(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116260
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】特定の数の細胞の自動収集
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20220802BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20220802BHJP
C12Q 1/06 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/34 D
C12M1/34 B
C12Q1/06
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089408
(22)【出願日】2022-06-01
(62)【分割の表示】P 2019545711の分割
【原出願日】2017-11-03
(31)【優先権主張番号】62/416,775
(32)【優先日】2016-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/526,177
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/416,773
(32)【優先日】2016-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/430,094
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519155170
【氏名又は名称】セル マイクロシステムズ インク
【氏名又は名称原語表記】CELL MICROSYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】P.O.Box 13169, 2 Davis Drive, Research Triangle Park, NC 27709
(71)【出願人】
【識別番号】501345323
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン シー ゲプハルト
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ダブリュー マクレラン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス シー トロッタ
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー エル アルブリットン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ジョゼフ アタイエック
(72)【発明者】
【氏名】ポール マイケル アーミステッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】接着細胞の純粋な、又は濃縮された集団を集める方法及びシステムを提供する。
【解決手段】開示される主題の実施形態は、デジタル画像装置又はシステムから得られた細胞及びそれらの周囲の画像のコンピュータ分析を使用して、細胞を分離及び収集するための自動化された方法及びシステムを提供する。開示される主題の実施形態は、エラストマー格子状のくぼみ又は「ウェル」を含むことができる「マイクロウェルアレイ」を利用する。マイクロウェルアレイ中のウェルの多く、ほとんど、又はすべては、「ラフト」と呼ばれる解放可能な微細加工要素を含み得る。開示される主題の実施形態は、分離された複数の単一細胞又は、1又はそれ以上の特定の細胞群を有するラフトのコンピュータ化された識別及び収集を含む細胞収集のためのシステム及び方法を提供し、人間による連続的な識別及び選択の必要性を排除する。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロウェルアレイから細胞ラフトを解放するためのシステムであって、
複数の細胞ラフトを含むマイクロウェルアレイの画像を取得するように構成された撮像装置;
前記マイクロウェルアレイから細胞ラフトを解放するように構成されたアクチュエータ;及び、
少なくとも1つのプロセッサとメモリとを備えるコンピュータシステム、を含み:
前記コンピュータシステムは:
前記撮像装置を用いて前記マイクロウェルアレイの1又はそれ以上の画像を取得し;
前記マイクロウェルアレイの前記1又はそれ以上の画像を解析することによって、前記複数の細胞ラフトの中から選択された細胞ラフトを識別し;及び、
前記マイクロウェルアレイから前記選択された細胞ラフトを解放するように前記アクチュエータを制御すること、
により、画像化及び細胞ラフトの解放を自動で行うようプログラムされているシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記撮像装置若しくは前記マイクロウェルアレイ、又はその両方を移動させるように構成された1又はそれ以上のモータを含み、
前記マイクロウェルアレイの前記1又はそれ以上の画像を取得することは:
前記マイクロウェルアレイを複数の視野に分割して前記視野が複数の前記細胞ラフトのそれぞれを一括して含むようにし;及び、
各視野に対し、前記マイクロウェルアレイの前記視野に前記撮像装置を向けるように前記1又はそれ以上のモータを制御し、前記視野でそれぞれの画像を取得するように前記撮像装置を制御する、
によってアレイスキャンを実行することを含む、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、
前記撮像装置のための顕微鏡対物レンズを含み、
前記マイクロウェルアレイの1又はそれ以上の画像を取得することは、各視野について、少なくとも1つの隣接する視野からの1又はそれ以上の焦点位置を用いて前記顕微鏡対物レンズをオートフォーカスすることを含む、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、
前記顕微鏡対物レンズをオートフォーカスすることは、複数のサンプル焦点位置で複数のサンプル画像をサンプリングすることと、前記サンプル画像のフォーカススコアから現在の焦点位置を補間することとを含む、システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記選択された細胞ラフトを識別することは、各細胞ラフトについて、前記細胞ラフトのサブ画像に描かれた細胞の数をカウントすることと、単一の分離された細胞を収容する少なくとも1つの単一細胞ラフトを識別することとを含む、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、
サブ画像に描かれた細胞の前記数をカウントすることは、二値画像を作成するために前記サブ画像に強度閾値を適用すること、前記二値画像中の固有のオブジェクトを識別すること、及び、識別された固有のオブジェクトの前記数をカウントすることを含む、システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のシステムであって、
前記単一細胞ラフトを識別することは、前記単一細胞ラフトが前記単一の分離された細胞を収容するという決定における信頼度を示す信頼度スコアを決定することを含む、システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記選択された細胞ラフトを識別することは、各細胞ラフトについて、前記細胞ラフトのサブ画像に描かれたマーカを検出することと、前記マーカの検出に基づいて前記細胞ラフトをゲーティングすることとを含む、システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記選択された細胞ラフトを識別することは、前記選択された細胞ラフトを収集プレートのマッピングされた位置に割り当てることを含む、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、
機械的細胞ラフトコレクタを備え、
前記コンピュータシステムは、前記マイクロウェルアレイからの解放後に前記機械的細胞ラフトコレクタを制御して前記選択された細胞ラフトを収集し、及び、前記機械的細胞ラフトコレクタを制御して前記収集プレートの前記マッピングされた位置に、前記選択された細胞ラフトを置くよう構成されている、システム。
【請求項11】
細胞を収集するコンピュータ実施方法であって、
複数のラフトを含むマイクロウェルアレイに関する情報を、自動化されたコンピュータシステムの記憶装置に記憶し;
前記自動化されたコンピュータシステムのプロセッサを使用して画像解析を実行し、及び、その情報を使用して前記複数のラフトの中から細胞ラフトを識別し;及び
前記プロセッサとアクチュエータとを用いて前記マイクロウェルアレイから前記細胞ラフトを解放する:ことを含む、コンピュータ実施方法。
【請求項12】
前記マイクロウェルアレイに関する前記情報を記憶することは、さらに、
前記マイクロウェルアレイのサイズを識別して記憶し;
前記マイクロウェルアレイに対する最適な焦点位置及び最適な露光を識別して記憶し;
プロセッサを用いて前記マイクロウェルアレイをセクショニングし、及び一組のマイクロウェルを視野と一致させるのに必要な移動を記憶することを含む、請求項11に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項13】
前記マイクロウェルアレイ内の複数のマイクロウェルの各々に対するアドレスを決定することと、前記アクチュエータのオフセットを計算して記憶することとをさらに含む、請求項12に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項14】
細胞内プロセスを監視するためのシステムであって、該システムは:
複数の細胞ラフトを含むマイクロウェルアレイの画像を取得するように構成された撮像装置と、
少なくとも1つのプロセッサとメモリとを備えるコンピュータシステムと、を含み;
前記コンピュータシステムは:最初に、前記撮像装置を用い、少なくとも1つの細胞ラフトが、細胞内プロセスを受けている1又はそれ以上の細胞を含むものと決定し;
前記少なくとも1つの細胞ラフトが前記細胞内プロセスを受けている前記1又はそれ以上の細胞を含むと決定したことに応答し、前記マイクロウェルアレイ上の少なくとも1つの細胞ラフトの位置を記憶し、及び
前記最初の時よりも1回以上後で、前記位置を用いて少なくとも1つの細胞ラフトの位置を特定することによって細胞内プロセスを監視し、及び、撮像装置を用いて少なくとも1つの細胞ラフトの1又はそれ以上の画像を取得すること
により、画像化及び細胞ラフトの解放を自動で行うようプログラムされているシステム。
【請求項15】
前記細胞内プロセスを監視することは、前記1又はそれ以上の画像を記憶すること、及び、前記1又はそれ以上の画像のそれぞれを、前記画像のそれぞれの取り込み時間及び前記少なくとも1つの細胞ラフトの位置と関連付けることを含む、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2016年11月3日に出願された米国仮特許出願第62/416,773号の利益を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願は、2016年11月3日に出願された米国仮特許出願第62/416,775号の利益を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願は、2016年12月5日に出願された米国仮特許出願第62/430,094号の利益を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願は、2017年6月28日に出願された米国仮特許出願第62/526,177号の利益を主張し、その開示の全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述)
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた助成金番号2R42GM106421の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
混合群(mixed population)からの複数の単一細胞(single cells)の選択及び分離は、生物医学研究を通して行われている一般的な手順である。例えば、遺伝子操作された細胞系(cell line)、幹細胞由来の細胞系、又は患者細胞系から増殖された細胞系の増殖(development)中に、複数の単一細胞を分離し、次いでクローン化して均質な集団を形成する必要がある。蛍光活性化細胞選別(FACS)、限界希釈、パンニング(panning)、カラムクロマトグラフィー及び磁気選別を含む、混合群から非接着(non-adherent)細胞を選択的に識別及び収集するための様々な戦略が存在し;さらに、マイクロ流体工学及び誘電泳動に基づく新しい技術がこの分野で有望であることを示している。接着(adherent)細胞の純粋な、又は濃縮された(enriched)集団を集める必要性に取り組むため、研究者らは細胞懸濁液を作り出すためにそれらの成長表面から細胞をばらばらにするか、又は剥ぎ取ることによってこれらの手順を使用する。残念ながら、酵素的又は機械的解放は、細胞形態の喪失、細胞表面マーカの除去、細胞膜の損傷、細胞生理学の変化及び生存能力の喪失を含む重大な欠点を強いる。
【0004】
この問題に取り組むために、生体適合性ポリスチレン又は他の材料から形成された、ラフト(raft)と呼ばれる、解放可能(releasable)で微細加工された要素を含むポリジメチルシロキサン(PDMS)マイクロウェルアレイを使用する、細胞分離及び回収システムが開発された。そのようなシステムの1つのバージョンは、CELLRAFT(商標)システムと呼ばれる。ラフトは、複数の単一細胞又は大きなコロニーのための適切な成長領域を提供するために、数十から数百ミクロンの大きさで変化し得る。ラフトを含むPDMSマイクロウェルアレイは、例えば倒立顕微鏡を用いて視覚化することができる。複数の所望の細胞を含む複数の個々のラフトは、例えば、機械的押し込み又は連続振動などのゆるやかなエネルギーを与えることによって、マイクロウェルアレイの機械的歪みの際にアレイから解放され得る。一例では、複数の所望の細胞を含む複数の個々のラフトが研究者又は技術者によって視覚化され、次いで顕微鏡対物レンズ(microscope objective)に取り付けられたプローブをラフトに機械的に押し込むことによって、アレイから解放されることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、デジタル撮像装置又はシステムから得られた細胞及びそれらの周囲の画像のコンピュータ分析を使用して、細胞を分離及び収集するための自動化された方法及びシステムを提供する。本発明の実施形態は、形成された(formed)エラストマー格子状のくぼみ又は「ウェル」を含むことができる「マイクロウェルアレイ」を利用する。マイクロウェルアレイ中のウェルの多く、ほとんど、又はすべては、解放可能で微細加工された要素を含むことができ、それは「ラフト(raft)」と称されることができる。本発明の実施形態は、分離された複数の単一細胞又は1又は複数の特定の細胞群を有するラフトのコンピュータ化された識別及び収集を含む、細胞収集のためのシステム及び方法を提供し、人間による連続的な識別及び選択の必要性を排除する。
【0006】
いくつかの例では、システムは、マイクロウェルアレイから細胞ラフト(cell raft)を解放するように構成される。このシステムは、マイクロウェルアレイの画像を取得するように構成された撮像装置と、マイクロウェルアレイから細胞ラフトを解放するように構成されたアクチュエータと、少なくとも1つのプロセッサ及びメモリを備えるコンピュータシステムとを含む。コンピュータシステムは、撮像装置を使用してマイクロウェルアレイの1又はそれ以上の画像を取得し、マイクロウェルアレイの1又はそれ以上の画像を解析することによって、選択された細胞ラフトを識別し、及びマイクロウェルアレイから選択された細胞ラフトを解放するようにアクチュエータを制御するようにプログラムされている。
【0007】
システムは、撮像装置若しくはマイクロウェルアレイ、又はその両方を移動させるように構成された1又はそれ以上のモータを含むことができ、マイクロウェルアレイの1又はそれ以上の画像を取得することは、マイクロウェルアレイを複数の視野に分割して上記視野が複数の細胞ラフトのそれぞれを一括して(collectively)含むようにし、各視野に対し、マイクロウェルアレイの視野に撮像装置を向けるように1又はそれ以上のモータを制御し、その視野で各画像を取得するように撮像装置を制御することによって、アレイスキャンを実行することを含むことができる。
