(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116060
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】自己修復性ポリウレタン系重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/38 20060101AFI20220802BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20220802BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C08G18/38 063
C08G18/75
C09D175/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079390
(22)【出願日】2022-05-13
(62)【分割の表示】P 2020504086の分割
【原出願日】2018-07-11
(31)【優先権主張番号】10-2017-0088470
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】305026873
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ファン スン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジェユン
(72)【発明者】
【氏名】オ ドン ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】ジェガル ジョン ゴン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソン ミ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒョン ヨル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自己修復性ポリウレタン系重合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、下記化学式1で表される芳香族ジスルフィドジオール、脂環族ポリイソシアネートおよびポリオールを含む組成物から重合される、ポリウレタン系重合体であり自己修復性があり、高い靭性を有する。
(前記化学式1中、Ar
1およびAr
2は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数6~30のアリレン基である。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される芳香族ジスルフィドジオール、脂環族ポリイソシアネートおよびポリオールを含む組成物から重合される、自己修復性ポリウレタン系重合体。
【化1】
(前記化学式1中、前記Ar
1およびAr
2は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数6~30のアリレン基である。)
【請求項2】
前記脂環族ポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、4,4´‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2‐イソシアナトエチル)‐4‐ジクロヘキセン‐1,2‐ジカルボキシレートおよび2,5‐ノルボルナンジイソシアネートおよび2,6‐ノルボルナンジイソシアネートから選択されるいずれか一つまたは二つ以上である、請求項1に記載の自己修復性ポリウレタン系重合体。
【請求項3】
前記組成物は、下記関係式1を満たす、請求項1に記載の自己修復性ポリウレタン系重合体。
[関係式1]
0.1≦M[disulfide]/M[OH]
(前記関係式1中、M[disulfide]は、組成物中の芳香族ジスルフィドジオールの合計モル数であり、M[OH]は、組成物中の芳香族ジスルフィドジオールおよびポリオールの合計モル数である。)
【請求項4】
前記自己修復性ポリウレタン系重合体は、25℃の温度条件で50%以上の自己修復率を有する、請求項1に記載の自己修復性ポリウレタン系重合体。
【請求項5】
前記自己修復性ポリウレタン系重合体は、下記関係式2の靭性回復率を満たす、請求項1に記載の自己修復性ポリウレタン系重合体。
[関係式2]
50≦T1/T0×100
(前記関係式2中、T0は、自己修復性ポリウレタン系重合体の切断前の靭性(MJ/m3)であり、T1は、自己修復性ポリウレタン系重合体を切断し、25℃の温度条件で2時間再接合した後の靭性(MJ/m3)である。)
【請求項6】
前記組成物は、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートから選択されるいずれか一つまたは二つ以上をさらに含む、請求項1に記載の自己修復性ポリウレタン系重合体。
【請求項7】
前記組成物は、下記関係式3を満たす、請求項6に記載の自己修復性ポリウレタン系重合体。
[関係式3]
0.15≦M[cycloaliphatic]/M[NCO]≦1
(前記関係式1中、M[cycloaliphatic]は、組成物中の脂環族ポリイソシアネートの合計モル数であり、M[NCO]は、組成物中のポリイソシアネート系化合物の合計モル数である。)
