(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115962
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】CD73特異的結合分子及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220802BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220802BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220802BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220802BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220802BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220802BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220802BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220802BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220802BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K39/395 E
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076020
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2020142374の分割
【原出願日】2015-11-09
(31)【優先権主張番号】62/077,486
(32)【優先日】2014-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/147,329
(32)【優先日】2015-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/188,999
(32)【優先日】2015-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミンター,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ラスト,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ギヤール,サンドリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジャームツス,ルッツ,ユー
(72)【発明者】
【氏名】ヘイ,カール
(72)【発明者】
【氏名】サッシェンメイヤー,クリス
(72)【発明者】
【氏名】サルト,エリン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,チーフイ
(72)【発明者】
【氏名】パブリーク,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ダムシュローダー,メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リー
(72)【発明者】
【氏名】ディードリッヒ,グンド
(72)【発明者】
【氏名】リオス-ドリア,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ホリングスワース,ロバート,イー
(72)【発明者】
【氏名】ダーラム,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】レオウ,チン,チン
(72)【発明者】
【氏名】アントニーサミー,メアリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーゲガン,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】リュー,シャオジュン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンタール,キム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】腫瘍媒介性免疫抑制を低減するための改良された組成物及び方法を提供する。
【解決手段】本開示は、抗CD73結合分子、例えば、抗体及びその抗原結合断片を提供する。また、開示される組成物を含む医薬製剤、並びにCD73発現に関連する疾患、例えば癌の診断及び治療方法も提供される。かかる疾患は、例えば、本明細書に開示される抗CD73結合分子(例えば、CD73に結合するネイキッド抗体又は抗体-薬物コンジュゲート)での直接療法によるか、免疫チェックポイント阻害薬(例えば、抗CTLA-4及び抗PD-1モノクローナル抗体)などの他の抗原結合抗癌剤とのアジュバント療法によるか、及び/又は抗CD73分子が化学療法の前、その後、又はそれと同時に投与される併用療法により治療することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体VLを含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、前記VLが、アミノ酸配列:
[FW1]SGSLSNIGRNX1VN[FW2]LX2NX3RX4X5[FW3]ATWDDSX6X7GWX8[FW4]
(式中、[FW1]、[FW2]、[FW3]及び[FW4]はVLフレームワーク領域を表し、ここで、X1はアミノ酸残基プロリン(P)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)を表し、X2はアミノ酸残基アスパラギン(N)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X3はアミノ酸残基グルタミン(Q)又はロイシン(L)を表し、
X4はアミノ酸残基ロイシン(L)又はプロリン(P)を表し、
X5はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X6はアミノ酸残基ロイシン(L)又はヒスチジン(H)を表し、
X7はアミノ酸残基リジン(K)、プロリン(P)、イソロイシン(I)又はアスパラギン(N)を表し、及び
X8はアミノ酸残基ロイシン(L)又はスレオニン(T)を表す)を含む、単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項2】
FW1が配列番号25又は26を含み、FW2が配列番号27又は28を含み、FW3が配列番号29を含み、及びFW4が配列番号30を含む、請求項1に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項3】
抗体VHを含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、前記VHが、アミノ酸配列:
[FW5]SYAX9S[FW6]X10IX11GSX12GX13TYYADSVKG[FW7]LGYX14X15X16DX17[FW8]
(式中、[FW5]、[FW6]、[FW7]及び[FW8]はVHフレームワーク領域を表し、ここで、
X9はアミノ酸残基メチオニン(M)又はチロシン(Y)を表し、
X10はアミノ酸残基ロイシン(L)又はアラニン(A)を表し、
X11はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はセリン(S)を表し、
X12はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はグリシン(G)を表し、
X13はアミノ酸残基セリン(S)又はアルギニン(R)を表し、
X14はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X15はアミノ酸残基アルギニン(R)又はスレオニン(T)を表し、
X16はアミノ酸残基バリン(V)又はイソロイシン(I)を表し、及び
X17はアミノ酸残基チロシン(Y)、リジン(K)、メチオニン(M)、ロイシン(L)又はグルタミン酸(E)を表す)を含む、単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項4】
FW5が配列番号31を含み、FW6が配列番号32を含み、FW7が配列番号33を含み、及びFW8が配列番号34を含む、請求項3に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項5】
抗体VL及び抗体VHを含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、前記VLが、アミノ酸配列:
[FW1]SGSLSNIGRNX1VN[FW2]LX2NX3RX4X5[FW3]ATWDDSX6X7GWX8[FW4]
(式中、[FW1]、[FW2]、[FW3]及び[FW4]はVLフレームワーク領域を表し、ここで、
X1はアミノ酸残基プロリン(P)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X2はアミノ酸残基アスパラギン(N)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X3はアミノ酸残基グルタミン(Q)又はロイシン(L)を表し、
X4はアミノ酸残基ロイシン(L)又はプロリン(P)を表し、
X5はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X6はアミノ酸残基ロイシン(L)又はヒスチジン(H)を表し、
X7はアミノ酸残基リジン(K)、プロリン(P)、イソロイシン(I)又はアスパラギン(N)を表し、及び
X8はアミノ酸残基ロイシン(L)又はスレオニン(T)を表す)を含み、前記VHが、アミノ酸配列:
[FW5]SYAX9S[FW6]X10IX11GSX12GX13TYYADSVKG[FW7]LGYX14X15X16DX17[FW8]
(式中、[FW5]、[FW6]、[FW7]及び[FW8]はVHフレームワーク領域を表し、ここで、
X9はアミノ酸残基メチオニン(M)又はチロシン(Y)を表し、
X10はアミノ酸残基ロイシン(L)又はアラニン(A)を表し、
X11はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はセリン(S)を表し、
X12はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はグリシン(G)を表し、
X13はアミノ酸残基セリン(S)又はアルギニン(R)を表し、
X14はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X15はアミノ酸残基アルギニン(R)又はスレオニン(T)を表し、
X16はアミノ酸残基バリン(V)又はイソロイシン(I)を表し、及び
X17はアミノ酸残基チロシン(Y)、リジン(K)、メチオニン(M)、ロイシン(L)又はグルタミン酸(E)を表す)を含む、単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項6】
FW1が配列番号25又は26を含み、FW2が配列番号27又は28を含み、FW3が配列番号29を含み、FW4が配列番号30を含み、FW5が配列番号31を含み、FW6が配列番号32を含み、FW7が配列番号33を含み、及びFW8が配列番号34を含む、請求項5に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項7】
抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項8】
抗体VLを含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、前記VLが、それぞれ、配列番号46、49及び53;配列番号47、49、及び53;配列番号47、49、及び54;配列番号46、50、及び54;配列番号46、51、及び55;配列番号48、52、及び54;配列番号46、49、及び56;配列番号47、49、及び56;配列番号46、50、及び56;配列番号46、51、及び56;又は配列番号48、52、及び56と同一であるか、又はVL-CDRの1つ以上における4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3アミノ酸配列を含む、単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項9】
抗体VHを含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、前記VHが、それぞれ、配列番号35、37及び41;配列番号36、37、及び42;配列番号36、38、及び43;配列番号36、39、及び44;配列番号36、40、及び44;配列番号35、37、及び45;配列番号36、37、及び45;配列番号36、38、及び45;配列番号36、39、及び45;又は配列番号36、40、及び45と同一であるか、又はVH-CDRの1つ以上における4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3アミノ酸配列を含む、単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項10】
抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項8又は9に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項11】
配列番号46、49、53、35、37、及び41;配列番号47、49、53、35、37、及び41;配列番号47、49、54、36、37、及び42;配列番号46、50、54、36、38、及び43;配列番号46、51、55、36、39、及び44;配列番号48、52、54、36、40、及び44;配列番号46、49、56、35、37、及び41;配列番号46、49、53、35、37、及び45;配列番号47、49、56、36、37、及び45;配列番号46、50、56、36、38、及び45;配列番号46、51、56、36、39、及び45;配列番号48、52、56、36、40、及び45;又は配列番号46、49、56、35、37、及び45と同一であるか、又は1つ以上のCDRにおける4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVL-CDR1、VL-CRD2、VL-CDR3、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3アミノ酸配列を含むVL及びVHを含む、CD73に特異的に結合する単離抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項11に記載の単離抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
配列番号68を含むVLと配列番号82を含むVHとを含む、単離抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
配列番号68から本質的になるVLと配列番号82から本質的になるVHとを含む、単離抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
配列番号68からなるVLと配列番号82からなるVHとを含む、単離抗体又はその抗原結合断片。
【請求項16】
重鎖定常領域又はその断片を含む、請求項7に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項17】
重鎖定常領域又はその断片を含む、請求項10に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項18】
重鎖定常領域又はその断片を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の単離抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
請求項7又は10~18のいずれか一項に記載の単離抗体又はその抗原結合断片をコードする配列を含む核酸。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸配列を含む宿主細胞。
【請求項21】
請求項7又は10~18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を作製する方法であって、(a)請求項20に記載の細胞を培養するステップと、(b)前記抗体又はその抗原結合断片を単離するステップとを含む方法。
【請求項22】
CD73のアンタゴニストである、請求項7に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項23】
CD73のアンタゴニストである、請求項10に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項24】
CD73のアンタゴニストである、請求項11~15のいずれか一項に記載の単離抗体又はその抗原結合断片。
【請求項25】
前記CD73がヒトCD73である、請求項22に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項26】
前記CD73がヒトCD73である、請求項23に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項27】
前記CD73がヒトCD73である、請求項24に記載の単離抗体又はその抗原結合断片。
【請求項28】
癌の治療用医薬の製造における、請求項7~27のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の使用。
【請求項29】
前記癌が、結腸直腸癌、膵癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、神経膠腫、膠芽腫、メラノーマ、卵巣癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌、及び乳癌からなる群から選択される、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
参照と比べてCD73の発現が増加した腫瘍を有すると同定された対象を治療するための医薬の製造における、抗CD73抗体又はその抗原結合断片の使用。
【請求項31】
前記抗CD73抗体がMEDI9447又はPhen0203 hIgG1である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記対象が、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4療法を受けているか、受けたことがあるか、又は受ける予定である、請求項30又は31に記載の使用。
【請求項33】
前記抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4療法が、抗PD-1、抗PD-L1、若しくは抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記抗PD-1抗体が、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、ランブロリズマブ、MK-3475)、ニボルマブ(OPDIVA(登録商標)、BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、AMP-224、又はその抗原結合断片である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記抗PD-L1抗体が、MEDI4736、BMS-936559、若しくはMPDL3280A又はその抗原結合断片である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記抗CTLA-4抗体が、イピリムマブ、トレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)、又はその抗原結合断片である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
有効量の抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片とを含む医薬製剤。
【請求項38】
前記抗CD73抗体が、MEDI9447、Phen0203 hIgG1、又はその抗原結合断片である、請求項37に記載の医薬製剤。
【請求項39】
前記抗PD-L1抗体が、MEDI4736、BMS-936559、若しくはMPDL3280A、又はその抗原結合断片である、請求項37又は38に記載の医薬製剤。
【請求項40】
有効量の抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片とを含む医薬製剤。
【請求項41】
前記抗CD73抗体が、MEDI9447、Phen0203 hIgG1、又はその抗原結合断片である、請求項40に記載の医薬製剤。
【請求項42】
前記抗CTLA4抗体が、イピリムマブ若しくはトレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)、又はその抗原結合断片である、請求項40又は41に記載の医薬製剤。
【請求項43】
抗体VL及び抗体VHを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、Val144、Lys180、及びAsn185に対応する1つ以上のアミノ酸を含むCD73タンパク質のエピトープに特異的に結合する、単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項44】
Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応する1つ以上のアミノ酸を更に含む、請求項43に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項45】
Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応する前記アミノ酸を含む、請求項43又は44に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項46】
Tyr135、Lys136、Asn185、Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応する前記アミノ酸を含む、請求項43又は44に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項47】
CD73タンパク質の以下の領域:Tyr132~Val144及び/又はLys180~Asn187のうちの1つ以上におけるエピトープと結合する、請求項43又は44に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【請求項48】
Tyr132~Val144及び/又はLys180~Asn187におけるアミノ酸配列を含む、請求項43又は44に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
CD73又はエクト-5’-ヌクレオチダーゼ(5’-NT)は幾つもの組織に遍在的に発現する。このタンパク質はグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)連結を介して細胞膜にアンカリングし、細胞外酵素活性を有し、シグナル伝達において役割を果たす。CD73の主な機能は、概して細胞非透過性である細胞外ヌクレオチド(例えば5’-AMP)を、多くの細胞に容易に進入し得るその対応するヌクレオシド(例えばアデノシン)に変換することである。CD73のAMP脱リン酸化によるアデノシン産生は多くの組織においてアデノシン受容体会合を調節することが示されており、アデノシンが細胞保護、細胞成長、血管新生及び免疫抑制において機能すると共に、腫瘍発生においても役割を果たすことが示唆される。
【0002】
結腸直腸癌、膵癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、神経膠腫、膠芽腫、メラノーマ、卵巣癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌、及び乳癌を含めた幾つかの種類の癌において、腫瘍細胞上のCD73発現が報告されている。CD73の発現上昇はまた、腫瘍侵襲性、転移、及び患者生存期間の低下とも関連付けられている。CD73は、アデノシンレベルの増加によって特徴付けられる免疫抑制環境を作り出し、それが癌の発生及び進行を促進する。特に、CD73発現は、メラノーマ及び乳癌における前転移性表現型と関連付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
免疫チェックポイント阻害薬は、癌療法として多大な可能性を有している。それにも関わらず、免疫チェックポイント阻害の臨床的有益性はそれほど得られていない。1つの可能性のある説明は、腫瘍が重なりのない免疫抑制機構を用いて免疫エスケープを促進するというものである。従って、腫瘍媒介性免疫抑制を低減するための改良された組成物及び方法が喫緊に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供する。一部の態様において、かかるCD73結合分子は、例えば、抗体又はその抗原結合断片である。詳細な実施形態において、本発明の抗CD73抗体(例えば、MEDI9447)は、腫瘍媒介性免疫抑制の低減に有用である。従って、本発明はまた、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447)と癌免疫サイクルの別の側面を標的化する他の薬剤(即ち抗PD-1又は抗PD-L1抗体;抗CTLA4抗体、A2aRアンタゴニスト、STAT-3阻害薬)とを特徴とする治療的併用も提供し、かかる併用の使用方法は、腫瘍媒介性免疫抑制の低減に有用である。
【0005】
一態様において、本発明は、CD73エピトープに特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、結合分子は、CD730002、CD730003、CD730004、CD730008、CD730010、CD730011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、又はCD730058から選択される抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を有する抗体又はその抗原結合断片と同じCD73エピトープに特異的に結合する。
【0006】
別の態様において、本発明は、CD73に特異的に結合し、且つCD730002、CD730003、CD730004、CD730008、CD730010、CD730011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、又はCD730058のVH及びVLを含む抗体又はその抗原結合断片によるCD73結合を競合的に阻害する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、抗体VLを含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VLは、アミノ酸配列:
[FW1]SGSLSNIGRNX1VN[FW2]LX2NX3RX4X5[FW3]ATWDDSX6X7GWX8[FW4]
(式中、[FW1]、[FW2]、[FW3]及び[FW4]はVLフレームワーク領域を表し、ここで、X1はアミノ酸残基プロリン(P)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)を表し、X2はアミノ酸残基アスパラギン(N)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X3はアミノ酸残基グルタミン(Q)又はロイシン(L)を表し、
X4はアミノ酸残基ロイシン(L)又はプロリン(P)を表し、
X5はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X6はアミノ酸残基ロイシン(L)又はヒスチジン(H)を表し、
X7はアミノ酸残基リジン(K)、プロリン(P)、イソロイシン(I)又はアスパラギン(N)を表し、及び
X8はアミノ酸残基ロイシン(L)又はスレオニン(T)を表す)を有する。本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、請求項6に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片であり、FW1は配列番号25又は26を含み、FW2は配列番号27又は28を含み、FW3は配列番号29を含み、及びFW4は配列番号30を含む。
【0008】
別の態様において、本発明は、抗体VHを含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VHは、アミノ酸配列:
[FW5]SYAX9S[FW6]X10IX11GSX12GX13TYYADSVKG[FW7]LGYX14X15X16DX17[FW8]
(式中、[FW5]、[FW6]、[FW7]及び[FW8]はVHフレームワーク領域を表し、ここで、
X9はアミノ酸残基メチオニン(M)又はチロシン(Y)を表し、
X10はアミノ酸残基ロイシン(L)又はアラニン(A)を表し、
X11はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はセリン(S)を表し、
X12はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はグリシン(G)を表し、
X13はアミノ酸残基セリン(S)又はアルギニン(R)を表し、
X14はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X15はアミノ酸残基アルギニン(R)又はスレオニン(T)を表し、
X16はアミノ酸残基バリン(V)又はイソロイシン(I)を表し、及び
X17はアミノ酸残基チロシン(Y)、リジン(K)、メチオニン(M)、ロイシン(L)又はグルタミン酸(E)を表す)を有する。
【0009】
別の態様において、本発明は、抗体VL及び抗体VHを含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VLは、アミノ酸配列:
[FW1]SGSLSNIGRNX1VN[FW2]LX2NX3RX4X5[FW3]ATWDDSX6X7GWX8[FW4]
(式中、[FW1]、[FW2]、[FW3]及び[FW4]はVLフレームワーク領域を表し、ここで、
X1はアミノ酸残基プロリン(P)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X2はアミノ酸残基アスパラギン(N)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X3はアミノ酸残基グルタミン(Q)又はロイシン(L)を表し、
X4はアミノ酸残基ロイシン(L)又はプロリン(P)を表し、
X5はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X6はアミノ酸残基ロイシン(L)又はヒスチジン(H)を表し、
X7はアミノ酸残基リジン(K)、プロリン(P)、イソロイシン(I)又はアスパラギン(N)を表し、及び
X8はアミノ酸残基ロイシン(L)又はスレオニン(T)を表す)を有し、VHは、アミノ酸配列:
[FW5]SYAX9S[FW6]X10IX11GSX12GX13TYYADSVKG[FW7]LGYX14X15X16DX17[FW8]
(式中、[FW5]、[FW6]、[FW7]及び[FW8]はVHフレームワーク領域を表し、ここで、
X9はアミノ酸残基メチオニン(M)又はチロシン(Y)を表し、
X10はアミノ酸残基ロイシン(L)又はアラニン(A)を表し、
X11はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はセリン(S)を表し、
X12はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はグリシン(G)を表し、
X13はアミノ酸残基セリン(S)又はアルギニン(R)を表し、
X14はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X15はアミノ酸残基アルギニン(R)又はスレオニン(T)を表し、
X16はアミノ酸残基バリン(V)又はイソロイシン(I)を表し、及び
X17はアミノ酸残基チロシン(Y)、リジン(K)、メチオニン(M)、ロイシン(L)又はグルタミン酸(E)を表す)を有する。
【0010】
別の態様において、本発明は、抗体VLを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VLは、配列番号49、配列番号50、配列番号51又は配列番号52と同一であるか、又は4、3、2若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVL相補性決定領域2(VL-CDR2)アミノ酸配列を有する。
【0011】
別の態様において、本発明は、抗体VLを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VLは、配列番号53、配列番号54、配列番号55、又は配列番号56と同一であるか、又は4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一である相補性決定領域3(VL-CDR3)アミノ酸配列を有する。
【0012】
別の態様において、本発明は、抗体VHを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VHは、配列番号35又は配列番号36と同一であるか、又は4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一である相補性決定領域1(VH-CDR1)アミノ酸配列を有する。
【0013】
別の態様において、本発明は、抗体VHを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VHは、配列番号37、配列番号38、配列番号39、又は配列番号40と同一であるか、又は4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一である相補性決定領域2(VH-CDR2)アミノ酸配列を有する。
【0014】
別の態様において、本発明は、抗体VHを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VHは、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、又は配列番号45と同一であるか、又は4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一である相補性決定領域3(VH-CDR3)アミノ酸配列を有する。
【0015】
別の態様において、本発明は、抗体VLを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VLは、それぞれ、配列番号46、49及び53;配列番号47、49、及び53;配列番号47、49、及び54;配列番号46、50、及び54;配列番号46、51、及び55;配列番号48、52、及び54;配列番号46、49、及び56;配列番号47、49、及び56;配列番号46、50、及び56;配列番号46、51、及び56;又は配列番号48、52、及び56と同一であるか、又はVL-CDRの1つ以上における4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3アミノ酸配列を有する。
【0016】
別の態様において、本発明は、抗体VHを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VHは、それぞれ、配列番号35、37及び41;配列番号36、37、及び42;配列番号36、38、及び43;配列番号36、39、及び44;配列番号36、40、及び44;配列番号35、37、及び45;配列番号36、37、及び45;配列番号36、38、及び45;配列番号36、39、及び45;又は配列番号36、40、及び45と同一であるか、又はVH-CDRの1つ以上における4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3アミノ酸配列を有する。
【0017】
別の態様において、本発明は、配列番号46、49、53、35、37、及び41;配列番号47、49、53、35、37、及び41;配列番号47、49、54、36、37、及び42;配列番号46、50、54、36、38、及び43;配列番号46、51、55、36、39、及び44;配列番号48、52、54、36、40、及び44;配列番号46、49、56、35、37、及び41;配列番号46、49、53、35、37、及び45;配列番号47、49、56、36、37、及び45;配列番号46、50、56、36、38、及び45;配列番号46、51、56、36、39、及び45;配列番号48、52、56、36、40、及び45;又は配列番号46、49、56、35、37、及び45と同一であるか、又は1つ以上のCDRにおける4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVL-CDR1、VL-CRD2、VL-CDR3、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3アミノ酸配列を有するVL及びVHを有する、CD73に特異的に結合する単離抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、抗体VL及び抗体VHを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VLは、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、及び配列番号70から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約90%~約100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0019】
別の態様において、本発明は、抗体VL及び抗体VHを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、VHは、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83及び配列番号84から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約90%~約100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0020】
別の態様において、本発明は、CD73に特異的に結合する単離抗体又はその抗原結合断片を提供し、抗体又は抗原結合断片は、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、及び配列番号70から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約90%~約100%同一である配列を有するVLを有し、抗体又は抗原結合断片は、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83及び配列番号84から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約90%~約100%同一である配列を有するVHを有する。
【0021】
別の態様において、本発明は、配列番号57から本質的になるVLと配列番号71から本質的になるVHとを有する単離抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0022】
別の態様において、本発明は、配列番号68から本質的になるVLと配列番号82から本質的になるVHとを有する単離抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0023】
別の態様において、本発明は、配列番号57からなるVLと配列番号71からなるVHとを有する単離抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0024】
別の態様において、本発明は、配列番号68からなるVLと配列番号82からなるVHとを有する単離抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0025】
別の態様において、本発明は、本発明に係る単離抗体又はその抗原結合断片と担体とを含有する組成物を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、本発明に係る単離抗体又はその抗原結合断片をコードする配列を有する核酸を提供する。
【0027】
別の態様において、本発明は、本発明に係る核酸を含む組成物を提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は、本発明に係る核酸を含有するベクターを提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、本発明に係る核酸配列、組成物、又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0030】
別の態様において、本発明は、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を作製する方法であって、本発明に係る核酸配列、組成物、又はベクターを含有する細胞を培養するステップと、抗体又はその抗原結合断片を単離するステップとを含む方法を提供する。
【0031】
別の態様において、本発明は、標識された本発明に係る単離抗体又は抗原結合断片を含有する診断試薬を提供する。
【0032】
別の態様において、本発明は、本発明に係る単離抗体若しくはその抗原結合断片、組成物、又は診断試薬を含有するキットを提供する。
【0033】
別の態様において、本発明は、CD73を発現する細胞の成長を阻害する方法であって、細胞を本発明に係る抗体又はその抗原結合断片に接触させるステップを含む方法を提供する。
【0034】
別の態様において、本発明は、癌の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片の治療有効量を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0035】
別の態様において、本発明は、対象の癌を治療する方法であって、本発明に係る抗体又は抗原結合断片である第1の薬剤の治療有効量を、第1の薬剤以外の抗癌剤である第2の薬剤の治療有効量と併用して対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0036】
別の態様において、本発明は、参照と比べてCD73の発現が増加した腫瘍を有すると同定された対象に抗CD73抗体又はその抗原結合断片を投与するステップを含む治療方法を提供する。
【0037】
別の態様において、本発明は、参照と比較してCD73の発現が増加した腫瘍を有すると同定された対象に、抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗PD-1、抗PD-L1、若しくは抗CTLA4、又はその抗原結合断片とを投与するステップを含む治療方法を提供する。
【0038】
別の態様において、本発明は、参照と比較してCD73の発現が増加した腫瘍を有すると同定された対象に、MEDI9447若しくはPhen0203 hIgG1、又はその抗原結合断片と、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))若しくはニボルマブ(Opdiva(登録商標))、又はその抗原結合断片とを投与するステップを含む治療方法を提供する。
【0039】
別の態様において、本発明は、参照と比較してCD73の発現が増加した腫瘍を有すると同定された対象に、MEDI9447若しくはPhen0203 hIgG1、又はその抗原結合断片と、MEDI4736又はその抗原結合断片とを投与するステップを含む治療方法を提供する。
【0040】
別の態様において、本発明は、参照と比較してCD73の発現が増加した腫瘍を有すると同定された対象に、MEDI9447若しくはPhen0203 hIgG1、又はその抗原結合断片と、トレメリムマブ又はその抗原結合断片とを投与するステップを含む治療方法を提供する。
【0041】
別の態様において、本発明は、抗CD73療法に応答性の癌を有する対象を同定する方法を提供し、この方法は、対象の腫瘍細胞又は血液細胞における参照と比べたCD73発現又は活性レベルの増加を検出して、前記癌を抗CD73療法に応答性であると同定するステップを含む。
【0042】
別の態様において、本発明は、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4療法のうちの1つ以上と併用した抗CD73療法に応答性の癌を有する対象を同定する方法を提供し、この方法は、対象の腫瘍細胞又は血液細胞における参照と比べたCD73発現又は活性レベルの増加を検出して、前記癌を、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4療法のうちの1つ以上と併用した抗CD73療法に応答性であると同定するステップを含む。
【0043】
別の態様において、本発明は、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4療法に応答性の癌を有する対象を同定する方法を提供し、この方法は、対象の腫瘍細胞又は血液細胞における参照と比べたCD73発現又は活性レベルの低下を検出して、前記癌を、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4療法に応答性であると同定するステップを含む。
【0044】
別の態様において、本発明は、対象の腫瘍成長を阻害する方法を提供し、この方法は、抗CD73抗体、又はその抗原結合断片と、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体のうちの1つ以上、又はその抗原結合断片とを、それを必要としている対象に投与するステップを含む。
【0045】
別の態様において、本発明は、対象の抗腫瘍免疫応答を増加させる方法を提供し、この方法は、抗CD73抗体、又はその抗原結合断片と、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体のうちの1つ以上、又はその抗原結合断片とを、それを必要としている対象に投与するステップを含む。
【0046】
別の態様において、本発明は、対象の腫瘍を治療する方法を提供し、この方法は、抗CD73抗体、又はその抗原結合断片と、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体のうちの1つ以上、又はその抗原結合断片とを、それを必要としている対象に投与するステップを含む。
【0047】
別の態様において、本発明は、有効量の抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗PD-1抗体又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0048】
別の態様において、本発明は、有効量のMEDI9447又はその抗原結合断片と、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0049】
別の態様において、本発明は、有効量のMEDI9447又はその抗原結合断片と、ニボルマブ(Opdiva(登録商標))又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0050】
別の態様において、本発明は、有効量のPhen0203 hIgG1又はその抗原結合断片と、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0051】
別の態様において、本発明は、有効量のPhen0203 hIgG1又はその抗原結合断片と、ニボルマブ(Opdiva(登録商標))又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0052】
別の態様において、本発明は、有効量の抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、有効量のMEDI9447又はその抗原結合断片と、MEDI4736又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0054】
別の態様において、本発明は、有効量のPhen0203 hIgG1又はその抗原結合断片と、MEDI4736又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0055】
別の態様において、本発明は、有効量の抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0056】
別の態様において、本発明は、有効量のMEDI9447又はその抗原結合断片と、トレメリムマブ又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0057】
別の態様において、本発明は、有効量のMEDI9447又はその抗原結合断片と、イピリムマブ又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0058】
別の態様において、本発明は、有効量のPhen0203 hIgG1又はその抗原結合断片と、トレメリムマブ又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0059】
別の態様において、本発明は、有効量のPhen0203 hIgG1又はその抗原結合断片と、イピリムマブ又はその抗原結合断片とを含有する医薬製剤を提供する。
【0060】
別の態様において、本発明は、抗腫瘍活性を増加させるためのキットであって、抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗PD-1抗体又はその抗原結合断片とを含むキットを提供する。
【0061】
別の態様において、本発明は、抗腫瘍活性を増加させるためのキットであって、抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片とを含むキットを提供する。
【0062】
別の態様において、本発明は、抗腫瘍活性を増加させるためのキットであって、抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片とを含むキットを提供する。
【0063】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、CD730002のVL及びVHは、それぞれ配列番号1及び2であるか又はそれを含み、及びCD730010のVL及びVHは、それぞれ配列番号3及び4であるか又はそれを含む。
【0064】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離結合分子又はその抗原結合断片は抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0065】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、結合分子は親和性成熟されている。
【0066】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、FW5は配列番号31であるか又はそれを含み、FW6は配列番号32であるか又はそれを含み、FW7は配列番号33であるか又はそれを含み、及びFW8は配列番号34であるか又はそれを含む。
【0067】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、FW1は配列番号25又は26であるか又はそれを含み、FW2は配列番号27又は28であるか又はそれを含み、FW3は配列番号29であるか又はそれを含み、FW4は配列番号30であるか又はそれを含み、FW5は配列番号31であるか又はそれを含み、FW6は配列番号32であるか又はそれを含み、FW7は配列番号33であるか又はそれを含み、及びFW8は配列番号34であるか又はそれを含む。
【0068】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、VLは、配列番号46、配列番号47、又は配列番号48と同一であるか、又は4、3、2若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVL相補性決定領域1(VL-CDR1)アミノ酸配列を含む。
【0069】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離抗体又はその抗原結合断片は、配列番号57を有するVLと配列番号71を有するVHとを有する。
【0070】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離抗体又はその抗原結合断片は、配列番号68を有するVLと配列番号82を有するVHとを有する。
【0071】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離抗体又はその抗原結合断片は重鎖定常領域又はその断片を含む。
【0072】
様々な実施形態において、重鎖定常領域又はその断片は、例えばIgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域又はIgG4定常領域を含めたIgG定常領域である。
【0073】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離抗体又はその抗原結合断片は、ヒトκ定常領域及びヒトλ定常領域から選択される軽鎖定常領域を含む。
【0074】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、IgG定常領域は野生型IgG定常領域と比べて1個以上のアミノ酸置換を有し、この修飾IgGは、野生型IgG定常領域を有するIgGの半減期と比較して半減期が増加している。
【0075】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、IgG定常領域は、251~257、285~290、308~314、385~389、及び428~436位(付番はKabatに規定されるとおりのEUインデックスに従う)にアミノ酸残基の1個以上のアミノ酸置換を有する。
【0076】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、少なくとも1つのIgG定常領域アミノ酸置換は、
(a)252位のアミノ酸の、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、又はスレオニン(T)による置換、
(b)254位のアミノ酸の、スレオニン(T)による置換、
(c)256位のアミノ酸の、セリン(S)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、又はスレオニン(T)による置換、
(d)257位のアミノ酸の、ロイシン(L)による置換、
(e)309位のアミノ酸の、プロリン(P)による置換、
(f)311位のアミノ酸の、セリン(S)による置換、
(g)428位のアミノ酸の、スレオニン(T)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、又はセリン(S)による置換、
(h)433位のアミノ酸の、アルギニン(R)、セリン(S)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、又はグルタミン(Q)による置換、
(i)434位のアミノ酸の、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、セリン(S)、ヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)、又はチロシンによる置換、及び
(j)前記置換の2つ以上の組み合わせ
(付番はKabatに規定されるとおりのEUインデックスに従う)から選択される。
【0077】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、ヒトIgG定常領域は、野生型ヒトIgG定常領域と比べて252、254、及び256位にアミノ酸置換を有し、ここで、
(a)252位のアミノ酸がチロシン(Y)によって置換され、
(b)254位のアミノ酸がスレオニン(T)によって置換され、及び
(c)256位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されている
(付番はKabatに規定されるとおりのEUインデックスに従う)。
【0078】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態では、434位のアミノ酸が、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、チロシン(Y)、及びセリン(S)から選択されるアミノ酸によって置換され、ここで付番はKabatに規定されるとおりのEUインデックスに従う。
