(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116051
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】心腔内除細動システム及び除細動器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20220802BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20220802BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20220802BHJP
A61B 5/283 20210101ALI20220802BHJP
【FI】
A61N1/39
A61B5/33 120
A61B5/352
A61B5/283
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078825
(22)【出願日】2022-05-12
(62)【分割の表示】P 2017185348の分割
【原出願日】2017-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 和寛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘誠
(72)【発明者】
【氏名】野口 祐介
(72)【発明者】
【氏名】風間 邦彦
(57)【要約】
【課題】カルディオバージョンの心腔内除細動を、ポリグラフ検査装置からのECG信号を用いなくても行うことができる心腔内除細動システムを提供すること。
【解決手段】除細動器100は、カテーテルショートSW230によってショートされたRA電極群及びCS電極群の測定電位に基づいて心電図を得るとともに、当該心電図からR波に相当するタイミングを検出し、検出したタイミングに同期したタイミングでカテーテルショートSW230によってショートされたRA電極群及びCS電極群に心腔内除細動のための電気エネルギーを供給する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
右心房内に留置されるRA電極と、冠静脈洞に留置されるCS電極と、を有する電極カテーテルと、
前記電極カテーテルから入力した前記RA電極及び前記CS電極の測定電位に基づいて心内心電図を得るとともに、当該心内心電図からR波に相当するタイミングを検出し、検出したタイミングに同期したタイミングで前記RA電極及び前記CS電極に心腔内除細動のための電気エネルギーを供給する、除細動器と、
を有する心腔内除細動システム。
【請求項2】
前記RA電極及び前記CS電極は、それぞれ、電位測定用電極と電圧印加用電極とが別々の電極として形成されており、
前記除細動器は、前記電位測定用電極により得られた測定電位に基づいて心電図を得るとともに、前記電圧印加用電極に前記電気エネルギーを供給する、
請求項1に記載の心腔内除細動システム。
【請求項3】
前記RA電極は複数のRA電極が電位測定用及び電圧印加用の共通電極として形成されているとともに、前記CS電極は複数のCS電極が電位測定用及び電圧印加用の共通電極として形成されており、
前記心腔内除細動システムは、前記複数のRA電極同士をショートさせるとともに前記複数のCS電極同士をショートさせたショート状態と、前記複数のRA電極同士をショートさせないとともに前記複数のCS電極同士をそれぞれショートさせないオープン状態とを切り替え可能なカテーテルショートスイッチを有し、
前記除細動器は、前記カテーテルショートスイッチによってショートされた前記複数のRA電極及び前記複数のCS電極の測定電位に基づいて心内心電図を得るとともに、当該心内心電図からR波に相当するタイミングを検出し、検出したタイミングに同期したタイミングで前記カテーテルショートスイッチによってショートされた前記複数のRA電極及び前記複数のCS電極に心腔内除細動のための電気エネルギーを供給する、
請求項1に記載の心腔内除細動システム。
【請求項4】
前記カテーテルショートスイッチは、心腔内除細動時には前記ショート状態とされ、心内心電図測定時には前記オープン状態とされる、
請求項3に記載の心腔内除細動システム。
【請求項5】
電極カテーテルに接続され、前記電極カテーテルに心腔内除細動のための電気エネルギーを供給する除細動器であって、
前記電極カテーテルから入力した前記電極カテーテルのRA電極及びCS電極の測定電位に基づく心内心電図を得、当該心内心電図に基づいてR波同期通電のタイミングを検出するタイミング検出部と、