【0008】
システムは、画像システムのための顕微鏡対物レンズを含むことができ、マイクロウェルアレイの1又はそれ以上の画像を取得することは、各視野について、少なくとも1つの隣接視野からの1又はそれ以上の焦点位置を使用して顕微鏡対物レンズをオートフォーカスすることを含み得る。顕微鏡対物レンズのオートフォーカスは、複数のサンプル焦点位置で複数のサンプル画像をサンプリングすること、及びサンプル画像のフォーカススコア(focus score)から現在の焦点位置を補間することを含むことができる。
【0009】
選択された細胞ラフトを識別することは、各細胞ラフトについて、細胞ラフトのサブ画像内に描かれている細胞の数を数えること、及び単一の分離された細胞を収容する少なくとも1つの単一(single)細胞ラフトを識別することを含み得る。サブ画像に描かれた細胞の数を数えることは、サブ画像に強度閾値(intensity threshold)を適用して二値画像を作成すること、二値画像中の固有のオブジェクトを識別すること、及び識別された固有のオブジェクトの数を数えることを含む。単一細胞ラフトを識別することは、単一細胞ラフトが単一の分離された細胞を収容するという決定における信頼度を示す信頼度スコアを決定することを含み得る。
【0010】
選択された細胞ラフトを識別することは、各細胞ラフトについて、細胞ラフトのサブ画像に描かれたマーカを検出すること、及びマーカの検出に基づいて細胞ラフトをゲーティングする(gating)ことを含むことができる。選択された細胞ラフトを識別することは、選択された細胞ラフトを収集プレートのマッピングされた位置に割り当てることを含むことができる。システムは機械的細胞ラフトコレクタ(collector)を含むことができ、コンピュータシステムは、マイクロウェルアレイからの解放後に、選択された細胞ラフトを収集するように機械的細胞ラフトコレクタを制御し、選択された細胞ラフトを収集プレートのマッピングされた位置に置く(deposit)ように機械的細胞ラフトコレクタを制御するように構成されることができる。
【0011】
いくつかの例では、システムは細胞内プロセス(cellular process)を監視するように構成される。例えばシステムは、例えば薬物若しくは試薬の投与、又は細胞毒性、細胞増殖、若しくは代謝などの遺伝子発現又は細胞状態の変化について、細胞又は細胞群の経時的分析を行うように構成されることができる。システムは、マイクロウェルアレイの画像を取得するように構成された撮像装置を含み、マイクロウェルアレイは、マイクロウェルアレイのマイクロウェル内の細胞ラフトを含む。システムは、少なくとも1つのプロセッサとメモリとを備えるコンピュータシステムを含む。コンピュータシステムは最初に(at a first time)、撮像装置を使用して、少なくとも1つの細胞ラフトが細胞内プロセスを受けている1又はそれ以上の細胞を含むものと決定するように構成される。コンピュータシステムは、少なくとも1つの細胞ラフトが細胞内プロセスを受けている1又はそれ以上の細胞を含むと決定したことに応答して、マイクロウェルアレイ上の少なくとも1つの細胞ラフトの位置を記憶するように構成される。最初の時よりも1回以上後で、コンピュータシステムは、その位置を使用して少なくとも1つの細胞ラフトの位置を特定することで細胞内プロセスを監視するように構成されるとともに、撮像装置を使用して少なくとも1つの細胞ラフトの1又はそれ以上の画像を取得するように構成される。
【0012】
細胞内プロセスを監視することは、1又はそれ以上の画像を記憶すること、及び1又はそれ以上の画像のそれぞれを、画像のそれぞれの取り込み時間(capture time)及び少なくとも1つの細胞ラフトの位置と関連付けることを含むことができる。細胞内プロセスを監視することは、グラフィカルユーザインターフェースにおいて、少なくとも1つの細胞ラフトの1又はそれ以上の画像及び初期画像を提示することを含むことができる。
【0013】
少なくとも1つの細胞ラフトが細胞内プロセスを受けている1又はそれ以上の細胞を含むものと決定することは;少なくとも1つの細胞ラフトを特定の波長の光で照明し;少なくとも1つの細胞ラフトを照明することに応答して、撮像装置を使用して少なくとも1つの細胞ラフトの初期画像を取得し;初期画像中の細胞内プロセスの蛍光サイン(fluorescence signature)を検出する、ことを含み得る。 細胞内プロセスを監視することは、グラフィカルユーザインターフェースにおいて、1又はそれ以上の画像における蛍光強度のグラフを経時的に提示することを含み得る。
【0014】
少なくとも1つの細胞ラフトが細胞内プロセスを受けている1又はそれ以上の細胞を含むと決定することは、少なくとも1つの細胞ラフトが単一細胞のみを含む単一細胞ラフトであると決定すること、及び初期画像を用いてベースライン蛍光レベルを定量することを含み得る。 細胞内プロセスを監視することは、1又はそれ以上の画像と初期画像との間の測定された蛍光の差を決定することを含み得る。
【0015】
少なくともいくつかの実施形態では、細胞を収集するコンピュータ実施方法(computer-implemented method)は、複数のラフトを含むマイクロウェルアレイに関する情報を記憶(store)すること、及び複数のラフトの中から1又はそれ以上の細胞ラフトを識別することを含む。本明細書中に記載されるようなシステムは、単一細胞ラフトを収集するために使用され得る。単一細胞ラフトは、それに結び付いた(associate with)1つの分離された細胞を伴うラフトであり、そしてしばしばこれらは選択されるであろう細胞ラフトである。しかしながら、本発明の実施形態によるシステムはまた、又はその代わりに、単一細胞以外のある特定の数の細胞を有するラフト、又は別の例として、ある種の単一細胞及び他の種類の複数の細胞、若しくは異なる種類の特定の数の細胞の組み合わせを有するラフトを分離するために使用できる。次いで、システムは、アクチュエータを制御及び使用することによってマイクロウェルアレイから細胞ラフトを解放し、一例として磁石を使用して細胞ラフトを収集することができる。システムは、次のラフトに移動する前に、ラフトの解放を任意に確認することができる。 マイクロウェルアレイに関する情報は、コンピュータ実施方法を実行するプロセッサに一体化した(associate with)、又は接続された記憶装置に記憶することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、マイクロウェルアレイに関する情報の記憶は、マイクロウェルアレイの大きさの識別及び記憶、マイクロウェルアレイの最適な焦点位置(focus position)及び最適な露光(exposure)の識別及び記憶、並びにマイクロウェルアレイのセクショニング(sectioning)、及び一組の(a set of)マイクロウェルを視野と一致させる(match)のに必要な移動(translation)の記憶を含む。いくつかの実施形態では、マイクロウェルアレイに関する情報の記憶は、アクチュエータに対するオフセットの計算及び記憶を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、細胞ラフトの識別は、マイクロウェルアレイの複数のラフトをセグメント(segmenting)すること、及び複数のラフトについて1ラフトあたりの細胞核を計数することを含む。いくつかの実施形態では、計数は、蛍光閾値に関連して細胞核を定義するためにウォーターシェッド変換(watershed transform)を実行することを含む。いくつかの実施形態において、解放される細胞ラフトの識別は、マーカの検出によって、解放される細胞ラフトをゲーティングすること又はその決定をさらに含む。例として、マーカは、1又はそれ以上のカラーチャンネル(color channels)の強度(これは、染色によって引き起こされる蛍光を示し得る)及び/又は細胞核の大きさ、細胞それ自身、若しくは細胞内の核以外の構造を含み得る。
【0018】
ワークステーション、パーソナルコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、又は埋め込み型処理システムなどのコンピュータシステムは、システムの一部として機能することができ、及び/又は撮像装置、システム及び/又はハードウェア、アクチュエータ及び他の機器に接続することができ、さらに、プロセッサによって実行されると本発明の例示的実施形態に従うプロセスの全部又は一部をシステムに実行させる非一過性のコンピュータプログラムコードを含むか、又はそれにアクセスすることを含む。コンピュータプログラムコードは記憶装置に記憶することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】細胞を収集するための例示的なシステムを示す図である。
【
図1B】細胞を収集するための例示的なシステムを示す図である。
【
図1C】細胞を収集するための例示的なシステムを示す図である。
【
図2A】細胞を収集するための例示的な装置の等角図である。
【
図2B】細胞を収集するための例示的な装置の等角図である。
【
図3A】細胞を収集するための例示的な方法を示す図である。
【
図3B】細胞を収集するための例示的な方法を示す図である。
【
図4A】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図4A】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図4B】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図4C】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図4D】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図4E】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図5】マイクロウェルアレイのアレイ位置及び種類を決定するための例示的な方法のフローを示す図である。
【
図6】マイクロウェルアレイをナビゲーション(navigating)するための例示的な方法のフローを示す図である。
【
図7A】マイクロウェルアレイの視野上に顕微鏡レンズをオートフォーカスするための例示的な方法を示す図である。
【
図7B】マイクロウェルアレイの視野上に顕微鏡レンズをオートフォーカスするための例示的な方法を示す図である。
【
図7C】マイクロウェルアレイの視野上に顕微鏡レンズをオートフォーカスするための例示的な方法を示す図である。
【
図8】マイクロウェルアレイ中の単一細胞ラフトを識別するための方法例のフローを示す図である。
【
図9】細胞ラフトを選択し、収集プレートをマッピングするためのグラフィカルユーザインターフェースの例示的画面のスクリーンショットを示す図である。
【
図10】グラフィカルユーザインターフェースの別の例示的画面のスクリーンショットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態が示される添付の図面を参照して、本発明の実施形態を以下により完全に説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用されるとき、用語「含む」又は「含んでいる」は、述べられた特徴、ステップ、動作、要素、又は構成要素の存在を特定するが、1又はそれ以上の他の特徴、ステップ、動作、要素、構成要素、又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。さらに、「上」、「下」、「より少ない」、「より多い」などの比較用語、量的用語は、同等の概念を包含することを意図しており、従って、「より少ない」は最も厳密な数学的意味において「より少ない」だけではなく、「以下」も意味する。
【0021】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、本明細書で使用される用語は、本明細書及び関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明確に定義されない限り理想的又は過度に形式的な意味で解釈されないものと理解されるであろう。要素が別の要素に「接続」又は「結合」されていると言及される場合、それは他の要素に直接接続又は結合され得るか、又は介在要素が存在し得ることもまた理解されるであろう。
【0022】
単一細胞の分離は、個々の細胞(例えば、DNA、RNA、タンパク質)の分子分析及びトランスフェクション後の細胞を含む個々の細胞からのクローン増殖によるコロニーの獲得を含む多種多様な科学的研究に有用であり得る。各ウェル(「マイクロウェルアレイ」)に複数の細胞ラフトを含むマイクロウェルアレイは、単一細胞の分離及び収集に有用であることが示されてきた。標準的な顕微鏡を用いた手動の方法を用いたマイクロウェルアレイからの分離及び収集による単一細胞の分離は、分析又は増殖のために多数の単一細胞を得ようとする場合にかなりの時間を要する可能性がある。本発明の実施形態のシステム及び方法と共に使用することができる細胞ラフトを有するマイクロウェルアレイの詳細は、米国特許第9,068,155号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。対象の細胞を播種されたマイクロウェルアレイから細胞を収集する自動システムは、単一細胞を用いて科学的及び医学的研究を行うための時間と労力を削減しながら、複数の蛍光チャンネルにわたる撮像などの追加機能も含む。
【0023】
本発明の例示的実施形態による細胞を収集するためのシステムは、アクチュエータと、撮像装置と、アクチュエータ及び撮像装置に接続されたプロセッサとを含み、プロセッサは、例えば
図3A-3B、
図4A-4E、
図5,
図6、
図7A及び
図8に示すように、コンピュータ実施方法を実行するために記憶された実行可能なコンピュータプログラムコードを使用して動作可能である。本発明の実施形態の方法及びシステムは、マイクロウェルアレイ中の個々の細胞ラフト上に存在する単一の分離された細胞を識別し、及び単一細胞ラフトを収集することによってそれらの細胞を収集するものとして、一例として図面に提示されている。
【0024】
図1A~
図1Cは、細胞収集のための例示的なシステム100を示す図である。システム100は、多数の細胞、細胞コロニー、及び様々な数の異なる種類の細胞を有するラフトを識別及び収集するために使用され得る。
図1Aは、システム100の概観図である。システム100は、コンピュータシステム102、機器アセンブリ104、実験環境106(例えば、電源及び環境制御システムなどの1又はそれ以上の実験装置)、及びユーザ108を含む。機器アセンブリ104は、マイクロウェルアレイ112を収容するための任意の取付け板(adapter plate)と、マイクロウェルアレイ112から選択及び解放された細胞ラフトを収容するための収集プレート114とを含む。収集プレート114は、SBS収集プレートなどの標準化された形式にまとめられ得る。収集プレート114が示されているが、システム100は、その代わりに、PCRストリップチューブなどの任意の適切な収集構造を使用することができる。
【0025】
典型的には、ユーザ108は、細胞をマイクロウェルアレイ112上の培地中に投入又は播種し、細胞を個々の細胞ラフトに定着させる。次いで、マイクロウェルアレイ112は、スキャン及び画像解析のためにシステム100の取付け板(adapter plate)110内に配置される。次いで、システム100は、アクチュエータを制御し使用することによってマイクロウェルアレイ112から細胞ラフトを解放し、例えば磁石を使用して細胞ラフトを分離された細胞と共に収集することができる。例えば、アクチュエータは、ニードル(needle)又は類似の装置を動かしてラフトを解放するように構成された1又はそれ以上のモータとすることができる。いくつかの例では、システム100は、磁気ワンド(magnetic wand)を動かすための別のアクチュエータかもしれず、及びステージを動かすためのアクチュエータかもしれず、結像光学系、及びシステムの他の機械部品を含む、複数のアクチュエータを含む。
【0026】
図1Bは、コンピュータシステム102のブロック図である。コンピュータシステム102は、少なくとも1つのプロセッサ120、メモリ122、プロセッサ120及びメモリ122を使用してコンピュータプログラムとして実行されるコントローラ124、並びにグラフィカルユーザインタフェース(GUI)126を含む。 例えば、コンピュータシステム102は、モニタ、キーボード及びマウスを備えたデスクトップコンピュータとすることができ、又はコンピュータシステム102はラップトップ又はタブレットコンピュータ若しくは他の任意の適切な装置とすることができる。コンピュータシステム102は、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)ケーブルによって機器アセンブリ104に動作可能に結合されている。
