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特開2022-115961親和性を操作した血清タンパク質担体結合ドメイン
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  • 特開-親和性を操作した血清タンパク質担体結合ドメイン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115961
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】親和性を操作した血清タンパク質担体結合ドメイン
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20220802BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220802BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022075986
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2019508294の分割
【原出願日】2017-04-28
(31)【優先権主張番号】1607636.6
(32)【優先日】2016-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1607828.9
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アダムズ、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイウッド、サム フィリップ
(57)【要約】
【課題】
親和性を操作した血清タンパク質担体結合ドメインを提供すること。
【解決手段】
本開示は、配列を変異させることによって血清担体タンパク質に特異的な結合ドメインの半減期をモジュレートする方法、及び血清担体タンパク質に特異的なモジュレートされた結合ドメインに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清担体タンパク質に特異的なVH及びVLを含む結合ドメインであって、該結合ドメインが、軽鎖可変ドメイン(VL)における1個又は2個のアミノ酸置換、重鎖可変ドメイン(VH)における1個又は2個の変異、及びそれらの組合せから選択される改変によって変異しており、該変異した結合ドメインが、変異していない結合ドメインの半減期よりも長い又は短い半減期を有するが、但し、該変異は、配列番号1のI50A、T56A、T95A、V96A、P97A、G98A、Y99A、S100A、T100Aa、Y100Ca、I50A及びT95A、I50A及びG98A、I50A及びY99A、T56A及びT95A、T56A及びG98A、並びにT56A及びY99Aからなる変異以外である、上記結合ドメイン。
【請求項2】
血清担体タンパク質がチロキシン結合タンパク質、トランスサイレチン、α1-酸性糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノゲン及びアルブミン、又はそれらのいずれかの断片から選択される、請求項1に記載の結合ドメイン。
【請求項3】
血清担体タンパク質がアルブミン、例えばヒト血清アルブミンである、請求項2に記載の結合ドメイン。
【請求項4】
アルブミンのドメインIIに結合する、請求項3に記載の結合ドメイン。
【請求項5】
変異がVLにおける少なくとも1つの置換である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項6】
変異がVLにおける1個のアミノ酸の置換である、請求項5に記載の結合ドメイン。
【請求項7】
変異がVLにおける2個のアミノ酸の置換である、請求項5に記載の結合ドメイン。
【請求項8】
変異がL1、L2、L3及びそれらの組合せから選択されるCDRにある、請求項5から7までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項9】
CDRがL1である、請求項8に記載の結合ドメイン。
【請求項10】
変異したアミノ酸(単数又は複数)が26、27、28、29、30、31、32、33、34及び35位から独立して選択される、請求項9に記載の結合ドメイン。
【請求項11】
位置が30位である、請求項10に記載の結合ドメイン。
【請求項12】
関連する位置(単数又は複数)のアミノ酸が、例えば、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン及びグリシンから選択される疎水性残基、例えばアラニンによって置き換えられている、請求項10又は11に記載の結合ドメイン。
【請求項13】
変異がVLに対する改変からなる、請求項5から11までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項14】
変異がVHドメインにある、請求項1から12までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項15】
変異がVHにおける1個のアミノ酸の置換である、請求項14に記載の結合ドメイン。
【請求項16】
変異がVHにおける2個のアミノ酸の置換である、請求項14に記載の結合ドメイン。
【請求項17】
変異がH1、H2、H3及びそれらの組合せから選択されるCDRにある、請求項15又は16に記載の結合ドメイン。
【請求項18】
CDRがH2及び/又はH3である、請求項17に記載の結合ドメイン。
【請求項19】
CDRがH2である、請求項18に記載の結合ドメイン。
【請求項20】
変異したアミノ酸(単数又は複数)が50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64又は65位から独立して選択される、請求項14から19までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項21】
関連する位置(単数又は複数)のアミノ酸が、例えば、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン及びグリシンから選択される疎水性残基、例えばアラニンによって置き換えられている、請求項20に記載の結合ドメイン。
【請求項22】
CDRがH3である、請求項18から21までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項23】
変異したアミノ酸(単数又は複数)が95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106又は107位から独立して選択される、請求項22に記載の結合ドメイン。
【請求項24】
残基101が変異している、請求項23に記載の結合ドメイン。
【請求項25】
関連する位置(単数又は複数)のアミノ酸が、例えば、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン及びグリシンから選択される疎水性残基、例えばアラニンによって置き換えられている、請求項23又は24に記載の結合ドメイン。
【請求項26】
1つ又は複数のアミノ酸置換が非保存的アミノ酸置換である、請求項1から25までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項27】
非保存的アミノ酸が天然アミノ酸のアラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、プロリン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される、請求項26に記載の結合ドメイン。
【請求項28】
CDRグラフト化可変ドメインを含む、請求項1から27までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項29】
ヒト化されている、請求項28に記載の結合ドメイン。
【請求項30】
ヒト化結合ドメインがVH及び/又はVLにおけるヒトフレームワークを含む、請求項29に記載の結合ドメイン。
【請求項31】
VHフレームワークが、例えば1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸置換、例えばドナー残基であるアミノ酸を含む、ヒト(例えばVH3 1-3 3-23などのVH3)である、請求項30に記載の結合ドメイン。
【請求項32】
VHが配列番号2、3、4、5若しくは6(特に5若しくは6)に示した配列、又は少なくとも95、96、97、98若しくは99%の類似性又は同一性を有するそれらのいずれか1つの変異体、例えば配列番号2、3、4、5若しくは6(特に5若しくは6)に示した配列を有する、請求項31に記載の結合ドメイン。
【請求項33】
VLフレームワークが、例えば1、2又は3個のアミノ酸置換、例えばドナー残基であるアミノ酸を含む、ヒト(例えば2-1-(1)L5などのVκ1)である、請求項30から31までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項34】
VLドメインが配列番号6、7、8及び9から選択される配列、又は少なくとも95、96、97、98若しくは99%の類似性又は同一性を有するそれらのいずれか1つの変異体、例えば配列番号6、7、8及び9(特に8若しくは9)から選択される配列を含む、請求項1から33までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
【請求項35】
VH及びVL配列が配列番号2及び6、2及び7、2及び8、2及び9、3及び6、3及び7、3及び8、3及び9、4及び6、4及び7、4及び8、4及び9、5及び6、5及び7、5及び8、並びに5及び9の組合せ、又は少なくとも95、96、97、98若しくは99%の類似性又は同一性を有するそれらのいずれか1つの変異体若しくは複数の変異体から選択される、請求項36に記載の結合ドメイン。
【請求項36】
VL及びVH配列がそれぞれ配列番号9及び配列番号3である、請求項35に記載の結合ドメイン。
【請求項37】
VL及びVH配列がそれぞれ配列番号8及び配列番号4である、請求項35に記載の結合ドメイン。
【請求項38】
VL及びVH配列がそれぞれ配列番号9及び配列番号5である、請求項35に記載の結合ドメイン。
【請求項39】
VL及びVH配列がそれぞれ配列番号9及び配列番号4である、請求項35に記載の結合ドメイン。
【請求項40】
請求項1から39までのいずれか一項に記載の結合ドメインを含む抗体分子。
【請求項41】
請求項1から39までのいずれか一項に記載の結合ドメイン又は請求項40に記載の抗体分子を含む医薬組成物。
【請求項42】
請求項1から39までのいずれか一項に記載の結合ドメイン、請求項40に記載の抗体分子、又は請求項41に記載の医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む、患者を処置する方法。
【請求項43】
処置で使用するための、請求項1から39までのいずれか一項に記載の結合ドメイン、請求項40に記載の抗体分子、又は請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項44】
処置で、特に、感染(ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫)、感染に関連する内毒素性ショック、関節炎、例えば関節リウマチ、喘息、例えば重度の喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、脈管炎、術後癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、中枢神経系及び末梢神経系の免疫媒介性炎症性障害、例えば多発性硬化症、狼瘡(例えば全身性エリテマトーデス)及びギラン・バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化性肺胞炎、グレーヴス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、他の自己免疫疾患、膵臓炎、外傷(外科)、移植片対宿主疾患、移植片拒絶、虚血性疾患を含む心臓病、例えば心筋梗塞並びにアテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症、並びに、乳がん、肺がん、胃がん、卵巣がん、肝細胞がん、結腸がん、膵臓がん、食道がん、頭頚部がん、腎臓がん、特に腎細胞がん、前立腺がん、肝臓がん、メラノーマ、肉腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、胎盤絨毛がん、子宮頸がん及び甲状腺がん、並びにその転移形態を含むがんからなる群から選択される処置で使用するための、請求項1から40までのいずれか一項に記載の結合ドメイン、請求項40に記載の抗体分子、又は請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項45】
