(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116129
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】異種タンパク質発現のためのプラスミド構築物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
C12N15/85 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083896
(22)【出願日】2022-05-23
(62)【分割の表示】P 2018532285の分割
【原出願日】2016-12-16
(31)【優先権主張番号】62/269,702
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/375,245
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518211048
【氏名又は名称】オンコセック メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、ジーン
(72)【発明者】
【氏名】キャントン、デイヴィッド・エー
(72)【発明者】
【氏名】ピアス、ロバート・エイチ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】適切なプロモーター及び/または翻訳修飾因子を用いて各タンパク質またはその成分を発現させることができる、複数の免疫調節タンパク質をコードするプラスミドベクター構築物を提供する。
【解決手段】式P-A-T-A´によって表される構造を含み、対象における肺の癌増殖を現象させるために使用され、少なくとも1つの腫瘍内電気穿孔パルスを使用して、対象の腫瘍に送達するために調合される、核酸。式中、Pは発現プロモーターであり、AおよびA´はIL-12サブユニットをコードし、Tは、Tは翻訳修飾エレメントである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式P-A-T-A´によって表される発現カセットを含む、発現プラスミド。
式中、
a)Pは発現プロモーターであり、
b)AはIL-12p35をコードし、
c)A´はIL-12p40をコードし、
d)Tは2Aリボソームスキップ調節因子をコードする。
【請求項2】
Pは、ヒトCMVプロモーター、サルCMVプロモーター、SV-40プロモーター、mPGKプロモーター、及びβアクチンプロモーターからなる群から選択される、請求項1に記載の発現プラスミド。
【請求項3】
前記A-T-A´が、配列番号5、配列番号6、または配列番号7の核酸配列を含む、請求項1または2に記載の発現プラスミド。
【請求項4】
式P-A-T-A´-T-Bまたは式P-B-T-A-T-A´によって表される発現カセットを含む、発現プラスミド。
式中、
a)Pは発現プロモーターであり、
b)AはIL-12p35をコードし、
c)A´はIL-12p40をコードし、
d)Bは少なくとも1つの腫瘍抗原と融合した少なくとも1つの遺伝子アジュバントをコードし、前記遺伝子アジュバントは、Flt3リガンド、LAMP-1、ヒトヒートショックタンパク質96、GM-CSF、及びCSF1受容体からなる群から選択され、
e)Tは翻訳修飾エレメントである。
【請求項5】
Pは、ヒトCMVプロモーター、サルCMVプロモーター、SV-40プロモーター、mPGKプロモーター、及びβアクチンプロモーターからなる群から選択される、請求項4に記載の発現プラスミド。
【請求項6】
前記翻訳修飾エレメントは、2Aリボソームスキップ調節因子及び内部リボソーム進入部位(IRES)からなる群から選択される、請求項4または5に記載の発現プラスミド。
【請求項7】
前記遺伝子アジュバントは、前記Flt3リガンドである、請求項4~6のいずれかに記載の発現プラスミド。
【請求項8】
前記抗原は、NYESO-1抗原、OVA抗原、RNEU抗原、MAGE-A1抗原、MAGE-A2抗原、Mage-A10抗原、SSX-2抗原、Melan-A抗原、MART-1抗原、チロシナーゼ抗原、Gp100抗原、LAGE-1抗原、サバイビン抗原、hTERT抗原、PRS pan-DR抗原、B7-H6抗原、HPV E7抗原、HPV16 E6/E7抗原、HPV11 E6抗原、HPB6b/11 E7抗原、インフルエンザ HA抗原、インフルエンザ NA抗原、ポリオーマウイルス抗原、CEAペプチドCAP-1抗原、HCV-NS3抗原、及びHPVワクチンペプチドからなる群から選択される、請求項7に記載の発現プラスミド。
【請求項9】
前記A-T-A´が、配列番号5、配列番号6、または配列番号7の核酸配列を含む、請求項4~8のいずれかに記載の発現プラスミド。
【請求項10】
対象における腫瘍を治療するために使用され、
少なくとも1つの腫瘍内電気穿孔パルスを使用して、腫瘍内に送達される、請求項1~9のいずれかに記載の発現プラスミド。
【請求項11】
前記腫瘍内電気穿孔パルスは200V/cm~1500V/cmの電界強度を有する、請求項10に記載の発現プラスミド。
【請求項12】
前記対象はヒトである、請求項10に記載の発現プラスミド。
【請求項13】
前記腫瘍は、メラノーマ、トリプルネガティブ乳癌、メルケル細胞癌、CTCL、及び頭頸部扁平上皮癌からなる群から選択される、請求項10に記載の発現プラスミド。
【請求項14】
前記腫瘍内電気穿孔パルスは、電気化学インピーダンス分光法が可能な発生装置によって送達される、請求項10に記載の発現プラスミド。
【請求項15】
式P-A-T-Bによって表される発現カセットを含む、発現プラスミド。
式中、
a)Pは発現プロモーターであり、
b)Aは免疫刺激性サイトカインをコードし、
c)Bは少なくとも1つの抗原と融合した遺伝子アジュバントをコードし、
d)Tは翻訳修飾エレメントである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書とともに電子的に提出される配列表もまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる(ファイル名:OM1507WO01-SEQLIST.txt、作成日:2016年12月16日、ファイルサイズ:41KB)。
【0002】
本発明は、治療的に活性な多量体ポリペプチドの各鎖をコードする少なくとも2つの遺伝子の腫瘍内送達のための組換え発現ベクターに関する。多量体をコードする各核酸鎖は、少なくとも1つの翻訳調節エレメントによって分離される。治療用ポリペプチド及び追跡抗原をコードする追加の遺伝子は、核酸鎖に対する追加の翻訳修飾因子を使用して、または発現ベクター内の別個の遺伝子として、追加することができる。
【背景技術】
【0003】
E.coliプラスミドは、長い間、研究者及び産業によって用いられる組換えDNA分子の重要な源であった。今日、プラスミドDNAは、次世代のバイオテクノロジー産物(例えば、遺伝子医薬品及びDNAワクチン)が、臨床試験及び最終的には医薬品市場に進出するにつれて、ますます重要性が高まっている。発現プラスミドDNAは、治療が必要とされる患者の部位、例えば、腫瘍に治療タンパク質を送達するためのビヒクルとしての用途を見出し得る。
【0004】
この「腫瘍内送達」は、しばしば腫瘍微小環境への免疫調節物質の送達を含む。近頃、免疫療法は、手術、化学療法、及び放射線療法に続く第4の方法として注目を集めている。免疫療法はヒトに本来備わっている免疫を用いるため、免疫療法における患者の体への負担は他の治療法よりも少ないと言われている。免疫療法として知られる治療手法は、例えば、種々の方法を用いた増殖培養によって外因的に誘導した細胞傷害性Tリンパ球(CTL)または末梢血リンパ球から得られたリンホカイン活性化細胞、ナチュラルキラーT細胞、またはγδT細胞等の細胞が移入される細胞移入療法;抗原特異的CTLのin vivo誘導が予想される樹状細胞移入療法またはペプチドワクチン療法;Th1細胞療法;及び上記細胞をin vivoで移入するために種々の効果を有すると予想される遺伝子がそれらにex vivoで導入される免疫遺伝子療法を含む。これらの免疫療法において、CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞が重要な役割を果たすことが従来知られている。
【0005】
In vivo電気穿孔は、多くの異なる組織へのプラスミドDNAの効率的な送達のために成功裏に用いられてきた遺伝子送達技術である。研究によって、B16メラノーマ及び他の腫瘍組織へのプラスミドDNAの送達のためのin vivo電気穿孔の実施が報告されている。プラスミドによってコードされる遺伝子またはcDNAの全身または局所発現は、in vivo電気穿孔の実施によって得ることができる。in vivo電気穿孔の使用は、腫瘍組織におけるプラスミドDNAの取り込みを増強させて腫瘍内に発現をもたらし、筋肉組織にプラスミドを送達して全身的なサイトカインの発現をもたらす。
【0006】
電気穿孔は、プラスミドDNAを用いて細胞をin vivoでトランスフェクトするために使用できることが示されている。最近の研究により、電気穿孔は抗腫瘍剤としてのプラスミドDNAの送達を増強できることが示された。電気穿孔は、げっ歯類モデルにおいて、肝細胞癌、腺癌、乳腺腫瘍、扁平上皮癌、及びB16.F10メラノーマの治療のために実施されてきた。B16.F10マウスメラノーマモデルは、組換えタンパク質としての、または遺伝子療法による、サイトカインを含む免疫調節分子の送達のための潜在的な免疫療法プロトコルを試験するために広く使用されている。
【0007】
当該技術分野で既知の種々のプロトコルは、癌の治療のためにin vivo電気穿孔を用いて免疫調節タンパク質をコードするプラスミドの送達に用いることができる。当該技術分野で既知のプロトコルは、低電圧電流及び長パルス電流を用いて、腫瘍内及び筋肉内の両方で、in vivo電気穿孔によって媒介されるサイトカインに基づく遺伝子療法を説明する。
【0008】
癌免疫サイクルの種々の段階に関与する併用免疫療法は、より幅広い患者集団において改善された有効性を提供し得る相乗効果により、腫瘍細胞が免疫系による排除を回避する複数の機構を標的とすることによって免疫エスケープを回避する能力を増強し得る。しばしば、これらの併用治療用の免疫調節タンパク質は、1つ以上のホモまたはヘテロ二量体鎖を含む複雑な分子であり、例えば、遺伝子アジュバント及び共通の腫瘍抗原をコードする融合タンパク質IL-12またはIL-15/IL-15Rαである。治療薬としての複数のタンパク質の投与は、複雑かつ高価である。発現プラスミドを用いた複数のコードされたタンパク質の腫瘍内送達の使用は、より単純かつより費用効率が高い。しかしながら、現在の発現プラスミド構築物は、各免疫調節タンパク質の十分な産生の必要性に対応していない。本発明は、適切に配置されたプロモーター及び翻訳修飾因子を用いて複数の免疫調節物質をコードする発現プラスミドを提供することにより、この必要性に対応する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、a)Pは発現プロモーターであり、b)A及びBは免疫調節分子をコードし、c)Tは翻訳修飾エレメントである、式P-A-T-Bによって定義される複数の発現カセットを含む発現プラスミド構築物を提供する。特定の実施形態において、Pは、ヒトCMVプロモーター、サルCMVプロモーター、SV-40、mPGK、及びβアクチンからなる群から選択され、免疫調節分子は、免疫刺激性サイトカイン、及び少なくとも1つの抗原と融合した遺伝子アジュバントからなる群から選択される。
【0010】