【0027】
コントローラ124は、マイクロウェルアレイ112の1又はそれ以上の画像を取得し、画像を解析することによって、マイクロウェルアレイ112の選択された細胞ラフトを識別し、選択された細胞ラフトを解放するように機器アセンブリ104を制御するようにプログラムされている。コントローラ124は、
図3A-3B、
図4A-4E、
図5-6、
図7A及び
図8を参照してさらに説明された方法の例を実行することができる。GUI126は、様々な制御画面及び結果画面をユーザ108に提示し、ユーザ108からの入力を受け取るように構成されている。
【0028】
図1Cは機器アセンブリ104のブロック図である。機器アセンブリ104は、マイクロウェルアレイ130上の個々の細胞ラフト130を撮像し、収集プレート114内に配置するためにマイクロウェルアレイから細胞ラフト130を選択的に解放するための様々な構成要素を含み得る。例えば、機器アセンブリ104は、電源ブレークアウト基板(power breakout board)138、並びにモータ及びアクチュエータを制御するための様々な制御基板(例えば、PS3制御基板132、PS3 XYZ制御基板134及びPS3フィルタ制御基板136)を含むことができる。モータ制御基板は、コントローラ124が機器アセンブリ104の様々な構成要素を制御又はアドレス指定することを可能にするTTL及びシャッタ機能を含むことができる。
【0029】
機器アセンブリ104は、デジタルカメラ140又は他の適切な撮像装置、通信ハブ(例えば、USBハブ142)、蛍光LED(fluoresence LED)エンジン144、及び光ガイドアダプタ146を含むことができる。蛍光LEDエンジン144は、光ガイドアダプタ146によってマイクロウェルアレイ112を照明するように構成された複数のナローバンドLEDを含むことができる。
【0030】
機器アセンブリ104は、顕微鏡対物レンズ152を移動させるように構成された電動XYステージ148及びオートフォーカスモータ150を含む、顕微鏡システム(例えば、内部倒立デジタル顕微鏡)を含む。典型的には、カメラ140及び蛍光LEDエンジン144及び顕微鏡システムは落射蛍光(epi-fluorescence)配置で配置されている。いくつかの例では、顕微鏡システムは、マイクロウェルアレイ112から細胞ラフト130を個々に解放するように構成された解放プローブ154を含む。解放プローブ154は、オートフォーカスモータ150によって作動させることができる。
【0031】
いくつかの例では、顕微鏡システムは、与えられた視野につき1ピクセルあたり2ミクロン以下の解像度で、寸法が200ミクロン×200ミクロンのラフトを有するマイクロウェルアレイ上の少なくとも約4×4アレイ特性(feature)、及びラフトが100ミクロン×100ミクロンアレイを有する場合は約8×8アレイ特性の領域の撮像をサポートする。顕微鏡システムはまた、明視野撮像(すなわち、白色光照射及び白色発光)を使用した画像の取り込み、及び1又はそれ以上の蛍光発光チャンネルにおける画像の取り込みをサポートすることができる。いくつかの例では、すべてのチャンネルにわたって露光時間を750msと仮定した場合に、機器アセンブリ104は、3つのすべての蛍光チャンネル及び明視野について、20分以内に全てのマイクロウェルアレイをスキャンすることができる。
【0032】
解放プローブ154は、典型的には、生理食塩水又は細胞培養培地に曝されたときに酸化耐性のある材料を含む。いくつかの例では、解放プローブ154はステンレス鋼の100ミクロン針である。解放プローブ154は、マイクロウェルアレイ112の中心に対して、例えばX及びY方向に少なくとも15mmの可能な移動距離を有することができる。
【0033】
機器アセンブリ104は、ガントリーアセンブリ(gantry assembly)を移動させるためのベルトドライブ156、撮像中にマイクロウェルアレイ112を照らすための明視野LED158、及び解放後に細胞ラフトを収集するために磁気ワンド162を移動させるように構成されるリニアアクチュエータ160を含む、ガントリーアセンブリを含む。ガントリーアセンブリは、ベルトドライブの代わりに送りネジ、又は他の任意の適切なモータを使用することができる。リニアアクチュエータ160は、例えば、マイクロウェルアレイ112及び収集プレート104の内外に磁気ワンド162を上下させるように構成されたステッピングモータとすることができる。
【0034】
機器アセンブリ104は、収集プレート114の下に配置され、磁気ワンド162から細胞ラフトを収集プレート114に収集する収集マグネット164を含む。収集マグネット164は、磁気ワンド162内の磁石を反発させ、細胞ラフトを収集プレート104の底部に引き寄せるため、磁気ワンド162の極性と反対の極性を有することができる。磁気ワンド162は、典型的には、解放された細胞ラフト又は収集プレート104で使用される培地を汚染しないように、無菌にすることができる(例えば、機器から除去しながらエタノール又はイソプロパノールですすぐ)材料を含む。磁気ワンド162のための材料もまた、一般に、培養培地との接触が細胞の生存率若しくは増殖の検出可能な減少、又はTaqポリメラーゼ若しくは逆転写酵素などの分子生物学試薬の性能において検出可能な減少を引き起こさないように選択される。
【0035】
図2A、
図2Bは、細胞を収集するための例示的な装置の等角図である。装置は、
図1Cに示されている機器アセンブリ104の例示的な実装形態である。
図2Aに示すように、取付け板110及び収集プレート114は、水平XYステージ148の上に配置されている。電子制御基板132、134、及び136などのいくつかの構成要素は、XYステージ148の下に配置されている。XYステージ148は、マイクロウェルアレイ112及び収集プレート104を移動させるように構成されている。XYステージ148は、撮像のために細胞ラフトを位置決めし(細胞ラフトを顕微鏡対物レンズ152と合わせる)、細胞ラフトを解放し(細胞ラフトを解放プローブ154と合わせる)、及び細胞ラフトを置く(収集マグネット164上で、磁気ワンド162及び収集プレート104の選択された位置を合わせる)ことについて電子的に制御可能である。
【0036】
ベルト駆動装置156を含むガントリーアセンブリは、XYステージ148の上に垂直に配置される。ガントリーアセンブリは、撮像のために明視野LED158を位置決めするために横方向に移動し、磁気ワンド162を位置決めするようにも構成される。ガントリーアセンブリは、解放中にラフトを収集するためにマイクロウェルアレイ112上に磁気ワンド162を位置決めし、次いでガントリーアセンブリは収集プレート114の上に磁気ワンド162を位置決めして収集プレート114の選択された位置に細胞ラフトを置く。
【0037】
カメラ140及びオートフォーカスモータ150は、例えばオートフォーカスモータ150がXYステージ148に対して垂直に移動できるように、XYステージ148の下に配置されている。蛍光LEDエンジン144及び液体光ガイドポート(liquid light guide port)146は、XYステージ148の下に配置され、蛍光フィルタキューブ170に結合している。蛍光フィルタキューブ170は、例えば、蛍光LEDエンジン144からの光がマイクロウェルアレイ112に到達するのを許容するとともに、その光がカメラ140に到達するのを阻止するように、蛍光撮像のために構成されている。
【0038】
図2Bは、顕微鏡対物レンズ152及び解放ニードル154の破断
図172を示す。図示のように、解放プローブ154が顕微鏡対物レンズ152の視野と交差しないよう、解放プローブ154は顕微鏡対物レンズ152の光軸からずれている。解放プローブ154視野と交差しないと、ユーザは細胞ラフトの解放をリアルタイムで視覚化することができない可能性があり、その結果、撮像によって解放を確認するため、システムは解放後にマイクロウェルアレイ112を移動させなければならない可能性がある。それにもかかわらず、撮像速度を改善するために、顕微鏡対物レンズ152の視野の外側に解放プローブ154を配置することは有用であり得る。
【0039】
いくつかの他の例では、解放プローブ154は顕微鏡対物レンズ152の視野内に配置されている。顕微鏡対物レンズ152の視野内に解放プローブ154を配置することによって、ユーザは細胞ラフトの解放をリアルタイムに視覚化することができるが;そのような配置はアクリル窓を通しての撮像を必要とする可能性があり、それは励起光及び発光の透過を減少させ、スキャン中により長い積分時間を必要とする可能性がある。
【0040】
いずれの場合でも、顕微鏡対物レンズ152の視野の中心とマイクロウェルアレイ112上の解放プローブ154の穿刺位置との間のオフセットを較正することが有用であり得る。較正は、例えば、すべてのニードルの交換の後、又はすべての実験の開始時、又は製造中の1回に実行され得る。いくつかの例では、
図1Bのコントローラ124は自動較正を実行するようにプログラムされている。
【0041】
例えば、コントローラ124は、マイクロウェルアレイ112を移動させて顕微鏡対物レンズ152の視野をアレイ境界(array border)で位置決めし、顕微鏡対物レンズをオートフォーカスし、次いで、アレイ境界を解放プローブ154で穿刺することができる。その後、コントローラ124は、顕微鏡対物レンズ152の視野内で穿刺位置を位置決めするためにマイクロウェルアレイ112を移動し、(例えば明視野LED158を使用して)画像を取得し、例えば画像をセグメントすることによって画像を解析して穿刺位置を位置決めする。コントローラ124は次にオフセットを計算することができる。いくつかの例では、コントローラ124は、異なる位置に移動することによって指定された回数だけプロセスを繰り返し、例えばオフセット位置を平均することによって、オフセット位置に基づいて較正距離を決定する。
【0042】
図3A~
図3Bは、細胞を収集するための例示的な方法を図示する。
図3Aは、マイクロウェルアレイからの細胞収集のための例示的な方法300のフロー図である。方法300は
図1のコントローラ124によって実行することができ、方法300は
図1のシステム100に関して説明されるであろう。
【0043】
方法300は、システムの初期化(302)及び実験のセットアップ(304)を含み、これらは、
図4A~
図4Bを参照しながら以下でさらに説明される。方法300は、例えばGUI126を使用してユーザ108に促すことによって、アレイスキャン(306)を実行するかどうかを決定することを含む。アレイスキャンを実行しない場合、方法300は、ユーザコマンド(308)を、例えばGUI126を使用して受信することによってマイクロウェルアレイ112をナビゲーションすることを含む。ユーザコマンドによるナビゲーションは、ユーザがマイクロウェルアレイ112をナビゲーションするときにマイクロウェル122アレイの画像をリアルタイムで提示することを含むことができる。次いで、方法300は、例えば、GUI126を使用して選択される、細胞の収集のための1又はそれ以上の細胞ラフトのユーザの選択を受け取ること(310)を含む。
【0044】
アレイスキャンを実行する場合、方法300は、ユーザ入力なしにマイクロウェルアレイ112をナビゲーションすることによってアレイスキャンを実行すること(314)を含む。方法300は次に、画像解析を用いて細胞収集のために1又はそれ以上の細胞ラフトを選択すること(316)を含む。
図3Bは、画像解析を使用して細胞ラフトを選択するための例示的方法350のフローチャートである。方法350は、単一細胞ラフトの検出(352)、マーカ検出に基づく単一の細胞ラフトのゲーティング(354)、及びゲーティングされた単一細胞ラフトを収集プレート上の位置にマッピング(356)することを含む。単一細胞ラフトをゲーティングすることは、一般に、蛍光マーカの検出に基づいて、検出された単一細胞ラフトのサブセット(subset)を選択することを含む。
【0045】
アレイスキャニング、単一細胞の検出、及び自動又は半自動の細胞ラフト選択は、
図4C~4Dを参照して以下にさらに記述される。いくつかの例では、アレイスキャン及び細胞ラフトの識別は並行して行われる。例えば、コントローラ124は、複数のスレッドを並列に実行し、又はあらゆる任意の適切な並列処理技術を使用することができる。
【0046】
方法300は、選択された細胞ラフトの解放及び移動(312)を含む。解放及び移動については、
図4Eを参照して以下にさらに説明される。方法300は、例えば、受信されたユーザ入力、取り込まれた画像、検出された単一細胞ラフトの位置、解放された細胞ラフトの記録、及び任意の他の適切なデータである、実験を記述するデータをエクスポートすることを任意に含み得る。データのエクスポートは、ローカルファイルシステム上のファイルにデータを記憶すること、又は記憶のためにデータをリモートシステムに送信することを含むことができる。
【0047】
図3A~
図3Bに見られるように、例示的な実施形態によるシステムは、そのような画像を記憶装置に記憶することを含み得るリアルタイム撮像(「リアルタイム撮像モード」)中にユーザが単一細胞ラフトを識別する手動選択モードで使用され得るが、「サイトメトリー画像解析」モードと呼ばれる、細胞を収集するためのコンピュータ実施方法にも使用され得る。いくつかの実施形態によれば、ユーザ108はGUI126を介してシステム100をサイトメトリー画像解析モード又はリアルタイム撮像モードで動作させることを選択する。リアルタイム撮像モードでは、ユーザ108は、マイクロウェルアレイ112内の撮像視野を選択的にナビゲーションし、リアルタイム画像の目視検査に基づいて分離するためにラフトを選択することができる。サイトメトリー画像解析モードでは、マイクロウェルアレイのフルスキャンが実行され、次に(例えば、蛍光画像の)定量的画像処理は、分離するための細胞のユーザ選択、又は収集のための細胞の自動選択を容易にする。
【0048】
サイトメトリー画像解析モードでは、システムはマイクロウェルアレイをスキャンし、複数のラフトを含むマイクロウェルアレイに関する情報を記憶装置に記憶し、プロセッサを用いて画像解析を行い、その情報を用いて複数のラフトの中から1又はそれ以上の細胞を有する細胞ラフトを識別し、プロセッサ及びアクチュエータを使用して、マイクロウェルアレイから細胞ラフトを解放する。いくつかの実施形態では、マイクロウェルアレイに関する情報の記憶は、アクチュエータに対するオフセットを計算し記憶することを含む。いくつかの実施形態では、システムは、特定のラフトの既知の位置に頼ることによって将来の操作を促進するために、マイクロウェルアレイ内の複数のマイクロウェルのそれぞれに対するアドレスを決定する。システムは、例えば、撮像装置から決定される蛍光色又は明視野チャンネルの強度、細胞核又は他の構造の大きさ、又はこれらのマーカの組み合わせに基づくマーカの検出に基づいて、アクチュエータによって解放される細胞ラフトのゲーティングを実行することができる。いくつかの実施形態では、システムは、磁石を用いた磁性ナノ粒子を含む細胞ラフトを収集し、細胞ラフトが実際に解放されたことを任意に確認することができる。
【0049】
図4A-4Eは、本発明の例示的な実施形態によるシステムのためのユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフロー図である。ワークフロー図は、
図1の例示的システム100を参照して説明される。各ワークフロー図は、4つの領域に水平に分割される。最上部の領域は、ユーザ108によって実行された動作を示す。最上部の領域の下の領域は、GUI126を使用して実行された動作を示す。次の領域は、ハードウェア(例えば機器アセンブリ104)を使用して実行された動作を示す。一番下の領域は、コントローラ124によって実行された動作を示す。
【0050】
図4Aは実験例の開始を示す。ユーザ108は、例えばインキュベータから細胞を取り出し、プレートから細胞を解放する。ユーザ108は、マイクロウェルアレイ112を前処理し、マイクロウェルアレイ112上に細胞を播種する。ユーザ108は、機器アセンブリ104及びコンピュータシステム102に電力を供給し、コントローラ124及びGUI126を起動する。初期化中に、GUI126は初期化スプラッシュスクリーン(initialization splash screen)を表示することができ、一方で機器アセンブリ104はカメラパラメータを設定し、モータを定位置及びその後に負荷位置に移動する。コントローラ124は、モータコントローラ、LED照明、及びカメラを含む機器アセンブリ104との通信を開始し検証する。