例えば、感染(ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫)、感染に関連する内毒素性ショック、関節炎、例えば関節リウマチ、喘息、例えば重度の喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、脈管炎、術後癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、中枢神経系及び末梢神経系の免疫媒介性炎症性障害、例えば多発性硬化症、狼瘡(例えば全身性エリテマトーデス)及びギラン・バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化性肺胞炎、グレーヴス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、他の自己免疫疾患、膵臓炎、外傷(外科)、移植片対宿主疾患、移植片拒絶、虚血性疾患を含む心臓病、例えば心筋梗塞並びにアテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症、並びに、乳がん、肺がん、胃がん、卵巣がん、肝細胞がん、結腸がん、膵臓がん、食道がん、頭頚部がん、腎臓がん、特に腎細胞がん、前立腺がん、肝臓がん、メラノーマ、肉腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、胎盤絨毛がん、子宮頸がん及び甲状腺がん、並びにその転移形態を含むがんからなる群から選択される処置のための医薬の製造における、請求項1から39までのいずれか一項に記載の結合ドメイン、請求項40に記載の抗体分子、又は請求項41に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配列を変異させることによって血清担体タンパク質に特異的な結合ドメインの半減期をモジュレートする方法、及び血清担体タンパク質に特異的なモジュレートされた結合ドメインに関する。
【背景技術】
【0002】
血清タンパク質担体、例えばヒト血清アルブミン(HSA)を標的とすることによる生物学的薬物の血清半減期の増大が現在確立されている(1、2)。HSAは、その半減期が19日であることから利用されている。HSAは血清中で最も豊富なタンパク質であり(34~54g/L)、組織に広範囲で分布している(3)。したがって、HSAは容易に入手可能で、結合にとって安全な標的であり、特にそのため、全アルブミンのわずかなパーセントがこのアプローチにおいて利用されている。
【0003】
血清タンパク質のうち、IgGだけが同様に長い半減期を有する(21日)。HSA及びIgGの長い血清半減期は、主として、新生児型Fc受容体(FcRn)による細胞内リソソーム分解からの保護に起因している(4、5)。FcRnは、血管空間に並ぶ内皮細胞及び造血細胞による小胞への血漿の非特異的なピノサイトーシスの後に、HSA及びIgGを細胞表面に戻すように再循環する。ピノサイトーシス小胞は初期エンドソームとの融合によって酸性化され、HSA及びIgGをpH依存的方法でFcRnに結合させることができる。FcRnを含む膜受容体を有する小胞、並びに結合されたHSA及びIgGは、細胞表面に戻って再循環されるが、残りの非結合の物質は、分解のためにリソソームに運ばれる。HSA及びIgGは、中性pHではFcRnに弱く結合するため、再循環された小胞が血液の中性pHに暴露されると循環中に放出される(2)
【0004】
HSAは、2つの方法のいずれかで利用され得る。アプローチの1つは、遺伝学的又は化学的ないずれかで、治療用タンパク質をHSAに直接的にカップリングさせることである(6、7)。第2のアプローチは、アルブミン結合ドメインを使用することである。これまでに使用されている結合ドメインの例としては、脂肪酸(ミリスチン酸)、有機分子(Albutag)、合成ペプチド10、11、細菌アルブミン結合ドメイン(Albumod(商標))12、13、単一ドメイン抗体(Nanobody(商標)、AlbudAb(商標))14~17、並びにFab18が挙げられる。
【0005】
Nguyenら、2006年は、C末端アルブミン結合ペプチドに連結されているFab断片の半減期を調べた。Nguyenは、アルブミンに対する親和性の低下は、半減期の低減及びより高いクリアランス速度と相関するとの結論を出した。図3は、その中で、その関係がほぼ直線的であることを示している。またこの論文は、in vivoで結合していない抗体の画分における非常に小さな差異が、クリアランス速度に大きく影響することも述べている。
【0006】
本発明者らは、血清タンパク質担体に特異的なVH及びVLを含む結合ドメインの親和性とそれらのin vivo半減期との間の相関について調べた。本発明者らは、結合ドメインの半減期の持続時間が、アルブミン結合ペプチドに対する応答よりも複雑であることを確証し、観察された親和性における大幅な低減は、多くの場合、半減期の中程度の低減を意味し、場合によっては、親和性の低減が半減期の増加につながる可能性があり、これは直感に反したものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、血清担体タンパク質に特異的なVH及びVLを含む結合ドメインであって、ドメインが軽鎖可変ドメイン(VL)、重鎖可変ドメイン(VH)及びそれらの組合せにおける改変によって変異しており、変異した結合ドメインが、変異していない結合ドメインの半減期よりも長い又は短い半減期を有するが、例えば、但し、変異は、配列番号1のI50A、T56A、T95A、V96A、P97A、G98A、Y99A、S100A、T100Aa、Y100Ca、I50A及びT95A、I50A及びG98A、I50A及びY99A、T56A及びT95A、T56A及びG98A、並びにT56A及びY99Aからなる変異以外である、上記結合ドメインを提供する。
【0008】
したがって、血清担体タンパク質に特異的なVH及びVLを含む結合ドメインであって、結合ドメインが、軽鎖可変ドメイン(VL)における1個又は2個のアミノ酸置換、重鎖可変ドメイン(VH)における1個又は2個の変異、及びそれらの組合せから選択される改変によって変異しており、変異した結合ドメインが、変異していない結合ドメインの半減期よりも長い又は短い半減期を有するが、例えば、但し、変異は、配列番号1のI50A、T56A、T95A、V96A、P97A、G98A、Y99A、S100A、T100Aa、Y100Ca、I50A及びT95A、I50A及びG98A、I50A及びY99A、T56A及びT95A、T56A及びG98A、並びにT56A及びY99Aからなる変異以外である、上記結合ドメインを提供する。
【0009】
一実施形態において、血清担体タンパク質は、例えば、チロキシン結合タンパク質、トランスサイレチン、α1-酸性糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノゲン及びアルブミン、又はそれらのいずれかの断片から選択され、例えばアルブミン、特にヒト血清アルブミンである。
【0010】
一実施形態において、結合ドメインはアルブミンのドメインIIに特異的である。
【0011】
一実施形態において、変異はVLにおける改変であって、例えば、変異はVLにおける1個又は2個のアミノ酸の置換、例えば、L1、L2、L3及びそれらの組合せから選択されるCDRにおける改変/置換であり、特にCDRはL1である。
【0012】
一実施形態において、CDR L1における変異したアミノ酸(単数又は複数)は26、27、28、29、30、31、32、33、34及び35位から独立して選択され、例えば30位である。
【0013】
一実施形態において、VLにおける関連する位置(単数又は複数)のアミノ酸(単数又は複数)は、例えば、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン及びグリシンから選択される疎水性残基、例えばアラニンによって置き換えられている。
【0014】
一実施形態において、変異はVLに対する改変からなる。驚いたことに、本発明者らは、結合ドメインのKdを増大させ、結合ドメインの親和性を低減するが、分子の半減期は増大させるVLにおける改変を行うことができることを確証した。
【0015】
一実施形態において、変異(単数又は複数)はVHにおけるものであり、例えば、変異はVHにおける1個又は2個のアミノ酸の置換、例えば、H1、H2、H3及びそれらの組合せから選択されるCDRにおける変異であり、特にCDRはH2及び/又はH3であり、より詳しくはCDRはH2である。
【0016】
一実施形態において、CDR H2における変異したアミノ酸(単数又は複数)は50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65位及びそれらの組合せから独立して選択され、例えば、それはアラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン及びグリシンから特に独立して選択される疎水性残基、例えばアラニンによって置き換えられている。
【0017】
一実施形態において、変異したアミノ酸(単数又は複数)は、H3であるCDRにあり、特に、変異したアミノ酸(単数又は複数)は95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106又は107位から独立して選択され、より詳しくは、残基101が変異している。
【0018】
一実施形態において、CDR H3における関連する位置(単数又は複数)のアミノ酸は、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン及びグリシンから独立して選択される疎水性残基、例えばアラニンによって置き換えられている。
【0019】
一つ又は複数の実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換(単数又は複数)は非保存的アミノ酸置換であり、例えば、非保存的アミノ酸は、天然アミノ酸のアラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、プロリン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される。
【0020】
一実施形態において、結合ドメインはCDRグラフト化可変ドメインを含む。
【0021】
一実施形態において、結合ドメインはヒト化されており、例えば、結合ドメインはVH及び/又はVLにおけるヒトフレームワークを含む。
【0022】
一実施形態において、VHフレームワークは、ヒト(例えばV3 1-3 3-23などのVH3)であり、1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸置換、例えばドナー残基であるアミノ酸を含む。
【0023】
一実施形態において、VHは、配列番号2、3、4及び5から選択される配列、又は少なくとも95、96、97、98若しくは99%の類似性若しくは同一性を有するそれらのいずれか1つの変異体、例えば配列番号2、3、4、5若しくは6(特に5若しくは6)に示した配列を含む。
【0024】
一実施形態において、VLフレームワークは、例えば1、2又は3個のアミノ酸置換、例えばドナー残基であるアミノ酸を含む、ヒト(例えば2-1-(1)L5などのVκ1)である。
【0025】
一実施形態において、VLドメインは、配列番号6、7、8及び9から選択される配列、又は少なくとも95、96、97、98若しくは99%の類似性若しくは同一性を有するそれらのいずれか1つの変異体を含む。
【0026】
一実施形態において、VH及びVL配列は、配列番号2及び6、2及び7、2及び8、2及び9、3及び6、3及び7、3及び8、3及び9、4及び6、4及び7、4及び8、4及び9、5及び6、5及び7、5及び8、並びに5及び9の組合せ、又は少なくとも95、96、97、98若しくは99%の類似性若しくは同一性を有するそれらのいずれか1つの変異体若しくは複数の変異体から選択され、特に、VL及びVH配列は、それぞれ配列番号9及び配列番号3であり、又はVL及びVH配列は、それぞれ配列番号8及び配列番号4であり、又はVL及びVH配列は、それぞれ配列番号9及び配列番号5であり、又はVL及びVH配列は、配列番号9及び配列番号4である。
