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特開2022-115905腫瘍治療のためのエフリンB1阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115905
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】腫瘍治療のためのエフリンB1阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220802BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220802BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220802BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220802BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20220802BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D ZNA
A61P35/00
A61P35/04
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C07K16/18
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073187
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2019544662の分割
【原出願日】2018-02-23
(31)【優先権主張番号】62/462,825
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/548,264
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/616,376
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515223112
【氏名又は名称】サンフォード ヘルス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フェルメール,パオラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腫瘍を有する対象に腫瘍増殖または転移を制限するために、有効量を投与することを含む腫瘍治療方法、および転移抑制方法を提供する。
【解決手段】腫瘍を有する対象に、腫瘍増殖または転移を制限するためにエフリンB1阻害剤、もしくはその薬学的に許容される塩、および/または腫瘍エクソソーム放出の阻害剤もしくはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む腫瘍治療のための組成物および方法を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において腫瘍増殖または転移を制限する方法に用いるための組成物であって、
前記組成物はエフリンB1特異的抗体を含み、前記腫瘍は神経支配された固形腫瘍であり、かつ前記エフリンB1特異的抗体は前記腫瘍へ直接注射されるか腫瘍周辺へ投与される、組成物。
【請求項2】
前記方法が腫瘍神経支配を制限する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エフリンB1特異的抗体が前記エフリンB1の細胞外ドメイン内の1または複数のエピトープに結合する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記神経支配された固形腫瘍が、頭頸部腫瘍、乳腺腫瘍、肺腫瘍、肝腫瘍、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、脳腫瘍、黒色腫、膵腫瘍、骨腫瘍、または前立腺腫瘍からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記神経支配された固形腫瘍が高リスクヒトパピローマウイルス(HPV)陽性腫瘍である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記HPV陽性腫瘍が頭頸部腫瘍である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記頭頸部のヒトパピローマウイルス陽性腫瘍が扁平上皮癌を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記腫瘍が対照と比較して、低いレベルのPTPN13発現、低いタンパク質レベル、または低いタンパク質活性レベルを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
腫瘍を治療するための化合物を特定する方法であって、
(a)エフリンB1を構成的に発現する腫瘍細胞の第1の集団を1種または複数種の試験化合物と接触させること、および
(b)腫瘍細胞の前記第1の集団から放出されるエクソソームの神経突起伸長の促進における活性を、エフリンB1を構成的に発現する腫瘍細胞の対照集団から放出されるエクソソームの神経突起伸長の促進における活性と比較すること
を含み、
前記対照と比較して、エクソソームに促進される神経突起伸長を減少させる試験化合物が腫瘍を治療するための候補化合物である、
方法。
【請求項10】
腫瘍を治療するための化合物を特定するための方法であって、
(a)エフリンB1を構成的に発現する腫瘍細胞の第1の集団を1種または複数種の試験化合物と接触させること、および
(b)細胞の前記第1の集団からのエクソソーム放出を、エフリンB1を構成的に発現する腫瘍細胞の対照集団からのエクソソーム放出と比較すること
を含み、
前記対照と比較して、エクソソーム放出を減少させる試験化合物が腫瘍を治療するための候補化合物である、
方法。
【請求項11】
腫瘍細胞の前記第1の集団および腫瘍細胞の前記対照集団がヒトパピローマウイルス(HPV)に感染している、請求項9~10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2017年2月23日出願の米国仮特許出願第62/462825号、2017年8月21日出願の同第62/548264号、および2018年1月11日出願の同第62/616376号に対する優先権を主張し、各々を参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0002】
連邦資金提供記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金番号P20GM103548の下で、政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
神経支配された腫瘍は、神経支配されていない腫瘍よりも高悪性である。例えば、前立腺癌において、癌組織への神経線維の動員は、高い腫瘍増殖指数および再発と転移の高いリスクに関連している。前臨床での神経支配除去研究および遺伝子改変マウス癌モデルは、疾患進行における神経要素の機能的寄与を支持する。これらの研究は、神経系がバイスタンダーでなく、それよりも発癌および癌進行の活動的な当事者であることを強く示している。しかし、腫瘍がどのようにそれらの神経要素を得るかという機構理解が、依然として不明瞭である。腫瘍は、神経支配組織内で増殖することによって神経支配を獲得することができる。換言すれば、神経要素は微小環境内にすでに存在しており、腫瘍は、デフォルトでそれらを獲得する。しかし、同じ組織の一部の腫瘍が他よりもさらに神経支配されているという臨床所見は、それよりも、新血管新生およびリンパ脈管新生と類似する活性の腫瘍開始過程を示している。腫瘍が自身の神経支配(新神経発生と称される)を発生させるという可能性は、詳細にわたって調査されていない。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、腫瘍を有する対象に腫瘍増殖または転移を制限するために、以下の有効量を投与することを含む腫瘍治療方法を提供する。
(a)エフリンB1阻害剤、もしくはその薬学的に許容される塩;および/または
(b)腫瘍エクソソームの放出の阻害剤、もしくはその薬学的に許容される塩。
【0005】
一実施形態において、本方法は腫瘍の神経支配を制限する。別の実施形態において、本方法は、エフリンB1阻害剤の有効量を対象に投与することを含み、エフリンB1阻害剤は、エフリンB1特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、および/またはアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。特定の実施形態において、エフリンB1阻害剤は、エフリンB1特異的抗体を含む。別の実施形態において、エフリンB1特異的抗体は、エフリンB1の細胞外ドメイン内の1または複数のエピトープに結合する。一実施形態において、本方法は腫瘍エクソソーム放出の阻害剤の有効量を対象に投与することを含む。さらなる実施形態において、腫瘍エクソソーム放出の阻害剤はRab27a阻害剤および/またはRab27b阻害剤を含む。別の実施形態において、Rab27a阻害剤および/またはRab27b阻害剤は、Rab27aおよび/またはRab27b特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、および/またはアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。さらなる実施形態において、本方法は、E6とPTPN13との間の相互作用の阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む。一実施形態では、方法はエフリンB1リン酸化の阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む。種々のさらなる実施形態において、腫瘍は神経支配された固形腫瘍であり得、該腫瘍は、頭部腫瘍、頸部腫瘍、乳腺腫瘍、肺腫瘍、肝腫瘍、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、脳腫瘍、黒色腫、膵腫瘍、骨腫瘍、または前立腺腫瘍からなる群から選択されることができ、該腫瘍は、高リスクのヒトパピローマウイルス(HPV)陽性腫瘍であり得、HPV陽性腫瘍は、頭部腫瘍または頸部腫瘍であり得、頭部または頸部のヒトパピローマウイルス陽性腫瘍は、扁平上皮癌を含むことがあり、および/または、投与は腫瘍への局所送達を含み得る。一実施形態において、治療される腫瘍は、対照と比較して、PTPN13発現レベル、タンパク質レベル、またはタンパク質活性レベルが低い。