【0079】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態では、428位のアミノ酸が、スレオニン(T)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、及びセリン(S)から選択されるアミノ酸によって置換され、ここで付番はKabatに規定されるとおりのEUインデックスに従う。
【0080】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態では、257位のアミノ酸がロイシン(L)によって置換され、且つKabat 434位のアミノ酸がチロシン(Y)によって置換され、ここで付番はKabatに規定されるとおりのEUインデックスに従う。
【0081】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態では、Kabat 428位のアミノ酸がロイシン(L)によって置換され、且つKabat 434位のアミノ酸がセリン(S)によって置換されている。
【0082】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、ヒトIgG定常領域は、野生型ヒトIgG定常領域と比べて252、254、及び256位にアミノ酸置換を有し(付番はKabatに規定されるとおりのEUインデックスに従う)、ここで、
(a)252位のアミノ酸がチロシン(Y)によって置換され、
(b)254位のアミノ酸がスレオニン(T)によって置換され、及び
(c)256位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されている。
【0083】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、抗体は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、多重特異性抗体、又はその抗原結合断片である。
【0084】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、抗原結合断片は、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、又はsc(Fv)2である。
【0085】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離抗体又はその抗原結合断片は、例えば抗癌剤を含めた少なくとも1つの異種薬剤にコンジュゲートされている。
【0086】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、本発明に係る組成物は抗癌剤を更に含む。
【0087】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離抗体又はその抗原結合断片は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導しない。
【0088】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離抗体又はその抗原結合断片はCD73のアンタゴニストである。
【0089】
様々な実施形態において、単離抗体又はその抗原結合断片は、MB-MDA-231、4T1、MK1、又は列挙される細胞の2つ以上の組み合わせから選択される細胞におけるCD73のアンタゴニストである。
【0090】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、CD73はヒトCD73である。
【0091】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、本抗体又は抗原結合断片がCD73に結合することにより、細胞増殖が低減され得る。
【0092】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、CD73に対する抗体又は抗原結合断片は、ヒトCD73、カニクイザルCD73、及びマウスCD73に結合することができる。
【0093】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、癌は、結腸直腸癌、膵癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、神経膠腫、膠芽腫、メラノーマ、卵巣癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌、及び乳癌から選択される。
【0094】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、癌は、メラノーマ又は乳癌を含め、前転移性表現型を有する。
【0095】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、対象はヒトである。
【0096】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、第1の薬剤と第2の薬剤との併用は優れた抗腫瘍活性を有し、相加的又は相乗的であり得る。
【0097】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、第2の薬剤は抗体又はその抗原結合断片である。
【0098】
様々な実施形態において、第2の薬剤は、PD-1(プログラム死1タンパク質)、PD-L1(プログラム死1タンパク質リガンド1)、PD-L2(プログラム死1タンパク質リガンド2)、又はCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4タンパク質)に特異的に結合する。
【0099】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、第2の薬剤は、例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)、又はその抗原結合断片を含めた、抗CTLA-4抗体又はその抗原結合断片である。
【0100】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、第2の薬剤は、例えば、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、ランブロリズマブ、MK-3475)、ニボルマブ(Opdiva(登録商標)、BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、AMP-224、又はその抗原結合断片を含めた、抗PD-1抗体又はその抗原結合断片である。
【0101】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、第2の薬剤は、例えば、MEDI4736、BMS-936559、MPDL3280A、又はその抗原結合断片を含めた、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片である。
【0102】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、抗CD73抗体は、MEDI9447、Phen0203 hIgG1、又はその抗原結合断片である。
【0103】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、対象は、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4療法を受けているか、受けたことがあるか、又は受ける予定である。
【0104】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4療法は、それぞれ抗PD-1、抗PD-L1、若しくは抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。
【0105】
様々な実施形態において、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、ランブロリズマブ、MK-3475)、ニボルマブ(Opdiva(登録商標)、BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、AMP-224、又はその抗原結合断片である。
【0106】
様々な実施形態において、抗PD-L1抗体は、MEDI4736、BMS-936559、MPDL3280A、又はその抗原結合断片である。
【0107】
様々な実施形態において、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ、トレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)、又はその抗原結合断片である。
【0108】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、腫瘍は、結腸癌、メラノーマ、乳癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及びバーキットリンパ腫、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、又は膵癌である。
【0109】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、CD73発現又は活性は、腫瘍試料、血液試料、又はリンパ試料において検出される。
【0110】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、CD73発現は、例えばリンパ系細胞又は骨髄系細胞サブセット(即ち、Bリンパ球、CD4+,FoxP3+リンパ球、又は骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)のうちの1つ以上)を含めた、腫瘍細胞又は末梢血細胞において検出される。
【0111】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、CD73発現は、フローサイトメトリー、免疫組織化学(IHC)又は試料中のCD73酵素活性若しくは可溶性CD73レベルによって検出される。
【0112】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体、又はその抗原結合断片とは同時に投与される。
【0113】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、本方法は腫瘍特異的免疫応答を誘導するか又は増加させる。
【0114】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、本方法はAMP/CD73/アデノシン経路の免疫抑制効果を低減する。
【0115】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、腫瘍はCD73過剰発現腫瘍である。
【0116】
別の態様において、本発明は、抗体VL及び抗体VHを有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供し、これは、Val144、Lys180、及びAsn185に対応する1つ以上のアミノ酸を有するCD73タンパク質のエピトープに特異的に結合する。
【0117】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離結合分子又は抗原結合は、Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応する1つ以上のアミノ酸を更に含有する。
【0118】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離結合分子又はその抗原結合断片は、Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応するアミノ酸を含有する。
【0119】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離結合分子又はその抗原結合断片は、Tyr135、Lys136、Asn187、Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応するアミノ酸を含有する。
【0120】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離結合分子又はその抗原結合断片は、CD73タンパク質の以下の領域:Tyr132~Val144及び/又はLys180~Asn187のうちの1つ以上におけるエピトープと結合する。
【0121】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離結合分子又はその抗原結合断片は、Tyr132~Val144及び/又はLys180~Asn187のアミノ酸配列を含有するか、又はその中にある。
【0122】
別の態様において、本発明は、CD73タンパク質の表面上の、Val144、Lys180、及びAsn185に対応する1つ以上のアミノ酸を有する立体エピトープを提供し、このエピトープを含有するCD73タンパク質には、モノクローナル抗体MEDI9447又はその抗原結合断片、変異体、類似体又は誘導体が特異的に結合することができる。
【0123】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、立体エピトープは、Tyr135、Lys136、及びAsn18に対応する1つ以上のアミノ酸を更に含有する。
【0124】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、立体エピトープは、Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応するアミノ酸を含有する。
【0125】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、立体エピトープは、Tyr135、Lys136、Asn187、Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応するアミノ酸を含有する。
【0126】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、立体エピトープは、CD73タンパク質の以下の領域:Tyr132~Val144及び/又はLys180~Asn187のうちの1つ以上におけるものである。
【0127】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、立体エピトープは、Tyr132~Val144及び/又はLys180~Asn187のアミノ酸配列を含有するか、又はその中にある。
【0128】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、MEDI9447は、不活性状態若しくは触媒活性状態又は開いた状態若しくは閉じた状態のCD73タンパク質と結合する。
【0129】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、CD73タンパク質はヒトCD73である。
【0130】
本明細書に説明される任意の態様の様々な実施形態において、単離結合分子又はその抗原結合断片、VL及びVHはMED19447のVL及びVHである。
【0131】
本発明によって定義される組成物及び物品は、以下に提供する例に関連して単離されたか、又はその他に製造された。本発明の他の特徴及び利点は、詳細な説明、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【
図1A】MEDI9447 VHドメインのヌクレオチド配列及びアミノ酸翻訳を示し、CDRはKabat付番規則に基づき示している。
【
図1B】MEDI9447 VLドメインのヌクレオチド配列及びアミノ酸翻訳を示し、CDRはKabat付番規則に基づき示している。
【
図1C】MEDI9447 VHと最も近縁のヒトVH及びJH生殖系列配列とのアラインメントを示す。Kabat付番規則に基づくCDRを強調表示し、生殖系列配列と異なる残基に囲みを付す。
【
図1D】MEDI9447 VLと最も近縁のヒトVL及びJL生殖系列配列とのアラインメントを示す。Kabat付番規則に基づくCDRを強調表示し、生殖系列配列と異なる残基に囲みを付す。
【
図2】MDA-MB-231細胞及び4T1細胞への細胞毒性FabZAP試薬の抗体媒介性インターナリゼーションを示す2つのグラフを提供し、ここで、抗体はMEDI9447及び対照抗体R347である。
【
図3】
図3Aは抗CD73抗体MEDI9447による5’エクトヌクレオチダーゼの阻害を示すグラフである。
図3Bは抗CD73抗体CD370010によるAMP加水分解の阻害を示すグラフである。
【
図4】MEDI9447がCT26同系腫瘍モデルにおいて腫瘍成長を阻害したことを示すグラフである。マウスCT26腫瘍細胞を雌Balb/Cマウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍を3日間成長させて、MEDI9447又はアイソタイプ対照で週2回、2週間にわたって治療した。16日目に腫瘍を回収してフローサイトメトリー分析にかけた。
【
図5】MEDI9447が腫瘍浸潤性骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を阻害したことを示すグラフである。試験16日目に、MEDI9447で治療したCT26腫瘍担持マウスを犠牲にし、腫瘍を回収した。腫瘍を単細胞に解離し、CD45及びMDSCマーカーに関して染色し、フローサイトメトリーによって分析した。
【
図6】腫瘍容積に対するMEDI9447 mIgG1、抗PD-1又は併用の効果を示す6つのスパイダープロットを含む。対照抗体としては、rIgG2a(これは、大腸菌(E.coli)β-ガラクトシダーゼ(β-Gal)に特異的なラットIgG2a対照モノクローナルラット抗体である)、及びアイソタイプ対照マウスのIgG1が含まれる。試験40日目までの各動物群の腫瘍容積を個々の動物についてプロットした。対照群には、40日間の試験期間の終わりまで腫瘍がなかったマウスはいなかった。抗CD73治療単独では、試験終了時に腫瘍がなかった動物は10%であった。抗PD1治療単独も、試験終了時に腫瘍がなかった動物は10%であった。顕著なことに、抗CD73と抗PDとの併用治療では、腫瘍がなかったマウスは60%であった。対照群には、試験の終わりまで腫瘍がなかったマウスは一匹もいなかった。
【
図7】生存に対するMEDI9447 mIgG1、抗PD1又は併用の効果を示すグラフである。
【
図8】MEDI9447と抗PD-1との併用が、一方の薬剤単独と比較したとき、結腸直腸癌腫瘍の腫瘍成長阻害を有意に増強した(<0.05)ことを示すグラフである。マウスに同系MC38-OVA結腸直腸癌細胞を皮下注射し、10mg/kgのMEDI9447又は10mg/kgの抗PD-1抗体単独又は両方の抗体の併用で週2回治療した。腫瘍容積を週2回計測した。
【
図9】腫瘍担持マウスから単離した腫瘍細胞上のCD73発現によって計測したとき、抗PD-1がCD73リッチな腫瘍微小環境を誘導したことを示すグラフである。マウス(n=4)に同系CT26結腸直腸細胞を皮下注射し、10mg/kgの抗PD-1又は無関係のアイソタイプ対照抗体で週2回治療した。初回治療の翌日、腫瘍を摘出し、細胞を解離し、フローサイトメトリーによって表面表現型に関して分析した。
【
図10】腫瘍担持マウスから単離した骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)上のCD73発現によって計測したとき、抗PD-1がCD73リッチな腫瘍微小環境を誘導したことを示すグラフである。マウス(n=4)に同系CT26結腸直腸細胞を皮下注射し、10mg/kgの抗PD-1又は無関係のアイソタイプ対照抗体で週2回治療した。初回治療の翌日、腫瘍を摘出し、腫瘍細胞を単離し、末梢全血細胞を回収し、フローサイトメトリーによって表面CD73発現に関して分析した。
【
図11】腫瘍担持マウスから単離したCD4
+,FoxP3
+リンパ球上のCD73発現によって計測したとき、抗PD-1がCD73リッチな腫瘍微小環境を誘導したことを示すグラフである。マウス(n=4)に同系CT26結腸直腸細胞を皮下注射し、10mg/kgの抗PD-1又は無関係のアイソタイプ対照抗体で週2回治療した。初回治療の3日後、腫瘍を摘出し、末梢全血細胞を回収し、フローサイトメトリーによって表面CD73発現に関して分析した。
【
図12】MEDI9447と抗PD-L1との併用が、一方の薬剤単独と比較したとき、メラノーマ腫瘍の腫瘍成長阻害を有意に増強した(<0.05)ことを示すグラフである。マウスに同系B16F10メラノーマ細胞を皮下注射し、10mg/kgのMEDI9447又は10mg/kgの抗PD-L1抗体単独又は両方の抗体の併用で週2回治療した。腫瘍容積を週2回計測した。
【
図13】MEDI9447と抗PD-L1との併用が、一方の薬剤単独と比較したとき、リンパ腫腫瘍の腫瘍成長阻害(p<0.01)を有意に増強したことを示すグラフである。マウスに同系EG7-OVAリンパ腫細胞を皮下注射し、10mg/kgのMEDI9447又は10mg/kgの抗PD-L1抗体単独又は両方の抗体の併用で週2回治療した。腫瘍容積を週2回計測した。
【
図14】流入領域リンパ節Bリンパ球上のCD73の表面発現によって計測したとき、抗PD-L1がCD73リッチな腫瘍微小環境を誘導したことを示すグラフである。マウス(n=4)に同系CT26結腸直腸細胞を皮下注射し、10mg/kgの抗PD-L1又は無関係のアイソタイプ対照抗体で週2回治療した。初回治療の翌日、流入領域リンパ節から細胞を単離し、フローサイトメトリーによって表面表現型に関して分析した。
【
図15】腫瘍浸潤性CD4
+,FoxP3
+リンパ球上のCD73の表面発現によって計測したとき、抗PD-L1がCD73リッチな腫瘍微小環境を誘導したことを示すグラフである。マウス(n=4)に同系CT26結腸直腸細胞を皮下注射し、10mg/kgの抗PD-L1又は無関係のアイソタイプ対照抗体で週2回治療した。初回治療の3日後、腫瘍を摘出し、細胞を解離し、フローサイトメトリーによって表面表現型に関して分析した。
【
図16】MEDI9447単独又は抗PD-L1との併用により、腫瘍浸潤性リンパ系細胞上のCD73発現が低下したことを示すグラフである。結腸直腸CT26同系腫瘍を担持するマウスを、30mg/kg MEDI9447又は30mg/kg 抗PD-L1のいずれか単独又はMEDI9447と抗PD-L1との両方の併用で週2回(12日目及び16日目)治療した。17日目、腫瘍を回収し、フローサイトメトリーによって表面CD73発現に関して分析した。腫瘍上のCD73発現は、(A)CD4+ FoxP3+ Treg及び(B)CD8+ T細胞に浸潤する。
【
図17】MEDI9447単独又は抗PD-L1との併用により、(A)腫瘍細胞及び(B)末梢全血細胞のCD73活性が低下したことを示すグラフである。結腸直腸CT26同系腫瘍を担持するマウスを、30mg/kg MEDI9447又は30mg/kg 抗PD-L1のいずれか単独又はMEDI9447と抗PD-L1との両方の併用で週2回(12日目及び16日目)治療した。17日目、腫瘍及び末梢全血細胞を回収し、Cell-Titre Gloを使用することにより表面CD73発現に関して酵素活性を分析した。
【
図18】MEDI9447と、CTLA4、OX40、PD-1、及びPD-L1に特異的な抗体又は融合タンパク質とで処理した末梢血単核細胞のサイトカインプロファイルを表すグラフの組である。初代ヒト末梢血単核細胞をMEDI9447及び/又は指示標的に特異的な抗体若しくは融合タンパク質と共に混合白血球反応で72時間インキュベートした。デュプリケート上清中のサイトカイン(IFN-γ、IL-1β、TNF-α)をELISAによって定量化した。示されるデータは、抗CD73抗体と4つの異なるパートナー薬剤との最適用量の組み合わせに相当する。Bliss表面反応法(Zhao et al.)によって決定するとき、抗PD-1と抗CD73との併用は有意な(p<0.05)相乗作用を示した。サイトカインプロファイルは、骨髄系列及びリンパ系列の両方が影響を受けたことを示している。50組を超えるドナーペアを試験した。
【
図19A】MEDI9447と複合したCD73の水素重水素交換MS(HDX-MS)分析の結果を表す。
図19Aは、CD73(N末端からC末端)のうち、MEDI9447との結合時に重水素取り込みの低下が起こる領域を示す水素重水素交換ヒートマップを表す。抗体結合CD73と未結合CD73との相対的交換を曝露時間の関数として、交換の低下を赤色、交換の増加を青色、及び変化無しを白色として表す。132~143位及び182~187位のN末端領域が最も高度な差次的交換を呈した。
図8Bは、N末端ドメイン(黄色)の範囲内にあるHDXによって同定された結合界面(シアン色)の位置を表すCD73単量体の結晶構造を示す。CD73リンカー領域及びC末端ドメインは、それぞれオレンジ色及び青色で表される。
【
図20A】遊離状態と結合状態とを比べてCD73及びMEDI9447のうち、差次的な水素交換が起こる領域を示す水素重水素交換MS(HDX-MS)分析の結果を表す。
図20Aは、132~143領域を包含するペプチド内における重水素曝露時間の関数としての相対的重水素取り込み(ダルトン単位の質量変化)を表すプロットを示す。
図20Bは、182~187領域を包含するペプチド内における重水素曝露時間の関数としての相対的重水素取り込み(ダルトン単位の質量変化)を表すプロットを示す。
図20A及び
図20Bでは、CD73単独の取り込みを四角で示し、MEDI9447 Fabに結合したCD73の取り込みを赤色で示す。ペプチド配列、位置、及び質量をプロットボックス内に示す。水素交換の変化を示す配列を含み且つエピトープを形成すると予想し得る領域を絞り込むため、重複ペプチドの相対的質量変化を比較した。例えば、173~186位にわたるペプチドは差次的な交換を示したが、173~181にわたるペプチドに差はなかった。従って、182より上流の残基は差次的に標識されないことが推測された。
図20Cは、MEDI9447 Fab重鎖のDynamX差分チャートを表す。
図20Dは、MEDI9447 Fab軽鎖のDynamX差分チャートを表す。
図20C及び
図20Dについて、各データ点は、CD73+Fab複合体(y軸上の正の値)とFab単独(y軸上の負の値)との重水素取り込みの差を示す。縦のバーは、曝露時間点にわたる取り込みの差の合計を表す。FabがCD73に結合したとき、相対的取り込みの低下を示すCDRを指示する。
図9Eは、CD73単独(y軸上の負の値)とFabに結合したCD73(y軸上の正の値)とのDynamX差分チャートを表す。領域E1(aa132~143)及びE2(aa182~187)を指示する。横軸は、N末端からC末端までの(左から右に)分析したペプチドに対応する。このチャートに、1.6ダルトン、統計学的に有意な変化の98%信頼区間カットオフを示す点線をオーバーレイしている。
【
図21A-D】MEDI9447エピトープがCD73のN末端ドメイン内にあることを示すセンサーチップデータを表す。
図21Aは、野生型CD73タンパク質のセンサーチップデータを表すグラフである。野生型CD73タンパク質をHTGセンサーチップに固定化し、MEDI9447希釈物(5nM~0.3nM)の結合を表面プラズモン共鳴(SPR)によって計測した。
図21Bは、N末端ドメインをスワッピングしたCD73タンパク質のセンサーチップデータを表すグラフである。N末端ドメインをスワッピングしたCD73タンパク質をHTGセンサーチップに固定化し、MEDI9447希釈物(5nM~0.3nM)の結合をSPRによって計測した。N末端ドメインをスワッピングしたとき、MEDI9447はCD73に結合しなかった。
図21Cは、N末端及びC末端ドメインをスワッピングしたCD73タンパク質のセンサーチップデータを表すグラフである。N末端及びC末端ドメインをスワッピングしたCD73タンパク質をHTGセンサーチップに固定化し、MEDI9447希釈物(5nM~0.3nM)の結合をSPRによって計測した。N末端及びC末端ドメインの両方をスワッピングしたとき、MEDI9447はCD73に結合しなかった。
図21Dは、リンカー領域をスワッピングしたCD73タンパク質のセンサーチップデータを表すグラフである。リンカー領域をスワッピングしたCD73タンパク質をHTGセンサーチップに固定化し、MEDI9447希釈物(5nM~0.3nM)の結合をSPRによって計測した。リンカー領域のみのスワッピングは結合に影響を与えなかった。
図21Eは、C末端ドメインをスワッピングしたCD73タンパク質のセンサーチップデータを表すグラフである。C末端ドメインをスワッピングしたCD73タンパク質をHTGセンサーチップに固定化し、MEDI9447希釈物(5nM~0.3nM)の結合をSPRによって計測した。C末端ドメインのみのスワッピングは結合に影響を与えなかった。
図21Fは、界面E1(aa132~143)をスワッピングしたCD73タンパク質のセンサーチップデータを表すグラフである。界面E1(aa132~143)をスワッピングしたCD73タンパク質をHTGセンサーチップに固定化し、MEDI9447希釈物(5nM~0.3nM)の結合をSPRによって計測した。
図21Gは、界面E2(aa182~187)をスワッピングしたCD73タンパク質のセンサーチップデータを表すグラフである。界面E2(aa182~187)をスワッピングしたCD73タンパク質をHTGセンサーチップに固定化し、MEDI9447希釈物(5nM~0.3nM)の結合をSPRによって計測した。
図21Hは、界面E1(aa132~143)及び界面E2(aa182~187)をスワッピングしたCD73タンパク質のセンサーチップデータを表すグラフである。界面E1(aa132~143)及び界面E2(aa182~187)をスワッピングしたCD73タンパク質をHTGセンサーチップに固定化し、MEDI9447希釈物(5nM~0.3nM)の結合をSPRによって計測した。
図21F~
図21Hについて、HDX界面E1(aa132~143)(
図21F)のスワッピングが結合に与えた影響は僅かであり、HDX界面E2(aa182~187)単独(
図21G)又はE1との組み合わせ(
図21H)のスワッピングと対照的であった。
図21A~
図21Hについて、センサーグラム及びオーバーレイフィットを対応する色で示す。各結合解析の反応速度計測値を表16に提供する。
【
図22-1】ヒト及びニワトリCD73タンパク質配列のアラインメントを表す。成熟タンパク質配列のみを示す。非保存残基をニワトリ配列に強調表示する。ノックアウト変異体を作成するためニワトリとヒトとの間でスワッピングした領域にアノテーションを付ける(例えばDS1a、DS1b等)。
【
図23】CD73変異体に対するMEDI9447の結合を表す。
図23は、CD73変異体に対するMEDI9447の結合を示すデータの表である。青色で強調表示した変異体のK
DはWT又はKO親コンストラクトから2倍超変化したものである。
*2:1異種リガンドフィットから得られた反応速度計測値。
**付番はニワトリ配列に対応する(ヒトでは129=133、140=144、及び181=185)。
【
図24A-B】MEDI9447エピトープがN末端ドメインの頂端に位置することを表す。
図13Aは、CD73変異体のパネルに対するMEDI9447結合の評価(
図22及び
図23を参照)により、相互作用部位を成す6つの位置が明らかになったことを示す。これらの3つの最も影響力の強い残基(囲みで強調表示)のうちの2つは、HDX界面領域(青色で強調表示)の外側に位置する。それ程影響力が強くない3つの残基(ピンク色の囲み)はHDX界面内に位置する。
図24Bは、N185及びV144(K180は保存されている)をニワトリN末端及びC末端ドメイン配列を含むCD73コンストラクトにノックインすると、結合が野生型CD73のK
Dの20倍未満まで回復したことを示す表である(MEDI9447希釈物5nM~0.3nM;
図10Bと比較のこと)。
図24Cは、CD73のN末端ドメイン内に位置するエピトープ残基の詳細図を表す。結合に最も重要な残基を強調表示して示し、それ程影響力が強くない位置(Y135、K136、及びN187)はピンク色とする。HDX界面は青色でオーバーレイする。
図24Dは、エピトープがほぼ連続する結合表面を形成することを示す表面表現図を表す。
図24Eは、N末端ドメインの頂端外側表面にあるエピトープの位置を示すCD73の開いたコンホメーションの結晶構造を表す。
図24Fは、エピトープの位置が基質結合部位(球で表されるアデノシン)及び亜鉛イオン(灰色の球)配位部位(シアン色の側鎖)から離れていることを示す。いずれの結晶構造においても、CD73 N末端ドメイン、リンカー領域、及びC末端ドメインは、それぞれ黄色、オレンジ色、及び青色で表す。
【
図25】MEDI9447がCD73によるAMP加水分解の非競合阻害薬であることを示す。
図25Aは、MEDI9447又はアイソタイプ対応対照mAbの存在下で計測したCD73によるAMPリン酸加水分解の反応速度を表すグラフである。
図25Bは、MEDI9447が、基質濃度に関わらず加水分解を同等に阻害する点で非競合的阻害薬としての役割を果たすことを示すグラフである。対照的に、CD73の既知の競合阻害薬であるAPCPでは、K
mは増加するが、V
maxは増加しない。
図25Cは、CD73によるAMP加水分解の阻害に対するMEDI9447 IgG、Fab、又は対照IgGの用量反応を表すグラフである。MEDI9447 IgGは、CD73二量体と1:1モル化学量論で最大阻害に達した(矢印)。MEDI9447 IgGが過剰(>10nM)である高濃度では、阻害の喪失又は「フック効果」が観察された。MEDI9447 Fab及び対照IgGはCD73を阻害しなかった。全ての実験は、本明細書に記載されるとおりのCellTiterGloアッセイを用いて実施した(RLU、相対発光単位)。
【
図26-1】抗CD73 mAb(クローン0069)の結合がCD73N末端及びC末端ドメイン残基に依存することを示す。
図26Aは、ヒスチジンタグ付加CD73のセンサーチップデータを示すグラフである。ヒスチジンタグ付加CD73をHIS2バイオセンサーに固定化し、mAb Aによる結合をバイオレイヤー干渉法(BLI)によって計測した。WT CD7(青色のセンサーグラム)、N末端ドメインスワップノックアウトCD7(KO_1-291、緑色のセンサーグラム)及びC末端ドメインスワップノックアウトCD7(KO_311-523 シアン色のセンサーグラム)に対するmAb Aの結合は、mAb結合がN末端ドメイン及びC末端ドメインの両方の残基の影響を受けることを示している。
図26B、N末端及びC末端ドメイン界面の近傍に位置する強調表示したmAb A結合ホットスポット(aa114~134及び153~170)の位置を示す開いたCD73及び閉じたCD73の結晶構造(N末端ドメインは黄色、リンカーはオレンジ色、及びC末端ドメインは青色)。マッピングは
図26A及び
図26Cの結合データに基づいた。
図26Cは、CD73の種々のドメインスワップノックアウト変異体に対するmAb Aの結合センサーグラムを示す。サブ領域DS2c(aa114~134)又はDS3a(aa153~170)のスワッピングは結合をノックアウトした。全ての結合解析は、本明細書に記載されるとおりOctet QK384機器で実施した。
【
図27A-B】MEDI9447がCD73のコンホメーション的に活性な構造への転移を阻害したことを示す。
図27Aは、野生型CD73バイオセンサーデータを示すグラフである。野生型CD73をHIS2バイオセンサーに固定化し、MEDI9447(青色のセンサーグラム)及び抗CD73 mAb A(茶色のセンサーグラム)の結合をOctet QK384でBLIによって計測した。CD73をZn
2+及びAPCPとプレインキュベートしたとき、MEDI9447は結合を保持したが(黒色のセンサーグラム)、mAb Aの結合は消失した(オレンジ色のセンサーグラム)。
図27Bは、Zn
2+及びAPCPをCD73とプレインキュベートするとmAb A結合(オレンジ色のセンサーグラム)の消失が生じたが、Zn
2+及びAPCPを加える前にMEDI9447とプレインキュベートすると結合が回復した(紫色のセンサーグラム)ことを示すグラフである。CD73単独及びMEDI9447とプレインキュベートした(但しZn
2+及びAPCPとはプレインキュベートしない)CD73に対するmAb Aの結合は、それぞれ青色及び茶色のセンサーグラムで示す。
図27Cは、CD73がZn
2+及びAPCPによって誘導される完全に閉じた活性のコンホメーションをとることをMEDI9447がどのように妨げるかを表す提案されるモデルを示す。MEDI9947は、mAb Aに対する親和性が低い中間状態への転移を制限し得る。
【
図28】以下で特に注記しない限り本明細書に記載されるとおりBLIによって計測した種々の条件下でのCD73に対するMEDI9447又はmAb Aの結合を示す。
図28Aは、HIS2バイオセンサーに固定化したヒスチジンタグ付加野生型CD73に対する抗CD73 mAb Aの結合を表すグラフである。100秒間ベースラインの後、捕捉されたCD73をZn
2+、APCP、及び/又はEDTAと共に900秒間インキュベートし、次にバイオセンサーを30nM mAb Aで600秒間インキュベートして結合を計測した。mAb AはCD73に結合したが(青色のセンサーグラム)、Zn
2+及びAPCPとプレインキュベートしたCD73には結合しなかった(紫色のセンサーグラム)。mAb AはAPCP及びEDTA(緑色のセンサーグラム)又はZn
2+、APCP、及びEDTA(金色のセンサーグラム)とプレインキュベートしたCD73に対する結合を維持した。EDTAのキレート効果は、CD73をZn
2+及びAPCPとインキュベートしたときのmAb A結合の消失に二価カチオンが必要であったことを示す。
図28Bは、MEDI9447 Fab又は対照IgGが、Zn
2+及びAPCPとインキュベートしたCD73に対するmAb Aの結合をレスキューしなかったことを示すグラフである。このアッセイは
図27Bのとおり実施した。MEDI9447 Fab又はアイソタイプ対応対照IgGは、Zn
2+及びAPCPを加える前にCD73とプレインキュベートした。バイオセンサーに固定化したmAb Aは、CD73単独(青色のセンサーグラム)、MEDI9447 Fab(明るい青色のセンサーグラム)又は対照IgG(黒色のセンサーグラム)のいずれかとプレインキュベートしたCD73に結合したが、Zn
2+及びAPCPとインキュベートしたCD73(茶色のセンサーグラム)には結合せず、又はZn
2+及びAPCPを加える前にCD73とプレインキュベートしたFab(金色のセンサーグラム)又は対照IgG(紫色のセンサーグラム)のいずれにも結合しなかった。
【
図29-1】抗CD73 mAb B結合がサブ領域DS2b(aa92~134)又はDS2c(aa114~134)の残基に依存することを示す。
図29Aは、
図30A~
図30Cに対応するSEC-MALSデータを示す表である。CD73とMEDI9447又はmAb Bのいずれかとの各混合物について、形成された複合体の対応するSEC保持時間、Mw、及び多分散度を示す。
図29Bは、CD73に対するmAb Bの結合ホットスポットの決定を表す。HIS2バイオセンサー上に固定化したCD73変異体に対するmAb B結合を、本明細書の方法に係る
図26A~
図26CにおいてmAb A(クローン0069)について説明するとおりBLIによって計測した。結合センサーグラムは、サブ領域DS2b(aa92~134)又はDS2c(aa114~134)のいずれのスワッピングも、mAb Bによる結合をノックアウトしたことを示した。
【
図30-1】MEDI9447が可溶性CD73分子間に二量体間架橋を形成することを示す。CD73を様々な量のMEDI9447又は抗CD73 mAb Bとインキュベートし、SEC-MALSによって分析した。x軸にタンパク質保持時間及びy軸にMALSによって決定されたモル質量をとったSEC UVクロマトグラムを示す。
図30Aは、1:1モル比で(緑色のトレース)、MEDI9447が約1.7(^)及び約6.6(+)メガダルトンのCD73と複合体を形成したことを示すクロマトグラムである。同等のサイズの複合体が、より低い比のMEDI9447:CD73(0.5:1青色、0.1:1マゼンタ色)で形成された。MEDI9447及びCD73単独は、それぞれ黒色及び赤色のUVトレースで表す。
図30Bは、mAb B結合ホットスポット(紫色)及びMEDI9447エピトープ(マゼンタ色及びピンク色)を示すCD73二量体の結晶構造の上面図である。mAb Bは、開いたコンホメーションで二量体間の中心溝に近い部位に結合する。
図30Cは、CD73がmAb Bに結合したとき、約270~290kD(ピーク約7.2分)の単一の優勢な複合体が形成されたことを示すクロマトグラムである。示されるUVトレースは、1:1mAb B:CD73(赤色)、0.5:1(青色)、及び0.1:1(緑色)を表す。mAb A及びCD73単独は、それぞれマゼンタ色及び黒色である。
【
図31A-B】表面結合型CD73がIgG及びFabフォーマットのMEDI9447によって阻害されたことを表す。
図31Aは、MEDI9447 IgG、Fab又は対照抗体による固定化したCD73のAMP加水分解の阻害を表すグラフである。CD73をC末端ヒスチジンタグを介してニッケル被覆マイクロタイタープレートに固定化し、本明細書に記載されるとおりのマラカイトグリーンアッセイを用いてMEDI9447 IgG、Fab又は対照抗体によるAMP加水分解の阻害を計測した。MEDI9447 IgGはCD73によるAMP加水分解を用量依存的に阻害したが、対照IgGは阻害しなかった。MEDI9447 FabもCD73活性を阻害したが、程度ははるかに低かった。
図31Bは、抗Fd抗体(xFd、赤色)に結合したMEDI9447 Fab(緑色)を含む複合体を表す。MEDI9447 Fab(緑色)が抗Fd抗体(xFd、赤色)の一方のアームに結合し、且つ他方のアームが非特異的なポリクローナルFab(pFab、オレンジ色)に結合したとき、阻害はMEDI9447 IgGと同程度まで増加した(Fab+xFd+pFab対MEDI9447 IgG及びMEDI9947 IgG+xFd+pFab)(
図31Aを参照)。
図31Cは、MEDI9447 IgG、Fab又は対照抗体によるGPIアンカー型CD73のAMP加水分解の阻害を表すグラフである。MDA-MB-231細胞における内因的に発現したCD73の酵素活性をCellTiterGloアッセイによって計測した。固定化した組換えCD73と同様に、MEDI9447 IgGはFabと比べてより大きくAMP加水分解を阻害するが、抗Fd抗体と複合体を形成することによりMEDI9447 Fabの有効サイズが増加すると、阻害が増強される。
図31Dは、MEDI9447 IgG、Fab又は対照抗体による可溶性CD73(sCD73)のAMP加水分解の阻害を表すグラフである。xFd+MEDI9447が可溶性CD73を阻害し得るかどうかを試験するため、マラカイトグリーンアッセイを用いてAMP加水分解を計測した。MEDI9447 Fabは、単独でも、或いは単一のxFdアームと結合しても、可溶性CD73活性を阻害しなかった。対照的に、MEDI9947 Fabが両方のxFdアームと結合すると(MEDI9447 Fab+xFd)、二価性が付与され、CD73阻害がもたらされた。
【
図32】MEDI94447 IgG及びFabがCD73のAMP加水分解を阻害したことを示すグラフである。本明細書に記載されるとおり、漸増濃度の抗体の存在下でマラカイトグリーンアッセイを用いてCD73活性を計測した。MEDI9447 IgGはCD73加水分解活性を用量依存的に阻害し、フック効果、即ち阻害の喪失は観察されなかった。MEDI9447 FabもCD73機能を阻害したが、最大阻害レベルは低かった。この実験は2回実施し、同等の結果が得られた。一方の実験のデータのみを示す。
【
図33】MEDI9447によるCD73加水分解活性の阻害が二重の機構を介して起こることを示すモデルを表す。MEDI9447IgG(緑色)は、二量体間架橋を形成して閉じた状態へのコンホメーション転移を妨げることにより、可溶性CD73を阻害する。一価結合のIgG又はFabは可溶性CD73を阻害しない。CD73が表面結合している場合、隣接するCD73二量体の架橋によるか、又は一価結合したIgG又はFab/xFd(赤色)複合体からの立体的遮断によって阻害が起こり得る。
【発明を実施するための形態】
【0133】
本発明は、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片を提供する。一部の態様において、かかる分子は、CD73に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片である。関連するポリヌクレオチド、ベクター、抗CD73抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物も提供される。また、本明細書に開示される抗CD73抗体及び抗原結合断片の作製方法並びに使用方法、例えば、診断方法及び対象における癌の治療方法(直接療法、アジュバント療法としての、又は併用療法での)も提供される。本発明はまた、本明細書に開示されるCD73結合分子から得られる抗体-薬物コンジュゲートも提供する。更に、本発明は、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447)と、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体(例えば、MEDI4736)、抗CTLA4抗体などの、癌免疫サイクルの別の側面を標的化する薬剤の1つ以上とを特徴とする治療的併用;及び腫瘍媒介性免疫抑制を低減するためのかかる併用の使用方法を提供する。
【0134】
本開示を更に容易に理解し得るように、初めに特定の用語を定義する。追加的な定義は詳細な説明全体を通じて示される。
【0135】
I.定義
本発明を詳細に説明する前に、この発明が特定の組成物又は方法ステップに限定されず、それらは異なってもよいことが理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象を含む。用語「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)、並びに用語「1つ以上」及び「少なくとも1つ」は、本明細書では同義的に使用することができる。
【0136】
更に、「及び/又は」は、本明細書で使用される場合、2つの指定される特徴又は構成要素の各々の、他方を伴う又は伴わない具体的な開示と解釈されるべきである。従って、用語及び/又は」は、本明細書で「A及び/又はB」などの語句で用いられるとき、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、用語「及び/又は」は、「A、B、及び/又はC」などの語句で用いられるとき、以下の態様の各々を包含することが意図される:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)。
【0137】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressが、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0138】
単位、接頭辞、及び記号は、それらの国際単位系(SI)で認められている形式で示される。数値範囲は、その範囲を定義する数を含む。特に指示されない限り、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に記載する。本明細書に提供される見出しは、本明細書を全体として参照することによって有され得る種々の態様の限定ではない。従って、この直後に定義する用語は、本明細書を全体として参照することによって更に十全に定義される。
【0139】
本明細書において態様が用語「~を含む(comprising)」を用いて記載される場合は常に、「~からなる(consisting of)」及び/又は「~から本質的になる(consisting essentially of)」の用語で記載される他の点では類似の態様も提供されることが理解される。
【0140】
アミノ酸は、本明細書において、その一般に知られている三文字記号によるか、或いはIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨する一文字記号により参照される。ヌクレオチドも同様に、その一般に認められている一文字コードによって参照される。
【0141】
用語「CD73ポリペプチド」は、本明細書で使用されるとき、文献中では5’-ヌクレオチダーゼ(5’-NT)又はエクト-5’-ヌクレオチダーゼとも称される、NT5E遺伝子によってコードされるCD73(分化クラスター73)タンパク質を指す。例えば、Misumi et al.Eur.J.Biochem.191(3):563-9(1990)を参照のこと。ヒト型及びマウス型CD73のそれぞれの配列は、Uniprotデータベースで、それぞれ受託番号P21589及びQ61503に基づき入手可能である。任意のCD73抗体エピトープを定義するにあたって、用いられるアミノ酸の付番は、シグナル配列残基を含まない成熟CD73タンパク質のアミノ酸残基を表す。従って、例えば、アミノ酸Val144、Lys180、及びAsn185と結合する抗体は、シグナル配列の切断後の、即ち成熟タンパク質のアミノ酸のアミノ酸位置を参照する。
【0142】
例示的CD73ポリペプチドを以下に提供する。
>sp|P21589|5NTD_ヒト5’-ヌクレオチダーゼ OS=ヒト(Homo sapiens) GN=NT5E PE=1 SV=1
【化1】
【0143】
可溶性形態及び膜結合形態のCD73が同定されている。Klemens et al,Biochem.Biophys.Res.Commun.172(3):1371-7(1990)を参照のこと。加えて、幾つかの異なるアイソザイムが同定されている。Rosi et al.Life Sci.62(25):2257-66(1998)を参照のこと。完全長CD73タンパク質は574アミノ酸を含む。成熟CD73タンパク質はシグナル配列(1~26位)及びプロペプチドのC末端領域(550~574位)の除去後に産生される。加えて、CD73のアイソフォーム2では選択的スプライシング後にアミノ酸404~453が除去される。例えば、変異体C358Y、変異体T376A、及び変異体M379Tなど、天然変異体も知られている。Misumi et al.,Eur.J.Biochem.191:563-569(1990);Otsuki et al.DNA Res.12:117-126(2005);Mungall et al.Nature 425:805-811(2003);Hansen et al.Gene 167:307-312(1995);Klemens et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.172:1371-1377(1990);Knapp et al.Structure 20:2161-2173(2012);又はSt.Hilaire et al.N.Engl.J.Med.364:432-442(2011)(これらは全て、全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0144】
組織液中、特に血清中の患者のCD73レベルの変化につながる典型的な疾患は、組織外傷;心筋梗塞又は脳卒中、臓器移植又は他の外科手術によって生じる再灌流傷害;癌又は癌転移;又は前記外傷若しくは再灌流傷害によるか、又はアレルギー病態、自己免疫疾患、及び炎症性疾患を含めた慢性病態によって生じる炎症病態である。かかる慢性病態の例としては、関節炎、喘息などのアレルギー病態、炎症性腸疾患などの炎症病態又は皮膚の炎症病態、乾癬、パーキンソン病、アルツハイマー病、自己免疫疾患、I型又はII型糖尿病、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、クローン病、又は臓器移植に起因する拒絶反応を挙げることができる。特に、炎症性疾患の全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性肺損傷(ALI)、多臓器不全(MOF)、虚血再灌流傷害(IRI)及び薬物有害反応(ADRS)が、組織液CD73タンパク質の変化につながる。従って、本明細書に開示されるCD73結合分子は、例えば、癌(例えば、結腸癌、メラノーマ、乳癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及びバーキットリンパ腫、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、及び膵癌)の治療又は診断に使用することができる。加えて、本明細書に開示されるCD73結合分子を使用した患者由来試料(例えば組織液)のCD73レベルの計測を用いることにより、上述の疾患の発生をモニタし、療法の有効性を評価し、特定の療法による治療に患者を選定し、又は医学的判断を下し、例えば、特定の治療を開始し、終了し、中断し、若しくは修正することができる。
【0145】
用語「阻害する」、「遮断する」、「抑制する」、及びその文法上の変化形は、本明細書では同義的に使用され、活性の完全な遮断を含め、生物学的活性の任意の統計学的に有意な減少を指す。例えば、「阻害」は、生物学的活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の減少を指し得る。従って、例えばCD73の酵素活性に対する効果を記載するために用語「阻害」又は「抑制」が用いられるとき、この用語は、抗CD73抗体又はその抗原結合断片がCD73の5’-ヌクレオチダーゼ活性(アデノシン一リン酸、AMPからアデノシンへの加水分解を異化(catabolizing)する)を、未処理(対照)細胞のCD73媒介性5’-ヌクレオチダーゼ活性と比べて統計学的に有意に減少させる能力を指す。CD73を発現する細胞は天然に存在する細胞若しくは細胞株(例えば癌細胞)であってもよく、又はCD73をコードする核酸を宿主細胞に導入することによって組換え産生されてもよい。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、生体液中の可溶性形態のCD73の5’-ヌクレオチダーゼ活性を統計学的に有意に減少させることができる。一態様において、抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片は、CD73媒介性5’-ヌクレオチダーゼ活性を、例えば以下の実施例に記載する方法及び/又は当該技術分野において公知の方法によって決定するとき少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%、少なくとも25%、又は少なくとも30%、少なくとも35%、又は少なくとも40%、少なくとも45%、又は少なくとも50%、少なくとも55%、又は少なくとも60%、少なくとも65%、又は少なくとも70%、少なくとも75%、又は少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%、少なくとも95%、又は約100%阻害する。
【0146】
用語「CD73活性を抑制する」は、本明細書で使用されるとき、抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片が、CD73を発現する細胞又はCD73を含有する試料におけるCD73依存性5’-ヌクレオチダーゼ活性を統計学的に有意に減少させる能力を指す。一部の態様において、CD73活性の抑制は、細胞又は試料を本開示の抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片に接触させたとき、抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片の非存在下(対照条件)で計測したCD73活性と比べて少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は約100%の減少であり得る。
【0147】
本明細書で同義的に使用されるとおりの用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は、全抗体及びその任意の抗原結合断片若しくは単鎖を含む。
【0148】
典型的な抗体は、ジスルフィド結合によって相互に接続した少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではVH又はVHと省略する)と重鎖定常領域とを含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではVL又はVLと省略する)と軽鎖定常領域とを含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLを含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FW)と呼ばれるより保存された領域が間に入った、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順番:FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4で並んだ3つのCDRと4つのFWとを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、種々の免疫系細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含めた宿主組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介することができる。本開示の例示的抗体としては、抗CD73抗体(オリジナル及び生殖細胞系列化されたもの)、親和性最適化クローン、ADCC欠損最適化抗体、コンジュゲート抗体(例えばADC)、及び他の最適化抗体(例えば、血清半減期最適化抗体、例えばYTE突然変異、Dall’Acqua et al.,J.Biol.Chem.281:23514-24(2006)及び米国特許第7,083,784号明細書(本明細書によって全体として参照により援用される)を参照)が挙げられる。
【0149】
用語「生殖細胞系列化」は、抗体の特定の位置にあるアミノ酸が生殖細胞系列のものに復帰突然変異することを意味する。
【0150】