【0027】
一実施形態において、結合ドメインはヒトである。
【0028】
一実施形態において、結合パートナーの親和性は高く、5nM又はそれよりも強く、例えば、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50若しくは10pM又はそれよりも強い。
【0029】
一実施形態において、本開示による結合ドメインを含む抗体分子、特に多特異性抗体分子、例えば二重特異性抗体分子を提供する。
【0030】
一実施形態において、本開示による結合ドメイン又は本明細書に記載の抗体分子を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
さらなる態様において、本開示による結合ドメイン、本明細書に記載の抗体分子、又はそれらのいずれか1つを含む医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む、患者を処置する方法を提供する。
【0032】
また、処置で使用するための、本開示による結合ドメイン、本明細書に記載の抗体分子、又はそれらのいずれか1つを含む医薬組成物も提供する。
【0033】
一実施形態において、処置で、特に、感染(ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫)、感染に関連する内毒素性ショック、関節炎、例えば関節リウマチ、喘息、例えば重度の喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、脈管炎、術後癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、中枢神経系及び末梢神経系の免疫媒介性炎症性障害、例えば多発性硬化症、狼瘡(例えば全身性エリテマトーデス)及びギラン・バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化性肺胞炎、グレーヴス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、他の自己免疫疾患、膵臓炎、外傷(外科)、移植片対宿主疾患、移植片拒絶、虚血性疾患を含む心臓病、例えば心筋梗塞並びにアテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症、並びに、乳がん、肺がん、胃がん、卵巣がん、肝細胞がん、結腸がん、膵臓がん、食道がん、頭頚部がん、腎臓がん、特に腎細胞がん、前立腺がん、肝臓がん、メラノーマ、肉腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、胎盤絨毛がん、子宮頸がん及び甲状腺がんのがん、並びにその転移形態を含むがんからなる群から選択される処置で使用するための、本開示による結合ドメイン、本明細書に記載の抗体分子、又はそれらのいずれか1つを含む医薬組成物も提供する。
【0034】
例えば、感染(ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫)、感染に関連する内毒素性ショック、関節炎、例えば関節リウマチ、喘息、例えば重度の喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、脈管炎、術後癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、中枢神経系及び末梢神経系の免疫媒介性炎症性障害、例えば多発性硬化症、狼瘡(例えば全身性エリテマトーデス)及びギラン・バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化性肺胞炎、グレーヴス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、他の自己免疫疾患、膵臓炎、外傷(外科)、移植片対宿主疾患、移植片拒絶、虚血性疾患を含む心臓病、例えば心筋梗塞並びにアテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症、並びに、乳がん、肺がん、胃がん、卵巣がん、肝細胞がん、結腸がん、膵臓がん、食道がん、頭頚部がん、腎臓がん、特に腎細胞がん、前立腺がん、肝臓がん、メラノーマ、肉腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、胎盤絨毛がん、子宮頸がん及び甲状腺がんのがん、並びにその転移形態を含むがんからなる群から選択される処置のための医薬の製造における、本開示による結合ドメイン、本明細書に記載の抗体分子、又はそれらを含む医薬組成物の使用。
【0035】
独立した態様において、仕立てられた半減期を提供するための血清タンパク質担体結合ドメインを選択する方法であって、前記血清タンパク質担体に特異的なVH/VL対のパネルを提供するステップと、in vivoにおけるそれらの半減期を分析するステップと、ヒト対象においてドメインを含む生物学的分子に要求される半減期に最も厳密に一致するドメインを選択するステップを含む、上記方法を提供する。
【0036】
一実施形態において、血清担体タンパク質は、チロキシン結合タンパク質、トランスサイレチン、α1-酸性糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノゲン及びアルブミン、又はそれらのいずれかの断片から選択され、例えばアルブミン、例えばヒト血清アルブミンである。
【0037】
一態様において、VH/VL対のパネルは、親抗体における可変ドメインを変異させることによって調製される。
【0038】
一実施形態において、変異はVLに対する少なくとも1つの改変であり、例えば、VL改変は、軽鎖可変ドメイン(VL)における1個又は2個のアミノ酸置換から選択され、変異した結合ドメインは、変異していない結合ドメインの半減期よりも長い又は短い半減期を有する。
【0039】
一実施形態において、VLにおける変異は、CDR L1、CDR L2及び/又はCDR L3、特にCDR L2又はCDR L3における変異である。
【0040】
一実施形態において、結合ドメインにおける変異(単数又は複数)は、VLドメインに対する1つの改変又は複数の改変からなる。
【0041】
一実施形態において、変異はVHに対する少なくとも1つの改変である。
【0042】
一実施形態において、変異は、重鎖可変ドメイン(VH)における1つ又は2つの変異であり、変異した結合ドメインは、変異していない結合ドメイン(本明細書においては親抗体とも呼ばれる)の半減期よりも長い又は短い半減期を有する。
【0043】
一実施形態において、変異(単数又は複数)はCDR H1、CDR H2及び/又はCDR H3にあり、特にCDR H2又はCDR H3にある。
【0044】
一実施形態において、本開示による方法は、VH及び/又はVL(パネル由来の又はパネルに関する)におけるヒスチジン残基を代替のアミノ酸残基と置き換えるステップをさらに含む。
【0045】
一実施形態において、この方法は、2つ以上の生物学的に関連するpH、例えば約pH5及びpH7において、1つ又は複数の結合ドメインの特性を評価するステップをさらに含む。
【0046】
一実施形態において、変異は、Kdの数値を増大させる。
【0047】
一実施形態において、親和性を増大させる方法を提供する。
【0048】
一実施形態において、親和性を低減させる方法を提供する。
【0049】
一実施形態において、抗体、例えば親抗体を含む血清担体タンパク質の結晶構造は、どの残基を改変/変異させるかを決定する際に用いられる。
【0050】
独立した一態様において、本開示は、以下のパラグラフに記載の方法を提供する:
【0051】
1. 仕立てられた半減期を提供するための血清タンパク質担体結合ドメインを選択する方法であって、前記血清タンパク質担体に特異的なVH/VL対のパネルを提供するステップと、in vivoにおけるそれらの半減期を分析するステップと、ヒト対象においてドメインを含む生物学的分子に要求される半減期に最も厳密に一致するドメインを選択するステップを含む、上記方法。
【0052】
2. 血清担体タンパク質がチロキシン結合タンパク質、トランスサイレチン、α1-酸性糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノゲン及びアルブミン、又はそれらのいずれかの断片から選択される、パラグラフ1に記載の方法。
【0053】
3. 血清タンパク質担体がアルブミンである、パラグラフ2に記載の方法。
【0054】
4. アルブミンがヒト血清アルブミンである、パラグラフ3に記載の方法。
【0055】
5. VH/VL対のパネルが、親抗体における可変ドメインを変異させることによって調製される、パラグラフ1から4までのいずれか1つに記載の方法。
【0056】
6. 変異がVLに対する少なくとも1つの改変である、パラグラフ5に記載の方法。
【0057】
7. VL改変が軽鎖可変ドメイン(VL)における1個又は2個のアミノ酸置換から選択され、変異した結合ドメインの半減期が、変異していない結合ドメインの半減期よりも長い又は短い、パラグラフ6に記載の方法。
【0058】
8. 変異がCDR L1、CDR L2及び/又はCDR L3、特にCDR L2又はCDR L3にある、パラグラフ5から7までのいずれか1つに記載の方法。
【0059】
9. 変異がVLドメインに対する1つの改変又は複数の改変からなる、パラグラフ5から8までのいずれか1つに記載の方法。
【0060】
10. 変異がVHに対する少なくとも1つの改変である、パラグラフ1から8までのいずれか1つに記載の方法。
【0061】
11. 変異が重鎖可変ドメイン(VH)における1つ又は2つの変異及びその組合せであり、変異した結合ドメインの半減期が、変異していない結合ドメインの半減期よりも長い又は短い、パラグラフ9に記載の方法。
【0062】
12. 変異(単数又は複数)がCDR H1、CDRH2及び/又はCDRH3、特にCDR H2又はCDR H3にある、パラグラフ10又は11に記載の方法。
【0063】
13. パネルに用いられるVH及び/又はVLのヒスチジン残基を代替のアミノ酸残基と置き換えるステップをさらに含む、パラグラフ1から12までのいずれか1つに記載の方法。
【0064】
14. 2つ以上の生物学的に関連するpH、例えば約pH5及びpH7において、1つ又は複数の結合ドメインの特性を評価するステップをさらに含む、パラグラフ1から13までのいずれか1つに記載の方法。
【0065】
15. 変異(単数又は複数)がKdの数値を増大させる、パラグラフ1から14までのいずれか1つに記載の方法。
【0066】
16. 親和性が増大される、パラグラフ1から15までのいずれか1つに記載の方法。
【0067】
17. 親和性が低減される、パラグラフ1から15までのいずれか1つに記載の方法。
【0068】
詳細な説明
驚いたことに、本発明者らは、VH及びVLの配列を変異させることができること、また、対応する半減期が必ずしも結合ドメインの親和性に対応しないことを見出した。特に、親和性が保持又は低減され、半減期が長くなるVLに改変することができる。
【0069】
これにより、分子が治療指示に関連する半減期を提供するように半減期を設計しコントロールすることができる。いくつかの実施形態において、長い半減期が望まれ得る。いくつかの実施形態において、中位/中程度の半減期が適切であり得る。他の実施形態において、比較的短い半減期が適切であり得る。
【0070】
本明細書において使用されている仕立てられた半減期は、結合ドメインを改変することにより結合ドメインに特異的に設計された半減期である。
【0071】
本明細書で使用されている「結合ドメイン又は部位」は、抗原と接触する抗体の部分である。一実施形態において、結合ドメインは、少なくとも1つの可変ドメイン又はそれらの誘導体、例えば可変ドメイン又はそれらの誘導体の対、例えば可変ドメイン又はそれらの誘導体の同族対を含有する。
【0072】
一実施形態において、結合ドメインは6つのCDRと1つのフレームワークを含み、これらのエレメントは一緒になって、抗体又は結合断片の結合相互作用の特異性に寄与する。
【0073】
可変領域(また本明細書においては可変ドメインとも呼ばれる)は、一般に、3つのCDRと1つの適切なフレームワークを含む。
【0074】
本明細書において使用されている用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置している、少なくとも1つの抗原認識部位(また本明細書においては結合部位とも呼ばれる)を介して、標的抗原、例えば炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド、ペプチドなどに対して特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を意味する。