【0051】
図4Bは、実験例の次の段階、実験のセットアップを示す。GUI126は、マイクロウェルアレイ112を顕微鏡ステージ上に配置するようにユーザ108に促す。ユーザ108は、マイクロウェルアレイ112をXYステージ148上(例えば、取付け板110上)に配置する。GUI126は、サイトメトリーモード又はリアルタイム分析モードのいずれかを選択するようにユーザ108に促し、ユーザ108からの選択を受信し、次いでシステムがマイクロウェルアレイ112のアレイ位置を較正していることを示す画面を表示する。
【0052】
コントローラ124は、マイクロウェルアレイ112の画像を取得するように機器アセンブリ104を制御し、並びにマイクロウェルアレイ112の向き及び種類を識別することを含む、アレイ位置及び種類ルーチンを実行する。マイクロウェルアレイ112の種類は、例えば、マイクロウェルアレイ112上の細胞ラフトの数及び大きさを特徴付けることができる。アレイ位置及び種類ルーチンは、例えば明視野画像上で画像セグメントを実行することによって、オートフォーカス及びナビゲーションルーチンを実行、細胞ラフトを識別することを含むことができる。例示的なアレイ位置及び種類ルーチンは、
図5を参照して以下でさらに説明される。いくつかの例では、システム100は、視野内でマイクロウェルアレイ112の角を位置決めするためのステージモータ及び明視野画像の視覚的フィードバックを制御するため、及びその上をクリックしてアレイ位置と種類を識別するためのユーザインタフェース制御を、ユーザ108に提供する。
【0053】
ユーザ108がリアルタイム撮像モードを選択した場合、コントローラ124はリアルタイム画像取得ルーチンを実行する。ユーザ108は、撮像パラメータ及び視野を設定し、リアルタイムで画像、すなわち機器アセンブリ104がマイクロウェルアレイ112をナビゲーションするときの画像を検査する。コントローラ124は、視野位置を操作するGUI126からのユーザ入力に応答し、XYステージ148及びオートフォーカスモータ150を制御する。コントローラ124は、オートフォーカス及びナビゲーションルーチンを実行してマイクロウェルアレイ112をナビゲーションし、新しい視野で細胞ラフトを識別する。ユーザ108は、画像を検査した後、解放及び移動のために1又はそれ以上の細胞ラフトを選択する。ユーザ108がサイトメトリー撮像モードを選択した場合、GUI126は、アレイスキャンのための撮像パラメータを設定するため、ユーザ108のために任意に画面を提示する。撮像パラメータは、その代わりにファイルから読み取ることもでき、又はネットワーク接続を介して受信することもできる。
【0054】
図4Cは、ユーザ108がサイトメトリーモード、アレイスキャニング及び単一細胞検出を選択した場合の実験例の次の段階を示す。GUI126は、アレイスキャン中に任意にステータス画面を表示する。コントローラ124は、例えば細胞ラフトを見落とさないことを保証しながら、各視野内の細胞ラフトの数を最大にする(すなわち、視野の数を最小にする)ことによって、アレイ範囲を別々の視野に分割する。
【0055】
一般に、コントローラ124は、各視野内の細胞ラフトの数を最大にし、次の組の細胞ラフトを撮像するのに必要な移動を計算するため、各視野内のラフトの位置を最適化するために反復状態位置決め(iterative state positioning)及びラフトセグメンテーションプロセスを使用する。コントローラ124は、例えば、細胞ラフト寸法とアレイ内の間隔との一致;視野内の全細胞ラフトと視野の端との間の公称マージン;ステートモーター(state motor)の移動の精度;及び画像内の細胞ラフトを検出するための計算時間に基づいて、反復状態位置決め及びラフトセグメンテーションを実行することができる。その代わりに、コントローラ124は、少なくとも1つの細胞ラフト幅の重なりを保証する視野間の所与の距離を移動することができ、及び処理中に重複した細胞ラフト画像を解像(resolve)することができる。
【0056】
機器アセンブリ104は、XYステージ148を最初の視野に移動させる。コントローラ124は、視野内の細胞ラフトを識別することを含むことができるオートフォーカス及びナビゲーションルーチンを実行し、次いでコントローラ124は画像取得ルーチンを実行する。画像取得ルーチンは、例えば特定の蛍光チャンネルが指定されているかどうかなどの撮像パラメータに応じて1又はそれ以上の特定の光源を点灯させ、次いで、例えば特定の露光時間について指定されるようにカメラ140を制御することを含み得る。
【0057】
次に、コントローラ124は、XYステージ148を制御して次の視野に移動し、オートフォーカス及びナビゲーションルーチン及び画像取得ルーチンを繰り返す。アレイスキャンは、例えばマイクロウェルアレイ112全体、又はマイクロウェルアレイ112の特定部分が撮像されるまで、又は制限時間に達するまでなど、ある終了条件に達するまで続ける。アレイスキャンは、例えば、ある方向の列を処理し、次に反対方向に次の列を処理するなど、任意の適切な方向に進行することができる。アレイスキャン中に、コントローラ124は、検出された各細胞ラフトにアドレスを割り当てる。アドレスは有用であり、その結果、例えば、細胞ラフトの画像及び他のデータが細胞ラフトに関連付けられる(associated with)ことができ、及び解放及び移動のために細胞ラフトを配置することができる。
【0058】
スキャンが完了すると、GUI126は、ユーザ108から単一細胞検出パラメータを受け取るための任意の画面を提示する。ユーザ108は、例えば、カラーチャンネル及びカラーチャンネルに対する閾値を入力することができる。コントローラ124は、単一の細胞ラフトを識別するためにスキャン中に得られた画像の画像解析を実行する。例えば、コントローラ124は、選択された画像の抽出されたサブ画像を使用して各細胞ラフト内の細胞核をセグメントすることができる。典型的には、マイクロウェルアレイ112の視野の画像は複数の細胞ラフトを含むであろう。特定の細胞ラフトのサブ画像を抽出することは、細胞ラフトの位置を識別するために画像をセグメントすること、及び次に特定の細胞ラフトを表す画像の部分を分離することを含むことができる。 単一細胞ラフトの識別については、
図8を参照して以下でさらに論じられる。次いで、コントローラ124は、選択された画像においてセグメントされた細胞ラフト及び細胞核についての測定基準(metrics)を計算及び編集(compile)することができる。
【0059】
図4Dは、ユーザ108がサイトメトリーモード、マーカゲーティング及びプレートマッピングを選択した場合の実験例の次の段階を示す。マーカゲーティング中、GUI126は、マーカゲーティングパラメータを指定するためにユーザ108に画面を提示する。 ユーザ108は蛍光ゲート(gate)を定義する。 例えば、ユーザ108は閾値色強度を指定することができる。コントローラ124は、ゲーティングされた単一の細胞ラフトについての測定基準を計算及び編集し、GUI126は結果を表示する画面を提示する。
【0060】
マーカは細胞の特徴であり、それは核酸、タンパク質、他の種類の有機若しくは無機分子、又は形態学的特徴及び細胞小器官の大きさ及び構造などの細胞の特徴によって表されるであろうし、所与の細胞内でのそれらの検出は、所与の細胞を識別又は分類する(classify)ため、又は特定のマーカを含まないか若しくは異なる程度に含まれる可能性のある他の種類の細胞と区別するために、使用される。マーカの存在、相対量又は定量的な量は、さまざまな方法及び材料を用いて検出することができる。これらは、細胞、オルガネラ、又は細胞骨格(cytosekelton)、核、ミトコンドリア、及び他のさまざまなオルガネラ区画(organellar compartment)のような他の細胞の特徴を標識する蛍光色素を含む、色素の使用が含まれる。そのような色素は当技術分野において周知である。それらはまた、マーカ配列に対して相補的な配列を有する核酸によって表されるかもしれない光学的に検出可能なプローブ、特異的マーカタンパク質に対する抗体、又は、蛍光モチーフ(例えば緑色蛍光タンパク質)、抗原(例えばHisX6)若しくは酵素活性(例えばルシフェラーゼ又はアルカリホスファターゼ)のような、マーカを発現する遺伝子が非天然部分(non-native moiety)を含むよう設計されたトランスジェニックアプローチで、天然分子(native molecule)を検出するための方法及び材料の使用を含み得る。
【0061】
本明細書の文脈において、マーカはまた、単独で、1又はそれ以上の化学的若しくは親和性部分との組み合わせである蛍光色素であってもよく、それは、細胞が存在するかどうか、又は所与の細胞が死滅、生存、無傷、無傷ではないか、又は他の細胞の状態又はプロセスであるかを決定するために使用され得る。マーカという用語はまた、蛍光又は他の光学的に検出可能な信号などのシグナルを記述するため、本明細書で使用されてもよく、それは自動システムにおける画像解析によって検出され、及び所与の細胞を識別又は分類するため、又はそれを他の種類の細胞若しくは異なる特徴若しくは特性を有する細胞と区別するために使用される。
【0062】
プレートマッピング中、GUI126は、収集プレート114内のウェルに細胞ラフトを割り当てるための画面を提示する。例えば、ユーザ108は、細胞ラフトの図形表示(graphical display)から細胞ラフトを手動で選択し、収集プレート114内のウェルの図形表示に細胞ラフトを割り当てることができる。別の例では、コントローラ124は、収集プレート114内の利用可能なウェルに細胞ラフトをランダムに割り当てることができる。コントローラ124は、例えば、両方とも単一細胞ラフト(例えば、少なくとも特定レベルの信頼性を有する)であると決定され、及び特定のマーカが存在する(例えば、検出されたマーカが少なくとも閾値レベルで存在する)各細胞ラフトを選択することによって、ユーザが指定する基準に基づいて細胞ラフトを選択することができる。コントローラ124は、収集プレートウェルのため、細胞ラフト位置のリストを編集する。
【0063】
いくつかの例では、GUI126は、現在選択されているマーカゲート内のすべての細胞ラフトについて、マイクロウェルアレイ112上の細胞ラフトの凡その位置、及び1又は2つの撮像チャンネル(imaging channel)内の蛍光強度の2次元ヒストグラム又は散布図を表示する。ゲートされた集団内の各細胞ラフトは、明瞭な視覚的指標(例えば、単一の黄色い実丸(filled circle))によって散布図上に表され、その(x、y)位置は、2軸に対応するそれぞれの撮像チャンネル内の細胞ラフトの蛍光強度に等しい。蛍光強度は、細胞ラフト全体にわたって積分され、その撮像チャンネルについての全ての単一細胞の内在集団(resident population)内の最大積分細胞ラフト強度に対してスケーリングされる(scaled)。例えば色付きのフラグなど、各軸に沿った他の指標は、ユーザ108が所与の軸について撮像チャンネルを容易に切り替えることを可能にする。
【0064】
いくつかの例では、GUI126は、ユーザ108が蛍光強度散布図上にマーカゲートを作成することを可能にする、ユーザインタフェース制御を提供することができる。
・象限-散布図を1回左クリックすると、一連の十字線の位置が決まる。十字線で定義された4つの象限のいずれかをダブルクリックすると、その象限の新しいゲートを作成する。各象限は別々のゲートを作成するために使用され得る。
・線-散布図を2回左クリックすると、散布図を横切る無限線(infinite line)の軌跡を定義する。線の両側をダブルクリックすると、新しいゲートを作成する。線の両側は別々のゲートを作成するために使用され得る。
・楕円-散布図を最初に左クリックすると、楕円の中心を定義する。2回目のマウスクリックは、中心に対する楕円の1つの軸と半径を定義する。3回目のマウスクリックは、最初の軸に対する直交半径を定義する。楕円の内側を2回左クリックすると新しいゲートを作成する。楕円を定義する方法論を考えると、楕円は散布図の範囲を超えて延びることがある。
・多角形-散布図を左クリックし続けると、多角形の頂点を定義する。多角形を閉じるには、元の頂点を左クリックする。多角形の稜線(edge)は互いに交差できないが、定義できる頂点の数に制限はない。多角形の内側を2回左クリックすると、新しいゲートを作成する。
【0065】
いくつかの例では、システム100は、ユーザ108が単一の2次元散布図上に複数の楕円及び多角形を定義することを可能にする。そのようなゲートが重なっている場合、ユーザが重なっている領域を選択すると、新しいゲートが元のゲート配置(geometry)から作成される。いくつかの例では、以前に作成されたマーカゲート(親ゲート)が現在のマーカゲートとして選択されたとき、GUI126は、選択されたゲート内の細胞ラフトを散布図及びアレイ図に表示するだけである。その結果、新しいマーカゲート配置が散布図に描画され、及び新しいマーカゲート(子ゲート)を作成するために使用された場合、すべての単一細胞の内在集団内の追加の細胞ラフトは、子ゲート配置の範囲内に入る可能性があるという事実にもかかわらず、親マーカゲート内の細胞ラフトのみが子ゲートへ包含されるためにスクリーニングされる。
【0066】
図4Eは、実験例の次の段階である、ラフトの解放及び移動を示す。選択された細胞ラフトは、マイクロウェルアレイ112から解放され、収集プレート114上のマッピングされた位置に移動させられる。機器アセンブリ104は、コントローラ124の制御下で、解放プローブ154を最初の較正された細胞ラフト位置に合わせ、磁気ワンド162を解放プローブ154に合わせる。次いで、機器アセンブリ104は、解放プローブ154を作動させて細胞ラフトを解放し、磁気ワンド162をマイクロウェルアレイ112内に下げ、その後、ワンドをマイクロウェルアレイ112から離れるように持ち上げる。
【0067】
コントローラ124は、細胞ラフトの解放及び収集確認ルーチンを実行する。例えば、細胞ラフトを解放した後、コントローラ124は、解放された細胞ラフトを撮像するためにXYステージ148を移動させることができる。次いで、コントローラ124は、得られた画像に対して画像解析を実行して、細胞ラフトが取得した画像内に描かれているか否かを決定することができる。細胞ラフトが描かれていない場合、コントローラ124は解放を確認することができる。細胞ラフトが描かれている場合、コントローラ124は、例えばエラーを報告するために停止するまでの指定された回数、解放プローブ154を用いて解放ルーチンを繰り返すことができる。
【0068】
解放を確認した後、コントローラ124は、解放された細胞ラフトを収集プレート114内のその細胞ラフトに割り当てられたウェルに移す。GUI126は、例えば解放された細胞ラフト及び解放のために残っている細胞ラフトを示す、ステータス画面を更新することができる。次いで、コントローラ124は、解放のための別の細胞ラフトを選択し、解放プローブ154を揃え、解放プローブ154を作動させ、次いで解放された細胞ラフトを収集するように磁気ワンド162を制御する。
【0069】
コントローラ124は、解放のために選択された各細胞ラフトについてプロセスを繰り返す。解放のために選択された各細胞ラフトが移動されると、GUI126は完了を示す画面を提示する。ユーザ108は、システムからマイクロウェルアレイ112及び収集プレートを取り出す。
【0070】
ユーザ108は、例えばローカルハードドライブに要約ファイル(summary file)を保存するため、GUI126を使用することができる。要約ファイルは、任意の適切なデータベース構造と互換性があり、典型的には:1)細胞の識別に使用される撮像チャンネル;2)サイトメトリー分析に使用される撮像チャンネル;3)サイトメトリーチャンネルに使用される選択されたマーカの蛍光シグナルゲートの記述(例えば、円の中心点及び半径);4)各撮像チャンネルに使用される露光時間;5)総スキャン時間(実行された場合);6)収集プレート114の各ウェルに割り当てられたマイクロウェルアレイ112内の単一細胞ラフトの位置;7)それぞれ収集された細胞ラフトについての各撮像チャンネルにおける平均蛍光シグナル強度(相対蛍光単位 -RFU);及び8)ユーザ108がマイクロウェルアレイ112をシステム上に配置することを承認したときに実行されたラン(run)の日時、に関するデータを含む。コントローラ124は、検索(search)び収集された各単一の細胞ラフトについてユーザ108によって選択された全てのアクティブな撮像チャンネルから、画像と互換性のある標準的な画像ファイルフォーマットで画像をエクスポートすることができる。
【0071】
図5は、マイクロウェルアレイのアレイ位置及び種類を決定するための例示的な方法500のフローチャートである。方法500は、
図1のコントローラ124によって実行することができ、
