または他の種(ヒト、ヤギ、ウ
シ、ウマおよびマウス;全てSigma)のIgGを、上記のS.スイス(S. suis)I
gdE構築物を保有する誘発された大腸菌(E. coli)の粗抽出物または10nMの精製
rIgdEのいずれかと37℃で16時間インキュベートした後、還元または非還元いず
れかの条件下でSDS-PAGEにかけた。
【0115】
ブタ体液中における内因性IgGの分解を分析するために:心膜液、腹腔液および関節
液は1/10;血清は1/50希釈後に;脳脊髄液については無希釈で使用した。脳脊髄
液および関節液は、S.スイス(S. suis)感染により引き起こされた線維素化膿性髄膜
炎および滑膜炎を有するコブタからまたは病変のないコブタからのものである。そうでな
ければ、IgG分解の分析は、上記のように精製rIgdEで実施して、SDS-PAG
Eおよびウェスタンブロット分析の両方によって分析した。実験は、少なくとも3回繰り
返して、代表的分析を示す。
【0116】
IgG分解の定量分析
時間経過分析および阻害剤プロファイルのために、IgG分解反応を、0.25mg/
mlのブタIgGおよび2μMの精製IgdEΔCを用いてPBS中37℃で、阻害せず
に、または2.5μMまたは250μMのAEBSF(Sigma)、EDTA、E-6
4(Sigma)、ヨードアセトアミド(Sigma)、またはZ-LVG-CHN
Bachem)の存在下で実施した。250μMのZ-LVG-CHN中のDMSO含
有率に対応する0.275%のDMSO(Sigma)を溶媒対照として使用した。反応
液を連続的に試料として採取して、還元条件下でSDS-PAGEにかけた。タンパク質
のバンドは、Coomassie Fluor(商標) Orange Protein
Gel Stain(Invitrogen)を用いる染色により検出した。IgG分
解産物を、LAS4000撮像システム(冨士フィルム)を用いる撮像により濃度計で定
量化し、Image Studio Version3.1(LI-COR Biosc
iences)ソフトウェアを用いて分析した。時間経過実験のために、阻害されない終
夜の切断を100%相対切断として設定した。阻害剤プロファイルのために、初期切断速
度を切断産物の初期増大(0~25%の相対切断)から計算して、阻害されない反応の初
期切断速度を100%相対活性として設定した。実験は、少なくとも3連で実施した。統
計分析は、GraphPad Prism Version 5.0を使用して実施した
【0117】
SDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析
SDS-PAGEのための試料は、還元または非還元いずれかの試料緩衝液を用いて調
製し、95℃に5分間加熱した。12%のSDS-PAGEをクーマシーブルー(Sig
ma)、Coomassie Fluor(商標) Orange Protein G
el Stain(Invitrogen)のいずれかで染色して、またはウェスタンブ
ロット分析のためにHybond-P PVDF膜(GE Healthcare)にブ
ロットした。0.1%PBS-ツイーン中で、膜を5%乾燥粉乳でブロッキングし、続い
て西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗体とインキュベートした。ヤギ抗ブタI
gG-HRP(Thermo Scientific)およびヤギ抗ブタIgM-HRP
(Thermo Scientific)を1:25,000に希釈して、ヤギ抗ブタI
gA-HRP(Thermo Scientific)を1:12,500に希釈した。
膜を0.1%PBS-ツイーンで徹底的に洗浄した後、Amersham ECL選択ウ
ェスタンブロット検出試薬(GE Healthcare)を用いてメーカーの使用説明
に従って現像し、LAS4000撮像システム(冨士フィルム)により写真撮影した。
【0118】
N末端のエドマン配列決定
S.スイス(S. suis)IgdEで処理されたブタIgGを、前に説明したようにSD
S-PAGEにより分離して、50mMのホウ酸ナトリウム/20%MetOHをブロッ
ト緩衝液として用いて、半乾燥ブロットによりHybond-P PVDF膜(GE H
ealthcare)上に移した。該膜をPonceau S(Sigma)で染色して
、乾燥後、約32kDaの分解産物を正確に切り出した。分解産物のN末端のエドマン配
列決定を、Proteome Factory(ベルリン、ドイツ)により実施して、配
列W/C PICPACEを得た。最初の位置配列決定は、強いトリプトファンピークお
よびシステイン位置に弱いピークのみを生ずる汚染に多分基づいて複雑であった。しかし
ながら、BLAST相同性の検索で、配列を疑う余地のないスコアのブタIgGヒンジ領
域配列が、システイン残基を対応する位置に含有した。システインは、プロピオンアミド
改変されたシステインのシグナルにより同定されたが、それにも拘わらずシステインは較
正標準の部分ではない。
【0119】
ELISA
S.スイス(S. suis)IgdEに対するIgG力価を検出するために、Maxiso
rb(登録商標)プレート(Nunc)を、炭酸塩緩衝液を使用して0.6μgのrIg
dEタンパク質でコートした。コーティング後、プレートを0.1%ツイーン20(PB
ST)を加えたPBSで3回洗浄して、PBS中5%の粉乳で37℃で2時間ブロッキン
グした。全ての試料および対照を、1:100の希釈で出発して、PBST中における4
回の2倍希釈の(陽性参照血清:6個)2連シリーズで測定した。S.スイス(S. suis
)IgdEに特異的なIgG抗体を検出するために、プレートを、ヤギ抗ブタIgG-H
RP(1mg/ml、Bethyl、A100-105P)と、1:10000の希釈で
37℃で1時間インキュベートした。全てのインキュベーションステップは、37℃で振
盪機上で実施して、各インキュベーションステップ後、プレートをPBSTで洗浄した。
プレートを、2,2-アジノ-ジ-[3-エチルベンジチアゾリンスルホネート](AB
TS)および0.003%Hを基質として用いて現像した。吸光度は、405nm
でマイクロプレートリーダー(Synergy H1、BioTek Instrume
nts GmbH)で測定した。光学密度を、バックグラウンドを差し引いた後対数の直
線的回帰分析により抗体濃度に変換した。各試料についてのELISAユニットは、2つ
のシリーズの4回希釈の各々について計算されたユニットの平均として定義された。S.
