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特開2022-116034インフルエンザウイルスを標的とするDNAモノクローナル抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116034
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】インフルエンザウイルスを標的とするDNAモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220802BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220802BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220802BHJP
   C07K 16/10 20060101ALN20220802BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K39/395 S
A61P31/16
A61K48/00
C07K16/10
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022078109
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2019510570の分割
【原出願日】2017-05-05
(31)【優先権主張番号】62/332,381
(32)【優先日】2016-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/376,162
(32)【優先日】2016-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(71)【出願人】
【識別番号】516142001
【氏名又は名称】ザ ウィスター インスティテュート オブ アナトミー アンド バイオロジー
(71)【出願人】
【識別番号】509320254
【氏名又は名称】イノビオ ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ウェイナー
(72)【発明者】
【氏名】サラ エリオット
(72)【発明者】
【氏名】アミ パテル
(72)【発明者】
【氏名】チエン イェン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インフルエンザの処置のための改善された組成物及び方法を提供する。
【解決手段】抗-インフルエンザヘマグルチニン合成抗体をコードする組換え核酸配列を含む組成物を開示する。また、当該組成物及び生成方法を使用して、対象におけるインフルエンザを、予防、及び/または、処置する方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の合成抗体をコードする核酸分子であって、前記核酸分子が、
a)抗-インフルエンザヘマグルチニン(HA)合成抗体をコードするヌクレオチド配列、及び
b)抗-インフルエンザHA合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、前記核酸分子。
【請求項2】
前記抗-インフルエンザHA合成抗体が、インフルエンザHAの球状頭部に結合する抗体、及び、インフルエンザHAの融合サブドメインに結合する抗体、からなる群より選択される請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記核酸分子が、配列番号1~8に対して少なくとも90%の相同性を示す配列、及び、その断片から選択されるアミノ酸配列を含む抗-インフルエンザHA合成抗体をコードする、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記核酸分子が、配列番号9~16に対して少なくとも90%の相同性を示す配列、及び、その断片から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項5】
第1の抗-インフルエンザHA抗体をコードする第1のヌクレオチド配列、及び、第2の抗-インフルエンザHA抗体をコードする第2のヌクレオチド配列からなる群から選択された、少なくとも1つのヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項6】
開裂ドメインをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項7】
抗-インフルエンザ-HA抗体の可変重鎖領域、及び、可変軽鎖領域をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項8】
ヒトIgG1κの定常重鎖領域、及び、定常軽鎖領域をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項9】
抗-インフルエンザ-HAの可変重鎖領域、ヒトIgG1κの定常重鎖領域、開裂ドメイン、抗-インフルエンザ-HAの可変軽鎖領域、及び、IgG1κの定常軽鎖領域を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記ヌクレオチド配列が、リーダー配列をコードする、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記核酸分子が、発現ベクターを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の核酸分子を含む組成物。
【請求項13】
医薬として許容される賦形剤をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
対象におけるインフルエンザ感染を処置する方法であって、前記対象に対して、請求項1~11のいずれか1項に記載の核酸分子、または、請求項12~13のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
前記インフルエンザ感染が、A型インフルエンザ感染、及び、B型インフルエンザ感染から選択される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年5月5日に出願された米国仮出願第62/332,381号、及び、2016年8月17日に出願された米国仮出願第62/376,162号の優先権を主張し、各出願の全内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0002】
本発明は、抗-インフルエンザヘマグルチニン抗体、及び、その機能的断片を含む、1つ以上の合成抗体をインビボで生成するための組換え核酸配列を含む組成物、及び、当該組成物を投与することによって、対象における疾患を、予防、及び/または、処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有望な技術革新をよそに、インフルエンザワクチン、及び、抗ウイルス薬は、季節性感染症に対する完全な保護をもたらしておらず、かつ、新規で潜在的な流行性ウイルス株に対する保護はほとんどされていない。非常に多様なインフルエンザウイルスに対する保護を提供する目的で、広範に交差保護的なモノクローナル抗体が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、当該技術分野において、インフルエンザの処置のための改善された組成物、及び、方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、1つ以上の合成抗体をコードする核酸分子に関するものであり、当該核酸分子は、a)抗-インフルエンザヘマグルチニン(HA)合成抗体をコードするヌクレオチド配列、及び、b)抗-HA合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列、からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0006】
ある実施形態において、当該抗-HA合成抗体は、インフルエンザHAの球状頭部に結合する抗体、及び、インフルエンザHAの融合サブドメインに結合する抗体、からなる群より選択される。
【0007】
ある実施形態において、当該核酸分子は、第1の抗-HA抗体をコードする第1のヌクレオチド配列、及び、第2の抗-HA抗体をコードする第2のヌクレオチド配列からなる群から選択された少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。
【0008】
ある実施形態において、当該核酸分子は、開裂ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0009】
ある実施形態において、当該核酸分子は、抗-HAの可変重鎖領域、及び、可変軽鎖領域をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0010】
ある実施形態において、当該核酸分子は、ヒトIgG1κの定常重鎖領域、及び、定常軽鎖領域をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0011】
ある実施形態において、当該核酸分子は、抗-HAの可変重鎖領域、ヒトIgG1κの定常重鎖領域、開裂ドメイン、抗-HAの可変軽鎖領域、及び、IgG1κの定常軽鎖領域を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0012】
ある実施形態において、当該核酸分子は、リーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0013】
ある実施形態において、当該核酸分子は、発現ベクターを含む。
【0014】
ある実施形態において、本発明は、当該核酸分子を含む組成物を提供する。ある実施形態において、当該組成物は、医薬として許容される賦形剤をさらに含む。
【0015】
ある実施形態において、本発明は、本明細書に記載の当該核酸または組成物を対象に投与することを含む、対象におけるインフルエンザ感染を予防または処置する方法を提供する。ある実施形態において、当該インフルエンザ感染は、A型インフルエンザ感染である。ある実施形態において、当該インフルエンザ感染は、B型インフルエンザ感染である。
【0016】
ある実施形態において、本発明は、哺乳動物細胞、または、ウイルスベクターにおいて、モノクローナル抗体を生産するための新規な配列を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、抗-インフルエンザ抗体5J8が結合するインフルエンザヘマグルチニン可変領域を示す。
図2図2は、抗-インフルエンザ抗体FI6が結合するインフルエンザヘマグルチニン可変領域を示す。
図3図3は、図3A及び3Bを含んでおり、DMAbプラスミドDNA構築物が、293T細胞で発現することを実証する実験の結果を示す。図3Aは、上清及び溶解物ヒトIgG1κ発現を、定量的ELISA(N=3 トランスフェクション反復、平均値±SEM)で決定をしたELISAの結果を示す。図3Bは、上清、及び、溶解重鎖、及び、軽鎖ペプチド開裂を示す代表的なウエスタンブロットを示す。
図4図4は、図4A及び4Bを含んでおり、筋肉内にDNA電気穿孔をした後に、マウス血清にDMAbが発現することを実証する実験の結果を示す。マウスに、5J8またはFI6プラスミドDNAを注射し、続いて、筋肉内の電気穿孔を行った。マウス血清でのヒトIgG1κ抗体レベルを、定量的ELISAで決定した。図4Aは、抗-インフルエンザDMAbを、53ng/ml~1.1μg/mlで発現しており、BALB/cマウスに送達して7日後には、ベースラインとなる0日目のプレ-ブリードのレベルよりも有意に高いことを実証する結果を示している。部位送達、及び、製剤の最適化戦略は、DMAbの発現を、>3倍にまで増強した。図4Bは、ヌードマウスにおけるDNA用量増大の結果を示す。300μgのプラスミドDNAを免疫不全ヌードマウスに送達した後に、ピークFI6発現は、2.6μg/mlに達した。DMAbの発現は、10週間にわたって持続した。(N=5、平均±SEM。)
図5図5は、マウス血清由来のDMAbが、ヘマグルチニン抗原に結合する能力を有することを実証する実験の結果を示す。ヌードマウスは、筋肉内電気穿孔で、FI6(300μg)プラスミドDNAを取り込んだ。4週間後に、組換えA型インフルエンザH1ヘマグルチニン抗原に対する血清DMAbの結合を、ELISAで測定した。(N=5、平均±SEM。)
図6図6は、臨床的に関連するインフルエンザウイルスの多様性を示すA型インフルエンザ株及びB型インフルエンザ株の系統樹を示す。
図7図7は、A型及びB型インフルエンザに関して単離されたヒトモノクローナル抗体(mAb)が、広域交差反応性を有することを実証する実験の結果を示す。A型インフルエンザ特異的FluAモノクローナル抗体は、グループ1及び2の両方において、季節性及び流行性ウイルスを広範に中和する。FluBモノクローナル抗体は、B型インフルエンザの双方の系統に由来するウイルスを強力に中和する。
図8図8は、DMAbプラスミド構築、及び、機能的モノクローナル抗体の生産の概略を示す。
図9図9は、インフルエンザ致命的試験のデザインを示す。
図10図10は、FluA、及び、FluB DMAb血清発現、及び、機能性を実証する実験の結果を示す。FluA DMAb(上段)、及び、FluB DMAb(下段)のEPの5日後に血清を回収し、そして、ヒトIgG発現、種々のHAタンパク質への結合活性、及び、中和活性を評価した。
図11図11は、FluA DMAbが、0.3mg/kgの精製FluA IgGと同様のレベルの致命的A型インフルエンザ感染からマウスを保護することを実証する実験の結果を示す。感染時の精製IgGに対するDMAbの血清濃度。体重減少、及び、致命的A型インフルエンザ感染での接種した後の生存率、*log-rant検定によって、コントロールDMAbと比較した、FluA DMAbの有意な生存利益、p<0.0001。
図12図12は、FluB DMAbが、1mg/kgの精製FluB IgGと同様のレベルで、致命的なB型インフルエンザ感染からマウスを保護することを実証する実験の結果を示す。感染時の精製IgGに対するDMAbの血清濃度。体重減少、及び、致命的B型インフルエンザ感染での接種した後の生存率、*log-rant検定によって、コントロールDMAbと比較した、FluB DMAbの有意な生存利益、p<0.0001。
図13図13は、FluAとFluB DMAbとを併用投与した場合に、致命的A型インフルエンザまたはB型インフルエンザ感染のいずれかから、マウスを保護することを実証する実験の結果を示す。感染時の精製IgGの組み合わせについてのFlu DMAbの併用血清濃度。A型またはB型インフルエンザに特異的な定量は、併用DMAb処置が、単独投与の場合で認められたのと同様のレベルの発現を生じることを示す。致命的A型インフルエンザまたはB型インフルエンザ感染での接種後の生存率、*Log-rant検定によって、コントロールDmAbと比較した、FluA+FluB DMAbの有意な生存利益、p<0.0001。
図14図14は、図14A図14Fを含んでおり、DNAでコードしたモノクローナル抗体(DMAb)構築物のインビトロ及びインビボでの発現を実証する実験の結果を示す。図14Aは、細胞上清(左)及び溶解物(右)におけるヒトIgG発現を、ELISAで定量化したものを示す。293T細胞を、FluAまたはFluB DMAbプラスミド構築物、または、空のプラスミド(pVax1)でトランスフェクトした。(n=3、±SEM)。図14Bは、低下したDMAb-トランスフェクト293T細胞上清(S)、及び、溶解物(L)(左)、及び、精製タンパク質モノクローナル抗体FluA及びFluB(IgG、右)におけるヒトIgG重鎖、及び、軽鎖ペプチドのウエスタンブロットを示す。図14Cは、100~300μgのFluAプラスミドDNAを筋肉内電気穿孔(IM-EP)(0日目)した後のCAnN.Cg-Foxnlnu/Crヌードマウス血清でのDMAbヒトIgGを示す。(n=5、±SEM)。図14Dは、100~300μgのFluBプラスミドDNAを筋肉内電気穿孔(IM-EP)(0日目)した後のCAnN.Cg-Foxnlnu/Crヌードマウス血清でのDMAbヒトIgGを示す。(n=5、±SEM)。図14Eは、100~300μgのFluAプラスミドDNAを投与して5日後のBALB/cマウス血清でのDMAbヒトIgGのレベルを示す。点線は、検出限界(LOD)を示す。(n=5、±SEM)。図14Fは、100~300μgのFluBプラスミドDNAを投与して5日後のBALB/cマウス血清でのDMAbヒトIgGのレベルを示す。点線は、検出限界(LOD)を示す。(n=5、±SEM)。
図15図15は、図15A図15Cを含んでおり、血清FluA DMAb及びFluB DMAbが機能的である、ことを実証する実験の結果を示す。100~300μgのFluAまたはFluB DMAbプラスミドDNAで処置をした5日後に、BALB/cマウス由来の血清に対して機能アッセイを行った。図15Aは、グループ1(H1 A/California/07/2009 H1N1、H2 A/Missouri/2006 H2N3、H5 A/Vietnam/1203/2004 H5N1、H6 A/teal/Hong Kong/W312/97 H6N1、H9 A/chicken/Hong Kong/G9/1997 H9N2)、及び、グループ2(H3 A/Perth/16/2009 H3N2、H7 A/Netherlands/219/2003 H7N7)から得たA型インフルエンザHAタンパク質に対する個々のマウス血清試料についてのELISA結合EC50値(レシプロカル希釈)を示す。図15Bは、Yamagata(Yam B/Florida/4/2006)、及び、Victoria(Vic B/Brisbane/60/2008)系統から得たB型インフルエンザHAタンパク質に対する個々のマウス血清試料についてのELISA結合EC50値(レシプロカル希釈)を示す。図15Cは、Yam B/Florida/4/2006、及び、Vic B/Malaysia/2506/2004ウイルスに対する個々のマウス血清試料についての中和IC50値(レシプロカル希釈)を示す。(n=5、±SD)。
図16図16は、図16A図16Fを含んでおり、FluA DMAbが、多様な致命的A型インフルエンザ接種からマウスを保護することを実証する実験の結果を示す。BALB/cマウスを、A/California/7/2009 H1N1(A-C)、または、再分類したrA/HongKong/8/68xPR8 H3N1(D-F)で鼻腔内感染させる4~5日前に、FluA DMAbプラスミドDNA(塗り潰し記号)で処置をした。感染の1日前に、各マウスに、0.03~1mg/kgのFluAタンパク質モノクローナル抗体を腹腔内投与した。(白抜き記号)。300μgの無関係のDMAb(DVSF-3)、または、1mg/kgの非特異的タンパク質モノクローナル抗体(R347)で処置をしたマウスを、コントロールとして用いた。図16Aは、インフルエンザ感染時のマウス血清でのヒトIgGを示す。図16Bは、A型インフルエンザを接種したBALB/cマウスのKaplan-Meier生存曲線を示す。(n=10)。図16Cは、A型インフルエンザを接種した後のBALB/cマウスの体重を示す。点線は、25%の最大減量を示す。(n=10、±SEM)。図16Dは、インフルエンザ感染時のマウス血清でのヒトIgGを示す。図16Eは、A型インフルエンザを接種した後のBALB/cマウスのKaplan-Meier生存曲線を示す。(n=10)。図16Fは、A型インフルエンザを接種した後のBALB/cマウスの体重を示す。点線は、25%の最大減量を示す。(n=10、±SEM)。
図17図17は、図17A図17Fを含んでおり、FluB DMAbが、多様な致命的B型インフルエンザ接種からマウスを保護することを示す実験の結果を示す。BALB/cマウスを、B/Malaysia/2506/2004 Victoria(A-C)、または、B/Florida/4/2006 Yamagata(D-F)系統ウイルスで感染させる5日前に、FluB DMAbプラスミドDNAで処置をした。感染の1日前に、各群のマウスに、0.03~1mg/kgのFluBタンパク質モノクローナル抗体を腹腔内投与した。図17Aは、感染時のマウス血清でのヒトIgGを示す。点線は、LODを示す。(n=10、±SD)。図17Bは、B型インフルエンザを接種したBALB/cマウスのKaplan-Meier生存曲線を示す。(n=10)。図17Cは、B型インフルエンザを接種した後のBALB/Cマウスの体重を示す。点線は、25%の最大減量を示す。(n=10、±SEM)。図17Dは、感染時のマウス血清でのヒトIgGを示す。点線は、LODを示す。(n=10、±SD)。図17Eは、B型インフルエンザを接種したBALB/cマウスのKaplan-Meier生存曲線を示す。(n=10)。図17Fは、B型インフルエンザを接種した後のBALB/cマウスの体重を示す。点線は、25%の最大減量を示す。(n=10、±SEM)。
図18図18は、図18A図18Fを含んでおり、FluA及びFluB DMAbの同時投与が、致命的A型/B型インフルエンザ接種及び相同性再接種からマウスを保護することを実証する実験の結果を示す。BALB/cマウスは、FluA及びFluB DMAbの双方を受けた。各マウスを、FluA+FluBタンパク質モノクローナル抗体で処置をした。マウスを、A/California/7/2009、または、B/Florida/4/2006のいずれかのインフルエンザで初期感染させた。図18Aは、感染時のマウス血清での全ヒトIgGレベルを示す。(n=8±SD)。図18Bは、HA結合ELISAによって定量化した感染時のマウス血清でのA型及びB型インフルエンザ特異的ヒトIgGを示す。(n=8、±SD)。図18Cは、A/California/07/2009で初期感染した後のKaplan-Meier生存曲線を示す。図18Dは、B/Florida/4/2006で初期感染した後のKaplan-Meier生存曲線を示す。図18Eは、初期感染の28日後に、生存しているマウスに対して同種のインフルエンザを再感染させた実験を示す。DMAb/IgG処置も、初期感染もしていない(ナイーブ)マウスと比較をした、再感染後のKaplan-Meier生存曲線。図18Fは、初期感染の28日後に、生存しているマウスに対して同種のインフルエンザを再感染させた実験を示す。DMAb/IgG処置も、初期感染もしていない(ナイーブ)マウスと比較をした、再感染後のKaplan-Meier生存曲線。
図19】図は、インビボでのDMAb発現の増強を実証する実験の結果を示す。200μgのFluBプラスミドDNAの連続修正投与を受けたマウスでの5日後の血清DMAbヒトIgG発現。筋肉内電気穿孔のみ(IM-EP)、または、ヒアルロニダーゼ製剤を用いたIM-EP(Hya+IM-EP)を介して、プラスミドDNAを、BALB/cマウスに送達した。さらに、プラスミド導入遺伝子挿入配列を、発現を強めるために、DNAコドン最適化、及び、RNA最適化した(Opt+Hya+IM-EP)。その他のすべての研究は、Opt+Hya+IM-EPで行った。(群当たりn=5の動物、平均±SEM)。
