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特開2022-116254心筋梗塞の再構成された高密度リポタンパク質治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116254
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】心筋梗塞の再構成された高密度リポタンパク質治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20220802BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220802BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220802BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220802BHJP
   A61K 9/19 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P9/10
A61P3/06
A61K9/08
A61K47/24
A61K47/26
A61K47/28
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K9/19
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022089334
(22)【出願日】2022-06-01
(62)【分割の表示】P 2019524144の分割
【原出願日】2017-11-10
(31)【優先権主張番号】62/420,050
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/472,240
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500021413
【氏名又は名称】シーエスエル、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・ライト
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・シアラー
(72)【発明者】
【氏名】デニス・ダンドレア
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ジル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ダフィ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中程度の腎機能障害(Mod RI)を有するヒト患者における急性心筋梗塞(MI)イベント後のさらなるMIイベントの可能性を減少させるための製剤を提供する。
【解決手段】急性心筋梗塞(MI)イベント後の、中程度の腎機能障害(Mod RI)を有するヒト患者を治療し、さらなるMIイベントの可能性を減少させるための再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤であって、該rHDL製剤は、少なくとも6gのアポリポタンパク質AI(ApoA-I)、脂質、安定剤、及び、場合により界面活性剤を含み、該製剤中のアポリポタンパク質とリン脂質比は、約1:20~1:120(モル:モル)である、前記rHDL製剤である。前記脂質としてはホスファチジルコリンが好ましく、前記安定剤としてはスクロースが好ましく、前記界面活性剤としてはコール酸ナトリウムが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性心筋梗塞(MI)イベント後に、ヒトにおいてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させるための方法であって、
該急性MIイベントの約七(7)日以内に、アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を、患者に投与する工程であって、アポリポタンパク質と脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)である、前記工程と;
続いて、好ましくは、少なくとも約四(4)週間、ヒトにrHDL製剤を投与し、それによって、ヒトの肝および/または腎機能において実質的な変更をもたらさずに、該ヒトにおいてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させる工程と
を含む前記方法。
【請求項2】
ヒトにおいて急性心筋梗塞(MI)イベントを治療するための方法であって、
該急性MIイベントの約七(7)日以内に、再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤、アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を、患者に投与する工程であって、アポリポタンパク質とリン脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)である、前記工程と;
続いて、好ましくは、少なくとも約四(4)週間、ヒトにrHDL製剤を投与し、それによって、ヒトの肝および/または腎機能において実質的な変更をもたらさずに、該ヒトにおいて急性心筋梗塞(MI)イベントを治療する工程と
を含む前記方法。
【請求項3】
アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤であって、
該アポリポタンパク質と該脂質との間の比が、ヒトの患者において、コレステロール引き抜き能(CEC)を増加させることにおける使用のために、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、急性心筋梗塞(MI)イベント後に、該rHDL製剤が、急性MIイベントの約七(7)日以内に、該ヒトの患者に投与され、次いで、続いて、好ましくは、少なくとも約四(4)週間該患者に投与される、前記再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤。
【請求項4】
アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤であって、
該アポリポタンパク質と該脂質との間の比が、ヒトの患者において急性心筋梗塞(MI)イベントを治療することにおける使用のための、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、該rHDL製剤が、急性MIイベントの約七(7)日以内に、該ヒトの患者に投与され、次いで、続いて、好ましくは、少なくとも約四(4)週間該患者に投与される、前記再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤。
【請求項5】
rHDL製剤のその後の投与は、毎週である、請求項1もしくは請求項2に記載の方法または請求項3もしくは請求項4に記載の使用のためのrHDL製剤。
【請求項6】
ヒトの患者におけるコレステロール引き抜き能(CEC)の増加を含む、請求項2に記載の方法または請求項4に記載の使用のためのrHDL製剤。
【請求項7】
総CECの増加は、1.5倍~2.5倍の範囲となる、請求項1もしくは請求項6に記載の方法または請求項4もしくは請求項6に記載の使用のためのrHDL製剤。
【請求項8】
ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能の増加は、約3倍~約5倍である、請求
項1、請求項6もしくは請求項7に記載の方法または請求項4、請求項6もしくは請求項7に記載の使用のためのrHDL製剤。
【請求項9】
ヒトの患者は、急性MIイベントの五(5)日以内に、rHDL製剤を最初に投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項10】
ヒトの患者は、急性MIイベント後または血管造影用の造影剤の投与後12時間より後に、rHDL製剤を最初に投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項11】
rHDL製剤は、静脈内に(IV)注入される、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項12】
注入の速度は、1時間当たりアポリポタンパク質約1~3gである、請求項11に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項13】
肝機能の有意な変更は、正常値範囲の上限(ULN)の3倍を超えるアラニンアミノトランスフェラーゼ活性(ALT)および/または少なくとも2×ULNの、総ビリルビンの増加である、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項14】
腎機能における有意な変更は、ベースライン値の少なくとも1.5倍の血清クレアチニンおよび/または腎代替療法の必要性として測定される、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項15】
腎機能における有意な変更は、60mL/分/m未満(例えば、60mL/分/1.73m未満)の推定糸球体ろ過率(eGFR)として測定される、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項16】
患者は、急性MIイベントの5日以内に第1の用量を投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項17】
患者は、急性MIイベントの少なくとも12時間または急性MIイベント後もしくは血管造影用の造影剤の投与後12時間より後に、第1の用量を投与される、請求項16に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項18】
rHDL製剤におけるアポリポタンパク質の量は、少なくとも2gもしくは少なくとも6gである、請求項1~17のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項19】
アポリポタンパク質は、アポ-AIもしくはその断片である、請求項18に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項20】
安定剤は、約1.0%~6.0%w/w未満;約1.0~5.9%(w/w);約3.0~5.9%(w/w);約4.0~5.5%(w/w);約4.3~5.3%(w/w);もしくは約4.6~4.8%(w/w)の濃度でrHDL製剤中に存在する、請求項1~19のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項21】
アポリポタンパク質と安定剤との間の比は、約1:1(w:w)~約1:7(w:w);約1:1(w:w)~約1:3(w:w);約1:1(w:w)~約1:2.4(w:
w);もしくは約1:1(w:w)から1:2(w:w)未満である、請求項1~20のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項22】
安定剤は、スクロースである、請求項1~21のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項23】
アポリポタンパク質と脂質との間の比は、約1:20~約1:100(モル:モル);約1:20~約1:75(モル:モル);または約1:45~1:65(モル:モル)である、請求項1~22のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項24】
rHDL製剤は、界面活性剤を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項25】
界面活性剤は、約0.5~1.5g/Lである、請求項24に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項26】
界面活性剤のレベルは、アポリポタンパク質約0.015~0.030g/gである、請求項24もしくは請求項25に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項27】
界面活性剤は、胆汁酸塩もしくは胆汁酸である、請求項24~26のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項28】
界面活性剤は、コール酸ナトリウムである、請求項27に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項29】
脂質は、リン脂質である、請求項1~28のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項30】
リン脂質は、ホスファチジルコリンである、請求項29に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項31】
急性心筋梗塞(MI)イベント後に、ヒトの患者においてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させるための方法であって、
アポA-I約0.5~1.5g/Lおよび/または約0.010~0.030g/g、ならびにスクロース約1.0%~6.0%w/w未満からなる群から選択されるレベルの、アポA-I少なくとも6g、ホスファチジルコリン、安定剤およびコール酸ナトリウムを含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を、該急性MIイベントの約七(7)日以内に、患者に投与する工程であって、該アポA-Iと該ホスファチジルコリンとの間の比が、約1:20から約1:120(モル:モル)である、前記工程と;続いて、少なくとも四(4)週間、rHDL製剤をヒトに投与し、それによって、該ヒトの肝および/または腎機能において実質的な変更をもたらさずに、該ヒトの患者においてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させる工程と
を含み、該肝機能における実質的な変更が、正常値範囲の上限(ULN)の約2もしくは3倍を超えるALT;またはULNの少なくとも1.5~2倍の、総ビリルビンの増加であり;腎機能における該実質的な変更が、ベースライン値の約1.2~1.5倍以上の血清クレアチニンおよび/またはほぼ90mL/分/m未満(例えば、90mL/分/1.73m未満)のeGFRである、前記方法。
【請求項32】
アポA-I約0.5~1.5g/Lおよび/または約0.010~0.030g/g、ならびにスクロース約1.0%~6.0%w/w未満からなる群から選択されるレベルの
、アポA-I少なくとも6g、ホスファチジルコリン、安定剤およびコール酸ナトリウムを含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤であって、
急性MIイベントの約七(7)日以内の、ヒトの患者においてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させることにおける使用のために、該アポA-Iと該ホスファチジルコリンとの間の比が、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、続いて、少なくとも四(4)週間該ヒトの患者に投与され、それによって、ヒトの肝および/または腎機能において実質的な変更をもたらさずに、該ヒトの患者においてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させ;
該肝機能における実質的な変更が、正常値範囲の上限(ULN)の約2もしくは3倍を超えるALTが;またはULNの少なくとも1.5~2倍の、総ビリルビンの増加;腎機能における該実質的な変更が、血清クレアチニンのベースライン値の約1.2~1.5倍以上および/またはeGFRほぼ90mL/分/m未満(例えば、90mL/分/1.73m未満)である、前記再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤。
【請求項33】
これまでMIイベントを経験したことがない、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していない、中等度の腎機能障害(Mod RI)を伴うヒトの患者において、主要有害心臓イベント(MACE)のリスクを低下させるための方法であって、
アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を、患者に投与する工程であって、該アポリポタンパク質と該脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、それによって、該患者においてMACEのリスクを低下させる前記工程
を含む前記方法。
【請求項34】
これまでMIイベントを経験したことがない、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していない、中等度の腎機能障害(Mod RI)を伴うヒトの患者においてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させるための方法であって、
アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を、患者に投与する工程であって、該アポリポタンパク質と該脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、それによって、該CECを増加させる前記工程
を含む前記方法。
【請求項35】
アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤であって、
これまでMIイベントを経験したことがない、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していない、中等度の腎機能障害(Mod RI)を伴うヒトの患者においてMACEのリスクを低下させる方法における使用のために、該アポリポタンパク質と該脂質との間の比が、約1:20から約1:120(モル:モル)である、前記再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤。
【請求項36】
アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤であって、
これまでMIイベントを経験したことがない、または治療開始の7日以内にMIイベントを経験していない中等度の腎機能障害(Mod RI)を伴うヒトの患者において、コレステロール引き抜き能(CEC)を増加させる方法における使用のために、該アポリポタンパク質と該脂質との間の比が、約1:20から約1:120(モル:モル)である、前記再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤。
【請求項37】
rHDL製剤は、毎週、好ましくは、少なくとも約四(4)週間投与される、請求項33もしくは請求項34に記載の方法または請求項35もしくは請求項36に記載の使用の
ためのrHDL製剤。
【請求項38】
ヒトの患者においてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させる工程を含む、請求項33に記載の方法または請求項35に記載の使用のためのrHDL製剤。
【請求項39】
総CECの増加は、1.5倍~2.5倍の範囲となる、請求項34もしくは請求項38に記載の方法または請求項36もしくは請求項38に記載の使用のためのrHDL製剤。
【請求項40】
ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能の増加は、約3倍~約5倍である、請求項34、38もしくは39に記載の方法または請求項36、38もしくは39に記載の使用のためのrHDL製剤。
【請求項41】
ヒトの患者は、血管造影用の造影剤の投与の12時間後より後に、rHDL製剤を最初に投与される、請求項33~40のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項42】
rHDL製剤は、静脈内に(IV)注入される、請求項33~41のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項43】
注入の速度は、1時間当たりアポリポタンパク質約1~3gである、請求項42に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項44】
治療は、腎および/または肝機能において実質的な変更を引き起こさない、請求項33~43のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項45】
rHDL製剤におけるアポリポタンパク質の量は、少なくとも2gもしくは少なくとも6gである、請求項33~44のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項46】
アポリポタンパク質は、アポ-AIもしくはその断片である、請求項33~45のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項47】
安定剤は、約1.0%~6.0%w/w未満;約1.0~5.9%(w/w);約3.0~5.9%(w/w);約4.0~5.5%(w/w);約4.3~5.3%(w/w);もしくは約4.6~4.8%(w/w)の濃度でrHDL製剤中に存在する、請求項33~46のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項48】
アポリポタンパク質と安定剤との間の比は、約1:1(w:w)~約1:7(w:w);約1:1(w:w)~約1:3(w:w);約1:1(w:w)~約1:2.4(w:w);もしくは約1:1(w:w)から1:2(w:w)未満である、請求項33~47のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項49】
安定剤は、スクロースである、請求項33~48のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項50】
アポリポタンパク質と脂質との間の比は、約1:20~約1:100(モル:モル);約1:20~約1:75(モル:モル);もしくは約1:45~1:65(モル:モル)である、請求項33~49のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項51】
rHDL製剤は、界面活性剤を含む、請求項33~50のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項52】
界面活性剤は、約0.5~1.5g/Lである、請求項51に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項53】
界面活性剤のレベルは、アポリポタンパク質1g当たり約0.015~0.030gである、請求項51もしくは請求項52に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項54】
界面活性剤は、胆汁酸塩もしくは胆汁酸である、請求項51~53のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項55】
界面活性剤は、コール酸ナトリウムである、請求項54に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項56】
脂質は、リン脂質である、請求項33~55のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項57】
リン脂質は、ホスファチジルコリンである、請求項56に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項58】
Mod RIを有するおよびこれまでMIイベントを経験したことがない、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していないヒトの患者において、MACEのリスクを低下するおよび/またはコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させるための方法であって、
