(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115872
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力伝送薄型コイルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20220802BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20220802BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20220802BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F27/255
H02J50/12
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022069788
(22)【出願日】2022-04-21
(62)【分割の表示】P 2019565876の分割
【原出願日】2018-05-30
(31)【優先権主張番号】62/512,544
(32)【優先日】2017-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514287443
【氏名又は名称】モーメンタム ダイナミックス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ロング、ブルース リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ダガ、アンドリュー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルゲマス、ジョン エム.
(72)【発明者】
【氏名】シュラフェル、ピーター シー.
(72)【発明者】
【氏名】コーエン、ベンジャミン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】キーナー、モーゼス エム.
(72)【発明者】
【氏名】マクマホン、フランシス ジェイ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リッツ線の不利な使用を回避して共鳴誘導伝送コイルの設計方法及び構築方法を提供する。
【解決手段】低損失で製造しやすく設計された薄い共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ700は、コイルアセンブリカバー701及びコイルアセンブリ筐体702を含む環境的にシールされた筐体内に収容される。コイル導体703の直接上方には、フェライトバー又はタイルを単一アセンブリとして一体的に保持するフェライトに接合されたフェライト裏打ち層704、非導電接着シート、テープ、フィルム又は布がある。磁束密度は、コイルアセンブリの中央で最強になる。磁束強度はコイル外周へ向かって減少するため、フェライト層の空間密度及び/又は厚さを薄くしながら飽和を回避できる。フェライト層の薄層化は、伝送コイルの重量とコストを軽減する手段として望ましい。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリであって、
筐体と、
前記筐体内の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルであって、
第1の側面と第2の側面とを有する誘電体と、
前記誘電体の前記第1の側面上にスパイラル状に巻かれた第1の複数の導体を有する第1の導体パターンと、
前記誘電体の前記第2の側面上にスパイラル状に巻かれた第2の複数の導体を有する第2の導体パターンであって、当該第2の導体パターンが前記第1の導体パターンに位置合わせされることにより、前記第1の導体パターンにより生成される磁束が当該第2の導体パターンにより強化されるものであり、前記第1および第2の導体パターンは互いに相対的に配置され、それにより同じ方向に磁束が伝送されるものである、
前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルと、
前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルに隣接して配置されたフェライト層であって、と、前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルの外周部に向かって減少する空間密度または厚さの少なくとも1つを有するものである、前記フェライト層と、
渦電流シールドと
を有し、
前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイル、前記フェライト層、および前記渦電流シールドは、前記筐体内に平行に設けられるものである、
共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項2】
請求項1記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、前記フェライト層は、前記フェライトバーを単一アセンブリとして一体的に保持するために、一定の厚さのフェライトバー、タイル、またはプレートに接合されたフェライト裏打ち層を有するものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項3】
請求項1記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、前記フェライト層は、フェライト粉末を結合剤と混合し射出成形によって成形された複合フェライト層を含む複合磁気構造を有するものであり、当該複合フェライト層は中央部においてより厚く外周部においてより薄いものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項4】
請求項2記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、前記フェライトのタイル密度は、前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルの中央部付近で連続的または略連続的であり、前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルの外周部に近づくに従って漸減するものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項5】
請求項1記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、前記渦電流シールドは、前記フェライト層で方向転換されなかった残留磁束を捉え散逸させるようになっている誘電体基板上に成膜された導電性シートまたは導電性フィルムを有するものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項6】
請求項1記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、さらに、
前記筐体と前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルとの間、前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルと前記フェライト層との間、および前記フェライト層と前記渦電流シールドとの間に設けられた機械的に適合性の高い非導電層を有し、この非導電層は、前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルおよび前記フェライト層用に、機械的な支持と、除熱と、物理的な離間とを提供するようになっているものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項7】
