(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116235
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ビタミンAを含有するエマルション点眼液
(51)【国際特許分類】
A61K 31/07 20060101AFI20220802BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220802BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220802BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220802BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220802BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61K31/07
A61P27/02
A61K9/107
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/38
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088303
(22)【出願日】2022-05-31
(62)【分割の表示】P 2022038451の分割
【原出願日】2017-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2016131693
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016131694
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016131695
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】松原 唯
(72)【発明者】
【氏名】河畑 昌宏
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビタミンAを含有する、広範囲の温度で医薬的に安定なエマルション点眼液を提供する。
【解決手段】本発明は、50,000単位/100mL以上のビタミンAと、(A)0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩および界面活性剤、(B)0.5%(w/v)以上のアミノ酸又はその塩および界面活性剤、ならびに(C)粘稠剤および多価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1つの成分とを含有するエマルション点眼液であって、pHが6.0~8.0である、広範囲の温度で医薬的に安定なエマルション点眼液に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50,000単位/100mLのビタミンA、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン70、プロピレングリコール及び水を含有し、pHが6.0~8.0であるエマルション点眼液。
【請求項2】
ビタミンAがビタミンA脂肪酸エステルである請求項1記載のエマルション点眼液。
【請求項3】
ビタミンA脂肪酸エステルがレチノールパルチミン酸エステルである請求項2記載のエマルション点眼液。
【請求項4】
デキストラン70の含有量が0.01~0.5%(w/v)である請求項1~3のいずれか一項記載のエマルション点眼液。
【請求項5】
ヒドロキシエチルセルロースの含有量が0.01~0.5%(w/v)である請求項1~3のいずれか一項記載のエマルション点眼液。
【請求項6】
プロピレングリコールの含有量が0.1~1.8%(w/v)である請求項1~3のいずれか一項記載のエマルション点眼液。
【請求項7】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有しない、請求項1~6のいずれか一項記載のエマルション点眼液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンAを含有する、広範囲の温度で医薬的に安定なエマルション点眼液に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンAは角膜・結膜乾燥症等のドライアイ症状、角膜・結膜の角化症等に対して予防や治療効果が知られている。また、ビタミンAは空気、光、熱、酸、金属イオン等により分解等しやすく、特に、水中では極めて不安定であり、点眼液等に安定に配合することは困難である。また、ビタミンAの安定化はビタミンAの含有量が高いほど、例えば、50,000単位/100mL以上となると顕著に不安定化することが知られている(特許文献1:特開2015-101582号公報)。
【0003】
点眼液中の不安定なビタミンAを安定化する技術としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤を点眼液に配合して安定化させる方法が知られている(特許文献2:特開平5-331056号公報,特許文献3:特開平6-40907号公報)。
【0004】
コンドロイチン硫酸エステルは、動物の組織や体液に存在するムコ多糖類の一種で、特に軟骨に多く含まれており、点眼液に配合する場合は、角膜・結膜の保護・保水作用を有し、角膜・結膜乾燥症等のドライアイ症状の緩和に有用であることが知られている。
【0005】
ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60およびステアリン酸ポリオキシル40等の界面活性剤は、分子内に親水基と疎水基を有する化合物の総称であり、点眼液においては、有効成分等を溶媒や分散媒への溶解させるための可溶剤として使用されることが知られている。
【0006】
L-アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸(タウリン)等に代表されるアミノ酸又はその塩は、点眼液においては、アミノ酸類として分類され、L-アスパラギン酸カリウムやアミノエチルスルホン酸(タウリン)は、眼組織の代謝を促進することから、目の疲れを改善する成分として知られている。
【0007】
ポリビニルピロリドンK30、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン70、ヒアルロン酸ナトリウムおよびアルギン酸等の粘稠剤は点眼液の粘度を高める為に配合される成分として知られている。
【0008】
プロピレングリコール、マンニトール、グリセリン、トロメタモールの多価アルコールは点眼液等の液体の浸透圧を調整する為の等張化剤として配合される成分として知られている。
【0009】
一方、エマルション点眼液において、凍結融解による性状変化が生じるとエマルション点眼液の白濁や油相と水相の分離等、外観が大きく損なわれる。また性状変化により薬物の放出挙動が大きく変化することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015-101582号公報
【特許文献2】特開平5-331056号公報
【特許文献3】特開平6-40907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、50,000単位/100mL以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩を共存させたエマルション点眼液において、その点眼液を苛酷試験下(70℃、1週間)で保存した場合、エマルション点眼液中のビタミンAの量が著しく減少することを見出した。
【0012】
また、本発明者は、50,000単位/100mL以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のL-アスパラギン酸カリウム又はアミノエチルスルホン酸等のアミノ酸又はその塩とを共存させたエマルション点眼液において、その点眼液を苛酷試験下(70℃、1週間)で保存した場合、エマルション点眼液中のビタミンAの量が著しく減少することを見出した。
【0013】
さらに、本発明者は、50,000単位/100mL以上のビタミンAとヒドロキシエチルセルロース、デキストラン等の粘稠剤を含有するエマルション点眼液を凍結融解した場合に、その凍結前と凍結融解後でエマルション点眼液に性状変化が生じること、また、凍結前と凍結融解後ではエマルションの粒子径が大幅に変化することを見出した。
【0014】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、温度の影響を受け難く、広い温度範囲で安定であり、安全性の優れている、医薬的に安定な50,000単位/100mL以上のビタミンAを含有するエマルション点眼液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本発明者は、前記課題を解決する為に鋭意研究した結果、50,000単位/100mL以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩を共存させたエマルション点眼液に0.3%(w/v)以下の界面活性剤を配合し、かつ、そのpHを6.0~8.0に調整すること、特に、界面活性剤として、0.3%(w/v)の含有量のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を配合し、かつ、そのpHを6.0又は8.0に調整した場合に、エマルション点眼液中のビタミンAの量の著しい減少を抑制することを見出した。
【0016】