アポA-I約0.5~1.5g/Lおよび/または約0.010~0.030g/g、ならびにスクロース約1.0%~6.0%w/w未満からなる群から選択されるレベルの、アポA-I少なくとも6g、ホスファチジルコリン、安定剤およびコール酸ナトリウムを含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を、患者に投与する工程であって、該アポA-Iと該ホスファチジルコリンとの間の比が、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、それによって、該ヒトの患者において、MACEのリスクを低下させるおよび/またはコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させる前記工程
を含む前記方法。
【請求項59】
アポA-I約0.5~1.5g/Lおよび/または約0.010~0.030g/g、ならびにスクロース約1.0%~6.0%w/w未満からなる群から選択されるレベルの、アポA-I少なくとも6g、ホスファチジルコリン、安定剤およびコール酸ナトリウムを含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤であって、Mod RIを有するおよびこれまでMIイベントを経験したことがない、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していないヒトの患者においてMACEのリスクを低下させるおよび/またはコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させることにおける使用のために、該アポA-Iと該ホスファチジルコリンとの間の比が、約1:20から約1:120(モル:モル)である、前記再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤。
【請求項60】
患者は、これまでMIイベントを経験したことがない、請求項33~59のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項61】
急性心筋梗塞(MI)イベントおよび/もしくはMACEの治療、予防もしくはそのリスクの低下、および/またはヒトの患者におけるコレステロール引き抜き能(CEC)の増加を補助するまたは容易にする1種またはそれ以上の治療薬が、さらに投与される、請
求項1~60のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項62】
1種またはそれ以上の治療薬は、1種またはそれ以上の脂質調整剤;1種またはそれ以上のコレステロール吸収阻害剤;1種またはそれ以上の抗凝固剤;1種またはそれ以上の高血圧治療薬;および1個またはそれ以上の胆汁酸結合分子を含む、請求項61に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項63】
1種もしくはそれ以上の脂質調整剤は、HMG-CoA還元酵素阻害剤、フィブレート、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシンタイプ9(PCSK9)阻害剤およびナイアシンを含む、請求項62に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項64】
1種もしくはそれ以上のHMG-CoA還元酵素阻害剤は、スタチンを含む、請求項63に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項65】
1種もしくはそれ以上のスタチンは、ロバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチンおよびシンバスタチンを含む、請求項64に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項66】
1種もしくはそれ以上のフィブレートは、フェノフィブレートおよびゲムフィブロジルを含む、請求項63に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項67】
1種もしくはそれ以上の脂質調整剤は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシンタイプ9(PCSK9)阻害剤を含む、請求項63に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項68】
1種もしくはそれ以上のコレステロール吸収阻害剤は、エゼチミブを含む、請求項62に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項69】
1種またはそれ以上のコレステロール吸収阻害剤は、スタチンと共に投与される、請求項62もしくは68に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項70】
1種またはそれ以上のコレステロール吸収阻害剤は、ロバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチンおよびシンバスタチンを含めた、1種もしくはそれ以上のスタチンと共に投与される、請求項69に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項71】
1種またはそれ以上の抗凝固剤は、ワルファリン、ビタミンKアンタゴニスト、ヘパリンもしくはそれらの誘導体、第Xa因子インヒビターおよびトロンビン阻害剤を含む、請求項62に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【請求項72】
ヒトの患者は、中等度の腎機能障害(Mod RI)である、請求項1~14、請求項16~30のいずれか1項に記載の使用のための方法またはrHDL製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性心筋梗塞の治療に関する。より詳細には、本発明は、急性心筋梗塞を治療するためのある特定の低毒性の再構成された高密度リポタンパク質製剤の使用に関する。これまでまたは最近急性心筋梗塞(MI)イベントを経験していない患者を治療して、かかる患者における主要有害心イベント(MACE)のリスクを低下させるためのこのような製剤の使用をも記載する。
【背景技術】
【0002】
急性心筋梗塞(MI)の治療戦略の進歩にも関わらず、患者は、再発性の虚血イベントの、特に、イベント直後の数週間から数カ月においてリスクが高いままである。再発性のイベントは、さらなるプラーク破綻または侵食によるものが最も一般的であり、著しい罹患率および死亡率に関連する2、3。これらは、インデックスMI管の部位で起こるおそれがあり、これらは、冠動脈の枝分かれのいかなる異なる部位でも等しく起こる可能性が高い。低レベルの高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)が、主要有害心イベント(MACE)についてのリスク因子であるけれども4~12、HDL-Cを上昇させるいくつかの療法に臨床成績の改善が伴わなかったため、HDLの上昇が、MACEを減少させるかどうかは依然として明らかでない13~17。これらの試験は、修正可能な高いリスクを伴う患者を濃縮できなかったこと、オフターゲットの毒性、または機能的HDLを上昇させることができなかったことにより制限されている。HDL機能のex-vivo測度であるコレステロール引き抜き能(CEC:Cholesterol efflux capacity)は、肝臓に輸送するために、動脈硬化性プラークから過剰のコレステロールを除去するHDLの能力として評価される。CECは、HDL-Cとは無関係である、MACEと相関するものであり、CECは、HDLを単独で上昇させる療法よりもむしろ、急性MI後速やかに働いて、コレステロール引き抜きを改善し、それによって、プラーク面積率を減少させ、脆弱なプラークを安定させる薬物療法を同定することにより、臨床成績を改善する上で実用的な可能性がある18~20。重要なことに、失敗に終わったHDL-Cを上昇させる試験の大部分は、長期にわたる薬物療法を評価し、療法は、コレステロール引き抜きが、著しく障害される期間である、心筋梗塞(MI)期間直後に開始されなかった21~23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、急性心筋梗塞(MI)イベント後に患者を治療するための、再構成されたHDL(rHDL)製剤の使用を広く対象とする。ある特定の形態において、本発明は、コレステロール引き抜き能を増強し、肝または腎機能において有意な変更をもたらさないrHDLの注入の繰り返しによるMI患者の治療を提供する。いくつかの実施形態では、MI患者は、正常な腎機能を有する。いくつかの実施形態では、MI患者は、軽度の腎機能障害を有する。いくつかの実施形態では、MI患者は、中等度の腎機能障害を有する。本発明はまた、これまでMIイベントを経験したことがない患者、または最近MIイベントを経験していない(すなわち、治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していない)患者において、主要有害心イベント(MACE)のリスクを低下させるためのrHDL製剤の使用を広く対象とする。詳細な実施形態では、かかる患者は、中等度の腎機能障害を有する。いくつかの実施形態では、かかる患者は、軽度の腎機能障害を有する。いくつかの実施形態では、かかる患者は、正常な腎機能を有する。これまでまたは最近MIイベントがなかった患者の治療は、rHDLの注入の繰り返しによるものとなり得、コレステロール引き抜き能を増強することができ、好ましい実施形態では、肝または腎機能において実質的な変更をもたらさない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、急性心筋梗塞(MI)イベント後にヒトの患者においてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させるための方法であって、急性MIイベントの約七(7)日以内に、アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を、患者に投与する工程であって、アポリポタンパク質と脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)である、工程と;
続いて、好ましくは、少なくとも約四(4)週間、rHDL製剤を患者に投与し、それによって、ヒトの肝もしくは腎機能において実質的な変更をもたらさずに、コレステロール引き抜き能(CEC)を増加させる工程と
を含む方法を提供する。
【0005】
適切には、急性MIイベントの約七(7)日以内の用量は、再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤の初回量である。続いて、患者は、初回量からおよび初回量を含めて、好ましくは、少なくとも約四(4)週間にわたって、合計が(初回量を含めて)少なくとも4回の用量のため、rHDL製剤の少なくとも三(3)回の用量がさらに投与される。治療期間は、rHDLの初回量の投与から、最終投与用量の1週間後までの期間として定義され得る。
【0006】
本発明の関連した態様は、アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を提供し、アポリポタンパク質と脂質との間の比は、急性心筋梗塞(MI)イベント後に、ヒトの患者において、コレステロール引き抜き能(CEC)を増加させることにおける使用のために、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、rHDL製剤は、急性MIイベントの約七(7)日以内に、ヒトの患者に投与され、次いで、続いて、好ましくは、少なくとも約四(4)週間患者に投与される。
【0007】
本発明の他の態様は、ヒトの患者において急性心筋梗塞(MI)イベントを治療するための方法であって、急性MIイベントの約七(7)日以内に、アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を患者に投与する工程であって、アポリポタンパク質と脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)である、工程と;
続いて、好ましくは、少なくとも約四(4)週間、rHDL製剤を患者に投与し、それによって、患者の肝もしくは腎機能において実質的な変更をもたらさずに、患者において急性心筋梗塞(MI)イベントを治療する工程と
を含む方法を提供する。
【0008】
適切には、急性MIイベントの約七(7)日以内の用量は、再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤の初回量である。続いて、患者は、初回量からおよび初回量を含めて、好ましくは、少なくとも約四(4)週間にわたって、合計が(初回量を含めて)少なくとも4回の用量のため、rHDL製剤の少なくとも三(3)回の用量がさらに投与される。治療期間は、rHDLの初回量の投与から、最終投与用量の1週間後までの期間として定義され得る。
【0009】
本発明の関連した態様は、アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を提供し、アポリポタンパク質と脂質との間の比は、ヒトの患者において急性心筋梗塞(MI)イベントを治療することにおける使用のための、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、rHDL製剤は、急性MIイベントの約七(7)日以内に、ヒトの患者に投与さ
れ、次いで、続いて、好ましくは、少なくとも約四(4)週間患者に投与される。
【0010】
本発明の他の態様は、これまでMIイベントを経験したことがないヒトの患者、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していないヒトの患者において、主要有害心臓イベント(MACE)のリスクを低下させるための方法であって、
アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を、患者に投与する工程であって、アポリポタンパク質と脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、それによって、患者においておよびいくつかの実施形態では、患者の肝もしくは腎機能において実質的な変更をもたらさずに、MACEのリスクを低下させる工程
を含む方法を提供する。
【0011】
本発明の関連した態様は、アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を提供し、これまでMIイベントを経験したことがないヒトの患者、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していないヒトの患者において、およびいくつかの実施形態では、患者の肝もしくは腎機能において実質的な変更をもたらさずに、MACEのリスクを低下させる方法における使用のために、アポリポタンパク質と脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)である。
【0012】
本発明の他の態様は、これまでMIイベントを経験したことがないヒトの患者、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していないヒトの患者において、CECを増加させるための方法であって、
アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を、患者に投与する工程であって、アポリポタンパク質と脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、それによって、コレステロール引き抜き能(CEC)を増加させ、いくつかの実施形態では、ヒトの肝もしくは腎機能において実質的な変更をもたらさない工程
を含む方法を提供する。
【0013】
本発明の関連した態様は、アポリポタンパク質またはその断片、脂質、安定剤、場合により、界面活性剤を含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を提供し、これまでMIイベントを経験したことがないヒトの患者、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していないヒトの患者において、およびいくつかの実施形態では、ヒトの肝もしくは腎機能において実質的な変更をもたらさずに、コレステロール引き抜き能(CEC)を増加させる方法における使用のために、アポリポタンパク質と脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)である。
【0014】
患者が、これまでMIイベントを経験したことがない、もしくは治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していない実施形態において、患者は、正常な腎機能、中等度の腎機能障害を有し得る、または軽度の腎機能障害を有し得る。詳細な実施形態では、患者は、実施例2などの場合、中等度の腎機能を有する。
【0015】
好ましくは、本明細書に記載した方法によって、ヒトにおけるコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させる。
【0016】
前述の態様のいくつかの実施形態では、総CECは、1.5倍から2.5倍の範囲で増加される。
【0017】
前述の態様のいくつかの実施形態では、ABCA1-依存性CECは、約3倍から約5
倍の範囲で増加される。
【0018】
適切には、前述の態様によれば、患者が、最近急性MIイベントを経験している場合、患者は、急性MIイベントの5日以内にrHDLを最初に投与される。いくつかの実施形態では、ヒトの患者は、急性MIイベント後または血管造影用の造影剤の投与後12時間より後に、rHDL製剤を最初に投与される。
【0019】
好ましくは、rHDL製剤のその後の投与は、毎週、好ましくは、少なくとも四(4)週間である。
【0020】
患者が、これまでMIイベントを経験したことがない、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していない場合、rHDL製剤の初回の投与は、任意の時間となり得、その後、1、2、3もしくは4週間、またはそれ以上にわたってのような、適当な時点で、投与してもよい。好ましくは、rHDL製剤のその後の投与は、毎週、好ましくは、四(4)週間、またはそれ以上である。
【0021】
適切には、前述の態様によれば、rHDL製剤は、静脈内に(IV)注入される。
【0022】
適切には、アポリポタンパク質は、アポAIである。好ましくは、rHDL製剤中のアポAIの量は、少なくとも2gまたは少なくとも4gまたは少なくとも6gである。詳細な実施形態では、rHDL製剤中のアポAIの量は、2gから8gである。一実施形態では、rHDL製剤中のアポAIの量は、6gである。
【0023】
適切には、安定剤は、スクロースである。好ましくは、スクロースは、約1.0%から6.0%w/w未満の濃度でrHDL製剤中に存在する。
【0024】
詳細な実施形態では、急性MIイベント後に、ヒトの患者において、コレステロール引き抜き能(CEC)を増加させるための方法であって、急性心筋梗塞(MI)イベントの約七(7)日以内に、アポA-I少なくとも6g、ホスファチジルコリン、安定剤およびコール酸ナトリウムを含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を、アポA-I約0.5~1.5g/Lおよび/または約0.010~0.030g/g、ならびにスクロース約1.0%~6.0%w/w未満からなる群から選択されるレベルで、患者に投与する工程であって、アポA-Iとホスファチジルコリンとの間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)である、工程と;続いて、少なくとも四(4)週間、rHDL製剤をヒトに投与し、それによって、ヒトの肝および/または腎機能において実質的な変更をもたらさずに、ヒトの患者においてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させる工程とを含み、肝機能における実質的な変更は、正常値範囲の上限(ULN)の約2もしくは3倍を超えるALT;またはULNの少なくとも1.5~2倍の、総ビリルビンの増加であり;腎機能における実質的な変更は、ベースライン値の約1.2~1.5倍を超えるもしくはそれに等しい血清クレアチニンがおよび/または実質的に、90mL/分/m2未満(例えば、実質的に90mL/分/1.73m未満)のeGFRである、方法を提供する。例えば、腎機能における実質的な変更は、eGFRが実質的に90mL/分/1.73m未満であることにより示され得る。さらにまたはあるいは、患者は、腎機能の実質的な変更がないことを考慮してもよく、rHDL治療後のeGFRは、以下により詳細に論じる通り、治療前のeGFRが30、20または10mL/分/1.73m以内である。
【0025】
関連する詳細な実施形態では、アポA-I約0.5~1.5g/Lおよび/または約0.010~0.030g/g、ならびにスクロース約1.0%~6.0%w/w未満からなる群から選択されるレベルで、アポA-I少なくとも6g、ホスファチジルコリン、安
定剤およびコール酸ナトリウムを含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤が提供され、急性MIイベントの約七(7)日以内の、ヒトの患者において、コレステロール引き抜き能(CEC)を増加させることにおける使用のために、アポA-Iとホスファチジルコリンとの間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、rHDL製剤は、少なくとも約四(4)週間、ヒトの患者に、続いて投与され、それによって、ヒトの肝および/または腎機能において実質的な変更をもたらさずに、ヒトの患者においてコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させ;肝機能における実質的な変更は、正常値範囲の上限(ULN)の約2もしくは3倍を超えるALT;またはULNの少なくとも1.5~2倍の、総ビリルビンの増加であり;腎機能における実質的な変更は、ベースライン値の約1.2~1.5倍を超えるもしくはそれに等しい血清クレアチニンおよび/または実質的に90mL/分/m2未満(例えば、実質的に90mL/分/1.73m未満)のeGFRである。例えば、腎機能における実質的な変更は、eGFRが実質的に90mL/分/1.73m未満であることにより示され得る)。さらにまたはあるいは、患者は、腎機能の実質的な変更がないことを考慮してもよく、rHDL治療後のeGFRは、以下により詳細に論じる通り、治療前のeGFRが30、20または10mL/分/1.73m以内である。
【0026】
さらなる実施形態では、これまでMIイベントを経験したことがないヒトの患者、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していないヒトの患者において、MACEのリスクを低下させるおよび/またはCECを増加させるための方法であって、アポA-I約0.5~1.5g/Lおよび/または約0.010~0.030g/g、ならびにスクロース約1.0%~6.0%w/w未満からなる群から選択されるレベルで、アポA-I少なくとも6g、ホスファチジルコリン,安定剤およびコール酸ナトリウムを含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤を患者に投与する工程であって、アポA-Iとホスファチジルコリンとの間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、それによって、MACEのリスクを低下させる、および/または患者においてCECを増加させる工程を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、患者におけるMACEのリスクのこうした低下および/またはCECの増加は、ヒトの肝および/または腎機能において実質的な変更をもたらさずに生じる。
【0027】
