(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116025
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】薬剤送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/148 20060101AFI20220802BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61M5/148
A61M5/32 510H
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022077848
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2019516419の分割
【原出願日】2017-09-20
(31)【優先権主張番号】16190881.9
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シャーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ベアーテ・フランケ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアーノ・プラデル
(72)【発明者】
【氏名】イラーリオ・メルツィ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ヴェルラーク
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ネルソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ハウジングと、ハウジング内に配置された薬剤のリザーバと、投薬部材とを含む薬剤送達デバイスを提供する。
【解決手段】投薬部材24は、リザーバ23が薬剤を含むとき、リザーバ23から薬剤を投薬するようにハウジング11に対して第1の位置から第2の位置に移動可能である。薬剤送達デバイス10は、第1および第2の付勢部材25、26をさらに含む。第1の付勢部材25は、投薬部材24を第1の位置から中間位置まで付勢するように構成される。第2の付勢部材26は、投薬部材24を中間位置から第2の位置まで付勢するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達デバイスであって:
ハウジングと;
該ハウジング内に配置された薬剤のリザーバと;
該リザーバが薬剤を含むときにリザーバから薬剤を投薬するようにハウジングに対して第1の位置から第2の位置まで移動可能な投薬部材と;
該投薬部材を第1の位置から中間位置まで付勢するように構成された第1の付勢部材と;
投薬部材を中間位置から第2の位置まで付勢するように構成された第2の付勢部材と
を含む、前記薬剤送達デバイス。
【請求項2】
第1および第2の付勢部材は、共通軸を共有する、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項3】
第1および/または第2の付勢部材は、ばねを含む、請求項1または2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項4】
第1および第2の付勢部材は、異なるばね定数を有するばねを含む、請求項3に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項5】
投薬部材の第1の位置から中間位置までの動きを可能にするようにロック状態からロック解除状態に移動可能な第1のロックと、
投薬部材の中間位置から第2の位置までの動きを可能にするようにロック状態からロック解除状態に移動可能な第2のロックと
をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項6】
第2のロックは、投薬部材の第1の位置から中間位置までの動きによってロック解除状態へと動かされるように構成される、請求項5に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項7】
第2の付勢部材は、投薬部材が第1の位置から中間位置まで動くとき、投薬部材の動きの方向に第1の付勢部材に対して変位される、請求項1~6のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項8】
第1および第2の付勢部材は、ハウジング内に入れ子式に配置される、請求項1~7のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項9】
伸長部材をさらに含み、ここで、第2の付勢部材は、伸長部材の第1の側と投薬部材との間に配置され、第1の付勢部材は、伸長部材の第2の側に配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項10】
第1の付勢部材は、伸長部材の前記第2の側に、投薬部材を第1の位置から中間位置まで付勢するように力を及ぼすように構成される、請求項9に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項11】
伸長部材は、投薬部材を第1の位置から中間位置まで動かすように投薬部材に接して付勢される、請求項9または10に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項12】
針は、該針がハウジング内に完全に配置される後退位置から、針がハウジングから突出する伸長位置まで移動可能である、請求項1~11のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項13】
針は、投薬部材の第1の位置から中間位置までの動きによって針が後退位置から伸長位置まで動くように、投薬部材に連結される、請求項12に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項14】
投薬部材は、リザーバが薬剤を含むとき、薬剤をリザーバから投薬するようにハウジングに対して第1の位置から中間位置まで移動可能であり、さらなる薬剤をリザーバから投薬するように中間位置から第2の位置まで移動可能である、請求項1~13のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項15】
リザーバは、潰れ可能な容器を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項16】
潰れ可能な容器は、可撓性バッグを含む、請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項17】
投薬部材は、平坦プレートを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項18】
投薬部材は、第1および第2の側を含み、第1および第2の付勢部材は、投薬部材の第1の側に配置され、リザーバは、投薬部材の第2の側に配置される、請求項1~17のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項19】
リザーバは、薬剤を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項20】
ハウジングと、該ハウジング内に配置されたリザーバと、投薬部材と、第1および第2の付勢部材とを含む薬剤送達デバイスから薬剤を投薬する方法であって:
第1の付勢部材を解放し、投薬部材を第1の位置から中間位置まで動かすように投薬部材に力を及ぼすことと;次いで、
第2の付勢部材を解放し、投薬部材を中間位置から第2の位置へと動かすように投薬部材に力を及ぼし、リザーバから薬剤を排出することと
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な疾病で、薬剤の注射による定期的な処置が必要とされている。そのような注射は、注射デバイスを用いて行うことができる。薬剤の注射を送達するための様々な注射デバイスが当業界で既知である。注目を集めている他のタイプの注射ポンプは、ボーラス注射デバイスである。ボーラス注射デバイスの中には、比較的大量の薬剤、典型的には少なくとも1ml、場合によっては数mlの薬剤での使用を対象とするものがある。そのような大量の薬剤の注射は、数分または数時間要することがある。そのような高容量ボーラス注射デバイスは、大容量デバイス(LVD)と呼ばれる。一般的に、そのようなデバイスは、患者自身によって操作されるが、医療関係者によって操作されることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、改善された薬剤送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、ハウジングと;ハウジング内に配置された薬剤のリザーバと;リザーバが薬剤を含むときにリザーバから薬剤を投薬するようにハウジングに対して第1の位置から第2の位置まで移動可能な投薬部材と;投薬部材を第1の位置から中間位置まで付勢するように構成された第1の付勢部材と;投薬部材を中間位置から第2の位置まで付勢するように構成された第2の付勢部材とを含む、薬剤送達デバイスが提供される。
【0005】
したがって、第1および第2の付勢部材が投薬部材を付勢する方向における薬剤送達デバイスの長さを、単一の付勢部材しか含まない薬剤送達デバイスに比べてより短くすることができる。これは、ハウジング内で投薬部材の同じ総変位を達成するのに、第1および第2の付勢部材のそれぞれの長さを、前記単一の付勢部材よりも短くすることができるからである。第1および第2の付勢部材は、それらが投薬部材を付勢する方向において前記単一の付勢部材よりも場所を取らなくて済むようにハウジング内に配置することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1および第2の付勢部材は、投薬部材の第1の位置から中間位置までの動きが、投薬部材の中間位置から第2の位置までの動きと異なるように、異なる特徴を有する。
【0007】
一実施形態では、第1および第2の付勢部材は、共通軸を共有する。第1および第2の付勢部材のうちの一方は、投薬部材が第1の位置にあるとき第1および第2の付勢部材のうちの他方の内部に配置される。第1および第2の付勢部材は、入れ子式構造で配置することができる。
【0008】
