(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116372
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】電気透析槽および電気透析装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/469 20060101AFI20220803BHJP
B01D 61/46 20060101ALI20220803BHJP
B01D 61/54 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/46
B01D61/46 510
B01D61/54 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019110580
(22)【出願日】2019-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】390005407
【氏名又は名称】AGCエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】青木 亮之
(72)【発明者】
【氏名】戸田 洋
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA17
4D006HA47
4D006JA08A
4D006JA08C
4D006JA33A
4D006JA42A
4D006JA43A
4D006JA44A
4D006JA53Z
4D006JA59A
4D006JA67Z
4D006KA01
4D006KA16
4D006KA45
4D006MA03
4D006MA13
4D006MA14
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB05
4D006PB08
4D061DA02
4D061DA08
4D061DB13
4D061DB18
4D061EA09
4D061EB01
4D061EB05
4D061EB13
4D061EB19
4D061EB20
4D061FA13
(57)【要約】
【課題】処理液の滞留に起因する不具合が生じにくい電気透析槽を提供する。
【解決手段】本発明の電気透析槽は、陽極および陰極と、陽極と陰極との間に複数交互に設けられた陽イオン交換膜と陰イオン交換膜と、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との間隔を保持し、額縁状の枠の内部に1つ以上の空間を有する、濃縮室枠および脱塩室枠と、を備え、濃縮室枠は、内部に濃縮処理液を流動させる濃縮室を有し、脱塩室枠は、内部に脱塩処理液を流動させる脱塩室を有する電気透析槽であって、濃縮室は、上流側濃縮室と下流側濃縮室とを有し、脱塩室は、上流側脱塩室と下流側脱塩室とを有し、濃縮室に供給された濃縮処理液は、バイパス濃縮流路を経由して上流側濃縮室から下流側濃縮室に供給され、脱塩室に供給された脱塩処理液は、バイパス脱塩流路を経由して上流側濃縮室から下流側脱塩室に供給される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極および陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に複数交互に設けられた陽イオン交換膜と陰イオン交換膜と、
前記陽イオン交換膜と前記陰イオン交換膜との間に設けられ、前記陽イオン交換膜と前記陰イオン交換膜との間隔を保持し、額縁状の枠の内部に1つ以上の空間を有する、濃縮室枠および脱塩室枠と、を備え、
前記濃縮室枠は、前記陰イオン交換膜の前記陽極の側に設けられ、
前記脱塩室枠は、前記陰イオン交換膜の前記陰極の側に設けられ、
前記濃縮室枠は、内部に濃縮処理液を流動させる濃縮室を有し、
前記脱塩室枠は、内部に脱塩処理液を流動させる脱塩室を有する電気透析槽であって、
前記濃縮室は、上流側濃縮室と下流側濃縮室とを有し、
前記脱塩室は、上流側脱塩室と下流側脱塩室とを有し、
前記濃縮室に供給された前記濃縮処理液は、バイパス濃縮流路を経由して前記上流側濃縮室から前記下流側濃縮室に供給され、
前記脱塩室に供給された前記脱塩処理液は、バイパス脱塩流路を経由して前記上流側濃縮室から前記下流側脱塩室に供給されることを特徴とする、電気透析槽。
【請求項2】
前記上流側濃縮室と下流側濃縮室とにおいて前記濃縮処理液が互いに同じ向きに流動し、
前記上流側脱塩室と下流側脱塩室とにおいて前記脱塩処理液が互いに同じ向きに流動する、請求項1に記載の電気透析槽。
【請求項3】
前記上流側濃縮室と下流側濃縮室とにおいて前記濃縮処理液が互いに逆向きに流動し、
前記上流側脱塩室と下流側脱塩室とにおいて前記脱塩処理液が互いに逆向きに流動する、請求項1に記載の電気透析槽。
【請求項4】
前記陽極は、複数の分割陽極に分割され、
前記陰極は、複数の分割陰極に分割され、
前記複数の分割陽極の各々および前記複数の分割陽極の各々は、前記上流側濃縮室、前記下流側濃縮室、前記上流側脱塩室、および前記下流側脱塩室の各々に対応して設けられている、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気透析槽。
【請求項5】
前記バイパス濃縮流路および前記バイパス脱塩流路のうちの少なくとも一方は、前記濃縮処理液または前記脱塩処理液の流動に伴って前記濃縮処理液または前記脱塩処理液を撹拌させる撹拌機構を有する、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電気透析槽。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電気透析槽と、
前記陽極と前記陰極とに電力を供給する電源と、
前記濃縮処理液と前記脱塩処理液を前記電気透析槽に供給するとともに、前記電気透析槽から排出する送液装置と、
を備えた、電気透析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気透析槽および電気透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中に含まれる塩(イオン性物質)を電気透析によって分離し、液体の塩濃度を低減する装置、いわゆる脱塩装置が従来から知られている。この種の装置には、正極と負極とからなる一対の電極と、一対の電極間に交互に配置された陽イオン交換膜および陰イオン交換膜と、を備えた電気透析槽が用いられる。
【0003】
下記の特許文献1には、一対の電極と、一対の電極間に設けられた陽イオン交換膜および陰イオン交換膜と、電極とイオン交換膜との間、およびイオン交換膜同士の間を分離する複数のスペーサーと、を備えた電気透析集合体が開示されている。この電気透析集合体において、スペーサーは曲がりくねった流路を有しており、電解質溶液が流路内を流れる間に、溶液中のイオンが各イオン交換膜を介して一つのスペーサーの流路から他のスペーサーの流路へと移動する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気透析槽を脱塩装置に用いる場合、1枚のスペーサーにおける流路の長さが長い程、処理液とイオン交換膜との接触時間が長くなる。これにより、処理液からの塩の除去率を高くできる。そこで、限られた大きさの電気透析槽内で流路を長くするための手段として、特許文献1のように、スペーサーに曲がりくねった流路を設ける構成が従来から提案されている。
【0006】