また、本発明者は、前記課題を解決する為に鋭意研究した結果、50,000単位/100mL以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のL-アスパラギン酸カリウム又はアミノエチルスルホン酸等のアミノ酸又はその塩を共存させたエマルション点眼液に0.3%(w/v)以下の界面活性剤を配合し、かつ、そのpHを6.0~8.0に調整すること、特に、界面活性剤として、0.3%(w/v)の含有量のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を配合し、かつ、そのpHを6.0又は8.0に調整した場合に、エマルション点眼液中のビタミンAの量の著しい減少を抑制することを見出した。
【0017】
さらに、本発明者は、前記課題を解決する為に鋭意研究した結果、50,000単位/100mL以上のビタミンAとヒドロキシエチルセルロース、デキストラン等の粘稠剤を含有するエマルション点眼液に多価アルコールを配合すること、特に多価アルコールとして、0.5%(w/v)の含有量のプロピレングリコールを配合することで、凍結融解による性状変化を抑制したエマルション点眼液、さらには、凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値を0~50nmに制御することで、凍結融解による性状変化を抑制することを見出した。
【0018】
以上のように、本発明者は、前記課題を解決する為に鋭意研究した結果、上記の知見を見出し、温度の影響を受け難く、広い温度範囲で安定であり、安全性の優れている、医薬的に安定な50,000単位/100mL以上のビタミンAエマルション点眼液を見出し、本発明に至った。
【0019】
すなわち本発明は、下記の通りである。
<本発明の第1のエマルション点眼液>
(1) 50,000単位/100mL以上のビタミンAと、下記(A)~(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分とを含有するエマルション点眼液であって、pHが6.0~8.0である、広範囲の温度で医薬的に安定なエマルション点眼液。
(A)0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩および界面活性剤、
(B)0.5%(w/v)以上のアミノ酸又はその塩および界面活性剤、ならびに
(C)粘稠剤および多価アルコール
(2) -80℃から100℃の範囲で医薬的に安定である(1)記載のエマルション点眼液。
(3) (ア)苛酷試験(エマルション点眼液を10mLガラスアンプルに10mL充填して密封し、70℃で7日間保存する)後のビタミンAの残存率が50%以上であるか、および/または
(イ)凍結融解試験(エマルション点眼液をポリエチレンテレフタレート製の点眼容器に充填し、当該エマルション点眼液を-20℃で、12~16時間凍結し、凍結した当該エマルション点眼液を室温で完全に融解するまで放置し、凍結前のエマルション点眼液のエマルションの粒子径および凍結融解後のエマルション点眼液のエマルションの粒子径をJIS Z 8826動的光散乱法(光子相関法)より測定する)における凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値が0~50nmである、(1)又は(2)記載のエマルション点眼液。
(4) ビタミンAの含有量が50,000単位/100mLである(1)~(3)記載のエマルション点眼液。
(5) ビタミンAがビタミンA脂肪酸エステルである(1)~(4)記載のエマルション点眼液。
(6) ビタミンA脂肪酸エステルがレチノールパルチミン酸エステルである(5)記載のエマルション点眼液。
(7) コンドロイチン硫酸エステル又はその塩がコンドロイチン硫酸エステルナトリウムである(1)~(6)記載のエマルション点眼液。
(8) アミノ酸又はその塩がL-アスパラギン酸カリウム及び/又はアミノエチルスルホン酸である(1)~(7)記載のエマルション点眼液。
(9) 界面活性剤の含有量が0.3%(w/v)以下である(1)~(8)記載のエマルション点眼液。
(10) 界面活性剤の含有量が0.1~0.3%(w/v)である(1)~(9)記載のエマルション点眼液。
(11) 界面活性剤がポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60およびステアリン酸ポリオキシル40からなる群より選択される少なくとも1つである(1)~(10)記載のエマルション点眼液。
(12) 粘稠剤の含有量が0.01~0.5%(w/v)である(1)~(11)記載のエマルション点眼液。
(13) 粘稠剤がポリビニルピロリドンK30、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン70、ヒアルロン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される少なくとも1つである(1)~(12)記載のエマルション点眼液。
(14) 多価アルコールの含有量が0.1~1.8%(w/v)である(1)~(13)記載のエマルション点眼液。
(15) 多価アルコールがグリセリン、プロピレングリコール、マンニトールおよびトロメタモールから選択される少なくとも1つである(1)~(14)記載のエマルション点眼液。
(16) 凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値が0~30nmである(3)~(15)記載のエマルション点眼液。
(17) 凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値が0~10nmである(3)~(16)記載のエマルション点眼液。
(18) ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有しない(1)~(17)記載のエマルション点眼液。
(19) 50,000単位/100mL以上のビタミンAと、下記(a)~(c)からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分とを含有するエマルション点眼液であって、pHが6.0~8.0であるエマルション点眼液。
(a)0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩および0.3%(w/v)以下の界面活性剤
(b)0.5%(w/v)以上のアミノ酸もしくはその塩および0.3%(w/v)以下の界面活性剤、ならびに
(c)粘稠剤および多価アルコール
(20) ビタミンAの含有量が50,000単位/100mLである(19)記載のエマルション点眼液。
(21) ビタミンAがビタミンA脂肪酸エステルである(19)又は(20)記載のエマルション点眼液。
(22) ビタミンA脂肪酸エステルがレチノールパルチミン酸エステルである(21)記載のエマルション点眼液。
(23) コンドロイチン硫酸エステル又はその塩がコンドロイチン硫酸エステルナトリウムである(19)~(22)記載のエマルション点眼液。
(24) アミノ酸又はその塩がL-アスパラギン酸カリウム及び/又はアミノエチルスルホン酸である(19)~(23)記載のエマルション点眼液。
(25) 界面活性剤の含有量が0.1~0.3%(w/v)である(19)~(24)記載のエマルション点眼液。
(26) 界面活性剤がポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60およびステアリン酸ポリオキシル40からなる群より選択される少なくとも1つである(19)~(25)記載のエマルション点眼液。
(27) 粘稠剤の含有量が0.01~0.5%(w/v)である(19)~(26)記載のエマルション点眼液。
(28) 粘稠剤がポリビニルピロリドンK30、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン70、ヒアルロン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される少なくとも1つである(19)~(27)記載のエマルション点眼液。
(29) 多価アルコールの含有量が0.1~1.8%(w/v)である(19)~(28)記載のエマルション点眼液。
(30) 多価アルコールがプロピレングリコール、マンニトール、グリセリンおよびトロメタモールから選択される少なくとも1つである(19)~(29)記載のエマルション点眼液。
(31) ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有しない(19)~(30)記載のエマルション点眼液。
(32) 50,000単位/100mL以上のビタミンAと、0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩及び/又は0.5%(w/v)以上のアミノ酸もしくはその塩と、界面活性剤とを含有し、pH6.0~8.0のエマルション点眼液とすることによる前記ビタミンAを安定化する方法。
(33) 50,000単位/100mL以上のビタミンA、粘稠剤および多価アルコールを含有させたエマルション点眼液とすることによるエマルション点眼液の凍結融解による性状変化を抑制する方法。
(34) エマルション点眼液の凍結融解による性状変化の抑制が凍結融解試験(エマルション点眼液をポリエチレンテレフタレート製の点眼容器に充填し、当該エマルション点眼液を-20℃で、12~16時間凍結し、凍結した当該エマルション点眼液を室温で完全に融解するまで放置し、凍結前のエマルション点眼液のエマルションの粒子径および凍結融解後のエマルション点眼液のエマルションの粒子径をJIS Z 8826動的光散乱法(光子相関法)より測定する)における凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値を0~50nmに制御することである(33)記載の方法。
(35) 浸透圧比が1.4~1.6である(1)~(31)記載のエマルション点眼液。
(36) 緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つを更に含有する(1)~(31)又は(35)記載のエマルション点眼液。
(37)
(i)50,000単位/100mL以上のビタミンA、
(ii)下記(A)~(C)からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分