【請求項8】
下記化学式1で表される芳香族ジスルフィドジオール、脂環族ポリイソシアネートおよびポリオールを含む組成物を重合するステップを含む、自己修復性ポリウレタン系重合体の製造方法。
【化2】
(前記化学式1中、前記Ar
1およびAr
2は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数6~30のアリレン基である。)
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の自己修復性ポリウレタン系重合体を含む、自己修復性ポリウレタン系コーティング膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己修復性ポリウレタン系重合体およびその製造方法に関し、より詳細には、自己修復性ポリウレタン系重合体の損傷の際、さらなる熱処理または光照射を施すことなく常温で自己修復が可能であり、高い靭性を有する自己修復性ポリウレタン系重合体およびその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
耐スクラッチ(anti‐scratch)、アンチチップ(anti‐chip)、または耐石噛み(anti‐stone)機能を有する塗装保護用コーティング剤組成物およびコーティングフィルム材料は、車両用、軍事用、IT用として応用するところが多い。
【0003】
上記のものは、車両用では、自動車の走行中に破片や砂などによって車体の表面やヘッドライトの損傷を防止し、美観上の目的でも必要である。軍事用では、ヘリコプターの翼の表面が、小さなスクラッチにも致命的である恐れがあり、アンチチップコーティングフィルムを必ず要する。IT用では、スマートフォンやTVなどのディスプレイを外部損傷から保護するための用途およびドローンの表面に氷が生じて発生する翼の損傷を防ぐための用途でも必要である。
【0004】
かかるアンチチップコーティング技術に主に求められている物性は、透明性、耐磨耗性、耐溶剤性などがある。2000年代に入って自己修復(self‐healing)関連の機能性を追加したアンチチップコーティングフィルムが開発され始めた。自己修復機能とは、コーティングの表面にスクラッチが発生したときに、自ら回復し、スクラッチのないきれいな最初の状態に戻る特性を意味する。
【0005】
自己修復機能は、その作用メカニズムに応じて、外因性タイプ(extrinsic‐type)または内因性タイプ(intrinsic‐type)に分けられる。スクラッチによってコーティングフィルムに含まれているマイクロカプセルが破裂して流出される修復物質(healing agent)により修復されるメカニズムを外因性タイプと言い、このメカニズムは、修復箇所での界面間異質性が現れ、マイクロカプセルの消耗によって再修復が根本的に困難である。これを解消するために提案される内因性タイプは、コーティング材料自体の化学結合として熱または光によって可逆的に共有結合が可能な官能基を導入することで、界面間異質性および再修復がメリットとして強調され、様々な物質が試みられている。
【0006】
しかし、内因性タイプの自己修復可能な物質は、熱処理または光処理のような外部刺激を加えたときにスクラッチを回復することができるコーティングフィルムがほとんどであるため、自己修復のために人為的な外部刺激を加えなければならないという不都合が指摘された。
【0007】
かかる問題によって、自己修復性ポリウレタン系コーティング膜の損傷の際、さらなる熱処理または光照射を施すことなく常温で自己修復が可能であり、高い靭性を有する自己修復性ポリウレタン系コーティング膜の開発が求められている。
【0008】
これに関する類似先行文献として韓国公開特許公報第10‐2015‐0097902号が提示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、自己修復性ポリウレタン系重合体の損傷の際、さらなる熱処理または光照射を施すことなく常温で自己修復が可能であり、高い靭性を有する自己修復性ポリウレタン系重合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明の一様態は、下記化学式1で表される芳香族ジスルフィドジオール、脂環族ポリイソシアネートおよびポリオールを含む組成物から重合される自己修復性ポリウレタン系重合体に関する。
【化1】
(前記化学式1中、前記Ar
1およびAr
2は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数6~30のアリレン基である。)
【0011】
この際、前記組成物は、下記関係式1を満たしてもよい。
[関係式1]
0.1≦M[disulfide]/M[OH]
(前記関係式1中、M[disulfide]は、組成物中の芳香族ジスルフィドジオールの合計モル数であり、M[OH]は、組成物中の芳香族ジスルフィドジオールおよびポリオールの合計モル数である。)
【0012】
前記一様態において、前記脂環族ポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4´‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2‐イソシアナトエチル)‐4‐ジクロヘキセン‐1,2‐ジカルボキシレートおよび2,5‐ノルボルナンジイソシアネートおよび2,6‐ノルボルナンジイソシアネートから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。