一実施形態では、第1および/または第2の付勢部材は、ばねを含む。第1および第2の付勢部材は、異なるばね定数を有するばねを含むことができる。したがって、投薬部材の第1の位置から中間位置までの動きは、投薬部材の中間位置から第2の位置までの動き動きとは異なる。第1のばねは、第2のばねよりもより大きいまたはより小さいばね定数を有することができる。
【0009】
一実施形態では、薬剤送達デバイスは、投薬部材の第1の位置から中間位置までの動きを可能にするようにロック状態からロック解除状態に移動可能な第1のロック、および/または投薬部材の中間位置から第2の位置までの動きを可能にするようにロック状態からロック解除状態に移動可能な第2のロックをさらに含む。第2のロックは、投薬部材の第1の位置から中間位置までの動きによってロック解除状態へと動かされるように構成される。したがって、患者は、投薬部材の中間位置から第2の位置までの動きの開始のために、第2のロックを手動で動作しなくて済む。
【0010】
一実施形態では、第2の付勢部材は、投薬部材が第1の位置から中間位置まで動くとき、投薬部材の動きの方向に第1の付勢部材に対して変位される。
【0011】
一実施形態では、第1および第2の付勢部材は、ハウジング内に入れ子式に配置される。したがって、薬剤送達デバイスのサイズが減少し、薬剤送達デバイスの輸送および収納がより簡単になる。
【0012】
一実施形態では、薬剤送達デバイスは、伸長部材(extension member)をさらに含み、第2の付勢部材は、伸長部材の第1の側と投薬部材との間に配置され、第1の付勢部材は、伸長部材の第2の側に配置される。第1の付勢部材は、伸長部材の前記第2の側に、投薬部材を第1の位置から中間位置まで付勢するように力を及ぼすように構成される。
【0013】
一実施形態では、伸長部材は、投薬部材に接して付勢されるように構成される。伸長部材は、投薬部材を第1の位置から中間位置まで動かすように投薬部材に接して付勢される。
【0014】
一実施形態では、針は、ハウジング内に完全に配置される後退位置から、ハウジングから突出する伸長位置まで移動可能である。そのような実施形態では、薬剤送達デバイスが注射部位に適用され針が後退位置から伸長位置に動かされると、針は患者の注射部位に入る。したがって、患者は、針を注射部位に手動で挿入しなくて済む。針は、投薬部材の第1の位置から中間位置までの動きによって針が後退位置から伸長位置まで動くように、投薬部材に連結される。
【0015】
一実施形態では、第1の付勢部材は、第2の付勢部材よりも変位部材に大きな力を及ぼすように構成される。したがって、針を後退位置から伸長位置に動かす力は、リザーバから薬剤を投薬するのに投薬部材に及ぼされる力よりも大きい。あるいは、針を後退位置から伸長位置に動かすのに及ぼされる力がリザーバから薬剤を投薬するのに投薬部材に及ぼされる力よりも小さいように、第1の付勢部材は、第2の付勢部材よりも変位部材により小さな力を及ぼすように構成することができる。
【0016】
一実施形態では、投薬部材は、リザーバが薬剤を含むとき、薬剤をリザーバから投薬するようにハウジングに対して第1の位置から中間位置まで移動可能であり、さらなる薬剤をリザーバから投薬するように中間位置から第2の位置まで移動可能である。そのような実施形態では、投薬部材の第1の位置から中間位置までの動きの間における薬剤の送達速度は、投薬部材の中間位置から第2の位置までの動きの間の送達速度とは異なり、たとえばより大きいまたはより小さくてよい。一実施形態では、第1の付勢部材は、第2の付勢部材よりも変位部材上に大きな力を及ぼすように構成される。したがって、変位部材の第1の位置から中間位置までの動きの間の薬物送達速度は、その後の変位部材の中間位置から第2の位置までの動きの間の薬物投薬速度よりも最初は大きい。あるいは、第2の付勢部材は、第1の付勢部材よりも変位部材により大きな力を及ぼすように構成することができる。
【0017】
一実施形態では、伸長部材は、投薬部材が第1の位置から中間位置まで動くとき、投薬部材に対して静止したままにある。
【0018】
一実施形態では、リザーバは、薬剤を含む。リザーバは、潰れ可能な容器を含む。リザーバは、可撓性バッグであってもよい。リザーバは、入れ子式の潰れ可能な容器を含んでもよい。一実施形態では、潰れ可能な容器は、ベローズを含む。
【0019】
投薬部材は、平坦プレートを含むことができる。
【0020】
一実施形態では、投薬部材は、第1および第2の側を含み、第1および第2の付勢部材は、投薬部材の第1の側に配置され、リザーバは、投薬部材の第2の側に配置される。
【0021】
一実施形態では、ハウジングは、粘着層を有することができる遠位端を含む。
【0022】
薬剤送達デバイスは、大容量デバイスとすることができる。
【0023】
本発明によれば、ハウジングと、ハウジング内に配置されたリザーバと、投薬部材と、第1および第2の付勢部材とを含む薬剤送達デバイスから薬剤を投薬する方法であって:第1の付勢部材を解放し、投薬部材を第1の位置から中間位置まで動かすように投薬部材に力を及ぼすことと;次いで、第2の付勢部材を解放し、投薬部材を中間位置から第2の位置へと動かすように投薬部材に力を及ぼし、リザーバから薬剤を排出することとを含む、方法が提供される。
【0024】
薬剤送達デバイスは、上述の機能のいずれかを有することができ、たとえば、リザーバは、潰れ可能な容器を含むことができる。
【0025】
本発明の上記その他の態様は、本明細書の以下に記載の実施形態から明らかとなりそれらを参照して説明される。
【0026】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、一例として述べる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】ハウジングの近位部分が初期位置にあり、可撓性バッグが空である、本発明の第1の実施形態による薬剤送達デバイスの概略側断面図である。
【
図2】近位部分が初期位置にあり、可撓性バッグに薬剤が充填されている、
図1の薬剤送達デバイスの概略側断面図である。
【
図3】近位部分が準備完了位置にあり、針が後退位置にある、
図1の薬剤送達デバイスの概略側断面図である。
【
図4】近位部分が準備完了位置にあり、針が伸長位置にあり、投薬部材が第1の位置にある、
図1の薬剤送達デバイスの概略側断面図である。
【
図5】針ロッキング部材がロック解除状態へと動かされている、
図1の薬剤送達デバイスの針伸長ロックの拡大概略側断面図である。
【
図6】投薬部材が中間位置にあり、針が伸長位置にある、
図1の薬剤送達デバイスの概略側断面図である。
【
図7】投薬部材が第2の位置にあり、針が伸長位置にある、
図1の薬剤送達デバイスの概略側断面図である。
【
図8】投薬部材が第2の位置にあり、針が後退位置にある、
図1の薬剤送達デバイスの概略側断面図である。
【
図9A】一対の後退ロッキング部材がロック状態にある、
図1の薬剤送達デバイスの針後退ロックの拡大概略側断面図である。
【
図9B】一対の後退ロッキング部材がロック解除状態にある、
図1の薬剤送達デバイスの針後退ロックの拡大概略側断面図である。
【
図10】ハウジングの近位部分が初期位置にある、本発明の第2の実施形態による薬剤送達デバイスの概略側断面図である。
【
図11】ハウジングの近位部分が準備完了位置にある、
図10の薬剤送達の概略側断面図である。
【
図12】ハウジングの近位部分が準備完了位置にあり、アクチュエータがハウジングに押し込まれている、
図10の薬剤送達の概略側断面図である。
【
図13】第1の付勢手段が解放されている、
図10の薬剤送達の概略側断面図である。
【
図14】投薬部材が中間位置まで動いている、
図10の薬剤送達の概略側断面図である。
【
図15】第2の付勢手段が解放され、投薬部材が第2の位置まで動いており、針が伸長位置にある、
図10の薬剤送達の概略側断面図である。
【
図16】投薬部材が第2の位置にあり、針が後退位置にある、
図10の薬剤送達の概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載の薬剤送達デバイスは、薬剤を患者に注射するように構成される。たとえば送達は、皮下、筋肉内、または静脈内送達とすることができる。このようなデバイスは、患者、または看護師もしくは医師などの介護者によって操作される。このようなデバイスとしては、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器または自動注射器が挙げられる。このデバイスは、使用前に封止アンプルを穿孔する必要がある、カートリッジベースのシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスを用いて送達される薬剤容量は、約0.5ml~約2mlの範囲とすることができる。さら他のデバイスは、「大」容量の薬剤(典型的には、約2ml~約10ml)を送達するためにある期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)患者の皮膚に粘着するように構成された、大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0029】
特定の薬剤と組み合わせることで、先述のデバイスはまた、必要な仕様内で動作するためにカスタマイズされる。たとえば、デバイスは、ある期間内(たとえば、自動注射器では約3~約20秒、大容量デバイスでは約10分~約60分)に薬剤を注射するようにカスタマイズされる。他の仕様には、低レベルまたは最小レベルの不快感、または人的要因に関連するいくつかの条件に対し、保存寿命、使用期限、生体適合性、環境的考慮事項などが含まれる。このような違いは、たとえば、粘性が約3cP~約50cPの薬物など、様々な要因により生じることがある。その結果、薬物送達デバイスは、サイズが約25~約31ゲージの中空針を含むことが多い。一般的なサイズは27および29ゲージである。
【0030】
図1~
図9Bは、例示的な実施形態における、本発明の第1の実施形態によるボーラス注射デバイスを含む、薬剤送達デバイス10を示している。薬剤送達デバイス10は、大容量デバイスの形態であってよい。
【0031】
薬剤送達デバイス10は、ハウジング11と、針12と、針作動機構13を含む薬剤送達機構と、投薬機構14とを含む。薬剤送達デバイス10は、アクチュエータ15をさらに含む。
【0032】
ハウジング11は、遠位部分16と、近位部分17とを含む。用語「遠位」は、注射部位に相対的により近い場所を指し、用語「近位」は、注射部位から相対的にさらに離れた
場所を指す。
【0033】