図1のシステム100に関して記述される。一般に、方法500は、例えば、既知のアレイ形状、製造公差、及び画像内で検出された細胞ラフトを使用された。自動的な方法で、マイクロウェルアレイ112の特定の位置(例えば、角)を検索することを含む。
【0072】
方法500は、XYステージ148を初期位置(502)、例えば、マイクロウェルアレイ112の角のうち1つを撮像するための推定位置に移動することを含む。方法500は、顕微鏡システムのオートフォーカス、画像取得ルーチンの実行、及び取得された画像内の細胞ラフトの位置を決定するために取得された画像をセグメントすること(504)を含む。方法500は、例えば正方形細胞ラフトの場合に辺の長さ(L)である、平均細胞ラフトサイズを計算することを含むことができる。
【0073】
方法500は、例えば、得られた画像に角が描かれているかどうかを決定することである、マイクロウェルアレイ112の角を見つけるためにXYステージ148を移動させるべきかどうかを決定すること(506)を含む。例えば、1又はそれ以上の細胞ラフトが画像の頂部の閾値距離(例えば距離2*L)内に検出される場合、方法500は頂部に向かって(例えば距離Lだけ)移動することを決定することを含むことができ;画像の左側の閾値距離内に1又はそれ以上の細胞ラフトが検出された場合、方法500は、(例えば距離Lだけ)左に向かって移動することを決定することを含むことができる。
【0074】
XYステージ148を移動させる場合、方法は、マイクロウェルアレイ112の角に近づくようにXYステージ148を移動させること(508)、及びマイクロウェルアレイ112の角の検索を繰り返すことを含む。角が見つかると、方法500は、アレイの種類及び向きを決定するため、角の位置に基づいてXYステージ148を任意に最終位置に移動させ、最終位置でオートフォーカスして画像を取得すること510を含む。
【0075】
方法500は、最終位置における画像に基づいてアレイの種類及び向きを決定すること(512)を含む。例えば、アレイの種類は、マイクロウェルアレイ112の特定の角(例えば、左上角)にパターンを符号化することによって、マイクロウェルアレイ112に符号化されることができる。細胞ラフトは、存在するか又は存在しないこと(すなわち、マイクロウェルが満たされるか満たされないように)によってデジタル情報を提供できる。方法500は、種類及び向きを決定するためにマイクロウェル112のさらなる領域を画像化するかどうかを決定すること(514)を含む。例えば、方法500は、マイクロウェルアレイ112の四隅のそれぞれについて繰り返すことができる。
【0076】
図6は、オートフォーカス及びナビゲーションルーチンのための例示的な方法600のフローチャートである。方法600は、
図1のコントローラ124によって実行されることができ、
図1のシステム100に関して説明されるであろう。
【0077】
方法600は、マイクロウェルアレイ112の特定の視野において、オートフォーカス及び初期画像を取得すること(602)を含む。方法600は、初期画像内の細胞ラフトを検出すること(604)を含む。方法600は、視野内の細胞ラフトの数を最大にするためにXYステージ148を移動させること(606)を含む。例えば、細胞ラフトが初期画像において斜めになっている場合、XYステージ148を移動させることは、視野の境界で細胞ラフトを中心に置くためにXYステージ148を移動させることを含み得る。方法600は、移動後に新しい画像を取得すること(608)を含む。方法600は、新しい画像内の細胞ラフトを検出すること(610)を含む。方法600は、例えば、新しい画像内で検出された各細胞ラフトにアドレスを割り当てることによって、新しい画像内の細胞ラフトをインデックス付けする(index)こと(612)を含む。アドレスは、例えば、行アドレスと列アドレスとすることができる。
【0078】
例えば、マイクロウェルアレイ112を撮像している間に、視野内の各インクリメント(increment)で以下のプロセスが実行されることができる。
1.オートフォーカスルーチンが実行され、画像のスタック内で最高のオートフォーカススコアを有する明視野画像がセグメンテーションのために選択される。
2.OpenCVルーチンを使用し、大津の方法(Otsu method)を使用して、画像内の3つのクラスのピクセルにわたってクラス間の分散を最大にする2つのピクセル強度の閾値を計算する。上限閾値のみが明視野グレースケール画像を二値画像に変換するために適用される。
3.OpenCVルーチンを使用して、それぞれ一意的に検出されたオブジェクト、すなわち一組の隣接する明るいピクセルに対する境界ボックス(bounding box)が計算される。
4.境界ボックスは続いて帯域通過フィルタ処理され、その面積が公称細胞ラフト面積から15%を超えて逸脱するあらゆるオブジェクトを除去し;及び、細胞ラフトは名目上正方形なので、そのXとYの寸法が互いに10%以上ずれるオブジェクトも排除される。
5.視野内のアレイの傾きを決定するため、最も多くの細胞ラフトオブジェクトを含む細胞ラフトの行が選択される。細胞ラフトの境界ボックスの中心への線形回帰を使用して一次多項式が計算され、勾配は傾斜方向を規定する。
6.4隅の細胞ラフトオブジェクトが選択され、傾斜方向に基づいて、細胞ラフトと視野の端との間のマージンを計算するために、それらの境界ボックスが使用される。
7.視野内の公称細胞ラフトのサブアレイを中心に置くため、XYステージが動かされ、オートフォーカスルーチン中に補間された最良のピント位置(point of best focus)にZフォーカス駆動装置が調整される。
8.新しい明視野画像が取得され、ステップ2~4が繰り返される。
9.分割された細胞ラフトは行と列によって分類され、前の視野とXYステージの移動方向に割り当てられたインデックスに基づいて適切にインデックス付けられる。
【0079】
図7Aは、顕微鏡対物レンズをオートフォーカスするための例示的な方法700のフローチャートである。方法700は、
図1のコントローラ124によって実行されることができ、
図1のシステム100に関して説明されるであろう。
【0080】
いくつかの例では、システム100は、実験の開始時に大まかなオートフォーカス機能を実行し、その後、撮像顕微鏡の視野内のあらゆるシフトと共に細かいオートフォーカス機能を実行する。所与の実験的ランについての最初のオートフォーカス手順は、マイクロウェルアレイ112が装着されてシステムが初期化を開始した後に実行される。システム構成ファイルは、顕微鏡対物レンズ及びシステム視野を単一のリザーバ(reservoir)マイクロウェルアレイの左上象限、又は4つのリザーバマイクロウェルアレイの左上リザーバに合わせるXYステージ148のX及びY位置を指定することができる。システムはその位置にナビゲーションし、次のように大まかなオートフォーカス手順を実行する。
【0081】
1.フォーカス駆動装置(focus drive)は、設定ファイルで定義されているフォーカス検索範囲の最小位置に移動する。
2.明視野画像は、例えば2倍ビニング及び動的に決定された露光時間を使用して取得される。
3.並行して:
a.画像データがカメラから移動され、画像全体のピクセル強度の分散に基づいて画像のコントラストを定量化するフォーカススコアが計算される。
b.フォーカス駆動装置は、例えば100μm上昇する。
4.フォーカス駆動装置が設定ファイルで定義されている検索範囲の上限に達していない場合は、手順2と3を繰り返す。達している場合は、ソフトウェアは最大のフォーカススコアで焦点位置を抽出する。
【0082】
次いで、システム100は、任意の適切な技術を使用して特定の視野に顕微鏡対物レンズをオートフォーカスすることができる。例えば、コントローラ124は、Z軸上のオートフォーカスされる位置を探すために、Zスタックルーチンを実行することができる。Zスタックルーチンは、Z軸に沿って下部及び上部の検索限界と、サンプル焦点位置間の固定されたステップサイズ(step size)とを選択する。いくつかの例では、アレイスキャン中に、検索限界がマイクロウェルアレイ112内のすべての視野に適用され得る。次いで、Zスタックルーチンは、画像を取得し、各サンプル焦点位置でフォーカススコアを計算し、次いで、最良のフォーカススコアを使用して位置を抽出するか、又はサンプル焦点位置に基づいて最良の焦点位置を補間する。その他の検索ルーチンの例としては、黄金探索法(golden search method)とブレント法(Brent's method)を含む。
【0083】
図7に示す方法700は、隣接する視野から得られた情報を活用するためのZスタックルーチンへの修正と考えられることができる。方法700は、例えばアレイスキャン中に有用であり得るので、検索限界は潜在的に狭められてオートフォーカスの速度又は精度又は両方を改善し得る。
【0084】
方法700は、XYステージ148を新しい視野に移動させること、及び顕微鏡対物レンズをZ軸に沿って可能な焦点範囲(focus range)の終点(例えば、底部又は上部)に移動させること(702)を含む。いくつかの例では、方法700は、利用可能であれば、マイクロウェルアレイ112の少なくとも1つの隣接視野からの焦点位置に基づいて、可能な焦点範囲を決定する(又はそうでなければ、いくつかのサンプル焦点位置を決定する)ことを含む。
【0085】
例えば、隣接する視野からの焦点位置は、通常、アレイスキャンの開始時には利用できないが、スキャンが進行するにつれて通常は利用可能になる。いくつかの例では、方法700は、8つの隣接する視野内で既に決定された任意の焦点位置の平均に基づいて、Z軸に沿った上部及び下部検索限界、並びにサンプル焦点位置間のステップサイズを選択することを含む。
図7Bは、Z軸に沿ったサンプル焦点位置の範囲を示す。
【0086】
方法700は、カメラ140を使用してサンプル焦点位置で画像を取得することを含む(704)。方法700は、例えば28ミクロンなどの固定されたステップサイズで顕微鏡対物レンズを上方に移動させることによって、顕微鏡対物レンズをZ軸に沿って次のサンプル焦点位置に移動させること(706)を含む。方法700では、画像データをコンピュータシステム102に移動すること(708)、及び画像のフォーカススコアを計算すること(710)を含む。任意の適切な種類の定量的な焦点測定基準がフォーカススコアに使用されることができ、例えば、フォーカススコアはグレイレベル分散に基づいて決定されることができる。
【0087】
方法700は、顕微鏡対物レンズを次のサンプル焦点位置に移動させることと並行して、フォーカススコアを計算することを任意に含むことができる。方法700は、必要に応じて、両方の動作が完了するのを待つこと(712)を含む。方法700は、例えば顕微鏡対物レンズが可能な焦点範囲の上部(又は下部)にあるかどうかを決定することである、サンプルへのサンプリング焦点位置がさらにあるかどうかを決定すること(714)を含む。サンプルへのサンプリング焦点位置がさらにある場合には、方法700は、次の位置に対する撮像及びフォーカススコアの計算を繰り返す。
【0088】
方法700は、サンプル焦点のZ位置及びサンプル焦点におけるフォーカススコアを使用して、最良の焦点のZ軸位置を補間すること(716)を含む。
図7Cは、(水平軸上の)サンプル焦点位置及び(垂直軸上の)フォーカススコアのプロット例を示す。例えば、方法700は、最良フォーカススコア(
図7CのZ
1、FS
1)、及びそのサンプル焦点の両側(Z軸に沿った)の2つのサンプル焦点(
図7CのZ
2、FS
2及びZ
3、FS
3)を用いてサンプル焦点のZ軸位置を抽出することを含むことができる。次に、補間されたZ軸位置(Z
focus)は次のように計算される。
【数1】
【0089】
SIGN演算子は、Z2とZ3のZ軸位置間の差に応じて正又は負の符号を生成し、Zstepは、サンプル焦点位置間のステップサイズである。次いで、補間された焦点位置は、システム100のための任意の適切な撮像のために使用され得る。
【0090】
システム100は各視野においてオートフォーカスするものとして説明されているが、一般にシステム100は顕微鏡対物レンズを焦点合わせするための任意の適切な技術を使用することができる。例えば、システムは、アレイ内の(x、y)位置に対して測定された焦点面のサブセットに表面を適合させることによって、アレイ内の任意のアレイ位置で焦点面の補間を実行することができる。表面フィッティングは、例えば、アレイの物理的特性(寸法、弾性など)及びリザーバ内の流体の質量から導出されたモデルに基づくことができる。例えば、システム100は薄板スプラインを使用することができ、それは;表面と制御点(control point)との間の最小二乗最小化を表す最小曲げの(すなわち最小二次導関数)平滑表面を計算し;制御点間で動径基底関数U(r)= r2 ln(r)を使用し;L-U分解を使用して、(x、y)の関数として表面の2次多項式重みと1次係数を計算する。
【0091】
図8は、マイクロウェルアレイ中の単一細胞ラフトを識別するための例示的な方法800のフローチャートである。方法800は、
図1のコントローラ124によって実行されることができ、
図1のシステム100に関して説明されるであろう。
【0092】
方法800は、選択された細胞ラフトについて、細胞ラフトのサブ画像を抽出すること(802)を含む。方法800は、(例えばマスキングによって)画像の外側境界を除去すること(804)、及び画像に強度閾値(例えばユーザ指定の閾値)を適用して二値画像を作成すること(806)を含む。
【0093】
方法800は、例えばあらゆる任意の適切な物体検出アルゴリズムを使用して、二値画像内の固有のオブジェクトを識別すること(808)を含む。方法800は、例えば、閾値数未満のピクセル(例えば、10ピクセル)を有する識別された固有のオブジェクトを破棄することによって、大きさに基づいて識別された固有のオブジェクトをフィルタリングすること(810)を含む。方法800は、フィルタリングした後に残りのオブジェクトを数えること(812)、及び単一細胞しか示されていない場合には選択された細胞ラフトを識別することを含む。
【0094】
方法800は、選択された細胞ラフトが単一細胞ラフトであると識別された場合、選択された細胞ラフトが単一細胞ラフトであるという決定の信頼度を示す信頼度スコアを決定すること(814)を任意に含む。例えば、単一細胞の分類に信頼水準を割り当てるため、選択された細胞ラフトが、その蛍光形態(fluorescence morphology)を用いてさらに処理されることができる。各候補となる単一細胞の細胞ラフトについて:
●検出された蛍光オブジェクトのグレースケールパターン内の極大値は、平滑化及び膨張(dilation)プロセスの組み合わせを使用して識別される。
〇9×9の平坦な構造化要素(SE)は、原点にゼロが定義されている。
〇SEを使用して、グレースケール膨張がマスクされた画像(I)に適用される。
【数2】
〇構造化要素の原点におけるゼロは、GDのグレースケール強度が9×9の局所領域にわたるI内の最大強度の位置においてIの強度に等しいという効果を有する。
〇マスクされた画像(I)が膨張(dilated)画像(GD)から減算される。
SI(x,y)=GD(x,y)-I(x,y)
〇ゼロに等しいSI(x,y)内の要素は、元のマスクされた画像I(x,y)内の極大値を表す。
●オブジェクトが単一の核に対応するという信頼度スコアを決定するため、極大値が分析される。細胞ラフトは、高い信頼度の評価でスタートする。蛍光オブジェクトのグレースケール画像内で検出された2つの極大値の組み合わせごとに:
〇2つの極大値の間の線に沿ったピクセル強度が、それらの間の理論上の線形勾配と比較される。実際の強度が線に沿った任意の点で線形勾配の75%を下回ると、細胞ラフトは1レベル低下する(高いから中間、中間から低い、又は低いから候補リストから削除)。強度が線形勾配の50%を下回ると、細胞ラフトは2レベル低下する(注:短所は、識別された極大値のすべての組み合わせにわたって蓄積(cumulative)されることである)。
〇オブジェクトの円形度の尺度として、2つの極大点間の距離(D)が、(閾値画像の補数(complement)に適用される距離変換値(distance transform value)によって測定されるものとして)検出されたオブジェクトのエッジからのそれらのそれぞれの距離(DT
1、DT
2)と比較される。
〇2*D>(DT
1+ DT
2)
2の場合、細胞ラフトは単一細胞の候補リストから削除される。
【0095】
いくつかの例では、選別(culling)プロセスの後に残っている任意の細胞ラフトの候補は、それらの信頼レベルに従って分類され、マーカゲーティング(marker gating)のための予備的単一細胞集団に含める前に、信頼度、大きさ、又は最大強度に基づくフィルタリングに利用可能である。
【0096】