関連する詳細な実施形態では、アポA-I約0.5~1.5g/Lおよび/または約0.010~0.030g/g、ならびにスクロース約1.0%~6.0%w/w未満からなる群から選択されるレベルで、アポA-I少なくとも6g、ホスファチジルコリン、安定剤およびコール酸ナトリウムを含む再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤が提供され、これまでMIイベントを経験したことがないヒトの患者、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していないヒトの患者において、MACEのリスクを低下させるおよび/またはCECを増加させる方法における使用のために、アポA-Iとホスファチジルコリンとの間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)である。いくつかの実施形態では、患者におけるMACEのリスクの低下および/またはCECの増加は、ヒトの肝および/または腎機能において実質的な変更をもたらさずに生じる。
【0028】
本明細書に開示される方法が、1種またはそれ以上の追加の治療薬の投与を含むことができることも理解されたい。同様に、本明細書に開示される特定の方法における使用のための、本明細書に開示される再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤は、1種またはそれ以上の追加の治療薬と共に使用することができる。適切には、1種またはそれ以上の追加の治療薬は、それだけには限らないが、急性心筋梗塞(MI)イベントおよび/もしくはMACEの治療、予防もしくはそのリスクの低下、および/またはヒトの患者におけるコレステロール引き抜き能(CEC)の増加を補助するまたは容易にすることができる。
【0029】
本明細書に開示される再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤が使用されるまたは1種もしくはそれ以上の追加の治療薬と共に本明細書において指定される、ある特定の方法における使用のためである場合、これは、1種またはそれ以上の追加の治療薬(例えば、1種またはそれ以上の脂質調整剤;1種またはそれ以上のコレステロール吸収阻害剤;1種またはそれ以上の抗凝固剤;1種またはそれ以上の高血圧治療薬;および1個またはそれ以上の胆汁酸結合分子)と組み合わせた、その方法における使用のための、本明細書で言及したrHDL製剤として記載することができる。これはまた、本明細書で言及したrHDL製剤と組み合わせた、その方法における使用のための、1種もしくはそれ以上の脂質調整剤;1種もしくはそれ以上のコレステロール吸収阻害剤;1種もしくはそれ以上の抗凝固剤;1種もしくはそれ以上の高血圧治療薬;および1個もしくはそれ以上の胆汁酸結合分子から選択される、1種またはそれ以上の治療薬として記載することができる。本明細書において指定されるある特定の方法における合わせた配合物としての使用のための、本明細書で言及したrHDL製剤および1種またはそれ以上の追加の治療薬(例えば、1種またはそれ以上の脂質調整剤;1種またはそれ以上のコレステロール吸収阻害剤;1種またはそれ以上の抗凝固剤;1種またはそれ以上の高血圧治療薬;および1個またはそれ以上の胆汁酸結合分子)がやはり提供される。合わせた配合物の薬剤は、同時のまたは逐次の使用のためとなり得る。
【0030】
1種またはそれ以上の追加の治療薬には、1種またはそれ以上の脂質調整剤;1種またはそれ以上のコレステロール吸収阻害剤;1種またはそれ以上の抗凝固剤;1種またはそれ以上の高血圧治療薬;および1個またはそれ以上の胆汁酸結合分子を含むことができる。
【0031】
本明細書にわたって、別段の指示がない限り,「comprise」、「comprises」および「comprising」は、定められた整数または整数の群が、1もしくはそれ以上の他の定められていない整数または整数の群を含むことができるように、排他的にではなく包括的に使用される。
【0032】
不定冠詞「a」および「an」は、単数としてまたは不定冠詞が参照する、1人を超えるもしくは単数を超える対象を除くその他のものとして、読み取るべきではない。例えば、「a」protein(タンパク質)には、1種のタンパク質、1種もしくはそれ以上のタンパク質または複数種のタンパク質が含まれる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「最近MIイベントを経験していない」ヒトの患者とは、患者が、治療を開始する前の7日以内に、MIイベントを経験していないことを意味する。すなわち、本明細書に記載したrHDL製剤の第1の投与時に、患者がMIイベントを経験してから8日またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、そのような患者は、治療開始前の8、9もしくは10日以内、または2、3、もしくは4週間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12カ月、またはそれ以上、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、もしくは90年のように、MIイベントを経験していない。さらにまたはあるいは、いくつかの実施形態では、かかる患者は、上記で参照された期間のうちに1回生じたMIイベントを診断されていない。
【0034】
上記で述べた通り、本明細書で使用される場合、「肝機能における実質的な変更」とは、正常値範囲の上限(ULN)の約2倍もしくは3倍を超えるALT;またはULNの少なくとも1.5~2倍の、総ビリルビンの増加を意味し、語句「肝機能の有意な変更」と同義的に使用される。
【0035】
上記で述べた通り、本明細書で使用される場合、「腎機能における実質的な変更」とは
、血清クレアチニンが、ベースライン値の約1.2~1.5倍以上であるかつ/またはeGFRが実質的に90mL/分/m未満(例えば、実質的に90mL/分/1.73m未満)であることを意味する。例えば、腎機能における実質的な変更は、eGFRが実質的に90mL/分/1.73m未満)であることにより示すことができる。さらにまたはあるいは、患者は、腎機能の実質的な変更がないことを考慮してもよく、rHDL治療後のeGFRは、以下により詳細に論じる通り、治療前のeGFRが30、20または10mL/分/1.73mである。本明細書で使用される場合、「腎機能における実質的な変更」は、語句「肝機能の有意な変更」と同義的に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】Consort図である。
図2】第1のMACEの時間対発生率を示す図である。CV死、非致死性MI、虚血性脳卒中、および不安定狭心症のための入院の複合である。112日目の破線は、試験来診の最終を示す。
図3】第1の探索的MACEの時間対発生率を示す図である。CV死、非致死性MI、および脳卒中の複合である。112日目の破線は、試験来診の最終を示す。
図4】ランダム化から死亡までの日数を示す図である。
図5】中等度の腎機能障害(Mod RI)または正常な腎機能(NRF)を伴う対象におけるCSL112による注入後のアポA-Iプロファイルを示す図である。示された値は、標準偏差に加えた、(ベースライン補正された)平均である。
図6A】中等度の腎機能障害(Mod RI)または正常な腎機能(NRF)を伴う対象におけるCSL112による注入後のコレステロール引き抜き能(CEC)およびpre-β1-HDL値を示す図である。示された値は、標準偏差に加えた、(ベースライン補正された)平均である。
図6B】中等度の腎機能障害(Mod RI)または正常な腎機能(NRF)を伴う対象におけるCSL112による注入後のコレステロール引き抜き能(CEC)およびpre-β1-HDL値を示す図である。示された値は、標準偏差に加えた、(ベースライン補正された)平均である。
図7A】中等度の腎機能障害(Mod RI)または正常な腎機能(NRF)を伴う対象におけるコレステロール引き抜き能(CEC)およびpre-β1-HDL値に対するCSL112の投与量の増加の効果を示す図である。回帰線と平行して個別のデータポイントが示される。
図7B】中等度の腎機能障害(Mod RI)または正常な腎機能(NRF)を伴う対象におけるコレステロール引き抜き能(CEC)およびpre-β1-HDL値に対するCSL112の投与量の増加の効果を示す図である。回帰線と平行して個別のデータポイントが示される。
図8】中等度の腎機能障害(Mod RI)および正常な腎機能(NRF)を伴う対象におけるCSL112による注入後の、非エステル化コレステロール(HDL-UC)のエステル化コレステロール(HDL-EC)への転換を示す図である。示された値は、CSL112 6gの場合の、標準偏差に加えた、(ベースライン補正された)平均である。
図9】対象の配列を示す図である。対象が、安全性フォローアップ期間/来診8回目までおよびそれらを含めた、予定された全試験来診を完了した場合、対象は、試験を終了したとみなされる。
図10】AEGIS-Iの集合箱ヒゲ図ならびに腎機能、来診および治療(安全性対象集団)によるベースライン値(中央測定施設)からの2001血清クレアチニンの変化を示す図である。eGFR=推定糸球体ろ過率である。注:各箱の末端は、上方および下方四分位数を表し、中央値は、箱の内側の横線によりしるし付けされ、円(CSL112)および四角(プラセボ)は、平均値を表す。2つの垂直のひげは、それぞれ、下方および上方四分位数から最小および最大の非外れ値に伸びている。外れ値は、各ひげの終わりを超えて個別のデータポイントとして示される。傾向をより良く同定するために、Y-軸は、切断されており、その結果、極値は示されない。CSL112-2001試験来診7回目、29日目(最後の注入の7~10日後)には、試験治療を中断したまたは試験早期から中止した対象についてのデータが含まれる。重症腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m)を伴う対象は、集計分析から除外される。予定された試験日[X]:AEGIS-I来診/2001来診-2日目:2a/3、8日目:3/4、15日目:4/5、22日目:5/6、29日目:6/7
図11A】AEGIS-Iの集合箱ヒゲ図ならびに血管造影および第1の用量の間の時間、腎機能、来診および治療(安全性対象集団)によるベースライン値(中央測定施設)からの2001年血清クレアチニンの変化を示す図である。A:サブグループ:12~<24時間;B:サブグループ:24~<48時間;C:サブグループ:>=48時間。eGFR=推定糸球体ろ過率。注:各箱の末端は、上方および下方四分位数を表し、中央値は、箱の内側の横線によりしるし付けされ、円(CSL112)および四角(プラセボ)は、平均値を表す。2つの垂直のひげは、それぞれ、下方および上方四分位数から最小および最大の非外れ値に伸びている。外れ値は、各ひげの終わりを超えて個別のデータポイントとして示される。傾向をより良く同定するために、Y-軸は、切断されており、その結果、極値は示されない。CSL112-2001試験来診7回目、29日目(最後の注入の7~10日後)には、試験治療を中断したまたは試験早期から中止した対象についてのデータが含まれる。重症腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m)を伴う対象は、集計分析から除外される。予定された試験日[X]:AEGIS-I来診/2001来診-2日目:2a/3、8日目:3/4、15日目:4/5、22日目:5/6、29日目:6/7。
図11B】AEGIS-Iの集合箱ヒゲ図ならびに血管造影および第1の用量の間の時間、腎機能、来診および治療(安全性対象集団)によるベースライン値(中央測定施設)からの2001年血清クレアチニンの変化を示す図である。A:サブグループ:12~<24時間;B:サブグループ:24~<48時間;C:サブグループ:>=48時間。eGFR=推定糸球体ろ過率。注:各箱の末端は、上方および下方四分位数を表し、中央値は、箱の内側の横線によりしるし付けされ、円(CSL112)および四角(プラセボ)は、平均値を表す。2つの垂直のひげは、それぞれ、下方および上方四分位数から最小および最大の非外れ値に伸びている。外れ値は、各ひげの終わりを超えて個別のデータポイントとして示される。傾向をより良く同定するために、Y-軸は、切断されており、その結果、極値は示されない。CSL112-2001試験来診7回目、29日目(最後の注入の7~10日後)には、試験治療を中断したまたは試験早期から中止した対象についてのデータが含まれる。重症腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m)を伴う対象は、集計分析から除外される。予定された試験日[X]:AEGIS-I来診/2001来診-2日目:2a/3、8日目:3/4、15日目:4/5、22日目:5/6、29日目:6/7。
図11C】AEGIS-Iの集合箱ヒゲ図ならびに血管造影および第1の用量の間の時間、腎機能、来診および治療(安全性対象集団)によるベースライン値(中央測定施設)からの2001年血清クレアチニンの変化を示す図である。A:サブグループ:12~<24時間;B:サブグループ:24~<48時間;C:サブグループ:>=48時間。eGFR=推定糸球体ろ過率。注:各箱の末端は、上方および下方四分位数を表し、中央値は、箱の内側の横線によりしるし付けされ、円(CSL112)および四角(プラセボ)は、平均値を表す。2つの垂直のひげは、それぞれ、下方および上方四分位数から最小および最大の非外れ値に伸びている。外れ値は、各ひげの終わりを超えて個別のデータポイントとして示される。傾向をより良く同定するために、Y-軸は、切断されており、その結果、極値は示されない。CSL112-2001試験来診7回目、29日目(最後の注入の7~10日後)には、試験治療を中断したまたは試験早期から中止した対象についてのデータが含まれる。重症腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m)を伴う対象は、集計分析から除外される。予定された試験日[X]:AEGIS-I来診/2001来診-2日目:2a/3、8日目:3/4、15日目:4/5、22日目:5/6、29日目:6/7。
図12】AEGIS-Iの集合箱ヒゲ図ならびに腎機能、来診および治療(安全性対象集団)によるベースライン値(中央測定施設)からの2001血清クレアチニンの変化を示す図である。eGFR=推定糸球体ろ過率である。注:各箱の末端は、上方および下方四分位数を表し、中央値は、箱の内側の横線によりしるし付けされ、円(CSL112)および四角(プラセボ)は、平均値を表す。2つの垂直のひげは、それぞれ、下方および上方四分位数から最小および最大の非外れ値に伸びている。外れ値は、各ひげの終わりを超えて個別のデータポイントとして示される。CSL112-2001試験来診7回目、29日目(最後の注入の7~10日後)には、試験治療を中断したまたは試験早期から中止した対象についてのデータが含まれる。重症腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m)を伴う対象は、集計分析から除外される。予定された試験日[X]:AEGIS-I来診/2001来診-2日目:2a/3、8日目:3/4、15日目:4/5、22日目:5/6、29日目:6/7。
図13】ベースライン、来診2、3および6回目に、CSL112_2001(実施例3)からCSL112(6g)を投与されている患者母集団から、AEGIS-I(実施例1)からCSL112を投与されている患者における、総コレステロール引き抜き能CEC(%)を示す図である。
図14】ベースライン、来診2、3および6回目に、CSL112_2001(実施例3)からCSL112(6g)を投与されている患者母集団から、AEGIS-I(実施例1)からCSL112を投与されている患者における、コレステロールABCA1非依存性CEC引き抜き能(%)を示す図である。
図15】ベースライン、来診2、3および6回目に、CSL112_2001(実施例3)からCSL112(6g)を投与されている患者母集団から、AEGIS-I(実施例1)からCSL112を投与されている患者における、コレステロールABCA1依存性CEC引き抜き能(%)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
いくつかの態様では、本発明は、再構成されたHDL(rHDL)製剤の投与が、急性MI患者を治療する上で有用となり得るという発見を前提としている。より詳細には、CSL112のようなrHDL製剤の注入毎週四(4)回は、有効であり、耐容性があり、肝もしくは腎機能におけるいかなる有意な変更または他の安全性上の懸念をも伴わない。CSL112のような製剤は、患者への投与後にコレステロール引き抜き(CEC)を増強する。この効果は、正常な腎機能および軽度の腎機能障害を伴う急性MI患者について示されている(実施例1を参照のこと)。
【0038】
いくつかの態様では、本発明は、中等度の腎機能障害(Mod RI)を伴う患者への再構成されたHDL(rHDL)製剤の投与によって、コレステロール引き抜き(CEC)が増強されるという発見に関する。CECに対する類似の効果は、実施例1に示される結果によると、rHDL製剤の投与後に、健常者および中等度の腎機能障害患者において観察された。さらに、pre-β1-HDLの増加は、正常な腎機能を伴う患者の場合よりも中等度の腎機能障害(Mod RI)を伴う患者の場合の方が大きかった(実施例2を参照のこと)。これらの結果は、治療開始前の7日以内にMIイベントを経験しなかったMod RI対象において得られた。したがって、いくつかの態様では、本発明は、これまでMIイベントを経験したことがない患者、または最近MIイベントを経験していない患者への再構成されたHDL(rHDL)製剤の投与によって、コレステロール引き抜き(CEC)が増強され、したがって、MACEのリスクを低下させるのに有用となり得るという発見に関する。かかる対象は、中等度の腎機能障害、軽度の腎機能障害、または正常な腎機能を有し得る。さらなる実施形態では、実施例3に示されたデータは、Mod
RIを伴う対象へのrHDLの投与の安全性および効能を示し、これらの患者は、まだ
対応されない重要な医学上の必要性を有するMI患者の重要な高リスクサブセットとなっている。
【0039】
理論に縛られることを望むわけではないが、Mod RI患者において達成されたこれらの結果は、二重の意味で臨床的に有意義である。初めに、急性MI患者におけるCECに対するrHDLの効果は、Mod RI患者において反復させることができるということが確認されている。さらに、CECの増加が、急性MI患者でなかった患者において、rHDL投与後に観察されたという事実は、rHDLの使用が、CECを増加させるその能力に基づいて、MACEのリスクを低下させることを裏付けている。
【0040】
本明細書に開示される通り、いくつかの態様では、本発明は、急性MIイベント後のヒトの患者の治療を提供する。MIは、通常、冠動脈心疾患(CHD)、または冠動脈疾患、虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化症、狭心症、心室性不整脈および/または心室細動を含めた関連疾患、障害もしくは状態の結果である。CHDは、心筋の潜在的に致命的な破壊である、心筋梗塞(MI)をもたらすおそれがある、冠動脈におけるコレステロールの徐々の蓄積によって生じる。
【0041】
急性冠症候群(ACS)とは、ST部分上昇型心筋梗塞(STEMI)の場合の臨床像から非ST部分上昇型心筋梗塞(NSTEMI)または不安定狭心症(UA)において見出される臨床像までに及ぶ臨床像のスペクトルを意味する。これは、動脈硬化性プラークの破裂または侵食および梗塞関連動脈の部分的なもしくは完全な血栓症をほぼ常に伴う。
【0042】
本明細書において一般に用いられる通り、「主要有害心臓イベント」または「MACE」には、心血管死、致死性もしくは非致死性MI、UA、致死性もしくは非致死性脳卒中、血行再建手順の必要性、心不全、心停止の蘇生、および/または虚血の新たな客観的証拠、ならびにこれらのイベント型のそれぞれに属するイベントのすべてのサブカテゴリー(例えば、STEMIおよびNSTEMI、緊急の入院を要するUAの考証)が含まれる。いくつかの実施形態では、MACEは、心血管死、致死性もしくは非致死性MI、(緊急の入院を要するUAを含めた)UA、致死性もしくは非致死性脳卒中、および/または血行再建のリスクまたは血行再建に伴う危険である。いくつかの実施形態では、MACEは、心血管死、致死性または非致死性MI、および虚血性脳卒中である。いくつかの実施形態では、MACEは、心血管死、致死性または非致死性MI、例えば、MIである。いくつかの実施形態では、rHDLのような製剤により冠動脈心疾患を治療するまたは予防する(または冠動脈心疾患のリスクを低下させる、または急性MIがあった患者もしくは急性MIがなかった患者、または治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していない患者を含めて、MACEのリスクがある患者を治療する)ことによって、MACEの発生の可能性が低くなり、MACEの発生が遅延し、かつ/またはMACEの重症度が下がる。これらのそれぞれの場合、MACEに対する効果は、一般にMACEに対する効果(例えば、MACEのすべてのタイプの発生の可能性の低下)、MACEの1つもしくはそれ以上の特定のタイプに対する効果、例えば、死亡、非致死性MI、緊急の入院を要するUA、非致死性脳卒中、または血行再建手順についての必要性または血行再建手順に関するリスク、またはその組み合わせの可能性の低下に関することもある。
【0043】
本明細書に記載したいくつかの態様によれば、rHDL製剤は、i)最近MIを経験した(すなわち、治療開始前の7日以内にMIを経験した)患者においてさらなるMACEのリスクを低下させるまたは(ii)MIを経験していない、もしくは最近MIイベントを経験していない(すなわち、治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していない)患者においてMACEのリスクを低下させることにおける使用のためである。これらの文脈において、MACEのリスクを低下させるとは、MACEの発生の可能性を低くする、MACEの発生を遅延させる、および/またはMACEの重症度を下げることを意味し得
る。これは、CECを増加させることにより起こり得;したがって、好ましい実施形態では、MACEのリスク(またはさらなるMACEのリスク)の低下は、CECの増加、より好ましくは、ABCA1-依存性CECの増加に伴う。
【0044】
MACEのリスクがある患者には、MIを経験した患者、および冠動脈心疾患または上記に記載した関連疾患を伴う患者が含まれる。かかる患者は、本発明において対象として特に想定される。
【0045】
用語「心筋梗塞」(「急性心筋梗塞」、「急性MI」または「AMI」とも称する)は、当技術分野で十分に理解され、より一般的に使用される用語「心臓発作」と同義である。血流が、心筋への損傷を引き起こす心臓の一部を停止する場合、急性MIは起こる。急性MIは、心不全、(重篤なタイプを含めて)不規則な心拍、心原性ショック、または心停止を引き起こすおそれがある。
【0046】
急性MIの主な原因は、冠動脈疾患であり、急性MIは、動脈硬化性プラークの破裂によって引き起こされる冠動脈の封鎖によってしばしば生じる。危険因子には、高血圧、喫煙、糖尿病、運動不足、肥満、高血中コレステロール、不十分な食事、および過剰なアルコール摂取が含まれる。
【0047】
急性MIは、心電図(ECG、これにより、急性MIがST部分上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST部分上昇型心筋梗塞(NSTEMI)であるか否かを決定することができる)、血液検査(例えば、トロポニンを検出するため)および冠血管造影図により一般に診断される。したがって、急性MI患者は、STEMIまたはNSTEMIを経験するおそれがある。急性MIを決定するための認識される基準は、例えば、Thygesenらにおいて記載される30
【0048】
理論に縛られずに、(これらの例で示される通り)rHDLの投与によって生じるCECの増加は、動脈硬化性プラークからコレステロールの引き抜き、およびMACEの可能性の結果的な低下に関連すると考えられる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「治療している」または「治療する」または「治療」とは、疾患または状態の1種もしくはそれ以上の既存のまたは前もって同定された病態もしくは症状を少なくとも部分的に(party)除去するまたは軽快させる治療介入を意味する。いくつかの実施形態では、急性MIイベント後の治療は、さらなるMIイベントの可能性を、少なくとも部分的にもしくは一時的に防止するまたは抑制する、または低下させることができる。