図20図20は、マウス血清でのFluA DMAbが、A型インフルエンザヘマグルチニンH10に結合することを示す実験の結果を示す。100~300μgのFluA DMAbプラスミドDNAで処置をして5日後に回収したBALB/cマウスの血清を連続希釈し、そして、A型インフルエンザグループ2の組換えH10抗原(A/Jiangxi-Donghu/346/2013 H10N8)(IBT Bioservices)で被覆した96ウェルプレートに添加した。HRP結合二次抗体ロバ抗ヒトIgG(1:5,000)でDMAb結合を検出し、そして、SigmaFast OPD基質(Sigma-Aldrich)を用いて発色させた。450nmで、吸光度を測定した。未処置(ナイーブ)マウス由来の血清を、コントロールとして用いた。(群当たりn=5、平均±SD)。
図21図21は、図21A及び図21Bを含んでおり、インビボで発現したFluA及びFluB DMAbが、精製IgGと同様のレベルで機能性IgGを産生することを実証する実験の結果を示す。図21Aは、FluAプラスミドDNA、精製抗-インフルエンザIgGタンパク質、または、無関係なコントロールDMAb(DVSF-3)で処置をした動物由来の血清試料でのA/California/7/2009 H1から得た精製H1 HAタンパク質に対する反応性を示す。インフルエンザ感染の当日に血清を採取し、そして、ELISAに結合させることで、HA反応性を試験した。図21Bは、FluBプラスミドDNA、精製抗-インフルエンザIgGタンパク質、または、無関係なコントロールDMAb(DVSF-3)で処置をした動物由来の血清試料でのB/Brisbane60/2008Victoriaから得た精製Victoria系統HAタンパク質に対する反応性を示す。インフルエンザ感染の日に血清を採取し、そして、ELISAに結合させることで、HA反応性を試験した。
図22図22は、図22A及び図22Bを含んでおり、FluBが、肺におけるB型インフルエンザウイルス負荷を有意に低下させることを実証する実験の結果を示す。感染の5日前に、BALB/cマウスを、200μgのFluB DMAbプラスミドDNA、または、無関係のDMAbコントロール(DVSF-3)で処置した。感染の1日前に、それぞれの群に対して、0.03~1mg/kgのFluB精製IgGタンパク質、または、無関係のコントロールIgG R347を腹腔内投与した。図22Aは、B/Malaysia/2508/2004で感染をして5日後の肺ウイルス力価を示す。図22Bは、B/Florida/4/2006で感染をして5日後の肺ウイルス力価を示す。(n=4、±SEM)。点線は、LODを示す。スチューデントt検定によって、コントロールDMAb DVSF-3群と比較をした、ウイルス力価の有意な減少。
図23図23は、図23A図23Dを含んでおり、FluA及びFluB DMAbの同時投与が、致命的なインフルエンザ接種、及び、相同性再接種からマウスを保護することを実証する実験の結果を示す。BALB/cマウスに、FluA及びFluB DMAbの双方を受けた。感染の1日前に、それぞれの群を、FluA及びFluBタンパク質IgGの組み合わせの0.1~1mg/kgで処置をした。図23Aは、A/California/7/2009を感染させた動物の体重減少を示す(n=10、±SEM)。図23Bは、B/Florida/4/2006を感染させた動物の体重減少を示す(n=10、±SEM)。図23Cは、初期感染の28日後に、生存しているマウスに対してA/California/7/2009で相同インフルエンザを再接種した後の体重減少を示す。図23Dは、初期感染の28日後に、生存しているマウスに対してB/Florida/4/2006で相同インフルエンザを再接種した後の体重減少を示す。
図24図24は、図24A図24Dを含んでおり、感染させて21日後のDMAbで処置したマウスの血清反応性を実証する実験の結果を示す。A/California/7/2009、または、B/Florida/4/2006で感染をさせて21日後に生存していたBALB/cマウスの血清を用いて、機能アッセイを実施した。図24Aは、感染ウイルスA/California/07/2009に対する赤血球凝集阻害活性(レシプロカル希釈)を示す。図24Bは、A型インフルエンザ/California/07/2009HAタンパク質に対するELISA結合EC50値(レシプロカル希釈)を示す。図24Cは、感染ウイルスB/Florida/4/2006に対する赤血球凝集阻害活性(レシプロカル希釈)を示す。図24Dは、B型インフルエンザHAタンパク質に対するELISA結合EC50値(レシプロカル希釈)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、抗体、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードする組換え核酸配列を含む組成物に関する。当該組成物は、インビボでの発現、及び、インフルエンザ抗原に対する合成抗体の形成を促すために、それを必要とする対象に投与することができる。
【0019】
特に、組換え核酸配列から発現した重鎖及び軽鎖ポリペプチドは、合成抗体に組み立てることができる。当該重鎖ポリペプチド及び当該軽鎖ポリペプチドは、抗原に結合することができ、本明細書に記載のようにして組み立てられていない抗体に比べて免疫原性がさらに強く、かつ、抗原に対して免疫応答を惹起、もしくは、誘導することが可能な合成抗体の組み立てができるように、互いに相互作用することができる。
【0020】
さらに、これらの合成抗体は、当該対象において、抗原免疫誘導性免疫応答に応答して産生される抗体よりも迅速に生成される。当該合成抗体は、ある範囲の抗原に対して効果的に結合し、そして、中和することができる。当該合成抗体は、当該標的に対して高度に特異的である。当該合成抗体はまた、疾患から効果的に保護をし、及び/または、疾患での延命を図ることができる。
【0021】
1.定義
特に定義していない限り、本明細書で使用する全ての技術的用語及び科学的用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書が優先となる。本発明の実施または試験において、本明細書に記載したものと同様または同等の方法及び材料を用いることはできるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び、他の引用文献は、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する。なお、本明細書で開示した材料、方法、及び、実施例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。
【0022】
本明細書で使用する用語「を含む(comprise(s))」、「を含む(include(s))」、「を有する(having)」、「を有する(has)」、「できる(can)」、「を含む(contain(s))」、及び、その変形は、付加的な行為または構造の可能性を妨げない、制限しない移行句、用語、または、単語であることを意図している。単数形である「a」、「and」、および「the」は、文脈上断りの無い限りは、複数形の意味を持つこともある。本開示は、明示的に記載されているかどうかに関わらず、本明細書に示される実施形態または要素「を含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、および「から実質的になる(consisting essentially of)」その他の実施形態も企図する。
【0023】
「抗体」は、クラスIgG、IgM、IgA、IgD、または、IgEの抗体、または、Fab、F(ab’)2、Fdを含む、その断片もしくは誘導体、ならびに、その一本鎖抗体、及び、誘導体を意味し得る。当該抗体は、哺乳動物の血清試料から単離された抗体、ポリクローナル抗体、親和性精製抗体、または、これらの混合物のうち、所望のエピトープ、または、それに由来する配列に対する十分な結合特異性を示すものであり得る。
【0024】
本明細書で互換的に使用する、「抗体断片」または「抗体の断片」は、抗原結合部位または可変領域を含む完全抗体の一部分のことを指す。この部分は、完全抗体のFc領域のある特定の重鎖領域(すなわち、抗体アイソタイプに応じてCH2、CH3またはCH4)を含まない。抗体断片の例として、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、一本鎖Fv(scFv)分子、1つの軽鎖可変領域のみを含有する一本鎖ポリペプチド、軽鎖可変領域の3つのCDRを含有する一本鎖ポリペプチド、1つの重鎖可変領域のみを含有する一本鎖ポリペプチド、及び、重鎖可変領域の3つのCDRを含有する一本鎖ポリペプチドなどがあるが、これらに限定されない。
【0025】
「抗原」は、宿主において免疫応答を生成する能力を有するタンパク質のことを指す。抗原は、抗体によって認識され、そして、結合され得る。抗原は、体内または外部環境から生じ得る。場合によっては、抗原は、インフルエンザ抗原である。
【0026】
本明細書で使用する「コード配列」または「コード核酸」とは、核酸(RNAまたはDNA分子)のことを意味し、同核酸は、本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。当該コード配列は、当該核酸の投与を受ける個体または哺乳動物の細胞内での発現を指示することができるプロモーターやポリアデニル化シグナルを含む調節エレメントに作動可能に連結された開始シグナルと終止シグナルとをさらに含み得る。当該コード配列は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含み得る。
【0027】
本明細書で使用する「相補体」または「相補的」とは、ある核酸が、ヌクレオチド間または核酸分子のヌクレオチド類似体間に、ワトソン・クリック(例えば、A-T/U及びC-G)、または、フーグスティーン塩基対を表わすことを意味し得る。
【0028】
本明細書で使用する「定電流」とは、組織、または、当該組織を規定する細胞が、同組織に送達される電気パルスの持続期間中に受容する、または、経験する電流を定義する。当該電気パルスは、本明細書に記載の電気穿孔装置から送達される。この電流は、電気パルスの寿命期間中、当該組織に定電流量で留まるが、それは、本明細書で提供される電気穿孔装置が、好ましくは、瞬間的フィードバックを有しているフィードバック素子を具備しているからである。当該フィードバック素子は、パルスの持続期間中の組織(または、細胞)の抵抗を測定し、及び、電気穿孔装置に自身の電気エネルギー出力を変化させる(例えば、電圧を上げる)ようにすることができるので、同組織での電流は、電気パルスの間ずっと(マイクロ秒のオーダーで)、及び、パルス間において、一定であり続ける。幾つかの実施形態において、フィードバック素子は、制御器を含む。
【0029】
本明細書で使用する「電流フィードバック」または「フィードバック」は、互換的に使用されており、及び、提供される電気穿孔装置の活発な応答を意味し得るが、これは、電極間の組織の電流を測定することと、電流を一定レベルで維持するために、EP装置が送達するエネルギー出力を適宜変化させることとを含む。この一定レベルは、パルスシーケンスまたは電気処理を開始する前に、使用者が予め設定する。電気穿孔装置内の電気回路が、電極間の組織の電流を連続的にモニターし、そのモニターされた電流(または、組織内の電流)を予め設定された電流と比較し、連続的にエネルギー出力の調整を行なって、モニターされた電流を予め設定されたレベルで維持することができるように、フィードバックは、電気穿孔装置の電気穿孔コンポーネント、例えば、制御器によって達成され得る。当該フィードバックループは、瞬時のものであり得るものであり、それは、フィードバックループが、アナログ閉ループフィードバックであるからである。
【0030】
本明細書で使用する「分散電流」とは、本明細書に記載の電気穿孔装置の様々な針電極アレイから送達される電流のパターンを意味し得るものであり、これらのパターンは、電気穿孔される組織のあらゆる領域に対する電気穿孔関連の熱ストレスの発生を最小限に抑えるか、または、好ましくは、消失させる。
【0031】
本明細書で互換的に使用する「電気穿孔」、「電気透過処理」、または「界面動電増強」(「EP」)は、生体膜に微細経路(細孔)を生じさせるための膜貫通電場パルスの使用を意味し得る。こうした微細経路の存在により、プラスミド、オリゴヌクレオチド、siRNA、薬剤、イオン、及び、水などの生体分子が、細胞膜の片側から他方の側に通過することが可能になる。
【0032】
本明細書で使用する「内因性抗体」とは、体液性免疫応答を誘導するのに有効な量で存在する、抗原を投与されている対象内で生成される抗体のことを指し得る。
【0033】
本明細書で使用する「フィードバック機構」とは、ソフトウェアまたはハードウェア(または、ファームウェア)のいずれかによって実行されるプロセスであって、(エネルギーパルスの送達前、送達中、及び/または、送達後の)所望の組織のインピーダンスを受容し、それを現在値、好ましくは、電流と比較して、送達されるエネルギーパルスを調整して、予め設定された値を達成するプロセスのことを指し得る。フィードバック機構は、アナログ閉ループ回路により実施され得る。
【0034】
「断片」は、機能、すなわち、所望の標的に結合でき、かつ、全長抗体と同じ意図した効果を有する抗体のポリペプチド断片を意味し得る。抗体の断片は、シグナルペプチド、及び/または、第1位のメチオニンを有していても、欠いていても、いずれの場合にも、N末端、及び/または、C末端から少なくとも1つのアミノ酸が欠けている以外は、全長と100%同一であってもよい。断片は、付加されたあらゆる異種シグナルペプチドを除いて、特定の全長抗体の長さの20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上を含み得る。当該断片は、当該抗体に対して95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または、99%以上同一であり、かつ、同一率を計算する際に含まれないN末端メチオニン、または、異種シグナルペプチドをさらに含むポリペプチドの断片を含む。さらに、断片は、免疫グロブリンシグナルペプチド、例えば、IgEまたはIgGシグナルペプチドなどのN末端メチオニン、及び/または、シグナルペプチドをさらに含み得る。N末端メチオニン、及び/または、シグナルペプチドは、抗体の断片に結合し得る。
【0035】
抗体をコードする核酸配列の断片は、シグナルペプチド、及び/または、第1位のメチオニンをコードする配列を有していても、または、欠いていても、いずれの場合にも、5’末端、及び/または、3’末端から少なくとも1つのヌクレオチドが欠けている以外は、全長と100%同一とし得る。断片は、付加されたあらゆる異種シグナルペプチドを除いた特定の全長コード配列の長さの20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上を含み得る。当該断片は、抗体に対して95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または、99%以上同一であり、かつ、同一率を計算する際に含まれないN末端メチオニン、または、異種シグナルペプチドをコードする配列をさらに任意に含むポリペプチドをコードする断片を含み得る。さらに、断片は、免疫グロブリンシグナルペプチド、例えば、IgEまたはIgGシグナルペプチドなどのN末端メチオニン、及び/または、シグナルペプチドに対するコード配列をさらに含み得る。N末端メチオニン、及び/または、シグナルペプチドをコードするコード配列は、コード配列の断片に結合し得る。
【0036】
本明細書で使用される「遺伝子構築物」とは、DNAまたはRNA分子のことを指しており、同分子は、抗体などのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。当該コード配列は、当該核酸の投与を受ける個体の細胞内での発現を指示することができるプロモーターやポリアデニル化シグナルを含む調節エレメントに作動可能に連結された開始シグナルと終止シグナルとを含む。本明細書で使用する場合、用語「発現可能な形態」とは、当該個体の細胞内に存在する場合に、当該コード配列が発現されるようにタンパク質をコードするコード配列に連結された必須の調節エレメントを含む遺伝子構築物のことを指す。
【0037】
本明細書において、2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の関係で使用する「同一」または「同一性」は、当該配列が、指定領域に渡って指定の割合の同一残基を有することを意味し得る。この割合を計算するには、2つの配列を好適に整列させ、指定領域に渡って2つの配列を比較し、双方の配列間で同一残基が発生する位置の数を確定して一致位置の数を得て、一致した位置の個数を指定領域の合計位置数で割り、計算結果に100を掛けることで、配列同一性のパーセント値を算出し得る。2つの配列の長さが異なるか、あるいは、アライメントにより1つ以上の付着末端が生じて、指定の比較領域に単一配列のみが含まれる場合には、単一配列の残基を、計算の分母には含めるが、分子には含めない。DNAとRNAを比較する場合には、チミン(T)とウラシル(U)を同等とみなし得る。同一性は、筆算で求めてもよく、あるいは、BLASTやBLAST 2.0等のコンピューター配列アルゴリズムを使用して計算することもできる。
【0038】
本明細書で使用する「インピーダンス」は、フィードバック機構を論ずる際に利用し得るものであり、かつ、オームの法則に従って電流値に変換することができるため、予め設定された電流と比較が可能である。
【0039】
本明細書で使用する「免疫応答」とは、1つ以上の核酸、及び/または、ペプチドの導入に応答して、宿主の免疫系、例えば、哺乳動物の免疫系が活性化することを意味し得る。この免疫応答は、細胞性応答または体液性応答、または、その両方であり得る。
【0040】
本明細書で使用する「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」は、互いに共有結合している少なくとも2つのヌクレオチドを意味し得る。一本鎖を表現することで、相補鎖の配列も定義される。したがって、核酸は、表現される一本鎖の相補鎖も包含する。ある核酸の多くの変異体を、所定の核酸として同一目的で使用し得る。したがって、核酸は、実質的に同一の核酸、及び、その相補体も含む。一本鎖は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的配列とハイブリダイズできるプローブを提供する。したがって、核酸は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするプローブも含む。
【0041】
核酸は、一本鎖または二本鎖とするか、あるいは、二本鎖及び一本鎖配列の双方の一部を含み得る。当該核酸は、ゲノム及びcDNAの双方のDNA、RNA、または、ハイブリッドとすることができ、当該核酸は、デオキシリボヌクレオチド、及び、リボヌクレオチドの組み合わせ、及び、ウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチンヒポキサンチン、イソシトシン、及び、イソグアニンなどの塩基の組み合わせを含み得る。用語の核酸とは、核酸類似体、及び、非天然核酸も含む。例えば、当該核酸を、修飾してもよく、例えば、1つ以上の修飾核酸塩基、または、修飾した糖部分を含み得る。当該核酸の主鎖は、ペプチド核酸(PNA)におけるように、1つ以上のペプチド結合を含み得る。当該核酸は、非プリン、または、非ピリミジン類似体、または、ヌクレオチド類似体などの塩基類似体を含み得る。核酸は、化学合成法、または、組換え法によって取得し得る。
【0042】
本明細書で使用する「作動可能に連結した」は、遺伝子の発現が、遺伝子と空間的に接続しているプロモーターの制御下にあることを意味し得る。プロモーターは、その制御下にある遺伝子の5’(上流)または3’(下流)に位置し得る。当該プロモーターと遺伝子との間の距離は、プロモーターが由来する遺伝子において当該プロモーターを制御する遺伝子とプロモーターとの間の距離とほぼ同一とし得る。当該技術分野で周知の通り、プロモーター機能を喪失させずに、この距離の変化に適応し得る。
【0043】
本明細書で使用する「ペプチド」、「タンパク質」、または、「ポリペプチド」とは、アミノ酸の結合配列のことを意味することができ、天然、合成、または、天然及び合成の修飾、あるいは、それらの組み合わせとすることができる。
【0044】
本明細書で使用する「プロモーター」とは、核酸の細胞での発現を、実現し、活性化し、または、増強することのできる合成分子または天然由来分子のことを意味し得る。プロモーターは、発現をさらに増強し、及び/または、空間的発現、及び/または、その一時的発現を改変する目的で、1つ以上の特定の転写調節配列を含み得る。プロモーターは、遠位のエンハンサーエレメントまたは抑制エレメントを含むこともでき、このものは、転写開始部位から数千塩基対も離れた場所に位置することができる。プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、及び、動物を含む起源に由来し得る。プロモーターは、遺伝子成分の発現を調節し得るものであり、発現が起こる細胞、組織、もしくは、臓器、あるいは、発現が起こる発生段階については、恒常的もしくは差次的に、または、例えば、生理的ストレス、病原体、金属イオン、あるいは、誘発剤などの外部刺激に応答して同発現を調節し得る。プロモーターの代表例として、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレーター-プロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーター、RSV-LTRプロモーター、CMV IEプロモーター、SV40初期プロモーターまたはSV40後期プロモーター、及び、CMV IEプロモーターなどがある。
【0045】
「シグナルペプチド」及び「リーダー配列」は、本明細書で互換的に使用されており、本明細書に記載のタンパク質のアミノ末端に結合することができるアミノ酸配列のことを指す。一般的に、シグナルペプチド/リーダー配列は、タンパク質の局在化を指示する。本明細書で使用するシグナルペプチド/リーダー配列は、好ましくは、タンパク質を産生する細胞からタンパク質を分泌し易くする。シグナルペプチド/リーダー配列は、細胞からの分泌時に、タンパク質、別名、成熟タンパク質の残余から開裂されることが多い。シグナルペプチド/リーダー配列は、タンパク質のN末端に結合する。
【0046】