(A)0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩および界面活性剤、
(B)0.5%(w/v)以上のアミノ酸又はその塩および界面活性剤、ならびに
(C)粘稠剤および多価アルコール、ならびに
(iii)薬理活性成分、緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つ
のみからなる、(1)~(18)又は(35)記載のエマルション点眼液。
(38)
(i)50,000単位/100mL以上のビタミンA、
(ii)下記(a)~(c)からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分
(a)0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩および0.3%(w/v)以下の界面活性剤
(b)0.5%(w/v)以上のアミノ酸もしくはその塩および0.3%(w/v)以下の界面活性剤、ならびに
(c)粘稠剤および多価アルコール、ならびに
(iii)薬理活性成分、緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つ
のみからなる、(19)~(31)又は(35)記載のエマルション点眼液。
尚、前記(1)~(38)は任意に選択して組み合わせ又は準用することができる。
【0020】
<本発明の第2のエマルション点眼液>
(1)50,000単位/100mL以上のビタミンA、0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩、および界面活性剤を含有する、pHが6.0~8.0のエマルション点眼液であって、前記エマルション点眼液の苛酷試験後(エマルション点眼液を10mLガラスアンプルに10mL充填して密封し、70℃で7日間保存する)のビタミンAの残存率が50%以上であるエマルション点眼液。
(2)ビタミンAの含有量が50,000単位/100mLである(1)記載のエマルション点眼液。
(3)ビタミンAがビタミンA脂肪酸エステルである(1)又は(2)記載のエマルション点眼液。
(4)ビタミンA脂肪酸エステルがレチノールパルチミン酸エステルである(3)記載のエマルション点眼液。
(5)コンドロイチン硫酸エステル又はその塩がコンドロイチン硫酸エステルナトリウムである(1)~(4)記載のエマルション点眼液。
(6)界面活性剤の含有量が0.3%(w/v)以下である(1)~(5)記載のエマルション点眼液。
(7)界面活性剤の含有量が0.1~0.3%(w/v)である(1)~(6)記載のエマルション点眼液。
(8)界面活性剤がポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60およびステアリン酸ポリオキシル40からなる群より選択される少なくとも1つである(1)~(7)記載のエマルション点眼液。
(9)50,000単位/100mL以上のビタミンA、0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩および0.3%(w/v)以下の界面活性剤を含有するエマルション点眼液であって、pHが6.0~8.0であるエマルション点眼液。
(10)ビタミンAの含有量が50,000単位/100mLである(9)記載のエマルション点眼液。
(11)ビタミンAがビタミンA脂肪酸エステルである(9)又は(10)記載のエマルション点眼液。
(12)ビタミンA脂肪酸エステルがレチノールパルチミン酸エステルである(11)記載のエマルション点眼液。
(13)コンドロイチン硫酸エステル又はその塩がコンドロイチン硫酸エステルナトリウムである(9)~(12)記載のエマルション点眼液。
(14)界面活性剤の含有量が0.1~0.3%(w/v)である(9)~(13)記載のエマルション点眼液。
(15)界面活性剤がポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60およびステアリン酸ポリオキシル40からなる群より選択される少なくとも1つである(9)~(14)記載のエマルション点眼液。
(16)50,000単位/100mL以上のビタミンA、0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩および界面活性剤を含有し、pH6.0~8.0のエマルション点眼液とすることによる前記ビタミンAを安定化する方法。
(17)浸透圧比が1.4~1.6である(1)~(15)記載のエマルション点眼液。
(18)緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つを更に含有する(1)~(15)又は(17)記載のエマルション点眼液。
(19)
(i)50,000単位/100mL以上のビタミンA、
(ii)0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩および界面活性剤、ならびに
(iii)薬理活性成分、緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つ
のみからなる、(1)~(8)又は(17)記載のエマルション点眼液。
(20)
(i)50,000単位/100mL以上のビタミンA、
(ii)0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩および0.3%(w/v)以下の界面活性剤、ならびに
(iii)薬理活性成分、緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つ
のみからなる、(9)~(15)又は(17)記載のエマルション点眼液。
尚、前記(1)~(20)は任意に選択して組み合わせ又は準用することができる。
【0021】
<本発明の第3のエマルション点眼液>
(1)50,000単位/100mL以上のビタミンA、0.5%(w/v)以上のアミノ酸又はその塩および界面活性剤を含有する、pHが6.0~8.0のエマルション点眼液であって、前記エマルション点眼液の苛酷試験後(エマルション点眼液を10mLガラスアンプルに10mL充填して密封し、70℃で7日間保存する)のビタミンAの残存率が50%以上であるエマルション点眼液。
(2)ビタミンAの含有率が50,000単位/100mLである(1)記載のエマルション点眼液。
(3)ビタミンAがビタミンA脂肪酸エステルである(1)又は(2)記載のエマルション点眼液。
(4)ビタミンA脂肪酸エステルがレチノールパルチミン酸エステルである(3)記載のエマルション点眼液。
(5)アミノ酸又はその塩がL-アスパラギン酸カリウム及び/又はアミノエチルスルホン酸である(1)~(4)記載のエマルション点眼液。
(6)界面活性剤の含有量が0.3%(w/v)以下である(1)~(5)記載のエマルション点眼液。
(7)界面活性剤の含有量が0.1~0.3%(w/v)である(1)~(6)記載のエマルション点眼液。
(8)界面活性剤がポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60およびステアリン酸ポリオキシル40からなる群より選択される少なくとも1つである(1)~(7)記載のエマルション点眼液。
(9)50,000単位/100mL以上のビタミンA、0.5%(w/v)以上のアミノ酸又はその塩および0.3%(w/v)以下の界面活性剤を含有するエマルション点眼液であって、pHが6.0~8.0であるエマルション点眼液。
(10)ビタミンAの含有量が50,000単位/100mLである(9)記載のエマルション点眼液。
(11)ビタミンAがビタミンA脂肪酸エステルである(9)又は(10)記載のエマルション点眼液。
(12)ビタミンA脂肪酸エステルがレチノールパルチミン酸エステルである(11)記載のエマルション点眼液。
(13)アミノ酸又はその塩がL-アスパラギン酸カリウム及び/又はアミノエチルスルホン酸である(9)~(12)記載のエマルション点眼液。
(14)界面活性剤の含有量が0.1~0.3%(w/v)である(9)~(13)記載のエマルション点眼液。
(15)界面活性剤がポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60およびステアリン酸ポリオキシル40からなる群より選択される少なくとも1つである(9)~(14)記載のエマルション点眼液。
(16)50,000単位/100mL以上のビタミンA、0.5%(w/v)以上のアミノ酸又はその塩および界面活性剤を含有し、pH6.0~8.0のエマルション点眼液とすることによる前記ビタミンA安定化する方法。
(17)浸透圧比が1.4~1.6である(1)~(15)記載のエマルション点眼液。
(18)緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つを更に含有する(1)~(15)又は(17)記載のエマルション点眼液。
(19)
(i)50,000単位/100mL以上のビタミンA、
(ii)0.5%(w/v)以上のアミノ酸又はその塩および界面活性剤、ならびに
(iii)薬理活性成分、緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つ
のみからなる、(1)~(8)又は(17)記載のエマルション点眼液。
(20)
(i)50,000単位/100mL以上のビタミンA、
(ii)0.5%(w/v)以上のアミノ酸もしくはその塩および0.3%(w/v)以下の界面活性剤、ならびに
(iii)薬理活性成分、緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つ
のみからなる、(9)~(15)又は(17)記載のエマルション点眼液。
尚、前記(1)~(20)は任意に選択して組み合わせ又は準用することができる。
【0022】
<本発明の第4のエマルション点眼液>