ハウジング11の遠位部分16は、一緒になって略U字形断面を有する円周壁18と端壁19とを含む。ハウジング11の遠位部分16は、遠位部分16の円周壁18と同心に配置された円筒形内部壁16Aをさらに含む。ハウジング11の近位部分17は、一緒になって略U字形断面を有する円周壁20と端壁21とを含む。ハウジング11の近位部分17は、近位部分17の円周壁20と同心に配置された円筒形内部壁17Aを含む。
【0034】
ハウジング11の遠位部分16の周壁18は、遠位部分16の端壁19と近位部分17の端壁21は間隔を空けて配置されそれらの間に凹部22が形成されるように、近位部分17の周壁20に摺動可能に受け入れられる。ハウジング11の遠位および近位部分16、17は、一緒になって、中心軸(
図2の破線A-A参照)を有する略円筒形状を形成する。
【0035】
遠位部分16の端壁19は、外面19Aと内面19Bとを有し、近位部分17の端壁21は、外面21Aと内面21Bとを有する。遠位および近位部分16、17の端壁19、21の外面19A、21Aの一方または両方は、実質的に平坦であってよい。
【0036】
遠位部分16の端壁19の外面19Aは、初めはラベル(図示せず)で覆われている粘着層(図示せず)を含む。使用のとき、ラベルを粘着層から取り去り、その粘着層を、遠位部分16の端壁19を注射部位に粘着させるように、患者の注射部位のところの患者の皮膚に貼り付ける。
【0037】
投薬機構14は、薬剤リザーバ23と、投薬部材24と、第1および第2の付勢部材25、26と、第1および第2の投薬ロック(図示せず)とを含む。
【0038】
薬剤リザーバ23は、環状の可撓性バッグ23の形態をしている。可撓性バッグ23は、ハウジング11内の凹部22内に配置され、遠位部分16の端壁19の内面19Bに当接する。可撓性バッグ23は、遠位部分16の周壁18のアパーチャ18Aに流体連結される。アパーチャ18Aは、遠位部分16の周壁18を介して可撓性バッグ23に薬剤を充填することができるようにする充填ポート18Aを形成する。可撓性バッグ23および/またはアパーチャ18Aは、アパーチャ18Aを介して可撓性バッグ23から薬剤が流出することを防止するように構成された一方向弁(図示せず)を含むことができる。あるいは、またはそれに加えて、可撓性バッグ23への薬剤の充填後にアパーチャ18Aを封止するようにアパーチャ18Aに挿入される栓(図示せず)を提供してもよい。
【0039】
投薬部材24は、プレート24の形態をしている。プレート24は、環状であってよい。プレート24は、可撓性バッグ23がプレート24の遠位向きの面24Aと、遠位部分16の端壁19の内面19Bとの間に位置するように、ハウジング11内の凹部22内に配置される。プレート24は、それが可撓性バッグ23に対して動くことができるように、凹部22内でハウジング11の中心軸A-Aの方向に摺動することができる。
【0040】
第1および第2の付勢部材25、26はそれぞれ、第1および第2のばね25、26の形態をしている。第1のばね25および/または第2のばね26は、つる巻きばねであってよい。
【0041】
投薬機構14は、内側容器27と、伸長部材28とをさらに含む。内側容器27は、一体形成することができる端壁27Aと周壁27Bとを含む。内側容器27の端壁27Aは、周壁27Bの近位端に位置する。内側容器27の端壁27Aは、ハウジング11の近位部分17の端壁21に固定される、またはそれに当接してもよく、またはそれと一体形成
してもよい。内側容器27の周壁27Bは、略円筒形であり、近位部分17の円周壁20と同心に配置される。内側容器27の周壁27Bは、近位部分17の周壁20と内部壁17Aとの間に配置される。
【0042】
伸長部材28は、ハウジング11内の凹部22内に配置され、ハウジング11に対してハウジング11の中心軸A-Aの方向に動くことができる。
【0043】
伸長部材28は、第1の部分28Aと、中間部分28Bと、第2の部分28Cとを含む。第1の部分28Aは、端壁28Aの形態をしている。中間部分28Bは、周壁28Bの形態をしている。第2の部分28Cは、リップ28Cの形態をしている。
【0044】
伸長部材28の端壁28Aは、端壁28Aがリップ28Cよりも近位部分17の端壁21の近くに位置するように、リップ28Cからハウジング11の中心軸A-Aの方向に間隔が空いている。端壁28Aは、近位部分17の内部壁17Aの方に向けて、伸長部材28の周壁28Bの近位端から径方向内方に延びる。
【0045】
伸長部材28の周壁28Bは、略円筒形であり、ハウジング11の遠位および近位部分16、17の周壁18、20間に同心に配置される。
【0046】
リップ28Cは、伸長部材28の周壁28Bの遠位端から径方向外方に延びる。リップ28Cの遠位向きの面は、プレート24に当接する。
【0047】
第1のばね25は、ハウジング11内の凹部22内において、可撓性バッグ23に対してプレート24の反対側に配置される。第1のばね25は、ハウジング11の中心軸A-Aの周りに延びる。より具体的には、第1のばね25は、内側容器27の周壁27Bと伸長部材28の周壁28Bとの間に配置される。
【0048】
第1のばね25の近位端は、内側容器27の端壁27Aに当接し、遠位端は、リップ28Cの近位向きの面に当接する。したがって、第1のばね25は、伸長部材28を遠位部分16の端壁19の方に向けて付勢するように、ハウジング11の中心軸A-Aの方向に、内側容器27が取り付けられている近位部分17の端壁21から遠ざけるように、伸長部材28を付勢するように構成される。
【0049】
第2のばね26は、ハウジング11内の凹部22内において、可撓性バッグ23に対してプレート24の反対側に配置される。第2のばね26は、ハウジング11の中心軸A-Aの周りに延びる。より具体的には、第2のばね26は、伸長部材28の周壁28Bと、近位部分17の内部壁17Aとの間に配置される。したがって、初めは、第2のばね26は、第1のばね25の内側に位置する。第1および第2のばね25、26は、共通の軸A-Aを共有することができる。
【0050】
第2のばね26の近位端は、伸長部材28の端壁28Aに当接し、遠位端は、プレート24の近位向きの面24Bに当接する。したがって、第2のばね26は、プレート24を遠位部分16の端壁19の方に向けて付勢するように、ハウジング11の中心軸A-Aの方向に、伸長部材28の端壁28Aから遠ざけるようにプレート24を付勢するように構成される。
【0051】
第1の投薬ロックは、ロック状態からロック解除状態へと動くことができる。第1の投薬ロックがロック状態にあるとき、伸長部材28は、内側容器27内の定位置に保持されるように、ハウジング11の中心軸A-Aの方向にハウジング11の近位部分17に対して固定される。第1の投薬ロックがロック解除状態にあるとき、伸長部材28は、ハウジ
ング11の中心軸A-Aの方向に内側容器27の端壁27Aから遠ざかるように、近位部分17に対して動くことができる。
【0052】
第2の投薬ロックは、ロック状態からロック解除状態へと動くことができる。第2の投薬ロックがロック状態にあるとき、プレート24は、リップ28Cの遠位向きの面に当たるように、ハウジング11の中心軸A-Aの方向に伸長部材28に対して固定される。第2の投薬ロックがロック解除状態にあるとき、プレート24は、ハウジング11の中心軸A-Aの方向に伸長部材28の端壁28Aから遠ざかるように、伸長部材28に対して動くことができる。
【0053】
近位部分17は、(
図1および
図2に示される)初期位置と、(
図3、
図4および
図6~
図8に示される)準備完了位置との間で、ハウジング11の遠位部分16に対して動くことができる。近位部分17が初期位置にあるとき、近位部分17の端壁21は、プレート24が可撓性バッグ23から間隔を置くように、遠位部分16の端壁19に対して間隔が空いている。さらに、近位部分17が初期位置にあるとき、遠位部分16の周壁18の小セクションだけが近位部分17の周壁20に受け入られる。
【0054】
近位部分17が準備完了位置まで動かされるとき、近位部分17の端壁21は、端壁19、21間の距離が減少するように、遠位部分16の端壁19の方に向けて動かされる。それによって、プレート24は動かされて可撓性バッグ23に当接する。近位部分17が準備完了位置にあるとき、遠位部分16の周壁18の増加分は、近位部分17の周壁20に受け入れられる。
【0055】
アクチュエータ15は、周壁15Aと端壁15Bとを有するボタン15の形態をしている。ボタン15は、ボタン15の周壁15Aが近位部分17の内部壁17Aの内面上に配置されそれに対して同心に位置合わせされるように、ハウジング11の近位部分17に受け入れられる。ボタン15は、近位部分17の内部壁17A内で、ハウジング11の中心軸A-Aの方向に摺動可能である。
【0056】
針12は、(
図1~
図3、
図8および
図9Bに示される)後退位置と(
図4、
図6、
図7および
図9Aに示される)伸長位置との間でハウジング11の遠位部分16に対して動くことができる。針12は、後退位置にあるとき、ハウジング11内の凹部22に完全に受け入れられ、したがって、針12に対する損害を防ぎ針12による患者の不慮の怪我を防止するように保護される。
【0057】
針12は、後退位置から伸長位置まで動かされるとき、針12の端部が遠位部分16の端壁19のアパーチャ19Cから外に突出するように、ハウジング11の中心軸A-Aの方向に直線的に動かされる。したがって、遠位部分16の粘着層が患者の注射部位に粘着されてから、針12は、患者の皮膚を穿孔して注射部位内へと延び、そこに薬剤を送達する。
【0058】
薬剤送達デバイス10は、遠位部分16の端壁19の内面19Bに固定されるセプタム31をさらに含む。セプタム31は、遠位部分16の端壁19のアパーチャ19Cの上に配置される。針12は、最初は後退位置にあり、セプタム31によって保護されている。より具体的には、セプタム31は、遠位部分16の端壁19のアパーチャ19Cを介して汚染物が入り滅菌針12に接触することを防ぐ。針12は、伸長位置に動かされるとき、セプタム31を穿孔し、針12の端部がセプタム31を貫通して端壁19から突出する。セプタム31は、プラスチック、ゴムまたは金属ホイルなどの不透過性材料から製造することができる。代替実施形態では、セプタム31は、遠位部分16の端壁19の外面19Aに固定される、または端壁19のアパーチャ19C内に配置される。
【0059】
針作動機構13は、針伸長および後退付勢部材32、33と、伸長および後退保持要素34、35と、針伸長および後退ロック36、37とを含む。
【0060】
針伸長付勢部材32は、針伸長ばね32の形態をしている。針伸長ばね32は、つる巻きばねであってよい。針伸長ばね32は、ボタン15の周壁15A内側に位置し、ハウジング11の中心軸A-Aの周りに延びる。針伸長ばね32は、針12のベース12Aと、伸長保持要素34との間に配置される。
【0061】
