(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011599
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】複層面材用スペーサ、複層面材
(51)【国際特許分類】
E06B 3/667 20060101AFI20220107BHJP
C03C 27/06 20060101ALI20220107BHJP
E06B 3/663 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
E06B3/667
C03C27/06 101Z
E06B3/663 F
E06B3/663 E
E06B3/663 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112841
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】特許業務法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥 浩一
(72)【発明者】
【氏名】水野 正和
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大翔
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016BA06
2E016CA01
2E016CB01
2E016CB02
2E016CC02
2E016CC03
2E016FA00
4G061AA02
4G061BA01
4G061CB02
4G061CD02
4G061CD22
(57)【要約】
【課題】樹脂製の接続部材を用いた上で、必要とする接続強度が得られるように複層ガラスのスペーサ部材の端部同士を接続する。
【解決手段】複層ガラス(1)用スペーサ(4)は、端部(11a)同士を端面において突き合わせると共に筒状に延びるスペーサ部材(11)と、スペーサ部材の突き合わせた端部同士をその内部に収容された状態で接続する樹脂製の接続部材(12)を備える。スペーサ部材は、協働して筒状を形成すると共に互いに筒状の周方向の一部を形成する樹脂スペーサ片(20)と金属スペーサ片(30)とを備える。金属スペーサ片はその端部同士の表面にかしめによって凹んだかしめ跡部(31c)を備え、接続部材はかしめ跡部に対しその凹みが転写された状態に凹んで重なる転写跡部(45c)を備える。接続部材に筋部(45a)があれば、かしめて筋部の幅を広げられるので、接続強度が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する複数の面材の間に介在させる複層面材用スペーサであって、
端部同士を端面において突き合わせると共に筒状に延びるスペーサ部材と、前記スペーサ部材の突き合わせた端部同士をその内部に収容された状態で接続する樹脂製の接続部材とを備え、
前記スペーサ部材は、協働して筒状を形成すると共に互いに筒状の周方向の一部を形成する樹脂スペーサ片と金属スペーサ片とを備え、
前記金属スペーサ片はその端部同士の表面にかしめによって凹んだかしめ跡部を備え、
前記接続部材は前記かしめ跡部に対しその凹みが転写された状態に凹んで重なる転写跡部を備えることを特徴とする複層面材用スペーサ。
【請求項2】
前記スペーサ部材の端部同士を突き合わせる方向を突き合わせ方向とし、
前記かしめ跡部は突き合わせ方向に対して交差する方向に延びる溝状であることを特徴とする請求項1に記載の複層面材用スペーサ。
【請求項3】
前記接続部材は突き合わせ方向に延びる筋部を備え、
前記筋部は、前記転写跡部と、前記転写跡部に対し突き合わせ方向に隣接する位置において隆起した隆起筋部とを備え、
前記転写跡部は前記隆起筋部よりも、前記交差する方向のうち直交方向に長い寸法に塑性変形させられたことを特徴とする請求項2に記載の複層面材用スペーサ。
【請求項4】
前記接続部材は突き合わせ方向に延びる溝状の接続部材本体を備え、
前記接続部材本体は溝状の幅方向に対向する一対の側板を備え、
前記側板の先部は前記筋部であり、
前記金属スペーサ片は端部において突き合わせ方向に延びると共に一対の前記側板の前記筋部が別々に位置決めされる一対の筋位置決め部を備え、