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介してタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、又は前述の組み合わせなどの標的を認識し、それに特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、その抗体が所望の生物学的活性を呈する限りにおいて、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片など)、単鎖Fv(scFv)突然変異体、少なくとも2つのインタクトな抗体から作成された二重特異性抗体などの多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。
【0151】
抗体は、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと称されるその重鎖定常ドメインのアイデンティティに基づき、5つの主要な免疫グロブリンクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、又はそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のいずれかのものであり得る。異なる免疫グロブリンクラスは異なる周知のサブユニット構造及び三次元配置を有する。抗体は、ネイキッドであってもよく、又は毒素、放射性同位体等の他の分子にコンジュゲートしてADCを形成してもよい。
【0152】
「遮断」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、CD73など、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害し、又は低下させるものである。特定の態様において、遮断抗体又はアンタゴニスト抗体は抗原の生物学的活性を実質的に又は完全に阻害する。望ましくは、生物学的活性は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%,少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は更には100%低下する。
【0153】
用語「CD73抗体」、「CD73に結合する抗体」又は「抗CD73」は、その分子がCD73の標的化において治療剤又は診断試薬として有用となるように十分な親和性でCD73と結合する能力を有する抗体又はその抗原結合断片を指す。無関係の非CD73タンパク質に対する抗CD73抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、BIACORE(商標)(分析物として組換えCD73及びリガンドとして抗体を使用するか、又はその逆)、又は当該技術分野において公知の他の結合アッセイによって計測するときのCD73に対するこの抗体の結合の約10%未満である。特定の態様において、CD73に結合する抗体は、解離定数(KD)が≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦10pM、≦1pM、又は≦0.1pMである。用語「抗CD73」はまた、例えば、足場に組み込まれた、本明細書に開示される抗体のCDRを含む分子も広く包含する。従って、語句「CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片」は、抗体及びその抗原結合断片を指すのみならず、例えば、本明細書に開示される抗体のCDRを組み込む1つ以上の足場(フィブロネクチン又はテネイシン-3由来のフィブロネクチンIII型ドメインなど)を含む分子も指し得る。例えば、米国特許出願公開第20150098955号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0154】
一実施形態において、抗CD73抗体は、IgG1 Fcドメインが突然変異L234、L235E及びP331を含み、可溶性CD73及び細胞表面提示型CD73と結合し、且つCD73酵素活性を阻害するようなIgG1-TMフォーマットの抗体を指す。
図1A~
図1DはMEDI9447 VH及びVLドメインのヌクレオチド及びアミノ酸配列を提供する。
【0155】
「CTLA4ポリペプチド」とは、T細胞阻害活性を有する、GenBank受託番号AAL07473.1と少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。AAL07473.1の配列を以下に提供する。
CTLA4ポリペプチド配列[ヒト(Homo sapiens)]
gi|15778586|gb|AAL07473.1|AF414120_1
【化2】
【0156】
「CTLA4核酸分子」とは、CTLA4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的CTLA4核酸分子配列は、GenBank受託番号AAL07473に提供される。
【0157】
「抗CTLA4抗体」とは、CTLA4ポリペプチドと選択的に結合する抗体を意味する。例示的抗CTLA4抗体は、例えば米国特許第6,682,736号明細書;同第7,109,003号明細書;同第7,123,281号明細書;同第7,411,057号明細書;同第7,824,679号明細書;同第8,143,379号明細書;同第7,807,797号明細書;及び同第8,491,895号明細書(同明細書中、トレメリムマブは11.2.1である)(これらは本明細書において参照により援用される)に記載される。トレメリムマブは例示的抗CTLA4抗体である。トレメリムマブ配列は、以下の本明細書の配列表に提供される(配列番号130~137)。
【0158】
「PD-1ポリペプチド」とは、NCBI受託番号NP_005009と少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、且つPD-L1及び/又はPD-L2結合活性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。NP_005009の配列を以下に提供する。
PD-1ポリペプチド配列
NCBI受託番号NP_005009
【化3】
【0159】
「PD-1核酸分子」とは、PD-1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的PD-1核酸分子配列はNCBI受託番号NM_005018に提供される。
【0160】
「抗PD-1抗体」とは、PD-1ポリペプチドと選択的に結合する抗体又はその抗原結合断片を意味する。例示的抗PD-1抗体としては、例えば、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、ランブロリズマブ、MK-3475)、ニボルマブ(OPDIVA(登録商標)、BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、又はAMP-224が挙げられる。
【0161】
「PD-L1ポリペプチド」とは、NCBI受託番号NP_001254635と少なくとも約85%、95%又は100%のアミノ酸同一性を有し、且つPD-1及びCD80結合活性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。NP_001254635の配列を以下に提供する。
PD-L1ポリペプチド配列
NCBI受託番号NP_001254635
【化4】
【0162】
「PD-L1核酸分子」とは、PD-L1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的PD-L1核酸分子配列はNCBI受託番号NM_001267706に提供される。
【0163】
「抗PD-L1抗体」とは、PD-L1ポリペプチドと選択的に結合する抗体又はその抗原結合断片を意味する。例示的抗PD-L1抗体は、例えば米国特許出願公開第20130034559号明細書/米国特許第8779108号明細書及び米国特許出願公開第20140356353号明細書(これらは本明細書において参照により援用される)に記載される。MEDI4736は例示的PD-L1抗体である。MEDI4736の配列は、以下の本明細書の配列表に提供される(配列番号138~145)。
【0164】
用語「抗原結合断片」は、インタクトな抗体の一部分を含む分子を指し、詳細には、インタクトな抗体の抗原決定可変領域を含む分子を指す。当該技術分野において、抗体の抗原結合機能が完全長抗体の断片によって果たされ得ることは公知である。抗体断片の例としては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、線状抗体、一本鎖抗体、及び抗体断片で形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0165】
「モノクローナル抗体」は、単一の抗原決定基又はエピトープの高度に特異的な認識及び結合に関与する均質な抗体集団を指す。これは、典型的には異なる抗原決定基に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体と対照的である。
【0166】
用語「モノクローナル抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体及び完全長モノクローナル抗体の両方、並びに抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖可変断片(scFv)、抗体部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。更に、「モノクローナル抗体」は、限定はされないが、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、及びトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウスにおけるヒト抗体の発現)によることを含めた、任意の方法で作製されたかかる抗体を指す。
【0167】
用語「ヒト化抗体」は、最小限の非ヒト(例えばマウス)配列を含むように改変された非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンに由来する抗体を指す。典型的には、ヒト化抗体は、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、又はハムスター)のCDRの残基によってCDRの残基が置き換えられているヒト免疫グロブリンである(Jones et al.,1986,Nature,321:522-525;Riechmann et al.,1988,Nature,332:323-327;Verhoeyen et al.,1988,Science,239:1534-1536)。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(FW)アミノ酸残基が、所望の特異性、及び/又は親和性、及び/又は能力を有する非ヒト種由来の抗体の対応する残基で置き換えられる。
【0168】
ヒト化抗体は、抗体の特異性、親和性、及び/又は能力を洗練して最適化するため、Fvフレームワーク領域にあるか、及び/又は置き換えられた非ヒト残基内にある更なる残基の置換によって更に修飾することができる。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域の全て又は実質的に全てを含有する少なくとも1つ、典型的には2つ又は3つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、一方、FR領域の全て又は実質的に全てはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれの少なくとも一部分も含み得る。ヒト化抗体の作成に用いられる方法の例が、米国特許第5,225,539号明細書又は同第5,639,641号明細書に記載される。
【0169】
抗体の「可変領域」は、単独での、或いは組み合わせでの、抗体軽鎖の可変領域又は抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域は、各々、3つのCDR領域によってつながった4つのFW領域からなる。各鎖のCDRはFW領域によって近接して一体に保持されており、他方の鎖のCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRの決定には少なくとも2つの技法がある:(1)異種間配列多様性に基づく手法(即ち、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda Md.));及び(2)抗原抗体複合体の結晶学的研究に基づく手法(Al-lazikani et al.(1997)J.Molec.Biol.273:927-948))。加えて、当該技術分野では、CDRの決定にこれらの2つの手法の組み合わせが用いられることもある。
【0170】
Kabat付番方式は、概して、可変ドメインの残基(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)を参照するときに用いられる(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。
【0171】
語句「Kabatにあるとおりのアミノ酸位置付番」、「Kabat位置」、及びその文法上の変化形は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)における抗体の編成の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに用いられる付番方式を指す。この付番方式を用いると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFW又はCDRの短縮、又はそれへの挿入に対応するより少ない又は追加的なアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)を含み、及び重鎖FW残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。
【0172】
【0173】
残基のKabat付番は、所与の抗体について、相同性領域において抗体の配列を「標準」Kabat付番配列とアラインメントすることにより決定し得る。Chothiaは、その代わりに構造ループの位置を参照する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabat付番規則を用いて付番したときのChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32~H34の間で異なる(これは、Kabat付番スキームがH35A及びH35Bに挿入を置くためである;35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終わり;35Aのみが存在する場合、ループは33で終わり;35A及び35Bの両方が存在する場合、ループは34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia 構造ループとの妥協案に相当し、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられている。
【0174】
IMGT(ImMunoGeneTics)も、CDRを含めた免疫グロブリン可変領域の付番方式を提供する。例えば、Lefranc,M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55-77(2003)(これは本明細書において参照により援用される)を参照のこと。IMGT付番方式は、5,000を超える配列のアラインメント、構造データ、及び超可変ループの特徴付けに基づいたもので、あらゆる種の可変領域及びCDR領域の容易な比較を可能にする。IMGT付番スキーマによれば、VH-CDR1は26~35位にあり、VH-CDR2は51~57位にあり、VH-CDR3は93~102位にあり、VL-CDR1は27~32位にあり、VL-CDR2は50~52位にあり、及びVL-CDR3は89~97位にある。
【0175】
EUインデックス又はEU付番方式は、配列決定された最初のヒトIgG(EU抗体)の連続付番に基づく。この規則の最も一般的な参考文献はKabat配列マニュアル(Kabat et al.,1991)であるため、EUインデックスは時にKabatインデックスと同義として誤って使用される。EUインデックスは挿入及び欠失を提供せず、従って場合によってはIgGサブクラス及び種間でのIgG位置の比較が、特にヒンジ領域で不確かとなり得る。それにも関わらず、この規則は、多数のFc構造機能研究においてFc領域間の直接的な比較を可能にするのに十分となっている。従って、本明細書でFc領域における置換及び挿入に用いる付番スキームは、KabatにあるとおりのEUインデックスである。対照的に、本明細書で可変領域(VH及びVL)に用いる付番スキームは、標準的なKabat付番である。
【0176】
本明細書全体を通じて用いられるとおり、記載されるVH CDR配列は古典的Kabat付番位置に対応し、即ち、Kabat VH-CDR1は31~35位にあり、VH-CDR2は50~65位にあり、及びVH-CDR3は95~102位にある。VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3も古典的Kabat付番位置、即ち、24~34位、50~56位及び89~97位に対応する。
【0177】
本明細書で使用されるとき、Fc領域は、最初の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを含む。従って、Fcとは、IgA、IgD、及びIgGの最後2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、及びIgE及びIgMの最後3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びにこれらのドメインのN末端の可動性ヒンジを指す。IgA及びIgMについては、FcはJ鎖を含み得る。IgGについては、Fcは免疫グロブリンドメインCガンマ2及びCガンマ3(Cγ2及びCγ3)並びにCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間のヒンジを含む。
【0178】
Fc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、そのカルボキシル末端に残基C226又はP230を含むように定義される(ここで付番は、Kabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))に規定されるとおりのEUインデックスに従う)。Fcとは、独立してこの領域を指し得るか、又は抗体、抗体断片、若しくはFc融合タンパク質に関連してこの領域を指し得る。幾つもの異なるFc位置に、限定はされないが、EUインデックスによって付番するときの270、272、312、315、356、及び358位を含め、多型が観察されており、従って提示される配列と先行技術の配列との間には少しの差異が存在し得る。
【0179】
用語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体、又は当該技術分野において公知の任意の技法(例えば、培養下の細胞における組換え発現、又はトランスジェニック動物における発現)を用いて作製されるヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。従って、用語のヒト抗体はまた、本来はヒトによって産生される抗体(又はその改変された変異体若しくは誘導体)であるが、非ヒト系で発現する(例えば、化学合成によって作製されるか;微生物、哺乳動物、又は昆虫細胞で組換え発現するか;又は動物対象で発現する)抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体も包含する。従って、ヒト対象又はヒト細胞(例えば、組換え抗体又はその断片を発現するハイブリドーマ又は細胞株)から得られ、続いて動物、例えばマウスで発現する抗体は、ヒト抗体と見なされる。ヒト抗体のこの定義には、インタクトな又は完全長の抗体、その断片、及び/又は少なくとも1つのヒト重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチドを含む抗体、例えば、マウス軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体などが含まれる。
【0180】
用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ以上の動物種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域が、所望の特異性、及び/又は親和性、及び/又は能力を有する哺乳動物の1つの種(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)に由来する抗体の可変領域に対応し、一方、定常領域が、別の種(通常はヒト)に由来する抗体の配列と同種であり、その種における免疫応答の誘発が回避される。
【0181】
用語「エピトープ」は、本明細書で使用されるとき、本明細書に開示されるCD73抗体又はCD73結合分子との結合能を有する抗原タンパク質決定基を指す。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有する。抗体又は結合分子のうちのエピトープを認識する部分は、パラトープと呼ばれる。タンパク質抗原のエピトープは、その構造及びパラトープとの相互作用に基づき立体エピトープと線状エピトープとの2つに分類される。立体エピトープは、抗原のアミノ酸配列の不連続なセクションで構成される。これらのエピトープは、抗原の三次元表面特徴及び形状又は三次構造に基づきパラトープと相互作用する。対照的に、線状エピトープは、その一次構造に基づきパラトープと相互作用する。線状エピトープは抗原の連続したアミノ酸配列によって形成される。
【0182】
用語「抗体結合部位」は、相補的な抗体が特異的に結合する連続又は不連続な部位(即ち、エピトープ)を含む抗原(例えば、CD73)内の領域を指す。従って、抗体結合部位は、抗原内に、エピトープを越えた、結合親和性及び/又は安定性などの特性を決定し得るか又は抗原酵素活性又は二量化などの特性に影響を与え得る追加的な範囲を含み得る。従って、2つの抗体が抗原内の同じエピトープに結合する場合であっても、抗体分子がエピトープ外のアミノ酸との個別的な分子間接触を確立する場合、かかる抗体は個別的な抗体結合部位に結合すると見なされる。
【0183】
「結合親和性」は、概して、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。特に指示がない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」は、結合対(例えば抗体と抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、概して解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含め、当該技術分野において公知の一般的な方法によって計測することができる。低親和性抗体は、概して抗原に緩徐に結合し、容易に解離する傾向があり、一方、高親和性抗体は、概して抗原に速やかに結合し、結合したまま長く留まる傾向がある。結合親和性を計測する種々の方法が当該技術分野において公知であり、本開示の目的上、そのいずれを用いることもできる。
【0184】
「効力」は、通常、特に指定されない限りnM単位のIC50値として表現される。IC50は、抗原結合分子の阻害濃度中央値である。機能アッセイでは、IC50は、生物学的反応をその最大値の50%低下させる濃度である。リガンド結合試験では、IC50は、受容体結合を最大特異的結合レベルの50%低下させる濃度である。IC50は、当該技術分野において公知の任意の手段によって計算することができる。効力の改善は、例えば親抗体(例えば、生殖細胞系列化する前の親抗体又は親和性最適化する前の親抗体)と比べた計測によって決定し得る。
【0185】
親抗体と比較したときの本開示の抗体又はポリペプチドの効力の改善倍数は、少なくとも約2倍、少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、又は少なくとも約180倍又はそれを超えることができる。
【0186】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」は、ある種の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌免疫グロブリンによってそれらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、続いてその標的細胞を細胞毒で死滅させることが可能になる細胞傷害の一形態を指す。標的細胞の表面に向かう特異的高親和性IgG抗体は細胞傷害性細胞を「武装」し、かかる死滅に不可欠である。標的細胞の溶解は細胞外であって、直接的な細胞間接触が必要であり、補体は関与しない。抗体に加えて、抗原担持標的細胞に特異的に結合する能力を有するFc領域を含む他のタンパク質、具体的にはFc融合タンパク質は、細胞媒介性細胞傷害を達成可能であると考えられる。簡単にするため、Fc融合タンパク質の活性によって生じる細胞媒介性細胞傷害も本明細書ではADCC活性と称する。
【0187】
「単離されている」ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、天然には見られない形態のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物である。単離されたポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物には、もはやそれらが天然に見られる形態ではなくなる程度まで精製されているものが含まれる。一部の態様において、単離されている抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、実質的に純粋である。
【0188】
用語「対象」は、限定はされないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含めた、特定の治療のレシピエントとなる任意の動物(例えば哺乳動物)を指す。典型的には、用語「対象」及び「患者」は、本明細書ではヒト対象を指して同義的に使用される。
【0189】
用語「医薬組成物」は、活性成分(例えば、本明細書に開示される抗CD73結合分子)の生物学的活性が有効となるのを可能にするような形態の調製物であって、その組成物を投与しようとする対象にとって許容できない毒性がある追加的な構成成分を含有しない調製物を指す。かかる組成物は無菌であり得る。
【0190】
本明細書に開示されるとおりの抗CD73結合分子の「有効量」は、具体的に記載される目的の実行に十分な量である。「有効量」は、記載される目的に関して実験的に常法で決定することができる。
【0191】
用語「治療有効量」は、対象又は哺乳動物の疾患又は障害を「治療」するのに有効な、本明細書に開示される抗CD73結合分子又は他の薬物の量を指す。
【0192】
語句「標識」は、本明細書で使用されるとき、本明細書に開示される抗CD73結合分子に直接又は間接的に融合した(例えば遺伝子融合した)又はコンジュゲートした(例えば化学的にコンジュゲートした)、それにより「標識」抗CD73結合分子を生じさせる検出可能な化合物又は組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能であってもよく(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、又は酵素標識の場合、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的改変を触媒することができる。
【0193】
「誘導体化可能基」及び「誘導体化可能官能基」などの用語は同義的に使用され、反応することによって本明細書に開示される抗CD73結合分子(例えばCD73抗体)と別の物質との間での共有結合の形成を可能にする能力を有する官能基を指す。一部の態様において、かかる物質は、治療剤(例えば細胞毒)、検出可能標識、ポリマー(例えばPEG)等である。例示的誘導体化可能基としては、チオール、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシ、及びアミド、並びにこれらの修飾形態、例えば活性化形態又は保護形態などが挙げられる。
【0194】
「治療する」又は「治療」又は「治療すること」又は「軽減する」又は「軽減すること」などの用語は、(1)診断された病的状態又は障害を治癒し、減速させ、その症状を和らげ、及び/又はその進行を止める治療手段と、(2)標的とする病的状態又は障害の発症を防ぎ及び/又は遅らせる予防又は防御手段との両方を指す。従って、治療を必要としている者には、既に障害を有する者;障害を起こし易い者;及び障害を予防すべき者が含まれる。特定の態様において、対象は、その患者が例えばある種の癌の完全寛解、部分寛解、又は一時的寛解を示す場合、本開示の方法による癌の「治療」に成功している。
【0195】
用語「癌」、「腫瘍」、「癌性」、及び「悪性」は、典型的には調節されない細胞成長によって特徴付けられる哺乳動物の生理的状態を指し、又はそれを記述する。癌の例としては、限定はされないが、癌腫、例えば、腺癌、リンパ腫、芽細胞腫、メラノーマ、肉腫、及び白血病が挙げられる。かかる癌のより詳細な例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、消化管癌、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、膵癌、膠芽腫、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌及び肝細胞癌などの肝臓癌、膀胱癌、乳癌(ホルモン媒介性乳癌を含む、例えば、Innes et al.(2006)Br.J.Cancer 94:1057-1065を参照)、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、骨髄腫(多発性骨髄腫など)、唾液腺癌、腎細胞癌及びウィルムス腫瘍などの腎臓癌、基底細胞癌、メラノーマ、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、精巣癌、食道癌、各種の頭頸部癌及びムチン性起源の癌、例えば、ムチン性卵巣癌、胆管癌(肝臓)及び腎乳頭癌が挙げられる。一部の態様において、用語の癌は、本明細書で使用されるとき、CD73を発現する癌を具体的に指す。一部の具体的な態様において、用語の癌は、低レベルのCD73を発現する癌を指す。一部の態様において、用語の癌は、本明細書で使用されるとき、CD73を発現する癌(例えば、結腸癌、乳癌、リンパ腫、非小細胞癌)を具体的に指す。
【0196】
本明細書で同義的に使用されるとおりの「ポリヌクレオチド」、又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。前出の説明は、RNA及びDNAを含め、本明細書で言及されるあらゆるポリヌクレオチドに適用される。
【0197】
用語「ベクター」は、宿主細胞に1つ以上の目的の遺伝子又は配列を送達し、一部の態様では発現させる能力を有する構築物を意味する。ベクターの例としては、限定はされないが、ウイルスベクター、ネイキッドDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン性縮合剤に関連するDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター、及び特定の真核細胞、例えばプロデューサー細胞が挙げられる。
【0198】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書では、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指して同義的に使用される。ポリマーは線状又は分枝状であってもよく、それは修飾アミノ酸を含んでもよく、且つそれは非アミノ酸によって分断されていてもよい。これらの用語はまた、天然で又は介入によって修飾されている(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作又は修飾、例えば標識成分とのコンジュゲーションなど)アミノ酸ポリマーも包含する。また、この定義内には、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸等を含む)、並びに当該技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。本開示のポリペプチドは抗体に基づくため、特定の態様において、ポリペプチドは単鎖又は会合鎖として存在し得ることが理解される。
【0199】
「組換え」ポリペプチド又はタンパク質は、組換えDNA技術によって産生されるポリペプチド又はタンパク質を指す。改変された宿主細胞で発現する組換え産生ポリペプチド及びタンパク質は、任意の好適な技術によって分離され、分画され、又は部分的若しくは実質的に精製されている天然又は組換えポリペプチドと同様に、単離されていると見なされる。本明細書に開示されるポリペプチドは、当該技術分野において公知の方法を用いて組換え産生されてもよい。或いは、本明細書に開示されるタンパク質及びペプチドは化学的に合成されてもよい。
【0200】
用語「アミノ酸置換」は、親配列に存在するアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置き換えることを指す。アミノ酸は、親配列において、例えば化学的ペプチド合成を用いるか、又は当該技術分野において公知の組換え方法で置換することができる。従って、「X位での置換」又は「X位での置換」と言うときは、X位に存在するアミノ酸を代替的なアミノ酸残基で置換することを指す。一部の態様において、置換パターンは、スキーマAXYに従い記述することができ、ここでAは、天然でX位に存在するアミノ酸に対応する一文字コードであり、Yは置換するアミノ酸残基である。他の態様において、置換パターンはスキーマXYに従い記述することができ、ここでYは、天然でX位に存在するアミノ酸を置換するアミノ酸残基に対応する一文字コードである。
【0201】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。従って、ポリペプチドのアミノ酸が同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸に置き換えられる場合、この置換は保存的であると見なされる。別の態様では、一続きのアミノ酸を、側鎖ファミリーメンバーの順番及び/又は組成が異なる構造的には同様の一続きによって保存的に置き換えることができる。
【0202】
非保存的置換は、(i)電気陽性側鎖を有する残基(例えば、Arg、His又はLys)が電気陰性残基(例えば、Glu又はAsp)に代えて、又はそれによって置換されているか、(ii)親水性残基(例えば、Ser又はThr)が疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、Phe又はVal)に代えて、又はそれによって置換されているか、(iii)システイン又はプロリンが任意の他の残基に代えて、又はそれによって置換されているか、又は(iv)かさ高い疎水性又は芳香族側鎖を有する残基(例えば、Val、His、Ile又はTrp)がより小さい側鎖を有するもの(例えば、Ala、Ser)又は側鎖を有しないもの(例えば、Gly)に代えて、又はそれによって置換されているものを含む。
【0203】
当業者は他の置換を容易に特定することができる。例えば、アミノ酸アラニンについて、置換は、D-アラニン、グリシン、β-アラニン、L-システイン及びD-システインのいずれか1つから選ぶことができる。リジンについて、置換は、D-リジン、アルギニン、D-アルギニン、ホモアルギニン、メチオニン、D-メチオニン、オルニチン、又はD-オルニチンのいずれか1つであってもよい。概して、単離ポリペプチドの特性の変化を引き起こすと予想し得る機能的に重要な領域の置換は、(i)極性残基、例えば、セリン又はスレオニンが疎水性残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、又はアラニンに代えて(又はそれによって)置換されるか;(ii)システイン残基が任意の他の残基に代えて(又はそれによって)置換されるか;(iii)電気陽性側鎖を有する残基、例えば、リジン、アルギニン又はヒスチジンが電気陰性側鎖を有する残基、例えば、グルタミン酸又はアスパラギン酸に代えて(又はそれによって)置換されるか;又は(iv)かさ高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、かかる側鎖を有しないもの、例えばグリシンに代えて(又はそれによって)置換されるものである。前述の非保存的置換のうちの1つがタンパク質の機能特性を変化させ得る可能性はまた、タンパク質の機能的に重要な領域に対する置換の位置にも相関する。従って一部の非保存的置換は、生物学的特性に対する効果をほとんど又は全く有しない。
【0204】
用語「アミノ酸挿入」は、親配列に存在する2つのアミノ酸残基の間に新規アミノ酸残基を導入することを指す。アミノ酸は、例えば、化学的ペプチド合成を用いるか、又は当該技術分野において公知の組換え方法で親配列に挿入することができる。従って本明細書で使用されるとき、語句「X位とY位との間への挿入」又は「Kabat X位とY位との間への挿入」(ここでX及びYはアミノ酸位置に対応する)は(例えば、239位と240位との間へのシステインアミノ酸挿入)、X位とY位との間へのアミノ酸の挿入を指し、また、核酸配列における、X位及びY位のアミノ酸をコードするコドン間への、あるアミノ酸をコードするコドンの挿入も指す。挿入パターンは、スキーマAXinsに従い記述することができ、ここでAは、挿入されるアミノ酸に対応する一文字コードであり、及びXは挿入の前の位置である。
【0205】
2つのポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の「パーセント配列同一性」という用語は、2つの配列の最適アラインメントのため導入しなければならない付加又は欠失(即ちギャップ)を考慮した、比較ウィンドウにわたって配列が共有される同一のマッチ位置の数を指す。マッチ位置は、標的配列と参照配列との両方で同一のヌクレオチド又はアミノ酸が提供される任意の位置である。ギャップはヌクレオチド又はアミノ酸ではないため、標的配列に提供されるギャップはカウントしない。同様に、カウントするのは標的配列のヌクレオチド又はアミノ酸であり、参照配列のヌクレオチド又はアミノ酸ではないため、参照配列に提供されるギャップもカウントしない。
【0206】
配列同一性のパーセンテージは、両方の配列に同一のアミノ酸残基又は核酸塩基が存在する位置の数を決定してマッチ位置の数を求め、そのマッチ位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性パーセンテージを求めることにより計算される。2つの配列間の配列の比較及びパーセント配列同一性の決定は、オンライン使用及びダウンロードの両方について容易に利用可能なソフトウェアを用いて達成することができる。好適なソフトウェアプログラムは、様々な供給元から、タンパク質配列及びヌクレオチド配列の両方のアラインメントについて利用可能である。パーセント配列同一性を決定するための1つの好適なプログラムは、米国政府の国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)のBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTプログラムスイートの一部であるbl2seqである。bl2seqは、BLASTN又はBLASTPのいずれかのアルゴリズムを使用して2つの配列間の比較を行う。BLASTNは核酸配列の比較に用いられ、一方、BLASTPはアミノ酸配列の比較に用いられる。他の好適なプログラムは、例えば、EMBOSSバイオインフォマティクスプログラムスイートの一部であって、且つ欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute:EBI)、www.ebi.ac.uk/Tools/psaからも入手可能なニードル(Needle)、ストレッチャー(Stretcher)、ウォーター(Water)、又はマッチャー(Matcher)である。
【0207】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド参照配列と整列する単一ポリヌクレオチド又はポリペプチド標的配列内の種々の領域は、各々が独自のパーセント配列同一性を有し得る。パーセント配列同一性の値は小数第2位で四捨五入されることが注記される。例えば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は80.1に切り捨てられ、一方、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は80.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数であることも注記される。
【0208】
特定の態様において、第1のアミノ酸配列の第2の配列アミノ酸に対するパーセンテージ同一性「X」は、100×(Y/Z)(式中、Yは、第1及び第2の配列のアラインメント(目視検査によるか、又は特定の配列アラインメントプログラムによってアラインメントしたとき)において同一のマッチとしてスコア化されるアミノ酸残基の数であり、Zは、第2の配列の残基の総数である)として計算される。第1の配列の長さが第2の配列より長い場合、第1の配列の第2の配列に対するパーセント同一性は第2の配列の第1の配列に対するパーセント同一性より高くなる。
【0209】
当業者は、パーセント配列同一性を計算するための配列アラインメントの生成が一次配列データによってのみ駆動される二値の配列間比較に限定されないことを理解するであろう。配列アラインメントは多重配列アラインメントから得ることができる。多重配列アラインメントの生成に好適な1つのプログラムは、www.clustal.orgから入手可能なClustalW2である。別の好適なプログラムは、www.drive5.com/muscle/から入手可能なMUSCLEである。或いは、ClustalW2及びMUSCLEは、例えばEBIから入手可能である。
【0210】
また、配列データを構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能データ(例えば、突然変異の位置)、又は系統学的データなどの異種ソースのデータと統合することによって配列アラインメントを生成し得ることも理解されるであろう。異種データを統合して多重配列アラインメントを生成する好適なプログラムは、www.tcoffee.orgで入手可能であるか、或いは例えばEBIから入手可能なT-Coffeeである。また、パーセント配列同一性の計算に用いる最終的なアラインメントは自動的に又は手動でキュレーションし得ることも理解されるであろう。
【0211】
用語「コンセンサス配列」は、軽鎖(VL)及び重鎖(VH)可変領域に関して本明細書で使用されるとき、VL又はVH鎖内のいずれのアミノ酸残基が抗原結合に害を及ぼすことなく修飾するのに適しているかに関する情報に基づき定義される複合の又は一般化されたVL若しくはVH配列を指す。従って、VL鎖又はVH鎖の「コンセンサス配列」では、特定のアミノ酸位置が、その位置における複数の可能なアミノ酸残基のうちの1つによって占有される。例えば、特定の位置にアルギニン(R)又はセリン(S)が存在する場合、コンセンサス配列内のその特定の位置はアルギニン又はセリン(R又はS)のいずれかであり得る。VH鎖及びVL鎖のコンセンサス配列は、例えば、インビトロ親和性成熟(例えば、縮重コーディングプライマーを使用して特定のCDR内のあらゆるアミノ酸位置をランダム化すること)か、抗体CDR内のアミノ酸残基のスキャニング突然変異誘発(例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発)か、又は当該技術分野において公知の任意の他の方法と、続いて抗原に対する突然変異体の結合を評価することによる、突然変異したアミノ酸位置が抗原結合に影響を及ぼすかどうかの決定により定義することができる。一部の態様において、突然変異はCDR領域に導入される。他の態様において、突然変異はフレームワーク領域に導入される。他の一部の態様において、突然変異はCDR領域及びフレームワーク領域に導入される。
【0212】
II.CD73結合分子
本開示は、CD73結合分子、例えば、CD73、例えばヒトCD73に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片を提供する。CD73の完全長アミノ酸(aa)及びヌクレオチド(nt)配列は当該技術分野において公知である(例えば、ヒトCD73についてUniProt受託番号P21589、又はマウスCD73についてUniProt受託番号Q61503を参照)。一部の態様において、抗CD73結合分子はヒト抗体(例えば、クローン10.3抗体、クローン2C5抗体、MEDI9447)である。特定の態様において、CD73結合分子は抗体又はその抗原結合断片である。
【0213】
一部の態様において、CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、単鎖Fv又はscFv、ジスルフィド連結Fv、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgG CH2、ミニボディ、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、シングルドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、又はscFv-Fcを含む。一部の態様において、抗体はIgG型抗体、例えばIgG1型抗体である。
【0214】
一部の態様において、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、重鎖定常領域又はその断片を含む。一部の具体的な態様において、重鎖定常領域はIgG定常領域である。IgG定常領域は、κ定常領域及びλ定常領域からなる群から選択される軽鎖定常領域を含むことができる。
【0215】
特定の態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、親抗体、例えば、CD730010抗体又はCD730002抗体と比較して修飾されている。一部の態様において、親抗体はCD730010である。他の態様において、親抗体はCD730002である。他の態様において、親抗体は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069である。修飾には、親抗体、例えばCD730010又はCD730002と比較したときのCDR領域及び/又はFW領域の突然変異が含まれ得る。
【0216】
語句「CD730002抗体」は、配列番号1のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号2のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0217】
語句「CD730004抗体」は、配列番号104のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号103のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0218】
語句「CD730008抗体」は、配列番号106のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号107のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0219】
語句「CD730010抗体」は、配列番号3のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号4のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0220】
語句「CD730011抗体」は、配列番号5のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号6のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0221】
語句「CD730021抗体」は、配列番号7のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号8のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0222】
語句「CD730042抗体」は、配列番号9のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号10のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0223】
語句「CD730046抗体」は、配列番号11のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号12のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0224】
語句「CD730047抗体」は、配列番号13のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号14のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0225】
語句「CD730068抗体」は、配列番号108のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号107のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0226】
語句「CD730069抗体」は、配列番号110のアミノ酸配列を含む2つのVLドメインと配列番号109のアミノ酸配列を含む2つのVHドメインとを含むIgG1を指す。
【0227】
(i)CD730010由来抗CD73抗体
特定の態様において、本開示の抗CD73抗体は、限定はされないが:
1)コンセンサス配列SGSLSNIGRNX1VN(式中、X1はアミノ酸残基プロリン(P)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)を表す)を含む軽鎖CDR1、及び/又は
2)コンセンサス配列LX2NX3RX4X5(式中、X2はアミノ酸残基アスパラギン(N)又はアスパラギン酸(D)を表し、X3はアミノ酸残基グルタミン(Q)又はロイシン(L)を表し、X4はアミノ酸残基ロイシン(L)又はプロリン(P)を表し、及びX5はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表す)を含む軽鎖CDR2、及び/又は
3)コンセンサス配列ATWDDSX6X7GWX8(式中、X6はアミノ酸残基ロイシン(L)又はヒスチジン(H)を表し、X7はアミノ酸残基リジン(K)、プロリン(P)、イソロイシン(I)又はアスパラギン(N)を表し、及びX8はアミノ酸残基ロイシン(L)又はスレオニン(T)を表す)を含む軽鎖CDR3
を含めた、CD730010抗体の軽鎖のCDR1及び/又はCDR2及び/又はCDR3に対する修飾を含む。
【0228】
特定の態様において、本開示の抗CD73抗体は、限定はされないが:
1)コンセンサス配列SYAX9S(式中、X9はアミノ酸残基メチオニン(M)又はチロシン(Y)を表す)を含む重鎖CDR1、及び/又は
2)コンセンサス配列X10IX11GSX12GX13TYYADSVKG(式中、X10はアミノ酸残基ロイシン(L)又はアラニン(A)を表し、X11はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はセリン(S)を表し、X12はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はグリシン(G)を表し、及びX13はアミノ酸残基セリン(S)又はアルギニン(R)を表す)を含む重鎖CDR2、及び/又は
3)コンセンサス配列LGYX14X15X16DX17(式中、X14はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、X15はアミノ酸残基アルギニン(R)又はスレオニン(T)を表し、X16はアミノ酸残基バリン(V)又はイソロイシン(I)を表し、及びX17はアミノ酸残基チロシン(Y)、リジン(K)、メチオニン(M)、ロイシン(L)又はグルタミン酸(E)を表す)を含む重鎖CDR3
を含めた、CD730010抗体の重鎖のCDR1及び/又はCDR2及び/又はCDR3に対する修飾を含む。
【0229】
一態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、コンセンサスアミノ酸配列:
[FW1]SGSLSNIGRNX1VN[FW2]LX2NX3RX4X5[FW3]ATWDDSX6X7GWX8[FW4]
(式中、[FW1]、[FW2]、[FW3]及び[FW4]は、それぞれVLフレームワーク領域1(配列番号25又は26)、VLフレームワーク領域2(配列番号27又は28)、VLフレームワーク領域3(配列番号29)及びVLフレームワーク領域4(配列番号30)のアミノ酸残基を表し、ここで、
X1はアミノ酸残基プロリン(P)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X2はアミノ酸残基アスパラギン(N)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X3はアミノ酸残基グルタミン(Q)又はロイシン(L)を表し、
X4はアミノ酸残基ロイシン(L)又はプロリン(P)を表し、
X5はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X6はアミノ酸残基ロイシン(L)又はヒスチジン(H)を表し、
X7はアミノ酸残基リジン(K)、プロリン(P)、イソロイシン(I)又はアスパラギン(N)を表し、及び
X8はアミノ酸残基ロイシン(L)又はスレオニン(T)を表す)を含むVL領域を含む。
【0230】
一態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、コンセンサスアミノ酸配列:
[FW5]SYAX9S[FW6]X10IX11GSX12GX13TYYADSVKG[FW7]LGYX14X15X16DX17[FW8]
(式中、[FW5]、[FW6]、[FW7]及び[FW8]は、それぞれVHフレームワーク領域1(配列番号31)、VHフレームワーク領域2(配列番号32)、VHフレームワーク領域3(配列番号33)及びVHフレームワーク領域4(配列番号34)のアミノ酸残基を表し、ここで、
X9はアミノ酸残基メチオニン(M)又はチロシン(Y)を表し、
X10はアミノ酸残基ロイシン(L)又はアラニン(A)を表し、
X11はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はセリン(S)を表し、
X12はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はグリシン(G)を表し、
X13はアミノ酸残基セリン(S)又はアルギニン(R)を表し、
X14はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X15はアミノ酸残基アルギニン(R)又はスレオニン(T)を表し、
X16はアミノ酸残基バリン(V)又はイソロイシン(I)を表し
X17はアミノ酸残基チロシン(Y)、リジン(K)、メチオニン(M)、ロイシン(L)又はグルタミン酸(E)を表す)を含むVH領域を含む。
【0231】
一態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、コンセンサスアミノ酸配列:
[FW1]SGSLSNIGRNX1VN[FW2]LX2NX3RX4X5[FW3]ATWDDSX6X7GWX8[FW4]
(式中、[FW1]、[FW2]、[FW3]及び[FW4]は、それぞれVLフレームワーク領域1(配列番号25又は26)、VLフレームワーク領域2(配列番号27又は28)、VLフレームワーク領域3(配列番号29)及びVLフレームワーク領域4(配列番号30)のアミノ酸残基を表し、ここで、
X1はアミノ酸残基プロリン(P)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X2はアミノ酸残基アスパラギン(N)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X3はアミノ酸残基グルタミン(Q)又はロイシン(L)を表し、
X4はアミノ酸残基ロイシン(L)又はプロリン(P)を表し、
X5はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X6はアミノ酸残基ロイシン(L)又はヒスチジン(H)を表し、
X7はアミノ酸残基リジン(K)、プロリン(P)、イソロイシン(I)又はアスパラギン(N)を表し、及び
X8はアミノ酸残基ロイシン(L)又はスレオニン(T)を表す)を含むVL領域を含み、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、コンセンサスアミノ酸配列:
[FW5]SYAX9S[FW6]X10IX11GSX12GX13TYYADSVKG[FW7]LGYX14X15X16DX17[FW8]
(式中、[FW5]、[FW6]、[FW7]及び[FW8]は、それぞれVHフレームワーク領域1(配列番号31)、VHフレームワーク領域2(配列番号32)、VHフレームワーク領域3(配列番号33)及びVHフレームワーク領域4(配列番号34)のアミノ酸残基を表し、ここで、
X9はアミノ酸残基メチオニン(M)又はチロシン(Y)を表し、
X10はアミノ酸残基ロイシン(L)又はアラニン(A)を表し、
