(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116210
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】薄膜蒸発器による蒸留工程を有するジアンヒドロヘキシトールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 493/04 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
C07D493/04 101D
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086693
(22)【出願日】2022-05-27
(62)【分割の表示】P 2018548850の分割
【原出願日】2017-03-16
(31)【優先権主張番号】1652236
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ ヴィアール
(72)【発明者】
【氏名】マティアス イベール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】人および環境に対して有害な化合物を含まず、溶融が必要となる粉末形態の製品を使用するという欠陥を有さず、かつ満足のいく色の最終製品が得られ、最終製品を精製する目的のための簡単な連続蒸留工程を有利に含むイソヘキシド組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの製造方法であって、a)少なくとも1種のヘキシトールを供給する工程と、b)前記ヘキシトールを脱水する工程と、c)工程b)で製造された脱水生成物を蒸留する工程とを含む方法において、ヘキシトールは、工程a)において水溶液の形態で供給され、および前記蒸留は、工程c)において薄膜蒸発器を用いて実施されることを特徴とする方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの製造方法であって、
a)少なくとも1種のヘキシトールを提供する工程、
b)前記ヘキシトールを脱水する工程、
c)工程b)で得られた脱水生成物を蒸留する工程
を含む方法において、
- 前記ヘキシトールは、工程a)において水溶液の形態で提供され、
- 前記蒸留は、工程c)において薄膜蒸発器を使用して実施される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記水溶液は、ヘキシトールの乾燥重量含量が総重量の95%超、好ましくは96%超、非常に好ましくは97%以上かつその総重量の99%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液は、少なくとも1種のヘキシトールを含有する初期の水溶液から水を除去することによって得られ、前記ヘキシトールの前記乾燥重量含量は、その総重量の40%~80%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種のヘキシトールを含有する前記水溶液において、前記ヘキシトールは、ソルビトール、マンニトールおよびイジトールならびにそれらの混合物から選択され、好ましくはソルビトールであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脱水工程が、脱水触媒の存在下で実施されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、イオン交換樹脂系、特に酸性陽イオン交換樹脂または酸性ゼオライト型触媒の触媒であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、硫酸、塩酸、パラ-トルエンスルホン酸、リン酸およびメタンスルホン酸から選択される酸触媒であり、好ましくは硫酸であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水工程が、真空下、不活性ガス流下またはオートクレーブ中での加圧下で実施されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脱水工程が、110℃~400℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記蒸留工程が、160℃~230℃、好ましくは170℃~220℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記蒸留工程が、50mbar未満、好ましくは20mbar未満、非常に好ましくは10mbar未満の真空下で実施されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の水素化糖の水溶液を提供、内部脱水、および薄膜蒸発器により得られた生成物の蒸留による1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの製造方法に関する。本特許出願を通して、「薄層」、「薄膜」および「かき取り膜」蒸発器という用語は等しく使用される。