【0050】
疾患または状態のいくつかの症状が、現れまたは持続し、疾患、状態もしくは症状の完全なまたは絶対的な除去、軽快、予防または抑制を要さない場合でも、治療は行われることが考えられ得るということが理解されよう。
【0051】
本明細書で言及した通り、任意のパラメーターにおける「減少」または「増加」は、通常、任意の量によるものであるが、好ましくは、統計的に有意な量によるものであり、参照される治療の非存在下のパラメーターに関してである。例えば、MACEのリスクの低下(例えば、MACEの発生の可能性の低下またはMACEの重症度の低下)は、本明細書に記載した治療の非存在下のMACEのリスク(例えば、MACEの発生の可能性またはMACEの重症度)と比較した場合のMACEのリスクの低下である。この減少または低下は、任意の量(例えば、5、10、15、20、25、50%、またはそれ以上)によるものとなり得る。同様に、リスクの低下が、MACEの発生の遅延として明らかである場合、この遅延は、本明細書に記載した治療の非存在下のMACEのタイミングに関し
てであり、任意の量(例えば、1、2、3、4、5、または6カ月、もしくはそれ以上、または1、2、5,または10年、もしくはそれ以上の遅延、例えば、1カ月~10年の遅延)によるものとなり得るが、好ましくは、統計的に有意な遅延である。
【0052】
本発明のいくつかの態様では、ヒトの患者は、急性MIイベントの7日以内に治療される。他の態様において、ヒトの患者は、MIイベントがない、または最近MIイベントがない、すなわち、治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していない(すなわち、治療開始時に、患者が、MIイベントがあってから7日よりも長期である)。上記で論じられる通り、MI診断は、ルーチン的である。いくつかの実施形態では、ヒトの患者は、治療開始前の8、9、もしくは10日またはそれ以上の期間内に、または治療開始前の2、3、もしくは4週間、またはそれ以上の期間内に、または治療開始前の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12カ月、またはそれ以上の期間内に、または治療開始前の1、2、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90年の期間内にMIイベントを経験していない。あるいは、ヒトの患者は、上記で参照した期間中に1回起こったMIイベントと診断されてない。
【0053】
患者が、冠動脈心疾患、虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化症、狭心症、心室性不整脈および/または心室細動に罹患しているから、または患者が、(過去7日以内に急性MIを有するものを含めて)急性MIを有するおそれがあるからのような、任意の理由により、患者は、MACEのリスクがあり得る。あるいはまたはさらに、患者は、MACEについての1つまたはそれ以上の他の危険因子を有し得、例えば、患者は:
・ 45歳またはそれ以上(例えば、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、または85歳)となり;
・ 喫煙し;
・ 高血圧(140/90mmHgまたはそれ以上)であり;
・ 血中コレステロールまたはトリグリセリドレベルが高く、例えば、高低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(空腹LDL-コレステロール値が160~199mg/dLもしくは4.1~4.9mmol/L)または高トリグリセリドレベルであり;
・ 糖尿病を有し;
・ MIの家族歴があり;
・ 身体的に非活動的であり;
・ 肥満(例えば、BMIが30またはそれ以上)であり得る。
【0054】
治療しようとするヒトの患者は、患者の腎機能に関して任意の状態を有し得る。好ましい例には、正常な腎機能、軽度の腎機能障害および中等度の腎機能障害を伴う患者が含まれる。腎機能障害は、急性冠症候群において一般的に同時に起こる状態であり、対象のおよそ30%が、ステージ3の慢性腎疾患を有する。腎機能は、Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration Equation(例えば、Levey、2009年Ann Intern Med 5月5日;150巻(9号):604~612頁を参照のこと)を使用してルーチン的に決定され、腎機能の状態と相関する推定糸球体ろ過率(eGFR)の値を得る(例えば、Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO)CKD Work Group.KDIGO 2012 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and
Management of Chronic Kidney Disease.Kidney inter、Suppl.2013年;3巻:1~150頁を参照のこと)。糸球体ろ過率(GFR)は、健常および疾患において腎機能の最良の全指数と考えられる。正常な腎機能(腎機能ステージ1)は、eGFR≧90mL/分/1.73mとして一般に定義される。軽度の腎機能障害(腎機能ステージ2)を伴う患者は、eGFRが≧60~<90mL/分/1.73mであり、中等度の腎機能障害を伴う患者は、eGF
Rが≧30~<60mL/分/1.73mである。中等度の腎機能障害を伴う患者は、eGFRが≧45~<60mL/分/1.73m(腎機能ステージ3a)である患者およびeGFRが≧30~<45mL/分/1.73m(腎機能ステージ3b)である患者にさらに分類することができる。重症腎機能障害を伴う患者は、eGFRが≧15~<30mL/分/1.73m(腎機能ステージ4)であり、eGFRが<15mL/分/1.73m(腎機能ステージ5)を有する患者は、腎不全となると考えられる。
【0055】
他で述べた通り、好ましい実施形態では、rHDL治療は、腎機能における実質的な変更をもたらさないが、rHDL治療が始まる前に腎機能障害、例えば、軽度もしくは中等度の腎機能障害を有する患者は、本発明に従って治療することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、急性心筋イベントの7日以内に治療されるヒトの患者は、正常な腎機能、軽度の腎機能障害、または中等度の腎機能障害を有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、これまでMIイベントを経験したことがない、または最近MIイベントを経験していない(すなわち、治療開始前の7日以内にMIイベントを経験していない)ヒトの患者は、中等度の腎機能障害を有する。他の実施形態では、かかる患者は、軽度の腎機能障害を有する。他の実施形態では、かかる患者は、正常な腎機能を有する。詳細な実施形態では、治療は、実施例2および実施例3において例示される通り、中等度の腎機能障害を伴う患者のものである。
【0058】
本発明の文脈内で、用語「再構成されたHDL(rHDL)製剤」とは、通常、血漿中に存在する高密度リポタンパク質(HDL)と機能的に同様の、それと類似の、それに対応するもしくはそれを模倣する任意の人工的に製造されたリポタンパク質製剤または組成物を意味する。rHDL製剤には、これらの範囲内で、「HDL模倣体」および「合成HDL粒子」が含まれる。rHDL製剤は、適切には、アポリポタンパク質、脂質、安定剤、場合により界面活性剤を含む。rHDL製剤の詳細な実施形態は、以下に、より詳細に論じる。rHDL製剤の詳細な好ましい実施形態は、「CSL112」として本明細書で言及される。国際公開WO2012/000048、WO2013/090978およびWO2014/066943に参照がなされ、これらは、CSL112製剤の詳細な例を提供する。
【0059】
適切には、前述の態様の治療の方法(例えば、患者は、急性心筋イベントの約7日以内に治療される)には、急性MIイベントの約七(7)日以内のヒトの患者へのrHDL製剤の初回量の投与が含まれる。これは、急性MIイベントの数時間(例えば、4、6、12もしくは18時間)後、または急性MIイベントの1、2、3、4、5、6もしくは7日後(またはこれらの間の任意の時間単位の期間)の初回の投与を含んでもよい。好ましくは、治療には、急性MIイベントの約五(5)日以内のヒトの患者へのrHDL製剤の初回量の投与が含まれる。
【0060】
患者が急性MIの7日以内に治療されない場合(例えば、患者が、MIを有していない、または最近MIを有していないため)、初回量は、任意の適当な時間で投与することができる。
【0061】
詳細な実施形態では、ヒトの患者は、血管造影用の造影剤を投与される場合もある。そのような実施形態では、rHDL製剤の初回量は、造影剤の投与の12時間後よりも遅く行う。
【0062】
続いて、rHDL製剤の同じまたは異なる投与量は、約2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10週間の場合、1週間当たり1回またはそれ以上ヒトの患者に投与してもよ
い。続いて、好ましい形態では、rHDL製剤の同じ投与量は、約4週間の場合週1回ヒトの患者に投与される。治療期間は、rHDLの初回量の投与から最終の注入後1週間までの時間として定義することができる。(例えば、患者が、MIを有していないまたは最近MIを有していないため)患者が、急性MIの7日以内に治療されない場合、これは、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6カ月までもしくは少なくとも1、2、3、4、5、6カ月または少なくとも1、2、3、4、5年までまたは少なくとも1、2、3、4、5年継続することができる。
【0063】
好ましくは、rHDL製剤は、注入として静脈内に(IV)投与される。IV注入は、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5または4時間の期間にわたって行うことができる。詳細な実施形態では、IV注入は、約2時間の期間にわたって行う。いくつかの実施形態では、rHDL製剤中のアポ-AIのようなアポリポタンパク質の量は、2g(「低用量」と称される)でも6g(「高用量」と称される)でもよい。したがって、これらの実施形態の注入の好ましい速度は、1時間当たりアポ-AI約1g~3gである。
【0064】
好ましい形態では、rHDL製剤は、毎週2時間の静脈内注入として連続4週間投与される。治療期間は、rHDLの初回量の投与から最終の注入後1週間までの時間として定義することができる。患者が、AMIの7日以内に治療されない場合(例えば、患者が、MIを有していないまたは最近MIを有していないため)、これは、例えば、1、2、3、4、5、6カ月までもしくは少なくとも1、2、3、4、5、6カ月、または1、2、3、4、5年までもしくは少なくとも1、2、3、4、5年継続することができる。
【0065】
本発明の特徴は、前述の態様の方法によって、例えば、急性MIイベント後、ヒトの患者においてコレステロール引き抜き能(CEC)が増加するということである。コレステロール引き抜き能は、肝臓に輸送するために動脈硬化性プラークから過剰のコレステロールを除去するHDLの能力を評価するHDL機能のex-vivo測度である。CECは、HDL-Cとは無関係であるMACEと相関するものであるが、それによって、CECを増加させるまたは改善するrHDL製剤は、プラーク面積率を減少させ、脆弱なプラークを安定させることができ、これは、HDL単独で上昇するよりも有益な効果となり得る。
【0066】
適切には、CECは、好ましくは、%/4時間として測定されるまたは表される総コレステロール引き抜き能である。一実施形態では、CECは、算術平均値が少なくとも約12で測定される。好ましくは、CECは、ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能(好ましくは、%/4時間として測定されるまたは表される)を含み、算術平均が、少なくとも約5である。コレステロール引き抜きアッセイは、de le Llera-Moyaら、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.2010年;30-796-801に記載されるような、J774マクロファージを使用して、アポB-除去血清サンプルにおいて行うことができる。
【0067】
適切には、本明細書に開示される方法は、少なくとも約1.5倍、約2.5倍まで総コレステロール引き抜き能を増加させる。ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能の増加は、少なくとも約3倍および約5倍までとなり得る。(循環アポ-AIレベルの増加と比較してもより大きな)ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能のこのより大きな増加は、CSL112が、循環アポA-Iの量だけでなく、アポA-I当たりでABCA1-依存性引き抜きを増加させることもできることを示唆する。ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能のための循環アポA-Iプールの「比活性」は、注入の終了時にABCA1-依存性コレステロール引き抜き能/アポA-I比として算出することができる。例として、CSL112を注入すると、プラセボ群(0.02)と比較して、2g用量群(0.05)の比が、2.51倍増加し、6g用量群(0.035)の比が1.78
倍増加した。ABCA1-依存性引き抜き能力の上昇は、アポA-Iの上昇よりも高かった。理論に縛られることを望まないが、CSL112注入によって、物質量が上昇するだけでなく、アポA-Iプールの機能性も高まることが推測される。ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能/アポA-I比は、プラセボと比較してCSL112の用量2gおよび6gの両方で上昇した。
【0068】
適切には、CECの増加は、ヒトの患者の肝もしくは腎機能において実質的な変更を伴わない、またはもたらさない。
【0069】
肝機能(複数可)の指示薬の非限定的な例には、アラニンアミノトランスフェラーゼ活性(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)活性および/またはビリルビンレベルが含まれる。これらの指示薬の測定は、当技術分野で周知であり(例えば、Fischbach FT、Dunning MB III編.(2009年)。Manual of Laboratory and Diagnostic Tests、第8版.Philadelphia:Lippincott Williams and Wilkinsを参照のこと)、医療検査室においてルーチン的に行われる。これらの指示薬を測定するためのキットは、市販されている。通常、肝および/または腎機能は、rHDL製剤の投与後に測定される。これによって、例えば、機能の変更が起こっているか否かを決定するために、rHDL製剤の投与前に肝および/または腎機能と比較することができる。肝および/または腎機能における実質的な変更の回避は、有利である。治療前に観察される肝および/または腎機能のレベルを維持することが好ましく、例えば、rHDL治療が、肝および/または腎機能におけるいかなる変更をももたらさないことが好ましい。いくつかの実施形態では、肝および/または腎機能のレベルは、改善し得る(すなわち、治療の非存在下においてよりも、より良い肝および/または腎機能の適応を生じる)が、任意のイベントにおいて、肝および/または腎機能の実質的な低下を回避することが好ましい。
【0070】
いくつかの実施形態では、これらの方法は、(i)rHDL製剤の投与後に、場合により、(ii)rHDL製剤の投与前にも、肝および/または腎機能を測定する工程をさらに含むことができる。rHDL製剤の投与前および投与後の腎および/または肝機能パラメーターは、肝および/または腎機能における変更が生じるか否かを決定するために、比較することができる。かかる方法は、いくつかの実施形態では、ヒトの患者から得られた適当なサンプル(例えば、血液、血清、血漿)を得る工程をさらに含むことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、肝機能における実質的な変更は、正常値範囲の上限(ULN)の約2もしくは3倍を超えるALT;またはULNの少なくとも1.5~2倍の、総ビリルビンの増加である。したがって、好ましくは、ヒトの患者は、ALTが、rHDL治療前もしくはrHDL治療後に、正常値範囲の上限(ULN)の約2または3倍を超えない。さらに好ましくは、ヒトの患者は、総ビリルビンが、rHDL治療前またはrHDL治療後に、ULNの少なくとも1.5~2倍でない。いくつかの好ましい実施形態では、ALTは、治療前および治療後に、依然としてほぼ一定である(例えば、治療前の値が依然として10%または20%以内のままである)。
【0072】
腎毒性は、血清クレアチニンレベルによって定義することができる。いくつかの実施形態では、腎機能における実質的な変更は、ベースライン値の約1.2~1.5倍以上の血清クレアチニンである。したがって、好ましくは、ヒトの患者は、血清クレアチニン値が、rHDL治療前またはrHDL治療後に、ベースライン値の約1.2~1.5倍以上でない。いくつかの好ましい実施形態では、血清クレアチニン値は、治療前および治療後に、依然としてほぼ一定のままである(例えば、依然として治療前の値が10%または20%以内のままである)。
【0073】
さらにまたはあるいは、腎毒性は、糸球体ろ過率(eGFR)の減少によって定義することができる。ヒトの正常な糸球体ろ過率(eGFR)は、少なくとも約90mL/分/m(例えば、少なくとも約90mL/分/1.73m)である。これは、CKD-EPI式を使用して算出することができる(例えば、Levey、2009年 Ann Intern Med May 5;150巻(9号):604~612頁を参照のこと)。eGFRおよび腎疾患の間の相関は、当技術分野で十分に確立され、標準化されている(例えば、Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO)CKD Work Group.KDIGO 2012 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease.Kidney inter.、Suppl.2013年;3巻:1~150頁を参照のこと)。したがって、腎機能における実質的な変更は、実質的に90mL/分/m未満(例えば、実質的に90mL/分/1.73m未満)のeGFRとして測定される。軽度の腎機能障害は、通常、eGFR約60mL/分/m以上(例えば、約60mL/分/1.73m以上)を伴う。
【0074】
上記で述べた通り、本発明は、正常な腎機能、軽度の腎機能障害および中等度の腎機能障害を伴う患者に関連する。したがって、eGFRが、rHDL治療前に90mL/分/1.73m未満である患者(例えば、軽度もしくは中等度の腎機能障害を有する患者)は、rHDL治療後に90mL/分/1.73m未満であるeGFRを有し得、そのeGFRレベルは、治療により引き起こされないことが理解される。したがって、このような場合には、rHDL治療は、単にeGFRが90mL/分/1.73m未満であることに基づいて、本明細書で使用される「腎機能における変更」を引き起こすとはみなされない。したがって、治療によって、腎機能における変更がもたらされているか否かを決定するために、治療前に患者の腎機能を知ることは有用となり得る。
【0075】
したがって、例えば、ヒトの患者が、rHDL治療前に、eGFRが実質的に90mL/分/1.73m未満でない場合、前記患者は、好ましくは、rHDL治療後にeGFRが実質的に90mL/分/1.73m未満でない。さらに、ヒトの患者が、rHDL治療前にeGFRが実質的に60mL/分/1.73m未満でなく、前記患者は、好ましくは、rHDL治療後にeGFRが、実質的に60mL/分/1.73m未満でない。同様に、ヒトの患者が、rHDL治療前にeGFRが実質的に30mL/分/1.73m未満でない場合、前記患者は、好ましくは、rHDL治療後にeGFRが実質的に30mL/分/1.73m未満でない。言い換えるならば、好ましい実施形態では、rHDL治療は、Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO)CKD Work Group.KDIGO 2012 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease.Kidney inter.、Suppl.2013年;3巻:1~150頁において使用されるおよび本明細書の他で参照される、標準的な定義によれば、患者の腎臓の状態に変化をもたらさない。
【0076】
腎疾患モデルが、上記群の患者をいくつかの別々のカテゴリーに適用され、eGFR値が継続するならば、rHDL治療前のeGFRと比較して、rHDL治療後のeGFRの10または20または30mL/分/1.73m、もしくはそれ以上の変化(例えば、rHDL治療後のeGFRの10または20または30mL/分/1.73m、もしくはそれ以上の減少)に基づいて、腎機能における実質的な変更を決定するのに有用となり得る。例として、患者は、好ましくは、rHDL治療後のeGFRが、rHDL治療前のeGFRの10、20または30mL/分/1.73m以内である。例えば、患者は、
rHDL治療後のeGFRが、治療前のeGFRの30、20または10mL/分/1.73m以内である腎機能の実質的な変更がないと考えられる。
【0077】
あるいは、腎毒性は、腎代替療法の必要性として定義され得る。
【0078】
適切には、rHDL製剤は、アポリポタンパク質またはその断片を含む。アポリポタンパク質は、任意のアポリポタンパク質となり得、これは、天然のHDLまたは再構成された高密度リポタンパク質/rHDLの機能的な、生物学的活性構成成分である。通常、アポリポタンパク質は、アポA-I、アポA-II、アポA-V、pro-アポA-Iのような血漿-由来のもしくは組換え型アポリポタンパク質またはアポA-I Milanoのような変種である。好ましくは、アポリポタンパク質は、アポA-Iである。より好ましくは、アポA-Iは、野生型配列またはMilano配列を含む、組換え由来である、あるいは、これは、ヒト血漿から精製される。アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質の生物学的活性断片の形態となり得る。かかる断片は、天然のものでも、化学合成されても組換え型でもよい。ただの例として、アポA-Iの生物学的活性断片は、好ましくは、アポA-Iのレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)刺激活性が、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%から100%であり、さらには、100%を超える。
【0079】
いくつかの一般的な実施形態では、アポリポタンパク質は、約5~約50mg/mlの濃度である。これには、5、8、10、15、20、25、30、35、40、45および50mg/mlならびにこれらの量の間の任意の範囲が含まれる。アポリポタンパク質は、好ましくは、約25~45mg/mlの濃度である。詳細な実施形態では、アポリポタンパク質は、好ましくは、約25~45mg/mlの濃度のアポA-Iである。他の実施形態では、アポリポタンパク質は、約5~20mg/mlの濃度、例えば、約8~12mg/mlの濃度となり得る。いくつかの実施形態では、アポリポタンパク質は、アポA-Iであり、rHDL製剤中のその含有量は、約25~45mg/mLである。他の実施形態では、再構成されたrHDL製剤中のアポA-I含有量が、約5~50mg/mLであるように、rHDLは、凍結乾燥後再構成される。凍結乾燥されたrHDL製剤の再構成後のアポA-I含有量は、好ましくは、約25~45mg/mlの濃度である。詳細な実施形態では、凍結乾燥されたrHDL製剤の再構成後のアポA-I含有量は、約30~40mg/mLである。一実施形態では、凍結乾燥されたrHDL製剤の再構成後のアポA-I含有量は、約30mg/mLである。
【0080】
一般に、rHDL製剤の投与される投与量は、体重kg当たり約1~約120mgの範囲となり得る。好ましくは、投与量は、投与量8mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、および70mg/kgを含めて、約5~約80mg/kgの範囲となり得る。
【0081】