【0006】
別の態様において、腫瘍を治療するための化合物を特定する方法が提供され、該方法は
(a)腫瘍細胞の第1の集団を1種または複数種の試験化合物と接触させること、および
(b)腫瘍細胞の第1の集団から放出されるエクソソームの神経突起伸長の促進における活性を、腫瘍細胞の対照集団から放出されるエクソソームの神経突起伸長の促進における活性と比較すること
を含み、
対照と比較して、エクソソームに促進される神経突起伸長を減少させる試験化合物は腫瘍を治療するための候補化合物である。
【0007】
別の態様において、腫瘍を治療するための化合物を特定する方法が提供され、該方法は、
(a)腫瘍細胞の第1の集団を1種または複数種の試験化合物と接触させること、および
(b)腫瘍細胞の第1の集団からのエクソソーム放出を腫瘍細胞の対照集団からのエクソソーム放出と比較すること
を含み、
対照と比較して、エクソソーム放出を減少させる試験化合物は腫瘍を治療するための候補化合物である。
【0008】
これらの態様のいずれかの種々の実施形態において、腫瘍細胞の第1の集団および腫瘍細胞の対照集団は、エフリンB1を構成的に発現し、および/または腫瘍細胞の第1の集団および腫瘍細胞の対照集団はヒトパピローマウイルス(HPV)に感染し得る。
【0009】
さらなる態様において、以下を含む組成物が提供される。
(a)エフリンB1阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、ならびに
(b)Rab27aの阻害剤および/もしくはRab27bの阻害剤、またはその薬学的に許容される塩。
【0010】
一実施形態において、エフリンB1阻害剤は、エフリンB1特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、および/またはアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。特定の実施形態において、エフリンB1阻害剤は、エフリンB1特異的抗体を含む。別の実施形態において、エフリンB1特異的抗体は、エフリンB1の細胞外ドメイン内の1または複数のエピトープに結合する。さらなる実施形態において、Rab27a阻害剤および/またはRab27b阻害剤は、Rab27aおよび/またはRab27b特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、および/またはアンチセンスオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。別の実施形態において、組成物は、E6とPTPN13との間の相互作用の阻害剤、またはその薬学的に許容される塩をさらに含むことができる。一実施形態においては、E6とPTPN13との間の相互作用の阻害剤は、E6とPTPN13への結合を競合するペプチド、またはPTPN13とE6への結合を競合するペプチドを含む。さらなる実施形態において、組成物はエフリンB1リン酸化の阻害剤またはその薬学的に許容される塩をさらに含むことができる。一実施形態において、エフリンB1リン酸化の阻害剤は、ダサタニブ、またはその薬学的に許容される塩を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】患者データを示す。A)頭頚部扁平上皮癌(HNSCC):β-IIIチューブリン(スケールバー、50μm)、チロシン水酸化酵素(TH)、血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)および一過性受容体電位バニロイド1型(TRPV1)(スケールバー、20μm)についての神経の「支脈」および「束」の免疫組織化学(IHC)。エクソソーム走査電子顕微鏡写真(スケールバー、200nm)(B)、原子間力顕微鏡観察の振幅トレース(スケールバー、500nm)(C)およびナノ粒子トラッキング分析(D)。E)対照(Cntl)、患者(Pt)の血漿と組織(Tiss)エクソソーム(Exos)ウエスタンブロット。血漿エクソソーム刺激に続く神経突起伸長(F)、または組織エクソソーム刺激に続く神経突起伸長(G)。Nl1、Nl2、Nl3対照;Pt1、Pt2、Pt3、患者;TL(扁桃)。スチューデントt検定。、p<0.05;**、p<0.001。エラーバー、標準偏差。
図2】mEERLエクソソームおよび神経突起伸長を示す。A)mEERL腫瘍、チロシン水酸化酵素(TH)、血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)および一過性受容体電位バニロイド1型(TRPV1)のIHC。スケールバー、20μm。B)エクソソーム処理に続く神経突起伸長の定量化。統計解析:一元配置分散分析、テューキー検定による事後分析。***、p<0.05;ns、有意差なし。N=4反復実験/状態;実験は、2回繰り返した。C)エクソソーム刺激に続くβ-IIIチューブリン陽性免疫蛍光PC12細胞(さらに核をDaPiで染色)。D)ウエスタンブロット解析。全細胞溶解物(WCL);エクソソーム(Exo)。E)エクソソームのウエスタンブロット解析。エフリンB1-Ex、エフリンB1細胞外エピトープ抗体。エフリンB1-In、エフリンB1細胞内エピトープ抗体。エラーバー、標準偏差。
図3】ヒトパピローマウイルス(HPV)および神経突起伸長を示す。以下によるエクソソーム刺激に続く神経突起伸長:A)HPV陰性(-)または陽性(+)のヒト細胞;4細胞株をHPV-群と+群との間の相違についての事後テューキー検定と比較する一元配置分散分析による統計的分析。、p<0.001。B)HTE、ヒト扁桃上皮;HTE E6ΔE7、そのPDZBM(Δ)を欠失したHPV16E6およびE7を発現する細胞;HTE E6E7、HPV16 E6およびE7を発現する細胞。スチューデントのt検定による統計分析。**、p<0.05;ns、有意差なし。エラーバー、標準偏差。すべてのアッセイ:N=4反復実験/状態;実験は、2回繰り返した。
図4】in vivoで神経支配されているマウス腫瘍を示す。A)示した腫瘍についてのβ-IIIチューブリンおよびGAPDHのウエスタンブロット解析。B)Aにおけるβ-IIIチューブリンウエスタンブロットの濃度測定定量化。β-IIIチューブリンシグナルをGAPDHに対して正規化した。N=4腫瘍/状態を解析した。スチューデントのt検定による統計解析;**、p<0.05;、p<0.01;ns、有意差なし。エラーバー、標準偏差。
図5-1】エクソソーム、神経支配および増殖を示す。A)エクソソームのウエスタンブロット;N=4回繰り返し、同様の結果を得た。B)産生細胞数あたりの粒子;N=6回繰り返し、同様の結果を得た。C)CFDA-SE標識したエクソソームの相対蛍光単位。N=2試料/状態。D)エクソソーム刺激に続く神経突起伸長。N=4反復実験/状態;実験は、2回繰り返した。E)腫瘍増殖曲線;N=7マウス/状態。F)増殖アッセイ。N=3回繰り返し、同様の結果を得た。G)全腫瘍溶解物ウエスタンブロット。H)Gの濃度測定定量化。産生細胞数に対してエクソソームを正規化した。スチューデントのt検定による統計解析;ns=有意差なし;示したp値;エラーバー、SEM。
図5-2】エクソソーム、神経支配および増殖を示す。A)エクソソームのウエスタンブロット;N=4回繰り返し、同様の結果を得た。B)産生細胞数あたりの粒子;N=6回繰り返し、同様の結果を得た。C)CFDA-SE標識したエクソソームの相対蛍光単位。N=2試料/状態。D)エクソソーム刺激に続く神経突起伸長。N=4反復実験/状態;実験は、2回繰り返した。E)腫瘍増殖曲線;N=7マウス/状態。F)増殖アッセイ。N=3回繰り返し、同様の結果を得た。G)全腫瘍溶解物ウエスタンブロット。H)Gの濃度測定定量化。産生細胞数に対してエクソソームを正規化した。スチューデントのt検定による統計解析;ns=有意差なし;示したp値;エラーバー、SEM。
図6】PC12細胞は、CT26(結腸直腸癌細胞株)、B16(黒色腫癌細胞株)、または4T1(乳癌細胞株)からの条件培地とともに24時間処置し、次いで神経突起伸長を定量化した。組換えNGF(NGF)で処置したPC12細胞は陽性対照として役立ち、一方無処置PC12細胞(PC12)は陰性対照として役立った。
図7】(A)HPV陰性扁平上皮癌細胞株において過剰発現するエフリンB1の神経突起伸長に対する効果を示すグラフである。(B)SCC1細胞またはSCC1-エフリンB1細胞のいずれかを移植した免疫がないNOD SCIDマウスにおける腫瘍増殖速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で用いる場合、特に明記しない限り、用語「a」および「an」は、「1つ」、「少なくとも1つ」または「1または複数」を意味するとみなされる。文脈上別段の必要がない限り、本明細書で用いる単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。
【0013】
本出願で用いられるすべての科学的および技術的用語は、別段の定めがない限り、当技術分野で一般的に使用されている意味を有する。
【0014】
本明細書で用いる場合、「約」とは、記載された寸法または単位の±5%を意味する。
【0015】
文脈上明確に指示しない限り、本開示のいずれの態様のすべての実施形態は、組み合わせで用いることができる。
【0016】
第1の態様において、本開示は、腫瘍を治療する方法を提供し、腫瘍増殖または転移を制限するために
(a)エフリンB1阻害剤、および/または
(b)腫瘍エクソソーム放出の阻害剤
の有効量を、腫瘍を有する対象に投与することを含む。
【0017】
以下に続く実施例に示すように、本発明者らは、腫瘍由来エクソソームが腫瘍の新神経支配を引き起こし、さらに、エクソソーム内のエフリンB1が直接、または間接的にこの活性を調節することを発見した。したがって、エフリンB1、および/または腫瘍エクソソーム放出の他の阻害剤は、腫瘍増殖または転移を制限するのに有用である。