【背景技術】
【0002】
この方法は、バッチ式の単一の精製工程としての蒸留に頼り、収率が低く、着色が強い生成物をもたらす従来技術の方法とは異なる。したがって、本発明により、審美的により受け入れやすく、化学的により安定した生成物が得られる。さらに、バッチ式蒸留技術では、多くの場合、前記蒸留を容易にするための製品の使用が推奨される。前記助剤は、人に対して有害であるか、環境に対して有害であることが判明している。
【0003】
本発明による方法はまた、出発物質として粉末ではなく水溶液を使用する点で先行技術と異なる。粉状の製品は、取り扱いに問題があるだけでなく、災害の原因ともなる。粉状の製品は、さらに溶融しなければならず、検討中の方法に大きな経済的影響を与える。
【0004】
再生可能な生物資源の経済的な改善は、石油などの化石原料の枯渇とコスト上昇に直面して、環境的に、かつ経済的に重要な課題となっている。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの開発は、これに含まれる。
【0005】
これらの製品はイソヘキシドとも呼ばれ、ソルビトール、マンニトールおよびイジトールなどの水素化されたC
6糖類(ヘキシトール)の内部脱水により得られる。本特許出願では、「ジアンヒドロヘキシトール」という用語は、次式:
【化1】
のイソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール)、イソマンニド(1,4:3,6-ジアンヒドロマンニトール)およびイソイジド(1,4:3,6-ジアンヒドロイジトール)ならびにそれらの製品の混合物を包含する。
【0006】
本出願人は、これらの製品が、文献「Interconversion of DianhydroHexitols and of Saccharic Acids」(Nature,Oct.1,1949,vol.464,pages 573-574)に記載された方法により、脱アミノ化反応によって得ることもできるが、このような方法は控えめに言っても産業部門では重要ではないことを指摘する。
【0007】
現時点では、特に医薬品分野、化学合成中間体の製造およびプラスチック分野において、イソヘキシドの工業的開発の大きな可能性が存在する。
【0008】
例えば、特許英国特許第613 444号明細書は、イソソルビド組成物を水/溶媒の媒体中で脱水し、次いで蒸留処理し、次いでアルコール/エーテル混合物で再結晶することを記載している。
【0009】
特許国際公開第00/14081号パンフレットでは、蒸留と、低級脂肪族アルコール(エタノールまたはメタノール)からの再結晶とを組み合わせた精製処理も推奨されている。前記文献は、蒸留が想定される唯一の精製工程である場合、水素化ホウ素ナトリウムの使用が有利であると指摘している。
【0010】
他の著者も、特許米国特許第3 160 641号明細書にも記載されているように、蒸留工程が、ホウ酸などのホウ素化合物の存在下またはホウ酸イオンで荷電したアニオン樹脂を用いて実施することを推奨している。
【0011】
特許米国特許第4 408 061号明細書および欧州特許第0 323 994号明細書は、特定の脱水触媒(それぞれガス状のハロゲン化水素および液状のフッ化水素)を、有利には共触媒としてのカルボン酸と組み合わせて使用し、その後得られた粗製イソソルビドまたはイソマンニド組成物を蒸留することを想定している。
【0012】
前述の工程の結果として、イソヘキシド系組成物の製造は、一般的に、少なくとも1つの所与の時点において、控えめに言っても高価な手段、例えば脱水触媒および共触媒と組み合わせたハロゲン化水素を使用するか、または人および環境に有害となる可能性があり、いずれの場合にもその使用が厳格に規制されている手段、例えば有機溶媒を使用することが強いられる。蒸留は、当業者に非常に広く知られており、商業化が可能であり、容易に使用することができ、かつ工業的使用に完全に適しており、上述の技術は、最終精製工程として蒸留に依存するためさらに一層有害である。
【0013】
蒸留工程を含むイソヘキシドを含有する組成物を得る方法を提供することを目的として、それに続く解決法が提案されている。これに関し、特許出願国際公開第2005/047228号パンフレット、国際公開第2013/169029号パンフレット、国際公開第2014/073843号パンフレット、国際公開第2014/129834号パンフレットおよび韓国特許出願公開第20140048436号明細書が知られている。これらの文献のすべては、最終の精製工程が薄膜蒸発器を使用して蒸留によって実施されるイソソルビドの製造方法を記載している。
【0014】
このタイプの装置は、ジャケットで加熱される円筒部品と、蒸気を分離する上部と、高速で回転するローターとで構成されている。処理される製品は、その円筒部品の上部に導入され、さらに分配リングによって加熱表面上に拡げられる。それが動翼によって取り込まれ、極めて渦状の膜の形態で瞬時に壁全体に拡げられる。生成物は、内壁に沿って、揮発性生成物の蒸発が起こる螺旋運動に追従することによって装置の基部に向かって降下する。生成した蒸気は装置の頂部に向かって上昇し、分離器を通過する。同伴した液滴および発泡体は、保持され、蒸発ゾーンに戻る。このようにして液状粒子から分離された蒸気は凝縮器、カラムまたは他の後続の処理過程に移行する。