請求項1記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、前記筐体は、電力制御電子機器、通信電子機器、および物体検出機能を提供するようになっている回路を含むセンサー電子機器のうち少なくとも1つを収容する閉鎖容積を含むものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項8】
請求項1記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、さらに、前記フェライト層と前記筐体との間に位置する追加層として実装された薄い多層の金属化した誘電体シートの形態の共振キャパシタを有するものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項9】
請求項1記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、さらに、前記フェライト層の場の強度が低い側に位置する薄い大面積の金属化した誘電体フィルムの形態の共振キャパシタを含むものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項10】
請求項1記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、さらに、
巻線の電流容量を高めるためにスタックされ並列に接続された前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイル、または巻線のインダクタンスを高めるためにスタックされ直列に接続された前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルのうちの少なくとも2つを有するものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項11】
請求項1記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、さらに、
前記共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルの中央部に位置するセンサー開口部を有し、このセンサー開口部は、センサー電子機器を含み、当該共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリの各側面への、若しくは各側面からのセンサーまたは通信信号の双方向通信を可能にするものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項12】
請求項11記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、前記センサー電子機器は、検出および通信用に、ライトパイプ、音響導波路、電磁波導波路、または誘電体導波路を含むものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項13】
請求項12記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、前記電磁波導波路は、渦電流の発生を回避するようになっているハイパスまたはバンドパス周波数を選択可能な表面を有するものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項14】
請求項12記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、前記誘電体導波路は、渦電流の発生を回避するようになっている単線グーボー伝送線路として実装されるものである、共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【請求項15】
請求項1記載の共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリにおいて、
前記誘電体は平坦なスパイラルが設けられた導電テープを有し、前記第2の導体パターンは、垂直な中心線に沿って左から右へ反転され、90°回転されている点を除いて前記第1の導体パターンと同じであり、この共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルは、さらに、
前記第1および第2の導体パターンの各導体を電気接続する少なくとも1つの電気接続部を有し、
前記第1および第2の導体パターンは互いに相対的に配置され、それにより同じ方向に磁束が伝送されるものであり、前記導電テープの厚さは、動作周波数における前記第1の導体パターンの表皮深さの4倍の厚さを超えないものであり、ここで、共鳴誘導ワイヤレス電力動作周波数での表皮深さδは、
【数7】
で与えられ、式中、σは導体抵抗(オーム×メートル)、ωは動作周波数(ラジアン/秒)、μは導体の透磁率である、
共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年5月30日付で出願された米国仮特許出願第62/512,544号の優先権を主張するものである。その出願内容は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
この特許出願は、ワイヤレス電力伝送(無線電力伝送)コイルアセンブリについて説明したものであり、磁界共鳴誘導を使ったワイヤレス充電に関する。本明細書で説明するワイヤレス電力伝送コイルアセンブリは、ワイヤレス電力伝送装置の送電部の一部として、またはワイヤレス電力伝送装置の受電部の一部として使用することができる。
【背景技術】
【0003】
共鳴誘導ワイヤレス充電では、共通のコイル軸に沿って変位された2つの同軸コイルから成る空芯トランス(空芯変圧器)を使用する。電力は、前記2つの伝送コイル間の鎖交磁束により送電装置から受電装置へ送られる。一次コイルに流れる高周波交流電流は、二次コイルに交流電流を誘導する。
【0004】
ワイヤレス電力伝送の動作周波数は、商用電波周波数より著しく高く、通常、20kHz以上であり、直流に対し、ソリッドワイヤでは、表皮効果によりAC損失が著しく増大する。AC抵抗を制限するため、ワイヤレス電力伝送コイル導体は、通常、個別に絶縁された複数の小口径の導体を並列に接続したものとして実装され、一般にロープをよった構成にまとめられる。このタイプのワイヤーは、リッツ線と呼ばれる。リッツ線は、この用途でいくつかの欠点を有する。リッツ線は、個々のワイヤー間に空隙があり、個々のワイヤー絶縁材により占められた断面部分が大きいため、断面積が良好に利用されていない。絶縁材および空隙スペースの体積により、リッツ線の束の内部からは除熱が難しい。最後に、リッツ線はコスト高で、リッツ線に係る組み立て作業、特にワイヤー形成およびコネクタ取り付けには労力がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リッツ線の不利な使用を回避して共鳴誘導伝送コイルを設計および構築する方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルは、耐候性の筐体内に、磁束ガイド用フェライト磁性材料の層で裏打ちされたプリント基板を含む。付加的な構成要素としては、前記耐候性の筐体に含まれる共振キャパシタ(共振コンデンサ)、整流器、および整流後リップルフィルター構成要素などがある。前記複数の独立した個々のプリント基板のトレースは、従来の伝送コイルにある前記複数の独立したリッツ線導体に対応する。トレースの幅は、導体の渦電流および近接効果を最小限に抑えるよう選択される。全体的なトレースパターンにより、複数のトレースにわたる電流の共有が保証される。その結果、本明細書で説明する平面状スパイラルインダクタが得られ、これは低いAC抵抗を有し、従来のプリント基板として容易かつ安価に製造できる。
【0007】