前記タイミング検出部で検出されたタイミングに同期したタイミングで前記RA電極及び前記CS電極に心腔内除細動のための電気エネルギーを供給する電気エネルギー供給部と、
を具備する除細動器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極カテーテルを用いて心腔内除細動及び心内電位測定を行う心腔内除細動システム、及び除細動器に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動のアブレーション治療において、原因部位を特定するために心房細動を誘発させた際、又は、術中の自然発作として、心房細動、心房粗動又は心房頻拍が発生することがある。心腔内除細動とは、術中に発生した心房細動を電気的除細動により停止させる必要がある場合に、予め心腔内に留置している電極カテーテルに電気エネルギーを印加することにより細動を除去するものである。心腔内除細動によれば、体外式除細動に比べて患者に与える電気エネルギーが少なくて済み(例えば体外式除細動が150~200J程度であるのに対して心腔内除細動では30J以下)、患者への負担が小さいといったメリットがある。
【0003】
心腔内除細動システムが用いられる前までは、心内心電図を測定する場合には、電極カテーテルの端子をポリグラフ検査装置の端子に接続し、心腔内除細動を行う場合には、電極カテーテルの端子を除細動器の端子に接続するといった作業を、医師等の医療スタッフが手作業で行う必要があった。よって、電極カテーテルの端子を接続し直す時に、一時的に心内心電図を測定できなくなる。
【0004】
特許文献1には、ポリグラフ検査装置及び除細動器と、電極カテーテルと、の切り換えを行う1回路2接点の切換スイッチを設けることが開示されている。この構成によれば、手動によって電極カテーテルの端子を挿入し直す場合と比較して、医療スタッフの手間を軽減できると考えられる。また、電極カテーテルの端子を挿入し直す時に、一時的に心内心電図を測定できなくなるといった不都合を解消できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、心臓カテーテル検査室における不整脈アブレーション治療において、カルディオバージョンの心腔内除細動を行う場合(つまりR波に同期して電極カテーテルに通電を行う場合)には、一般に、ポリグラフ検査装置によって取得した体表面心電図からR波を検出し、検出したR波に基づいてR波同期通電を行うようになっている。
【0007】
このような構成では、除細動器がポリグラフ検査装置からECG信号を受け取る必要があり、そのために除細動器とポリグラフ検査装置との間を繋ぐケーブルが必要となる。
【0008】
ここで、心臓カテーテル検査室における不整脈アブレーション治療では、通常、体外式除細動器及び心腔内除細動器の2台を設置し、症例に応じて使い分けている。
【0009】
心房細動などの治療では心腔内除細動器に除細動カテーテル(電極カテーテル)類を接続し検査を行う。また、心室細動/心室頻拍などの発症が見込まれる患者の場合は、体外式除細動器に除細動パッドを接続した状態で検査を行う。
【0010】
そのため、多数のケーブルを用いて各機器が接続されている。具体的には、次のようなケーブルが存在する。
[1]被検者の体内に留置される電極カテーテルと心腔内除細動器とを接続する中継ケーブル
[2]心腔内除細動器とポリグラフ検査装置とを接続するECG信号ケーブル
[3]体外式除細動器と除細動パッドとを接続するケーブル
【0011】
不整脈アブレーション治療を行うためには、上記[1]~[3]のケーブル全てを患者又は周辺装置に届く範囲に設置する必要があり、ケーブルが邪魔になったり、検査室内での装置の配置レイアウトの自由度が小さくなるといった欠点がある。よって、ケーブル数を減らすことが望まれる。
【0012】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、カルディオバージョンの心腔内除細動を、ポリグラフ検査装置からのECG信号を用いなくても行うことができ、この結果ケーブル数の低減にも寄与できる心腔内除細動システム及び除細動器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の心腔内除細動システムの一つの態様は、
右心房内に留置されるRA電極と、冠静脈洞に留置されるCS電極と、を有する電極カテーテルと、
前記RA電極及び前記CS電極の測定電位に基づいて心電図を得るとともに、当該心電図からR波に相当するタイミングを検出し、検出したタイミングに同期したタイミングで前記RA電極及び前記CS電極に心腔内除細動のための電気エネルギーを供給する、除細動器と、