【0015】
上述の5件の特許出願は薄膜蒸発技術を伴うが、他の共通する2つの特徴も有する:初期生成物が粉末形態のソルビトールであること、この粉末を加熱して溶融物を得ることである。出発物質のソルビトールが粉末であることから、非常に多くの問題が生じる:粉末が爆発の危険性を有し、その上、ケーキングの問題から、その保管および輸送が困難であることはよく知られている。さらに、前記粉末を溶融物に変換するには大量のエネルギーを消費する必要があり、これは、経済的な方法に反している。
【0016】
最後に、特許出願国際公開第2009/126852号パンフレットが知られている。これは、酸触媒の存在下、真空下でソルビトールを脱水することからなる方法を記載している。特定の変形形態によると、前記ソルビトールは、固形分含量が総重量の40%~95%である水溶液の形態で存在する。実施例7は、乾燥重量で93%の生成物を含有するソルビトール水溶液から出発するイソソルビドの合成を記載している。その合成後、標準的なバッチ式の蒸留が行われる。それにも関わらず、本出願人は、そのような方法では、得られる最終製品が暗黄色の性質を有することに気が着いた。現在、これらの着色現象は、製品の安定性に対して弊害をもたらすさまざまな性質の不純物の存在を反映し、そのような不純物は、最終用途におけるその使用に対しても不都合となり得ることがよく知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、人および環境に対して有害な化合物を含まず、溶融が必要となる粉末形態の製品を使用するという欠陥を有さず、かつ満足のいく色の最終製品が得られ、最終製品を精製する目的のための簡単な連続蒸留工程を有利に含むイソヘキシド組成物の製造方法は現時点で存在していない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
数多くの調査研究を実施した後、本出願人企業はこのような方法の開発に成功した。この方法は、
a)少なくとも1種のヘキシトールを提供する工程、
b)前記ヘキシトールを脱水する工程、
c)工程b)で得られた脱水生成物を蒸留する工程
を含む、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの製造方法からなり、
- ヘキシトールは、工程a)において水溶液の形態で提供され、
- 蒸留は、工程c)において薄膜蒸発器を使用して実施される
ことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の主題である方法の第1の工程は、少なくとも1種のヘキシトールを提供することからなり、前記ヘキシトールは水溶液の形態で提供される。
【0020】
この工程は、連続的に実施される。
【0021】
好ましくは、この水溶液はヘキシトールの乾燥重量含量が総重量の95%超、好ましくは96%超、非常に好ましくは97%以上かつその総重量の99%未満である。
【0022】
この水溶液は、好ましくは、少なくとも1種のヘキシトールを含有する初期の水溶液から水を除去することによって得られ、前記ヘキシトールの乾燥重量含量は、その総重量の40%~80%である。その水の除去は、当業者に周知の各種の手段、特に加熱により、特に真空蒸留により実施される。その初期の水溶液は、例えば、本出願人からNeosorbの名称で販売されている製品である。
【0023】
少なくとも1種のヘキシトールを含有する水溶液はまた、そのヘキシトールがソルビトール、マンニトールおよびイジトールならびにそれらの混合物から選択され、好ましくはソルビトールであることを特徴とする。
【0024】
本発明の方法の第2の工程は、第1の工程中に提供された少なくとも1種のヘキシトールを含有する溶液において前記ヘキシトールを脱水して1,4:3,6-ジアンヒドロヘ
キシトールを得る工程を含む。
【0025】
この工程は、決して本特許出願の主題である方法を限定するものではない。これは、当業者に周知の各種の方法によって実施することができる。この点に関して特許カナダ国特許第1 178 288号明細書を参照することができ、その14ページ、3~8行には、特に比較的高い反応温度および長い反応時間が想定される場合、酸化反応を避けるために脱水反応自体を不活性ガスの雰囲気下で実施することが推奨されるという記載がある。したがって、本発明における1つの変形形態は、不活性ガスの雰囲気下でこの脱水工程を実施することからなる。
【0026】
特許米国特許第4 861 513号明細書には、ジアンヒドロソルビトールが低含量(10~26%)の特定のポリオールの混合物を調製する目的で、不活性ガス(窒素)と還元剤(次亜リン酸ナトリウム)との同時存在下で実施されるソルビトール脱水反応が記載されている。前述の特許英国特許第613 444号明細書には、水/溶媒媒体中での脱水し、それを蒸留処理に供し、アルコール/エーテル混合物からの再結晶によるイソソルビド組成物の製造を記載している。
【0027】