X11はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はセリン(S)を表し、
X12はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はグリシン(G)を表し、
X13はアミノ酸残基セリン(S)又はアルギニン(R)を表し、
X14はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X15はアミノ酸残基アルギニン(R)又はスレオニン(T)を表し、
X16はアミノ酸残基バリン(V)又はイソロイシン(I)を表し
X17はアミノ酸残基チロシン(Y)、リジン(K)、メチオニン(M)、ロイシン(L)又はグルタミン酸(E)を表す)を含むVH領域を更に含む。
【0232】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号46、47、及び48からなる群から選択される配列からなるVL-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号46、47、及び48からなる群から選択される配列を含むVL-CDR1を含む。
【0233】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号49、50、51、及び52からなる群から選択される配列からなるVL-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号49、50、51及び52からなる群から選択される配列を含むVL-CDR2を含む。
【0234】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号53、54、55、及び56からなる群から選択される配列からなるVL-CDR3を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号53、54、55、及び56からなる群から選択される配列を含むVL-CDR3を含む。
【0235】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号35及び36からなる群から選択される配列からなるVH-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号35及び36からなる群から選択される配列を含むVH-CDR1を含む。
【0236】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号37、38、39、及び40からなる群から選択される配列からなるVH-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号37、38、39、及び40からなる群から選択される配列を含むVH-CDR2を含む。
【0237】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41、42、43、44、及び45からなる群から選択される配列からなるVH-CDR3を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号41、42、43、44、及び45からなる群から選択される配列を含むVH-CDR3を含む。
【0238】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号46、47、及び48からなる群から選択される配列からなるVL-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又は抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号46、47、及び48からなる群から選択される配列を含むVL-CDR1を含む。
【0239】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号49、50、51、及び52からなる群から選択される配列からなるVL-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号49、50、51、及び52からなる群から選択される配列を含むVL-CDR2を含む。
【0240】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号53、54、55、及び56からなる群から選択される配列からなるVL-CDR3を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号53、54、55、及び56からなる群から選択される配列を含むVL-CDR3を含む。
【0241】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号35及び36からなる群から選択される配列からなるVH-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号35及び36からなる群から選択される配列を含むVH-CDR1を含む。
【0242】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号37、38、39、及び40からなる群から選択される配列からなるVH-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号37、38、39、及び40からなる群から選択される配列を含むVH-CDR2を含む。
【0243】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号41、42、43、44、及び45からなる群から選択される配列からなるVH-CDR3を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号41、42、43、44、及び45からなる群から選択される配列を含むVH-CDR3を含む。
【0244】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号46、47及び48からなる群から選択される配列からなるVL-CDR1と;配列番号49、50、51、及び52からなる群から選択される配列からなるVL-CDR2と;配列番号53、54、55、及び56からなる群から選択される配列からなるVL-CDR3とを含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号46、47及び48からなる群から選択される配列を含むVL-CDR1と;配列番号49、50、51、及び52からなる群から選択される配列を含むVL-CDR2と;配列番号53、54、55、及び56からなる群から選択される配列を含むVL-CDR3とを含む。
【0245】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号35及び36からなる群から選択される配列からなるVH-CDR1と;配列番号37、38、39、及び40からなる群から選択される配列からなるVH-CDR2と;配列番号41、42、43、44、及び45からなる群から選択される配列からなるVH-CDR3とを含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号35及び36からなる群から選択される配列を含むVH-CDR1;配列番号37、38、39、及び40からなる群から選択される配列を含むVH-CDR2;配列番号41、42、43、44、及び45からなる群から選択される配列を含むVH-CDR3を含む。
【0246】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号46、47及び48からなる群から選択される配列からなるVL-CDR1と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号49、50、51、及び52からなる群から選択される配列からなるVL-CDR2と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号53、54、55、及び56からなる群から選択される配列からなるVL-CDR3とを含む。
【0247】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号46、47及び48からなる群から選択される配列を含むVL-CDR1と;1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号49、50、51、及び52からなる群から選択される配列を含むVL-CDR2と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号53、54、55、及び56からなる群から選択される配列を含むVL-CDR3とを含む。
【0248】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号35及び36からなる群から選択される配列からなるVH-CDR1と;1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号37、38、39、及び40からなる群から選択される配列からなるVH-CDR2と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号41、42、43、44、及び45からなる群から選択される配列からなるVH-CDR3とを含む。
【0249】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号35及び36からなる群から選択される配列を含むVH-CDR1;1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号37、38、39、及び40からなる群から選択される配列を含むVH-CDR2;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号41、42、43、44、及び45からなる群から選択される配列を含むVH-CDR3を含む。
【0250】
特定の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、重鎖及び/又は軽鎖のCDR1、及び/又はCDR2、及び/又はCDR3に対する修飾を含み、且つ重鎖及び/又は軽鎖のFW1、及び/又はFW2、及び/又はFW3、及び/又はFW4に対する修飾を更に含む。
【0251】
一部の態様において、FW1は配列番号25又は26を含み、FW2は配列番号27又は28を含み、FW3は配列番号29を含み、FW4は配列番号30を含み、FW5は配列番号31を含み、FW6は配列番号32を含み、FW7は配列番号33を含み、及びFW8は配列番号34を含む。
【0252】
一部の態様において、FW1は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号25又は26を含み;FW2は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号27又は28を含み;FW3は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号29を含み;FW4は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号30を含み;FW5は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号31を含み;FW6は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号32を含み;FW7は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号33を含み;及びFW8は配列番号34を含む。
【0253】
特定の態様において、抗CD733抗体又はその抗原結合断片は、同一であるか、又は1つ以上のCDRにおける1、2、3若しくは4個のアミノ酸置換を除いて同一であるVL-CDR1、VL-CRD2、VL-CDR3、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3アミノ酸配列を含むVL及びVHを含み、ここでかかるVL-CDR1、VL-CRD2、VL-CDR3、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3は、それぞれ、
配列番号46、49、53、35、37、及び41、又は
配列番号47、49、53、35、37及び41、又は
配列番号47、49、54、36、37及び42、又は
配列番号46、50、54、36、38及び43、又は
配列番号46、51、55、36、39及び44、又は
配列番号48、52、54、36、40及び44、又は
配列番号46、49、56、35、37及び41、又は
配列番号46、49、53、35、37及び45、又は
配列番号47、49、56、36、37及び45、又は
配列番号46、50、56、36、38及び45、又は
配列番号46、51、56、36、39及び45、又は
配列番号48、52、56、36、40及び45、又は
配列番号46、49、56、35、37及び45である。
【0254】
特定の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は抗体VL及び抗体VHを含み、VLは、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、及び配列番号70からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0255】
他の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は抗体VL及び抗体VHを含み、VHは、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83及び配列番号84からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0256】
他の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、及び配列番号70からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一の配列を含むVLを含み、且つ配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83及び配列番号84からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一の配列を含むVHを更に含む。
【0257】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号68の配列を含むVLと配列番号82の配列を含むVHとを含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号68の配列からなるVLと配列番号82の配列からなるVHとを含む。
【0258】
「クローン10.3抗体」(「73combo3」又は「MEDI9447」とも称される)は、配列番号68のCD730010由来軽鎖(VL)(それぞれ配列番号46、51及び56の配列を有する3つのCDR、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む)を2つ、及び配列番号82のCD730010由来重鎖(VH)(それぞれ配列番号36、39、及び45の配列を有する3つのCDR、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む)を2つ含むIgG1である。
【0259】
特定の態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号82の10.3重鎖VHと配列番号68の10.3軽鎖VLとを含む10.3抗体と実質的に同じか又はそれより良好な親和性でCD73と結合する。
【0260】
(ii)CD730002由来抗CD73抗体
特定の態様において、本開示の抗CD73抗体は、限定はされないが:
1)配列SGDKVGDKYASを含む軽鎖CDR1、及び/又は
2)コンセンサス配列EDX18KX19X20S(式中、X18はアミノ酸残基セリン(S)又はスレオニン(T)を表し、X19はアミノ酸残基アルギニン(R)又はチロシン(Y)を表し、及びX20はアミノ酸残基ヒスチジン(H)、プロリン(P)又はロイシン(L)を表す)を含む軽鎖CDR2、及び/又は
3)配列QAWDTSFWVを含む軽鎖CDR3
を含めた、CD730002抗体の軽鎖のCDR1及び/又はCDR2及び/又はCDR3に対する修飾を含む。
【0261】
特定の態様において、本開示の抗CD73抗体は、限定はされないが:
1)配列SX21A X22S(式中、X21はアミノ酸残基チロシン(Y)又はバリン(V)を表し、及びX22はアミノ酸残基メチオニン(M)又はアルギニン(R)を表す)を含む重鎖CDR1、及び/又は
2)配列AISGSGGSX23YY X24DSVKX25(式中、X23はアミノ酸残基スレオニン(T)又はプロリン(P)を表し;X24はアミノ酸残基アラニン(A)又はG(グリシン)を表し;及びX25はアミノ酸残基グリシン(G)又はアルギニン(R)を表す)を含む重鎖CDR2、及び/又は
3)配列DKGYYWYMを含む重鎖CDR3
を含めた、CD730002の重鎖のCDR1及び/又はCDR2及び/又はCDR3に対する修飾を含む。
【0262】
一態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、コンセンサスアミノ酸配列:
[FW9]SGDKVGDKYAS[FW10]EDX18KX19X20S[FW11]QAWDTSFWV[FW12]
(式中、[FW9]、[FW10]、[FW11]及び[FW12]は、それぞれVLフレームワーク領域1(配列番号90又は91)、VLフレームワーク領域2(配列番号92)、VLフレームワーク領域3(配列番号93、94又は122)及びVLフレームワーク領域4(配列番号30)のアミノ酸残基を表し;ここで、X18はアミノ酸残基プロリン(P)又はロイシン(L)を表し;X19はアミノ酸残基アルギニン(R)又はチロシン(Y)を表し;及びX20はアミノ酸残基ヒスチジン(H)、プロリン(P)又はロイシン(L)を表す)を含むVL領域を含む。
【0263】
一態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、コンセンサスアミノ酸配列:
[FW13]SX21A X22S[FW14]AISGSGGSX23YY X24DSVKX25[FW15]DKGYYWYM[FW16]
(式中、[FW13]、[FW14]、[FW15]及び[FW16]は、それぞれVHフレームワーク領域1(配列番号31)、VHフレームワーク領域2(配列番号32)、VHフレームワーク領域3(配列番号33)及びVHフレームワーク領域4(配列番号89)のアミノ酸残基を表し;ここで、X21はアミノ酸残基チロシン(Y)又はバリン(V)を表し;X22はアミノ酸残基メチオニン(M)又はアルギニン(R)を表し;X23はアミノ酸残基スレオニン(T)又はプロリン(P)を表し;X24はアミノ酸残基アラニン(A)又はG(グリシン)を表し;及びX25はアミノ酸残基グリシン(G)又はアルギニン(R)を表す)を含むVH領域を含む。
【0264】
一態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、コンセンサスアミノ酸配列:
[FW9]SGDKVGDKYAS[FW10]EDX18KX19X20S[FW11]QAWDTSFWV[FW12]
(式中、[FW9]、[FW10]、[FW11]及び[FW12]は、それぞれVLフレームワーク領域1(配列番号90又は91)、VLフレームワーク領域2(配列番号92)、VLフレームワーク領域3(配列番号93、94又は122)及びVLフレームワーク領域4(配列番号30)のアミノ酸残基を表し;ここで、X18はアミノ酸残基プロリン(P)又はロイシン(L)を表し;X19はアミノ酸残基アルギニン(R)又はチロシン(Y)を表し;及びX20はアミノ酸残基ヒスチジン(H)、プロリン(P)又はロイシン(L)を表す)を含むVL領域を含み、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、コンセンサスアミノ酸配列:
[FW13]SX21A X22S[FW14]AISGSGGSX23YY X24DSVKX25[FW15]DKGYYWYM[FW16]
(式中、[FW13]、[FW14]、[FW15]及び[FW16]は、それぞれVHフレームワーク領域1(配列番号31)、VHフレームワーク領域2(配列番号32)、VHフレームワーク領域3(配列番号33)及びVHフレームワーク領域4(配列番号89)のアミノ酸残基を表し;ここで、X21はアミノ酸残基チロシン(Y)又はバリン(V)を表し;X22はアミノ酸残基メチオニン(M)又はアルギニン(R)を表し;X23はアミノ酸残基スレオニン(T)又はプロリン(P)を表し;X24はアミノ酸残基アラニン(A)又はG(グリシン)を表し;及びX25はアミノ酸残基グリシン(G)又はアルギニン(R)を表す)を含むVH領域を更に含む。
【0265】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号97からなる配列からなるVL-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号97からなる配列を含むVL-CDR1を含む。
【0266】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号98、99、127、128、及び129からなる群から選択される配列からなるVL-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号98、99、127、128及び129からなる群から選択される配列を含むVL-CDR2を含む。
【0267】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号100からなる配列からなるVL-CDR3を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号100からなる配列を含むVL-CDR3を含む。
【0268】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号35、123及び124からなる群から選択される配列の配列からなるVH-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号35、123及び124からなる群から選択される配列を含むVH-CDR1を含む。
【0269】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号37、95、125及び126からなる群から選択される配列からなるVH-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号37、95、125、及び126からなる群から選択される配列を含むVH-CDR2を含む。
【0270】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号96からなる配列からなるVH-CDR3を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号96からなる配列を含むVH-CDR3を含む。
【0271】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号97からなる配列からなるVL-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号97からなる配列を含むVL-CDR1を含む。
【0272】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号98、99、127、128、及び129からなる群から選択される配列からなるVL-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号98、99、127、128、及び129からなる群から選択される配列を含むVL-CDR2を含む。
【0273】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号100からなる配列からなるVL-CDR3を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号100からなる配列を含むVL-CDR3を含む。
【0274】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号35、123及び124からなる群から選択される配列からなるVH-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号35、123及び124からなる群から選択される配列を含むVH-CDR1を含む。
【0275】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号37、95、125及び126からなる群から選択される配列からなるVH-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号37、95、125及び126からなる群から選択される配列を含むVH-CDR2を含む。
【0276】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号96からなる配列からなるVH-CDR3を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号96からなる配列を含むVH-CDR3を含む。
【0277】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号97からなる配列からなるVL-CDR1と;配列番号98、99、127、128、及び129からなる群から選択される配列からなるVL-CDR2と;配列番号100からなる配列からなるVL-CDR3とを含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号97からなる配列を含むVL-CDR1と;配列番号98、99、127、128、及び129からなる群から選択される配列を含むVL-CDR2と;配列番号100からなる配列を含むVL-CDR3とを含む。
【0278】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号35、123、及び124からなる群から選択される配列からなるVH-CDR1と;配列番号37、95、125、及び126からなる群から選択される配列からなるVH-CDR2と;配列番号96からなる配列からなるVH-CDR3とを含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号35、123、及び124からなる群から選択される配列を含むVH-CDR1;配列番号37、95、125、及び126からなる群から選択される配列を含むVH-CDR2;配列番号96からなる配列を含むVH-CDR3を含む。
【0279】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号97からなる配列からなるVL-CDR1と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号98、99、127、128、及び129からなる群から選択される配列からなるVL-CDR2と;1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号100からなる配列からなるVL-CDR3とを含む。
【0280】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号97からなる配列を含むVL-CDR1と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号98、99、127、128、及び129からなる群から選択される配列を含むVL-CDR2と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号100からなる配列を含むVL-CDR3とを含む。
【0281】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号35、123、及び124からなる群から選択される配列からなるVH-CDR1と;1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号37、95、125、及び126からなる群から選択される配列からなるVH-CDR2と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号96からなる配列からなるVH-CDR3とを含む。
【0282】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号35、123、及び124からなる群から選択される配列を含むVH-CDR1;1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号37、95、125、及び126からなる群から選択される配列を含むVH-CDR2;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号96からなる配列を含むVH-CDR3を含む。
【0283】
特定の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、重鎖及び/又は軽鎖のCDR1、及び/又はCDR2、及び/又はCDR3に対する修飾を含み、且つ重鎖及び/又は軽鎖のFW1、及び/又はFW2、及び/又はFW3、及び/又はFW4に対する修飾を更に含む。
【0284】
一部の態様において、FW9は配列番号90又は91を含み、FW10は配列番号92を含み、FW11は配列番号93、94、又は122を含み、FW12は配列番号30を含み、FW13は配列番号31を含み、FW14は配列番号32を含み、FW15は配列番号33を含み、及びFW16は配列番号89を含む。
【0285】
一部の態様において、FW9は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号90又は91を含み、FW10は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号92を含み、FW11は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号93、94、又は122を含み、FW12は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号30を含み、FW13は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号31を含み、FW14は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号32を含み、FW15は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて配列番号33を含み、及びFW16は配列番号89を含む。
【0286】
特定の態様において、抗CD733抗体又はその抗原結合断片は、同一であるか、又は1つ以上のCDRにおける1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を除いて同一であるVL-CDR1、VL-CRD2、VL-CDR3、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3アミノ酸配列を含むVL及びVHを含み、ここでかかるVL-CDR1、VL-CRD2、VL-CDR3、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3は、それぞれ、
配列番号97、98、100、35、37、及び96、又は
配列番号97、99、100、35、95及び96、又は
配列番号97、98、100、35、37、及び96、又は
配列番号97、99、100、123、37、及び96、又は
配列番号97、99、100、124、37、及び96、又は
配列番号97、99、100、35、125、及び96、又は
配列番号97、99、100、35、126、及び96、又は
配列番号97、99、100、35、95、及び96、又は
配列番号97、127、100、35、95、及び96、又は
配列番号97、128、100、35、95、及び96、又は
配列番号97、129、100、35、95、及び96、又は
配列番号97、99、100、35、95、及び96である。
【0287】
特定の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は抗体VL及び抗体VHを含み、VLは、配列番号86、88、112、118、119、120、及び121からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0288】
他の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は抗体VL及び抗体VHを含み、VHは、配列番号85、87、111、113、114、115、116、及び117からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0289】
他の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号86、88、112、118、119、120、及び121からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一の配列を含むVLを含み;且つ配列番号85、87、111、113、114、115、116、及び117からなる群から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一の配列を含むVHを更に含む。
【0290】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号88の配列を含むVLと;配列番号87の配列を含むVHとを含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号87の配列からなるVLと、配列番号87の配列からなるVHとを含む。
【0291】
「クローン2C5抗体」は、配列番号88のCD730002由来軽鎖(VL)(それぞれ配列番号97、99、及び100の配列を有する3つのCDR、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む)を2つ、及び配列番号87のCD7300002由来重鎖(VH)(それぞれ配列番号35、95、及び96の配列を有する3つのCDR、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む)を含むIgG1である。
【0292】
特定の態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、配列番号87の2C5重鎖VHと配列番号88の2C5軽鎖VLとを含む2C5抗体と実質的に同じか又はそれより良好な親和性でCD73と結合する。
【0293】
(iii)CD730002又はCD730010以外の親抗体を有する抗CD73抗体 他の態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体又は抗原結合断片の親抗体は、CD730004(即ち、配列番号104のVLと配列番号103のVHとを含む抗CD73抗体)、CD730008(即ち、配列番号106のVLと配列番号107のVHとを含む抗CD73抗体)、CD7300011(即ち、配列番号5のVLと配列番号6のVHとを含む抗CD73抗体)、CD730021(即ち、配列番号7のVLと配列番号8のVHとを含む抗CD73抗体)、CD730042(即ち、配列番号9のVLと配列番号10のVHとを含む抗CD73抗体)、CD730046(即ち、配列番号11のVLと配列番号12のVHとを含む抗CD73抗体)、CD730047(即ち、配列番号13のVLと配列番号14のVHとを含む抗CD73抗体)、CD730068(即ち、配列番号108のVLと配列番号107のVHとを含む抗CD73抗体)、又はCD730069(即ち、配列番号110のVLと配列番号109のVHとを含む抗CD73抗体)である。親抗体に対する修飾には、親抗体、例えばCD730004と比較したときのCDR領域及び/又はFW領域の突然変異が含まれ得る。
【0294】
特定の態様において、抗CD73抗体は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069の軽鎖のCDR1及び/又はCDR2及び/又はCDR3に対する修飾を含む。
【0295】
特定の態様において、抗CD73抗体は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069の重鎖のCDR1及び/又はCDR2及び/又はCDR3に対する修飾を含む。
【0296】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR3を含む。
【0297】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR3を含む。
【0298】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR3を含む。
【0299】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR1を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3、又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR2を含む。一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR3を含む。
【0300】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR1と;CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR2と;CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR3とを含む。
【0301】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR1と;CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR2と;CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR3とを含む。
【0302】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR1と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR2と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL-CDR3とを含む。
【0303】
一部の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR1と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR2と;1、2、3又は4個のアミノ酸置換を除いて、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH-CDR3とを含む。
【0304】
特定の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来の重鎖及び/又は軽鎖のCDR1、及び/又はCDR2、及び/又はCDR3に対する修飾を含み、且つCD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来の重鎖及び/又は軽鎖のFW1、及び/又はFW2、及び/又はFW3、及び/又はFW4に対する修飾を更に含む。
【0305】
特定の態様において、抗CD733抗体又はその抗原結合断片は、同一であるか、又は1つ以上のCDRにおける1、2、3、若しくは4個のアミノ酸置換を除いて同一であるVL-CDR1、VL-CRD2、VL-CDR3、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3アミノ酸配列を含むVL及びVHを含み、ここでかかるVL-CDR1、VL-CRD2、VL-CDR3、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来である。
【0306】
特定の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は抗体VL及び抗体VHを含み、VLは、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL配列から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0307】
他の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は抗体VL及び抗体VHを含み、VHは、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH配列から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0308】
他の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVL配列から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一の配列を含むVLを含み、且つCD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069由来のVH配列から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一の配列を含むVHを更に含む。
【0309】
特定の態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、CD730004、CD730008、CD7300011、CD730021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069抗体と実質的に同じか又はそれより良好な親和性でCD73と結合する。
【0310】
(iv)混合適合(mixed and matched)抗CD73抗体
本明細書に開示される抗CD73結合分子(例えば、CD730002、CD730004、CD730008、CD730010、CD730011、CD73021、CD730042、CD730046、CD730047、CD730068、又はCD730069)のVH及びVL配列又はかかる配列の変異体(例えば、クローン10 GL9、クローン10 P32E、クローン10 C1、クローン10 C2、クローン10 D3、クローン10 G10、クローン10 HPT、クローン10 GRVE、クローン10 combo1、クローン10 combo2、クローン10 combo3、クローン10 combo5、又はクローンcombo6)のVH及びVLは、他の抗CD73結合分子を作成するため「混合適合」することができる。
【0311】
特定の態様において、10.3抗体及び2C5抗体のVH配列が混合適合される。別の態様において、10.03抗体及び2C5抗体のVL配列を混合適合することができる。それに加えて又は代えて、本明細書に開示されるクローン10(CD730010)変異体のVL及び/又はVH配列を混合適合することができる。それに加えて又は代えて、本明細書に開示されるクローン2(CD730002)変異体のVL及び/又はVH配列を混合適合することができる。それに加えて又は代えて、本明細書に開示されるクローン10(CD730010)及びクローン2(CD730002)変異体のVL及び/又はVH配列を混合適合することができる。
【0312】
一部の態様において、VL及び/又はVHの混合適合は、同じエピトープビンに分類される抗体に由来する配列間で行うことができる(実施例2を参照)。本明細書で使用されるとき、用語「エピトープビン」は、同じエピトープ又は重複エピトープに結合するか、或いは同じエピトープ又は重複エピトープとの結合に関して互いに競合する抗体又はその抗原結合断片のグループ化を指す。例えば、CD730003、CD730010、CD730021、CD730042、CD730046、及びCD730047(これらの抗体は全てが「エピトープビンB」に属する)由来の配列を混合適合することができる。他の態様において、VL及び/又はVHの混合適合は、異なるエピトープビンに分類される抗CD73抗体に由来する配列間で行うことができる。従って、「エピトープビンB」に属する抗体の配列を、「エピトープビンA」(CD730002、CD730004、CD730008、及びCD730011)又は「エピトープビンC」(CD730068及びCD730069)の抗CD73抗体の配列と混合適合することができる。
【0313】
(v)突然変異抗CD73抗体
特定の態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、ヒトFcRnとの結合を改善し、且つ抗CD73抗体又はその抗原結合断片の半減期を改善する突然変異を含む。一部の態様において、かかる突然変異は、IgG1の定常ドメインに導入された、252位のメチオニン(M)からチロシン(Y)への突然変異、254位のセリン(S)からスレオニン(T)への突然変異、及び256位のスレオニン(T)からグルタミン酸(E)への突然変異(Kabat(Kabat,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Public Health Service,National Institutes of Health,Washington,D.C.)にあるとおりのEUインデックスに従い付番する)である。米国特許第7,658,921号明細書(これは参照により本明細書に援用される)を参照のこと。「YTE突然変異体」と称されるこの種の突然変異体IgGは、野生型バージョンの同じ抗体と比較したとき約4倍の半減期の増加を呈することが示されている(Dall’Acqua et al.,J.Biol.Chem.281:23514-24(2006))。一部の態様において、IgG定常ドメインを含む抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、251~257、285~290、308~314、385~389、及び428~436位(KabatにあるとおりのEUインデックスに従い付番する)のアミノ酸残基の1個以上のアミノ酸置換を含み、ここでかかる突然変異は抗CD73抗体又はその抗原結合断片の血清半減期を増加させる。
【0314】
一部の態様において、YTE突然変異体は、IgG定常ドメインの434位(KabatにあるとおりのEUインデックスに従い付番する)に、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、チロシン(Y)、及びセリン(S)からなる群から選択されるアミノ酸による置換を更に含む。他の態様において、YTE突然変異体は、IgG定常ドメインの434位(KabatにあるとおりのEUインデックスに従い付番する)に、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、チロシン(Y)、及びセリン(S)からなる群から選択されるアミノ酸による置換と、IgG定常ドメインの428位(KabatにあるとおりのEUインデックスに従い付番する)に、スレオニン(T)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、及びセリン(S)からなる群から選択されるアミノ酸による置換とを更に含む。
【0315】
更に他の態様において、YTE突然変異体は、IgG定常ドメインの434位(KabatにあるとおりのEUインデックスに従い付番する)に、チロシン(Y)による置換と、IgG定常ドメインの257位(KabatにあるとおりのEUインデックスに従い付番する)に、ロイシン(L)による置換とを更に含む。一部の態様において、YTE突然変異体は、IgG定常ドメインの434位(KabatにあるとおりのEUインデックスに従い付番する)に、セリン(S)による置換と、IgG定常ドメインの428位(KabatにあるとおりのEUインデックスに従い付番する)に、ロイシン(L)による置換とを更に含む。
【0316】
ある具体的な態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、IgG1定常ドメインの252位のメチオニン(M)からチロシン(Y)への突然変異、254位のセリン(S)からスレオニン(T)への突然変異、及び256位のスレオニン(T)からグルタミン酸(E)への突然変異(KabatにあるとおりのEUインデックスに従い付番する)を含むIgG1定常ドメインを含む。
【0317】
特定の態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、
(a)252位のアミノ酸の、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、又はスレオニン(T)による置換、
(b)254位のアミノ酸の、スレオニン(T)による置換、
(c)256位のアミノ酸の、セリン(S)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、又はスレオニン(T)による置換、
(d)257位のアミノ酸の、ロイシン(L)による置換、
(e)309位のアミノ酸の、プロリン(P)による置換、
(f)311位のアミノ酸の、セリン(S)による置換、
(g)428位のアミノ酸の、スレオニン(T)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、又はセリン(S)による置換、
(h)433位のアミノ酸の、アルギニン(R)、セリン(S)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、又はグルタミン(Q)による置換、
(i)434位のアミノ酸の、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、セリン(S)、ヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)、又はチロシンによる置換、及び
(j)前記置換の2つ以上の組み合わせ
(位置はKabatにあるとおりのEUインデックスに従い付番する)からなる群から選択される少なくとも1つのIgG定常ドメインアミノ酸置換を含み、ここで修飾IgGは、野生型IgG定常ドメインを有するIgGの血清半減期と比較して血清半減期が増加している。
【0318】
一部の態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLアミノ酸配列は、上記のVH及びVL配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の類似性であり、且つ1、2、3、4、5個又はそれを超える保存的置換を含む。それぞれ、配列番号71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、87、111、113、114、115、116、又は117のVH領域、及び/又は配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、86、88、112、118、119、120、又は121のVL領域と高い(即ち、80%以上の)配列類似性又は配列同一性を有するVH及びVL領域を有するCD73抗体は、配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、又は121をコードする核酸分子を突然変異誘発し(例えば、部位特異的又はPCR媒介性突然変異誘発)、続いて本明細書に記載される機能アッセイを用いて、コードされた改変抗体を保持機能に関して試験することによって得ることができる。
【0319】
一部の態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体のFcドメイン又は本明細書に開示される抗体のCD73結合断片を含む融合タンパク質のFcドメインは、例えばADCCによる細胞傷害を低減するため、Fc受容体に対する結合性が低減されている。一部の態様において、抗体又はFc融合タンパク質のFcドメインは、例えばADCCによる細胞傷害を増加させるため、Fc受容体に対する結合性が増加されている。一部の態様において、抗体又はFc融合タンパク質のFcドメインは、Kabatに規定されるとおりのEUインデックスによって付番するとき234、235、236、237、238、239、240、241、243、244、245、247、251、252、254、255、256、262、263、264、265、266、267、269、279、280、284、292、296、297、298、299、305、313、316、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、339、341、343、370、373、378、392、416、419、421、440、及び443からなる群から選択される1つ以上の位置に天然に存在しないADCC低減アミノ酸残基を含む。抗体のADCC活性を低減することが可能な多数の特異的突然変異が当該技術分野において公知であり、例えば、234F、235E、235F、235Q(又は235Y)、239A、332Q、331S及びこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、米国特許第5,624,821号明細書、同第5,648,260号明細書、同第7,597,889号明細書、同第8,961,967号明細書、同第7,371,826号明細書、同第7,785,791号明細書、同第7,790,858号明細書、米国特許出願公開第20140378663号明細書、同第20130071390号明細書、同第20110212087号明細書、同第20150118227号明細書、同第20060194290号明細書、同第20060194291号明細書、同第20080274105号明細書、同第20080274506号明細書、米国特許出願公開第20130089541号明細書、及び米国特許出願公開第20130108623号明細書(これらは全体として参照により本明細書に援用される)に記載される突然変異を参照のこと。ADCCエフェクター機能が低下した抗体にはまた、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものも含まれる(例えば、米国特許第6,737,056号明細書を参照)。かかるFc突然変異体にはまた、残基265及び297のアラニンへの置換を有するFc突然変異体を含め、アミノ酸位置265、269、270、297及び327の2つ以上に置換を有するFc突然変異体も含まれる(例えば、米国特許第7,332,581号明細書を参照)。任意選択で、ADCC及びCDCの両方を低減する突然変異が組み込まれてもよい。一部の態様では、ADCC及び/又はCDCを低減し又は消失させる突然変異を含む本明細書に開示される抗CD73抗体又はその抗原結合断片を使用して、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を作成することができる。
【0320】
一態様において、本開示は抗CD73抗体を提供し、この抗体は、IgG1、IgG2又はIgG3であり、Kabatに規定されるとおりのEUインデックスによって付番するとき234、235、及び331からなる群から選択される1つ以上の位置に少なくとも1つの修飾を含む。更に別の具体的な態様において、Fc領域は、IgG1、IgG2又はIgG3 Fc領域であり、天然に存在しないアミノ酸は、Kabatに規定されるとおりのEUインデックスによって付番するとき234F、235E、235F、235Q(又は235Y)、239A、332Q、331S、332Qからなる群から選択される。
【0321】
別の態様において、本開示は抗CD73抗体を提供し、この抗体はIgG4であり、Kabatに規定されるとおりのEUインデックスによって付番するとき228及び235からなる群から選択される1つ以上の位置に少なくとも1つの修飾を含む。更に別の具体的な態様において、Fc領域はIgG4 Fc領域であり、天然に存在しないアミノ酸は、Kabatに規定されるとおりのEUインデックスによって付番するとき228P、235E及び235Yからなる群から選択される。具体的な態様において、本開示は抗CD73抗体を提供し、この抗体は、IgG1、IgG2、又はIgG3であり、位置(i)234F、235E、及び331S;(ii)234F、235F、及び331S;(iii)234F、235Q、及び322Qに修飾を含む。別の具体的な態様において、本開示は抗CD73抗体を提供し、この抗体はIgG4であり、修飾228P及び235Eを含む。
【0322】
III.エピトープ競合CD73結合分子
別の態様において、本開示は、本明細書に記載される様々な抗CD73抗体が結合するのと同じエピトープに結合するCD73結合分子、例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体と同じエピトープ、又はクローン2C5抗体と同じエピトープに結合する分子を提供する。
【0323】
かかる抗体は、標準的なCD73結合アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ、表面プラズモン共鳴、又は溶液アッセイ)において、本明細書に開示される抗CD73抗体、例えば、CD730010抗体、CD730002抗体、CD730004抗体、及びその抗原結合断片と交差競合する(例えば、統計学的に有意な方法でその結合を競合的に阻害する)その能力に基づき同定することができる。