【0013】
前記一様態において、前記自己修復性ポリウレタン系重合体は、25℃の温度条件で50%以上の自己修復率を有することができ、下記関係式2の靭性回復率を満たしてもよい。
[関係式2]
50≦T1/T0×100
(前記関係式2中、T0は、自己修復性ポリウレタン系重合体の切断前の靭性(MJ/m3)であり、T1は、自己修復性ポリウレタン系重合体を切断し、25℃の温度条件で2時間再接合した後の靭性(MJ/m3)である。)
【0014】
前記一様態において、前記組成物は、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートから選択されるいずれか一つまたは二つ以上をさらに含むことができる。この際、前記組成物は、下記関係式3を満たしてもよい。
[関係式3]
0.15≦M[cycloaliphatic]/M[NCO]≦1
(前記関係式1中、M[cycloaliphatic]は、組成物中の脂環族ポリイソシアネートの合計モル数であり、M[NCO]は、組成物中のポリイソシアネート系化合物の合計モル数である。)
【0015】
また、本発明の他の様態は、下記化学式1で表される芳香族ジスルフィドジオール、脂環族ポリイソシアネートおよびポリオールを含む組成物を重合するステップを含む自己修復性ポリウレタン系重合体の製造方法に関する。
【化2】
(前記化学式1中、前記Ar
1およびAr
2は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数6~30のアリレン基である。)
【0016】
また、本発明のさらに他の様態は、上述の自己修復性ポリウレタン系重合体を含む自己修復性ポリウレタン系コーティング膜に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による自己修復性ポリウレタン系重合体は、芳香族ジスルフィドジオールと脂環族ポリイソシアネートを単量体成分として使用することで、さらなる熱処理または光照射を施すことなく常温で自己修復が可能であり、具体的な一例として、本発明の一例による自己修復性ポリウレタン系重合体は、25℃の温度条件で50%以上の自己修復率を有することができる。
【0018】
なお、本発明の一例による自己修復性ポリウレタン系重合体は、切断してから再接合した後にも高い靭性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1、比較例2および比較例3それぞれの(a)フィルム写真、(b)常温自己修復率(%)を測定するための光学顕微鏡写真であり、スクラッチ直後の写真と25℃で2時間放置した後の写真である。
【
図2】実施例1の試験片を切断した後、25℃で2時間放置してから再接合した試験片の写真と、6時間放置した後、物性を評価した写真である。
【
図3】実施例1の試験片の靭性を評価するための歪み‐応力曲線(strain‐stress curve)であり、バージン(virgin)は、製造直後の試験片の曲線であり、3分、5分、30分、1時間および2時間は、切断した試験片を各時間の間に再接合した後の試験片の曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明による自己修復性ポリウレタン系重合体およびその製造方法について詳細に説明する。以下で示される図面は、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態に具体化してもよく、以下に提示される図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示され得る。また、明細書の全体にわたり同じ参照番号は同じ構成要素を指す。
【0021】
この際、使用される技術用語および科学用語において他の定義がない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有しており、下記の説明および添付の図面で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0022】
自己修復性ポリウレタン系コーティング膜の自己修復機能は、外因性タイプと内因性タイプとに分けられる。
【0023】
外因性タイプの場合、マイクロカプセルが破裂して流出される修復物質によってコーティング膜の損傷部が修復されることによって、修復箇所での界面間の異質性が現れるか、マイクロカプセルの消耗によって再修復が最初から制限されるという問題があった。
【0024】
そのため、コーティング膜自体に熱または光によって可逆的に共有結合が可能な官能基を導入することで、界面間の異質性を低減することができ、再修復が可能な内因性タイプが注目されたが、コーティング膜が損傷した後、熱処理または光処理のような外部刺激を加えたときに損傷部を修復することができるという限界があった。
【0025】
したがって、本出願人は、コーティング膜の基本物性である高い耐溶剤性および透明度などを維持し、且つコーティング膜の損傷の際、さらなる熱処理または光照射を施すことなく常温で自己修復が可能であり、高い靭性を有する自己修復性ポリウレタン系コーティング膜に関する研究を長期間行った。
【0026】