スイス(S. suis)の株10を用いた実験的感染後20日に採取された血清試料から得ら
れたELISA値を、任意に100ELISAユニットに設定して、一方、初乳を奪われ
たコブタから誘導された血清試料からのELISA値を陰性対照として使用した。
【0120】
結果
S.スイス(S. suis)はIgG切断酵素を分泌する。
S.スイス(S. suis)の細胞外酵素のタンパク質分解活性を、S.スイス(S. suis)
の株10の濃縮された上清および同系遺伝子型のIgMプロテアーゼ突然変異体10Δi
deSsuisと、推定上の基質としての2%ブタ血漿とをインキュベートすることによ
り分析した。3時間のインキュベーションの後、反応混合物を還元SDS-PAGEによ
り分析した。興味深いことに、野生株10および同系遺伝子型のIgMプロテアーゼ突然
変異体10ΔIdeSsuisの両方の細菌培養上清から得られた血漿タンパク質のバン
ドのパターンは、ブタ血漿対照にはなかった約32kDaの追加のタンパク質バンドを含
有した(図1A)。32kDaバンドを切り出して、MALDI-TOF質量分析法にか
け、S.スイス(S. suis)におけるIgGタンパク質分解活性の存在を示すIgG分解
産物と同定した。この発見を確認して、タンパク質分解活性はS.スイス(S. suis)の
分泌された酵素に基づくことを立証するために、細菌培養物の成長上清を、硫酸アンモニ
ウムの量を増大させて(0から80%の飽和まで)添加することにより分画した。分画は
、ブタ血漿を用いてIgG切断活性について試験して、IgGの分解フラグメントを、特
異的ポリクローナル抗ブタIgG抗体を使用してウェスタンブロットにより検出した。2
0から60%硫酸アンモニウムで飽和した沈殿は、IgG切断活性を明確に示して、観察
されたIgGタンパク質分解活性は、最近記載されたIgMプロテアーゼIdeSsui
(Seele、前出)と別物であり、S.スイス(S. suis)の培養上清中の分泌されたタン
パク質に基づくことを示した(図1B)。
【0121】
臨床的に意味のある血清型2の数種の株を含む15種の異なるS.スイス(S. suis)
の株の培養上清;血清型2の2つのヒト単離物、および追加の血清型を代表する一組の株
(表2)を、上記のようにウェスタンブロットにより分析した。全ての株について、約3
2kDaのIgG切断産物をウェスタンブロット分析により検出することができて(図1
C)、IgG分解活性は、異なるS.スイス(S. suis)の株の間でも保存されることが
示された。
【0122】
S.スイス(S. suis)の新規プロテアーゼであるIgdEの精製および配列の特徴
精製の試行に先立って、硫酸アンモニウムによるプロテアーゼが富化された沈殿を、ク
ラス特異的プロテアーゼ阻害剤の存在下でIgG切断活性について試験して、推定上のI
gGプロテアーゼを予備的に分類した。メタロプロテアーゼ阻害剤EDTAはIgG切断
に影響しなかったが、それに対してセリンプロテアーゼ阻害剤AEBSFはIgG切断に
中程度に干渉した。しかしながら、システインプロテアーゼ阻害剤E-64、Z-LVG
-CHNおよびヨードアセトアミドは、全てIgG分解活性を阻害するように思われた
図8)。したがって、活性部位のシステイン残基は、AEBSF(24、25)により
阻害され得るので、阻害剤全体のプロファイルは、IgG切断プロテアーゼはシステイン
プロテアーゼのクラスに属するという仮定と最も一致する。精製するために、株10の同
系遺伝子型の突然変異体である株S.スイス(S. suis)10M7を、培養上清中の高度
に豊富なムラミニダーゼ放出タンパク質(MRP)による低発現タンパク質の遮蔽を回避
するために、使用した。細菌培養上清を、硫酸アンモニウム沈殿により分画して、沈殿を
アニオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)にかけ
た。IgG切断活性を示す試料を、還元SDS-PAGEにより分離した。タンパク質の
バンドをMALDI-TOF質量分析法およびpBLASTアルゴリズムを使用するNC
BIデータベースに対する類似性検索により同定した。IgGタンパク質分解酵素の最初
の特徴付けが、該プロテアーゼが最も分泌されるシステインプロテアーゼらしいことを示
したので、同定されたタンパク質の配列を、i)該タンパク質のコア内におけるシステイ
ン残基の存在、およびii)分泌シグナルペプチドの存在についてスクリーニングした。