伸長保持要素34は、ハウジング11の遠位部分16に対して固定され、セプタム31に対して針12のベース12Aの反対側に位置する。伸長保持要素34は、針伸長ばね32の近位端が当接する止め具として働くように構成され、それによって、針伸長ばね32の近位端は、ハウジング11の中心軸A-Aの方向に近位部分17の端壁21の方に向かって動くことが阻止される。針12が初期後退位置にあるとき、針伸長ばね32は、針12のベース12Aと伸長保持要素34との間で圧縮され、それによって針伸長ばね32がハウジング11の中心軸A-Aの方向に伸長保持要素34から遠ざけるように針12を付勢し、それによって針12は付勢されて伸長位置へと動かされる。
【0062】
針伸長ロック36は、枢動連結部39によってハウジング11の遠位部分16に連結される伸長ロッキング部材38を含む。伸長ロッキング部材38は、細長部材38Aと、細長部材38Aと一体形成される第1および第2の突起40、41とを含む。第1の突起40は、細長部材38Aの近位端に位置し、第2の突起41は、細長部材38Aの遠位端の方に位置する。
【0063】
細長部材38Aは、第1および第2の突起40、41が枢動連結部39周りに枢動可能なように、細長部材38Aの近位端と遠位端との間のあるポイントで枢動連結部39に取り付けられる。
【0064】
伸長ロッキング部材38は、(
図5に示されるように)ロック状態からロック解除状態へと動くことができる。ロック状態では、伸長ロッキング部材38は、細長部材38Aがハウジング11の中心軸A-Aに対して実質的に平行に延び第1の突起40が第2の突起41よりも近位部分17の端壁21の近くに配置されるように、位置する。
【0065】
伸長ロッキング部材38の第1の突起40は、伸長ロッキング部材38がロック状態にあるとき、ハウジング11の中心軸A-Aの方に向かって径方向内方に延びる。第1の突起40は、伸長ロッキング部材38がロック状態にあるとき、ハウジング11の中心軸A-Aの方向に遠位部分16の端壁19の方へと向かう針12の動きを阻止するように針12のベース12Aに当接する近位向きの面40Aを含む。したがって、伸長ロッキング部材38は、ロック状態にあるとき、針12のベース12Aと伸長保持要素34との間に圧縮状態で保持されている針伸長ばね32の力に抗して、針12を後退位置に保持する。
【0066】
伸長ロッキング部材38がロック状態にあるとき、伸長ロッキング部材38の第2の突起41は、ハウジング11の中心軸A-Aから離れるように径方向外方に延びる。第2の突起41は、ハウジング11の中心軸A-Aから離れて近位部分17の端壁21の方に向かってある角度に向いた傾斜面41Aを含む。
【0067】
ボタン15は、ハウジング11の中心軸A-Aの方に向かう方向に、ボタン15の周壁15Aの内面から径方向内方に延びるリップ15Cを含む。リップ15Cは、略環状であってよい。
【0068】
ボタン15のリップ15Cは、ボタン15がハウジング11内で遠位部分16の端壁19の方に向けて動かされるときに伸長ロッキング部材38の傾斜面41Aに当接するように構成される。それによって、伸長ロッキング部材38の第2の突起41は、中心軸A-Aの方に向かって径方向内方に付勢され、それによって伸長ロッキング部材38は、ロック状態からロック解除状態へと(
図5の矢印「B」の方向に)回転する。ロック解除状態では、第1の突起40は、径方向外方に動くので針12のベース12Aにそれ以上当接しなくなり、それによって針12のベース12Aは針伸長ばね32の力により伸長保持要素34から遠ざかるように動くことができるようになる。このように、伸長ロッキング部材38がロック解除状態へと動かされると、針12は、針伸長ばね32の力により後退位置から伸長位置へと動く。
【0069】
針後退付勢部材33は、針後退ばね33の形態をしている。針後退ばね33は、つる巻きばねであってよい。針後退ばね33は、ハウジング11の遠位部分16内に配置され、その中心軸A-Aの周りに延びる。針後退ばね33は、後退保持要素35とセプタム31との間に配置される。セプタム31は、ハウジング11の遠位部分16に対して固定され、したがって、針後退ばね33の遠位端が当接する止め具として働く。
【0070】
後退保持要素35は、ハウジング11の遠位部分16の内部壁16Aに摺動可能に受け入れられる。針後退ばね33は、最初はセプタム31と後退保持要素35との間で圧縮されており、したがって、針後退ばね33は、ハウジング11の中心軸A-Aの方向にセプタム31から遠ざけるように後退保持要素35を付勢する。針後退ロック37は、最初は、針後退ばね33が圧縮されるように針後退ばね33の力に抗して後退保持要素35を定位置に保持する。
【0071】
針後退ロック37は、枢動連結部43によってハウジング11の遠位部分16に連結される後退ロッキング部材42を含む。後退ロッキング部材42は、第1および第2の細長部材44、45と、凹部46と、突起47とを含む。第1および第2の細長部材44、45は、一方端において一体形成されている。第1および第2の細長部材44、45は、互いに対してある角度に延びる。本実施形態では、第1および第2の細長部材44、45は、互いに対して実質的に垂直に延びる。
【0072】
第1および第2の細長部材44、45はそれぞれ、枢動連結部43から離れた自由端44A、45Bを含む。凹部46は、第1の細長部材44の自由端44Aに位置し、突起47は、第2の細長部材45の自由端45Aに位置する。
【0073】
後退ロッキング部材42は、(
図9Aに示される)ロック状態から(
図9Bに示される)ロック解除状態まで枢動可能である。ロック状態では、後退ロッキング部材42は、第1の細長部材44がハウジング11の中心軸A-Aの方向から離れるように径方向外方に延び、一実施形態では、ハウジング11の中心軸A-Aに対して実質的に垂直になるように位置する。第1の細長部材44の自由端44Aは、径方向にプレート24に重なり合っている。さらに、ロック状態では、後退ロッキング部材42は、第2の細長部材45が、枢動連結部43から近位部分17の端壁21の方に向かって延び、一実施形態ではハウジング11の中心軸A-Aに対して実質的に平行になるように、位置する。
【0074】
後退ロッキング部材42がロック状態にあるとき、突起47は、後退保持要素35の近位向きの面に当接するように、ハウジング11の中心軸A-Aの方に向かって径方向内方に延びる。したがって、後退保持要素35は、近位部分17の端壁21の方に向かって動くことが阻止され、こうして針後退ばね33はセプタム31と後退保持要素35との間に圧縮状態で保持される。
【0075】
投薬機構14の動作によりハウジング11内でプレート24が遠位部分16の端壁19の方に向けて動かされることで、プレート24は、プレート24が第1の細長部材44の凹部46に受け入れられるように第1の細長部材44の自由端44Aに接して付勢する。このように、プレート24が遠位部分16の端壁19の方に動かされた結果、第1の細長部材44の自由端44Aに力が及ぼされることになる。この力によって、第1の細長部材44の自由端44Aは、遠位部分16の端壁19の方に向けて付勢され、それによって後退ロッキング部材42は付勢されて枢動連結部43の周りにロック状態からロック解除状態に(
図9Bの矢印「C」の方向に)回転する。
【0076】
後退ロッキング部材42がロック解除状態へと回転するとき、第2の細長部材45の自由端45Aにある突起47は、ハウジング11の中心軸A-Aから遠ざかるように径方向外方に動き、それによって突起47は後退保持要素35から距離がひらく。それによって、突起47は、針後退ばね33の力に抗して後退保持要素35を定位置にそれ以上保持しなくなり、したがって後退保持要素35は、針後退ばね33によって近位部分17の端壁21の方に向けて動くようになる。
【0077】
針12は、(
図9Aに示されるように)針12が伸長位置にあり後退ロッキング部材42がロック状態にあるとき、針12のベース12Aが後退保持要素35に対して近位に位置するように、後退保持要素35のアパーチャ35Aを通って延びる。したがって、後退ロッキング部材42がその後にロック解除状態へと動かされると、後退保持要素35は解放され、針後退ばね33が後退保持要素35を針12のベース12Aに接して付勢して針12を近位部分17の端壁21の方に向けて(
図9Bに示されるように)後退位置へと動かす。
【0078】
ロック状態とロック解除状態との間における後退ロッキング部材42の動きを容易にするように、後退ロッキング部材42とセプタム31および遠位部分16の端壁19との間にクリアランスギャップ(図示せず)を設けてもよい。あるいは、後退ロッキング部材42を動きやすくする可撓性材料からセプタム31を製造してもよい。
【0079】
薬剤送達デバイス10は、ハウジング11の遠位部分16と近位部分17との間に連結部48をさらに含む。連結部48は、近位部分17が準備完了位置から離れて初期位置の方に向かって動くことを阻止するように構成される。連結部48は、近位部分17が準備完了位置にあり、たとえば第1および第2の投薬ロックがロック解除状態へと動かされるとき、プレート24と近位部分17の端壁21との間に位置する第1および第2のばね25、26の力によって近位部分17の端壁21が遠位部分16端壁19から遠ざかるように動くことを阻止するように構成される。
【0080】
連結部48は、ラッチ48の形態をしている。ラッチ48は、第1、第2および第3の止め具49、50、51を含む。第1の止め具49は、ハウジング11の近位部分17の周壁20と一体形成される第1のリップ49の形態をしている。第1のリップ49は、ハウジング11の中心軸A-Aの方に径方向内方に延びる。第1のリップ49は、近位部分17の端壁21から離れた、近位部分17の周壁20の端部から延びる。第1のリップ49は、近位向きの面49Aを含む。
【0081】
第2の止め具50は、遠位部分16の周壁18と一体形成される第2のリップ50の形態をしている。第2のリップ50は、ハウジング11の中心軸A-Aから離れるように径方向外方に延びる。第2のリップ50は、遠位部分16の端壁19から離れた、遠位部分16の周壁18の端部から延びる。第2のリップ50は、遠位向きの面50Aを含む。
【0082】
ハウジング11の近位部分17が(
図1および
図2に示されるように)初期位置にある
とき、第1のリップ49の近位向きの面49Aは、近位部分17と遠位部分16との間における軸方向運動の範囲を制限するように第2のリップ50の遠位向きの面50Aに当接し、それによって近位部分17が遠位部分16から遠ざかるように動いてそこから分離することが阻止される。
【0083】
第3の止め具51は、遠位部分16の周壁18の外面内へと延びる凹部51の形態をしている。遠位向きの面51Aは、凹部51の縁に形成される。