この過程で、自己修復性ポリウレタン系コーティング膜に芳香族ジスルフィド基(‐Ar‐S‐S‐Ar‐)を導入した場合、さらなる熱処理または光照射を施すことなく常温で自己修復が可能な重合体を提供することができることを見出し、特に、重合体の製造のための組成物において、各構成成分間の割合を適正な範囲に調節した場合、高い靭性を確保することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0027】
上述のように、本発明による自己修復性ポリウレタン系重合体は、その化学構造内に芳香族ジスルフィド基(‐Ar‐S‐S‐Ar‐)を導入することで、さらなる熱処理または光照射を施すことなく常温で自己修復を可能にしたものである。この際、常温とは、10~45℃を意味し得る。
【0028】
詳細には、本発明の一例による自己修復性ポリウレタン系重合体は、下記化学式1で表される芳香族ジスルフィドジオール、脂環族ポリイソシアネートおよびポリオールを含む組成物から重合されてもよい。
【0029】
【化3】
(前記化学式1中、前記Ar
1およびAr
2は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数6~30のアリレン基である。)
【0030】
このように、本発明による自己修復性ポリウレタン系重合体は、芳香族ジスルフィドジオールと脂環族ポリイソシアネートを単量体成分として使用することで、さらなる熱処理または光照射を施すことなく常温で自己修復が可能であり、具体的な一例として、本発明の一例による自己修復性ポリウレタン系重合体は、25℃の温度条件で50%以上の自己修復率を有することができる。
【0031】
なお、本発明の一例による自己修復性ポリウレタン系重合体は、切断してから再接合した後にも高い靭性を維持することができ、具体的には、例えば、本発明の一例による自己修復性ポリウレタン系重合体は、下記関係式2の靭性回復率を満たしてもよい。
【0032】
[関係式2]
50≦T1/T0×100
(前記関係式2中、T0は、自己修復性ポリウレタン系重合体の切断前の靭性(MJ/m3)であり、T1は、自己修復性ポリウレタン系重合体を切断し、25℃の温度条件で2時間再接合した後の靭性(MJ/m3)である。)
【0033】
一方、芳香族ジスルフィドジオールの代わりに、末端基がアミン基である芳香族ジスルフィドジアミンを使用したときに、後述する比較例1から分かるように、常温自己回復率、靭性および靭性回復率がいずれも大幅に低下し得る。もしくは、脂環族ポリイソシアネートの代わりに、脂肪族ポリイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネートのみを使用したときに、後述する比較例2と3から分かるように、常温では自己回復しないこともあり、靭性も全く回復しないこともある。すなわち、芳香族ジスルフィドジオールと脂環族ポリイソシアネートの両方を使用したときに、優れた常温自己回復率および高い靭性回復率を確保することができる。
【0034】
一方、本発明の一例による下記化学式1で表される芳香族ジスルフィドジオールにおいて、Ar1およびAr2は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数6~18のアリレン基であってもよく、より具体的には、置換または非置換のフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、フェナレニレン基、テトラフェニレン基およびピレニレン基などから選択されるいずれか一つであってもよい。ここで、「置換」もしくは「置換の」とは、本明細書において特に断らない限り、Ar1および/またはAr2の官能基の一つ以上の水素原子がハロゲン原子(‐F、‐Cl、‐Brまたは‐I)、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、ヒドロキシ基、アミン基、カルボン酸基およびアルデヒド基などからなる群から選択される1種以上の置換基で置換されたものを意味し、ただし、前記化学式1に記載のアリレン基の炭素数6~30は、置換基の炭素数を含まない。
【0035】
このように、末端基が‐OHである芳香族ジスルフィドジオールを使用してポリウレタン系重合体を製造することで、向上した自己修復率を確保することができ、且つ高い透明度を有する重合体を製造することができ、これにより、より鮮明な視野を確保することができる。
【0036】
本発明の一例において、前記脂環族ポリイソシアネートは、二つ以上のイソシアネート基を有する脂環族化合物であれば、特に限定されず使用可能であり、具体的には、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4´‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2‐イソシアナトエチル)‐4‐ジクロヘキセン‐1,2‐ジカルボキシレートおよび2,5‐ノルボルナンジイソシアネートおよび2,6‐ノルボルナンジイソシアネートから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を使用することができる。特に、高い靭性を確保する面から、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を使用することが好ましい。
【0037】