本明細書で使用する「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、例えば、核酸の複合混合物において、第1の核酸配列(例えば、プローブ)が、第2の核酸配列(例えば、標的)とハイブリダイズする際の条件のことを意味し得る。ストリンジェントな条件は配列に依存するため、状況に応じて変化する。ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度pHにおける特定の配列に対する融点(Tm)より約5~10℃低くなるように選択される。このTmとは、(所定のイオン強度、pH、及び、核酸濃度下で)標的に対して相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度のことである(この標的配列は、過剰に存在するので、Tmにおいて、プローブの50%が平衡状態で占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0~8.3において、約1.0M未満のナトリウムイオン、例えば、約0.01~1.0Mのナトリウムイオン濃度(または、その他の塩)であり、及び、温度が、短いプローブ(例えば、約10~50ヌクレオチド)では、低くとも約30℃、長いプローブ(例えば、約50ヌクレオチドを超えるもの)では、低くとも約60℃とし得る。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤を添加しても実現し得る。選択的または特異的ハイブリダイゼーションの場合、陽性シグナルは、バックグラウンドハイブリダイゼーションの少なくとも2~10倍であり得る。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下の条件を含む。50%ホルムアミド、5×SSC、及び、1%SDSを用いて、42℃でのインキュベート、あるいは、5×SSC、1%SDSを用いて、65℃でのインキュベートと、0.2×SSC、及び、0.1%SDSを用いて、65℃での洗浄を含む。
【0047】
本明細書で互換的に使用する「対象」及び「患者」とは、あらゆる脊椎動物を指すものであって、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、及び、マウス)、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、もしくは、アカゲザル、チンパンジーなどのサル)、及び、ヒトなどがあるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、当該対象は、ヒトあるいは非ヒトとし得る。当該対象あるいは患者は、その他の形態の処置を受け得る。
【0048】
本明細書で使用する「実質的に相補的」は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個またはそれ以上の個数のヌクレオチドまたはアミノ酸の領域に渡って、第1の配列が、第2の配列の相補体と、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または、99%同一であること、あるいは、2つの配列が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを意味し得る。
【0049】
本明細書で使用する「実質的に同一」は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、1100個、または、それ以上の個数のヌクレオチドまたはアミノ酸の領域に渡って、第1の配列と第2の配列が、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または、99%同一であること、あるいは、核酸に関して、当該第1の配列が、当該第2の配列の相補体と実質的に相補的であることを意味し得る。
【0050】
本明細書で使用する「合成抗体」とは、本明細書に記載の組換え核酸配列によってコードされ、そして、対象において生成される抗体のことを指す。
【0051】
本明細書で使用する「処置」または「処置する」は、疾患の予防、抑制、抑圧、または、完全排除の手段を介して、対象を疾患から保護するものと意味することができる。疾患を予防することは、その疾患の発症前に、当該対象に対して、本発明のワクチンを投与することを含む。疾患を抑制することは、その疾患の誘導後であって、その疾患の臨床的出現の前に、当該対象に対して、本発明のワクチンを投与することを含む。疾患を抑圧することは、その疾患の臨床的出現後に、当該対象に対して、本発明のワクチンを投与することを含む。
【0052】
核酸に関して本明細書で使用する「変異体」は、(i)基準ヌクレオチド配列の一部または断片、(ii)基準ヌクレオチド配列またはその一部の相補体、(iii)基準核酸またはその相補体と実質的に同一の核酸、または、(iv)ストリンジェントな条件下で、基準核酸、その相補体、または、それらと実質的に同一の配列とハイブリダイズする核酸のことを意味し得る。
【0053】
ペプチドまたはポリペプチドに関して使用する「変異体」は、アミノ酸の挿入、欠失、または、保存的置換によってアミノ酸配列が異なっているが、少なくとも1つの生物活性を保持しているものを意味し得る。また、変異体は、少なくとも1つの生物活性を保持するアミノ酸配列を有する基準タンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質も意味し得る。アミノ酸の保存的置換、すなわち、あるアミノ酸を、類似する特性(例えば、荷電領域の親水性、程度、及び、分布)の別のアミノ酸に置換することは、当該技術分野では、通常は軽微な変化を伴うものと認識されている。こうした軽微な変化は、当該技術分野で理解されているように、アミノ酸の疎水親水度指数を検討することで、部分的に同定できる。Kyte et al., J.Mol.Biol.157:105-132(1982)。アミノ酸の疎水親水度指数は、その疎水性と電荷の考察に基づく。類似の疎水親水度指数を有するアミノ酸は置換可能であり、その後もタンパク質機能を維持する、ことが当該技術分野において公知である。ある態様において、±2の疎水親水度指数を有するアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性を用いて、生物機能を保持したタンパク質となる置換を明らかにすることもできる。ペプチドに関連してアミノ酸の親水性を検討することで、そのペプチドの局所的な最大平均親水性を計算でき、抗原性と免疫原性に対して良好に相関すると報告された有用な尺度となる。本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国特許第4,554,101号。当該技術分野で理解されているように、類似の親水性値を有するアミノ酸を置換すると、例えば、免疫原性などの生物活性を保持したペプチドが得られる。親水性値が互いに±2以内のアミノ酸を用いて、置換を実施できる。アミノ酸の疎水性指標と親水性値の両方とも、そのアミノ酸の特定の側鎖の影響を受ける。こうした知見と一致して、生物機能に適合するアミノ酸の置換とは、当該アミノ酸の相対的類似性、特に、当該アミノ酸の側鎖の相対的類似性に依存するものと理解されており、このことは、疎水性、親水性、電荷、大きさ、及び、その他の特性から明らかになる。
【0054】
変異体は、当該完全遺伝子配列、または、その断片の全長にわたって、実質的に同一である核酸配列とし得る。当該核酸配列は、遺伝子配列、または、その断片の全長と、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または、100%同一とし得る。変異体は、当該アミノ酸配列、または、その断片の全長にわたって実質的に同一であるアミノ酸配列とし得る。当該アミノ酸配列は、アミノ酸配列、または、その断片の全長と、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または、100%同一とし得る。
【0055】
本明細書で使用する「ベクター」は、複製開始点を含む核酸配列を意味し得る。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、細菌人工染色体、または、酵母人工染色体とし得る。ベクターは、DNAベクター、または、RNAベクターとし得る。ベクターは、自己複製過剰染色体ベクター、または、宿主ゲノムに組み込むベクターのいずれかとし得る。
【0056】
本明細書における数値範囲の記載については、同程度の精度で、その間に入る各数を、明示的に企図している。例えば、6~9という範囲の場合、6及び9に加えて、7及び8という数を企図しており、6.0~7.0という範囲の場合、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び、7.0という数を明示的に企図している。
【0057】
2.組成物
本発明は、抗体、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードする組換え核酸配列を含む組成物に関する。当該組成物は、それを必要とする対象に投与する場合、当該対象において合成抗体を生成することができる。当該合成抗体は、当該対象に存在する標的分子(すなわち、インフルエンザ抗原)に結合することができる。そのような結合は、抗原を、中和して、別の分子、例えば、タンパク質、または、核酸による当該抗原の認識をブロックし、そして、当該抗原に対する免疫応答を惹起または誘導することができる。
【0058】
ある実施形態において、当該組成物は、合成抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、当該組成物は、第1の合成抗体をコードする第1のヌクレオチド配列、及び、第2の合成抗体をコードする第2のヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む。ある実施形態において、当該核酸分子は、開裂ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0059】
ある実施形態において、当該核酸分子は、抗-HA抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、抗-HA抗体をコードする当該ヌクレオチド配列は、抗-HAの可変VH、及び、VL領域をコードするコドン最適化核酸配列を含む。ある実施形態において、抗-HA抗体をコードする当該ヌクレオチド配列は、ヒトIgG1κのCH及びCL領域をコードするコドン最適化核酸配列を含む。
【0060】
ある実施形態において、当該核酸分子は、FluA重鎖抗-HAをコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、当該核酸分子は、FluA軽鎖抗-HAをコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、当該核酸分子は、FluA重鎖抗-HAをコードするヌクレオチド配列、及び、FluA軽鎖抗-HAをコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、当該核酸分子は、FluB重鎖抗-HAをコードするヌクレオチド配列、及び、FluB軽鎖抗-HAをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0061】
ある実施形態において、当該抗-HA抗体は、インフルエンザHAの球状頭部に結合する。ある実施形態において、当該抗-HA抗体は、FJ8である。ある実施形態において、当該抗-HA抗体は、インフルエンザHAの融合サブドメインに結合する。ある実施形態において、当該抗-HA抗体は、FI6である。ある実施形態において、当該抗-HA抗体は、FluA H5、及び、H7 HAタンパク質に対して交差反応性を示す。ある実施形態において、当該抗-HA抗体は、FluB HAタンパク質に反応性を示す。
【0062】
ある実施形態において、当該核酸分子は、配列番号1~8から選択されるアミノ酸配列、または、その変異体、または、その断片を含む抗-HA抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、抗-HA抗体をコードする当該核酸は、配列番号9~12のいずれかのヌクレオチド配列、または、その変異体、または、その断片を含む。ある実施形態において、抗-HA抗体をコードする当該核酸は、配列番号9~12のいずれかのDNA配列、または、その変異体、または、その断片から転写されたRNA分子を含む。
【0063】
ある実施形態において、当該核酸分子は、配列番号1~8から選択されるアミノ酸配列の全長と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または、少なくとも約95%が同一であるアミノ酸配列を含む抗-HA抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、当該核酸分子は、配列番号1~8から選択されるアミノ酸配列の全長と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または、少なくとも約95%が同一であるアミノ酸配列を含む抗-HA抗体の断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0064】
ある実施形態において、当該核酸分子は、配列番号9~16から選択されるヌクレオチド配列の全長と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または、少なくとも約95%が同一であるヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、当該核酸分子は、配列番号9~16から選択されるヌクレオチド配列の全長と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または、少なくとも約95%が同一であるヌクレオチド配列の断片を含む。
【0065】
ある実施形態において、当該核酸分子は、配列番号9~16から選択されるDNAの全長と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または、少なくとも約95%が同一であるDNA配列から転写されたRNA配列を含む。ある実施形態において、当該核酸分子は、配列番号9~16から選択されるDNAの全長と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または、少なくとも約95%が同一であるDNA配列から転写されたRNA配列の断片を含む。
【0066】
ある実施形態において、抗-HA抗体をコードする当該ヌクレオチド配列は、抗-HAの可変VH、及び、VL領域をコードするコドン最適化核酸配列を含む。ある実施形態において、HAの当該VH領域は、配列番号5、7、9または10のアミノ酸配列、または、その変異体、または、その断片を含む。ある実施形態において、HAの当該VH領域は、配列番号5、7、9または10、または、その断片に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、または、少なくとも95%以上が相同であるアミノ酸を含む。ある実施形態において、HAの当該VL領域は、配列番号6~10の1つのアミノ酸配列、または、その変異体、または、その断片を含む。ある実施形態において、HAの当該ヌクレオチド配列可変VH領域は、配列番号13または15のヌクレオチド配列、または、その変異体、または、その断片を含む。ある実施形態において、HAの当該ヌクレオチド配列可変VH領域は、配列番号13または15、または、その変異体、または、その断片と、少なくとも85%、少なくとも90%、または、少なくとも95%以上が相同であるヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、HAの当該ヌクレオチド配列可変VL領域は、配列番号14、15または16、または、その変異体、または、その断片を含む。ある実施形態において、HAの当該ヌクレオチド配列可変VL領域は、配列番号14、15または16、その断片に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、または、少なくとも95%以上が相同であるヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、HAの当該ヌクレオチド配列可変VL領域は、配列番号14、15または16のいずれかのDNA配列、または、その変異体、またはは、その断片から転写されたRNA分子を含む。
【0067】
ある実施形態において、当該組成物は、少なくとも2つの核酸分子を含む。ある実施形態において、当該核酸分子は、FluA重鎖抗-HAをコードする核酸、FluA軽鎖抗-HAをコードする核酸、FluA抗-HAをコードする核酸、及び、FluB抗-HAをコードする核酸から選択される。ある実施形態において、当該核酸分子は、配列番号1~8の1つをコードする核酸から選択される。ある実施形態において、当該核酸分子は、配列番号1~8と少なくとも90%が相同であるペプチドをコードする核酸から選択される。ある実施形態において、当該組成物は、配列番号1をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含み、かつ、配列番号2をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む。ある実施形態において、当該組成物は、配列番号9を含むヌクレオチド配列を含む核酸と、配列番号10を含むヌクレオチド配列を含む核酸とを含む。
【0068】
本発明の組成物は、あらゆるインフルエンザ感染症に対して、処置、予防、及び/または、保護をすることができる。特定の実施形態において、当該組成物は、A型インフルエンザ感染症に対して、処置、予防、及び/または、保護をすることができる。特定の実施形態において、当該組成物は、グループH1またはグループH3のA型インフルエンザウイルスに対して、処置、予防、及び/または、保護をすることができる。別の実施形態において、当該A型インフルエンザウイルスは、pmH1インフルエンザウイルスである。その他の実施形態において、当該組成物は、B型インフルエンザ感染症に対して、処置、予防、及び/または、保護をすることができる。
【0069】
合成抗体は、当該組成物を投与した対象における疾患に対して、処置、予防、及び/または、保護をすることができる。抗原に結合することで、当該合成抗体は、当該組成物を投与した対象における疾患に対して、処置、予防、及び/または、保護をすることができる。当該合成抗体は、当該組成物を投与した対象における疾患生存率を改善することができる。ある実施形態において、当該合成抗体は、当該合成抗体の投与を受けていない同じ疾患を有する対象において予測された生存期間にわたって、当該疾患を有する対象の延命を可能にする。様々な実施形態において、当該合成抗体は、当該組成物の非存在下で予測される生存期間にわたって、当該組成物の投与を受けた当該疾患を有する対象の生存について、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または、100%の改善を示すことができる。ある実施形態において、当該合成抗体は、当該対象における疾患に対する保護を示しており、当該合成抗体の投与を受けていない対象において予期される保護を超えるものである。様々な実施形態において、当該合成抗体は、当該組成物の投与を受けた対象の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または、100%において疾患に対する保護を示しており、当該組成物の非存在下で予測される保護を超えるものである。
【0070】
当該組成物は、当該対象に当該組成物を投与した後、少なくとも約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、45時間、50時間、または、60時間以内に、その対象にて当該合成抗体を生成することができる。当該組成物は、当該対象に当該組成物を投与した後、少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または、10日以内に、その対象にて当該合成抗体を生成することができる。当該組成物は、当該対象に当該組成物を投与した後、約1時間~約6日、約1時間~約5日、約1時間~約4日、約1時間~約3日、約1時間~約2日、約1時間~約1日、約1時間~約72時間、約1時間~約60時間、約1時間~約48時間、約1時間~約36時間、約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、または、約1時間~約6時間以内に、その対象にて当該合成抗体を生成することができる。
【0071】
当該組成物は、それを必要とする対象に投与した場合に、抗原の投与を受けて体液性免疫応答を誘発する対象において内因性抗体を生成する場合よりも迅速に、当該対象において当該合成抗体を生成することができる。当該組成物は、抗原の投与を受けて体液性免疫応答を誘発する対象において内因性抗体を生成する少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または、10日前に、当該合成抗体を生成することができる。
【0072】
本発明の組成物は、安全であるなど、有効な組成物に必要とされる特徴を有しているため、当該組成物は、病気や死亡に至らしめるものではなく、病気から保護をして、そして、投与が容易で、副作用もほぼ皆無であり、生物学的に安定で、また、用量当たりのコストも削減する。
【0073】
3.組換え核酸配列
上記したように、当該組成物は、組換え核酸配列を含むことができる。当該組換え核酸配列は、当該抗体、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードすることができる。当該抗体の詳細については、後述する。
【0074】
当該組換え核酸配列を、異種核酸配列とすることができる。当該組換え核酸配列は、少なくとも1つの異種核酸配列、または、1つ以上の異種核酸配列を含むことができる。
【0075】
当該組換え核酸配列を、最適化した核酸配列とすることができる。そのような最適化は、当該抗体の免疫原性を、強化または改変し得る。また、最適化は、転写、及び/または、翻訳を改善することもできる。最適化には、以下の1つ以上を取り入れることができる。低GC含量リーダー配列によって、転写を増大させること。mRNAの安定性とコドン最適化。コザック配列(例えば、GCC ACC)を追加して、翻訳を増進させる。シグナルペプチドをコードする免疫グロブリン(Ig)リーダー配列を追加する。そして、シス作用配列モチーフ(すなわち、内部TATAボックス)を可能な限り取り除くこと。
【0076】
a.組換え核酸配列構築物
当該組換え核酸配列は、1つ以上の組換え核酸配列構築物を含むことができる。当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上の構成要素を含むことができ、その詳細については、後述する。
【0077】