【0324】
従って、一態様において、本開示は、CD73との結合に関して別の抗CD73抗体又はその抗原結合断片、例えば、CD730010抗体、CD730002抗体、CD730004抗体、その変異体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)、又はその抗原結合断片と競合する抗CD73抗体及びその抗原結合断片、例えばヒトモノクローナル抗体を提供する。被験抗体が例えばCD730010抗体(又はクローン10.3抗体又はその抗原結合断片)、又はCD730002抗体(又はクローン2C5抗体又はその抗原結合断片)の結合を阻害する能力は、その被験抗体がCD73との結合に関してその抗体と競合し得ることを実証する;かかる抗体は、非限定的な理論によれば、それが競合する抗CD73抗体又はその抗原結合断片とCD73上の同じ又は関連する(例えば、構造的に類似しているか、又は空間的に近接した)エピトープに結合することができる。一態様において、例えば、CD730010抗体(又はクローン10.3抗体又はその抗原結合断片)、又はCD730002抗体(又はクローン2C5抗体又はその抗原結合断片)とCD73上の同じエピトープに結合する抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、ヒトモノクローナル抗体である。
【0325】
本明細書に記載されるとおり、CD73の酵素活性を直接阻害するモノクローナル抗体であるMEDI9447の作用機構を解明するため、MEDI9447のエピトープを同定した。このエピトープは、基質結合及び活性部位残基から離れた領域であるCD73のN末端ドメインの頂端表面内にある。構造的及び機構的試験から、MEDI9447は、CD73が触媒的に活性なコンホメーションをとるのを妨げる二重機構を介してCD73をアンタゴナイズすることが明らかになった。これらの結果は、腫瘍微小環境におけるアデノシンシグナル伝達の調節手段としての、CD73の選択的で強力且つ非競合的な阻害の標的とし得る精密にマッピングされたエピトープの初めての報告を提供する。
【0326】
本発明者らは、水素重水素交換(HDX)質量分析法(MS)及び突然変異誘発戦略を用いてMEDI9447のエピトープを確定し、大域的CD73構造に対する抗体結合の潜在的効果を調べた。抗体は、AMP加水分解の非競合的阻害を可能にするCD73のN末端ドメインにある部位に結合する。様々な態様において、エピトープは、V144、K180、及びN185に対応する1つ以上のCD73アミノ酸残基を含む。様々な態様において、エピトープは、CD73のY135、K136、及びN187に対応する1つ以上のCD73アミノ酸残基を更に含む。顕著なことに、エピトープは、抗体結合がCD73の開いた配座異性体から触媒的に活性な閉じた配座異性体への変換を妨げるような位置にある。更に、本発明者らの試験は、MEDI9447がCD73との抗体相互作用の結合価によって媒介される二重阻害機構を用いてアンカー型CD73と可溶性CD73との両方を阻害し得ることを示している。
【0327】
IV.抗CD73抗体の機能的特性
抗原に対する抗体の親和性又はアビディティは、当該技術分野において周知の任意の好適な方法、例えば、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又はラジオイムノアッセイ(RIA)、又は反応速度(例えば、BIACORE(商標)分析)を用いて実験的に決定することができる。直接結合アッセイ並びに競合的結合アッセイフォーマットは、容易に用いることができる。(例えば、Berzofsky et al.,“Antibody-Antigen Interactions,” In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,N.Y.(1984);Kuby,Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,N.Y.(1992);及び本明細書に記載される方法を参照のこと。特定の抗体抗原相互作用の親和性計測値は、異なる条件下(例えば、塩濃度、pH、温度)で計測した場合に異なり得る。従って、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、KD又はKd、Kon、Koff)の計測は、抗体及び抗原の標準化した溶液、及び当該技術分野において公知のとおりの及び本明細書に記載される緩衝液など、標準化した緩衝液で行われる。
【0328】
また、当該技術分野において、表面プラズモン共鳴分析(例えば、BIACORE(商標))を用いて計測した親和性が、反応物のうちのいずれの1つがチップに結合するかに応じて異なり得ることも公知である。この点で、親和性は、標的抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)をチップ上に固定化したフォーマット(「IgGダウン」フォーマットと称される)を用いるか、又は標的タンパク質(例えばCD73)をチップ上に固定化したフォーマット(例えば「CD73ダウン」フォーマットと称される)を用いて計測することができる。
【0329】
本開示の一態様において、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、10-6M未満、又は10-7M未満、又は10-8M未満、又は10-9M未満、又は10-10M未満、又は10-11M未満、又は10-12M未満、又は10-13M未満の解離定数又はkd(koff/kon)でCD73及び/又はその抗原断片に特異的に結合する。
【0330】
別の態様において、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、1×10-3s-1未満、又は2×10-3s-1未満のKoffでCD73及び/又はその抗原断片に結合する。他の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、10-3s-1未満、5×10-3s-1未満、10-4s-1未満、5×10-4s-1未満、10-5s-1未満、5×10-5s-1未満、10-6s-1未満、5×10-6s-1未満、5×10-7s-1未満、10-8s-1未満、5×10-8s-1未満、10-9s-1未満、5×10-9s-1未満、又は10-10s-1未満のKoffでCD73及びその抗原断片に結合する。
【0331】
別の態様において、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、少なくとも105M-1s-1、少なくとも5×105M-1s-1、少なくとも106M-1s-1、少なくとも5×106M-1s-1、少なくとも107M-1s-1、少なくとも5×107M-1s-1、又は少なくとも108M-1s-1、又は少なくとも109M-1s-1の会合速度定数又はkon速度でCD73及び/又はその抗原断片に結合する。
【0332】
一部の態様において、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、フローサイトメトリーによって計測したとき少なくとも約60pM、少なくとも約70pM、少なくとも約80pM、少なくとも約90pM、少なくとも約100pM、少なくとも約110pM、少なくとも約120pM、少なくとも約130pM、少なくとも約140pM、少なくとも約150pM、少なくとも約160pM、又は少なくとも約170pmのKDでMB-MDA-231細胞の表面上のCD73に結合する。具体的な一態様において、抗CD73抗体はクローン10.3抗体であり、フローサイトメトリーによって計測したとき約150pMのKDでMB-MDA-231細胞の表面上のCD73に結合する。別の具体的な態様において、抗CD73抗体はクローン2C5抗体であり、フローサイトメトリーによって計測したとき約80pMのKDでMB-MDA-231細胞の表面上のCD73に結合する。
【0333】
一部の態様において、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、フローサイトメトリーによって計測したとき少なくとも約40pM、少なくとも約50pM、少なくとも約60pM、少なくとも約70pM、少なくとも約80pM、少なくとも約90pM、少なくとも約100pM、少なくとも約120pM、又は少なくとも約130pMのKDでマウス3T1細胞の表面上のCD73に結合する。具体的な一態様において、抗CD73抗体はクローン10.3抗体であり、フローサイトメトリーによって計測したとき約110pMのKDでマウス3T1細胞の表面上のCD73に結合する。別の具体的な態様において、抗CD73抗体はクローン2C5抗体であり、フローサイトメトリーによって計測したとき約55pMのKDでマウス3T1細胞の表面上のCD73に結合する。
【0334】
一部の態様において、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、フローサイトメトリーによって計測したとき少なくとも約40pM、少なくとも約50pM、少なくとも約60pM、少なくとも約70pM、少なくとも約80pM、少なくとも約90pM、又は少なくとも約100pMのKDでカニクイザルMK-1細胞の表面上のCD73に結合する。具体的な一態様において、抗CD73抗体はクローン10.3抗体であり、フローサイトメトリーによって計測したとき約80pMのKDでカニクイザルMK-1細胞の表面上のCD73に結合する。別の具体的な態様において、抗CD73抗体はクローン2C5抗体であり、フローサイトメトリーによって計測したとき約60pMのKDでカニクイザルMK-1細胞の表面上のCD73に結合する。
【0335】
一部の態様において、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、表面プラズモン共鳴(PROTEON(登録商標))によって計測したとき少なくとも約3pM、少なくとも約4pM、少なくとも約5pM、少なくとも約6pM、少なくとも約7pM、少なくとも約8pM、少なくとも約9pM、又は少なくとも約10pMのKDでヒトCD73に結合する。具体的な一態様において、抗CD73抗体はクローン10.3抗体であり、表面プラズモン共鳴(PROTEON(登録商標))によって計測したとき約4pMのKDでヒトCD73に結合する。別の具体的な態様において、抗CD73抗体はクローン2C5抗体であり、表面プラズモン共鳴(PROTEON(登録商標))によって計測したとき約9pMのKDでヒトCD73に結合する。
【0336】
一部の態様において、本明細書に開示される抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、表面プラズモン共鳴(PROTEON(登録商標))によって計測したとき少なくとも約1pM、少なくとも約2pM、少なくとも約3pM、少なくとも約4pM、少なくとも約5pM、少なくとも約6pM、少なくとも約7pM、少なくとも約8pM、少なくとも約9pM、少なくとも約10pM、少なくとも約11pM、少なくとも約12pM、少なくとも約13pM、少なくとも約14pM、少なくとも約15pM、少なくとも約16pM、少なくとも約17pM、少なくとも約18pM、少なくとも約19pM、少なくとも約20pM、少なくとも約21pM、少なくとも約22pM、少なくとも約23pM、少なくとも約24pM、又は少なくとも約25pMのKDでマウスCD73に結合する。具体的な一態様において、抗CD73抗体はクローン10.3抗体であり、表面プラズモン共鳴(PROTEON(登録商標))によって計測したとき約1pMのKDでマウスCD73に結合する。別の具体的な態様において、抗CD73抗体はクローン2C5抗体であり、表面プラズモン共鳴(PROTEON(登録商標))によって計測したとき約22pMのKDでマウスCD73に結合する。
【0337】
一部の態様において、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、表面プラズモン共鳴(PROTEON(登録商標))によって計測したとき少なくとも約3pM、少なくとも約4pM、少なくとも約5pM、少なくとも約6pM、少なくとも約7pM、少なくとも約8pM、少なくとも約9pM、又は少なくとも約10pMのKDでカニクイザルCD73に結合する。具体的な一態様において、抗CD73抗体はクローン10.3抗体であり、SPR(Proteon)によって計測したとき約7pMのKDでカニクイザルCD73に結合する。別の具体的な態様において、抗CD73抗体はクローン2C5抗体であり、表面プラズモン共鳴(PROTEON(登録商標))によって計測したとき約9pMのKDでカニクイザルCD73に結合する。
【0338】
一部の態様において、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、溶液結合によって計測したとき少なくとも約40pM、少なくとも約50pM、少なくとも約60pM、少なくとも約70pM、少なくとも約80pM、少なくとも約90pM、少なくとも約100pM、又は少なくとも約110pMのKDでヒトCD73に結合する。具体的な一態様において、抗CD73抗体はクローン10.3抗体であり、溶液結合によって計測したとき約80pMのKDでヒトCD73に結合する。別の具体的な態様において、抗CD73抗体はクローン2C5抗体であり、溶液結合によって計測したとき約80pMのKDでヒトCD73に結合する。
【0339】
一部の態様において、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、溶液結合によって計測したとき少なくとも約100pM、少なくとも約200pM、少なくとも約300pM、少なくとも約400pM、少なくとも約500pM、少なくとも約600pM、少なくとも約700pM、少なくとも約800pM、少なくとも約900pM、少なくとも約1000pM、少なくとも約1100pM、少なくとも約1200pM、少なくとも約1300pM、少なくとも約1400pM、少なくとも約1500pM、少なくとも約1600pM、少なくとも約、又は少なくとも約1700pMのKDでマウスCD73に結合する。具体的な一態様において、抗CD73抗体はクローン10.3抗体であり、溶液結合によって計測したとき約130pMのKDでマウスCD73に結合する。別の具体的な態様において、抗CD73抗体はクローン2C5抗体であり、溶液結合によって計測したとき約1500pMのKDでマウスCD73に結合する。
【0340】
一部の態様において、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、溶液結合によって計測したとき少なくとも約60pM、少なくとも約70pM、少なくとも約80pM、少なくとも約90pM、少なくとも約100pM、少なくとも約110pM、又は少なくとも約120pMのKDでカニクイザルCD73に結合する。具体的な一態様において、抗CD73抗体はクローン10.3抗体であり、溶液結合によって計測したとき約90pMのKDでカニクイザルCD73に結合する。別の具体的な態様において、抗CD73抗体はクローン2C5抗体であり、溶液結合によって計測したとき約100pMのKDでカニクイザルCD73に結合する。詳細な態様において、MEDI9447は、約1×10-12、5×10-12、10×10-12、100×10-12、又は150×10-12のKDでCD73に結合する。
【0341】
一部の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子、例えば、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、T細胞分裂のAMP媒介抑制を軽減することができる。他の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子、例えば、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、TregによるATP誘導性Teff抑制をレスキューすることができる。
【0342】
一部の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子、例えば、抗CD73抗体又はその抗原結合断片(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、同系腫瘍成長を有意に阻害することができる。一態様において、腫瘍は、非小細胞肺癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、乳癌腫瘍、頭頸部癌腫瘍、膵癌腫瘍、結腸直腸癌腫瘍、メラノーマ腫瘍、リンパ腫腫瘍である。一態様において、腫瘍は、CT26マウス同系CRC腫瘍、B16F10メラノーマ腫瘍、EG7-OVAリンパ腫腫瘍、又はLL2(ルイス肺)腫瘍である。一部の態様において、CD73結合分子、例えば、本明細書に開示される抗CD73抗体又はその抗原結合断片(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、腫瘍成長を有意に阻害することができ、ここで腫瘍は、抗PD-1及び/又は抗PD-L1及び/又は抗PD-L2及び/又は抗CTLA-4抗体による療法に不応性である。一部の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子、例えば、抗CD73抗体又はその抗原結合断片(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、又は約10mg/kgのPD1の濃度で投与したとき腫瘍成長を有意に阻害することができる。
【0343】
一部の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子、例えば、抗CD73抗体又はその抗原結合断片(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、細胞との結合後にインターナライズされることができる。一部の態様において、CD73結合分子は抗体薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0344】
V.抗CD73抗体及び抗原結合断片の調製
モノクローナル抗CD73抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)及びその抗原結合断片は、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495によって記載されるものなどのハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法の使用では、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物を上記に記載したとおり免疫し、免疫抗原に特異的に結合し得る抗体のリンパ球による産生を誘発する。リンパ球はまた、インビトロで免疫することもできる。免疫後、リンパ球を単離し、例えばポリエチレングリコールを使用して好適な骨髄腫細胞株と融合することによりハイブリドーマ細胞を形成し、次にそこから未融合のリンパ球及び骨髄腫細胞を選択によって除くことができる。次に、免疫沈降、免疫ブロット法によるか、又はインビトロ結合アッセイ(例えばラジオイムノアッセイ(RIA);酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって決定するとき選択の抗原を特異的に対象とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、標準方法を用いたインビトロ培養か(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,1986)、或いは動物の腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。次に、上記にポリクローナル抗体について説明されるとおり、モノクローナル抗体を培養培地又は腹水から精製することができる。
【0345】
或いは、抗CD73モノクローナル抗体(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)及びその抗原結合断片はまた、例えば米国特許第4,816,567号明細書に記載されるとおり組換えDNA方法を用いて作製することもできる。成熟B細胞又はハイブリドーマ細胞から、その抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用したRT-PCRによるなどして、モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを単離し、従来の手順を用いてその配列を決定する。次に、重鎖及び軽鎖をコードする単離ポリヌクレオチドを好適な発現ベクターにクローニングし、本来免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞にその発現ベクターをトランスフェクトすると、宿主細胞によってモノクローナル抗体が生成される。また、記載されるとおり、所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリから、所望の種の組換え抗CD73モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を単離することもできる(McCafferty et al.,1990,Nature,348:552-554;Clarkson et al.,1991,Nature,352:624-628;及びMarks et al.,1991,J.Mol.Biol.,222:581-597)。
【0346】
抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドは、組換えDNA技術を用いた何らかの種々の方法で更に修飾することができ、それにより代替的な抗体を作成し得る。一部の態様では、例えばマウスモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の定常ドメインが、(1)例えばヒト抗体のそれらの領域に置換されてキメラ抗体が作成されるか、又は(2)非免疫グロブリンポリペプチドに置換されて融合抗体が作成され得る。一部の態様では、定常領域がトランケートされるか、又は除去されて、モノクローナル抗体の所望の抗体断片が作成される。可変領域の部位特異的又は高密度突然変異誘発を用いてモノクローナル抗体の特異性、親和性等を最適化することができる。
【0347】
特定の態様において、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片はヒト抗体又はその抗原結合断片である。ヒト抗体は、当該技術分野において公知の様々な技法を用いて直接調製することができる。インビトロで免疫されるか、又は標的抗原に対する抗体を産生する免疫された個体から単離された固定化ヒトBリンパ球を作成することができる(例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boemer et al.,1991,J.Immunol.,147(1):86-95;及び米国特許第5,750,373号明細書を参照)。
【0348】
また、例えば、Vaughan et al.,1996,Nat.Biotech.,14:309-314、Sheets et al.,1998,Proc.Nat’l.Acad.Sci.,95:6157-6162、Hoogenboom and Winter,1991,J.Mol.Biol.,227:381、及びMarks et al.,1991,J.Mol.Biol.,222:581に記載されるとおり、抗CD73ヒト抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片はファージライブラリから選択することもでき、ここで、そのファージライブラリはヒト抗体を発現する)。抗体ファージライブラリを作成及び使用する技術は、米国特許第5,969,108号明細書、同第6,172,197号明細書、同第5,885,793号明細書、同第6,521,404号明細書;同第6,544,731号明細書;同第6,555,313号明細書;同第6,582,915号明細書;同第6,593,081号明細書;同第6,300,064号明細書;同第6,653,068号明細書;同第6,706,484号明細書;及び同第7,264,963号明細書;及びRothe et al.,2007,J.Mol.Bio.,doi:10.1016/j.jmb.2007.12.018(これらの各々は、全体として参照により援用される)にも記載されている。
【0349】
親和性成熟戦略及びチェインシャッフリング戦略(Marks et al.,1992,Bio/Technology 10:779-783、全体として参照により援用される)が当該技術分野において公知であり、高親和性ヒト抗体又はその抗原結合断片の作成に用いることができる。
【0350】
一部の態様において、抗CD73モノクローナル抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)はヒト化抗体であってもよい。非ヒト又はヒト抗体の改変、ヒト化又はリサーフェシング方法も用いることができ、当該技術分野において周知である。ヒト化抗体、リサーフェシング抗体、又は同様の改変抗体は、非ヒト、例えば、限定はされないが、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類又は他の哺乳動物である供給源由来の1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と称される残基によって置き換えられ、インポート残基は、典型的には既知のヒト配列の「インポート」可変、定常又は他のドメインから取られる。かかるインポートされた配列を用いて、免疫原性を低減し、又は結合性、親和性、on速度、off速度、アビディティ、特異性、半減期、若しくは当該技術分野において公知のとおりの任意の他の好適な特性を低減し、増強し、若しくは変更することができる。一般に、CD73結合への影響としては、CDR残基が直接的且つ最も実質的に関与する。従って、非ヒト又はヒトCDR配列の一部又は全てを維持する一方で、可変領域及び定常領域の非ヒト配列はヒト又は他のアミノ酸に置き換えることができる。
【0351】
抗体はまた、任意選択で、CD73抗原に対する高親和性及び他の有利な生物学的特性を保持しつつ改変されたヒト化抗体、リサーフェシング抗体、改変抗体又はヒト抗体であってもよい。この目標を達成するため、任意選択で、ヒト化(又はヒト)又は改変抗CD73抗体及びリサーフェシング抗体を、親配列、改変配列、及びヒト化配列の三次元モデルを使用した親配列及び様々な概念的ヒト化産物及び改変産物の分析プロセスによって調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者は熟知している。選択した候補免疫グロブリン配列の推定上の三次元立体構造を図解及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の見込まれる役割の分析、即ち、候補免疫グロブリンがCD73などのその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、コンセンサス配列及びインポート配列からフレームワーク(FW)残基を選択して組み合わせることにより、標的抗原に対する親和性の増加など、所望の抗体特性を実現することができる。
【0352】
抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片のヒト化、リサーフェシング又は改変は、限定はされないが、Jones et al.,Nature 321:522(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988))、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987)、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5,639,641号明細書、同第5,723,323号明細書;同第5,976,862号明細書;同第5,824,514号明細書;同第5,817,483号明細書;同第5,814,476号明細書;同第5,763,192号明細書;同第5,723,323号明細書;同第5,766,886号明細書;同第5,714,352号明細書;同第5,9,55,358号明細書;同第6,204,023号明細書;同第6,180,370号明細書;同第6,331,431号明細書;同第5,693,762号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,225,539号明細書;同第4,816,567号明細書;同第5,969,108号明細書;同第7,635,666号明細書;同第7,723,270号明細書;同第7,557,189号明細書;同第7,538,195号明細書;及び同第7,342,110号明細書;PCT/米国特許出願第98/16280号明細書;PCT/米国特許出願91/05939号明細書;PCT/米国特許出願94/01234号明細書;PCT/英国特許出願92/01755号明細書;国際公開第90/14443号パンフレット;国際公開第90/14424号パンフレット;国際公開第90/14430号パンフレット;及び欧州特許第229246号明細書(これらの各々は、そこに引用される文献を含め、全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるものなど、任意の公知の方法を用いて実施することができる。
【0353】
抗CD73ヒト化抗体及びその抗原結合断片はまた、免疫時に内因性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の完全レパートリーを産生する能力を有するヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスにおいても作製することができる。この手法は、米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;及び同第5,661,016号明細書に記載されている。
【0354】
特定の態様において、抗CD73抗体断片(例えば、クローン10.3抗体由来又はクローン2C5抗体由来の断片)が提供される。抗体断片の作製については、様々な技法が公知である。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解による消化によって得られている(例えば、Morimoto et al.,1993,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117;Brennan et al.,1985,Science,229:81)。特定の態様において、抗CD73抗体断片は組換えで作製される。Fab、Fv、及びscFv抗体断片は、いずれも大腸菌(E.coli)又は他の宿主細胞で発現させて、そこから分泌させることができ、このようにしてこれらの断片を大量に作製することが可能である。かかる抗CD73抗体断片はまた、上記で考察した抗体ファージライブラリから単離することもできる。抗CD73抗体断片はまた、米国特許第5,641,870号明細書に記載されるとおりの線状抗体であってもよい。抗体断片の他の作製技法、例えば化学合成が、当業者には明らかであろう。
【0355】
本開示によれば、CD73に特異的な一本鎖抗体の作製技法を適合させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号明細書を参照)。加えて、CD73に対して所望の特異性を有するモノクローナルFab断片、又はその誘導体、断片、類似体若しくは相同体の迅速且つ有効な同定を可能にするFab発現ライブラリの構築方法を適合させることができる(例えば、Huse et al.,Science 246:1275-1281(1989)を参照)。抗体断片は、限定はされないが:(a)抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab’)2断片;(b)F(ab’)2断片のジスルフィド架橋の還元によって生成されるFab断片、(c)抗体分子をパパイン及び還元剤で処理することによって生成されるFab断片、及び(d)Fv断片を含め、当該技術分野における技法によって作製することができる。
【0356】
本明細書に開示される抗CD733抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、その血清半減期が増加するように修飾することができる。これは、例えば、抗体又は抗体断片の適切な領域の突然変異によって抗体又は抗体断片にサルベージ受容体結合エピトープを組み込むことによるか、又は後に抗体又は抗体断片にいずれかの末端若しくは中央で(例えば、DNA又はペプチド合成によって)融合するペプチドタグにそのエピトープを組み込むことによるか、又はYTE突然変異によって達成し得る。抗体又はその抗原結合断片の血清半減期を増加させる他の方法、例えば、PEGなどの異種分子とのコンジュゲーションが、当該技術分野において公知である。
【0357】
ヘテロコンジュゲート抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)及びその抗原結合断片も本開示の範囲内にある。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合的につながった抗体で構成される。かかる抗体は、例えば、免疫細胞を望ましくない細胞に標的化させることが提案されている(例えば、米国特許第4,676,980号明細書を参照)。ヘテロコンジュゲート抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)及びその抗原結合断片は、架橋剤が関わる方法を含めた、合成タンパク質化学における公知の方法を用いてインビトロで調製し得ることが企図される。例えば、ジスルフィド交換反応を用いるか、又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を構築することができる。この目的に好適な試薬の例としては、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデートが挙げられる。
【0358】
特定の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子、例えば、抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、他の治療剤と組み合わせることができ(例えば併用療法で)、又は少なくとも1つの異種部分と融合(例えば、遺伝子融合、それにより融合タンパク質を形成する)又はコンジュゲート(例えば、化学的又は酵素的にコンジュゲート)することができる。従って、本明細書に開示されるCD73結合分子を他の治療剤又は毒素と融合又はコンジュゲートして、イムノコンジュゲート及び/又は融合タンパク質を形成することができる。本開示はまた、別の分子(例えば、ペプチド、薬物小分子、検出可能分子等)に(例えば化学的に又は組換えで)誘導体化又は連結されている本明細書に開示されるCD73結合分子の少なくとも1つを含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)も提供する。一般に、抗CD73抗体又はその一部分は、誘導体化又は標識によってそのCD73結合性が悪影響を受けることのないように誘導体化される。従って、本開示の抗CD73抗体及び抗体部分は、本明細書に記載される抗CD73結合分子のインタクトな形態及び修飾形態の両方を含むことが意図される。例えば、本明細書に開示される抗CD73結合分子又はそのCd73結合部分は、1つ以上の他の分子実体、例えば、細胞傷害剤、医薬品、検出剤、及び/又は抗CD73結合分子と別の分子(ストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグなど)との会合を媒介し得るタンパク質若しくはペプチドに(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性会合などによって)機能的に連結させることができる。
【0359】
ある種の誘導体化分子は、2つ以上の分子実体、例えば、本明細書に開示される抗CD73結合分子と治療剤(例えば、ツブリシンなどの細胞毒又はMEDI 1508)を架橋結合することによって作製し得る。好適な架橋剤としては、ヘテロ二官能性のもの、即ち、適切なスペーサーによって分離された2つの個別的な反応性の基を有するもの(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル);又はホモ二官能性のもの(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)が挙げられる。かかる架橋剤は、例えばPierce Chemical Company,Rockford,IIから入手可能である。更なる二官能性カップリング剤としては、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHCLなど)、活性エステル類(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド類(グルタルアルデヒドなど)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート類(トリレン2,6-ジイソシアネートなど)、及びビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)が挙げられる。
【0360】
別種の誘導体化分子は、検出可能標識を導入することによって作製し得る。有用な検出剤としては、蛍光化合物(例えば、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリン、ランタニド蛍光体など)、検出に有用な酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなど)、二次レポーターによって認識されるエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ等)が挙げられる。一部の態様において、検出可能標識には少なくとも1つのスペーサーアームが付加され得る。スペーサーアームは、潜在的な立体障害を低減するように様々な長さであり得る。
【0361】
本明細書に開示される抗CD73結合分子はまた、放射性標識アミノ酸で標識することもできる。放射性標識は、診断目的及び治療目的の両方に使用することができる。例えば、放射性標識を使用して、X線又はその他、陽電子放射断層撮影法(PET)などの診断技術によりCD73発現細胞を検出することができる。
【0362】
更に、放射性標識は、望ましくない免疫応答を引き起こすものなど、CD73発現細胞に対する毒素として治療的に使用することができる。ポリペプチドの標識の例としては、限定はされないが、以下の放射性同位体又は放射性核種:3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I及び131Iが挙げられる。一部の態様において、抗CD73結合分子は、イメージング時に検出可能な常磁性、放射性、又は蛍光発生イオンで標識することができる。一部の態様において、常磁性イオンは、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)又はエルビウム(III)である。他の態様において、放射性イオンは、ヨウ素-123、テクネチウム-99、インジウム-111、レニウム-188、レニウム-186、銅-67、ヨウ素-131、イットリウム-90、ヨウ素-125、アスタチン-211、及びガリウム-67である。他の態様において、抗Cd73結合分子は、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及びビスマス(III)などのX線造影剤で標識される。本明細書に開示される抗CD73結合分子はまた、化学基、例えばポリエチレングリコール(PEG)などのポリマー、メチル基、エチル基、又は炭水化物基で誘導体化することもできる。これらの基は、抗体の生物学的特性の向上、例えば血清半減期の増加又は組織結合性の増加に有用である。
【0363】
用語「細胞傷害剤」は、本明細書で使用されるとき、広義に定義され、細胞の機能を阻害し又は妨げる物質及び/又は細胞の破壊(細胞死)を引き起こす物質、及び/又は抗新生物/抗増殖効果を発揮する物質を指す。例えば、細胞傷害剤は、新生物腫瘍細胞の発生、成熟、又は伝播を直接又は間接的に妨げることができる。この用語にはまた、単なる細胞傷害効果でなく、細胞増殖抑制効果のみを生じさせるような薬剤も含まれる。この用語には、以下に特定するとおりの化学療法剤、並びに他のCD73アンタゴニスト、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害薬、プロテインキナーゼA阻害薬、サイトカインファミリーメンバー、放射性同位元素、及び毒素、例えば細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素が含まれる。
【0364】
用語「化学療法剤」は、天然又は合成の化学的化合物を含む用語「細胞傷害剤」の一部である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン化合物、スルホン酸アルキル及びアルキル化作用を有する他の化合物、例えば、ニトロソウレア類、シスプラチン及びダカルバジン;代謝拮抗薬、例えば、葉酸、プリン又はピリミジン拮抗薬;有糸分裂阻害薬、例えば、ビンカアルカロイド類及びポドフィロトキシンの誘導体;細胞傷害性抗生物質及びカンプトテシン誘導体が挙げられる。他の化学療法剤は、アミホスチン(ETHYOL(登録商標))、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))、ドキソルビシンリポ(DOXIL(登録商標))、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、ダウノルビシン、ダウノルビシンリポ(DAUNOXOME(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT-11、10-ヒドロキシ-7-エチル-カンプトテシン(SN38)、ゲフィチニブ(イレッサ(IRESSA)(登録商標))、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンα、インターフェロンβ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペグアスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、アロマターゼ阻害薬、及びこれらの組み合わせである。
【0365】
本開示の目的上、修飾抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、抗体又はポリペプチドとCD73との会合を提供する任意のタイプの可変領域を含み得ることが理解されなければならない。この点で、可変領域は、所望の腫瘍関連抗原に対して体液性応答を開始して免疫グロブリンを生成するように誘導することのできる任意のタイプの哺乳動物を含み得るか、又はそれに由来し得る。従って、修飾抗CD73抗体又はその抗原結合断片の可変領域は、例えば、ヒト、マウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、マカク等)又はルピナス起源のものであり得る。一部の態様では、修飾抗CD73抗体又はその抗原結合断片の可変領域及び定常領域の両方がヒトである。他の態様では、適合抗体(通常非ヒト供給源に由来する)の可変領域が、分子の結合特性が向上し又は免疫原性が低下するように改変され又は特異的に調整される。この点で、可変領域はヒト化されるか、又は他に移入アミノ酸配列を含めることによって変更されてもよい。
【0366】
特定の態様では、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片の重鎖及び軽鎖の両方の可変ドメインが、1つ以上のCDRの少なくとも部分的な置換、及び必要であれば、部分的フレームワーク領域置換及び配列変化によって変更される。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラス又は更にはサブクラスの抗体に由来し得るが、CDRが異なるクラスの抗体、特定の態様では異なる種の抗体に由来することが想定される。ある可変ドメインの抗原結合能を別の可変ドメインに移すために、全てのCDRをドナー可変領域の完全なCDRに置き換える必要はない。むしろ、抗原結合部位の活性の維持に必要な残基を移しさえすれば十分である。米国特許第5,585,089号明細書、同第5,693,761号明細書及び同第5,693,762号明細書に記載される説明を所与とすれば、免疫原性が低下した機能性抗体を得ることは、ルーチンの実験を実施することによるか、或いは手探り試験によって、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0367】
可変領域の変更にも関わらず、当業者は、修飾抗CD73抗体(例えば、修飾クローン10.3抗体又は修飾クローン2C5抗体)又はその抗原結合断片に、定常領域ドメインの1つ以上の少なくとも一部が欠失しているか、又は他に変更されている抗体(例えば、完全長抗体又はその免疫応答性断片)が含まれてもよく、天然の又は変更されていない定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比較したときに腫瘍局在の増加又は血清半減期の低下などの所望の生化学的特性がもたらされるようにし得ることを理解するであろう。一部の態様において、修飾抗体の定常領域はヒト定常領域を含み得る。本明細書に開示されるこの抗CD73分子と適合性がある定常領域の修飾は、1つ以上のドメインにおける1つ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換を含む。即ち、本明細書に開示される修飾抗体は、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2又はCH3)のうちの1つ以上及び/又は軽鎖定常ドメイン(CL)に対する変更又は修飾を含み得る。一部の態様では、1つ以上のドメインが部分的又は完全に欠失している修飾定常領域が企図される。一部の態様において、修飾抗体は、CH2ドメイン全体が取り除かれたドメイン欠失コンストラクト又は変異体(ΔCH2コンストラクト)を含み得る。一部の態様において、削除された定常領域ドメインは、典型的には欠けている定常領域によって付与される分子可動性の一部を提供する短いアミノ酸スペーサー(例えば、10残基)に置き換えられ得る。
【0368】
その構成に加えて、当該技術分野では、定常領域が幾つかのエフェクター機能を媒介することが知られている。例えば、補体のC1成分が抗体に結合すると、補体系が活性化される。補体の活性化は細胞病原体のオプソニン化及び溶解に重要である。補体の活性化はまた炎症反応も刺激し、また、自己免疫性の過敏にも関与し得る。更に、抗体はFc領域を介して細胞に結合し、ここでは抗体Fc領域上のFc受容体部位が細胞上のFc受容体(FcR)に結合する。IgG(γ受容体)、IgE(η受容体)、IgA(α受容体)及びIgM(μ受容体)を含め、異なる抗体クラスに特異的なFc受容体が幾つもある。抗体が細胞表面上のFc受容体に結合すると、抗体被覆粒子の貪食及び破壊、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体被覆標的細胞の溶解(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害、又はADCCと呼ばれる)、炎症性メディエーターの放出、胎盤通過及び免疫グロブリン産生の制御を含めた幾つもの重要且つ多様な生物学的反応が惹起される。
【0369】
特定の態様において、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、変更されたエフェクター機能を提供し、従って投与される抗体又はその抗原結合断片の生物学的プロファイルが影響を受ける。例えば、定常領域ドメインを(点突然変異又は他の手段によって)欠失又は不活性化させると、循環中の修飾抗体のFc受容体結合が低下し、それにより腫瘍局在が増加し得る。他の場合、定常領域を修飾すると、本開示と一致して、補体結合が調節され、従ってコンジュゲートした細胞毒の血清半減期及び非特異的な会合が低下し得る。定常領域の更に他の修飾を用いると、抗原特異性又は抗体可動性の増加による局在化の増進を可能にするジスルフィド結合又はオリゴ糖部分を除去することができる。同様に、本開示における定常領域に対する修飾は、十分に当業者の範囲内にある周知の生化学的又は分子工学的技法を用いて容易に作製することができる。
【0370】
特定の態様において、抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片である本明細書に開示されるCD73結合分子は、1つ以上のエフェクター機能を有しない。例えば、一部の態様において、抗体又はその抗原結合断片は抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有しない。特定の態様において、抗CD73抗体又はその抗原結合断片はFc受容体及び/又は補体因子に結合しない。特定の態様において、抗体又はその抗原結合断片はエフェクター機能を有しない。
【0371】
特定の態様において、抗CD73修飾抗体又はその抗原結合断片は、それぞれの修飾抗体又はその断片のCH3ドメインがヒンジ領域に直接融合するように改変し得ることが注記されるであろう。他のコンストラクトでは、ヒンジ領域と修飾CH2及び/又はCH3ドメインとの間にペプチドスペーサーを提供することが望ましい場合もある。例えば、適合性コンストラクトを発現させることができ、ここではCH2ドメインが欠失しており、且つ残りのCH3ドメイン(修飾又は非修飾)が5~20アミノ酸のスペーサーでヒンジ領域に結合している。かかるスペーサーを加えると、例えば、定常ドメインの調節エレメントが空いて利用可能なままであること、又はヒンジ領域が可動なままであることが確実になり得る。しかしながら、ある場合には、アミノ酸スペーサーが免疫原性で、且つコンストラクトに対する望ましくない免疫応答を誘導することが判明し得ることに留意しなければならない。従って、特定の態様では、修飾抗体の所望の生化学的品質を維持するため、コンストラクトに加えられる任意のスペーサーは比較的免疫原性が低いか、又は更には完全に省かれてもよい。
【0372】
定常領域ドメイン全体の欠失に加えて、本開示の抗CD73抗体及びその抗原結合断片は、数個の、又は更には単一のアミノ酸の部分的欠失又は置換によって提供され得ることが理解されるであろう。例えば、CH2ドメインの選択範囲における単一アミノ酸の突然変異が、Fc結合を実質的に低下させて、それにより腫瘍局在を増加させるには十分であり得る。同様に、調節しようとするエフェクター機能(例えば、補体C1Q結合)を制御する1つ以上の定常領域ドメインの一部を単純に欠失させることが望ましい場合もある。定常領域のかかる部分欠失により、その定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能はインタクトなまま残しておきながら、抗体又はその抗原結合断片の選択された特性(例えば、血清半減期)を向上させることができる。更に、上記で示唆したとおり、開示される抗CD73抗体及びその抗原結合断片の定常領域は、得られるコンストラクトのプロファイルを強化する1つ以上のアミノ酸の突然変異又は置換によって修飾することができる。この点で、修飾抗体又はその抗原結合断片の構成及び免疫原性プロファイルを実質的に維持しながら、保存された結合部位によって提供される活性(例えば、Fc結合)を破壊することが可能である。特定の態様は、エフェクター機能の低下若しくは増加などの望ましい特性を増強し、又はより多くの細胞毒又は炭水化物結合を提供するため、定常領域に対する1つ以上のアミノ酸の付加を含み得る。かかる態様では、選択された定常領域ドメインに由来する特定の配列を挿入又は複製することが望ましい場合もある。
【0373】
本開示はまた、本明細書に示されるキメラ、ヒト化及びヒト抗CD73抗体、又はその抗原結合断片と実質的に相同な変異体及び均等物も提供する。これらは、例えば、保存的置換突然変異、即ち1つ以上のアミノ酸の、同様のアミノ酸による置換を含み得る。例えば、保存的置換は、アミノ酸を同じ一般クラス内の別のアミノ酸で置換すること、例えば、ある酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸で置換すること、ある塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸で置換すること、又はある中性アミノ酸を別の中性アミノ酸によって置換することを指す。保存的アミノ酸置換によって意味されるものは、当該技術分野において周知である。
【0374】
抗CD73抗体又はその抗原結合断片は、通常はそのタンパク質の一部でない追加的な化学的部分を含むように更に修飾することができる。それらの誘導体化部分は、タンパク質の溶解度、生物学的半減期又は吸収を向上させることができる。これらの部分はまた、タンパク質の任意の望ましい副作用などを低減し又は消失させることもできる。それらの部分についての概要は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(2000)を参照することができる。
【0375】
VI.CD73結合分子をコードするポリヌクレオチド
特定の態様において、本開示は、CD73に特異的に結合するポリペプチド又はその抗原結合断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを包含する。例えば、本開示は、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)をコードするか、又はかかる抗体の抗原結合断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本開示のポリヌクレオチドはRNAの形態であっても、又はDNAの形態であってもよい。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAが含まれ;且つ二本鎖又は一本鎖であってもよく、及び一本鎖の場合、コード鎖又は非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。
【0376】
特定の態様において、ポリヌクレオチドは単離されている。特定の態様において、ポリヌクレオチドは実質的に純粋である。特定の態様において、ポリヌクレオチドは、例えば宿主細胞からのポリペプチドの発現及び分泌を助けるポリヌクレオチド(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)に同じリーディングフレーム内で融合した成熟ポリペプチドのコード配列を含む。リーダー配列を有するポリペプチドはプレタンパク質であり、成熟形態のポリペプチドを形成するため宿主細胞によって切断されるリーダー配列を有することができる。ポリヌクレオチドはまた、成熟タンパク質+追加的な5’アミノ酸残基であるCD73結合プロタンパク質もコードすることができる。
【0377】
特定の態様において、ポリヌクレオチドは、例えばコードされたポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列に同じリーディングフレーム内で融合した成熟CD73結合ポリペプチド、例えば抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片のコード配列を含む。例えば、マーカー配列は、細菌宿主の場合にpQE-9ベクターによって供給されるヘキサヒスチジンタグであってもよく、それによりマーカーに融合した成熟ポリペプチドの精製が提供され、又はマーカー配列は、哺乳類宿主(例えば、COS-7細胞)を使用するときは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するヘマグルチニン(HA)タグであってもよい。
【0378】
本開示はまた、例えば、本明細書に開示されるCD73結合分子(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)のCD73結合断片、類似体、及び誘導体をコードする記載のポリヌクレオチドの変異体も提供する。
【0379】
ポリヌクレオチド変異体は、コード領域、非コード領域、又は両方に変更を含み得る。一部の態様において、ポリヌクレオチド変異体は、サイレント置換、付加、又は欠失を生じるものの、コードされるポリペプチドの特性又は活性は変えない変更を含む。一部の態様において、ヌクレオチド変異体は、遺伝子コードの縮重に起因するサイレント置換によって作製される。ポリヌクレオチド変異体は、種々の理由で、例えば、特定の宿主用にコドン発現を最適化するため(ヒトmRNAのコドンを大腸菌(E.coli)などの細菌宿主が選好するものに変化させるため)作製され得る。本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含むベクター及び細胞も提供される。
【0380】
一部の態様において、CD73結合分子、例えば抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片をコードするDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成機を使用した化学合成によって構築することができる。かかるオリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドのアミノ酸配列、及び目的の組換えポリペプチドが産生される宿主細胞において有利なコドンの選択に基づき設計することができる。標準方法を適用して、目的の単離ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド配列を合成することができる。例えば、完全なアミノ酸配列を使用して逆翻訳遺伝子を構築することができる。更に、特定の単離ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、所望のポリペプチドの一部分をコードする幾つかの小さいオリゴヌクレオチドを合成し、次にライゲートすることができる。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的には相補的アセンブリのための5’又は3’オーバーハングを含有する。