前記筋位置決め部は、前記筋部のうち前記転写跡部に重なり合う前記かしめ跡部と、前記筋部のうち前記隆起筋部に嵌合する形に湾曲する湾曲部とを備えることを特徴とする請求項3に記載の複層面材用スペーサ。
【請求項5】
室内外方向に対して直交する方向で且つ突き合わせ方向に対して直交する方向を前記かしめ跡部の深さ方向とし、
室内外方向と突き合わせ方向で形成する平面を基準平面とし、
前記かしめ跡部は、突き合わせ方向に対向する第1のかしめ跡壁面および第2のかしめ跡壁面と、前記かしめ跡部の深さ方向の奥端において前記第1のかしめ跡壁面と前記第2のかしめ跡壁面とを繋ぐかしめ跡底面とを備え、
前記第1のかしめ跡壁面と前記第2のかしめ跡壁面とは互いに前記かしめ跡部の深さ方向の奥に向かうにつれて接近する形で傾斜する傾斜面であり、
前記スペーサ部材の端面に近い方の前記第1のかしめ跡壁面は、端面から遠い方の前記第2のかしめ跡壁面よりも前記基準平面に対する傾斜角度を急にしてあることを特徴とする請求項2,3又は4に記載の複層面材用スペーサ。
【請求項6】
空間層となる間隔をあけて対向する複数の面材と、複数の前記面材の間に介在する請求項1~5の何れかに記載の複層面材用スペーサとを備えることを特徴とする複層面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層面材用スペーサ、および複層面材に関する。複層面材としては例えば複層ガラスが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
複層ガラス用スペーサの一例としては、端部同士を端面において突き合わせた中空プロフィールと称されるスペーサ部材と、直線接続部材と称される接続部材であってスペーサ部材の端部同士をその内部に収容された状態で接続する接続部材を備えるものが知られている(特許文献1)。そして2本のスペーサ部材と接続部材との具体的な接続構造は、接続部材には凹部を備え、各スペーサ部材の端部には凹部の空間部に突入させる形で折り曲げられた部分(折り曲げ片)を備える構造である。より詳しく言えば以下の通りである。凹部は、底部と、スペーサ部材の端部同士を突き合わせる方向に対向する形で底部から起立する一対の壁部とを備える。そしてスペーサ部材の端部同士の折り曲げ片は、端部同士が突き合わさった状態での端面を境にして折り曲げられ、凹部の空間部内で両方の壁部に沿わせるようにしてある。接続部材は樹脂製又は金属製となっている。一方、スペーサ部材の材料は明記されていないが、折り曲げられることから金属製であると推測される。
なお樹脂は金属(アルミニウム)に比べて熱伝導率が低いことが知られており、スペーサ部材の材料の少なくとも一部に樹脂を用いたスペーサ(業界ではウォームエッジスペーサと称される。)も存在する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-508269号公報
【特許文献2】特開平10-25972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ウォームエッジスペーサに関して樹脂製の接続部材を用いた上で、上記した特許文献1に開示された複層ガラス用スペーサとは異なる手段により、必要とする接続強度が得られるようにスペーサ部材の端部同士を接続することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の複層面材用スペーサは、対向する複数の面材の間に介在させるものである。また本発明の複層面材用スペーサは、端部同士を端面において突き合わせると共に筒状に延びるスペーサ部材と、スペーサ部材の突き合わせた端部同士をその内部に収容された状態で接続する樹脂製の接続部材とを備える。
またスペーサ部材は、協働して筒状を形成すると共に互いに筒状の周方向の一部を形成する樹脂スペーサ片と金属スペーサ片とを備える。
そのうえで金属スペーサ片はその端部同士の表面にかしめによって凹んだかしめ跡部を備え、接続部材はかしめ跡部に対しその凹みが転写された状態に凹んで重なる転写跡部を備えるものとする。
【0006】
かしめ跡部の具体的な形状は問わないが、望ましい一例としては次のものがある。
即ちかしめ跡部は突き合わせ方向に対して交差する方向に延びる溝状にしたものである。突き合わせ方向とは、スペーサ部材の端部同士を突き合わせる方向のことである。