【0084】
ラッチ48は、第2の止め具50の遠位向きの面50Aと、第3の止め具51の遠位向きの面51Aとの間に延びる傾斜面52をさらに含む。傾斜面52は、第2の止め具50から第3の止め具51の方向にハウジング11の中心軸A-Aから若干遠ざかって延びるように、ハウジング11の中心軸A-Aに対して若干傾斜している。傾斜面52は、遠位部分16の周壁18の外面の一部分から形成される。
【0085】
傾斜面52は、近位部分17が初期位置から準備完了位置へと動かされるときに第1のリップ49が傾斜面52上を動き傾斜面52によって径方向外方に付勢されてハウジング11の中心軸A-Aから離れるように付勢されるように構成される。近位部分17の厚さおよび材料は、第1のリップ49が傾斜面52上を動くときに近位部分17の周壁20が径方向外方に弾性的に変形するようにする。周壁20がこのようにして曲がることで、第1のリップ49が傾斜面52上を動きやすくなる。同様に、遠位部分16も、第1のリップ49が傾斜面52上を動くときに、遠位部分16の周壁18が径方向内方に曲がることができるような厚さを有するおよび/または材料から製造される。遠位および近位部分16、17は、たとえばプラスチックまたは金属から製造することができる。
【0086】
初期位置から準備完了位置へ近位部分17が動くことで、第1のリップ49は、第2のリップ50から凹部51の方に向けて傾斜面52上を動く。第1のリップ49は、凹部51に達すると、径方向内方に動いて凹部51内に「カチッと留まり」、それによって第1のリップ49の近位向きの面49Aが凹部51の縁にある遠位向きの面51Aに当接する。こうして、近位部分17は、準備完了位置における定位置に保持され、それによって近位部分17の端壁21が遠位部分16の端壁19から遠ざかることが阻止される。
【0087】
傾斜面52は、近位部分17が準備完了位置の方に向けて動かされるときに第1のリップ49が径方向外方に付勢されることによる若干の抵抗を、第2のリップ50から凹部51の方に向けて傾斜面52上を動いている第1のリップ49に対してもたらすように配置される。したがって、患者は、遠位部分16に対して近位部分17を初期位置から準備完了位置へと動かすのに、この若干の抵抗に打ち勝たなければならない。これは、近位部分17が準備完了位置へと誤って動かされる可能性を減少させる。
【0088】
次に、薬剤送達デバイス10の例示的な動作について述べる。薬剤送達デバイス10は、典型的には、滅菌包装(図示せず)内に収納される。患者は、まず、滅菌包装から薬剤送達デバイス10を取り出す。滅菌包装からの薬剤送達デバイス10の取り出しの際、ハウジング11の近位部分17は初期位置にあり、針12は後退位置にあり、可撓性バッグ23は空であり、ボタン15は(
図1に示されるように)近位部分17内に後退しており、したがって患者はボタン15にアクセスしてそれを作動させることができなくなっている。たとえば、近位部分17の内部壁17Aの内径は、患者が内部壁17A内に指を差し込んでボタン15にアクセスすることができないほど十分に小さい内径とすることができる。こうして、患者は、可撓性バッグ23から薬剤を投薬するように投薬機構14を動作するためにボタン15を押し下げることができず、したがって投薬機構14は動作不能である。さらに、患者は、針12を伸長位置まで動かすように針作動機構13を動作することができない。
【0089】
次いで、患者は、薬剤送達デバイス10の投薬機構14に薬剤を供給する。より具体的には、患者は、(
図2に示されるように)可撓性バッグ23に薬剤を充填するため、ハウジング11の遠位部分16の周壁18にある充填ポート18Aから薬剤を供給する。薬剤は、たとえば、シリンジ、容器または加圧キャニスタから供給することができる。一代替実施形態では、薬剤リザーバ23には薬剤が充填済みであり、その場合、充填ポート18Aを省いてよい。
【0090】
次いで、ラベル(図示せず)を遠位部分16の端壁19の外面19Aの粘着層(図示せず)から除去する。次いで、粘着層を患者の皮膚の注射部位に粘着させて、遠位部分16の端壁19を注射部位に固定するようにする。
【0091】
次いで、患者は、ハウジング11の近位部分17に力を加えて近位部分17を初期位置から準備完了位置へと動かす。たとえば、患者は、片手を用いて力を近位部分17の端壁21の外面21Aに加えて前記端壁21を遠位部分16の端壁19の方に向けて押す。近位部分17が準備完了位置の方に向けて動かされると、プレート24、第1のばね25、第2のばね26、内側容器27および伸長部材28は、プレート24が可撓性バッグ23に当接するまたは可撓性バッグ23に密接に近接する(
図3および
図4に示される)第1の位置に動くまで、可撓性バック23の方に向けて動かされる。
【0092】
近位部分17が準備完了位置に達すると、第1の止め具49は、第3の止め具51に係合し、それによって近位部分17は準備完了位置に保持されるようになる。
【0093】
第1の投薬ロックは、最初はロック状態にあり、第1のばね25を、内側容器27の端壁27Aと伸長部材28のリップ28Cの近位向きの面との間で圧縮位置に保持する。第1のばね25は、プレート24および伸長部材28を近位部分17の端壁21から遠ざけて可撓性バッグ23の方に向けて付勢する。
【0094】
第2の投薬ロックは、最初はロック状態にあり、第2のばね26を、伸長部材28の端壁28Aとプレート24の近位向きの面24Bとの間で圧縮位置に保持する。第2のばね26は、プレート24を伸長部材28から遠ざけて可撓性バッグ23の方に向けて付勢する。
【0095】
ボタン15は、近位部分17が準備完了位置まで動かされるときにボタン15が近位部分17に対して摺動して近位部分17から(
図3に示されるように)突出するように、ハウジング11の近位部分17の内部壁17Aに摺動可能に受け入れられる。こうして、ボタン15は患者が作動できるようになる。ボタン15は、近位部分17が準備完了位置にあるとき、近位部分17の端壁21から突出している。
【0096】
近位部分17が準備完了位置になると、薬剤送達デバイス10は、患者の注射部位に薬剤を供給する準備が完了する。患者は、ボタン15の端壁15Bを押し下げてボタン15をハウジング11の近位部分17内へと摺動させる。それによって、ボタン15は、針伸長ロック36に係合し、それによって針伸長ばね32が解放されて針12を伸長位置へと動かす。より具体的には、ボタン15の突起15Cが伸長ロッキング部材38の第2の突起41の傾斜面41Aに接して付勢するまで、ボタン15が遠位部分16の端壁19の方に向けて動かされると、伸長ロッキング部材38が(
図5に示されるように)ロック状態からロック解除状態まで回転することになる。上述したように、これによって、針12のベース12Aが針伸長ばね32の力により伸長保持要素34から遠ざかるように動かされ、それによって針12は、軸方向に動いてセプタム31を貫通し遠位部分16の端壁19にあるアパーチャ19Cから外に延びることができる。こうして、針12は、(
図4に示
されるように)伸長位置まで動く。遠位部分16の端壁19は、患者の皮膚に粘着しており、したがって、針12は、伸長位置まで動かされると、患者の注射部位に入る。
【0097】
針12は、伸長位置まで動かされると、可撓性バッグ23の内部と流体連通する。一実施形態では、可撓性バッグ23の内部と流体連結する導管(図示せず)が設けられる。針12は、アパーチャ(図示せず)を含む。アパーチャは、針12が伸長位置まで動くと導管と位置合わせされてそれと流体連通し、それによって薬剤が可撓性バッグ23から流れ出て導管を通り、針12のアパーチャに入って針12から投薬されるようになる。
【0098】
患者がボタン15をハウジング11内へと押し続けると、ボタン15は第1の投薬ロック(図示せず)に係合し、それをロック解除状態に動かす。こうして、針12が伸長位置まで動かされた後、第1のばね25は、解放されて伸長部材28を内側容器27の端壁27Aからハウジング11の中心軸A-Aの方向に遠位部分16の端壁19の方に向けて付勢する。プレート24は、第2の投薬ロックによって伸長部材28に対して保持されているので、伸長部材28が第1のばね25によって動かされると、プレート24も遠位部分16の端壁19の方に向けて第1の位置から(
図6に示されるように)中間位置へと動き、それによって薬剤が可撓性バッグ23から投薬される。より具体的には、可撓性バッグ23は、プレート24の遠位向きの面24Aと遠位部分16の端壁19の内面19Bとの間で圧縮され、それによって可撓性バッグ23内の薬剤の圧力が上昇し、その結果薬剤の第1の体積が可撓性バッグ23から針12を通って流れ出て患者の注射部位内に入る。
【0099】
第1のばね25は、プレート24が中間位置にあるとき、実質的に圧縮されていない状態まで延びることができる。したがって、プレート24は、中間位置にあるとき、第1のばね25によって遠位部分16の端壁19の方に向けてそれ以上は移動しない。
【0100】
プレート24は、中間位置に達すると、第2の投薬ロック(図示せず)に係合してそれをロック解除状態へと動かし、それによって第2のばね26が解放されてプレート24を伸長部材28から遠位部分16の端壁19の方に向けて付勢する。それによって、プレート24は、ハウジング11に対して中間位置から(
図7および
図8に示されるように)第2の位置まで動かされ、それによってさらなる薬剤が可撓性バッグ23から投薬される。より具体的には、可撓性バッグ23は、プレート24の遠位向きの面24Aと遠位部分16の端壁19の内面19Bとの間でさらに圧縮され、それによって可撓性バッグ23内の薬剤の圧力が上昇し、その結果薬剤の第2の体積が可撓性バッグ23から針12を通って流れ出て患者の注射部位に入る。
【0101】
プレート24が第2の位置にあるとき、第2のばね26は、第1のばね25から外に入れ子式に延びることができる。第1のばね25は、伸長部材28の第1の側に位置し、第2のばね26は、伸長部材28の第2の側に位置する。より具体的には、第1のばね25の遠位端は、伸長部材28の第1の側でリップ28Cに当接し、第2のばね26は、伸長部材28の第2の側で端壁28Aに当接する。
【0102】
ボタン15の押し下げによって第1の投薬ロックがロック解除状態へと動かされて薬剤送達が開始された後、患者は、ボタン15を押すのをやめることができる。プレート24は、第1のばね25の力、次いで第2のばね26の力により遠位部分16の端壁19の方へと動き続け、それによって可撓性バッグ23は圧縮され、薬剤が針12を介して患者の注射部位へと送達される。したがって、薬剤送達デバイス10を使用して、患者がボタン15に力を加え続ける必要なくして、長時間、たとえば数時間にわたって、薬剤を患者の注射部位へと薬剤を送達することができる。