【0381】
アセンブル後(合成、部位特異的突然変異誘発又は別の方法による)、目的とする特定の単離ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は発現ベクターに挿入され、所望の宿主におけるそのタンパク質の発現に適切な発現制御配列に作動可能に連結される。適切なアセンブリは、ヌクレオチドシーケンシング、制限マッピング、及び好適な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認することができる。当該技術分野において周知のとおり、宿主におけるトランスフェクトした遺伝子の高い発現レベルを達成するためには、その遺伝子を、選択の発現宿主で機能する転写及び翻訳発現制御配列に作動可能に連結しなければならない。
【0382】
特定の態様では、組換え発現ベクターを使用して、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片をコードするDNAを増幅し、発現させる。組換え発現ベクターは、哺乳類、微生物、ウイルス又は昆虫遺伝子に由来する好適な転写又は翻訳調節エレメントに作動可能に連結された、抗CD73抗体及び/又はその抗原結合断片のポリペプチド鎖をコードする合成又はcDNA由来のDNA断片を有する複製可能なDNAコンストラクトである。
【0383】
転写単位は、概して、以下に更に詳細に記載するとおり、(1)遺伝子発現において調節的役割を有する1つ又は複数の遺伝エレメント、例えば転写プロモーター又はエンハンサーと、(2)mRNAに転写され且つタンパク質に翻訳される構造又はコード配列と、(3)適切な転写及び翻訳開始及び終結配列との集合を含む。かかる調節エレメントは、転写を制御するためオペレーター配列を含み得る。一般に複製起点によって付与される宿主における複製能、及び形質転換体の認識を促進する選択遺伝子が、更に組み込まれ得る。DNA領域は、それらが機能上互いに関係しているとき、作動可能に連結している。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現する場合、そのポリペプチドのDNAに作動可能に連結している;プロモーターは、それが配列の転写を制御する場合、コード配列に作動可能に連結している;又はリボソーム結合部位は、それが翻訳を可能にするような位置にある場合、コード配列に作動可能に連結している。酵母発現系での使用が意図される構造エレメントは、宿主細胞による翻訳タンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含む。或いは、組換えタンパク質がリーダー配列又は輸送配列なしに発現する場合、それはN末端メチオニン残基を含み得る。この残基は、任意選択で、後に発現した組換えタンパク質から切断されて、最終産物を提供し得る。
【0384】
発現制御配列及び発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存することになる。幅広い種類の発現宿主/ベクターの組み合わせを用いることができる。真核生物宿主に有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス及びサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主に有用な発現ベクターとしては、pCR 1、pBR322、pMB9及びそれらの誘導体を含めた大腸菌(E.coli)由来のプラスミドなどの公知の細菌プラスミド、M13及び繊維状一本鎖DNAファージなどのより広い宿主域のプラスミドが挙げられる。
【0385】
CD73結合分子、例えば抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片の発現に好適な宿主細胞には、適切なプロモーターの制御下にある原核生物、酵母、昆虫又は高等真核生物細胞が含まれる。原核生物には、グラム陰性又はグラム陽性生物、例えば大腸菌(E.coli)又は桿菌が含まれる。高等真核生物細胞には、以下に記載するとおりの哺乳類起源の樹立細胞株が含まれる。無細胞翻訳系も用いることができる。細菌、真菌、酵母、及び哺乳類細胞宿主での使用に適切なクローニング及び発現ベクターは、Pouwels et al.(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Elsevier,N.Y.,1985)(この関連する開示は本明細書によって参照により援用される)によって記載されている。抗体作製を含めたタンパク質作製方法に関する更なる情報については、例えば、米国特許出願公開第2008/0187954号明細書、米国特許第6,413,746号明細書、同第6,660,501号明細書、及び同第7,932,087号明細書(これらの各々は本明細書によって全体として参照により本明細書に援用される)を参照することができる。
【0386】
種々の哺乳類又は昆虫細胞培養系も、組換えCD73結合分子、例えば抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片の発現に有利に用いることができる。哺乳類細胞における組換えタンパク質の発現を実施してもよく、なぜならかかるタンパク質は概して正しく折り畳まれ、適切に修飾され、且つ完全に機能性であるためである。
【0387】
好適な哺乳類宿主細胞株の例としては、HEK-293及びHEK-293T、Gluzman(Cell 23:175,1981)によって記載されるサル腎細胞のCOS-7株、及び他の細胞株、例えば、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、NSO、HeLa及びBHK細胞株が挙げられる。哺乳類発現ベクターは、非転写エレメント、例えば、複製起点、発現させる遺伝子に連結した好適なプロモーター及びエンハンサー、及び他の5’又は3’フランキング非転写配列、及び5’又は3’非翻訳配列、例えば、必須リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与・受容部位、及び転写終結配列などを含み得る。昆虫細胞における異種タンパク質産生用のバキュロウイルス系が、Luckow and Summers,BioTechnology 6:47(1988)によってレビューされている。
【0388】
形質転換宿主によって産生されるCD73結合分子、例えば抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、任意の好適な方法によって精製することができる。かかる標準方法には、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心、溶解度差、又は任意の他の標準的なタンパク質精製技法によるものが含まれる。ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのアフィニティータグをタンパク質に付加すると、適切なアフィニティーカラムに通過させることによる容易な精製が可能となり得る。単離されたタンパク質はまた、タンパク質分解、核磁気共鳴及びX線結晶学などの技法を用いて物理的に特徴付けることもできる。
【0389】
例えば、組換えタンパク質を培養培地中に分泌する系からの上清を、初めに市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えばAmicon(登録商標)又はMillipore Pellicon(登録商標)限外ろ過ユニットを使用して濃縮し得る。この濃縮ステップの後、濃縮物を好適な精製マトリックスに適用し得る。或いは、陰イオン交換樹脂、例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックス又は基質を用いてもよい。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース又はタンパク質精製において一般的に用いられる他のタイプであってもよい。或いは、陽イオン交換ステップが用いられてもよい。好適な陽イオン交換体としては、スルホプロピル基又はカルボキシメチル基を含む種々の不溶性マトリックスが挙げられる。最後に、疎水性RP-HPLC媒体、例えばペンダントメチル基又は他の脂肪族基を有するシリカゲルを用いる1つ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)ステップを用いて、CD73結合分子(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)を更に精製することができる。均一な組換えタンパク質を提供するため、前述の精製ステップの一部又は全てを様々に組み合わせて用いることもできる。
【0390】
細菌培養で産生された組換えCD73結合タンパク質、例えば抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、例えば、細胞ペレットからの初期抽出と、続く1つ以上の濃縮、塩析、水性イオン交換又はサイズ排除クロマトグラフィーステップによって単離することができる。最終精製ステップには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることができる。組換えタンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクル処理、音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤の使用を含めた、任意の好都合な方法によって破壊することができる。
【0391】
抗体及び他のタンパク質を精製するための当該技術分野において公知の方法としてはまた、例えば、米国特許出願公開第2008/0312425号明細書、同第2008/0177048号明細書、及び同第2009/0187005号明細書(これらの各々は、本明細書によって全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるものも挙げられる。
【0392】
特定の態様では、CD73結合分子は、抗体でないポリペプチドである。タンパク質標的に高親和性で結合する非抗体ポリペプチドを同定及び作製する種々の方法が当該技術分野において公知である。例えば、Skerra,Curr.Opin.Biotechnol..18:295-304(2007)、Hosse et al.,Protein Science,15:14-27(2006)、Gill et al.,Curr.Opin.Biotechnol.,17:653-658(2006)、Nygren,FEBS J.,275:2668-76(2008)、及びSkerra,FEBS J.,275:2677-83(2008)(これらの各々は、全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。特定の態様では、ファージディスプレイ技術を用いてCD73結合ポリペプチドを同定/作製することができる。特定の態様では、ポリペプチドは、プロテインA、リポカリン、フィブロネクチンドメイン(例えば、テネイシン-3 Fn IIIドメインなどのフィブロネクチンドメイン)、アンキリンコンセンサスリピートドメイン、及びチオレドキシンからなる群から選択されるタイプのタンパク質スキャフォールドを含む。
【0393】
VI.治療用抗CD73抗体を用いた治療方法
本開示は、抗CD73結合分子、例えば、抗体、例えばその抗原結合断片、変異体、及び誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)を使用することにより、CD73発現又はCD73発現細胞に関連する疾患、例えば癌を有する患者を治療することに関する方法を提供する。一部の具体的な態様において、かかる癌は、肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、膀胱癌、膵癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、肺・結腸癌(lungcolon cancer)、及びリンパ腫である。
【0394】
「CD73発現細胞」とは、CD73を発現する細胞を意味する。CD73は、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカリングを介する膜結合型であってもよく、また可溶性タンパク質として存在してもよい。細胞及び他の好適な試料中のCD73発現を検出する方法は当該技術分野において周知されており、限定はされないが、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、ELISAなどが挙げられる。
【0395】
以下の考察では、本開示のCD73結合分子(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)による様々な疾患及び障害の診断方法及び治療を参照するが、本明細書に記載される方法はまた、任意の他の抗CD73抗体、及び本明細書に開示される抗CD73抗体の所望の特性を保持している、例えば、CD73に特異的に結合してその5’-ヌクレオチダーゼ活性を中和する能力を有するこれらの抗CD73抗体の抗原結合断片、変異体、及び誘導体(例えば、融合タンパク質又はコンジュゲート)にも適用可能である。一部の態様において、CD73結合分子は、ヒトADCCを媒介しないヒト又はヒト化抗体であるか、又はADCCを媒介しないように改変された抗CD73抗体である。
【0396】
一部の態様において、CD73結合分子は、CD730010抗体又はその抗原結合断片、クローン10.3抗体又はその抗原結合断片、CD730002抗体又はその抗原結合断片、クローン2C5抗体又はその抗原結合断片、又はCD73004抗体又はその抗原結合断片である。他の態様において、CD73結合分子はクローン10.3突然変異抗体である。一部の態様において、CD73結合分子はクローン10.3モノクローナル抗体である。一部の態様において、CD73結合分子は、血清半減期が延長するように改変されたクローン10.3モノクローナル抗体である。他の態様において、CD73結合分子はクローン10.3 YTE突然変異抗体である。他の態様において、CD73結合分子はクローン2C5突然変異抗体である。一部の態様において、CD73結合分子はクローン2C5モノクローナル抗体である。一部の態様において、CD73結合分子は、血清半減期が延長するように改変されたクローン2C5モノクローナル抗体である。他の態様において、CD73結合分子はクローン2C5 YTE突然変異抗体である。
【0397】
一態様において、治療は、対象又は患者への本開示の抗CD73結合分子、例えば、抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体の適用又は投与、又は対象又は患者由来の単離組織又は細胞株への抗CD73結合分子の適用又は投与を含み、ここで対象又は患者は、疾患、疾患の症状、又は疾患に対する素因を有する。別の態様において、治療はまた、疾患、疾患の症状、又は疾患に対する素因を有する対象又は患者に対する本開示の抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体を含む医薬組成物の適用又は投与、又は対象又は患者由来の単離組織又は細胞株に対する抗CD73結合分子を含む医薬組成物の適用又は投与を含むことも意図される。
【0398】
本開示の抗CD73結合分子、例えば、抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体は、様々な癌の治療に有用である。一態様において、本開示は、医薬として使用するための、詳細には、癌(例えば、結腸癌、メラノーマ、乳癌、リンパ腫、又は非小細胞肺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及びバーキットリンパ腫、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、及び膵癌)の治療又は予防において使用するための抗CD73結合分子、例えば、抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体を提供する。一部の態様において、癌は前転移性表現型を示す。一部の態様において、前転移性表現型を示す癌は、メラノーマ又は乳癌である。一部の態様において、癌は転移性癌である。一部の態様において、本明細書に開示される抗CD73結合分子は、適応抗腫瘍活性を惹起し、及び/又は転移を阻害することができる。一部の詳細な態様において、本明細書に開示される抗CD73結合分子は乳癌における転移を阻害することができる。
【0399】
本開示の方法では、本明細書の他の部分で定義するとおりの少なくとも1つの抗CD73結合分子、例えば、抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体を使用して、癌に対する好ましい治療応答が促進される。癌治療に対する「好ましい治療応答」という用語は、これらの抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体の活性に関連した疾患の改善、及び/又は疾患に関連する症状の改善を指す。従って、例えば、疾患の改善は、完全寛解として特徴付けることができる。「完全寛解」は、任意の過去の試験結果を標準化して臨床的に検出可能な疾患がないことが意図される。或いは、疾患の改善は、部分寛解として分類することができる。「好ましい治療応答」は、本明細書に開示される抗CD73結合分子の投与によって得られる癌の進行及び/又は持続時間の低減又は阻害、癌の重症度の低減又は改善、及び/又はその1つ以上の症状の改善を包含する。
【0400】
具体的な態様において、かかる用語は、本明細書に開示される抗CD73結合分子の投与後の1、2又は3つ又はそれを超える結果を指す:(1)癌細胞集団の安定化、減少又は消失;(2)癌成長の安定化又は減少;(3)癌の形成障害;(4)原発性、局所的及び/又は転移性癌の根絶、除去、又は制御;(5)死亡率の低下;(6)無病、無再発、無進行、及び/又は全生存期間又は比率の増加;(7)奏効率、応答の持続性、又は応答性又は寛解期の患者の数の増加;(8)入院率の低下、(9)入院期間の低下、(10)癌のサイズが保たれ、増加しないか、又はその増加が10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満、好ましくは2%未満である、及び(12)寛解期の患者の数の増加。
【0401】
臨床応答は、磁気共鳴画像(MRI)スキャン、X線イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリー又は蛍光活性化セルソーター(FACS)分析、組織学、肉眼的病理学、及び血液化学、例えば、限定はされないが、ELISA、RIA、クロマトグラフィーなどによって検出可能な変化など、スクリーニング技術を用いて評価することができる。これらの好ましい治療応答に加えて、抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体による療法を受けている対象は、疾患に関連する症状の改善において有益な効果を得ることができる。
【0402】
本明細書に開示される抗CD73結合分子、例えば、抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体は、任意の既知の癌療法、例えば、癌、例えば、結腸癌、メラノーマ、乳癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及びバーキットリンパ腫、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、及び膵癌)の治療に有用であることが分かっているか又はそれに対して使用されてきた若しくは現在使用中である任意の薬剤又は薬剤の組み合わせと併用することができる。医薬品併用製剤又は投与レジメンの第2の薬剤又は薬剤の組み合わせは、好ましくは本開示の抗体又はポリペプチドに対して互いに悪影響を与え合うことのないように補完的な活性を有する。
【0403】
抗癌剤には、癌性増殖などの悪性病変の治療に使用される薬物が含まれる。薬物療法は、単独で、又は手術若しくは放射線療法などの他の治療と併用して使用することができる。癌治療では、病変のある臓器の性質に応じて幾つかの薬物クラスが用いられ得る。例えば、乳癌は一般にエストロゲンによって刺激され、性ホルモンを不活性化する薬物で治療することができる。同様に、前立腺癌は男性ホルモンのアンドロゲンを不活性化する薬物で治療することができる。本開示の特定の方法で使用される抗癌剤としては、特に、抗体(例えば、IGF-1Rに結合する抗体、EGFRに結合する抗体、Her2に結合する抗体、又はcMETに結合する抗体)、IGF1Rを標的化する小分子、EGFRを標的化する小分子、Her2を標的化する小分子、代謝拮抗薬、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害薬、微小管標的化薬剤、キナーゼ阻害薬、タンパク質合成阻害薬、免疫療法剤、ホルモン療法、グルココルチコイド、アロマターゼ阻害薬、mTOR阻害薬、化学療法剤、プロテインキナーゼB阻害薬、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害薬、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害薬、RLr9、CD289、酵素阻害薬、抗TRAIL、MEK阻害薬等が挙げられる。
【0404】
具体的な態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子、例えば、抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片は、例えば、PD-1(プログラム死1タンパク質)、その2つのリガンドPD-L1(プログラム死リガンド1)及び/又はPD-L2、又はCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4タンパク質)を標的化する抗体又は抗体断片と併用して投与することができる。例えば、Stagg et al.PNAS 107:1547-1552(2010);Jin et al.Cancer Res.70(6):(2010);Allard et al.Clin.Cancer Res.19:5626(2013)(これらは全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。一部の態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブ又はその抗原結合断片である。他の態様において、抗CTLA-4抗体はトレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)又はその抗原結合断片である。一部の態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、旧ランブロリズマブ、別名MK-3475)又はその抗原結合断片である。一部の態様において、抗PD-1抗体はニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538、OPDIVA(登録商標))又はその抗原結合断片である。一部の態様において、抗PD-L1抗体はBMS-936559又はその抗原結合断片である。他の態様において、抗PD-L1抗体はMPDL3280Aである。他の態様において、抗PD-1抗体はAMP-224(抗PD-1 Fc融合タンパク質)又はその抗原結合断片である。様々な態様において、抗PD-L1抗体はMEDI4736又はその抗原結合断片である。
【0405】
一部の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、抗PD-1又は抗PD-1抗体と併用して投与することができる。様々な実施形態において、抗CD73抗体は、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約16mg/kg、約17mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kg、又は約20mg/kgの濃度で投与される。一部の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体と併用して投与することができ、ここで抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体は、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約16mg/kg、約17mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kg、又は約20mg/kgの濃度で投与される。一部の態様において、抗CD73抗体と抗PD-1抗体、抗PD-L1、又は抗CTLA4とは約1:1、1:2、1:3又は1:4の比で投与される。一部の態様において、抗CD73抗体と抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体とは約1:2の比で投与される。具体的な態様において、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)の濃度は約10mg/kgであり、抗PD-1抗体の濃度は約20mg/kgである。一部の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、抗PD-1抗体と併用して投与することができる。一部の態様において、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体と併用した本明細書に開示されるCD73結合分子(例えば、MEDI9447、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)を含む併用治療の投与は、未治療の対象又は単剤療法(例えば、抗CD73抗体を伴わない抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体)で治療した対象と比較して生存を約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%増加させることができる。一部の態様において、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体と併用した本明細書に開示されるCD73結合分子(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)を含む併用治療の投与は、未治療の対象又は単剤療法(例えば、抗CD73抗体を伴わない抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体)で治療した対象と比較して生存を約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍増加させる。
【0406】
併用療法が、別の治療剤(例えば、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体)の投与と併用した抗CD73結合分子の投与を含む場合、本明細書に開示される方法は、別個の製剤又は単一の医薬製剤、及びいずれかの順序の連続投与を用いた共投与を包含する。一部の態様において、本明細書に記載される抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は他の薬物と併用して投与され、ここで抗体又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体と治療剤とは、いずれかの順序で逐次的に投与するか、又は同時に(即ち、同時に又は同じタイムフレーム内で)投与することができる。
【0407】
併用療法は「相乗作用」を提供することができ、「相乗的」である、即ち、活性成分を併せて使用したときに達成される効果が、それらの化合物を個別に使用して得られる効果の総和より高いことが判明し得る。相乗効果は、活性成分が(1)共製剤化されて投与されるか、又は組み合わせた単位投薬量製剤で同時に送達されるとき;(2)別個の製剤として交互に又は並行して送達されるとき;又は(3)他の何らかのレジメンによるとき、達成され得る。交互投与療法で送達される場合、相乗効果は、化合物が例えば別個のシリンジでの異なる注射によって逐次的に投与又は送達されるときに達成され得る。一般に、交互投与療法に際して、各活性成分の有効な投薬量は逐次的に、即ち連続的に投与され、一方併用療法では、2つ以上の活性成分の有効な投薬量は一緒に投与される。
【0408】
他の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、チロシンキナーゼ阻害薬と併用して投与することができる。他の何らかの具体的な態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子は、EGFR及び/又はHER2/neuに関連するチロシンキナーゼ活性の阻害薬、例えばラパチニブと併用して投与することができる。一部の態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子は、抗有糸分裂剤と併用して投与することができる。一部の具体的な態様において、本明細書に開示されるCD73結合分子は、紡錘体微小管集合を安定化させる薬剤、例えばパクリタキセル又はドセタキセルと併用して投与することができる。更なる態様は、臨床試験手順の一部としての組織中タンパク質レベルの診断的モニタリングに対する抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)の使用であり、それにより例えば、所与の治療レジメンの有効性が決定される。例えば、抗体を検出可能物質とカップリングすることにより、検出を促進し得る。
【0409】
検出可能物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、及び放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;好適な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられ;及び好適な放射性物質の例としては、125I、131I、35S、又は3Hが挙げられる。
【0410】
VIII.抗CD73抗体治療的併用及び共療法
本開示は、抗CD73結合分子、例えば、抗体、例えばその抗原結合断片、変異体、及び誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)を含む治療的併用を用いて、癌(結腸癌、メラノーマ、乳癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、及び膵癌を含む)を有する患者を治療することに関する方法を提供する。
【0411】
以下の考察では、本開示のCD73結合分子(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)を特徴とする治療的併用を参照するが、本明細書に記載される方法はまた、任意の他の抗CD73抗体、及び本明細書に開示される抗CD73抗体の所望の特性を保持している、例えば、CD73に特異的に結合してその5’-ヌクレオチダーゼ活性を中和する能力を有するこれらの抗CD73抗体の抗原結合断片、変異体、及び誘導体(例えば、融合タンパク質又はコンジュゲート)にも適用可能である。一部の態様において、CD73結合分子は、ヒトADCCを媒介しないヒト又はヒト化抗体であるか、又はADCCを媒介しないように改変された抗CD73抗体である。
【0412】
抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体、又はその抗原結合断片と併用した抗CD73抗体、又はその抗原結合断片など、本発明の併用を用いた固形腫瘍患者の治療は、相加効果又は相乗効果をもたらし得る。本明細書で使用されるとき、用語「相乗的」とは、単剤療法の相加効果より有効性が高い療法の併用(例えば、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447)と抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体との併用を指す。
【0413】
療法の併用(例えば、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447)と抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体との併用の相乗効果により、固形腫瘍患者に対して治療剤の1つ以上のより低い投薬量及び/又は前記治療剤のより少ない投与頻度を用いることが可能になる。治療剤のより低い投薬量を利用すること及び/又は前記療法をより少ない頻度で投与することが可能であるため、固形腫瘍の治療における前記療法の有効性は低下することなく、対象に対する前記療法の投与に伴う毒性が低下する。加えて、相乗効果によって、固形腫瘍の管理、治療、又は改善における治療剤の有効性が高まり得る。治療剤の併用の相乗効果は、いずれかの単剤療法の使用に伴う有害な又は望ましくない副作用を回避又は低減し得る。
【0414】
共療法では、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447)又はその抗原結合断片と、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体、又はその抗原結合断片との組み合わせは、任意選択で同じ医薬組成物に含めることができ、又は別個の医薬組成物に含めてもよい。この後者の例では、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447)又はその抗原結合断片を含む医薬組成物は、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体、又はその抗原結合断片を含む医薬組成物の投与の前、それと同時、又はその後の投与に好適である。場合によっては、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447)又はその抗原結合断片と、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体とは別個の組成物で重なる時間に投与される。
【0415】
抗CD73抗体(例えば、MEDI9447)又はその抗原結合断片と、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4抗体、又はその抗原結合断片とは、患者になおも利益を提供しつつ、1回のみ又は低頻度で投与することができる。更なる態様において、患者は追加的なフォローオン用量を投与される。フォローオン用量は、患者の年齢、体重、臨床的評価、腫瘍量、及び/又は主治医の判断を含めた他の要因に応じて様々な時間間隔で投与され得る。
【0416】
本明細書に提供される方法は、腫瘍成長を低減し、又は遅延させることができる。一部の態様において、この低下又は遅延は統計学的に有意であり得る。腫瘍成長の低下は、ベースライン時の患者の腫瘍の成長との比較、予想腫瘍成長に対する比較、大規模患者集団に基づく予想腫瘍成長に対する比較、又は対照集団の腫瘍成長に対する比較によって計測し得る。他の実施形態において、本発明の方法は生存を増加させる。
【0417】
IX.抗PD-L1抗体
PD-L1に特異的に結合してその活性(例えば、PD-1及び/又はCD80との結合)を阻害する抗体は、腫瘍の治療に有用である。PD-L1としても知られるB7-H1は、約53kDaサイズのI型膜貫通タンパク質である。ヒトでは、B7-H1は幾つもの免疫細胞型、例えば活性化及びアネルギー/枯渇T細胞、ナイーブ及び活性化B細胞、並びに骨髄樹状細胞(DC)、単球及びマスト細胞で発現する。B7-H1はまた、膵島、肝クッパー細胞、血管内皮及び特定の上皮、例えば気道上皮及び腎尿細管上皮を含めた非免疫細胞でも発現し、その発現は炎症エピソードの間に増強される。B7-H1発現はまた、限定はされないが、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、肺癌、腎細胞癌を含めた腎癌、胃癌、膀胱癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、肝細胞癌(HCC)、及び膵癌、並びにメラノーマを含め、幾つもの腫瘍に高いレベルで見られる。
【0418】
B7-H1は、2つの代替的なリガンドに結合することが知られており、その1つ目、PD-1は、当初は活性化誘導性アポトーシスを起こすT細胞株で同定された50~55kDaのI型膜貫通受容体である。PD-1は、活性化T細胞、B細胞、及び単球、並びに他の免疫系細胞に発現し、B7-H1(PD-L1)及び関連するB7-DC(PD-L2)の両方に結合する。2つ目はB7ファミリーメンバーB7-1であり、これは活性化T細胞、B細胞、単球及び抗原提示細胞に発現する。
【0419】
PD-1/B7-H1軸を介したシグナル伝達は、T細胞応答を負に調節することによって免疫系内で重要な必須の機能を果たすと考えられている。腫瘍細胞上のB7-H1発現は、腫瘍が免疫系による検出及び排除を回避するのを助けると考えられている。この点で、B7-H1は、腫瘍浸潤性Tリンパ球の枯渇及びアネルギーの駆動、腫瘍微小環境への免疫抑制性サイトカインの分泌の刺激、抑制性調節性T細胞機能の刺激、及び腫瘍細胞特異的細胞傷害性T細胞による溶解からのB7-H1発現腫瘍細胞の保護を含め、幾つかの代替的な機構を通じて機能する。
【0420】
MEDI4736は、B7-H1に選択的な、且つPD-1及びCD80受容体に対するB7-H1の結合を遮断する例示的抗PD-L1抗体である。MEDI4736は、インビトロでヒトT細胞活性化のB7-H1媒介抑制を軽減することができ、異種移植モデルでT細胞依存性機構を介して腫瘍成長を阻害する。使用し得る他の薬剤としては、PD-L1及び/又はPD-1を阻害する薬剤(ABなど)が挙げられる。
【0421】
本明細書に提供される方法で使用されるMEDI4736(又はその断片)に関する情報は、米国特許出願公開第20130034559号明細書/米国特許第8779108号明細書及び米国特許出願公開第20140356353号明細書(これらの各々の開示は全体として参照により本明細書に援用される)を参照することができる。MEDI4736の結晶化可能断片(Fc)ドメインは、IgG1重鎖の定常ドメインに、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の媒介に関与する補体成分C1q及びFcγ受容体との結合を低下させる三重突然変異を含む。
【0422】
本明細書に提供される方法で使用されるMEDI4736及びその抗原結合断片は、重鎖及び軽鎖又は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。ある具体的な態様において、本明細書に提供される方法で使用されるMEDI4736又はその抗原結合断片は、配列番号130のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号131のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。ある具体的な態様において、本明細書に提供される方法で使用されるMEDI4736又はその抗原結合断片は重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、ここで重鎖可変領域は配列番号132~134のKabat定義によるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、且つ軽鎖可変領域は、配列番号135~137のKabat定義によるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。当業者であれば、Chothia定義、Abm定義又は当業者に公知の他のCDR定義を容易に特定することができるであろう。ある具体的な態様において、本明細書に提供される方法で使用されるMEDI4736又はその抗原結合断片は、米国特許出願公開第20130034559号明細書/米国特許第8779108号明細書及び米国特許出願公開第20140356353号明細書(これらの各々の開示は全体として参照により本明細書に援用される)に開示されるとおりの2.14H9OPT抗体の可変重鎖及び可変軽鎖CDR配列を含む。
【0423】
X.抗CTLA4抗体
従って、一実施形態において、本発明の治療的併用はCTLA4遮断抗体(例えばトレメリムマブ)及び/又はPD1/PD-L1相互作用を低下させる抗体を含む。これまでに大きな注目を集めている2つのT細胞調節経路は、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4、CD152)及びプログラム死リガンド1(PD-L1、別名B7H-1又はCD274)を介してシグナルを伝達する。
【0424】
CTLA4は活性化T細胞上に発現し、CD28媒介性T細胞活性化後にT細胞応答を抑える共阻害薬としての役割を果たす。CTLA4は、TCR会合後のナイーブ及びメモリーT細胞の初期活性化の振幅を調節し、抗腫瘍免疫及び自己免疫の両方に影響を及ぼす中心的阻害経路の一部であると考えられている。CTLA4は主にT細胞上に発現し、そのリガンドCD80(B71)及びCD86(B7.2)の発現は概して抗原提示細胞、T細胞、及び他の免疫媒介細胞に限定されている。CTLA4シグナル伝達経路を遮断するアンタゴニスト抗CTLA4抗体は、T細胞活性化を増強することが報告されている。1つのかかる抗体、イピリムマブは、2011年にFDAによって転移性メラノーマの治療用に承認された。もう1つの抗CTLA4抗体、トレメリムマブは、第III相試験で進行性メラノーマの治療が調査されたが、その時点では標準治療(テモゾロミド又はダカルバジン)と比較して患者の全生存に有意な増加はなかった。
【0425】
本明細書に提供される方法で使用されるトレメリムマブ(又はその抗原結合断片)に関する情報は、米国特許第6,682,736号明細書(この中では11.2.1と称される)(この開示は全体として参照により本明細書に援用される)を参照することができる。トレメリムマブ(CP-675,206、CP-675、CP-675206、及びチシリムマブとしても知られる)は、CTLA4に高度に選択的な、且つCD80(B7.1)及びCD86(B7.2)に対するCTLA4の結合を遮断するヒトIgG2モノクローナル抗体である。トレメリムマブはインビトロで免疫活性化をもたらすことが示されており、トレメリムマブで治療された一部の患者は腫瘍退縮を示している。
【0426】
本明細書に提供される方法で使用されるトレメリムマブは、重鎖及び軽鎖又は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。ある具体的な態様において、本明細書に提供される方法で使用されるトレメリムマブ又はその抗原結合断片は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含む。ある具体的な態様において、本明細書に提供される方法で使用されるトレメリムマブ又はその抗原結合断片は、本明細書に特定される重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。当業者であれば、Chothia定義、Abm定義又は当業者に公知の他のCDR定義を容易に特定することができるであろう。ある具体的な態様において、本明細書に提供される方法で使用されるトレメリムマブ又はその抗原結合断片は、米国特許第6,682,736号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に開示されるとおりの11.2.1抗体の可変重鎖及び可変軽鎖CDR配列を含む。
【0427】
XI.VII.医薬組成物及び投与方法
抗CD73結合分子、例えば、抗体、又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)を調製し、それを必要としている対象に投与する方法は当業者に周知であり、又は当業者によって容易に決定される。抗CD73結合分子、例えば、抗体、又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体の投与経路は、例えば、経口、非経口、吸入によるか又は局所であり得る。本明細書で使用されるとおりの用語の非経口には、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸、又は腟内投与が含まれる。しかしながら、本明細書の教示と適合する他の方法では、本開示の抗CD73結合分子、例えば、抗体、又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体を有害細胞集団の部位に直接送達して、それにより治療剤に対する罹患組織の曝露を増加させることができる。
【0428】
本明細書で考察するとおり、本開示の抗CD73結合分子、例えば、抗体、又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、ある種の癌など、CD73発現細胞が媒介する疾患のインビボ治療に薬学的に有効な量で投与することができる。
【0429】
抗PD-1、抗PD-L1、及び/又は抗CTLA4抗体、又はその抗原結合断片と併用した抗CD73結合分子、例えば、抗体、又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)を含む治療的併用を調製し、それを必要としている対象に投与する方法は当業者に周知であり、又は当業者によって容易に決定される。これらの併用の投与経路は、例えば、経口、非経口、吸入によるか又は局所であり得る。本明細書で使用されるとおりの用語の非経口には、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸、又は腟内投与が含まれる。しかしながら、本明細書の教示と適合する他の方法では、本開示の併用を有害細胞集団の部位に直接送達して、それにより治療剤に対する罹患組織の曝露を増加させることができる。本明細書で考察するとおり、抗CD73抗体(例えば、MEDI9447)と抗PD-1、抗PD-L1、及び/又は抗CTLA4抗体との併用は、ある種の癌など、CD73発現細胞が媒介する疾患のインビボ治療に薬学的に有効な量で投与することができる。
【0430】
本開示で使用される医薬組成物は、例えば、水、イオン交換体、タンパク質、緩衝物質、及び塩を含め、薬学的に許容可能な担体を含み得る。保存剤及び他の添加剤も存在し得る。担体は溶媒又は分散媒であってもよい。本明細書に開示される治療法における使用に好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.)16th ed.(1980)に記載されている。
【0431】
いずれの場合にも、本発明の治療的併用、所要量の活性化合物を(例えば、抗CD73抗体、又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体、例えばクローン10.3抗体又はクローン2C5抗体を、単独で、又は他の活性薬剤との併用で)適切な溶媒中に配合し、続いて滅菌ろ過することにより、滅菌注射用溶液を調製することができる。更に、このような調製物を包装し、キットの形態で販売することができる。かかる製品は、関連する組成物が、疾患又は障害に罹患しているか又はそれに罹り易い対象の治療に有用であることを示すラベル又は添付文書を有し得る。
【0432】
非経口製剤は単回ボーラス投与、注入又は負荷ボーラス投与であってもよく、その後に維持投与が続く。これらの組成物は、特定の一定の間隔又は変動的な間隔で、例えば、1日1回、又は「必要に応じて」投与され得る。
【0433】
本組成物は、単回投与、複数回投与として、又は注入における定められた期間にわたって投与され得る。投薬量レジメンも最適な所望の反応(例えば、治療的又は予防的反応)が得られるように調整され得る。
【0434】
CD73発現細胞が媒介する疾患、例えば、結腸癌、メラノーマ、乳癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及びバーキットリンパ腫、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、及び膵癌を含め、ある種の癌などの治療に対する本開示の組成物の治療有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトか、それとも動物か、投与されている他の薬物療法、及び処置が予防的か、それとも治療的かを含め、多くの異なる要因に応じて変わる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含めた非ヒト哺乳動物も治療し得る。治療投薬量は、当業者に公知のルーチンの方法を用いて、安全性及び有効性が最適となるように滴定することができる。
【0435】
本発明の少なくとも1つの抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその結合断片、変異体、若しくは誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又は治療的併用の投与量は、本開示の開示を所与とすれば、当業者によって過度の実験を行うことなく容易に決定される。投与方法、及び本発明の少なくとも1つの抗CD73結合分子、例えば、抗体、その抗原結合断片、変異体又は誘導体、又は治療的併用のそれぞれの量に影響を及ぼす要因としては、限定はされないが、疾患の重症度、病歴、並びに治療を受ける個体の年齢、身長、体重、健康、及び理学的状態が挙げられる。同様に、本発明の抗CD73結合分子、例えば、抗体、又はその断片、変異体、若しくは誘導体、又は治療的併用の投与量は、投与方法、及び対象がこの薬剤の単回投与を受けるか、それとも複数回投与を受けるかに依存することになる。
【0436】
本開示はまた、例えば、結腸癌、メラノーマ、乳癌、リンパ腫、非小細胞肺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及びバーキットリンパ腫、卵巣癌、乳癌、頭頸部癌、及び膵癌を含めた、ある種の癌の治療用医薬の製造における、本発明の抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)、又は治療的併用の使用も提供する。
【0437】
本開示はまた、ある種の癌を治療するための対象の治療用医薬の製造における、抗CD73結合分子、例えば、抗体、又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)の使用も提供する。特定の態様において、この医薬は、少なくとも1つの他の療法で前治療されている対象において使用される。
【0438】
「前治療された」又は「前治療」とは、対象が抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)を含む医薬を投与される前に、1つ以上の他の療法を受けている(例えば、少なくとも1つの他の抗癌療法で治療されている)ことが意図される。対象が先行する1つ又は複数の療法による前治療に対するレスポンダーであった必要はない。従って、抗CD73結合分子、例えば、抗体又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体を含む医薬を投与される対象は、先行の療法、又は前治療が複数の療法を含んだ場合に先行の療法のうちの1つ以上による前治療に応答した可能性もあり、又は応答しなかった可能性もある。
【0439】
本開示はまた、抗CD73結合分子、例えば、抗体、又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)と少なくとも1つの他の療法との共投与も提供する。抗CD73抗体と少なくとも1つの他の療法とは、単一の組成物で一緒に共投与することができ、又は別個の組成物で同時に若しくは重なり合う時間に一緒に共投与することができる。一部の態様において、抗CD73抗体は、例えば、PD-1(プログラム死1タンパク質)を標的化する抗体と共投与することができる。本開示はまた、癌を治療するための対象の治療用医薬の製造における、抗CD73結合分子、例えば、抗体、又はその抗原結合断片、変異体、若しくは誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)の使用も提供し、ここで抗CD73結合分子は、対象が少なくとも1つの他の療法で治療される前に投与される。
【0440】
VIII.診断
本開示は、特定の種類の癌など、CD73発現細胞が媒介する疾患の診断において有用な診断方法を更に提供し、これは、個体からの組織若しくは他の細胞又は体液中のCD73タンパク質の発現レベルを計測すること、及び計測した発現レベルを正常組織又は体液中の標準CD73発現レベルと比較することを含み、ここで標準と比較した発現レベルの増加が、障害の指標となる。
【0441】
本明細書に開示される抗CD73抗体並びにその抗原結合断片、変異体、及び誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、当業者に公知の古典的な免疫組織学的方法を用いた生物学的試料中のCD73タンパク質レベルのアッセイに使用することができる(例えば、Jalkanen,et al.,J.Cell.Biol.101:976-985(1985);Jalkanen et al.,J.Cell Biol.105:3087-3096(1987)を参照)。CD73タンパク質発現の検出に有用な他の抗体ベースの方法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、又はウエスタンブロッティングなどのイムノアッセイが挙げられる。好適なアッセイは、本明細書の他の部分に更に詳細に記載される。
【0442】
「CD73ポリペプチドの発現レベルをアッセイする」とは、第1の生物学的試料中のCD73ポリペプチドのレベルを直接(例えば、絶対タンパク質レベルを決定又は推定することによる)、或いは相対的に(例えば、第2の生物学的試料中の疾患関連ポリペプチドレベルと比較することによる)、定性的又は定量的に計測又は推定することが意図される。第1の生物学的試料中のCD73ポリペプチド発現レベルを計測又は推定して標準CD73ポリペプチドレベルと比較することができ、この標準は、障害を有しない個体から得た第2の生物学的試料から取られるか、又は障害を有しない個体集団のレベルを平均することにより決定される。当該技術分野では理解されるであろうとおり、一度「標準」CD73ポリペプチドレベルが分かれば、それを比較の標準として繰り返し使用することができる。
【0443】
「生物学的試料」とは、潜在的にCD73を発現する個体、細胞株、組織培養物、又は他の細胞供給源から得られる任意の生物学的試料が意図される。哺乳動物から組織生検及び体液を得る方法は、当該技術分野において周知である。
【0444】
IX.CD73結合分子を含むキット
本開示はまた、本明細書に記載される方法の実施に使用し得る、本明細書に記載されるCD73結合分子、例えば、抗CD73抗体又はその抗原結合断片、本明細書に開示される分子の変異体、又は誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)のうちの少なくとも1つを含むキットも提供する。特定の態様において、キットは、1つ以上の容器に少なくとも1つの精製抗CD73抗体又はその抗原結合断片を含む。一部の態様において、キットは、全ての対照、アッセイの実施についての指図、並びに結果の分析及び発表に必要な任意のソフトウェアを含め、検出アッセイの実施に必要及び/又は十分な全ての構成要素を含む。当業者は、開示されるCD73結合分子、例えば、本開示の抗CD73抗体又はその抗原結合断片(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)を、当該技術分野において周知の確立されたキットフォーマットの1つに容易に組み込み得ることを容易に認識するであろう。
【0445】
X.イムノアッセイ
本明細書に開示される抗CD73結合分子、例えば、抗CD73抗体又はその抗原結合断片、本明細書に開示される分子の変異体、又は誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、当該技術分野において公知の任意の方法によって免疫特異的結合に関してアッセイすることができる。使用することのできるイムノアッセイとしては、限定はされないが、いくつか例を挙げれば、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの技法を用いる競合及び非競合アッセイシステムが挙げられる。かかるアッセイは常法であり、当該技術分野において周知である(例えば、Ausubel et al.,eds,(1994)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley&Sons,Inc.,NY) Vol.1(参照により全体として本明細書に援用される)を参照)。
【0446】
CD73結合分子、例えば、抗CD73抗体又はその抗原結合断片、及びそれらの変異体又は誘導体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)は、免疫蛍光法、免疫電子顕微鏡法又は非免疫学的アッセイのように、CD73又はその保存された変異体若しくはペプチド断片のインサイチュー検出に組織学的に用いることができる。インサイチュー検出は、患者から組織標本を採取し、且つ好ましくは標識CD73結合分子(例えば、及び抗体又は断片)を生物学的試料の上に重ねることによって適用して、標識CD73結合分子、例えば、抗CD73抗体又はその抗原結合断片、その変異体、又は誘導体をその標本に適用することによって達成し得る。かかる手順を用いることにより、CD73、又は保存された変異体若しくはペプチド断片の存在のみならず、被験組織におけるその分布も決定することが可能である。本開示を用いることにより、当業者は、かかるインサイチュー検出を実現するため、多種多様な組織学的方法の任意のもの(染色手順など)を変更し得ることを容易に理解するであろう。