【0007】
接続部材は転写跡部をどこに備えるかを問わない。またかしめ跡部と転写跡部とによるスペーサ部材と接続部材との接続強度を向上するには次のようにすることが望ましい。
即ち接続部材は突き合わせ方向に延びる筋部を備えることにする。そして筋部は、転写跡部と、転写跡部に対し突き合わせ方向に隣接する位置において隆起した隆起筋部とを備えるものとする。一方、転写跡部は隆起筋部よりも、前記交差する方向のうち直交方向に長い寸法に塑性変形させられたものとする。
【0008】
接続部材は筋部を備える以外、どのような構成であるかを問わないし、金属スペーサ片もどのような構成であるかを問わないが、接続部材とスペーサ部材との接続強度を向上させるには、次のようにすることが望ましい。
即ち接続部材は突き合わせ方向に延びる溝状の接続部材本体を備えることにする。接続部材本体は溝状の幅方向に対向する一対の側板を備え、側板の先部を筋部とする。
金属スペーサ片は端部において突き合わせ方向に延びると共に一対の側板の筋部が別々に位置決めされる一対の筋位置決め部を備える。
そして筋位置決め部は、筋部のうち転写跡部に重なり合うかしめ跡部と、筋部のうち隆起筋部に嵌合する形に湾曲する湾曲部とを備えるようにする。
【0009】
接続部材はスペーサ部材の筒状をなす端部同士の内部に収容されているが、接続部材とスペーサ部材との接続強度を向上させ、スペーサ部材から抜け外れ難くするには、次のようにすることが望ましい。
即ちかしめ跡部は、突き合わせ方向に対向する第1のかしめ跡壁面および第2のかしめ跡壁面と、かしめ跡部の深さ方向の奥端において第1のかしめ跡壁面と第2のかしめ跡壁面とを繋ぐかしめ跡底面とを備えることにする。
第1のかしめ跡壁面と第2のかしめ跡壁面とは互いにかしめ跡部の深さ方向の奥に向かうにつれて接近する形で傾斜する傾斜面にする。
スペーサ部材の端面に近い方の第1のかしめ跡壁面は、端面から遠い方の第2のかしめ跡壁面よりも基準平面に対する傾斜角度を急にする。
「かしめ跡部の深さ方向」とは、室内外方向に対して直交する方向で且つ突き合わせ方向に対して直交する方向のことである。
「基準平面」とは、室内外方向と突き合わせ方向で形成する平面のことである。
【0010】
本発明は上記した複層面材用スペーサだけでなく、複層面材についても適用される。即ち、本発明の複層面材は、空間層となる間隔をあけて対向する複数の面材と、複数の面材の間に介在する複層面材用スペーサとを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複層面材用スペーサおよび複層面材は、金属スペーサ片のかしめ跡部に対し接続部材の転写跡部が転写された状態に凹んで重なることによって、スペーサ部材の端部同士と接続部材との接続強度が確保される。
【0012】
また複層面材用スペーサおよび複層面材は、突き合わせ方向に対して交差する方向に延びる溝状にかしめ跡部を形成し、しかも転写跡部を筋部に形成すると共に隆起筋部よりも前記交差する方向のうち直交方向へ長くしてある場合には、例えば転写跡部を隆起筋部と前記直交方向へ同じ長さにしてある接続部材を用いる場合に比べて、スペーサ部材の端部同士と接続部材との接続強度が向上するし、筋部のない平面部分に転写跡部が形成された接続部材を用いる場合に比べて、転写跡部を塑性変形させ易く、スペーサ部材の端部同士と接続部材との接続強度が向上する。
【0013】
また複層面材用スペーサおよび複層面材は、金属スペーサ片に一対の筋位置決め部を備える場合には、筋位置決め部の湾曲部によって接続部材と金属スペーサ片とが位置決めされた上でかしめられていることになるので、筋位置決め部のない接続部材を用いる場合に比べて、接続部材とスペーサ部材との接続強度が向上する。
【0014】
また複層面材用スペーサおよび複層面材は、スペーサ部材の端面に近い方の第1のかしめ跡壁面が端面から遠い方の第2のかしめ跡壁面よりも基準平面に対する傾斜角度を急にしてある場合には、例えば第1のかしめ跡壁面が第2のかしめ跡壁面よりも当該傾斜角度を緩やかにしてある場合に比べて、接続部材がスペーサ部材の端部から抜き外れ難く、接続部材とスペーサ部材との接続強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第一実施形態のスペーサの一部を示す斜視図である。