を具備する。
【0014】
本発明の除細動器の一つの態様は、
電極カテーテルに接続され、前記電極カテーテルに心腔内除細動のための電気エネルギーを供給する除細動器であって、
前記電極カテーテルのRA電極及びCS電極の測定電位に基づく心電図を得、当該心電図に基づいてR波同期通電のタイミングを検出するタイミング検出部と、
前記タイミング検出部で検出されたタイミングに同期したタイミングで前記RA電極及び前記CS電極に心腔内除細動のための電気エネルギーを供給する電気エネルギー供給部と、
を具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カルディオバージョンの心腔内除細動を、ポリグラフ検査装置からのECG信号を用いなくても行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】電位測定用電極と電圧印加用電極とを別々に設けた電極カテーテルの例を示す図
【
図3】電位測定用電極と電圧印加用電極とが共通化された電極カテーテルの例を示す図
【
図4】
図2の電極カテーテルに対応する、実施の形態の心腔内除細動システムの全体構成を示す概略図
【
図7】
図3の電極カテーテルに対応する、実施の形態の心腔内除細動システムの全体構成を示す概略図
【
図10】比較例としての心腔内除細動システムの構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
<1>実施の形態の原理
先ず、実施の形態の具体的な構成を説明する前に、実施の形態の原理について説明する。
【0019】
図1は、患者10に、電極カテーテル20と、除細動パドル又はパッド30(以下「パドル/パッド」と記す)と、を装着した様子を示している。除細動器40は、パドル/パッド30の端子A1、A2に接続された状態で体外式除細動を行うことができる。また、除細動器40は、電極カテーテル20の端子B1、B2に接続された状態で心腔内除細動を行うことができる。
【0020】
電極カテーテル20には、右心房内に留置される8極のRA電極群21と、冠静脈洞に留置される8極のCS電極群22と、上大静脈に留置される4極のEP電極群(SVC電極やIVC電極など)と、を有する。これらの電極のうち、RA電極群21及びCS電極群22が心腔内除細動を行うために用いられ、RA電極群21、CS電極群22及びEP電極群が心内電位を測定するために用いられる。これらの電極の詳しい構成については、
図2及び
図3を用いて後述する。
【0021】
本実施の形態では、除細動器40が、RA電極及びCS電極の測定電位に基づいて心電図(本明細書では、この心電図を「RA-CS誘導心電図」と呼ぶ)を得るとともに、当該心電図からR波に相当するタイミングを検出し、検出したタイミングに同期したタイミングでRA電極及びCS電極に心腔内除細動のための電気エネルギーを供給するようになっている。
【0022】
これにより、ポリグラフ検査装置のECG信号を用いなくても、R波に同期した心腔内除細動を行うことができるようになる。
【0023】
<2>電極カテーテルの構成
次に、本実施の形態で使用することを想定している電極カテーテル20の構成について説明する。本実施の形態では、
図2に示した電極カテーテルと、
図3に示した電極カテーテルの2つのタイプの電極カテーテルが使用されることを想定している。
【0024】
図2に示した電極カテーテル20は、電位測定用電極と電圧印加用電極とが別々に設けられている。以下では、このような電極カテーテルをタイプ1と呼ぶことにする。
図3に示した電極カテーテル20は、電位測定用電極と電圧印加用電極とが共通化されている。以下では、このような電極カテーテルをタイプ2と呼ぶことにする。なお、従来の心腔内除細動用の電極カテーテルとしてはタイプ2のものが使用される場合が多い。
【0025】
図2に示したタイプ1の電極カテーテル20は、RA電極群21として8個の電位測定用電極21Xと、4個の電圧印加用電極21Yとが設けられている。8個の電位測定用電極21Xには、それぞれが互いに絶縁された導線が接続され、これにより、これらの導線が接続される測定側では、8個の電位測定用電極21Xのそれぞれの電位を測定できるようになっている。一方、4個の電圧印加用電極21Yには、共通化された導線が接続され、これにより、この導線が接続された除細動器から導線を介して4個の電圧印加用電極21Yに共通の除細動用電気エネルギーが供給されるようになっている。
【0026】