【0103】
薬剤は、プレート24がハウジング11内の第2の位置まで動くまで、注射部位に送達
され続ける。プレート24がハウジング11内の第2の位置まで動いた時点で、プレート24は針後退ロック37に係合し、それによって針後退ばね33が解放されて針12が後退位置まで動く。より具体的には、プレート24は、第1のばね25の力、次いで第2のばね26の力により、プレート24が後退ロッキング部材42の第1の細長部材44の自由端44Aに接して付勢されるまで、遠位部分16の端壁19の方へと動かされ、その結果、後退ロッキング部材42は、(
図9Aに示される)ロック状態から(
図9Bに示される)ロック解除状態へと回転させられる。上述したように、それによって、後退保持要素35は、針後退ばね33の力により遠位部分16の端壁19から遠ざかるように動かされ、針12のベース12Aに接して付勢し、それによって針12は(
図8および
図9Bに示されるように)ハウジング11内の後退位置へと動く。そして、患者は薬剤送達デバイス10を注射部位から除去することができる。
【0104】
一実施形態では、第1のばね25は、第2のばね26とは異なるばね定数を有する。したがって、プレート24が第1の位置から中間位置に動かされるときに注射部位に送達される薬剤の流量は、プレート24が中間位置から第2の位置に動かされるときの流量とは異なる。
【0105】
一実施形態(図示せず)では、近位部分17が初期位置にあるときにボタン15を定位置にロックするためのアクチュエータロックが設けられる。アクチュエータロックは、ハウジング11に対するボタン15の動きを阻止するように、近位部分17が初期位置にあるときロック状態にあるアクチュエータロッキング部材を含むことができる。アクチュエータロッキング部材は、近位部分17が準備完了位置へと動かされるときにロック解除状態へと動き、それによってボタン15はハウジング11に対して動くことができるようになる。
【0106】
一実施形態では、第1の投薬ロック(図示せず)は、近位部分17の内部壁17Aに回転可能に取り付けられるロッキング部材を含む。第1の投薬ロックがロック状態にあるとき、第1のばね25が内側容器27の端壁27Aと伸長部材28のリップ28Cの近位向きの面との間で圧縮位置に保持されるように、ロッキング部材の一部は、近位部分17に対して伸長部材28を定位置に保持するように伸長部材28の端壁28Aに係合する。第1の投薬ロックのロッキング部材の一端部は、近位部分17の内部壁17Aのアパーチャを通って延びる。ボタン15がハウジング11に押し込まれると、ボタン15はロッキング部材の前記端部に係合し、そのロッキング部材を付勢して回転させ、伸長部材28から係合解除させる。こうして、第1の投薬ロックは、ロック状態からロック解除状態に回転し、それによって伸長部材28は近位部分17に対して内側容器27の端壁27Aから遠ざかるように動くことができるようになる。一実施形態では、第1の投薬ロックのロッキング部材は、第1の投薬ロックをロック状態に付勢するような、たとえばねじりばねである、ばねによって付勢されて伸長部材28に係合する。ボタン15は、ハウジング11内へと押し込まれると、第1の投薬ロックをロック解除状態へと動かすために前記ばねの付勢力に打ち勝つ力をロッキング部材に及ぼす。
【0107】
一代替実施形態では、第1の投薬ロック(図示せず)は、近位部分17の内部壁17Aに対して固定される第1の突起と、伸長部材28の端壁28Aに対して固定される第2の突起とを含む。最初は、第1および第2の突起は、近位部分17に対して伸長部材28を定位置に軸方向に保持するように係合しており、したがって、第1のばね25は、内側容器27の端壁27Aと、伸長部材28のリップ28Cの近位向きの面との間で圧縮位置に保持されている。ボタン15は、カム面を含む。ボタン15がハウジング11に押し込まれると、カム面は、伸長部材28の第2の突起に係合し、伸長部材28を付勢して回転させ、それによって第2の突起は近位部分17の第1の突起から係合解除され、したがって伸長部材28はもはや軸方向に拘束されなくなる。したがって、第1の投薬ロックは、ロ
ック状態からロック解除状態へと動き、それによって伸長部材28は、内側容器27の端壁27Aから遠ざかるように近位部分17に対して動くことができるようになる。
【0108】
さらに他の実施形態では、第1の投薬ロック(図示せず)は、電動ラッチを含む。電動ラッチは、最初は、ハウジング11の近位部分17に対して伸長部材28を定位置に保持している。電動ラッチは、伸長部材28が内側容器27の端壁27Aから遠ざかるように動くように近位部分17に対して動くことができるように、伸長部材28を解放するように動作される。そのような実施形態では、第1の投薬ロックは、ボタン15がハウジング11内へと押し込まれると電動ラッチを動作させるように作動するスイッチを含む。電動ラッチは、電磁ラッチであってもよい。
【0109】
他の実施形態(図示せず)では、第1の投薬ロックは省かれる。その代わりに、プレート24は、最初は封止されている薬剤リザーバ23内に薬剤があることにより第1の位置に保持される。ボタン15がハウジング11に押し込まれると、針12は、伸長位置へと動き、薬剤リザーバ23と流体連通し、それによってプレート24が第1のばね25の力により第1の位置から遠ざかるように動くと薬剤リザーバ23から薬剤が流れ出る。
【0110】
一実施形態では、第2の投薬ロックは、伸長部材28の端壁28Aに回転可能に取り付けられるロッキング部材(図示せず)を含む。ロッキング部材は、近位部分17の内部壁17Aに近接して配置され、環状プレート24の中央アパーチャを通ってハウジング11の中心軸A-Aの方向に長手方向に延びる。ロッキング部材は、プレート24が第2のばね26の力に抗して伸長部材28に軸方向に当接した状態で保持されるように、最初はプレート24の遠位向きの面24Aに係合している突起を有する。ロッキング部材は、突起をプレート24から係合解除するようにハウジング11の中心軸A-Aの方に向かって回転するように付勢され、それによって第2のばね26は解放されてプレート24を伸長部材28から遠位部分16の端壁19の方に向けて付勢する。ロッキング部材は、プレート24の中央アパーチャ内に配置される、たとえばねじりばねまたはつる巻きばねである、付勢部材によって付勢される。ロッキング部材は、最初は近位部分17の内部壁17Aに当接しており、したがって回転してプレート24から係合解除しないようになっている。しかし、プレート24が第2の位置に動くと、ロッキング部材は、近位部分17の内部壁17Aにある凹部(図示せず)と位置合わせされ、付勢部材の力によりその凹部内へと動かされ、それによって突起がプレート24から係合解除される。したがって、プレート24が中間位置に達すると、第2の投薬ロックがロック状態からロック解除状態になり、それによってプレート24は伸長部材28から軸方向に遠ざかるように動くことができるようになる。
【0111】
一代替実施形態では、第2の投薬ロック(図示せず)は、伸長部材28の端壁28Aから延びるロッキング部材を含む。ロッキング部材は、近位部分17の内部壁17Aに近接して配置され、環状プレート24の中央アパーチャを通ってハウジング11の中心軸A-Aの方向に長手方向に延びる。ロッキング部材は、径方向外方に延び最初はプレート24を第2のばね26の力に抗して伸長部材28に当接する状態で保持するようにプレート24の遠位向きの面24Aに係合する突起を有する。プレート24は、プレート24が中間位置に達するとプレート24がハウジング11の中心軸A-A周りに回転するようにするハウジング11の近位部分17のカム面に係合する突起を含む。それによって、ロッキング部材の突起は、プレート24のスロットに位置合わせされ、したがって突起は、伸長部材28に対してプレート24を軸方向に定位置にそれ以上保持しなくなる。したがって、プレート24は、中間位置に達すると、第2の投薬ロックがロック状態からロック解除状態へと動くように回転し、それによってロッキング部材の突起がスロットを通過し、プレート24が伸長部材28から遠ざかるように動く。
【0112】
さらに他の実施形態では、第2の投薬ロック(図示せず)は、電動ラッチを含む。電動ラッチは、最初はプレート24と伸長部材28が互いから離れないようにプレート24に対して伸長部材28を定位置に保持している。電動ラッチは、プレート24が中間位置に達すると、プレート24が伸長部材28から遠ざかって第2の位置へと動くことができるように、プレート24を解放するように作動することができる。そのような実施形態では、第2の投薬ロックは、プレート24が中間位置に達すると電動ラッチを動作させるように作動するスイッチを含む。一実施形態では、スイッチは、ハウジング11の遠位部分16に取り付けられる。電動ラッチは、電磁ラッチであってもよい。
【0113】
一代替実施形態では、第2の投薬ロックは省かれる。そのような実施形態では、第1のばね25によって生成される付勢力は、第2のばね26によって生成される付勢力よりも大きく、したがって、第1のばね25は、プレート24を中間位置へと動かすように延び、次いで、第2のばね26がプレート24を中間位置から第2の位置へと動かすように延びる。そのような実施形態では、第1のばね25は、プレート24が中間位置にあるときは、完全に延びる。
【0114】
さらなる代替実施形態(図示せず)では、第1の投薬ロックは、ロック状態にあるとき、第1のばね25をロック位置に保持するように第1のばね25に係合する、および/または、第2の投薬ロックは、ロック状態にあるとき、第2のばね26をロック位置に保持するように第2のばね26に係合する。
【0115】
次に、
図10~
図16を参照すると、本発明の第2の実施形態による薬剤送達デバイス60が示されている。本発明の第2の実施形態の薬剤送達デバイス60は、第1の実施形態の薬剤送達デバイス10と類似しており、したがって同じ機能は同じ参照番号のままになっている。違いは、第1の実施形態の薬剤送達デバイス10の薬剤送達機構が除かれ代替の薬剤送達機構に置き換わっていることである。
【0116】
第2の実施形態の薬剤送達機構は、ハウジング61と、針62と、薬剤リザーバ63と、投薬部材64と、第1および第2の付勢部材65、66とを含む。
【0117】
ハウジング61および針62は、本発明の第1の実施形態のハウジング11および針12と類似しており、したがって本明細書において以下に詳細な説明は繰り返さない。ハウジング61は、遠位部分16と、初期位置と準備完了位置との間で遠位部分16に対して動くことができる近位部分17とを含む。針62は、針62がハウジング61内に完全に受け入れられる(
図11、
図12および