好ましくは、この脱水工程を実施するための条件は次の通りである:第1の工程中に得られたヘキシトールを含有する溶液を反応器に導入する。同時に、ヘキシトール溶液の導入の前または後に、脱水触媒を反応器に導入する。この触媒は、次の工程でヘキシトールの脱水を可能とするものであれば、いかなる種類の触媒であってもよい。この触媒は、不均一系触媒または均一系触媒であってもよい。これは、酸触媒、特に強酸触媒、またはイオン交換樹脂、特に酸性陽イオン交換樹脂、または酸性ゼオライト型の触媒であってもよい。酸触媒は、特に硫酸、塩酸、パラ-トルエンスルホン酸、リン酸またはメタンスルホン酸であってもよい。硫酸は、本発明による組成物の製造に特に好ましい触媒である。
【0028】
酸性陽イオン交換樹脂は、スルホン化ポリスチレン樹脂、例えばBioRad製のAG50W-X12樹脂であってもよい。酸性ゼオライトは、ベータ-ゼオライトであってもよい。
【0029】
脱水触媒は、脱水工程を実施可能とする量で導入される。具体的には、硫酸を使用する場合、ヘキシトールの総質量に対して2質量%未満、好ましくは1.5%未満、最も好ましくは1.2%未満の量を使用することが好ましい。
【0030】
脱水工程は、真空下、不活性ガス、例えば窒素流下または他にオートクレーブ中で加圧下で実施することができ、これらの3種の方法によって水の除去を容易にし、これにより反応平衡をシフトさせることが可能となる。
【0031】
脱水工程を実施するためには、反応器に熱を供給する必要がある。この必要とする熱量は、主として使用される触媒の性質および量、より少ない程度では脱水工程中の反応器内の圧力条件に依存する。必要な熱を供給するために、反応器内の温度および脱水反応は、使用される触媒に応じて110℃~400℃の範囲であってもよい。例えば、導入されたヘキシトールの質量に対して1質量%の硫酸が使用される場合、135℃以上、有利には150℃以上の温度を使用することが好ましい。有利には、温度は300℃未満のままである。
【0032】
脱水工程の終了時に、均一系酸触媒が使用される場合、触媒を中和する工程の実施が好ましい。
【0033】
最後に、本発明の主題である方法の第3の工程は、先行する脱水工程で得られた生成物
、すなわち1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを蒸留することであり、蒸留は、薄膜蒸発器を用いて実施される。この工程は、イソヘキシドの生成物の残りの成分からの単離を可能にする真空および温度条件下で実施される。
【0034】
この工程を実施するために好ましい条件は次の通りである。先行する脱水工程で得られた生成物は、ポンプを用いて薄膜蒸発器の円筒状本体の上部に連続的に導入される。その後、動翼により、円筒状本体の加熱された壁面の上に拡げられる。ジャケットの温度は、160℃~230℃、好ましくは170℃~220℃に維持される。蒸留中に適用される真空は、50mbar未満、好ましくは20mbar未満、非常に好ましくは10mbar未満である。
【0035】
蒸留後に得られた1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのガードナー色数は、Lovibond PFXi-195/1測色計を使用して、1cmの光路長を有するセルの溶融した生成物について測定した場合、4以下、特に3以下、具体的には2.5以下、より特に2.1以下である。
【実施例0036】
本発明による実施例1
本出願人からNeosorb(登録商標)70/02の名称で販売されている固形分70%(すなわち乾燥量で700g)のソルビトール溶液1kgを、オイル循環恒温槽から供給を受けるジャケット、撹拌パドル、温度計、ならびに凝縮器および蒸留受器と組み合わせた蒸留ヘッドを備えた1リットルのSchottブランドのガラス製反応器に導入する。次に、そのアセンブリ全体を、真空ゲージを備えた真空ポンプに接続する。撹拌は650rpmで行う。次に、ソルビトール溶液を、溶液中に存在する水を留去するために真空下で加熱する(120℃、100mbar)。279gの水を蒸留した後、97%の固形分を含むソルビトール溶液721gが得られる。7gの濃硫酸を添加し、得られた混合物を真空(約100mbarの圧力)下、150℃で3時間加熱してソルビトール脱水反応を実施する。
【0037】
次いで、その反応粗生成物を100℃に冷却し、11.4gの50%水酸化ナトリウム溶液で中和する。71.5%、すなわち411gのイソソルビドを含む、575gの中和されたイソヘキシド組成物が得られる。次いで、得られた組成物をギヤポンプを用いて蒸発表面積0.05m2のVDL 70-4ガラス製かき取り膜蒸発器に2時間かけて導入し、そのジャケットを5mbarの真空下で200℃に加熱する。395gの蒸留されたイソソルビドが得られ、これは96.1%の蒸留収率に相当する。蒸留後に得られたイソソルビドのガードナー色数は、Lovibond PFXi-195/1測色計を使用して、1cmの光路長を有するセル中で溶融生成物を測定する。色数は2.1ガードナーである。
【0038】
実施例2