IgMに特異的であることが以前に示されたIdeSsuisの他に、2つの(10のう
ちの)同定されたタンパク質が推定上の触媒的システイン残基を含有したが、唯1つだけ
がSignalPアルゴリズムにより予測されたシグナルペプチド配列およびコアシステ
イン残基の両方を含有した。このタンパク質は、S.スイス(S. suis)の血清型2株の
ゲノムの配列データベースにおける推定上のエクスポートされたタンパク質と注釈を付け
られ(www.sanger.ac.uk)、株P1/7中のSSU_RS08150と命名される。SS
U_RS08150は、該タンパク質内のアミノ酸188から265内のN末端半分に位
置する推定上のトランスグルタミナーゼのコア配列モチーフを有する1121アミノ酸の
タンパク質(GenBankアクセッション番号WP_012027720)をコードす
る。膜タンパク質形態のTOPCONSconsensus予測は、アミノ酸1059~
1080の間付近のC末端で推定上の膜貫通ヘリックスを同定した。予測されたサイズの
118kDa(シグナル配列なし)は、SDS-PAGEの後の最初に精製されたタンパ
ク質のバンドの推定されたサイズより若干小さく(データ掲載せず)、それはSDS-P
AGE上における低pI(pI 4.66)のタンパク質の僅かに遅い移動に基づく。全
長の推定上のタンパク質配列を、NCBIデータベースに対するpBLASTアルゴリズ
ムを使用する類似性検索で使用した。この検索により、全長タンパク質は、MEROPS
ペプチダーゼデータベース(Rawlings et al. 2014. Nucleic Acids Res. 42, 503-509)
のいかなる知られたプロテアーゼに対しても類似性がなく;いかなる真核生物のタンパク
質に対しても類似性がないが、トランスグルタミナーゼコアモチーフを含有する該プロテ
アーゼのN端部の半分は、ストレプトコッカス・ポルシナス(Streptococcus porcinus)
およびストレプトコッカス・シュードポルシナス(Streptococcus pseudoporcinus)の仮
定上のタンパク質に対する若干の類似性(480~492アミノ酸残基の領域において5
4%の同一性)およびストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)の仮定上のタ
ンパク質に対する若干の類似性(264から406アミノ酸残基の領域における40%ま
での同一性)があることが明らかになった。プロテアーゼのN末端部分は、ストレプトコ
ッカス・アガラクチアエ(Streptococcus agalactiae)およびストレプトコッカス・メリ
オニス(Streptococcus merionis)(約32%同一性)の仮定上のタンパク質に対しても
若干の類似性を示す。該推定上のタンパク質は、幾つかのデータベースでリボヌクレアー
ゼまたはリボヌクレアーゼGおよびEとして表示されているが、実験的に確認された機能
の不在に基づいて、およびブタIgGに対する酵素活性に基づいて、該タンパク質は、ス
トレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)の免疫グロブリンGを分解する酵素に
対するIgdEと表示した。
【0123】
IgdEは新規なシステインプロテアーゼである
S.スイス(S. suis)IgdEの配列は、阻害剤プロファイルに基づいて、触媒部位
のシステインを表すと仮定される位置302における単一のシステイン残基の存在を明ら
かにする。知られたトランスグルタミナーゼドメイン構造をテンプレートとして使用した
、S.スイス(S. suis)IgdEのインシリコの3Dモデル化(http://swissmodel.exp
asy.org)は、システイン302、ヒスチジン333およびアスパラギン酸348からな
る潜在的な触媒的三連構造を含有するタンパク質のN末端部分における推定上の活性部位
の裂溝を示した。
【0124】
S.スイス(S. suis)IgdEの推定上のプロテアーゼドメインおよび触媒部位残基
を同定するために、数通りの組換えIgdE構築物を創出した(図2A)。3つの推定上
の触媒部位残基の全てを、突然変異体タンパク質、IgdEC302S、IgdEH33
3AおよびIgdED348Aをそれぞれ生じさせる部位特異的突然変異生成により置き
換えた。それに加えて、S.スイス(S. suis)IgdEのC末端部分を欠く構築物を、
XhoI制限酵素のカットバックにより創出した。これらの構築物を発現する大腸菌(E.