図16に示される)後退位置と、針62がハウジング61の遠位部分16の端壁19から突出する(
図13~
図15に示される)伸長位置との間で、ハウジング61に対して動くことができる。
【0118】
薬剤リザーバ63は、環状の可撓性バッグ63の形態をしており、ハウジング61内に配置される。可撓性バッグ63は、ハウジング61の凹部22内に配置される前に薬剤が可撓性バッグ63に充填される。
【0119】
投薬部材64は、プレート64の形態をしている。プレート64は、可撓性バッグ63がプレート64の遠位向きの面64Aと遠位部分16の端壁19の内面19Bとの間に配置されるように、ハウジング61の凹部22内に配置される。
【0120】
第1および第2の付勢部材65、66はそれぞれ、第1および第2のばね65、66の形態をしている。第1のばね65および/または第2のばね66は、つる巻きばねであってよい。
【0121】
薬剤送達機構は、第1のロック67と、第2のロック(図示せず)と、伸長部材68とをさらに含む。
【0122】
伸長部材68は、ハウジング61の凹部22内に配置され、ハウジング61の中心軸A-Aの方向にハウジング61に対して動くことができる。
【0123】
伸長部材28は、端壁28Aと、周壁28Bとリップ28Cとを含む。伸長部材68の端壁68Aは、端壁68Aがリップ68Cよりも近位部分17の端壁21の近くに位置するように、リップ68Cからハウジング61の中心軸A-Aの方向に間隔が空いている。端壁68Aは、周壁68Bの近位端から近位部分17の内部壁17Aの方に向けて径方向内方に延びる。リップ68Cは、伸長部材68の周壁68Bの遠位端から径方向外方に延びる。リップ68Cの遠位向きの面は、プレート64に当接する。
【0124】
第1のばね65は、ハウジング61の凹部22内において、可撓性バッグ63に対してプレート64の反対側に配置される。第1のばね65は、近位部分17の周壁20と伸長部材68の周壁68Bとの間に配置される。第1のばね65の近位端は、近位部分17の端壁21に当接し、遠位端は、リップ68Cの近位向きの面に当接する。したがって、第1のばね65は、伸長部材68を遠位部分16の端壁19の方に向けて付勢するように、伸長部材68を近位部分17の端壁21から遠ざけるように付勢するように構成される。
【0125】
第2のばね66は、ハウジング61の凹部22内において可撓性バッグ63に対してプレート64の反対側に配置される。第2のばね66は、伸長部材68の周壁68Bと、近位部分17の内部壁17Aとの間に配置される。したがって、最初は、第2のばね66は、第1のばね65の内部に位置する。第2のばね66の近位端は、伸長部材68の端壁68Aに当接し、遠位端は、プレート64の近位向きの面64Bに当接する。したがって、第2のばね66は、遠位部分16の端壁19の方に向けてプレート64を付勢するように、伸長部材68の端壁68Aから遠ざけるようにプレート64を付勢するように構成される。
【0126】
第1のロック67は、ロック状態からロック解除状態へと動くことができる。第1のロック67がロック状態にあるとき、針62、プレート64および伸長部材68は、ハウジング61の中心軸A-Aの方向にハウジング61の近位部分17に対して固定される。第1のロック67がロック解除状態にあるとき、プレート64および伸長部材68は、ハウジング61の中心軸A-Aの方向に近位部分17の端壁21から遠ざかるように動くことができ、針62は、後退位置から伸長位置へと動くことができる。
【0127】
第1のロック67は、一対の細長ロッキング部材69と、枢動連結部70とを含む。ロッキング部材69は、第1の端部69Aと第2の端部69Bとを含む。各ロッキング部材69の第1の端部69Aは、それぞれの枢動連結部70によって近位部分17に回転可能に連結される。第2の端部69Bは、第1の端部69Aよりも近位部分17の端壁21の近くに位置する。
【0128】
各ロッキング部材69は、凹部71と、傾斜面72とを含む。各凹部71は、それぞれのロッキング部材69の第1の端部69Aと第2の端部69Bとの間に位置する。各凹部71は、ロック67がロック状態にあるとき、プレート64がロッキング部材69に当接し、したがってハウジング61の中心軸A-Aの方向にロッキング部材69に対して定位置に保持されるように、プレート64の一部分を受けるように構成される。
【0129】
各ロッキング部材69の傾斜面72は、それぞれのロッキング部材69の第2の端部69Bに位置する。
【0130】
第1のロック67がロック状態にあるとき、ロッキング部材69は、ハウジング61の中心軸A-Aに対して実質的に平行に延び、各傾斜面72は、ハウジング61の中心軸A-Aから近位部分17の端壁21の方に向けてある角度に延びることができる。傾斜面72は、ボタン15が近位部分17に押し込まれるとき、ボタン15の遠位端にある環状突起15Cが傾斜面72に接して付勢されるように、構成される。それによって、傾斜面72は、ハウジング61の中心軸A-Aの方に向かって付勢され、それによってロッキング部材69が中心軸A-Aの方に向けて回転し、それによって第1のロック67がロック状態からロック解除状態まで動く。
【0131】
第1のロック67は、ロック解除状態に動かされると、ロッキング部材69はプレート64から離れ、それによってプレート64は凹部71にそれ以上受け入れられなくなる。したがって、プレート64は、中心軸A-Aの方向にハウジング61に対して動くことができるようになる。
【0132】
第2のロックは、ロック状態からロック解除状態へと動くことができる。第2のロックがロック状態にあるとき、プレート64は、リップ68Cの遠位向きの面に当たるように、ハウジング61の中心軸A-Aの方向に伸長部材68に対して固定される。第2のロックがロック解除状態にあるとき、プレート64は、プレート64が伸長部材68から距離が空くように、ハウジング61の中心軸A-Aの方向に伸長部材68の端壁68Aから遠ざかるように動くことができる。
【0133】
いくつかの実施形態では、第2のロックは、
図1~
図9の薬剤送達デバイス10に関して上述したような第2の投薬ロックの変形形態に類似の配置のものである。たとえば、一実施形態では、第2のロック(図示せず)は、伸長部材68の端壁68Aから延びるロッキング部材を含む。ロッキング部材は、環状プレート64の中央アパーチャを通ってハウジング61の中心軸A-Aの方向に長手方向に延びる。ロッキング部材は、プレート64が第2のばね66の力に抗して伸長部材68に当接した状態で保持されるように、プレート64の遠位向きの面64Aに最初は係合している突起を有する。プレート64は、突起を含む。この突起は、プレート64が中間位置に達するとプレート64をハウジング61の中心軸A-A周りに回転させるように付勢する遠位部分16の端壁19から直立したカム部材に係合する。一実施形態では、カム部材(図示せず)は、傾斜カム面付きの突起を含む。プレート64のこの回転によって、ロッキング部材の突起は、プレート64のスロットに位置合わせされ、それによって突起は伸長部材68に対してプレート64を定位置に軸方向にそれ以上保持しなくなる。したがって、プレート64が中間位置に達すると、プレート64は回転し、それによってロッキング部材の突起がスロットの中を軸方向に通過し、それによって第2の投薬ロックがロック状態からロック解除状態に動いてプレート64が伸長部材68から遠ざかるように動くことができるようになる。他の実施形態(図示せず)では、第2のロックは、第2のロックがロック解除状態へと動かされるまで、第2のばね66を圧縮位置に保持するように、第2のばね66に係合する。一実施形態(図示せず)では、第2のロックは、電動ラッチを含む。
薬剤送達機構は、針後退ロック73をさらに含む。針後退ロック73は、針後退ばね74と、後退保持要素75と、一対の後退ロッキング部材(図示せず)とを有する。針後退ロック73は、本発明の第1の実施形態の薬剤送達デバイス10の針後退ロック37に類似している。違いは、第2の実施形態の薬剤送達デバイス60の後退ロッキング部材は、ハウジング61の遠位部分16ではなく可撓性バッグ63に回転可能に取り付けられることである。したがって、針後退ロック73がロック状態にあるとき、ハウジング61の中心軸A-Aの方向における可撓性バッグ63の動きが対応それに対応した針62の変位を引き起こす。したがって、近位部分17が初期位置から準備完了位置へと動かされると、可撓性バッグ63およびプレート64は、遠位部分16の端壁19の方に向けて動き、針6
2も遠位部分16の端壁19の方に向けて動く。
【0134】
針後退ロック73がロック状態にあるとき、可撓性バッグ63が遠位部分16の端壁19に当接すると、針62は、端壁19から外に突出して伸長位置になる。針後退ロック73がロック解除状態まで動くと、針後退ばね74が解放されて針62に力を及ぼし、それによって針62はハウジング61内の後退位置へと動かされる。
【0135】
次に、薬剤送達デバイス60の例示的な動作について述べる。薬剤送達デバイス60は、典型的には、滅菌包装(図示せず)内に収納される。患者は、まず、滅菌包装から薬剤送達デバイス60を取り出す。滅菌包装からの薬剤送達デバイス60の取り出しの際、ハウジング61の近位部分17は初期位置にあり、針62は後退位置にあり、ボタン15は(
図10に示されるように)近位部分17内に後退しており、したがって患者はボタン15にアクセスしてそれを作動させることができなくなっている。こうして、患者は、可撓性バッグ63から薬剤を投薬するまたは針12を伸長位置まで動かすように、ボタン15を押し下げることができない。
【0136】
次いで、患者は、薬剤送達デバイス60の可撓性バッグ63に薬剤を供給し、ラベル(図示せず)を粘着層(図示せず)から除去して患者の皮膚にその粘着層を粘着させ、遠位部分16の端壁19を注射部位に固定する。
【0137】
次いで、患者は、ハウジング61の近位部分17に力を加えて近位部分17を初期位置から準備完了位置へと動かす。近位部分17が準備完了位置の方に向けて動かされると、針62、プレート64、第1および第2のばね65、66、および伸長部材68は、プレート64が遠位部分16の端壁19から間隔を置いて配置された可撓性バッグ63に当接する(
図11に示される)第1の位置に動くまで、可撓性バック63の方に向けて動かされる。
【0138】
近位部分17が準備完了位置に到達すると、ラッチ48は、近位部分17を準備完了位置に保持する。
【0139】
第1のロック67は、最初はロック状態にあり、第1のばね65を、近位部分17の端壁21と伸長部材68のリップ68Cの近位向きの面との間で圧縮位置に保持する。第1のばね65は、プレート64および伸長部材68を近位部分17の端壁21から遠ざけるように付勢する。
【0140】