ところが、スペーサーに曲がりくねった流路を設けた場合、処理液の流速分布が流路内で不均一になり、特定の個所で処理液が滞留しやすくなる。処理液が流路内で滞留すると、スケールが析出する場合がある。その結果、スケールの析出により流路が狭まることによって処理効率が低下する、析出量が多い場合に流路の詰まりが発生する、等の不具合が生じるおそれがあった。
【0007】
本発明の一つの態様は、装置の大型化を抑えつつ処理効率を高めることができ、流路内での処理液の滞留に伴う不具合が生じにくい電気透析槽の提供を目的の一つとする。また、本発明の一つの態様は、前記の電気透析槽を備え、処理効率に優れた電気透析装置の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様の電気透析槽は、陽極および陰極と、前記陽極と前記陰極との間に複数交互に設けられた陽イオン交換膜と陰イオン交換膜と、前記陽イオン交換膜と前記陰イオン交換膜との間に設けられ、前記陽イオン交換膜と前記陰イオン交換膜との間隔を保持し、額縁状の枠の内部に1つ以上の空間を有する、濃縮室枠および脱塩室枠と、を備え、前記濃縮室枠は、前記陰イオン交換膜の前記陽極の側に設けられ、前記脱塩室枠は、前記陰イオン交換膜の前記陰極の側に設けられ、前記濃縮室枠は、内部に濃縮処理液を流動させる濃縮室を有し、前記脱塩室枠は、内部に脱塩処理液を流動させる脱塩室を有する電気透析槽であって、前記濃縮室は、上流側濃縮室と下流側濃縮室とを有し、前記脱塩室は、上流側脱塩室と下流側脱塩室とを有し、前記濃縮室に供給された前記濃縮処理液は、バイパス濃縮流路を経由して前記上流側濃縮室から前記下流側濃縮室に供給され、前記脱塩室に供給された前記脱塩処理液は、バイパス脱塩流路を経由して前記上流側濃縮室から前記下流側脱塩室に供給されることを特徴とする。
【0009】
本発明の一つの態様の電気透析槽においては、前記上流側濃縮室と下流側濃縮室とにおいて前記濃縮処理液が互いに同じ向きに流動し、前記上流側脱塩室と下流側脱塩室とにおいて前記脱塩処理液が互いに同じ向きに流動してもよい。
【0010】
本発明の一つの態様の電気透析槽においては、前記上流側濃縮室と下流側濃縮室とにおいて前記濃縮処理液が互いに逆向きに流動し、前記上流側脱塩室と下流側脱塩室とにおいて前記脱塩処理液が互いに逆向きに流動してもよい。
【0011】
本発明の一つの態様の電気透析槽において、前記陽極は、複数の分割陽極に分割され、前記陰極は、複数の分割陰極に分割され、前記複数の分割陽極の各々および前記複数の分割陽極の各々は、前記上流側濃縮室、前記下流側濃縮室、前記上流側脱塩室、および前記下流側脱塩室の各々に対応して設けられていてもよい。
【0012】
本発明の一つの態様の電気透析槽において、前記バイパス濃縮流路および前記バイパス脱塩流路のうちの少なくとも一方は、前記濃縮処理液または前記脱塩処理液の流動に伴って前記濃縮処理液または前記脱塩処理液を撹拌させる撹拌機構を有していてもよい。
【0013】
本発明の一つの態様の電気透析装置は、本発明の一つの態様の電気透析槽と、前記陽極と前記陰極とに電力を供給する電源と、前記濃縮処理液と前記脱塩処理液を前記電気透析槽に供給するとともに、前記電気透析槽から排出する送液装置と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの態様によれば、装置を大型化することなく、処理効率を高めることができ、処理液の滞留に起因する不具合が生じにくい電気透析槽を提供できる。また、本発明の一つの態様によれば、電気透析槽を備え、処理効率に優れた電気透析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図6】第2実施形態の電気透析槽における濃縮室枠の平面図である。
【
図7】第2実施形態の変形例の濃縮室枠の平面図である。
【
図8】第3実施形態の電気透析槽における濃縮室枠および陽極の平面図である。
【
図10】第4実施形態の変形例の電気透析槽の斜視図である。
【
図11】第5実施形態の電気透析装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1~
図5を用いて説明する。
図1は、第1実施形態の電気透析槽の斜視図である。
以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0017】
本実施形態の電気透析槽は、例えば地下水や廃水からの脱塩処理液体の濃縮処理液体からの塩の生成、淡水の生成などの種々の用途に用いられる。本明細書において、電気透析槽における処理の対象となる液体を「処理液」と称する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の電気透析槽10は、処理液の電気透析を行う電気透析槽本体11と、バイパス濃縮管12(バイパス濃縮流路)およびバイパス脱塩管13(バイパス脱塩流路)と、を備えている。バイパス濃縮管12およびバイパス脱塩管13は、電気透析槽本体11内の処理液を電気透析槽本体11の外部を通して流すためのバイパス配管である。バイパス濃縮管12およびバイパス脱塩管13は、電気透析槽本体11に接続されている。なお、本実施形態では、バイパス濃縮流路またはバイパス脱塩流路として配管が用いられているが、必ずしも配管に限ることなく、処理液を流すことが可能な流路が設けられた任意の部材が用いられてもよい。
【0019】
本実施形態においては、塩を含む処理液からの脱塩に電気透析槽10を用いる場合を例に挙げて説明する。したがって、処理液中には、塩が電離したナトリウムイオン(Na+)および塩素イオン(Cl-)が含まれている。本明細書において、「脱塩」は、処理液中に含まれるイオンの濃度を完全にゼロにすることのみを意味するのではなく、処理液中に含まれるイオンの濃度を処理前よりも低下させる操作全般を意味する。
【0020】
電気透析槽10には、塩を含む処理液を電気透析槽本体11に供給するための第1処理液供給管15および第2処理液供給管16が接続されている。また、電気透析槽10には、脱塩処理後に塩濃度が低下した液体を電気透析槽本体11から排出する脱塩処理液排出管17と、脱塩処理後に塩濃度が上昇した液体を電気透析槽本体11から排出する濃縮処理液排出管18と、が接続されている。以下の説明においては、脱塩処理後に塩濃度が低下した液体を「脱塩処理液」と称し、塩濃度が上昇した液体を「濃縮処理液」と称する。
【0021】
図2は、電気透析槽本体11の分解斜視図である。
図2に示すように、電気透析槽本体11は、第1支持板21と、陽極22と、複数の陽イオン交換膜23(第1イオン交換膜)と、複数の陰イオン交換膜24(第2イオン交換膜)と、複数の濃縮室枠25と、複数の脱塩室枠26と、陰極27と、第2支持板28と、を備えている。
【0022】
電気透析槽10は、陽極22および陰極27と、陽極22と陰極27との間に複数交互に設けられた陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24と、陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24との間に設けられ、陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24との間隔を保持し、内部に額縁状に空間を有する、濃縮室枠25および脱塩室枠26と、を備える。濃縮室枠25は、陰イオン交換膜24の陽極22の側に設けられ、脱塩室枠26は、陰イオン交換膜24の陰極27の側に設けられている。また、濃縮室枠25は、内部に濃縮処理液を流動させる濃縮室を有し、脱塩室枠26は、内部に脱塩処理液を流動させる脱塩室を有する。
【0023】