代替の実施形態では、rHDL製剤は、「固定された投与量」の製剤の形態であってよい。適切には、固定された投与量のアポリポタンパク質製剤は、任意の体重またはある体重の範囲における任意の体重のヒトの患者への投与後に治療的に有効である投与量である。したがって、rHDL製剤投与量は、「体重について調整される投薬」の場合に通常行うはずであるようにヒトの特定の体重に応じて算出、決定または選択されることはない。
【0082】
それに反して、固定された投与量のアポリポタンパク質製剤は、任意の体重またはある体重の範囲における任意の体重のヒトの患者に投与される場合、アポリポタンパク質製剤のアポリポタンパク質構成物への曝露に関して、患者間の変動性の相対的な減少を示すはずである、投与量として決定される。患者間の変動性の相対的な減少は、患者母集団の体重について調整される投薬によって観察されるものまたはそれに伴うものと比較される。
【0083】
曝露の変動性は、固定された投与量のアポリポタンパク質製剤の投与後の患者のアポリポタンパク質への曝露における変動に関して、表すまたは測定することができる。好ましくは、この変動性は、固定された投与量のアポリポタンパク質製剤が、ある範囲の体重にわたって、ヒトの患者に投与される場合に生じるはずの変動性を、固定された投与量の患者と同じ範囲の体重にわたって、ヒトの患者に投与される、体重について調整される投与量について生じるはずである変動性と比較したものである。いくつかの実施形態では、アポリポタンパク質への曝露は、平均曝露(例えば、平均または中央値曝露)、総曝露(例えば、曝露の時間にわたって積分された量)または最大曝露レベル(例えば、Cmax)として測定することができる。一般に、体重または体重の範囲は、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190もしくは200kg、またはこれらの値間の任意の範囲である。好ましくは、体重または体重の範囲は、20~200kg、20~60kg、40~160kg、50~80kg、60~140kg、70~80kg、80~120kg、100~180kgまたは120~200kgである。
【0084】
適切には、変動性は、100%未満、または、好ましくは、体重について調整される投薬によって生じる変動性99%、98%、97%、96% 95%、94%、93%、92%、91%、または90%、85%もしくは80%未満である。変動性は、それだけには限らないが、変動の係数(例えば、%CV)、標準偏差、標準誤差などとして含めた、当技術分野で公知の任意の統計的表示によって算出し、表すことができる。
【0085】
著しく異なる体重の患者に固定された投与量のアポリポタンパク質製剤を投与したにも関わらず、アポリポタンパク質への患者の曝露は、驚くべきことに、均一である。したがって、固定された投与量のアポリポタンパク質製剤の治療効果が、体重について調整される投与量と比較して、実質的に損なわれないまたは減少しないことが提唱される。
【0086】
ただの例として、体重の範囲60~120kgの患者に固定された投与量のアポリポタンパク質製剤を投与した後、アポリポタンパク質への総曝露における差がないことが示されている。さらに、アポリポタンパク質についてのCmaxは、体重の範囲60~120kgに対して平均16%まで減少した。
【0087】
比較において、同じアポリポタンパク質製剤を用いた、体重について調整される投薬レジメン(regime)の場合、60kg~120kgまでの体重の倍加は、アポリポタンパク質の投与量の倍加およびアポA-I曝露の増加を要する。
【0088】
固定された投与量のアポリポタンパク質製剤は、毎日、週2回、毎週、2週間毎または毎月を含めて、任意の適当な頻度で、複数の用量で投与することができる。固定された投与量のアポリポタンパク質製剤は、静脈内投与(例えば、ボーラスとしてまたは60、90、120もしくは180分にわたるような、ある期間にわたる連続的な注入により)のような、当技術分野で公知の投与の任意の経路により、筋肉内、腹腔内、直接冠動脈を含めた動脈内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、経口、局所、または吸入経路により投与することができる。通常、固定された投与量のアポリポタンパク質製剤は、静脈内注入または注射によるような、非経口で投与される。
【0089】
好ましい固定された投与量には、アポリポタンパク質0.1~15g、0.5~12g、1~10g、2~9g、3~8g、4~7gまたは5~6gが含まれる。特に好ましい固定された投与量には、アポリポタンパク質1~2g、3~4g、5~6gまたは6~7gが含まれる。詳細な固定された投与量の非限定的な例には、アポリポタンパク質0.25g、0.5g、1g、1.7g、2g、3.4g、4g、5.1g、6g、6.8gお
よび8gが含まれる。したがって、固定された投与量のrHDL製剤のバイアルは、バイアル当たりのアポリポタンパク質含有量が0.25g、0.5g、1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、8または10gである、凍結乾燥されたrHDL製剤を、好ましくは含む。より好ましくは、アポリポタンパク質含有量は、バイアル当たり2、4、6、8、または10gである。特に好ましいバイアルは、rHDL製剤6gまたはそれ以上を含む。
【0090】
固定された投与量CSL112 rHDL製剤の非限定的な例は、国際公開WO2013/090978において見出すことができる。
【0091】
rHDL製剤中の脂質は、任意の脂質となり得、これは、天然に存在するHDLまたは再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)の機能的な、生物学的活性構成成分である。かかる脂質には、リン脂質、コレステロール、コレステロール-エステル、脂肪酸および/またはトリグリセリドが含まれる。好ましくは、脂質は、少なくとも1種の荷電もしくは非荷電リン脂質またはその混合物である。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明によるrHDL製剤は、界面活性剤および非荷電リン脂質の組み合わせを含む。代替の好ましい実施形態では、rHDL製剤は、荷電リン脂質を含むが、界面活性剤は全く含まない。さらなる好ましい実施形態では、rHDL製剤は、荷電および非荷電脂質ならびに界面活性剤を含む。
【0093】
本明細書で使用される場合、中性リン脂質とも呼ばれる「非荷電リン脂質」は、生理的pHで実効電荷が約0であるリン脂質である。非荷電リン脂質は、中性リン脂質の他のタイプが公知であるとしても、両性イオンとなり得、使用することができる。「荷電リン脂質」は、生理的pHにおける実効電荷を有するリン脂質である。荷電リン脂質は、荷電リン脂質の単一タイプ、または2種もしくはそれ以上の異なる、通常、様-荷電リン脂質の混合物を含むことができる。いくつかの例では、荷電リン脂質は、負に荷電した糖リン脂質である。
【0094】
rHDL製剤はまた、いくつかの非電荷脂質の混合物または非電荷脂質および荷電脂質の混合物のような、異なる脂質の混合物をも含むこともできる。リン脂質の例には、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)、ホスファチジルグリセリン(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびスフィノゴミエリン(SM)またはそれらの天然もしくは合成の誘導体が含まれる。天然の誘導体には、卵ホスファチジルコリン、卵ホスファチジルグリセリン、ダイズホスファチジルコリン、水素化ダイズホスファチジルコリン、ダイズホスファチジルグリセリン、脳ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、脳スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン、ガラクトセレブロシド、ガングリオシド、セレブロシド、セファリン、カルジオリピンおよびジセチルホスペート(dicetylphospate)が含まれる。合成の誘導体には、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジデカノイルホスファチジルコリン(DDPC)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DLPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(PMPC)、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジラウロイルホスファチジルグリセリン(DLPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセリン(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセリン(DOPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセリン(POPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジ
ルエタノールアミン(DOPE)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSM)およびジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSM)が含まれる。
【0095】
リン脂質はまた、上記リン脂質のうちのいずれかの誘導体またはアナログとなり得る。最善の結果は、ホスファチジルコリンで得られ得る。他の実施形態では、本発明による製剤中の脂質は、スフィンゴミエリンおよびホスファチジルグリセリン(例えば、DPPG)のような、負に荷電したリン脂質である。
【0096】
rHDL製剤は、スフィンゴミエリンおよびホスファチジルグリセリン(特に、DPPG)の混合物を含むことができる。これらの実施形態では、スフィンゴミエリンおよびホスファチジルグリセリンは、任意の適当な比、例えば、90:10~99:1(w:w)、通常、95:5~98:2、最も通常には、97:3で存在し得る。他の実施形態では、rHDL製剤は、スフィンゴミエリンおよびホスファチジルグリセリン(特に、DPPG)の混合物を含まない。
【0097】
適切には、アポリポタンパク質:脂質のモル比は、通常、約1:20~約1:120、好ましくは、約1:20~約1:100、より好ましくは、約1:20~約1:75(モル:モル)、特に、1:45~1:65である。この範囲には、約1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95および1:100のような、モル比が含まれる。アポリポタンパク質:脂質の特に有利な比は、1:40~1:65(モル:モル)である。これによって、本発明によるrHDL製剤は、肝毒性を引き起こさないレベルで、脂質を含むことが保証される。
【0098】
他の実施形態では、アポリポタンパク質:脂質のモル比は、約1:80~約1:120の範囲となり得る。例えば、この比は、1:100~1:115、または1:105~1:110となり得る。これらの実施形態では、モル比は、例えば、1:80~1:90、1:90~1:100、または1:100~1:110となり得る。別の実施形態として、アポリポタンパク質:脂質のモル比は、約1:80~約1:120の範囲とならない。
【0099】
適切には、rHDL製剤は、安定剤を含む。通常、安定剤は、約1.0%~約6.0%の濃度、例えば、1.0、1.1、1.2または1.3%~5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0%の濃度、好ましくは、約1.0%~6.0%未満の濃度、例えば、約1.0%~5.9%の濃度(rHDL製剤w/w)で存在する。好ましくは、約3.0%~6.0%未満、例えば、約3.0%~5.9%未満、好ましくは、約4.0~5.9%、好ましくは、約4.0%~5.5%、好ましくは、4.3~5.3%、好ましくは、4.3~5.0%、最も好ましくは、4.6~4.8%(w/w)であり、前記製剤中で、アポリポタンパク質と脂質との間の比は、好ましくは、約1:20~約1:75であり、より好ましくは、約1:45~約1:65(モル:モル)である。凍結乾燥安定剤は、好ましくは、糖類(例えば、スクロースのような二糖類)である。
【0100】
この比較的低量の安定剤は、腎毒性のリスクを低下することができる。これらの薬剤が、腎臓におけるクリアランスのための安定剤と競合することがあるため、これはまた、急性冠症候群療法(ACS)中に造影剤を投与されている患者に特に適している。
【0101】
好ましくは、安定剤は、「凍結乾燥安定剤」であり、これは、凍結乾燥中、タンパク質を安定させる物質である。好ましい凍結乾燥安定剤は、糖類を含む。例えば、スクロースのような二糖は、凍結乾燥安定剤として使用するための、特に適当な糖類である。使用することができる他の二糖には、果糖、トレハロース、マルトースおよび乳糖が含まれる。
二糖の他に、ラフィノースおよびマルトトリオースのような三糖を使用することができる。より大型のオリゴ糖はまた、適当となり得、例えば、マルトペンタオース、マルトヘキサオース(maltohexaose)およびマルトヘプタオース(maltoheptaose)である。あるいは、ブドウ糖、マンノースおよびガラクトースのような単糖類を、使用することができる。これらのモノ-、ジ-、トリ-およびより大型のオリゴ糖は、単独でまたは互いに組み合わせて使用することができる。
【0102】
他のいくつかの実施形態では、凍結乾燥安定剤は、糖アルコール、アミノ酸、または糖類および糖アルコールおよび/またはアミノ酸の混合物である。
【0103】
詳細な糖アルコールは、マンニトールである。使用することができる他の糖アルコールには、イノシトール、キシリトール、ガラクチトール、およびソルビトールが含まれる。グリセリンのようなポリオールはまた、適し得る。
【0104】
スクロースおよびマンニトールの混合物は、使用することができる。糖類および糖アルコールは、任意の適当な比、例えば、約1:1(w:w)~約3:1(w:w)、特に、約2:1(w:w)で混合することができる。2:1未満の比が、特に想定され、例えば、3:2未満である。通常、この比は、1:5を超え、例えば、1:2(w:w)を超える。いくつかの実施形態では、本製剤は、4%未満のスクロースおよび2%マンニトール(rHDL製剤のw/w)、例えば、3%スクロースおよび2%マンニトールを含む。いくつかの実施形態では、本製剤は、4%スクロースおよび2%未満のマンニトールを含む。いくつかの実施形態では、本製剤は、4%未満のスクロースおよび2%未満のマンニトール、例えば、約1.0%~3.9%スクロースおよび約1.0%~1.9%(w/w)マンニトールを含む。
【0105】
凍結乾燥安定剤として使用することができるアミノ酸には、プロリン、グリシン、セリン、アラニン、およびリジンが含まれる。修飾アミノ酸を、やはり使用することもでき、例えば、4-ヒドロキシプロリン、L-セリン、グルタミン酸ナトリウム、サルコシン、およびγ-アミノ酪酸である。プロリンは、凍結乾燥安定剤として使用するための、特に適当なアミノ酸である。いくつかの実施形態では、凍結乾燥安定剤は、糖類およびアミノ酸の混合物を含む。例えば、スクロースおよびプロリンの混合物を、使用することができる。糖類およびアミノ酸は、任意の適当な比、例えば、約1:1~約3:1(w:w)、特に、約2:1(w:w)で混合することができる。2:1未満の比が、特に想定され、例えば、3:2(w:w)未満である。通常、比は、1:5を超え、例えば、1:2(w:w)を超える。好ましくは、アミノ酸は、約1.0~約2.5%の濃度、例えば、1.0、1.2、または1.3~2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、または2.5%(rHDL製剤のw/w)の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、本製剤は、1.0%スクロースおよび2.2%プロリン、または3.0%スクロースおよび1.5%プロリン、または4%スクロースおよび1.2%プロリンを含む。アミノ酸を、糖類に加えて、等張液を維持することができる。重量モル浸透圧濃度が350mosmol/kgを超える溶液は、通常、高張であり、250mosmol/kg未満の溶液は、通常、低張である。重量モル浸透圧濃度が250mosmol/kg~350mosmol/kgである溶液は、通常、等張である。
【0106】
アポリポタンパク質および凍結乾燥安定剤の間の比は、比が、約1:1~約1:7(w:w)であるように、通常調整される。より好ましくは、比は、約1:1~約1:3であり、特に、約1:1.1~約1:2である。したがって、詳細な実施形態では、rHDL製剤は、比が、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9または1:2(w:w)である。しかしながら、低量のタンパク質(例えば、<20mg/mL)がある詳細な実施形態の場合、アポ
リポタンパク質および凍結乾燥安定剤の間の比は、約1:7(w:w)と同程度、例えば、約1:4.5(w:w)に拡張することができると考えられる。
【0107】
国際公開WO2014/066943に参照がなされ、これは、CSL112 rHDL製剤に関連して、凍結乾燥安定剤の、非限定的で詳細な例および考察が提供される。
【0108】
いくつかの場合による実施形態では、rHDL製剤は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、rHDL製剤において使用するために適した、胆汁酸およびそれらの塩を含めた、任意のイオン性(例えば、陽イオン性、陰イオン性、両性イオン性)界面活性剤または非イオン性界面活性剤となり得る。イオン性界面活性剤は、胆汁酸およびそれらの塩、ポリソルベート(例えば、PS80)、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパン-スルフォネート(CHAPS)、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルフォネート(CHAPSO)、セチルトリメチル-アンモニウムブロミド、ラウロイルサルコシン、tert-オクチルフェニルプロパンスルホン酸および4’-アミノ-7-ベンゾアミド-タウロコール酸を含むことができる。
【0109】
胆汁酸は、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸またはウルソデオキシコール酸を含めた、通常、24個の炭素を有する、ジヒドロキシル化もしくはトリヒドロキシル化ステロイドである。好ましくは、界面活性剤は、胆汁酸塩、例えば、コール酸塩、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩またはウルソデオキシコール酸塩である。特に好ましい界面活性剤は、コール酸ナトリウムである。界面活性剤の濃度、特に、コール酸ナトリウムの濃度は、好ましくは、0.3~1.5mg/mLである。本発明のいくつかの実施形態では、rHDL製剤は、アポリポタンパク質約0.015~0.030g/gのコール酸塩レベルを含む。胆汁酸濃度は、比色アッセイ(例えば、Lerchら、1996年、Vox Sang.71巻:155~164頁;Sharma、2012年、Int.J.Pharm Biomed.3巻(2号)、28~34頁;& Gallsauren test kit and Gallsauren-Stoppreagens(Trinity Biotech)を参照のこと)を含めた、様々な方法を使用して決定することができる。本発明のいくつかの実施形態では、rHDL製剤は、比色アッセイによって決定された通り、コール酸塩レベル0.5~1.5mg/mLを含む。
【0110】
好ましい実施形態において、本明細書に開示されるrHDL製剤は、pHが、6~8の範囲であり、好ましくは、7~8の範囲内である。さらにより好ましくは、pHは、7.3~7.7の範囲となる。
【0111】
好ましい実施形態において、rHDL製剤は、凍結乾燥される。アポリポタンパク質:脂質比と組み合わせた、前述した凍結乾燥安定剤、好ましくは、スクロースの存在により、凍結乾燥によって、長期の有効期間を有する安定した粉末が生成される。この粉末は、貯蔵することもでき、粉末として貯蔵後直接使用することもできるまたは再構成された高密度リポタンパク質製剤を形成するために、再水和後に使用することもできる。
【0112】
本発明は、ヒト血漿由来アポA-Iを使用して、大規模な生産で製造されたrHDLで使用することができる。凍結乾燥した生成物は、バルク製剤のために製造することができ、あるいは、混合されたタンパク質/脂質溶液は、凍結乾燥前に、より小型の容器(例えば、単一の用量単位)に分配することができ、かかるより小型の単位は、滅菌した単位剤形として使用することができる。凍結乾燥した製剤は、再構成された高密度リポタンパク質であるタンパク質-脂質複合体の溶液または懸濁液を得るために、再構成することができる。凍結乾燥された粉末は、適当な容積に水溶液で再水和される。好ましい水溶液は、注射用の水(WFI)、リン酸緩衝食塩水または生理食塩水である。混合物は、振り混ぜ
て、再水和を容易にすることができる。好ましくは、再構成工程は、室温で行われる。
【0113】
WO2012/000048に記載されているような、脂質、およびアポリポタンパク質を含む溶液を得る方法は、当業者に周知である。
【0114】
本発明の凍結乾燥されたrHDL製剤は、それだけには限らないが、フリーズドライを含めた、当技術分野で公知の凍結乾燥の任意の方法を使用して形成することができる、すなわち、アポリポタンパク質/脂質-含有溶液は、減圧蒸発後、凍結される。
【0115】
提供される凍結乾燥されたrHDL製剤は、少なくとも2、4、6、8、10、12、18、24、36カ月間またはそれ以上実質的にこれらの本来の安定性特性を保持することができる。例えば、2~8℃または25℃で貯蔵された凍結乾燥されたrHDL製剤は、6カ月間もしくはそれ以上貯蔵する場合、HPLC-SECにより測定される通り、実質的に同じ分子サイズ分布を、通常、保持することができる。rHDL製剤の詳細な実施形態は、2~8℃および/または室温で貯蔵した場合、少なくとも6カ月、12カ月、18カ月、24カ月、36カ月さらにそれ以上の間、市販用の医薬品の使用を安定させることができ、それらの使用に適し得る。
【0116】
本明細書に開示される方法および/またはrHDL製剤が、1種もしくはそれ以上の追加の治療薬を含むことができるということもやはり理解されよう。同様に、本明細書に開示される詳細な方法における使用のための、本明細書に開示される再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤は、1種またはそれ以上の追加の治療薬と共に使用することができる。適切には、1種またはそれ以上の追加の治療薬は、それだけには限らないが、急性心筋梗塞(MI)イベントおよび/もしくはMACEの治療、予防もしくはそのリスクの低下、および/またはヒトの患者におけるコレステロール引き抜き能(CEC)の増加を補助するまたは容易にすることができる。
【0117】
1種またはそれ以上の追加の治療薬には、1種またはそれ以上の脂質調整剤;1種またはそれ以上のコレステロール吸収阻害剤;1種またはそれ以上の抗凝固剤;1種またはそれ以上の高血圧治療薬;および1個またはそれ以上の胆汁酸結合分子を含むことができる。
【0118】
脂質調整剤は、LDLおよび/またはトリグリセリドを減少させるまたは低下させることができる、かつ/またはHDLを増加させることができる。非限定的な例には、HMG-CoA還元酵素阻害剤、フィブレート(例えば、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシンタイプ9(PCSK9)阻害剤およびナイアシンが含まれる。
【0119】
HMG-CoA還元酵素阻害剤の非限定的な例には、それだけには限らないが、ロバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチンおよびシンバスタチンのような「スタチン」が含まれる。
【0120】
コレステロール吸収阻害剤の非限定的な例には、エゼチミブが含まれ、これは、単独でまたは前述したような、スタチンと一緒に、投与してもよい。
【0121】
抗凝固剤の非限定的な例には、それだけには限らないが、ワルファリン、ビタミンKアンタゴニスト、ヘパリンまたはそれらの誘導体、第Xa因子インヒビターおよびトロンビン阻害剤が含まれる。
【0122】