実施形態例は、ワイヤレス電力伝送コイルを含み、当該ワイヤレス電力伝送コイルは、第1の側面と第2の側面とを有するプリント基板と、前記プリント基板の前記第1の側面上でスパイラル状に巻かれた第1の複数の導体を有する第1の導体パターンと、前記プリント基板の前記第2の側面上でスパイラル状に巻かれた第2の複数の導体を有する第2の導体パターンとを含み、前記第2の導体パターンが前記第1の導体パターンに位置合わせされることにより、前記第1の導体パターンにより生成される磁束が前記第2の導体パターンにより強化される。実施形態例において、前記第1および第2の導体パターンは、互いに相対的に配置され、それにより同じ方向に磁束が伝送される。少なくとも1つの電気接続部が提供され、前記第1および第2の導体パターンの各導体を電気的に接続する。前記電気接続部は、前記プリント基板に透設された少なくとも1つのスルーホール、またはクランプと、ラグと、端子のうち少なくとも1若しくはそれ以上を有することができる。前記スルーホールは、オフセットされためっきスルーホールとすることもできる。
【0008】
実施形態例において、前記第1および第2の導体パターンは、正方形の平坦な平面状スパイラルとして構成された少なくとも2巻きの導体を有し、前記第1および第2の複数の導体は、それぞれ少なくとも2つの独立した導体を有する。
【0009】
前記トレースの厚さはAC抵抗に寄与するため、動作周波数における表皮深さにより制約される。共鳴誘導ワイヤレス電力動作周波数での表皮深さδは、
【0010】
【数1】
で与えられ、式中、σは導体抵抗(オーム×メートル)、ωは動作周波数(ラジアン/秒)、μは導体の透磁率である。
【0011】
前記トレースの幅は、許容される導体の渦電流により制限される。均一な磁場における導電素子の渦電流損失は、
【0012】
【数2】
である。式中、Bはピーク磁場、dは磁場ベクトルに垂直な導電素子の最小寸法、fは動作周波数(Hz)、ρは導電素子の抵抗、Pは単位体積あたりの電力散逸である。トレース間の電圧はゼロに近いため、トレース間の離間は、製造で可能なかぎり最小化される。巻線間の近接効果により、トレース間の近接効果は最小化される。巻線間の離間は、巻線間の電圧により許容される限界まで最小化される。
【0013】
前記ワイヤレス電力伝送コイルは、さらに、前記第1および第2の導体パターンの中央または前記第1および第2の導体パターンの外縁部、および前記プリント基板の外縁部に、コイル端子とそれに伴うスルーホールを含むことができる。
【0014】
前記ワイヤレス電力伝送コイルは、前記第1および第2の導体パターンを有する2nの層を有する多層コイルスタックも有することができ、ここで、nは正の整数である。第1の構成では、n=1であり、前記多層コイルスタックは、順電流経路導体を提供する第1の導体パターンと、リターン電流経路導体を提供する第2の導体パターンと、前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとの間に設けられた差動モード誘電体とを有する。
【0015】
他の実施形態では、n=2であり、前記多層コイルスタックは、それぞれ、順電流経路導体を提供する第1の導体パターンと、リターン電流経路導体を提供する第2の導体パターンと、順電流経路導体を提供する第3の導体パターンと、リターン電流経路導体を提供する第4の導体パターンと、前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとの間に設けられた第1の差動モード誘電体と、前記第3の導体パターンと前記第4の導体パターンとの間に設けられた第2の差動モード誘電体と、前記第2の導体パターンと前記第3の導体パターンとの間に設けられた第3の差動モード誘電体とを有する。
【0016】
代替実施形態では、前記多層コイルスタックは、それぞれ、順電流経路導体を提供する第1の導体パターンと、リターン電流経路導体を提供する第2の導体パターンと、順電流経路導体を提供する第3の導体パターンと、リターン電流経路導体を提供する第3の導体パターンと、順電流経路導体を提供する第4の導体パターンと、前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとの間に設けられた第1の差動モード誘電体と、前記第3の導体パターンと前記第4の導体パターンとの間に設けられた第2の差動モード誘電体と、前記第2の導体パターンと前記第3の導体パターンとの間に設けられたコモンモード誘電体とを有する。
【0017】
さらに別の実施形態では、前記多層コイルスタックは、それぞれ、順電流経路導体を提供する第1の導体パターンと、順電流経路導体を提供する第2の導体パターンと、リターン電流経路導体を提供する第3の導体パターンと、リターン電流経路導体を提供する第4の導体パターンと、前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとの間に設けられた第1のコモンモード誘電体と、前記第3の導体パターンと前記第4の導体パターンとの間に設けられた第2のコモンモード誘電体と、前記第2の導体パターンと前記第3の導体パターンとの間に設けられた差動モード誘電体とを有する。
【0018】
前記多層コイルスタックは、さらに、各プリント基板の縁部に沿ってオフセットされる独立したタブとして実装された端子を含むことができ、これにより各プリント基板の各導体パターンの独立した端子ペアへの接続が容易になる。また、ビアまたは端子は、各基板の中央を通じて各導体パターンを接続するよう設けることができる。第2の端子も、各プリント基板の中央に沿ってオフセットされる独立したタブとして実装でき、これにより各プリント基板の各導体パターンの独立した端子ペアへの接続が容易になる。
【0019】
他の実施形態において、前記端子は、各プリント基板の中央に沿ってオフセットされる独立したタブとして実装でき、これにより各プリント基板の各導体パターンの独立した端子ペアへの接続が容易になる。そのような実施形態において、ビアまたは端子は、各前記回路基板の外縁部を通じて各導体パターンを接続することができる。
【0020】
前記差動モード誘電体は、導体間の最大電圧差に耐えられるはずである。実施形態例において、前記コモンモード誘電体全体にわたる電圧はゼロに近いため、前記コモンモード誘電体は、製造の許容範囲まで最低限に抑えられる。
【0021】
前記ワイヤレス電力伝送コイルは、ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリに実装され、そのワイヤレス電力伝送コイルアセンブリは、さらに、筐体と、フェライト層と、渦電流シールドとを含む。実施形態例において、前記ワイヤレス電力伝送コイルと、フェライト層と、渦電流シールドとは、前記筐体内に平行に設けられる。
【0022】
前記フェライト層は、一定の厚さのフェライトバー、タイル、またはプレートに接合されたフェライト裏打ち層を有することにより、前記フェライトバーを単一アセンブリとして一体的に保持し、前記フェライトのタイル密度は、前記ワイヤレス電力伝送コイルの中央付近で連続的または略連続的であり、前記タイル密度は、前記ワイヤレス電力伝送コイルの外周に近づくとともに漸減する。あるいは、前記フェライト層は、フェライト粉末を結合剤と混合し射出成形によって成形された複合フェライト層を含む複合磁気構造を有することができ、前記複合フェライト層は、中央でより厚く、外周でより薄い。他方、前記渦電流シールドは、前記フェライト層で方向転換されなかった残留磁束を捉え散逸させるようなっている誘電体基板上に成膜された導電性シートまたは導電性フィルムを有することができる。前記アセンブリは、前記筐体と前記ワイヤレス電力伝送コイルとの間、前記ワイヤレス電力伝送コイルと前記フェライト層との間、および前記フェライト層と前記渦電流シールドとの間に設けられた機械的に適合性の高い非導電層を含むこともできる。これらの非導電層は、前記ワイヤレス電力伝送コイルおよび前記フェライト層用に、機械的な支持と、除熱と、物理的な離間とを提供するようなっている。
【0023】