陽極22と陰極27とは、複数の陽イオン交換膜23、複数の陰イオン交換膜24、複数の濃縮室枠25、および複数の脱塩室枠26を間に挟んで配置されている。陽極22と陰極27とには、図示しない直流電源が接続され、直流電源から電流が供給される。本実施形態において、陽極22および陰極27には、陽極22が正の極性となり、陰極27が負の極性となる方向に電流が供給される。陽極22および陰極27は、例えば耐食性に優れたチタン白金電極から構成されている。
【0024】
複数の陽イオン交換膜23は、陽極22と陰極27との間に設けられ、処理液中の陽イオン(第1極性イオン)を透過させる。陽イオン交換膜23は、負電荷を帯びたスルフォン酸等のイオン交換基が固定された有機高分子材料で構成されている。
【0025】
複数の陰イオン交換膜24は、陽極22と陰極27との間に設けられ、処理液中の陰イオン(第2極性イオン)を透過させる。陰イオン交換膜24は、正電荷を帯びた4級アンモニウム等のイオン交換基が固定された有機高分子材料で構成されている。
【0026】
陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24とは、陽極22と陰極27とが対向する方向に沿って、互いに所定の間隔をおいて交互に配置されている。陽イオン交換膜23および陰イオン交換膜24として、グラフト重合法を用いて製造されたグラフト膜が用いられてもよい。グラフト膜を用いることにより、イオン交換膜の電気透析性能を高めることができる。
【0027】
複数の濃縮室枠25と複数の脱塩室枠26とは、陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24との間に設けられ、陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24との間隔を保持する。これにより、陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24とは互いに接触することなく、陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24との間に、各濃縮室枠25および各脱塩室枠26の板厚に応じた容量を有する空間が形成される。濃縮室枠25および脱塩室枠26は、ポリプロピレン等の樹脂材料から構成されている。
【0028】
濃縮室枠25は、陰イオン交換膜24の第1面24a(
図2における上面)に対向する陽イオン交換膜23と第1面24aとの間に設けられている。脱塩室枠26は、陰イオン交換膜24の第2面24b(
図2における下面)に対向する陽イオン交換膜23と第2面24bとの間に設けられている。
図2の上方から下方に向けて配置された陽イオン交換膜23、濃縮室枠25、陰イオン交換膜24、および脱塩室枠26を1組の積層体30とした場合、
図2では1組の積層体30のみを示しているが、実際には複数組の積層体30が繰り返し積層された構成となっている。積層体30の組数は、所望とする処理能力に合わせて適宜設定されればよく、特に限定されない。
【0029】
濃縮室枠25は、陽極22に最も近い側(
図2における最上層)に位置する陽イオン交換膜23と陽極22との間、および陰極27に最も近い側(
図2における最下層)に位置する陽イオン交換膜23と陰極27との間に設けられている。これにより、陽イオン交換膜23と陽極22または陰極27とは互いに接触することなく、陽イオン交換膜23と陽極22または陰極27との間に所定の容量を有する空間が形成される。
【0030】
第1支持板21は、陽極22、複数の陽イオン交換膜23、複数の陰イオン交換膜24、複数の濃縮室枠25、複数の脱塩室枠26、および陰極27を含む積層体31を陽極22の側から支持する。第2支持板28は、陽極22、複数の陽イオン交換膜23、複数の陰イオン交換膜24、複数の濃縮室枠25、複数の脱塩室枠26、および陰極27を含む積層体31を陰極27の側から支持する。
【0031】
第1支持板21と第2支持板28とは、ネジ、ボルトおよびナット等の固定手段(図示略)により互いに固定される。これにより、陽極22、複数の陽イオン交換膜23、複数の陰イオン交換膜24、複数の濃縮室枠25、複数の脱塩室枠26、および陰極27を含む積層体31は、第1支持板21および第2支持板28によって所定の圧力で挟み込まれた状態で固定される。第1支持板21および第2支持板28は、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料から構成されている。
【0032】
第1支持板21は、後述する各配管を構成するホースが接続可能とされた4つの処理液排出口33,34,35,36を有している。第2支持板28は、後述する各配管を構成するホースが接続可能とされた4つの処理液供給口38,39,40,41を有している。
【0033】
図1に示すように、第1支持板21において、脱塩処理液排出口33に脱塩処理液排出管17が接続され、濃縮処理液排出口34に濃縮処理液排出管18が接続され、脱塩処理液排出口35にバイパス脱塩管13の一端が接続され、濃縮処理液排出口36にバイパス濃縮管12の一端が接続されている。また、第2支持板28においては、濃縮処理液供給口38にバイパス濃縮管12の一端が接続され、脱塩処理液供給口39にバイパス脱塩管13の一端が接続され、第1処理液供給口40に第1処理液供給管15が接続され、第2処理液供給口41に第2処理液供給管16が接続されている。
【0034】
なお、
図2では図示を省略したが、電気透析槽本体11を構成する各部材の間にパッキンが適宜設けられていてもよい。これにより、電気透析槽本体11からの処理液の漏出を抑えることができる。
【0035】
以下、濃縮室枠25および脱塩室枠26の構成について説明する。
図3は、濃縮室枠25の平面図である。
図4は、脱塩室枠26の平面図である。
【0036】
図3に示すように、濃縮室枠25は、板厚方向に貫通する2つの開口部25hを有し、内部に額縁状に空間を有する板材で構成されている。各部材が積層された状態では、濃縮室枠25の開口部は、濃縮室枠25と隣り合う陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24とに囲まれた空間となり、処理液が流動する流路として機能する。このように、濃縮室枠25は、濃縮室枠25内において処理液を流動させる濃縮室43を有する。
【0037】
本実施形態において、濃縮室枠25は、濃縮室43が上流側と下流側とに2分割された2つの濃縮室43A,43Bを有している。各濃縮室43A,43Bの平面形状は、長方形であり、2つの濃縮室43A,43Bは、同一の形状および同一の寸法を有している。このように、濃縮室43A,43Bは、長手方向と短手方向とを有する平面形状を有し、2つの濃縮室43A,43Bは、長手方向が互いに平行に配置されている。
【0038】
各濃縮室43A,43Bの長手方向の寸法L、短手方向の寸法W、および長手方向の寸法と短手方向の寸法との比L/Wは、特に限定されることなく、適宜設定できる。また、濃縮室43A,43Bの平面形状は、長方形に限ることなく、長方形の各角部が斜めに切断された8角形または6角形、長方形の各角部に丸みが設けられた形状、などであってもよい。ただし、処理液が滞留する個所がなるべくできないように、濃縮室43A,43Bの平面形状は、本実施形態の長方形のように、曲線部や屈曲部を持たない直線状にすることが望ましい。
【0039】
以下の説明において、2つの濃縮室43A,43Bのうち、濃縮処理液の流れ方向の上流側にあたる濃縮室を上流側濃縮室43Aと称し、濃縮処理液の流れ方向の下流側にあたる濃縮室を下流側濃縮室43Bと称する。
【0040】