【0447】
CD73結合分子、例えば、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片、その変異体、又は誘導体の所与のロットの結合活性は、周知の方法により決定することができる。当業者は、ルーチンの実験を用いて各決定に有効且つ最適なアッセイ条件を決定することができるであろう。
【0448】
単離CD73結合分子、例えば、抗CD73抗体(例えば、クローン10.3抗体又はクローン2C5抗体)又はその抗原結合断片、その変異体、又は改変/突然変異誘導体の結合特性の決定に好適な方法及び試薬は、当該技術分野において公知であり、及び/又は市販されている。かかる反応速度論的分析用に設計された機器及びソフトウェアは市販されている(例えば、BIAcore、BIAevaluationソフトウェア、GE Healthcare;KinExaソフトウェア、Sapidyne Instruments)。
【0449】
本開示の実施には、特に指示されない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術が用いられ、それらは当該技術分野の技術の範囲内にある。かかる技法は、文献に十全に説明されている。例えば、Sambrook et al.,ed.(1989)Molecular Cloning A Laboratory Manual(2nd ed.;Cold Spring Harbor Laboratory Press);Sambrook et al.,ed.(1992)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(Cold Springs Harbor Laboratory,NY);D.N.Glover ed.,(1985)DNA Cloning,Volumes I and II;Gait,ed.(1984)Oligonucleotide Synthesis;Mullis et al.米国特許第4,683,195号明細書;Hames and Higgins,eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins,eds.(1984)Transcription And Translation;Freshney(1987)Culture Of Animal Cells(Alan R.Liss,Inc.);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press)(1986);Perbal(1984)A Practical Guide To Molecular Cloning;the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Miller and Calos eds.(1987)Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,(Cold Spring Harbor Laboratory);Wu et al.,eds.,Methods In Enzymology,Vols.154 and 155;Mayer and Walker,eds.(1987)Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Academic Press,London);Weir and Blackwell,eds.,(1986)Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV;Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986);及びAusubel et al.(1989)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,Baltimore,Md.)を参照のこと。
【0450】
抗体工学の一般原理は、Borrebaeck,ed.(1995)Antibody Engineering(2nd ed.;Oxford Univ.Press)に記載される。タンパク質工学の一般原理は、Rickwood et al.,eds.(1995)Protein Engineering,A Practical Approach(IRL Press at Oxford Univ.Press,Oxford,Eng.)に記載される。抗体及び抗体-ハプテン結合の一般原理は、Nisonoff(1984)Molecular Immunology(2nd ed.;Sinauer Associates,Sunderland,Mass.);及びSteward(1984)Antibodies,Their Structure and Function(Chapman and Hall,New York,N.Y.)に記載される。加えて、当該技術分野において公知の、具体的には記載されない免疫学の標準方法が、Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,New York;Stites et al.,eds.(1994)Basic and Clinical Immunology(8th ed;Appleton&Lange,Norwalk,Conn.)及びMishell and Shiigi(eds)(1980)Selected Methods in Cellular Immunology(W.H.Freeman and Co.,NY)にあるとおり、一般に用いられる。
【0451】
免疫学の一般原理について記載する標準的な参考文献としては、Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,New York;Klein(1982)J.,Immunology:The Science of Self-Nonself Discrimination(John Wiley&Sons,NY);Kennett et al.,eds.(1980)Monoclonal Antibodies,Hybridoma:A New Dimension in Biological Analyses(Plenum Press,NY);Campbell(1984)“Monoclonal Antibody Technology” in Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,ed.Burden et al.,(Elsevere,Amsterdam);Goldsby et al.,eds.(2000)Kuby Immunnology(4th ed.;H.Freemand&Co.);Roitt et al.(2001)Immunology(6th ed.;London:Mosby);Abbas et al.(2005)Cellular and Molecular Immunology(5th ed.;Elsevier Health Sciences Division);Kontermann and Dubel(2001)Antibody Engineering(Springer Verlan);Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press);Lewin(2003)Genes VIII(Prentice Hall2003);Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press);Dieffenbach and Dveksler(2003)PCR Primer(Cold Spring Harbor Press)が挙げられる。
【0452】
上記に引用する参考文献の全て、並びに本明細書に引用する全ての参考文献は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0453】
以下の例は、限定としてではなく、例示として提供される。
【実施例0454】
本開示の態様は、以下の非限定的な例を参照することによって更に定義され得る。これらの例は、本開示の特定の抗体の調製及び本開示の抗体の使用方法を詳細に記載するものである。当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく材料及び方法の両方に対して多くの変更を行い得ることが明らかであろう。
【0455】
エクト-5’-ヌクレオチダーゼ(NT5E)としても知られるCD73(分化クラスター73)は、腫瘍細胞並びに正常な間質細胞、例えば内皮細胞及びある種の白血球に見られる膜貫通受容体である。CD73はアデノシン一リン酸からアデノシン及び有機リン酸に触媒する。アデノシン受容体の細胞外部分の結合により、サイクリックAMPを通じてシグナルが送られ、T細胞受容体活性化が阻害される(Linden and Cekic,2012によってレビューされている)。CD73は、調節性B及びTリンパ球の阻害機能の媒介(Saze et al,2013)、並びに内皮完全性の維持(Jalkanen and Salmi,2008によってレビューされている)において役割を果たすと考えられている。
【0456】
正常な生物学におけるその役割に加えて、CD73及びアデノシンは腫瘍生物学に影響を与える。腫瘍微小環境中の細胞外アデノシンの存在は、免疫抑制性の「ハロー」として記載されている(Antonioli et al,2013)。アデノシンのこの役割と一致して、アデノシン受容体が欠損したノックアウトマウスは、正常マウスと比べてより容易に腫瘍を拒絶することが示されている(Ohta et al,2006)。腫瘍中の細胞外アデノシンの主な供給源はCD73であると考えられている(Augusto et al,2013)。この仮説並びにA2A欠損マウスを用いた研究と一致して、CD73が欠損したノックアウトマウスでは抗腫瘍免疫が増加しており(Stagg et al,2011)、正常マウスと比較したとき発癌の低下を示す(Stagg et al,2012)。具体的には、細胞外アデノシンは、特に調節性T細胞及び骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)の両方の免疫抑制効果を媒介すると考えられている(Antonioli et al,2013によってレビューされている)。小分子又は抗体によるCD73の分子阻害が腫瘍形成、成長、及び転移を阻害し得ることを示す他の研究(Young et al,2014によってレビューされている)を併せて考えると、腫瘍がCD73を使用してアデノシンを生成し、それにより抗腫瘍免疫を抑制することが仮定される。従って、CD73に選択的に結合してそのエクトヌクレオチダーゼ活性を阻害する抗CD73抗体は、抗腫瘍免疫応答の増強に有用である可能性が高い。
【0457】
実施例1:抗CD73抗体の単離及び同定
ヒトscFvファージディスプレイライブラリをビオチン化CD73細胞外ドメイン(ECD)でパニングして、ヒト、カニクイザル、及びマウスCD73に結合する抗体を単離した。リード抗体、CD730010は、ヒト、マウス、及びカニクイザルCD73発現細胞に特異的に結合すること(フローサイトメトリーによる)、及び組換え可溶性CD73 ECD並びに細胞上に提示された天然CD73の活性を阻害することが示された。ヒトCD73に対するCD730010の結合親和性を増強するためCD730010の親和性成熟を開始した。
【0458】
親和性最適化の前に、親和性を損なうことなくCD730010のできるだけ多くのフレームワーク残基を最も近縁のヒト生殖系列配列(IMGTレパートリーに基づく)に復帰させることを試みた。これは、ヒトにおける最終的な抗体薬の潜在的な免疫原性を最小限に抑えるため行った。VLドメインの全てのフレームワーク残基及びVHドメインの1つを除いた全てのフレームワーク残基を、ヒト生殖細胞系列IGLV1-44、IGLJ3、IGHV3-23、及びIGHJ2のアミノ配列に一致するように復帰させることができた。CD730010のVHドメインの94位(Kabat付番;Kabat,1991)にあるリジンは、親和性の損失なしに復帰させることができなかった。
【0459】
生殖細胞系列化したCD730010抗体の親和性及び効力を、CDR変異体のライブラリを作成し且つそれらの変異体をCD73との結合性の向上に関して試験することによって最適化した。親和性の向上が最良であった幾つかの突然変異を組み合わせて、候補薬物MEDI9447を作成した。MEDI9447のヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を
図1A~
図1Dに示す。
【0460】
本質的にLloyd et al.,PEDS 22:159-68(2009)に以前記載されたとおり哺乳類細胞からインハウスで作製したビオチン化ヒト及びマウスCD73細胞外ドメイン(ECD)に対する一連の反復的な交互選択サイクルで、ヒトscFvファージディスプレイライブラリからCD73特異的scFv抗体を単離した。選択アウトプットのラウンド2及び3からのScFv遺伝子を、バッチで細菌性scFv-Fc又はFab発現ベクターに変換した。可溶性scFv-Fc又はFabを有する細菌培養上清を、ヒト、マウス、及びカニクイザルCD73 ECDとのそれらの結合性に関してELISA又は均一時間分解蛍光(HTRF)によってスクリーニングした。交差反応性を示す上位のヒットを選択し、DNAシーケンシングに供し、全免疫グロブリンG1三重突然変異体抗体フォーマット(「IgG-TM」、突然変異L234F、L235E及びP331Sを組み込むIgG1 Fc配列)に変換した。IgG1 TM抗体を哺乳類細胞で発現させて、アフィニティークロマトグラフィーによって精製し、結合及び機能アッセイでのそれらの特性に基づきランク付けした。
【0461】
実施例2:抗CD73抗体のエピトープビニング
抗CD73抗体がヒトCD73 ECDとの結合に関して互いに競合する能力を、本質的に記載されるとおり(Abdiche YN et al.,Anal Biochem 386:172-80(2009)、Octet機器で評価した。CD73 ECDタンパク質及び第1の抗CD73抗体をプレインキュベートし、ストレプトアビジンセンサに捕捉されたビオチン化第2抗CD73抗体に添加した。第1の抗CD73抗体がCD73 ECDと第2の抗CD73抗体との結合を遮断した場合、両方の抗体を同じ又は重複するエピトープビンに入れた。両方の抗体がCD73 ECDに同時に結合し得た場合、それらを重複しないエピトープビンに入れた。抗CD73抗体のペアワイズ試験から、それらが3つの重複しないエピトープビンに属することが実証された(表2)。
【0462】
【0463】
実施例3:CD73に対する抗CD73抗体の結合
抗CD73抗体の結合親和性及び特異性を表面プラズモン共鳴(SPR)及びフローサイトメトリーによって決定した。
【0464】
ProteOn XPR36機器を使用して、ヒト、マウス、及びカニクイザルCD73 ECDに対するMEDI9447の結合を特徴付けた。抗ヒトFc抗体を使用してMEDI9447の親和性捕捉を行った。CD73 ECDは移動相にあった。MEDI9447に対するCD73の会合及び解離はラングミュアの1:1モデルで正確に記述することができた。表3に示す結果は、これらの3つの種のCD73 ECDに対するMEDI9447の親和性が同程度であり、低ピコモル範囲にあることを実証している。
【0465】
【0466】
ヒト、マウス、及びカニクイザル細胞株上に発現した天然CD73に対するMEDI9447の結合をフローサイトメトリーによって特徴付けた。細胞を様々な濃度のMEDI9447とインキュベートし、フルオロフォア標識抗ヒトFc抗体で抗体結合をモニタした。MEDI9447濃度の関数としての蛍光強度中央値のプロットをワンサイト結合等温線モデルを使用して非線形フィッティングして、平衡解離定数を計算した。フローサイトメトリーによる分析から、ヒト、マウス、及びカニクイザルCD73に対するMEDI9447の同程度の親和性での結合が確認され(表4)、但しKD値はSPRによって決定されるKD値よりも13~126倍高く、これは恐らくは、組換えCD73と天然CD73との間のコンホメーションの違いによるものと思われる。
【0467】
【0468】
ヒトCD73に対するMEDI9447の特異性をフローサイトメトリーによって決定するため、細胞株を作成した。胸水に由来するヒト乳癌細胞であるMDA-MB-231細胞にヒトCD73低分子ヘアピンRNA(shRNA)をトランスフェクトしてCD73の細胞表面発現をノックダウンした。バーキットリンパ腫細胞に由来するT細胞株であるジャーカット細胞に、ヒトCD73 mRNAを発現するプラスミドをトランスフェクトして、CD73の細胞表面発現をノックインした。ジャーカット細胞は内因性CD73をほとんど発現しない。
【0469】
高CD73発現細胞株(MDA-MB-231)と低発現細胞株(MDA-MB-231、CD73-shRNA)とに結合するMEDI9447の比により、ヒトCD73に対するMEDI9447の特異性を決定した。ヒトCD73に対するMEDI9447の特異性はまた、高CD73発現細胞株(ジャーカット-CD73ノックイン)と低発現細胞株ジャーカットとの比によっても決定した。
【0470】
マウスCD73(mCD73)に対するMEDI9447の特異性をフローサイトメトリーにより、マウス細胞株4T1(高mCD73発現)をノックダウン細胞株(4T1 mCD73-shRNA)と比較して決定した。加えて、マウスCD73ノックインを有するジャーカット細胞に対するMEDI9447の特異性を野生型ジャーカット細胞(マウスCD73なし)と比較した。
【0471】
【0472】
実施例4:抗CD73抗体MEDI9447によるCD73のインターナリゼーション
CD73の抗体媒介性インターナリゼーション又はシェディングをフローサイトメトリーによって評価した。MDA-MB-231細胞を成長培地中100nM MEDI9447又は陰性対照抗体R347の存在下で37℃で0~4時間インキュベートした。細胞を洗浄し、氷冷PBSに再懸濁した。10nM DyLight488標識検出抗体を添加することにより、細胞表面上のCD73の存在を検出した。細胞を15分間インキュベートし、洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。検出抗体は、MEDI9447エピトープと異なるCD73のエピトープに結合し、両方の抗体とも、妨げなしにCD73に同時に結合する。CD73の細胞表面発現は、MEDI9447と共に4時間インキュベートした後その元の値の73%に降下したことから、CD73の27%はMEDI9447結合時にインターナライズされるか、又はシェディングされるかのいずれかであったことが示唆される(エラー!参照元が見つかりません。)。
【0473】
【0474】
細胞株MDA-MB-231(ヒト乳癌)及び4T1(マウス乳癌)へのMEDI9447のインターナリゼーションを、FabZAPアッセイ(Advanced Targeting Systems、San Diego CA)として商業的に販売されているヒト抗体インターナリゼーションキットを使用して評価した。MEDI9447又は陰性対照抗体R347の段階希釈物を40nM FabZAP試薬(細胞毒性タンパク質サポリンにコンジュゲートしたポリクローナル抗ヒトIgG抗体のFab断片)とプレインキュベートし、次に細胞株に添加した。培養下で3日後、CellTiter-Gloアッセイ(Promega、Madison WI)として商業的に販売されている発光細胞生存度アッセイを用いて細胞増殖を計測した。このアッセイを用いてEC50値及び最大毒性を計算した。FabZAP試薬は、そのままでは細胞にインターナライズすることができない。これは被験抗体(例えば、MEDI9447)に結合し、被験抗体のインターナリゼーション時に限り細胞毒性となる。MEDI9447はFabZAPのインターナリゼーションを生じさせ、細胞増殖を用量依存的に阻害した。
【0475】
【0476】
被験抗体及びFabZAP試薬の段階希釈物で処理したMDA-MB-231細胞及び4T1細胞の細胞増殖をCellTiter-Gloアッセイによって計測した(
図2)。CellTiter-Gloアッセイにおける陰性対照抗体R347からのシグナルをMEDI9447のシグナルからサブトラクトし、非線形回帰分析を使用して用量反応曲線をフィッティングすることによりEC50値及び最大毒性を計算した。
【0477】
実施例5:抗CD73抗体MEDI9447による5’エクトヌクレオチダーゼ活性の阻害
この試験では、ヒト非小細胞癌細胞株NCI-H322を使用してCD73の触媒によるAMP加水分解を計測するインビトロアッセイでMEDI9447の機能活性を決定した。MEDI9447の製剤は、そのストック溶液を無血清RPMI培地に1μMの終濃度となるように希釈することによって調製した。R347の製剤は、そのストック溶液をRPMIに1μMの終濃度となるように希釈することによって調製した。
【0478】
NCI-H322細胞を1500rpmで5分間遠心した。上清を除去し、無血清RPMI培地を補充した。ViCell(Beckman、Coulter)細胞計数器を使用して細胞懸濁液をカウントした。96ウェルプレートに細胞を1ウェルにつき100μL当たり10,000細胞の細胞密度でプレーティングした。50μLの4倍濃縮AMP(200μM)を添加した。次にプレートを37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。プレートを遠心し、50μLの培養上清をウェル間で96ウェル不透明丸底プレートに移した。次に2×ATPを添加した。CellTiterGlo(登録商標)(Promega)を製造者の指示に従い添加した。5’エクトヌクレオチダーゼの細胞酵素阻害をマルチラベルリーダー、Perkin-Elmer Envisionワークステーションで計測した。試料はPrismソフトウェアを使用して分析した。
【0479】
MEDI9447は、ヒトインビトロ系でアデノシン一リン酸(AMP)の脱リン酸化を特異的に阻害した。表面発現CD73の細胞ベースのアッセイでは、アデノシン一リン酸からアデノシンへの変換がMEDI9447によって用量依存的に減少したが、無関係のアイソタイプ対照抗体によっては減少しなかった(
図3)。
図3に示す結果は、96ウェル非組織培養処理プレート(Falcon 3788)に100μLの添加剤不含RPMI培地中ウェル当たり10,000細胞でプレーティングしたCD73発現NSCLC細胞を使用して得られた。抗体はAMP(200μMの終濃度)と共にデュプリケートで添加し、プレートは37℃、5%CO
2で24時間インキュベートした。次にプレートを1500rpmで3分間遠心した。新鮮な96ウェルプレート(Costar #3605)に上清を回収し、ATPを100μMの終濃度となるように添加した。CellTiter-Glo(登録商標)試薬(Promega)を1:1で添加し、Envisionルミネセンスプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用してATPレベルを計測することにより細胞CD73酵素AMPホスホリラーゼ活性を決定した。ATP及びAMPのみを含有する緩衝液を陰性対照として使用した。アッセイを繰り返した。
図3に示す結果は、他のヒト癌細胞株を使用した2つの同様の実験の代表的なものである。
【0480】
これらの結果は、MEDI9447が癌細胞によるアデノシンの産生を阻害したことを示している。アデノシンは、腫瘍微小環境内で腫瘍の免疫抑制効果を媒介すると考えられている。
【0481】
実施例6:MEDI9447による腫瘍浸潤性骨髄系由来サプレッサー細胞の減少
0.1mLのPBS中に懸濁した5×105細胞を4~6週齢雌マウスの右側腹部に皮下(SC)注射することにより、マウス結腸癌に由来するCT26細胞を樹立した。マウスをMEDI9447又は対照抗体で治療した。
【0482】
この試験では、各群10匹のマウスを使用した。動物を群に無作為に割り付けた。群1の動物は治療せず、群2にはアイソタイプ対照を投与した。群3にはMEDI9447を投与した。被験物質は、3日目に開始して週2回、腹腔内投与した。16日目、各群5匹の動物を剖検し、腫瘍を摘出した。
【0483】
群番号及び用量レベルを表8に提供する。
【0484】
【0485】
腫瘍はノギスで1、7、9、12、14、及び16日目に計測し、腫瘍容積は以下のとおり計算した:
(1)(腫瘍容積長さ(mm)×(腫瘍容積幅)2(mm))/2。
MEDI9447の抗癌効果は、以下のとおり計算したパーセント腫瘍成長阻害率として表した:
(2)(MEDI9447の平均腫瘍容積/R347-TMの平均腫瘍容積)×100。
【0486】
フローサイトメトリー用の腫瘍を摘出した。試験16日目にCT26腫瘍担持マウスから腫瘍を解剖した。腫瘍を細片に切断し、コラゲナーゼで消化させた。30分間インキュベートした後、消化された試料を70ミクロンフィルタに通過させた。解離した細胞を4℃で1000rpmで5分間ペレット化し、蛍光活性化細胞選別(FACS)緩衝液に再懸濁した。Vi-Cellでデフォルト設定を用いて細胞をカウントした。ウェル当たり1×10
6細胞をプレーティングした。細胞を抗CD45(全ての白血球を検出するため)、抗GR1(MDSCを検出するため)及び抗Ly6g(顆粒球系MDSC)で染色した。LSRIIフローサイトメーターでデータを収集した。存在する場合、MDSC分析から得られた有意なp値を
図4に記述統計値(即ち、平均値及び標準偏差)の隣に提供する。
【0487】
MEDI9447はマウスCT26同系Balb/C腫瘍モデルにおいて腫瘍成長を阻害した(
図4)。
【0488】
MEDI9447はマウスCT26同系Balb/C腫瘍モデルにおける腫瘍浸潤性MDSCの割合を低下させた(
図5)。
【0489】
MEDI9447はCT26マウス同系腫瘍の成長を阻害した。加えて、MEDI9447による治療後、同系CT26結腸癌腫瘍の骨髄系由来サプレッサー細胞が減少した。腫瘍内MDSCは腫瘍微小環境に対して免疫抑制効果を有し、腫瘍成長の増強を可能にする。MEDI9447による治療後に腫瘍内MDSCの減少が観察されたことは、MEDI9447による治療が腫瘍免疫抑制を低減する機構を実証している。
【0490】
実施例7:MEDI9447 mIgG1と抗PD-1抗体との併用は腫瘍成長を低減し、生存を増加させる
HBSS中に懸濁した0.1mlの5×106個のCT26細胞/mlを8~10週齢の動物の右側腹部に皮下(SC)注射することにより、同系腫瘍を樹立した。腫瘍をノギスで計測し、以下の式を用いて腫瘍容積(TV)を計算した:
(1)TV=(L×W2)/2
(式中、Lは腫瘍長さ(ミリメートル単位)であり、Wは腫瘍幅(ミリメートル単位)である)。
【0491】
マウスを体重に基づく群に無作為化した。動物の取り替えはなかった。この試験では60匹の雌Balb/cマウスを使用した。
【0492】
動物を6群に無作為に割り付けた。動物にはMEDI9447(mIgG1)を投与した。被験物質は3日目に開始して週2回、腹腔内(IP)注射によって投与した。群番号及び用量レベルを表9に提供する。
【0493】
【0494】
(a)インビボ腫瘍阻害試験の結果
CT26マウス結腸癌を同系Balb/cマウスに移植し、抗CD73(MEDI9447 mIgG1)、抗PD1又は併用で治療した。併用治療は抗CD73単独と比較したとき腫瘍成長を有意に阻害した(p=0.015、ANOVA)。試験40日目までの各動物群の腫瘍容積を個々の動物についてプロットした。対照群には、40日間の試験期間の終わりまで腫瘍がなかったマウスはいなかった。抗CD73治療単独では、試験終了時に腫瘍がなかった動物は10%であった。抗PD1治療単独も、試験終了時に腫瘍がなかった動物は10%であった。顕著なことに、抗CD73と抗PDとの併用治療では、腫瘍がなかったマウスは60%であった。対照群には、試験の終わりまで腫瘍がなかったマウスは一匹もいなかった。抗CD73(MEDI9447 mIgG1)、抗PD1又は抗CD73と抗PD1との併用で治療したマウスのCT26腫瘍を計測した。マウスは試験40日目まで計測し、腫瘍が2000mm
3に達したところで人道的に犠牲死させた。抗CD73と抗PD1との併用治療は、抗CD73又は抗PD1治療単独と比較したとき、一緒になって統計学的に有意な生存の増加をもたらした(それぞれp値=0.005及びp=0.038、ログランク検定)(
図7)。生存期間中央値は、この併用についての40日目における「未定」と比較して25日及び33日(それぞれ抗CD73及び抗PD1)から増加した(表10)。
【0495】
【0496】
要約すれば、抗CD73抗体、MEDI9447 mIgG1は、マウス同系CT26結腸癌モデルにおいて抗PD-1抗体と比較したとき抗腫瘍活性の増強を示した。加えて、抗CD73と抗PDとの併用治療では、腫瘍がなかったマウスは60%であった。抗CD73と抗PD1との併用治療はまた、抗CD73又は抗PD1単独治療と比較したとき、一緒になって統計学的に有意な生存の増加ももたらした。
【0497】
実施例8:腫瘍細胞(
図9)、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)及び腫瘍浸潤性CD4+,FoxP3+リンパ球(
図15)のCD73発現によって計測したとき、抗PD-1はCD73リッチな腫瘍微小環境を誘導した。
【0498】
同系B16F10メラノーマ細胞又は同系EG7-OVAリンパ腫細胞を皮下(SC)注射することにより、同系腫瘍を樹立した。マウスをMEDI9447(10mg/kg)、抗PD-L1抗体(10mg/kg)、又はMEDI9447(10mg/kg)と抗PD-L1抗体(10mg/kg)との併用で週2回治療した。腫瘍容積を週2回計測した。MEDI9447と抗PD-L1との併用での投与は、メラノーマ腫瘍(
図12)及びリンパ腫瘍(
図13)における腫瘍成長阻害を有意に増強した。
【0499】
抗PD-L1が腫瘍微小環境に及ぼす効果を理解するため、リンパ球上のCD73発現を調べた。マウス(n=4)に同系CT26結腸直腸細胞を皮下注射し、10mg/kgの抗PD-L1又は無関係のアイソタイプ対照抗体で週2回治療した。初回治療の翌日、流入領域リンパ節から細胞を単離し、フローサイトメトリーによって表面表現型に関して分析した。初回治療の3日後、腫瘍を摘出し、細胞を解離し、フローサイトメトリーによって表面表現型に関して分析した。流入領域リンパ節Bリンパ球(
図14)及び腫瘍浸潤性CD4+,FoxP3+リンパ球(
図15)のCD73表面発現によって計測したとき、抗PD-L1はCD73リッチな腫瘍微小環境を誘導した。
【0500】
結腸直腸CT26同系腫瘍を担持するマウスを、MEDI9447(30mg/kg)又は抗PD-L1(30mg/kg)又はMEDI9447(30mg/kg)と抗PD-L1(30mg/kg)との併用で週2回治療した。16日目、腫瘍及び末梢全血細胞を回収し、フローサイトメトリー及び酵素活性によって表面CD73発現に関して分析した。MEDI9447単独又は抗PD-L1との併用により、末梢全血細胞(
図16)、腫瘍浸潤性CD4+,FoxP3+リンパ球(
図17)及び腫瘍浸潤性CD8+リンパ球(
図18)のCD73発現が低下した。MEDI9447単独又は抗PD-L1との併用により、腫瘍細胞のCD73発現も低下した(
図19)。
【0501】
MEDI9447とCTLA4、OX40、PD-1、及びPD-L1に特異的な抗体又は融合タンパク質とを混合白血球反応で初代ヒト末梢血単核細胞と共に72時間インキュベートした。デュプリケートの上清中の指示サイトカインをELISAによって定量化した。示されるデータは、抗CD73抗体と4つの異なるパートナー薬剤との最適用量の併用を表す。抗PD-1と抗CD73との併用は、Bliss表面反応法(Zhao et al.)によって決定するとき有意な(p<0.05)相乗作用を示した(
図20)。サイトカインプロファイルは、骨髄系列及びリンパ系列の両方が影響を受けたことを示している。50組を超えるドナーペアを試験した。
【0502】
要約すれば、抗PD-1及び抗PD-L1抗体は、末梢中に検出可能な、且つ抗CD73抗体、MEDI9447 mIgG1による治療によって可逆的なCD73リッチ腫瘍微小環境を作り出した。具体的には、マウスCT26腫瘍において、これらの腫瘍を担持するマウスを抗PD-1又は抗PD-L1抗体で治療したとき、CD73細胞表面発現及び酵素活性のレベルが劇的に増加した。更に、抗CD73抗体MEDI9447単独又は抗PD-L1抗体との併用で治療することにより、発現及び活性レベルは低下した。これらの変化は腫瘍並びに循環末梢全血細胞の両方で観察された。従って、CD73発現及び活性は、抗PDL1治療及び抗CD73治療の両方の薬力学的マーカーとして、又は無調節なCD73発現及び活性によって腫瘍が「エスケープ」した、抗PD-1又は抗PD-L1で治療される患者のセグメンテーションのための予測的バイオマーカーとしての役割を果たし得る。重要なことには、抗CD73抗体、MEDI9447は、抗PD1又は抗PD-L1、MEDI 4736との併用で抗腫瘍活性の増強を示した。
【0503】
まとめると、これらの結果は、抗PD-1及び抗PD-L1抗体が「CD73リッチな」腫瘍微小環境を誘導することを様々な計測によって裏付けると共に、MEDI9447とPD-1/PD-L1軸を標的化する療法とを併用することの強力な理論的根拠を提供する。
【0504】
実施例9:抗CD730010抗体及び抗体変異体
【0505】
【0506】
CD730002について、最も近縁の生殖系列遺伝子は、VHドメインについてIGHV3-23及びIGHJ3、並びにVLドメインについてIGLV3-1及びIGLJ3であった。CDR領域外の4つの非生殖細胞系列残基を同定した:VHのR94、及びVLのT20、R57、L81及びF87(Kabat付番)(表11)。CD730002 IgG1-TM発現ベクターのヌクレオチドを標準的な分子生物学的技術によって復帰突然変異させて、従って得られた発現ベクターはこれらの位置で生殖細胞系列アミノ酸をコードした(VHのK94、及びVLのS20、G57、M81、及びY87)。このCD730002 IgG1-TMタンパク質変異体を発現させて、精製し、組換えヒト及びマウスCD73との結合に関してフローサイトメトリーによって試験した。VLの4つ全ての非生殖細胞系列アミノ酸は、結合を損なうことなくそれらの生殖細胞系列残基に変えることができた。しかしながら、VHのR94は結合に重要であり、それをKに変えると結合が損なわれる。変異体CD730002 SGMY(生殖細胞系列化されていないV、完全に生殖細胞系列化されたVL)を親和性最適化抗体変異体の作成の鋳型として使用した。
【0507】
実施例10:抗CD73抗体CD730010GL9の親和性最適化
単一のアミノ酸突然変異を有する変異CDR配列を含むFabライブラリをスクリーニングすることにより、CD730010GL9 IgG1-TMを最適化した。6つのCDR内の61個の位置の各々を、個々に19個のアミノ酸(システインを除く全ての天然アミノ酸)にランダム化し、理論上1159個のユニークなクローンの多様性(各位置につき19個のアミノ酸×61個の位置)を有するライブラリを作成した。このライブラリの4224個のクローンから細菌Fab断片を作製し、ヒト及びマウスCD73タンパク質との結合に関して捕捉ELISAによってスクリーニングした(アッセイ2)。親CD730010 GL9 IgG1-TMと比較して結合シグナルが増加した180個のクローンを選択し、VH又はVLドメインの突然変異をDNAシーケンシングによって同定した。細菌上清中のFab濃度を標準化し、ヒト及びマウスCD73タンパク質に対する標準化した上清の結合をダイレクトELISAによって判定した(アッセイ1)。表12には、選択された有益な単一アミノ酸置換及び組換えCD73タンパク質との結合に対するそれらの効果を掲載する。
【0508】
【0509】
抗CD73抗体の親和性を更に向上させるため、親CD730010 GL9と比較したとき結合が向上した幾つかの単一アミノ酸変化を組み合わせてコンビナトリアルFabライブラリを作成した(アッセイ4)。大腸菌(E.coli)においてこのコンビナトリアルライブラリの4224個のクローンのFab断片を作製し、ヒト及びマウスCD73タンパク質との結合に関して捕捉ELISAによってスクリーニングした。各スクリーニングアッセイからの上位20個のクローンを更なる特徴付けに選択した。上清中のFab濃度を標準化し、標準化した上清の段階希釈物をヒト及びマウスCD73との結合に関して捕捉ELISA及びダイレクトELISAによって試験した。クローンC1、C2、D3及びG10は、ヒト及びマウスCD73に対する強力な結合を示し、更なる特徴付けに選択した。
【0510】
CD730010 GL9の抗原結合も親和性ベースのファージ選択を用いて最適化した。リードCD730010 GL9配列に由来する大規模scFvライブラリを、記載されるとおりの標準的な分子生物学的技術を用いた可変重鎖(VH)相補性決定領域3(CDR3)又は可変軽鎖(VL)CDR3のオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によって作成した(Finch et al.,JMB 411,791-807(2011))。これらのライブラリを、ビオチン化ヒト及びマウスCD73細胞外ドメインタンパク質による一連の反復的な交互選択サイクルでパニングした。選択アウトプットのラウンド3からのScFv遺伝子を細菌IgG発現ベクターにバッチ変換した。可溶性IgGを含有する細菌培養上清を、ヒト及びマウスCD73とのそれらの結合に関してスクリーニングした。親CD730010 GL9と比較してCD73との結合が有意に向上したIgG変異体をDNAシーケンシングに供した。2つの変異体、GRVE及びHPTを、更なる特徴付けに選択した。
【0511】
更なる親和性の向上を生じさせるため、コンビナトリアルFabライブラリ及び親和性ベースのファージ選択から同定された有益な突然変異を組み合わせて、変異体73combo1~73combo6を作成した。
【0512】
実施例11:抗CD73抗体CD730002SGMYの親和性最適化
CD730010GL9について記載したとおり、単一アミノ酸突然変異を有する変異CDR配列を含むFabライブラリをスクリーニングすることによってCD730002SGMY IgG1-TMを最適化した。組換えCD73に対する結合シグナルの増加をもたらしたVHドメインの5つのアミノ酸突然変異及びVLドメインの4つのアミノ酸突然変異が同定された。表13には、有益な単一アミノ酸置換及び組換えCD73との結合に対するそれらの効果を掲載する。
【0513】
【0514】
抗CD73抗体CD730002SGMYの親和性を更に向上させるため、VHドメインに1つの有益なアミノ酸変化を有し、且つVLドメインに1つの有益なアミノ酸変化を有するIgG変異体を調製した。293F細胞の一過性トランスフェクションによって抗体変異体を調製し、MDA-MB-231細胞との結合に関してフローサイトメトリーによってスクリーニングした。クローン2C5は親CD730002SGMYよりも3倍低いEC50値を有した。
【0515】
実施例12:最適化抗CD73抗体の親和性
ヒト、マウス、及びカニクイザルCD73に対する最適化抗CD73抗体(IgG1-TMフォーマット)の親和性をフローサイトメトリー及び表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定した(表14)。最適化抗体は、これらの3つの種由来の細胞性及び組換えCD73に対してpM親和性を有した。
【0516】
【0517】
実施例13:抗CD73抗体のインターナリゼーション
細胞株MDA-MB-231及び4T1への抗CD73抗体のインターナリゼーションをFabZAPアッセイ(Advanced Targeting Systems、San Diego CA)を用いて評価した。抗CD73抗体及びFabZAP試薬の存在下で細胞株をインキュベートした。3日後、細胞増殖を計測してEC50値及び最大毒性を計算した(表15)。FACSデータは、親和性最適化抗体のインターナリゼーション率が低いことを示している。
【0518】
【0519】
別の実験において、抗CD73抗体/サポリンコンジュゲートがCD73陽性細胞株に及ぼす細胞毒性効果を分析することにより、細胞株への抗体のインターナリゼーションを評価した(表15)。S-HyNic及び4FBケミストリー(Solulink、San Diego CA)を用いて抗CD73抗体をサポリン毒素に直接コンジュゲートし、細胞成長を50%阻害するために必要な抗体/サポリンコンジュゲート濃度を決定した。
【0520】
【0521】
実施例14:抗ヒトCD73抗体、Phen0203 hIgG1は、インビトロでCD4+CD25- T細胞増殖のAMP媒介性抑制を濃度依存的に阻害した。
抗CD73抗体(Phen0203)がインビトロでAMP媒介性T細胞抑制を軽減する能力を決定する試験を行った。このインビトロ試験では、抗ヒトCD73抗体(Phen0203 hIgG1)がCD73によるアデノシン一リン酸からアデノシン及び有機リン酸への触媒作用及び続くT細胞機能への影響を阻害する能力を調べた。Phen0203 hIgG1は、インビトロでCD73の細胞性の及び生化学的な酵素活性を阻害する能力を含め、MEDI9447と同様の機能特性を有する)。
【0522】
Phen0203 hIgG1抗体は、重鎖定常領域に改変を有しないヒトIgG1 mAbである。MEDI9447と同様に、この抗体も、ヒトCD73に選択的に結合して、ヒトCD73のエクトヌクレオチダーゼ活性による免疫抑制性アデノシンの産生を阻害する。しかしながら、Phen0203はマウスCD73に対する交差反応性を欠いている。
【0523】
AMP媒介性T細胞抑制に関するアッセイでは、白血球コーン(leukocyte cone)の内容物からCD25+細胞が枯渇した初代ヒトCD4+ T細胞を単離し、エフェクター細胞として使用した;各コーンは別々に処理した。簡潔に言えば、白血球コーンの内容物をPBSに希釈し、次にFicoll-Paque Plus(GE Healthcare、Chalfont St Giles、UK)に層状に重ね、ブレーキをオフにして400×gで40分間遠心した。次に界面から末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、200×gで10分間遠心することによりPBSで洗浄した。上清を廃棄し、細胞をPBS中に懸濁した。生細胞を決定し、次に350×gで5分間ペレット化して、5×107/mLの濃度でRobosep緩衝液(Stem Cell、Grenoble、France)に懸濁した。EasySepヒトCD4+ T細胞エンリッチメントキット(Stem Cell、Grenoble、France)及びRoboSep(Stem Cell、Grenoble、France)を使用したネガティブ選択により、PBMCからCD4+ T細胞を単離した。精製したCD4+ T細胞をペレット化し、1.5×107/mLでRobosep緩衝液中に再懸濁した。Dynabeads CD25(Dynabeads Regulatory CD4+CD25+ T細胞キットの一構成要素;Life Technologies、Paisley、UK)を1.5×107細胞当たり200μLで添加し、連続的に混合しながら4℃で25分間インキュベートした。次に細胞をDynaMag-15磁石(Life Technologies、Paisley、UK)内に1分間置き、CD4+CD25-エフェクター細胞を含有する上清を新しいチューブに移した。
【0524】
CellTrace CFSE細胞増殖キット(Life Technologies、Paisley、UK)を使用して、単離したエフェクター細胞を0.1%BSA含有PBS中1×106細胞/mLの細胞密度で37℃で15分のインキュベーション時間としてCFSEプローブ(3μM)によって標識した。細胞を温X-Vivo 15培地で2回洗浄し、同じ培地中に5×105細胞/mLで懸濁した。1×106細胞当たり25μLの抗CD3及び抗CD28被覆マイクロビーズ(DynabeadsヒトT-アクチベーターCD3/CD28;Life Technologies、Paisley、UK)及び60IU/mLのrhIL-2を添加することにより、標識したエフェクター細胞を37℃で1時間活性化させた。その後、活性化したCD4+CD25-細胞(100μL中約50,000)を滅菌丸底96ウェルプレートのウェルに添加した。X-Vivo 15培地(Lonza、Slough、UK)中に以下の試薬の段階希釈を実施した:被験物質Phen0203 hIgG1及びR347対照抗体。
【0525】
プレート内の細胞に50μLの希釈試薬を添加し、続いて400μM又は800μMのAMP(Sigma-Aldrich、Gillingham、UK)を含有する50μLのX-Vivo 15(Lonza、Slough、UK)を添加した。以下の対照ウェルも含まれた:活性化CFSE標識CD4+CD25-細胞、AMP無し(活性化対照);CFSE標識CD4+CD25-細胞、AMP有り、但し被験/対照物質無し(未処理対照);及び活性化していない(静止対照)CFSE標識CD4+CD25-細胞、AMP無し。このアッセイの細胞を100×gで2分間遠心することにより穏やかにペレット化し、37℃、5%CO2の加湿組織培養インキュベーターに72時間入れた。
【0526】
72時間のインキュベーション後、380gで4分間遠心することにより細胞をペレット化し、100μLのFACS緩衝液(eBioscience、Hatfield、UK)で1回洗浄し、最後に、BD FACSCanto II(BD Biosciences、Oxford、UK)でのフローサイトメトリー分析のため、3.7%のホルムアルデヒドを含有する100μLのPBS中に懸濁した。AMPウェルのない静止CFSE+ CD4+CD25-細胞を使用して、細胞分裂を起こした細胞(分裂細胞)を同定した。
【0527】
CD73は、一部のCD4+ T細胞上に発現することが分かった。細胞外AMPの存在下では、CD73+ T細胞は、CD73によるAMPからアデノシンへの代謝と、それに続くアデノシン受容体の活性化及び次のT細胞機能の調節に関わるパラクリン/オートクリン経路を可能にする潜在的能力を有する。このCD73/アデノシン経路を、TCRシグナル伝達及びrhIL-2によって活性化した精製CD4+CD25-初代ヒトT細胞を使用してインビトロでモデル化した。100又は200μMの細胞外AMPの存在下でT細胞増殖は抑制された。
【0528】
抗ヒトCD73抗体のPhen0203 hIgG1は、インビトロでCD4+CD25- T細胞増殖のAMP媒介性抑制を濃度依存的に阻害する能力を有した。このデータは、AMP/CD73/アデノシン経路の免疫抑制効果を標的化する抗CD73抗体手法の科学的論拠を提供する。
【0529】
実施例15:MEDI9447エピトープ及びパラトープマッピング
MEDI9447とCD73との結合界面を同定するため、MEDI9447 Fab及び組換え可溶性CD73(sCD73)を単独或いは複合体で用いて水素重水素交換MS(HDX-MS)分析を実施した(
図19A、
図19B、及び
図20A~
図20E)。近年、水素重水素交換MS(HDX-MS)は、タンパク質間相互作用部位のマッピング並びにタンパク質構造及びコンホメーションダイナミクスの特徴付けに強力なツールであることが判明している。タンパク質領域の標識が溶媒露出度によって媒介される方法で差次的であることを利用して、HDX-MSを用いた抗体エピトープのマッピングが成功を収めている。遊離CD73と複合体化したCD73との間の水素交換の反応速度を比較することにより、Fabに結合したとき低い重水素取り込みを呈するsCD73のN末端ドメイン内に位置する2つの領域(アミノ酸(aa)132~143及び182~187)が明らかになった(
図19A、
図20A及び
図20B)。領域132~143(HDX_E1)は、最も短い曝露時間点においてのみ、取り込みの有意な変化を示した。より長い曝露時間では、交換の違いはなかった。特定の理論に拘束されるものではないが、これは、この部位が溶媒から部分的にのみ保護されていることを示している。対照的に、領域182~187(HDX_E2)における差次的な重水素取り込みの程度は曝露時間と共に増加した。特定の理論に拘束されるものではないが、これは、溶媒露出度を低下させる高親和性タンパク質間相互作用と一致する(
図19A)。Fabの分析により、CD73と複合したとき、重鎖の相補性決定領域(CDR)1及び3、並びに軽鎖のCDR1及びCDR2が最も大きい交換の低下を呈したことが示されたことから、これらの領域がパラトープの主要な構成要素であることが示唆される(
図20C及び
図20D)。CD73 aa132~143(HDX_E1)及び182~187(HDX_E2)は配列スペース上不連続であるが、これらはCD73の折り畳まれた構造上にマッピングしたとき隣接する(
図19B)。CD73内の他の領域に水素交換の差が観察された。しかしながら、質量変化の大部分は、既知の基質結合及び活性部位残基を含むペプチドのものを含め、統計学的に有意でなかった(
図19A及び
図20E)。
【0530】
HDXはポリペプチド骨格溶媒曝露のコンテクスト依存的な変化に関して報告するため、水素交換についてエピトープ-パラトープ界面内の骨格マスキングによるものと、抗体結合によって間接的又はアロステリックに誘導される立体構造変化によるものとの違いを区別する検証が必要である。HDX_E1及びHDX_E2がMEDI9447エピトープを構成するかどうかを決定するため、ドメインスワッピングしたキメラCD73突然変異体に対する抗体結合を評価した(
図21A~
図21H及び表16)。
【0531】
【0532】
ドメインスワッピングは、目的の抗体に結合しない標的タンパク質(即ち、ヒトCD73)の相同体を使用してキメラを作成し、それらの残基がエピトープを構成することを明らかにする技術である。欠失の導入とは対照的に、相同体間での配列の交換では、タンパク質構造が大域的に破壊されたり、又はタンパク質発現が妨害されたりする可能性が最小限となる。ガルス・ガルス(Gallus gallus)(ニワトリ)CD73は成熟ヒトCD73と約65%の配列同一性を共有する(
図22)。ヒトCD73 N末端ドメイン(KO_1~291)又はN末端及びC末端の両方のドメイン(KO_1~291+311~523)を対応するニワトリ配列に置き換えることによってノックアウトしたとき、スワッピングしたキメラのMEDI9447に対する結合は失われた(
図21A~
図21H及び表16)。C末端ドメイン(aa311~523)又はαヘリックスリンカー領域(aa292~310)のみをノックアウトしたが、野生型(WT)タンパク質と比較して結合は影響を受けなかった(
図21A、
図21D、
図21E及び表16)。これらの結果は、CD73のN末端ドメイン内のエピトープ位置と一致する。次に、各HDX界面領域を個別に、及び組み合わせで、ノックアウトした。KO_HDX_E1とのMEDI9447の結合はWT CD73と同程度であったが、会合速度k
aの僅かな低下があった(
図21F及び表16)。対照的に、KO_HDX_E2に対する結合親和性は、より速い解離によって促進されて、WT CD73と比べて有意に弱まった(
図21F及び表16)。両方の領域をノックアウトすると(KO_HDX_E1+E2)、領域E2単独と比較して結合は少し低下したに過ぎなかった(
図21G及び表16)。これらの知見は、領域182~187、及びより少ない程度に132~143が抗体結合に重要な残基を含むものの、HDXで同定された界面の外側にある更なる残基がエピトープを構成することを示している。
【0533】
MEDI9447エピトープを完全に定義付けるため、ヒトCD73のN末端ドメインの約70aaストレッチを対応するニワトリ配列に置き換えて、配列をスワッピングしたキメラのパネルを作成した(
図22、
図23A及び
図23B)。領域2(DS2)又は3(DS3)のいずれか単独をノックアウトすると結合が減少し、両方の領域を共にスワッピングすると(DS2_3)、結合がノックアウトされた(
図23A及び
図23B)。領域4(DS4)又は領域1の一部分(DS1a)(全領域をスワッピングすると発現が妨げられた)をノックアウトしたが、結合は影響を受けなかった(
図23A及び
図23B)。約20~30aaがスワッピングされた領域を含むキメラによる結合解析から、サブ領域DS2d(aa135~152)及びDS3b(aa171~188)が、MEDI9447結合に影響を及ぼす残基を含むことが明らかになった(
図23A及び
図23B)。サブ領域2dの一部分(DS2dmod)を領域3bとスワッピングしたとき(DS2dmod_3b)、結合は失われた(
図23A及び
図23B)。特に、これらの2つのサブ領域は、HDX研究によって同定された界面を包含する(
図22)。両方のHDX領域を共にスワッピングしても結合の消失はなかったという観察から、結合を媒介する更なる残基がサブ領域2d及び3b内にあり、しかしHDXによって同定された部位内にはないことが示される。これらの更なるエピトープ残基をマッピングするため、単一の点突然変異か、又は点突然変異の組み合わせかのいずれか及び領域スワップを含むCD73キメラのパネルに対する抗体結合を評価した。ニワトリCD73とヒトCD73との間で保存されているHDX界面内の及びそれに空間的に近接した残基に関して、アラニン突然変異誘発も実施した(
図22、
図23A及び
図23B)。これらの分析から、V144、K180、及びN185が主要なエピトープ残基であり、N185が最も重要であることが明らかになった(
図23A、
図23B、及び
図24)。N185G突然変異をK180A又はV144Kのいずれかと組み合わせると結合が消失し、一方、K180及びV144を共に突然変異させると結合の低下が生じた(
図23A及び
図23B)。K180に加え、3つの他の保存残基、Y135、K136、及びN187が結合に影響したことが分かったが、程度は低かった(
図23A、
図23B、及び
図24A)。これらの後者3つの残基の影響を、ドメインスワッピングしたKOバックグラウンドのコンテクストでそれらをアラニンに突然変異させることによって明らかにした;唯一の点突然変異として、それらが親和性に与える影響は最小限であるか、又は全くなかった(
図23A及び
図23B)。エピトープの重要な構成要素としてのV144、K180、及びN185を検証するため、ニワトリCD73をV144及びN185に置き換えた(K180は保存されている)。これらの3つの残基の存在により、MEDI9947によるnM以下の親和性での結合性が付与された(K
D=79pM)(
図23A、
図23B、及び
図24B)。特定の理論に拘束されるものではないが、これは、CD73に対するMEDI9447の結合が主にこれらの3つのアミノ酸位置によって媒介されることを示している。特に、HDX分析によって結合界面の概略的な位置が同定されたが、これらの3つの重要なエピトープ残基のうちの2つは、水素交換の変化を呈するペプチド内に含まれなかったものである(
図20A及び
図20B)。
【0534】
同定されたエピトープをCD73の構造に重ね合わせると、結合部位がCD73の開いたコンホメーションの頂端、外側面に位置することが示される(
図24C~
図24E)。N185は、K180を含むヘリックスGから外側に延びるループ領域のN末端ドメイン頂端の近傍に位置する(
図24C)。βストランド6に位置し、且つK180に隣接して、Y135及びK136がある。V144は、N187と緊密に接触して、βストランド7内に位置する(
図24C)。集合的には、これらの残基の側鎖は、ほぼ連続する結合表面を形成する(
図24D)。CD73単量体の開いた構造で見ると、エピトープが対向する面の両方にあり、且つ基質結合部位から空間的に離れていることは明らかである(
図24F)。加えて、この結合部位は、Zn
2+補因子との相互作用をコーディネートするものを含め、いかなる活性部位残基も包含しない(
図24F)。特定の理論に拘束されるものではないが、エピトープの位置に基づくと、MEDI9447はAMP結合に関して競合せず、代わりに潜在的なアロステリック機構によってCD73酵素活性を阻害することが予想された。
【0535】
実施例14:MEDI9447はCD73酵素活性を阻害した
MEDI9447の阻害様式を特徴付けるため、初めにMEDI9447又はCD73の非加水分解性阻害薬、APCPのいずれかの存在下でsCD73のAMP加水分解の反応速度を調べた。MEDI9447は、基質濃度に関わらず、V
maxの低下(4.59±0.26対1.21±0.03)から明らかであったとおり、sCD73を非競合的に阻害した(
図25A)。対照的に、APCPでは、ミカエリス定数K
mが増加し(75.85±3.36対26.03±3.87)、しかしV
max(3.35±0.04対3.50±0.11)は低下せず、APCPがCD73の競合阻害薬であるというこれまでの知見と整合的であった(
図25B)。これらの結果は、MEDI9447がsCD73のAMP加水分解能力を遮断したことを示している。加えて、これらの結果は、MEDI9447がAMP基質の結合を遮断しないことを示しており、これはエピトープの位置と一致する。
【0536】
次に、IgG又はFabのいずれかのフォーマットの漸増濃度のMEDI9447の関数として、sCD73の阻害を試験した。MEDI9447 IgGはsCD73活性を用量反応的に阻害し、約1:1のモル比のIgGとsCD73二量体とで最大阻害に達した(
図25C)。しかしながら、IgGがsCD73に対して化学量論的に過剰であった場合、阻害の喪失が観察された(
図25C)。このいわゆる「フック効果」は、他のイムノアッセイで観察されており、標的抗原上の結合部位の制限に関して競合する同じIgG分子上のFabアームによって駆動される一価抗体結合によって生じ得る。この観察と一致して、FabフォーマットのMEDI9447はsCD73活性を阻害しなかった(
図25C)。これらの結果を合わせると、sCD73機能の阻害にMEDI9447の二価相互作用が必要であることが示唆される。
【0537】
実施例15:MEDI9447はCD73の閉じた状態へのコンホメーション転移を防ぐ 前出のCD73の構造研究から、CD73の酵素活性に「開いた」コンホメーションと「閉じた」コンホメーションとの間での転移が必要であることが明らかになった。開いた状態では、酵素は不活性であり、一方、閉じた状態では活性部位が形成されて、基質の加水分解が可能となる。ヒトCD73の結晶構造を決定することにより、開いた配座異性体と閉じた配座異性体との間の転移には、N末端ドメインがC末端ドメインに対する位置を変えて活性部位を形成することができるように、αヘリックスリンカー領域の広範な屈曲及び回転が必要であることが示された。2つのCD73N末端ドメイン上のMEDI9447の各Fabアームの会合が、CD73が不活性な開いた状態から触媒活性のある閉じた状態へと転移することを制限する架橋を形成し得たものと仮定された。MEDI9447がCD73コンホメーション転移を阻害するかどうかを試験するため、CD73コンホメーションのレポーターとして開発された抗体、mAb Aを利用した。mAb Aの結合界面のマッピングから、それがCD73のN末端ドメイン及びC末端ドメインの両方と相互作用することが示された(