本発明は、a)Pは発現プロモーターであり、b)A及びA´はヘテロ二量体サイトカインの鎖であり、c)Bは少なくとも1つの抗原と融合した少なくとも1つの遺伝子アジュバントであり、d)Tは翻訳修飾エレメントである、式P-A-T-A´-T-Bによって定義される複数の発現カセットを含む発現プラスミドを提供する。特定の実施形態において、Pは、ヒトCMVプロモーター、サルCMVプロモーター、SV-40、mPGK、及びβアクチンからなる群から選択され、ヘテロ二量体サイトカインは、IL-12、IL-15、IL-23、及びIL-27からなる群から選択され、Aは、IL-12p35、IL-23p19、EBI3、IL-15からなる群から選択され、A´は、IL-12p40、IL-27p28、及びIL-15Rαからなる群から選択され、翻訳修飾エレメントは、P2Aファミリーメンバー及びIRESからなる群から選択され、遺伝子アジュバントは、Flt3リガンド、LAMP-1、カルレティキュリン、ヒトヒートショックタンパク質96、GM-CSF、及びCSF1受容体からなる群から選択され、抗原は、NYESO-1、OVA、RNEU、MAGE-A1、MAGE-A2、Mage-A10、SSX-2、Melan-A、MART-1、Tyr、Gp100、LAGE-1、サバイビン、PRS pan-DR、CEAペプチドCAP-1、OVA、HCV-NS3、及びHPVワクチンペプチドからなる群から選択される。
【0011】
本発明は、Pは発現プロモーターであり、Aは少なくとも1つの抗原と融合した少なくとも1つの遺伝子アジュバントであり、B及びB´はヘテロ二量体サイトカインの鎖であり、Tは翻訳修飾エレメントである、式P-A-T-B-T-B´によって定義される複数の発現カセットを含む発現プラスミドを提供する。特定の実施形態において、Pは、ヒトCMVプロモーター、サルCMVプロモーター、SV-40、mPGK、及びβアクチンからなる群から選択され、ヘテロ二量体サイトカインは、IL-12、IL-15、IL-23、及びIL-27からなる群から選択され、Aは、IL-12p35、IL-23p19、EBI3、IL-15からなる群から選択され、A´は、IL-12p40、IL-27p28、及びIL-15Rαからなる群から選択され、翻訳修飾エレメントは、P2Aファミリーメンバー及びIRESからなる群から選択され、遺伝子アジュバントは、Flt3リガンド、LAMP-1、カルレティキュリン、ヒトヒートショックタンパク質96、GM-CSF、及びCSF1受容体からなる群から選択され、抗原は、NYESO-1、OVA、RNEU、MAGE-A1、MAGE-A2、Mage-A10、SSX-2、Melan-A、MART-1、Tyr、Gp100、LAGE-1、サバイビン、PRS pan-DR、CEAペプチドCAP-1、OVA、HCV-NS3、及びHPVワクチンペプチドからなる群から選択される。
【0012】
本発明は、少なくとも1つの腫瘍内電気穿孔パルスを使用して、式P-A-T-A´-T-BまたはP-A-T-B´-T-B´のいずれかの発現プラスミドを腫瘍内に送達することを含む、対象における腫瘍を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、腫瘍内電気穿孔パルスは約200V/cm~1500V/cmの電界強度を有し、対象はヒトであり、腫瘍は、メラノーマ、トリプルネガティブ乳癌、メルケル細胞癌、CTCL、頭頸部扁平上皮癌からなる群から選択され、電気穿孔パルスは、電気化学インピーダンス分光法が可能な発生装置によって送達される。
【0013】
本発明は、a)Pは発現プロモーターであり、b)A及びA´は免疫調節分子のサブユニットをコードし、c)Tは翻訳修飾配列である、式P-A-T-A´によって定義される複数の発現カセットを含む発現プラスミド構築物を提供する。特定の実施形態において、Pは、ヒトCMVプロモーター、サルCMVプロモーター、SV-40、mPGK、及びβアクチンからなる群から選択され、Aは、IL-12p35、IL-23p19、EBI3、IL-15からなる群から選択され、A´は、IL-12p40、IL-27p28、及びIL-15Rαからなる群から選択され、Tは、P2A及びIRESからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】pOMI2AにおけるヒトIL-12及びP2Aのプラスミドマップを示す。
【
図2】pOMI2AにおけるヒトIL-15/IL-15Ra及びP2Aのプラスミドマップを示す。
【
図3A】2つより多くの免疫調節性遺伝子カセットにおける、OMI2x2A:プロモーター1+遺伝子カセットA+P2A+遺伝子カセットB+P2A+遺伝子カセットB´を示す。
【
図3B】2つより多くの免疫調節性遺伝子カセットにおける、OMI2x2A´:プロモーター1+遺伝子カセットA+P2A+遺伝子カセットA´+P2A+遺伝子カセットBの発現のためのベクターのプラスミドマップを示す。
【
図4】(A)ELISAによって測定されたpOMI2A-hIL-12及びpOMIIRES-hIL-12でトランスフェクトした細胞のタンパク質発現レベルを示す。(B)末梢血単核球(PBMC)上のpOMIIRES-hIL-12と比較して、pOMI2A-hIL-12のトランスフェクションによって産生されたIL-12の増殖活性を示す。
【
図5】(A)ELISAによって測定されたpOMI2A-hIL-15/hIL-15Ra及びpOMI2A-IL-15/IL-15Ra-Fcでトランスフェクトした細胞のタンパク質発現レベルを示す。(B)pOMI2A-hIL-15/IL-15Ra及びpOMI2A-hIL-15/IL-15Ra-Fcのトランスフェクションによって産生されたhIL-15の初代ヒトCD8+T細胞の増殖活性を示す。
【
図6】HEK Blue受容体細胞を用いて測定された、OMIP2A-IL12-Flt3L-NYESO1ベクターから発現した分泌IL-12 p70ヘテロ二量体を含有する活性組織培養細胞馴化培地を示す。対照(中和抗IL12抗体の添加;非トランスフェクト細胞からの馴化培地)は、破線で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」等の単数形の語は、文脈上明らかに別段の指示のない限り、それらの対応する複数形の指示対象を含む。
【0016】
本明細書に引用される全ての参考文献は、各個々の刊行物、特許出願、または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
I.定義
【0018】
分子の「活性」は、リガンドまたは受容体への分子の結合、触媒活性、遺伝子発現を刺激する能力、抗原活性、他の分子の活性の調節等を説明または指すことができる。分子の「活性」はまた、細胞間の相互作用、例えば接着を調節または維持する際の活性、細胞の構造、例えば細胞膜または細胞骨格を維持する際の活性も指すことができる。「活性」はまた、比活性、例えば、[触媒活性]/[mgタンパク質]、または[免疫学的活性]/[mgタンパク質]等も意味し得る。
【0019】
本明細書で使用される「翻訳調節(修飾)エレメント」または「翻訳修飾因子」は、新生ポリペプチド鎖のピコルナウイルス由来配列が次のアミノ酸との共有結合的アミド結合を防止する、特定の翻訳開始因子またはリボソームスキップ調節因子を意味する。この配列の組込みにより、ヘテロ二量体タンパク質の各鎖と等モルレベルの翻訳されたポリペプチドとの共発現がもたらされる。限定されないが、P2A、T2A、E2A、またはF2Aを含むリボソームスキップ調節因子の2Aファミリーが企図され、これらは全てPG/P切断部位(表5を参照のこと)及び内部リボソーム進入部位(IRES)を共有する。
【0020】
本発明によれば、従来の分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技術が当該技術分野の技術内で用いられ得る。そのような技術は文献において説明される。例えば、Sambrook,Fritsch&Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(本明細書では「Sambrookら、1989」);DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.(1985));Transcription And Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins,eds.(1984));Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986));Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,(1986));B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubel,et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.(1994)を参照されたい。
【0021】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、または「核酸分子」は、DNAまたはRNAを含む。例えば、本発明のある実施形態において、ポリヌクレオチドは環状プラスミドpOMI2Aである。
【0022】
「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」、または「ヌクレオチド配列」は、DNAまたはRNA等の核酸中の一連のヌクレオチドであり、2つ以上のヌクレオチドの任意の鎖を意味する。
【0023】
「コード配列」、またはRNAもしくはペプチド等の発現産物(例えば、免疫グロブリン鎖)を「コードする」配列は、発現させたときに該産物の産生をもたらすヌクレオチド配列である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、遺伝子、mRNA、cDNA、または該当する他の核酸をコードするゲノムDNA分子、cDNA分子、またはmRNA分子にハイブリダイズ可能であり得る、一般的に約300ヌクレオチド以下(例えば、30、40、50、60、70、80、90、150、175、200、250、または300個)の核酸を指す。オリゴヌクレオチドは、通常は一本鎖であるが、二本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは、例えば、32P-ヌクレオチド、3H-ヌクレオチド、14C-ヌクレオチド、35S-ヌクレオチド、またはビオチン等の標識が共有結合的にコンジュゲートしたヌクレオチドの組込みによって標識され得る。一実施形態において、標識されたオリゴヌクレオチドは、核酸の存在を検出するためのプローブとして使用され得る。別の実施形態において、オリゴヌクレオチド(それらの一方または両方が標識され得る)は、遺伝子の全長もしくは断片をクローニングするための、または核酸の存在を検出するためのPCRプライマーとして使用され得る。一般に、オリゴヌクレオチドは人工的に、例えば、核酸合成装置上で調製される。
【0025】
「タンパク質配列」、「ペプチド配列」もしくは「ポリペプチド配列」、または「アミノ酸配列」は、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチド中の一連の2つ以上のアミノ酸を指す。
【0026】
「タンパク質」、「ペプチド」、または「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の連続する鎖を含む。
【0027】
「単離されたポリヌクレオチド」または「単離されたポリペプチド」という用語は、通常、細胞もしくは組換えDNA発現系に見られる他の成分、または任意の他の混入物から部分的または完全に分離された、ポリヌクレオチド(例えば、RNAもしくはDNA分子、または混合重合体)またはポリペプチドをそれぞれ含む。これらの成分は、限定されないが、細胞膜、細胞壁、リボソーム、ポリメラーゼ、血清成分、及び外来性ゲノム配列を含む。
【0028】
単離されたポリヌクレオチド(例えば、pOMI2A)またはポリペプチドは、好ましくは、本質的に均一な分子の組成物であるが、ある程度の不均一性を含んでもよい。
【0029】
「宿主細胞」という用語は、細胞による物質の産生、例えば、細胞による遺伝子、ポリヌクレオチド(環状プラスミド(例えば、pOMI2A)等)、またはRNAもしくはタンパク質の発現もしくは複製のために、任意の様式で選択、修飾、トランスフェクト、形質転換、成長、または使用もしくは操作される任意の生物の任意の細胞を含む。例えば、宿主細胞は、pOMI2Aプラスミドを維持することができ、また本発明のある実施形態において、プラスミド中のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、例えば、免疫グロブリン鎖の発現を促進することができる、哺乳類細胞もしくは細菌細胞(例えば、E.coli)、また任意の単離された細胞であり得る。