(1)50,000単位/100mL以上のビタミンA、粘稠剤および多価アルコールを含有するエマルション点眼液であって、凍結融解試験(エマルション点眼液をポリエチレンテレフタレート製の点眼容器に充填し、当該エマルション点眼液を-20℃で、12~16時間凍結し、凍結した当該エマルション点眼液を室温で完全に融解するまで放置し、凍結前のエマルション点眼液のエマルションの粒子径および凍結融解後のエマルション点眼液のエマルションの粒子径をJIS Z 8826動的光散乱法(光子相関法)より測定する)における凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値が0~50nmであるエマルション点眼液。
(2)ビタミンAの含有量が50,000単位/100mLである(1)のエマルション点眼液。
(3)ビタミンAがビタミンA脂肪酸エステルである(1)又は(2)記載のエマルション点眼液。
(4)ビタミンA脂肪酸エステルがレチノールパルチミン酸エステルである(3)記載のエマルション点眼液。
(5)粘稠剤の含有量が0.01~0.5%(w/v)である(1)~(4)記載のエマルション点眼液。
(6)粘稠剤がポリビニルピロリドンK30、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン70、ヒアルロン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される少なくとも1つである(1)~(5)記載のエマルション点眼液。
(7)多価アルコールの含有量が0.1~1.8%(w/v)である(1)~(6)記載のエマルション点眼液。
(7-1)多価アルコールの含有量が0.5%(w/v)である(7)記載のエマルション点眼液。
(8)多価アルコールがグリセリン、プロピレングリコール、マンニトールおよびトロメタモールから選択される少なくとも1つである(1)~(7)又は(7-1)記載のエマルション点眼液。
(8-1)多価アルコールがプロピレングリコールである(8)のエマルション点眼液。
(9)凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値が0~30nmである(1)~(8)又は(8-1)記載のエマルション点眼液。
(10)凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値が0~10nmである(1)~(9)記載のエマルション点眼液。
(11)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有しない(1)~(10)記載のエマルション点眼液。
(12)50,000単位/100mL以上のビタミンA、粘稠剤および多価アルコールを含有するエマルション点眼液。
(13)ビタミンAの含有量が50,000単位/100mLである(12)記載のエマルション点眼液。
(14)ビタミンAがビタミンA脂肪酸エステルである(12)又は(13)記載のエマルション点眼液。
(15)ビタミンA脂肪酸エステルがレチノールパルチミン酸エステルである(14)記載のエマルション点眼液。
(16)粘稠剤の含有量が0.01~0.5%(w/v)である(12)~(15)記載のエマルション点眼液。
(17)粘稠剤がポリビニルピロリドンK30、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン70、ヒアルロン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される少なくとも1つである(12)~(16)記載のエマルション点眼液。
(18)多価アルコールの含有量が0.1~1.8%(w/v)である(12)~(17)記載のエマルション点眼液。
(18-1)多価アルコールの含有量が0.5%(w/v)である(18)記載のエマルション点眼液。
(19)多価アルコールがプロピレングリコール、マンニトール、グリセリンおよびトロメタモールから選択される少なくとも1つである(12)~(18)又は(18-1)記載のエマルション点眼液。
(19-1)多価アルコールがプロピレングリコールである(19)のエマルション点眼液。
(20)凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値が0~30nmである(12)~(19)又は(19-1)記載のエマルション点眼液。
(21)凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値が0~10nmである(12)~(20)記載のエマルション点眼液。
(22)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有しない(12)~(21)記載のエマルション点眼液。
(23)50,000単位/100mL以上のビタミンA、粘稠剤および多価アルコールを含有させたエマルション点眼液とすることによるエマルション点眼液の凍結融解による性状変化を抑制する方法。
(24)エマルション点眼液の凍結融解による性状変化の抑制が凍結融解試験(エマルション点眼液をポリエチレンテレフタレート製の点眼容器に充填し、当該エマルション点眼液を-20℃で、12~16時間凍結し、凍結した当該エマルション点眼液を室温で完全に融解するまで放置し、凍結前のエマルション点眼液のエマルションの粒子径および凍結融解後のエマルション点眼液のエマルションの粒子径をJIS Z 8826動的光散乱法(光子相関法)より測定する)における凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値を0~50nmに制御することである(23)記載の方法。
(25)pHが6.0~8.0である(1)~(22)記載のエマルション点眼液。
(26)浸透圧比が1.4~1.6である(1)~(22)記載のエマルション点眼液。
(27)緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、可溶剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つを更に含有する(1)~(22)記載のエマルション点眼液。
(28)
(i)50,000単位/100mL以上のビタミンA、
(ii)粘稠剤および多価アルコール、ならびに
(iii)薬理活性成分、緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つ
のみからなる、(1)~(11)、(25)又は(26)記載のエマルション点眼液。
(29)
(i)50,000単位/100mL以上のビタミンA、
(ii)粘稠剤および多価アルコール、ならびに
(iii)薬理活性成分、緩衝剤、安定剤、防腐剤、清涼化剤、粘稠剤、pH調整剤および溶解剤から選択される少なくとも1つ
のみからなる、(11)~(22)、(25)又は(26)記載のエマルション点眼液。
尚、前記(1)~(29)は任意に選択して組み合わせ又は準用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1~4のエマルション点眼液は、温度の影響を受け難く、広い温度範囲で安定であり、安全性の優れている、50,000単位/100mL以上のビタミンAを含有するエマルション点眼液を提供することができる。
【0024】
本発明の第2のエマルション点眼液は、例えば、さらに、50,000単位以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩および界面活性剤を含有する、ビタミンAの安定性に優れたエマルション点眼液を提供できる。
【0025】
本発明の第3のエマルション点眼液は、例えば、さらに、50,000単位以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のアミノ酸又はその塩および界面活性剤を含有する、ビタミンAの安定性に優れたエマルション点眼液を提供できる。
【0026】
本発明の第4のエマルション点眼液(50,000単位/100mL以上のビタミンA、粘稠剤および等張化剤を含有するエマルション点眼液)は、例えば、さらに、輸送時、寒冷地の顧客(医師、薬剤師、患者等)の手に渡った後等において、凍結融解が生じた場合でも、製品の品質に影響を及ぼすような性状変化を起こさないので、高品質のエマルション点眼液を顧客に提供できる。また、例えば、輸送時、寒冷地の顧客(医師、薬剤師、患者等)の手に渡った後等において、厳密な温度管理をする必要がない為、特別な輸送形態・保管形態(保温材、保温装置等)が不要であり、経済的である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0028】
本発明のエマルション点眼液に使用できるビタミンAは、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。ビタミンAとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体が挙げられる。より具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられ、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸が好ましく、レチノールパルミチン酸エステルが特に好ましい。
【0029】
本発明のエマルション点眼液に使用できるビタミンAは、前記ビタミンAの1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、ビタミンAの含有量は、ビタミンAの種類、他の配合成分の種類および含有量、該エマルション点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて50,000単位/100mL以上で適宜設定できる。ここで、「単位」は、ビタミンAの量を表す国際単位であるInternational Unitである。ビタミンAの量を測定する方法は、特に制限されないが、例えば、「第十六改正 日本薬局方の一般試験法 ビタミンA定量法」に記載の方法で測定することができる。
【0031】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、ビタミンAの総含有量は、50,000単位/100mL以上が好ましく、50,000~500,000単位/100mLがより好ましく、50,000~300,000単位/100mLがさらに好ましく、50,000~100,000単位/100mLがなおさらに好ましく、50,000単位/100mLが特に好ましい。