一般に、コントローラ124は、単一細胞ラフトを識別するために任意の適切な画像解析技術を使用することができる。いくつかの例では、コントローラ124は、細胞ラフトのサブ画像について、そのサブ画像を閾値処理することができ、離散オブジェクトの数が閾値処理後に1つである場合、閾値画像の補数の距離変換を計算し、負の距離変換を生成し、背景ピクセルを-Inf(又は他の適切なプレースホルダ(placeholder)値)にセットし、単一細胞を細胞のクラスターから区別するために極小値を識別して印を付け、及び、ウォーターシェッド変換を実行して細胞の周囲に境界線を描く。
【0097】
図9は、例えば
図3Aを参照した上述のようなリアルタイム撮像モードのために、細胞ラフトを選択して収集プレートをマッピングするためのグラフィカルユーザインタフェースの例示的な画面のスクリーンショットである。
図9は、システム制御及びサンプル捕捉の複数の要素を組み合わせた(例えば、
図1のGUI126からの)例示的な「撮像」画面GUIを示す。ユーザインタフェースは、ユーザが撮像光学系の焦点を調整するか又はオートフォーカスを開始することを可能にするだけでなく、ユーザが視野を各方向に移動するか又はマウスのシングルクリックで任意の位置に移動することを可能にするユーザインタフェース制御をさらに提供する。ユーザインタフェースはさらに、ユーザが明視野及び赤、緑、及び青の蛍光チャンネルをオン又はオフにし、各蛍光チャンネルの露光時間及びゲイン、各蛍光チャンネルのビニング(binning)を設定することを可能にし、ユーザがアクティブな撮像チャンネルごとに独立された露光時間を調整することを可能にする。
【0098】
図9に示されるように、ユーザは、任意の画像内で関心のあるラフトをクリック又は選択し、ラフトのズーム画像を検査し、分離のために特定のラフトを選択することができる。ユーザインタフェースは、マイクロウェルアレイ上の現在表示されている視野の位置をユーザに示す。GUI画面はまた、収集プレート(例として96ウェルフォーマットが示される)のマップを表示し、及びユーザが、分離のために選択された単一細胞ラフトを、実験の最初に特定された収集プレート内の特定の位置に割り当てることを可能にする。
【0099】
図9からの表示要素を使用して、GUIはまた、解放及び移動プロセスを監視するために使用され得る画面を生成し得る。GUI画面は、分離のために選択されたラフトのリストを表示し、ユーザが、マイクロウェルアレイからラフトの解放を介して分離プロセスを開始し、磁気ワンドを介してラフトを収集プレートに移動し、及び収集プレートマップに完了までの時間と各設置(deposit)を表示することによって、分離プロセスの進行を追跡することを可能にする。
【0100】
システム100をサイトメトリー画像解析モードで使用するとき、
図9と同様の要素を含む「撮像」タブGUIが表示されることができ、これによりユーザが、マイクロウェルアレイ内のシステム視野をナビゲーションし、マイクロウェルアレイの全自動スキャン中に使用される3つの蛍光撮像チャンネルの撮像パラメータを設定する目的でリアルタイム画像及びピクセルヒストグラムを視覚化することを許容する。ユーザがマイクロウェルアレイの全スキャンを開始し、スキャンの進行を追跡し、及びマイクロウェルアレイの全自動スキャンを一時停止/再開することを可能にする、サイトメトリー画像解析モード内の「アレイスキャン」タブGUIが表示されることができる。GUIはアレイ内の現在の視野の位置と、その視野から取得された画像とを表示する。
【0101】
図10は、グラフィカルユーザインターフェースの別の例示的画面のスクリーンショットである。
図10は、サイトメトリー画像解析モード内の「細胞ゲーティング」又は細胞識別タブGUIを示す。細胞ゲーティングタブGUIは、アレイ内の各ラフト上の細胞の数を決定するために、初期の(primary)撮像チャンネル内の蛍光オブジェクトがセグメントされるパラメータをユーザが設定することを可能にする。この制御は、ユーザがオブジェクトセグメンテーションの強度閾値を設定し、セグメンテーションに対する設定変更の効果を検討し、さらに集団から候補ラフトをふるい分ける(screen)ために単一細胞ラフトの集団内で様々なフィルタを適用することを許容する。これらの設定は、ユーザが単一細胞ラフトのシステムの識別を、95%を超える効率で最適化することができるよう、単一細胞検出のための方法800に適用されることができる。ユーザインタフェースは、X方向がピクセル強度を表し、Y軸が与えられた信号強度における全アレイスキャン内のピクセル数を表す、「細胞識別」チャンネルの信号のヒストグラムを表示する。ユーザはマウスを使用してヒストグラム上の現在の単一細胞ゲーティング閾値の指標を設定することができる。
【0102】
ユーザインターフェースは、ユーザが単一細胞ゲーティング閾値を、アレイ上に数えられる単一細胞数の信頼区間だけでなく、全アレイスキャン中に検出された最小(0%)及び最大のピクセル強度(100%)の両方の関数として、計算された正規化パーセンタイルを表す値に変更することを許容する。GUI画面はまた、マイクロウェルアレイの全アレイスキャン中に細胞を含むと識別されたラフトの総数、及びその後の分離のためにユーザ指定の閾値パラメータを満たす単一細胞内在ラフトの数をユーザに提示する。
【0103】
ユーザインターフェースは、サイトメトリー画像解析モード内に「マーカゲーティング」タブを表示することができる。細胞ゲーティングプロセスを完了した後、ユーザインターフェースの追加の画面は、単一細胞内在ラフトの場所を示す強調表示された位置、及びアレイ上に見出される単一細胞内在ラフトの総数と共に、全マイクロウェルアレイの画像を表示する。ユーザインターフェース画面はまた、ユーザによって指定された2つのサイトメトリーマーカチャンネルの各々について、X軸及びY軸に沿ってプロットされた各単一細胞ラフトを表す一点を提供する2次元ヒストグラムを表示し得る。インターフェースはさらに、例えば
図4Dを参照して上述したように、ユーザが任意の適切なフォーマットでヒストグラム上にサイトメトリーマーカゲートを適用することを可能にするユーザインターフェースコントロールを提供することができる。
【0104】
ユーザインターフェースはまた、ユーザがマウスを使用して、すべてのアクティブな蛍光チャンネル及び明視野内の選択された単一細胞ラフトの画像を観察することだけでなく、マイクロウェルアレイの全画像内又は2次元散布図上の単一細胞内在ラフトの位置をクリックすることを許容する。インターフェースはさらに(例えば、リアルタイム撮像モードにおいて)、ユーザが、すべてのアクティブな蛍光チャンネル及び明視野において単一細胞ラフトをランダムに選択することを許容する。
図9に示されるプレートマッピングディスプレイと同様のプレートマッピングディスプレイを使用して、ユーザは、選択された単一細胞ラフトを、実験の最初に特定された収集プレート内の特定の位置に割り当てることができる。
【0105】
本明細書に記載されているシステム及び方法は、時間変化する蛍光サインを通して細胞内プロセスが観察される、細胞生物学における多くの問題に適用可能である。細胞増殖又は生存に対する特定の導入遺伝子、siRNA又は小分子の効果は、モデル細胞系において容易に観察され得、そして極端な遺伝子発現、細胞増殖又は延長された生存のような異常な性質を示す細胞は、拡張(expansion)及びより詳細な研究のために分離され得る。癌生物学の分野では、このシステムは、多様な細胞集団を含む原発性ヒト腫瘍においても、固有の時間的特徴を有する個々の細胞を分離し研究するために使用され得る。
【0106】
例えば、経時的分析は、サイトメトリー画像解析モード内に固有の機能を使用して達成することができる。薬物又は試薬の投与を含む用途の場合、1)アレイ内の単一細胞ラフトを識別し、及び2)1つのレポータ(reporter)蛍光撮像チャンネル内のベースライン蛍光レベルを定量化するため、薬物又は試薬を添加する前に、t=t1で全アレイスキャンが実施されることができる。薬物又は試薬の添加及び十分なインキュベーション時間の後、第2の全アレイスキャンがt=t2で実施されることができる。システムはその後、t1とt2の間に測定された蛍光の差を計算して表示し、及びユーザがその差に基づいてゲートを生成することを許容することによって、分離のための単一細胞ラフト選択を可能にする。
【0107】
蛍光値が2つの異なる時点の間で比較されるこのワークフローについて、様々な置換が可能である。2つの時点が数分又は数時間離れている場合、細胞は機器の内部に残っている可能性がある。2つの時点が数時間又は数日離れている場合は、細胞を含むマイクロウェルアレイが撮像の実行の間に機器から取り出され、標準的な細胞培養インキュベータに入れられることができる。
【0108】
2点の時間経過分析のさらなる用途は、蛍光レポータ遺伝子を用いたトランスフェクション実験中のクローンコロニー増殖の評価である。予備スキャンでは、クローンコロニーに必要な単一細胞ラフトを特定する。二次スキャンは、総コロニーサイズ及びコロニー内のトランスフェクションの有効性を示す、総コロニー蛍光(total colony fluorescence)の評価を可能にするであろう。
【0109】
時間経過の能力をさらに高めるために、システムは、時間t=t3、t4、…、tNで任意の数の追加のアレイスキャンを行い、レポータ撮像チャンネル内の蛍光強度を定量し、時間に対する測定強度のプロットを表示し得る。前述のように単一時点蛍光強度又は2時点間の強度変化に基づいて単一細胞ラフト集団ゲートを作成することに加えて、ソフトウェアはさらに、ユーザが蛍光時間曲線の形状に基づいてゲートを作成することを可能にする。曲線形状に基づくゲーティング機能は、次元数削減、クラスタリング、及び主成分分析、フーリエ変換、ウェーブレット変換、階層的クラスター分析、又は線形判別分析などの分類手法を使用して容易にすることができる。
【0110】
蛍光強度は単一細胞内の分析物の存在量の優れた測定値であるが、所与の細胞内の分析物の局在化を調べるためにこの能力を使用する可能性もある。例えば、多くの膜タンパク質は、典型的にはエンドサイトーシスを介した内在化、及び核のような他の細胞内コンパートメント又はオルガネラに移動することによって、所与のリガンド又は他の刺激に応答する。この挙動を示すタンパク質の分析は、蛍光強度を観測するだけでなく、その蛍光シグナルの局在パターンの変化を観測することも必要になるかもしれない。例えば、上記の場合、タンパク質の原形質膜関連(-linked)シグナルをその核関連シグナルと比較することは、所与の経路を介した全体的なシグナル伝達の指標を提供し得る。タンパク質、核酸、及び、小胞体、エンドソーム又はミトコンドリアなどのオルガネラ自体を含む、多くの種類の分析物がこの方法を利用することができる。これらの種類の時間経過実験のための画像解析アルゴリズムは、好ましくはセグメンテーションベースの方法を採用し、オブジェクトを識別し、及び、それらが局在する細胞内コンパートメントの性質を予測するためにそれらの幾何学的形状を入力するか、又はユーザが所与の細胞内コンパートメントに特定の蛍光シグナルを帰することを許容する。
【0111】
図11A~
図11Iは、アクチュエータ、撮像装置、並びに画像処理及び分析アルゴリズムを有するプロセッサを含む、自動化されたコンピュータ制御のマイクロウェル解放及び収集システムがマイクロウェルアレイと共に使用され、トランスフェクトK562細胞(ヒト骨髄性白血病細胞株)を検査及び分離する実験例を示す。Cas9ヌクレアーゼをエンコードする遺伝子を含むプラスミド、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)レポータ遺伝子、及びU2AF1遺伝子の特定の配列に結合するよう設計された2つのsgRNAのうちの1つとともに、白血病関連S34F変異を含む一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド修復テンプレートを含む標準的手法を用いて、細胞がトランスフェクトされた。細胞は、トランスフェクション後の24時間、2mLの予め平衡化された培養培地中、37℃、5%CO
2で培養された。次いで、トランスフェクトされた細胞は、1μMのカルセインAM又はCellTracker Deep Redで30分間染色され、洗浄され、及びそれぞれの染色プロトコルに従って撮像され、そしてマイクロウェルアレイ上に播種された。単一細胞を有する細胞ラフトの位置を識別するため、細胞ラフトが直ちに撮像された。1つより多い細胞を有する細胞ラフトは、その後の分析から除外された。その後、トランスフェクション後72時間になるまで、アレイは12時間ごとに撮像された。
【0112】
自動システムの構成要素は、
図1のシステム100の構成要素とほぼ同じである。自動システムの撮像装置は、明視野及び蛍光画像を取得するために使用されたORCA-Flash4.0 CMOSカメラ(浜松、ブリッジウォーター、NJ)を備えたMVX10 MacroView直立顕微鏡(オリンパス、ペンシルバニア州センターバレー)を含んでいた。倍率ズーム(magnification zoom)と対になった、プランアポカロマート(plan apochromat)対物レンズ(0.25の開口数を有する1倍)は、撮像中に広範囲の有効倍率(0.63倍~6.3倍)を可能にした。PS3H122電動フォーカス駆動装置及びH138A電動XY移動ステージ(Prior Scientific Inc.、ロックランド、MA)を使用して、試料及び対物レンズの移動が自動化された。Lambda 10-3光学フィルターチェンジャーは、発光フィルターホイール(LB10-NWE)、SmartShutter(LB10-NWIQ)付き励起フィルターホイール、及びスタンドアロンSmartShutterシャッタ(IQ25-SA)(Sutter Instrument、ナヴァト、CA)を配置された。5つの励起バンドパス(350±50nm、402±15nm、490±20nm、555±25nm、645±30nm)、及び4つの発光バンドパス(455±50nm、525±36nm、605±52nm、705±72nm)を有するフィルターセット(89000-ET-Sedat Quad Chroma Technology Corp、ベローズフォールズ、VT)は、青、緑、赤及び遠赤色の波長での蛍光測定を可能にした。アークランプ(ルーメン200、Prior Scientific Inc.、ロックランド、MA)が照明に使用された。全ての顕微鏡装置は、MATLAB(MathWorks、ナティック、MA)で書かれたカスタムソフトウェアによって制御され、Micro-Manager(Open Imaging、サンフランシスコ、CA)コアが使用された。
【0113】
様々な時間で、マイクロウェルアレイの明視野及び蛍光画像が取得された。全画像範囲を確保するために、撮像された視野間の少なくとも300μm(細胞ラフト+細胞ラフト幅の間隔)の重なりがすべての実験で使用された。EGFP発現K562細胞を識別する実験のため、細胞は最初にCellTracker Deep Redで染色された。アレイの明視野及び蛍光画像が、トランスフェクションの24時間後から72時間後に12時間間隔で取得された。
【0114】
指定された時点で明視野及び蛍光アレイ画像を自動的に取得するためにシステム内の顕微鏡を制御するため、並びに画像を処理及び分析するため、カスタムMATLABプログラムが使用された。(例えば、
図1のGUI126と同様の)グラフィカルユーザインターフェースが、蛍光チャンネル選択、カメラ露光時間、及びマイクロウェルアレイ形状を含むユーザ入力を可能にした。ユーザインターフェースはまた、マイクロウェルアレイの4つの角及び中心を手動で位置決めして焦点を合わせるようにユーザに指示するためにも使用された。アレイの大きさに基づくフィット(fit)からの内挿された平面に基づいて、アレイの各視野について位置及び焦点面を予測するために、各アレイからの5つの識別された点が薄板スプラインにフィットされた(fit)。
【0115】
すべての倍率において、細胞ラフトは明視野照明下で高いコントラストの境界を有していた。細胞ラフトはセグメントされ、明視野画像を用いてアレイ位置が割り当てられた。不均一な照度を補正するために、各明視野画像に対してフラットフィールド補正が行われた。各明視野画像は、大津の方法を用いて閾値処理され、ピクセルは、閾値の上又は下のそれらの値に基づいて1又は0を割り当てられた。アレイ上の残渣(debris)を考慮から除外するために、各細胞ラフトの境界の内部を満たすように二値画像がさらに処理され、既知の細胞ラフトサイズの1.5倍より大きい又は0.5倍より小さいオブジェクトが分析から除外された。この戦略を用いて、全ての細胞ラフトの位置が、各時点で及び細胞ラフト分離の前に識別された。トップハットフィルタを適用することにより、バックグラウンドノイズが蛍光画像から除去された。その後、各画像に閾値を設定し、及び画像を二値に変換するため、大津の方法が使用された。接触している細胞を分離し、蛍光細胞の計数を可能にするため、ウォーターシェッドアルゴリズムが二値画像に適用された。画像の取得に必要な空間分解能は、画素サイズ、アレイ画像時間(image time)、細胞ラフトセグメンテーション精度、及び細胞識別の成功を考慮することによって最適化された。