【
図4】
図1のIV方向から見たスペーサの接続部材の一部を示す平面図である。
【
図5】第一実施形態の複層面材を示す正面図である。
【
図7】(A)~(E)図はスペーサを組み立てる前の接続部材を示す平面図、正面図、右側面図、D-D線断面図、E-E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第一実施形態の複層面材としての複層ガラス1は
図5,6に示すように、空間層2となる間隔をあけて厚み方向に対向する一対の面材としての板ガラス3,3と、一対の板ガラス3,3の縁部に沿って配置されると共に一対の板ガラス3,3の間に介在するスペーサ4と、一対の板ガラス3,3とスペーサ4の間に別々に配置される一対の第1のシール部材5,5と、一対の板ガラス3,3の間であってスペーサ4に対して空間層2とは反対側に配置される第2のシール部材6とを備える。なお複層ガラス1の縁部にはその全周に亘って枠材(図示略)が取り付けられる。そして複層ガラス1と枠材とが一体化したものが建具である。
【0017】
第1のシール部材5の材料は例えばブチルゴム等である。第2のシール部材6の材料は例えばポリサルファイド等である。
【0018】
板ガラス3はその厚み方向から見て矩形状である。したがって複層ガラス1も矩形状である。また複層ガラス1は一対の板ガラス3,3の縁部に沿ってその全周に亘ってスペーサ4を配置してある。したがってスペーサ4も矩形状である。
【0019】
スペーサ4はウォームエッジスペーサである。またスペーサ4は、板ガラス3の縁部の周方向に沿ってその全周に配置されると共に矩形状に折り曲げられた一本のスペーサ部材11と、板ガラス3の矩形状の一辺の長さ方向の中間部においてスペーサ部材11の端部11a同士をその内部に収容された状態で接続する樹脂製の接続部材12と、スペーサ部材11の内部に収容される乾燥剤13とを備える。なお乾燥剤13は例えば粒状である。そして多数の乾燥剤13がスペーサ部材11の内部に収容される。
【0020】
ここで方向に関する主要な用語を以下のように定める。
矩形状のスペーサ4を基準にして矩形の内側を「空間層側」と称し、空間層側とは反対側を「反空間層側」と称する。また「空間層側」と「反空間層側」とは、スペーサ4を基準とする場合に限らず、任意のある一点を基準にした場合にも用いられる。
一対の板ガラス3,3を対向させる方向および板ガラス3の厚み方向を「室内外方向」と称する。
スペーサ部材11の端部11a同士を突き合わせる方向を「突き合わせ方向」と称する。本実施形態では突き合わせ方向は直線方向である。ちなみに室内外方向と突き合わせ方向とは直交する。
室内外方向と突き合わせ方向とで形成される平面(両方向に延びる平面)を「基準平面S」と称する。
スペーサ部材11は折り曲げる前には直線状であり、この直線方向を「長手方向」と称する。
【0021】
スペーサ部材11は筒状に延びるもので、板ガラス3の縁部の形状に合わせて矩形状に折り曲げられ、端部11a同士を端面において突き合わせてある。
また
図1に示すようにスペーサ部材11は樹脂スペーサ片20と金属スペーサ片30とを備える。樹脂スペーサ片20は例えばポリ塩化ビニル製で、金属スペーサ片30は例えばステンレス製である。
樹脂スペーサ片20と金属スペーサ片30とは協働して筒状を形成すると共に互いに筒状の周方向の一部を形成する。言い換えると、樹脂スペーサ片20と金属スペーサ片30とは反空間層側と空間層側と一対の板ガラス3,3側(室内外側)とを協働して筒状に囲む。樹脂スペーサ片20と金属スペーサ片30とは互いに板ガラス3の縁部に沿って延び、矩形状に折り曲げられ、矩形状に折り曲げられた両端部が端面において対向する状態になっている。両端部が端面において対向する状態になっているので、樹脂スペーサ片20と金属スペーサ片30とはスペーサ部材11の両端部において突き合わせ方向に延びていることになる。また樹脂スペーサ片20と金属スペーサ片30とは互いに溝状である。
【0022】
樹脂スペーサ片20は
図1,2に示すように溝状の底部を形成する樹脂底壁21と、溝状の幅方向に対向する一対の樹脂側壁22,22とを備える。金属スペーサ片30も樹脂スペーサ片20と同様に、溝状の底部を形成する金属底壁31と、溝状の幅方向に対向する一対の金属側壁32,32とを備える。
【0023】