coli)の粗可溶分画をブタIgGとインキュベートして、SDS-PAGEにより分析
した。組換えS.スイス(S. suis)IgdEの存在で、32kDaのIgG誘導バンド
が現れて、組換えタンパク質はIgGタンパク質分解活性を含有することが示された(図
2B、レーン3)。アミノ酸471から1121を欠く組換えタンパク質がIgG切断活
性のために十分であるので(図2B、レーン7)、IgG切断活性は、タンパク質のN末
端部分に帰属させることができた。突然変異体タンパク質とインキュベートしたブタIg
GのSDS-PAGE分析は(図2B、レーン4~6)、rIgdEC302SもrIg
dEH333AもIgG切断活性を示さなかったが、それに対してrIgdED348A
は、若干低下したIgG切断活性を示したことを明らかにした。全体的にみて、これらの
データは、これらの3種の残基がS.スイス(S. suis)IgdEの触媒部位の一部であ
ることを強く示す。
【0125】
阻害剤のスクリーニングを、精製された組換えIgdEΔCおよびクラス特異的プロテ
アーゼ阻害剤を用いて繰り返した。古典的トランスグルタミナーゼ酵素と対照的に、該プ
ロテアーゼはEDTAの存在下で完全に活性であるが、それに対して、IgdEはカルシ
ウム依存性ではなく、システインクラスに特異的な阻害剤のヨードアセトアミドおよびZ
-LVG-CHN2は、IgGタンパク質分解活性に効率的に干渉し、阻害剤の125倍
モル過剰で18時間のインキュベーション後でさえ、切断産物は全然検出することができ
なかった(図3)。セリンプロテアーゼ阻害剤のAEBSFは、IgdEΔCを、125
倍のモル過剰で中程度に阻害した。興味あることに、E-64は、この実験の設定では精
製IgdEΔCを阻害しなかったので、それは、IdeSおよびIdeSsuisのよう
な他の連鎖球菌のIgプロテアーゼについて記載されたのと同様な狭い活性部位に基づく
と思われる。しかしながら、非常に高濃度では、E-64は、S.スイス(S. suis)培
養上清のIgG切断活性に干渉した(図8)。Z-LVG-CHN2のシステインプロテ
アーゼに特異的な阻害剤は、構造的にシスタチンCの阻害反応性部位に基づいて(Green
and Shaw. 1981. J. Biol. Chem. 256, 1923-1928)125倍モル過剰でIgdEΔCを
完全に阻害した。ヨードアセトアミドおよびZ-LVG-CHN2を用いる酵素活性の阻
害ならびにIgdEC302SおよびIgdEH333A突然変異体の酵素活性の欠損は
、IgdEがシステインプロテアーゼファミリーの新規かつこれまでのところ独特のメン
バーであることを示唆する。
【0126】
S.スイス(S. suis)IgdEは、ブタIgGを、高い特異性でヒンジ領域において切
断する
ブタIgGの分解産物を、還元および非還元SDS-PAGEで分析した。非還元条件
下で観察されたバンドのパターンは、相互に接続するジスルフィド結合のちょうどN末端
で、重鎖のヒンジ領域に位置する切断部位と一致する(図4A)。還元条件下で得られた
IgG分解産物(図4B)をN末端のエドマン配列決定にかけて、得られた配列CPI
CPACEは、ブタIgG2ab、IgG4ab、およびIgG6abサブタイプのヒン
ジ領域配列で見出された。共通のモチーフとしてCPICPGCEを有する同様な配列が
、IgG1abおよびIgG5abサブタイプのヒンジ領域に存在するが、それに対して
IgG3はヒンジ領域中にCPxxxxC配列を示した(表3)。
【0127】
【表5】
還元および非還元SDS-PAGEで観察された切断パターンは、同定された切断部位
に加えて、第2のステップの加水分解が第2の重鎖を切断する前に、1つのIgG重鎖が
ホモダイマーのジスルフィド結合のちょうどN末端で加水分解される切断反応と一致する
図4C)。興味深いことに、IgGのヒンジ領域と同様な配列は、ブタのIgAおよび
IgMの重鎖配列では見出すことができない。それゆえ、S.スイス(S. suis)Igd
E特異性を、ブタIgG、IgMおよびIgAに対する特異的抗体を使用して、さらに研
究した。組換えS.スイス(S. suis)IgdEとインキュベートしたブタ血漿を、ウェ
スタンブロットにより分析して、ブタ血漿中のプロテアーゼはIgGを標的とするが、I
gAまたはIgMを切断しないことが示された(図5A)。
【0128】
プロテアーゼの宿主特異性を、精製S.スイス(S. suis)IgdEとヒト、ヤギ、ウ
シ、ウマおよびマウスのIgG製剤とのインキュベーションにより研究した(図5B)。
興味深いことに、ブタIgGのみがこの新規IgGプロテアーゼに対する基質であること
が見出された。したがって、IgdEは、際立った種特異性を示して、ブタIgGのみを
標的とする。
【0129】
S.スイス(S. suis)IgdEの特異性をエックスビボでさらに評価するために、健
常なまたは病気のコブタの体液を使用した。心膜液、腹腔、および関節からの体液、なら
びに脳脊髄液および血清を、組換えS.スイス(S. suis)IgdEで処理して、ブタI
gG特異的抗体を使用して、SDS-PAGE(図6A)およびウェスタンブロットによ
り分析した(図6B)。タンパク質バンドのパターンにおけるはっきりした変化は、症状
を示すIgG切断産物の出現を除いて、心膜、腹腔および血清の試料中におけるrIgd
Eの存在において観察することができなかった。IgG、すなわち切断産物も、健常ブタ
の関節液および脳脊髄液中に存在しなかった。対照的に、臨床的徴候を有する、例えば髄