【0116】
自動システム内の解放プローブは、2つのデルリン構成要素、すなわち小型ステッパーリニアアクチュエータ(20DAM10D2U-K;移動距離15mm; Portescap、ウェストチェスター、PA)用のモーターハウジング及びニードルマウントからなっていた。ニードルマウントは、それを通してニードルが固定される小さな穴を有する透明なポリカーボネート窓を有していた。透明なポリカーボネート製の窓は、ニードルを所定の位置に置いた状態で明視野顕微鏡検査を行うことを可能とした。リニアアクチュエータは、モーターシールド(Adafruit Industries、ニューヨーク、NY)を備えたArduino Uno(SparkFun Electronics、ボールダ―、CO)に接続されたカスタムMATLABプログラムによって制御された。画像解析ソフトウェアによって標的とする細胞ラフトリストを供給されたときに個々の細胞ラフトを解放するために、MATLABで書かれたカスタマイズされたソフトウェアを有する自動機械システムが開発された(例えば
図1のシステム100と同様)。ステッパーリニアアクチュエータが、マイクロウェルアレイを穿刺し、及び個々のマイクロウェル内で細胞ラフトを移動させるために使用される解放プローブのZ位置を制御した。解放プローブ及びモータは、顕微鏡対物レンズの光路と位置合わせされた顕微鏡ステージの下に取り付けられた。ユーザインターフェースは、細胞ラフト解放のための作動中にユーザがZ移動距離を選択することを可能にした。自動化された解放を目標とした細胞ラフトは、解放ニードルが目標位置でマイクロウェルアレイを貫通した回数に応じて、94~100%の効率でうまく除去された。
【0117】
自動システム内の電動の磁気ワンドは、超常磁性の細胞ラフトを捕集し、移動し、及び収集小胞内に置くように設計された。回収ワンドは、円筒形のNdFeB磁石(直径3.175mm、長さ25.4mm)を中空のポリカーボネートシリンダー(外径4.76mm、内径3.18mm、長さ63.5mm)内に配置することによって製造された。磁石がシリンダーの中心軸に沿って自由に動くことができるよう、シリンダーは両端で塞がれた。回収用ワンドは、デルリン部品を用いて顕微鏡対物レンズに取り付けられ、その垂直方向の動きがリニアアクチュエータ(L12-30-50-06-R; Firgelli Technologies Inc.、ビクトリア、BC、カナダ、移動距離30 mm)で制御された。リニアアクチュエータは、モータシールドを備えたArduino Unoと連動するカスタムMATLABプログラムによって制御された。細胞ラフトを捕集するため、磁気収集ワンドは、解放された細胞ラフトから2mm以内のマイクロウェルアレイの上の培地中に配置された。一旦アレイから取り除かれると、細胞ラフトは、ワンド先端上の流体液滴の表面張力によるだけでなく、ワンド内の円筒形磁石によってワンド先端上に保持された。細胞ラフトが100%の効率で96ウェルプレートに置かれた。
【0118】
アレイから細胞ラフトを回収する前に、視野内の解放ニードルの位置が記録された。アレイに対する収集ワンドのX-Y-Z位置も、96ウェルプレートのウェルの位置に対するその相対位置と同様に較正された。細胞ラフト解放のため、細胞ラフト解放システムを使用してPDMS基質をニードルで突き刺すことによって、選択された細胞ラフトがマイクロウェルアレイから排出された。磁気収集ワンドがアレイ培養培地に浸され、解放された磁気細胞ラフトが引き付けられた。次いで、収集ワンドは、培地を含有する96ウェルプレートの近くのウェルに移動され、及びその中に浸漬された。96ウェルプレートの下のNdFeBブロック磁石(101.6×76.2×6.35mm)が細胞ラフトをウェルに引き寄せた。ブロック磁石はまた、収集ワンド内の円筒形磁石がブロック磁石によって反発されるように配置された。
【0119】
システムの様々な構成要素の動作を統合するために、カスタマイズされたMATLABプログラム及びユーザインターフェースが使用され、撮像中の細胞ラフト解放プローブの協調した移動、ラフト解放での細胞ラフト収集、及び収集した細胞ラフトを96ウェルプレート内に配置するための顕微鏡ステージの移動を許容した。ユーザインタフェースを使用して、ユーザは細胞ラフト解放を開始し、ニードルがPDMSをちょうど突き破るまで移動距離を調整した。ユーザはニードルの位置を識別し、ソフトウェアはXYステージの位置に関してニードルの位置を保存する。次にGUIは、ユーザがXYステージ及び細胞ラフト収集システムを操作し、ワンド先端を細胞ラフトアレイの4つの角及び96ウェルプレートの4つの角のウェルに配置することを許容する。各細胞ラフトの収集位置と設置位置を補間するため、次にこの情報が使用される。
【0120】
単一細胞を有する細胞ラフトの位置を識別し、及び各細胞のEGFP蛍光の持続時間及び強度を追跡するため、自動システムが使用された。EGFP陽性細胞が72時間にわたって12時間ごとに調べられた。任意の時点でEGFP発現細胞を含む細胞ラフトは、画像解析ソフトウェアによって、撮像時間経過の完了時に識別された。単一細胞から始まる合計220個の細胞ラフトは、撮像時間中に少なくとも1個の蛍光細胞を含み、これは1.9%のトランスフェクション効率に相当する。蛍光細胞を含む細胞ラフトは100%の感度で識別され、自動細胞ラフトシステムは>98%の効率で細胞ラフトを解放し、100%の効率で細胞ラフトを収集することができた。解放及び96ウェルプレートへの収集のために単一細胞ラフトが対象とされた。コロニーに拡大された細胞が遺伝子解析され、成功した遺伝子編集の存在が決定された。U2AF1中のS34F突然変異を含む2つのK562コロニーが生成され、蛍光タンパク質発現の一時的進化に基づいて細胞を分類(sort)する能力を実証し、及び遺伝子編集が成功した選択された細胞及びコロニーを提供した。
【0121】
マイクロウェルアレイ上のトランスフェクト細胞におけるEGFP発現の時間発展(temporal evolution)、及び細胞ラフトの分離後に細胞が増殖するかどうかを予測するEGFP発現にはっきりした傾向があるかどうかを分析するため、自動システムが又用いられた。個々の細胞ラフト上の細胞を、全期間の低蛍光、全期間の高蛍光、低発現とそれに続く高発現、及び高発現とそれに続く低発現、として分類する(categorize)ため、撮像システムによって72時間にわたって得られた細胞当たりの平均蛍光が使用された。分離後に増殖された細胞は、4つのグループの全体に確率的に分布していた。分離後の増殖群と非増殖群との間のいかなる単一時点でも蛍光発現に識別可能な差異はなく、マイクロウェルアレイ上の細胞の増殖と細胞ラフト分離後の増殖との間に相関はなかった。EGFP発現の時間発展の分析はまた、トランスフェクトされたK562細胞がトランスフェクション後にEGFPを発現するのに最大72時間かかり得ることを実証した。さらに、自動システムは、ユーザがマイクロウェルアレイ中の単一細胞ラフトで経時的に得られた発現データを、下流の(downstream)分子分析と相関させることを可能にし、この場合、分離クローンにおける成功した遺伝子編集の決定が、マイクロウェルアレイ上でアッセイされた単一細胞から導かれた。
【0122】
図11Aは、トランスフェクトされたK562細胞を含む細胞ラフトを識別及び分離するために使用される、画像処理及び分析の概略図を示す。
図11Bは、マイクロウェルアレイの未加工の明視野画像を示す。
図11Cは、フラットフィールド補正が適用された後の、同一のマイクロウェルアレイの明視野画像を示す。
図11Dは、細胞ラフトの境界をマークする2値画像が生成された、補正画像の閾値処理を示す。
図11Eは、細胞ラフト内を満たし、画像の境界に触れている任意の細胞ラフトを除去するために適用された、形態学的(morphological)フィルタリングを示す。
図11Fは、カルセインAMが投入された2つの接触細胞の蛍光画像を示す。
図11Gは、バックグラウンドノイズを除去するために蛍光画像に適用されたトップハットフィルタを示す。
図11Hは、2つの細胞が接続された二値画像が生成された、トップハットフィルタ処理画像の閾値処理を示す。
図11Iは、接触する細胞を分離するためにウォーターシェッドアルゴリズムが適用されたことの結果を示す。
【0123】
本発明の一実施形態では、個々のT細胞の回復とT細胞機能の同時測定を調べるため、アクチュエータ、撮像装置、並びに画像処理及び解析アルゴリズムを含むプロセッサを含む、自動コンピュータ制御マイクロウェル解放及び収集システムがマイクロウェルアレイと共に使用された。
【0124】
アレイ上の機能的アッセイ(functional assay)において、個々のT細胞が標的細胞の集団を殺す能力を測定し、及び「アレイ上」のT細胞を介した殺傷又は細胞毒性の時間依存性を測定するため、自動システム(
図1のシステム100と同様)が用いられた。それらのシステムはさらに、異なる状況下及び異なる細胞の種類において、抗原提示を観察するためのプローブとして使用されることができるクローン集団のため、特定の細胞を96ウェルプレートに生存可能に(viably)分類するために使用された。
【0125】
ヒトT細胞培養物がインフルエンザM1p抗原に対して作製された。標準的な方法でCD8 +細胞を得るため、分離された末梢血単核細胞が用いられた。細胞毒性Tリンパ球(CTL)培養は、IL-21を補充された10%ヒトAB血清(完全培地(complete media)、CM)を含むCTS AIM V培地中で、CD8 + T細胞をM1pパルスDCと共に培養することによって開始された。3日間の培養の後、細胞は、2日ごとにIL-7及びIL-15を加えたCMを補充された。IL-21、IL-7及びIL-15を含有するCM中での培養開始の11日後にCTLがM1pパルスDCで再刺激された。培養開始の19日後にIL-2が添加された。CTLは培養開始後21及び34日目に再刺激され、培養開始後41日目にアリコート(aliquot)で凍結保存された。凍結保存されたCTLが解凍され、M1pパルスDCで再刺激された。3日後、CD8+ T細胞分離キットを用いてCTLが分離され、そしてIL-7、IL-15及びIL-2を補充されたCM中で維持された。2~3日後にCD8+T細胞がマイクロウェルアレイ上に固定された。M1p/HLA-A*02:01四量体列挙(tetramer enumeration)は、48.4%のCD8+T細胞がM1pに特異的であることを示した。バルク培養物は、白血病関連抗原PR1をパルスされた自己DCと比較して、M1pパルスされた自己DCに対して抗原特異的細胞毒性を示した。
【0126】
樹状細胞(DC)は、CD34マイクロビーズキット UltraPure(Miltenyi Biotec)を用いた、UNC病院の造血前駆細胞研究室から得られた凍結保存白血球搬出産物(leukapheresis product)から分離されたCD34+細胞と区別された。将来の使用のために凍結保存された未成熟DCを得るための補足的方法に記載されたように、GM-CSF、Flt3-リガンド、SCF及びIL-4を補充された10%ヒトAB血清(完全培地、CM)を含むCTS AIM V培地中で、CD34+細胞が12日間培養された。未成熟DCは、GM-CSF、IL-4及びTNF-aで2日間、並びにGM-CSF、IL-4、TNF-a、IFN-a及びIL-6で2日間培養することによって、成熟DCに分化された。成熟DCは、ペプチド(M1p又はPR1)とともに、少なくとも18時間共培養された。
【0127】
マイクロウェルアレイがPBS中0.1質量%のウシゼラチンでコーティングされ、37℃で2時間以上培養され、その後、ゼラチン溶液が吸引され、細胞を固定する前にアレイがPBSで3回洗浄された。
【0128】
分析に使用されたマイクロウェルアレイは、細胞が培養され、顕微鏡検査によって経時的にアッセイされる細胞ラフトの規則的なパターン(70×70)から構成されていた。磁性ポリスチレンから製造された細胞ラフトは、アッセイの設定及び実行の間、それらの表面上での細胞の保持を高める120μmの深さの凹面を有する。マイクロウェルアレイは、M1p又はPR1ペプチドのいずれかでパルスされ、かつヘキスト色素で標識された自己DC(「標的」細胞)を播種された。標的細胞は、ヒトAB血清、ペニシリン、ストレプトマイシン及びHEPESを、1細胞ラフトあたり30細胞の割合(1アレイあたり147,000細胞)で補充された、フェノールレッドを含まないRPMI 1640中でアレイに適用された。CD8+ T細胞がCellTracker Deep Redで標識され、単一のT細胞を含む細胞ラフトの数を最大にするために細胞:細胞ラフトの比が1:1でアレイ上に置かれた。細胞は、アレイを横切る各ウェル内での数がポアソン分布に従うように確率的にアレイ上に沈降させられ、これはウェルの約1/3(36.8%又は1803ウェル)が単一のCD8+ T細胞を有すると予測され、26.4%(1294)が1を超えるT細胞を含むと予測され、36.8%(1803)がT細胞を含まないと予測されることを意味する。アレイを覆う培地は、膜不透過性のDNA結合染料であるSytox Greenを含んでいた。
【0129】
アッセイは、単一T細胞を含み、6時間の経過にわたって緑色蛍光を増加させることによって明示される標的細胞に対して、高い細胞毒性を示す細胞ラフトを識別するように設計された。標的細胞及びT細胞の両方がマイクロウェルアレイ上の培地に適用されたので、個々の細胞ラフトは異なる数及び比率の標的及びT細胞を有することができる。画像取得、処理、及び分析は、
図1のシステム100を参照して上述されたものと同様の方法で達成された。顕微鏡を収容するインキュベータ内にあるアレイの蛍光画像は、6時間にわたり、30分毎に得られ、各細胞ラフトについて経時的な緑色蛍光の発達(development)が測定された。
【0130】
蛍光画像は、
図4A~4Eを参照して上述された処理と同様の方法で処理された。各フルオロフォア(fluorophore)(Hoechst、Sytox Green及びCellTracker Deep Red)を表す細胞の強度、面積、位置及び数を決定するため、蛍光画像が解析された。マイクロウェルアレイ上の細胞のバイナリマスク(binary mask)を生成するために、トップハットフィルタリングと大津の閾値処理が各画像に適用された。各フルオロフォアによって作成されたマスク内で、各細胞ラフトについて強度、位置及びピクセル数が記録された。各細胞ラフト上の個々の細胞の数を計数するため、遠赤色チャンネル(CellTracker Deep Redで染色された細胞に対応する)中の各画像にウォーターシェッドアルゴリズムが適用された。
【0131】
画像取得と並行して、MATLABプログラムが取得された画像を処理及び分析した。撮像のための明視野及び蛍光チャンネルの所望の組み合わせを選択するため、MATLAB GUIが使用された。各組の画像の処理時間は顕微鏡ステージの移動及び画像取得よりも早かったので、全スキャン時間に追加の時間が加えられなかった。個々の細胞ラフトの位置を識別するため、明視野画像が用いられた。PDMSのエラストマー性のために、アレイ上の細胞ラフトの正確な位置を正確に突き止めるために画像解析が必要とされた。細胞ラフトセグメンテーション方法は、バックグラウンド推定、フラットフィールド補正、閾値処理及び形態学的フィルタリングを含んでいた。細胞ラフトの大多数(99.8±0.8%)は、偽陽性ではなく正しく識別された(n=100の画像、1画像あたり100~121の細胞ラフト)。
【0132】
マイクロウェルアレイ上で行われた分析は、0又は1のCD8+ T細胞のどちらかを含む細胞ラフトにおける緑色蛍光の経時的な発達と比較された。T細胞を含まない細胞ラフトは、対照とみなされると共に、調査期間にわたる自発的な標的細胞死の速度に反映された。細胞ラフトをスキャンするために4倍の全倍率が使用され、1.62μm /ピクセルのピクセルサイズがもたらされた。この倍率が選択されたのは、画像取得時間を最小にするために広い視野を維持しながら単一細胞を容易に識別することを可能にするためである。各70×70マイクロウェルアレイは、5%の画像の重なりで、この倍率で1チャンネルあたり49の画像を必要とした。明視野(100msカメラ露光)及び3個の蛍光チャンネル(各200msカメラ露光)を使用する単一アレイの画像取得は、完了するのに216±4秒を要した(n=10)。各画像の焦点を維持するためにオートフォーカスアルゴリズムが使用され、完了に99±2秒を要した。自動的に取得されたすべての焦点面は、手動で選択された焦点面(n=50)と比較して、4倍倍率(±21.8μm)の顕微鏡対物レンズの被写界深度内で正確であった。得られた全マイクロウェルアレイスキャン時間(オートフォーカス及び画像取得)は315±5秒であった。