【0075】
本明細書において使用される場合の「抗体分子」は、抗体及びそれらの結合断片を包含する。またこの用語は、それらのいずれか1つを含む抗体フォーマットにも及ぶ。
【0076】
本明細書において使用されている親抗体は、半減期を変化させる変異前の出発抗体を意味する。親抗体はヒト化されていてもよく(これはいわゆるドナー残基を含有する逆変異の取り込みを含み得る)、又は例えばCDR等からリシン残基を除去するように変異させることができる。しかし、親抗体に存在する改変は、半減期を変化/改変する目的のためのものでない。本明細書において使用されている親抗体は、抗体結合断片を包含する。
【0077】
本明細書において使用されている「抗体断片」は、限定するものではないが、Fab、改変Fab、Fab’、改変Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体、scFv、2価、3価又は4価抗体、Bis-scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ及び上記のいずれかのエピトープ結合断片を含む、抗体結合断片を意味する(例えば、Holliger及びHudson、2005、Nature Biotech. 23(9):1126~1136;Adair及びLawson、2005、Drug Design Reviews-Online 2(3)、209~217を参照されたい)。これらの抗体断片を作製及び製造する方法は、当技術分野においては周知である(例えば、Vermaら、1998、Journal of Immunological Methods、216:165~181を参照されたい)。本開示で使用するための他の抗体断片は、国際特許出願WO05/003169、WO05/003170、及びWO05/003171に記載されているFab断片及びFab’断片を包含する。多価抗体は、多重特異性、例えば二重特異性を含むことができ、又は単一特異性であってもよい(例えば、WO92/22853、WO05/113605、WO2009/040562、WO2010/035012、WO2015/197772を参照されたい)。
【0078】
本明細書において使用されている「結合断片」は、断片がペプチド又は抗原に特異的なものとして特徴づけるのに十分な親和性で、標的ペプチド又は抗原に結合することができる断片を意味する。
【0079】
本明細書において使用されている特異性(又は特異的)は、相互作用におけるパートナーが互いだけを認識するか、又は非パートナーと比べて互いに対して有意に高い親和性を有し、例えば、結合のバックグラウンドレベルよりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍高い親和性を有することを意味する。
【0080】
本明細書において使用されているパートナーは、抗原と抗体の結合又はリガンドと受容体タイプの結合関係を意味する。
【0081】
本明細書において使用されている少なくとも1つの改変は、例えば、配列の特性を変化させる、例えば疎水性等を変化させるための、アミノ酸の置換、付加又は欠失を意味する。
【0082】
抗体可変ドメインにおける残基は、Kabatら、1987年により考案されたシステムによって慣例的にナンバリングされる。このシステムは、Kabatら、1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(これ以降「Kabatら(上掲)」という)に記載されている。別段の指示のない限り、本明細書においてこのナンバリングシステムを使用する。
【0083】
Kabat残基の明示は、アミノ酸残基の直鎖のナンバリングと必ずしも直接的に対応するものではない。実際の直鎖状アミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造のフレームワークであっても相補性決定領域(CDR)であっても、構成成分の短縮又は構成成分への挿入に対応する、厳密なKabatナンバリングにおける場合よりも少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含み得る。残基の正確なKabatナンバリングは、抗体の配列における相同性の残基を「標準」Kabatナンバリング配列と配列比較することによって、所定の抗体について決定することができる。
【0084】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムによれば、残基31~35(CDR-H1)、残基50~65(CDR-H2)、及び残基95~102(CDR-H3)に位置している。しかし、Chothia(Chothia,C.及びLesk,A.M.、J.Mol.Biol.、196、901~917(1987))によれば、CDR-H1に等価なループは残基26から残基32まで拡大している。したがって、特段の指示のない限り、本明細書において使用されている「CDR-H1」は、KabatナンバリングシステムとChothiaの形態的ループ定義との組合せによって記載されているように、残基26から35までを意味するものとする。
【0085】
本明細書において使用されている用語「Fab断片」は、VL(可変軽鎖)ドメイン及び軽鎖(CL)の定常ドメインを含む軽鎖断片、並びに重鎖のVH(可変重鎖)ドメイン及び第1定常ドメイン(CHI)を含む抗体断片である。
【0086】
本明細書において使用されているFab’断片は、ヒンジ領域をさらに含むFAb断片を意味する。
【0087】
本明細書において使用されている用語「単鎖Fv」又は「scFv」と略記される用語は、(例えばペプチドリンカーによって)連結されているVH抗体ドメイン及びVL抗体ドメインを含みポリペプチド単鎖を形成する、抗体断片を意味する。重鎖及び軽鎖の定常領域は、このフォーマットでは省略されている。本明細書において使用されている単鎖Fvは、ペプチドリンカーに加えてジスルフィド結合が可変領域間に存在する、ジスルフィド安定化バージョンを包含する。
【0088】
ジスルフィド安定化scFvは、可変領域が分離し、再度一緒になることに関係する、いくつかの可変領域の動力学的ブレス傾向を排除すことができる。
【0089】
本明細書において使用されている「単一ドメイン抗体」は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片を意味する。単一ドメイン抗体の例としては、V又はV又はVHが挙げられる。
【0090】
定常領域ドメインは、存在する場合、抗体分子の提唱される機能、特に、必要とされ得るエフェクター機能に関して選択することができる。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMドメインであってよい。特に、抗体分子が治療上の使用について意図され、抗体のエフェクター機能が必要とされる場合、特にIgG1アイソタイプ及びIgG3アイソタイプのヒトIgG定常領域ドメインを使用することができる。或いは、抗体分子が治療上の目的について意図され、抗体のエフェクター機能が必要とされない場合、IgG2アイソタイプ及びIgG4アイソタイプを使用することができる。これらの定常領域ドメインの配列変異体も使用することができることは理解されよう。例えば、Angalら、1993、Molecular Immunology、1993、30:105~108に記載されているような、241位のセリンがプロリンに変化されたIgG4分子を使用してもよい。したがって、抗体がIgG4抗体である実施形態において、抗体は変異S241Pを含み得る。
【0091】
一実施形態において、抗体結合断片はFc領域を含まない。本明細書において使用されている「Fc領域を含まない」とは、例えばCH2、CH3及びCH4などの、より低い定常ドメインが存在しないことを意味する。しかし、CH1、Cカッパ/Cラムダなどの定数ドメインは存在していてもよい。
【0092】
当業者には、抗体が多様な翻訳後修飾を受け得ることは理解されよう。これらの修飾のタイプ及び程度は、多くの場合、抗体の発現に使用される宿主細胞系、並びに培養条件に依存する。このような修飾としては、グリコシル化における変化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化、及びアスパラギン脱アミドが挙げられる。よくある修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端塩基性残基(例えば、リシン又はアルギニン)の欠失である(Harris,RJ.、Journal of Chromatography、705:129~134、1995に記載されている)。したがって、抗体重鎖のC末端のリシンは非存在であり得る。
【0093】
一実施形態において、抗体重鎖はCH1ドメインを含み、抗体軽鎖はカッパ又はラムダいずれかのCLドメインを含む。
【0094】
一実施形態において、抗体重鎖はCH1ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、抗体軽鎖はカッパ又はラムダいずれかのCLドメインを含む。
【0095】
本明細書において用いられている「多重特異性分子」は、少なくとも2つの個別の抗原、例えば異なる抗原に特異的に結合する能力を有する分子を意味する。一実施形態において、多重特異性分子は、二重特異性、三重特異性又は四重特異性分子であり、特に二重特異性分子である。
【0096】
適切な多重特異性分子の例は、当技術分野では公知である。
【0097】
一実施形態において、多重特異性フォーマットは、当技術分野において公知のもの及び本明細書に記載のものを包含し、例えば、この分子フォーマットは、ダイアボディ、scダイアボディ、トリアボディ、トリボディ、テトラボディ、タンデムscFv、FabFv、Fab’Fv、FabdsFv、Fab-scFv、diFab、diFab’、タンデムScFv-Fc、scFv-Fc-scFv、scダイアボディ-Fc、scダイアボディ-CH3、Ig-scFv、scFv-Ig、V-Ig、Ig-V、Duobody及びDVDIgを含む群又はこれらからなる群から選択されるが、これらについては以下でより詳細に論じる。
【0098】
本明細書において用いられている分子は、有機物の、特にタンパク質性の塊を形成する原子群を示すために生化学的な意味で使用され、これは、複合体が形成されたならば、適切な条件下において単一実体として取り扱うのに好適な複合体を包含する。
【0099】
分子及び構築物は、文脈上他を意味しない限り、本明細書において互換的に使用される。しかし、構築物はポリヌクレオチド分子を意味するように使用されることがより多く、分子はアミノ酸配列を主として含む実体を意味するように使用されることがより多い。
【0100】
また、本開示の抗体分子における結合ドメインによって標的とされ得る目的の抗原は、任意の医学的に関連するタンパク質、例えば疾患又は感染の間にアップレギュレートされるそれらのタンパク質、例えば受容体及び/又はそれらの対応するリガンドなどであり得る。細胞表面タンパク質の特定の例としては、接着分子、インテグリン、例えばβ1インテグリン(例えばVLA-4)、E-セレクチン、Pセレクチン又はL-セレクチン、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CDW52、CD69、CD134(OX40)、ICOS、BCMP7、CD137、CD27L、CDCP1、DPCR1、DPCR1、dudulin2、FLJ20584、FLJ40787、HEK2、KIAA0634、KIAA0659、KIAA1246、KIAA1455、LTBP2、LTK、MAL2、MRP2、ネクチン様2、NKCC1、PTK7、RAIG1、TCAM1、SC6、BCMP101、BCMP84、BCMP11、DTD、がん胎児性抗原(CEA)、ヒト乳脂肪グロブリン(HMFG1及び2)、MHCクラスI及びMHCクラスII抗原、並びにVEGFと、適切な場合にはそれらの受容体が挙げられる。
【0101】