膜炎および滑膜炎を患うコブタから得られた全ての体液は、炎症性応答の結果としてIg
Gを含有し、再び症状を示す単一の32kDaバンドを、rIgdEで処理された全ての
試料で観察することができた(図6)。S.スイス(S. suis)IgdEの特異性は、ブ
タ体液とプロテアーゼとのインキュベーション後のSDS-PAGEで、追加の分解産物
は同定することができなかった観察により強調される。したがって、追加の基質が存在す
ることは排除できないが、これらの結果は、S.スイス(S. suis)IgdEが高度に特
異的なIgGプロテアーゼであり、S.スイス(S. suis)の以前に記載されたIgAお
よびIgMを分解するプロテアーゼを補完することを示す(Seele前出; Zhang et al. 20
10. Vet. Microbiol. 140, 171-175)。
【0130】
IgdEは、S.スイス(S. suis)により発現される唯一のIgG切断酵素である
株10および株10ΔideSsuisは、後者はIgM切断活性を欠くが、S.スイ
ス(S. suis)igdEのインフレーム欠失突然変異体を生じさせるために使用された。
野生株10からの成長上清におけるIgGおよびIgM切断活性を、特異的ポリクローナ
ル抗ブタIgGまたはIgM抗体を使用して、ウェスタンブロットにより決定した(図7
)。予想されたように、野生株10は、IgGおよびIgM切断活性を示したが(図7A
および図7B、レーン3)、それに対して、同系遺伝子型の突然変異体株10ΔigdE
の上清のみが、IgM切断活性を含有して、IgGまたはIgMのいずれの分解も二重突
然変異体株10ΔideSsuisΔigdEの上清で検出可能でなかった(図7Aおよ
図7B、レーン5)。したがって、S.スイス(S. suis)IgdEは、ブタIgGを
切断するために必要かつ十分であり、他のIgG切断活性はこれらの実験条件下では放出
されないと思われる。
【0131】
S.スイス(S. suis)IgdEのインビボにおける発現
離乳期のコブタは、初期には、初乳に由来する母の抗体により細菌感染から保護される
。母の抗体のレベルは経時的に減少して、活性IgGに媒介される免疫が2週間後の初め
に出現する。したがって、初乳由来のコブタの血清中のIgG抗体(SCDP)のレベル
は、ELISA測定におけるバックグラウンド値を超えない。ELISAを、rIgdE
を抗原として用いて実施し、コブタからの異なる血清試料を、このIgGプロテアーゼに
向けられた抗体の存在について研究した。S.スイス(S. suis)の株10を用いる実験
感染後20日に採取された血清試料は、rIgdEに対して非常に高い力価を含有した(
100 ELISAユニットと定義した;材料および方法を参照されたい)。陰性対照と
して使用されたSCDPと対照的に、S.スイス(S. suis)IgdEに対する特異的抗
体の有意の量が、9匹の5~6週齢の従来の離乳期コブタのうち7匹で検出可能であった
(36から92の範囲のELISAユニット)。これらの結果は、S.スイス(S. suis
)IgdEが、S.スイス(S. suis)によりインビボで発現された免疫原性抗原である
ことを示した。
【0132】
[実施例2]
他の連鎖球菌種からのIgdEの同定
全ての入手可能な連鎖球菌のゲノムのコード配列を、NCBI[ftp://ftp.ncbi.nlm.n
ih.gov/genomes/Bacteria/on Aug-21-2015]およびPATRIC[ftp://ftp.patricbrc.or
g/patric2/on Aug-25-2015]からダウンロードした。
【0133】
IgdEのための参照配列として、本発明者らは、RefSeq配列WP_01463
6499.1を使用した。S.スイス(S. suis)からの該配列のみに存在するN末端シ
グナルペプチドおよびC末端領域を除去して、この後「IgdE_ドメイン」と称するア
ミノ酸38~520を残した。
【0134】
IgdE_ドメインを、NCBI配列ならびにPATRIC配列に対するblastp
検索におけるクエリー配列として使用した(全ての可能なプロテアーゼを保つためのE値
カットオフ1)。得られたヒットを、今度は同じパラメーターを使用して同じデータベー
スに対するクエリー配列として使用した。合致した配列のリストから、本発明者らは、I
gdEがクエリーとして使用された場合に、第2回が第1回で合致した領域と重なる合致
があった配列を選んだ。触媒部位で「C」を含有しない配列は、さらなる検討から除外し
て、同一の配列の場合に唯一のコピーのみを保った。
【0135】
見出された配列の多くは、S層タンパク質と、またはS層相同性ドメインWを含有する
と注釈される。これらは、同じゲノム中にしばしば2つ以上のコピーで存在して、触媒部
位に元のIgdE配列で見出されるAxCモチーフに代わってSxCまたはGxCモチー
フを有する。Pfamに対して全ての配列を検索する場合に、これらの配列は、Pfam
モデル「Transglut_core」にうまく適合する。IgdEファミリーのメン
バーではないこれらの配列を除外するために、E値が最大で1e-6のTransglu
t_coreモデルに合致する全て配列を除外して、同様にAxCモチーフを欠く配列も
除外した。残る配列は、両方の端部で切られてIgdE_ドメイン配列と合致する部分の
みを含有した。このことが同一の「ドメイン」配列を生じた場合に、唯1つのコピーのみ
が保たれた。
【0136】
IgdEファミリーに属するプロテアーゼを、S.ポルシナス(S. porcinus)、S.