第2のロックは、最初はロック状態にあり、第2のばね66を、伸長部材68の端壁68Aとプレート64の近位向きの面64Bとの間で圧縮位置に保持する。第2のばね66は、プレート64を伸長部材68から遠ざけるように付勢する。
【0141】
ボタン15は、近位部分17が準備完了位置まで動かされるときにボタン15が近位部分17に対して摺動して近位部分17から(
図11に示されるように)突出するように、ハウジング61の近位部分17の内部壁17Aに摺動可能に受け入れられる。こうして、ボタン15は患者によって作動される。ボタン15は、近位部分17が準備完了位置にあるとき、近位部分17の端壁21から突出している。
【0142】
近位部分17が準備完了位置になると、薬剤送達デバイス60は、患者の注射部位に薬剤を供給する準備が完了する。患者は、ボタン15の端壁15Bを押し下げてボタン15をハウジング61の近位部分17内へと摺動させる。それによって、ボタン15は、第1のロック67に係合し、それによって第1のばね65が解放されて針62、プレート64および可撓性バッグ63を遠位部分16の端壁19の方に向けて動かす。したがって、可
撓性バッグ63は、遠位部分16の端壁19に当接するように動き、こうして針62は、(
図13に示されるように)伸長位置へと動く。
【0143】
より詳細には、ボタン15の突起15Cは、ロッキング部材69の傾斜面72に接して付勢され、それによってロッキング部材69は、ハウジング61の中心軸A-Aの方に向かって回転し、それによって第1のロック67が(
図11に示される)ロック状態から(
図12に示される)ロック解除状態へと動く。上述したように、それによって、伸長部材68は、近位部分17の端壁21から離れるように動くことができるようになり、それによってプレート64は、第1のばね65の力により第1の位置から遠位部分16の端壁19の方に向けて動かされ、それによって針62が軸方向に動いてセプタム31を貫通して端壁19のアパーチャ19Cの外へと延びる。こうして、針62は、(
図13に示されるように)伸長位置まで動く。遠位部分16の端壁19は、患者の皮膚に粘着しており、したがって、針62は伸長位置に動かされると、患者の注射部位に入る。
【0144】
針62が伸長位置に達すると、可撓性バッグ63は、遠位部分16の端壁19に当接し、端壁19と、伸長部材68に作用する第1のばね65の力によって端壁19の方に向けて付勢されて(
図11に示される)第1の位置から(
図14に示される)中間位置へと動くプレート64との間で圧縮される。こうして、針62が伸長位置まで動かされた後、薬剤が可撓性バッグ63から投薬され、針62を通って患者の注射部位へと流れる。
【0145】
プレート64は、中間位置に達すると、第2のロック(図示せず)に係合してそれをロック解除状態へと動かし、それによって第2のばね66が解放されてプレート64を伸長部材68から遠位部分16の端壁19の方に向けて付勢する。それによって、プレート64は、ハウジング61に対して中間位置から(
図15および
図16に示されるように)第2の位置まで動かされ、それによってさらなる薬剤が可撓性バッグ63から投薬される。プレート64が第2の位置にあるとき、第2のばね66は、第1のばね65から入れ子式に延びることができる。
【0146】
ボタン15の押し下げによって第1のロックがロック解除状態へと動かされて薬剤送達が開始された後、患者は、ボタン15を押すのをやめることができる。プレート64は、第1のばね65の力、次いで第2のばね66の力により遠位部分16の端壁19の方へと動き続け、それによって可撓性バッグ63は圧縮され、薬剤が針62を介して患者の注射部位へと送達される。
【0147】
薬剤は、プレート64がハウジング61内の第2の位置まで動くまで、注射部位に送達され続ける。プレート64がハウジング61内の第2の位置まで動いた時点で、プレート64は針後退ロック73に係合し、それによって針後退ばね74が解放されて針62が後退位置まで動く。たとえば、一実施形態では、プレート64は、第1のばね65の力、次いで第2のばね66の力により、プレート64が後退ロッキング部材42に接して付勢されるまで、遠位部分16の端壁19の方へと動かされ、その結果、後退ロッキング部材は後退保持要素75から離れるように回転する。それによって、後退保持要素75は、針後退ばね74の力により遠位部分16の端壁19から遠ざかるように動かされ、針62のベース62Aに接して付勢し、それによって針62は(
図16に示されるように)ハウジング61内の後退位置へと動く。そして、患者は薬剤送達デバイス60を注射部位から除去することができる。
【0148】
上述した実施形態では、アクチュエータ15は、近位部分17が初期位置にあるとき、ハウジング11、61に完全に受け入れられる。しかし、一代替実施形態では、アクチュエータ15は、近位部分17が初期位置にあるときと、準備完了位置にあるとき、ハウジング11、61の近位部分17から突出するように構成される。そのような実施形態では
、アクチュエータ15は、近位部分17が初期位置にあるときに近位部分17の端壁21から突出するのに十分な長さがある。
【0149】
上述の実施形態では、第1および第2の投薬付勢部材25、65、26、66ならびに針伸長および後退付勢部材32、33は、それぞれのばね25、65、26、66を含む。しかし、代替実施形態(図示せず)では、第1の付勢部材25、65、第2の付勢部材26、66、針伸長付勢部材32および針後退付勢部材33のうちの1つまたはそれ以上が、異なるタイプの付勢部材である、たとえば付勢力を及ぼすように圧縮される弾性的に変形可能な材料の部分を含む。
【0150】
上述の実施形態では、薬剤送達デバイス10、60は、近位部分17が遠位部分16に対して動くことができるようにするラッチ48を含む。しかし、一代替実施形態(図示せず)では、ラッチは除かれ、その代わりに遠位および近位部分16、17は、それぞれのねじ山(screw thread)を含む。ねじ山は、近位部分17の端壁21が遠位部分16の端壁19の方に向けて動くようにハウジング11、61の近位部分17が遠位部分16に螺着できるように、互いに係合する。そのような実施形態では、第1のねじ山は、遠位部分16の周壁18の外面上に設けられ、第2のねじ山は、近位部分17の周壁20の内面上に設けられる。他の実施形態では、ハウジング11、61の遠位および近位部分16、17は、互いに対して固定され、一体形成される。
【0151】
上述の実施形態では、第1および第2のロック(図示せず)は、投薬部材24、64が第1の位置から中間位置へと動き、次いで中間位置から第2の位置へと動くことができるように機械的に動作される。しかし、一代替実施形態(図示せず)では、第1および第2のロックは、代わりに電動式である。たとえば、第1および第2のロックは、それぞれの第1および第2の電磁ラッチ(図示せず)を含むことができる。第1の電磁ラッチは、近位部分17に対して伸長部材28、68を定位置に保持し、第2の電磁ラッチは、伸長部材28、68に対してプレート24、64を定位置に保持する。患者がボタン15を押し下げられると、第1の電磁ラッチは、伸長部材28、68が解放されて第1の投薬ばね25、65の力により遠位部分16の端壁19の方に向けて動くように、その状態が変わる。プレート24、64が中間位置に達すると、第2の電磁ラッチは、プレート24、64が第2の投薬ばね26、66の力により伸長部材28、68から遠ざかるように動くように、その状態が変わる。同様に、針作動機構13は、代わりに電動式であってもよく、たとえば、後退位置と伸長位置との間で針12、62を動かすモータ(図示せず)を含む。
【0152】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0153】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内
送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0154】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0155】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0156】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0157】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0158】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0159】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0160】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0161】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0162】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0163】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0164】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0165】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0166】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0167】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0168】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえ
ば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0169】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0170】
本明細書に記載の物質、配合、装置、方法、システムおよび実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または削除)は、本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができ、本発明は、そのような修正、および本発明のあらゆる均等物もすべて包含することが当業者には理解されよう。
【外国語明細書】