可溶性抗原としては、インターロイキン、例えばIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16又はIL-17、IL-21、IL-23、ウイルス抗原、例えば、呼吸器合胞体ウイルス又はサイトメガロウイルス抗原、免疫グロブリン、例えばIgE、インターフェロン、例えばインターフェロンα、インターフェロンβ又はインターフェロンγ、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、コロニー刺激因子、例えばG-CSF又はGM-CSF、並びに血小板由来成長因子、例えばPDGF-α及びPDGF-βと、適切な場合にはそれらの受容体が挙げられる。他の抗原としては、細菌細胞表面抗原、細菌毒素、ウイルス、例えばインフルエンザ、EBV、HepA、B及びC、バイオテロ剤、放射性核種及び重金属、並びにヘビ及びクモ毒液及び毒素が挙げられる。
【0102】
本明細書の文脈において、「含む(comprising)」は「含む(including)」として解釈されたい。
【0103】
また特定の要素を含む本発明の態様は、関連要素「からなる」又は「から本質的になる」代替の実施形態を網羅するものとする。
【0104】
本開示の実施形態及び説明は、技術的に適切な場合には、組み合わせることができる。
【0105】
本明細書に記載されている任意の肯定的な実施形態又はその組合せは、否定的な除外の根拠、すなわち免責事項となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1】抗体CA645のヒト化及び親和性の低減を示す図である。抗体CA645の重鎖配列及び軽鎖配列を、ヒト生殖系列アクセプターフレームワーク配列のVH3 1-3 3-23/JH4及びVκ1 2-1-(1)(L5)/Jκ4と配列比較する。ウサギ残基は赤色、ヒト残基は黒色、CDRは青色である(J領域CDR残基は示されているが、アクセプターV領域CDRは示されていない)。グラフト化VH(gH)配列及びVL(gL)配列は、それらの対応するヒトアクセプター生殖細胞系フレームワークの下に示している。ウサギとヒトのフレームワーク配列の間のフレームワーク配列の相違を星印で示している。ヒト化グラフトに保持されているウサギフレームワーク残基は太字で強調表示している。
図2】CA645 gL4gH5 Fabの存在下又は非存在下におけるFcRnのHSA及びMSAへの結合を示す図である。Fabの非存在下におけるHSAへの結合(赤色丸形)、Fabの存在下におけるHSAへの結合(赤色三角形)、Fabの非存在下におけるMSAへの結合(青色四角形)、Fabの存在下におけるMSAへの結合(青色三角形)。
図3図3(A)は、HSAとの複合体におけるCA645 gL4gH5 Fabの結晶構造を示す図である。図3(B)は、FcRn-HSA複合体、PDBコード4N0Fの結晶構造を有するCA645 Fab-HSAの重ね合わせを示す図である。FcRnは、緑色で示した重鎖とオレンジ色で示した一般的なβ2-マイクログロブリン(β2M)から構成される。図3(C)は、赤色で示した、ミリスチン酸との複合体のPDBコード1BJ5、青色で示した、イブプロフェンとの複合体のPDBコード2BXG、及び赤紫色で示した、ワルファリンとの複合体のPDBコード2BXDにおけるCA645 Fab-HSAとHSAの結晶構造との重ね合わせを示す図である。アルブミンにおける7つの脂肪酸(FA)結合部位も標識されている。
図4】CA645-HSAのRbSAとの重ね合わせを示す図である。図4(A)は364位、図4(B)は320位、及び図4(C)は358位のアルブミン残基の周囲領域をクローズアップした投影図を示す図である。青色で示したCA645重鎖;銀色で示したCA645軽鎖;コムギ色で示したHSA;ピンク色で示したRbSA。クラッシュは、互いに2Å以内にある異なる残基からの2個の重原子として定義され、黒丸によって示してある。
図5】薬物動態を示す図である。CA645 Fabグラフトを10mg/kgでマウスに静脈内注射し、Fabの血清濃度を様々な時点でELISAにより測定した。データは、最初の時点における最大濃度を考慮して正規化した。
図6】血液中の遊離CA645 Fab対MSAに対する親和性のパーセンテージを示す図である。質量作用二次方程式の解を使用して1~10nMのK範囲について算出した遊離Fabの%(青色菱形)。45それぞれ2.2nM、316nM、1146nM及び62400nMのMSAに対して親和性を有するグラフトgL4gH5、gL5gH5、gL4gH37及びgL5gH47の遊離Fabの%を赤色四角形で示している。
図7】本開示の配列を示す図である。
【0107】
表1。抗ヒト血清アルブミン(HSA)抗体の活性プロファイルを示す表である。25μMのアルブミン結合化合物(ワルファリン、イブプロフェン、ミリスチン酸、及び塩化銅)の存在下又は非存在下における100ng/mlのHSAへの結合、及び100ng/mlのラット血清アルブミン(RSA)への結合に関するB細胞上清中の分泌抗HSA抗体の蛍光微量アッセイ技術(FMAT)スクリーニング。FL=蛍光強度。ヒト及びマウス血清アルブミン(MSA)に対する抗HSAウサギFab断片の平衡結合定数(K)、並びに表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定されたHSA、MSA及びRSAに対する等価ヒト化IgG抗体の平衡結合定数。
【0108】
表2。異なる種由来の血清アルブミンに対するCA645 gL4gH5 Fabの親和性を示す表である。SPRによって決定された会合(k)及び解離(k)速度定数、並びに平衡結合定数(K)。
【0109】
表3。X線データ収集及び精密化統計を示す表である。カッコ内の数値は、最高分解能シェルの値である。
【0110】
表4。CA645 Fabグラフトの結合動態及び薬物動態を示す表である。SPRによって決定された会合(k)及び解離(k)速度定数、並びに平衡結合定数(K)。3匹のマウス(M1~3)/群に、10mg/kgで各CA645グラフトを静脈内投与した。各群の平均及び標準偏差(SD)を示した。*は定常状態で測定された。
【0111】
表5。様々なグラフトに対する親和性を示す表である。
【0112】
表6。pH範囲5.0~7.0におけるHSAに対するCA645 gL4gH5 Fabの親和性を示す表である。
【0113】
表7。(A)(B)(C)はCA645 Fabグラフトの結合動態を示す表である。SPRによって決定された会合(k)及び解離(k)速度定数、並びに平衡結合定数(K)。
【実施例0114】
抗体の発見
2匹のハーフロップウサギを、200μgのHSA(Jackson ImmunoResearch)で皮下免疫した。完全フロイントアジュバント(Sigma Aldrich)を最初の用量で同時投与し、その後の用量は不完全フロイントアジュバントを含んでいた。B細胞をウサギ血清から採取し、7日間培養し、クローン増殖及び抗体分泌を誘導した。蛍光微量アッセイ技術(FMAT)を使用してHSAへの結合について上清をスクリーニングした(20~22)。上清を、ビオチン化ヤギ抗ウサギFc及びAlexa Fluor 647 Chrompureヒトアルブミン(Jackson ImmunoResearch)で被覆したストレプトアビジンビーズ(Bangs Laboratories, Inc)と混合した。プレートをApplied Biosystems 8200細胞検出システムで読み取った。蛍光強度(FL)シグナルが最も高い48ウェルをシングルマスタープレートに移し、2回の追加スクリーニング以外は前と同様にスクリーニングを繰り返した。あるスクリーニングにおいて、Alexa Fluor 647 Chrompureヒトアルブミンは、25μM溶液のアルブミン結合剤;ワルファリン、イブプロフェン、ミリスチン酸、及び塩化銅(すべてSigma Aldrichから個別に供給されたもの)と1時間プレインキュベートした。第2のスクリーニングでは、HSAを、Alexa Fluor 647(登録商標)モノクローナル抗体標識キット(Molecular Probes)を使用し、標識したラット血清アルブミン(Sigma Aldrich)で置き換えた。
【0115】
個々のHSA特異的B細胞を蛍光フォーカス法により単離した(20~22)。陽性ウェルからのB細胞を、ビオチン化HSA(Jackson ImmunoResearch)及びヤギ抗ウサギFc断片フルオレセインイソチオシアネートコンジュゲート(Chemicon)で被覆したストレプトアビジンビーズ(Bangs Laboratories、Inc)と混合した。37℃で1時間インキュベーションした後、抗原特異的B細胞を、そのB細胞を取り囲む蛍光ハローの存在によって同定することができた。Olympus IX70顕微鏡及びエッペンドルフマイクロマニピュレーターを使用して個々のB細胞を同定し、PCRチューブに移した。単一細胞の重鎖及び軽鎖免疫グロブリン可変(V)領域遺伝子をRT-PCRによって増幅し、ウサギ重鎖C1及びウサギ軽鎖Cκ領域をそれぞれ含有するUCB哺乳動物発現ベクターにクローニングした。HEK293細胞における一過性発現の後、抗HSA組換えFabを、HSA及びMSAに対するSPR結合アッセイにおいてさらにスクリーニングした。
【0116】
ヒト化
抗体V領域由来のCDRをVκ1及びV3ヒト生殖系列抗体V領域フレームワークにグラフトすることによって、アルブミン特異的抗体をin silicoでヒト化した。ドナーからアクセプター配列にグラフト化されたCDRは、Kabatら32によって定義された通りであったが、Kabatらのループ構造の組み合わされた定義を使用したCDR-H1(残基26~35)は除く(23)。抗原結合の保持にとって重要であると考えられる位置においてフレームワーク残基がドナーウサギ配列と受容体ヒト配列との間で異なる場合、そのとき、ドナー残基は最初の保存的グラフトに含まれていた(21)。保存的グラフト遺伝子は、Entelechon、GmbHによって化学的に合成された。重鎖グラフト遺伝子(gH1)は、1つはヒトγ1C1ドメインを含有し、もう1つは完全ヒトγ1定常領域を含有する2つのUCB発現ベクターにクローニングした。軽鎖グラフト遺伝子(gL1)は、ヒトカッパ定常領域(Km3アロタイプ)を含有するUCB発現ベクターにクローニングした。続いて、これらの構築物をオリゴヌクレオチド指向性変異誘発によって改変し、重鎖グラフト及び軽鎖グラフトの両方の多数の異なる変異体を作製した。重鎖ベクター及び軽鎖ベクターをHEK293細胞に同時トランスフェクトし、SPR結合アッセイを使用して組換えFab又はIgG分子をスクリーニングし、HSA、MSA、RSA、CSA、RbSA及びBSAに対する親和性を測定した。
【0117】
抗体発現
抗体は、293Fectin脂質トランスフェクション(Life Technologies、カタログ番号12347-019、製造業者の指示書による)を使用するHEK-293細胞、又はエレクトロポレーションを使用するCHO-S XE細胞(CHO-K1由来細胞系33)のいずれかで一時的に発現させた。HEK-293細胞を小規模発現(<100ml)に使用してSPR分析用の抗体を調製した。CHO-S XE細胞は大規模発現(1リットル)に使用し、結晶学用及びin vivoでの薬物動態学的研究用の抗体を調製した。
【0118】
タンパク質精製
アフィニティークロマトグラフィーを使用し、培養上清からFabタンパク質を精製した。上清をHiTrap Protein Gカラム(GE Healthcare)上で、カラム接触時間が25分間となる流速で通過させた。PBS pH7.4での洗浄工程の後、結合した物質を0.1MのグリシンpH2.7で溶出し、2M Tris-HCl(pH8.5)で中和した。Fabを含有する画分をプールし、280nmの吸光度により定量し、Amicon Ultra遠心フィルター(Merck Millipore)を使用して濃縮した。単量体の画分を単離するため、pH7.4のPBSで平衡化したHiLoad 16/60、Superdex 200カラム(GE Healthcare)上でのサイズ排除クロマトグラフィーを使用した。単量体Fabを含有する画分をプールし、定量し、濃縮し、4℃で保存した。
【0119】
表面プラズモン共鳴
抗体の相互作用に対する結合親和性及び動態パラメーターは、CM5センサーチップ(GE Healthcare Bio-Sciences AB)及びHBS-EP(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%v/v P20、pH7.4)ランニングバッファーを使用し、Biacore T200又はBiacore 3000のいずれかで行った表面プラズモン共鳴(SPR)により決定した。pH7.0、6.0、5.5及び5.0で分析するため、40mMのクエン酸、80mMのリン酸ナトリウム、50mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%v/v P20のランニングバッファーを使用した。必要なpHは、クエン酸のリン酸ナトリウムに対する比を変更することにより達成した。すべての実験は25℃で実施した。抗体試料は、ヒトF(ab’)特異的又はヒトFc特異的ヤギFab(Jackson ImmunoResearch)のいずれかを使用し、センサーチップ表面に捕捉させた。捕捉抗体の共有結合固定化は、6000~7000応答単位(RU)のレベルまで、標準的なアミンカップリング化学によって達成された。