【0018】
本明細書で用いる場合、用語「腫瘍増殖を処置する」とは、(i)腫瘍サイズを制限すること、(ii)腫瘍サイズの増加速度を制限すること、(iii)腫瘍の神経支配を減少させること、(iv)腫瘍の神経支配の増加速度を制限すること、(v)腫瘍転移を制限すること、(vi)腫瘍転移の増加速度を制限すること、(vii)腫瘍に起因する副作用(すなわち、疼痛、疾病行動など)を制限すること、および/または(viii)腫瘍に起因する副作用の増加速度を制限することを意味する。
【0019】
投与される阻害剤の有効量は、腫瘍を治療する目標を達成し、およびあらゆる状況の観点(例えば、これに限定されないが、腫瘍の種類、対象の状態、対象が受けている他の治療処置(すなわち、化学療法、放射線療法、腫瘍摘出手術など)、使用している特定の阻害剤、および他のすべての要因)から当業者(主治医など)によって決定され得るいずれの量である。
【0020】
本明細書で用いる場合、用語「対象」または「患者」とは、治療が望まれるあらゆる対象、例えばヒト、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ニワトリ等を意味する。最も好ましくは、対象はヒトである。
【0021】
一実施形態において、方法は腫瘍の神経支配を制限するのに役立つ。本明細書で用いる場合、「腫瘍の神経支配」とは、腫瘍塊内に、その周辺および/またはその中に浸潤する神経線維と定義される。本明細書で用いる場合、「神経支配を制限する」とは、阻害剤による処置がない場合と比較して、新神経支配、または既存の神経支配におけるいずれの減少(すなわち、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、またはそれ以上の減少)を含むと定義される。
【0022】
一実施形態において、方法はエフリンB1の阻害剤を投与することを含む。エフリンB1の任意の適切な阻害剤を使用してもよい。種々の非限定的実施形態において、エフリンB1阻害剤は、エフリンB1特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはエフリンB1の低分子阻害剤を含み得るが、これに限定されるものではない。特定の実施形態において、阻害剤はエフリンB1特異的抗体を含む。一非限定的実施形態において、エフリンB1特異的抗体は、エフリンB1の細胞外ドメイン内の1または複数のエピトープに結合する。他の実施形態において、エフリンB1特異的抗体は、PDZ結合ドメインおよび/または細胞質チロシン(すなわち、細胞外ドメイン内に存在しないもの)に結合することができる。
【0023】
一実施形態において、エフリンB1特異的抗体は、以下の配列番号1または配列番号2として示す配列を有するエフリンB1タンパク質に結合する。
【0024】
マウスエフリンB1アミノ酸配列
細胞外ドメインを太文字/下線で示す;細胞質ドメインをイタリック体で示す;膜貫通ドメインを拡大/アウトラインフォントで示す。
【化1】
【0025】
ヒトエフリンB1アミノ酸配列
細胞外ドメインを太文字/下線で示す;細胞質ドメインをイタリック体で示す;膜貫通ドメインを拡大/アウトラインフォントで示す。
【化2】
【0026】
別の実施形態において、エフリンB1特異的抗体は、エフリンB1タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)内の1または複数のエピトープに結合し、ECD配列は、以下の配列番号3または配列番号4に示す配列を含む、またはからなる。
MARPGQRWLSKWLVAMVVLTLCRLATPLAKNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKLDIICPRAEAGRPYEYYKLYLVRPEQAAACSTVLDPNVLVTCNKPHQEIRFTIKFQEFSPNYMGLEFKKYHDYYITSTSNGSLEGLENREGGVCRTRTMKIVMKVGQDPNAVTPEQLTTSRPSKESDNTVKTATQAPGRGSQGDSDGKHETVNQEEKSGPGAGGGGSGDSDSFFNSK(配列番号3;マウスエフリンB1細胞外ドメイン);
MARPGQRWLGKWLVAMVVWALCRLATPLAKNLEPVSWSSLNPKFLSGKGLVIYPKIGDKLDIICPRAERPYEYYKLYLVRPEQAAACSTVLDPNVLVTCNRPEQEIRFTIKFQEFSPNYMGLEFKKHHDYYITSTSNGSLEGLENREGGVCRTRTMKIIMKVGQDPNAVTPEQLTTSRPSKEADNTVKMATQAPGSRGSLGDSDGKHETVNQEEKSGPGASGGSSGDPDGFFNSK(配列番号4;ヒトエフリンB1細胞外ドメイン)。
【0027】
別の実施形態において、エフリンB1特異的抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を有するエフリンB1タンパク質に結合するが、配列番号2のアミノ酸配列と比較して以下のアミノ酸変化の1または複数を有する:
27位PがRに
54位PがLに
62位IがTに
98位LがSに
111位TがIに
115位QがPに
119位PがTに
119位PがSに
137位TがAに
138位SがFに
151位GがSに
151位GがVに
153位CがSに
153位CがYに
155位TがPに
158位MがIに
158位MがVに
182位SがRに
【0028】
これらの位置の変化は、ヒトエフリンB1タンパク質(配列番号2)の変異体、例えば頭蓋前頭鼻骨症候群に関連する変異体に存在する。
【0029】
別の実施形態において、本開示の方法は、腫瘍エクソソーム放出の阻害剤の有効量を対象に投与することを含む。腫瘍エクソソーム放出の阻害剤は、単独で、またはエフリンB1阻害剤と組み合わせて用いることができる。腫瘍エクソソーム放出のあらゆる適切な阻害剤は、例えばRab27aおよび/またはRab27bの阻害剤を用いることができるが、これに限定されるものではない。Rab27aおよびRab27bは、エクソソームの放出に機能する低分子GTPアーゼRabファミリーのメンバーである。この実施形態において、Rab27aの阻害剤および/またはRab27bの阻害剤としては、Rab27aおよび/またはRab27b特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および/または低分子阻害剤が挙げられるがこれに限定されるものではない。ヒトおよびマウスのRab27aおよびRab27bのアミノ酸配列を以下に示す。
【0030】
ヒトRab27a:
MSDGDYDYLIKFLALGDSGVGKTSVLYQYTDGKFNSKFITTVGIDFREKRVVYRASGPDGATGRGQRIHLQLWDTAGQERFRSLTTAFFRDAMGFLLLFDLTNEQSFLNVRNWISQLQMHAYCENPDIVLCGNKSDLEDQRVVKEEEAIALAEKYGIPYFETSAANGTNISQAIEMLLDLIMKRMERCVDKSWIPEGVVRSNGHASTDQLSEEKEKGACGC(配列番号:5)
【0031】
マウスRab27a:
MSDGDYDYLIKFLALGDSGVGKTSVLYQYTDGKFNSKFITTVGIDFREKRVVYRANGPDGAVGRGQRIHLQLWDTAGQERFRSLTTAFFRDAMGFLLLFDLTNEQSFLNVRNWISQLQMHAYCENPDIVLCGNKSDLEDQRAVKEEEARELAEKYGIPYFETSAANGTNISHAIEMLLDLIMKRMERCVDKSWIPEGVVRSNGHTSADQLSEEKEKGLCGC(配列番号:6)
【0032】
ヒトRab27b:
MTDGDYDYLIKLLALGDSGVGKTTFLYRYTDNKFNPKFITTVGIDFREKRVVYNAQGPNGSSGKAFKVHLQLWDTAGQERFRSLTTAFFRDAMGFLLMFDLTSQQSFLNVRNWMSQLQANAYCENPDIVLIGNKADLPDQREVNERQARELADKYGIPYFETSAATGQNVEKAVETLLDLIMKRMEQCVEKTQIPDTVNGGNSGNLDGEKPPEKKCIC(配列番号:7)
【0033】
マウスRab27b:
MTDGDYDYLIKLLALGDSGVGKTTFLYRYTDNKFNPKFITTVGIDFREKRVVYDTQGADGASGKAFKVHLQLWDTAGQERFRSLTTAFFRDAMGFLLMFDLTSQQSFLNVRNWMSQLQANAYCENPDIVLIGNKADLPDQREVNERQARELAEKYGIPYFETSAATGQNVEKSVETLLDLIMKRMEKCVEKTQVPDTVNGGNSGKLDGEKPAEKKCAC(配列番号:8)
【0034】
本開示の方法を用いて、あらゆる適切な腫瘍の種類を治療することができる。一実施形態において、腫瘍はあらゆる神経支配された固形腫瘍であり得る。種々の非限定的実施形態において、該方法を用いて、頭部腫瘍、頸部腫瘍、乳腺腫瘍、肺腫瘍、肝腫瘍、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、黒色腫、脳腫瘍、または前立腺腫瘍を治療することができる。さらなる実施形態において、腫瘍は、ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性腫瘍であり得、例えば頭部または頸部のHPV+腫瘍が挙げられるがこれに限定されない。さらに非限定的実施形態において、頭部または頸部のHPV+腫瘍は、扁平上皮癌を含む。別の実施形態において、腫瘍は高リスクHPV、例えばHPV16、18、16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59または68に対して陽性である。高リスクHPV亜型はすべて、タンパク質チロシンホスファターゼ非受容体13型(PTPN13)などのPDZドメイン含有タンパク質に結合する、C末端PDZ結合モチーフ(PDZBM)を含有するE6タンパク質を有する。HPV16 E6腫瘍性タンパク質は、細胞ホスファターゼおよび腫瘍抑制因子(PTPN13)と相互作用し、この相互作用は、PTPN13の分解をもたらす。PTPN13は、さらにホスファターゼ基質であるエフリンB1と相互作用する。エフリンB1は、同族のEph受容体チロンシンキナーゼを結合して、活性化する1回膜貫通タンパク質リガンドである。加えて、エフリンB1自体は、リン酸化されて、それ自体の下流シグナル伝達イベントを開始する。HPV感染細胞において、PTPN13発現が損なわれ、したがって、エフリンB1リン酸化は持続し、悪性表現型および疾患進行の原因となる。したがって、さらなる実施形態において、方法は、E6とPTPN13(E6は、PTPN13のPDZBM#4で、PTPN13に結合する)との間の相互作用の阻害剤を対象に投与することをさらに含む。任意の適切な阻害剤を用いることができ、これに限定されないが、PTPN13への結合をE6と競合する、またはE6への結合をPTPN13と競合するペプチドが含まれる。別の実施形態において、方法は対象にエフリンB1リン酸化の阻害剤を投与することをさらに含み得る。任意の適切な阻害剤を用いることができ、Srcキナーゼ阻害剤に限定されないが、ダサタニブ(以下に示す化学構造)、またはその薬学的に許容される塩が含まれる。