樹脂スペーサ片20と金属スペーサ片30とは前述したように溝状で、その溝状の開口方向を互いに対向する方向とし、互いの開口を塞ぐ状態で一体化されている。樹脂スペーサ片20の溝状の開口方向は反空間層側であり、金属スペーサ片30の溝状の開口方向は空間層側である。また金属スペーサ片30と樹脂スペーサ片20の溝状の幅方向は室内外方向に一致する。
【0024】
ここで樹脂スペーサ片20の溝状の幅方向に関して、一対の樹脂側壁22,22を基準にしてその間の方を「幅内側」、一対の樹脂側壁22,22を中心にしてその両側の方を「幅外側」と称することにする。金属スペーサ片30の溝状の幅方向に関して、および同様の溝状の部分を有する接続部材12に関しても同様とする。
【0025】
本実施形態では一対の金属側壁32,32は一対の樹脂側壁22,22を溝幅外側から覆う形で、一対の樹脂側壁22,22に取り付けられている。より詳しくは
図2に示すように一対の樹脂側壁22,22の幅外側の面には金属側壁32が重ね合わされ、例えば接着して取り付けられている。
【0026】
樹脂底壁21は長手方向に間隔をあけて貫通穴21aを備える。貫通穴21aはスペーサ部材11の内部空間と空間層2とに通じている。したがって空間層2の湿気は貫通穴21aを経て乾燥剤13で吸収される。
【0027】
上記した樹脂スペーサ片20と金属スペーサ片30とを筒状に一体化したものがスペーサ部材11である。そしてスペーサ部材11の端部11a同士を接続するのが接続部材12である。
【0028】
接続部材12は
図1,7に示すように、突き合わせ方向に延びる溝状の接続部材本体40と、接続部材本体40の幅外側の両面から外側に張り出す張出片41と、接続部材本体40の開口を部分的に閉鎖する閉鎖板42と、接続部材本体40と閉鎖板42とで形成される筒状の外周に沿って鍔状に突出する鍔片43とを備える。ちなみに接続部材12は例えば樹脂スペーサ片20よりも引張弾性率・降伏応力が大きな樹脂で形成される。
【0029】
接続部材本体40は突き合わせ方向、本実施形態では直線方向に延びている。またスペーサ部材11の内部において接続部材本体40の溝状の開口は金属スペーサ片30の金属底壁31によって塞がれる状態になる。また接続部材本体40は、溝状の幅方向に対向する一対の側板45,45と、一対の側板45,45を溝状の深さ方向の奥端において繋ぐと共に溝状の底を形成する底板46とを備える。
【0030】
張出片41は、突き合わせ方向に間隔をあけて一対の側板45,45における幅外側の両面から外側に張り出している。接続部材12の幅方向の寸法は幅方向に離れた張出片41の先端を結ぶ間隔であり、接続部材12をスペーサ部材11の内部に収容する前の状態においては樹脂スペーサ片20の一対の樹脂側壁22,22の間隔よりも僅かに長くしてある。したがって接続部材12は、スペーサ部材11の端部11a同士に収容された状態では張出片41と樹脂側壁22とが密接する状態になる。
【0031】
底板46は突き合わせ方向に延びている。また底板46の突き合わせ方向の両端部は、端部のうち突き合わせ方向の全長の中心側から先端に向かって徐々に接続部材本体40の溝状の深さが浅くなる状態に傾斜させてある。
側板45も突き合わせ方向に延びている。また側板45の突き合わせ方向の両端部も、端部のうち突き合わせ方向の中心側から先端に向かって接続部材本体40の溝状の幅が狭くなる状態に傾斜させてある。さらに溝状の深さ方向の寸法に関して、側板45の突き合わせ方向の両端部は、当該両端部以外の部分(長さ方向の全長の中間部分)よりも寸法を短くしてある。
これら傾斜や寸法は接続部材12をスペーサ部材11の端部に差し込み易くするためである。
【0032】
閉鎖板42は一対の側板45,45に架設される。架設位置は、突き合わせ方向に関しては全長の中間部であり、溝状の深さ方向に関しては一対の側板45,45の先部よりも奥側(底板46側)である。閉鎖板42は一対の側板45,45と底板46と協働して矩形の筒状部47を形成する。また筒状部47の周方向の全周に亘って形成されるのが鍔片43である。
【0033】
鍔片43は筒状部47の周方向のうち閉鎖板42に沿って延びる部分に関しては接続部材本体40の深さ方向とは反対方向に向かって突出しているが、その突出端よりも一対の側板45,45の先端の方が閉鎖板42から離れた位置となっている。したがって