各濃縮室43A,43Bには、複数の線材が格子状に配置された網45が設けられている。網45を構成する線材は、濃縮室枠25を構成する板材と一体であってもよいし、別体であってもよい。上述したように、各濃縮室43A,43Bは開口部25hであるため、各濃縮室43A,43Bの内側に何も設けられていない場合には、例えばイオン交換膜23,24の撓み等によって、陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24との間隔が維持できないおそれがある。これに対し、各濃縮室43A,43Bに網45が設けられた場合、濃縮処理液の流動を妨げることなく、陽イオン交換膜23と陰イオン交換膜24との間隔を維持できる。なお、
図3では、図面を見易くするため、網45の一部のみを図示し、他の部分の図示を省略する。
【0041】
濃縮室枠25には、板厚方向に貫通する8個の孔25a~25eが設けられている。これらの孔25a~25eは、それぞれ第1供給孔25a、第1中間導出孔25b、第1中間導入孔25c、第1排出孔25d、および第1通過孔25eとして機能する。すなわち、濃縮室枠25は、第1供給孔25aと、第1中間導出孔25bと、第1中間導入孔25cと、第1排出孔25dと、4つの第1通過孔25eと、を有する。
【0042】
第1供給孔25aは、第1処理液供給管15に接続され、処理液を電気透析槽本体11の外部から濃縮室43の上流側濃縮室43Aに供給するための孔である。第1中間導出孔25bは、バイパス濃縮管12の一端に接続され、濃縮室43の途中で濃縮処理液をバイパス濃縮管12に導出するための孔である。第1中間導入孔25cは、バイパス濃縮管12の他端に接続され、バイパス濃縮管12からの濃縮処理液を濃縮室43の途中に戻すための孔である。第1排出孔25dは、濃縮処理液排出管18に接続され、濃縮処理液を濃縮室43の下流側濃縮室43Bから電気透析槽本体11の外部に排出するための孔である。4つの第1通過孔25eは、脱塩室枠26内を流動する処理液を通過させるための孔である。
【0043】
以下、各濃縮室において、濃縮処理液の流れ方向の上流側にあたる各濃縮室の端部を第1端部と称し、濃縮処理液の流れ方向の下流側にあたる各濃縮室の端部を第2端部と称する。
【0044】
第1供給孔25aおよび第1通過孔25eは、上流側濃縮室43Aの第1端部43Aaの近傍に設けられている。第1中間導入孔25cおよび第1通過孔25eは、下流側濃縮室43Bの第1端部43Baの近傍に設けられている。第1中間導出孔25bおよび第1通過孔25eは、上流側濃縮室43Aの第2端部43Abの近傍に設けられている。第1排出孔25dおよび第1通過孔25eは、下流側濃縮室43Bの第2端部43Bbの近傍に設けられている。
【0045】
第1供給孔25aと上流側濃縮室43Aの第1端部43Aaとの間に、流入接続部47が設けられている。流入接続部47は、第1供給孔25aと上流側濃縮室43Aとを接続する流路であり、濃縮処理液を第1供給孔25aから上流側濃縮室43Aに誘導できる流路であればよい。したがって、流路の形態や形状は特に限定されない。流路の内部に網が設けられていてもよい。これにより、処理液は、第1供給孔25aから流入接続部47を介して上流側濃縮室43Aに供給される。同様に、第1中間導入孔25cと下流側濃縮室43Bの第1端部との間に、流入接続部47が設けられている。
【0046】
第1中間導出孔25bと上流側濃縮室43Aの第2端部43Abとの間に、流出接続部48が設けられている。流出接続部48は、流入接続部47と同様、第1中間導出孔25bと上流側濃縮室43Aとを接続する流路であり、濃縮処理液を上流側濃縮室43Aから第1中間導出孔25bに誘導できる流路であればよい。したがって、流路の形態や形状は特に限定されない。流路の内部に網が設けられていてもよい。これにより、濃縮処理液は、上流側濃縮室43Aから流出接続部48を介して第1中間導出孔25bに排出される。同様に、第1排出孔25dと下流側濃縮室43Bの第2端部43Bbとの間に、流出接続部48が設けられている。
【0047】
脱塩室枠26を流動する脱塩処理液は、濃縮室枠25を通過するだけであり、濃縮室枠25の濃縮室43内を流動することはない。したがって、第1通過孔25eの個所には、流入接続部47および流出接続部48は設けられていない。
【0048】
このように、濃縮室枠25の上流側濃縮室43Aと下流側濃縮室43Bとは、バイパス濃縮管12を介して接続されている。したがって、濃縮室枠25に供給された濃縮処理液は、上流側濃縮室43Aからバイパス濃縮管12を経由して下流側濃縮室43Bに戻る経路を辿って供給される。
【0049】
図4に示すように、脱塩室枠26の基本構成は、濃縮室枠25と同様であり、各流路および各孔の機能と流入接続部および流出接続部の位置とが濃縮室枠25と異なる。脱塩室枠26は、脱塩室枠26内において脱塩処理液を流動させる脱塩室53を有する。
【0050】
本実施形態において、脱塩室枠26は、脱塩室53が上流側と下流側とに2分割された2つの脱塩室53A,53Bを有している。2つの脱塩室53A,53Bは、脱塩処理液の流れの上流側にあたる上流側脱塩室53A、および脱塩処理液の流れの下流側にあたる下流側脱塩室53Bである。上流側脱塩室53Aと下流側脱塩室53Bとは、各脱塩室53A,53Bの長手方向が互いに平行に配置されている。
【0051】
脱塩室枠26は、第2供給孔26aと、第2中間導出孔26bと、第2中間導入孔26cと、第2排出孔26dと、4つの第2通過孔26eと、をさらに有する。
【0052】
第2供給孔26aは、第2処理液供給管16に接続され、処理液を電気透析槽本体11の外部から脱塩室53の上流側脱塩室53Aに供給するための孔である。第2中間導出孔26bは、バイパス脱塩管13の一端に接続され、脱塩室53の途中で脱塩処理液をバイパス脱塩管13に導出するための孔である。第2中間導入孔26cは、バイパス脱塩管13の他端に接続され、バイパス脱塩管13からの処理液を脱塩室53の途中に戻すための孔である。第2排出孔26dは、脱塩処理液排出管17に接続され、脱塩処理液(処理液)を脱塩室53の下流側脱塩室53Bから電気透析槽本体11の外部に排出するための孔である。第2通過孔26eは、濃縮室枠25内を流動する処理液を通過させるための孔である。
【0053】
第2供給孔26aおよび第2通過孔26eは、上流側脱塩室53Aの第1端部53Aaの近傍に設けられている。第2中間導入孔26cおよび第2通過孔26eは、下流側脱塩室53Bの第1端部53Baの近傍に設けられている。第2中間導出孔26bおよび第2通過孔26eは、上流側脱塩室53Aの第2端部53Abの近傍に設けられている。第2排出孔26dおよび第2通過孔26eは、下流側脱塩室53Bの第2端部53Bbの近傍に設けられている。
【0054】
第2供給孔26aと上流側脱塩室53Aの第1端部53Aaとの間に、流入接続部47が設けられている。第2中間導入孔26cと下流側脱塩室53Bの第1端部53Baとの間に、流入接続部47が設けられている。また、第2中間導出孔26bと上流側脱塩室53Aの第2端部53Abとの間に、流出接続部48が設けられている。第2排出孔26dと下流側脱塩室53Bの第2端部53Bbとの間に、流出接続部48が設けられている。
脱塩室枠26のその他の構成は、濃縮室枠25と同様である。
【0055】
このように、上流側脱塩室53Aと下流側脱塩室53Bとは、バイパス脱塩管13を介して接続されている。したがって、脱塩室枠26に供給された脱塩処理液は、上流側脱塩室53Aからバイパス脱塩管13を経由して下流側脱塩室53Bに戻る経路を辿って供給される。
【0056】
図2に示すように、積層体31を構成する各部材が積層された状態において、濃縮室枠25の第1供給孔25aと脱塩室枠26の第2通過孔26eとは、各室枠25,26における同じ位置に設けられている。濃縮室枠25の第1中間導出孔25bと脱塩室枠26の第2通過孔26eとは、各室枠25,26における同じ位置に設けられている。濃縮室枠25の第1中間導入孔25cと脱塩室枠26の第2通過孔26eとは、各室枠25,26における同じ位置に設けられている。濃縮室枠25の第1排出孔25dと脱塩室枠26の第2通過孔26eとは、各室枠25,26における同じ位置に設けられている。