当該組換え核酸配列構築物は、重鎖ポリペプチド、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードする異種核酸配列を含むことができる。当該組換え核酸配列構築物は、軽鎖ポリペプチド、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードする異種核酸配列を含むことができる。当該組換え核酸配列構築物は、プロテアーゼ、または、ペプチダーゼ開裂部位をコードする異種核酸配列も含むことができる。当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上のリーダー配列を含むことができ、各リーダー配列は、シグナルペプチドをコードする。当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上のプロモーター、1つ以上のイントロン、1つ以上の転写終止領域、1つ以上の開始コドン、1つ以上の終止コドンまたは停止コドン、及び/または、1つ以上のポリアデニル化シグナルを含むことができる。また、当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上のリンカーまたはタグ配列も含むことができる。当該タグ配列は、ヘマグルチニン(HA)タグをコードすることができる。
【0078】
(1)重鎖ポリペプチド
当該組換え核酸配列構築物は、当該重鎖ポリペプチド、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードする異種核酸を含むことができる。当該重鎖ポリペプチドは、可変重鎖(VH)領域、及び/または、少なくとも1つの定常重鎖(CH)領域を含むことができる。少なくとも1つの当該定常重鎖領域は、定常重鎖領域1(CH1)、定常重鎖領域2(CH2)、定常重鎖領域3(CH3)、及び/または、ヒンジ領域を含むことができる。
【0079】
幾つかの実施形態において、当該重鎖ポリペプチドは、VH領域、及び、CH1領域を含むことができる。他の実施形態において、当該重鎖ポリペプチドは、VH領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、及び、CH3領域を含むことができる。
【0080】
当該重鎖ポリペプチドは、相補性決定領域(「CDR」)セットを含むことができる。このCDRセットは、VH領域の3つの超可変領域を含むことができる。当該重鎖ポリペプチドのN-末端から開始して、これらのCDRを、それぞれ、「CDR1」、「CDR2」、及び「CDR3」と命名する。当該重鎖ポリペプチドのCDR1、CDR2、及び、CDR3は、当該抗原に対する結合、または、抗原の認識に寄与することができる。
【0081】
(2)軽鎖ポリペプチド
当該組換え核酸配列構築物は、当該軽鎖ポリペプチド、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードする異種核酸配列を含むことができる。当該軽鎖ポリペプチドは、可変軽鎖(VL)領域、及び/または、定常軽鎖(CL)領域を含むことができる。
【0082】
当該軽鎖ポリペプチドは、相補性決定領域(「CDR」)セットを含むことができる。このCDRセットは、VL領域の3つの超可変領域を含むことができる。当該軽鎖ポリペプチドのN-末端から開始して、これらのCDRを、それぞれ、「CDR1」、「CDR2」、及び「CDR3」と命名する。当該軽鎖ポリペプチドのCDR1、CDR2、及び、CDR3は、当該抗原に対する結合、または、抗原の認識に寄与することができる。
【0083】
(3)プロテアーゼ開裂部位
当該組換え核酸配列構築物は、当該プロテアーゼ開裂部位をコードする異種核酸配列を含むことができる。当該プロテアーゼ開裂部位は、プロテアーゼまたはペプチダーゼによって認識することができる。このプロテアーゼは、エンドペプチダーゼまたはエンドプロテアーゼとすることができ、例えば、フーリン、エラスターゼ、HtrA、カルパイン、トリプシン、キモトリプシン、トリプシン、及び、ペプシンなどがあるが、これらに限定されない。このプロテアーゼを、フーリンとすることができる。他の実施形態において、このプロテアーゼを、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、または、内部ペプチド結合を開裂する(すなわち、N-末端またはC-末端ペプチド結合を開裂しない)あらゆるプロテアーゼとすることができる。
【0084】
当該プロテアーゼ開裂部位は、開裂の効率を改善または増大する1つ以上のアミノ酸配列を含むことができる。1つ以上の当該アミノ酸配列は、個別のポリペプチドの形成または生成の効率を改善または増大することができる。1つ以上の当該アミノ酸配列は、2Aペプチド配列を含むことができる。
【0085】
(4)リンカー配列
組換え核酸配列構築物は、1つ以上のリンカー配列を含むことができる。当該リンカー配列は、本明細書に記載の1つ以上の構成要素を、空間的に分離、または、連結することができる。他の実施形態において、当該リンカー配列は、2つ以上のポリペプチドを空間的に分離、または、連結するアミノ酸配列をコードすることができる。
【0086】
(5)プロモーター
当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上のプロモーターを含むことができる。1つ以上の当該プロモーターは、遺伝子発現を駆動し、かつ、調節することが可能なあらゆるプロモーターとし得る。かようなプロモーターは、DNA依存RNAポリメラーゼを経由する転写に必要とされるシス作用配列要素である。遺伝子発現の指示に用いられるプロモーターは、特定の用途に依って選択される。当該プロモーターは、その自然環境における転写開始部位から由来しているため、当該組換え核酸配列構築物の当該転写開始からほぼ同じ距離で位置し得る。しかしながら、この距離の変動は、プロモーター機能を喪失せずに、適合し得る。
【0087】
当該プロモーターは、当該重鎖ポリペプチド、及び/または、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列に作動可能に連結され得る。当該プロモーターは、真核細胞での発現に有効であることが示されたプロモーターとし得る。当該コード配列に作動可能に連結されたプロモーターは、CMVプロモーター、サルウイルス40(SV40)由来のプロモーター、例えば、SV40初期プロモーター、及び、SV40後期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロモーター、例えば、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)長い末端反復(LTR)プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、トリ白血病ウイルス(ALV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV前初期プロモーターなど、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター、または、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターなどとし得る。また、当該プロモーターは、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチン、ヒトポリヘドリン、または、ヒトメタロチオネインなどのヒト遺伝子由来のプロモーターとし得る。
【0088】
当該プロモーターは、宿主細胞が何らかの特定の外的刺激に曝された場合にのみ転写を開始する、構成的プロモーター、または、誘導性プロモーターとすることができる。多細胞生物の場合、当該プロモーターを、特定の組織、または、器官、または、発生段階に特異的にすることもできる。また、当該プロモーターは、組織特異的プロモーター、例えば、筋肉または皮膚特異的プロモーター、天然または合成のものとし得る。かようなプロモーターの例は、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する米国特許出願公開公報第US20040175727号に記載されている。
【0089】
当該プロモーターは、エンハンサーと関連することができる。当該エンハンサーは、当該コード配列の上流に位置することができる。当該エンハンサーは、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチン、または、CMV、FMDV、RSV、または、EBVに由来するウイルスエンハンサーとし得る。ポリヌクレオチド機能増強は、本明細書の一部を構成するものとしてそれぞれの全内容を援用する米国特許第5,593,972号、第5,962,428号、及び、第WO94/016737号に記載されている。
【0090】
(6)イントロン
当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上のイントロンを含むことができる。各イントロンは、機能的スプライスドナー部位、及び、機能的スプライスアクセプター部位を含むことができる。当該イントロンは、スプライシングのエンハンサーを含むことができる。当該イントロンは、効率のよいスプライシングに必要な1つ以上のシグナルを含むことができる。
【0091】
(7)転写終止領域
当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上の転写終止領域を含むことができる。当該転写終止領域は、効率的な終止を提供するためにコード配列の下流とすることができる。当該転写終止領域は、上記したプロモーターと同じ遺伝子から取得することができ、あるいは、1つ以上の異なる遺伝子から取得することもできる。
【0092】
(8)開始コドン
当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上の開始コドンを含むことができる。当該開始コドンは、当該コード配列の上流に位置させることができる。当該開始コドンは、当該コード配列と共にインフレームにすることができる。当該開始コドンは、効率的な翻訳開始のために必要な1つ以上のシグナルと関連することができ、例えば、リボソーム結合部位と関連することができるが、これに限定されることはない。
【0093】
(9)終止コドン
当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上の終止または停止コドンを含むことができる。当該終止コドンは、当該コード配列の下流とすることができる。当該終止コドンは、当該コード配列と共にインフレームにすることができる。当該終止コドンは、効率的な翻訳終止のために必要な1つ以上のシグナルと関連することができる。
【0094】
(10)ポリアデニル化シグナル
当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上のポリアデニル化シグナルを含むことができる。当該ポリアデニル化シグナルは、当該転写の効率的なポリアデニル化のために必要な1つ以上のシグナルを含むことができる。当該ポリアデニル化シグナルは、当該コード配列の下流に位置させることができる。当該ポリアデニル化シグナルは、SV40ポリアデニル化シグナル、LTRポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化シグナル、または、ヒトβ-グロビンポリアデニル化シグナルとし得る。当該SV40ポリアデニル化シグナルは、pCEP4プラスミド(Invitrogen,San Diego,CA)由来のポリアデニル化シグナルとし得る。
【0095】
(11)リーダー配列
当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上のリーダー配列を含むことができる。当該リーダー配列は、シグナルペプチドをコードすることができる。当該シグナルペプチドを、免疫グロブリン(Ig)シグナルペプチドとすることができ、例えば、IgGシグナルペプチド、及び、IgEシグナルペプチドなどがあるが、これらに限定されない。
【0096】
b.組換え核酸配列構築物の配置
上記したように、当該組換え核酸配列は、1つ以上の組換え核酸配列構築物を含むことができ、当該組換え核酸配列構築物の各々は、1つ以上の構成要素を含むことができる。1つ以上の当該構成要素とは、先に詳述した通りである。1つ以上の当該構成要素が当該組換え核酸配列構築物に含まれる場合、互いにあらゆる順序で配置し得る。幾つかの実施形態において、1つ以上の当該構成要素は、後述するようにして、当該組換え核酸配列構築物に配置することができる。
【0097】
(1)配置1
ある配置において、第1の組換え核酸配列構築物は、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列を含むことができ、かつ、第2の組換え核酸配列構築物は、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列を含むことができる。
【0098】
当該第1の組換え核酸配列構築物は、ベクターに配置することができる。当該第2の組換え核酸配列構築物は、第2のベクター、または、他のベクターに配置することができる。当該組換え核酸配列構築物のベクターへの配置の詳細を、後述する。
【0099】
当該第1の組換え核酸配列構築物は、プロモーター、イントロン、転写終止領域、開始コドン、終止コドン、及び/または、ポリアデニル化シグナルも含むことができる。当該第1の組換え核酸配列構築物は、当該リーダー配列が、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列の上流(または、5‘)に位置する当該リーダー配列をさらに含むことができる。したがって、当該リーダー配列によってコードされる当該シグナルペプチドは、ペプチド結合によって当該重鎖ポリペプチドに連結することができる。
【0100】
当該第2の組換え核酸配列構築物は、プロモーター、開始コドン、終止コドン、及び、ポリアデニル化シグナルも含むことができる。当該第2の組換え核酸配列構築物は、当該リーダー配列が、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列の上流(または、5’)に位置する当該リーダー配列をさらに含むことができる。したがって、当該リーダー配列によってコードされる当該シグナルペプチドは、ペプチド結合によって当該軽鎖ポリペプチドに連結することができる。
【0101】
したがって、配置1の一例は、VH及びCH1を含む当該重鎖ポリペプチドをコードする当該第1のベクター(したがって、第1の組換え核酸配列構築物)、及び、VL及びCLを含む当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該第2のベクター(したがって、第2の組換え核酸配列構築物)を含むことができる。配置1の第2の例は、VH、CH1、ヒンジ領域、CH2、及び、CH3を含む当該重鎖ポリペプチドをコードする当該第1のベクター(したがって、第1の組換え核酸配列構築物)、及び、VL及びCLを含む当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該第2のベクター(したがって、第2の組換え核酸配列構築物)を含むことができる。
【0102】
(2)配置2
第2の配置において、当該組換え核酸配列構築物は、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列、及び、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列を含むことができる。当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列は、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列の上流(または5’)に配置することができる。あるいは、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列を、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列の上流(または5’)に配置することができる。
【0103】
当該組換え核酸配列構築物のベクターへの配置の詳細を、後述する。
【0104】
当該組換え核酸配列構築物は、プロテアーゼ開裂部位、及び/または、リンカー配列をコードする当該異種核酸配列を含むことができる。当該組換え核酸配列構築物に含まれる場合、当該プロテアーゼ開裂部位をコードする当該異種核酸配列は、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列と当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列との間に配置することができる。したがって、当該プロテアーゼ開裂部位は、発現時に、当該重鎖ポリペプチド、及び、当該軽鎖ポリペプチドを、異なるポリペプチドに分離させる。他の実施形態において、当該リンカー配列が当該組換え核酸配列構築物に含まれる場合、当該リンカー配列は、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列と当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列との間に配置することができる。
【0105】
当該組換え核酸配列構築物は、プロモーター、イントロン、転写終止領域、開始コドン、終止コドン、及び/または、ポリアデニル化シグナルも含むことができる。当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上のプロモーターを含むことができる。当該組換え核酸配列構築物は、第1のプロモーターが、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列と会合することができ、かつ、当該第2のプロモーターが、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列と会合できるような、2つのプロモーターを含むことができる。さらに他の実施形態において、当該組換え核酸配列構築物は、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列、及び、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列に関連する1つのプロモーターを含むことができる。
【0106】
当該組換え核酸配列構築物は、第1のリーダー配列を、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列の上流(または、5’)に配置し、かつ、第2のリーダー配列を、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列の上流(または、5’)に配置している、2つのリーダー配列をさらに含むことができる。したがって、当該第1のリーダー配列によってコードされる第1のシグナルペプチドは、ペプチド結合によって当該重鎖ポリペプチドに連結することができ、かつ、当該第2のリーダー配列によってコードされる第2のシグナルペプチドは、ペプチド結合によって当該軽鎖ポリペプチドに連結することができる。
【0107】
したがって、配置2の一例は、VH及びCH1を含む当該重鎖ポリペプチド、及び、VL及びCLを含む当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該ベクター(したがって、組換え核酸配列構築物)を含むことができ、当該リンカー配列は、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列、及び、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列を含む。
【0108】
配置2の第2の例は、VH及びCH1を含む当該重鎖ポリペプチド、及び、VL及びCLを含む当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該ベクター(したがって、組換え核酸配列構築物)を含むことができ、当該プロテアーゼ開裂部位をコードする当該異種核酸配列は、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列と当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列との間に配置する。
【0109】
配置2の第3の例は、VH、CH1、ヒンジ領域、CH2、及び、CH3を含む当該重鎖ポリペプチド、及び、VL及びCLを含む当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該ベクター(したがって、組換え核酸配列構築物)を含むことができ、当該リンカー配列は、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列と当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列との間に配置する。
【0110】
配置2の第4の例は、VH、CH1、ヒンジ領域、CH2、及び、CH3を含む当該重鎖ポリペプチド、及び、VL及びCLを含む当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該ベクター(したがって、組換え核酸配列構築物)を含むことができ、当該プロテアーゼ開裂部位をコードする当該異種核酸配列は、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列と当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列との間に配置する。
【0111】
c.組換え核酸配列構築物からの発現
上記したように、当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上の構成要素に、当該重鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列、及び/または、当該軽鎖ポリペプチドをコードする当該異種核酸配列を含むことができる。したがって、当該組換え核酸配列構築物は、当該重鎖ポリペプチド、及び/または、当該軽鎖ポリペプチドの発現を促す。
【0112】
上記した配置1を用いる場合、当該第1の組換え核酸配列構築物は、当該重鎖ポリペプチドの発現を促すことができ、かつ、当該第2の組換え核酸配列構築物は、当該軽鎖ポリペプチドの発現を促すことができる。上記した配置2を用いる場合、当該組換え核酸配列構築物は、当該重鎖ポリペプチド、及び、当該軽鎖ポリペプチドの発現を促す。
【0113】
発現時に、例えば、細胞、生物、または、哺乳動物に限らず、それらおいて、当該重鎖ポリペプチド及び当該軽鎖ポリペプチドから、合成抗体を組み立てることができる。特に、当該重鎖ポリペプチド、及び、当該軽鎖ポリペプチドは、組み立てることで、当該抗原に結合することが可能な当該合成抗体をもたらすように、互いに相互作用することができる。他の実施形態において、当該重鎖ポリペプチド、及び、当該軽鎖ポリペプチドは、本明細書に記載したようにして組み立てていない抗体と比較して、免疫原性が強い合成抗体を組み立てられるように、互いに相互作用することができる。さらに別の実施形態において、当該重鎖ポリペプチド、及び、当該軽鎖ポリペプチドは、当該抗原に対して免疫応答を惹起または誘導することができる合成抗体を組み立てられるように、互いに相互作用することができる。