実施形態例において、前記筐体は、さらに、電力制御、通信、および/またはセンサー電子機器を収容する閉鎖容積を含む。前記回路は、共振キャパシタと、電力制御回路と、通信回路と、物体検出機能を提供するようなっている回路とを含むことができる。前記共振キャパシタは、前記フェライト層と前記筐体との間に位置する追加層として実装された薄い多層の金属化した誘電体シートの形態にすることができる。あるいは、前記共振キャパシタは、前記フェライト層の場の強度が低い側に位置する薄い大面積の金属化した誘電体フィルムの形態にすることができる。
【0024】
さらに別の実施形態例において、前記ワイヤレス電力伝送コイルのうちの少なくとも2つは、巻線の電流容量を高めるためにスタックして並列に接続でき、または巻線のインダクタンスを高めるためにスタックして直列に接続できる。
【0025】
代替実施形態において、センサー開口部は、前記ワイヤレス電力伝送コイルの中央に位置し、センサー電子機器を含むとともに、前記ワイヤレス電力伝送コイルアセンブリの各側面への、若しくは各側面からのセンサーまたは通信信号の双方向通信を可能にする。前記センサー電子機器は、検出および通信用のライトパイプ、音響導波路、電磁波導波路、または誘電体導波路を含むことができる。また、前記電磁波導波路は、渦電流の発生を回避するようなっているハイパスまたはバンドパス周波数を選択可能な表面を有することができる。また、前記誘電体導波路は、渦電流の発生を回避するようなっている単線グーボー伝送線路として実装できる。
【0026】
さらに別の代替実施形態において、前記プリント基板は、動作周波数における前記第1の導体パターンの表皮深さの4倍の厚さを超えない厚さを有する、平坦なスパイラルが設けられた導電テープで置き換えることができ、その場合、共鳴誘導ワイヤレス電力動作周波数での表皮深さδは、
【0027】
【数3】
で与えられ、式中、σは導体抵抗(オーム×メートル)、ωは動作周波数(ラジアン/秒)、μは導体の透磁率である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A-C】
図1Aは、一実施形態例に係る中央給電両面プリント基板として実装された共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルの上面トレースパターンを示した図である。
図1Bは、
図1Aの共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルの底面パターンを前記上面から透かして見た図である。
図1Cは、
図1Aおよび1Bの上面および底面パターンを重ね合わせた図である。
【
図2A-C】
図2Aは、一実施形態例に係る外縁部で給電される両面プリント基板として実装された共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルの上面トレースパターンを示した図である。
図2Bは、
図2Aの共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルの底面パターンを前記上面から透かして見た図である。
図2Cは、
図2Aおよび2Bの上面および底面パターンを重ね合わせた図である。
【
図3A-3I】
図3A~3Hは、実施形態例に係る8層プリント基板として実装された外縁部終端多層多導体コイルとして実装された共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルの各層の個々の導体パターンを前記上面から透かして見た図である。
図3Iは、
図3A~3Hの長方形平面状コイルの前記複合8層スタックを、前記上面から前記重ね合わせた層を通して透かして見た図である。
【
図3J】
図3Jは、オフセットされためっきスルーホールを有する
図3A~3Hの長方形平面状コイルの前記複合8層スタックの一実施形態例を示した図である。
【
図4A-D】
図4Aは、2nの層を有する多層コイルスタックの例の断面図であり、この場合、n=1である。
図4Bは、代替順電流およびリターン電流経路導体を有する基本的な4層コイル(n=2)を示した図である。
図4Cは、差動モード誘電体および順電流経路を外層に、リターン電流経路を内層に有する基本的な4層コイル(n=2)を示した図である。
図4Dは、コモンモード誘電体を伴ったインターリーブされていない導電体を有する基本的な4層コイル(n=2)を示した図である。
【
図5A-C】
図5Aは、
図1~4に例示したタイプの複数の独立した複数タブ付き多層平面状平面で構築されたコイルスタックの斜視図であり、実施形態例では外縁終端部を有する。
図5Bは、
図1~4に例示したタイプの複数の独立した複数タブ付き多層平面状平面で構築されたコイルスタックの斜視図であり、実施形態例では中央で給電される終端部を有する。
図5Cは、
図1~4に例示したタイプの複数の独立した複数タブ付き多層平面状平面で構築されたコイルスタックの斜視図であり、実施形態例では中央で給電される終端部を有する。
【
図6A-C】
図6Aは、終端処理されていない2層並列コイルを示した図であり、平面状コイルを分散された集中定数素子で電気的に表している。
図6Bは、終端処理されていない4層インターリーブ並列コイルを示した図であり、平面状コイルを分散された集中定数素子で電気的に表している。
図6Cは、終端処理されていない4層インターリーブ並列コイルの代替構成を示した図であり、平面状コイルを分散された集中定数素子で電気的に表している。
【
図6D-F】
図6Dは、終端処理されていない4層非インターリーブ並列コイルを示した図であり、平面状コイルを分散された集中定数素子で電気的に表している。
図6Eは、終端処理された2層並列コイルを示した図であり、平面状コイルを分散された集中定数素子で電気的に表している。
図6Fは、終端処理された4層インターリーブ並列コイルを示した図であり、平面状コイルを分散された集中定数素子で電気的に表している。
【
図6G-H】
図6Gは、終端処理された4層インターリーブ並列コイルの代替構成を示した図であり、平面状コイルを分散された集中定数素子で電気的に表している。
図6Hは、終端処理された4層非インターリーブ並列コイルを示した図であり、平面状コイルを分散された集中定数素子で電気的に表している。
【
図6I-J】
図6Iは、終端処理されていない4層インターリーブ直列コイルを示した図であり、平面状コイルを分散された集中定数素子で電気的に表している。
図6Jは、終端処理された4層インターリーブ直列コイルを示した図であり、平面状コイルを分散された集中定数素子で電気的に表している。
【
図7】
図7は、一実施形態例に係る車両側の伝送コイルアセンブリの断面図である。
【
図8】
図8は、代替実施形態に係る車両側の伝送コイルアセンブリの断面図である。
【
図9】
図9は、一実施形態例に基づき、センサー開口部を追加で備えた車両側の伝送コイルアセンブリの断面図である。
【
図10】
図10は、代替実施形態に基づき、センサー開口部を追加で備えた車両側の伝送コイルアセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書で説明するワイヤレス電力伝送コイルアセンブリとそれに伴う方法は、本開示の一部を形成する添付の図面および例と併せて以下の詳細な説明を参照すると、より容易に理解されるであろう。この説明は本明細書に説明し示す具体的な製品、方法、条件、またはパラメータに限定されないこと、また本明細書で使用する用語は単に例をとって特定の実施形態を説明するためのものであり請求項の主題のいずれを限定することも目的としたものではないことを理解すべきである。同様に、考えられる機序または作用機序または改良の理由に関するいかなる説明も、単なる例示を意図したものであり、本明細書で説明する主題は、そのような示唆された機序または作用機序または改良の理由のいずれの正確さもしくは不正確さにも制約されるものではない。本書全体にわたり、前記説明では、方法、ならびにそのような方法を実施するシステムまたはソフトウェアの双方に言及することを理解すべきである。
【0030】
以下、
図1~10を参照して例示的な実施形態を詳しく説明する。この説明では、考えられる実施態様例の詳細な一例を提供しているが、これらの詳細事項は例示を目的としたものであり、進歩性のある主題の範囲を画定するものでは決してないことに注意すべきである。