【0057】
同様に、積層体31を構成する各部材が積層された状態において、脱塩室枠26の第2供給孔26aと濃縮室枠25の第1通過孔25eとは、各室枠25,26における同じ位置に設けられている。脱塩室枠26の第2中間導出孔26bと濃縮室枠25の第1通過孔25eとは、各室枠25,26における同じ位置に設けられている。脱塩室枠26の第2中間導入孔26cと濃縮室枠25の第1通過孔25eとは、各室枠25,26における同じ位置に設けられている。脱塩室枠26の第2排出孔26dと濃縮室枠25の第1通過孔25eとは、各室枠25,26における同じ位置に設けられている。
【0058】
以上の構成により、第1処理液供給管15から電気透析槽10に供給された処理液は、複数の第1供給孔25aを通して複数の濃縮室枠25の濃縮室43を並行して流れ、脱塩処理が行われた後、複数の第1排出孔25dを通して濃縮処理液排出管18から濃縮処理液として排出される。一方、第2処理液供給管16から電気透析槽10に供給された処理液は、複数の第2供給孔26aを通して複数の脱塩室枠26の脱塩室53を並行して流れ、脱塩処理が行われた後、複数の第2排出孔26dを通して脱塩処理液排出管17から脱塩処理液として排出される。このように、濃縮室枠25を流動する濃縮処理液の流路と脱塩室枠26を流動する脱塩処理液の流路とは独立しているため、濃縮室枠25を流動する濃縮処理液と脱塩室枠26を流動する脱塩処理液とが混ざり合うことがない。
【0059】
以下、電気透析を用いた脱塩処理の原理について説明する。
図5は、電気透析の原理を説明するための図である。
【0060】
図5に示すように、陽極22の側(
図5の左側)に陽イオン交換膜23が配置され、陰極27の側(
図5の右側)に陰イオン交換膜24が配置された流路が濃縮室43である。陽極22の側(
図5の左側)に陰イオン交換膜24が配置され、陰極27の側(
図5の右側)に陽イオン交換膜23が配置された流路が脱塩室53である。
【0061】
電源55から電気透析槽10の陽極22および陰極27に直流電流が供給されることにより、陽極22が正の極性を有し、陰極27が負の極性を有している。このとき、電気透析槽10に塩を含む処理液Sを供給すると、陽イオン(ナトリウムイオン)は陰極27に向けて移動し、陰イオン(塩素イオン)は陽極22に向けて移動しようとする。
【0062】
ここで、陽極22の側に陽イオン交換膜23が配置され、陰極27の側に陰イオン交換膜24が配置された中央の濃縮室43には、右隣の脱塩室53内の陰イオンが陰イオン交換膜24を透過して移動してくる。ところが、濃縮室43は、左隣の脱塩室53と陽イオン交換膜23で仕切られているため、移動してきた陰イオンは、陽イオン交換膜23を透過することはできず、濃縮室43内に留まる。また、濃縮室43には、左隣の脱塩室53の陽イオンが陽イオン交換膜23を透過して移動してくる。ところが、濃縮室43は右隣の脱塩室53と陰イオン交換膜24で仕切られているため、移動してきた陽イオンは、陰イオン交換膜24を透過することはできず、濃縮室43内に留まる。
【0063】
その結果、濃縮室43ではイオン濃度(塩濃度)の高い処理液(濃縮処理液)が生成され、脱塩室53ではイオン濃度(塩濃度)の低い処理液(脱塩処理液)が生成される。このように、脱塩室53から脱塩処理液を取り出すことができるため、電気透析槽10を用いて処理液Sの脱塩処理を行うことができる。一方、濃縮室43から濃縮処理液を取り出すことにより、電気透析槽10を処理液の濃縮、製塩等の用途にも利用できる。
【0064】
上述したように、曲がりくねった流路を備えた従来の電気透析槽の場合、流路内の処理液の流速分布が不均一になり、処理液が滞留してスケールが発生するという問題があった。本発明者らは、スケールの発生原因について詳細に検討したところ、処理液の滞留により各種イオンの濃度分布が不均一になる結果、水の解離が促進され、その後、水分中の水酸化物イオン(OH-)とカルシウムイオン(Ca2+)とが結合し、水酸化カルシウム等を含むスケールが発生する、と推察した。電気透析槽においては、多くのスペーサーが積層されて槽全体の流路が構成されているため、スペーサー毎のイオン濃度分布の差が積算され、槽全体ではイオン濃度分布の差がより大きくなるため、上記の現象がより顕著に現れる。
【0065】
本実施形態の電気透析槽10においては、濃縮室枠25に設けられた濃縮室43が上流側濃縮室43Aと下流側濃縮室43Bとに分割され、脱塩室枠26に設けられた脱塩室53が上流側脱塩室53Aと下流側脱塩室53Bに分割されている。そのため、脱塩に寄与する流路長を、各室を分割しなかった場合の約2倍に長くすることができる。これにより、各室枠25,26の面積を大きくすることなく、処理効率を高めることができる。また、上流側濃縮室43A、下流側濃縮室43B、上流側脱塩室53A、および下流側脱塩室53Bのそれぞれの平面形状は長方形状であり、かつ、直線的に延在しているため、各処理液の滞留が起こりにくい。
【0066】
さらに、本実施形態の電気透析槽10は、各室枠25,26の濃縮室43および脱塩室53に供給された濃縮処理液および脱塩処理液が電気透析槽本体11の外部に導出され、バイパス濃縮管12またはバイパス脱塩管13を経由して各室枠25,26の濃縮室43および脱塩室53に再度戻る構成を有する。この構成によれば、各処理液は、電気透析槽本体11の外部に一旦出て、バイパス濃縮管12またはバイパス脱塩管13を流れている間に撹拌され、イオン濃度が均一化された状態となって各室枠25,26の濃縮室43および脱塩室53の下流側濃縮室43Bおよび下流側脱塩室53Bに戻ってくる。
【0067】
このように、本実施形態の電気透析槽10を使用した場合、流路における処理液の滞留が起こりにくく、処理液中のイオン濃度が均一化されるため、処理液中の水が解離しにくく、水酸化カルシウム等を含むスケールの発生を抑制できる。したがって、本実施形態によれば、装置を大型化することなく、処理効率を高めることができるとともに、処理液の滞留に伴うスケールの発生等の不具合が生じにくい電気透析槽10を提供できる。
【0068】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、
図6および
図7を用いて説明する。
第2実施形態の電気透析槽の全体構成は第1実施形態と同様であり、各室枠内の構成が第1実施形態と異なる。
図6は、第2実施形態の電気透析槽における濃縮室枠の平面図である。
図6および
図7において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0069】
第1実施形態で説明したように、濃縮室枠と脱塩室枠とは、孔と接続部の位置を除いて同様の構成である。したがって、本実施形態では、濃縮室枠のみについて、第1実施形態と異なる部分を、第1構成例と第2構成例とに分けて説明する。
【0070】
(第1構成例)
図6に示すように、第1構成例の濃縮室枠61は、濃縮室枠61内において処理液を流動させる濃縮室63を有する。濃縮室63は、処理液の流れ方向に3分割された3つの濃縮室63A,63B,63Cを有している。3つの濃縮室63A,63B,63Cは、各濃縮室63A,63B,63Cの長手方向が互いに平行に配置されている。
【0071】
3つの濃縮室63A,63B,63Cのうち、濃縮処理液の流れ方向の最も上流側にあたる濃縮室を上流側濃縮室63Aと称し、処理液の流れ方向の最も下流側にあたる濃縮室を下流側濃縮室63Cと称し、上流側濃縮室63Aと下流側濃縮室63Cとの間に位置する濃縮室を中間濃縮室63Bと称する。