【0030】
pOMI2A等の本発明のベクターは、当該技術分野で既知の多くの技術のいずれか、例えば、デキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔、リン酸カルシウム共沈、リポフェクション、核内へのベクターの直接マイクロインジェクション、または所与の宿主細胞の種類に適した任意の他の手段に従って宿主細胞に導入され得る。
【0031】
「カセット」または「発現カセット」は、例えば、定められた制限部位でベクターに挿入され得る、発現産物(例えば、ペプチドまたはRNA)をコードするDNAコード配列またはDNAの断片を指す。発現カセットは、DNAコード配列に連結されたプロモーター及び/またはターミネーター及び/またはポリAシグナルを含み得る。
【0032】
一般に、「プロモーター」または「プロモーター配列」は、(例えば、直接的に、または他のプロモーター結合タンパク質もしくは物質を介して)細胞内でRNAポリメラーゼに結合してコード配列の転写を開始することができるDNA制御領域である。プロモーター配列は、一般に、その3´末端に転写開始部位が結合し、任意のレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基または元素を含むように上流(5´方向)に伸長する。プロモーター配列内には、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1を用いたマッピングによって好都合に定義される)、及びRNAポリメラーゼの結合に寄与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)を見ることができる。プロモーターは、エンハンサー及びリプレッサー配列を含む他の発現制御配列と、または発現されるべき核酸と、作動可能に会合もしくは作動可能に連結され得る。発現制御配列は、前記プロモーターからの発現を制御する場合、プロモーターと作動可能に会合もしくは作動可能に連結される。
【0033】
遺伝子発現を制御するために使用され得るプロモーターは、限定されないが、SRαプロモーター(Takebe et al.,Molec.and Cell.Bio.8:466-472(1988))、ヒトCMV最初期プロモーター(Boshart et al.,Cell 41:521-530(1985);Foecking et al.,Gene45:101-105(1986))、マウスCMV最初期プロモーター、SV40初期プロモーター領域(Benoist et al.,Nature 290:304-310(1981))、Orgyia pseudotsugata最初期プロモーター、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441-1445(1981))、メタロチオネイン遺伝子の制御配列(Brinster et al.,Nature 296:39-42(1982));原核生物発現ベクター、例えばβ-ラクタマーゼプロモーター(Villa-Komaroff et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727-3731(1978))、またはtacプロモーター(DeBoer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21-25(1983));及び酵母または他の真菌に由来するプロモーターエレメント、例えば、GAL1、GAL4、またはGAL10プロモーター、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーターまたはアルカリホスファターゼプロモーターを含む。
【0034】
ウイルス長末端反復プロモーター、例えば、マウス乳房腫瘍ウイルス長末端反復(MMTV-LTR)(Fasel et al.,EMBO J.1(1):3-7(1982))、モロニーマウス肉腫ウイルス長末端反復(Reddy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(9):5234-5238(1980))、モロニーマウス白血病ウイルス長末端反復(Van Beveren et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(6):3307-3311(1980))、HIV LTR(Genbank受託番号AB100245)、ウシ泡沫状ウイルスLTR(Genbank受託番号NC-001831)、RSV5´-LTR(Genbank受託番号K00087)、HIV-2 LTR(Genbank受託番号NC-001722)、トリレトロウイルスLTR(Ju et al.,Cell 22:379-386(1980))、及びヒトヘルペスウイルスLTR(Genbank受託番号NC-001806)が、本発明のベクターに含まれ得る。
【0035】
他の許容されるプロモーターは、ヒト及びサルCMV5プロモーター、マウスCMVプロモーター、EF1αプロモーター、SV40プロモーター、肝特異的発現のためのハイブリッドCMVプロモーター(例えば、CMV最初期プロモーターをヒトα1-アンチトリプシン(HAT)もしくはアルブミン(HAL)プロモーターいずれかの転写プロモーターエレメントとコンジュゲートすることによって作製される)、または肝癌特異的発現のためのプロモーター(例えば、ヒトアルブミン(HAL、約1000bp)もしくはヒトα1-アンチトリプシン(HAT、約2000bp)のいずれかの転写プロモーターエレメントが、ヒトα1-ミクログロブリン及びビクニン前駆体遺伝子(AMBP)の145bp長のエンハンサーエレメントと組み合わされる;HAL-AMBP及びHAT-AMBP)を含む。表1は、用いられ得るプロモーターの例を提供する。
【0036】
【0037】
単一のプラスミド構築物上の1つ以上のプロモーターが、1つ以上の発現カセットの発現を駆動するために用いられ得る。
【0038】
さらに、細菌プロモーター、例えば、T7 RNAポリメラーゼプロモーターまたはtacプロモーターが、発現を制御するために使用され得る。
【0039】
一実施形態において、プロモーターはヒトCMV(hCMV)プロモーターである。hCMVプロモーターは、様々な哺乳動物細胞種において高レベルの発現を提供する。
【0040】
細胞内の転写及び翻訳制御配列がコード配列の発現を誘導または制御する場合、コード配列は該配列の「制御下にある」、該配列に「機能的に会合される」、「作動可能に連結される」、または「作動可能に会合される」。例えば、遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターは、RNA、好ましくはmRNAへのコード配列のRNAポリメラーゼ媒介転写を誘導し、次いで、(それがイントロンを含有する場合)スプライシングされ得、また任意選択的に、コード配列によってコードされるタンパク質に翻訳され得る。遺伝子に作動可能に連結されたターミネーター/ポリAシグナルは、RNAへの遺伝子の転写を終結させ、RNA上へのポリAシグナルの付加を誘導する。
【0041】
「発現する」及び「発現」という用語は、遺伝子、RNA、またはDNA配列内の情報が顕在化されることを可能にするかまたは顕在化させることを意味し、例えば、対応する遺伝子の転写及び翻訳に関与する細胞機能を活性化することによりタンパク質を産生させることを意味する。「発現する」及び「発現」は、DNAからRNAへの転写及びRNAからタンパク質への転写を含む。DNA配列は細胞内でまたは細胞によって発現され、RNA(例えば、mRNA)またはタンパク質等の「発現産物」を形成する。発現産物自体も、細胞によって「発現される」と言える。
【0042】
「形質転換」という用語は、細胞への核酸の導入を意味する。導入された遺伝子または配列は、「クローン」と称され得る。導入されたDNAまたはRNAを受容する宿主細胞は、「形質転換」されており、「形質転換体」または「クローン」である。宿主細胞に導入されるDNAまたはRNAは、宿主細胞と同じ属もしくは種の細胞を含む任意の源に由来してもよいか、または異なる属もしくは種の細胞に由来してもよい。当該技術分野で非常によく知られている形質転換法の例として、リポソーム送達、電気穿孔、CaPO4形質転換、DEAE-デキストラン形質転換、マイクロインジェクション、及びウイルス感染が挙げられる。
【0043】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを含む。「ベクター」という用語は、宿主を形質転換するために、また任意選択的に、導入された配列の発現及び/または複製を促進するために、DNAまたはRNA配列が宿主細胞に導入され得るビヒクル(例えば、プラスミド)を指してもよい。
【0044】
本発明のポリヌクレオチドは、発現系において発現され得る。「発現系」という用語は、ベクターによって運搬され、宿主細胞に導入されるタンパク質または核酸を好適な条件下で発現することができる宿主細胞及び適合性ベクターを意味する。一般的な発現系は、E.coli宿主細胞及びプラスミドベクター、昆虫宿主細胞及びバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞及びベクター、例えば、プラスミド、コスミド、BAC、YAC、ならびにウイルス、例えばアデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス(AAV)を含む。
【0045】
「免疫刺激性サイトカイン」(単数または複数)という用語は、免疫応答を刺激する能力を有する免疫に関与する細胞によって自然に分泌されるタンパク質を指す。免疫刺激性サイトカインの例を表2A及び表2Bに提供する。
【0046】
本明細書で使用される「共通の腫瘍抗原を含有する遺伝子アジュバント」という句は、受容体チロシンキナーゼと表4に記載されるような既知の腫瘍抗原との融合タンパク質を指す。
【0047】
II.概要
【0048】
本発明は、in vivo細胞、特に腫瘍細胞のトランスフェクション後に複数のタンパク質の十分な発現を可能にする発現ベクターを提供する。
【0049】
有効性及び安全性を向上させるように設計された、本明細書に記載される変更点のいくつかまたは全部を含むベクターが提供される。ベクターの最適化は、適切なペプチドをコードする配列の組込み、及び遺伝子発現を最大化するための部位の微調整を含む。ペプチドは、サイズに関係なく、また、例えばグリコシル化及びリン酸化の場合のように、翻訳後修飾されているかどうかにかかわらず、任意の翻訳産物であると理解されたい。
【0050】
本発明は、翻訳制御エレメント、例えば、発現されるべき遺伝子配列に作動可能に連結されたP2Aを含む発現ベクターを提供する。特定の実施形態において、発現ベクターは、少なくとも2つの翻訳されるべき核酸配列を含み、翻訳制御エレメントは、翻訳されるべき配列のうちの少なくとも1つに作動可能に連結される。ベクターは、既知であるか、または当業者によって構築されてもよく、本明細書に後述する実施例に示されるような本発明の配列に加えて、配列の所望の転写を達成するために必要な全ての発現エレメントを含有する。ベクターは、それらの使用に応じて、原核生物または真核生物宿主系のいずれかに使用されるエレメントを含有する。当業者は、どの宿主系が特定のベクターに適合するかを知っている。
【0051】
組換え遺伝子の発現は、適切な遺伝子の転写及びメッセージの効率的な翻訳に依存する。これらのプロセスのいずれか一方を正しく行うことができないと、所与の遺伝子の発現が失敗に終わる可能性がある。単一のプラスミドから1つより多くの遺伝子を発現させる必要がある場合、これはさらに複雑になる。従来、発現されるべき遺伝子の間には内部リボソーム進入部位(IRES)が用いられていた。IRESは、それらのサイズのために、また第2の遺伝子の翻訳効率が第1の遺伝子よりもはるかに低いために限界がある。最近の研究により、ピコルナウイルスポリタンパク質2A(「P2A」)ペプチドの使用が、P2Aペプチドに隣接する複数のタンパク質の化学量論的発現をもたらすことが分かった(例えば、Kim et al(2011)PloS One 6:318556を参照のこと)。