本出願人からNeosorb(登録商標)70/02の名称で販売されている固形分70%(すなわち乾燥量で700g)のソルビトール溶液の1kgを、オイル循環恒温槽から供給を受けるジャケット、撹拌パドル、温度計、ならびに凝縮器および蒸留受器と組み合わせた蒸留ヘッドを備えた1リットルのSchottブランドのガラス製反応器中に導入する。次に、そのアセンブリ全体を、真空ゲージを備えた真空ポンプに接続する。撹拌は650rpmでスイッチを入れる。次に、ソルビトール溶液を、溶液中に存在する水を留去するために真空下で加熱する(120℃、100mbar)。279gの水を蒸留した後、97%の固形分を含むソルビトール溶液721gが得られる。7gの濃硫酸を添加し、得られた混合物を真空(約100mbarの圧力)下、150℃で3時間加熱してソルビトール脱水反応を実施する。
【0039】
次いで、その反応粗生成物を100℃に冷却し、11.4gの50%水酸化ナトリウム溶液で中和する。71.5%、すなわち411gのイソソルビドを含む、575gの中和されたイソヘキシド組成物が得られる。得られた組成物を反応器中に入れ、ジャケット温度を200℃とし、5mbarの真空で蒸留を実施する。このような条件下では、380gの蒸留されたイソソルビドが得られ、これは92.5%の蒸留収率に相当する。蒸留後に得られたイソソルビドの色数は、4.8ガードナーである。
【0040】
本発明による実施例3
本出願人からNeosorb(登録商標)70/02の名称で販売されている固形分70%(すなわち乾燥量で700g)のソルビトール溶液1kgを、オイル循環恒温槽から供給を受けるジャケット、パドル攪拌機、温度計、ならびに凝縮器および蒸留受器と組み合わせた蒸留ヘッドを備えた1リットルのSchottブランドのガラス製反応器中に導入する。次に、そのアセンブリ全体を、真空ゲージを備えた真空ポンプに接続する。撹拌は650rpmでスイッチを入れる。次に、ソルビトール溶液を、溶液中に存在する水を留去するために真空下で加熱する(125℃、100mbar)。285gの水を蒸留した後、97.9%の固形分を含むソルビトール溶液715gが得られる。10.5gの濃縮メタンスルホン酸を添加し、得られた混合物を真空(約100mbarの圧力)下、150℃で3時間加熱してソルビトール脱水反応を実施する。
【0041】
次いで、その反応粗生成物を100℃に冷却し、8.8gの50%水酸化ナトリウム溶液で中和する。70.8%、すなわち410gのイソソルビドを含む、580gの中和されたイソヘキシド組成物が得られる。得られた組成物をギヤポンプにより蒸発表面積0.05m2のVDL 70-4ガラス製かき取り膜蒸発器に2時間かけて導入し、そのジャケットを15mbarの真空下で180℃に加熱する。372gの蒸留されたイソソルビドが得られ、これは90.7%の蒸留収率に相当する。蒸留後に得られたイソソルビドのガードナー色数は、Lovibond PFXi-195/1測色計を使用して、1cmの光路長を有するセル中で溶融生成物を測定する。色数は1.6ガードナーである。
【0042】
本発明による実施例4
本出願人からNeosorb(登録商標)70/02の名称で販売されている固形分70%(すなわち乾燥量で700g)のソルビトール溶液1kgを、オイル循環恒温槽から供給を受けるジャケット、撹拌パドル、温度計、ならびに凝縮器および蒸留受器と組み合わせた蒸留ヘッドを備えた1リットルのSchottブランドのガラス製反応器中に導入する。次に、そのアセンブリ全体を、真空ゲージを備えた真空ポンプに接続する。撹拌は650rpmでスイッチを入れる。次に、ソルビトール溶液を、溶液中に存在する水を留去するために真空下で加熱する(125℃、100mbar)。285gの水を蒸留した後、固形分が97.9%であるソルビトール溶液715gが得られる。乾燥させたAmberlyst 36マクロポーラス樹脂70gを添加し、得られた混合物を真空(約100mbarの圧力)下、150℃で3時間加熱してソルビトール脱水反応を実施する。
【0043】
次いで、その粗生成の反応生成物を100℃に冷却し、濾過して樹脂から反応媒体を分離する。72.0%、すなわち409gのイソソルビドを含むイソヘキシド組成物568gが得られる。得られた組成物をギヤポンプにより蒸発表面積0.05m2のVDL 70-4ガラス製かき取り膜蒸発器に2時間かけて導入し、そのジャケットを10mbarの真空下で190℃に加熱する。384gの蒸留されたイソソルビドが得られ、これは93.8%の蒸留収率に相当する。蒸留後に得られたイソソルビドのガードナー色数は、Lovibond PFXi-195/1測色計を使用して、1cmの光路長を有するセル中で溶融生成物を測定する。色数は1.9ガードナーである。
【0044】
したがって、これらの4つの試験は、本発明による方法によってイソソルビドを得る可能性を明確に示している。
【0045】
出発物質として粉末を使用することが回避され、これは、粉末製品を取り扱う制約からユーザーを解放し、このタイプの製品の使用に伴う爆発の危険性を排除する。
【0046】
最終的に、バッチ法と比較して最終製品の色は大きく改善される。
前記水溶液は、少なくとも1種のヘキシトールを含有する初期の水溶液から水を除去することによって得られ、前記ヘキシトールの前記乾燥重量含量は、その総重量の40%~80%である、請求項1または2に記載の方法。