高血圧治療薬の非限定的な例には、それだけには限らないが、アンジオテンシン変換酵
素(ACE)阻害剤(例えば、エナラプリル、ライミプリル、カプトプリルなど)、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト(例えば、イルベサルタン)、レニン阻害剤、アドレナリン受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネルブロッカー、血管拡張剤、ベンゾジアゼピンおよび利尿剤(例えば、チアジド)が含まれる。
【0123】
胆汁酸結合分子または「捕捉剤」の非限定的な例には、それだけには限らないが、コレスチラミン、コレスチポールおよびコレセベラムが含まれる。
【0124】
1種またはそれ以上の追加の治療薬の適当な投与量は、これらの薬剤についての既存の、確立された安全な投与量レジメン(regime)への参照により容易に決定することができ、これは、当技術分野の実行者により容易に変更されても修正されてもよい。
【0125】
1種またはそれ以上の追加の治療薬は、本明細書に開示されるrHDL製剤に組み込むことができるまたは本明細書に開示される治療もしくは治療的使用の方法に従って、別々に投与することができることが理解されよう。これには、本明細書に開示されるrHDL製剤の投与前または投与後、rHDL製剤の投与の少なくとも24、18、12、6、3、2もしくは1時間以内に、投与することを含むことができる。
【0126】
本発明の詳細な実施形態は、容易に理解し、実際的に実施することができるように、次の非限定的な例に言及する。
【実施例0127】
略語
ACS:急性冠症候群
AE:有害事象
AKI:急性腎傷害
AMI:急性心筋梗塞
アポA-I:アポリポタンパク質A-I
AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
AUC:曲線下面積
BARC:BARC出血基準(Bleeding Academic Research
Consortium)
CAD:冠動脈疾患
CEC:コレステロール引き抜き能
CKD-EPI:慢性腎疾患疫学コラボレーション(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)
CL:全身クリアランス
max:血漿中最大濃度
CV:心血管の
DSMB:データ安全性モニタリング委員会
eGFR:推定糸球体ろ過率
HAV:A型肝炎ウイルス
HBV:B型肝炎ウイルス
HCV:C型肝炎ウイルス
HDL:高密度リポタンパク質
HIV:ヒト免疫不全ウイルス
ITT:治療企図
LVEF:左室駆出分画
MACE:主要有害心イベント
MI:心筋梗塞
Mod RI:中等度の腎機能障害
NAT:核酸検査
NRF:正常な腎機能
NYHA:ニューヨーク心臓病学会
PC:ホスファチジルコリン
PCI:経皮的冠動脈形成術
PK/PD:薬物動態/薬力学
RI:腎機能障害
SAE:重篤な有害事象
1/2:半減期
TEAE:治療下で発現した有害事象
max:血漿中最大濃度到達時間
ULN:正常値範囲の上限
ss:定常状態時の分布容積
【実施例0128】
CSL112は、ホスファチジルコリンを有する円板型のリポタンパク質へと再構成され、スクロースで安定化される、HDLの第1の機能的構成成分である、血漿-由来のアポA-Iである24。CSL112の初回の研究では、血漿アポA-Iの有意な用量-依存的増加、および全体における用量-依存的増加およびABCA1-依存性コレステロール引き抜き能を実証している25~27。好ましい安全性プロファイルは、急性MIを伴う患者において特徴付けられていないが、安定動脈硬化性疾患を伴う患者を含めて、現在まで臨床プログラムにおいて実証されている27。CSL112のプロトタイプ製剤は、ホスファチジルコリン添加剤含有量に関連して推定された、肝酵素の一過的な上昇の発生により、開発が中断された28、29。腎毒性のリスクは、高用量の静脈内のスクロースと共に記載されている。したがって、本発明者らは、MI患者におけるCSL112のこのより低いホスファチジルコリンおよび低スクロース-含有配合物の注入後の肝および腎機能の両方を評価した。
【0129】
Apo-I Event reductinG in Ischemic Syndromes I(AEGIS-I:虚血性症候群におけるアポ-Iイベントの減少)試験は、多施設、ランダム化、プラセボ対照、用量設定2b相臨床試験であり、安全性および忍容性を評価することが第1の目的であり、第2のおよび探索的な目的は、MACEの初回発生時間、ならびに急性MIを伴う患者および正常な腎機能または軽度の腎機能障害を伴う患者間のプラセボと比較した、CSL112の2種の用量の週4回投与の薬物動態および薬力学を含んだ(ClinicalTrials.gov:NCT02108262)。
【0130】
方法
試験の監視
AEGIS-Iは、試験スポンサー(CSL Behring社)ならびに実行および運営委員会のメンバー間の協力で設計された、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、用量設定、2b相試験であった。統計解析は、PERFUSE Study Groupによって、SDTMデータセットを使用して独立に実施された。実行委員会は、原稿のすべてのバージョンを起案し、最終バージョンの内容に同意した。スポンサーは、照査する機会を有し、原稿の最終草案に関して論評するが、編集の権限を持たなかった。試験デザインは、1964年ヘルシンキ宣言およびその後の改正と調和し、適切な各国および施設の規制当局ならびに倫理委員会によって承認された。独立したデータおよび安全性モニタリング委員会(DSMB)は、試験をモニターし、盲検化されていないデータを論評した。
【0131】
試験母集団
過去7日以内にI型(自発的な)MIと一致する臨床像を有し、正常な腎機能または軽度の腎機能障害を有する、少なくとも18歳の男性および女性が登録された。MIの基準は、MIの第3の普遍的定義に基づいた30。正常な腎機能は、eGFR≧90mL/分/1.73mとして定義され、軽度の腎機能障害は、eGFR<90mL/分/1.73mおよび≧60mL/分/1.73mとして定義された。
【0132】
主な除外基準には、現在の肝胆道疾患、ベースライン中等度もしくは重症慢性腎疾患、造影剤によって誘発された急性腎傷害の病歴、または進行中の血行動態不安定の証拠が含まれる。血管造影を行い、造影剤を投与した対象の中でもとりわけ、造影剤投与の少なくとも12時間後の安定した腎機能(すなわち、造影剤投与前の値(pre-contrast value)から血清クレアチニン≧0.3mg/dLの増加がない)は、登録のために必要とされた。本試験は、機関審査委員会によって承認され、すべての対象は、登録前に書面のインフォームドコンセントを提出した。
【0133】
試験プロトコール
米国食品医薬品局は、最初の9名の患者が登録された後、DSMBによる腎臓および肝臓の安全性のレビューを命令し、DSMBの承認後、主な試験における登録を開始した。適格とされた患者を、最初に腎機能(正常な腎機能または軽度の腎機能障害)により層別化し、次いで、1:1:1の比で、3つの治療群、すなわち、低用量CSL112(用量当たりアポA-I2g)、高用量CSL112(用量当たりアポA-I6g)、またはプラセボのうちの1つに、無作為に割り付けた。試験薬物を、週1回2時間(試験1、8、15、および22日目に)静脈内注入連続4週間として投与した。実薬による治療期間は、試験薬物の第1の用量の投与(試験1日目)から、最後の注入の1週間後まで(試験29日目)の期間として定義された。
【0134】
患者を、スクリーニングから最終のフォローアップ来診までの予定された間隔でルーチン的に評価した。評価には、身体検査、血清クレアチニン、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、ALT、AST、BUN、Cr、ブドウ糖、代謝性、心血管、および脂質バイオマーカー、免疫原性のマーカー、および注入部位の評価、出血、および有害事象が含まれた。主要有害心イベント(MACE)の発生を、ランダム化の1年後までまたは最終のランダム化対象が、試験112日目の来診を終了するまで、すべての対象についてやはりモニターした。
【0135】
アポA-Iの血漿濃度、およびex-vivoコレステロール引き抜きを、いくつかの時点で測定した。さらに、薬物動態/薬力学(PK/PD)サブスタディを、患者63名の間で実施した。サブスタディに含まれる対象を、腎機能により、等しく層別化し、プラセボ、低用量CSL112(用量当たりアポA-I2g)、または高用量CSL112(用量当たりアポA-I6g)に、それぞれ2:3:3の比で無作為に割り付けた。培養されたJ774細胞からコレステロール引き抜きを媒介する血漿の能力を、前述のように測定した26。これらのアッセイは、総コレステロール引き抜き能ならびにABCA1輸送体に帰せられ得る引き抜きの両方を測定する。両方の引き抜きの測度は、細胞コレステロール含有量のパーセントとして示される。AEGIS-I試験デザインの追加の詳細は、すでに公表されている31
【0136】
共主要安全性評価項目(Co-primary Safety Endpoints)
共主要安全性評価項目は、肝毒性および腎毒性の率である。肝毒性を、ALT>3×正常値範囲の上限(ULN)または反復測定において確認された、総ビリルビン>2×ULNの発生率として定義した。腎毒性を、反復測定において確認された、血清クレアチニン≧1.5×ベースライン値、または新たに生じた、腎代替療法の必要性として定義した。
肝臓および腎臓の安全性評価項目は、ベースライン(第1の注入前)から実薬による治療期間の終了(試験29日目)までを評価した。共主要安全性評価項目のすべての測度は、中央測定施設値に基づいた。
【0137】
第2および探索的評価項目
第2および探索的有効性評価項目を、治療企図(ITT)母集団において評価し(すべての患者は、試験薬物を投与されなかった患者を含めてランダム化された)、MACEの初回発生時間を含め、MACEは、最後に治療された対象が、試験112日を終了するまで、ランダム化から、心血管死、非致死性MI、虚血性脳卒中、または不安定狭心症のための入院の複合として定義された。すべてのMACEは、治療の割付けに関して盲検化された、独立した臨床事象委員会により決定された。
【0138】
対象の大部分が、MI後、抗血小板薬二剤併用療法で治療されることを予測されたため、出血を、第2の安全性評価項目として評価した。測定されたおよびベースライン補正された血漿アポA-I濃度、総およびABCA1-依存性コレステロール引き抜き測度(ex-vivo)の変化を含めたCSL112の薬理学的特性の分析、ならびに脂質、代謝性、および心血管バイオマーカーを評価した。追加の予め指定された評価項目は、前もって記載されている31
【0139】
統計解析
統計解析を、SAS(登録商標)version 9.4を使用して行った。すべての安全性評価項目を、安全性対象集団において評価し、これは、試験薬物の少なくとも1種の部分的な用量を投与されたランダム化された対象からなる。安全性対象集団では、対象を、患者が受けた実際の治療および患者の真の腎臓層(true renal stratum)に従って分類した。有効性評価項目を、ITT母集団において評価し、この母集団は、すべてランダム化された対象からなる。ITT母集団では、対象を、実際の治療または真の腎機能層に関わらず、患者がランダム化された治療に従っておよび患者がランダム化された腎機能層に従って分類した。PK分析母集団、PK/PD分析母集団、および生物マーカー分析母集団のような、追加の母集団を、試験プロトコールにおいて事前定義した。
【0140】
Newcombe-Wilsonスコア法を使用して、共主要安全性評価項目についての率の差(CSL112-プラセボ)の両側95%信頼区間を算出した。両側95%信頼区間の上限を、非劣性評価のための肝臓および腎臓の評価項目についての指定された閾値と比較し、共主要評価項目を試験するために、指定した。これにより、肝臓および腎臓の評価項目のそれぞれについて片側の2.5%の第一種の過誤を得、Bonferroni法の適用に基づいて5%で全般的な第一種の過誤を制御した。95%信頼区間の上限が、対治療群比較についての、肝臓の予後が≦4%であり、腎臓の予後が≦5%である場合、非劣性基準を、予め指定して、率の差を満たした。出血率を、3群間で比較した。
【0141】
MACEにおける差の検出を行う検出力はなかったが、第2のおよび探索的なMACE転帰を、共変量として治療割付けおよびベースライン腎機能層と共に、Coxの比例ハザードモデルを使用して、治療群間の第1のMACE時間の差を算出することにより評価した。両側ログランク検定p値を、腎機能によって層別化される、各CSL112用量対プラセボについて算出した。MACEについての正式な仮説検定を意図しなかった。
【0142】
結果
2015年1月から2015年11月まで、16カ国の合計1,258名の患者をランダム化し、そのうち1244名(99.6%)に、少なくとも1種の用量の試験薬物を投与し、1147名(91.2%)に、4種すべてを注入した。合計680名(54.1%
)の患者を、正常な腎機能層に層別化し、578名(45.9%)を、軽度の腎機能障害層に層別化した(図1)。インデックスイベントの場合、61.6%の患者が、STEMIを経験し、38.4%の患者が、NSTEMIを経験した。インデックスイベントからランダム化までの中央期間は、4日であり、治療群当たり24~34名の患者は、フォローアップ1年であり、フォローアップの中央期間は、7.5(IQR5.8、9.7)カ月であった。ベースライン特性は、3つの治療群間でバランスが取れていた(表1)。
【0143】
共主要評価項目の結果
実薬による治療期間中、共主要安全性評価項目の肝障害は、プラセボ群における患者0(0.0%)において生じ、2g用量群における患者415名のうち4名(1.0%)において生じ(p=0.12対プラセボ)、6g用量群における患者416名のうち2名(0.5%)において生じた(p=0.50対プラセボ)。プラセボとの両用量の比較は、有意差はなく、予め指定したマージンは≦4%以内であった(表2)。試験中にHyの法則の症例はなかった(すなわち、組み合わせを説明するような他の理由がない、ALT/ASTおよびビリルビンの同時の上昇)。確認値に関わらず、ベースラインビリルビンが上昇およびすべての値が上昇した患者を含めた、2つの予め指定した感度分析から得られた結果は、主要安全性分析の結果と整合した(表7)。
【0144】
共主要安全性評価項目の腎機能障害は、プラセボ群における患者413名のうち1名(0.2%)において生じ、2g用量群における患者415名のうち0名(0.0%)において生じ(p=0.50対プラセボ)、6g用量群における患者416名のうち3名(0.7%)において生じた(p=0.62対プラセボ)。プラセボとの両用量の比較は、有意差はなく、予め指定したマージンは、≦5%であった(表2)。追加の予め指定した探索的安全性分析および事後解析を、表8および表9に示す。
【0145】
第2および探索的評価項目の結果
12カ月のフォローアップを通して、プラセボと比較した、CSL112療法によるMACE複合第2評価項目(CV死、非致死性MI、虚血性脳卒中および不安定狭心症のための入院)のリスクは、類似した(低用量[2g](419名のうち27名、6.4%)対プラセボ(418名のうち23名、5.5%):ハザード比、1.18;95%CI、0.67~2.05;p=0.72)および高用量[6g]:(421名のうち24名、5.7%、ハザード比、1.02;95%CI、0.57~1.80;p=0.52)(図2)。探索的MACE複合評価項目についての治療群間の類似のリスクを、心血管死、非致死性MIおよび脳卒中の伝統的な第3相評価項目を含めて観察した(図3)。第2のMACE複合評価項目に関して、追加の探索的MACE評価項目の大部分は、治療群間で類似した。CSL112 6gアポA-I(n=4、1.0%;p=0.0477)対プラセボ(n=0、0.0%)を比較した場合、心血管関連死の数に差があったが、これは、CSL112 2gアポA-I(n=2、0.5%;p=0.32)をプラセボと比較した場合示されなかった。しかしながら、心血管関連死を経験している患者の数は、少なかった(表3)。同様に、CSL112 6gアポA-I(n=4、1.0%;p=0.2525)をプラセボ(n=1、0.2%)と比較した場合およびCSL112 2gアポA-I(n=5、1.2%;p=0.1205)をプラセボと比較した場合、心不全イベントの数の差が観察された。心不全を経験している患者の数は少なかった(表3)。
【0146】
BARC出血のすべてのグレードの率は低く、3アーム間で同様であった(表4)。薬物過敏性反応および注入部位反応は、群間でバランスが取れていた。全体で、重篤なおよび生命を脅かす有害事象および薬物の中断をもたらす重篤な有害事象の率は、比較的低く、すべての群間で同様であった(表10および表11)。
【0147】
アポA-Iのベースライン血漿濃度、コレステロール引き抜き能ならびに脂質および心
血管バイオマーカーは、3つの治療群間で類似した(表5)。CSL112の注入は、アポA-Iおよびコレステロール引き抜き能の用量依存的上昇をもたらした(表6)。用量2gでは、アポA-Iが1.29倍、総コレステロール引き抜き能が1.87倍上昇し、用量6gでは、アポA-Iが2.06倍、総コレステロール引き抜き能が2.45倍上昇した。前の知見と一致して、ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能の上昇(用量2gの場合3.67倍、用量6gの場合4.30倍)は、アポA-Iの上昇または総コレステロール引き抜き能のいずれよりも実質的に高かった。これは、CSL112が、循環アポA-Iの量を増加し得るだけでなく、アポA-I当たりでABCA1-依存性引き抜きについての活性も増加し得ることを示唆している26。本発明者らは、注入の終了時にABCA1-依存性コレステロール引き抜き能/アポA-I比を算出することにより、ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能についての循環アポA-Iプールのこうした「比活性」を評価した。CSL112の注入によって、プラセボ群(0.02)と比較して、2g用量群(0.05)の場合の比が2.51倍の増加をもたらし、6g用量群(0.035)の場合の比が1.78倍の増加をもたらした26。ABCA1-依存性引き抜き能力の上昇は、アポA-Iの上昇より高かった。この比が、バリデートされた測度でないが、注入によって、物質量だけでなく、アポA-Iプールの機能性も上昇させたことが推測され得る。実際、ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能/アポA-I比は、プラセボと比較してCSL112の両用量と共に上昇した(表9)。
【0148】
考察
低[2g]用量および高[6g]用量で、急性MIの7日以内に開始する週4回の注入として投与される、再構成された血漿-由来のアポA-IであるCSL112の注入は、肝もしくは腎機能における変更を伴わなかった。これは、CSL112が、急性MI患者に投与された初めての試験であり、急性MIの標準治療に加えられたのはこれが初めてであった。大規模な第3相転帰試験(outcomes trial)の開始前に、急性MIの設定における安全性および実行可能性の確立は重要であった。AEGIS-Iから得られた結果によって、プロトタイプ製剤と比較した、CSL112の現在の製剤が、肝臓の安全性上の懸念を実証していなかったことが示唆される。さらに、MI患者間の造影剤負荷直後のCSL112の注入は、腎毒性を伴わず、血管造影直後に、正常な腎機能または軽度の腎機能障害を伴うMI患者に、CSL112を投与する実行可能性を実証している。中等度の腎機能障害を伴うMI患者における試験は、進行中である。
【0149】
全体的なMACEイベントの数は、1年を通じてフォローアップを終了する対象の数(1258名のうち89名)と同じく、低かった(n=74)。第2のMACE評価項目を評価する統計的検出力は、非常に低く、およそ8.4%であった(表13)。心血管の死亡率が、プラセボと比較して、6g群において高かったが(死亡4対0、p=0.0477)、MACE率は、群間で全体として同様であった。算出されたp値を、32個の効能の比較の多重性について調整しなかった。CSL112注入の近傍で死亡のクラスター形成はなかった(表12および図4)。死亡の不確定性の(indeterminant)原因が、心血管死として含まれるのは、留意すべきである。死亡率の分離された差は、MACE率における全体的な類似性と整合しなかった。
【0150】
プラセボと比較して、CSL112は、コレステロール引き抜き能の測度の改善をやはり伴った。HDL濃度ではなく、HDL機能の改善が、動脈硬化性プラーク病変の安定化およびCVイベントの減少のためにより重要となり得ることが仮定されている。Dallas Heart Studyでは、有効なコレステロール逆転送のマーカーである、高コレステロール引き抜き能には、低コレステロール引き抜き能と比較して67%低いMACEリスクが関連し、この関連性は、HDL濃度と無関係であった18。現在まで、HDLを上昇させる療法によって、実際にHDL濃度が上昇したが、HDLを上昇させる療法は、コレステロール引き抜きに対して適度の効果があるまたは効果がなかった。これは、
HDLを上昇させる療法が、なぜ過去においてMACE転帰を減少することに失敗したのかを少なくとも部分的に説明することができる知見である32~38。それに対して、コレステロール引き抜き能は、CSL112注入直後に著しく上昇した。特に、プラークにおいてコレステロールを含む細胞に特に関連する経路である、ABCA1-依存性引き抜きを、CSL112の注入後3倍を超えて上昇した。ABCA1-依存性引き抜き能力の上昇が、アポA-Iの上昇より高かったことは注目すべきであり、したがって、注入は、物質量だけでなく、アポA-Iプールの機能性も上昇させることが示唆されている。実際、ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能/アポA-I比は、プラセボと比較して、CSL112の両用量で上昇した(表6)。以前のメカニズム試験39は、同様の機能的な変化を示しており、内因性のHDLをリモデリングして、ABCA1と相互作用する高い能力を有する、より小型の、より多くの機能的HDL種を形成することにより、CSL112が、ABCA1-依存性引き抜きを上昇させることが決定される。
【0151】
CSL112によりもたらされるコレステロール引き抜きの上昇は、一過的であり、アポA-Iのクリアランスによりベースラインまで後退することが示されている26。Dallas Heart Studyにおいて評価されたコレステロール引き抜きの持続性のまたは長期の測度と比較して、急性MI直後のコレステロール引き抜き能の一過的な増強がどのように臨床成績に影響を与えるかは公知でない18。MACEイベントが、AEGIS-Iにおいて減少しなかったが、この2b相試験は、安全性試験として設計され、効能を評価するのに十分な検出力はなかった(表13)。他の2相安全性試験と整合して、適切に行われた第3相試験が、この効能を決定的に評価する検出力を有するよう計画され得るように、主要有害心イベント(MACE)を、AEGIS-Iにおいて探索して、イベントのタイミングおよび頻度を評価し、イベントのより高いリスクの患者のサブグループを同定した。これらの分析が探索的であるとしても、第3相計画のための分析に焦点を合わせるよう、これらを予め指定した。
【0152】
共主要安全性評価項目は、非劣性分析について予測されたものより頻度が少なかったが、非常に低い頻度のこれらのイベントは、臨床的に関連する肝臓または腎臓の安全性シグナルがないことが示唆される。いくつかの脂質およびリポタンパク質分析が行われたが、Lp(a)およびアポEは、注入後評価されなかった。
【0153】
これは、第2相安全性試験であり、効能を評価するには検出力不足であり、効能について規制当局への承認を求めるために設計されなかった。第2のMACE評価項目の場合、その検出力は、臨床的に関連する15%のリスク低下を検出するのに8.4%であり、プラセボイベント率を5.5%と仮定した(表13)。多くの第2相試験と同様に,適切な検出力がある重要な第3相試験が、効能を評価するために行われ得るように、本試験を主として行って、安全性を評価するだけでなく、MACEの頻度およびタイミングをも評価し、イベントのためのリスクで患者を同定した。
【0154】
結論として、急性MIの7日以内に開始するおよび造影剤投与の近傍で低[2g]および高[6g]用量で、再構成された血漿-由来のアポA-IであるCSL112の週4回の注入は、適しており、肝もしくは腎機能または他の有意な安全性上の懸念の変更を伴わず、コレステロール引き抜き能の急性の増強を伴った。急性MI後の早期の再発性心血管イベントの減少のためのCSL112の臨床的効能のさらなる評価を、適切な検出力がある、多施設、ランダム化第3相試験において行うことが正当化される。