【0031】
図1は、巻き数3と4分の1の、正方形の平坦な平面状スパイラルとして構成された、中央で給電される両面プリント基板共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルを含む非自己共振コイル構造を表したものである。実施形態の諸例において、このワイヤレス電力伝送コイルは、少なくとも2回巻きである。
図1Aは、4つの独立した導体から成る上面導体パターン100を示したものであるが、2若しくはそれ以上の独立した導体を使用することができる。
図1Bは、当該プリント基板を透かして見た底面導体パターン101を示したものである。前記底面導体パターン101は、前記上面導体パターンを垂直な中心線に沿って左から右に反転して90度時計回りに回転したものと同じである。前記導体パターン100、101は、反転させた同一のものである必要はないことが理解されるであろう。ただし、前記上面導体パターン100および底面導体パターン101は、各パターンにより生成される磁束を互いに強化して磁束生成を最大限に高めるよう、十分位置合わせすべきである。
図1Cは、上面および底面パターンを重ね合わせたもの102を示している。めっきスルーホール103(一般にビアとしても知られる)は、前記上面100および底部101のトレースパターンを電気接続できる。コイル端子とそれに伴うめっきスルーホール104は、当該コイル102の中央に示されている。基板外の構成要素、例えばコイル共振キャパシタ(コンデンサ)への接続は、複数の並列で独立した導体により行われ、これにより有益な複数の独立した平面状導体構造が延長される。自己共振コイルの場合、端子104は電源に直接接続され、非自己共振コイルにおいて端子は前記共振キャパシタに接続する。また、代替実施形態において、前記上面および底面の層100、101間の接続は、前記めっきスルーホール103の代わりに、電気的構造、例えばクランプ、ラグ、または端子として実装できる。
【0032】
図1Cに示したように、上面の導体は、可能な場合、それに対応した底面の導体の上方に直接配置され、そのような配置により均一な磁束伝送が可能になり、前記上面および底面の巻線が同じ磁束分布を捉える。その結果、2つの層および6と2分の1の合計巻き数を有する対称的で平坦なスパイラルインダクタ102が得られる。前記上面100および前記底面101の部分の電流は同じ方向に流れるため、前記上面および底面の層により生成される磁束は強化される。この例では、前記上面導体層の端子104に電流が供給されると、電流は、基板を上から見て時計回りの方向になる。前記底面導体層の端子104に供給される電流は、結果として反時計回りの電流になる。前記上面および底面のスパイラルを接続すると、巻き数が2倍になり、総インダクタンスが4倍に増加する。
【0033】
図2は、巻き数3と4分の1の、正方形の平坦な平面状スパイラルとして構成された、外縁部で給電される両面プリント基板共鳴誘導ワイヤレス電力伝送コイルを含む非自己共振コイル構造の例である。実施形態の諸例において、このワイヤレス電力伝送コイルは、少なくとも2回巻きである。
図2Aは、4つの独立した導体から成る上面導体パターン200を示したものであるが、2若しくはそれ以上の独立した導体を使用することができる。
図2Bは、当該プリント基板を透かして見た底面導体パターン201を示したものである。前記底面導体パターン201は、前記上面導体パターンを垂直な中心線に沿って左から右に反転して90度時計回りに回転したものと同じである。前記導体パターン200、201は、反転させた同一のものである必要はないことが理解されるであろう。
図2Cは、上面および底面パターンを重ね合わせたもの202を示している。めっきスルーホール103(一般にビアとしても知られる)は、前記上面200および底部201のトレースパターンを電気接続できる。コイル端子とそれに伴うめっきスルーホール103は、当該コイル202の外側のコーナーに示されている。基板外の構成要素、例えばコイル共振キャパシタへの接続は、複数の並列で独立した導体104により行われ、これにより有益な複数の独立した平面状導体構造が延長される。自己共振コイルの場合、端子104は電源に直接接続され、非自己共振コイルにおいて端子は前記共振キャパシタに接続する。また、前記上面および底面の層間の接続は、前記めっきスルーホール103の代わりに、電気的構造、例えばクランプ、ラグ、または端子として実装できる。
【0034】
図2Cに示したように、上面の導体200は、可能な場合、それに対応した底面の導体201の上方に直接配置され、そのような配置により均一な磁束伝送が可能になり、前記上面および底面の巻線が同じ磁束分布を捉える。その結果、2つの層および6と2分の1の合計巻き数を有する対称的で平坦なスパイラルインダクタ202が得られる。前記上面200および前記底面201の部分の電流は同じ方向に流れるため、前記上面および底面の層により生成される磁束は強化される。この例では、前記上面導体層の端子104に電流が供給されると、電流は、基板を上から見て反時計回りの方向になる。前記底面導体層の端子104に供給される電流は、結果として時計回りの電流になる。前記上面および底面のスパイラルを接続すると、巻き数が2倍になり、総インダクタンスが4倍に増加する。
【0035】
図1および2の実施形態において、単一の巻線導体を構成するよう並列に動作するトレースの数は、動作周波数、トレース材料の導電率、および動作電流により決定される。トレース幅が狭いと、トレース幅の寸法内における導体の渦電流が制限され、個々のトレースの断面全体にわたる均一な電流密度の維持も制限される。均一な磁場における導電素子の渦電流損失は、
【0036】
【数4】
である。式中、Bはピーク磁場、dは磁場ベクトルに垂直な導電素子の最小寸法、fは動作周波数(Hz)、ρは導電素子の抵抗、Pは単位体積あたりの電力散逸である。
【0037】
トレースの厚さはAC抵抗に寄与するため、動作周波数における表皮深さにより制約される。一般的な共鳴誘導ワイヤレス電力周波数での表皮深さδは、
【0038】
【数5】
で与えられ、式中、σは導体抵抗(オーム×メートル)、ωは動作周波数(ラジアン/秒)、μはトレース材料の透磁率である。
【0039】
並列トレースの数は、動作電流、ならびに指定されたトレース断面積および環境条件に関するトレースの電流容量により決定される。
図1および2は、4つの並列導体を使った実施形態を示しているが、いかなる数を使用してもよい。巻線全体内の隣接しあうトレース間の分離距離は小さくてよく、同じ巻線全体内においてトレースとそれに隣接するトレース間の電圧はゼロに近いため、プリント基板の製造設計ルールだけに制限される。導体全体間の巻線間の間隔は、隣接しあう巻線間に十分な電圧絶縁性を提供する上で十分なものでなければならない。巻線間の電圧は、巻線の直径同士の比に比例する。プリント基板の誘電層の厚さは、絶縁破壊を防ぐ上で十分でなければならない。
【0040】
前記上面導体パターン200のより長い外側の導体は、前記底面導体パターン201のより短い内側の導体に接続される。このように導体を内側から外側に切り替えることにより、導体の長さおよびインダクタンスが均一化される。長さとインダクタンスが均一化されることにより、抵抗とリアクタンスが均一化され、導体間の電流分布が均一化される。上面および底側の導体は重ね合わされる。磁束は、導体間の間隙を貫流する。実施形態の例では、すべての導体トレースの長さが等しい。
【0041】
後述するように、
図1および2に示した2層構造は、2n層に拡張でき、ここで、nは任意の正の整数である。その2nコイル構造は、自己共振周波数が
【0042】
【数6】
となるよう、コイル層間の容量を設計することにより自己共振するようにできる。式中、Lは等価コイルのインダクタンス、Cはコイル構造の等価容量である。自己共振コイル構造の場合、コイル端子およびめっきスルーホール104は電源に直接接続される。
【0043】
図3は、多層多導体ペアの縁部終端コイルを表したものである。この実施形態例において、