また、本発明の一例として、自己修復性ポリウレタン系重合体が優れた自己修復率および高い靭性を有するためには、組成物中の芳香族ジスルフィドジオールの含量を適切に調節することが好ましい。芳香族ジスルフィドジオールの含量が低すぎる場合、常温での自己回復率および靭性回復率が大幅に低下し得る。
【0038】
好ましい一例として、前記組成物は、下記関係式1を満たすように芳香族ジスルフィドジオールを含有してもよく、この際、M[disulfide]/M[OH]の上限は、特に限定しないが、例えば、0.8であってもよい。
【0039】
[関係式1]
0.1≦M[disulfide]/M[OH]
【0040】
(前記関係式1中、M[disulfide]は、組成物中の芳香族ジスルフィドジオールの合計モル数であり、M[OH]は、組成物中の芳香族ジスルフィドジオールおよびポリオールの合計モル数である。)
【0041】
すなわち、芳香族ジスルフィドジオールは、二つ以上のヒドロキシ基を含有する全化合物の中で10モル%以上添加されることが好ましく、芳香族ジスルフィドジオールが10モル%以上添加されたときに、自己修復性ポリウレタン系重合体は、25℃の温度条件で50%以上の自己修復率を有することができ、55%以上の靭性回復率を有することができる。
【0042】
より好ましくは、M[disulfide]/M[OH]は、0.2以上であってもよく、この場合、自己修復性ポリウレタン系重合体は、25℃の温度条件で70%以上の自己修復率を有することができ、70%以上の靭性回復率を有することができる。さらに好ましくは、M[disulfide]/M[OH]は、0.3以上であってもよく、この場合、自己修復性ポリウレタン系重合体は、25℃の温度条件で95%以上の自己修復率を有することができ、75%以上の靭性回復率を有することができる。
【0043】
なお、本発明の一例による前記組成物は、脂環族ポリイソシアネートの他にも脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートから選択されるいずれか一つまたは二つ以上をさらに含んでもよく、これにより、自己修復性ポリウレタン系重合体がより優れた靭性を確保することができる。
【0044】
この際、全体のポリイソシアネート系化合物の中に脂環族ポリイソシアネートを適正以上の含量で添加したときに、自己修復性ポリウレタン系重合体が優れた常温自己修復率および靭性回復率を確保することができ、脂環族ポリイソシアネートの含量が低すぎる場合、常温での自己回復率および靭性回復率が大幅に低下し得る。
【0045】
好ましい一例として、前記組成物は、下記関係式3を満たしてもよい。
【0046】
[関係式3]
0.15≦M[cycloaliphatic]/M[NCO]≦1
(前記関係式1中、M[cycloaliphatic]は、組成物中の脂環族ポリイソシアネートの合計モル数であり、M[NCO]は、組成物中のポリイソシアネート系化合物の合計モル数である。)
【0047】
この際、ポリイソシアネート系化合物とは、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートをいずれも称する。
【0048】
すなわち、脂環族ポリイソシアネートがポリイソシアネート系化合物の合計モル数に対して15モル%以上添加されたときに、自己修復性ポリウレタン系重合体が、25℃の温度条件で70%以上の自己修復率を有することができ、50%以上の靭性回復率を有することができる。より好ましくは、脂環族ポリイソシアネートが、ポリイソシアネート系化合物の合計モル数に対して30モル%以上添加されたときに、自己修復性ポリウレタン系重合体が、25℃の温度条件で90%以上の自己修復率を有することができ、60%以上の靭性回復率を有することができる。
【0049】
一方、本発明の一例において、前記脂肪族ポリイソシアネートは、当業界において通常使用されるものであれば、特に限定されず使用可能であり、具体的には、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11‐ウンデカントリイソシアネート、2,2,4‐トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6‐ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2‐イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2‐イソシアナトエチル)カーボネートおよび2‐イソシアナトエチル‐2,6‐ジイソシアナトヘキサノエートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。
【0050】
前記芳香族ポリイソシアネートも当業界において通常使用されるものであれば、特に限定されず使用可能であり、具体的には、例えば、1,3‐フェニレンジイソシアネート、1,4‐フェニレンジイソシアネート、2,4‐トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6‐トリレンジイソシアネート、4,4´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4‐ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´‐ジイソシアナトビフェニル、3,3´‐ジメチル‐4,4´‐ジイソシアナトビフェニル、3,3´‐ジメチル‐4,4´‐ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5‐ナフチレンジイソシアネート、4,4´,4´´‐トリフェニルメタントリイソシアネート、m‐イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートおよびp‐イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。