【0032】
本発明のエマルション点眼液に使用できるコンドロイチン硫酸エステル又はその塩は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。コンドロイチン硫酸エステル又はその塩としては、例えば、コンドロイチン硫酸エステル、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムが挙げられる。また、コンドロイチン硫酸エステルの塩としては、例えば、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウム等の金属との塩等が挙げられる。また、その由来についても特に制限はなく、市販のものを利用することが好ましい。
【0033】
本発明のエマルション点眼液に使用できるコンドロイチン硫酸エステル又はその塩は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、コンドロイチン硫酸エステル又はその塩の含有量は、コンドロイチン硫酸エステル又はその塩の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0034】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、コンドロイチン硫酸エステル又はその塩の総含有量は、0.5%(w/v)以上が好ましく、0.5~3.0%(w/v)がより好ましく、0.5~1.0%(w/v)がさらに好ましく、0.5%(w/v)が特に好ましい。
【0035】
本発明のエマルション点眼液に使用できる界面活性剤(可溶剤)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)およびPOE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油、POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル、POE(54)POP(39)グリコール、POE(120)POP(40)グリコール、POE(160)POP(30)グリコール、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられ、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)およびPOE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)が特に好ましい。
【0036】
両性界面活性剤としては、例えば、N-[2-[[2-(アルキルアミノ)エチル]アミノ]エチル]グリシンおよびその塩等が挙げられる。
【0037】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸等が挙げられる。
【0038】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
【0039】
これらの界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0040】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、界面活性剤の総含有量は、0.3%(w/v)以下が好ましく、0超~0.3%(w/v)がより好ましく、0.01~0.3%(w/v)がさらに好ましく、0.1~0.3%(w/v)が特に好ましい。
【0041】
本発明のエマルション点眼液に使用できるアミノ酸又はその塩は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。アミノ酸又はその塩としては、例えば、グリシン、アラニン、γ-アミノ酪酸、アスパラギン酸、L-アスパラギン酸カリウム、グルタミン酸、アルギニン、リジン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)等が挙げられる。中でも「医薬品製造販売指針 別冊 一般用医薬品製造販売承認基準 2012」(1)眼科用薬製造(輸入)承認基準にアミノ酸類として記載されているものに記載のL-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム、アミノエチルスルホン酸(タウリン)が特に好ましい。
【0042】
本発明のエマルション点眼液に使用できるアミノ酸又はその塩は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、アミノ酸又はその塩の含有量は、アミノ酸又はその塩の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0043】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、アミノ酸又はその塩の総含有量は、0.5%(w/v)以上が好ましく、0.5~5.0%(w/v)がより好ましく、0.5~3.0%(w/v)がさらに好ましく、0.5~2.0%(w/v)が特に好ましい。
【0044】
本発明のエマルション点眼液に使用できる粘稠剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90等のポリビニルピロリドン類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等のセルロース誘導体、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000等のポリエチレングリコール、デキストラン40、デキストラン70等のデキストラン類、ヒアルロン酸ナトリウム(精製ヒアルロン酸ナトリウム等)等のヒアルロン酸誘導体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アラビアゴム、ジェランガム、トラガント等が挙げられ、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90等のポリビニルピロリドン類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等のセルロース誘導体が好ましく、ポリビニルピロリドンK30、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン70、ヒアルロン酸ナトリウムおよびアルギン酸が特に好ましい。
【0045】
本発明のエマルション点眼液に使用できる粘稠剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、粘稠剤の含有量は、粘稠剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0046】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、粘稠剤の総含有量は、0.005~1.0%(w/v)が好ましく、0.01~0.5%(w/v)がより好ましく、0.01~0.3%(w/v)が特に好ましい。
【0047】
本発明のエマルション点眼液に使用できる多価アルコールは、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トロメタモール等が挙げられ、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マンニトールおよびトロメタモールが好ましく、グリセリン、プロピレングリコール、マンニトールおよびトロメタモールが特に好ましい。また、多価アルコールはd体、l体およびdl体のいずれであってもよい。
【0048】
本発明のエマルション点眼液に使用できる多価アルコールは、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、多価アルコールの含有量は、多価アルコールの種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0049】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、多価アルコールの総含有量は、0.05~5%(w/v)が好ましく、0.1~1.8%(w/v)がより好ましく、0.3~0.7%(w/v)が特に好ましい。
【0050】
本発明のエマルション点眼液に使用できるpH調整剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、希塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられ、希塩酸、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0051】
本発明のエマルション点眼液に使用できるpH調整剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、pH調整剤の含有量は、pH調整剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0052】
本発明のエマルション点眼薬のpHは、医薬として許容されるものであれば、特に制限されないが、6.0~8.0が好ましい。
【0053】
本発明において、「広範囲の温度で医薬的に安定」とは、広い温度範囲において、医薬として許容されるものであれば、特に制限されないが、医薬としてのエマルション点眼液の物理化学的変化が抑制され得ることをいい、例えば、有効成分であるビタミンAの、分解等による減少が抑制され得ること、及び/又は点眼液の性状変化、特にエマルションの粒子径の変化が抑制され得ることを含む。
【0054】
本発明のエマルション点眼薬は、例えば、後述する苛酷試験(70℃、1週間)した場合、そのビタミンAの残存率が50%以上であるか、及び/又は後述する凍結融解試験(-20℃で、12~16時間凍結した後、室温で完全に融解)した場合、凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値が0~50nm(粒子径は、JIS Z 8826動的光散乱法(光子相関法)より測定される)であるとき、「広範囲の温度で医薬的に安定」といえる。