【0035】
【化3】
【0036】
別の実施形態において、腫瘍は、低PTPN13発現レベル、または低タンパク質/タンパク質活性レベルを有し、そのような腫瘍では、PTPN13発現レベルまたはタンパク質レベル/活性がプロモーターメチル化、mRNA分解などに起因して低い。この実施形態において、PTPN13発現またはタンパク質レベル/活性が閾値レベル以下(例えば、PTPN13発現が正常レベルの対照)の腫瘍は本開示の方法で治療される。この実施形態において、エフリンB1リン酸化が持続し、本開示の方法は、そのような腫瘍を治療するのに有効である。PTPN13発現が低いまたは無い例示的な腫瘍の種類としては、特定の乳癌(例えば、三種陰性乳癌:Revillion F, Puech C, Rabenoelina F, Chalbos D, Peyrat JP, Freiss G. Int J Cancer. 2009 Feb 1;124(3):638-43;Vermeer PD, Bell M, Lee K, Vermeer DW, Wieking BG, Bilal E, Bhanot G, Drapkin RI, Ganesan S, Klingelhutz AJ, Hendriks WJ, Lee JH. PLoS One. 2012;7(1):e30447)が挙げられるが、これに限定されるものではない。PTPN13は結腸直腸癌、肺癌、乳癌、および胃癌において変異し得る(Science. 2004 May 21;304(5674):1164-6も参照されたい)。
【0037】
阻害剤(複数可)は、任意の適切な経路によって、これに限定されないが経口投与、局所投与、非経口投与、経鼻腔内投与、経肺投与、または経直腸投与で、従来の無毒な薬学的に許容される担体、アジュバントおよび賦形剤を含有する投与単位製剤で投与されることができる。一実施形態において、阻害剤(複数可)は、局所送達を介して、例えば、腫瘍中または腫瘍周辺に(すなわち、双方とも治療標的であるエクソソームを有する腫瘍に隣接して、腫瘍周囲の微小環境に接触して)直接注射によって投与される。
【0038】
阻害剤は、1種または複数種の無毒な薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/またはアジュバントと組み合わせて投与されてもよい。阻害剤(複数可)は、単独療法として投与されることができ、または他の治療法(すなわち、化学療法、放射線療法、腫瘍の外科的切除など)と組み合わせて投与されてもよい。
【0039】
別の態様において、本開示は、腫瘍を治療するための化合物を特定する方法を提供し、該方法は、
(a)腫瘍細胞の第1の集団を1種または複数種の試験化合物と接触させること、および
(b)腫瘍細胞の第1の集団から放出されるエクソソームの神経突起伸長の促進における活性を、腫瘍細胞の対照集団から放出されるエクソソームの神経突起伸長の促進における活性と比較すること
を含み、
対照と比較して、エクソソームに促進される神経突起伸長を減少させる試験化合物は腫瘍を治療するための候補化合物である。
【0040】
さらなる態様において、本開示は、腫瘍を治療するための化合物を特定する方法を提供し、該方法は、
(a)腫瘍細胞の第1の集団を1種または複数種の試験化合物と接触させること、および
(b)細胞の第1の集団からのエクソソーム放出を腫瘍細胞の対照集団からのエクソソーム放出と比較すること
を含み、
対照と比較して、エクソソーム放出を減少させる試験化合物は腫瘍を治療するための候補化合物である。
【0041】
本開示の方法は、腫瘍エクソソーム放出および/または腫瘍エクソソーム促進神経突起伸長を減少させる化合物を特定するのに役立ち、そのような化合物を用いて、本明細書で述べたように腫瘍を治療することができる。
【0042】
神経突起伸長を促進することにおいて腫瘍細胞の第1の集団からのエクソソーム放出を測定すること、および/または放出されたエクソソームの活性を測定することを当技術分野で標準の方法、例えば、これに限定されないが、以下の実施例に述べる方法によって行うことができる。化合物(複数可)が、試験化合物の非存在下で見られる上記の神経突起伸長を促進することにおいて、腫瘍細胞の第1の集団からのエクソソーム放出および/または放出されたエクソソームの活性の測定の減少を促進する限り、方法は、神経突起伸長を促進することにおいて、対照と比較して、腫瘍細胞の第1の集団からのエクソソーム放出の減少の特定量、および/または放出されたエクソソーム活性を測定することを必要としない。
【0043】
接触はいずれの適切な条件下で行われてもよく、当業者は、本明細書の教示を考慮して特定の実験設計の観点から適切な条件を決定することができる。接触はin vitroまたはin vivo(例えば、実験動物モデルにおいて)であり得る。特定の実施形態において、接触はin vitroで行われる。
【0044】
一実施形態において、腫瘍細胞の第1の集団および腫瘍細胞の対照集団は構成的にエフリンB1を表す。腫瘍細胞は、任意の適切な腫瘍の種類からでよい。一非限定的実施形態において、腫瘍細胞の第1の集団および腫瘍細胞の対照集団は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染している。
【0045】
本開示はさらに、以下を含む組成物を提供する:
(a)エフリンB1阻害剤、またはその薬学的に許容される塩;ならびに
(b)Rab27aの阻害剤および/もしくはRab27bの阻害剤、またはその薬学的に許容される塩。
【0046】
本開示の組成物は、例えば、本発明の方法において用いることができる。種々の非限定的実施形態において、エフリンB1阻害剤は、エフリンB1特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはエフリンB1の低分子阻害剤を含み得るが、これに限定されるものではない。特定の実施形態において、阻害剤はエフリンB1特異的抗体を含む。一非限定的実施形態において、エフリンB1特異的抗体は、エフリンB1の細胞外ドメイン内の1または複数のエピトープに結合する。他の実施形態において、エフリンB1特異抗体は、PDZ結合ドメインおよび/または細胞質チロシン(すなわち、細胞外ドメイン内に存在しないもの)に結合することができる。
【0047】
種々のさらなる非限定的実施形態において、Rab27aの阻害剤および/またはRab27bの阻害剤は、Rab27aおよび/またはRab27b特異的抗体、アプタマー、低分子干渉RNA、低分子内部セグメント化干渉RNA、低分子ヘアピン型RNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および/または低分子阻害剤を含むが、これに限定されるものではない。
【0048】
さらなる実施形態において、組成物は、E6とPTPN13の間の相互作用の阻害剤、またはその薬学的に許容される塩をさらに含むことができる。任意の適切な阻害剤を用いることができ、これに限定されないが、PTPN13への結合をE6と競合する、またはE6への結合をPTPN13と競合するペプチドが含まれる。別の実施形態において、組成物はエフリンB1リン酸化の阻害剤をさらに含むことができる。任意の適切な阻害剤を用いることができ、Srcキナーゼ阻害剤に限定されないが、ダサタニブ、またはその薬学的に許容される塩が含まれる。
【0049】
組成物は、使用目的に適当であると思われる任意のさらなる成分を含むことができる。種々の実施形態において、組成物は(a)凍結乾燥保護剤;(b)界面活性剤;(c)増量剤;(d)等張剤;(e)安定剤;(f)保存剤および/または(g)緩衝液をさらに含み
得る。一部の実施形態において、組成物中の緩衝液は、Tris緩衝液、ヒスチジン緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液または酢酸緩衝液である。組成物は、凍結乾燥保護剤、例えばショ糖、ソルビトールまたはトレハロースをさらに含んでもよい。特定の実施形態において、組成物は、保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、クロロヘキシジン、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、o-クレゾール、p-クレゾール、クロロクレゾール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、安息香酸、およびそれらの種々の混合物を含む。他の実施形態において、組成物は、グリシンなどの増量剤を含む。さらに他の実施形態において、組成物は界面活性剤、例えば、ポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-65、ポリソルベート-80、ポリソルベート-85、ポロクサマー-188、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリラウリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、またはそれらの組み合わせを含む。組成物は、等張剤、例えば、調製物をヒト血液と実質的に等張にする、または等浸透圧にする化合物をさらに含み得る。例示的な等張剤としては、スクロース、ソルビトール、グリシン、メチオニン、マンニトール、デキストロース、イノシトール、塩化ナトリウム、アルギニン、および塩酸アルギニンが挙げられる。他の実施形態において、医薬組成物は、さらに、安定剤、例えば、目的のタンパク質と組み合わせると、冷凍乾燥形態または液体形態で、目的のタンパク質の化学的および/または物理的不安定性を実質的に予防する、または減少させる分子を含む。例示的な安定剤としては、スクロース、ソルビトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニンおよび塩酸アルギニンが挙げられる。