【0052】
例えば、IL-12、IL-15/IL-15Ra、IL-23、IL-27等のヘテロ二量体タンパク質を含む多様な免疫調節物質、及び発現プラスミドに共通の腫瘍抗原を含有する遺伝子アジュバント、例えば、Flt3L-NYESO-1融合タンパク質の適切な組換え発現。これは、プラスミドがin vivo電気穿孔によって腫瘍に送達される(腫瘍内送達)場合に特に当てはまる。
【0053】
免疫刺激性サイトカインの例を表2Aに提供する。
【0054】
【0055】
【0056】
また、表2Bに記載されるような自然免疫制御因子も免疫刺激のために企図される。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
いくつかの研究によって、翻訳修飾因子は多量体タンパク質をコードする遺伝子の翻訳を効率的に駆動できることが示されている(例えば、Kim,et al.(2011)PloS ONE 6:1-8;Ibrahimi,et al.(2009)Human Gene Ther.20:845-860;Szymczak,et al.(2004)Nat.Biotechnol.22:589-594を参照されたい)。表5は、翻訳修飾因子の例を提供する。
【0062】
【0063】
III.デバイス及び使用
【0064】
本発明は、腫瘍内遺伝子の電気泳動転写に用途を見出す。具体的には、本発明のプラスミド構築物は、十分な濃度のいくつかの組換えによって発現させる免疫調節分子、例えば、多量体サイトカインまたは多量体サイトカインの組み合わせ、天然または遺伝子改変形態の共刺激分子、共通の腫瘍抗原を含有する遺伝子アジュバント等を作製するために使用することができる。組織、例えば、腫瘍内への本発明のプラスミド構築物の移入を達成するために、電気穿孔デバイスが用いられる。
【0065】
本発明の実施形態のデバイス及び方法は、ほんの一瞬から数日、数週、及び/または数ヶ月に及ぶ期間にわたって、腫瘍に連続的に及び/またはパルスで電気治療を送達することにより癌性腫瘍を治療するのに役立つ。好ましい実施形態において、電気治療は、直流電気治療である。
【0066】
本明細書で使用される「電気穿孔」(すなわち、細胞膜を透過性にすること)は、(例えば、治療薬、溶液、遺伝子、及び他の薬剤等の分子の生細胞への拡散を可能にするために)細胞膜に穴を開けるのに十分な任意の期間で患者に送達される任意の量のクーロン、電圧、及び/または電流によって引き起こされ得る。
【0067】
組織への電気治療の送達は、一連の生物学的及び電気化学的反応を引き起こす。十分に高い電圧では、電気治療の適用によって細胞構造及び細胞代謝が大幅に妨げられる。癌性細胞及び非癌性細胞の両方が、ある特定のレベルの電気治療で破壊されるが、腫瘍細胞は非癌性細胞よりもそれらの微小環境における変化に対する感受性が高い。多量原子及び微量原子の分布は電気治療の結果として変化する。電気穿孔付近の細胞の破壊は、不可逆的電気穿孔として知られている。
【0068】
可逆的電気穿孔の使用も企図される。可逆的電気穿孔は、電極を用いて印加される電力が標的組織の電界閾値未満である場合に行われる。印加される電力が細胞の閾値未満であるため、細胞はそれらのリン脂質二重層を修復して通常の細胞機能を継続することができる。可逆的電気穿孔は、典型的には、薬物または遺伝子(または通常は細胞膜透過性ではない他の分子)を細胞内に入れることを含む処置によって行われる(Garcia,et al.(2010)"Non-thermal irreversible for deep intracranial disorders".2010 Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology:2743-6)。
【0069】
単一電極構成において、癌性組織の破壊を開始するために、鉛電極と発電機筐体との間にわずか数秒から数時間電圧が印加され得る。所与の電圧の印加は一連のパルスであってもよく、各パルスはわずか数秒から数分持続する。特定の実施形態において、パルスの期間及び幅は、約~であり得る。また低電圧がわずか数秒から数分の期間印加されてもよく、それによって白血球を腫瘍部位に引き寄せることができる。このようにして、細胞媒介性免疫系は、死滅した腫瘍細胞を除去することができ、腫瘍細胞に対する抗体を発生させることができる。さらに、刺激された免疫系は、境界性腫瘍細胞及び転移を攻撃することができる。
【0070】
宿主種に応じて、限定されないが、フロイントアジュバント(完全及び不完全)、無機塩、例えば、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム、種々のサイトカイン、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルション、及び潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びCorynebacterium parvumを含む種々のアジュバントが、任意の免疫学的応答を高めるために使用され得る。代替として、免疫応答は、破傷風トキソイド、ジフテリア毒素、卵白アルブミン、コレラ毒素、またはそれらの断片等の分子と組み合わせることによって、及び/またはカップリングすることによって増強することができる。
【0071】
Draghia-Akliらによる米国特許第7,245,963号は、体内または植物内の選択された組織の細胞への生体分子の導入を促進するためのモジュール電極システム及びそれらの使用について記載している。モジュール電極システムは、複数の針電極;皮下針;プログラム可能な定電流パルスコントローラから複数の針電極に導電結合を提供する電気コネクタ;及び電源を備える。操作者は支持構造上に取り付けられた複数の針電極を把持し、体内または植物内の選択された組織内にそれらをしっかりと挿入することができる。次いで、生体分子が皮下針を介して選択された組織に送達される。プログラム可能な定電流パルスコントローラが起動され、定電流電気パルスが複数の針電極に印加される。印加される定電流電気パルスは、複数の電極間の細胞への生体分子の導入を促進する。米国特許第7,245,963号の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
米国特許出願公開第2005/0052630号は、体内または植物内の選択された組織の細胞への生体分子の導入を効果的に促進するために使用され得る電気穿孔デバイスについて記載している。電気穿孔デバイスは、その操作がソフトウェアまたはファームウェアによって特定される動電デバイス(「EKDデバイス」)を備える。EKDデバイスは、使用者の制御及びパルスパラメータの入力に基づいて、アレイの電極間に一連のプログラム可能な定電流パルスパターンを形成し、電流波形データの格納及び収集を可能にする。電気穿孔デバイスはまた、針電極のアレイを有する交換可能な電極ディスク、注射針のための中央注入チャネル、及び取り外し可能なガイドディスクも備える(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0052630号を参照のこと)。
【0073】
米国特許第7,245,963号及び米国特許出願公開第2005/0052630号に記載される電極アレイ及び方法は、筋肉等の組織だけではなく他の組織または器官の深部への侵入にも適合される。電極アレイの構成のために、電極によって予め輪郭が定められた領域内で、(選択された生体分子を送達するために)注射針も標的器官内に完全に挿入され、注射が標的組織に垂直に投与される。
【0074】
電気化学インピーダンス分光法(「EIS」)を組み込んだ電気穿孔デバイスも包含される。そのようなデバイスは、in vivoのリアルタイム情報、具体的には腫瘍内電気穿孔の効率を提供し、条件の最適化を可能にする。EISを組み込んだ電気穿孔デバイスの例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2016/161201に見出すことができる。
【0075】
他の代替の電気穿孔技術も企図される。In vivo プラスミド送達は、コールドプラズマを用いて行うこともできる。プラズマは、物質の4つの基本状態のうちの1つであり、その他は「固体」「液体」、及び「気体」である。プラズマは、未結合の正粒子及び負粒子からなる電気的に中性な媒体である(すなわち、プラズマの全体的な電荷はほぼゼロである)。プラズマは、気体を熱することによって、またはレーザーもしくは電磁波発生器によって印加される強電磁場に供することによって形成することができる。これによって電子の数を減少または増加させ、イオンと称される正または負の電荷を持つ粒子を形成し(Luo, et al.(1998)Phys.Plasma 5:2868-2870)、また存在する場合は分子結合の解離を伴う。
【0076】
コールドプラズマ(すなわち、非熱的プラズマ)は、好適な電極へのパルス状高電圧シグナルの送達によって生成される。コールドプラズマデバイスは、ガス噴射デバイスまたは誘電体バリア放電(DBD)デバイスの形態を取り得る。低温プラズマは、それらが比較的低いガス温度でプラズマを提供するという理由から非常に強い興味及び関心を集めてきた。そのような温度でのプラズマの提供は、創傷治癒、抗細菌処理、種々の他の医学療法及び滅菌法を含む様々な用途にとって興味深いものである。先に述べたように、コールドプラズマ(すなわち、非熱的プラズマ)は、好適な電極へのパルス状高電圧シグナルの送達によって生成される。コールドプラズマデバイスは、ガス噴射デバイス、誘電体バリア放電(DBD)デバイス、または多周波多調波電源の形態を取ることができる。
【0077】
誘電体バリア放電デバイスは、コールドプラズマを発生させるために異なるプロセスに依存する。誘電体バリア放電(DBD)デバイスは、誘電体層によって覆われた少なくとも1つの導電性電極を含む。電気帰還路は、コールドプラズマ処理を受ける標的基板によって提供され得る接地によって、または電極のための内蔵接地を提供することによって形成される。誘電体バリア放電デバイスのためのエネルギーは、上で述べたような高電圧電源によって提供され得る。より一般的に、エネルギーは、パルス状DC電圧の形態で誘電体バリア放電デバイスに入力され、プラズマ放電を形成する。誘電体層のために、放電は導電性電極及び電極エッチングから分離され、ガスの加熱が低減される。パルス状DC電圧は、様々な型の操作を達成するために振幅及び周波数が異なり得る。そのようなコールドプラズマ発生の原理を組み込んだ任意のデバイス(例えば、DBD電極デバイス)は、本発明の種々の実施形態の範囲内に属する。
【0078】
コールドプラズマは、外来核酸で細胞をトランスフェクトするために用いられてきた。具体的には、腫瘍細胞のトランスフェクションである(例えば、Connolly,et al.(2012)Human Vaccines&Immunotherapeutics 8:1729-1733;及びConnolly et al(2015)Bioelectrochemistry 103:15-21を参照されたい)。
【0079】
デバイスは、癌または他の非癌性(良性)増殖に罹患した患者における使用のために企図される。これらの増殖は、病変、ポリープ、新生物(例えば、乳頭状尿路上皮新生物)、パピローマ、悪性病変、腫瘍(例えば、クラッキン腫瘍、門部腫瘍、非侵襲性乳頭状尿路上皮腫瘍、胚細胞性腫瘍、ユーイング腫瘍、アスキン腫瘍、原発性神経外胚葉性腫瘍、ライディッヒ細胞腫、ウィルムス腫瘍、セルトリ細胞腫)、肉腫、細胞腫(例えば、扁平上皮癌、総排泄腔癌、腺癌、腺扁平上皮癌、胆管細胞癌、肝細胞癌、侵襲性乳頭状尿路上皮癌、平坦型尿路上皮癌)、塊、または任意の他の種類の癌性もしくは非癌性増殖のいずれかとして、それら自体で顕在化し得る。本発明の実施形態のデバイス及び方法を用いて治療される腫瘍は、非侵襲性、侵襲性、表在性、乳頭状、平坦型、転移性、局所性、単中心性、多中心性、低悪性度、及び高悪性度のいずれかであり得る。