【0055】
本発明のエマルション点眼薬は、広範囲の温度、例えば、-80℃から100℃、好ましくは-50℃から80℃、更に好ましくは-20℃から70℃の範囲で医薬的に安定である。
【0056】
本発明のエマルション点眼液の苛酷試験は、例えば、次のことを意味する。
被験製剤を10mLガラスアンプルに10mL充填して密封し、70℃で7日間保存する。
【0057】
本発明のエマルション点眼液の凍結融解試験は、次のことを意味する。
【0058】
凍結融解操作:本発明のエマルション点眼液をポリエチレンテレフタレート製の点眼容器に充填し、当該エマルション点眼液を-20℃で、12~16時間凍結し、凍結した当該エマルション点眼液を室温で完全に融解するまで放置する。
【0059】
エマルション径の測定:凍結前の本発明のエマルション点眼液のエマルションの粒子径および凍結融解後のエマルション点眼液のエマルションの粒子径をJIS Z 8826動的光散乱法(光子相関法)(ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ‐1000ZS(大塚電子(株)(設定温度:25℃))により測定する。
【0060】
エマルション径の差:凍結前の本発明のエマルション点眼液のエマルションの粒子径と凍結融解後の本発明のエマルション点眼液のエマルションの粒子径の差の絶対値を求める。
【0061】
本発明のエマルション点眼液において、凍結前の本発明のエマルション点眼液のエマルションの粒子径と凍結融解後の本発明のエマルション点眼液のエマルションの粒子径の差の絶対値は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されないが、50nm以下が好ましく、0~30nmがより好ましく、0~10nmがさらに好ましく、0~5nmが特に好ましい。
【0062】
本発明の「少なくとも1つ」は、1つ又は2つ以上を意味する。尚、2つ以上の場合、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、2~30が好ましく、2~12がより好ましく、2~8がさらに好ましく、2~4が特に好ましい。
【0063】
本発明のエマルション点眼液は、本発明の効果を妨げない限り、種々の薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)を適当量含有することができ、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)としては、例えば、クロモグリク酸塩、アンレキサノクス、イブジラスト、スプラタスト、ペミロラストカリウム、トラニラスト、オロパタジン塩酸塩、レボカバスチン塩酸塩、アシタザノラスト等の抗アレルギー剤、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ケトチフェンフマル酸塩等の抗ヒスタミン剤、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等の血管収縮剤(充血除去剤)、プラノプロフェン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、アズレンスルホン酸、ε-アミノカプロン酸、硫酸亜鉛、硫酸亜鉛水和物、乳酸亜鉛、リゾチーム、サリチル酸、トラネキサム酸、甘草、これらの塩等の抗炎症剤、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、ネオスチグミンメチル硫酸塩、トロピカミド、ヘレニエンおよび硫酸アトロピン等の眼筋調節薬剤、アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニドおよび塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の殺菌剤、グリシン、アラニン、γ-アミノ酪酸、アスパラギン酸、L-アスパラギン酸カリウム、グルタミン酸、アルギニン、リジン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム等のアミノ酸類、ビタミンB1、ビタミンB2(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)、ナイアシン(ニコチン酸およびニコチン酸アミド)、パントテン酸、パンテノール、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサールおよびピリドキサミン)、ビオチン、葉酸、ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミンおよびアデノシルコバラミン)、ビタミンE(酢酸トコフェロール、酢酸-d-αトコフェロール)等のビタミン類、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸等が挙げられる。
【0064】
本発明のエマルション点眼液に使用できる薬理活性成分は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、薬理活性成分の含有量は、薬理活性成分の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定でき、「医薬品製造販売指針 別冊 一般用医薬品製造販売承認基準 2012」に記載の(1)眼科用薬製造(輸入)承認基準に基づき、適宜設定することが好ましい。
【0065】
本発明のエマルション点眼液に使用できる緩衝剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。緩衝剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等のホウ酸又はその塩、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等のリン酸又はその塩、炭酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等の炭酸又はその塩、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等のクエン酸又はその塩、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等の酢酸又はその塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等のアスパラギン酸又はその塩、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム水和物(エデト酸ナトリウム水和物)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のエチレンジアミン酢酸類又はその塩、ε-アミノカプロン酸等のアミノ酸等が挙げられ、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等のホウ酸又はその塩、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等のリン酸又はその塩およびε-アミノカプロン酸等のアミノ酸が好ましく、ホウ酸、ホウ砂、又はε-アミノカプロン酸が特に好ましい。
【0066】
本発明のエマルション点眼液に使用できる緩衝剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0067】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、緩衝剤の総含有量は、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.005~3%(w/v)がより好ましく、0.01~2%(w/v)が特に好ましい。
【0068】
本発明のエマルション点眼液に使用できる安定剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。安定化剤としては、例えば、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられ、ジブチルヒドロキシトルエン又はエデト酸ナトリウム水和物が特に好ましい。
【0069】
本発明のエマルション点眼液に使用できる安定剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、安定剤の含有量は、安定剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0070】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、安定剤の総含有量は、0.001~1%(w/v)が好ましく、0.005~0.5%(w/v)がより好ましく、0.01~0.1%(w/v)が特に好ましい。
【0071】
本発明のエマルション点眼液に使用できる防腐剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。防腐剤としては、例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸ポリヘキサニド等のビグアニド化合物、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、グローキル(ローディア社製 商品名)、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸等が挙げられ、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、フェネチルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸が好ましく、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、フェネチルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸が特に好ましい。