同様に、タイプ1の電極カテーテル20は、CS電極群22として8個の電位測定用電極22Xと、4個の電圧印加用電極22Yとが設けられている。8個の電位測定用電極22Xには、それぞれが互いに絶縁された導線が接続され、これにより、これらの導線が接続される測定側では、8個の電位測定用電極22Xのそれぞれの電位を測定できるようになっている。一方、4個の電圧印加用電極22Yには、共通化された導線が接続され、これにより、この導線が接続された除細動器から導線を介して4個の電圧印加用電極22Yに共通の除細動用電気エネルギーが供給されるようになっている。
【0027】
なお、電位測定用電極21X、22X及び電圧印加用電極21Y、22Yの個数や、配置パターン、サイズは、
図2の例に限定されるものではない。例えば電圧印加用電極21Y、22Yの個数は、それぞれ1個でもよい。
【0028】
図3に示したタイプ2の電極カテーテル20は、RA電極群21として、電位測定用及び電圧印加用の両方に用いられる8個の電極21Zが設けられている。具体的には、8個の電極21Zには、それぞれが互いに絶縁された導線が接続され、これにより、8個の電極21Zそれぞれの電位を測定することができるようになっている。一方、8個の電極21Zに除細動用電気エネルギーを供給する際には8個の導線をショートさせて除細動用電気エネルギーを供給することにより、8個の電極21Zの全てに同一の印加電圧を供給することができる。
【0029】
<3>除細動システムの構成
次に、実施の形態の除細動システムの構成について説明する。以下では、タイプ1の電極カテーテル20(
図2)に対応した構成と、タイプ2の電極カテーテル20(
図3)に対応した構成とに分けて説明する。
【0030】
<3-1>タイプ1の電極カテーテルに対応する除細動システムの構成
図4は、タイプ1の電極カテーテル20(
図2)に対応する除細動システムの全体構成を示す概略図である。
【0031】
除細動システム1000は、除細動器100(
図1の除細動器40に相当)と、心電計としての機能を有するポリグラフ検査装置300と、電極カテーテル20(
図2に示したような電位測定用電極21X、22Xと電圧印加用電極21Y、22Yとが別々に設けられている電極カテーテル20)と、体外パドル500(
図1のパドル/パッド30に相当)と、接続装置200と、を有する。除細動器100、ポリグラフ検査装置300、電極カテーテル20及び体外パドル500は、接続装置200により接続されている。なお、本実施の形態では、接続装置200が除細動器100と別体となっているが、接続装置200は除細動器100と一体に除細動器100に組み込まれていてもよい。また、本実施の形態では、体外式除細動を行う機器として体外パドル500を例に挙げているが、体外パドル500に代えて電極パッド又は体内パドル等を用いてもよい。
【0032】
除細動器100は、電極カテーテル20によって心腔内除細動を行うための電気エネルギー、及び、体外パドル500によって体外式除細動を行うための電気エネルギーを生成可能となっている。
【0033】
具体的には、
図5にも示したように、除細動器100は、充電操作スイッチ(以下スイッチを「SW」と略記する)111、通電操作SW112、出力設定ダイヤルSW113等の各種の操作スイッチと、LCD(Liquid Crystal Display)114と、AC電源を入力してDC電源に変換するAC/DC電源部115と、入出力端子部116と、を有する。さらに、除細動器100は、図示はしていないが、バッテリや昇圧回路、演算回路及び制御回路等を有する。
【0034】
出力設定ダイヤルSW113は、通電レベルを設定する機能と、通電先を切り換える機能と、を有する。また、出力設定ダイヤルSW113は、モニターモード及びAED(Automated External Defibrillator)モードを選択する機能も有する。
【0035】
図6は、出力設定ダイヤルSW113を拡大した図である。ユーザがダイヤルの回動位置を「モニター」の位置に合わせると除細動器100は心電図測定モード(モニターモード)となり、ダイヤルの回動位置を「AED」の位置に合わせると除細動器100は体外式除細動モード(AEDモード)となる。また、ユーザがダイヤルを「切」の位置から時計方向に回動させていくと、除細動器100を心腔内除細動モードにすることができ、その回動位置に応じて1,2,4,6,8,10,15,20,30[J]のいずれかの通電レベルを設定できる。一方、ユーザがダイヤルを「切」の位置から反時計方向に回動させていくと、除細動器100を体外式除細動モードにすることができ、その回動位置に応じて1,2,4,6,8,10,15,20,30,50,70,100,150,200[J]のいずれかの通電レベルを設定できる。
【0036】