【0050】
組成物は一般的に、医薬組成物として、例えば、上記で、従来の薬学的に許容される担体、ジュバント、および賦形剤を含有する投与単位製剤で開示されたものが調製される。
【0051】
実施例
安定してHPV16ウィルスの癌遺伝子、E6とE7、H-Rasとルシフェラーゼ(mEERL細胞)を発現するC57B1/6中咽頭上皮細胞からなる、ヒトパピローマウイルス誘発(HPV+)中咽頭扁平上皮癌(OPSCC)のマウスモデルを利用する[18~21]。HPV16 E6腫瘍性タンパク質は、細胞ホスファターゼおよび腫瘍抑制因子(PTPN13)と相互作用し、この相互作用は、PTPN13の分解をもたらす[19、20]。これは、PTPN13が多くの細胞タンパク質(例えば、エフリンB1、これもホスファターゼ基質である)と相互作用するので、関連している。エフリンB1は、Eph受容体チロシンキナーゼを結合し、活性化する1回膜貫通タンパク質リガンドである。ここでは、in vitroで、腫瘍放出エクソソームがエフリンB1をパッケージし、PC12細胞の神経突起伸長を刺激することを示す。エフリンB1発現または機能が損なわれると、この活性がかなり軽減する。さらに、ヒト扁平上皮癌細胞株、および頭頸部癌患者の血漿と腫瘍から精製されたエクソソームも、エクソソームカーゴとしてエフリンB1をパッケージし、神経突起伸長の活性を内部に有する。これらのin vitroでの発見と一致して、エフリンB1を過剰発現しているmEERL腫瘍は、エフリンB1機能または発現が損なわれている腫瘍よりもかなり神経支配されている。加えて、エクソソーム放出において遺伝子的に損なわれているmEERL腫瘍はin vivoで、低密度で神経支配されており、対照よりも増殖が遅い。まとめると、これらのデータは、腫瘍放出エクソソームが新神経発生の原因となり、エクソソーム エフリンB1はこの活性を増強することを示している。
【0052】
結果:
患者エクソソームは、神経突起伸長を誘発する。患者のHNSCCが神経支配されているかどうかを、β-IIIチューブリン(ニューロン特異的チューブリンイソ型)についてホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織を免疫組織化学的に(IHC)染色して試験した。β-IIIチューブリン陽性線維は、組織をくまなく巡っていることが見いだされており、これらの腫瘍が実際に神経支配されていることを示した(図1A、「神経の支脈」)。これらのβ-IIIチューブリン陽性神経の「支脈」は、神経周囲浸潤(PNI)と混同できない。PNIは、神経周囲空間に沿って神経に浸潤している腫瘍を指し、新神経発生は、腫瘍に浸潤している神経を指す。神経周囲鞘内のβ-IIIチューブリン陽性線維は、非常に組織化された様式で互いに密に詰まっている(図1A、「神経束」)。特定したβ-IIIチューブリン陽性神経線維は、その代わりに、神経周囲鞘がない個別の組織化されていない支脈として巡っている(図1A「神経の支脈」)。さらなるIHC染色により、HNSCCがチロシン水酸化酵素(交感神経マーカー)およびVIP(副交感神経マーカー)に対して陰性であるが、TRPV1(感覚神経マーカー)(図1A)に対して陽性であり、腫瘍の感覚性新神経支配を示していることを明らかにする。
【0053】
新神経発生へのエクソソームの寄与を試験する前に、我々の分画超遠心分離エクソソーム精製技術の確認を行った。ヒト血液試料のために、エクソソームを血漿から精製した。ヒト組織試料のために、エクソソームを48時間の培養後に収集した条件培地から同様に精製した。正常なドナー血漿から精製した我々のエクソソーム調製物のスキャニング電子顕微鏡分析により、エクソソームと形状およびサイズ(30~150nm)が一致する小胞を得た(図1B)。さらに、原子間力顕微鏡法により、65~110nmのサイズ(図1C)を確認し、エクソソーム計数およびサイズ分類のためのナノ粒子トラッキング分析も、サイズ分布がエクソソームと一致することを示した(図1D)。まとめると、これらのデータは、我々の精製方法によりサイズおよび形状がエクソソームと一致する小胞が得られることを示している。
【0054】
腫瘍放出エクソソームが新神経発生を誘発するという我々の仮説を試験するために、in vitroスクリーンとしてPC12細胞(ラット褐色細胞腫細胞株)を利用した。NGF(100ng/ml)で刺激すると、PC12細胞は神経様細胞に分化し、神経突起を伸長する。3人の頭頸部癌患者(患者試料Pt1、Pt2、Pt3)から、マッチした腫瘍組織とともに10mLの血液を採血した。3人の健康なボランティア(Nl1、Nl2、Nl3)から血液、ならびに成人扁桃組織(TL)を同様に採取した。大多数のHPV+ OPSCCが扁桃で生じるので、対照組織として扁桃を選択した。エクソソームを精製し、BCAタンパク質アッセイによって定量化し、次いでエクソソームマーカーCD9およびCD81についてウエスタンブロット解析で確認した(図1E)。エクソソームが神経突起伸長活性を内部に有するかどうかを試験するために、PC12細胞を3μgのエクソソームで処理し、48時間後、固定し、β-IIIチューブリンを免疫染色した。神経突起伸長は、CellInSight(商標)CX7 High Content Analysis Platformを使用して定量化し、次いで神経突起の数を比較した。患者Pt1から得たエクソソームは少なく、わずかに1反復実験の分析が可能であったが、一方、患者Pt2およびP3からの量は、技術的反復実験に十分な量であった。文献と一致して、非処理PC12細胞はβ-IIIチューブリン陽性神経突起をほとんど伸長しないが、NGFで刺激されたものは非常に強く伸長することがわかった。3人の患者すべてから(血漿および腫瘍の両方)のエクソソームは、PC12細胞の神経突起伸長をかなり刺激したが、一方正常な血漿および扁桃からのエクソソームは最小の神経突起伸長活性を有した(図1F、G)。これらのデータは、頭頸部癌患者からのエクソソームが健康対照者において存在しない神経突起伸長活性を内部に有することを示す。
【0055】
mEERLエクソソームは、神経突起伸長を誘発する。新神経発生のプロセスをモデル化するために、マウスの後肢にmEERL細胞を注射し、その後、終了時に腫瘍を収集し、固定、包埋し、β-IIIチューブリン、TH、VIPおよびTRPV1をIHC染色した。HNSCC患者と同様に、mEERL腫瘍は、本来感覚性であるβ-IIIチューブリン陽性神経の支脈(TRPV1陽性)を内部に有していた(図2A)。mEERL放出エクソソームが新神経発生の原因となるかどうかを試験するために、細胞をin vitroで培養し、エクソソームを条件培地から精製し、PC12細胞上で試験した。このプロセスにおけるエフリンB1の機能を試験するために、エフリンB1修飾mEERL細胞株を生成した。野生型エフリンB1の安定した過剰発現は、mEERL エフリンB1と呼ばれる。CRISPR/Cas9を利用して、エフリンB1の機能または発現が損なわれているmEERL細胞株を遺伝子操作した。エフリンB1欠失細胞は、mEERLエフリンB1 Null1またはNull2として表わされるが、細胞外欠失エフリンB1細胞はmEERLエフリンB1ΔECDとして表わされる。mEERL親細胞からのエクソソームは、PC12細胞の神経突起伸長をかなり誘発した。エフリンB1の過剰発現により、この活性を増加させた。興味深いことに、mEERLエフリンB1ΔECD、Null1およびNull2細胞からのエクソソームは、神経突起伸長を誘発する能力を保持している(図2B)。まとめると、これらのデータは、mEERL放出エクソソームが神経突起伸長を促進するが、エフリンB1はこの活性のために必要とされず、活性をかなり増強することを示している。
【0056】
エクソソームは、NGFなしで神経突起伸長を誘発する。mEERL細胞がNGFを生成することができるので、NGFについて、mEERL親細胞およびエフリンB1細胞からの全細胞溶解物をウエスタンブロットで解析し、エクソソームを精製した。mEERL親細胞およびエフリンB1過剰発現細胞がNGF(全細胞溶解物(WCL)に存在する)を生成するが、CD9+エクソソーム内にパッケージされていないことを示す(図2D)ことを確認した。これらのデータは、NGFがエクソソーム媒介神経突起伸長活性のために必要とされないことを示している。mEERLエフリンB1細胞から精製されたエクソソームがPC12細胞の神経突起伸長を増強することを考慮に入れ、それがエクソソームカーゴとしてパッケージされたかどうかを試験した。エクソソームのウエスタンブロット解析は、エフリンB1がエクソソーム内で実際にパッケージされていることを示した(図2E)。さらに、エフリンB1の細胞外ドメインはmEERLエフリンB1ΔECDエクソソームに存在しなく、細胞内ドメインはカーゴのままである。重要なことに、エフリンB1は患者エクソソームにも見出された(図1E)。ヒトエクソソームを確認したように、mEERL細胞から精製したエクソソームを同様に確認し、それらが同様にエクソソームのサイズおよび形状と一致していることを見いだした(データ不図示)。
【0057】
エクソソーム精製から他の小胞および壊死細胞片を除去するために、より厳密な方法が重要であることが示唆されている。そのような方法の1つに、密度勾配遠心分離の追加を必要とする。このより厳密な方法が神経突起伸長活性によりエクソソームを精製するかどうかを試験するために、mEERLエフリンB1細胞から条件培地を収集し、分画超遠心分離に続いて密度勾配遠心分離に掛けた。15の画分を収集し、画分4~13をCD9およびCD81についてウエスタンブロットによって解析した。公開されている文献と整合して、CD9+およびCD81+の小胞は、画分8に存在し、分画超遠心分離だけで精製したエクソソーム(「粗」試料)もCD9+/CD81+であった(データ不図示)。次に、どの画分が神経突起伸長活性を保持しているかを決定するために、PC12細胞上で画分4、5、8および13を試験した。「粗」エクソソームも、試験した。画分8および「粗」エクソソームが神経突起伸長活性を示すが、CD9陰性画分4、5および13にはこの活性がなかった(データ不図示)。これらのデータは、密度勾配遠心分離を包含することでCD9+/CD81+エクソソームを、神経突起伸長活性を保持する単一の画分に濃縮することを示している。データは、神経突起伸長活性がエフリンB1陽性CD9+/CD81+エクソソームに保持されていることも示している。