図7(C)では鍔片43の上端は側板45の上端よりも低い位置となっている。鍔片43は筒状部47の周方向のうち底板46に沿って延びる部分に関しては、スペーサ部材11の端部11a同士を接続部材12が接続した状態では、樹脂スペーサ片20の端部同士における樹脂底壁22,22の間に挟まれる状態になる。
【0034】
また側板45の先部45a(溝状の入り口側の端部)を筋部45aと称する。詳しくは本実施形態において筋部45aとは
図7に示すように、接続部材12とスペーサ部材11とを接続する前の状態においては、側板45のうち接続部材本体40の深さ方向の全長において、閉鎖板42よりも接続部材本体40の深さ方向とは反対方向に向かって突出している部分である。
【0035】
接続部材12とスペーサ部材11とを接続する前の状態においては、スペーサ部材11の金属スペーサ片30は、金属底壁31に一対の筋部45aを別々に位置決めする一対の筋位置決め部31bを備える。筋位置決め部31bは、室内外方向から見て矩形状に曲げられた金属スペーサ片30の全長に亘って、より詳しくは金属スペーサ片30の矩形状の角部を除いた部分に形成される。また筋位置決め部31bは
図6に示すように、金属スペーサ片30の断面から見ると、筋部45aを覆い且つ反空間層側に膨らむ形の円弧状に湾曲している。ちなみに断面とは、スペーサ部材11を長手方向に直交する面で切断したときの断面である。
【0036】
上記した接続部材12とスペーサ部材11とはかしめられて一体化される。詳しくは、最初に接続部材12鍔片43に対して両側部分をスペーサ部材11の端部11a同士の内部に差し込むようにすると、筋部45aが筋位置決め部31bに沿って侵入して位置決めされる。また鍔片43がスペーサ部材11の端部11a同士に挟まれた状態になる。そのうえで次に両方の金属底壁31の一対の筋位置決め部31bに対しかしめ工具としてのパンチを押付ける。各筋位置決め部31bに対して複数個所にパンチを押し付ける。そうすると、筋位置決め部31bは局部的に筋部45aに向かって押し付けられ、筋位置決め部31bと筋部45aとが塑性変形によって固定される、つまりかしめられる。したがって金属底壁31の筋位置決め部31bの表面にはかしめによって凹んだかしめ跡部31cが形成され、筋部45aにはかしめ跡部31cの凹みが転写された状態に重なる転写跡部45cが形成される。
【0037】
かしめられた筋部45aは、転写跡部45cと、転写跡部45cに対して突き合わせ方向に隣接する位置において隆起した隆起筋部45dとを備える。
【0038】
隆起筋部45dは、突き合わせ方向から見ると、かしめられる前の筋部45aの形状と同じである。
図1,4に示すように室内外方向に関して転写跡部45cの寸法L1(最大値)は隆起筋部45dの寸法L2よりも長くなっている。つまり転写跡部45cは隆起筋部45dよりも室内外方向に長い寸法に塑性変形されられている。
転写跡部45cは突き合わせ方向に対して交差する方向、より詳しくは直交する方向(室内外方向)に延びる溝状である。そして転写跡部45cの溝状の底面は、室内外方向の寸法L1を突き合わせ方向の寸法L3よりも長くしてある。
【0039】
かしめられた筋位置決め部31bは、かしめ跡部31cと、隆起筋部45dに嵌合する形に湾曲する湾曲部としての第2の湾曲部31dとを備える。
【0040】
第2の湾曲部31dは、突き合わせ方向から見ると、かしめられる前の筋位置決め部31bの形状と同じである。
【0041】
かしめ跡部31cは転写跡部45cに重なり合う。またかしめ跡部31cは
図1,2に示すように室内外方向に延びる溝状になっている。より詳しくはかしめ跡部31cは、底面が室内外方向に一直線に延びる状態の矩形状となっている。そしてかしめ跡部31cの底面は転写跡部45cの底面と同様に、室内外方向の寸法を突き合わせ方向の寸法よりも長くしてある。
【0042】
かしめ跡部31cは
図3に示すように、突き合わせ方向に対向する第1のかしめ跡壁面31hおよび第2のかしめ跡壁面31iと、かしめ跡部31cの深さ方向の奥端において第1のかしめ跡壁面31hと第2のかしめ跡壁面31iとを繋ぐかしめ跡底面31jとを備える。かしめ跡部31cの深さ方向は、室内外方向に対して直交する方向で且つ突き合わせ方向に対して直交する方向である。
【0043】
第1のかしめ跡壁面31hと第2のかしめ跡壁面31iとは