【0072】
本発明のエマルション点眼液に使用できる防腐剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、防腐剤の含有量は、防腐剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0073】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、防腐剤の総含有量は、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.5%(w/v)がより好ましく、0.001~0.2%(w/v)が特に好ましい。
【0074】
本発明のエマルション点眼液に使用できる清涼化剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。清涼化剤としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ローズ油、ケイヒ油、スペアミント油、樟脳油、クールミント、ハッカ油等のテルペノイドを含有する精油、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、ネロール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル等のテルペノイドが挙げられ、メントール、カンフル、ボルネオールおよびゲラニオールが好ましく、メントール、ボルネオールが特に好ましい。また、テルペノイドはd体、l体およびdl体のいずれであってもよく、例えば、l-メントール、d-メントール、dl-メントール、dl-カンフル、d-カンフル、dl-ボルネオール、d-ボルネオール等が挙げられ、l-メントール、dl-カンフル、d-カンフルおよびd-ボルネオールが好ましい。
【0075】
本発明のエマルション点眼液に使用できる清涼化剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、清涼化剤の含有量は、清涼化剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0076】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、清涼化剤の総含有量は、0.001~0.5%(w/v)が好ましく、0.001~0.1%(w/v)がより好ましく、0.005~0.05%(w/v)が特に好ましい。
【0077】
本発明のエマルション点眼液に使用できる等張化剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。等張化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等のナトリウム塩、塩化カリウム、酢酸カリウム等のカリウム塩、塩化カルシウム等のカルシウム塩、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トロメタモール等の多価アルコール等が挙げられ、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マンニトールおよびトロメタモールが好ましく、グリセリン、プロピレングリコール、マンニトールおよびトロメタモールが特に好ましい。
【0078】
本発明のエマルション点眼液に使用できる等張化剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、等張化剤の含有量は、等張化剤の種類、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0079】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、等張化剤の総含有量は、0.05~5%(w/v)が好ましく、0.1~1.8%(w/v)がより好ましく、0.3~0.7%(w/v)が特に好ましい。
【0080】
本発明のエマルション点眼液の浸透圧は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、浸透圧比は、0.2~2が好ましく、0.5~1.8がより好ましく、1.0~1.6がさらに好ましく、1.4~1.6が特に好ましい。
【0081】
尚、浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定でき、また、浸透圧比測定用標準液(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0082】
本発明のエマルション点眼液に使用できる溶解剤(溶媒および/又は分散媒)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。溶解剤(溶媒および/又は分散媒)としては、例えば、水(蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等)、含水エタノール等の水性溶解剤が挙げられる。さらに、溶解剤の含有量は、他の配合成分の種類および含有量、該点眼液の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0083】
本発明のエマルション点眼液において、例えば、溶解剤が水の場合、点眼液の総量に対して、85%(w/v)以上が好ましく、90%(w/v)以上がより好ましく、93%(w/v)以上がさらに好ましく、96%(w/v)以上が特に好ましい。
【0084】
本発明のエマルション点眼液は、安定化成分(安定剤)としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有しない点眼液であることが好ましい。
【0085】
本発明のエマルション点眼液のエマルションの粒子径は、120nm以下が好ましく、30~120nmがより好ましく、55~110nmがさらに好ましく、80~100nmが特に好ましい。
【0086】
本発明のエマルション点眼液のエマルションの粒子径は平均粒子径を意味し、JIS Z 8826動的光散乱法(光子相関法)で規定される方法で求めることができる。
【0087】
本発明のエマルション点眼液は、ビタミンA、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、界面活性剤、アミノ酸、粘稠剤、多価アルコールおよび他の含有成分を必要に応じて所望の含有量となるように溶媒又は分散媒に添加することによって調製される。例えば、精製水に前記配合成分を溶解又は分散させ、所定のpHおよび浸透圧に調整し、濾過滅菌等によって滅菌処理することで調製できる。
【0088】
本発明のエマルション点眼液は、任意の容器(本体、中栓、キャップ)に収容して提供できる。また、このエマルション点眼液を収容する容器は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。エマルション点眼液を収容する容器としては、例えば、ガラス製容器、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリメチルペンテン、これらを構成するモノマーの共重合体、これらの材質を含む2種以上を組み合わせたプラスチック製容器等が挙げられる。尚、ここで組み合わせとは、異なる材質を混合してもよいし、異なる材質のものを層構造としてもよい。さらに、前記容器は、繰り返し使用可能なマルチドーズ形態の容器であっても、1回使いきりのユニットドーズ形態の容器であってもよい。
【0089】
本発明のエマルション点眼液は、コンタクトレンズ用点眼液としても使用できる。さらに、前記エマルション点眼液をコンタクトレンズ用点眼液として使用する場合、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(ISO18369-1:2006、ISO18369-1、AMENDMENT1)を含む市販されているあらゆるコンタクトレンズに適用でき、コンタクトレンズを装用した状態でも使用できる。
【0090】
本発明のエマルション点眼液は、目のかすみ(目やにの多いときなど)、目の疲れ、結膜充血、目のかゆみ、眼病予防(水泳のあと、ほこりや汗が目に入ったときなど)、眼瞼炎(まぶたのただれ)、紫外線その他の光線による眼炎(雪目など)、ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感等、ソフトコンタクトレンズを装着しているときの不快感等、の症状を緩和・改善・抑制に使用できる。また、角膜の保護・保水に使用することもできる。
【0091】
本発明のエマルション点眼液は、所望の薬効を奏するのに十分であれば用法用量に特に制限はない。例えば、点眼滴数は、1回1~3滴/眼が好ましく、1回1~2滴/眼がより好ましく、1回1滴/眼が特に好ましい。また、点眼回数は、1~6回/日が好ましく、3~6回/日が好ましく、5~6回/日が特に好ましい。また、点眼1滴量は、20~60μLが好ましく、25~50μLがより好ましく、30~40μLが特に好ましい。
【実施例0092】
以下に製剤例ならびに苛酷試験および凍結融解試験の結果を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0093】
(製剤例)
以下の表1および表2に本発明の代表的な製剤例を示す。なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤100mL中の含量である。
【0094】
【0095】
【0096】
なお、前記製剤例1~10における薬理活性成分および添加剤の種類や配合量を適宜調整し、所望の組成の製剤を得ることができる。
【0097】
<実施例1および2>
(苛酷試験)
1.被験製剤の調製