【0120】
ヒト(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号009-000-051)、マウス(Sigma Aldrich、カタログ番号A3559)、ラット(Sigma Aldrich、カタログ番号A6414)、ウサギ(Sigma Aldrich、カタログ番号A0764)、ウシ(Sigma Aldrich、カタログ番号05470)及びカニクイザル(Equitech-Bio、番号CMSA-0050)アルブミンを捕捉抗体上で、50nM~500μMの各種濃度で滴定した。各アッセイサイクルは、アルブミンの3分間注入からなる会合相の前に、1分間注入を使用して抗体試料を最初に捕捉することからなり、その後、その解離がモニターされた。各サイクルの後、捕捉表面を、40mMのHClによる1分間の注入2回、続いて5mMのNaOHの30秒間の注入で再生した。使用した流速は、捕捉については10μl/分、会合及び解離相の両方については30μl/分、並びに再生については10μl/分であった。ブランクのフローセルを基準減算のために使用し、バッファーブランク注入を機器のノイズ及びドリフトの減算のために含めた。キネティックパラメータは、Biacore T200 Evaluationソフトウェアv2.0.1及びBIAEvaluationソフトウェアv4.1.1を使用し、定常状態親和性モデルを使用してプリズムでフィッティングしたCA645 gL5gH47を除き、標準的な1:1結合モデルに対して結果として得たセンサーグラムを同時にグローバルフィッティングすることによって決定した。
【0121】
SPRによるFcRnのアルブミンへの結合能力に対するCA645 Fabの効果を測定するため、270RU及び247RUのそれぞれのレベルまで個別のフローセル上にHSA及びMSAを固定化することによって調製したCM5チップを用いてBiacore3000機器を使用した。FcRn試料は、ランニングバッファー(100mM MES、150mM NaCl、0.05%v/v P20、pH5.5)中50nM~50μMの範囲で調製し、またそれらの試料は、ゼロ又は100nMのCA645 Fabのいずれかを含有していた。各アッセイサイクルは10μl/分の流速で行い、固定化アルブミンを予め飽和させるための100nM CA645 Fabの5分間注入とそれに続くCA645 Fabの存在下で調製した上記FcRn溶液の1つを5分間注入、又はランニングバッファーの5分間注入とそれに続くCA645 Fabの非存在下での上記FcRn溶液の1つを5分間注入からなっていた。いずれの場合においても、3回目の5分間注入は、それぞれ、バッファー又は100nMのCA645 Fabを含む、「同時注入」モードを使用し、2回目の注入の直後に続けて行った。ブランクのフローセルを基準減算のために使用し、FcRnをバッファーで置き換えたブランクサイクルをドリフト及びノイズの減算のために含めた。サイクル再生は上記の通りであった。FcRnのブランク補正プラトー結合レベルをPrismにプロットし、定常状態モデルに適合させた。
【0122】
またpH5.5での野生型及び変異体CA645 Fabの結合動態は、固定化アルブミンチップを使用し、Biacore3000で逆フォーマットにて調べた。この場合、5~5000nMの範囲のFab溶液が5分間会合相及び解離相で注入されるサイクルを実施した。バッファーブランクサイクルもドリフトの補正に含まれていた。
【0123】
結晶学
複合体を調製するため、精製したCA645 Fab及び脂肪酸非含有HSA(Sigma Aldrich、カタログ番号A3782)を1:1のモル比で混合し、4℃で一晩インキュベートした。50mM NaCl、25mM Tris、5%(v/v)グリセロールで平衡化したHiLoad 16/60、Superdex 200カラム(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィーによって、CA645 Fabと複合体の両方を精製した。CA645 Fab又は複合体のいずれかを含有する画分をプールし、それぞれ10mg/ml及び70mg/mlに濃縮した。結晶成長に好適な条件は、市販の結晶化スクリーン(Qiagen)を使用するシッティングドロップ蒸気拡散法によって同定した。
【0124】
回折品質の結晶を生成するため、1μlのタンパク質溶液を1μlのリザーバー溶液と混合した、ハンギングドロップ蒸気拡散法を使用した。CA645 Fabについては、リザーバーは500μLの2M DL-リンゴ酸を含有していた。結晶を採取し、液体窒素中で凍結保護剤を追加することなく急速凍結させた。2.68Åへの回折データは、Diamond Light Source、Oxford、UKで、単結晶からI04ビームラインで収集し、MOSFLM及びSCALAを使用して処理した(34~36)。CA645 Fabの構造は、サーチモデルとして組織内のFab構造の座標を使用し、Phaserによる分子置換によって解明した。(37)複合体に関しては、リザーバーは、500μLの0.1Mクエン酸 pH4.4、0.1Mのリン酸水素ナトリウム、38%v/vエタノール及び5%v/vポリエチレングリコール1000(PEG1000)を含有していた。この結晶を、25%(v/v)PEG1000を含有する1μlのリザーバーバッファーの液滴に、液滴中のPEG1000の濃度が20%に達するまで、複数回添加することによって凍結保護した。結晶応力を最小にするため、各添加は少なくとも1時間の間隔をおいた。結晶を採取し、液体窒素中で急速凍結した。3.58Åへの回折データは、Diamond Light Source、Oxford、UKで、単結晶からI02ビームラインで収集し、XDSを使用して処理した(38)。複合体の構造は、CA645 Fab構造の座標及びサーチモデルとしてのHSA(PDBコード4G03)39を使用し、Phaserによる分子置換によって解明した。
【0125】
両方の初期構造は、CNS40、41及びCOOT42を使用し、シミュレーテッドアニーリング、エネルギー最小化及びマニュアル再構築の反復サイクルで精密化した。複合体の分解能がかなり低いため、モデルは、精密化中、CNSのDEN機能を使用することにより抑制した。モデル形状は、Molprobity43を使用して確認した。分子の可視化は、Pymol44で行った。データ収集及び精密化統計値を表3に要約する。
【0126】
受託コード
CA645 Fab及びCA645 Fab-HSA複合体の座標及び構造因子は、それぞれ受託コードX及びYでProtein Data Bank(PDB)に寄託されている。
【0127】
マウスの薬物動態
3匹の雄BALB/cマウスに、10mg/kgで抗体を静脈内投与した。一連の血液試料を、投与後100時間までの複数の時点で、尾静脈穿刺により収集した。血清を得るため、血液試料を室温で10,000rpmにて5分間遠心分離し、ELISAにより抗体濃度について分析した。Fab抗原及び抗ヒトカッパ鎖-西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(Stratech)に対する抗体を、それぞれ捕捉抗体及び二次抗体として使用した。Fab抗原の精製試料を標準として使用した。TMBペルオキシダーゼ溶液(Sigma-Aldrich)を使用してプレートを展開し、450nmで読み取った(基準630nm)。薬物動態パラメーターは、Phoenix WinNonlin 6.2ソフトウェアを使用し、最終データセットから算出した。
【0128】
遊離CA645 Fabの算出
20gマウスの血液2ml中の未結合Fab(分子量=47907Da)の濃度を決定するため、10mg/kgでの投与後、以下の式を使用した:(31)
遊離Fab濃度x=(-b+SQRT(b-4ac))/2a
式中、
b=(-(K [Tab])+1+(K [Tag]))
a=K=1/K
c=(-[Tab])
=Fabの親和性
=結合の平衡定数
[Tab]=Fabの濃度(2087nM)
[Tag]=アルブミンの濃度(600μM)
遊離Fabのパーセントを計算するには、遊離Fab(%)=([遊離Fab]/[Tab])100
【0129】
結果
種の間の血清アルブミンに対するmAbの生成及び特性決定
異種間の反応性を有する抗HSA抗体のパネルを作製するため、2匹のウサギをHSAで免疫化した。B細胞を血清から採取し、培養し、刺激してIgGを分泌させ、蛍光マイクロボリュームアッセイ技術(FMAT)を使用してスクリーニングし、抗原特異的ウェルを同定した(20~22)。さらなるFMATスクリーニングは、公知のアルブミン結合化合物;ワルファリン、イブプロフェン、ミリスチン酸及び塩化銅の存在下又は非存在下において、RSAへの結合及びHSAへの結合を評価した。5つの上位ランクの抗体に関するデータを表1に示す。HSAへの結合についての蛍光強度シグナルは、CA645で最も低かった。しかし、CA645は化合物の存在下において80%の結合活性を保持したが、CA646、CA647、CA648及びCA649は40%しか保持しなかった。HSA及びRSAへの結合のレベルは、CA645及びCA646において最も一致し、5倍以内であった。反対に、CA647、CA648及びCA649によるRSAへの結合のレベルは、HSAに関するものよりも9~18倍低かった。
【0130】
5つの抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を回収するため、蛍光フォーカス法を使用して単一のB細胞を単離し、次いでRT-PCRを実施した。可変領域を、ウサギ重鎖C1及び軽鎖定常領域を含む発現ベクターにクローニングし、次いでDNAを配列決定した。これにより、同一の重鎖配列を有するCA645及びCA646を除き、抗体配列が特有であることが明らかになった。CA645及びCA646が重鎖を介して同一エピトープに結合しなければならないことを考慮すると、CA646結合がなぜリガンドの存在によってより影響を受けたのかは不明である。また、配列決定からは、抗体のすべての相補性決定領域(CDR)がヒスチジン残基を欠失していることがわかった。これは、ヒスチジン残基が酸性pHでプロトン化し、これが抗原結合を潜在的に破壊する可能性があることから、これらの抗体のさらなる展開にとって重要であった。
【0131】
HEK293細胞のトランスフェクション後、組換えFab分子を、HSA及びマウス血清アルブミン(MSA)に対する親和性について表面プラズモン共鳴(SPR)により分析した。CA645及びCA646の両方が、HSAについては0.31nM及び0.14nMで、MSAについては2.6nM及び1.6nMで、それぞれ最も強い親和性を示した(表1)。さらに、HSA及びMSAに対するそれらの親和性は、すべての抗体と最も厳密に一致した。これは、HSA及びRSAに対するB細胞上清スクリーニングのデータと一致していた。
【0132】
リード候補のヒト化及び選択
5つのすべての抗体は、CDRをヒトVκ1及びVH3フレームワーク上にグラフト化し、結合活性の保持に重要であると考えられる位置にフレームワーク残基を逆変異させることによってヒト化した(23)。CA645のヒト化のスキームを図1に示す。ウサギドナー重鎖のフレームワーク3領域(残基66~94)がヒトアクセプターフレームワーク配列のものよりも短いことに注目されたい。CA647及びCA649は1残基だけ短いが、CA645及びCA646(同一配列)及びCA648は2残基だけ短い。すべての場合において、ギャップは最初の保存的gL1gH1グラフトに保持された。
【0133】
保存的グラフトはヒトIgG1抗体として発現させ、HSA、MSA及びRSAへの結合についてSPRにより分析した。ヒト化IgGは、組換え親ウサギFabで観察されたものと同様にHSA及びMSAへの結合傾向を示した(表1)。CA647、CA648及びCA649のHSAに対する親和性は、CA645及びCA646のものと類似していたが、MSAに対する親和性は比較により6倍から10倍の低減を示した。またCA648及びCA649のRSAに対する親和性も、CA645及びCA646との比較において5倍から10倍の低減を示した。CA646は、CA645よりもHSA、MSA及びRSAに対してわずかに強い親和性を示したが、一過性発現収率は、161mg/mlとの比較において35mg/mlで4倍低かった(表1)。公知のアルブミン結合剤の存在下におけるHSAへの結合の最大近くの保持、複数の種にわたるアルブミンの一貫した結合活性及び一過性発現における良好な収率に基づいて、CA645をさらなる展開のリード候補として選択した。CA645 gL1gH1のさらなるグラフト変異体は、ウサギドナー残基をヒトアクセプター残基と置き換え、等価ヒト残基を有する重鎖のフレームワーク3のギャップを充填することによって作製した。グラフト変異体を、HSAに対する親和性及び一過性収量発現について評価した(データは示さず)。選択した最終的なグラフト対合はgL4及びgH5であった(図1)。