【0072】
濃縮室枠61は、第1供給孔61aと、2つの第1中間導出孔61b,61dと、2つの第1中間導入孔61c,61eと、第1排出孔61fと、6つの第1通過孔61gと、を有する。
【0073】
上流側濃縮室63Aの第1端部63Aaの近傍に、第1供給孔61aと第1通過孔61gとが設けられている。中間濃縮室63Bの第1端部63Baの近傍に、第1中間導入孔61cと第1通過孔61gとが設けられている。下流側濃縮室63Cの第1端部63Caの近傍に、第1中間導入孔61eと第1通過孔61gとが設けられている。上流側濃縮室63Aの第2端部63Abの近傍に、第1通過孔61gと第1中間導出孔61bとが設けられている。中間濃縮室63Bの第2端部63Bbの近傍に、第1通過孔61gと第1中間導出孔61dとが設けられている。下流側濃縮室63Cの第2端部63Cbの近傍に、第1通過孔61gと第1排出孔61fとが設けられている。
【0074】
上記の孔の配置を言い換えると、第1中間導出孔61bと第1中間導入孔61cとは、隣り合う2つの濃縮室63A,63Bの長手方向において互いに異なる側に位置する端部の近傍に設けられている。同様に、第1中間導出孔61dと第1中間導入孔61eとは、隣り合う2つの濃縮室63B,63Cの長手方向において互いに異なる側に位置する端部の近傍に設けられている。
【0075】
第1供給孔61aに、第1処理液供給管15が接続されている。第1排出孔61fに、濃縮処理液排出管18が接続されている。上流側濃縮室63Aの第2端部63Ab近傍の第1中間導出孔61bと、中間濃縮室63Bの第1端部63Ba近傍の第1中間導入孔61cと、の間に1本のバイパス濃縮管12Aが接続されている。中間濃縮室63Bの第2端部63Bb近傍の第1中間導出孔61dと、下流側濃縮室63Cの第1端部63Ca近傍の第1中間導入孔61eと、の間に他の1本のバイパス濃縮管12Bが接続されている。
【0076】
このように、本実施形態の電気透析槽は、濃縮室枠61に対応する2本のバイパス濃縮管12A,12Bを有している。バイパス濃縮管12A,12Bが上記のように接続されたことによって、隣り合う2つの濃縮室63A,63B,63Cにおいて、濃縮処理液が互いに同じ向きに流動する。すなわち、全ての濃縮室63A,63B,63Cで、濃縮処理液が互いに同じ向きに流動する。
【0077】
(第2構成例)
図7に示すように、第2構成例の濃縮室枠71は、第1構成例と同様、上流側濃縮室73A、中間濃縮室73B、および下流側濃縮室73Cからなる濃縮室73を有する。
【0078】
濃縮室枠71において、上流側濃縮室73Aの第1端部73Aaの近傍に、第1供給孔71aと第1通過孔71gとが設けられている。中間濃縮室73Bの第1端部73Baの近傍に、第1中間導入孔71cと第1通過孔71gとが設けられている。下流側濃縮室73Cの第1端部73Caの近傍に、第1中間導入孔71eと第1通過孔71gとが設けられている。上流側濃縮室73Aの第2端部73Abの近傍に、第1通過孔71gと第1中間導出孔71bとが設けられている。中間濃縮室73Bの第2端部73Bbの近傍に、第1通過孔71gと第1中間導出孔71dとが設けられている。下流側濃縮室73Cの第2端部73Cbの近傍に、第1通過孔71gと第1排出孔71fとが設けられている。
【0079】
上記の孔の配置を言い換えると、第1中間導出孔71bと第1中間導入孔71cとは、隣り合う2つの濃縮室73A,73Bの長手方向において互いに同じ側に位置する端部の近傍に設けられている。また、第1中間導出孔71dと第1中間導入孔71eとは、隣り合う2つの濃縮室73B,73Cの長手方向において互いに同じ側に位置する端部の近傍に設けられている。
【0080】
上流側濃縮室73Aの第2端部73Ab近傍の第1中間導出孔71bと、中間濃縮室73Bの第1端部73Ba近傍の第1中間導入孔71cと、の間に1本のバイパス濃縮管12Cが接続されている。中間濃縮室73Bの第2端部73Bb近傍の第1中間導出孔71dと、下流側濃縮室73Cの第1端部73Ca近傍の第1中間導入孔71eと、の間に他の1本のバイパス濃縮管12Dが接続されている。このように、本実施形態の電気透析槽は、濃縮室枠71に対応する2本のバイパス濃縮管12C,12Dを有している。バイパス濃縮管12C,12Dが上記のように接続されたことによって、隣り合う2つの濃縮室73A,73B,73Cにおいて、濃縮処理液が互いに逆向きに流動する。
【0081】
本実施形態の電気透析槽は、第1構成例および第2構成例に共通して、第1実施形態と同様、各濃縮室枠61,71の濃縮室63,73に供給された処理液が電気透析槽本体の外部のバイパス濃縮管12A~12Dを経由して濃縮室63,73に戻る構成を有している。これにより、装置を大型化することなく、処理効率を高められるとともに、処理液の滞留に伴うスケールの発生等の不具合が生じにくい電気透析槽を提供できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
また、第1構成例においては、1つの濃縮室枠61内で隣り合う2つの濃縮室63A,63B,63Cで濃縮処理液が同じ向きに流動するため、濃縮処理液が互いに逆向きに流動する場合に比べて、隣り合う2つの濃縮室63A,63B,63C間での濃縮処理液の圧力差が小さくなる。これにより、第1構成例によれば、隣り合う2つの濃縮室63A,63B,63C間での濃縮処理液の漏れを少なくできるため、脱塩が充分に進まないうちに流れる濃縮処理液の量を減らすことができる。その結果、処理液の脱塩率を高めることができる、といった効果が得られる。
【0083】
また、第2構成例においては、1つの濃縮室枠71内で隣り合う2つの濃縮室73A,73B,73Cの長手方向の同じ側に位置する端部近傍の孔同士をバイパス濃縮管12C,12Dにより接続する構成であるため、第1構成例に比べてバイパス濃縮管12C,12Dの長さを短くできる。同様に、図示しないバイパス脱塩管の長さも短くできる。これにより、電気透析槽の小型化が図れる。また、後述するように、バイパス配管が短くなることでバイパス配管内に保有する処理液の量を少なくできるため、極性転換方式の電気透析槽において極性転換時に生じる廃液の量を低減できる。
【0084】
なお、本実施形態において、各濃縮室枠61,71が4つ以上の濃縮室を有していてもよい。その場合、各濃縮室枠61,71内の4つ以上の濃縮室において、全ての濃縮室で濃縮処理液が同じ向きに流動する構成、または全ての隣り合う2つの濃縮室で濃縮処理液が互いに逆向きに流動する構成に代えて、濃縮処理液が同じ向きに流動する2つの濃縮室と、濃縮処理液が互いに逆向きに流動する2つの濃縮室と、が1つの室枠内に混在する構成であってもよい。
【0085】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、
図8を用いて説明する。
第3実施形態の電気透析槽の全体構成は第1実施形態と同様であり、電極の構成が第1実施形態と異なる。
図8は、第3実施形態の電気透析槽における濃縮室枠と陽極とを示す平面図である。本実施形態においても、各室枠の構成を濃縮室枠で代表して説明し、脱塩室枠の説明を省略する。
図8において、上記実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0086】
図8に示すように、本実施形態の電気透析槽において、濃縮室枠76の構成は第2実施形態と同様である。すなわち、濃縮室枠76は、濃縮室63が濃縮処理液の流れ方向に3分割された上流側濃縮室63A、中間濃縮室63B、および下流側濃縮室63Cの3つの濃縮室を有している。
【0087】