アガラクチアエ(S. agalactiae)、S.エクイ(S. equi)、およびS.シュードポルシ
ナス(S. pseudoporcinus)で同定した。該プロテアーゼをクローニングして発現させて
、特徴付けた。
【0137】
[実施例3]
S.ポルシナス(S. porcinus)から単離されたIgdEの性質
・組換えIgdEporcinusは、精製されたポリクローナルブタIgGを切断して
、還元SDS-PAGEにより検出される32kDaの分解産物を生じた。
・組換えIgdEporcinusをウシ、ウマ、ヒト、ヤギまたはマウスからの精製ポ
リクローナルIgGとインキュベートしたときに、分解産物は観察されなかった。
・組換えIgdEporcinusはブタ血清中のIgGを切断したが、抗IgG、Ig
MおよびIgAウェスタンブロット分析によりIgMまたはIgAは検出されなかった。
・ブタIgGの32kDa分解産物のN末端配列は、CPICPACEであることがN末
端のエドマン配列決定により示されて、このタンパク質が、ブタIgG内のS.スイス(
S. suis)からのIgdEと同じ切断部位を有することが示された。
・組換えIgdEporcinusは、容易に過剰発現されて高純度に精製された。
・全ての試験したS.ポルシナス(S. porcinus)の株は、それらの成長培養上清で、組
換えタンパク質と同じブタIgG切断表現型を示した。
【0138】
[実施例4]
S.アガラクチアエ(S. agalactiae)から単離されたIgdEの性質
・組換えIgdEagalactiaeは、精製ポリクローナルヒトIgGを切断して、
還元SDS-PAGEにより検出される32kDaの分解産物を生じさせた(図10)。
・組換えIgdEagalactiaeは、精製モノクローナルヒトIgG1カッパおよ
びIgG1ラムダを切断して、還元SDS-PAGEにより検出される32kDaの分解
産物を生じさせた(図10D)。
・組換えIgdEagalactiaeをモノクローナルヒトIgG2、IgG3または
IgG4とインキュベートしたときに、分解産物は観察されなかった(図10D)。
・組換えIgdEagalactiaeをウシ、ウマ、ブタ、ヤギおよびマウスからの精
製ポリクローナルIgGとインキュベートしたときに、分解産物は観察されなかった(図
10A)。
・組換えIgdEagalactiaeは、ヒト血清中のIgGを切断したが、IgMま
たはIgAは、抗IgG、IgMおよびIgAウェスタンブロット分析により検出されな
かった。
・組換えIgdEagalactiaeは、ヒト血清IgG1を完全に分解して単一の切
断されたIgG1にする(図11)。
・ヒトIgGの32kDaの分解産物のN末端配列は、H(またはGまたはS)TCPP
CPAPEであることがN末端のエドマン配列決定により示されて、このタンパク質はI
gG1でヒンジ領域にパパインと同じ切断部位を有することを示し、システイン残基のN
末端が重鎖間のH-H共有結合に関与すると考えられる。
・組換えIgdEagalactiaeは容易に過剰発現されて精製される。
【0139】
[実施例5]
S.エクイ(S. equi)から単離されたIgdEの性質
・組換えIgdEequiを発現する大腸菌(E. coli)の溶解物は、精製ポリクローナ
ルウマIgGを切断して、還元SDS-PAGEにより検出された、32kDaの分解産
物を生じさせる。
・組換えIgdEequiをウシ、ヒト、ブタ、ヤギ、ラット、ウサギおよびマウスから
の精製ポリクローナルIgGとインキュベートしたときに、分解産物は観察されなかった

・組換えIgdEequiはウマ血清中のIgGを切断したが、IgMまたはIgAは、
抗IgG、IgMおよびIgAウェスタンブロット分析により検出されなかった。
・組換えIgdEequiは、精製モノクローナル組換えウマIgG7を切断して、32
kDaの分解産物を生じさせ、還元SDS-PAGEにより検出された(図12)。
・組換えIgdEequiを、組換えモノクローナルウマIgG1、IgG2、IgG3
、IgG4、IgG5またはIgG6とインキュベートしたときに、分解産物は観察され
なかった。
・ウマIgGの32kDaの分解産物のN末端のエドマン配列決定により示されたN末端
配列は、(G)PTCPECXGVである。この配列はウマIgG7のヒンジ領域に見出
される。
【0140】
[実施例6]
S.シュードポルシナス(S. pseudoporcinus)から単離されたIgdEの性質
・S.シュードポルシナス(S. pseudoporcinus)の培養上清は、ブタIgGの切断表現
型を有したが、ヒトIgGの切断表現型は有しなかった。
・組換えIgdEpseudoporcinusは、精製ポリクローナルヒトおよびブタ
IgGを切断して、還元SDS-PAGEにより検出されるように、32kDaの分解産
物を生じさせた。
・組換えIgdEpseudoporcinusを、ウシ、ウマ、ヤギ、マウス、または
ラットからの精製ポリクローナルIgGとインキュベートしたときに、分解産物は観察さ
れなかった。
・組換えIgdEpseudoporcinusは、ヒトおよびブタ血清中のIgGを切
断したが、ブタ血清中のIgMまたはIgAは切断しないことが、抗IgG、IgMおよ
びIgAウェスタンブロット分析によりわかった。
・ブタIgGの32kDaの分解産物のN末端配列は、N末端のエドマン配列決定により
示されるようにCPICPACEであり、このタンパク質は、ブタIgG内のIgdEと
同じ切断部位を有することが示される。
・組換えIgdEpseudoporcinusは、大腸菌(E. coli)BL21pLy
sSで容易に過剰発現された。
【0141】
本明細書に記載された本発明は、以下の態様にも関する。
1. 対象において免疫応答を生じさせることに使用するためのポリペプチドであって

(a)配列番号1のアミノ酸配列;
(b)配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号1の変異体;
(c)対象において、連鎖球菌、好ましくはS.スイス(S. suis)に対する免疫応答
を生じさせることができる配列番号1のフラグメント、配列番号1の変異体、または配列
番号1の変異体のフラグメント;
(d)配列番号3のアミノ酸配列;
(e)配列番号3のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3の変異体;
(f)対象において、連鎖球菌、好ましくはS.アガラクチアエ(S. agalactiae)に
対する免疫応答を生じさせることができる配列番号3のフラグメント、配列番号3の変異
体、または配列番号3の変異体のフラグメント;
(g)配列番号5のアミノ酸配列;
(h)配列番号5のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号5の変異体;
(i)対象において、連鎖球菌、好ましくはS.ポルシナス(S. porcinus)に対する
免疫応答を生じさせることができる配列番号5のフラグメント、配列番号5の変異体、ま
たは配列番号5の変異体のフラグメント;
(j)配列番号7のアミノ酸配列;
(k)配列番号7のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号7の変異体;