【0134】
HSA、MSA、RSA及びウサギ血清アルブミン(RbSA)に対するCA645 gL4gH5 Fabの親和性は、それぞれ、4.6nM、7.1nM、54nM及び162nMであることが示された(表2)。重要なことには、カニクイザルの毒性研究及び疾患モデルにおけるCA645 gL4gH5 Fabの有用性について、カニクイザル血清アルブミン(CSA)に対する親和性は、3.3nMでのHSAの親和性と極めて類似していた。さらに、CA645 Fabは、ウシ血清アルブミンに結合することができなかった。
【0135】
CA645 gL4gH5 Fabが初期エンドソームの酸性環境においてアルブミンに結合されたままであるか、細胞表面に再循環されるか否かを判定するために、親和性をpH5.0~7.0で測定した(表S1)。CA645 gL4gH5 FabのpH5.0、pH5.5、pH6.0及びpH7.0でのHSAに対する親和性は、7.1nM、10.7nM、12.5nM及び13.3nMであり、このことは、この生理学的に関連するpHの範囲内で結合がほとんど影響を受けないことを示唆している。
【0136】
HSAがCA645 gL4gH5 Fabの存在下においてFcRnに結合し得るか否かを決定するため、SPRを使用した。動態アッセイは、FcRnによるアルブミンへの最適な結合が確実であるようにpH5.5で行った。HSA又はMSAをセンサーチップに直接結合させ、次いでCA645 gL4gH5 FabをCA645アルブミン結合部位に飽和させるか、又はランニングバッファーをフローセルに注入した。これに続き、FcRn+CA645 Fabの注入、又はFcRn単独の注入を行った。CA645結合部位の飽和を維持するため、CA645 FabをFcRnとの同時注入に含めた。図2は、CA645に関するシグナルを減算した後のHSA及びMSAの両方に結合するFcRnのレベルを示す。両アルブミンに対するFcRnによる結合は、CA645 gL4gH5 Fabの存在によって影響を受けなかった。
【0137】
結晶学
CA645がHSAに結合する場所を同定するため、CA645 Fab-HSA複合体の結晶構造を決定した。CA645 Fab-HSA複合体タンパク質調製物を70mg/mlまで濃縮し(24)、沈殿剤としてエタノール及びPEG1000を使用して結晶化させた。分子置換のある複合体についての構造の解明を促進するため、本発明者らはまた、非結合CA645 Fabの構造も決定した。本発明者らは、Fab及びFab-HSA複合体の両方の単一コピーを、それぞれの結晶の非対称単位で観察した(表3)。遊離Fabの構造は2.68Åまで精密化され、最終Rwork値は21.14%であり、Rfree値は25.13%であった。複合体の構造は3.6Åまで精密化され、最終Rwork値は21.38%であり、Rfree値は25.23%であった。
【0138】
CA645 Fab-HSA複合体の結晶構造は、CA645がHSAのドメインIIに結合することを示した(図3A)。HSA(PDBコード4N0F)25との複合体におけるFcRnの結晶構造の重ね合わせは、CA645がHSAのFcRnへの結合を阻止しないことを示した(図3B)。HSAは、7つの脂肪酸(FA)結合部位を含む。部位FA7及びFA3/FA4は、2つの主要な薬物結合部位である(26)。また薬物は、より低い親和性で、部位FA1、FA5及びFA6でも結合する。金属イオン結合部位は、ドメインI及びドメインIIの間並びにN末端の部位に位置している(27)。ワルファリン(PDBコード2BXD)28、イブプロフェン(PDBコード2BXG)28、及びミリスチン酸(PDBコード1BJ5)29との複合体におけるHSAの結晶構造との複合体の重ね合わせは、CA645が部位FA6の近くに結合し、主薬(FA7及びFA3/FA4)、脂肪酸又は金属イオンの結合部位を閉ざさないことを示した(図3C)。
【0139】
CA645 gL4gH5 FabのHSAへの結合動態は、MSA、CSA、RSA及びRbSA(表2)のものと比較して、結晶構造を目視検査することによって説明することができる。HSA上のエピトープは、残基F206、G207、R209、C316、K317、AEAKD 320~324、K351、E354、E358、K359、C361、A362及びA364によって形成されている。CSA(3.3nM)及びMSA(7.1nM)に対するCA645の親和性は、HSAに対する親和性(4.6nM)と非常に似ている。これは、HSAにおいてエピトープを形成するのと同じ残基のCSA及びMSAにおける存在によるものと思われる。RSAは、グリシンである364位を除き、これらの残基のすべてを共有する。364位は、2つのα-ヘリックス(366~398位及び342~361位)を一緒に連結する短いループ(362~365位)の先端に位置している(図4A)。この短いループは、CA645重鎖のCDRの1及び2によって結合されている。RSAに対するCA645の親和性は、HSAに対する親和性よりも約10倍低い。アラニン側鎖の非存在により、HSAと比較してループの柔軟性が増大し、結合動態が変化する可能性がある。
【0140】
RbSAは、320、358及び364位を除いたすべてのHSAエピトープ残基を共有する。RbSA(PDBコード3V09)30の結晶構造の重ね合わせは、320及び358位でCA645 Fabと明らかなクラッシュを示し、364位で潜在的なクラッシュを示した。RbSAにおいて、364位はアスパラギン酸であり、明らかなクラッシュはなく、この位置は接触残基であり、したがってCA645による結合に影響すると思われる。HSAにおいて、320位はアラニンであり、CDRH2のF58と疎水的相互作用を形成する(図4B)。RbSAにおいて、320位はグルタミン酸であり、CDRH2残基W52及びF58とクラッシュしている。HSA中における残基E358は、CDRH3のS100及びT100aと水素結合ネットワークを形成する(図4C)。RbSAにおける358位はリシンであり、CDRH3のY99とクラッシュしている。RbSAに対するCA645のHSAと比べて弱い親和性は、会合速度の低減が18倍であることに完全に起因する(表2)。これは、320及び358位、並びに場合によっては364位のより大きな側鎖のRbSAにおける存在によって起こると思われる。
【0141】
親和性が低減した変異体の薬物動態学
CA645の半減期とアルブミンに対するその親和性との間の相関関係を調べるため、本発明者らは、広範囲の低減した親和性を有するCA645 gL4gH5 Fabの変異体のパネルを作製し、マウスにおける薬物動態特性を分析した。変異体は、ガイドとしてCA645 gL4gH5 Fab-HSA複合体の結晶構造を使用して設計した。オリゴヌクレオチド指向性変異誘発を使用し、重鎖の6残基位置にわたる20の変異体と軽鎖の6残基位置にわたる27の変異体を作製した(表4、S2A、S2B及びS2C)。BALB/cマウスに、10mg/kgで、CA645 gL4gH5 Fabと、Fab変異体の4つのサブセット、gL5gH5、gL4gH37、gL5gH37及びgL5gH47を用いて単回静脈内注射により投与した。血液血清を103時間にわたってサンプリングし、FabのレベルをELISAにより定量した。
【0142】
CA645 gL5gH37は、SPRによるHSAに対する検出可能な結合は示さず、わずか0.48±0.06時間の血清半減期で急速に消失した(表4)。これは、ラットで観察された抗TNF Fabの短い半減期(0.7時間)と一致する(19)。反対に、gL4gH5は、84±4.6時間の有意に延長された半減期を示した。gL4gH5との薬物動態プロフィールに差がなかった親和性が最も弱い変異体は、gL5gH5であった(図5)。gL5gH5は、軽鎖に単一の変異のW30Aを含み、その親和性は453nMであった。この親和性はgL4gH5の親和性(1.23nM)よりも368倍弱かったが、その半減期(96.7±20.4時間)はgL4gH5の半減期と同等であった。gL4gH37に関する薬物動態プロファイルでの変化が観察された。これは、重鎖において単一の変異であるF58Eを有し、その親和性は955nMであった。この親和性はgL4gH5よりも776倍低かったが、半減期は61±16.8時間にまで延長していた。gL5gH47は、軽鎖に1つの変異W30Aを含有し、重鎖に1つの変異T100aSを含有しており、定常状態SPRによって測定した場合、52μMの親和性を有していた。この親和性はgL4gH5の親和性より42,276倍弱かったが、薬物動態プロファイルはgL4gH37と著しく異なることなく、半減期は26.3±3.1時間に増加した。
【0143】
変異体は、HSAに対する親和性に基づき設計及び選択されたが、薬物動態モデルはマウスであった。したがって、HSAの変異体の親和性がマウスにおけるアルブミンに対する親和性を反映することを確認するため、SPRを繰り返した(表5)。gL4gH5及びgL5gH5の親和性は、HSAに関しては1.8nM及び254nMであり、同様にMSAに関しては2.2nM及び316nMであった。これらのデータは、それぞれ1.23nM及び453nMである、HSAに関するgL4gH5及びgL5gH5の以前に決定された親和性と一致していた。
【0144】
質量作用二次方程式の解を使用し、本発明者らは、各変異体についての血液中の遊離Fabの割合を推定することができる(31)。MSA(65.9kDa)の濃度が44g/Lであり、20gマウスの血液量が2mlであると仮定した場合、10mg/kgの用量では、CA645 Fab(47.9kDa)の濃度は2087nMである。図6は、1~10nMの範囲における遊離Fabのアルブミンに対する親和性の割合のグラフを示す。2.2nMのMSAに対する親和性で、gL4gH5 Fabのちょうど0.0003%が血液中で未結合であると予測される。gL5gH5 FabのMSAに対する親和性は、316nMである。これは、gL4gH5のものと一致する薬物動態プロファイル及び半減期を有し、0.05%で同様に低いレベルの遊離Fabを有していると算出される。本発明者らは、MSAに対するgL4gH37及びgL5gH47 Fabの親和性を測定することはできなかった。しかし、gL4gH5及びgL5gH5の親和性が両方ともHSAよりもMSAに対して1.2倍弱かったので(表5)、gL4gH37及びgL5gH47の親和性は比例して1.2倍弱いと予測するのが適当である。したがって、1146nM及び62.4μMのMSAに対する予測親和性では、gL4gH37の0.17%及びgL5gH47の8.57%がそれぞれ潜在的に血液中に遊離していると算出される。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】
【0149】
【表5】
【0150】
【表6】
【0151】
【表7】
【0152】
【表8】
【0153】
【表9】
【0154】
(参考文献)



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2022115961000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清担体タンパク質に特異的なVH及びVLを含む結合ドメインであって、該結合ドメインが、軽鎖可変ドメイン(VL)における1個又は2個のアミノ酸置換、重鎖可変ドメイン(VH)における1個又は2個の変異、及びそれらの組合せからなる群から選択される改変によって変異しており、該変異した結合ドメインが、変異していない結合ドメインの半減期よりも長い又は短い半減期を有するが、但し、該変異は、配列番号1のI50A、T56A、T95A、V96A、P97A、G98A、Y99A、S100A、T100Aa、Y100Ca、I50A及びT95A、I50A及びG98A、I50A及びY99A、T56A及びT95A、T56A及びG98A、並びにT56A及びY99Aからなる群から選択される変異以外である、上記結合ドメイン
上記結合ドメインを含む抗体分子、或いは
上記結合ドメイン又は上記抗体分子を含む医薬組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0153
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0153】
【表9】