【実施例0155】
緒言
本例は、中等度の腎機能障害を伴う患者において、CSL112およびマクロファージからコレステロールを引き抜くその能力の臨床試験データを記載している。
【0156】
以前のCSL112による臨床試験によって、健常対象、安定動脈硬化性疾患を伴う患者および正常な腎機能(NRF)または軽度の腎機能障害を伴う急性MI患者における好都合な安全性、薬物動態(PK)および薬力学的応答が実証されている26、27。腎機能障害は、急性冠症候群において一般化した同時的な状態であり、対象のおよそ30%は、3期の慢性腎疾患(CKD)を有する。本試験の目的は、中等度の腎機能障害(Mod
RI)を伴う対象において、CECおよびリポタンパク質バイオマーカーに対するCSL112注入の影響を評価することである。
【0157】
コレステロール逆転送
コレステロール逆転送では、遊離コレステロール(FC)を、ABCA1輸送体によって細胞からpre-β1-HDLに移動させ、これを、アテローム性動脈硬化性病変においてプラークマクロファージで大量に発現させる。次いで、HDL粒子中のFCを、より大型のHDL粒子(HDL3およびHDL2)を形成するレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)によりエステル化させる。FCをやはり、ABCG1およびSR-B1輸送体によってHDL3に移動させる。次いで、エステル化されたHDLコレステロールを、排出または再利用のために肝臓に移動させる。
【0158】
CSL112の注入によって、pre-β1-HDLの形成が増加し、これによって、主としてABCA1輸送体を介してCECが増加し、最終的に、LCAT活性およびFCのエステル化が増加する。
【0159】
方法
試験デザイン
第1相、二重盲検、単回漸増投与試験(NCT02427035)を実施して、Mod
RIを伴う成人におけるCSL112のPK、安全性およびバイオマーカーを評価した。eGFRが≧30および<60mL/分/1.73mである場合、腎機能障害は、中等度として分類された。eGFRが≧90mL/分/1.73mである場合、これは、NRFと比較される。
【0160】
NRFを伴う対象16名およびMod RIを伴う対象16名を含めて、対象は、合計32名であった。対象を、腎機能群によりランダム化して、CSL112 2g(1群当たりn=6)もしくは6g(1群当たりn=6)またはプラセボ(n=4[CSL112用量群当たりn=2])を投与した。
【0161】
本試験は、28日間のスクリーニング期間、その後、強制的な院内の滞在を含めた16日間の実薬による治療期間(その間、CSL112は、単回2時間静脈内(IV)注入として投与される)、数回の外来患者の来診、および76日間の安全性フォローアップ期間からなる。
【0162】
生物マーカー評価
13個の異なるベースラインコレステロール引き抜きおよびリポタンパク質パラメーターを、各腎機能群において測定した。血漿アポA-I、アポリポタンパク質B(アポB)および高感受性C反応性タンパク質(hsCRP)を、免疫比濁法により測定した。総およびABCA1-非依存性CECを、放射標識されたコレステロールで予め負荷した、ABCA1を発現しないまたは環式AMPによって誘発されたABCA1発現を伴うマクロファージを使用して、in vitroで血清のインキュベーション後に測定した(例えば、de le Llera-Moyaら、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.2010年;30-796-801を参照のこと)。ABCA1-依存性CECを、総CECからABCA1-非依存性CECを減算することにより算出し
た。Pre-β1-HDLを、pre-β1-HDLの範囲内でアポA-Iに立体構造特異的抗体を使用したサンドイッチELISAを使用して測定した。他の脂質パラメーターを、標準的な酵素法によって評価した。
【0163】
統計解析
平行t検定を使用して、Mod RIを伴う患者およびNRFを伴う患者間のベースラインコレステロール引き抜きおよびリポタンパク質パラメーターを比較した。CSL112用量にわたる生物マーカー曝露を、ANOVAによる腎機能群間で比較した。
【0164】
結果
ベースライン特性
合計で、32名の対象(NRF n=16およびMod RI n=16)に、CSL112の単回IV注入またはプラセボを投与した。これらの患者群のそれぞれのベースライン特性を、表14に示す。
【0165】
ベースラインレベルで、総およびABCA1-依存性CECは、NRFを伴う対象と比較して、Mod RI対象において、それぞれ、1.3倍および1.8倍高かったが、ABCA1-非依存性CECにおける有意差はなかった。この知見と整合して、NRF群と比較して、Mod RI群において、ベースラインpre-β1-HDLの1.4倍の有意な増加であった。すべての他の脂質およびリポタンパク質レベルおよびhsCRPは、ベースライン時に、腎機能群間で類似であった(表15)。(Meierら、Life Sci 2015年;136巻:1~6頁、成人のCKD患者において低eGFRでより高いCECを前もって観察した()。
【0166】
すべての他の脂質およびリポタンパク質レベルおよびhsCRPは、ベースライン時に腎機能群間で類似した。(表15)。CSL112の注入は、いずれかの腎機能群において、ベースラインレベルからアテローム生成促進的な脂質アポB、非HDコレステロールまたはトリグリセリドのレベルを有意に変更しなかった(データは図示せず)。
【0167】
CSL112注入後のコレステロール引き抜きおよびリポタンパク質パラメーター
CSL112の注入後、アポA-Iは、用量-依存的な方式で、速やかに増加し、注入期間(2時間)の終了時にピークに達し、注入の72時間後に、ベースラインレベルを超えて依然として上昇したままであった。経時的な血漿アポA-I濃度は、各CSL112用量群内の腎機能群間で類似した(図5)。
【0168】
全体の速やかな用量-依存的増加、ABCA1-依存性CECおよびABCA1-非依存性CECを、CSL112注入後に観察した。総CECおよびABCA1-非依存性CECに対するCSL112注入の影響は、腎機能群間で類似した。両方の腎機能群では、CSL112は、pre-β1-HDLレベルによって、用量-依存的に増加した(図6A~B)。
【0169】
両方の腎機能群では、CSL112によって、総CEC、ABCA1-非依存性CEC、ABCA1-依存性CECおよびpre-β1-HDLレベルが用量-依存的に増加した。pre-β1-HDLについて、この用量-依存的増加は、NRFを伴う対象と比較して、Mod RIを伴う対象の場合で高かった(図7A~B)。
【0170】
理論に縛られずに、この知見についてのあり得る説明は、Mod RIを伴う対象における末梢神経細胞に対するABCA1の発現のダウンレギュレーションであり、pre-β1-HDLをHDL3に代謝させる能力の低下により、pre-β1-HDLを増加させる。この場合では、CSL112を注入すると、NRFを伴う対象と比較して、Mod
RI対象におけるpre-β1-HDLのより頑健な増加をもたらすはずである。これは、pre-β1-HDLにおけるベースライン差と整合する(表14)。
【0171】
CSL112の注入後、HDL-非エステル化コレステロールレベル(HDL-UC)の一過的な用量-依存的増加があり、HDL-非エステル化コレステロールレベルは、注入(2時間)の終了時にピークに達し、次いで、減少した(図8)。それに続いて、これによって、HDL-エステル化コレステロール(HDL-EC)が増加し、注入の24時間後ピークに達し、HDL-UCのレベルを超えた。HDL-UCおよびHDL-ECレベルは、注入の144時間後にベースラインレベルを超えて持続性であった。類似の知見は、2gの用量のCSL112と共に示された。本知見は、HDLへの非エステル化コレステロールの連続的な動きおよびLCATによる速やかなエステル化と整合する。LCAT活性は、本試験において直接測定されなかったが、エステル化の強力な上昇は、CSL112を注入したウサギから得られた血漿中で前もって観察された。用量群内で、CSL112は、両方の腎機能群では、HDL-UCおよびHDL-ECのレベルに対して類似の影響を与えた(図8)。
【0172】
CSL112の注入は、いずれの腎機能群においても、ベースラインレベルから、アテローム生成促進的な脂質アポB、非-HDLコレステロールまたはトリグリセリドのレベルを有意に変更しなかった。
【0173】
結論
Mod RIおよびNRFを伴う対象におけるCSL112の注入によって、アポA-IおよびCECにおける類似の即時の、頑健な、用量-依存的上昇がもたらされた。Mod RI対象は、pre-β1-HDLにおいてより大きな上昇を有し(p=0.003)、これは、pre-β1-HDLをHDL3に代謝させる能力の低下を反映し得る。LCAT活性は、遊離コレステロール対エステル化コレステロール比の時間依存的変化によって示され、Mod RIおよびNRF対象において類似すると思われた。ベースラインからの変化は、いずれの群においても、アポB、非-HDLコレステロール、またはトリグリセリド濃度でCSL112と関連して観察されなかった。
【0174】
本試験データによって、CSL112が、Mod RIおよびNRFを伴う対象において同様にコレステロール逆転送のバイオマーカーを増強させることが示されている。これによって、CSL112が、アテローム性動脈硬化症の負荷を速やかに低下させ、急性心筋梗塞後Mod RIを伴うまたは伴わない患者における再発性心血管イベントのリスクを減少させる新規な療法を提供することができるということが示される。
【0175】
これらの結果は、治療開始前の7日以内にMIイベントを経験しなかったMod RI対象において得られた。
【実施例0176】
緒言
ACSおよびRIを伴う患者において、CVイベントおよび死亡のリスクが、推定糸球体ろ過率(eGFR)に反比例するため、短期および長期の予後は、正常な腎機能を伴う患者の場合よりも悪化する[Nabaisら、2008年;Bhandari and Jain、2012年]。中等度RIを伴う対象が、ACS母集団の有意な部分を示すため(すなわち、30%まで[Gibsonら、2004年;Foxら、2010年])、CSL112第3相プログラムにおける本分集団を含むことが重要である。
【0177】
試験CSL112_2001、第2相、多施設、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照、平行群試験を行って、AMIおよび中等度RIを伴う対象において、CSL112 6g
の反復投与の腎臓および他の安全性を評価した。
【0178】
試験デザイン
CSL112_2001試験では、AMIを経験して5~7日以内にスクリーニングされた中等度RIを伴う対象が登録された。およそ81名の対象が、登録され、CSL112 6g(対象およそ54名)対プラセボ(対象およそ27名)の週4回の注入を受けるよう無作為に割り付けて、腎臓および他の安全性パラメーターを評価する予定であった。試験母集団の少なくとも3分の1が、慢性腎疾患(CKD)ステージ3bの範囲内(eGFR30~<45mL/分/1.73m)でeGFRを有したことを保証するために、試験母集団の3分の2(すなわち、対象54名)以下は、CKDステージ3aの範囲(45~<60mL/分/1.73m)でeGFRを有することであった。ランダム化を、慢性腎疾患疫学(CKD-EPI)式[Leveyら、2009年;Stevensら、2010年]により計算されたeGFR(30~<45mL/分/1.73mまたは45~<60mL/分/1.73m)によって、および現在の薬物療法による糖尿病の病歴によって層別化した。対象は、およそ60日間追跡される予定であった。
【0179】
試験目的および評価項目
CSL112_2001試験の主要な目的は、中等度RIおよびAMIを伴う対象におけるCSL112の腎臓の安全性を評価することであった。共主要評価項目は、腎臓のSAEおよびAKIイベントの発生率であった。発生率は、問題となるイベントが少なくとも1回発生している対象の数に基づいた。
【0180】
・ 腎臓のSAEは、Medical Dictionary of Regulatory Activities(MedDRA)基本語(PT)によって定義され、急性腎不全の狭域MedDRA標準検索式(SMQ:Standard MedDRA Query)またはPTの腎尿細管壊死、腎皮質壊死、腎臓壊死、もしくは腎乳頭壊死に含まれた。
・ 急性腎傷害は、実薬による治療期間中、値の上昇後24時間よりも遅く、中央測定施設による反復測定後持続性であった、ベースライン≧0.3mg/dL(26.5μmol/L)から血清クレアチニンの絶対的な増加として定義された。(例えば、フォローアップの喪失またはプロトコール違反により)値の繰り返しが得られなかった場合、実薬による治療期間中ベースライン≧0.3mg/dL(26.5μmol/L)から増加した単独の血清クレアチニン値がやはり、AKIの定義を満たすはずである。AKIの決定のためのベースラインを、試験第1日目の予め注入した中央測定施設の血清クレアチニンレベルとして定義した。
【0181】
試験の第2の目的は、1)中等度RIおよびAMIを伴う対象においてCSL112の安全性および忍容性をさらに特徴付けることならびに2)中等度RIおよびAMIを伴う対象において反復投与後に、CSL112のPKを特徴付けることであった。
【0182】
これらの目的のための対応する評価項目には、以下が含まれる。
・ TEAEおよび薬物有害反応(ADR)または疑わしいADRの発生率
・ 治療で発現した出血イベントの発生率
・ 腎機能(血清クレアチニン、eGFR)および肝機能(アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]、総ビリルビン)検査におけるベースラインからの変化
・ 臨床検査結果(血清生化学、血液学、および尿検査)、身体検査所見、体重、心電図(ECG)、およびバイタルサインにおける臨床的に重要な変化
・ CSL112またはアポA-Iに対する抗体の発生
・ ベースライン時ならびにアポA-IおよびPCについての注入終了時の血漿濃度
・ アポA-IおよびPCについての集積比(R)
【0183】
本試験の探索的な目的は、1)コレステロール引き抜きおよび他の脂質およびCSL112活性のCVバイオマーカーを評価することにより、CSL112の薬理学的特徴を特徴付けること、ならびに2)腎臓の安全性バイオマーカーに対するCSL112の効果を評価することである。
【0184】
結果
対象の配列
合計の102名の対象は、書面のインフォームドコンセントを提出し、CSL112_2001試験における組み入れのためにスクリーニングされた(図9)。これらの対象のうち、19名は、選別に失敗し、残り83名(81.4%)の適格な対象を、それぞれCSL112 6g(対象55名、53.9%)またはプラセボ(対象28名、27.5%)を投与するように、活性対プラセボ2:1にランダム化した。CSL112にランダム化された対象3名は、治療を受けなかった。ランダム化された対象69名(83.1%)は、本試験を完了し、対象46名(83.6%)は、CSL112-群において完了し、対象23名(82.1%)は、プラセボ群において完了した。
【0185】
CSL112群の対象55名のうち9名(16.4%)およびプラセボ群の対象28名のうち5名(17.9%)の14名(16.9%)は、本試験を完了しなかった。試験を完了しなかった対象の理由としては、AE(CSL112 1.8%;プラセボ0)、死亡(CSL112 3.6%;プラセボ7.1%)、プロトコールからの逸脱(CSL112 1.8%;プラセボ0)、対象による決定(CSL112 9.1%;プラセボ7.1%)、およびその他(CSL112 0;プラセボ3.6%)が含まれた。
【0186】
ベースライン特性
対象の平均年齢は、71.1年であり、対象の81.9%は、少なくとも65歳であり、平均BMIは、29.5kg/mであった。治療群は、年齢および性別についてバランスが取れていた(表16)。
【0187】
スクリーニング時の対象の平均eGFRは、中央測定施設により決定された通り46.32mL/分/1.73mであった。中央eGFR臨床検査値は、慢性腎疾患(CKD)ステージ3a/3bのカットポイントに近似した(すなわち、45mL/分/1.73m)。ランダム化で、対象47.0%および53.0%は、それぞれCKDステージ3b(30~<45mL/分/1.73m)またはステージ3a(45~<60mL/分/1.73m)を有するものとして、地方検査施設評価に基づき分類し、中央測定施設データは、CKDステージ3bを有する対象39.8%およびCKDステージ3aを有する対象44.6%をカテゴリー化した。中央測定施設および地方検査施設間のアッセイの変動は、ランダム化のために使用した地方検査施設の結果と比較して、中央測定施設の結果に基づいた対象の再カテゴリー化に寄与し得る。
【0188】
対象は、アスピリン(95.2%)、他の抗血小板薬(91.6%)、スタチン(全体で89.2%;高強度59.0%)、他の脂質調整剤(6.0%)、β-遮断薬(79.5%)、アンジオテンシンI変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体遮断薬(74.7%)、および経口抗血栓薬(26.5%)を投与していた。
【0189】
全体で、これらの治療群は、人口統計的特性およびベースライン特性についてバランスが取れていた。
【0190】
安全性の分析
試験薬物曝露
安全性対象集団中の対象80名(100%)はすべて、試験薬物の少なくとも1回の注入を完了し;ほとんどの対象(81.3%)は、試験薬物の3または4回の注入を受け、完了した。
【0191】
安全性対象集団における合計80名のうち55名(68.8%)の対象は、全4回の注入を完了した。全4回の注入を完了していない対象についての理由には、AE(CSL112 19.2%;プラセボ14.3%)、対象による決定(CSL112 5.8%;プラセボ10.7%)、死亡(CSL112 1.9%;プラセボ3.6%)、最重要な腎臓の値(CSL112 0;プラセボ3.6%)、医師による決定(CSL112 1.9%;プラセボ0)、およびその他(CSL112 1.9%;プラセボ0)が含まれる。
【0192】
治験薬は、それぞれCSL112 6g群およびプラセボ群において、対象3名(3.8%)および1名(3.4%)の対象4名が腎臓関連有害事象により、中止した。CSL112 6g群では、すべてのイベントは、治験責任医師により関連がないと評価された。対象2名における2つのイベントは、非重篤であり、各対象に、CSL112の3回の用量を投与した。3番目の対象は、CSL112の1回の用量の投与の2日後に試験でネフロパシー毒性のSAEを有した。プラセボ群では,対象1名は、試験12日目に腎不全のSAEを有し、プラセボの2回目の用量を投与した。このイベントは、治験責任医師によりIPに関連するものと評価された。CSL112群における対象1名は、「血中クレアチニンの増加」により注入がスキップされ、プラセボ群における対象2名が、注入をスキップしたが、そのうち、1名は「急性腎傷害」を原因とし、もう1名は、個別の対象の用量の遅延により定義される最重要な腎臓の臨床検査値および有害事象として評価されなかった中止基準を満たしたことを原因とする。
【0193】
CSL112群における対象2名は、試験薬物の中断に関するプロトコール基準を満たした肝臓のAE(ALTの増加、総ビリルビンの増加;軽度で、かつ一過的)を有し;プラセボ群における対象では、肝臓の理由により中止した対象はいなかった。
【0194】
試験薬物の第1の注入までの時期
血管造影および試験薬物の第1の注入の間で経過した平均時間は、65.2時間(2.7日)であり、経過時間は、プラセボ(71.79h[2.99日])治療群に対して、CSL112 6g(61.83h[2.57日])群の方がわずかに短かった。血管造影および第1の注入の間で経過した平均時間は、STEMIとして分類されたこれらのMIを有する対象の場合59.47時間(2.48日)であり、これに対して、NSTEMIとして分類された者の場合67.2時間(2.8日)であった。類似の百分率のSTEMI(40.0%)およびNSTEMI(38.6%)の対象に、造影剤投与後に48時間よりも短い時間の範囲内で試験薬物を投与した。低い百分率(5/77、6.5%)の対象に、血管造影の12~<24時間以内に第1の注入を投与した(表17)。
【0195】
共主要評価項目
治療で発現した腎臓のSAEおよびAKIイベントのまとめを、表18に示す。
【0196】
治療で発現した腎臓のSAEを、プラセボ群における対象4/28(14.3%)と比較して、CSL112 6g治療群における対象1/52名(1.9%)について報告した。主要な分析に基づき、これらの治療群群間の発生率の差(95%信頼区間)は、-0.124(-0.296、-0.005)であった。2回のイベントを経験した、プラセボ群における対象1名の場合を除いて、腎臓のSAEを伴う対象はすべて、1回のイベントを経験した。
【0197】
治療で発現したAKIイベントは、プラセボ群における対象28名のうち4名(14.3%)であったのと比較して、CSL112 6g治療群における対象50名のうち2名(4.0%)が報告された。主要な分析に基づき、これらの治療群間の発生率の差(95%信頼区間)は、-0.103(-0.277、0.025)であった。AKIイベントが1回を超える対象はいなかった。AKIイベントを有する対象6名について、これらのイベントは、試験完了時に進行中であった。造影剤および血清クレアチニンの決定の間の時間に基づいた対象の両群内で、AKIの観察された率は、プラセボ群と比較して、CSL112群において数値的に小さかった(表18)。
【0198】
治療で発現した腎臓のSAE構成成分についての独立に決定された結果および治療で発現したAKI構成成分についての地方検査施設データを用いた共主要評価項目の感度分析は、主要な分析の結果を裏付ける。
【0199】
腎臓のSAEまたはAKIイベントの率が、CKDステージ3aもしくは3bサブグループ内の対象または糖尿病を伴う対象におけるプラセボに対して、CSL112群において高かったという指標はなかった。これらのサブグループ内で、より高い率の腎臓のSAEおよびAKIイベントを、プラセボ群では観察した(表19)。糖尿病の病歴がない対象についてのCSL112群において、AKIイベントの率が高かった。
【0200】
決定された腎臓の重篤なイベント
治験責任医師によって同定された腎臓の重篤なイベントが、臨床事象委員会によって決定され、そのうち6名の治験責任医師が、イベントを報告し、5名を確実に決定した。すなわち、CSL112群中の2名のうち1名およびプラセボ群中の4名のうち4名である。CSL112群における1つのイベントは、重篤でなかったためイベントと決定されなかった。
【0201】
すべてのイベントを、非閉塞性(すなわち、腎結石のような腎臓または尿管における物理的な閉塞によらない)として分類し、イベントについての因果関係は、CSL112群における1つのイベントが起こり得、プラセボ群におけるそれぞれ3つおよび2つのイベントが起こり得たまたは起こりそうになかった。診断時に、すべてのイベントは、ステージ1であった。ステージ2への進行は、AKIイベントの開始から7日以内に、CSL112群において単回の確実に決定されたイベントが起こり;プラセボ群の場合、2つのイベントは、この時間枠内で、各1イベントがステージ2(25%)およびステージ3(25%)に進行した。
【0202】
有害事象
別段の記載がない限り、本セクションに記載のすべてのAEは、TEAEを参照する。
【0203】
全体的なまとめ
本明細書中で論じられるTEAEの全体的なまとめを、表20に示す。
【0204】
治療で発現した有害事象
CSL112およびプラセボ群における対象の類似の百分率は、治療で発現したAE(TEAE)で報告された。すなわち、CSL112 6g群において対象38名(73.1%)およびプラセボ群において対象20名(71.4%)であった。プラセボと比較して、CSL112群において、高率で頻回の(≧10%)TEAEを有する器官別大分類(System organ class)には、以下が含まれる:すなわち、心機能障害、調査、呼吸障害、胸郭異常および縦隔障害、胃腸障害、および神経系障害である。
【0205】
全体で、重症度におけるCTCAEグレード3、4、および5のTEAEの類似の百分