陽極77は、各濃縮室63A,63B,63Cの短手方向に3分割された3つの分割陽極77A,77B,77Cを有している。3つの分割陽極77A,77B,77Cの各々は、3つの濃縮室63A,63B,63Cの各々に対応して設けられている。すなわち、分割陽極77Aは、上流側濃縮室63Aに対応して設けられている。分割陽極77Bは、中間濃縮室63Bに対応して設けられている。分割陽極77Cは、下流側濃縮室63Cに対応して設けられている。
【0088】
各分割陽極77A,77B,77Cの形状は、各濃縮室63A,63B,63Cと同様の長方形である。したがって、濃縮室枠76の法線方向から見て、各分割陽極77A,77B,77Cは、各濃縮室63A,63B,63Cに略重なって配置されている。図示を省略するが、陽極77と同様に、陰極は、濃縮室の短手方向に3分割された3つの分割陰極を有している。3つの分割陰極の各々は、3つの濃縮室の各々に対応して設けられている。
電気透析槽のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0089】
本実施形態においても、装置を大型化することなく、処理効率を高めることができるとともに、処理液の滞留に起因するスケールの発生等の不具合が生じにくい電気透析槽を提供できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
本実施形態の場合、複数の濃縮室63A,63B,63Cの各々に対応して分割陽極77A,77B,77Cが設けられているため、濃縮室63A,63B,63C毎に個別に設定された電圧を供給することができる。
【0091】
一例として、処理液は、上流側濃縮室、中間濃縮室、下流側濃縮室の順で流路内を流れつつ、脱塩が進んでいくため、3つの濃縮室内の濃縮処理液のイオン濃度は順次変化する。したがって、本実施形態の電極構造によれば、濃縮室63A,63B,63C内の濃縮処理液のイオン濃度に応じて最適化された電圧を各分割陽極77A,77B,77Cに供給することにより、処理効率を高めることができる。
【0092】
また、本実施形態の場合、各陽極77が3つの分割陽極77A,77B,77Cに分割されているため、例えば各支持板の分割陽極77A,77B,77Cと接する側の面に、隣り合う2つの分割陽極の間の領域に沿った形状を有するリブを形成することができる。その場合、リブの形成領域は、各室枠の隣り合う2つの濃縮室の間の領域に重なることになる。
【0093】
第1実施形態のように、各電極が分割されていない場合には、このようなリブを設けることができないため、各室枠のうち、隣り合う2つの濃縮室の間の部分を機械的に押さえることは難しい。これに対して、リブが設けられた場合、隣り合う2つの濃縮室の間の部分にリブが当接した状態で、第1支持板と第2支持板とで積層体31(
図2参照)を挟むことができる。これにより、各室枠の隣り合う2つの濃縮室の間の部分は、リブからの圧力によって押し付けられた状態となる。これにより、電気透析槽本体からの処理液の漏れをさらに抑制できるため、処理液の脱塩率を高めることができる。
【0094】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、
図9および
図10を用いて説明する。
第4実施形態の電気透析槽の全体構成は第1実施形態と同様であり、バイパス配管の構成が第1実施形態と異なる。
図9は、第4実施形態の電気透析槽80の斜視図である。
図9は、各バイパス配管81,82の一部を破断した状態を示している。
図9において、上記実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0095】
図9に示すように、本実施形態の電気透析槽80は、電気透析槽本体11と、処理液を循環させるためのバイパス濃縮管81およびバイパス脱塩管82と、を備えている。電気透析槽本体11の構成は、第1実施形態と同様である。
【0096】
バイパス濃縮管81およびバイパス脱塩管82のそれぞれは、各バイパス配管81,82内における各処理液の流動に伴って各処理液を撹拌させる撹拌機構を有している。本構成例では、撹拌機構の一例として、バイパス濃縮管81およびバイパス脱塩管82の各々の内部に、スタティックミキサー83が設けられている。スタティックミキサー83は、例えば長方形の板材が捻られた形状の複数のエレメントが組み合わされた構成を有する。スタティックミキサー83は、駆動されることなく、管内に配置されているだけで各処理液の流れに伴って各処理液を撹拌する効果を発揮する。
電気透析槽のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0097】
本実施形態においても、装置を大型化することなく、処理効率を高めることができるとともに、処理液の滞留に起因するスケールの発生等の不具合が生じにくい電気透析槽80を提供できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
第1~第3実施形態の電気透析槽10において、電気透析槽本体11の内部を流れていた各処理液が単なるホースからなる各バイパス配管に流れ込むだけでも各処理液が撹拌されるため、各処理液中のイオン濃度分布が均一化される効果が得られる。これに対し、本実施形態の電気透析槽80においては、スタティックミキサー83が内蔵されたバイパス濃縮管81およびバイパス脱塩管82が用いられているため、電力を用いることなく、各処理液が各バイパス配管81,82を流れる際の各処理液の撹拌がより促進され、各処理液中のイオン濃度分布の均一性がより高くなる。これにより、スケールの発生を抑制する効果をより高めることができる。
【0099】
(変形例)
本実施形態の電気透析槽は、以下の構成を有していてもよい。
図10は、第4実施形態の変形例の電気透析槽の斜視図である。
【0100】
図10に示すように、本変形例の電気透析槽90は、電気透析槽本体11と、バイパス濃縮管91およびバイパス脱塩管92と、を備えている。バイパス濃縮管91およびバイパス脱塩管92の各々は、各バイパス配管91,92内における各処理液の流動に伴って各処理液を撹拌させる撹拌機構を有している。本変形例では、撹拌機構の一例として、バイパス濃縮管91およびバイパス脱塩管92の各々が、蛇腹ホースで構成されている。
【0101】
本変形例においても、装置を大型化することなく、処理効率を高めることができるとともに、処理液の滞留に起因するスケールの発生等の不具合が生じにくい電気透析槽90を提供できる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0102】
本実施形態の電気透析槽90においては、蛇腹ホースからなるバイパス配管91,92が用いられているため、電力を用いることなく、各処理液がバイパス配管91,92を流れる際の各処理液の撹拌がより促進され、各処理液中のイオン濃度分布の均一性がより高くなる。これにより、スケールの発生を抑制する効果をより高めることができる。
【0103】
上記実施形態と変形例とに共通して、処理液の撹拌効果を高めるには、バイパス配管を構成するホースの内面の摩擦抵抗が高いことが望ましい。具体的には、バイパス配管は、ホースの内面の表面粗さが粗い、ホースの内面に微細な凹凸が形成されている、等の構成を有していてもよい。
【0104】
また、スタティックミキサーまたは蛇腹ホースは、バイパス配管の全体でなく、バイパス配管の一部のみに設置されていてもよい。その場合、スタティックミキサーまたは蛇腹ホースの設置位置は、特に限定されず、特に効果が得られやすい個所に設置することが望ましい。
【0105】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、
図11を用いて説明する。
第5実施形態では、第1~第4実施形態の電気透析槽を備えた電気透析装置の一例について説明する。