【0051】
なお、本発明の一例によるポリオールは、当業界において通常使用されるものであれば、特に限定されず使用可能であり、具体的には、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールなどからなる群から選択される一つ以上の高分子量ポリオールであってもよい。
【0052】
前記高分子量ポリオールは、500~20,000g/molの数平均分子量を有するものであってもよく、より好ましくは、高分子量ポリオールは、800~10,000g/molの数平均分子量を有する化合物であってもよく、さらに好ましくは、900~5,000g/molの数平均分子量を有する化合物であってもよい。前記範囲で製造される自己修復性ポリウレタン系重合体の軟質セグメント特性が極大化されて軟性および弾性が極大化されることで、硬化過程で発生する亀裂などの欠陥発生可能性を最小化することができ、これにより、コーティング効率が向上することができ、好ましい。
【0053】
また、自己修復性ポリウレタン系重合体が常温で自己修復が可能になるようにするためには、ヒドロキシ基含有化合物とイソシアネート基含有化合物との割合を適切に調節することが好ましく、具体的には、例えば、ヒドロキシ基含有化合物のヒドロキシ基:イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基のモル比は、1:0.8~1.2であってもよく、より好ましくは、1:0.9~1.1であってもよい。前記範囲であるときに、自己修復性ポリウレタン系重合体が効果的に重合可能であり、重合体の損傷の際、常温で自己修復が可能であり、且つ重合体が基本的に備えるべき優れた耐溶剤性、耐磨耗性および高い透明度を確保することができる。
【0054】
この際、ヒドロキシ基含有化合物とは、ヒドロキシ基を二つ以上含有している芳香族ジスルフィドジオールおよびポリオールをいずれも称するものであってもよく、イソシアネート基含有化合物とは、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートをいずれも称するものである。
【0055】
また、本発明は、上述の自己修復性ポリウレタン系重合体を含む自己修復性ポリウレタン系コーティング膜を提供する。
【0056】
上述のように、本発明による自己修復性ポリウレタン系重合体は、芳香族ジスルフィド基(‐Ar1‐S‐S‐Ar2‐)を含むことで、ジスルフィド基の複分解反応(disulfide metathesis)により、さらなる熱処理または光照射を施すことなく常温で自己修復を可能にすることができる。
【0057】
特に、常温で自己修復が可能であり、且つコーティング膜が基本的に備えるべき優れた耐溶剤性、耐磨耗性および高い透明度を確保するためには、各化合物の含量を適正範囲に調節することが好ましく、これは、上述のとおりであるため、重複説明は省略する。
【0058】
このように、本発明による自己修復性ポリウレタン系重合体を含む自己修復性ポリウレタン系コーティング膜は、50%以上の自己修復率および50%以上の靭性回復率を有することができ、より好ましくは、80%~100%の自己修復率および70~90%の靭性回復率を有することができる。この際、自己修復率は、コーティングフィルムに30~70μm幅のスクラッチ傷をつけた後、25℃の温度条件で2時間露出し、回復した幅を光学顕微鏡で観察してパーセント化した値であり、靭性回復率は、切断前と再接合後の靭性をそれぞれ測定した後、切断前の靭性と再接合後の靭性の分率をパーセントで計算した。
【0059】
また、本発明は、自己修復性ポリウレタン系前駆体組成物から自己修復性ポリウレタン系重合体を製造する方法を提供する。
【0060】
具体的には、本発明の一例による自己修復性ポリウレタン系重合体の製造方法は、下記化学式1で表される芳香族ジスルフィドジオール、脂環族ポリイソシアネートおよびポリオールを含む組成物を重合するステップを含むことができる。
【0061】
【化4】
(前記化学式1中、前記Ar
1およびAr
2は、互いに独立して、置換または非置換の炭素数6~30のアリレン基である。)
【0062】
この際、各化合物の種類および含量は、上述のとおりであるため、重複説明は省略する。
【0063】
本発明の一例において、前記組成物は、添加される化合物を溶解し、より均一に混合するために、有機溶媒をさらに追加してもよい。
【0064】
有機溶媒は、当業界において通常使用されるものであれば、特に限定されず使用可能であり、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、メトキシエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルコール系溶媒;酢酸、ギ酸などの酸(acid)溶媒;ニトロメタンなどのニトロ系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;エチルアセテート、ブチルアセテート、3‐メトキシ‐3‐メチルブチルアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミン系溶媒;テトラヒドロフラン、2‐メチルテトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0065】