【0058】
高リスクHPV E6および神経突起伸長。上記の試験は、mEERL細胞またはそれらの誘導体(これらすべては、HPV+である)からの神経突起伸長活性を試験した。次に、2種のHPV+(SCC47と93-VU-147T-UP-6)および2種のHPV-(SCC1とSCC19)ヒト扁平上皮癌細胞株からのエクソソームをPC12細胞上で試験し、HPV-エクソソームがHPV+エクソソームよりもかなり低い神経突起伸長活性を内部に有することがわかった(図3A)。HPV16はOPSCCを誘発するので、高リスクHPVと考えられる。低リスクHPVは、癌をまれに発生させる。高リスクHPVと低リスクHPVとの間の重要な差の1つは、それらのE6タンパク質に見いだされている。高リスクE6だけが、発癌性形質転換のかなりの原因となるC末端PDZ結合モチーフ(PDZBM)を含有する。神経突起伸長へのHPV16 E6の寄与を試験するために、初代ヒト扁桃上皮(HTE)からのエクソソーム、ならびにHPV16 E6およびE7(HTE E6E7)を安定して発現するエクソソーム、またはE6のPDZBMが欠失されている(HTE E6ΔE7)細胞からのエクソソームを試験した。E7と共に完全長のE6の発現が神経突起伸長活性を誘発するのに十分であったが、一方E6のPDZBMの欠失はこの効果を抑制したことがわかった(図3B)。まとめると、これらのデータは、HPV16 E6が神経突起伸長活性の原因となることを示唆する。
【0059】
エクソソームは、腫瘍神経支配および増殖を促進する。エフリンンB1発現がin vivoで腫瘍神経支配に影響を及ぼすかどうかを試験するために、マウスにmEERL親細胞、エフリンB1、ΔECD、Null1またはNull2細胞のいずれかを移植した。移植から10日目、腫瘍が触知できるようになったとき、腫瘍を収集し、腫瘍可溶化液をβ-IIIチューブリンについてのウエスタンブロット解析に掛けた。β-IIIチューブリンシグナルをGAPDHに対して正規化し、濃度測定によって定量化した。エフリンB1およびエフリンB1ΔECD腫瘍は、mEERLの元の腫瘍と比較して、β-IIIチューブリンを大幅に内部に有する(図4A、4B)。腫瘍神経支配を誘発するこのin vivoでの能力は、エフリンB1ΔECDエクソソームがmEERLの元のエクソソームよりもPC12細胞からかなり少ない神経突起伸長を誘発するin vitroと異なっていた(図2B)。この相違は、腫瘍神経支配にも影響を及ぼす腫瘍微小環境(in vitroで存在しない)内の成分に反映する可能性がある。in vitroデータと同様に、Null1腫瘍およびNull2腫瘍はmEERLの元の腫瘍と変わらなかった(図2B、4A、4B)。まとめると、これらのデータは、完全長および切断型エフリンB1がin vivoで腫瘍神経支配を増強するのに十分であるが、その完全な欠失はできないことを示している。
【0060】
腫瘍放出エクソソームはin vivoで腫瘍神経支配を誘発するという仮説をより厳密に試験するために、および腫瘍増殖へのその寄与を明らかにするために、CRISPR/Cas9を利用して、mEERLの親細胞においてRab27Aおよび/またはRab27Bの遺伝子を組み換えた。これらの2つの低分子量GTPアーゼはエクソソーム放出の原因となり、それらのノックダウンによりCD9+エクソソームの放出が損なわれる。生成されるクローンは、Rab27Aに対してヘテロ接合であり、Rab27Bに対して欠失されたホモ接合である(mEERL Rab27A-/+Rab27B-/-)。エクソソーム試料を産生細胞の数に対して正規化した。ウエスタンブロットによって、mEERLの親細胞およびRab27A-/+Rab27B-/-細胞からのエクソソームを精製し、CD9およびCD81を解析した。Rab27A-/+Rab27B-/-から精製したエクソソームはCD9の発現が少なかった。これは、CD9発現の低下によって反映されるRab27A/Bの発現が損なわれている細胞によるエクソソームを放出する能力の低下を実証している以前の試験と一貫している(図5A)。ナノ粒子トラッキング解析により、エクソソームを放出するmEERL Rab27A-/+Rab27B-/-細胞の能力の低下が確認された(図5B)。さらに、CFDA-SE(細胞透過性フルオレセイントレーサー)でエクソソームを標識し、蛍光を定量化した。mEERL Rab27A-/+Rab27B-/-細胞からのエクソソームは、mEERLの元のエクソソームと比較して、蛍光を減少させた(図5C)。全体として、これらのデータは、Rab27A/B発現の調節がエクソソーム放出の低下をもたらしたことを確認する。損なわれたエクソソーム放出がPC12細胞の神経突起伸長に影響を及ぼすかどうかを試験するために、mEERLの元のエクソソームおよびmEERL Rab27A-/+Rab27B-/-エクソソームを、PC12細胞に適用されるプロデューサー細胞数および相当量に対して正規化した。mEERL Rab27A-/+Rab27B-/-エクソソームの神経突起伸長活性は、mEERLの親細胞からのエクソソームのそれと比較すると、かなり減弱した(図5D)。損なわれたエクソソーム放出がin vivoで神経支配を変化させるかどうかを試験するために、マウスにmEERL親細胞またはRab27A-/+Rab27B-/-細胞を移植し、腫瘍増殖をモニターした。Rab27A-/+Rab27B-/-腫瘍がin vivoでmEERLの元の腫瘍よりも、かなりゆっくり増殖した(図5E)。重要なことに、in vitro増殖アッセイは、細胞倍加時間がmEERL親細胞とRab27A-/+Rab27B-/-細胞との間で有意差がなかったことを示している(図5F)。エクソソームを放出するこの能力の低下がin vivoで腫瘍神経支配に影響を及ぼすかどうかを決定するために、腫瘍をマウスから収集し、30μgの全腫瘍可溶化液をβ-IIIチューブリンについてウエスタンブロットで定量化した(図5G)。mEERL Rab27A-/+Rab27B-/-の増殖が遅れたために、腫瘍を21日目に収集した。我々の仮説と整合して、Rab27A-/+Rab27B-/-腫瘍は、mEERLの元の腫瘍と比較して、β-IIIチューブリンがかなり低下した(図5H)。これらのデータは、腫瘍放出エクソソームが新神経発生の原因となるという我々の仮説を裏づけており、さらに新神経発生が腫瘍増殖に影響を及ぼすことを示唆している。
【0061】
考察
調査結果は、腫瘍誘発新神経発生のための新しい機構を提示している。ヒトおよびマウスのHPV+HNSCCがTRPV1陽性感覚神経によって新規に神経支配されることが明らかになる。さらに、mEERL腫瘍はNGFを分泌するが、in vitroアッセイにおいてNGFは神経突起伸長活性には必要でなく、エクソソーム内にパッケージされていない。機構的に、エクソソソームカーゴとしての完全長のエフリンB1のパッケージングは、in vitroで神経突起伸長を、in vivoで腫瘍神経支配をかなり増強し、およびその欠失により、これらの活性の両方ともかなり減弱する。CD9+エクソソームの放出を損なうと、in vivoで腫瘍増殖および神経支配がかなり減少する。これらの前臨床試験は、HNSCC患者血漿および腫瘍のエクソソームが神経突起伸長活性を内部に有するというヒトHNSCC試料による調査結果を裏付けている。まとめると、これらのデータは、HPV+腫瘍細胞によって放出されるCD9+エクソソームがin vivoで腫瘍神経支配および腫瘍増殖を促進することを示している。エフリンB1含有エクソソームは、さらにこの活性を増強する。HPV感染はエクソソームカーゴを調節することができ、このように、神経突起伸長活性に影響を及ぼし得る。あるいは、HPVおよびエフリンB1の効果が関連していることがあり得る。HPV感染細胞において、PTPN13とのE6の相互作用は、このホスファターゼの分解をもたらす。結果として、エフリンB1リン酸化は持続する。リン酸化エフリンB1は結合相手と相互作用し、次いでそれとともにエクソソームに往復し得る。この理論は我々のエフリンB1ΔECDデータが裏付けている。新神経発生および疾患進行へのHPVの寄与は、この機構を介してであるならば、頭頚癌がPTPN13またはエフリンBの両方ではなく、いずれかに変異を有することは理にかなっている。実際に、The Cancer Genome Atlasが、PTPN13およびエフリンB1の変化がHNSCCにおいて相互排他的で、両立しないことを示している。この相互排他性は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肝癌、肺癌に及ぶ。したがって、我々の調査結果は、他の癌にとって意味がある。
【0062】
豊富な血液供給を提供し、腫瘍増殖を促進するよう腫瘍がそれ自体の神経支配を誘発することは可能である。我々のデータは、この仮説を裏づけている。あるいは、腫瘍神経支配は、局所免疫応答を調節することができる。神経免疫相互作用は、進化的に保存されており、恒常性維持のために重要である。迷走神経の電気刺激を使用する最近の臨床試験は、自己免疫疾患である関節リウマチにおける、重症度の減衰を実証している。これらおよび他のデータは、神経免疫相互作用の変化が疾病病因に関与し、これらの相互作用の治療的調節により恒常性を回復することができるという概念を裏付けている。したがって、腫瘍は免疫応答を弱め、腫瘍耐性、疾患進行、および播種を促進する手段として自身の神経支配を促進し得る。
【0063】
方法:
抗体
ウエスタンブロット解析のために利用する抗体としては、以下が挙げられる:抗CD9(Abcam、1:1,000)、抗CD81(クローンB-11、1:1,000、Santa Cruz)、抗エフリンB1(ECD エピトープ,R&D Systems、1:500)、抗ヒトエフリンB1(ICDエピトープ、LifeSpan BioSciences、1:500)、抗β-IIIチューブリン(2G10、1:5,000、Abcam)、抗GAPDH(Ambion、1:5,000)。HRP結合二次抗体は、Thermo-Fisherから購入した。