図3は、それぞれ約3と4分の1~約3と2分の1巻きの個々のコイルを8層スタック(積層)したものを示している。導体パターン300は上面層(層1)、導体パターン301は層2、導体パターン302は層3、導体パターン303は層4、導体パターン304は層5、導体パターン305は層6、導体パターン306は層7、導体パターン307は底面層(層8)である。導体ペア300および301、302および303、304および305、306および307は、
図2に示したものと同じ基準に従う。時計回りの電流構成用に、
図3A、3C、3E、および3Gのコイル端子104は、入力信号を受信し、
図3B、3D、3F、および3Hのコイル端子104は、出力信号を提供する。めっきスルーホール103は、ブラインドビアおよび/またはベリードビアを有して、コイル構成に応じて一定の層を接続するとともに他の層を単離することができる。前記めっきスルーホール103は、すべてが直接互いの上方に位置する必要はないことが理解されるであろう。個々の接続ペアは、独立しためっきスルーホール103パターンとオフセットすることができる。オフセットされためっきスルーホール103を示す一実施形態例を、
図3Jに示す。
【0044】
図3Iは、前記複合8層スタックのプリント基板または積層アセンブリを上面から透かして見たものである。導体パターン308は、パターン300~307の重ね合わせである。この実施形態において、めっきスルーホール103は層間で電流を通過させる。コイル端子104は、すべて当該コイルアセンブリの外縁部にある。代替実施形態では、前記コイル構造の中央に開口部が設けられて、導電クランプ機構により、電流が層ペア間を通過できるようにする。
【0045】
当業者であれば、
図3の前記コイルスタックは、プリント基板(PCB)として実装可能な多層積層されたアセンブリに内設できることが理解されるであろう。
【0046】
図4は、2nの層を有する多層コイルスタックの4つの例の断面図であり、ここで、「n」は任意の正の整数である。
図1、2および3に示した導体パターンは、この
図4に示した断面に適用することができる。
【0047】
図4Aは、基本的な2層の場合を示しており(n=1)、この場合、400は順電流経路導体、401はリターン電流経路導体、および402は差動モード誘電体である。
【0048】
図4Bは、前記基本的な2層の場合を示しており(n=2)、この場合も、400は順電流経路導体、401はリターン電流経路導体、および402は差動モード誘電体である。この
図4Bの実施形態は、本質的に、
図4Aに示した2層パネルを2つスタックしたもので、その間に付加的な差動モード誘電層402がある。この実施態様は、交流の順電流およびリターン電流経路導体を含む。
図4Bを6層若しくはそれ以上(n=3+)に拡張するため、差動モード誘電体402と、順電流経路導体400と、差動モード誘電体402と、リターン電流経路導体401とを含むパターン404が繰り返される。
【0049】
図4Cは、基本的な4層の場合を示しており(n=2)、この場合も、400は順電流経路導体、401はリターン電流経路導体、402は差動モード誘電体、そして403はコモンモード誘電層である。この構成は
図4Bと同様であるが、順電流が前記上面および底面の層400に流れ、リターン電流が前記内層401に流れるよう、底部の2層が逆転している点で異なる。この結果、前記リターン電流経路導体401が互いに電気的に並列になるため、コモンモード誘電体403が設けられる。
図4Cを6層若しくはそれ以上(n=3+)に拡張するため、コモンモード誘電体403と、順電流経路導体400(n=奇数の場合)またはリターン電流経路導体401(n=偶数の場合)のどちらか一方と、差動モード誘電体402と、およびリターン電流経路導体401(n=奇数の場合)または順電流経路導体400(n=偶数の場合)のどちらか一方とを含むパターン405が繰り返される。
【0050】
図4Dは、前記基本的な4層の場合を示しており(n=2)、この場合も、400は順電流経路導体、401はリターン電流経路導体、402は差動モード誘電体、そして403はコモンモード誘電層である。この構成は
図4Aと同様であるが、前記上面および底面の層が、それぞれ順電流および逆電流を流すため平行に付加された追加層を有する点で異なる。この結果、前記上面の2つの導体400と前記底面の2つの導体401との間にコモンモード誘電体403、およびこの4層スタック中央に1つの差動モード誘電体402が設けられる。
図4Dを6層若しくはそれ以上(n=3+)に拡張するため、上面では、コモンモード誘電体403と、順電流経路導体400とを含むパターン406が繰り返される。また、底面では、コモンモード誘電体403と、逆電流経路導体401とを含むパターン407が繰り返される。
【0051】
図4A~4Dの前記コイル構成を使うと、より多くのコイル層を伴う他の実施形態を作製できることが理解されるであろう。例えば、6つの差動ペアのコイルアセンブリを、
図4B、4C,および4Dに示した4層スタックの複数のインスタンスおよび組合せとして実装し、24層コイル設計を提供することができる。
【0052】
図5は、
図1~4に示した複数の独立した多層コイル実施態様で構築できるコイルスタックの斜視図である。
【0053】
図5Aは、
図1~4に示した複数の独立した多層コイル実施態様で構築できる縁部終端コイルスタックを物理的に表したものである。
図5Aの実施形態例では、
図3の前記導体パターンを実装した4つの独立な平面状コイルが提供される。アイテム500は、n層の導体パターン300および301を含む平面状コイルであり、ここで、nは正の整数である。アイテム501は、n層の導体パターン302および303を含む平面状コイルである。アイテム502は、n層の導体パターン304および305を含む平面状コイルである。アイテム503は、n層の導体パターン306および307を含む平面状コイルである。コイル端子504は、平面状コイル500~503の独立した「タブ」として実装でき、図示したように前記縁部に沿ってオフセットすることで、独立した端子ペアへの接続を容易にする。信号は、
図1~4で例示した実施形態のように、前記基板をその中央を通じて接続するビアまたは端子を使って層間で送信できる。
図5Aの実施形態では、前記縁部から内側へスパイラルする縁部パターンが提供され、前記基板は、それら各基板の中央を通じて前記基板を接続するビアまたは端子(図示せず)を通じて信号を送信する。
【0054】
図5Bは、
図1~4に示した複数の独立した多層コイル実施態様で構築できる中央給電コイルスタックを物理的に表したものである。1-4.
図5Bの実施形態例では、
図3の前記導体パターンを実装した4つの独立な平面状コイルが提供される。アイテム500は、n層の導体パターン300および301を含む平面状コイルであり、ここで、nは正の整数である。アイテム501は、n層の導体パターン302および303を含む平面状コイルである。アイテム502は、n層の導体パターン304および305を含む平面状コイルである。アイテム503は、n層の導体パターン306および307を含む平面状コイルである。コイル端子504は、平面状コイル500~503の独立した「タブ」として実装でき、図示したように前記中央コアに沿ってオフセットすることで、独立した端子ペアへの接続を容易にする。信号は、
図1~4で例示した実施形態のように、前記基板をその中央を通じて接続するビアまたは端子を使って層間で送信できる。
図5Bの実施形態では、前記中央から外側へスパイラルする中央給電パターンが提供され、前記基板は、それら各基板の外側のコーナーを通じて前記基板を接続するビアまたは端子(図示せず)を通じて信号を送信する。
【0055】
図5Cは、縁部終端部および中央終端部の双方を有するコイルスタックを物理的に表したものである。各コイルスタックは、
図1~4に示したように、複数の独立した多層コイル実施態様で構築できる。
図5Cの実施形態例では、