図4に戻って説明を続ける。ポリグラフ検査装置300は、心内電位入力端子部301を有する。また、ポリグラフ検査装置300は、図示はしていないが、心内電位入力端子部301から入力された測定電位から心内心電図を形成する演算部や、心電図を表示する表示部、制御部等を有する。
【0037】
電極カテーテル20は、中継ケーブルK1を介して接続装置200に接続される。実際上、電極カテーテル20は、右心房内に留置されるRA電極群21と、冠静脈洞に留置されるCS電極群22と、上大静脈に留置される4極のEP電極群(SVC電極やIVC電極など)(図示せず)と、を有する。これらの電極のうち、RA電極群21及びCS電極群22が心腔内除細動を行うために用いられ、RA電極群21、CS電極群22及びEP電極群が心内電位を測定するために用いられる。
【0038】
体外パドル500は、それぞれ体外式除細動用電極を有する一対のパドルから構成されており、パドルのハンドル部に充電操作SW501及び通電操作SW502が設けられており、ユーザが充電操作SW501及び通電操作SW502を操作することで、除細動器100に充電動作を行わせることができるとともに除細動器100から除細動のためのエネルギーの供給を受けることができるようになっている。
【0039】
接続装置200は、ケーブルK0によって除細動器100と接続されている。接続装置200は、ケーブルK0を介して除細動器100から体外式除細動又は心腔内除細動のための電気エネルギーが入力され、端子T4及びケーブルK4を介して体外パドル500に体外式除細動のための電気エネルギーを出力し、端子T1及び中継ケーブルK1を介して電極カテーテル400に心腔内除細動のための電気エネルギーを出力する。
【0040】
また、接続装置200は、体外パドル500からケーブルK4及び端子T4を介して充電スイッチ操作信号及び通電スイッチ操作信号が入力され、これをケーブルK0を介して除細動器100に出力する。
【0041】
また、接続装置200は、電極カテーテル20から中継ケーブルK1及び端子T1を介して心内電位が入力され、これを端子T2及び心電位出力ケーブルK2を介してポリグラフ検査装置300に出力する。
【0042】
また、接続装置200は切換SW220を有する。ユーザによる除細動器100の出力設定ダイヤルSW113の操作に応じて切換SW220の接点a、bのいずれかが選択される。つまり、ユーザが出力設定ダイヤルSW113により体外式除細動を選択すると切換SWが接点aに接続し、これに対してユーザが出力設定ダイヤルSW113により心腔内除細動を選択すると切換SW220が接点bに接続する。
【0043】
接点bには、導線K11及び導線K12が接続されている。導線K11は、電極カテーテル20の電位印加用電極21Y(
図2)に接続されている。導線K12は、電極カテーテル20の電圧印加用電極22Y(
図2)に接続されている。
【0044】
この構成により、除細動システム1000においては、除細動器100は、電極カテーテル20を用いて心腔内除細動を行う際、電極カテーテル20からRA電極及びCS電極に基づく心内心電図を得ることができる。
【0045】
また、接続装置200は、オンオフSW240及び保護抵抗250とを有する。保護抵抗250はオンオフSW240と並列に接続されている。オンオフSW240及び保護抵抗250には、電極カテーテル20の電位測定用電極21Xに接続されている導線K13と、電極カテーテル20の電位測定用電極22Xに接続されている導線K14とが接続されている。オンオフSW240には、8極のRA電極群21X、8極のCS電極群22Xに対応する計16個のオンオフSWが設けられているとともに、保護抵抗250には、8極のRA電極群21X、8極のCS電極群22Xに対応する計16個の抵抗が設けられている。
【0046】
保護抵抗250を構成する各抵抗の抵抗値は、例えば数百kΩとされている。この抵抗値は、除細動器100から心腔内除細動のためのエネルギーが供給された場合に、ポリグラフ検査装置300を保護できる値であればよい。
【0047】
電極カテーテルショートSW230及びオンオフSW240の動作は、ケーブルK0を介して入力される除細動器100からの制御信号によって制御される。具体的には、接続装置200は、心内心電図測定を指示する制御信号が入力されると、オンオフSW240をオン状態(つまりクローズド状態)とする。一方、接続装置200は、心腔内除細動実行を指示する制御信号が入力されると、オンオフSW240をオフ状態(つまりオープン状態)とする。
【0048】