【0114】
d.ベクター
上記した当該組換え核酸配列構築物は、1つ以上のベクターに配置することができる。1つ以上の当該ベクターは、複製起点を含むことができる。1つ以上の当該ベクターを、プラスミド、バクテリオファージ、細菌人工染色体、または、酵母人工染色体とすることができる。1つ以上の当該ベクターを、自己複製染色体外ベクター、または、宿主ゲノムに組み込まれるベクターとすることができる。
【0115】
ベクターとして、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、組換え「裸のDNA」ベクターなど、あらゆる形態などあるが、これらに限定されない。「ベクター」は、細胞を、感染、トランスフェクション、一時的または永久的に形質導入することができる核酸を含む。ベクターを、裸の核酸、または、タンパク質または脂質と複合体を形成した核酸とすることが認識されるであろう。当該ベクターは、ウイルスまたは細菌の核酸、及び/または、タンパク質、及び/または、膜(例えば、細胞膜、ウイルス性脂質エンベロープなど)を任意に含む。ベクターとして、DNAの断片が付着して複製され得るレプリコン(例えば、RNAレプリコン、バクテリオファージ)などがあるが、これらに限定されない。したがって、ベクターとして、RNA、自律的自己複製環状または線状DNAまたはRNA(例えば、プラスミド、ウイルスなど、米国特許第5,217,879号を参照されたい)などあり、また、発現プラスミドと非発現プラスミドの双方もあるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、当該ベクターは、線状DNA、酵素DNA、または、合成DNAを含む。組換え微生物または細胞培養物が、「発現ベクター」を宿しているとの記載がある場合、それは、宿主染色体に取り込まれたDNA、及び、染色体外の環状及び線状DNAの双方を含む。ベクターが宿主細胞によって維持される場合、当該ベクターは、有糸分裂中に自律的構造として安定に複製されるか、あるいは、宿主のゲノム内に組み込まれ得る。
【0116】
1つ以上の当該ベクターは、異種発現構築物とすることができ、それは、一般的には、標的細胞に特定の遺伝子を導入するために使用されるプラスミドである。当該発現ベクターが細胞内に一旦入ると、当該組換え核酸配列構築物によってコードされる当該重鎖ポリペプチド、及び/または、当該軽鎖ポリペプチドは、当該細胞転写、及び、翻訳機構リボソーム複合体によって産生される。1つ以上の当該ベクターは、大量の安定したメッセンジャーRNA、及び、故に、タンパク質を発現することができる。
【0117】
(1)発現ベクター
1つ以上の当該ベクターは、環状プラスミド、または、線状核酸とすることができる。当該環状プラスミド、及び、線状核酸は、適切な対象細胞において特定のヌクレオチド配列の発現を指示することができる。当該組換え核酸配列構築物を含む1つ以上の当該ベクターは、キメラとすることができ、このことは、その構成要素の少なくとも1つが、その他の構成要素の少なくとも1つに関して異種であることを意味している。
【0118】
(2)プラスミド
1つ以上の当該ベクターを、プラスミドとすることができる。当該プラスミドは、当該組換え核酸配列構築物で細胞をトランスフェクトするために有用であり得る。当該プラスミドは、当該組換え核酸配列構築物を当該対象に導入するために有用であり得る。また、当該プラスミドは、当該プラスミドが投与される細胞における遺伝子発現に十分に適合し得る調節配列を含み得る。
【0119】
当該プラスミドは、当該プラスミドを染色体外で維持し、かつ、細胞内で当該プラスミドの複数のコピーを産生するために、哺乳動物の複製起点をも含み得る。当該プラスミドを、Invitrogen(San Diego,CA)のpVAX、pCEP4、または、pREP4とすることができ、それらは、エプスタインバーウイルス起点複製、及び、核抗原EBNA-1コード領域を含み得るものであり、組み込みをしなくとも、高コピーエピソーム複製を生じ得る。当該プラスミドの主鎖を、pAV0242とすることができる。このプラスミドを、複製欠損型アデノウイルス5型(Ad5)プラスミドとし得る。
【0120】
当該プラスミドを、E.coliにおけるタンパク質産生のために使用され得る、pSE420(Invitrogen,San Diego,CA)とし得る。また、当該プラスミドは、酵母のSaccharomyces cerevisiae株におけるタンパク質産生のために使用され得る、p YES2(Invitrogen,San Diego,CA)とし得る。また、当該プラスミドは、昆虫細胞におけるタンパク質産生のために使用され得る、MAXBAC(商標)完全バキュロウイルス発現系(Invitrogen,San Diego,CA)のものとし得る。また、当該プラスミドは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞におけるタンパク質産生のために使用され得る、pcDNAIまたはpcDNA3(Invitrogen,San Diego,CA)とし得る。
【0121】
(3)RNA
ある実施形態において、当該核酸は、RNA分子である。ある実施形態において、当該RNA分子は、本明細書に記載したDNA配列から転写される。例えば、幾つかの実施形態において、当該RNA分子は、配列番号9~16のいずれか1つによってコードされる。別の実施形態において、当該ヌクレオチド配列は、配列番号9~16のポリペプチド配列、または、その変異体、または、その断片をコードするDNA配列によって転写されるRNA配列を含む。したがって、ある実施形態において、本発明は、1つ以上のDMAbをコードするRNA分子を提供する。当該RNAは、プラス鎖とし得る。したがって、幾つかの実施形態において、当該RNA分子は、逆転写などの介在性複製ステップを必要とせずに、細胞によって翻訳することができる。本発明に有用なRNA分子は、5’キャップ(例えば、7-メチルグアノシン)を有し得る。このキャップは、当該RNAのインビボでの翻訳を改善することができる。本発明に有用なRNA分子の当該5’ヌクレオチドは、5’三リン酸基を有し得る。キャップしたRNAにおいて、このものは、5’から5’への架橋を介して7-メチルグアノシンに連結し得る。RNA分子は、3’ポリ-Aテイルを有し得る。それは、ポリAポリメラーゼ認識配列(例えば、AAUAAA)も、3’末端の近傍に有する。本発明に有用なRNA分子は、一本鎖とし得る。本発明に有用なRNA分子は、合成RNAを含み得る。
【0122】
(4)環状及び線状ベクター
1つ以上の当該ベクターを、細胞ゲノムへの組み込みによって標的細胞を形質転換し得るか、あるいは、染色体外に存在し得る環状プラスミド(例えば、複製起点を有する自律複製プラスミド)とし得る。当該ベクターは、pVAX、pcDNA3.0、または、provax、または、当該組換え核酸配列構築物によってコードされる当該重鎖ポリペプチド、及び/または、当該軽鎖ポリペプチドを発現することができるあらゆる他の発現ベクターとし得る。
【0123】
電気穿孔によって対象に対して効率的に送達され、及び、当該組換え核酸配列によってコードされる当該重鎖ポリペプチド、及び/または、当該軽鎖ポリペプチドを発現することができる、線状核酸または線状発現カセット(「LEC」)も提供する。このLECは、あらゆるリン酸主鎖を欠いた線状DNAとし得る。このLECは、抗生物質耐性遺伝子、及び/または、リン酸主鎖を含まなくともよい。このLECは、所望の遺伝子発現と無関係の他の核酸配列を含有していなくともよい。
【0124】
当該LECは、線状化することができるあらゆるプラスミドに由来し得る。当該プラスミドは、当該組換え核酸配列構築物によってコードされる当該重鎖ポリペプチド、及び/または、当該軽鎖ポリペプチドを発現することができる。当該プラスミドは、pNP(Puerto Rico/34)、または、pM2(New Caledonia/99)とし得る。当該プラスミドは、WLV009、pVAX、pcDNA3.0、または、provax、または、当該組換え核酸配列構築物によってコードされる当該重鎖ポリペプチド、及び/または、当該軽鎖ポリペプチドを発現することができるあらゆる他の発現ベクターとし得る。
【0125】
当該LECを、pcrM2とすることができる。当該LECを、pcrNPとすることができる。pcrNP、及び、pcrMRは、それぞれ、pNP(Puerto Rico/34)、及び、pM2(New Caledonia/99)から誘導することができる。
【0126】
(5)ウイルスベクター
ある実施形態において、本明細書において、本発明の核酸を細胞に送達することができるウイルスベクターを提供する。当該発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al.(2001)、及び、Ausubel et al.(1997)、及び、その他のウイルス学、及び、分子生物学のマニュアルに記載がされている。ベクターとして有用なウイルスとして、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及び、レンチウイルスなどがあるが、これらに限定されない。一般的に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能する複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び、1つ以上の選択マーカーを含む。(例えば、WO01/96584、WO01/29058、及び、米国特許第6,326,193号を参照されたい。ウイルスベクター、特に、レトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳類、例えば、ヒト細胞に挿入するための最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、及び、アデノ随伴ウイルスなどから誘導することができる。例えば、米国特許第5,350,674号、及び、第5,585,362号を参照されたい。
【0127】
(6)ベクターの調製方法
本明細書では、当該組換え核酸配列構築物が配置された1つ以上のベクターを調製する方法を提供する。最後のサブクローニング工程の後に、当該ベクターを用いて、当該技術分野で周知の方法を用いて、大規模発酵タンクに細胞培養物を接種することができる。
【0128】
他の実施形態において、最後のサブクローニング工程の後に、当該ベクターは、1つ以上の電気穿孔(EP)装置と共に使用することができる。このEP装置の詳細は、後述する。
【0129】
1つ以上のベクターは、公知の装置、及び、技術の組み合わせを利用して製剤または製造することができるが、好ましくは、それらを、2007年5月23日に出願された許諾対象である同時係属中の米国特許仮出願第60/939,792号に記載されたプラスミド製造技術を用いて製造する。幾つかの例において、本明細書に記載のDNAプラスミドは、10mg/mL以上の濃度で製剤することができる。その製造技術は、米国特許出願第60/939792号に記載されたものに加えて、2007年7月3日に発行された許諾対象特許である米国特許第7,238,522号に記載されたものをはじめとする、当業者に概ね公知の様々な装置、及び、プロトコルをも含み、かつ、取り入れている。上記した参照出願及び特許である米国特許出願第60/939,792号、及び、米国特許第7,238,522号は、それぞれ、本明細書の一部を構成するものとしてそれらの全内容を援用する。
【0130】
4.抗体
上記したように、当該組換え核酸配列は、抗体、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードすることができる。当該抗体は、抗原に結合できるか、あるいは、抗原と反応することができ、その詳細は、後述する。
【0131】
当該抗体は、重鎖及び軽鎖相補性決定領域(「CDR」)セットを含んでいてもよく、それぞれは、CDRに対する支持体をもたらし、互いにCDRの空間関係を規定する、重鎖及び軽鎖フレームワーク(「FR」)セットの間に介在する。当該CDRセットは、重鎖または軽鎖V領域の3つの超可変領域を含み得る。重鎖または軽鎖のN-末端から開始して、これらの領域は、それぞれ、「CDR1」、「CDR2」、及び、「CDR3」と命名する。したがって、抗原結合部位は、各々が重鎖及び軽鎖V領域からなるCDRセットを含む6つのCDRを含み得る。
【0132】
タンパク質分解酵素パパインは、IgG分子を優先的に開裂して、幾つかの断片を生じさせ、その内の2つの(F(ab)断片)は、それぞれ、無傷抗原結合部位を含む共有結合ヘテロ二量体を含む。当該酵素ペプシンは、IgG分子を開裂して、双方の抗原結合部位を含むF(ab‘)断片を含めた幾つかの断片を供することができる。したがって、当該抗体は、FabまたはF(ab’)とすることができる。当該Fabは、当該重鎖ポリペプチド、及び、当該軽鎖ポリペプチドを含むことができる。当該Fabの当該重鎖ポリペプチドは、当該VH領域、及び、当該CH1領域を含むことができる。当該Fabの軽鎖は、当該VL領域、及び、当該CL領域を含むことができる。
【0133】
当該抗体を、免疫グロブリン(Ig)とすることができる。当該Igを、例えば、IgA、IgM、IgD、IgE、及び、IgGとすることができる。当該免疫グロブリンは、当該重鎖ポリペプチド、及び、当該軽鎖ポリペプチドを含むことができる。当該免疫グロブリンの当該重鎖ポリペプチドは、VH領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、及び、CH3領域を含むことができる。当該免疫グロブリンの当該軽鎖ポリペプチドは、VL領域及びCL領域を含むことができる。
【0134】
当該抗体を、ポリクローナル抗体、または、モノクローナル抗体とすることができる。当該抗体は、キメラ抗体、一本鎖抗体、親和性成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、または、完全ヒト抗体とすることができる。当該ヒト化抗体を、非ヒト種由来の相補性決定領域(CDR)の1つ以上と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを含む、所望の抗原に結合する非ヒト種由来の抗体とすることができる。
【0135】
当該抗体を、以下に詳述するような二重特異性抗体とすることができる。当該抗体は、以下にさらに詳述するような二機能性抗体とすることができる。
【0136】
上記したように、当該対象に当該組成物を投与すると、当該対象において、当該抗体を生成することができる。当該抗体は、当該対象内で半減期を有し得る。幾つかの実施形態において、当該抗体は、当該対象内でその半減期を延長または短縮するように改変され得る。そのような改変の詳細は、後述する。
【0137】
当該抗体は、その詳細を後述するように、脱フコシル化することができる。
【0138】
当該抗体は、その詳細を後述するように、当該抗原に関連する疾患の抗体依存性増強(ADE)を、緩和または防止するように修飾し得る。
【0139】
a.二重特異性抗体
当該組換え核酸配列は、二重特異性抗体、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードすることができる。当該二重特異性抗体は、2つの抗原、例えば、その詳細を後述する抗原の2つと結合または反応することができる。当該二重特異性抗体は、本明細書に記載の抗体の2つの断片から構成することができ、それにより、当該二重特異性抗体は、2つの所望の標的分子との結合または反応が可能となり、それら標的分子は、その詳細を後述する抗原、受容体に対するリガンドを含むリガンド、受容体上のリガンド結合部位を含む受容体、リガンド-受容体複合体、及び、がんマーカーを含むマーカーを含み得る。
【0140】
b.二機能性抗体
当該組換え核酸配列は、二機能性抗体、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードすることができる。当該二機能性抗体は、後述する抗原と結合するか、または、反応することができる。当該二官能性抗体は、当該抗原の認識及び抗原への結合を超えて、当該抗体に対して付加的な機能性を付与するように改変することもできる。そのような改変として、因子H、または、その断片へのカップリングを含むことができるが、これらに限定されない。因子Hは、補体活性化の可溶性調節因子であり、また、補体媒介性溶解(CML)を介した免疫応答に寄与し得る。
【0141】
c.抗体半減期の延長
上記したように、当該抗体を、当該対象における当該抗体の半減期を延長または短縮するように改変し得る。当該改変は、当該対象での当該血清に含まれる当該抗体の当該半減期を延長または短縮し得る。
【0142】
当該改変は、当該抗体の定常領域に存在し得る。当該改変を、当該抗体の定常領域における1つ以上のアミノ酸の置換としてもよく、1つ以上の当該アミノ酸の置換を含有しない抗体の半減期と比較して、当該抗体の当該半減期を延長する。当該改変を、当該抗体のCH2ドメインにおける1つ以上のアミノ酸の置換としてもよく、1つ以上の当該アミノ酸の置換を含有しない抗体の半減期と比較して、当該抗体の当該半減期を延長する。
【0143】
幾つかの実施形態において、当該定常領域における1つ以上の当該アミノ酸の置換として、当該定常領域のメチオニン残基をチロシン残基で置換すること、当該定常領域のセリン残基をスレオニン残基で置換すること、当該定常領域のスレオニン残基をグルタミン酸残基で置換すること、または、それらのあらゆる組み合わせを含み得るものであって、それにより、当該抗体の当該半減期を延長する。
【0144】
他の実施形態において、当該定常領域における1つ以上の当該アミノ酸の置換として、当該CH2ドメインのメチオニン残基をチロシン残基で置換すること、当該CH2ドメインのセリン残基をスレオニン残基で置換すること、当該CH2ドメインのスレオニン残基をグルタミン酸残基で置換すること、または、それらのあらゆる組み合わせを含み得るものであって、それにより、当該抗体の当該半減期を延長する。
【0145】
d.脱フコシル化
当該組換え核酸配列は、フコシル化されていない抗体(すなわち、脱フコシル化抗体、または、非フコシル化抗体)、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードすることができる。フコシル化は、当該糖フコースの分子への付加、例えば、N-グリカン、O-グリカン、及び、糖脂質へのフコースの結合を含む。したがって、脱フコシル化抗体では、フコースは、当該定常領域の当該炭水化物鎖に結合していない。次に、このフコシル化が欠如すると、当該フコシル化抗体と比較して、当該抗体によるFcγRIIIa結合、及び、抗体依存性細胞毒性(ADCC)活性を改善し得る。したがって、幾つかの実施形態において、当該非フコシル化抗体は、フコシル化抗体と比較して、ADCC活性の増加を示し得る。
【0146】
当該抗体を改変して、当該抗体のフコシル化を予防または阻害し得る。幾つかの実施形態において、そのような改変抗体は、未改変の当該抗体と比較して、ADCC活性の増加を示し得る。当該改変は、重鎖、軽鎖、または、それらの組み合わせとし得る。当該改変は、当該重鎖における1つ以上のアミノ酸の置換、当該軽鎖における1つ以上のアミノ酸の置換、または、それらの組み合わせとし得る。
【0147】
e.ADE応答の低下
当該抗体を改変して、当該抗原に関連する疾患の抗体依存性感染増強(ADE)は抑制または防止するが、当該抗原は依然として中和し得る。
【0148】
幾つかの実施形態において、当該抗体を改変して、FcyRlaに対する当該抗体の結合を抑制または予防する1つ以上のアミノ酸の置換を含むようにし得る。1つ以上の当該アミノ酸の置換は、当該抗体の当該定常領域に存在し得る。1つ以上の当該アミノ酸の置換は、当該抗体の当該定常領域でのロイシン残基をアラニン残基で置換すること、すなわち、本明細書でLA、LA変異、または、LA置換として示した置換を含み得る。1つ以上の当該アミノ酸の置換は、当該抗体の当該定常領域での2つのロイシン残基を、それぞれ、アラニン残基で置換すること、すなわち、本明細書でLALA、LALA変異、または、LALA置換として示した置換を含み得る。当該LALA置換の存在は、FcyR1aに対する抗体の結合を予防またはブロックし得るものであって、したがって、当該改変抗体は、当該抗原に関連する疾患のADEを増強または惹起せずに、当該抗原は依然として中和し得る。
【0149】
5.抗原
当該合成抗体は、その抗原、または、その断片または変異体に関する。当該抗原を、核酸配列、アミノ酸配列、または、それらの組み合わせとすることができる。当該核酸配列を、DNA、RNA、cDNA、その変異体、その断片、または、それらの組み合わせとすることができる。当該アミノ酸配列を、タンパク質、ペプチド、その変異体、その断片、または、それらの組み合わせとすることができる。
【0150】
幾つかの実施形態において、当該抗原は、自己抗原である。ある実施形態において、当該抗原は、インフルエンザHAである。ある実施形態において、当該抗原は、インフルエンザHAの球状頭部である。ある実施形態において、当該抗原は、インフルエンザHAの融合サブドメインである。
【0151】
a.外来抗原
幾つかの実施形態において、当該抗原は、外来である。外来抗原は、体内に導入された場合、免疫応答を刺激することができるあらゆる非自己物質(すなわち、当該対象の外部由来のもの)である。
【0152】
(1)ウイルス抗原
当該外来抗原を、ウイルス抗原、または、その断片、または、その変異体とすることができる。
【0153】
ウイルス抗原は、インフルエンザウイルス由来の抗原を含み得る。当該インフルエンザ抗原とは、1つ以上のインフルエンザ血清型に対して、哺乳動物で免疫応答を惹起できる抗原である。当該抗原は、全長翻訳産物HA0、サブユニットHA1、サブユニットHA2、その変異体、その断片、または、それらの組み合わせを含むことができる。当該インフルエンザヘマグルチニン抗原は、A型インフルエンザ血清型H1、血清型H2の複数株、A型インフルエンザ血清型H1の複数株の異なる型から誘導したハイブリッド配列、または、B型インフルエンザの複数株から誘導することができる。当該インフルエンザヘマグルチニン抗原を、B型インフルエンザ由来のものとすることができる。
【0154】
当該インフルエンザ抗原は、免疫応答を誘発することができる特定のインフルエンザ免疫原に対して効果的である少なくとも1つの抗原エピトープを含むことができる。当該抗原には、無傷のインフルエンザウイルス内に存在する免疫原性部位及びエピトープの全てのレパートリーを供し得る。当該抗原を、血清型H1または血清型H2の複数のA型インフルエンザウイルス株など、1つの血清型の複数のA型インフルエンザウイルス株に由来するヘマグルチニン抗原配列から誘導し得る。当該抗原を、2つの異なるヘマグルチニン抗原配列、または、その一部分との組み合わせに由来するハイブリッドヘマグルチニン抗原配列とし得る。2つの異なるヘマグルチニン抗原配列の各々を、血清型H1の複数のA型インフルエンザウイルス株など、1つの血清型の複数のA型インフルエンザウイルス株の異なるセットに由来するものとし得る。当該抗原を、複数のB型インフルエンザウイルス株に由来するヘマグルチニン抗原配列から誘導したヘマグルチニン抗原配列とし得る。