【0080】
デバイスは、多数の種類の悪性腫瘍(すなわち、癌)及び良性腫瘍における使用のために企図される。例えば、本明細書に記載されるデバイス及び方法は、副腎皮質癌、肛門癌、胆管癌(例えば、肝外胆管癌、遠位胆管癌、肝内胆管癌)膀胱癌、良性及び癌性の骨癌(例えば、骨腫、類骨腫、骨芽細胞腫、骨軟骨腫、血管腫、軟骨粘液線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨巨細胞腫、脊索腫、リンパ腫、多発性骨髄腫)、脳癌及び中枢神経系癌(例えば髄膜腫、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣腫、神経膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、シュワン腫、胚細胞腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(例えば、乳管内上皮内癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性小葉癌、女性化乳房)、キャッスルマン病(例えば、巨大リンパ節過形成、血管濾胞性リンパ節過形成)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌(例えば、子宮内膜腺癌、腺棘細胞癌、乳頭状漿液性腺癌、明細胞)、食道癌、膀胱癌(粘液性腺癌、小細胞癌)、消化管カルチノイド腫瘍(例えば、絨毛癌、破壊性絨毛腺腫)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、カポジ肉腫、腎臓癌(例えば腎細胞癌)、咽頭癌及び下咽頭癌、肝臓癌(例えば血管腫、肝腺腫、限局性結節性過形成、肝細胞癌)、肺癌(例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔癌及び副鼻腔癌(例えば、感覚神経芽腫、正中線肉芽腫)、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌及び中咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(例えば胎児性横紋筋肉腫、胞巣状横紋筋肉腫、多形性横紋筋肉腫)、唾液腺癌、皮膚癌、メラノーマ性及び非メラノーマ性皮膚癌の両方(メルケル細胞癌を含む)、胃癌、精巣癌(例えば精上皮腫、非セミノーマ性胚細胞癌)、胸腺癌、甲状腺癌(例えば、濾胞状癌、未分化癌、低分化癌、甲状腺髄様癌、甲状腺リンパ腫)、膣癌、外陰癌、及び子宮癌(例えば、子宮平滑筋肉腫)における使用のために企図される。
【0081】
IV.併用療法
【0082】
免疫調節性タンパク質をコードするDNAの腫瘍内電気穿孔は、他の治療実体とともに施行され得ることが企図される。表6は可能性のある組み合わせを提供する。併用療法の施行は、電気穿孔単独によって、または電気穿孔と全身送達との組み合わせによって達成され得る。
【0083】
【0084】
【0085】
本発明の広範な範囲は、以下の実施例を参照すると最良に理解されるが、それらは本発明を特定の実施形態に限定するものではない。
【0086】
実施例
【0087】
I.一般的方法
【0088】
分子生物学における標準的な方法が記載されている。Maniatis et al.(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,Calif。また、標準的な方法はAusbel et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,N.Y.にも見られ、細菌細胞及びDNA変異誘発におけるクローニング(Vol.1)、哺乳動物細胞及び酵母のクローニング(Vol.2)、複合糖質及びタンパク質発現(Vol.3)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)について記載している。
【0089】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、及び結晶化を含むタンパク質精製の方法が記載されている。Coligan et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、タンパク質のグリコシル化が記載されている。例えば、Coligan et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubel et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,Mo.;pp.45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照されたい。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の生成、精製、及び断片化が記載されている。Coligan et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Harlow and Lane(上記参照)。リガンド/受容体相互作用を特徴付けるための標準的技術が利用可能である。例えば、Coligan et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照されたい。
【0090】
蛍光標示式細胞分取検出系(FACS(登録商標))を含むフローサイトメトリーのための方法が利用可能である。例えば、Owens et al.(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,N.J.;Givan(2001)Flow Cytometry,2nd ed.;Wiley-Liss,Hoboken,N.J.;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,N.J.を参照されたい。例えば、診断試薬として使用するための、核酸プライマー及びプローブを含む核酸、ポリペプチド、ならびに抗体を修飾するのに適した蛍光試薬が利用可能である。Molecular Probes(2003)Catalogue, Molecular Probes,Inc.,Eugene,Oreg.;Sigma-Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,Mo。
【0091】
免疫系の組織学の標準的方法が記載されている。例えば、Muller-Harmelink(ed.)(1986)ヒトThymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,N.Y.;Hiatt,et al.(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,Pa.;Louis,et al.(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw-Hill,New York,N.Yを参照されたい。
【0092】
例えば、抗原断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能性ドメイン、グリコシル化部位、及び配列アライメントを決定するためのソフトウェアパッケージ及びデータベースが入手可能である。例えば、GenBank,Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,Md.);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,Calif.);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nev.);Menne et al.(2000)Bioinformatics 16:741-742;Menne et al.(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741-742;Wren et al.(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177-181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17-21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683-4690を参照されたい。
【0093】
II.ヒトIL-12 p35及びp40サブユニットのpOMI2Aへのサブクローニング
【0094】
pUMVC3骨格をAldevron(Fargo,ND)から購入した。hIL12p40にインフレームで連結された翻訳調節エレメントP2A(P2A-hIL12p40)をコードする1071bp DNA断片(遺伝子ブロック)をIDT(Coralville,IA)から購入した。Phusionポリメラーゼ(NEB、Ipswich MA、カタログ番号M0530S)を用いてp40遺伝子ブロックをPCR増幅し、標準的な制限酵素対及びT4 DNAリガーゼ(Life Technologies,Grand Island NY、カタログ番号15224-017)を用いてCMVプロモーター/エンハンサー下流のpUMVC3にライゲートした。制限酵素消化によりP2A-hIL12p40/pOMI2Aの陽性クローンを同定し、DNA配列決定により確認した。
【0095】
ヒトp35は、クローニングを容易にするために内部BamH1、BglII、及びXba1部位を除去した789bp遺伝子ブロックとしてIDT(Coralville IA)に注文した。p35遺伝子ブロックを前述のようにPCR増幅し、P2A-hIL12p40/pOMI2Aにおいてp40遺伝子ブロックの上流にライゲートした。制限酵素消化によりhIL12p35-P2A-p40/pOMI2Aの陽性クローンを同定し、DNA配列決定により確認した。
【0096】
他のヘテロ二量体サイトカイン、一本鎖サイトカイン、または自然免疫制御因子(表2A、2B)を、IL-12と類似したpOMI2Aベクターにクローニングした。
【0097】
III.IL-15-P2A-IL-15RαのpOMI2Aへのサブクローニング
【0098】
翻訳調節エレメントP2Aにインフレームで一緒に連結されたhIL15及びhIL15Rαをコードする1384bp遺伝子ブロックをIDTに注文した。遺伝子ブロックを前述のようにPCR増幅し、pOMI2Aにライゲートした。制限酵素消化により陽性クローンを同定し、DNA配列決定により確認した。
【0099】
活性の増加を示すIL-15の変異体形態も、前述のようにpOMI2Aベクターにサブクローニングした(例えば、Zhu,et al.(2009)J.Immunol.183:3598を参照のこと)。
【0100】
IV.IL-15-P2A-IL-15Rα-IgG1FcのpOMI2Aへのサブクローニング
【0101】
ヒトIgG1 Fc配列決定をコードする708bp DNA遺伝子ブロックをIDTに注文した。遺伝子ブロックを前述のようにPCR増幅し、pOMI2AにおいてIL-15-P2A-IL-15Rαの下流にライゲートした。次に、IL15RaとFcの間の停止部位をQuikChange変異誘発反応(Agilent Technologies,La Jolla CA、カタログ番号200521)により除去した。最後に、完全IL15-P2A-IL15Rα-IgG1Fc配列をPCR増幅し、pOMI2Aに再びライゲートした。
【0102】
V.INFγのpOMI2Aへのサブクローニング
【0103】
全長ヒトINFγコード配列をコードする501bp DNA遺伝子ブロックをIDTに注文した。遺伝子ブロックを前述のようにPCR増幅し、pUMVC3(Aldeveron)にライゲートした。制限酵素消化により陽性クローンを同定し、DNA配列決定により確認した。最後に、IFNγインサートをPCR増幅し、種々のpOMI2Aベクターにライゲートした。
【0104】
VI.FLT3L-抗原融合タンパク質構築物の作製
【0105】
FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L)は、T細胞の優先的提示のために抗原提示細胞(APC)に抗原を誘導することが示されている(Kim et al.Nat Comm. 2014,Kreiter et al.,Cancer Res.2011,71:6132)。Flt3Lから分泌された可溶性の形態は、様々なタンパク質またはペプチド抗原に融合される(表4:Kim et al.Nat Comm.2014)。FLT3L-NY-ESO-1融合タンパク質構築物を作製するための例示的なプロトコルが示される。
【0106】
各々が、IgKシグナルペプチド配列に続いて、Flt3LのECD、短いヒンジ領域、及びNY-ESO-1抗原の3つの異なるセグメントを含有する3つの遺伝子ブロックをIDTから得た。PCRを用いて隣接する制限部位を加え、これらの3つの融合タンパク質構築物をpUMVC3(配列番号17~22)に導入した。マウスにおける前臨床試験のために、Flt3Lも卵白アルブミン遺伝子(配列番号24)由来のSIINFEKLペプチド抗原を含有する3つのペプチドのコンカテマーに融合した。pUMVC3から、3つの融合構築物がpOMI-2x2Aに導入される(後述する)。
【0107】
同じ方法を用いて、ウイルス抗原を使用して代替の融合タンパク質(表4)が構築される。
【0108】
同じ方法を用いて、全長カルレティキュリンを含む代替の融合タンパク質(表3)が構築される。
【0109】
同定された共通の腫瘍抗原に加えて、患者特異的ネオ抗原を同定することができ、その患者に合わせた免疫原性ペプチド抗原を腫瘍内電気穿孔を介した個別化療法のためにFlt3Lに融合することができる(例えば、Beckhove et al.,J.Clin.Invest.2010,120:2230を参照のこと)。
【0110】
全ての免疫調節性タンパク質の型は、マウス相同配列を用いて並行して構築され、前臨床試験に使用される。
【0111】
VII.単一転写物から3つのタンパク質を発現させるためのOMI-2x2Aの作製
【0112】
ベクターの概略図を
図3に示す。単一の多シストロン性メッセージから3つ全てのタンパク質を発現させることができるようにエクソンスキップモチーフを介在させて、同じプロモーターから3つ全ての遺伝子を発現させる。
【0113】
例示的なサブクローニングプロトコルがIL-12ヘテロ二量体サイトカイン及びFlt3L-NY-ESO-1について示される。FLT3L-NYESO-1をコードするDNA遺伝子ブロック(IDT)を上流P2A部位及び隣接する制限部位を用いてPCR増幅し、hIL-12p40の下流にライゲートした。Quikchange変異誘発(Agilent、Santa Clara,USA)を行ってp40の停止部位3´を欠失させた。制限酵素消化により陽性クローンを同定し、DNA配列決定により確認した。
【0114】
同じ方法を用いて、既に多シストロン性メッセージ内に存在する3つの遺伝子の上流または下流のいずれかに第4の遺伝子を加えることができる。
【0115】
XIII.ELISA
【0116】
製造業者の推奨に従ってTransIT LT-1(Mirus、Madison WI,カタログ番号MIR 2300)を使用して、OMI2A-IL-12及びOMI2A-IL-15/IL-15R、ならびにOMI2x2A-IL12-Flt3L-NY-ESO-1のクローンをHEK293細胞にトランスフェクトした。2日後、上清を収集し、5分間3000rpmで回転させてあらゆる細胞片を除去した。清澄な上清を新しい試験管に移し、アリコートし、-86℃で凍結させた。複合体を特異的に検出するELISA(R&D Systems、Minneapolis MNカタログ番号DY1270,DY6924)を用いて、馴化培地中のhIL-12p70及びhIL15-IL15Rαヘテロ二量体タンパク質のレベルを定量化した。FLT3L-NYESO-1融合タンパク質のレベルを抗Flt3L抗体を用いてELISA(R&D Systems、Minneapolis MNカタログ番号DY308)により定量化した。
【0117】
pOMI2A-hIL-12及びpOMIIRES-hIL-12でトランスフェクトした細胞からのhIL-12p70の発現及び分泌の比較により、ELISAによって測定した場合、pOMI2A-hIL-12が、トランスフェクトされた細胞によって分泌された成熟ヘテロ二量体p70タンパク質のより高い発現レベルをもたらしたことが明らかになった(
図4A)。pOMI2A-hIL-15/IL-15Rα及びpOMI2A-hIL-15/IL-15RαFcドメインでトランスフェクトした細胞からの発現及び分泌をELISAにより測定し、
図5Aに示す。
【0118】
【0119】
XIX.ウェスタンブロットによるタンパク質の検出
【0120】
ウェスタンブロット法のために、Laemmli SDS試料緩衝液NuPAGE 4X LDS(ThermoFisher Scientific)を各試料に加え、100℃で10分間沸騰させ、試料を遠心分離した。23μのタンパク質+試料緩衝液をウェルごとにローディングし、最小量の標準液がゲルの底に達するまで150ボルトで約1時間ゲルを流した。ゲルタンパク質をPVDF膜に1時間100ボルトで転写し、1×TBSTですすぎ、次いで、TBST中の5%BSAを用いてロッカー上で1時間室温でブロックした。すすいだ膜をTBST+5%脱脂粉乳中に希釈したウサギ抗2Aペプチド抗体(EMD Millipore ABS031)または抗HA抗体(Cell Signaling、カタログ番号3724)で一晩インキュベートした。ブロットを西洋ワサビペルオキシダーゼ(BioRad、Hercules,California)にコンジュゲートしたロバ抗ウサギ二次抗体で1時間室温でインキュベートした。増強化学発光試薬(SuperSignal West Pico、ThermoFisher Scientific)を用いてブロットを展開し、デジタル画像システム(Protein Simple、San Jose,California)上でキャプチャした。Flt3L-OVA及びFlt3L-NY-ESO-1のためにプローブしたHEK293馴化上清のウェスタンブロットにより、これらの融合タンパク質が安定であり、分泌され、予想された分子量を有していたことが明らかになった。
【0121】
XX.In vitro機能アッセイ
【0122】
凍結ヒトPBMCをATCC(Manassas VA、カタログ番号PCS-800-011)から購入し、解凍し、10%FBS、1%P/S、50ng/mL組換えヒトIL-2及び10μg/mL PHA-Lを添加したRPMI 1640中で5日間前刺激した。次いで、乳白色の96ウェルプレートの3通りのウェルに細胞(2×104)を播種し、Il-12p35/p40ヘテロ二量体を含有するHEK293細胞培養上清の量を増加させながら、増殖培地(10%FBS及び1%P/Sを含有するRPMI 1640)中で72時間培養し、前述のようにELISAによりタンパク質濃度を決定した。非トランスフェクト細胞からの上清を陰性対照として用いた。CellTiter-Glo(Promega、Madison WI、カタログ番号G7570)を製造業者によって記載されるように1×に希釈し、100uLを各ウェルにピペット分注した。プレートを室温で10分間穏やかに振盪し、次いで、SpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale,CA)上で積分時間1秒で発光を読み取った。
【0123】
IL-12発現プラスミドを発現及び分泌するトランスフェクトしたHEK293細胞からの培養上清を細胞に加え、増殖応答を測定した。OMIIRES-hIL-12と比較して3倍高いOMIP2A-hIL-12の希釈係数を用いて、PBMC増殖に対する最大半量応答を得た(69244対19548)。相対的なp70タンパク質濃度を正規化したとき、2つのベクターから発現したIL-12p70は、ヒトPBMCにおいて細胞増殖を刺激する相当な能力を有していた(
図4B)。
【0124】
この結果は、pOMI2A-IL-12が、所与の用量のプラスミドから3倍高いIL-12媒介性T細胞増殖をもたらし得ることを示唆するものであった。
【0125】
ヒトCD8+T細胞をAllCells(Alameda CA、カタログ番号PB009-3)から購入し、10%FBS及び1%P/Sを含有するRPMI 1640に再懸濁し、次いで黒色の96ウェルプレートの3通りのウェルに播種した(ウェル当たり2×104細胞)。増加する量のIL15/IL15Ra含有HEK293細胞培養上清(前述のようにELISAによって決定される)を加え、細胞を3日間37℃、5%CO2で培養した。次いで、CellTiter-Blue(Promega、Madison WI、カタログ番号G8080)をウェルに加えた後、37℃で4時間インキュベートした。得られた蛍光シグナル(Ex 560/Em 590nm)をCytation 3プレートリーダー(Biotek、Winooski VT)上で読み取った。
【0126】
pOMI2A-IL-15/IL15Ra及びpOMI2A-IL-15/IL15Ra-Fcでトランスフェクトした細胞から発現したタンパク質はどちらも、初代ヒトCD8+T細胞における細胞増殖を刺激した(
図5B)。
【0127】
HEK-Blue細胞を用いて、pOMIP2A-IL12-Flt3L-NY-ESO-1を発現する細胞からの組織培養上清を機能的IL-12 p70の発現について試験した。これらの細胞は、ヒトIL-12受容体、及びSTAT4によって駆動されるアルカリホスファターゼの分泌形態を発現するように操作される。
【0128】
このレポーターアッセイは、製造業者のプロトコルに従って行われた(HEK-Blue IL-12細胞、InvivoGenカタログ番号hkb-il12)。分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)の発現は、製造業者のプロトコルに従って測定された(Quanti-Blue、InvivoGenカタログ番号rep-qbl)。
【0129】
OMIP2A多シストロン性ベクターから発現及び分泌したIL-1 p70タンパク質は、SEAPタンパク質の誘導において強い活性を示した(
図6)。この活性はrhIL-12タンパク質対照に匹敵し、IL-12抗体を中和することによってブロックされた(R&D systems;AB-219-NA)(
図6)。
【0130】
pOMIP2Aベクターから発現し、HEK293細胞の培養培地に分泌したヒトFlt3L及びFlt3L-NY-ESO-1融合タンパク質を、表面THP-1単核球細胞上で発現されるFLT3受容体への結合について試験した。
【0131】
Mirus TransIT LT-1を用いて、HEK細胞をpOMIP2A-hFlt3LまたはpOMIP2A-hFlt3L-NYESO-1(80-180aa)でトランスフェクトした。72時間後に上清を収集した。分泌FLT3Lタンパク質の量をhFlt3L ELISAを用いて定量化した(R&D Systems カタログ番号DY308)。
【0132】
THP-1単球細胞株をRPMI+10%FBS+1%P/S(ATCC、カタログ番号TIB-202)中で培養した。各実験ごとに、750,000個のTHP-1細胞をFc緩衝液(PBS+5%濾過FBS+0.1%NaN3)中で洗浄し、ヒトFcブロック(TruStain FcX、Biolegend 422301)で10分間プレインキュベートし、次いで、150ngの組換えhFlt3L-Fc(R&D Systems、カタログ番号AAA17999.1)、または150ngのhFlt3LもしくはhFlt3L-NYESO-1タンパク質を含有するHEK293馴化培地で1時間4℃でインキュベートした。次いで、細胞をFc緩衝液中で洗浄し、ビオチン化抗hFlt3L抗体(R&D Systems、カタログ番号BAF308)で1時間インキュベートした。次いで、細胞をFc緩衝液中で洗浄し、Strep-Tactin-Alexa Fluor-647 2oAbで1時間インキュベートした(ThermoFisher、番号S32357)。細胞を再び洗浄し、Guava 12HTサイトメータ(Millipore)をRed-Rチャネルで使用してフローサイトメトリーにより分析した。Flt3受容体を発現しないHEK293細胞も陰性対照として試験した。