これにより、心内心電図測定時において、オンオフSW240はオン状態(つまりクローズド状態)とされ、電位測位用の8極のRA電極群21X、電位測位用の8極のCS電極群22Xで得られた測定電位がオンオフSW240を経由してポリグラフ検査装置300に入力される。なお、4極のEP電極群で得られた測定電位は導線K15を介して直接ポリグラフ検査装置300に入力される。この結果、ポリグラフ検査装置300では、各電極からの測定電位に基づく心内心電図を得ることができる。
【0049】
これに対して、心腔内除細動実行時において、オンオフSW240はオフ状態(つまりオープン状態)とされ、電位測位用の8極のRA電極群21X、電位測位用の8極のCS電極群22Xで得られた測定電位が保護抵抗250を経由してポリグラフ検査装置300に入力される。因みに、心腔内除細動実行時においては、電位測位用のRA電極群21X及び電位測位用のCS電極群22Xには除細動用の電気エネルギーが直接印加されるわけではないが、電位測位用のRA電極群21X及び電位測位用のCS電極群22Xは電圧印加用電極21Y、22Yの近くに配置されているので、人体を介して大きな電気エネルギーが印加されることになる。この大きな電気エネルギーがオンオフSW240を介して直接ポリグラフ検査装置300に入力されると、ポリグラフ検査装置300が損傷するおそれがある。これを考慮して、本実施の形態では、心腔内除細動実行時においては、保護抵抗250を介してRA電極群21X及びCS電極群22Xとポリグラフ検査装置300を電気的に接続するようになっている。
【0050】
因みに、心腔内除細動時において、ポリグラフ検査装置300の損傷を防止するために電極カテーテル20とポリグラフ検査装置300との電気的な接続を完全に遮断してもよいが、本実施の形態では、心腔内除細動時に、ポリグラフ検査装置300と電極カテーテル20との接続を完全に遮断してしまうのではなく、心腔内除細動時においても保護抵抗250を介してポリグラフ検査装置300と電極カテーテル20との接続を維持しておくことにより、ポリグラフ検査装置300への除細動の電気エネルギーの入力を抑制してポリグラフ検査装置300を保護しつつ、ポリグラフ検査装置300によって心内電位を測定できる。
【0051】
また、心腔内除細動時にもポリグラフ検査装置300と電極カテーテル20との接続が維持されているので、電極カテーテル20に心腔内除細動のための電気エネルギーが供給された後のポリグラフ検査装置300での測定電位の戻りが早くなり、換言すればポリグラフ検査装置300での基線が安定し、これにより、ポリグラフ検査装置300での心内心電図の表示回復が早くなるといったメリットもある。
【0052】
本実施の形態によれば、除細動器100が、RA電極群21Y及びCS電極群22Yの測定電位に基づいて心電図(RS-CS誘導心電図)を得るとともに、当該心電図からR波に相当するタイミングを検出し、検出したタイミングに同期したタイミングでRA電極21Y及びCS電極群22Yに心腔内除細動のための電気エネルギーを供給するようにしたことにより、カルディオバージョンの心腔内除細動を、ポリグラフ検査装置300からのECG信号を用いなくても行うことができるようになる。この結果、ケーブル数を少なくすることができ、検査室内での装置の配置レイアウトの自由度を高くすることができる。なお、R波同期通電(カルディオバージョン)自体については、公知の技術であるため、ここでの説明は省略する。
【0053】
実際上、
図4の除細動器100は、電極カテーテル20のRA電極群21Y及びCS電極群22Yの測定電位に基づく心電図を得、当該心電図に基づいてR波同期通電のタイミングを検出するタイミング検出部と、タイミング検出部で検出されたタイミングに同期したタイミングで、RA電極21Y及びCS電極22Yに心腔内除細動のための電気エネルギーを供給する電気エネルギー供給部と、を有する。
【0054】
<3-2>タイプ2の電極カテーテルに対応する除細動システムの構成
図4との対応部分に同一符号を付して示す
図7は、タイプ2の電極カテーテル20(
図3)に対応する除細動システムの全体構成を示す概略図である。
【0055】
除細動システム2000は、
図4の除細動システム1000と比較して、電極カテーテルショートSW230を有する。電極カテーテルショートSW230は、切換SW220の接点bと端子T1との間に設けられている。電極カテーテルショートSW230は、電極カテーテル20に設けられた複数のRA電極群21Z、CS電極群22Zをそれぞれショートさせるようになっている。具体的には、
図7中の導線K111は複数のRA電極群21Zに繋がる導線を示し、