溶媒の添加量は、特に制限されないが、添加される化合物が十分に溶解されて均一に混合することができ、コーティング膜の形成のために容易に塗布することができる程度の量で添加され得る。具体的には、例えば、芳香族ジスルフィドジオール1モルに対して、1~2000mlの有機溶媒が添加され得、より好ましくは、100~1500mlの有機溶媒が添加され得る。
【0066】
各化合物が均一に混合されると、組成物を重合して自己修復性ポリウレタン系重合体を製造することができる。重合の条件は、自己修復性ポリウレタン系重合体が重合される条件であれば、特に限定されず使用可能であり、具体的には、例えば、20~200℃の温度で30分~24時間重合反応を行うことができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0067】
以下、実施例により、本発明による自己修復性ポリウレタン系重合体およびその製造方法についてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であって、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な形態に具現され得る。また、他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本願において説明に使用される用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。また、明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むことを意図し得る。また、明細書において特に記載していない添加物の単位は重量%であってもよい。
【0068】
[実施例1]
機械式撹拌機、温度計が取り付けられた0.5Lの三つ口フラスコにポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG、14.5mmol、14.5g、数平均分子量1,000g/mol、コリアPTG社製)を投入した後、100℃で真空乾燥し、水分を除去した。その後、70℃でイソホロンジイソシアネート(IPDI、30.45mmol、6.77g)、ジブチルスズジラウレート(DBTDL、50mg)を溶かしたジメチルアセトアミド(DMAc)5mlをゆっくりと滴加し、2時間撹拌した。
【0069】
次に、常温(約25℃)に冷却した後、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)ジスルフィド(HDS、14.5mmol、3.63g)を溶かしたDMAc10mlを滴加し、40℃で1.5時間撹拌した。
【0070】
[実施例2]
PTMEGの投入量を16.5g(16.5mmol)と、HDSの投入量を3.13g(12.5mmol)と変更した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0071】
[実施例3]
PTMEGの投入量を18.5g(18.5mmol)と、HDSの投入量を2.63g(10.5mmol)と変更した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0072】
[実施例4]
PTMEGの投入量を20.5g(20.5mmol)と、HDSの投入量を2.13g(8.5mmol)と変更した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0073】
[実施例5]
PTMEGの投入量を22.5g(22.5mmol)と、HDSの投入量を1.63g(6.5mmol)と変更した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0074】
[実施例6]
PTMEGの投入量を24.5g(24.5mmol)と、HDSの投入量を1.13g(4.5mmol)と変更した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0075】
[実施例7]
実施例1でIPDI(30.45mmol、6.77g)の代わりに、IPDI(20.45mmol、4.55g)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、10.00mmol、1.68g)の混合物を投入した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0076】
[実施例8]
実施例1でIPDI(30.45mmol、6.77g)の代わりに、IPDI(10.45mmol、2.32g)とHDI(20.00mmol、3.36g)の混合物を投入した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0077】
[実施例9]