【0133】
【0134】
90%を超えるTHP-1細胞が、pOMIP2Aベクターから発現したhFlt3L及びhFLT3L-NY-ESO-1融合タンパク質の両方で平均蛍光強度の増加を示したことから、これらの組換えタンパク質が細胞表面上のFlt3受容体に効率的に結合することが示唆される。
【0135】
組換えFlt3Lタンパク質の機能性をさらに調べるために、HEK293馴化培地を用いてマウス脾細胞における樹状細胞成熟の誘導について試験した。
【0136】
B16-F10腫瘍を担持するC58/BL6マウスから脾臓を切除した。無菌条件下で、脾臓をDMEM培地に入れて70ミクロンのセルストレーナー(Miltenyi)に通し、3mlシリンジからのプランジャのゴム先端部を使用して機械的に解離させた。脾臓が完全に解離してから、10%FBSを含むHBSS(PFB)10mlを使用してストレーナーを洗浄した。遠心分離機で10分間300xgでフロースルーを回転させて細胞をペレット化した。細胞をPFBで1回洗浄した。赤血球を製造業者の指示に従ってACK溶解緩衝液で溶解した(Thermo Fisher A1049201)。細胞を40ミクロンのセルストレーナーに通して15ml円錐管に濾過し、遠心分離機で300xgで回転させた。脾臓からの単一細胞懸濁液を完全RPMI-10培地に再懸濁した。150万個の脾細胞を12ウェルプレートに蒔き、約3時間プレートに接着させた。非接着細胞を除去し、マウスGMCSF(100ng/ml)及びマウスIL4(50ng/ml)を含有する2mlの完全RPMI-10培地を加えた。1週間2日置きに培地を交換した。接着樹状細胞は、3通りのウェルにおいて、1mlのHEK293馴化上清(100ng/mlのFlt3L-NY-ESO-1融合タンパク質を含有する)で7日間処置した。100ngの組換えヒトFlt-3リガンドタンパク質を陽性対照として比較した(R&D systems、AAA17999.1)。プレートから細胞を穏やかに剥離し、フローサイトメトリー分析によりCD11c+細胞の数を決定した。
【0137】
CD3(-)CD11c(+)樹状細胞の数を集計したとき、pOMIP2A-Flt3L-NYESO1プラスミドでトランスフェクトした細胞からの馴化培地は、非トランスフェクト細胞からの馴化培地を用いてインキュベートした脾細胞と比較してこれらの細胞の数に著しい増加をもたらした。
【0138】
この結果は、FLT3L-NY-ESO-1融合タンパク質が、マウス脾細胞においてFlt3受容体が媒介するex-vivoの樹状細胞の成熟を刺激するよう機能できることを示唆するものであった。
【0139】
XXI.マウス及び腫瘍
【0140】
Jackson Laboratoriesから6~8週齢の雌のC57Bl/6JまたはBalb/cマウスを得て、AALAMガイドラインに従って飼育した。
【0141】
10%FBS及び50ug/mlゲンタマイシンを添加したマッコイ5A培地(2mM L-グルタミン)でB16.F10細胞を培養した。0.25%トリプシンを用いたトリプシン処理により細胞を採取し、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)に再懸濁した。麻酔下のマウスには、総体積0.1ml中100万個の細胞を各マウスの右側腹部に皮下注射した。総体積0.1ml中50万個の細胞を各マウスの左側腹部に皮下注射した。8日目から開始して、平均腫瘍体積が約100mm3に達するまでデジタルノギスの測定により腫瘍増殖をモニタリングした。腫瘍が所望の体積を有する段階になってから、非常に大きいまたは小さい腫瘍を有するマウスを間引いた。残りのマウスを各10匹のマウスの群に分け、右側腹部に移植された腫瘍の体積により無作為化した。
【0142】
C57Bl/6JマウスにおけるB16OVA、ならびにBalb/cマウスにおけるCT26及び4T1を含むさらなる腫瘍細胞型を試験した。
【0143】
このプロトコルは、処置腫瘍(原発)及び未処置腫瘍(対側)に対する影響を同時に試験するための標準モデルとして用いられた。4T1腫瘍を担持するBalb/cマウスにおいて胚転移も定量化した。
【0144】
XXII.腫瘍内処置
【0145】
処置のためにマウスをイソフルランで麻酔した。環状プラスミドDNAを滅菌0.9%生理食塩水中で1ug/ulに希釈した。26ゲージ針付き1mlシリンジを使用して原発腫瘍の中心に50ulのプラスミドDNAを注射した。注射直後に電気穿孔を行った。DNAの電気穿孔は、1500V/cm、100μsのパルス、0.5cmの6針電極の臨床的電気穿孔パラメータを用いて、Medpulserを使用して達成した。使用された代替のパラメータは、BTX発電機、または前述のようなインピーダンス分光法を組み込んだ発電機のいずれかを使用する400V/cm、10ミリ秒のパルスであった。腫瘍体積を週に2回測定した。原発及び対側の総腫瘍負荷が2000mm3に達したときにマウスを安楽死させた。
【0146】
XXIII.腫瘍内発現
【0147】
IT-EP(350v/cm、8 10ミリ秒のパルス)の1日後、2日後、または7日後に、種々の時点で屠殺したマウスから腫瘍組織を単離し、導入遺伝子の発現を決定した。マウスから腫瘍を切除し、液体窒素中のクライオチューブに移した。凍結した腫瘍を300ulの溶解緩衝液(50mM TRIS pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、0.5%Triton X-100、プロテアーゼ阻害剤カクテル)を含む4ml試験管に移し、氷上に配置し、30秒間均質化した(LabGen 710ホモジナイザー)。ライセートを1.5ml遠心管に移し、10,000xgで10分間、4℃で回転させた。上清を新しい試験管に移した。回転及び移動手順を3回繰り返した。腫瘍抽出物は、製造業者の指示に従って直ちに分析するか(Mouse Cytokine/Chemokine Magnetic Bead Panel MCYTOMAG-70K、Millepore)、または-80℃で凍結させた。組換えFlt3L-OVAは、捕捉用抗Flt3L抗体(R&D Systems,Minneapolis MN カタログ番号DY308)及び以下の検出用抗体(ThermoFisher、カタログ番号PA1-196)を使用して標準的なELISAプロトコル(R&D systems)により行った。
【0148】
【0149】
我々のFlt3L-追跡抗原-融合タンパク質の発現及び機能について試験するために、マウスFlt3L(細胞外ドメイン)と卵白アルブミン遺伝子(配列番号25)由来ペプチドとの融合物をOMI2Aベクター中に構築し、前述のように腫瘍内で電気穿孔した。
【0150】
【0151】
種々の免疫調節タンパク質のマウス相同体を含有するpOMI2Aベクターの腫瘍内電気穿孔後、ELISAによって腫瘍ホモジネート中に著しいレベルのIL-12p70、IL-15/IL-15Rα、INFγ(表9)、及びFlt3L-OVA組換えタンパク質(表x10)が全て検出可能であった。
【0152】
XXIV.腫瘍退縮
【0153】
【0154】
pOMI2A-IL-12対pOMIIRES-IL-12の電気穿孔後の腫瘍退縮の比較により、p35及びp40サブユニットの発現にP2Aエクソンスキップモチーフを使用すると、より高いp70 IL-12の発現をもたらすだけではなく(
図4A)、in vivoでの腫瘍退縮により良好な有効性ももたらすことが示された。
【0155】
【0156】
処置及び未処置腫瘍の両方の退縮の程度が、OMIP2A-mIL-12プラスミドの用量を増加させた電気穿孔によって増加した。
【0157】
pOMIP2A-mIL12のIT-EPがBalb/cマウスにおける4T1原発腫瘍の増殖及び胚転移に影響を及ぼす能力についても試験した。マウスの右側腹部に100万個の4T1細胞を皮下注射し、25万個の4T1細胞を左側腹部に注射した。右側腹部のより大きな腫瘍をエンプティベクター(pUMVC3、Aldeveron)またはpOMIP2A-mIL12を用いたIT-EPに供した。腫瘍体積を2日置きに測定し、19日目にマウスを屠殺し、肺を切除して重量を計測した。
【0158】
【0159】
IL-12による全身処置が4T1腫瘍を有するマウスにおいて胚転移を軽減できることが以前に報告されている(Shi et al.,J Immunol.2004,172:4111)。我々の所見は、腫瘍の局所的なIT-EP処置もこのモデルにおいてこれらの腫瘍細胞の肺への転移を減少させたことを示唆するものである。
【0160】
B16F10腫瘍に加えて、pOMIP2A-mIL12の電気穿孔もまた、原発(処置)及び対側(未処置)両方のB16OVA及びCT26腫瘍の退縮をもたらす。4T1腫瘍モデルにおいて、EP/pOMI-mIL12後に原発腫瘍が退縮し、マウスが肺重量における著しい現象を示したことから、肺転移の減少が示唆される。我々は、OMIP2A-mIL12のIT-EPが、2つの異なるマウスの系統の4つの異なる腫瘍モデルにおいて腫瘍負荷を減少させることができることを示す。
【0161】
【0162】
【0163】
マウスIL-12 p70及びヒトFlt3L-NY-ESO-1融合タンパク質の両方を発現するプラスミドの電気穿孔は、7日で処置腫瘍の完全退縮を引き起こした。
【0164】
電気穿孔により免疫調節遺伝子が導入されたとき、マウスにおける原発及び対側腫瘍の両方の体積がエンプティベクター対照の電気穿孔と比較して著しく減少したことから、処置腫瘍微小環境内の局所的な影響だけではなく、全身的な免疫の増加も示唆される。
【0165】
XXIV.フローサイトメトリー
【0166】
IT-pIL12-EP処置後の種々の時点にマウスを屠殺し、腫瘍及び脾臓組織を外科的に除去した。
【0167】
脾臓を70ミクロンのフィルタに押し付けて脾細胞を単離した後、赤血球溶解(RBC溶解緩衝液、VWR、420301OBL)、及びLympholyte(Cedarlane CL5035)による分取を行った。リンパ球をSIINFEKL-四量体(MBL International T03002)で染色した後、抗CD3(Biolegend 100225)、抗CD4(Biolegend 100451)、抗CD8a(Biolegend 100742)、抗CD19(Biolegend 115546)、及び生体染色(live-dead Aqua;Thermo-Fisher L-34966)を含有する抗体カクテルで染色した。細胞を固定し、LSR IIフローサイトメーター(Beckman)上で分析した。
【0168】
腫瘍用のgentleMACS(Miltenyi社の腫瘍解離キット130-096-730、Cチューブ、130-093-237)を使用して腫瘍を解離させ、Miltenyi社のgentleMACS(商標)Octo Dissociator with Heaters(130-096-427)を使用して均質化した。細胞を4℃で5分間800xgでペレット化し、5mLのPBS+2%FBS+1mM EDTA(PFB)に再懸濁し、5mLのLympholyte-M(Cedarlane)上に重ねた。Lympholyteカラムを、中断することなく室温で20分間、遠心分離機で1500xgで回転させた。リンパ球層をPBFで洗浄した。Fcブロック(BD Biosciences 553142)を含む500uLのPFBに細胞ペレットを穏やかに再懸濁した。96ウェルプレートにおいて、細胞を、製造業者の指示に従って、B16OVA腫瘍における免疫優勢抗原であるSIINFEKL四量体(MBL)の溶液と混合し、室温で10分間インキュベートした。抗CD45-AF488(Biolegend 100723)、抗CD3-BV785(Biolegend 100232)、抗CD4-PE(eBioscience12-0041)、抗CD8a-APC(eBioscience 17-0081)、抗CD44-APC-Cy7(Biolegend 103028)、抗CD19-BV711(Biolegend 11555)、抗CD127(135010)、抗KLRG1(138419)を含む抗体染色カクテルを加え、30分間室温でインキュベートした。細胞をPFBで3回洗浄した。1%パラホルムアルデヒドを含むPFB中、氷上で1分間細胞を固定した。細胞をPFBで2回洗浄し、暗所に4℃で保存した。試料をLSR IIフローサイトメーター(Beckman)上で分析した。