本発明の態様には以下の好ましい態様が含まれる。
(1)
血清担体タンパク質に特異的なVH及びVLを含む結合ドメインであって、該結合ドメインが、軽鎖可変ドメイン(VL)における1個又は2個のアミノ酸置換、重鎖可変ドメイン(VH)における1個又は2個の変異、及びそれらの組合せから選択される改変によって変異しており、該変異した結合ドメインが、変異していない結合ドメインの半減期よりも長い又は短い半減期を有するが、但し、該変異は、配列番号1のI50A、T56A、T95A、V96A、P97A、G98A、Y99A、S100A、T100Aa、Y100Ca、I50A及びT95A、I50A及びG98A、I50A及びY99A、T56A及びT95A、T56A及びG98A、並びにT56A及びY99Aからなる変異以外である、上記結合ドメイン。
(2)
血清担体タンパク質がチロキシン結合タンパク質、トランスサイレチン、α1-酸性糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノゲン及びアルブミン、又はそれらのいずれかの断片から選択される、(1)に記載の結合ドメイン。
(3)
血清担体タンパク質がアルブミン、例えばヒト血清アルブミンである、(2)に記載の結合ドメイン。
(4)
アルブミンのドメインIIに結合する、(3)に記載の結合ドメイン。
(5)
変異がVLにおける少なくとも1つの置換である、(1)から(4)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
(6)
変異がVLにおける1個のアミノ酸の置換である、(5)に記載の結合ドメイン。
(7)
変異がVLにおける2個のアミノ酸の置換である、(5)に記載の結合ドメイン。
(8)
変異がL1、L2、L3及びそれらの組合せから選択されるCDRにある、(5)から(7)
までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
(9)
CDRがL1である、(8)に記載の結合ドメイン。
(10)
変異したアミノ酸(単数又は複数)が26、27、28、29、30、31、32、33、34及び35位から独立して選択される、(9)に記載の結合ドメイン。
(11)
位置が30位である、(10)に記載の結合ドメイン。
(12)
関連する位置(単数又は複数)のアミノ酸が、例えば、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン及びグリシンから選択される疎水性残基、例えばアラニンによって置き換えられている、(10)又は(11)に記載の結合ドメイン。
(13)
変異がVLに対する改変からなる、(5)から(11)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
(14)
変異がVHドメインにある、(1)から(12)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
(15)
変異がVHにおける1個のアミノ酸の置換である、(14)に記載の結合ドメイン。
(16)
変異がVHにおける2個のアミノ酸の置換である、(14)に記載の結合ドメイン。
(17)
変異がH1、H2、H3及びそれらの組合せから選択されるCDRにある、(15)又は(16)に記載の結合ドメイン。
(18)
CDRがH2及び/又はH3である、(17)に記載の結合ドメイン。
(19)
CDRがH2である、(18)に記載の結合ドメイン。
(20)
変異したアミノ酸(単数又は複数)が50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64又は65位から独立して選択される、(14)から(19)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
(21)
関連する位置(単数又は複数)のアミノ酸が、例えば、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン及びグリシンから選択される疎水性残基、例えばアラニンによって置き換えられている、(20)に記載の結合ドメイン。
(22)
CDRがH3である、(18)から(21)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
(23)
変異したアミノ酸(単数又は複数)が95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106又は107位から独立して選択される、(22)に記載の結合ドメイン。
(24)
残基101が変異している、(23)に記載の結合ドメイン。
(25)
関連する位置(単数又は複数)のアミノ酸が、例えば、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン及びグリシンから選択される疎水性残基、例えばアラニンによって置き換えられている、(23)又は(24)に記載の結合ドメイン。
(26)
1つ又は複数のアミノ酸置換が非保存的アミノ酸置換である、(1)から(25)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
(27)
非保存的アミノ酸が天然アミノ酸のアラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、プロリン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される、(26)に記載の結合ドメイン。
(28)
CDRグラフト化可変ドメインを含む、(1)から(27)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
(29)
ヒト化されている、(28)に記載の結合ドメイン。
(30)
ヒト化結合ドメインがVH及び/又はVLにおけるヒトフレームワークを含む、(29)に記載の結合ドメイン。
(31)
VHフレームワークが、例えば1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸置換、例えばドナー残基であるアミノ酸を含む、ヒト(例えばVH3 1-3 3-23などのVH3)である、(30)に記載の結合ドメイン。
(32)
VHが配列番号2、3、4、5若しくは6(特に5若しくは6)に示した配列、又は少なくとも95、96、97、98若しくは99%の類似性又は同一性を有するそれらのいずれか1つの変異体、例えば配列番号2、3、4、5若しくは6(特に5若しくは6)に示した配列を有する、(31)に記載の結合ドメイン。
(33)
VLフレームワークが、例えば1、2又は3個のアミノ酸置換、例えばドナー残基であるアミノ酸を含む、ヒト(例えば2-1-(1)L5などのVκ1)である、(30)から(31)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
(34)
VLドメインが配列番号6、7、8及び9から選択される配列、又は少なくとも95、96、97、98若しくは99%の類似性又は同一性を有するそれらのいずれか1つの変異体、例えば配列番号6、7、8及び9(特に8若しくは9)から選択される配列を含む、(1)から(33)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン。
(35)
VH及びVL配列が配列番号2及び6、2及び7、2及び8、2及び9、3及び6、3及び7、3及び8、3及び9、4及び6、4及び7、4及び8、4及び9、5及び6、5及び7、5及び8、並びに5及び9の組合せ、又は少なくとも95、96、97、98若しくは99%の類似性又は同一性を有するそれらのいずれか1つの変異体若しくは複数の変異体から選択される、(36)に記載の結合ドメイン。
(36)
VL及びVH配列がそれぞれ配列番号9及び配列番号3である、(35)に記載の結合ドメイン。
(37)
VL及びVH配列がそれぞれ配列番号8及び配列番号4である、(35)に記載の結合ドメイン。
(38)
VL及びVH配列がそれぞれ配列番号9及び配列番号5である、(35)に記載の結合ドメイン。
(39)
VL及びVH配列がそれぞれ配列番号9及び配列番号4である、(35)に記載の結合ドメイン。
(40)
(1)から(39)までのいずれか一項に記載の結合ドメインを含む抗体分子。
(41)
(1)から(39)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン又は(40)に記載の抗体分子を含む医薬組成物。
(42)
(1)から(39)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン、(40)に記載の抗体分子、又は(41)に記載の医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む、患者を処置する方法。
(43)
処置で使用するための、(1)から(39)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン、(40)に記載の抗体分子、又は(41)に記載の医薬組成物。
(44)
処置で、特に、感染(ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫)、感染に関連する内毒素性ショック、関節炎、例えば関節リウマチ、喘息、例えば重度の喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、脈管炎、術後癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、中枢神経系及び末梢神経系の免疫媒介性炎症性障害、例えば多発性硬化症、狼瘡(例えば全身性エリテマトーデス)及びギラン・バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化性肺胞炎、グレーヴス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、他の自己免疫疾患、膵臓炎、外傷(外科)、移植片対宿主疾患、移植片拒絶、虚血性疾患を含む心臓病、例えば心筋梗塞並びにアテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症、並びに、乳がん、肺がん、胃がん、卵巣がん、肝細胞がん、結腸がん、膵臓がん、食道がん、頭頚部がん、腎臓がん、特に腎細胞がん、前立腺がん、肝臓がん、メラノーマ、肉腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、胎盤絨毛がん、子宮頸がん及び甲状腺がん、並びにその転移形態を含むがんからなる群から選択される処置で使用するための、(1)から(39)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン、(40)に記載の抗体分子、又は(41)に記載の医薬組成物。
(45)
例えば、感染(ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫)、感染に関連する内毒素性ショック、関節炎、例えば関節リウマチ、喘息、例えば重度の喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、脈管炎、術後癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、中枢神経系及び末梢神経系の免疫媒介性炎症性障害、例えば多発性硬化症、狼瘡(例えば全身性エリテマトーデス)及びギラン・バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化性肺胞炎、グレーヴス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫症、他の自己免疫疾患、膵臓炎、外傷(外科)、移植片対宿主疾患、移植片拒絶、虚血性疾患を含む心臓病、例えば心筋梗塞並びにアテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎、低酸症、並びに、乳がん、肺がん、胃がん、卵巣がん、肝細胞がん、結腸がん、膵臓がん、食道がん、頭頚部がん、腎臓がん、特に腎細胞がん、前立腺がん、肝臓がん、メラノーマ、肉腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、胎盤絨毛がん、子宮頸がん及び甲状腺がん、並びにその転移形態を含むがんからなる群から選択される処置のための医薬の製造における、(1)から(39)までのいずれか一項に記載の結合ドメイン、(40)に記載の抗体分子、又は(41)に記載の医薬組成物の使用。
【外国語明細書】