【0133】
個々の細胞ラフトの位置は、画像処理及び分析ソフトウェアを用いて決定された。単一のCD8+細胞を含む細胞ラフトは、CellTracker Deep Red蛍光を用いて識別された。これらの細胞ラフトは、Sytox Green蛍光強度の増加に基づいて分類された。単一のCellTracker Deep Red陽性細胞が確実に細胞ラフト上に残るよう、自動的に識別された細胞ラフトは、ゼラチンカプセル化後に再スクリーニングされた。
【0134】
自動システム及びプロセスは、蛍光顕微鏡によって測定され、蛍光標識された抗原提示標的細胞の集団及び1つのCD8+ T細胞を含むように設計された各細胞ラフトにつき定量された、単一細胞についてのT細胞を介した殺傷速度の測定を可能にした。これにより、わずか2時間で細胞毒性の高いCD8+ T細胞の識別が可能になった。細胞毒性又は細胞殺傷は、各細胞ラフト上のヘキスト(Hoechst)蛍光領域内のSytox Greenピクセル強度を合計することによって測定された。Sytox Green蛍光のマスクとして各細胞ラフト上のヘキスト陽性領域を使用すると、残渣並びに崩壊細胞(disintegrating cell)及びそれらの断片による偽の測定が大幅に減少した。存在する特定の数のエフェクター細胞に対応する細胞毒性の一時的な痕跡を生成するために、各時点で各細胞ラフトについてエフェクター細胞数及び細胞毒性情報が記録された。個々のCD8+ T細胞における標的細胞死の割合(rate)は大きく異なるが、しかしながら、個々のT細胞は実験の時間経過を通してそれらの細胞毒性の割合(rate)を維持し、それは高い細胞毒性のCD8+ T細胞の迅速な識別を可能にする。
【0135】
細胞毒性アッセイが完了すると、アレイは前述のようにゼラチンの薄層で覆われた。顕微鏡を囲むインキュベータは、アレイのゼラチン覆いの直前に24℃に冷却された。アレイ上の培養培地は、PBS中5質量%のウシゼラチンと交換され、アレイが遠心分離された。次いでアレイは37℃で10分間培養され、過剰のゼラチンが吸引され、次いで細胞ラフト内でゼラチンを固化するために4℃で5分間培養された。冷たい(4℃)培養培地がアレイ上に重ねられた。次いで、1又はそれ以上のゲルカプセル化細胞を有する細胞ラフトは、上に被せられた磁気ワンドによって容易に捕捉され、アレイ上の培地の中に浸された。次いで、捕捉された細胞ラフトを有するワンドは、細胞ラフトをウェルの底部まで引き下げるためプレートの下の磁石によって促進された、96ウェルプレートのウェル内に配置された。
【0136】
CD8
+ T細胞を含み、高い割合の標的細胞の死を示す細胞ラフトが、ニードル解放装置を用いて個々にアレイから解放された。次いで、解放されたラフトが、コンピュータ制御3軸モータに取り付けられた磁気ワンドによって捕集され、
図1を参照して上述したのと同様の方法で96マイクロウェルプレートに置かれた。顕微鏡に結合されたニードル解放装置を用いて、高活性CD8
+ T細胞を有する細胞ラフトは、フィーダー細胞を含む96ウェルプレートのウェルに移された。3つの分類されたT細胞がクローン増殖された。3つ全てのクローンが、M1p/HLA
* 02:01四量体に対する高結合活性(avidity)T細胞受容体を発現した。
【0137】
この方法は、選択された標的細胞に対して細胞毒性であることが知られているクローン中のT細胞受容体(TCR)の配列を決定するために使用することができ、そのデータは免疫療法の開発に使用され得る。TCRは、TCRβ鎖と対になったTCRα鎖とからなるヘテロ二量体タンパク質複合体として存在し、これらはT細胞の表面に発現している。対になった鎖は、この場合はM1p/HLA* 02:01複合体である、標的ペプチド/MHCに高い親和性で結合する。標的ペプチド/MHCとの相互作用の特異性を付与するTCRα及びTCRβ鎖の部分はCDR3領域として知られている。TCRα及びTCRβ鎖のCDR3領域並びに隣接するV及びJセグメントが知られている場合、全長(full-length)トランスジェニックTCR構築物(construct)を作製し、標的ペプチド/MHCに対するそれらの特異性を変えるために初代ヒトT細胞にトランスフェクトすることができる。このアプローチは、癌特異的ペプチド/MHC複合体を標的とするTCRα及びTCRβ鎖配列を含むトランスジェニックTCRで、癌患者のT細胞が形質導入(transduce)されることができる癌免疫療法において広い用途を有する可能性がある。非常に短い時間スケールで少数のエフェクターT細胞の活性を決定する能力はまた、T細胞療法が臨床使用のために開発されているように、免疫モニタリングにも使用され得る。そのようなアッセイは、初期のT細胞療法研究において観察されてきたオフターゲット細胞毒性の危険性を減少させるために、複数の抗原に対する抗原特異性についてT細胞培養物をスクリーニングするために使用され得る。さらに、アレイの幾何学的形状の改変は、まれな細胞毒性T細胞を識別するために容易に改変され得、これは、希少な腫瘍抗原特異的CD8+ T細胞の識別及びその後のクローニングを可能にし得る。その代わりに、この種のアッセイは、T細胞を介した細胞毒性に対する標的細胞の耐性を調査する研究、又はT細胞の活性を調節する薬物候補のスクリーニングなどの、同時に相互作用する複数の細胞集団の影響を調べるために使用できる。
【0138】
プロセッサ、アクチュエータ、カメラ、モータ、磁石、及び他の構成要素、並びに実行可能なコードは、本発明の実施形態を実行するための様々な手段を形成することができる。いくつかの実施形態では、DSP、マイクロコントローラ、又はマイクロプロセッサなどの汎用プロセッサが使用され、非一時的ファームウェア、ソフトウェア、又はマイクロコードは、システムに関連付けられた有形の記憶装置に記憶することができる。パーソナルコンピュータ、モバイルコンピュータ、又は埋め込み型コントローラベースのシステムなどの内蔵型コンピュータが他のハードウェアに接続されることができる。任意のそのような機能は、本明細書では「プロセッサ」又は「マイクロプロセッサ」と呼ばれることがある。記憶装置は、プロセッサに統合されたメモリ、又は制御機能を実行するためにコントローラ又はプロセッサによってアドレス指定されるメモリチップとすることができる。そのようなファームウェア、ソフトウェア又はマイクロコードはプロセッサによって実行可能であり、実行されるとプロセッサにその制御機能を実行させる。そのようなファームウェア又はソフトウェアはまた、細胞分離システムに接続されているか又はその中にある光ディスク又は従来の取り外し可能若しくはディスクドライブなどの固定磁気メディアなどのデバイス内又はデバイス上に記憶することもできる。
【0139】
本発明の任意の実施形態のための命令の実行をサポートするのに必要な任意のソフトウェア並びに任意のデータ及び情報は、開発目的又は保守及び更新目的のために取り外し可能記憶メディアに置くことができることに留意されたい。そのような記憶装置は、直接又はインターネットを含むネットワークを介してアクセスされることができる。
【0140】
本明細書で特定の実施形態を図示し説明されたが、当業者は、同じ目的を達成するために考えられる任意の構成が示された特定の実施形態に置換され得ること、及び本発明は他の環境で他の用途を有することが理解されよう。本出願は、本発明のあらゆる適応形態又は変形形態を網羅することを意図している。添付の特許請求の範囲は、決して本発明の範囲を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロウェルアレイから細胞ラフトを解放するためのシステムであって、
複数の細胞ラフトを含むマイクロウェルアレイの画像を取得するように構成された撮像装置;
前記マイクロウェルアレイから細胞ラフトを解放するように構成されたアクチュエータ;及び、
前記撮像装置及び前記アクチュエータに結合され、少なくとも1つのプロセッサとメモリとを備えるコンピュータシステム、を含み:
前記コンピュータシステムは:
前記撮像装置を用いて自動的なアレイスキャンを実行することによって前記マイクロウェルアレイの複数の画像を取得し;
前記マイクロウェルアレイの前記複数の画像の自動的な定量的画像処理を実行することによって、前記複数の細胞ラフトの中から選択された細胞ラフトを識別し、ここで前記選択された細胞ラフトは、前記自動的な定量的画像処理からの選択基準に一致するものに基づいており、;及び、
前記マイクロウェルアレイから前記選択された細胞ラフトを解放するように前記アクチュエータを制御すること、
により、画像化及び細胞ラフトの解放を自動で行うようプログラムされているシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記撮像装置若しくは前記マイクロウェルアレイ、又はその両方を移動させるように構成された1又はそれ以上のモータを含み、
前記自動的なアレイスキャンを実行することは:
前記マイクロウェルアレイを複数の視野に分割して前記視野が複数の前記細胞ラフトのそれぞれを一括して含むようにし;及び、
各視野に対し、前記マイクロウェルアレイの前記視野に前記撮像装置を向けるように前記1又はそれ以上のモータを制御し、前記視野でそれぞれの画像を取得するように前記撮像装置を制御する、
によってアレイスキャンを実行することを含む、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、
前記撮像装置のための顕微鏡対物レンズを含み、
前記マイクロウェルアレイの複数の画像を取得することは、各視野について、少なくとも1つの隣接する視野からの1又はそれ以上の焦点位置を用いて前記顕微鏡対物レンズをオートフォーカスすることを含む、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、
前記顕微鏡対物レンズをオートフォーカスすることは、複数のサンプル焦点位置で複数のサンプル画像をサンプリングすることと、前記サンプル画像のフォーカススコアから現在の焦点位置を補間することとを含む、システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記選択された細胞ラフトを識別することは、各細胞ラフトについて、前記細胞ラフトのサブ画像に描かれた細胞の数をカウントすることと、単一の分離された細胞を収容する少なくとも1つの単一細胞ラフトを識別することとを含む、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、
サブ画像に描かれた細胞の前記数をカウントすることは、二値画像を作成するために前記サブ画像に強度閾値を適用すること、前記二値画像中の固有のオブジェクトを識別すること、及び、識別された固有のオブジェクトの前記数をカウントすることを含む、システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のシステムであって、
前記単一細胞ラフトを識別することは、前記単一細胞ラフトが前記単一の分離された細胞を収容するという決定における信頼度を示す信頼度スコアを決定することを含む、システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記選択された細胞ラフトを識別することは、各細胞ラフトについて、前記細胞ラフトのサブ画像に描かれたマーカを検出することと、前記マーカの検出に基づいて前記細胞ラフトをゲーティングすることとを含む、システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記選択された細胞ラフトを識別することは、前記選択された細胞ラフトを収集プレートのマッピングされた位置に割り当てることを含む、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、
機械的細胞ラフトコレクタを備え、
前記コンピュータシステムは、前記マイクロウェルアレイからの解放後に前記機械的細胞ラフトコレクタを制御して前記選択された細胞ラフトを収集し、及び、前記機械的細胞ラフトコレクタを制御して前記収集プレートの前記マッピングされた位置に、前記選択された細胞ラフトを置くよう構成されている、システム。
【請求項11】
細胞を収集するコンピュータ実施方法であって、
複数のラフトを含むマイクロウェルアレイに関する情報を、自動化されたコンピュータシステムの記憶装置に記憶し、ここで、撮像装置を用いて自動的なアレイスキャンを実行して前記マイクロウェルアレイの複数の画像を取得することを含み;
前記自動化されたコンピュータシステムのプロセッサを使用して画像解析を実行し、及び、その情報を使用して前記複数のラフトの中から細胞ラフトを識別し、ここで、前記マイクロウェルアレイの複数の画像の自動的な定量的画像処理を実行することによって、前記複数の細胞ラフトの中から前記細胞ラフトを識別し、ここで前記細胞ラフトは、前記自動的な定量的画像処理からの選択基準に一致するものに基づいており;及び
前記プロセッサとアクチュエータとを用いて前記マイクロウェルアレイから前記細胞ラフトを解放する:ことを含む、コンピュータ実施方法。
【請求項12】
前記マイクロウェルアレイに関する前記情報を記憶することは、さらに、
前記マイクロウェルアレイのサイズを識別して記憶し;
前記マイクロウェルアレイに対する最適な焦点位置及び最適な露光を識別して記憶し;
プロセッサを用いて前記マイクロウェルアレイをセクショニングし、及び一組のマイクロウェルを視野と一致させるのに必要な移動を記憶することを含む、請求項11に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項13】
前記マイクロウェルアレイ内の複数のマイクロウェルの各々に対するアドレスを決定することと、前記アクチュエータのオフセットを計算して記憶することとをさらに含む、請求項12に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項14】
さらに、前記マイクロウェルアレイを複数の視野に分割して前記視野が前記複数の細胞ラフトのそれぞれを一括して含むようにし、
各視野に対し、前記マイクロウェルアレイの視野に前記撮像装置を向けるように1又はそれ以上のモータを制御し、その視野で各画像を取得するように撮像装置を制御することによって、アレイスキャンを実行することを含む、請求項12に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項15】
前記各視野について、少なくとも1つの隣接する視野からの1又はそれ以上の焦点位置を用いて顕微鏡対物レンズをオートフォーカスすることを含む、請求項14に記載のコンピュータ実施方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
【
図1B】細胞を収集するための例示的なシステムを示す図である。
【
図1C】細胞を収集するための例示的なシステムを示す図である。
【
図2A】細胞を収集するための例示的な装置の等角図である。
【
図3A】細胞を収集するための例示的な方法を示す図である。
【
図3B】細胞を収集するための例示的な方法を示す図である。
【
図4A】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図4B】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図4C】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図4D】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図4E】本発明の例示的な実施形態に従うシステムのための、ユーザ入力、グラフィカルユーザインターフェース機能、ハードウェア、及びソフトウェア間の相互作用を示すワークフローを示す図である。
【
図5】マイクロウェルアレイのアレイ位置及び種類を決定するための例示的な方法のフローを示す図である。
【
図6】マイクロウェルアレイをナビゲーション(navigating)するための例示的な方法のフローを示す図である。
【
図7A】マイクロウェルアレイの視野上に顕微鏡レンズをオートフォーカスするための例示的な方法を示す図である。
【
図7B】マイクロウェルアレイの視野上に顕微鏡レンズをオートフォーカスするための例示的な方法を示す図である。
【
図7C】マイクロウェルアレイの視野上に顕微鏡レンズをオートフォーカスするための例示的な方法を示す図である。
【
図8】マイクロウェルアレイ中の単一細胞ラフトを識別するための方法例のフローを示す図である。
【
図9】細胞ラフトを選択し、収集プレートをマッピングするためのグラフィカルユーザインターフェースの例示的画面のスクリーンショットを示す図である。
【
図10】グラフィカルユーザインターフェースの別の例示的画面のスクリーンショットを示す図である。