【0169】
【0170】
IT-pIL12-EPは、B16OVA腫瘍における優勢抗原である卵白アルブミン由来のSIINFEKLペプチドに対する循環CD8+T細胞の増加を誘導する。これらのデータは、局所的なIL-12治療がマウスの全身的な腫瘍免疫をもたらし得ることを示唆するものである。
【0171】
【0172】
原発腫瘍内におけるOMI2A-pIL-12の電気穿孔は、対側の未処置腫瘍内のTILの組成を著しく変更することができる。これらの結果は、pOMI2A-IL-12を用いた腫瘍内処置が未処置腫瘍の免疫環境に影響を及ぼし得ることを示しており、全身的な抗腫瘍免疫応答をもたらすことが示唆される。この結論は、脾臓における腫瘍抗原特異的CD8+T細胞の検出の増加(表16)、対側腫瘍の退縮(表12)、及び肺転移の減少(表13)によって裏付けられる。
【0173】
XXV.マウスの遺伝子発現の分析
【0174】
pOMIP2A-IL12及びpOMI-Flt3L-NYESO1プラスミドのIT-EPによって誘導した処置及び未処置腫瘍における遺伝子発現の変化の分析にNanoStringを使用した。メスを使用してマウスから注意深く腫瘍組織を採取し、液体窒素中で瞬間凍結させた。天秤(Mettler Toledo、ML54型)を使用して組織の重量を計測した。1mlのTrizol(Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA)を組織に加え、氷上でプローブホモジナイザーを使用して均質化した。製造業者の指示を使用してTrizolからRNAを抽出した。Dnase(Thermo Fisher、カタログ番号EN0525)処理により汚染DNAを除去した。NanoDrop ND-1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific)を使用して全RNA濃度を決定した。NanoString技術を用いて遺伝子発現プロファイリングを行った。端的に述べると、nCounter(登録商標)(Mouse immune´v1´Expression Panel NanoString(登録商標)Technologies)を用いて50ngの全RNAを96℃で一晩ハイブリダイズした。このパネルは、561個の免疫学関連マウス遺伝子と、陽性対照(全体的なアッセイ性能を評価するための種々の濃度のスパイクRNA)及び(全RNA入力における差を正規化するための)15個の陰性対照の2種類の組み込まれた対照をプロファイルする。次いで、ハイブリダイズした試料を、nCounter SPRINT(商標)Profilerを使用して各RNA種の出現頻度についてデジタル的に分析した。nSolver(商標)分析ソフトウェア2.5パックを使用して粗mRNA存在量(出現頻度)を分析した。このプロセスでは、ハウスキーピング遺伝子の幾何平均、陰性対照の平均、及び陽性対照の幾何平均から得た正規化係数を用いた。
【0175】
【0176】
【0177】
pOMIP2A-IL12電気穿孔後の4T1及びMC-38腫瘍モデルにおける処置及び未処置腫瘍からの抽出物のさらなるNanoString遺伝子発現分析により、リンパ球及び単球細胞表面マーカーならびにINFγによって調節される遺伝子の同様の上方制御が明らかになったことから、IL-12が腫瘍微小環境に及ぼすこれらの影響が複数のマウス腫瘍モデルに対して一般化できることが示唆される。
【0178】
処置及び未処置腫瘍からの組織の遺伝子発現分析は、pOMIP2A-IL12のIT-EPによって腫瘍TILの大幅な増加を示すフローサイトメトリー分析を裏付けるものである。また、インターフェロンγによって調節される遺伝子の増加は、腫瘍内の免疫刺激環境の誘導を示唆している。チェックポイントタンパク質の発現における著しい増加は、IT-pIL12-EPが併用されるチェックポイント阻害剤の作用のための基質を増加させ得ることを示唆している。
【0179】
ヒトFlt3L-NY-ESO-1融合タンパク質単独をコードするOMIプラスミドの腫瘍内電気穿孔もまた、腫瘍退縮及び腫瘍TILの免疫表現型に対する変化に影響を及ぼした。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
Flt3Lに融合した追跡抗原をコードするプラスミドの電気穿孔に対する宿主応答を調べるために、B16F10腫瘍をpOMI-Flt3L-OVAで電気穿孔し、OVA抗原に対する宿主応答を測定した。100万個のB16F10細胞をマウスの右腹側部に注射した。7日後、腫瘍をpOMI-mIL12-mFlt3L-OVA、エンプティベクターで電気穿孔したか、または未処置のままにした。電気穿孔は、Genesis発電機を400V/cm、8 10ミリ秒のパルスで使用して行った。pOMI-mIL12-mFLT3-OVAで腫瘍退縮が観察された(表15)。
【0186】
FLt3L-OVA融合タンパク質をコードするプラスミドを腫瘍内に導入してから7日後に、マウスにおける追跡抗原特異的CD8+T細胞の検出を鼠径リンパ節で調べた。
【0187】
電気穿孔処理から7日後にリンパ節を単離した。マウスを屠殺し、鼠径リンパ節を切除し、PBS+2%FBS+1mM EDTA(PFB)中ですり潰し、次いで70マイクロフィルタを通して濾過した。細胞を遠心分離機において4℃で300xgにてペレット化し、PFB中で洗浄し、Cellometer(Nexcelom)上でカウントした。
【0188】
Fcブロック(BD Biosciences 553142)を含むPFBにリンパ節細胞のペレットを穏やかに再懸濁した。次いで、細胞を、製造業者の指示に従ってSIINFEKL四量体(MBL)の溶液と混合し、室温で10分間インキュベートした。Live/Dead Aqua(Thermo Fisher L34966)、抗CD3(Biolegend 100228)、抗CD19(Biolegend 115555)、抗CD127(Biolegend)、抗CD8a(MBL D271-4)、抗CD44(Biolegend 103028)、抗PD-1(Biolegend 109110)、抗CD4(Biolegend 100547)、抗KLRG1(138419)、抗CD62L(Biolegend 104448)を含む抗体染色カクテルを加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞をPFBで洗浄した。1%パラホルムアルデヒドを含むPFB中、氷上で1分間細胞を固定した。細胞をPFBで3回洗浄し、フローサイトメトリー(LSR Fortessa X-20)によって分析した。
【0189】
【0190】
OVAをマウスにおける代替の追跡抗原として用いて、我々は、Flt3L-融合タンパク質として腫瘍内に電気穿孔された追跡抗原に対する循環T細胞を容易に検出できることを実証した。
【0191】
XXV.マウス尾静脈への水力学的注射によるプラスミドの導入
【0192】
OMIプラスミドから発現されるFlt3L融合タンパク質のin vivo活性を、C57Bl/6Jマウスの尾静脈内への5ugのプラスミドの水力学的注射によって試験した。7日後、マウスを屠殺し、脾臓を切除し、重量を計測し、フローサイトメトリーによる細胞組成の変化の分析のために解離させた。
【0193】
脾細胞を前述のように単離し、PFBで洗浄し、Fc Block(BD Biosciences 553142)を含むPFBに再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。以下を含有する抗体カクテルを加えた:抗NK1.1(Biolegend108731)、Live/Dead Aqua()、抗CD4(Biolegend 100547)、抗F4/80(Biolegend 123149)、抗CD19(Biolegend 115555)、抗I-A/I-E(Biolegend 107645)、抗CD8(MBL International D271-4)、抗CD80(Biolegend 104722)、抗CD3(Biolegend 117308)、抗CD40(Biolegend 124630)、抗GR-1(Biolegend 108424)、抗CD11c(Biolegend 117324)、抗CD86(Biolegend 105024)、抗CD11b(Biolegend 101212)。37℃でインキュベートする。細胞をPFBで3回洗浄し、フローサイトメトリー(LSR Fortessa X-20)により分析した。
【0194】
【0195】
NY-ESO-1タンパク質(80-180 aa)の一部に融合したヒトFlt3LまたはヒトFLt3Lコードするプラスミドの導入は、脾臓においてCD11+樹状細胞(DC)の増加をもたらす。さらに、これらのDCの大半は高レベルのMHC Class IIを示し、それらが成熟DCであることを示唆している。さらに、これらのDCの一部はより高いレベルの細胞表面CD86を示しており、それらが活性化されたことが示唆される。
【0196】
これらのデータは、これらのプラスミドから発現され、マウスにおいてDCの成熟及び活性化をもたらす、活性Flt3リガンドへの暴露と一致している(Maraskovsky et al.,2000.Blood 96:878)。
【0197】
配列識別子
【0198】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式P-A-T-A´によって表される構造を含み、対象における肺の癌増殖を現象させるために使用され、少なくとも1つの腫瘍内電気穿孔パルスを使用して、対象の腫瘍に送達するために調合される、核酸。
式中、
Pは発現プロモーターであり、
AおよびA´はIL-12サブユニットをコードし、
Tは、Tは翻訳修飾エレメントである。
【請求項2】
AはIL-12p35をコードし、A´はIL-12p40をコードする、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記翻訳修飾エレメントは、2Aリボソームスキップ調節因子および内部リボソーム進入部位(IRES)からなる群から選択される、請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
前記翻訳修飾エレメントは、2Aリボソームスキップ調節因子を含む、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
前記2Aリボソームスキップ調節因子は、P2Aリボソームスキップ調節因子を含む、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記翻訳修飾エレメントは、IRESを含む、請求項3に記載の核酸。
【請求項7】
Pは、ヒトCMVプロモーター、サルCMVプロモーター、SV-40プロモーター、mPGKプロモーター、及びβアクチンプロモーターからなる群から選択される、請求項1に記載の核酸。
【請求項8】
配列番号5、配列番号6または配列番号7の核酸配列を含む、請求項5に記載の核酸。
【請求項9】
前記少なくとも1つの腫瘍内電気穿孔パルスは、約200V/cm~1500V/cmの電界強度を有する、請求項1~8の何れか1項に記載の核酸。
【請求項10】
前記少なくとも1つの腫瘍内電気穿孔パルスは、1500V/cmの電界強度と、100マイクロ秒のパルス長とを有する、請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
前記少なくとも1つの腫瘍内電気穿孔パルスは、350V/cmの電界強度と、10ミリ秒のパルス長とを有する、請求項9に記載の核酸。
【請求項12】
前記少なくとも1つの腫瘍内電気穿孔パルスは、各々が350V/cmの電界強度と、10ミリ秒のパルス長とを有する、8つの電気穿孔パルスを含む、請求項9に記載の核酸。
【請求項13】
前記電気穿孔パルスは、電気化学的インピーダンス分光法が可能なジェネレーターによって供給される、請求項9に記載の核酸。
【請求項14】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の核酸。