率を、CSL112群(それぞれ17.3%、7.7%、および3.8%)およびプラセボ群(それぞれ35.7%、3.6%、および7.1%)について報告した。プラセボ群における対象28名のうち13名(46.4%)と比較して、グレード3、4および5TEAEを経験したCSL112群における対象は52名のうち15名(28.8%)であった。グレード5イベントは、CSL112群(52名のうち2名、3.8%)と比較して、プラセボ群(28名のうち2名、7.1%)では高頻度で起こった。CSL112群単独で起こった頻回の(≧10%またはそれ以上の対象)TEAEには、血中クレアチニンの増加、心不全、および心房細動が含まれる。
【0206】
重篤な有害事象
合計80名のうち22名(27.5%)の対象は、重篤なTEAEを経験し、CSL112 6g群およびプラセボ群において、それぞれ52名のうち12名[23.1%]および28名のうち10名[35.7%]であった(表21)。重篤なTEAEは、次のSOCの間で報告された:すなわち、心機能障害(12.5%)、泌尿器障害および腎障害(6.3%)、感染および寄生(3.8%)、胃腸障害、一般的な障害および投与部位の状態、外傷、中毒および処置合併症、神経系障害、および呼吸障害、胸郭異常および縦隔障害(各2.5%)、血液障害およびリンパ系障害、耳疾患および迷路障害、眼疾患、および血管障害(各1.3%)である。
【0207】
CSL112群において2名またはそれ以上の対象について報告された重篤なTEAEには、(基本語により)心房細動(52名のうち3名、5.8%)および心不全(52名のうち3名、5.8%)が含まれる。プラセボ群における対象の場合、2名またはそれ以上の対象について報告された重篤なTEAEには、うっ血性心不全(28名のうち2名、7.1%)およびAKI(28名のうち2名、7.1%)が含まれる。
【0208】
問題となる心不全およびすべての腎臓イベント
より詳細に評価された有害事象には、心不全およびすべての腎臓イベントが含まれる。
【0209】
報告された心不全の治療で発現した有害事象には、基本語により:心不全、うっ血性心不全、および急性心不全が含まれた。プラセボ(28名のうち2名、7.1%)群と比較して、より高い百分率の、CSL112(52名のうち7名、13.5%)群における対象は、心不全のTEAEを有した。心不全の治療で発現したSAEは、CSL112(52名のうち4名、7.6%)群およびプラセボ(28名のうち2名、7.1%)群において、類似の頻度で起こった。CSL112群およびプラセボ群のそれぞれにおける対象1名は、心不全のイベントがあり、その結果、死亡した。
【0210】
治療で発現した腎臓イベントには、基本語により:腎不全、ネフロパシー毒性、AKI、腎機能障害、および血中クレアチニンの増加が含まれる。これらのイベントは、CSL112(17.3%)群およびプラセボ(14.3%)群における対象について類似の率で起こった。前もって述べた通り(共主要評価項目を参照のこと)、治療で発現した腎臓のSAEは、プラセボ群(14.3%)と比較して、CSL112群(1.9%)における対象について低い率で起こった。
【0211】
治療で発現した出血イベント
治療で発現した出血イベントは、治験責任医師により報告され、Bleeding Academic Research Consortium(BARC)基準に基づき、臨床事象委員会により決定された。出血イベントの類似の率および重症度を、各治療群において観察した。出血イベントを経験した対象の中でもとりわけ、全員が、BARCグレード3またはそれ以下であった。BARCグレードタイプ3の出血を経験したCSL112 6g群における合計52名のうち3名(5.8%)の対象を、プラセボ群における2
8名のうち1名(3.6%)と比較した。いずれの治療群における対象も、BARCグレードタイプ4または5のイベントを経験しなかった。出血イベントに関連する死亡はなく、中枢神経系の出血はなかった。
【0212】
薬物有害反応または疑わしい薬物有害反応
FDA定義に基づいたADRまたは疑わしいADRとして分類した、治療で発現したAEは、プラセボ群(14.3%)と比較して、CSL112群(57.7%)において高頻度であった。
【0213】
疑わしいADRとしてのCSL112群におけるTEAEの大きな百分率の分類は、4パートのFDA定義を、小型のサンプルサイズを有する試験に適用することによる。第4の判定基準に従って、実薬による治療アームにおける対象1名にイベントがあり、プラセボアームにおける対象にイベントがなかった場合、イベントは、疑わしいADRとして分類されるはずである。小型のサンプルサイズを得たことから、試験において報告される全TEAEがADRである(すなわち、CSL112と因果関係がある)かどうか決定する適切なデータがない。
【0214】
臨床検査結果
腎機能検査の変化
腎臓のSAEのステージの臨床事象委員会の評価に加えて、臨床検査値を、Kidney Disease:Improving Global Outcomes definitions of AKI(KIDGO、2012年)を満たすはずである上昇について分析した。CSL112群またはプラセボ群における対象は、中央測定施設または地方検査施設による血清クレアチニン値に基づき、ステージ3AKIイベント(血清クレアチニン≧3×ベースライン値または≧4.0mg/dL[353.6μmol/L])を経験した(表22)。2名の対象は、ベースライン時に欠測中央測定施設血清クレアチニン値を有した。ほとんどの血清クレアチニン上昇(CSL112 6g 67.3%;プラセボ64.3%)は、>0~<0.3mg/dLの範囲で、ベースラインから増加した。絶対値のこれらのカテゴリーのそれぞれが、≧0.3~≦0.5mg/dLの範囲でベースラインから増加し、ベースラインから血清クレアチニンを>0.5mg/dL増加する場合、対象は、プラセボ群と比較して、CSL112 6g群において、百分率がより低かった。CSL112群における対象1名(1.9%)およびプラセボ群における4名(14.3%)は、血清クレアチニンにおいてベースラインから≧0.3~≦0.5mg/dLの範囲で増加し、≧24時間持続した。CSL112 6gにおける対象1名(1.9%)は、血清クレアチニンレベルが>0.5mg/dLであり、≧24時間持続した。対象は、血清クレアチニン値がベースライン値の≧2倍であった。
【0215】
肝機能検査の変化
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、および総ビリルビンおよび直接ビリルビンについてのベースライン時の平均値は、プラセボ群およびCSL112 6g群で類似した。これらのパラメーターは、CSL112の注入後上昇しなかった。
【0216】
ALTもしくは総ビリルビンについての欠測値を有した、プラセボ群またはCSL112 6g群における対象の百分率は、低かった。来診にわたって、欠測値を有する対象の最大の百分率は、ALTおよび総ビリルビンの場合7.5%であった。
【0217】
CSL112 6g群またはプラセボ群における対象は、実薬による治療期間中、総ビリルビンまたは直接ビリルビンがULNの2×を超え、ALTまたはASTがULNの3×を超え、同時に上昇した(表22)。実薬による治療期間中、>3×ULNの、ALT
の上昇を有する対象はいなかった。CSL112群における1名(1.9%)の対象は、来診3回目における>5×ULNの、ASTの単独増加があり、来診4回目までに回復した。実薬による治療期間中、CSL112群における3名(5.8%)の対象は、注入の開始の24~48時間後、来診3回目に、>1.5×ULNの、総ビリルビン(またはジルベール症候群を伴う対象の場合直接ビリルビン)の一過的増加を有し、これは来診4日目にはもはや存在しなくなった。これに比べ、プラセボ群にはそのような対象はいなかった。
【0218】
他の血清生化学
他の血清生化学パラメーターにおける臨床的に意義のある差は、治療群間で確認されず、臨床的に意義のある傾向は、全体で観察されなかった。
【0219】
血液学
血液学パラメーターにおける臨床的に意義のある差は、治療群間で確認されず、臨床的に意義のある傾向は、全体で観察されなかった。
【0220】
合計80名のうち9名(11.3%)の対象は、試験の経過中、ベースラインからヘモグロビンが≧2g/L減少し、プラセボ(28名のうち2名、7.1%)群と比較して、CSL112 6g(52名のうち7名、13.5%)における対象の百分率がより高かった。
【0221】
尿検査
尿検査パラメーターにおける臨床的に意義のある差は、治療群間で確認されず、臨床的に意義のある傾向は、全体で観察されなかった。ヘモグロビンおよび尿中の定性総蛋白についてのベースラインからのシフトは、数的に少なく、起こったこれらのシフトについて、これは、1カテゴリー以下までであった。スポット尿タンパク/クレアチニン比および尿シスタチンC/クレアチニン比は、第1のCSL112の注入の24~48時間後の中央値が、穏やかな、一過的な増加を示し、データ中の大きな変動性を有した。
【0222】
臨床検査値異常
対象は、ヘモグロビン、血清クレアチニン、eGFR、ブドウ糖(血清もしくは尿)、ALT、AST、ALP、またはビリルビン(直接、間接、もしくは総)における臨床検査値異常がグレード4であった対象はいなかった。グレード3の臨床検査値異常は、eGFR(CSL112 3.8%;プラセボ7.4%)およびブドウ糖(CSL112 13.5%;プラセボ22.2%)についての両治療群における対象において示された。ASTにおける単一のグレード3の臨床検査値異常は、CSL112 6g群において見出された(セクション:肝機能検査の変化を参照のこと)。
【0223】
免疫原性
ベースライン時に、すべての対象は、陰性(10または11)と考えられた相反的な抗体価を有した。CSL112 6g群またはプラセボ群における対象は、実薬による治療期間(来診7回目)の終了時もしくは試験終了後(来診8回目)に、抗-CSL112または抗-アポA-Iの相反的な抗体価においてベースラインからの変化がなかった。
【0224】
薬物動態の分析
ベースラインおよびプラセボ群に関連して、アポA-IおよびPCについての平均血漿濃度は、CSL112群について増加し、最高の平均値が、注入1回目(来診2回目)および4回目(来診6回目)の時点の終了時に観察された。
【0225】
アポA-IおよびPCの血漿濃度における類似の増加は、注入1回目(来診2回目)お
よび4回目(来診6回目)の時点の終了時に、各腎機能サブグループにおけるCSL112によって治療された対象について観察された。
【0226】
アポA-IおよびPCについての、平均のベースライン補正された最大の観察された血漿濃度(Cmax)値は、第1および第4の注入後、プラセボに対して、CSL112 6g群で増加した(表24)。アポA-IおよびPCについての1回目の注入に関連して、4回目の注入後得られた、Cmax値についての集積比は、それぞれ1.20(20%)および1.00(0%)であった。両方のCSL112分析対象物の場合、血漿集積は低かった。
【0227】
総CECは、AEGIS-I患者母集団と比較して、2001の患者におけるベースライン時に、13%高かった(P<0.001)(実施例1)。特に、総CEC%は、AEGIS-Iの場合8.7±2.7(n=1204)に対して、CSL112_2001の場合9.8±2.7(n=78)であった。同様に、ABCA1依存性CECは、AEGIS-I患者と比較して、2001の患者において、ベースライン時に35%高かった(P<0.001)。ABCA1依存性CEC%は、AEGIS-Iの場合2.6±1.8(n=1204)に対して、CSL112_2001の場合3.6±2.0(n=78)であった。ABCA1非依存性CECにおいて差は示されず、ABCA1非依存性CEC%は、AEGIS-Iの場合6.0±1.5(n=1204)に対して、CSL112_2001の場合6.2±1.7(n=78)であった。これらの観察は、CSL112_1001試験(実施例2)における正常な腎機能に対して、中等度RIを伴う対象において観察されたCECのパターンと整合する。
【0228】
腎臓パラメーターの集計データ:AEGIS IおよびCSL112_2001
血清クレアチニンおよびeGFRにおけるベースラインからの変化の集計データ分析は、本明細書においてAEGIS-I(CSLCT-HDL-12-77試験)およびCSL112_2001試験について提供される。本データ分析の目的は、全体の影響ならびに様々な程度の腎機能障害を伴う対象についての腎機能における血管造影に対するCSL112注入のタイミングに関する影響を確認することであった。AEGIS-Iによって、正常な腎機能または軽度のRIを伴うMI対象におけるCSL112が評価された。CSL112_2001試験によって、中等度RIを伴うAMI対象が評価された。これらのデータの集計分析によって、第3相標的母集団間で予測された腎機能のスペクトルによっての評価が可能になる。両試験について、登録した対象は、年齢、性別、同時発生的な医学上の状態(例えば、糖尿病、高血圧)および慢性の併用の医薬品(例えば、抗血小板薬二剤併用療法スタチン)において、標的第3相母集団の代表である。
【0229】
血清クレアチニン
集計分析(図10)では、実薬による治療期間中および最終の注入後7~10日を超えて、eGFR≧60mL/分/1.73mであるCSL112またはプラセボで治療した対象の場合、ならびにeGFR45~60mL/分/1.73mである対象の場合の、平均血清クレアチニンレベルにおけるベースラインからの変化はほとんど示されなかった。eGFR30~<45mL/分/1.73mである対象の場合、平均血清クレアチニンレベルにおけるベースラインからの減少が、両治療群について試験15日目に開始していることが観察された。平均血清クレアチニンレベルの相対的に同様の減少を、CSL112群およびプラセボ群における対象について観察した。
【0230】
腎臓層ならびに血清クレアチニンにおけるベースライン値(中央測定施設)からの変化についての血管造影および第1の用量間の時間による分析では、24~<48時間ウィンドウおよび≧48時間ウィンドウにおいて、30~<45mL/分/1.73mの範囲のeGFRである対象についてのベースラインからの減少が示された(図11)。24~
<48時間ウィンドウにおいて投与されたeGFRが45~<60mL/分/1.73mである対象に関して、ほとんどの対象の場合、クレアチニンの変化は、ベースラインからの増加が0.3mg/dLを下回った。データは、血管造影の<24時間後に投与した対象について結論を下すには不十分である。
【0231】
推定糸球体ろ過率
集計分析(図12)では、実薬による治療期間を通しておよび最終の注入後7~10日を超えて、eGFR≧60mL/分/1.73mである対象の場合ならびにeGFR 45~<60mL/分/1.73mである場合の、eGFRにおけるベースラインからの変化はほとんど示されなかった。eGFR30~<45mL/分/1.73mである対象の場合、eGFRにおけるベースラインからの平均の変化の小さな増加は、CSL112-およびプラセボで治療した対象について試験15日目に開始していることが観察された。eGFR値についての集計データの概要表を、図10~12に示す。
【0232】
結果
共主要評価項目
腎臓に関連する重篤なおよび非重篤な有害事象の率は、治療群間で類似した(表19)。中央測定施設または地方検査施設分析によってプラセボと比較した、CSL112治療による、より高い率のクレアチニン上昇の証拠はなかった。ベースラインからのほとんどのクレアチニン上昇は、軽度および一過的であった。
【0233】
有害事象の分析
治療で発現したAEは、CSL112(73.1%)群およびプラセボ(71.4%)群における対象の類似の百分率で起こった。治療群間でSOCの範囲内のイベントで明らかな不均衡はなく、最も頻回のAEを、急性MIおよび中等度RIの患者母集団に基づき予想した。関連するTEAEの頻度は低く、CSL112群において4種類(ALT増加、血液ビリルビン増加、注入部位の腫脹、および過換気)であり;プラセボ群における腎不全のSUSARは1であった。溶血のイベントは起こらず、出血の類似の率および重症度は、両方の治療アームにおいて観察された。致命的な出血または中枢神経系の出血は、試験の経過中起こらなかった。
【0234】
肝臓およびその他の臨床検査所見
肝臓の所見に関して、いずれの治療群における対象についても、>3×ULNの、ALTの上昇、および>2×ULNの、総ビリルビンの上昇が同時には観察されなかったため、対象は、薬剤性肝損傷についてのHyの法則の基準を満たさなかった。ジルベール症候群を伴う対象についての、総ビリルビンまたは直接ビリルビンの穏やかな、一過的な増加を、CSL112を投与された対象の少ない百分率(5.8%)で、CSL112の注入1回目の開始の24~48時間後に観察した。間接ビリルビンのこれらの一過的な増加は、プログラムで前もって示されており、臨床的に有意とも考えられず、これらが、肝機能の変更にも関連していない。
【0235】
他の臨床検査所見に関して、臨床的に意義のある差は、血液学または生化学パラメーターについて、治療群間で観察されなかった。総尿タンパクに関する安全性所見またはスポット尿タンパク/クレアチニン比の治療群間での臨床的に意義のある変化もしくは差はなかった。治療アーム間の臨床的に意義のある差を、血清シスタチンCについて観察した。CSL112またはアポA-Iに対する抗体は検出されなかった。
【0236】
薬物動態
薬物動態評価では、急性MIおよび中等度RIを伴う対象における、CSL112治療(1回目の注入と比較した4回目の注入)によるアポA-IまたはPCの蓄積がないこと
が実証され、本母集団における使用のためのCSL112 6g用量の受容可能性を確認している。ベースラインに対するアポA-Iにおける類似の上昇を、CKDステージ3a(eGFR=45~<60mL/分/1.73m)および3b(eGFR=30~<45mL/分/1.73m)を伴う、CSL112によって治療された対象において観察した。
【0237】
本試験では、薬物動態的観点から、6g用量が、中等度RIを伴う急性MI患者に適していることが実証された。CSL112 6g用量は、AEGIS-I試験におけるものと比較して、CECがCSL112_2001対象と同程度まで上昇した(実施例1)。注入時点の終了時に、CECにおける相対的増加は、両試験において類似した(図13~15)。ABCA1依存性CECは、CSL112_2001対象においてより長く上昇し、これは、CSL112-1001試験においてCSL112を投与しているMRI患者において観察されるものと整合する(実施例2)。
【0238】
集計検査値分析
AEGIS-IおよびCSL112_2001試験から得られた集計検査値データ分析では、血清クレアチニンおよびeGFRにおけるベースラインからの変化を検査し、軽度のRIまたは正常な腎機能と比較した場合、中等度RIを伴う対象のサブグループにおけるこれらの腎機能パラメーターに対してCSL112注入の悪影響を示さなかった。血清クレアチニンにおけるベースラインからの変化は、造影剤投与に対する第1のCSL112の用量の投与の時間に関わらず、腎機能群にわたって類似した。
【0239】
結論
急性MIおよび中等度RIを伴う対象のCSL112_2001試験は、本母集団におけるプラセボと比較して、CSL112 6gの週4回注入の投与による腎臓の安全性を支持するものである。全体的な安全性プロファイルは好ましく、正常な腎機能または軽度のRIを伴う対象と比較して、中等度RIを伴う対象についての特別なモニタリングを正当化することになる新たな安全性シグナルは、同定されなかった。
【0240】
本明細書を通して、本目的は、本発明をいかなる一実施形態または特徴の特定の収集物に制限することなく、本発明の好ましい実施形態を記載することであった。本発明から逸脱することなく、記載されるおよび例示される実施形態に、様々な変更および修正がなされてもよい。
【0241】
本明細書で言及される各特許および科学文献、コンピュータプログラムならびにアルゴリズムの開示は、その全体を参照により本明細書に組み入れる。
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【0242】
【表1】
【0243】
【表2】
【0244】
【表3】
【0245】
【表4】
【0246】
【表5】
【0247】
【表6】
【0248】
【表7】
【0249】
【表8】
【0250】
【表9】
【0251】
【表10】
【0252】
【表11】
【0253】
【表12】
【0254】
【表13】
【0255】
【表14】
【0256】
【表15】
【0257】
【表16】
【0258】
【表17】
【0259】
【表18】
【0260】
【表19】
【0261】
【表20】
【0262】
【表21】
【0263】
【表22】
【0264】
【表23】
【0265】
【表24】
【0266】
【表25】
【0267】
【表26】
【0268】
【表27】
【0269】
【表28】
図1
図2
図3
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図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2022-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性心筋梗塞(MI)イベント後の、中程度の腎機能障害(Mod RI)を有するヒト患者を治療し、さらなるMIイベントの可能性を減少させるための再構成された高密度リポタンパク質(rHDL)製剤であって、
該rHDL製剤は、少なくとも6gのアポリポタンパク質AI(ApoA-I)、脂質、安定剤、および、場合により、界面活性剤を含み、該製剤中のアポリポタンパク質とリン脂質との間の比は、約1:20から約1:120(モル:モル)であり、
該rHDL製剤は、該急性MIイベントの約七(7)日以内に、該Mod RIを有する患者に静脈内投与され、
該患者は、該急性MIイベント後、該rHDL製剤の最初の投与の前に、血管造影のための造影剤が投与されており、そして、
該rHDL製剤は、続いて、一週間ごとに、全部で少なくとも四(4)週間、該患者に静脈内投与され、
それによって、該ヒト患者においてさらなるMIイベントの可能性を減少させ、患者のベースライン値の約1.2~1.5倍以上の血清クレアチニン値をもたらすことはなく、かつrHDL治療後のeGFRを治療前のeGFRの30mL/min/1.73m2外にすることはない、
前記rHDL製剤。
【請求項2】
該患者における総コレステロール引き抜き能(CEC)を、1.5倍~2.5倍に増加させるのに有効である、請求項1に記載のrHDL製剤。
【請求項3】
ABCA1-依存性コレステロール引き抜き能を、約3倍~約5倍に増加させるのに有効である、請求項1に記載のrHDL製剤。
【請求項4】
最初の投与は、急性MIイベントの五(5)日以内である、請求項1に記載のrHDL製剤。
【請求項5】
最初の投与は、急性MIイベント後12時間より後である、請求項1に記載のrHDL製剤。
【請求項6】
静脈内に(IV)注入される、請求項1に記載のrHDL製剤。
【請求項7】
注入の速度は、1時間当たりアポリポタンパク質約1~3gである、請求項6に記載のrHDL製剤。
【請求項8】
(i)正常値範囲の上限(ULN)の3倍を超えるアラニンアミノトランスフェラーゼ活性(ALT)、および、(ii)少なくとも2×ULNの総ビリルビンの増加、の1つ以上として計測される肝機能の有意な変更をもたらさない、請求項1に記載のrHDL製剤。
【請求項9】
アポA-I少なくとも6g、ホスファチジルコリン、該製剤の約1.0重量%から6.0重量%未満までの量のスクロース、並びに、(i)約0.5~1.5g/Lおよび(ii)約0.010~0.030g/gアポA-Iの一方または両方から選択されるレベルのコール酸ナトリウムを含み、ここで、該アポA-Iと該ホスファチジルコリンとの間の比が、約1:20から約1:120(モル:モル)である、請求項1に記載のrHDL製剤。
【請求項10】
1種またはそれ以上の脂質調整剤;1種またはそれ以上のコレステロール吸収阻害剤;1種またはそれ以上の抗凝固剤;1種またはそれ以上の高血圧治療薬;および1個またはそれ以上の胆汁酸結合分子から選択された、急性心筋梗塞(MI)イベントの治療、予防もしくはそのリスクの低下を補助するもしくは容易にすること、MACEの治療、予防もしくはそのリスクの低下を補助するもしくは容易にすること、及び、患者におけるコレステロール引き抜き能(CEC)を増加させることから選択された1つ以上の効果を有する、1種またはそれ以上の治療薬と組み合わせて投与される、請求項1に記載のrHDL製剤。
【請求項11】
最初の投与は、血管造影のための造影剤の投与後12時間より後である、請求項1に記載のrHDL製剤。
【請求項12】
スクロースを4.6重量%~4.8重量%の量含む、請求項1に記載のrHDL製剤。
【請求項13】
スクロースを4.6重量%~4.8重量%の量含む、請求項9に記載のrHDL製剤。
【外国語明細書】