図3の前記導体パターンを実装した4つの独立な平面状コイルが提供される。アイテム500は、n層の導体パターン300および301を含む平面状コイルであり、ここで、nは正の整数である。アイテム501は、n層の導体パターン302および303を含む平面状コイルである。アイテム502は、n層の導体パターン304および305を含む平面状コイルである。アイテム503は、n層の導体パターン306および307を含む平面状コイルである。コイル端子504は、平面状コイル500~503の独立した「タブ」として実装でき、図示したように前記縁部に沿って、ならびに前記中央コアに沿ってオフセットすることで、独立した端子ペアへの接続を容易にする。信号は、
図1~4で例示した実施形態のように、前記基板をその中央を通じて接続するビアまたは端子を使って層間で送信できる。
図5Cの実施形態では、縁部端子および中央端子の双方を有することにより、縁部給電または中央給電コイルスタックのどちらか一方になるよう前記コイルスタックを構成することができる。
【0056】
図5に例示したように複数の独立した多層コイルスタックを利用すると、コイル導体層の総数が大きい場合、製造において費用対効果が得られる。16~24層のプリント基板を1枚製造するよりも、例えば、4~6個の4層コイルスタックを1つのアセンブリへと一体化することができる。付加的な実施形態には「m」個のコイルスタックを含めることができ、ここで、「m」は1より大きい任意の正の整数である(例えば、2つのタブを伴う2つのコイルスタックまたは10のタブを伴う10のコイルスタック)。
【0057】
図6は、
図4に示した前記多層平面状コイルスタックの電気的形態である。
図6A、6B、6C、6D、および6Iは、終端処理されておらず、したがって層間に直接的な電気接続を有さず、一方、
図6E、6F、6G、6H、および6Jは、終端処理されており、構成に応じて層間に直列接続および/または並列接続を有する。
【0058】
図6Aは、
図4Aに示した断面を伴う2層コイルを分布定数素子で表したものである。順電流経路誘導素子600およびリターン電流経路誘導素子601は、前記順電流経路導体400およびリターン経路導体401に対応する。差動モード誘電容量素子602は、前記差動モード誘電体402に対応する。前記コイルの電気端子は603で示す。
【0059】
図6Bは、
図4Bに示した断面を伴う4層コイルシナリオを分布定数素子で表したものである。順電流経路誘導素子600、リターン電流経路誘導素子601、および差動モード誘電容量素子602は、それぞれ400、401、および402に対応する。前記コイルの電気端子は603で示す。
【0060】
図6Cは、
図4Cに示した断面を伴う4層コイルシナリオを分布定数素子で表したものである。順電流経路誘導素子600、リターン電流経路誘導素子601、および差動モード誘電容量素子602は、それぞれ400、401、および402に対応する。前記コイルの電気端子は603で示す。この構成は
図6Bと同様であるが、順電流が前記上面および底面の層600に流れ、リターン電流が前記内層601に流れるよう、底部の2層が逆転している点で異なる。この結果、コモンモード誘電容量素子604は、前記コモンモード誘電体403に対応する。
【0061】
図6Dは、
図4Dに示した断面を伴う4層コイルシナリオを分布定数素子で表したものである。この構成は
図6Aと同様であるが、前記上面および底面の層が、それぞれ順電流および逆電流を流すため平行に付加された追加層を有する点で異なる。順電流経路誘導素子600、リターン電流経路誘導素子601、および差動モード誘電容量素子602は、それぞれ400、401、および402に対応する。前記コイルの電気端子は603で示す。前記コモンモード誘電容量素子は604で示す。
【0062】
図6E、6F、6G、および6Hは、それぞれ
図6A、6B、6C、および6Dと同一であるが、平面状コイル層が、順電流経路およびリターン電流経路誘導素子の直列接続605で相互接続されている点で異なる。任意選択的に、
図6Fおよび6Gの中間2層を、破線のコネクタ606で示すように接続することもできる。電気的に、接続部606は不要だが、製造上の利点をもたらす。
【0063】
図6Iは、完全に直列共振で端子が2つしかない4層インターリーブコイル構造を分布定数素子で表したものである。この実施形態は、誘導および容量素子が直列LC共振を生じるため、平面状コイル層間にめっきスルーホールを必要としない。
【0064】
図6Jは、完全に並列共振で端子が2つしかない4層インターリーブコイル構造を分布定数素子で表したものである。この実施形態では、前記誘導素子を層1から層2へ、層3へ、そして層4へと直列に接続するめっきスルーホールを実装していない。この構造の結果、前記直列誘導素子および前記コイル巻線間の並列容量から並列共振が生じる。
【0065】
図7は、一実施形態例に係る車両側の伝送コイルアセンブリ700の断面を表したものである。この伝送コイルアセンブリ700は、コイルアセンブリカバー701およびコイルアセンブリ筐体702を含む環境的にシールされた筐体内に収容される。
図1A~1Cの前記コイル導体を含むプリント基板は、703で示す。コイル導体703の直接上方には、フェライトバーまたはタイルを単一アセンブリとして一体的に保持するフェライトに接合されたフェライト裏打ち層704、非導電接着シート、テープ、フィルム、または布がある。磁束密度は、当該コイルアセンブリの中央で最強になる。フェライト層の空間密度およびフェライトの厚さは、飽和を防ぐうえで十分なものでなければならない。磁束強度は前記コイル外周へ向かって減少するため、フェライト層の空間密度および/または厚さを薄くしながら飽和を回避できる。フェライト層の薄層化は、伝送コイルの重量とコストを軽減する手段として望ましい。一実施形態例において、フェライト層705は、一定の厚さを有するフェライトバーまたはプレートのアレイとして実装される。前記アレイのタイルは、前記コイルの中央で継続的または略継続的である。タイルの密度は、外周に近づくとともに漸減される。このフェライト層のタイルは、必要に応じて間隙を有することにより、コイル端子導体その他の突起または貫通を必要に応じて可能にする。
【0066】
一実施形態例において、前記フェライトバータイル705およびフェライト裏打ち層704は、フェライト粉末を結合剤、例えば熱可塑性物質または樹脂、および可能性として追加物質、例えば熱伝導性を改善する導熱性の電気絶縁粉末と混合したものを含む単一複合磁気構造で置き換えられ、その単一複合磁気構造は、最終形態または略最終形態へと射出成形または成形される。磁束は、前記伝送コイル703の中央で最も強くなり、外周へ向かって減少する。これは、前記複合フェライト層705を、磁束が最も強くなる中央ではより厚くすることでフェライト材料の飽和を回避し、外周ではより薄くすることで重量と材料コストを削減できることを意味する。材料組成を空間的に変化させると、位置の関数として熱および磁気特性をカスタマイズできる。冷却液用の流路は、必要な場所に必要に応じて含めることができる。
【0067】
渦電流シールド706は、前記フェライト層705で方向転換されなかった残留磁束を捉え散逸させる導電性のシートまたは層として実装される。渦電流シールド706は、当該伝送コイルアセンブリ700に構造的強度をもたらす金属製プレートであってよい。この用途には、比透磁率が1に近い非鉄金属が、前記フェライト層705の磁束操作の撹乱を防ぐうえで好適である。あるいは、前記渦電流シールド706は、誘電体基板上に成膜した導電フィルムであってよい。また、前記渦電流シールド706は、前記渦電流シールド706を前記筐体702内面に合着し、または前記筐体をアルミニウムで作製することにより、前記コイルアセンブリ筐体内に一体化できる。
【0068】