【0155】
幾つかの実施形態において、当該インフルエンザ抗原を、H1 HA、H2 HA、H3 HA、H5 HA、または、BHA抗原とすることができる。
【0156】
b.自己抗原
幾つかの実施形態において、当該抗原は、自己抗原である。自己抗原は、免疫応答を刺激することが可能な当該対象自身の身体の構成要素としてもよい。幾つかの実施形態において、自己抗原は、当該対象が、疾患状態、例えば、自己免疫疾患でなければ、免疫応答を誘発しない。
【0157】
自己抗原として、サイトカイン、HIV、及び、デング熱を含む上掲のウイルスに対する抗体、がんの進行、または、発生に影響を及ぼす抗原、及び、細胞表面受容体、または、膜貫通タンパク質などがあるが、これらに限定されない。
【0158】
6.組成物の賦形剤及び他の成分
当該組成物は、医薬として許容される賦形剤をさらに含み得る。医薬として許容される当該賦形剤を、ビヒクル、担体、または、希釈剤としての機能的分子とすることができる。医薬として許容される当該賦形剤を、界面活性剤を含むことができる、トランスフェクション促進剤、例えば、免疫刺激複合体(ISCOMS)、フロイント不完全アジュバント、モノホスホリル脂質AなどのLPS類似体、ムラミルペプチド、キノン類似体、スクアレン及びスクアレンなどの小胞、ヒアルロン酸、脂質、リポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、または、ナノ粒子、または、その他の公知のトランスフェクション促進剤とすることができる。
【0159】
当該トランスフェクション促進剤は、ポリアニオン、ポリカチオン、ポリ-L-グルタミン酸塩(LGS)など、または、脂質である。当該トランスフェクション促進剤は、ポリ-L-グルタミン酸塩であり、かつ、当該ポリ-L-グルタミン酸塩は、6mg/ml未満の濃度で当該組成物に存在し得る。当該トランスフェクション促進剤は、界面活性剤、例えば、免疫刺激複合体(ISCOMS)、フロイント不完全アジュバント、モノホスホリル脂質AなどのLPS類似体、ムラミルペプチド、キノン類似体、及び、スクアレン及びスクアレンなどの小胞を含んでいてもよく、そして、ヒアルロン酸を用いて、当該組成物と共に投与もし得る。当該組成物は、トランスフェクション促進剤、例えば、脂質、レシチンリポソームまたはDNAリポソーム混合物(例えば、W09324640を参照されたい)などの当該技術分野で周知のその他のリポソームなどのリポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、または、ナノ粒子、または、その他の公知のトランスフェクション促進剤も含み得る。当該トランスフェクション促進剤は、ポリアニオン、ポリカチオン、ポリ-L-グルタミン酸塩(LGS)など、または、脂質である。当該ワクチンでの当該トランスフェクション剤の濃度は、4mg/ml未満、2mg/ml未満、1mg/ml未満、0.750mg/ml未満、0.500mg/ml未満、0.250mg/ml未満、0.100mg/ml未満、0.050mg/ml未満、または、0.010mg/ml未満である。
【0160】
当該組成物は、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、1994年4月1日に出願された米国特許出願第021,579号に記載の遺伝的助長因子をさらに含み得る。
【0161】
当該組成物は、約1ng~100mg、約1μg~約10mg、または、好ましくは、約0.1μg~約10mg、または、より好ましくは、約1mg~約2mgの量のDNAを含む。幾つかの好ましい実施形態において、本発明の組成物は、約5ng~約1000μgのDNAを含む。幾つかの好ましい実施形態において、組成物は、約10ng~約800μgのDNAを含むことができる。幾つかの好ましい実施形態において、当該組成物は、約0.1~約500μgのDNAを含むことができる。幾つかの好ましい実施形態において、当該組成物は、約1~約350μgのDNAを含むことができる。幾つかの好ましい実施形態において、当該組成物は、約25~約250μg、約100~約200μg、約1ng~100mg、約1μg~約10mg、約0.1μg~約10mg、約1mg~約2mg、約5ng~約1000μg、約10ng~約800μg、約0.1~約500μg、約1~約350μg、約25~約250μg、約100~約200μgのDNAを含むことができる。
【0162】
当該組成物は、用いられる投与様式にしたがって製剤することができる。注射可能な医薬組成物は、滅菌された発熱物質不含のもの、及び、微粒子不含のものとすることができる。等張性製剤または溶液を用いることができる。等張性のための添加剤として、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、及び、ラクトースがある。当該組成物は、血管収縮剤を含むことができる。当該等張性溶液は、リン酸緩衝生理食塩水を含むことができる。当該組成物は、ゼラチンやアルブミンなどの安定化剤をさらに含むことができる。当該安定剤、LGS、または、ポリカチオン、または、ポリアニオンなどは、製剤を、室温または周囲温度で、長時間安定にすることができる。
【0163】
7.合成抗体の生成方法
また、本発明は、合成抗体の生成方法に関する。当該方法は、その詳細を後述する送達方法を用いて、それを必要とする当該対象に対して当該組成物を投与することを含むことができる。したがって、当該組成物を当該対象に投与した際に、当該合成抗体は、対象内またはインビボで生成される。
【0164】
また、当該方法は、当該組成物を、1つ以上の細胞に導入することを含むことができ、したがって、当該合成抗体を、1つ以上の細胞において生成または製造することができる。さらに、当該方法は、当該組成物を、例えば、皮膚、及び、筋肉に限らず、それら組織の1つ以上に対して導入することを含むことができ、したがって、当該合成抗体は、1つ以上の組織において生成または製造することができる。
【0165】
8.抗体の同定方法またはスクリーニング方法
さらに、本発明は、上記した抗原に反応または結合する上記した抗体の同定またはスクリーニングの方法に関する。当該抗体を同定またはスクリーニングする当該方法を、当業者に周知の方法論における抗原に用いて、抗体を同定またはスクリーニングすることができる。そのような手法として、ライブラリ(例えば、ファージディスプレイ)由来の当該抗体の選択、及び、動物の免疫処置、続いて、当該抗体の単離、及び/または、精製があるが、これらに限定されない。
【0166】
9.組成物の送達方法
また、本発明は、当該組成物を、それを必要とする当該対象に対して送達する方法に関する。当該送達方法は、当該組成物を、当該対象に対して投与することを含む、ことができる。投与としては、インビボ電気穿孔を利用する、及び、同電気穿孔を利用しないDNA注入、リポソーム介在送達、及び、ナノ粒子促進送達などがあるが、これらに限定されない。
【0167】
当該組成物の送達を受ける当該哺乳動物を、ヒト、霊長類、非ヒト霊長類、ウシ、畜牛、ヒツジ、ヤギ、レイヨウ、バイソン、水牛、バイソン、ウシ、シカ、ハリネズミ、ゾウ、ラマ、アルパカ、マウス、ラット、及び、ニワトリとし得る。
【0168】
当該組成物を、経口、非経口、舌下、経皮、経直腸、経粘膜、局所、吸入、頬側投与、胸腔内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻内、髄腔内、及び、関節内、または、それらの組み合わせなどの異なる経路で投与し得る。獣医学的使用については、通常の獣医学的実施に従って、当該組成物を、適切に許容しうる製剤として投与し得る。獣医師は、特定の動物に対して最も適切な投与計画、及び、投与経路を、容易に決定することができる。当該組成物を、伝統的なシリンジ、無針注射装置、「微粒子衝撃遺伝子銃」、または、その他の物理的方法、例えば、電気穿孔法(EP)、「流体力学的方法」、または、超音波によって投与し得る。
【0169】
a.電気穿孔
電気穿孔による当該組成物の投与は、細胞膜に可逆的な孔を形成させるのに効果的なエネルギーパルスを哺乳動物の所望の組織に送達するように構成することができる電気穿孔装置を用いて達成され得るものであり、及び、好ましくは、当該エネルギーパルスは、使用者が入力したプリセット電流に近い定電流である。当該電気穿孔装置は、電気穿孔コンポーネント、及び、電極アセンブリ、または、ハンドルアセンブリを含み得る。電気穿孔コンポーネントは、制御器、電流波形発生器、インピーダンステスタ、波形ロガー、入力要素、ステータス報告要素、コミュニケーションポート、メモリーコンポーネント、電源、及び、電源スイッチなどの当該電気穿孔装置の1つ以上の様々な要素を含み、及び、組み込み得る。当該電気穿孔は、インビボ電気穿孔装置、例えば、CELLECTRA EPシステム(Inovio Pharmaceuticals,Plymouth Meeting,PA)、または、Elgenエレクトロポレーター(Inovio Pharmaceuticals,Plymouth Meeting、PA)を使用して、プラスミドによる細胞のトランスフェクションを容易にし得る。
【0170】
当該電気穿孔コンポーネントは、当該電気穿孔装置の1つの要素として機能し得るものであり、及び、その他の要素は、当該電気穿孔コンポーネントと連絡する別々の要素(または、コンポーネント)である。当該電気穿孔コンポーネントは、当該電気穿孔装置の1つを超える個数の要素として機能し得るものであり、当該電気穿孔コンポーネントとはなおも別の当該電気穿孔装置のその他の要素とも連絡し得る。1つの電気機械的、または、機械的装置の一部として存在する当該電気穿孔装置の要素は、それらの要素が、1つの装置として、または、互いに連絡する別の要素として機能することができるものに限定しなくともよい。当該電気穿孔コンポーネントは、所望の組織内で定電流を生成するエネルギーパルスを送達し得るものであり、及び、フィードバック機構を含む。当該電極アセンブリは、空間的配置内に複数の電極を有する電極アレイを含み得るものであり、当該電極アセンブリは、当該電気穿孔コンポーネントからエネルギーパルスを受け、そして、電極を介して所望の組織に向けて同パルスを送達する。複数の当該電極の少なくとも1つは、エネルギーパルスの送達期間ではニュートラルであり、及び、所望の組織でのインピーダンスを測定して、そのインピーダンスを、当該電気穿孔コンポーネントに連絡する。当該フィードバック機構は、測定された当該インピーダンスを受けてもよく、また、当該電気穿孔コンポーネントによって送達されたエネルギーパルスを調整して、当該定電流を維持することができる。
【0171】
複数の電極は、分散パターンでエネルギーパルスを送達し得る。複数の当該電極は、プログラムされたシーケンス下の当該電極の制御を介して、当該分散パターンでエネルギーパルスを送達してもよく、そして、プログラムされたシーケンスは、使用者によって、電気穿孔コンポーネントに入力される。プログラムされた当該シーケンスは、順に送達された複数のパルスを含んでいてもよく、複数の当該パルスの各々のパルスが、インピーダンスを測定する1つのニュートラル電極を備えた少なくとも2つの活性電極によって送達されており、複数の当該パルスの次のパルスが、インピーダンスを測定する1つのニュートラル電極を備えた少なくとも2つの活性電極の異なる1つによって送達される。
【0172】
当該フィードバック機構は、ハードウェア、または、ソフトウェアのいずれかで実施し得る。当該フィードバック機構は、アナログ閉回路によって実施し得る。当該フィードバックは、50μs、20μs、10μs、または、1μsごとに起こるが、好ましくは、実時間フィードバック、または、瞬時(すなわち、応答時間を決定するための入手可能な技術によって決定した実質的な瞬時)である。当該ニュートラル電極で、所望の組織でのインピーダンスを測定してもよく、そして、そのインピーダンスをフィードバック機構に連絡し、次いで、当該フィードバック機構が同インピーダンスに応答してエネルギーパルスを調整し、及び、プリセット電流と同様の値の定電流を維持する。当該フィードバック機構は、エネルギーのパルスの送達期間内に定電流を連続的かつ瞬時的に維持し得る。
【0173】
本発明の組成物の送達を促進しうる電気穿孔装置及び電気穿孔法の例として、本明細書の一部を構成するものとしてそれらの全内容を援用する、Draghia-Akli,et al.,の米国特許第7,245,963号、Smith,et al.,が出願した米国特許公開第2005/0052630号に記載されたものがある。当該組成物の送達を促進するために用い得るその他の電気穿孔装置及び電気穿孔法として、本明細書の一部を構成するものとしてそれらの全内容を援用する、2006年10月17日に出願した米国特許仮出願第60/852,149号、及び、2007年10月10日に出願した同第60/978,982号に対して35USC 119(e)による利益を主張する、2007年10月17日に出願した、同時係属中で、かつ、共有にかかる米国特許出願第11/874072号で提供されたものがある。
【0174】
Draghia-Akli,et al.,の米国特許第7,245,963号は、体内または植物内の選択された組織の細胞への生体分子の導入を促進するためのモジュラー電極システム、及び、その使用が記載している。このモジュラー電極システムは、複数の針電極、皮下注射針、プログラム可能な定電流パルス制御器から複数の針電極への導電的連結を提供する電気コネクタ、及び、電源を含み得る。使用者は、支持構造上に搭載された複数の針電極を掴み、そして、体内または植物内の選択された組織に同電極をしっかりと挿入することができる。その後、皮下注射針を介して、生体分子を選択された組織へ送達する。プログラム可能な当該定電流パルス制御器を活性化して、定電流の電気パルスを、複数の針電極に印加する。印加された当該定電流電気パルスは、複数の電極間での細胞内への生体分子の導入を促進する。本明細書の一部を構成するものとして米国特許第7,245,963号の全内容を援用する。
【0175】
Smith,et al.,が出願した米国特許公開第2005/0052630号には、体内または植物内の選択された組織の細胞への生体分子の導入を効果的に促進するために用い得る電気穿孔装置が記載されている。当該電気穿孔装置は、その操作が、ソフトウェアまたはファームウェアで指定される電気運動装置(「EKD装置」)を含む。このEKD装置は、ユーザ制御に基づく一列の電極とパルスパラメータ入力との間で一連のプログラム可能な定電流パルスパターンを生成し、そして、電流波形データの保存と取得を可能にする。当該電気穿孔装置は、針電極、注射針用の中央注入チャネル、及び、取り外し可能なガイドディスクのアレイを有する交換可能な電極ディスクも含む。本明細書の一部を構成するものとして米国特許公開第2005/0052630号の全内容を援用する。
【0176】
米国特許第7,245,963号、及び、米国特許公開第2005/0052630号に記載された電極アレイ及び方法は、筋肉などの組織だけでなく、その他の組織または臓器にも深く浸透させるように適合し得る。電極アレイの形態によって、注射針(選択された生体分子を送達する)が、標的臓器にも完全に挿入され、そして、電極によって、あらかじめ描かれた領域の標的組織に対して垂直に注射投与される。米国特許第7,245,963号、及び、米国特許公開第2005/005263号に記載された電極は、好ましくは、長さが20mmで、21ゲージのものである。
【0177】
加えて、電気穿孔装置、及び、その使用を組み込んだ幾つかの実施形態で予期されるように、以下の特許、1993年12月28日発行の米国特許第5,273,525号、2000年8月29日発行の米国特許第6,110,161号、2001年7月17日発行の同第6,261,281号、2005年10月25日発行の同第6,958,060号、及び、2005年9月6日発行の米国特許第6,939,862号に記載された電気穿孔装置が存在する。さらに、様々な装置のいずれかを用いてDNAを送達することに関係している2004年2月24日発行の米国特許第6,697,669号、及び、DNA注入の方法に関する2008年2月5日発行の米国特許第7,328,064号に開示された発明を含む特許は、本明細書において企図している。本明細書の一部を構成するものとして上記した全特許の内容を援用する。
【0178】
10.処置の方法
本明細書でさらに提供されるものは、それを必要とする対象において、疾患の処置、疾患に対して保護、及び/または、予防をする方法であり、合成抗体を当該対象内で生成する。当該方法は、当該組成物を当該対象に投与することを含むことができる。当該対象への当該組成物の投与は、上記した送達の方法を用いて行うことができる。
【0179】
特定の実施形態において、本発明は、インフルエンザ感染、または、インフルエンザ感染に関連する疾患または障害から保護をする、及び/または、予防をする方法を提供する。例えば、ある実施形態において、本方法は、A型インフルエンザを、処置、保護、及び/または、予防をする。ある実施形態において、本方法は、呼吸器感染症を、処置、保護、及び/または、予防をする。本発明の組成物の投与によって処置または予防される疾患または障害の例として、ウイルス性または細菌性肺炎、脱水、及び、耳感染症、及び、鼻腔感染症などがあるが、これらに限定されない。
【0180】
当該対象内で合成抗体が生成されると、当該合成抗体は、当該抗原と、結合または反応することができる。かかる結合により、当該抗原を中和し、別の分子、例えば、タンパク質または核酸による抗原の認識をブロックし、そして、当該抗原に対する免疫応答を惹起または誘発し、それにより、当該対象での抗原と関連する疾患に対して、処置、保護、及び/または、予防をすることができる。
【0181】
当該組成物の用量は、1μg~10mg有効成分/体重kg/時間とすることができ、及び、20μg~10mg有効成分/体重kg/時間とすることもできる。当該組成物を、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、または、31日おきに投与することができる。効果的な処置のための組成物の投与回数を、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、または、10回とすることができる。
【0182】
本発明は、複数の態様を有しており、その具体例を以下に示すが、これらに限定されることはない。
【実施例0183】
11.実施例
以下の例において、本発明をさらに例示する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであって、例示目的のみで記載しているものと理解すべきである。上記した説明、及び、これらの実施例から、当業者であれば、本発明に必須の特徴を確認することができ、また、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更や改変を加えて、様々な用途や条件に適合させることができる。したがって、本明細書で説明した発明に加えて、本発明に対して様々な改変を加えることが当業者に自明であることは、上記した説明からも明らかである。そのような改変も、特許請求の範囲に属していることも意図をしている。
【実施例0184】
本明細書で提示した研究は、プラスミドDNAの筋肉内電気穿孔を介した機能性抗-IL-6、及び、抗-CD126「DNAモノクローナル抗体」(DMAb)の生成を実証する。抗-IL-6モノクローナル抗体、及び、抗-CD126モノクローナル抗体に由来するコドン最適化可変領域DNA配列を、ヒトIgG1定常ドメインに合成した。抗体をコードするプラスミドDNAを、BALB/cマウスに送達した(図1)。この研究は、既存の生物学的療法の代替としてのDMAbを支持しており、かつ、免疫病理における、インビボでの、IL-6シグナル伝達の役割をさらに定義する新規な方法を提供する。
【0185】
当該方法及び材料について説明をする。
【0186】
抗DNA抗体及びクローニング
抗-インフルエンザ5J8及びFI6抗体クローン配列は、すでに公開されている(Krause et al., 2011, J virol 85(20):10905-8;Corti et al., 2011, Science 333(6044):850-6)。可変領域DNA配列をコドン最適化し、そして、定常ヒトIgG1κ主鎖へと合成した。構築体を、改変したpVax-1哺乳動物発現プラスミドにクローニングした。フーリン/2Aペプチド開裂部位を、重鎖及び軽鎖ペプチドの分離のために取り込んだ。(図1)。
【0187】
トランスフェクション
1×10個の293T細胞を、GeneJammer(Agilent Technologies)を用いて、0.5μgのプラスミドDNAでトランスフェクトした。細胞上清、及び、全溶解物を、トランスフェクションの48時間後に回収した。
【0188】
DMAb電気穿孔
大腿四頭筋へ筋肉内送達して100~300μgのプラスミドDNAを与え、次いで、先述したようにして、CELLECTRA(登録商標)3Pデバイス(Inovio Pharmaceuticals, Plymouth Meeting, PA)で電気穿孔した(Flingai et al., 2015,Sci Rep 29(5):12616;Muthumani et al., 2013,Hum Vaccin Immunother,9(10):2253-62)。
【0189】
ELISA及びウエスタンブロット
ヒトIgG1κを、抗-ヒト-F断片を用いて捕捉し、そして、ヒトIgG1κ標準抗体に対する定量を使って、抗-κ-軽-鎖-HRP結合抗体(Bethyl)で検出した。組換えHA(Immune-Technologies)に対する結合を、HRP-結合抗-ヒト-IgG二次抗体(Sigma-Aldrich)で検出した。ウエスタンブロットを、結合抗-ヒトIgG 800nm抗体(Licor)を用いて行った。
【0190】
実験の結果について説明をする。
【0191】
抗-インフルエンザ抗体をコードするプラスミドDNAの筋肉内電気穿孔は、インビボでモノクローナル抗体を生成する
モノクローナル抗体の可変VH及びVLアミノ酸配列を、DNAコドン最適化した。当該コドン最適化DNAを、ヒトIgG1κ抗体定常CH及びCL領域DNA配列を用いて合成した。改変した当該DNA配列を、改変したpVax-1発現ベクターにクローニングした。当該プラスミド構築物を筋肉内注射し、続いて、CELLECTRA(登録商標)デバイス(Inovio Pharmaceuticals)を用いて電気穿孔した。インビボで産生されたヒトIgG1 DMAbの発現及び機能を測定した。
【0192】
DMAb構築物は、公開された抗-インフルエンザモノクローナル抗体由来の可変領域を含む
当該DMAb構築物は、抗-インフルエンザモノクローナル抗体5J8(抗-HA 5J8)、及び、FI6(抗-HA FI6)由来の可変領域を含む。FJ8は、可変球状頭部の受容体結合ポケットに結合し、そして、複数のA型インフルエンザ型H1ウイルスと交差反応をする。FI6は、比較的に保存が良好な融合サブドメインに結合し、そして、グループ1及びグループ2のA型インフルエンザウイルスを広範に中和する(図2)。
【0193】