174万単位/gのレチノールパルミチン酸エステル(0.29g、50,000単位)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(3.0g)を65℃でよく混練し、65℃に加温した700mLの水をそれに加えて攪拌した。それを室温まで冷却した後、さらに水を加えて800mLとした。この液40mLをとり、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム(0.25g)、イプシロン-アミノカプロン酸(0.25g)、ホウ酸(0.25g)を加えて攪拌・溶解後、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH6.0に調整し、水を加えて全量50mLとすることにより実施例1の製剤を調製した。
【0098】
実施例1の調製方法と同様の方法にて、実施例2および参考例1の製剤を調製した。
【0099】
2.試験方法
苛酷試験操作:被験製剤を10mLガラスアンプルに10mL充填し、70℃で7日間保存した。
【0100】
残存量の定量と残存率の算出:苛酷試験前後の被験製剤のレチノールパルミチン酸エステルの含有量を、製剤中のレチノールパルミチン酸エステルが250~750単位/mLとなるように2-プロパノールで希釈し、日本薬局方「レチノールパルミチン酸エステル標準品」を標準品として絶対検量線法を用いた高速液体クロマトグラフィー法(第十六改正日本薬局方)により定量し、下記式に基づいて残存率(%)を算出した。
【0101】
レチノールパルミチン酸エステル残存率(%)={保存後のレチノールパルミチン酸エステル含量/保存前のレチノールパルミチン酸エステル含量}×100
【0102】
高速液体クロマトグラフィー測定条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:325nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの高速液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填する(YMC‐Pack ODS-AM AM12S05-1546WT、YMC)。
カラム温度:50℃付近の一定温度
移動相:メタノール
流速:約1.5mL/min
【0103】
3.試験結果および考察
試験結果を表3に示す。
【0104】
【0105】
表3の参考例1から50,000単位/100mL以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩と1%(w/v)のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を配合し、pHを6.0~8.0とした被験製剤においては、苛酷試験を実施した場合、レチノールパルミチン酸エステル(ビタミンA)の残存率低下が認められた。
【0106】
一方、実施例1および2から50,000単位/100mL以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩と0.3%(w/v)のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を配合し、pHを6.0~8.0とした被験製剤においては、苛酷試験を実施した場合であってもレチノールパルミチン酸エステル(ビタミンA)の残存率が50%以上となった。
【0107】
これらの結果から50,000単位/100mL以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のコンドロイチン硫酸エステル又はその塩を共存させたエマルション点眼液に0.3%(w/v)以下の界面活性剤を配合し、かつ、そのpHを6.0~8.0に調整することで、苛酷試験を実施した場合であってもレチノールパルミチン酸エステル(ビタミンA)の残存率が50%以上となることが示された。
【0108】
<実施例3~6>
(苛酷試験)
1.被験製剤の調製
174万単位/gのレチノールパルミチン酸エステル(0.29g、50,000単位)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(3.0g)を65℃でよく混練し、別途65℃に加温した700mLの水をそれに加えて攪拌した。それを室温まで冷却した後、水を加えて800mLとした。この液40mLをとり、タウリン(アミノエチルスルホン酸:0.25g)、L-アスパラギン酸カリウム(0.25g)、イプシロン-アミノカプロン酸(0.25g)、ホウ酸(0.25g)を加えて攪拌・溶解後、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH6.0に調整し、水を加えて全量50mLとすることにより実施例3の製剤を調製した。
【0109】
実施例3の調製方法と同様の方法にて、参考例2~4および実施例4~6の製剤を調製した。
【0110】
2.試験方法
苛酷試験操作:被験製剤を10mLガラスアンプルに10mL充填し、70℃で7日間保存した。
【0111】
残存量の定量と残存率の算出:苛酷試験前後の被験製剤のレチノールパルミチン酸エステルの含有量を、製剤中のレチノールパルミチン酸エステルが250~750単位/mLとなるように2-プロパノールで希釈し、日本薬局方「レチノールパルミチン酸エステル標準品」を標準品として絶対検量線法を用いた高速液体クロマトグラフィー法(第十六改正日本薬局方)を用いて定量し、下記式に基づいて残存率(%)を算出した。
【0112】
レチノールパルミチン酸エステル残存率(%)={保存後のレチノールパルミチン酸エステル含量/保存前のレチノールパルミチン酸エステル含量}×100
【0113】
高速液体クロマトグラフィー測定条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:325nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの高速液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填する(YMC‐Pack ODS-AM AM12S05-1546WT、YMC)。
カラム温度:50℃付近の一定温度
移動相:メタノール
流速:約1.5mL/min
【0114】
3.試験結果および考察
試験結果を表4に示す。
【0115】
【0116】
表4の参考例2~4から、50,000単位/100mL以上のビタミンAとアミノ酸又はその塩を共存させ、かつ、アミノ酸又はその塩の含有量を0.5%(w/v)以上とした被験製剤において、苛酷試験を実施した結果、レチノールパルミチン酸エステル(ビタミンA)の残存率低下が認められた。
【0117】
一方、実施例3~6から50,000単位/100mL以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のアミノ酸又はその塩と0.3w/v%のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を配合し、pHを6.0~8.0とした被験製剤においては、苛酷試験を実施した場合であってもレチノールパルミチン酸エステル(ビタミンA)の残存率が50%以上となった。
【0118】
これらの結果から、50,000単位/100mL以上のビタミンAと0.5%(w/v)以上のアミノ酸又はその塩を共存させたエマルション点眼液に0.3%(w/v)以下の界面活性剤を配合し、かつ、そのpHを6.0~8.0に調整することで、苛酷試験を実施した場合であってもレチノールパルミチン酸エステル(ビタミンA)の残存率が50%以上となることが示された。
【0119】
<実施例7>
(凍結融解試験)
1.被験製剤の調製
174万単位/gのレチノールパルミチン酸エステル(0.29g、50,000単位)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(2.0g)、ポリソルベート80(1.0g)を65℃でよく混練し、65℃に加温した700mLの水をそれに加えて攪拌した。それを室温まで冷却した後、さらに水を加えて800mLとした。この液40mLをとり、プロピレングリコール(0.25g)、ヒドロキシエチルセルロース(0.05g)、デキストラン70(0.05g)を加えて攪拌・溶解した後、それに水を加えて全量50mLとすることにより実施例7の製剤を調製した。
【0120】
実施例7の調製方法と同様の方法にて、参考例5~6の製剤を調製した。
【0121】
2.試験方法
凍結融解操作:被験製剤をポリエチレンテレフタレート製の点眼容器に充填し、当該被験製剤を-20℃で、12~16時間凍結し、凍結した当該被験製剤を室温で完全に融解するまで放置した。
【0122】
エマルション径の測定:凍結前の被験製剤のエマルションの粒子径および凍結融解後の被験製剤のエマルションの粒子径をJIS Z 8826動的光散乱法(光子相関法)(ゼータ電位・粒径測定システムELSZ‐1000ZS(大塚電子(株)(設定温度:25℃))により測定した。
【0123】
エマルション径の差:凍結前の被験製剤のエマルションの粒子径と凍結融解後の被験製剤のエマルションの粒子径の差の絶対値を求めた。
【0124】
エマルション径の差=|(凍結前の被験製剤のエマルションの粒子径)-(凍結融解後の被験製剤のエマルションの粒子径)|
【0125】
3.試験結果および考察
試験結果を表5に示す。
【0126】
【0127】
表5の参考例5および6から、50,000単位/100mL以上のビタミンAと粘稠剤であるヒドロキシエチルセルロースおよびデキストランを含有する被験製剤を凍結融解した場合に、その凍結前と凍結融解後で被験製剤の性状変化が生じること、すなわち、凍結前と凍結融解後ではエマルションの粒子径が大幅に変化することを見出した。また、参考例6の被験製剤においては凍結融解後に白濁等の明確な性状変化が認められた。
【0128】
一方、実施例7から50,000単位/100mL以上のビタミンAと粘稠剤であるヒドロキシエチルセルロースおよびデキストランを含有する被験製剤に多価アルコールであるプロピレングリコールを配合することで、凍結融解後の性状変化を抑制すること、すなわち、凍結前のエマルションの粒子径と凍結融解後のエマルションの粒子径の差の絶対値を0~50nmに制御できることが示された。また、実施例7の被験製剤においては凍結融解後においても白濁等の明確な性状変化が認められなかった。