実施例1でIPDI(30.45mmol、6.77g)の代わりに、IPDI(5.45mmol、1.21g)とHDI(25.00mmol、4.21g)の混合物を投入した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0078】
[比較例1]
実施例1でHDS(14.5mmol、3.63g)の代わりに、ビス(4‐アミノフェニル)ジスルフィド(ADS、14.5mmol、3.60g)を投入した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0079】
[比較例2]
実施例1でIPDI(30.45mmol、6.77g)の代わりに、HDI(30.45mmol、5.12g)を投入した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0080】
[比較例3]
実施例1でIPDI(30.45mmol、6.77g)の代わりに、ビス(4‐イソシアネートフェニル)メタン(MDI、30.45mmol、7.62g)を投入した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0081】
[比較例4]
実施例1でHDS(14.5mmol、3.63g)の代わりに、2‐ヒドロキシエチルジスルフィド(HEDS、14.5mmol、2.24g)を投入した以外は、すべての工程を実施例1と同様に行った。
【0082】
【0083】
[物性の評価]
実施例1~9、および比較例1~4から製造された重合体の物性は、下記のような方法で測定し、その結果を下記表2に記載した。
【0084】
1)自己修復率(%):フィルム状の重合体に30~70μm幅のスクラッチ傷をつけた後、25℃の温度条件で2時間露出し、回復した幅を光学顕微鏡で観察し、パーセント化した値である。
【0085】
2)靭性(MJ/m3):引張特性の測定のための試験片を製造するために実施例1~9、および比較例1~4で製造した重合体をジメチルアセトアミド(DMAc)溶媒に30重量%で希釈した後、塗布装置(Applicator)を用いてガラス板を支持台として利用して一定の速度で塗布し、塗布された溶液を対流式オーブン(convection oven)で徐々に昇温して1次乾燥した後、80℃で12時間真空乾燥をさらに行った。前記の乾燥したフィルムを試験片切断装置(Dumbell cutter、Labfactory社製)を用いて、ドッグボーン型、長さ25.5mm、幅3.11mm、厚さ3.1mmのサイズを有する試験片を製造した。Intstron 5943(イギリス)装備でASTM D638‐03に準じる規格および方法で測定した。10KNのロードセル、クロスヘッド速度10mm/minで25℃で測定し、各サンプル当たり5回測定した平均値を取った。靭性は、歪み‐応力曲線(strain‐stress curve)の切断される歪みまでの積分値をMJ/m3で換算した。
【0086】
3)靭性回復率(%):切断実験は、前記ASTM D638‐03に準じる規格の試験片を作製した後、中間部をはさみで切る過程である。再接合実験は、切断した破断両面をピンセットでつなぎ、25℃で2時間放置した。再接合後の靭性は、前記切断および再接合実験を経た試験片の歪み‐応力曲線を測定した後、切断される歪みまでの積分値をMJ/m3で換算した。
【0087】
なお、靭性回復率を下記計算式により計算した。
【0088】
靭性回復率=T1/T0×100
【0089】
この際、T0は、試験片の切断前の靭性(MJ/m3)であり、T1は、試験片を切断し、25℃の温度条件で2時間再接合した後の靭性(MJ/m3)である。
【0090】
【0091】
前記表2に記載のように、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)ジスルフィド(HDS)が単量体として含有されたポリウレタン系重合体の場合、25℃での自己修復率が70%以上に示され、靭性は20MJ/m3以上、靭性回復率は50%以上に示された。
【0092】
一方、比較例1の場合、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)ジスルフィド(HDS)ではなく、ビス(4‐アミノフェニル)ジスルフィド(ADS)を使用することで、自己修復率が40%および靭性回復率が30%と、特性が低く測定された。これは、ウレア結合がウレタン結合よりも芳香族ジスルフィドの複分解反応(metathesis)効率を低減し、自己修復率が減少したものと理解される。
【0093】
また、ジイソシアネートが、脂環族ではなく、脂肪族または芳香族である場合、自己修復が全く行われず、切断後の再接合時に全くまた貼り合わされず、再接合後の靭性の測定が不可能であった。
【0094】
なお、脂肪族ジスルフィドジオールである2‐ヒドロキシエチルジスルフィド(HEDS)を使用した比較例4の場合にも、常温で自己修復が全く行われず、切断後の再接合時に全くまた貼り合わされず、再接合後の靭性の測定が不可能であった。
【0095】
以上、本発明の好ましい実施例を説明しているが、本発明は、様々な変化と変更および均等物を使用することができ、前記実施例を適宜変形し、同様に応用することができることが明確である。したがって、前記記載内容は、下記の特許請求の範囲の限界により定められる本発明の範囲を限定するものではない。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の自己修復性ポリウレタン系重合体。