図3に示すように互いにかしめ跡部31cの深さ方向の奥に向かうにつれて接近する形で傾斜する傾斜面である。また基準平面Sに対する傾斜角度に関して、スペーサ部材11の端面に近い方の第1のかしめ跡壁面31hの傾斜角度θ2は、端面から遠い方の第2のかしめ跡壁面31iの傾斜角度θ1よりも急である。
【0044】
上記した第一実施形態の複層ガラス1およびスペーサ4は、金属スペーサ片30のかしめ跡部31cに対し接続部材12の転写跡部45cが転写された状態に凹んで重なる(かしめ跡部31cが接続部材12に食い込む)ことによって、スペーサ部材11の端部11a同士と接続部材12との接続強度が確保される。
【0045】
また第一実施形態の複層ガラス1およびスペーサ4は、突き合わせ方向に対して交差する方向に延びる溝状にかしめ跡部31cを形成し、しかも転写跡部45cを筋部45aに形成すると共に隆起筋部45dよりも前記交差する方向のうち直交方向へ長くしてあるので、例えば転写跡部45cを隆起筋部45dと前記交差する方向へ同じ長さにしてある接続部材を用いる場合に比べて、スペーサ部材11の端部11a同士と接続部材12との接続強度が向上するし、例えば筋部45aのない平面部分に転写跡部45cが形成された接続部材を用いる場合に比べて、転写跡部45cを塑性変形させ易く、スペーサ部材11の端部11a同士と接続部材12との接続強度が向上する。
【0046】
また第一実施形態の複層ガラス1およびスペーサ4は、金属スペーサ片30に一対の筋位置決め部31bを備えるので、筋位置決め部31bの湾曲部としての第2の湾曲部31dによって接続部材12と金属スペーサ片30とが位置決めされた上でかしめられていることになり、筋位置決め部31bのない接続部材を用いる場合に比べて、接続部材12とスペーサ部材11との接続強度が向上する。
【0047】
また第一実施形態の複層ガラス1およびスペーサ4は、基準平面Sに対する傾斜角度に関して、スペーサ部材11の端面に近い方の第1のかしめ跡壁面31hにおける傾斜角度θ2を端面から遠い方の第2のかしめ跡壁面31iの傾斜角度θ1よりも急角度にしてあるので、例えば第1のかしめ跡壁面31hの傾斜角度θ2を第2のかしめ跡壁面31iの傾斜角度θ1よりも緩やかにしてある場合に比べて、接続部材12がスペーサ部材11の端部11aから抜き外れ難く、接続部材12とスペーサ部材11との接続強度が向上する。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えばスペーサ4は、上記実施形態では室内外方向から見て矩形状に折り曲げられた一本のスペーサ部材11を用いるものであるが、本発明ではこれに限らず、例えば複数本のスペーサ部材11を用いて全体的に矩形状として用いるものであっても良い。また接続部材12は、上記実施形態では矩形状の複層ガラス1の矩形状の一辺の中間部においてスペーサ部材11の端部11a同士を直線状に接続するものであったが、本発明ではこれに限らず、例えば矩形状の複層ガラス1の角部においてスペーサ部材11の端部11a同士を直角状に接続するものであっても良い。また複層面材は、上記実施形態では複層ガラスであり、二枚の板ガラスを用いたものであったが、本発明ではこれに限らず三枚以上の板ガラスを用いたものであっても良い。また面材は、上記実施形態では板ガラスであったが、本発明ではこれに限らず、透明な板であれば良く、例えば樹脂製の透明な板であっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 複層ガラス
2 空間層
3 板ガラス
4 スペーサ
5 第1のシール部材
6 第2のシール部材
11 スペーサ部材
11a 端部
12 接続部材
13 乾燥剤
20 樹脂スペーサ片
21 樹脂底壁
21a 貫通穴
22 樹脂側壁
30 金属スペーサ片
31 金属底壁
31b 筋位置決め部
31c かしめ跡部
31d 第2の湾曲部
31h 第1のかしめ跡壁面
31i 第2のかしめ跡壁面
31j かしめ跡底面
32 金属側壁
32a 先部
40 接続部材本体
41 張出片
42 閉鎖板
43 鍔片
45 側板
45a 筋部
45c 転写跡部
45d 隆起筋部
46 底板
47 筒状部
L1 転写跡部の室内外方向における寸法
L2 隆起筋部の寸法
L3 転写跡部の底面の突き合わせ方向の寸法
S 基準平面