IHCのために利用する抗体:抗β-IIIチューブリン(2G10、1:250,Abcam)、抗チロシン水酸化酵素(Ab112、1:750、Abcam)、抗TRPV1(カタログ#ACC-030、1:100、Alomone labs)、抗VIP(ab22736、1:100、Abcam)。
CX7上で定量化のために利用する抗体:抗β-IIIチューブリン(Millipore、AB9354)。
【0064】
細胞株:すべての細胞株は、STR(BioSynthesis)によって立証されている。加えて、すべての細胞株は、Uphoff and Drexler(Vitro Cell Dev Biol Anim, 2002. 38(2):p.79-85)によりマイコプラズマを含まないことが確認されている。
【0065】
ヒト細胞株:UM-SCC1およびUM-SCC47細胞株は、10%のウシ胎児血清と1%のペニシリン/ストレプトマイシンとを含むDMEMで維持した。
【0066】
初代ヒト扁桃上皮を承認されたIRBプロトコル下で収集し、KSFM(Gibco、カタログ#10724-011)とともに維持した。HTE E6/E7およびHTE E6Δ/E7は、レトロウイルス形質導入により生成し、上述のE培地中で維持した。
【0067】
マウス細胞株:mEERL細胞(親誘導体とすべての誘導体)は、E培地(DMEM (Corning,カタログ#10-017-CV)/Hams F12(Corning、カタログ#10-080-CV)、10%のエクソソーム除去ウシ胎児血清、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、0.5μg/mLのヒドロコルチゾン、8.4ng/mLのコレラ毒素、5μg/mLのトランスフェリン、5μg/mLのインスリン、1.36ng/mLのトリヨードチロニン、および5ng/mLのEGF)で維持した。
【0068】
mEERLエフリンB1 CRISPRクローン:エクソン1~5に及ぶgDNAの大部分を除去するために同時二重標的化を用いる戦略、および早期終了となるインデルを引き起こすフレームシフトを生成するための単一標的化を利用する戦略の2つの異なる戦略を活用して、エフリンB1 null mEERL細胞株を生成した。標的選択およびガイド配列クローニングは、Ranら(Nat Protoc, 2013. 8(11):p.2281-2308)のツールおよびプロトコルを使用して行った。二重標的化戦略のPCRアッセイでは、予想される欠失部位(表1)の外部(1~5ΔExt.)または欠失部位内(1~5ΔInt.)のプライマーを用いた。外部アッセイは、10,485bpのwtアンプリコンと、229bpのΔアンプリコンとをもたらすことになるが、内部アッセイは330bpのwtアンプリコンを生成するが、Δアンプリコンは生成しない。単一標的スクリーニングは、標的部位周囲の330bp領域を増幅し、続いてBsllによる制限酵素消化を伴うPCRを利用した。二重鎖切断が正確に修復されないと、その認識部位は、破壊されることになる(表1)。
【0069】
クローンmEERL エフリンB1ΔECD:このクローンは、二重標的化戦略から生成された。PCRアッセイは、標的領域の外部のプライマーを用いる予想される欠失産物と、該欠失内のプライマーを用いるアンプリコンの欠如を示す。配列データは、エクソン2~4が欠失しており、これらのエクソンがエフリンB1の細胞外ドメインの大部分を含む(データ不図示)ことを示した。エクソン1の欠失の5’末端がシグナルペプチドの直後に起こり、一方エクソン5の欠失の3’末端は膜貫通(TM)ドメイン内にある。しかし、TMドメイン内の8個のアミノ酸は欠失し、追加の2個の疎水性アラニンは組み込まれている。
【0070】
クローンmEERLエフリンB1 Null1およびNull2。mEERLエフリンB1 Null1およびNull2のクローンを単一標的化戦略で生成した。これらのクローンからの配列データは、1bp挿入(Null2)および10bp欠失(Null1)を示し、両方ともフレームシフトおよび初期の終止コドンとなる。使用したCRISPR戦略では、陽性クローンは、制限酵素BsIIによる切断の欠如を示す。mEERLエフリンB1 Null1およびNull2のクローンは、この酵素で切断しない(データ不図示)。
【0071】
【表1】
【0072】
mEERL Rab27 CRISPRクローン:mEERL細胞中のRab27のノックアウトは、Ranらの一般プロトコルを使用して作成した。手短に言うと、RAB27A、RAB27Bまたは両方のエクソンを標的にするガイド配列をpSpCas9(BB)-2A-Zeoにクローニングし、インデルまたは大規模な欠失を生成するために単独で、または組み合わせでそれぞれ1遺伝子、または両遺伝子に遺伝子導入した。Zeocin選択から5日間、単細胞を伸長させ、インデルに起因する、または二重標的化により誘発された大規模な欠失についてPCRで制限酵素部位の消失のスクリーニングを行った。この戦略を使用して、単一クローンを配列決定および追加特徴のために特定した。
【0073】
クローンmEERL Rab27A-/+Rab27B-/-:RAB27Aのエクソン4、RAB27Bのエクソン4をsgRNAが標的化し、RAB27AおよびRAB27Bが共有するエクソン3の配列を同時導入されたRAB27AおよびRAB27Bの二重ノックアウトのための戦略から生じた。PCRは、Rab27Aに対してヘテロ接合の切断型欠失産物を明らかにし、Rab27Bに対して予想されたホモ接合の欠失アンプリコンを明らかにした(データ不図示)。RAB27B配列データは、欠失部位で異なる修復産物を示した。1アレルが直ちに終止コドンを示しているが、他RAB27Aがどこで終了し得るかは不明である。しかし、ウエスタンブロット法により、検出可能なタンパク質の欠如が確認される(データ不図示)。
【0074】
PC12細胞:PC12細胞はATCCから購入し、10%のウマ血清(Gibco、カタログ#26050-088)および5%のウシ胎児血清を含むDMEMで維持した。神経突起伸長アッセイで使用するとき、1%のウマ血清および0.5%のウシ胎児血清を含むDMEMで維持した。
【0075】
画像診断:
電子顕微鏡観察:エクソソーム試料は、Mayo Clinicで顕微鏡観察およびCell Analysis Coreによって処理し、分析した。
【0076】
原子間力顕微鏡観察(AFM):精製エクソソームを脱イオン水で1:10に希釈し、新しいガラス皿に入れ、2時間風乾させてから、穏やかな窒素気流下で乾燥させた。ガラス皿に析出したエクソソームをAFM(モデル:MFP-3D BIO(商標)、Asylum Research、Santa Barbara、CA)を使用して特性を明らかにした。70kzの一般的な共振周波数および2Nm-1のばね定数とともにシリコンプローブ(AC240TS-R3、Asylum Research)を使用して、画像を大気中、ACモードで取得した。高さ像および振幅像は、0.6Hzの走査速度、512×512ピクセルで同時に記録した。Igor Pro6.34(WaveMetrics、Portland、OR)を使用して画像処理を行い、Image J.で分析した。
【0077】
免疫組織化学。組織を10%の中性緩衝ホルマリンで固定し、Leica300ASP組織プロセッサ上で処理した。ヒト腫瘍ブロック(N=30)およびマウス腫瘍ブロック(N=20)を5μmの切片にした。自動スライド染色システム、BenchMark(登録商標)XT(Ventana Medical Systems, Inc.)を用いて、最適化および染色を行った。色素原としてVentana iView DAB検出キットを使用し、スライドをヘマトキシリンで対比染色した。一次抗体の省略は、陰性対照として役立った。
【0078】
PC12アッセイおよびCX7によるβ-IIIチューブリン定量化。CellInSight CX7 High Content Analysis Platformは、神経突起伸長を定量化するために利用した定量顕微鏡の自動細胞イメージングを行う。96ウェル黒色光学底の平底プレート(ThermoFisher)に7.5x10 PC12細胞を播種し、処理から48時間後、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、次いでブロックにし、3%のロバ血清、1%BAS、および0.5%Triton-X 100含有溶液で透過処理した。β-IIIチューブリン(Millipore、AB9354)の染色を、続いてAlexa Fluor(商標)488ヤギ抗ニワトリIgGおよびHoechst33342で行った。PBSを用いて洗浄を行った。神経突起伸長解析は、Cellomics Scan Software(第6.6.0版、ThermoFisher)のNeuronal Profiling Bioapplication(第4.2版)を使用して、CellInsight(商標)CX7 HCS(ThermoFisher)上で行った。1ウェルあたり25の撮像視野を2x2ビニング、10x対物で収集した。核をHoechst陽性染色によって特定し、一方細胞体および神経突起はβ-IIIチューブリン陽性免疫標識によって特定した。細胞がHoechst陽性核ならびにβ-IIIチューブリン陽性細胞体の両方を有する場合、それらをニューロンと分類した。20μmよりも長い神経突起だけを分析に組み入れた。細胞株からのエクソソームを利用するすべてのアッセイを1状態あたりN=4反復実験で行い、少なくとも2回繰り返し、同様の結果を得た。ヒト試料を利用するアッセイを材料で限定し、テキストに記述するように可能な程度まで反復実験を行った。
【0079】
エクソソーム精製:
分画超遠心分離。500,000の細胞を150mmのプレート上に播種し、エクソソームを除去した10%のウシ胎児血清含有培地中でインキュベートした。ウシ胎児血清エクソソームの除去は、100,000×gでの終夜の超遠心分離からなった。48時間後、条件培地を収集し、Kowalら(Proc Natl Acad Sci USA, 2016. 113(8):p.E968-77)により何らかの修飾をして記載された分画超遠心分離によってエクソソームを精製した。手短に言うと、条件培地を300×gで、4℃で10分間遠心分離して、細胞をペレット化した。上清を2,000×gで、4℃で20分間遠心分離して、新しいチューブに移し、次いで10,000×gで、30分間遠心分離し、最終的にSureSpin 630/17ローター中で120分間、100,000×gで遠心分離した。すべてのペレットをPBSで洗浄し、同じ速度で、再遠心分離し、200μLの無菌PBS/150mmディッシュに再懸濁させた。