図7中の導線K112は複数のCS電極群22Zに繋がる導線を示し、電極カテーテルショートSW230によって心腔内除細動時に、複数のRA電極群21Zがショートされるとともに複数のCS電極群22Zがショートされる。これにより、心臓壁との接触面積を広げてインピーダンスを下げ、設定したジュール数の除細動エネルギーを心臓壁に伝えることができる。
【0056】
具体的には、電極カテーテルショートSW230は、心腔内除細動実行時に、8極のRA電極群21Zをショートさせるとともに、8極のCS電極群22Zをショートさせる。なお、電極カテーテルショートSW230は、心内心電図測定時には、電極カテーテル20の各電極21Z、22Zをショートさせずにオープン状態とする。これにより、心内心電図測定時には、各電極21Z、22Zの電位を測定することができる。
【0057】
さらに、接続装置200は、切換SW220の接点b及び端子部T1の接続中点と、端子T2との間に、オンオフSW240と保護抵抗250とが接続されている。保護抵抗250はオンオフSW240と並列に接続されている。オンオフSW240には、8極のRA電極群21Z、8極のCS電極群22Zに対応する計16個のオンオフSWが設けられているとともに、保護抵抗250には、8極のRA電極群21Z、8極のCS電極群22Zに対応する計16個の抵抗が設けられている。
【0058】
電極カテーテルショートSW230及びオンオフSW240の動作は、ケーブルK0を介して入力される除細動器100からの制御信号によって制御される。具体的には、接続装置200は、心内心電図測定を指示する制御信号が入力されると、電極カテーテルショートSW230をオープン状態とするとともにオンオフSW240をオン状態(つまりクローズド状態)とする。一方、接続装置200は、心腔内除細動実行を指示する制御信号が入力されると、電極カテーテルショートSW230をショート状態とするとともにオンオフSW240をオフ状態(つまりオープン状態)とする。
【0059】
【0060】
心内心電図測定時において、電極カテーテルショートSW230はオープン状態とされ、オンオフSW240はオン状態(つまりクローズド状態)とされる。これにより、矢印Xで示したように、電極カテーテル20のうち8極のRA電極群21Z、8極のCS電極群22Zで得られた測定電位がオンオフSW240を経由してポリグラフ検査装置300に入力される。なお、4極のEP電極群で得られた測定電位は直接ポリグラフ検査装置300に入力される。この結果、ポリグラフ検査装置300では、各電極からの測定電位に基づく心内心電図を得ることができる。
【0061】
【0062】
心腔内除細動実行時において、電極カテーテルショートSW230はショート状態とされ、オンオフSW240はオフ状態(つまりオープン状態)とされる。これにより、除細動器100で生成された心腔内除細動を行うための電気エネルギーが、矢印Yで示したように、切換SW220及び電極カテーテルショートSW230を介して電極カテーテル20に供給される。
【0063】
加えて、本実施の形態では、この心腔内除細動実行時において、除細動器100が電極カテーテルショートSW230によってショートされたRA電極群21Zと、電極カテーテルショートSW230によってショートされたCS電極群22Zとの測定電位に基づいて心電図(RA-CS誘導心電図)を得て、当該心電図からR波に相当するタイミングを検出し、検出したタイミングに同期したタイミングで、ショートされたRA電極群21Z及びCS電極群22Zに心腔内除細動のための電気エネルギーを供給するようになっている。
【0064】
実際上、
図7の除細動器100は、カテーテルショートSW230によってショートされた、電極カテーテルのRA電極群21Z及びCS電極群22Zの測定電位に基づく心電図(RA-CS誘導心電図)を得、当該心電図に基づいてR波同期通電のタイミングを検出するタイミング検出部と、タイミング検出部で検出されたタイミングに同期したタイミングで、カテーテルショートSW230によってショートされたRA電極群21Z及びCS電極群22Zに心腔内除細動のための電気エネルギーを供給する電気エネルギー供給部と、を有する。
【0065】
以上説明したように、
図7の構成によれば、除細動器100が、カテーテルショートSW230によってショートされたRA電極群21Z及びCS電極群22Zの測定電位に基づいて心電図(RA-CS誘導心電図)を得るとともに、当該心電図からR波に相当するタイミングを検出し、検出したタイミングに同期したタイミングでカテーテルショートSW230によってショートされたRA電極群21Z及びCS電極群22Zに心腔内除細動のための電気エネルギーを供給するようにしたことにより、タイプ2のような電位測定用電極と電圧印加用電極とが共通化されている電極カテーテル20(