DMAb構築物は、トランスフェクトした293T細胞から発現及び分泌される
実験を行って、DMAb構築物によってコードされた抗-インフルエンザ-HA抗体5J8及びFI6の発現及び分泌を評価した。HEK 293T細胞を、5J8またはFI6構築物を保有するプラスミドDNAでトランスフェクトした。空のプラスミドを、陰性コントロールとして用いた。ヒトIgG1κ発現を、定量的ELISAによって決定し、そして、ウエスタンブロットを実施して、上清及び溶解物の重鎖及び軽鎖ペプチドの開裂及び発現を検出した(図3A図3B)。図3Bに示したように、抗-HA 5J8及び抗-HA FI6は、HEK 293T上清及びHEK 293T溶解物で認められており、このことは、抗-HA 5J8及び抗-HA FI6の発現及び分泌を誘導する当該DMAb構築物の能力を実証している。
【0194】
筋肉内DNA電気穿孔した後の安定した血清レベルのDNAモノクローナル抗体
実験を行って、DMAbが、インビボで、抗-HA 5J8、及び、抗-HA FI6の発現を誘導するか否かを評価した。BALB/cマウスに、5J8またはFI6プラスミドDNAを注射し、続いて、電気穿孔を行った。7日後に、血清ヒトIgG1κ抗体レベルを、ELISAで決定した。図3A及び図3Bに示したように、高レベルの抗-HA 5J8及び抗-HA FI6抗体が、筋肉のDNA電気穿孔をした後に、マウス血清で産生されている。
【0195】
筋肉内DNA電気穿孔後に生成したDNAモノクローナル抗体は、多様な標的HA抗原に結合する能力を保持している
実験を行って、発現した抗-HA FI6の機能性を調べた。BALB/cマウスに300μgのプラスミドDNAを注射し、続いて、筋肉内の電気穿孔を行った。4週間後に、組換えA型インフルエンザH1 HA抗原に結合するDMAbを、ELISAで決定した。図5に示したように、発現した当該抗体は、標的A/Brisbane/59/2007及びA/California/07/2009標的に結合する。
【0196】
本明細書に記載した実験は、コドン最適化した抗体可変配列を発現するプラスミドDNA構築物の筋肉内電気穿孔の後に、抗-HA 5J8抗体及び抗-HA FI6 DNAモノクローナル抗体(DMAb)を、マウス血清において、インビボで、高レベルで発現していることを実証している。インビボで筋肉細胞から産生された抗体は、インビトロで、機能的に結合する。DMAbは、インフルエンザHAを標的とする精製タンパク質モノクローナル抗体療法に対して、安全で、経済的で、実用的な代替物を提供する。
【0197】
DMAbは、精製タンパク質モノクローナル抗体、及び、ウイルスベクターよりも有利な点が幾つかある。タンパク質モノクローナル抗体については、DMAbは、比較的に低コストで製造することができ、熱安定性があり、流通が容易であり、改変可能であり、そして、頻回投与を必要とせずに持続的発現を誘導する。ウイルスベクターに関しては、DMAbは、安全かつ非組み込み型であり、非免疫原性であり、繰り返し流通することができ、既存の血清学には存在しておらず、及び、迅速な投与のための急性発現を誘導する。潜在的かつ持続的なDMAbの発現は、がんや自己免疫疾患など、潜在的に再投与の必要がある慢性疾患の治療で実質的な利益をもたらす。低価格のDNAベクターの生産と流通は、特に、開発途上国で、また、恒常的に需要がある場合に、入手しやすい価格を提供する。上記した詳細な説明及び付随する実施例は、例示目的に過ぎず、添付した特許請求の範囲及びその等価物によってのみ定義される本発明の範囲を限定するものではないことが理解される。
【実施例0198】
本明細書で提示した研究は、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスに対する完全長のヒト広範中和抗体を、インビボでの合成プラスミドDNA(DMAb)の電気穿孔を介してもたらす、代替的受動ワクチンアプローチの目下の改良について実証をしている。
【0199】
方法及び材料について説明をする。
【0200】
抗-A型またはB型インフルエンに特異的なヒト抗体配列を、遺伝子学的に最適化し、そして、プラスミドpGX001にクローニングした。各候補を筋肉注射して、続いて、BALB/cマウスに対して電気穿孔(IM-EP)を行った。インビボで抗体発現をモニターし、そして、HA結合及びウイルス中和によって、機能的活性を確認した。IM-EPを行った後の様々な時点で、H1またはH3 A型インフルエンザ亜型、または、双方の系統のそれぞれに由来するB型インフルエンザウイルスの致死量をマウスに接種をした。感染させた動物の生存及び体重減少について、モニターをした。
【0201】
IgG定量及びHAタンパク質結合
マウス血清でのヒトIgGの量を、ELISAで決定した。HA結合ELISAは、種々のA型インフルエンザ亜型、及び、B型インフルエンザ系統に由来する精製された組換え三量体HAタンパク質で行った。
【0202】
マイクロ中和アッセイ
MDCK細胞を使用し、そして、Kallewaard et al., 2016に記載されたのと同様にしてノイラミニダーゼ活性を測定することで、インフルエンザウイルスのパネルに対してマイクロ中和活性をアッセイした。
【0203】
インビボでの有効性
Balb/cマウスにDMAbプラスミド(複数可)の筋肉内注射を行い、その直後に、CELLECTRA 3P適応定電流デバイス(Inovio Pharmaceuticals)を用いた、電気穿孔を行った。4日後に、致死量のA型インフルエンザ(A/California/7/2009 3×LD50,7:1 A/Puerto Rico/8/34:A/Hong Kong/8/68 7×LD50)を、あるいは、5日後に、致死量のB型インフルエンザ(B/Malaysia/2506/2004 10×LD50、B/Florida/4/2006 7×LD50)を、マウスに接種した。IgGと比較をするために、接種の1日前に、マウスの群に対して、精製モノクローナル抗体を腹腔内に注射して等級づけをした。感染当日に、血清試料を採取した。体重減少及び生存を、感染後の12日間、モニターをした。マウスの体重が当初よりも25%減量したところで、安楽死させた。
【0204】
The Animal Care and Use Review Office of the U.S. Army Medical Department、及び、MedImmune、及び、University of Pennsylvania‘s Institutional Animal Care and Use Committesが定めたガイドラインに従って、動物実験の承認を受け、そして、同実験を実施した。
【0205】
実験の結果について説明をする。
【0206】
DNAがコードした抗体(DMAb)は、インビボで産生して、機能的FluA及びFluBモノクローナル抗体を発現する
血清におけるDMAbの定量(図8)は、IgG発現を確認し、そして、当該タンパク質が、機能的であることを示している。FluA DMAb及びFluB DMAbの電気穿孔をして5日後に、血清を回収し(図9)、そして、ヒトIgG発現、様々なHAタンパク質への結合活性、及び、中和活性について評価をした。FluA-DMAb及びFluB-DMAbの双方で処置をした動物に由来する血清抗体は、同等のIgG濃度においてインビトロで産生をしたモノクローナル抗体と同様のHA結合活性とウイルス中和活性とを示しており、このことは、当該筋肉細胞が産生したDMAbは、インビボで発現されており、かつ、機能的であったことを示している(図10)。
【0207】
抗-A型及びB型インフルエンザモノクローナル抗体を改変して得たDMAbは、精製IgGモノクローナル抗体と同程度で、致命的インフルエンザ感染から保護をする
A型インフルエンザ接種試験において、FluA-DMAbの投与は、無関係のコントロールDMAbと比較して、マウスを致命的ウイルス感染から有意に保護しており、そして、体重減少を抑制した。FluA-DMAbは、0.3mg/kgの精製FluA IgGと同様のレベルで、致命的なA型インフルエンザ感染からマウスを保護していた(図11)。同様に、マウスにFluB-DMAbを与えた後に致命的B型インフルエンザを感染させた場合、当該FluB-DMAbは、いずれかの系統に由来するB型インフルエンザウイルスによる致命的感染に対して、100%を生存させていた。同様に、FluB DMAbは、1mg/kgの精製FluB IgGと同様のレベルで、致命的B型インフルエンザ感染からマウスを保護している(図12)。
【0208】
FluA及びFluB DMAbの併用療法は、A型インフルエンザまたはB型インフルエンザのいずれからも保護をする
FluAとFluB DMAbとを組み合わせて投与すると、A型及びB型インフルエンザの双方の感染から保護をする。FluA DMAb及びFluB DMAbの併用投与は、A型インフルエンザIgG及びB型インフルエンザIgG血清発現をもたらした。A型またはB型インフルエンザのいずれかの致命的感染から動物は保護されている(図13)。
【0209】
まとめると、これらの研究は、広範に中和をする抗-インフルエンザモノクローナル抗体を改変して得たDMAbは、A型及びB型インフルエンザウイルスの致命的感染をマウスにおいて予防するのに十分なレベルで、インビボで、完全に機能的である抗体を発現することを実証している。これらの結果は、完全長IgGモノクローナル抗体の合成DNA送達が、普遍的なインフルエンザ免疫予防のための実行可能なプラットフォーム戦略であり得ること、そして、交差反応性モノクローナル抗体を特徴とするその他の感染性病原体にも適応可能であることを示唆している。
【実施例0210】
本明細書で提示した研究は、2つの新規で広範に交差保護的なモノクローナル抗体をコードする合成プラスミドDNAの生成を実証している。プラスミドDNAでコードしたモノクローナル抗体(DMAb)構築物のインビボでの電気穿孔は、マウス血清におけるA型及びB型インフルエンザに対する高レベルの機能的抗体を生成した。A型インフルエンザDMAbで処置された動物は、致命的グループ1及びグループ2でA型インフルエンザを接種しても生存しており、また、B型インフルエンザDMAbで処置された動物は、致命的Victoria及びYamagata系統B型インフルエンザの罹患率及び死亡率から保護された。2つのDMAbを同時に投与した場合に、この技術の普遍的で交差保護的な特性はさらに高まり、重篤なA型及びB型インフルエンザ感染症から動物を首尾良く保護できた。さらに、抗-インフルエンザDMAbの送達は、インフルエンザ接種に対する即時保護は認められなかったが、インフルエンザに対する保護的な宿主免疫は阻害しなかった。インビボで産生されたDMAb、及び、腹腔内に送達されたタンパク質モノクローナル抗体は、致命的なインフルエンザ感染に対して同様の保護を示しており、このことは、重篤なインフルエンザ感染に対する免疫予防のための実用的な代替物としてのDMAbを提示している。
【0211】
方法及び材料について説明をする。
【0212】
DNAがコードしたモノクローナル抗体構築物
モノクローナル抗体は、先述したのと同様の方法論(Kallewaard et al., 2016,166:596-608;Pappas et al., 2014,Nature 516:418-22;Traggiai et al., 2004, Nat Med 10:871-5)を用いて単離をした。当該交差反応性A型インフルエンザモノクローナル抗体(FluA)は、H5及びH7 HAタンパク質(Kallewaard et al., 2016,166:596-608)に対する交差反応性結合に基づいて単離し、そして、B型インフルエンザモノクローナル抗体(FluB)は、異なる系統のB型インフルエンザに対する中和活性に基づいて単離をした。可変遺伝子配列を、RT-PCRによって、交差反応性クローンから単離し、クローニングを行い、そして、さらに改変を行って、非必須非生殖細胞系構成アミノ酸変化を戻した。全長ヒトIgG1κをCHO細胞で一過的に発現させ、そして、インビボでの研究に供するために精製した。プラスミドDNAがコードしたモノクローナル抗体(DMAb)構築物を、先述したようにして改変をした(Muthumani et al., 2016,J Infect Dis 214:369-78;Flingai et al., 2015,Sci Rep 5:12616)。DMAb構築物は、ヒトIgG1κモノクローナル抗体FluA DMAb及びFluB DMAbを完全にコードした。抗体のアミノ酸配列を、ヒト/マウスでの発現のために、DNAコドン最適化及びRNA最適化を行い、そして、得られたDNA導入遺伝子を、デノボで合成した(Genscript、Picastaway、NJ、USA)。合成導入遺伝子を、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター下で、改変したpVax1哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)に制限クローニングした。細胞のプロセッシング及び分泌のために、IgE重鎖及び軽鎖リーダー配列を添加した。最初の研究(図14図17)において、導入遺伝子は、フーリン/ピコルナウイルス-2A(P2A)ペプチド開裂部位配列によって分離された抗体重鎖及び軽鎖配列から構成されており、そこでは、インシスで、単一プラスミドからの重鎖及び軽鎖ペプチドの発現が認められる。FluAとFluB DMAbの同時投与(図18)を行った後出の研究では、重鎖または軽鎖FluAペプチドを個別に発現する2つのFluA DMAb構築物を、イントランスで、別々のプラスミドに由来する重鎖及び軽鎖FluAペプチドの発現のために混合をした。
【0213】
トランスフェクション及びウエスタンブロット
ヒト293T細胞(ATCC)を、10%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ改変イーグル培地(Invitrogen)で維持した。トランスフェクションの1日前に、0.25×10細胞/ウェルで、12ウェルプレートに細胞を接種し、そして、GeneJammer(Agilent Technologies)を用いて、0.5μgのプラスミドDNAでトランスフェクトした。48時間後に上清を回収し、そして、接着細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Boehringer Mannheim)を含む1×細胞溶解緩衝液(Cell Signaling)で溶解した。約50μgの総上清/溶解物タンパク質、及び、10μgのタンパク質IgGを、SeeBlue Plus2プレ染色タンパク質標準(Thermo Fisher Scientific)を用いて、プレキャスト4~12%Bis-trisゲル(Invitrogen)に対して流し込み、そして、iBlot 2 Dry Blotting System(Thermo Fisher Scientific)を用いて、Immobilon-FL PVDF膜(EMD Miliipore)へと移した。重鎖、及び、軽鎖のペプチドは、IRDye 800CWヤギ抗ヒトIgG(H+L)(LI-COR Biosciences)(1:10,000)を用いて同定をした。蛍光ブロットを、Odyssey CLx(LI-COR Biosciences)でスキャンをした。
【0214】
定量的ELISA
図14及び図19における細胞溶解物、細胞上清、及び、マウス血清での全ヒトIgG1κの定量のために、96ウェルMaxiSorpプレート(Nunc)を、10μg/mlのヤギ抗ヒトIgG F断片(Bethyl Laboratories)で、一晩、4℃で、コーティングした。プレートを、10%FBSを含むPBSでブロックした。試料を、1×PBS+0.1%Tween20(PBST)で希釈し、次いで、プレートに1時間にわたって添加した。精製ヒトIgG1κ(Bethyl Laboratories)を用いて、標準曲線を作成した。プレートを、HRP結合二次抗体ヤギ抗-ヒトκ軽鎖(Bethyl Laboratories)(1:20,000)で1時間かけて染色し、SigmaFast OPD(Sigma-Aldrich)を用いて発色させ、そして、2N硫酸で停止した。吸光度450nmを、Synergy2プレートリーダー(Biotek)で測定した。
【0215】
マウス接種研究におけるヒトIgGの定量を、10μg/mlのヤギ抗-ヒトIgG(H+L)(Pierce)を、4℃で、一晩、コーティングをした384-ウェルブラックMaxiSorpプレート(Nalgene Nunc)を用いて行った。プレートを、カゼインブロッカー(Thermo)でブロックし、そして、血清試料と標準曲線(10μg/mlのChromPureヒトIgG、全分子)(Jackson Labs)とを連続希釈した。プレートを洗浄し、そして、ロバ抗-ヒトIgG-HRP二次抗体(Jackson)(1:4,000)で染色し、そして、SuperSignal ELISA Pico Reagent(Thermo)を用いて視覚化した。Perkin Elmer Envisionを用いて、発光を測定した。
【0216】
マウスの血清における特異的A型またはB型インフルエンザヒトIgGの定量を、A/Vietnam/1203/2004(H5N1)に由来する3μg/mlのHAタンパク質、または、B/Florida/4/2006(Yamagata)に由来する3μg/mlのHAをコーティング試薬として用いて、上記したようにして行った。FluAまたはFluB精製タンパク質IgGを、それぞれ、A型及びB型インフルエンザアッセイの標準として使用した。
【0217】
結合ELISA
組換えヘマグルチニン(HA)タンパク質を、上記したようにして、発現及び精製をした(Benjamin et al., 2014,J Virol 88:6743-50)。A/Perth/16/2009(H3N2)、A/Hong Kong/G9/1997(H9N2)、及び、B/Brisbane/60/2008(Victoria)に由来する5μg/mlの精製HAタンパク質、または、A/California/07/2009(H1N1)、A/Vietnam/1203/2004(H5N1)、A/Netherlands/2003(H7N7)、A/Missouri/2006(H2N3)、及び、B/Florida/4/2006(Yamagata)に由来する3μg/mlの精製HAタンパク質でコーティングをした384ウェルMaxiSorpプレート(Nunc)を用いて、ELISA結合アッセイを行った。ELISAプレートを、カゼイン(Thermo Scientific)でブロックし、そして、連続希釈した抗体を、室温で、1時間、インキュベートした。結合した抗体を、ペルオキシダーゼ結合マウス抗-ヒトIgG抗体(KPL)(1:10,000)を用いて検出し、続いて、TMB溶液(KPL)で発色させ、450nmのODで、吸光度測定を行った。ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗-マウスIgG抗体(DAKO)(1:5,000)の二次抗体の他は、HAに対するマウス血清反応性を上記したようにして行った。
【0218】
ウイルスストック、インビトロでの中和及び赤血球凝集阻害
野生型インフルエンザ株は、the Centers for Disease Control and Preventionから入手し、あるいは、American Tissue Culture Collectionから購入した。逆遺伝学によって産生した再分類したH3ウイルス(rA/HK/68)は、A/Hong Kong/8/68(H3N2)に由来するH3 HA、及び、A/Puerto Rico/8/34(H1N1)に由来する残りの7つの遺伝子セグメントを含んでおり、そして、このウイルスのHAは、ネズミの病原性を増強するN165S変異も含んでいた(Jin et al., 2003, Virology 306:18-24)。すべてのウイルスは、孵化鶏卵において増殖しており、そして、ウイルス力価を、ミリリットル当たり平均50%の組織培養感染用量(TCID50)で決定した。微量中和アッセイを、先述したようにして行った(Benjamin et al., 2014,J Virol 88:6743-50)。簡潔に説明すると、0.75μg/mlのN-トシル-L-フェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)トリプシン(Worthington)を含有する完全MEM培地が入った384ウェルプレートに、2連のウェルに入れられた、血清の3倍連続希釈物、または、ナイーブ血清で希釈した精製FluB抗体に対して、60TCID50のウイルス/ウェルを加えた。33℃で、かつ、5%COで、1時間インキュベートした後に、2×10個のMadin-Darby Canine Kidney(MDCK)細胞/ウェルを、プレートに対して加えた。プレートを、33℃で、かつ、5%COで、約40時間インキュベートし、そして、37℃で、1時間かけて、蛍光標識基質メチルウンベリフェリル-N-アセチルノイラミン酸(MU-NANA)(Sigma)を、各ウェルに加えて、ノイラミニダーゼ(NA)活性を測定した。NA活性が示すウイルス複製を、以下の設定を用いて蛍光を読み取ることで定量した。励起355nm、発光460nm、ウェル当たり10回の点滅。赤血球凝集阻害アッセイを、先述したようにして、感染の21日後に回収した血清について行った。
【0219】
筋肉内DNA電気穿孔
DNA電気穿孔の30分前に、メスのBALB/C、及び、CAnN.Cg-Foxnlnu/Crlマウス(Charles River)に対して、12単位(30μl)のヒアルロニダーゼ酵素(Sigma-Aldrich)を筋肉内(im)注射して、各送達部位での前処置をした。最初の研究(図14図17)では、100μg(30μl)のFluAまたはFluB DMAbプラスミドのいずれかを、前脛骨(TA)、及び/または、大腿四頭(Q)筋に対して筋肉注射を行い、マウスに対して、1箇所(TA)で100μgのDNA、2箇所(右のTA+左のTA)で200μgのDNA、あるいは、3箇所(右のTA+左のTA+Q)で300μgのDNAを与えた。後出の同時投与研究(図18)では、マウスに対して、FluA及びFluBの双方のDMAb構築物を与えた。当該FluA構築物のデザインを改変して、重鎖及び軽鎖ペプチドを別々のプラスミドに発現させて、1つのプラスミドデザインよりも少ない注入部位から同等の血清レベルのFluA IgGを生成した。この場合、FluA重鎖及び軽鎖プラスミドの100μgの1:1(重量:重量)混合物を、2箇所(右のTA+右のQ)に送達し、そして、前述したようにして、2箇所(左のTA+左のQ)に向けて、200μgのプラスミドFluBを送達した。CELLECTRA 3P適応定電流デバイス(Inovio Pharmaceuticals)を用いた各DNAを注入した直後に、筋肉内電気穿孔(IM-EP)を行った。
【0220】
致命的インフルエンザの接種