図11は、第5実施形態の電気透析装置の概略構成図である。
図11において、上記実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0106】
図11に示すように、本実施形態の電気透析装置100は、電気透析槽101と、電源102と、濃縮処理液タンク103と、第1ポンプ104(送液装置)と、脱塩処理液タンク105と、第2ポンプ106(送液装置)と、濾過器107と、第3ポンプ108と、を備えている。電気透析槽101には、第1~第4実施形態のいずれかの電気透析槽が用いられる。本実施形態では、極性転換を行わない方式の電気透析装置として説明するが、極性転換方式の電気透析装置であってもよい。
【0107】
本実施形態の電気透析装置100は、濃縮処理液タンク103と電気透析槽101との間、および脱塩処理液タンク105と電気透析槽101との間のそれぞれで処理液を循環させつつ、複数回の脱塩処理を繰り返した後、所定のイオン濃度に達した脱塩処理液および濃縮処理液を取り出す構成を有している。このように、電気透析装置100に、処理液を循環させつつ複数回の脱塩処理を繰り返す構成を採用することにより、装置の規模を大きくすることなく、所望の脱塩率を得ることができる。
【0108】
電源102は、電気透析槽101の陽極22および陰極27に接続された直流電源から構成されている。電源102は、陽極22と陰極27とに電気透析に必要な電力を供給する。
【0109】
濃縮処理液タンク103は、電気透析槽101から排出された濃縮処理液を収容する。上述したように、本実施形態の電気透析装置100においては、濃縮処理液タンク103と電気透析槽101との間で処理液を循環させているため、電気透析槽101から排出された濃縮処理液は、電気透析槽101の濃縮処理液が生成される側のスペーサーに再度供給されて、濃縮される。濃縮処理液タンク103には、原液供給管110と、処理液供給管111と、濃縮処理液供給管112と、濃縮処理液排出管113と、が接続されている。
【0110】
第1ポンプ104は、濃縮処理液タンク103と電気透析槽101との間を接続する処理液供給管111の途中に設けられている。第1ポンプ104は、濃縮処理液タンク103と電気透析槽101との間で処理液を循環させる。
【0111】
脱塩処理液タンク105は、電気透析槽101から排出された脱塩処理液を収容する。上述したように、本実施形態の電気透析装置100においては、脱塩処理液タンク105と電気透析槽101との間で処理液を循環させているため、電気透析槽101から排出された脱塩処理液は、電気透析槽101の脱塩処理液が生成される側の脱塩室枠に再度供給されて、脱塩処理される。脱塩処理液タンク105には、原液供給管110と、処理液供給管115と、脱塩処理液供給管116と、脱塩処理液排出管117と、が接続されている。
【0112】
第2ポンプ106は、脱塩処理液タンク105と電気透析槽101との間を接続する処理液供給管115の途中に設けられている。第2ポンプ106は、脱塩処理液タンク105と電気透析槽101との間で処理液を循環させる。第1ポンプ104と第2ポンプ106とは、処理液を電気透析槽101に供給するとともに電気透析槽101から排出する送液装置を構成する。
【0113】
第3ポンプ108は、濃縮処理液タンク103および脱塩処理液タンク105に処理液の原液を供給する原液供給管110の途中に設けられている。第3ポンプ108は、電気透析槽101に供給する処理液の原液を濃縮処理液タンク103および脱塩処理液タンク105に輸送する。
【0114】
濾過器107は、原液供給管110の途中に設けられている。濾過器107は、濃縮処理液タンク103および脱塩処理液タンク105に供給する原液中に含まれる異物を除去する。
【0115】
電気透析装置100は、図示を省略するが、上記の構成要素の他、陽極液を収容する陽極液タンク、陰極液を収容する陰極液タンクなどを備えていてもよい。
【0116】
本実施形態の電気透析装置100は、第1~第4実施形態のいずれかの電気透析槽を備えているため、スケールの析出によるトラブルの発生を抑制でき、稼働率が高く、処理効率に優れる。
【0117】
本実施形態の電気透析装置100を極性転換方式の電気透析装置とする場合は、上記の構成要素に加え、各電極の極性を時間的に切り換える極性転換機構、濃縮処理液タンク103および脱塩処理液タンク105のそれぞれと電気透析槽101との間で処理液の流れを切り換える流路切り換え機構などをさらに備えればよい。
【0118】
極性転換方式の電気透析装置の場合、極性転換時に濃縮処理液と脱塩処理液とが混合しないように、電気透析槽101の内部に残った処理液を取り出して廃棄する必要がある。この観点から、
図7に示す濃縮室枠71を備えた第2実施形態の第2構成例の電気透析槽を用いることが望ましい。第2構成例の電気透析槽を使用した場合、
図6に示す濃縮室枠61を備えた第1構成例の電気透析槽を使用した場合に比べて、バイパス配管を短くできるため、バイパス配管内に残る処理液の量が少なくなり、廃棄する処理液を少なくできる。
【0119】
なお、電気透析装置として、濃縮処理液および脱塩処理液のそれぞれをタンクと電気透析槽との間で循環させる本実施形態の構成に代えて、処理液の原液を電気透析槽に供給し、濃縮処理液および脱塩処理液のそれぞれを循環させずに電気透析槽から取り出す構成を採用してもよい。
【0120】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば第1~第4実施形態においては、各室枠の室内の処理液を一旦外部に流すためのバイパス流路として、管(ホース)を用いた例を示した。管を用いた場合、流路の引き回しに自由度がある、装置構成が簡略化できる、等の利点が得られる。ただし、バイパス流路は、必ずしも管で構成されていなくてもよく、例えば任意の部材に設けられた溝、孔、開口部等で構成されていてもよい。また、上記実施形態では、電気透析槽本体から一旦排出された処理液をバイパス配管のみを介して戻す構成を有しているが、例えばバイパス配管の途中に処理液を一旦貯留するバッファー槽が設けられていてもよい。さらに、バッファー槽は、バッファー槽内に設けられた撹拌機構によって処理液を撹拌させ、イオン濃度を均一化する構成を有していてもよい。
【0121】
上記実施形態の電気透析槽は、複数の濃縮室枠と複数の脱塩室枠とを備えているが、濃縮室枠および脱塩室枠のうち、いずれか一方の室枠を1つ以上備え、他方の室枠を2つ以上備えた構成としてもよい。
【0122】
以上述べたように、本発明の一つの形態は、極性転換方式の電気透析槽にも適用が可能である。
【0123】
その他、電気透析槽および電気透析装置の各構成要素の形状、個数、配置、材料等の具体的な構成については、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、地下水や排水等の脱塩処理、濃縮処理液からの塩の製造、水の生成等に用いられる電気透析槽および電気透析装置に利用が可能である。
【符号の説明】
【0125】
10,80,90,101…電気透析槽、11…電気透析槽本体、12,12A,12B,12C,12D,81,91…バイパス濃縮管(バイパス濃縮流路)、13,82,92…バイパス脱塩管(バイパス脱塩流路)、22,77…陽極、23…陽イオン交換膜、24…陰イオン交換膜、25,61,71,76…濃縮室枠、26…脱塩室枠、27…陰極、43,63,73…濃縮室、43A,63A,73A…上流側濃縮室、43B,63C,73C…下流側濃縮室、53…脱塩室、53A…上流側脱塩室、53B…下流側脱塩室、77A,77B,77C…分割陽極、83…スタティックミキサー(撹拌機構)、100…電気透析装置、104…第1ポンプ(送液装置)、106…第2ポンプ(送液装置)、S…処理液。