図3)を用いた場合でも、カルディオバージョンの心腔内除細動を、ポリグラフ検査装置300からのECG信号を用いなくても行うことができるようにできようになる。この結果、ケーブル数を少なくすることができ、検査室内での装置の配置レイアウトの自由度を高くすることができる。
【0066】
つまり、
図7の除細動システム2000は、心腔内除細動時に、8極のRA電極群21Zをショートさせるとともに、8極のCS電極群22Zをショートさせる。因みに、心内心電図測定時には、電極カテーテル20の各電極をショートさせずにオープン状態とすることで、各電極の電位を測定する。
【0067】
加えて、
図7の除細動システム2000の除細動器40は、心腔内除細動時に、RA電極群21Z及びCS電極群22Zをそれぞれショートし、それらを心電図測定用電極として心電図を作成し、それからR波に相当するタイミングを検出し、次いでショートさせたRA電極群21Z及びCS電極群21Zを用いてR波同期通電を行う。
【0068】
ここで、
図7との対応部分に同一符号を付して示す
図10は、実施の形態の除細動システム1000、2000に対する比較例を示す。比較例の除細動システム3000の接続装置200は、ケーブルK3及び端子T3を介してポリグラフ検査装置300からECG信号が入力され、これをケーブルK0を介して除細動器100に出力する。除細動器100は、入力したECG信号を用いてR波同期通電(カルディオバージョン)を行う。なお、
図10では、除細動器100は、ケーブルK0を介してポリグラフ検査装置300からのECG信号に加えて、体表面心電図用入力端子117を介して患者10の体表に貼着された電極により取得された測定電位を入力している状態が示されているが、実際にはいずれか一方の信号があればR波同期通電を行うことができるので、いずれか一方のみが接続されていればよい。
【0069】
比較例の除細動システム3000のように、除細動器100にポリグラフ検査装置300からECG信号が入力され、又は、除細動器100に体表面心電図用入力端子117を介して患者10の体表に貼着された電極により取得された測定電位が入力される構成を採用すると、R波同期通電(カルディオバージョン)を行うために必要なケーブル数が多くなる。
【0070】
これに対して、上述の実施の形態の構成によれば、心腔内除細動のための電気エネルギーを供給するためのケーブルK0、K1と同じケーブルK0、K1を用いて、R波同期通電(カルディオバージョン)の基準となる心電図を取得できるので、ケーブルK3や、体表面心電図用入力端子117に接続される体表面心電図入力ケーブルK5を無くすことができ、ケーブル数を少なくすることができる。
【0071】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0072】
上述の実施の形態では、
図2及び
図3で示した電極カテーテル20に、本発明を適用する場合について述べたが、本発明が適用可能な電極カテーテルの構成はこれに限らない。電極カテーテル20の構成は、心腔内除細動を実行可能な電極と、心内電位を測定可能な電極とを有するものであればよい。
【0073】
また、上述の実施の形態では、心腔内除細動機能及び体外式除細動機能の両方の機能を有する除細動器100を接続装置200に接続する場合について述べたが、心腔内除細動機能を有する第1の除細動器と、体外式除細動機能を有する第2の除細動器とを、別々に接続装置200に接続してもよい。ただし、上述の実施の形態のように、心腔内除細動機能及び体外式除細動機能の両方の機能を有する除細動器100を接続装置200に接続すると、接続装置200と除細動器100を繋ぐケーブルが1本で済むので、より好ましい。
【0074】
上述の実施の形態では、切換SW220、電極カテーテルショートSW230、オンオフスイッチ240及び保護抵抗250を、除細動器100とは別体の接続装置200に設けた場合について述べたが、これらは除細動器100に内蔵してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、電極カテーテルを用いて心腔内除細動及び心内電位測定を行う心腔内除細動システムに適用し得る。
【符号の説明】
【0076】
10 患者
20 電極カテーテル
21 RA電極群
22 CS電極群
30 パドル/パッド
40、100 除細動器
200 接続装置
220 切換SW
230 カテーテルショートSW
240 オンオフSW
250 保護抵抗
300 ポリグラフ検査装置
500 体外パドル
K0~K5 ケーブル
K11、K12、K13、K14、K15、K111、K112 導線
1000、2000、3000 除細動システム