【0080】
分画超遠心分離およびOptiPrep密度勾配。上述のように、分画超遠心分離の後、不連続イオジキサノール密度勾配を利用した。5、10、20および40%のイオジキサノール溶液を、適量の均質化緩衝液[0.25Mスクロース、1mM EDTA、10mM Tris-HCL(pH7.4)]と、イオジキサノール溶液とを混合することによって作製した。この溶液を、OptiPrep(商標)の保存溶液(60重量%イオジキサノール水溶液、Sigma)と、緩衝液[0.25Mスクロース、6mM EDTA、60mM Tri-HCl(pH7.4)]とを混合することによって調製した。勾配は、15.5mLのオープントップポリアロマーチューブ(Beckman Coulter)の上部に40%溶液4mL、20%溶液4mL、10%溶液4mL、および5%溶液3mLを各々層にすることで形成した。400μLの粗エキソソーム(分画超遠心分離によって単離した)を勾配の上に重層し、次いでそれを100,000×gで、4℃で18時間遠心分離した(SureSpin 630/17ローター、ThermoScientific(商標)Sorvall(商標))。1mLの勾配画分を自己形成勾配の上部から収集し、PBSで14mLに希釈し、次いで100,000×gで、4℃で3時間遠心分離した。生じたペレットを100μLのPBSに再懸濁させて、-80℃で保存した。
【0081】
ヒト血漿からのエクソソーム精製。10mLの全血をFicoll充填Leucosepチューブに直接ピペットで移し、室温、ブレーキオフ、800×gで30分間遠心分離した。回収した血漿からエクソソームを記載のように分画超遠心分離によって単離した。
【0082】
ヒト腫瘍からのエクソソーム精製。新鮮な腫瘍組織を小片に切断し、Fungizone含有KSFM(ケラチノサイト血清を含まない培地)とともに培養物に入れ、培養中で48時間維持した。条件培地を収集し、次いで記載のように分画超遠心分離によってエクソソームを収集した。
【0083】
タンパク質分析。
エクソソームのBCAタンパク質アッセイ。エクソソーム調製物から低タンパク質収率に適応するよう修飾して、標準BCAタンパク質アッセイを利用した。手短に言うと、5μLの10% TX-100(Thermo Scientific)を精製エクソソームの50μLアリコートに加え、室温で10分間インキュベートした。1:11の作用比を使用し、96ウェルプレート中37℃で1時間インキュベートした。次いで562nmでの吸光度を測定(SpectraMax(商標)Plus384)し、4次モデルから推定したタンパク質濃度をBSA標準曲線に適合させた。
【0084】
ウエスタンブロット解析。試料タンパク質の濃度を記載のようにBCAタンパク質アッセイによって決定した。等しい総タンパクをSDS-PAGEによって分離し、PVDF膜(Immobilon(商標)-P、Millipore)に移し、5%ウシアルブミン画分V(Millipore)または5%ミルク(Carnationノンファットドライミルク)のいずれかでブロックし、TTBS(0.05% Tween-20、1.37M Nacl、27mM KCl、25mM Tris塩基)中で洗浄し、次いで一次抗体中でインキュベートした。洗浄した膜をHRP複合二次抗体とともにインキュベートし、化学発光基質(ThermoScientific、SuperSignal(商標)West Pico)とともにインキュベートし、UVP BioImaging Systemを使用して画像化した。
【0085】
in vivo試験。すべての動物試験は、承認された施設内IACUCプロトコル下で、施設ガイドライン内で行われた。すべての動物実験は、USDAガイドライン従ってSanford Research Laboratory Animal Research Facilityで維持された4~8週齢のオスのC57Bl/6マウス(The Jackson Laboratory)を利用した。
【0086】
マウス腫瘍実験:腫瘍を以下のように開始した:23-ゲージ針を使用して、mEERL細胞(1×10細胞)をマウスの右後肢に皮下移植した。腫瘍増殖をキャリパー測定によって毎週モニターした。腫瘍体積がいずれの寸法で1.5cmを超えたとき、マウスを安楽死させた。ウエスタンブロットによるβ-IIIチューブリンの定量化についてN=4マウス/群。腫瘍増殖についてN=7マウス/群。
【0087】
全腫瘍可溶化液。移植後10日目または21日目(テキストに従って)、腫瘍を収集し、氷上の溶解緩衝液中で組織ホモジナイザー(Omni TH International)を用いてホモジナイズした。次いで、ホモジネートを超音波処理し、2000×gで5分間、遠心分離した。生じた上清を収集し、さらに13000×gで10分間遠心分離して、BCAタンパク質濃度推定を行った。ウエスタンブロットは、30μgのインプットを使用して行った。N=4腫瘍/状態からの全腫瘍可溶化液のβ-IIIチューブリンウエスタンブロット。VisionWorks(商標)LSソフトウェアを使用して、濃度測定によりシグナルを定量化し、GAPDHに対して正規化した。群平均をスチューデントのt検定を使用して比較した。
【0088】
ヒト試料。すべてのヒト試料は、署名されたインフォームドコンセントとともに承認された施設内倫理委員会プロトコルの下で採取された。試料は、原発性、局所進行性の頭頸部(解剖学的部位:口腔、中咽頭、下咽頭、および咽頭)扁平上皮細胞の癌を診断された、男女、およびすべての人種の成人(年齢≧18歳)患者を含んでいた。
【0089】
統計分析。データは、PrismGraph(商標)を用いて分析し、グラフで示した。記述統計は、平均±標準誤差、または標準偏差として示す(図説明を参照されたい)。図説明に示すように、対応のないスチューデントのt検定または一元配置分散分析を統計解析で利用した。細胞株からのエクソソームを利用するPC12アッセイを各状態に対して技術的反復実験を4回行い、実験を少なくとも2回繰り返した。ヒト試料(血液または腫瘍)からのエクソソームを利用するPC12アッセイは、これらの試料が非常に限定されていたので、異なって処理した。したがって、各ヒト試料のためのエクソソームは、可能な場合、二つ組で試験した。試料が限定されている場合(テキストに記述)、1ウェルのみを試験した。
【0090】
実施例2
本実施例は、他の固形腫瘍(結腸直腸腫瘍、黒色腫および乳腺腫瘍で例証した)も、エクソソームも含み得る因子を放出し、これらの因子が腫瘍神経支配の原因となることを実証する。結腸直腸腫瘍(CT26)、黒色腫(B16)および乳腺腫瘍(4T1)の細胞株からの条件培地を収集して、PC12細胞上で試験した。CT26は、N-ニトロソ-N-メチルウレタンで処置されたBALB/cマウスに由来する細胞株である。この細胞株は、結腸直腸癌を調べるために広く用いられている。B16は、C57Bl/6マウスで自然発生的に生じた黒色腫マウス癌細胞株である。黒色腫を調べるために広く用いられている。4T1は、突然変異原処理なしで410.4(マウス乳腺腺癌細胞株)腫瘍から選択される6-チオグアニン耐性細胞株である。BALB/cマウスに移植されると、4T1細胞は転移性が高く、肺、肝臓、リンパ節および脳に進行する。この細胞株は、IV期のヒト乳癌の動物モデルとして、高頻度で用いられている。PC12はラット褐色細胞腫細胞株であり、神経成長因子などの成長因子に刺激されない限り、この細胞は未分化である。分化後、細胞はニューロン様細胞に変わる。CT26、B16および4T1細胞株を約40%コンフルエンスで播種し、48時間後(細胞が約90%コンフルエントになったら)、条件培地を収集した。次いで、条件培地を用いて、PC12細胞を24時間処理した。処理後、PC12細胞を固定し、β-IIIチューブリンを染色し、次いでCX7上で定量化した。
【0091】
このアッセイにおいて、結腸直腸腫瘍、黒色腫および乳腺腫瘍細胞株によって放出され、PC12細胞の神経分化を誘発することができる何かがあるかどうかを見るためにPC12細胞上に条件培地をのせた。異なる細胞株からの条件培地による刺激(24時間)の後、PC12細胞を固定し、β-IIIチューブリンを染色した。β-IIIチューブリン染色の程度をCX7上で定量化した。各状態に対してウェルあたりのβ-IIIチューブリン陽性神経突起の総数を図6にグラフで示す。すべてのそのような実験において、PC12細胞は多くの神経突起を伸長しないので、無刺激PC12細胞(PC12)は陰性対照として役立つ。陽性対照は、強い神経突起伸長をもたらす、100ng/mLの組換えNGFで刺激されたPC12細胞からなる。染色したβ-IIIチューブリンの定量化の後、NGF状態は100%に設定し、他の状態はそれと比較する。
【0092】
異なる細胞株からの条件培地を用いて実験を行った。その後これらの細胞株からエクソソームを精製し、同様に試験した。結果(データ不図示)は、エクソソームも神経突起伸長を促進するが、完全条件培地で可能なレベルまでではないことを実証し、エクソソームと他の放出因子(例えば、神経栄養因子)との組み合わせがこうした腫瘍の種類から神経突起伸長を誘発することを示した。
【0093】
実施例3
E6のPTPN13およびエフリンB1の活性化に対する効果を考慮に入れ、HPV陰性扁平上皮癌細胞株において単に過剰発現するエフリンB1は神経突起伸長の増加を促進するのに十分ではないかと思われた。したがって、SCC1細胞中でエフリンB1を安定して過剰発現させ、PC12細胞上でエクソソームを試験した。SCC1-エフリンB1細胞からのエクソソームは、SCC1親細胞からのそれらよりも大幅に神経突起伸長を誘発した(図7A)。この活性増加が同様に腫瘍神経支配に影響を及ぼすかどうかを決定するために、免疫がないNOD SCIDマウスにSCC1細胞またはSCC1-エフリンB1細胞(N=5マウス/群)を移植して、10日間腫瘍増殖をモニターした。SCC1エフリンB1腫瘍は、SCC1の元の腫瘍よりもかなり急速に増殖した(図7B)。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
【配列表】
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