図26A~
図26C)。結合領域の位置を考えると、エピトープがCD73の開いた配座異性体に存在し得るが、閉じた配座異性体では分断されると仮定された(
図26B)。これを試験するため、開いた基質遊離型のsCD73及び閉じたsCD73に対するmAb Aの結合を計測した(
図27A~
図27C)。閉じたコンホメーションを誘導するため、sCD73をZn
2+及びAPCPと共にプレインキュベートした;この補因子及び非加水分解性基質は、先にヒトCD73の閉じた配座異性体の結晶構造の作成に使用されたものである。結合解析から、mAb Aは開いたsCD73に結合するが、CD73をZn
2+及びAPCPとプレインキュベートしたとき結合は消失することが示された(
図27A)。特定の理論に拘束されるものではないが、この知見は、mAb Aエピトープが開いた構造のCD73にのみ存在することと一致する。対照的に、MEDI9447結合はCD73の状態に感受性を有しなかったことから、MEDI9447が基質遊離型CD73又は結合型CD73のいずれにも結合し得ることが示唆される(
図27A)。mAb Aによる結合の喪失は、Zn
2+及びAPCPの両方に依存した(
図28A)。mAb Aの結合がCD73のコンホメーション状態を報告することが確立されたため、次に、MEDI9447がZn
2+/APCPの誘導によるCD73の構造転移に及ぼす効果を試験した。mAb Aは、MEDI9447とプレインキュベートしたsCD73に結合したことから、これらの2つの抗体が個別的なエピトープに結合することが示唆される(
図27B)。重要なことには、続いてsCD73-MEDI9447複合体をZn
2+及びAPCPとインキュベートしたとき、mAb Aによる結合が維持された(
図27B)。対照的に、対照IgG及びFabフォーマットのMEDI9447は、Zn
2+及びAPCPの添加前にsCD73と予め複合体化したとき、mAb A結合を回復しなかった(
図28B)。これらの結果は、二価MEDI9447の結合がsCD73の開いた状態から完全に閉じた加水分解的に活性なコンホメーションへの転移を防ぐという仮説を裏付ける。MEDI9447が結合したときmAb A結合が部分的にのみ維持されるという観察は、Zn
2+及びAPCPによってCD73が誘導されて、レポーター抗体により低い親和性で結合する触媒的に不活性な中間体をとり得ることを示している(
図27C)。
【0538】
実施例16:sCD73及びMEDI9447は二量体間架橋複合体を形成した
観察されたMEDI9447の阻害活性は、N末端ドメインを介するか、単一のCD73分子の二量体間架橋、又は別個のCD73分子の二量体間架橋を介して起こり得た。これらのシナリオを区別するため、溶液中に形成された複合体のサイズを特徴付けた。未結合のMEDI9447及びCD73の質量計測値(それぞれ145及び125キロダルトン(kD))に基づけば、抗体とCD73との二量体間架橋1:1複合体の予想サイズは約270kDとなる(
図29A)。MEDI9447とsCD73とが1:1モル比で結合したとき、2つの複合体が形成された。優勢な種は約1.74メガダルトンの重量平均モル質量(Mw)を有し、存在量が少ない種は約0.66kDのMwを有した(
図30A)。最も大きい複合体のMwは、7個のCD73二量体及び6個のIgGを含有するオリゴマーと一致する(7×125kD+6×150kD=1.745メガダルトン)。MEDI9447が限られている場合(0.5:1、0.1:1)、同程度のMwの複合体が形成されるが、しかし各々の種の存在量の相対的違いはそれほど顕著でない(
図30A)。MEDI9447との複合体を、別の抗CD73抗体、mAb Bと形成されたものと比較した。ドメインスワッピングしたCD73キメラのパネルに対するmAb Bの結合解析から、mAb Bが、CD73のN末端ドメイン内の領域に結合することが示され、この領域は、MEDI9447とは対照的に、CD73単量体間に形成される溝に近接している(
図29B及び
図19B)。この内部に位置する表面での結合が、mAb BのFabアームによるCD73二量体間の架橋を妨げ得ることが仮定される。実際、SEC-MALSでは、mAb Bが、1:1相互作用について予想されるものに近いMwである約270~295kDの複合体を形成することが示された(
図30C)。まとめると、これらの知見は、MEDI9447が複数のsCD73二量体間に二量体間架橋を形成すること、及びこれらのオリゴマーの生成がエピトープによって付与されることを示している。
【0539】
実施例17:MEDI9447はアンカー型CD73を一価相互作用によって阻害した
CD73はインビボで細胞表面からシェディングされ、その可溶性形態で酵素活性を保持するが、天然CD73の大部分はGPIアンカー型フォーマットで存在する。このこと、及び前出の研究が可溶性形態のCD73で行われたことを踏まえて、固定化された状態のCD73によるMEDI9447活性を特徴付ける必要があった。組換えCD73をニッケル被覆マイクロタイタープレート上にC末端6ヒスチジンタグで捕捉して、細胞表面上のGPIアンカー型CD73のものに類似した方法で空間的に配向した固定化したCD73の酵素活性のアッセイを可能にした。本発明者らのこれまでの結果と同様に、MEDI9447 IgGはAMP加水分解を用量依存的に阻害した(
図31A)。しかしながら、抗体がCD73二量体に対してモル過剰であった場合、阻害の喪失、即ちフック効果は観察されなかった(
図31A及び
図32)。予想外にも、MEDI9447 FabもCD73活性を阻害し、しかしMEDI9447 IgGと比較して最大阻害は低かった(
図31A及び
図32)。これらの結果は、可溶性CD73と異なり、アンカー型CD73が一価抗体相互作用によって阻害され得ることを示している。IgGとFabとの間の阻害の差から、抗体分子のサイズが効力を左右し得ることが示唆された。これを調べるため、MEDI9447 Fabを抗Fd抗体(xFd)と、xFd抗体の一方のFabアームがMEDI9447 Fabに結合し、且つ他方のアームが非特異的なポリクローナルFab(pFab)に結合するような条件下でプレインキュベートした(
図31B)。この複合体の形成により、CD73の一価を維持しつつMEDI9447 Fabのサイズが有効に増加した。このxFd結合Fabは、MEDI9447 IgGと同程度にCD73活性を阻害した(
図31A)。この観察を検証するため、ヒト上皮乳癌細胞株MBA-MD-231で、内因的に発現するCD73の抗体阻害を計測した。固定化した組換えCD73と同様に、GPIアンカー型CD73はMEDI9447 IgGによってロバストに阻害され、MEDI9447 Fabによって中程度に阻害され、及びFabをxFd抗体に予め結合すると、最大阻害がIgGと同等のレベルまで増加した(
図31C)。最後に、xFd抗体の一方又は両方のアームのいずれかに結合したMEDI9447 FabによるsCD73の阻害を試験した。表面結合型CD73と異なり、sCD73は、単一のxFdアームに結合したMEDI9447 Fabによって阻害されなかった(
図31D)。しかしながら、MEDI9447 Fabを両方のxFdアームに結合することによって二価性を付与すると、MEDI9447 IgGと同程度のsCD73阻害がもたらされた(
図31B及び
図31D)。これらの知見は、表面アンカー型CD73が一価抗体結合によって阻害され得ること、及び効力が抗体のサイズによって媒介されることを示している。これは、二価相互作用を介してのみMEDI9447によって阻害されるsCD73と直接的な対照をなす。
【0540】
実施例18:MEDI9447は、二重の非競合的作用機構によってCD73コンホメーション変化及びAMP加水分解を阻害する
本明細書に記載するとおり、CD73の酵素活性を阻害する治療的モノクローナル抗体のエピトープ及び作用機構を決定した。この試験の結果から、2つの個別的な機構を介して阻害を可能にしたCD73 N末端ドメイン内の結合部位が明らかになった。重要なことには、この特徴は、可溶性CD73及び細胞表面アンカー型CD73の両方を非競合的に遮断する能力をMEDI9447に付与する。
【0541】
HDX-MSを用いて、CD73とMEDI9447 Fabとの間の結合界面を同定した。ペプシン消化で得られたペプチドが比較的大きかったため、この交換分析によって同定された相互作用部位は比較的広く、2つの非連続ペプチドにわたる合計18アミノ酸に及んだ。ドメインスワッピング及び突然変異誘発実験から、これらの残基の一部のみが抗体結合に影響を有したこと、及び最も影響力のある3つのアミノ酸のうちの2つ(V144及びK180)が、差次的な水素交換を呈しなかったペプチド内に含まれたことが示された。この矛盾の1つの説明は、抗体CDR残基との接触に起因してV144及びK180側鎖が塞がれ得る一方で、重水素との交換を起こす関連するポリペプチド骨格アミド水素原子は比較的溶媒に露出していることがあり得るというものである。HDX-MSの結果はまた、aa132~143で構成される領域が最も短い曝露時間点においてのみ交換反応速度の有意な変化を呈したことも示した。特定の理論に拘束されるものではないが、これにより、この領域における結合が比較的弱いことが示された。実際、この領域内の結合に影響を及ぼすことが分かった2つの残基(Y135及びK136)は、MEDI9947親和性に対して僅かな効果しか有しなかった(
図23A及び
図23B)。対照的に、最も有意な差次的交換があった領域、aa182~187は、結合に最も重要な残基(N185)を含んだ。共結晶構造がないため、MEDI9447との相互作用因子として考慮に入れなかった何らかの残基が実にパラトープとの接触を形成する可能性は正式には排除できない。しかしながら、広範な突然変異体結合解析は、これらの可能性のある残基による結合の熱力学への寄与が最小限であろうことを示している。重鎖CDR3が抗原接触部位の形成において重要であるとおり、このCDRが最大の差次的交換を呈した。HDX結果はまた、抗原結合に軽鎖、特にCDR1及び2が重要であることも示した(
図20C及び
図20D)。まとめると、これらの結果は、エピトープマッピングにおけるHDX-MSの有用性並びに突然変異誘発などの直交的な技法によって予想結合界面を検証することの重要性の両方を浮き彫りにする。
【0542】
CD73基質結合及び活性部位残基から離れたN末端ドメイン内の位置にエピトープがあることは、MEDI9447が非競合的阻害様式を備えることを示す結果と一致する。エピトープ単独のフットプリントに基づくと、抗体が古典的なアロステリック阻害薬としての役割を果たし、加水分解活性を妨げる方法で活性部位残基を歪めるCD73における大きい範囲にわたるコンホメーション変化を誘導すると仮定し得る。しかしながら、HDX-MSデータからは、この形態のアロステリック効果を裏付けるであろう結合界面の外側にある領域のCD73構造の有意な変化は明らかにならなかった。或いは、このエピトープは、触媒活性に必要なN末端ドメイン内のループ、βストランド、又はαヘリックスの動きがMEDI9447の結合によって制限されることを示唆している可能性がある。これに反して、CD73の開いた構造と閉じた構造との間には、N末端ドメイン内の二次又は三次構造の違いはほとんど乃至全く報告されなかった。確かに起こる局所的なドメイン間コンホメーション変化は、リンカー及びC末端ドメインに限られている。
【0543】
構造変化の誘導に代わるものとして、必要なコンホメーション変化を制限し得る抗体架橋又はCD73二量体の架橋結合を可能にするのに良好な位置にエピトープがあることが考えられた。この架橋の概念は、可溶性形態のCD73の阻害にIgGが必要であったこと、及びMEDI9447が複数のCD73二量体を含有する複合体を形成することを示すデータによって裏付けられる。この後者の結果は、二量体間架橋を形成しなかったmAb Bと対照的であり、この架橋結合活性の付与におけるMEDI9447エピトープの重要性が浮き彫りになった。合理的には、2つのCD73 N末端ドメインが同じIgGのFabドメインによって結合する場合、酵素がその閉じた活性構造をとるために必要なN末端ドメイン及びリンカー領域の動きがそれによって物理的に制限され得る。CD73状態のコンホメーションプローブとしての役割を果たすmAb Aの使用によって、MEDI9447が結合すると、Zn2+及びAPCPによって誘導されるとおりの、CD73が完全に閉じた配座異性体をとることが阻害されることが実証された。MEDI9447をCD73と予め複合体化したときのレポーターmAb Aによる結合の中間レベルは、Zn2+及びAPCPによってある程度のコンホメーション転移がなおも誘導されることを示している。mAb A結合の減少は、そのエピトープがこの中間状態で部分的に歪められるが、結合を生じさせるにはなおも十分であることを反映したものであり得る。ヒンジ領域の高度な可動性を考えると、MEDI9447がCD73二量体を架橋している場合であっても、基質結合に起因してなおも幾らかのCD73構造変化があり得ることは意外ではない。特定の理論に拘束されるものではないが、結合したIgGが完全に固定されたコンホメーションでCD73を捕捉することは想定し難い。
【0544】
この研究の意外な結果は、MEDI9447が、二価相互作用による架橋に加え、一価の結合機構で表面結合したときにもCD73を阻害し得る点である。当初は混乱させるものであったが、アンカー型CD73活性の第2の立体的に媒介される遮断機構は、本明細書に記載される観察と一致している。触媒的に活性なGPIアンカー型CD73の形成には、N末端ドメインが細胞表面に近接した位置まで下方に回転する必要がある。天然CD73二量体は約130kDaである。IgG又はFabのサイズ(それぞれ約150kD及び約50kD)と比較して、N末端ドメインに結合した抗体が、CD73の閉じたコンホメーションをとるための完全な回転を立体的に遮断し得るとすることは妥当である。この機構は2つの観察によって裏付けられる。第1に、FabがIgGと比較して低い最大阻害を呈することは、サイズ依存的な立体効果と整合する。Fab親和性はなおもnM以下(K
D=327pM、データは示さず)であるため、FabとIgGとの相違が結合の違いに起因する可能性は低い。更に、xFd抗体とのコンジュゲーションによるFabの有効サイズの増加によって付与される高い効力も、価数又はアビディティでなく、サイズに依存する立体機構を強力に裏付ける。この阻害様式を裏付ける第2の観察は、CD73が表面結合したときにフック効果、即ち阻害の喪失が、MEDI9447 IgGによっては観察されなかったことである。恐らくこれは、この抗体がアンカー型CD73によるAMP加水分解を二価又は一価相互作用のいずれによっても遮断し得ることが理由である(
図33)。対照的に、CD73が可溶性であるとき、一価結合型IgG又はFabがN末端ドメインの回転を立体的に遮断するために必要な固相が存在しないため、フック効果が観察される。
【0545】
従って、MEDI9447が、そのエピトープに一体に連結する二重の阻害機構によって可溶性CD73及びGPIアンカー型CD73の機能をアンタゴナイズするモデルが提案される(
図33)。本明細書に記載される試験は、MEDI9447がインビボで可溶性CD73及び結合型CD73の両方を遮断し得ることを示すが、GPIアンカー型CD73の阻害が一方の機構によるのか、それとも両方の機構によるのかは不明である。恐らくは、細胞表面上のCD73の密度、配向、及び二量体間距離によって優勢な阻害様式が左右される。ほとんどの癌細胞がCD73を過剰発現する(これにより二量体が近接する可能性が増加し得る)ことを所与とすれば、MEDI9447は二価及び一価相互作用の両方で会合することが予想される。正常な非腫瘍組織では、CD73発現は比較的低い面密度であり、MEDI9447は主に立体的遮断様式でAMP加水分解を阻害し得る。
【0546】
機構的観点からは、CD73の遮断は、既に承認済みの薬物があるPD-1及びCTLA-4などの比較し得る標的のものとは異なる免疫腫瘍学的戦略である。治療的見地からは、MEDI9447の活性は有利である。MEDI9447はCD73を非競合的に阻害し、従って、活性部位の遮断によって内因性ヌクレオチド結合と競合する必要がない。これにより、構造的に保存されている活性部位を有する他のヌクレオチド/ヌクレオシド結合タンパク質に対する潜在的な交差反応性が回避される。更に、MEDI9447は、一価会合又は二価会合のいずれかによって可溶性CD73及び膜結合型CD73の両方を阻害することができる。これらの特徴は両方ともに、インビボ有効性に寄与するものと思われる。この治療的mAbは、単独、及び補完的な免疫調節経路を標的化する既存の化学療法剤との併用の両方で、癌の治療に潜在的免疫調節能力を有する。
上記に記載する結果は、以下の材料及び方法を使用して実施した。
【0547】
アッセイ1:ダイレクトELISA
384ウェルELISAプレートを約1.5ng/ウェルの組換えCD73タンパク質でコーティングし、1%BSA/0.1%Tween20/PBSでブロックし、抗体試料と室温で90分間インキュベートした。これに続いて、ヤギ抗Igλ-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートと室温で30分間インキュベートした。テトラメチルベンジジン(TMB)基質でHRP活性を検出し、1M HClで反応を停止させた。プレートを450nmで読み取った。
【0548】
アッセイ2:捕捉ELISA
384ウェルELISAプレートを約3ng/ウェルのヒツジ抗ヒトFd抗体でコーティングし(Fabフォーマットの抗体をスクリーニングするため)、1%BSA/0.1%Tween20/PBSでブロックし、試料と室温で90分間インキュベートした。次にビオチン化CD73タンパク質を室温で1時間添加した。これに続いて、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートと室温で30分間インキュベートした。テトラメチルベンジジン(TMB)基質でHRP活性を検出し、1M HClで反応を停止させた。プレートを450nmで読み取った。
【0549】
約50ng/ウェルのビオチン化組換えCD73を使用して、単一アミノ酸突然変異を有するクローンをスクリーニングした。コンビナトリアルライブラリからのクローンのスクリーニングには、10ng/ウェルのビオチン化組換えCD73を使用した。
【0550】
アッセイ3:フローサイトメトリー結合アッセイ
フローサイトメトリー実験は全て4℃で行い、試薬はPBS/1%FBS緩衝液中に調製した。10,000細胞を50uL容積中の被験抗体と4時間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、50uLヤギ抗ヒトIgGFc-AlexaFluor647コンジュゲートにおいて15分間インキュベートした。細胞を洗浄し、Dapiを補足した緩衝液中に再懸濁し、フローサイトメーターで分析した。Dapi強染色によって同定される死細胞は分析から除外した。KD値の決定には、被験抗体濃度の関数としての蛍光強度中央値のプロットを、ワンサイト結合等温線モデルを使用して非線形フィッティングした。
【0551】
アッセイ4:単一のアミノ酸変化を有する抗体ライブラリの作成
QuikChange Lightning多重部位特異的突然変異誘発キット(Agilent)及びプライマーを使用して、CD730010又はCD730002のCDRコドンの部位特異的突然変異誘発を実施した。野生型コドンをコドンNNSに置き換えたプライマーで各コドンを突然変異誘発した。突然変異誘発したVH及びVL遺伝子を細菌発現用のFabベクターにクローニングした。大腸菌(E.coli)株BL21(DE3)を抗体ライブラリで形質転換し、個々のコロニーをピッキングし、Magic Media(Invitrogen)において室温で24時間培養して細菌Fab断片を作製した。細菌上清を調製し、それを使用してELISA結合アッセイで抗体ライブラリをスクリーニングした。
【0552】
アッセイ5:コンビナトリアルなアミノ酸変化を有する抗体ライブラリの作成
CD730010GL9 VH及びVL遺伝子を細菌Fab発現用のベクターにクローニングした。QuikChange Lightning多重部位特異的突然変異誘発キット(Agilent)又はオーバーラップPCRのいずれか及び縮重プライマーを使用して、CD730010GL9のCDRコドンの部位特異的突然変異誘発を実施した。縮重プライマーは、同じ位置に選択のアミノ酸変化並びに親アミノ酸をコードするように設計した。大腸菌(E.coli)株BL21(DE3)をFabライブラリで形質転換し、個々のコロニーをMagic Media(Invitrogen)において室温で24時間培養して細菌Fab断片を作製した。細菌上清を使用して、ELISA結合アッセイで抗体ライブラリをスクリーニングした。
【0553】
アッセイ6:FabZAPアッセイ
96ウェルプレートにおいてRPMI/10%FBS中で1,000細胞/ウェルを培養した。5nMで開始した抗CD73抗体の段階希釈物をFabZAP試薬(Advanced Targeting Systems、San Diego CA)と混合し、細胞に加えた。37℃で3日間インキュベートした後、CellTiter-Gloアッセイ(Promega、Madison WI)を用いて細胞増殖を計測した。
【0554】
以下のアッセイ(アッセイ7~11)は、以下のCD73及び抗体試薬を使用して実施した。
【0555】
組換え成熟ヒトCD73(アミノ酸位置1~526)をコードする哺乳類発現ベクタープラスミドを構築した(MedImmune)。可溶性の分泌型CD73の発現を実現するため、GPIアンカーシグナルペプチドを除去し、C末端6x-ヒスチジンタグに置き換えた。CD73配列の付番はシグナルペプチドのない成熟タンパク質に基づく(ヒトNT5E、NCBI参照配列NP_002517.1)。コドン最適化ニワトリCD73 DNA配列(ニワトリNT5E、NCBI参照配列XP_004940453.1)をコードする合成DNA gBlocks(IDT,Inc.)を使用して、組換えヒト/ニワトリキメラドメインスワッピング「ノックアウト」(KO)突然変異体をコードするプラスミドを作成した。ヒトCD73タンパク質配列とのアラインメントに基づけば、ニワトリN末端ドメインを含むコンストラクトのアミノ酸コード位置1位は、予想シグナルペプチドを含む未成熟ニワトリCD73の20位に対応する。完全長KO DNAコンストラクトをgBlocksのシングルオーバーラップ伸長PCR及びヒトCD73のPCRアンプリコンによって作製した。全てのコンストラクトがC末端6xヒスチジンタグを含んだ。Quick Change Lightning多重部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を使用した部位特異的突然変異誘発によって、ヒト及びキメラコンストラクトに単一及び複数の点突然変異を作製した。CD73コンストラクトは全て、懸濁HEK293細胞で発現させた。ヒスチジンタグ付加野生型ヒトCD73(GPIアンカーシグナル配列を欠いている)が、MedImmune Protein SciencesグループによってHisTrapニッケルアフィニティーカラム(GE Healthcare Life Sciences)を使用して精製された。タンパク質は溶液中で二量体であることが確認され、モル質量は約125kDaであった(
図18A及び
図18Bを参照)。突然変異CD73コンストラクトは全て、293Fectin(Life Technologies)を使用して懸濁HEK293細胞を一過性にトランスフェクトすることにより発現させた。細胞は24ウェルディープウェルブロック内の無血清293Freestyle培地(Life Technologies)で成長させ、トランスフェクトした。トランスフェクションの6日後に粗細胞上清を回収し、0.45μmフィルタでろ過して細胞残屑を除去してから使用した。Octet QK384バイオレイヤー干渉法(BLI)機器(ForteBio/Pall Life Sciences)のHIS2バイオセンサー(ForteBio/Pall Life Sciences)に対するヒスチジンタグ付加タンパク質の結合を計測することにより、CD73変異体の上清濃度を決定した。濃度は、Octetデータ分析ソフトウェアを使用して、既知の濃度の精製組換え6x-ヒスチジンタグ付加ヒトCD73の希釈物から作成した標準曲線と結合シグナルを比較することにより計算した。MEDI9447(ヒトIgG1及びマウスIgG1フォーマット)、mAb A(ヒトIgG1)、及びmAb B(ヒトIgG1)及びMEDI9447 Fab(ヒトIgG1)の発現及び精製は、MedImmune Protein Sciences and Expressionグループによって行われた。IgGは哺乳類細胞で発現させて、プロテインA及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。MEDI9447 Fabの作成には、10mgのIgGを固定化したパパイン(Thermo Scientific/Life Technologies)と共に37℃で5時間消化し、HiTrap Qカラム(GE Healthcare Life Sciences)を使用してFabを精製した。
【0556】
アッセイ7:HDX-MS分析
組換えヒトCD73及びMEDI9447 Fab試料を2mg/mLの濃度で調製した。CD73+Fab複合体を、1:1の濃度比でプレインキュベートすることにより形成した。HDX実験全体は、Leap自動ロボットを備えたWaters HDX Technology(Waters Corporation)を用いて行った。簡潔に言えば、1.25μLのタンパク質試料を20℃でH2O又はD2O緩衝液(10mMリン酸塩、pH7.0)のいずれかによって20倍希釈した。種々のインキュベーション時間(非重水素化実験については0秒又は重水素化実験については0.5、1、5、10、30、60、及び120分)の後、4.0M グアニジンHCl(Pierce Biotechnology)、500mMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリド(TCEP)(Pierce Biotechnology)、pH2.4の等容積の氷冷溶液を添加することにより、標識した試料をクエンチした。その直後に、20℃でPoroszyme固定化ペプシンカートリッジ(Applied Biosystems)を使用して試料を消化した。消化断片を回収し、ACQUITY BEH C18 VanGuardプレカラム(2.1×5mm、Waters)を使用して脱塩し、0℃でACQUITY BEH C18カラム(1.7μm、1.0×100mm、Waters)に溶出した。カラムで分離されたペプチドをSYNAPT G2質量分析計(Waters)によって分析した。データ解析のため、ProteinLynx Global Serverソフトウェア(Waters)を使用してペプチドを同定し、各標識時間からの各消化ペプチドの重水素取り込みレベルを、DynamX(Waters)を使用して計算した。各タンパク質につき4つの非重水素化実験及び3つの完全なHDX実験を実施した。以前の記載どおり実験の不確かさ及び98%信頼区間を用いて有意差の値(±1.6ダルトン)を計算し、但し、個々の標準偏差の平均値の代わりに、標準偏差のプールした分散を使用した。CD73+Fab複合体とCD73との間の相対取り込み率をDynamXソフトウェア(Waters)によって求め、構造をモデル化するためPyMOL(Shroedinger,Inc.)にエクスポートした。PyMol並びに開いた及び閉じたCD73コンホメーションの既報告の結晶構造(それぞれPDB参照番号4H2F及び4H2I)を使用して、ヒトCD73の全ての構造図を作成した。
【0557】
アッセイ8:SPR及びBLI結合解析
野生型及び突然変異CD73タンパク質に対するMEDI9447の結合を、ProteOn機器(BioRad)を使用した表面プラズモン共鳴(SPR)によって計測した。CD73粗細胞上清タンパク質試料を、PBS、0.005%Tween-20、pH7.4(BioRad)中3μg/mlに希釈し、10mM NiSO4、10mM MES、pH6.0(BioRad)で予め活性化したHTGトリス-NTAセンサーチップ(BioRad)上に約400RUとなるように固定化した。非トランスフェクト細胞からの等しく希釈した粗細胞上清試料を参照チャネル対照として含めた。5nM~0.31nMの範囲の、PBS、0.005%Tween-20、pH7.4中に調製したMEDI9447の2倍希釈物を流すことにより、センサーグラムを記録した。場合によっては、MEDI9447との結合が弱かったCD73変異体について、抗体希釈は20nM~1.25nMの範囲であった。3分の会合相及び20分の解離相として100μL/分の流量で抗体結合を計測した。各ランの間に、300mM EDTA、pH8.5(BioRad)を30μL/分の流量で800秒間注入してセンサーチップ表面を再生させた。結合反応速度はProteOnデータ分析ソフトウェアを使用して分析した。二重参照を行い、且つ特に注記しない限り、データのフィッティングには1:1ラングミュア結合モデルを利用した。アミノ酸領域171~188内に突然変異を含む一部のCD73変異体は1:1モデルに対する適合性が低い(即ち、Chi2値>Rmaxの10%)。注記される場合、これらの変異体は異種抗原(2:1)モデルでフィッティングした。MEDI9447は親和性が高く(約4pM)、且つProteOnの感度は限られているため、CD73変異体に対するMEDI9447結合を比較する際には、2倍を超える反応速度計測値の変化のみを有意味なものと見なした。アッセイフォーマット(固定化した抗原)及びCD73の二量体状態に起因して、アビディティ効果によりKD値が誇張され得る。しかしながら、これが種々のCD73変異体に対するMEDI9447結合のランク付けに影響することはないものと予想される。
【0558】
抗CD73抗体mAb A及びmAb Bの結合のホットスポットのマッピングを、Octet QK384機器を使用したBLIによって実施した。タンパク質は全て、1×Kinetics緩衝液(ForteBio/Pall Life Sciences)中に調製した。粗細胞上清からの、C末端にヒスチジンタグを付加したCD73変異体を6μg/mlに希釈し、0.8nmの結合反応閾値となるようにHIS2バイオセンサーに固定化した。300秒のベースラインステップの後、センサーを30nMの抗体に浸漬した。会合時間及び解離時間は600秒であった。データ分析時のバックグラウンド結合サブトラクションのため、非トランスフェクト細胞上清参照対照を含めた。ForteBioデータ分析ソフトウェアを使用してデータを処理し、グラフを作成した。
【0559】
アッセイ9:CD73酵素活性アッセイ
CD73触媒によるAMPからアデノシン及び無機リン酸塩への加水分解を、無機リン酸塩の定量化(マラカイトグリーンアッセイ;R&D Systems)又はAMPによって阻害されるルシフェリンのATP依存性酸化の計測(CellTiterGloアッセイ;Promega)のいずれかによって分析した。データグラフ及び酵素反応速度計測値(ミカエリス・メンテンの非線形回帰)はPrismソフトウェア(Graphpad)を使用して作成した。実験はデュプリケート又はトリプリケートのいずれかで実施した。
【0560】
CellTiterGloアッセイを用いた可溶性組換えCD73の計測については、400pMの組換えCD73及び種々の濃度の抗CD73抗体をアッセイ緩衝液(25mMトリス pH7.5、5mM MgCl2、0.005%Tween-20)中37℃で1時間インキュベートし、その後、等容積の200μM AMP/600μM ATP(アッセイ緩衝液中)を添加した。37℃で1時間インキュベートした後、CellTiterGloアッセイを製造者の指示に従い使用して、試料中のAMP濃度を決定した。
【0561】
マラカイトグリーンアッセイを用いた可溶性組換えCD73の計測については、1nMの組換えCD73及び1nM抗体又は40μMアデノシン5’-(α,β-メチレン)二リン酸(APCP;Sigma-Aldrich)のいずれかをアッセイ緩衝液(25mMトリス pH7.5、5mM MgCl2、0.005%Tween-20)中室温で1時間インキュベートした。アッセイ緩衝液中の等容積の400μM AMP(抗CD73抗体について)又は3mM AMP(APCPについて)を添加し、試料を室温で15分間インキュベートした。マラカイトグリーンアッセイを製造者の指示に従い使用して、無機リン酸塩の濃度を決定した。
【0562】
固定化組換えCD73の計測については、100μg/mL BSAを補足したアッセイ緩衝液(25mMトリス pH7.5、5mM MgCl2、0.005%Tween-20)中100ng/mLの50μL CD73をニッケル被覆プレート(Life Technologies)に固定化した。未結合のCD73を洗浄して取り除き、50μLの抗CD73抗体(アッセイ緩衝液中)を添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを再び洗浄し、100μLの500μM AMP(アッセイ緩衝液中)を添加して、試料を室温で15分間インキュベートした。マラカイトグリーンアッセイを製造者の指示に従い使用して、無機リン酸塩の濃度を決定した。固定化CD73及び可溶性CD73の両方による一部の実験では、抗CD73抗体(IgG及びFab)は、10倍モル過剰のポリクローナルヒトFab断片(Bethyl Laboratories)及び100倍モル過剰のヒツジ抗ヒトIgG(Fd)(Meridian Life Sciences)と共に少なくとも2時間プレインキュベートした後にCD73に添加した。
【0563】
培養細胞における内因性CD73活性の計測については、96ウェルプレート内のRPMI/10%FBS(Life Technologies)にウェル当たり20,000個のMDA-MB-231細胞をプレーティングした。一晩インキュベートした後、ウェルを無血清RPMIで3回洗浄し、50μLの抗体(無血清RPMI中)を添加した。37℃で30分間インキュベートした後、各ウェルに25μLの1.2mM AMP(無血清RPMI中)を添加した。プレートを37℃で3時間インキュベートした。25μLの細胞上清と25μLの100mM ATPとを混合し、CellTiterGloアッセイを製造者の指示に従い使用して、試料中のAMP濃度を決定した。
【0564】
アッセイ10:CD73コンホメーション転移のmAb Aレポーターアッセイ
精製組換えヒトCD73に対するMEDI9447及びmAb Aの結合をOctet QK384機器で実施した。mAb A及びMEDI9447の結合を比較するため、CD73をPBS、pH7.4(Life Technologies)+0.5%ウシ血清アルブミン(PBSB;Sigma-Aldrich)中6μg/mLに希釈し、1.0nmの結合シグナル閾値となるようにHIS2バイオセンサーにロードした。次にバイオセンサーをPBSB単独又はPBSBと10μM ZnCl2(Sigma-Aldrich)、APCP、及び/又は2mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)(Life Technologies)のいずれかに移し、15分間インキュベートした。次に、バイオセンサーをPBSB中30nMに希釈したMEDI9447又はmAb Aを含有するPBSBに移し、抗体の会合を10分間計測した。
【0565】
MEDI9447がZnCl2及びAPCPの存在下でCD73コンホメーション転移に及ぼす効果を調べるため、PBS、pH7.4中10μg/mLに希釈したmAb Aを抗ヒトFc AHCバイオセンサー(ForteBio/Pall Life Sciences)に固定化した。400秒間の固定化ステップの後、バイオセンサーをPBS、pH7.4中50μg/mLの非特異的ポリクローナルヒトIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories)で10分間ブロックした。4分間のベースラインステップの後、PBS単独、又は10μM ZnCl2及び/又は0.5mM APCPを含有するPBS中250nM(二量体の分子量基準)に希釈したCD73が入ったウェルにおいてバイオセンサーを600秒間インキュベートすることにより、mAb A結合を計測した。CD73に結合したMEDI9447を含む試料については、PBS中250nMに希釈したマウスIgG1バージョンのMEDI9447(抗ヒトFcバイオセンサーとの結合を回避するために使用した)をCD73と共に室温で15分間プレインキュベートし、その後、ZnCl2及びAPCPと共にインキュベートした。MEDI9447 Fab及びマウスアイソタイプ対応対照IgG1(MedImmuneで作成された)は500nMで試験した。全てのアッセイステップの振盪速度は1000rpmであった。結合解析及びデータグラフはForteBioデータ分析ソフトウェアを使用して作成した。
【0566】
アッセイ11:SEC-MALS分析
CD73及びMEDI9447又はmAb Bで形成された複合体を分析する実験については、900ピコモルのCD73を、PBS、pH7.4中に希釈した900、450、90、又は0ピコモルの抗体とインキュベートした。900ピコモルの抗体のみの別個の試料も調製した。試料を室温で30分間インキュベートし、次に100μLの各試料を、HP 1100HPLC(Agilent)でTSKgel G3000WxL 5μm、7.88mm×30cmカラム(Tosoh Bioscience、LLC)を使用して、1mL/分の流量で20分間分離した。試料ランニング緩衝液は0.1M NaPi、0.1M NaSO4、pH6.8であった。HPLC分離後、全ての試料をDawn Heleos II MALS検出器及びOptilab T-rEx屈折率検出器(Wyatt)を使用して分析した。データはAstraソフトウェア(Wyatt)を使用して分析した。
【0567】
具体的な態様の前出の説明は、本発明の一般的性質を十分に完全に明らかにするものであり、従って第三者が、当該技術分野の範囲内の知識を適用することにより、本発明の一般的概念から逸脱することなく、過度の実験を行うことなしにかかる具体的な態様を容易に改良し及び/又はそれを様々な適用に適合させることができる。従って、かかる適合形態及び改良形態は、本明細書に提供される教示及び指針に基づけば、開示される態様の均等物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書における用語法又は表現法は、限定ではなく、説明を目的とするものであり、従って本明細書の用語法又は表現法は当業者によって教示及び指針を踏まえて解釈されるべきであることが理解されなければならない。
【0568】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
抗体可変軽鎖(VL)及び抗体可変重鎖(VH)を含む、ヒトCD73に特異的に結合する単離抗体又はその抗原結合断片であって、Val144、Lys180及びAsn185に対応するアミノ酸を含むヒトCD73タンパク質のエピトープに特異的に結合する、前記単離抗体又はその抗原結合断片。
有効量の抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片とを含む医薬組成物であって、前記抗CD73抗体が、請求項1又は2記載の抗体又はその抗原結合断片である、前記医薬組成物。
前記癌が、結腸直腸癌、膵癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、神経膠腫、膠芽腫、メラノーマ、卵巣癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌、肺癌及び乳癌から成る群より選択される、請求項5記載の医薬組成物。
請求項1又は2記載の抗体又はその抗原結合断片である第1の薬剤と、第1の薬剤以外の抗癌剤である第2の薬剤とを含む、対象におけるCD73関連癌を治療するための医薬組成物。
請求項1又は2記載の抗体又はその抗原結合断片である第1の薬剤を含む、第1の薬剤以外の抗癌剤である第2の薬剤との併用で、対象におけるCD73関連癌を治療するための医薬組成物。
第1の薬剤以外の抗癌剤である第2の薬剤を含む、請求項1又は2記載の抗体又はその抗原結合断片である第1の薬剤との併用で、対象におけるCD73関連癌を治療するための医薬組成物。
第2の薬剤が、PD-1(プログラム死1タンパク質)、PD-L1(プログラム死1タンパク質リガンド1)、PD-L2(プログラム死1タンパク質リガンド2)又はCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4タンパク質)に特異的に結合するものである、請求項7~9のいずれか1項記載の医薬組成物。
前記対象が、抗PD-1、抗PD-L1又は抗CTLA4療法を受けているか、受けたことがあるか、又は受ける予定である、請求項7~13のいずれか1項記載の医薬組成物。
前記抗PD-1、抗PD-L1又は抗CTLA4療法が、抗PD-1、抗PD-L1若しくは抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、請求項14記載の医薬組成物。
具体的な態様の前出の説明は、本発明の一般的性質を十分に完全に明らかにするものであり、従って第三者が、当該技術分野の範囲内の知識を適用することにより、本発明の一般的概念から逸脱することなく、過度の実験を行うことなしにかかる具体的な態様を容易に改良し及び/又はそれを様々な適用に適合させることができる。従って、かかる適合形態及び改良形態は、本明細書に提供される教示及び指針に基づけば、開示される態様の均等物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書における用語法又は表現法は、限定ではなく、説明を目的とするものであり、従って本明細書の用語法又は表現法は当業者によって教示及び指針を踏まえて解釈されるべきであることが理解されなければならない。
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)抗体V
L
を含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、前記V
L
が、アミノ酸配列:
[FW
1
]SGSLSNIGRNX
1
VN[FW
2
]LX
2
NX
3
RX
4
X
5
[FW
3
]ATWDDSX
6
X
7
GWX
8
[FW
4
]
(式中、[FW
1
]、[FW
2
]、[FW
3
]及び[FW
4
]はV
L
フレームワーク領域を表し、ここで、X
1
はアミノ酸残基プロリン(P)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)を表し、X
2
はアミノ酸残基アスパラギン(N)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X
3
はアミノ酸残基グルタミン(Q)又はロイシン(L)を表し、
X
4
はアミノ酸残基ロイシン(L)又はプロリン(P)を表し、
X
5
はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X
6
はアミノ酸残基ロイシン(L)又はヒスチジン(H)を表し、
X
7
はアミノ酸残基リジン(K)、プロリン(P)、イソロイシン(I)又はアスパラギン(N)を表し、及び
X
8
はアミノ酸残基ロイシン(L)又はスレオニン(T)を表す)を含む、単離結合分子又はその抗原結合断片。
(2)FW
1
が配列番号25又は26を含み、FW
2
が配列番号27又は28を含み、FW
3
が配列番号29を含み、及びFW
4
が配列番号30を含む、(1)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(3)抗体VHを含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、前記V
H
が、アミノ酸配列:
[FW
5
]SYAX
9
S[FW
6
]X
10
IX
11
GSX
12
GX
13
TYYADSVKG[FW
7
]LGYX
14
X
15
X
16
DX
17
[FW
8
]
(式中、[FW
5
]、[FW
6
]、[FW
7
]及び[FW
8
]はVHフレームワーク領域を表し、ここで、
X
9
はアミノ酸残基メチオニン(M)又はチロシン(Y)を表し、
X
10
はアミノ酸残基ロイシン(L)又はアラニン(A)を表し、
X
11
はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はセリン(S)を表し、
X
12
はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はグリシン(G)を表し、
X
13
はアミノ酸残基セリン(S)又はアルギニン(R)を表し、
X
14
はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X
15
はアミノ酸残基アルギニン(R)又はスレオニン(T)を表し、
X
16
はアミノ酸残基バリン(V)又はイソロイシン(I)を表し、及び
X
17
はアミノ酸残基チロシン(Y)、リジン(K)、メチオニン(M)、ロイシン(L)又はグルタミン酸(E)を表す)を含む、単離結合分子又はその抗原結合断片。
(4)FW
5
が配列番号31を含み、FW
6
が配列番号32を含み、FW
7
が配列番号33を含み、及びFW
8
が配列番号34を含む、(3)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(5)抗体V
L
及び抗体V
H
を含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、前記V
L
が、アミノ酸配列:
[FW
1
]SGSLSNIGRNX
1
VN[FW
2
]LX
2
NX
3
RX
4
X
5
[FW
3
]ATWDDSX
6
X
7
GWX
8
[FW
4
]
(式中、[FW
1
]、[FW
2
]、[FW
3
]及び[FW
4
]はV
L
フレームワーク領域を表し、ここで、
X
1
はアミノ酸残基プロリン(P)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X
2
はアミノ酸残基アスパラギン(N)又はアスパラギン酸(D)を表し、
X
3
はアミノ酸残基グルタミン(Q)又はロイシン(L)を表し、
X
4
はアミノ酸残基ロイシン(L)又はプロリン(P)を表し、
X
5
はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X
6
はアミノ酸残基ロイシン(L)又はヒスチジン(H)を表し、
X
7
はアミノ酸残基リジン(K)、プロリン(P)、イソロイシン(I)又はアスパラギン(N)を表し、及び
X
8
はアミノ酸残基ロイシン(L)又はスレオニン(T)を表す)を含み、前記V
H
が、アミノ酸配列:
[FW
5
]SYAX
9
S[FW
6
]X
10
IX
11
GSX
12
GX
13
TYYADSVKG[FW
7
]LGYX
14
X
15
X
16
DX
17
[FW
8
]
(式中、[FW
5
]、[FW
6
]、[FW
7
]及び[FW
8
]はVHフレームワーク領域を表し、ここで、
X
9
はアミノ酸残基メチオニン(M)又はチロシン(Y)を表し、
X
10
はアミノ酸残基ロイシン(L)又はアラニン(A)を表し、
X
11
はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はセリン(S)を表し、
X
12
はアミノ酸残基トリプトファン(W)又はグリシン(G)を表し、
X
13
はアミノ酸残基セリン(S)又はアルギニン(R)を表し、
X
14
はアミノ酸残基グリシン(G)又はセリン(S)を表し、
X
15
はアミノ酸残基アルギニン(R)又はスレオニン(T)を表し、
X
16
はアミノ酸残基バリン(V)又はイソロイシン(I)を表し、及び
X
17
はアミノ酸残基チロシン(Y)、リジン(K)、メチオニン(M)、ロイシン(L)又はグルタミン酸(E)を表す)を含む、単離結合分子又はその抗原結合断片。
(6)FW
1
が配列番号25又は26を含み、FW
2
が配列番号27又は28を含み、FW
3
が配列番号29を含み、FW
4
が配列番号30を含み、FW
5
が配列番号31を含み、FW
6
が配列番号32を含み、FW
7
が配列番号33を含み、及びFW
8
が配列番号34を含む、(5)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(7)抗体又はその抗原結合断片を含む、(1)~(6)のいずれか一に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(8)抗体V
L
を含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、前記V
L
が、それぞれ、配列番号46、49及び53;配列番号47、49、及び53;配列番号47、49、及び54;配列番号46、50、及び54;配列番号46、51、及び55;配列番号48、52、及び54;配列番号46、49、及び56;配列番号47、49、及び56;配列番号46、50、及び56;配列番号46、51、及び56;又は配列番号48、52、及び56と同一であるか、又はVL-CDRの1つ以上における4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3アミノ酸配列を含む、単離結合分子又はその抗原結合断片。
(9)抗体V
H
を含む、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、前記V
H
が、それぞれ、配列番号35、37及び41;配列番号36、37、及び42;配列番号36、38、及び43;配列番号36、39、及び44;配列番号36、40、及び44;配列番号35、37、及び45;配列番号36、37、及び45;配列番号36、38、及び45;配列番号36、39、及び45;又は配列番号36、40、及び45と同一であるか、又はVH-CDRの1つ以上における4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3アミノ酸配列を含む、単離結合分子又はその抗原結合断片。
(10)抗体又はその抗原結合断片を含む、(8)又は(9)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(11)配列番号46、49、53、35、37、及び41;配列番号47、49、53、35、37、及び41;配列番号47、49、54、36、37、及び42;配列番号46、50、54、36、38、及び43;配列番号46、51、55、36、39、及び44;配列番号48、52、54、36、40、及び44;配列番号46、49、56、35、37、及び41;配列番号46、49、53、35、37、及び45;配列番号47、49、56、36、37、及び45;配列番号46、50、56、36、38、及び45;配列番号46、51、56、36、39、及び45;配列番号48、52、56、36、40、及び45;又は配列番号46、49、56、35、37、及び45と同一であるか、又は1つ以上のCDRにおける4、3、2、若しくは1個のアミノ酸置換を除いてそれと同一であるVL-CDR1、VL-CRD2、VL-CDR3、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3アミノ酸配列を含むV
L
及びV
H
を含む、CD73に特異的に結合する単離抗体又はその抗原結合断片。
(12)抗体又はその抗原結合断片を含む、(11)に記載の単離抗体又はその抗原結合断片。
(13)配列番号68を含むV
L
と配列番号82を含むV
H
とを含む、単離抗体又はその抗原結合断片。
(14)配列番号68から本質的になるV
L
と配列番号82から本質的になるV
H
とを含む、単離抗体又はその抗原結合断片。
(15)配列番号68からなるV
L
と配列番号82からなるV
H
とを含む、単離抗体又はその抗原結合断片。
(16)重鎖定常領域又はその断片を含む、(7)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(17)重鎖定常領域又はその断片を含む、(10)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(18)重鎖定常領域又はその断片を含む、(11)~(15)のいずれか一に記載の単離抗体又はその抗原結合断片。
(19)(7)又は(10)~(18)のいずれか一に記載の単離抗体又はその抗原結合断片をコードする配列を含む核酸。
(20)(19)に記載の核酸配列を含む宿主細胞。
(21)(7)又は(10)~(18)のいずれか一に記載の抗体又はその抗原結合断片を作製する方法であって、(a)(20)に記載の細胞を培養するステップと、(b)前記抗体又はその抗原結合断片を単離するステップとを含む方法。
(22)CD73のアンタゴニストである、(7)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(23)CD73のアンタゴニストである、(10)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(24)CD73のアンタゴニストである、(11)~(15)のいずれか一に記載の単離抗体又はその抗原結合断片。
(25)前記CD73がヒトCD73である、(22)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(26)前記CD73がヒトCD73である、(23)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(27)前記CD73がヒトCD73である、(24)に記載の単離抗体又はその抗原結合断片。
(28)癌の治療用医薬の製造における、(7)~(27)のいずれか一に記載の抗体又はその抗原結合断片の使用。
(29)前記癌が、結腸直腸癌、膵癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、神経膠腫、膠芽腫、メラノーマ、卵巣癌、甲状腺癌、食道癌、前立腺癌、及び乳癌からなる群から選択される、(28)に記載の使用。
(30)参照と比べてCD73の発現が増加した腫瘍を有すると同定された対象を治療するための医薬の製造における、抗CD73抗体又はその抗原結合断片の使用。
(31)前記抗CD73抗体がMEDI9447又はPhen0203 hIgG1である、(30)に記載の使用。
(32)前記対象が、抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4療法を受けているか、受けたことがあるか、又は受ける予定である、(30)又は(31)に記載の使用。
(33)前記抗PD-1、抗PD-L1、又は抗CTLA4療法が、抗PD-1、抗PD-L1、若しくは抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、(32)に記載の使用。
(34)前記抗PD-1抗体が、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、ランブロリズマブ、MK-3475)、ニボルマブ(OPDIVA(登録商標)、BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、AMP-224、又はその抗原結合断片である、(33)に記載の使用。
(35)前記抗PD-L1抗体が、MEDI4736、BMS-936559、若しくはMPDL3280A又はその抗原結合断片である、(33)に記載の方法。
(36)前記抗CTLA-4抗体が、イピリムマブ、トレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)、又はその抗原結合断片である、(33)に記載の方法。
(37)有効量の抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片とを含む医薬製剤。
(38)前記抗CD73抗体が、MEDI9447、Phen0203 hIgG1、又はその抗原結合断片である、(37)に記載の医薬製剤。
(39)前記抗PD-L1抗体が、MEDI4736、BMS-936559、若しくはMPDL3280A、又はその抗原結合断片である、(37)又は(38)に記載の医薬製剤。
(40)有効量の抗CD73抗体又はその抗原結合断片と、抗CTLA4抗体又はその抗原結合断片とを含む医薬製剤。
(41)前記抗CD73抗体が、MEDI9447、Phen0203 hIgG1、又はその抗原結合断片である、(40)に記載の医薬製剤。
(42)前記抗CTLA4抗体が、イピリムマブ若しくはトレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)、又はその抗原結合断片である、(40)又は(41)に記載の医薬製剤。
(43)抗体V
L
及び抗体V
H
を有する、CD73に特異的に結合する単離結合分子又はその抗原結合断片であって、Val144、Lys180、及びAsn185に対応する1つ以上のアミノ酸を含むCD73タンパク質のエピトープに特異的に結合する、単離結合分子又はその抗原結合断片。
(44)Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応する1つ以上のアミノ酸を更に含む、(43)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(45)Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応する前記アミノ酸を含む、(43)又は(44)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(46)Tyr135、Lys136、Asn185、Tyr135、Lys136、及びAsn187に対応する前記アミノ酸を含む、(43)又は(44)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(47)CD73タンパク質の以下の領域:Tyr132~Val144及び/又はLys180~Asn187のうちの1つ以上におけるエピトープと結合する、(43)又は(44)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。
(48)Tyr132~Val144及び/又はLys180~Asn187におけるアミノ酸配列を含む、(43)又は(44)に記載の単離結合分子又はその抗原結合断片。