層707は、機械的に適合性の高い非導電層であり、前記導体プリント基板703および前記フェライト磁束操作層705用に、熱伝導性および物理的な離間により機械的支持、除熱をもたらす。前記フェライト磁束操作層705は、前記導体プリント基板703または前記渦電流シールド706に接触または略接触してはならず、これは、前者については過度の近接効果による抵抗損失を防ぐためで、後者については過度の渦電流損失を防ぐためである。前記離間層707は、発熱する回路と除熱面間の間隙充填剤として使用される従来の弾性圧縮パッドで作製できる。あるいは、離間層707は、熱伝導性の液体、例えば鉱物油とともに注入されたオープンセル(連通気泡)発泡材として実装できる。前記離間層707に必要に応じて穴またはスロットを設けると、冷却液流が改善される。前記導体プリント基板703には、導体の連続性を保つため、導体トレース間または巻線間にスロットが設けられる。前記コイルアセンブリ筐体701は、他のシステム構成要素、例えば共振キャパシタ、整流器、整流後リップルフィルター構成要素、制御部、通信部、異物および生物検出回路、およびインターフェース電子機器を収容する別個の閉鎖容積708を含むこともできる。
【0069】
図7において、前記プリント基板703は、上面および底面の両面に導電トレースを備えているが、中間層は有していない。複数のプリント基板または多層プリント基板は、並列に接続された巻線と併用して電流容量を高め、または直列に接続された巻線と併用してインダクタンスを高めることができる。
【0070】
図8は、代替実施形態に係る車両側の伝送コイルアセンブリ800の断面を表したものである。付加的なプリント基板または層を必要に応じて含めると、伝送コイルの位置合わせ、近距離無線通信、異物・生物検出、または電場のファラデーシールド機能を実施できる。共振キャパシタは、表面実装キャパシタのアレイ、容量の増加を可能にする複数のキャパシタ、および定格電圧を含むプリント基板として実装できる。あるいは、前記共振キャパシタは前記フェライト層705と前記コイルアセンブリ筐体702間に位置する追加層として実装された薄い多層の金属化した誘電体シートとして物理的に実現できる。
図8では、物体検出PCB 809と、フェライト絶縁層810と、通信PCB 811とが、前記導体プリント基板703と前記コイルアセンブリカバー702との間に示されている。前記コイルアセンブリ筐体702は、他のシステム構成要素、例えば共振キャパシタ、整流器、整流後リップルフィルター構成要素、制御部、通信部、異物および生物検出回路、およびインターフェース電子機器を収容する別個の閉鎖容積708を含むことができる。さらに別の実施形態において、共振キャパシタは、前記伝送コイルアセンブリ800内で前記フェライト層705の場の強度が低い側に位置する薄い大面積の金属化した誘電体フィルムとして実現できる。
【0071】
一代替実施形態では、導電テープまたはストリップ(帯状体)の平坦なスパイラルで、前記プリント基板703を置き換える。前記テープまたはストリップは、前記導体面を横切る渦電流を最小限に抑えるため、その幅の次元が入射磁束と平行になるよう配置される。厚さ次元での渦電流を最小化するため、前記導電テープまたはストリップの厚さは、動作周波数における前記トレース導体の表皮深さの4倍よりも厚くならないよう制限される。非導電性スペーサーにより、隣接しあうスパイラル巻線間の分離間隔を保つ。あるいは、除熱を妨げないよう、前記導電テープまたはストリップ導体は絶縁されない。テープまたはストリップの幅を広げると、導体の電流容量が増す。テープまたはストリップのスパイラルを垂直にスタックすると、プリント回路導体が並列に配線されている場合は電流容量を高めることができ、直列に配線されている場合はインダクタンスを高めることができる。
【0072】
当業者であれば、接地側の伝送コイル層を車両側のコイルと同一にすると、製造効率を改善できることが理解されるであろう。
図9は、センサー開口部900を加えた車両伝送コイルアセンブリの実施形態例である。センサー電子機器901は開口部導管902内を調べ、その開口部導管902は、センサー導管エンドキャップ903により終端する。
【0073】
市販の共鳴誘導ワイヤレス電源機器は、通常、電流の、および予測される法規制要件を満たす補助システムを必要とする。これらの補助システムは、コイル位置合わせエラー検出、通信、異物検出、および生物検出の機能を含み、これらは、すべて前記伝送コイル作動面の幾何学的中心に設置するのが最適である。ただし、前記作動面の中心は磁束振幅が高いため、配線および電子回路をその位置にすることはできない。
【0074】
図9は、これまでに
図7で示した伝送コイルアセンブリ700を示したもので、その中央にはセンサー開口部900が備えられている。前記伝送コイルアセンブリの厚さ寸法を貫通するこの開口部900は、この伝送コイルアセンブリの高磁束強度前面から、前記筐体容積708内部の低磁束強度領域への、前記センサーまたは通信信号の双方向通信を可能にする。前記筐体容積708内の前記センサー電子機器は、光学、光学画像、光学動画、超音波のほか、マイクロ波、ミリメートル波(ミリ波)、またはテラヘルツ波の電磁エネルギーを利用できる。902および903で示した構成要素は、それぞれ前記開口部導管および開口部エンドキャップである。前記開口部導管およびエンドキャップの内設は、センサーのモダリティに応じて異なる。光センサーおよび光通信の場合、前記導管は、非導電性の中空管、透明なライトパイプ、または空間的にコヒーレントまたは非コヒーレントな光ファイバーバンドルとすることができる。前記エンドキャップ903は、前記伝送コイルカバー702とともに対環境シール(environmental seal)を提供するが、光学レンズ、例えば広角または魚眼レンズを含むこともできる。前記導管902は、光学部品、例えばレンズも含むことができる。渦電流の発生を防ぐには、非導電材料が好ましい。超音波センサーまたは通信モダリティの場合、前記センサー導管は音響導波路である。前記エンドキャップ903は、上記のように対環境シール(environmental seal)を提供し、音響レンズまたはディフューザーを含むことができる。
【0075】
電磁センサーモダリティの場合、前記センサー導体は、電磁波導波路または伝送線路構造である。従来の金属製導波路または伝送線路構造、例えばストリップライン伝送線路は、強磁場で渦電流が生じるため適さない。そのような構造は、従来の導波路または伝送線路構造に存在する連続的な金属表面をハイパスまたはバンドパス周波数選択的な表面で置き換えることにより、適切なものにできる。あるいは、前記導管伝送線路は、前記フェライト層の低磁気強度側にランチャーを伴う、または連続的な金属表面に代えて周波数選択性で構成されたランチャーを伴うグーボー単線伝送線路として実装することができる。一実施形態例において、前記電磁波導波路は、比誘電率の高いコアが比誘電率の低い媒体に囲まれたものを含む従来の誘電体導波路として実装される。前記エンドキャップ903は、誘電体または人工誘電体レンズを含むことのできる対環境シールを提供する。前記巻線層703および小さいフェライトタイルサイズ用にフレキシブルプリント回路基板を使用し、または柔軟な若しくは非平面状の複合フェライト層705を使用すると、機械的な適合性のため、空気力学的または流体力学的な抗力軽減のため、あるいは車体または円筒形その他の非平面形状を有する物体、例えば自律型水中航走体、砲弾、または同様な物体上への配置用に、非平面状の表面、例えば円筒形の形状に合わせた前記伝送コイルアセンブリを作製できる。
【0076】
図10は、代替実施形態に係る、センサー開口部が加えられた車両側の伝送コイルアセンブリ800の断面を表したものである。
図8の実施形態のように、付加的なプリント基板または層を必要に応じて含めると、伝送コイルの位置合わせ、近距離無線通信、異物・生物検出、または電場のファラデーシールド機能を実施できる。
図10では、
図8の実施形態のように、物体検出PCB 809と、フェライト絶縁層810と、通信PCB 811とが、前記導体プリント基板703と前記コイルアセンブリカバー702との間に設けられている。
【0077】
以上、種々の実施態様について説明したが、これらは単なる例として示したものであり、限定的なものではないことを理解すべきである。例えば、上述したシステムおよび方法に伴う要素(素子)のいずれも、本明細書において上述した任意の望ましい機能を使用することができる。したがって、好適な実施態様の範囲および要旨は、上述した実施態様例のいずれにも限定されるものではない。
【外国語明細書】