(l)対象において、連鎖球菌、好ましくはS.エクイ(S. equi)に対する免疫応答
を生じさせることができる配列番号7のフラグメント、配列番号7の変異体、または配列
番号7の変異体のフラグメント;
(m)配列番号9のアミノ酸配列;
(n)配列番号9のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号9の変異体;
(o)対象において、連鎖球菌、好ましくはS.シュードポルシナス(S. pseudoporci
nus)に対する免疫応答を生じさせることができる配列番号9のフラグメント、配列番号
9の変異体、または配列番号9の変異体のフラグメント;
を含むポリペプチド。
【0142】
2. 対象において免疫応答を生じさせることに使用するための態様1によるポリペプ
チドをコードするポリヌクレオチド。
【0143】
3. 対象において免疫応答を生じさせることに使用するためのポリヌクレオチドであ
って:
(a)配列番号2もしくはそれに相補的な配列;
(b)(a)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列;
(c)(a)もしくは(b)で定義された配列にストリンジェントな条件下でハイブリ
ダイズする配列;
(d)(a)もしくは(b)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有する
配列;
(e)配列(a)、(b)、(c)もしくは(d)のいずれかのフラグメントであり、
IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有し、かつ/もしくは対象において、連
鎖球菌、好ましくはS.スイス(S. suis)に対する免疫応答を生じさせることができる
ポリペプチドをコードするフラグメント。
(f)配列番号4もしくはそれに相補的な配列;
(g)(f)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列;
(h)(f)もしくは(g)で定義された配列にストリンジェントな条件下でハイブリ
ダイズする配列;
(i)(f)もしくは(g)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有する
配列;
(j)配列(f)、(g)、(h)もしくは(i)のいずれかのフラグメントであり、
IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有し、かつ/もしくは対象において、連
鎖球菌、好ましくはS.アガラクチアエ(S. agalactiae)に対する免疫応答を生じさせ
ることができるポリペプチドをコードするフラグメント;
(k)配列番号6もしくはそれに相補的な配列;
(l)(k)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列;
(m)(k)もしくは(l)で定義された配列にストリンジェントな条件下でハイブリ
ダイズする配列;
(n)(k)もしくは(l)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有する
配列;
(o)配列(k)、(l)、(m)もしくは(n)のいずれかのフラグメントであり、
IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有し、かつ/もしくは対象において、連
鎖球菌、好ましくはS.ポルシナス(S. porcinus)に対する免疫応答を生じさせること
ができるポリペプチドをコードするフラグメント;
(p)配列番号8もしくはそれに相補的な配列;
(q)(a)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列;
(r)(p)もしくは(q)で定義された配列にストリンジェントな条件下でハイブリ
ダイズする配列;
(s)(p)もしくは(q)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有する
配列;
(t)配列(p)、(q)、(r)もしくは(s)のいずれかのフラグメントであり、
IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有し、かつ/もしくは対象において、連
鎖球菌、好ましくはS.エクイ(S. equi)に対する免疫応答を生じさせることができる
ポリペプチドをコードするフラグメント;
(u)配列番号10もしくはそれに相補的な配列;
(v)(u)で定義された配列に対する遺伝コードの結果として変性した配列;
(w)(u)もしくは(v)で定義された配列にストリンジェントな条件下でハイブリ
ダイズする配列;
(x)(u)もしくは(v)で定義された配列との少なくとも70%の同一性を有する
配列;または
(y)配列(u)、(v)、(w)もしくは(x)のいずれかのフラグメントであり、
IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有し、かつ/もしくは対象において、連
鎖球菌、好ましくはS.シュードポルシナス(S. pseudoporcinus)に対する免疫応答を
生じさせることができるポリペプチドをコードするフラグメント
を含むポリヌクレオチド。
【0144】
4. IgG抗体により媒介される疾患または状態の治療または予防に使用するための
ポリペプチドであって:
(a)配列番号1のアミノ酸配列;
(b)配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号1の変異体;
(c)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号1のフラグメン
トもしくは配列番号1の変異体のフラグメント。
(d)配列番号3のアミノ酸配列;
(e)配列番号3のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3の変異体;
(f)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3のフラグメン
トもしくは配列番号3の変異体のフラグメント;
(g)配列番号5のアミノ酸配列;
(h)配列番号5のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号5の変異体;
(i)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号5のフラグメン
トもしくは配列番号5の変異体のフラグメント;
(j)配列番号7のアミノ酸配列;
(k)配列番号7のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号7の変異体;または
(l)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号7のフラグメン
トもしくは配列番号7の変異体のフラグメント;または
(m)配列番号9のアミノ酸配列;
(n)配列番号9のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号9の変異体;