6~8週齢のBALB/cマウス(Harlan Laboratories)に対して、感染の4~5日前に、IM-EPを介して、FluA DMAb、FluB DMAb、または、無関係なコントロールDMAb(DVSF-3、すでに説明した(Flingai et al., 2015, Sci Rep 5:12616))を与えた。感染の1日前に、プラスミドDMAbによってコードされるものと同一のアミノ酸配列を有するタンパク質IgGモノクローナル抗体を、0.03mg/kg~1.0mg/kgの範囲の用量で、マウスの別々の群に対して腹腔内(i.p.)投与した。コントロールのマウスに対して、非特異的タンパク質IgG R347を腹腔内投与した。3×LD50のA/California/07/2009(H1N1)(9.5×10 TCID50/マウス)、7×LD50のrA/HK/68(H3)(1.2×10 TCID50/マウス)、10×LD50のB/Malaysia/2506/2004(Victoria)(3.6×10 TCID50/マウス)、または、7×LD50のB/Florida/4/2006(Yamagata)(7.0×10 TCID50/マウス)でマウスを鼻腔内感染させた。すべてのマウスについて、毎日、体重減少と生存について、12日間、モニターをした(25%以上の体重減少を示すマウスは、安楽死させた)。感染の当日に血液を採取して、血清でのヒトIgGの量を評価した。肺のウイルス量を評価するために、別のマウスを、感染の5日後に安楽死させた。全肺を、10%(重量/体積)滅菌L15培地(Invitrogen)でホモジナイズし、そして、MDCK細胞で滴定して、組織のTCID50/gを決定した。同種再感染試験では、最初の感染の21日後にすべての生存マウスから血液試料を採取して、ヒトIgGのクリアランス及び非存在を確認した。最初の感染の28日後に、マウスに対して、最初の感染と同一のウイルス株を、致死量でもってして再接種した。
【0221】
すべての動物収容設備及び動物実験は、NIH、the Animal Care and Use Review Office of the U.S. Army Medical Department、the University of Pennsylvania Perelman School of Medicine Institutional Animal Care and Use Committee、及び、MedImmune Institutional Animal Care and Use Committeeが定めたガイドラインに沿った承認を受けており、そして、実施をした。すべてのネズミの接種研究は、an Association for the Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)が認証した施設を使って行われており、また、引き続いて実施されている。
【0222】
分析と統計
標準曲線とグラフは、GraphPad Prism 6を用いて調製した。EC50値及びIC50値は、log(レシプロカル血清希釈)と応答との非線形回帰を用いて、計算した。生存データは、log-rank(Mantel-Cox)検定によって計算されたp値を用いたKaplan-Meier生存曲線を用いて表した。
【0223】
これら実験の結果について、説明をする。
【0224】
DNAがコードしたモノクローナル抗体(DMAb)は、インフルエンザウイルスに対するものであって、インビトロ及びインビボで発現される
A型インフルエンザ(FluA)、及び、B型インフルエンザ(FluB)を広範に中和するモノクローナル抗体を、先述したようにして、ヒト記憶B細胞から単離した(Pappas et al., 2014,Nature,516:418-22;Traggiai et al., 2004、Nat Med,10:871-875)。FluAモノクローナル抗体は、最近公開された広範に中和するモノクローナル抗体と密接に関連しており、同抗体は、HA幹への結合に起因する広範囲のHA交差反応性を示し、そして、グループ1及びグループ2の双方に由来するA型インフルエンザウイルスを中和することができる(平均IC50は、2.56μg/ml、データは示さず)(Kallewaard et al., 2016,Cell,6743-50)。FluBモノクローナル抗体は、Victoria及びYamagataの双方の系統に属するB型インフルエンザウイルスを強力に中和する能力に基づいて、同定及び選択をした(平均IC50は、0.64μg/ml、データは示さず)。この抗体は、B型インフルエンザHAの球状頭部に保存された領域に結合し、そして、赤血球のウイルス赤血球凝集を阻害することができる。重症のインフルエンザ感染を防ぐためのDMAb送達の有用性を試験するために、ヒトIgG FluAまたはFluBのいずれかをコードする合成DNA導入遺伝子をデノボで合成し、そして、哺乳動物発現プラスミドにクローニングした。DNAコドン最適化、RNA最適化、及び、プラスミドDNAの製剤などのDMAb発現を増強するために、複数の改変を行った(図19)(Muthumani et al., 2016, J Infect Dis 214:369-78;Flingai et al., 2015, Sci Rep 5:12616)。DMAb構築物でトランスフェクトされたヒト胚腎臓293T細胞の溶解物及び上清でのヒトIgGの定量的ELISAは、組み立てられたFluA及びFluB抗体の細胞内発現及び細胞外分泌を確認した(図14A)。また、ヒトIgGウエスタンブロットは、トランスフェクトした293T細胞の上清及び溶解物に抗体重鎖及び軽鎖が存在することを示した(図14B)。
【0225】
DMAbの送達及び発現を増強するためのヒアルロニダーゼを配合した筋肉内電気穿孔(IM-EP)を利用して、FluAまたはFluB DMAbプラスミドDNAを、100μg~300μgの用量で筋肉内注射して、無胸腺CAnN.Cg-Foxn1nu/Crlヌードマウスに投与した(図19)。ヌードマウス血清でのピーク発現レベルは、FluA DMAb及びFluB DMAbのそれぞれについて、平均10.0μg/ml(±2.6SEM)、及び、31.8μg/ml(±8.1SEM)に達しており、DMAb送達の10週間後には、有意なヒトIgG発現が観察され(図14C及び図14D)、そして、その域も超えた。
【0226】
次に、抗-インフルエンザDMAbの発現を、確立されたインフルエンザ接種モデルである免疫コンピテントBALB/cマウス(図14E及び14F)において定義した。BALB/cマウスに、IM-EPを介して、100μg~300μgのプラスミドDNAを与えた。当該FluA DMAb構築物は、送達の5日後に測定したところ、BALB/cマウス血清に適度なレベルのヒトIgGを生成した(300μgプラスミド平均1.8μg/ml±0.3SEM)。ヌードマウスでの観察と同様に、FluB DMAb発現は、送達の5日後のFluA DMAb発現よりも強力であった(200μg平均5.4μg/ml±0.6SEM、300μg平均10μg/ml±1.9SEM)。ヌードマウスで観察された安定した発現とは異なり、BALB/cマウスの血清DMAbレベルは、おそらくは、発現されたDMAbに対するマウス適応性抗-ヒト-IgG応答が故に、送達10日後には検出できなかった。まとめると、これらのデータは、DMAbヒトIgGが、プラスミド構築物を投与した後にインビボで実質的なレベルで産生されたことを明示した。
【0227】
インビボで発現したインフルエンザDMAbは、機能的に活性であり、かつ、広範な交差反応性を示す
インビボで生成されたDMAbの機能性を試験するために、DMAbで処置したBALB/cマウスから得た血清を、インビトロ結合活性について試験をした。季節性(H1、H3)及び潜在的流行性(H2、H5、H6、H7、H9)インフルエンザ分離株に由来する組換え三量体HA(図15A)、ならびに、組換え単量体HA H10(図20)など、ヒトに感染することが公知のウイルスに由来する広範囲のA型インフルエンザグループ1及びグループ2 HA抗原に、血清由来のFluA DMAbは結合した。マウス血清でのFluB DMAbは、Victoria及びYamagataの双方の系統のウイルスに由来するB型インフルエンザHAに結合した(図15B)。レシプロカル血清希釈の半数効果濃度(EC50)は、300μg対100μgのプラスミドDNAで処置したマウスの血清において、より高い結合活性を反映しており、このことは、より多くのプラスミドDNAを与えた動物でのDMAb発現が大きいことを反映している。
【0228】
当該親FluBモノクローナル抗体での強力なインビトロ中和能力は、中和活性試験を可能にしたが、当該FluAモノクローナル抗体の効力は、ミクロ中和アッセイにおけるマウス血清の非特異的干渉からの分化を可能にしなかった。FluB DMAbプラスミド構築物を与えたマウスに由来する血清は、結合アッセイで認められるのと同様の反応性のパターンで、インビトロでの細胞ベースのアッセイにおいて、Yamagata及びVictoriaの双方の系統のB型インフルエンザウイルスを効果的に中和した(図15C)。各試料でのヒトIgG濃度を標準化した後に、FluB DMAbプラスミド(B/Florida/4/2006については0.015μg/mlであり、かつ、B/Malaysia/2506については0.030μg/ml)で処理したマウスで計算した半数阻害濃度(IC50)は、精製タンパク質FluBモノクローナル抗体(B/Florida/4/2006については0.011μg/mlであり、かつ、B/Malaysia/2506/2004については0.047μg/ml)で得た半数阻害濃度と同様であり、この細胞ベースのアッセイの総合誤差の範囲内であった。FluA及びFluB DMAbプラスミド構築物の投与を受けたマウスにおけるHA結合ヒトIgGの存在、及び、FluB DMAbプラスミド構築物で処置したマウスにおける中和力価は、機能的DMAbのインビボでの発現を確認し、そして、これらの新規抗-インフルエンザFluA及びFluB抗体の顕著に広範な交差反応性を実証した。
【0229】
インフルエンザのDMAbは、多様なA型インフルエンザ及びB型インフルエンザの致命的接種からマウスを保護する
この技術のインビボでの有用性を評価するために、DMAbで処置した動物を、致命的インフルエンザ接種モデルで評価した。IM-EPを介して、300μgのFluA DMAb、または、無関係なDMAbコントロール(DVSF-3(Flingai et al., 2015, Sci Rep 5:12616))を動物に投与し、次いで、電気穿孔の4日後に、A/California/7/2009 H1N1(A/CA/09 H1)の致死量を接種した(図16)。DMAbとタンパク質IgGとを直接にインビボで比較するために、感染の1日前に、FluAタンパク質モノクローナル抗体の一連の希釈物を腹腔内に投与して、マウスのグループ分けを行った。感染時に全ての動物から得た血清試料は、0.3mg/kgのFluAタンパク質IgGで処置したマウスに認められるのと同様の平均ヒトIgG濃度及びHA結合活性を、FluA DMAb処置がもたらす、ことを示した(図16A及び図21)。致死量のA/California/7/2009 H1N1(A/CA/09 H1)を接種した場合に、FluA DMAb処置が、90%の生存利益をもたらしたのに対して、デング熱ウイルス(DVSF-3)に対するコントロールDMAbで処置をした全ての動物は、感染により死亡した(図16B)。ヒトIgG発現レベルに対応して、FluA DMAb処置、及び、0.3mg/kgのFluA精製タンパク質は、致命的で、かつ、インフルエンザ誘発性である体重減少に対して、同様の保護をもたらした(図16C)。
【0230】
これらの結果を、別の臨床的に関連するA型インフルエンザ型ウイルスにまで広げて、DMAb投与の5日後に、rA/Hong Kong/8/68 H3N1(rA/HK/68 H3)の致命的接種をして、同様の研究を行った。再び、感染時に、ヒト抗体レベルは、FluA DMAb、及び、0.3mg/kgのFluAタンパク質IgGを、同様の濃度で示した(図16D)。致命的rA/HK/68 H3を接種した後、FluA DMAbで処置した動物は、DMAbコントロールと比較して、有意な生存利益を有していた(FluA DMAbで80%の生存率であるの対して、コントロールDMAbでの生存率は0%である)(図16E)。これらの結果は、ヒトにおいて疾患を引き起こすことが知られている臨床的に関連するH1及びH3亜型による致命的A型インフルエンザ感染を予防し、そして、DMAbプラットフォームを介して生成したFluA抗体が、腹腔内に送達した精製FluA抗体と同様のインビボ機能を持つことを明確に実証している。
【0231】
DMAb技術の予防可能性をさらに調べるために、同様の致命的接種研究を行って、FluB DMAbの活性を評価した。これらの研究では、200μgのFluB DMAbプラスミド構築物、または、コントロールのDMAbを、IM-EPを介して、マウスに投与し、次いで、5日後に、Victoria(B/Malayaisa/2506/2004(B/Mal/04))、または、Yamagata系統(B/Florida/4/2006(B/Fla/06))に由来する致死量のウイルスを接種した(図17)。再度、DMAbと精製タンパク質とを直接に比較するために、感染の1日前に、精製FluBモノクローナル抗体を腹腔内投与して、マウスのグループ分けを行った。B/Mal/04を接種した時点でマウスの血清に存在するヒトIgGの定量は、FluB DMAbが、1mg/kgのFluBタンパク質を腹腔内投与して処置した動物で認められたのと同様の平均ヒトIgG濃度とHA結合活性とを示した。(図17A及び図21)。意外にも、FluB DMAbで処置したマウスの100%は、Victoria及びYamagataの双方で致命的B型インフルエンザ接種をしても生存していたが、非特異的DMAbコントロールは、8日目までに、双方の感染によって完全に死亡していた(図17B及び17E)。さらに、FluBは、B型インフルエンザ関連病的状態からマウスを保護しており、処置をした動物では 体重減少が、ほとんど、または、全く認められない(図17C及び17F)。加えて、FluBで処置したマウスは、コントロールマウスよりも有意に低い肺ウイルス負荷を示した(図22)。FluB DMAbで処置をしたマウスの生存、体重減少、肺ウイルス負荷、及び、血清でのインビトロの結合活性は、1mg/kgの精製FluBタンパク質IgGを与えられたマウスでの同じパラメーターとほぼ同等であり、このことは、DMAb、及び、精製されたタンパク質モノクローナル抗体のインビボでの機能的等価性を改めて確認している。
【0232】
FluA及びFluB DMAbの同時投与は、A型及びB型インフルエンザの接種、及び、相同的再接種からマウスを保護する
A型及びB型インフルエンザウイルスは、共循環し、そして、季節性感染症に対する包括的な免疫予防戦略は、双方のインフルエンザを標的とすべきである。DMAbプラットフォームが、この役割を果たす能力を試験するために、FluA DMAb及びFluB DMAbを、BALB/cマウスに対して同時投与した。感染の5日前に、マウスに対してFluB DMAbを投与し、次いで、翌日に、FluA DMAbを投与した。比較群の動物には、感染の1日前に、FluA及びFluB精製タンパク質モノクローナル抗体の混合物を腹腔内に投与した。A/CA/09 H1またはB/Fla/06のいずれかの致死量を、マウスに接種した。感染時の血清試料は、DMAbで処置した動物が、全ヒトIgGが平均で3μg/mlであることを示した(図18A)。A型及びB型インフルエンザに特異的なELISAは、双方のDMAbが、以前に観察されたものと同様の発現レベルを示しており(図18B)、FluA DMAbの血清レベルは、腹腔内に送達した0.3mg/kg FluAタンパク質IgGの血清レベルに近似しており、かつ、FluB DMAbの血清レベルは、腹腔内に送達した1mg/kgのFluBタンパク質IgGに近似している。接種研究において、FluA+FluB DMAbを与えた全てのマウスは、致命的感染から保護されたが、コントロールのDMAbで処置したマウスの90%と100%は、それぞれ、A型インフルエンザとB型インフルエンザ感染で死亡した(図18C及び18D)。DMAb投与及びタンパク質IgGの送達は、改めて、生存率及び体重減少の双方において明確に同様の保護レベルを示した(図23)。
【0233】
最初の感染から21日後に、生存しているBALB/cマウスの血清は、検出不可能なレベルのヒトIgGを有しており(データは示さず)、このことは、DMAb及び組換えタンパク質が、もはや存在しないことを示している。血清赤血球凝集阻害(HAI)、及び、感染性インフルエンザ株に対するマウス抗-HA結合抗体は、マウスで、感染に対する宿主免疫応答が高まっていたことを確認した(図24)。DMAbで処置したマウスは、精製したIgGで処置した動物と同程度にまで、ウイルスに対する宿主免疫応答を高めることができた。
【0234】
重大なことに、インビボでのFluA及びFluBの存在は、接種ウイルスに対する保護的な宿主免疫応答を阻害しなかった。最初の感染から28日後に、致死量の相同インフルエンザウイルスを、生存していた全てのマウス(最初のA/CA/09 H1感染で生存していた1匹のDMAbコントロールマウスを含む)に再接種して、マウス宿主免疫応答のレベルが保護的であったことを確認した。先に接種をした全てのマウスは、実質的な体重減少を招かずに、致命的な同種再接種でも生存したが、感染しておらず、未処置で、年齢が一致するマウスの80~90%は、生存しなかった(図18E図18F、及び、図23)。これらの結果は、保護的宿主抗-インフルエンザ応答が、インビボでDMAbとして発現した、または、タンパク質モノクローナル抗体として送達された、保護レベルのFluA及びFluB抗体の存在下で生じることを実証しており、このことは、DMAbが、互いに拮抗するものではなく、または、インフルエンザに対する宿主免疫応答に拮抗しない、ことを実証している。
【0235】
考察
季節性インフルエンザ感染は、米国だけで、年平均で100億ドルの直接医療費と、800億ドルの経済的負担を招いている(Molinari et al., 2007, Vaccine 25:5086-96)。インフルエンザワクチン及び抗ウイルス薬が入手可能であるにもかかわらず、大きな亜集団は、季節性インフルエンザ感染に起因する合併症の影響を受けやすい。米国での季節性インフルエンザに起因する死亡者の90%近くは、65歳以上の成人であり(Frieden et al,2010, MMWR 59)、この集団では、抗原連続変異が顕著な年のワクチン有効性が推定で36%にまで低下する。季節性感染症の持続的な危険性に加えて、流行性インフルエンザの発生は、ワクチンデザインを撹乱する可能性がある。したがって、インフルエンザ感染に対する革新的普遍的介入が不可欠である。
【0236】
普遍的なインフルエンザワクチンを作成する現在の努力の大部分は、交差保護的な抗-インフルエンザ抗体の成熟を促す免疫原として作用できる組換え抗原のデザインに向かっている(Yassine et al., 2015, Nat Med 21:1065-70;Impagliazzo et al., 2015, Science 349:1301-6;Bommakanti et al., 2010, PNAS 107:13701-6)。そこでは、免疫を回避し、そして、インビボで直接的に交差保護的な免疫を生成することが求められていた。致命的なA型インフルエンザ及びB型インフルエンザの接種に対して有意に保護をする2つのHA標的抗体をコードするプラスミドDNA構築物の筋肉内電気穿孔の後に、マウスの血清に機能的交差保護的な抗-インフルエンザ抗体を生成した。
【0237】
多量のタンパク質モノクローナル抗体は、自己免疫疾患、がん、及び、その他の慢性病態の処置のために市販されているが、生物学的製剤の投与に要する費用と、それらの半減期が限られているが故に、感染性疾患の標的に対する予防には、わずか1つのタンパク質モノクローナル抗体しか汎用されていない(Group, 1998, Pediatrics 102:531-7)。DMAb技術は、優れた送達代替物であり、インビボで筋肉細胞から産生されたDMAb、及び、インビトロで精製されたタンパク質モノクローナル抗体は、マウスにおける致命的インフルエンザ感染と同じレベルで保護をする。プラスミドDNAは、既存の抗-ベクター血清学がもたらす制限を受けることもなく、また、DMAbプラットフォームは、ウイルス回避に対処するためのさらなる抗-インフルエンザ抗体、または、全く異なる病原体を目標とする抗体を送達するために、繰り返し利用し得る(Muthumani et al., 2016, J Infect Dis 214:369-78;Flingai et al., 2015, Sci Rep 5:12616)。また、プラスミドDNAは、ゲノム組込みのリスクがほとんどなく、そして、同様のプラスミドデザインは、DNAワクチンのヒト臨床研究において安全性を実証している。
【0238】
モノクローナル抗体のDNAプラスミドベースの送達は、サプライチェーンの各段階でのタンパク質療法の実現可能な代替物である。生産においては、DNA複製が哺乳動物細胞培養を必要としないため、DMAbは、タンパク質モノクローナル抗体(及び、ウイルスベクター)と比べても安価である。流通では、低温流通システムが不要であり、このことは、開発途上国では実用上の大きな利点である。DNAはスケールアップが容易であり、かつ、貯蔵時にも安定しており、このことは、物資が限られている状況では特に重要な検討事項である。長期にわたるDMAb発現の可能性は、組換え抗体の頻繁な注射の必要性を解消し得るものであり、新生抗体の半減期延長技術とも関係している。送達において、タンパク質モノクローナル抗体は、一般的には、インビボでの半減期が短いが、持続的なDMAb発現は、抗体の頻繁な注射の必要性を解消し得るものであり、ヌードマウスへDMAbを送達してから数ヵ月の単位で、強力なDMAbの発現が認められた。重大なことに、DMAbで処置したマウスは、同一源で再感染しても生存しており、このことは、FluA DMAb及びFluB DMAbで処置した後もなお、インフルエンザ感染に対する宿主免疫応答が完全であることを示している。おそらくは、これらのインフルエンザ特異的DMAbは、ワクチンの推奨を広めるために使用することができ、このことは、重篤なインフルエンザ感染に対して即時予防をもたらし、そして、適切なワクチン誘発免疫応答の成熟を可能にする。また、DMAbは、重度の免疫障害があり、抗体応答を取り込むことができない個体に、生命維持に必須の選択肢を提供し得る。DMAb技術は、プラスミドDNAを用いて強力な機能性抗体を送達することで、治療可能性が非常に広範なプラットフォームを提供する。
【実施例0239】
ペプチド核酸配列識別表示を以下に示す。
【表1】
【0240】
開示した実施形態に対する様々な変更や修正は、当業者にとって明白のことであろう。そのような変更や修正は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施し得るものであり、本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成物、組成物、製剤、または、使用方法に関するものなどがあるが、これらに限定されない。
図1
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【配列表】
2022116034000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載される発明。
【外国語明細書】