(o)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号9のフラグメン
トもしくは配列番号9の変異体のフラグメント;
(p)配列番号11のアミノ酸配列;
(q)配列番号11のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分
解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号11の変異体;または
(r)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号11のフラグメ
ントもしくは配列番号11の変異体のフラグメント
を含むポリペプチド。
【0145】
5. IgG抗体により媒介される疾患または状態の治療または予防に使用するための
態様4によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0146】
6. IgGを:
(a)配列番号1のアミノ酸配列;
(b)配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号1の変異体;
(c)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号1のフラグメン
トもしくは配列番号1の変異体のフラグメント;
(d)配列番号3のアミノ酸配列;
(e)配列番号3のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3の変異体;
(f)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号3のフラグメン
トもしくは配列番号3の変異体のフラグメント;
(g)配列番号5のアミノ酸配列;
(h)配列番号5のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号5の変異体;
(i)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号5のフラグメン
トもしくは配列番号5の変異体のフラグメント;
(j)配列番号7のアミノ酸配列;
(k)配列番号7のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号7の変異体;
(l)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号7のフラグメン
トもしくは配列番号7の変異体のフラグメント;
(m)配列番号9のアミノ酸配列;
(n)配列番号9のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分解
するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号9の変異体;
(o)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号9のフラグメン
トもしくは配列番号9の変異体のフラグメント;
(p)配列番号11のアミノ酸配列1;
(q)配列番号11のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGを分
解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号11の変異体;または
(r)IgGを分解するシステインプロテアーゼ活性を有する配列番号11のフラグメ
ントもしくは配列番号11の変異体のフラグメント
を含むポリペプチドと接触させることを含む、IgGを切断するためのインビトロの方法
【0147】
7.IgdEポリペプチドのIgGシステイン活性を活性化するかまたは阻害する物質
を同定する方法であって;
a)IgdEポリペプチドおよびIgGを候補物質と、該物質の不在下でIgGシステ
イン活性を可能にする条件下で接触させるステップ、
b)該候補物質の存在下で消化されたIgGの量を、前記物質の不在下における場合と
比較して決定するステップ、
c)b)で得られた結果に基づいて、該物質がIgdEポリペプチドのIgGシステイ
ン活性を活性化するかまたは阻害するかを決定するステップ
を含む方法。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12-1】
図12-2】
【配列表】
2022115853000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0147
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0147】
7.IgdEポリペプチドのIgGシステイン活性を活性化するかまたは阻害する物質を同定する方法であって;
a)IgdEポリペプチドおよびIgGを候補物質と、該物質の不在下でIgGシステイン活性を可能にする条件下で接触させるステップ、
b)該候補物質の存在下で消化されたIgGの量を、前記物質の不在下における場合と比較して決定するステップ、
c)b)で得られた結果に基づいて、該物質がIgdEポリペプチドのIgGシステイン活性を活性化するかまたは阻害するかを決定するステップ
を含む方法。

以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
IgGの切断のためのインビトロの方法であって、IgGを:
(a)配列番号1、3、5、7、9もしくは11のアミノ酸配列;
(b)配列番号1、3、5、7、9もしくは11のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を有し、IgGシステインプロテアーゼ活性を有するそれらの変異体;または
(c)IgGシステインプロテアーゼ活性を有する、(a)もしくは(b)のいずれかのそれらのフラグメント
を含むポリペプチドと接触させることを含む方法。
[発明2]
前記アミノ酸配列が配列番号3である、発明1に記載の方法。
[発明3]
前記ポリペプチドを、IgGを含有する試料と、特異的システインプロテアーゼ活性が生ずることを可能にする条件下でインキュベートすることを含む、発明1または2に記載の方法。
[発明4]
前記IgGがヒトIgG1である、発明2に記載の方法。
[発明5]
前記切断産物の同定および/または単離をさらに含む、前記発明のいずれか一つに記載の方法。
[発明6]
前記同定および/または単離が、ゲル電気泳動または質量分析法による分析を含む、発明5に記載の方法。
[発明7]
FcおよびFabフラグメントを生じさせるために使用される、前記発明のいずれか一つに記載の方法。
[発明8]
IgGを検出するために使用される、発明1から7のいずれか一つに記載の方法。
[発明9]
(i)試料を、発明1に記載のポリペプチドと、前記ポリペプチドのIgG特異的システインプロテアーゼ活性を可能にする条件下で接触させること;および
(ii)IgG特異的切断フラグメントの存在についてモニターすること
を含み、前記特異的切断フラグメントの存在が試料中のIgGを示す、発明8に記載の方法。
【外国語明細書】